- 1英雄登竜門24/11/07(木) 19:05:15
- 2英雄登竜門24/11/07(木) 19:06:14
現行スレ
ダンジョンマスター専用掲示板 その70|あにまん掲示板※エラーが出るからテンプレは2レス目bbs.animanch.com簡単なあらすじ
【獣・迷宮・ミノタウロスを司りし魔神】
バフォミトラ
VS
【荒らし・嫌がらせ・混乱の元】
英雄登竜門
- 3英雄登竜門24/11/07(木) 19:06:45
導入、入ります
- 4バフォミトラ24/11/07(木) 19:40:03
(※ 立て乙です よろしくお願いいたします)
- 5英雄登竜門24/11/07(木) 19:44:11
【英雄登竜門が統治するロスレイヴェンは大きく様変わりしていた】
【元々5900万人を難なく収容し、外来からの商人その他を受け入れたこの街は既に2倍以上に膨れ上がっていた】
【今までの部分を旧市街とし、ブレイン指揮の元大規模の再開発を敢行。街の中心となっていたコンス城塞は、完全に取り壊されて今は更地になっている】
【その周辺は行政区画として集約し、外側は軽い区画整理をするのみに留まり、大規模な商業施設を新市街へと移転】
【またその空き地にブレインが守っていた摩天楼を移転。特別隔離地域に指定している】
【そして新市街は未だ整理された道のみが目立つ荒野だ。所々、住居と治安施設、商業施設があるが未だ殺風景であるものの、既に英雄登竜門と手を組んだ『魔界の群雄』勢力により新たな施設と住居が作られつつあった】
【街が巨大になった分、かかる移動時間の延長する筈であるが、そこは英雄登竜門の権能の一つたる『門』によって強引に解決した】
【事実として、既に旧市街・新市街を問わず英雄登竜門が作り出した大小様々な『門』によってネットワークが築かれており、それを発行された『通行証』を使う事で街の中の決められた『門』に行けるシステムとなっている】
【そして新市街と外側の荒野を分ける外壁は既に完成していた。ブレインと英雄登竜門と現地将軍によって考案された外壁は以前の防衛機構をさらに強固にし、尚且つ上述の『門』と合わせ、非常に効率性と利便性が向上した逸品となっている】 - 6バフォミトラ24/11/07(木) 20:08:00
【── 英雄登竜門とバフォミトラの決闘── 魔界は今この話題で持ちきりであった。】
【外の世界から正に流星の如く現れ、魔界をかき乱すや否や、アレシュカガル麾下のデーモン・ロード”ジャカルカス”の支配する魔都ロスレイヴェンへと宣戦布告を決めた時、魔界の住人の殆どは「身の程を知らぬ愚者による自殺行為」と断定づけた。】
【だが、それも無理もない事だ──複数の魔神の思惑と介入によって成立した「中立地帯」に攻め込むなど、どう考えてもマトモでは無く…この魔界の地において、その様な「蛮勇」を行って無事でいられる訳が無かったのだ──そう、今までは……。】
【だが、あの”狂える渾沌の申し子”は、ある種の停滞と燻りを見せていた今の魔界において前代未聞の「大番狂わせ」と「偉業」を同時に成し遂げた】
【やってのけたのだ──魔界の「理」を知らぬ只の新参者が、力で万全なる強者を打ち倒し、全てを奪った…それもほぼ独力で】
【無論、彼女にはかの悪名高き"獣魔王”との黒い噂が絶えず、様々な者がよからぬ噂を口にし、それを盛大にネタにしていたが……力無きに等しい下位のデーモンや魔界の住人にとっては、そんな事はどうでもよかった。】
【彼らは「希望」を見たのだ──この魔界では絶対に見られぬ類のものを……。】
【そして、彼らはこう思い始めたのだ──もしや、あの新参者ならば……ジャカルカスに次ぎあのバフォミトラをも斃し得るのではないかと……!!】
【このため、普段に益してロスレイヴェンが異常な熱気と活気に包まれているのは、至極 自明の理と言えた】 - 7英雄登竜門24/11/07(木) 20:14:37
「作り込んだわねぇ……」
【新市街の外壁にて、広がった街を眺めて英雄登竜門は独りごちる。傍らに浮かぶブレインの子機たる光球が浮かび、休暇を終えた従者が立っている】
『否定。都市の稼働率は未だ20%未満。これから更に作り込む予定』
「ははっ、確かにね。『門』の権限の一部譲渡を言い渡された時は何使うのかと思ったけど……全く呆れるわ」
『移動の簡略化と外敵及び内敵に対するセキュリティを考慮すれば当然かと』
「まぁね。こっからどんどん人を呼ぶんだから必要なことよね……所でビカナ。招待客は今のところどれくらい?」
「ほぼ全員が何らかの形で参加されるそうです」
「上々ね。そろそろ舞台を作りに行きましょうか」
【英雄登竜門がそう言って三人は旧市街のコンス城塞跡地に移動。そこは市街地最大の更地であり、以前あった広場をも超える敷地となっていた】
「行くわよ、聳え立て『英雄闘技場』!」
【英雄登竜門が言った瞬間。そこには突如、巨大な闘技場が現れた。セントラリアの闘技場を参考にしつつ、それを遥かに上回る規模の闘技場だ】
【中に入れば、そこには当然の如く巨大な闘技場。収容人数は10万強の規模だ】
「……大きすぎませんか?」
【従者が素直を感想をこぼせば】
『内部の空間拡張し、外観以上に広くなっています。また観客の安全性を最大限に考慮しており、さらに巨大中空モニター機能を完備。さらに、ここでの戦いは各地の広場を通じて中継されます。闘技場上部には複数のVIP席を用意し、険悪関係の勢力が鉢合わせない様に配慮。また闘技場内部は魔界内外の様々な環境に変更可能な仕様となっております』
「安全性とは以下ほどの?」
『対古き焔用決戦空間〘英雄"討"竜門〙を参考に調整いたしました』
「うんうん、いい感じね。当日盛り上がりそうだわ」
【満足気にうなづく英雄登竜門】
【そして、少しの時は流れ……】
- 8英雄登竜門24/11/07(木) 20:31:36
【決闘当日】
【>>6このような熱気もあり、ロスレイヴェンには多くの魔族及びその勢力が押し寄せていた】
【既にVIP席もほぼ埋まり、観客席も多種多様な魔族によってごった返し、そこから溢れた者も各地の広場にてその様子を見ている】
【当然、人が集まればそれに釣られる様に商人達も集まり、闘技場内の売店の出品権は即完売。各地の広場では格安で売りに出された通商権を買った屋台や露天商が取り囲んでおり、どこもかしこもお祭り騒ぎであった】
【その様子を選手控え室にて待機している英雄登竜門はニヤニヤと見ていた】
「随分、盛り上がってて大変いいじゃない!」
『既に街を広げた際の借金を半分完済できる見込み、更に今後もここで商売をしたいという要望が多数来ております』
「後日、調印予定の『群雄連合』にもこの盛り上がりを見て、参加に揺れ動く勢力が見られます。中には既に参加を打診する内定を求めた所もありますし、当初声をかけていなかった群雄勢力からも参加の打診がありました」
【ブレインと従者の報告を聞き、英雄登竜門は別のモニターの方を向いて胸を張った】
