【閲覧注意・トレウマ注意・複数担当・怪文書】「トレーナーさま~……!!」

  • 1二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 21:58:13

    わあ、という歓声。
    三年目。トゥインクルシリーズのファイナルに相応しいレースだったかは、走り切った彼女たち自身が決めることではあるが……それはそれとして、誇らしい。
    そしてまた、別の想いがこみ上げる。
    ああ、これで終わりなのだ、と。そう思う。

    ウマ娘。彼女らがデビューしてからの三年は、誰にとっても特別な期間だ。
    本格化して、デビューしてからの三年が彼女らのその後を決める。その三年こそが、ウマ娘たちの全てである、というトレーナーすらいる。
    彼女らの成長のほぼすべてはその三年にあると言ってもいい。長く長く、走り続けるウマ娘もいる。妊娠しても走り続けるウマ娘もいる。非常に年若い時に本格化してしまうウマ娘もいる。だが、彼女らの能力が爆発的に伸びるのは、その三年なのは間違いない。
    その三年が終わった。それも、トゥインクルシリーズ決勝に勝利するという、最高の形で。……まったくもって、自分は恵まれている。こんな幸いを、一生で二度も味わえるなど。

  • 2二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 21:58:42

    「トレーナーさま~」

    そんな幸いを見せてくれた、彼女の声。
    とて、とて、という擬音すら聞こえそうなゆったりとした歩調。だが、その速度はウマ娘のもの。あっという間に近づいてきて、ぴょん、と軽く飛び上がるだけで。
    彼女がいつものように待っていてください、と言ったウィナーズサークルの柵を飛び越えた。

  • 3二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 21:59:08

    真っ青な青空に、赤い勝負服が舞う。……まずい。そう思う間もなく、砲弾のような勢いで、のんびり屋さんのウマ娘が自分の胸に向って飛び込んできた。

    『ああ。ウマ娘は三つにわけられる。力の加減ができる奴。力の加減ができない奴。……そして、普段は出来てるくせに、ふとした瞬間にできなくなるやつだ』

    苦笑いしたのは「彼女」の同期であり、自分の同僚でもある短距離ウマ娘のトレーナー。
    アメリカ生まれの寂しがり屋のウマ娘は、普段はしっかりと力の加減ができているのに、感情が極まって抱き着いてくるときは「まずい」のだという。
    上半身から力を抜く。下半身は低く。
    勢いを消せるはずがない。だが……重要なのは、消せると信じることだ。
    そしてその上で、ぎりぎりまで自分の身体がその衝撃に耐えると祈る。

    「トレーナーさま~……!!」

  • 4二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 21:59:32

    気丈な彼女の目に涙が浮かんでいる。
    ああ。こんな日ぐらいは、泣いてもいい。むしろ、君はあまりに我慢しすぎていた。
    それはそれとして、命の危機に瀕するのは勘弁してほしい。
    一世一代の大舞台だ。確かに死ぬにはいい日かもしれないが。ここで死んだらさすがに彼女は泣くだろう。
    抱き留めた上半身。フリルがあしらわれた勝負服に包まれていても、ウマ娘特有の高い体温と、レースが終わっても冷めやらない熱がある。
    そして、当然、数十キロの速度も、だ。
    一意専心。抱き留めた瞬間、それに逆らわず、くるり、と一回転する。抱き留めたその時には、すでに彼女……メジロブライトも正気に戻っていたのだろう。
    自分の足でその速度を殺し、なんなく制動をかけた。……かくて悲劇的な事故は免れたわけであるが。

    「……トレーナー、さま~……」

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 21:59:53

    感極まった彼女の感情は、当然のごとく溢れる。
    それに対して、自分のできることなど、一つしかない。
    ねぎらいの言葉。何か。と考えるまでもなく、口をついた。

