- 1二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 06:49:10
日が昇りきらないうちにベッドから這い出し、まずはバスルームで寝汗を軽く流す。
熱いお湯で眠気の残る瞼をしゃっきりと起こすと、身綺麗にしてからバスタオルを体に巻き、洗面所で髪を乾かしてからドレッサーの前に移動する。
特権が失われ、お付きの者がいなくなってからは一人でするようになった化粧は、たっぷり三十分ほど掛けて行う。
潤いと色味を残す程度のナチュラルメイクで顔を整えれば準備は完了。瑞々しい桃色の唇は今日も荒れ知らずだ。
ウォークインクローゼットにずらりと並んだメイド服から一着を選んで手早く身に着けることにも慣れてきた。
全て幼馴染のオーダーメイドで、機能性に優れたクラシックスタイルのメイド服は少々やぼったいものの、ミカが纏えば第一線で活躍するドレスたちにも劣らない。
羽を背中の穴から出し、いつものアクセサリーで彩ると、ヘッドドレスをふわふわの髪の上に乗せて朝の支度は完了する。
台所に入ると、給湯器で桶に適温の湯を張り、その中にポットとカップを漬けておく。起こした幼馴染にすぐに紅茶を提供できるようにするためである。
それから時計を確認してから幼馴染の寝室に向かうと、軽くノックをして彼女が起きているかのチェック。
んぅー……、とうなり声が聞こえ、一応起きようとする努力はしていることを察し、小さく笑みが漏れる。
「失礼いたします、お嬢様☆ 起床のお時間でございます」
わざと侍女の言葉遣いに寄せながら部屋に入れば、昨日も遅くまで資料に目を通していたのか、ナイトテーブルの明かりのもとに紙の束が放られていた。
それを横目に日当たりのいい大きな窓のカーテンを勢い良く開けば、上りつつある太陽の光が燦々と部屋の中へ差し込む。それが煩わしいとばかりに布団を被り直そうとする彼女から、掛布団を引きはがすと、乱れた髪を軽く整えつつその端正な顔立ちを覗き込んだ。
「おはようございます、ナギサお嬢様☆」
「……おぁよう、ござぃあす。ミカさん」
専属メイド、聖園ミカの朝はまだまだ続く。 - 2124/11/03(日) 06:50:04
すっきりした目覚めだったので書きました
続かない - 3二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 06:50:32
メイドミカか
ちょっと海の方まで行って団長みたいな声の人からメイドの極意を学んでこようか - 4二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 06:57:34
描写が細かくて美しい
どうしてあにまんで才能を浪費してるの??? - 5二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 07:28:06
ありありと情景が浮かんでくる良い文章だ
それと朝が弱いナギちゃん概念は可愛いぞ - 6二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 07:49:41
メイドミカ概念はいいぞ
- 7二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 09:28:50
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- 8124/11/03(日) 09:29:44
「では、行ってきます。ミカ」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
見様見真似ながら、すっかり様になったお辞儀で幼馴染を見送って。
玄関の扉が閉まれば、ミカの朝ご飯の時間になる。
彼女のお弁当を作った余りで適当に朝食をこしらえると、自分用に紅茶を入れて一息。今日の朝食はサンドイッチを作った残りの具材を適当に乗せ、チーズを乗せて焼いたチーズトースト。
朝から少し重めではあるけれど、一日の労働の活力は朝に取らなければいけないというのが定説で。
動いているから太らない、と明日の自分に今日の負債を押し付けつつ、食前のお祈りをしてから手早く朝食を済ませる。
「ごちそうさまでした、っと」
しっかり食べ終えたら食器を水桶に放り込み、まずは洗濯から。
自分と幼馴染のベッドシーツ、布団カバー、枕カバーをガバっと引っぺがし、ミレニアム製の高性能大容量洗濯機に放り込む。
それから横の通常サイズの洗濯機に二人分の寝間着と昨日出た洗濯物を突っ込むと、それぞれに洗剤を投入して選択開始。
くわんくわんと静かにうねる洗濯機の音を置き去りに、次は部屋の掃除を始める。