「どんなもんよ?」
【そこに映し出されているのは、別なる選手控え室にいるバフォミトラの姿だった】
- 9バフォミトラ24/11/07(木) 20:32:31
【英雄登竜門の用意した闘技場控室にて、バフォミトラは"かの有名の絵"の如きポーズで深い瞑想に入っていた。】
【何故か?──それはある意味において、彼は「挑戦者」だからだ。】
【確かに、彼は自身の広大無辺な領土内に専用の闘技場を有しているが、あの場所を用いるのは基本的に娯楽、時に訓練と運動であり、稀に自身へ挑まんとする、身の程知らずを強制的に招き、処刑する為に用いられる。】
【他者が管理・支配する闘技場に招かれ、そして相手に挑むというのは、かの魔神をしても中々に無い稀有な経験であった。】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「フフフッッ………!!!!」
「この俺がよもや「挑戦者」とは……正に世も末か……!!」
【久しぶりに彼は、獰猛な捕食者としての"貌"に目覚めていた。】 - 10英雄登竜門24/11/07(木) 20:54:07
- 11バフォミトラ24/11/07(木) 20:59:35
- 12英雄登竜門24/11/07(木) 21:29:21
「……ブレイン、ビカナ」
【その一言で光球と従者は音もなく、控え室から出ていった。それを見届けて、英雄登竜門はバフォミトラに向き直る】
「そうね、あの爺は――《古き焔》は満足したのよ。この世の、あの世の、全ての事柄にてあの爺は自分に出来ること、やれること、やりたいこと……その全てを達成した」
【その表情は懐かしさと悲しみと、優しさを含んでいた】
「だから身体の全てを、心の全てを、薪にして焚べて……燃やして、燃やし尽くして勝利し、満足して灰になったの」
【しかし、言葉を続ける度に英雄登竜門の表情に、抑えきれない猛々しさが表出する】
「《古き焔》の名に恥じない――焔の終焉だったわ」
【彼の終焉の地にて、最後に語ったことを最後まで言う気はない。バフォミトラもそれは了承済みだろうが、英雄登竜門の内心を伺うのには十分すぎただろう】
- 13バフォミトラ24/11/07(木) 21:50:56
(暫しの沈黙)
「………”満足”し、”全てを達成した”………か。」
(暫しの沈黙)
「…フフフ、実に羨ましい限りだよ。」
「実は………こう見えても、俺は理論派でね? この魔界で生き抜くために、単純な力と暴力だけでなく、様々な策謀と独自の計算による未来予測を用いてここまで生き延びてきた──だから、大体の事は相応に「理解」しているつもりだったんだが……。」
「──奴は何処までも、俺の思考の隙を付き、導き出した計算による「理」を狂わせ続けた──」
「……俺の経験則と独自に演算して導き出した「数比」、そして類似的強者のパターンと性(サガ)……様々な傾向から独自に推測した結果、あの手の比類なき絶対的強者は、未来永劫 ”頂点捕食者”として君臨し続けるだろうと踏んでいたが…………それは他ならぬ奴自身によって簡単に打ち崩され、思わず俺は呆気にとられてしまった。」
(暫しの沈黙)
「………もし……仮に”もし”だ──俺が最も若く、何者よりも野心と野望に満ち溢れていた頃に……奴がこの魔界に顕現していたのであれば……奴は一体どのような歴史を刻んだのかと、たまにふと思う。」
「フフフ…………ある意味において、俺も奴の「焔」に焼かれていたのだろうな。」
(英雄登竜門を見つめる)
「……徹頭徹尾「理解」出来ぬ”奴”……実を言えば、俺はそう言った手合いを何よりも恐れる──貴様のような”じゃじゃ馬娘”も含めてな?」
【そう告げるとバフォミトラは、ニヤリと笑みを浮かべる】
- 14英雄登竜門24/11/07(木) 22:33:03
【"じゃじゃ馬娘"と呼ばれ、思わず笑う】
「ふふ、それは光栄ね。……さて、そろそろ始めましょうか?」
【時間になったのか互いの後方、新たな門が現れ、一人でに開く。と同時にお互いを映していたモニターが消える】
【開いた門からは割れんばかりの歓声、怒号。その中で、やかましい程の実況の声】
「あはは、すごい期待ね。精々食らいついて――期待に応えてやろうじゃないの!」
【英雄登竜門は立ち上がり、その装いが変わる――純白に金の花の意匠が施された、まるで戦乙女の如き鎧姿】
【右手には黄金の剣を握り締め、左手には白銀の槍を肩に担ぐ】
【門へ歩みを進め、闘技場に姿を現した】
【歓声が更に高まり、もはや音の壁のようだ】
【それに黄金の剣を振って応えつつ――広い闘技場の対面にある開いた門へ、目を離さない】
【いつ戦いが始まってもおかしくないのだから】
- 15バフォミトラ24/11/07(木) 22:47:28
【闘技場の対面に位置する開かれた門から光が漏れ始めると、ここからでも響き渡る大歓声と罵声、そして自身に対する呪詛と憤怒の声が響き渡る】
【──が、そんな取るに足らぬ有象無象どもの声など一切意に関せず……バフォミトラは英雄登竜門が待ち受ける闘技場へ向かうため、門へ到る回廊を無言で歩み始める。】
【その道中において、彼は壁付近に掛けられていた斧を手に取り、それを武器として定めると……彼は威風堂々と闘技場の門を潜り、入場を終える】
【かくしてロスレイヴェンに設けられた広大な闘技場に、”若き渾沌の申し子”にして、期待の”超新星”たる「英雄登竜門」と、最も古きミノタウロスの神祖にして、最強最古の魔神の一柱たる「バフォミトラ」が正面から堂々と対峙すると、観客の興奮と熱狂はこれ程までに無く高まり、今や最高潮を迎える──】
- 16バフォミトラ24/11/07(木) 22:50:02
「さて、先ずは貴重なこの場を借りて………改めて"祝辞"を述べさせてもらおう。──おめでとう、新しきロスレイヴェンの支配者・英雄登竜門 殿?」
「ダンジョンマスターそして"友人"として改めて、その活躍と成果を祝福させて頂こう。」
「・・・如何かね、この魔界の地は? 少しはお気に召して頂けたかな?」 - 17英雄登竜門24/11/07(木) 23:31:38
「へぇ、バフォってこっちだとそんな感じなのね……。
それじゃあ、こっちもそれなりの対応をさせてもらうわ」
【先程まで話していたことなど微塵も感じさせない態度で応じ、白銀の槍を闘技に刺し、黄金の剣を背中に回して一礼】
「この魔界の古き支配者たるバフォミトラ殿。
丁寧な祝辞、ありがとうございますわ。
改めて、この世界にお招き頂いたことを改めて感謝いたします」
【で頭を上げる同時に剣を担いで、肩をトントンと叩きながら】
「で、この魔界だっけ? そうね、割と気に入ってるわ。
かなり刺激的だけど、同時にすっごく退屈……頭打ちの連中が燻ってて、君臨してる輩が自領に引きこもって小競り合いと暗躍に終始してる……一種の袋小路よね。
私がここに立って一年は経つけど、誰も直接私の首を取ろうとしないのよ?