    「君は、やっぱり、メジロブライトだ」

    何を言っているんだ、と思ってしまう一言。
    だが、そんな言葉を、彼女はすんなりと受け入れてくれた。

    「はい~……私は、メジロブライトですわ~……」

    メジロ家のウマ娘。それだけではない。メジロブライトだからこそ、あきらめずにここに至れた。ゆっくりとした歩みでも、ここにたどり着けた。

    「そして、あなたはトレーナー様、ですわ~……」

    わあ、という歓声が、どこか遠くに聞こえる。
    ただ、目の前の彼女と自分だけがここにいる錯覚。

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:00:22

    「トレーナーさま~……なでなで、してくださいませ~……」

    う、と言葉に詰まる。
    大観衆の面前で、さすがにそれは、と思うが。
    だが、それはこの三年間、頑張り続けた彼女に不義理ではないか。
    何より。彼女の潤んだ瞳に見つめられると、どうしても拒否できない。

    「トレーナーさま~……」
    「……はっ!?」

    気づいたときには、手が勝手に彼女の頭をなでていた。
    なんだかこの三年間、ずっとこんな感じだった気がする。
    以前に担当したウマ娘は、ここまで甘え上手ではなかったのに、同じウマ娘といえど、こうも違うのか。いや、甘えると言っていいのだろうかこれは。

    「トレーナー様~……ぎゅっとしてくださいませ~……」
    「いいぞ~」

    まあ今日ぐらいはいいか……。
    などと思ってブライトのことを抱きしめる。
    まあしょうがない。だって三年間頑張ったものなあ。

  • 7二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:01:33

    「トレーナー様~……スイッチを、スイッチを押してくださいませ~……」
    「いいぞ~」

    しょうがないしょうがない。
    だってブライトが望むんだからね。
    しょうがないしょうがな

    「トレーナーさん!!」
    「……はっ!?」
    「ほわぁ?」

    いつのまにか、歓声に微妙なざわめきが混じっていた。

    『ヒソヒソ……やっぱりメジロ家は情熱的なのよ……』
    『一心同体は伊達じゃないわ……』
    『長距離ウマ娘はやっぱり押しが強いのね……』
    『流石サイレンススズカ世代、爛れてるわ……』
    『嘘でしょ……?』

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:02:16

    まずい。なんかあることないこと言われている気がする。
    当のメジロブライトはとぼけた……いや、本当に何を言われているのかさっぱり、という様子で。
    自分に声をかけてくれたのは、チームの一員であり、そしてなにより新人だった自分が最初に担当した、ウマ娘だった。

    「……ありがとう、フラワー」
    「ほわあ……ご迷惑を、おかけしました~……」

    二人そろって頭を下げる。
    いい大人が見た目がほぼ小学生みたいな子にペコペコするのはどうかと言われることもあるが、もうフラワーも本格化してから大分年月が経過している。

    「ほら、トレーナーさんも、ブライトさんも。インタビュアーさんが困ってますよ」

    そこかあ……と思うものの、フラワーもブライトも周囲の囁きにはあまり気を留めていなかったようだ。

    「ブライト、行こう」
    「はい~」

    そう言って、この三年間を共に駆け抜け、盾の栄誉と……そして、今期のトゥインクルシリーズの栄誉を掴んだ彼女とともに、インタビューに向かう。

    「……もう。トレーナーさん、私にはあんなこと、してくれないのに……」

    そんな言葉は、再度起こった歓声にかき消されてしまった。

  • 9二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:04:20

    急にニシノフラワーお姉さん+ニシノフラワーとメジロブライトが同担概念を思いついたんですが、さきにニシノフラワーが拗ねている絵を描くべきでしたと反省しています

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:08:11

    これはいいぞ〜

  • 11二次元好きの匿名さん24/11/05(火) 22:13:55

    >>9

    急に概念が降ってきたならしょうがない

    素晴らしい

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/06(水) 09:34:31

    >>9

    とてもいいと思う

  • 13124/11/06(水) 18:31:26

    「本当にお前は変なことをさせないよな」
    「え?」
    「無駄がない。無駄なプレッシャーをかけない……だから、ウマ娘ものびのびと走るし、最後に足が残る」