高いところから埃を落として、低いところの汚れを纏めて。ゴミ捨ての日に合わせて捨てられるように、家の裏手にいっぱいになったゴミ袋を置いておいて。家中の汚れやすいところを片っ端から掃除していたミカの耳に、洗濯機の呼び声が届いた。
ぱたぱたと洗濯機に駆け寄り、籠いっぱいに洗濯物を取り出すと、庭で手際よく干していく。
幸い雲一つない快晴で、昼前にはすっかり乾いていそうな陽気であったものだから、ここでお昼寝でもすれば気持ちいいだろうな、なんてことを考えながら、十五分ほどで全ての洗濯物を干し終えた。
それからお昼まで、掃除をきっちり済ませると、洗濯物を取り込んでからお昼ご飯の準備に取り掛かる。
冷蔵庫にあるもので、足が早かったり、消費期限の近いものをいくつか取り出して。この生活になってから、すっかりこういうやりくりも身についてきた。
「じゃーん、ミカちゃん特製オーガニックサラダとクリーミーカルボナーラ~☆」
ぱしゃり、と幼馴染にお昼の献立写真を送ってから、学習用BDを再生して食卓に着く。これでもいまだ学生の身、登校せずとも勉強はしなければいけない。
予習した内容をモニターで眺めつつ、幼馴染に出すお夕飯を何にするか思案する聖園ミカの一日はまだ半ばである。 - 9二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 09:47:07
ミカちゃん特製オーガニックサラダとクリーミーカルボナーラを食えるなんてナギちゃんこの幸せ者め……
- 10二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 09:47:37
良いなぁ
とても清楚で爽やかな雰囲気だ - 11二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 10:22:30
しゃっきりしてるけどベッドからは這い出してくるの可愛い
- 12124/11/03(日) 21:49:58
「ただいま帰りました、ミカさん」
「お帰りなさいませ、お嬢様☆ お食事はどうされますか?」
「先にお湯を頂きたいですね……」
「はーい☆」
草臥れた姿の幼馴染を出迎えると、手提げ鞄を受け取る。
すでに適温に沸いていて、後は湯船に浸かる主の来訪を待つばかりとなっていたバスルームに一直線になった彼女の後についていくと、手提げ鞄を途中のリビングに残して、彼女の脱衣を手伝うために脱衣所に同伴した。
本来は傍仕えが行うような仕事も、今のミカが手掛けるべきものだった。
勝手知ったるなんとやらとばかりにするりと衣服を脱がせていくと、一糸纏わぬ姿になったナギサをバスルームに送り出し、脱がれた制服のうちすぐに洗濯できるものだけを洗濯機に入れていく。
残りは除菌とブラッシング、しわになっている部分はアイロンで撫でて直してしまう。彼女が纏うべき衣は常に穢れのない清廉なものであるべきだった。
一通り手入れを済ませ、明日も着られるようにハンガーラックに掛け終えると、事前に準備していた料理に取り掛かる。
昼間に作ったカルボナーラの、より手間暇をかけたバージョン。昼のメッセージの際に、ナギサからモモトークで夜はこれがいいと返信があったものだ。
あとは寝るだけの体には少し重いかもしれないが、育ち盛りの肉体に栄養は不可欠。なにより彼女が選んだ夕食なのだからと適当な言い訳を済ませ、ナギサが上がってくる時間を計算して丁度出来上がるように手を進めていく。
飲み物ももちろん紅茶。朝と同じようにカップとポットを温め、美味しく飲めるように支度を終える。
そこまで整えて、ミカはようやくメイド服を脱いだ。
朝から夕方、ナギサが帰ってくるまでの時間は、幼馴染の傍仕えとして。
そして彼女が日中の疲れと汚れを洗い流した後は、大好きな幼馴染同士として。
ミカとナギサの関係は、今日もそんな風に回っている。
「ミカさん、お湯頂きました。良い湯加減でした」
「はーい! お夕飯出来てるから、食べよ食べよ!」
にっこりと笑って、ほかほかと湯気を立たせるナギサをテーブルに急かすミカ。すでに配膳を済ませ、ポットにはちょうどいい具合の紅茶が溜まっている。
二人は席に着き、向かい合って、互いの手を握り合い、静かにお祈りの言葉を交わす。
そんな二人の、いつもの夕食の時間が始まった。 - 13二次元好きの匿名さん24/11/03(日) 21:56:16
ミカスレってちょこちょこ文豪湧くからとりあえず読みたくなる
- 14二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 07:22:40
期待の保守
- 15二次元好きの匿名さん24/11/04(月) 16:24:15
ほし