これが力が跋扈する魔界なのって気分……。
変に格を気にしてんのかなんなのか知らないけど、私にムカついてるなら人にやらせないで直接来いってのよ。……ああ、たぶん聞いてるから言うけどあんたのことよ、鳥頭。
たっく、もったいないわ。実にもったいない!
だから僭越ながら、私が引っかき回してやることにしたわ!
この英雄登竜門がね!」
【いつも通りの感じでつらつらと不満を口にし、宣言する】 - 18バフォミトラ24/11/07(木) 23:45:25
「……はははははははははははははッッッ!!!!!! ・・・この狂宴の舞台においてまず出た一言が、我等魔界の住人に対する批判……そして、”鮮血公”への非難と挑発とはな!!?」
「実に結構……それでこそ貴様だ、英雄登竜門。」
「成程、確かに貴様という存在が齎した「新しい風」は………このやや停滞しつつ魔界に一石を投じ、ある種の変化と胎動を及ぼした…。…それに異を唱える輩は、最早おらぬと言えよう。」
「……しかし──"大いなる魔界の意志"は、未だ貴様を認めていないようでね?」
「・・・まぁ、それも詮無き事──人間世界の価値観で例えるならば、難関倍率の名門アカデミーに、コネと口利きと賄賂‥‥そして、テストの最中に堂々とカンニングペーパーを用いて入学したようなものであり、"正当な手順"とは到底言えぬ。」
「・・・・・・最も、貴様に手を貸した私が言える筋でもないがね?」
「・・・そこで、私は老婆心から”一計”を案じた。」
「今回提供した「舞台」にて、貴様と私が真剣に殺し合えば………”大いなる意思”も、貴様の正当性を認めざる得ないだろうとね…?」 - 19英雄登竜門24/11/08(金) 00:01:53
「ふぅん? その"大いなる意志"ってのなんなのか、私はよく知らないけど……。なるほど、力で認めさせろって事ね……ちょうどいいわ。連合の参加を渋ってる群雄の連中も、覇と力を見せつける必要があったからね」
【白銀の槍を引き抜き】
「ちょうどいいわ。一切合切、この場で証明してみせろってことよね。単純明快でいいじゃない」
【黄金の剣と共に構える】
「さぁ行くわよ、バフォ。存分に殺し合いましょう?」 - 20バフォミトラ24/11/08(金) 00:08:15
「そうだな……。これ以上のやり取りは最早無粋──そろそろ、始めるとしよう……!!」
【手にした斧を軽く振るうと、バフォミトラは徐々に戦闘の体勢に入る】
「汝、英雄登竜門……。」
「・・・数多の定命の者の力と価値を見定め、星の数ほどの英雄共を世に解き放ちし者よ……!!」
「有害なる自由と悪しき渾沌の坩堝にして、穢れし霊の巣窟たるこの「魔界」の地において……貴様は今、私に"試される"……!!」
「階層を手にした魔界の"新参者"が必ず受ける、我等"魔神"による「洗礼」──貴様は、何処まで耐えられるかな……!?」
【バフォミトラがそう告げた瞬間──眼前に立つ約6mほどの魔神は、途轍もなく巨大で破壊的な巨獣(べヒモス)を連想させる程の"圧"を放ち、貴方を圧倒する。】
【それは威圧とオーラによって発生した一種の幻覚じみた現象ではあるが、バフォミトラの発した"圧"は、今は亡き"古き焔"を思い出させるほどに巨大かつ圧倒的であり……自身が越えねばならぬ壁の高さと分厚さを、再認識させるには充分過ぎた。】 - 21英雄登竜門24/11/08(金) 20:00:34
【バフォミトラの発した圧力は安全である筈の観客席にさえ届き、強者は身体を一瞬痺れさせ、そうでない者に悲鳴を上げさせ、明らかな弱き者の意識を奪う。各広場にて中継で見ている者にさえ悪寒を覚えさせる】
【その圧倒的なまで"力"を前にして――】
「ははっ、そうよ! 私が求めていたのはコレよ!!」
【――英雄登竜門は歯を見せて笑う】
【と同時に地を蹴る】
【左手の白銀の槍をバフォミトラの顔面に向けて投擲。そして剣を体で隠すように構え、槍の影と見まごう速度で突進】
(『壁門』……!)