    そう言ったのは、同僚のダイイチ家お抱えの―――と言っていいだろう―――トレーナーだった。
    「華麗」と称されるダイイチルビー。フラワーやブライトと同じチームに所属し、マイルのエースである彼女のトレーナーである彼はとかく優秀な男だった。
    諦めず、不屈にして、寡黙な男。ダイイチ家の選抜試験を突破し、ダイイチルビーを射止め、彼女を短距離・マイル路線に導き栄冠を掴ませた男。いや……本人に言わせれば、あるいは射止めたのではなく、ただそこに残ったのが自分だけなのだ、との言ではあるが。ただ、あのご令嬢の執着っぷりを見れば、誰でもわかる。
    とまれ、そんな同僚から褒められるなど、想像もしていなかった。

    「プレッシャーをかけてトレーニングとか、俺にはできないしなあ」
    「だけどちゃんと筋は通っている。ニシノフラワーもメジロブライトも、一筋縄じゃいかないウマ娘だ」
    「ダイイチルビーみたいに、か?」
    「……」
    「そこで黙ったら、あとが怖いぞ」

    どうせ酒の席だ。ウマ娘がいるはずがない。普段は言わないような軽口が口をつく。

    「……否定はしない」
    「お前が否定しないってことはそういうことだよなぁ」
    「……まあ、そうだな」

    どうせ男同士の酒の席だ。ウマ娘などここにいるはずがない。
    空になった同僚の盃に酒を注ぐ。

    「……あんまり飲ませるなよ?お前の祝いの席だぞ」
    「おっと、お嬢様に怒られちまうか?」
    「明日に響かないように調整するのも仕事のうちだ」

    トレーナーとして、ダイイチ家の表立った仕事にも同席するようなやつだ、やっぱりきっちりしてるなあ……などと思うが、それは口に出さなかった。

  • 14124/11/06(水) 18:36:03

    しかし、ダイイチルビーのトレーナーもそうだし、自分もそうだが。トレーナーという仕事についてから、結構な年月が経過した。

    「もう何年だ?俺たちがトレーナーになってから」
    「8年……か?」
    「そっか、8年か……そりゃ、三十路になるなあ」
    「……まだまだ未熟なことばかりだ」

    そっちに向くのかお前のメンタル。そう突っ込みかけて口をつぐむ。
    まさかこいつ担当ウマ娘相手にもこんなこと言ってんじゃなかろうな。

    「ま、でもそれなりに成長しただろ、俺もお前も、さ。
     お前はダイイチ家お抱えのトレーナーだし」
    「そうだな、そしてお前は最優秀新人トレーナーだ」
    「それことあるごとに擦るな……」
    「悔しかったからな」
    「あと、それももう5年前の話だぞ」
    「そうか、もう5年か……」

    よく言われることだが、トレーナーという職業はどうしても時間の感覚が狂うらしい。
    本格化したウマ娘は成長が止まる。ヒトであれば成長期のはずなのに、数年経過しても、筋肉はつくが骨格が変わらない。
    まるで、彼女らは終わらない架空の物語を紡いでいるようだ、などと詩的な表現をするやつもいた。
    いずれにせよ。そんなウマ娘に付き合っていると、トレーナーの方も時間感覚が狂ってくるのだという。
    まるで、三十年があっという間に過ぎ去ってしまったようだ、などとしんみりと話すベテラントレーナーもいるぐらいだ。

  • 15124/11/06(水) 18:48:18

    それはいいことかもしれない。
    まるで、青春をやり直しているような、ずっと青春の最中にいるような感覚にあるのは、嬉しいことだ。
    だが、その一方で。

    「そろそろ結婚しないとなあ」
    「……去年の今頃もそんなこと言ってなかったか?」
    「まあ毎年言ってるなあ……」

    そう。いくらウマ娘たちは変わらなくとも、トレーナーの側の生活は変わっていく。
    ウマ娘のトレーナーは婚期が遅れる、などと言われるのも、この狂った時間感覚と関係がないことではないだろう。

    「お前はどうなんだよ。ダイイチ家の伝手で誰か紹介してもらえないのか?」
    「……」
    「そっかぁ……」
    「姿は変わらないのに、年相応に貫禄と威厳が増していくルビーに対してそんなこと言えるわけないだろう」
    「いやお嬢様に言わんでも」
    「そんな不義理は俺にはできない」
    「いや、そういうところがお前のいいところだけどさあ……」

    にしたってなあ、とこぼす。
    自分からしてみたら、彼は本気で結婚しようとしたら引く手数多だろう。まあ、あの多忙な生活の中、婚活などできようもないだろうが。そもそもこの男、自分と違ってダイイチルビー以外のウマ娘を担当しようなどと考えたことがないのだろう。

    「……ま、担当ウマ娘の幸せが俺たちの幸せ、か」
    「ああ……」
    「それはそれとして、結婚はしたいなあ……」
    「ああ……そうだ、な……っ……!?」

  • 16124/11/06(水) 18:55:41

    「おいどうした顔真っ青にして」
    「……」

    さきほどまでほろ酔い気分だったであろう、対面に座る男の顔が真っ青になっていた。
    汗が額に浮かび、指が震えている。

    「お、おい……大丈夫か?
     すまん、ちょっと飲ませ過ぎたか?トイレいくか?」
    「……」

    急に気持ち悪くなったのだろうか。
    だが、それにしては、変な顔だ。まるで、何かを覚悟したような。
    何かを言いたいが、言えないとでもいうような。まるで自分の後ろに、謝りたい誰かがいるような。

    「……トレーナー、さん?」

    おっと?ちょっとここにいてはいけない年齢の娘の声がしたような気がするぞ。
    俺もなんかもうこれ以上話したくなくなってきたぞ?なんか寒気がするぞ。
    おっかしいなー。俺さっきまでいい気分でよっぱらってたのになー。
    後ろ。振り向かなくちゃだめかなこれ。駄目だよなこれ。
    せーので振り向こう。

  • 17124/11/06(水) 19:42:23

    せーのっ……

  • 18124/11/06(水) 19:49:03

    ヒぇッ……激おこでいらっしゃる……!!
    目の前の寡黙を通り過ぎてなんにもしゃべらなくなってしまった男の唯一無二の担当ウマ娘がそこにいた。
    マイルを制した令嬢。華麗なる一族。
    そう、ダイイチルビーである。
    その隣にはバツの悪そうなニシノフラワーがいた。
    そりゃそうだよね、バツも悪くなるよね。居酒屋だよここ。20歳未満は来ちゃだめだからね。いや保護者同伴ならいいかもしれないけども。
    えっ保護者がいる?
    あっそっかぁ……ルビーお嬢様はもうすでに御年20をゆうに超えられていらっしゃいますよねそりゃ……!!

    「……」
    「……」

    そんなヒトなぞ一瞬でつぶされるようなウマ娘の殺気にあてられて黙っている俺を挟んで、沈黙のまま視線を絡み合わせるウマ娘と担当トレーナー。
    いやなんかしゃべろ?怒りの一言でもいいよ?ほら、お前もさ、とりあえずいきなり機先を制して謝罪の言葉叩きつけよ?謝ろ?そうそう、とりあえず謝ろう。
    そうだ、ここは俺が謝っちゃおう。

    「……」
    「……」

    大丈夫、いける、謝るだけ、うん、いける!!
    いやー俺みたいな三下に付き合ってくれちまってさあこいつもさあ。俺のせいなんだ、普段はお嬢様一番ってことでわき目もふらず努力して頑張る男なんでさあ。

    「……」
    「……」

    ……だめだ声がでねえ!!

  • 19124/11/06(水) 19:53:46

    「……」
    「……」

    (〆でー……お会計で……!)
    (かしこまりましたぁー……!)

    とりあえずそそくさとお会計を済ませてしまう俺。
    まあ迎えが来たからね、お開きだね。誰だウマ娘なんてこんなところにはこねえとか言ったアホは。
    俺だよね、うんわかってるよ?

    「……」
    「……」

    とりあえず黙り込んで目と目でなにか以心伝心してるのか怒りと悲しみをぶつけあってるのかわからない二人はさておいて、小声でフラワーに話しかける。

    (……どこから聞いてた……?)
    (そろそろ結婚しないとなあ、のところからです……)

    駄目なところから全部聞かれちゃってましたねぇ!!