【心の中で唱え、バフォミトラの三方に門が現れる】
【初手、逃げ場を制限した上下同時攻撃】 - 22バフォミトラ24/11/09(土) 10:47:19
【──万物は数である──】
【最初にそう提唱したのは、かの有名なピタゴラスであった】
【数と数比、調和の関係…その奥には必ず合理的、論理的、理性的比(数比)があるとし…】
比(ラティオ)= 数(アリスモス)
+
ロゴス&合理&理性
↓
調和(ハルモニア)
【という「解」になり、世界はロゴス的な数(数比)で構成され、調和していると定義した。】 - 23バフォミトラ24/11/09(土) 10:47:41
【──興味深い事に有害なる無限の"渾沌"と底無しの"悪"を体現し、迷路・迷宮を司る魔神たるバフォミトラもその様な「解」へと辿り着いた。】
【"ダンジョン"という隔絶されたある種の「宇宙」に、合理的かつ論理的に様々な罠を仕掛け、魔物を効率よく配置、特定の法則と規則に基づいてその内部構造を創造および設計する…】
【そして、何も知らずに足を踏み入れた者達の生殺与奪の権を意のままに握り、そして踏み躙る…。】
【これこそが"ダンジョンマスター"にのみ許された特権にして、ある意味において「神」の如き振る舞いと行為であり……】
【彼がそのような経験則と知識から独自の「解」を導き出し、かつそれを戦闘と殺戮に活かすのは至極当然と言えた。】 - 24バフォミトラ24/11/09(土) 10:51:58
(やはり、愚妹(アレシュカガル)と同様の能力……!! そして、逃げ場を制限した上下同時攻撃……!!)
(…戦闘時の奴の構えと間合いを詰める際に発生した移動距離と一連の行動を辺A、所持した武器の殺傷力と破壊力および、武器自体の硬度と威力を辺B、奴が技を放つ際の時間とその距離を辺C…)
(辺Aの際に感じ取れた奴の覇気と殺気から推測される攻撃の想定脅威度を3、辺Bにおいて目視した武器の威力と殺傷力を2、俺に攻撃が達するまでの時間と奴の速度をXとし…)
(バシャールの最終定理を用いる事で3²+2²=C²と解が出される──故に9+4=C²となり、13=C²であるため、C=√13となる。)
(この「解」に観客共の歓声と反応から読み取れる攻撃期待値をaとし、この闘技場内の空間と地形と構造から予測される攻撃到達時間および命中時の威力予想をb────)
【──バフォミトラはこれらの計算を一刹那にも満たぬ速度で演算し…】
(────等の要因から成る計算式により、1^2+1^2=C^2
2=C^2
2=√2
無理数となる。 ならば……!!)」
【彼女の攻撃を如何に受け、そしてどのような反撃を行うべきかという「解」を瞬時に導き出す。】
【そして、「解」を導き出したバフォミトラは、英雄登竜門の攻撃を回避せずに真正面から「3割」の力で受け止め、「1割」の力で攻撃によって生じたエネルギー、そして自身の腰に装着した巻物から自動発動した攻撃呪文を、突如出現した、3方向の門へと放ち……残る「6割」の力を用いて、斧による強烈なカウンター攻撃を英雄登竜門へ直接見舞う。】 - 25英雄登竜門24/11/10(日) 03:43:46
【英雄登竜門の攻撃は防がれた】
【頭を狙った投擲と足を狙った斬撃は受けとめられ、黄金の剣の『邪悪を焼き溶かす力』と白銀の槍の『破邪の光を放つ力』は腰巻きからの攻撃呪文によって相殺され、もののついでに『壁門』すら破壊される】
【そして刹那の間も置かず放たれた斧の一撃は英雄登竜門を吹き飛ばす】
「ちぃっ!」
【勢いを利用して距離を置き、身を捻って闘技場に着地する】
【しかし、身に纏った純白の鎧はパーツ単位で全損していた。この鎧は『パーツ一つ一つが身代わりアイテム』という特性を持ち、それが全損したことから斧の一撃が勝負を決めるに足る威力であったことを証明していた】
(読み解かれて、一瞬で全てに対応された……!)
【瞬間的に下着同然の姿になった彼女だが、瞬く間に深緑色の軽鎧を装備されている】
【そして、その手には一対のダガーが握られていた】
「まったく理不尽ね、バフォ! だから返させて貰うわ!」
【そう言って更に接近。しかし、どちらの間合いの十歩も手前でダガーを掲げる】
【それは、かつてロスレイヴェン攻略戦にて戦ったサハド・ジャン・ジャックモンドのダガー。彼の二つ名は『画家』、その由来は――】
「魔技・題名亡き冥画(パルマリウス)!」
【――対象者の動きを止め、亜空間に閉じ込め、その動きを完全に封じる、この技による】
【しかし、魔神たるバフォミトラにこの世界由来の、それも格下の技は通じるだろうか?】
【答えは否】
【だが、ある条件が加わるとその根底は覆る】
【英雄登竜門が纏う深緑の軽装――それはかつて存在した英雄・《呑み込みの》セルバンデスの物、彼は元々持っていた自身の空の属性、それがあらゆるアイテムに上書きして上乗せされてしまう変異スキルの持ち主であった】
【故に技はサハド、性質はセルバンデス、威力は2人分というあべこべな状況が発生する】
(今度は読み解けるかしら……!) - 26バフォミトラ24/11/10(日) 09:15:17
(この魔技は確か……”鮮血公”の……!? ・・・やはり、こいつの成長速度と学習能力は、我等デーモンと同じか……それ以上!!)
(──だが、悪手だなぁ、英雄登竜門!? ・・・「迷路」と「迷宮」を支配するこの俺に、空間操作系統に属する技など、無意味!!)
【悪手を取った英雄登竜門に対してバフォミトラは、先程よりも単純な計算式によって「解」を導き出し……「10割」の力を用いた近接連続攻撃によって、真正面から受けて立つ──はずだった。】
(…………!? …何故、「解」が0になる!? ・・・・・・一連の奴の動きと攻撃から導き出される計算式なら、この「解」はX=4となるはず……!? )
(……まさか、この俺が予測と演算を間違えた……? ・・・・・・・・・いや、違う!!!)
(……これは……まさか……「技」と「性質」が2つあり………その何れかの片方は………恒常な実体がない「空」………!!)
(……まさかコイツ、超本能的な直感で俺の計算外の「理」からの一撃を────!!?)
【バフォミトラが想定した以上の適応力と成長速度によって、自身の計算と予測自体が根本から”崩される”】
「────これだから苦手なんだ。 ……徹頭徹尾「理解」出来ぬ”奴”はな……?」
【微かな小声でそう吐き捨てると、バフォミトラは二つの威力が上乗せされた超光速の斬撃の嵐をマトモに受け──彼とその周囲の地形と空間が深く切り刻まれる】 - 27英雄登竜門24/11/10(日) 15:55:07
【その瞬間、観客席から。否、ロスレイヴェン中から怒号のような歓声が上がった】
【あの最も古き魔神の一柱がまともに傷を負い、血を流す。今生のデーモンの中で、そんな姿を見たものは数少ない】
【ただし、これからは『これまでは』という枕詞が付く】
【あの新参者は、英雄登竜門はやってのけたのだ。英雄登竜門の理外の一撃を理解した者は、自らもそれを欲するだろうし、彼女に対して懐疑的であった者は既にこの場には存在してないとさえ言える熱狂がここにはあった】
【ごく一部を除いて】
「とりあえず、理不尽を返させて貰ったわ」
【それはVIP席にいる歴戦の強者と、英雄登竜門自身である】
【今の攻撃は、バフォミトラが慣れ親しんだ文化である『魔技』を囮に裏をかいて見せたに過ぎない事は、彼女自身がよく理解している】
「さて、と。そろそろ全力を出してくれるとありがたいわね……本気の10割の力じゃなくて、全力の100割をね」
【まるで油断なく、今度は漆黒の重鎧と黄土色の片手剣と盾を装備する】
(あの程度でバフォミトラがどうこうなる筈ないじゃない……)
【魔技・題名亡き冥画は英雄登竜門も味わった技でもある。いくら上乗せしたとは言え、それでどうこうなる筈がないと確信していた】
「いくらあんたが生まれてから強かったとしても、ずっと苦戦なしに生き残れるほど……この魔界はヤワくないでしょ。
誰が相手でも読み切れて戦って勝てるなら、この世界はあんたが統治してないとおかしいもの。
そうじゃないってなら、いたんでしょ? 超えてくる者が。そして、そいつに負けなかったってことは、あんたにもその先が当然あるのよね?
それとも、長年の平和(ぬるま湯)で全力の出し方も忘れてしまったのかしら?」 - 28バフォミトラ24/11/10(日) 17:18:40
【強烈な斬撃の嵐によって、闘技場の遥か奥へと飛ばされたバフォミトラの全身には、夥しい数の傷跡が深く刻まれており、激しく出血している──これ程の深いダメージを受ければ、並みの強者や神格級存在は殆どが戦闘不能となるだろう。】
【──だが、彼は斃れるどころか、未だ平然とした様子で戦場に立っており、驚愕と感嘆が混じった表情で貴方を凝視している──そして、見る見るうちに全身の傷があり得ない速度で再生し……ほぼ元通りとなる。】
(暫しの沈黙)
「……その防具に宿る力か………大したものだよ、英雄登竜門。」
【そう呟いた瞬間──貴方の眼前から、バフォミトラが”突然消え去り”……”何時の間にか”、貴方の遥か背後に聳え立っていた闘技場の柱の上へと移動しており、そこから貴方を見下ろしていた。】
(観客から驚きの声が上がり、ざわつき始める)
「……アーティファクト類による力添えや単なる偶然にせよ……我等、「魔神」の”領域”に踏み込んでくるとはな?」
【そう呟いた瞬間、また同様の不可解な現象が起こり……今度は何時の間にか闘技場の壁側に移動を終えていた。】
(理解できぬ現象の発生に、再度観客から驚きの声が上がる)
【超光速を越えた移動速度? それとも強力な未知の瞬間移動? 果ては時間停止か?………バフォミトラが見せつけた始めた「力」の一端を目撃した貴方は、何故か全く理解も認識もできない…。】
【──そればかりか、全く未知の強敵と遭遇した時のような、想像を絶する不気味さと底知れぬ不安感が貴方を徐々に襲い始める】 - 29英雄登竜門24/11/10(日) 23:38:37
【たらり、と英雄登竜門の頬に汗が流れる】
(ヤッバいわね……)
【英雄登竜門は密かに感知系の装備《アクセサリー》もつけていたが、何も反応しなかった】
【未知への恐怖が心を侵食するのを自覚する】
(無知は罪、知らないのは私が悪い。それに、知らないことがあるってのは知れる喜びでもあるのよね)
【自覚して、受け入れて、切り替える】
【そもそもがあの域に到達するために、自分がいるのだから】
(とは言っても、距離も知覚も意味をなさないとなると、どうしようもないわね)
【バフォミトラを見つめて、少しの思考。それが致命的な隙だと知りつつ、どうせどう身構えても意味はないのだから、と切り替えてクリアな思考で考える】
(よし。まずは死んでも、意識を失わないことね。少しずつ食らいついて行きましょ)
【既に決まっていた覚悟に加えて、さらに別の覚悟を決める。そして、感知系の装備品を回避と耐久を上げる構成に変えた】
「せいぜい勉強させてもらうわよ、バフォミトラ」
【完全に虚勢ではあるが、英雄登竜門は野心的な笑みを浮かべていた】 - 30バフォミトラ24/11/11(月) 21:42:16
「フフフ……”無知は罪”──お前にしては、なかなか哲学的な回答だな、英雄登竜門。」
「それに……装備を変更して、回避と耐久に重点を回したか。……命懸けの戦闘時において、その決断と変更は出来るようで出来ない…。 流石は、歴戦の強者と言ったところだな?」
【”内心と思考を見透かした”ような声が聞こえた瞬間、闘技場の壁側にいたはずのバフォミトラは、”何時の間にか”また姿を消しており……今度は彼が入場した際の入り口に置かれていた、獅子の像の台座に悠々と腰かけていた。】
「……そう慌てるなよ、英雄登竜門? ……ダンジョンマスター同士の直接的な対決など、まず滅多に無いことだ──今、”この時”を存分愉しもうでは無いか?」
「…それに全くの偶然とはいえ、貴様は俺の「領域」に片足を踏み入れた……。故に不用意に「手札」を晒すのは、賢い者のする事では無く……何より、”獣は狩りに時間をかける”ものだ……。」
「……故に次は、”こうしよう”……!!」
【そう告げた瞬間──英雄登竜門の眼前に分厚い石の壁が次々と現れ、広大な闘技場内を瞬く間に覆い尽くしていく。】
【気が付けば、闘技場内に簡易的な「迷路」が完成しており、只でさえ感知できないバフォミトラの気配やオーラが、完全に消滅する。】