  • 20124/11/06(水) 20:04:35

    それはそうとしてこの二人はいつまで黙っているんでしょうか。
    これあれ?俺が何か言わなきゃいけないやつ?だよね?

    「……ルビー」
    「……いえ」

    とか思ってたらやっと言葉を口にする二人。
    いや何が?何がいえ、なの?わかんないよ?こいつらわかってんの?いやわかってない気がすんなあ、これ多分また盛大にすれ違ってるきがするなあ……でもまあ、伊達に8年一緒にいるわけじゃないだろうしなあ。
    でも本当に大丈夫かなあ……。

    「……じゃ、またな。頑張れよ、お前も」
    「……失礼いたしました。ご機嫌よう」

    三点リーダが常に挟まるトレーナーと担当ウマ娘のコンビが、二つ名通り、華麗に居酒屋を後にする。
    最後にお前もな、とも、今日はありがとうな、とも言えず、手を振るだけの自分。そして一緒に手を振るフラワー。
    いや何やってんの、とは言えない。
    やっと口にできた言葉は。

    「……大丈夫かな、あの二人。ダイイチルビー、めっちゃ怒ってたけど……」
    「大丈夫、だと思います……あれは、怒っていた、というより……」
    「え?」
    「あっ、いえ、勘違いかもです!」
    「……ま、まあ。あいつらも長いからな」
    「はい……」

    何がはいかわからないが、会話が止まる。
    いや、早くここから出てかなきゃいけないよね。フラワーはまだそもそも二十歳じゃないし。
    頭の中で何度かあったことのある、ニシノフラワーの両親に土下座して謝りながら、居酒屋を出ていく。
    すでに夜は更けている。……いや、やっぱりフラワーはここに来ちゃいけなかったのでは……?

  • 21124/11/06(水) 20:19:36

    「……パーティは終わった?」
    「はい……チームの方とは別れて、ブライトさんは疲れてたのか、すぐ……」
    「ん……ま、そうだよな」

    トレーナーはトレーナー同士で。ウマ娘はウマ娘で。今日はそういうお祝いだった。
    疲れた体に、酒が急にしみてくる。早く帰って寝よう……。
    というか、うん。これフラワーも送らないといけないよな。タクシーを呼ぼう……いや、フラワーは走って帰れるかもしれないけれど。

    「トレーナーさん……」
    「ん?」

    アプリでタクシーを止めようとしていると、フラワーから声がかけられる。

    「あの、トレーナーさんは……」

    そう言いかけて、フラワーは口を噤む。何を言いたかったのか。
    なんとなく、それを察するが、聞くことはできない。
    ただ、曖昧に微笑み、先を促す。いつものように……かつてと変わらない、「優しいトレーナーさん」の顔で。

  • 22124/11/06(水) 20:20:53

    「い、いえっ、なんでも、ないです!」

    そっか、と言う。
    かつてと変わらない、ウマ娘。だが、自分は少しずつ老いていっている。
    今となっては、親と子ほどの見た目になってしまった自分と彼女。
    果たして、彼女の心は成長しているのか。自分には、それを知る術はない。
    いや、8年前からずっと、俺は彼女に甘えている。
    今の問答一つとってもそうだ。
    自分はずっと優しさに溺れている。ぬるま湯のような関係のまま、フラワーと、トレーナーと担当ウマ娘という関係を続けている。
    ……それに区切りをつける方法はある。一年前も、同僚と話した、それだ。
    きっとそれをすれば、フラワーと自分の間には、明確な一線が引かれる。きっと、それが正解だ。

    「じゃ、帰ろうか」

    しかし、今日は何も変わらないまま帰っていく。自分も、フラワーも。
    いつもの居場所へと。

    「……はい」

    そう言った彼女の声は。
    少し、寂しそうだった。

  • 23124/11/06(水) 20:22:29

    ここまで書きたかったのでとりあえず書きました
    思いついた概念と独自解釈がありすぎるので、どうなのかなとは思ったのですが……

    続きとかフラワーの絵とかは書けたら書きます

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 00:16:45

    おいたわしやルビトレ…

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