「……ああ、そうそう。一つ、貴様に言い忘れていた。」
「この地盤は案外脆くてね? 大昔、ジュブレクスの配下が地下の領土からここを通じて何度も進行してきた歴史があるんだ。」
「故にジャカルカスの奴は、ここに何も建てなかったんだが……お前はうっかり闘技場を創ってしまったな?」
【何処からともなく聞こえるバフォミトラの言葉に違和感を覚えた貴方が、何気なく足元を確認すると──先ほどの斬撃で細切れになった巻物(スクロール)の一部が貴方に近くに”偶然落ちていた”。】
【本来なら、もう使い物にならないはずの巻物(スクロール)の切れ端──しかし、それは何故か不穏な魔力と光を急速に帯び始めると、自動的に起動を開始──】
【──そして、地面に置かれた巻物(スクロール)の切れ端から、神の領域にまで増強された《火球-ファイアーボール -》呪文が発動されると、核熱の如き熱と業火を放ちながら、破壊的な大爆発を巻き起こす】
「──さぁ、始めようか、英雄登竜門? 簡 単 に 死 ん で く れ る な よ?」 - 31英雄登竜門24/11/12(火) 23:51:38
「っ!! こんのっ! クソ牛――」
【爆発の直前。英雄登竜門が叫ぶが、それは大爆発によってかき消された】
【闘技場全体が揺れ、観客席には悲鳴が木霊する】
【しばしの後、爆発の閃光と衝撃が収まった時、彼らが見たのは赤熱化を通り越してマグマと化した大地。そこに闘技場はなく、脆い岩盤が抜けて数メートルは陥没して、それでも尚、地形に合わせて維持された石壁の迷路】
【誰も息を呑む。そんな中で流動するマグマ以外の何かが動いた】
「ちっ、くしょうがぁあああっ!」
【と同時に女の怒声が響き渡る】
【マグマの中から出てきたのは、一糸まとわぬ裸体の人型――髪が燃え落ち、肌が焼け爛れ、肉が焼け、一部では骨が露出して溶けており、一見すれば女かどうか見極めるのも難しい―が出てきて、天に叫ぶ】
「私は決闘だって言ったわよね! なんで勝負の根底ひっくり返してんのよ! どんだけ、ひん曲がってんのよ! まだ、あんたの角の方が真っ直ぐだわ!! あんた絶対どっかで爆笑してるでしょう! クソがっ!」
【悪態が止まらず、まるでそれに比例するかのように体の再生も止まらない。みるみる内に再生されていく】
【それと同時に纏われたのは、オレンジと茜色グラデーションのドレスと朱色の鎧、そして薄氷色の冠だった】
【あべこべな恐らく耐火耐熱であろう装備を付けて、マグマを気にせず辺りを見回してから、一つ深呼吸】
「スー、ハー……なるほどなるほど。
迷宮でミノタウロスなのがあんたの本質なんだから、全力を出すと自ずと迷宮の主として戦うって訳よね……うんうん、理屈は分かるわ。
ただ、ダンジョンマスターの私に全力でダンジョンアタックしろって、どう言う了見よ!」
【基本的に自由奔放な英雄登竜門であるが、一応いくつかの線引きを有し、自由であるが故に強制されるのを嫌う。気まぐれに付き合うことはあるが、それはあくまで気分の問題である】
【今回の場合、ドツキ回されて叩き潰される覚悟は出来ていたが、意図せぬダンジョン攻略を強制されて相当に頭に来ていた】 - 32バフォミトラ24/11/13(水) 10:29:25
「──おいおい、貴様は何を勘違いしている? 私は"ダンジョンを踏破せよ"とは、一言も言っていないぞ?」
「観客連中……それに占術や念視で遠方から視ている他の魔神共の「眼」が、いい加減うっとおしいのでね?」
「余計な邪魔建てをされぬよう、遮断させてもらっただけだよ──こう見えて……結構"シャイ"なんでね?」
【地獄の光景と化した地下空間の奥から、軽いジョークを飛ばしながら、バフォミトラが姿を現す。】
【先程の《火球-ファイアーボール -》呪文と同様、彼が発動した《石壁-ウォール・オヴ・ストーン -》呪文も、神の領域にまで増強された特殊な代物であり……彼の力によって、テレポート等の転移系魔法や能力による瞬間移動や脱出を封じるばかりか、占術系統の魔法や能力による監視や所在確認等をも封殺する効果が宿っている】
【無論、《石壁-ウォール・オヴ・ストーン -》呪文は、本来ならば中級冒険者が使用する基本的な魔法の一つに過ぎない──だが、彼の強大な魔力と術者としての力量、そして「魔神」としての力が宿ったこの石の壁は、もはやその硬度と分厚さが常識外れであり、アダマンティンやオリハルコン並みの硬度と耐久性を誇る】
【現在、罵声と怒号が飛ばしている観客の視点から見れば……闘技場内は分厚い石壁の迷路で覆われており、両者が如何なる状況にあるのか全く分からない状況にあった】
【──だが、それ以上に一部の観客と貴賓席の客は、"とある事実"に気付く】
【この迷路を更に俯瞰して遥か上空から見ると、意味深なシンボルが記された「古墳」のようであり……これから、
「貴様を葬り去る」という明確な死刑宣告にも捉えられた】
「それに随分と貴様はお怒りのようだが……「魔神」との殺し合いなんぞ所詮、「不条理と理不尽の押し付け合い」だ。」
「今のうちに慣れておく事をお勧めするぞ、新参者(ルーキー)?」 - 33二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 01:43:57
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- 34英雄登竜門24/11/15(金) 23:39:41
「たっく、気になるなら自分の目で見に来なさいよね。おかげで興行としては微妙な感じになっちゃったじゃないの」
【友人に不快な思いをさせた魔神共に文句を言いつつ、その手に握られたのは8つの宝玉が付いた杖とナックルガードの付いた細剣】
「『不条理と理不尽の押し付け合い』、ね。じゃ、まずはソレを堪能させて貰うわ……!」
【杖を振り上げると、共に各宝玉が光り輝き――8つの魔法が大魔法級の属性を放ち、英雄登竜門はその間を縫うように細剣を構えて突進していく】 - 35バフォミトラ24/11/16(土) 20:22:09
(一切の隙と無駄のない流れるような二連続攻撃──これを繰り出せるのは確かな強者の証と言える)
(だが、まだ甘い……!!)
【計算により放たれた各魔法の属性、威力、範囲、効果などを即座に計算しえ終えると、バフォミトラは強力な解呪魔法を詠唱や動作や触媒といった煩わしい全要素を破棄した状態で呪文を光速発動し、「一」の動作を開始】
【そして、続けざまに細剣による突進攻撃を迎え討つべく、彼は先程の攻撃で使い物にならなくなった斧を捨て、純粋な肉体武器による攻撃を選択──爪で引き裂き、角で屠り、噛みつき喰らい、蹄で蹂躪するという攻撃を連続して行い、「二」の動作を終える】
【本来ならこれで充分過ぎるほど致命的と言えるのだが……本気となった「魔神」の猛攻はこれで終わらない】
【肉体武器での攻撃に続いてバフォミトラは、自身の体内に宿る邪気を水に変えて放出……「聖水」と魔逆の性質を有する「邪水」によるブレス攻撃を行い、接近した英雄登竜門に容赦なく浴びせかけ……「三」の動作を終える】
【そして更にバフォミトラは、追撃を加えるべく「四」の動作を開始──ブレス攻撃を終えた後、直ちに身の毛のよだつ破壊的な咆哮を零距離から放ち、地下全体はおろか遥か上の闘技場にまで想像を絶する衝撃と振動が走る】
【更に更にトドメと言わんばかりに、中央の地獄の業火で燃え盛る角から、獄炎で構成された熱線を5つ放ち、英雄登竜門の急所を正確に狙い撃ち……「五」の動作を完遂する】 - 36バフォミトラ24/11/16(土) 20:28:06
【人知の理解と想像を超えた超速度で繰り出される、一連の連続攻撃は一見複雑のようだが、突き詰めてしまえばシンプルかつ単純明快であり、それ故に対処が難しい】
【魔界の地において徹底的かつ効率的なまでの破壊と殺戮を追求し、終わりなき永劫の死闘の末に「武」を極めつくした結果……バフォミトラはこうした「解」へと辿り着いたのだ】
【敵を滅ぼすのに御大層な奥義や必殺技といった"小細工"は不要であり、自身が繰り出す単純な攻撃動作の一つ一つが「"必"ず 敵を "殺"す "技"」であればよいのだと……】
【広大無辺な魔界における一種の「シンクロニシティ」か……大変興味深い事に、彼を筆頭とした他の魔神達も多少の「差」があるとは言え、同じ「結論」に達しており……これ以降、魔神達の直接対決において、この戦闘スタイルが基本となる。】 - 37英雄登竜門24/11/18(月) 00:24:53
【一つ一つが"必殺"。その攻撃を目で追うこと叶わず、本能で避けること叶わず、英雄登竜門の身体は先の大爆発以上に破壊し尽くされ――されど生きている。それどころか】
(す、っ………ご……い、……わっ!)
【人の形すら留めて居ない状態で意識を保ち、研鑽され尽くした攻撃の数々にとても素直に感動を覚えていた】
【徐々に肉体の再生が始まる】
【しかし、その速度は随分と遅い。それこそがバフォミトラの痛撃が英雄登竜門へより深く、芯を抉った証左である】
【彼女は辛うじて潰された胴体に繋がっている片腕――肘の先はない――にバックルを呼ぶ】
【瞬間、そのバックルにあしらわれた彫刻の蔓が具現化し、彼女の足替わりとなり、また腕となって、彼女の身体を起こすと同時にバフォミトラへと攻撃を始めた】
【本来であれば逃げに徹し、再生を待つのが定石であるのだが】
(そ……んな、……の、も……った、いない!)
【彼女は理性でも本能でもそれを拒否した】
【恐怖は無論ある。しかし、それ以上に彼女の心に満ちるのは歓喜であった】
【英雄登竜門は待っていた。全力で挑み、それらを凌駕され、完膚なきまでに叩き潰され、それでも尚挑み続け、成長し、いづれ打ち倒すその機会を】
【――目指す場所に至る為に】
【その心根には、恐らくバフォミトラすら呆れ果てるだろう。そして瀕死の攻撃など、彼にとっては蝿を払うような物であるが当然の如く、手を抜くなどありえない】
【容赦のない"必殺"の連続で、抵抗を丸ごと飲み込んで吹き飛ばす】
(ま、だ……まだぁ!)
【手を変え品を変え、ささやかな抵抗を続ける】
【その度に再生がまるで追いつかないほどに、それでも闘う意思はついえない】
【何度も、幾度も、数えるのがうっとおしくなるほどの"必殺"を味わい――英雄登竜門は「一」を目で追った】 - 38バフォミトラ24/11/18(月) 18:40:57
「…………おいおい、どうした英雄登竜門? 貴様の望み通り、全力の100を出してやったというのに……挨拶程度の攻撃でもう終わりか?」
「…この程度で虫の息になるようでは、魔神との戦いなど夢のまた夢……”鮮血公”はおろか最も若い新参者の魔神にすら到底勝てぬわ!!」
【そう吐き捨てるとバフォミトラは何処からともなく、三日月を模したような奇妙な形状のグレイヴ(西洋版薙刀)を召喚し装備……その瞬間──眼前の魔神の脅威度が更に跳ね上がったことを、薄れゆく意識の中で確信する】
【欠けていて未完成であったパズルのピースが、今完全に埋まったような感覚が貴方を襲うと、本能的にある事実を悟る──今までの戦闘で用いていた斧や肉体武器での戦闘は”遊び”に過ぎず、あの武器を手にした戦闘形態が”本気”であるという事を……!!】
「最早、「魔技」を使う価値も無し………せめてもの情けだ、我が神器「エイザガウル」の一撃で貴様を葬ってくれよう……!!」
【バフォミトラの神器「エイザガウル」(またはアイゼルガウル)──その名の意味はミノタウロス語において、"迷宮の果てに待ち受ける最期の刃"ほどの意であり……この武器を用いるという事は、"逃れられぬ最期"が確定したという意味に他ならぬ】
【眼前の魔神が無言で、エイザガウルによるトドメを振るおうとした瞬間──極限の中の極限ともいえる状態に追いやられた貴方は、避け得ぬ死の最中に"違和感"を覚える】
【──バフォミトラの一連の動きが、異常なまでのスローモーションに見えたのだ──】
【それは「死」へと限りなく近づいた事による錯覚か…それとも、ある種の「覚醒」か…?】
【何れにせよ、魔神の動きを緩やかに一つ一つ捉える事ができた貴方は、彼の奇妙な動きに目が留まる】
【エイザガウルを構え、振るおうと瞬間の微かな動作──”心臓を庇うような独特の構え”である】
【超覚醒した意識と視点で心臓の箇所を詳細に視ると、彼の超速再生でも治せぬような古傷が微かに見える】
【それは彼が若きデーモン・ロードであった時代に、ライバルであったメスタマから受けた傷であり……心臓を抉り出された際に生じたもの】
【恐らく、当のバフォミトラですら認識していない無意識の「癖」……貴方はそれを見逃さなかった】 - 39英雄登竜門24/11/19(火) 22:41:42
【それを「見た」英雄登竜門の】
――ト
【と、胸に小瓶が落ちる】
――シャ
【小瓶はひとりでに砕けて、一滴の雫が彼女の身体に触れた】
――っ
【瞬間、英雄登竜門の体は完全に修復される】 - 40英雄登竜門24/11/19(火) 23:11:49
【ただ治るだけではない。途方もない力が吹き上がる】
【それはいつも登竜門最終関門に到達した挑戦者にかけるエリクサー】
【その原液を下地に彼女が集めたあらゆる薬を煮詰めに煮詰めた逸品。生半可な者が使えば湧き上がる力によって即座に身体が弾け飛び、細胞全てが過剰再生によって死滅する劇薬である】
「感謝するわ。バフォ――」
【僅かな構えの歪み、その隙を突いてグレイブの一撃が振り下ろされる前にバフォミトラの背後へすり抜けた】
「――私のわがままに付き合ってくれて――」
【英雄登竜門はすり抜けた際に、バフォミトラの胸の傷痕に軽くデコピンをしていた。わざわざ欠点を教える様に】
「――だから、借りは返したわよ?」
【やろうと思えば、もっと早く再起不能にできたはずなのに付き合ってくれた"友人"へと感謝の意を示す】
【そして、それまで何も身に着けていなかった彼女の体にとある装備が纏われる】
【樹皮や魔蟲の糸で紡がれた伝統衣装。魔獣の皮で作られ、獣毛で彩られた硬革鎧に篭手と具足と兜。民族的な刺繍が施された外套】
【手に持つのは獣の角から作られたと思われる、直剣と曲刀。更に後ろ腰にはブーメランが下がっていた】
【鉄など一つもなく、赴きはあるものの華美さもなく、これまで出した中で最も貧相と言える装備である】
【しかし、これまで最も力を感じさせる装備でもあった】
―――名を《ロタの装備》―――
【英雄登竜門と名乗る、その者自身の装備であった】 - 41英雄登竜門24/11/20(水) 00:24:35
【ロタが生まれたのは大衝合以前の約3000年前。この世界の土着の民族、その族長の六番目の子としてであった】
【その民族はいわゆる蛮族で、狩猟採集と略奪を生業としており、女でも戦いに身を投じる苛烈な生活を送っていた】
【ロタは幼少の頃より、その影響を受けて大変やんちゃに育ち、書物は英雄譚のみを読み漁り、強き戦士に憧憬を抱き、自身もまた戦士としての才能を開花させていく】
【父たる族長はそんな彼女に大変満足していた】
【なぜなら『強き女が英雄を生む』と、彼らはそう考えていたからだ】
【ロタ自身もいずれ伴侶を得て、英雄を生むのだとそう心に決めていた。そんな彼女にも見合い話が持ち上がる】
【相手は友好部族の長兄で、やや線は細くて物腰は柔らかいものの、次代の族長として相応に思慮深く、既に戦士としては既に一流の域に達していた】
【何よりも彼はロタに一目惚れをして、ロタもまた彼に強烈に惹かれていた】
【二人は時があれば落ち合い、甘い時を重ねていった。いずれ婚姻の契りを交わして、愛し合うことを夢見て】
【しかし、そうはならなかった】
【衝合によってこちらに来た、未知の部族による襲撃である】
【彼ら民族は戦い、そして滅ぼされた】
【多少の生き残りはいたが、それをロタが知るのはずっと先である】
【戦いの最中でロタの婚約者は死に、ロタは捕らわれ、敵の頭目に慰み者にされた】
【しかし、少しして彼女は復讐を果たす。なんの因果かダンジョンコアに触れ、自身がダンジョンコアとなることによって】
【しかし、その代償は大きかった】
――子を、英雄を産み落とせない身体となっていた
【愛する恋人も、家族も、故郷も、夢も全て失った彼女は失意のどん底に陥る事となった】
【されど、彼女は立ち上がる】
【英雄を産めないならば、自ら導き英雄を育めばいい、と。そして、この世界に英雄登竜門が生まれた】
【《ロタの装備》はそんな彼女の源流たる、彼女自身の力の象徴である】
「私の、私たる全てを持って、挑ませてもらうわ」 - 42バフォミトラ24/11/21(木) 13:04:24
(エリクサーによる回復と態勢の立て直しか……!! ・・・無駄な足掻きを!!!)
(小手先の回復など、無駄で無意味で無価値!! )
(最早、計算予測など不要──全力の「10割」で以って、英雄登竜門を屠るのみ!!)
【自身の勝利を確信しきっていたバフォミトラは、獰猛な笑みを浮かべながら思わず叫ぶ】
「──この期に及んで、見苦しい真似をッッッ!!!」
【愛用のグレイヴを用いた必殺の一撃……間違いなくこの攻撃で、勝負は決していただろう──本来ならば】
【だが、振り下ろされたグレイヴに手応えは一切なく…それどころか、眼前にいた筈の英雄登竜門は忽然と目の前から姿を消し──何時の間にか自身の間近に姿を見せると、古傷に触れていた】
「……………………!!!!!??」
【その瞬間、バフォミトラは今までに見せた事の無い、表情と反応を見せた途端──凄まじい速度で英雄登竜門から距離を置き、攻めから守りの構えへと転じる】
【それは先程見せた、驚愕の表情に似ているやもしれぬ──だが、その顔には困惑、同様、焦り…そして何よりも微かな「恐怖」の貌が見えており……絶対的な頂点捕食者として久しく忘れていた感覚を、彼は今思い出していた】 - 43バフォミトラ24/11/21(木) 13:05:00
【──では、彼は何故「恐怖」を抱いたのか?】
【"誰も知らぬはずの古傷に触れられ、かつこの箇所に全力の攻撃を受けていたら……"と想像したからか?】
【否──心臓を破壊された程度で、戦闘不能あるいは死亡状態になるほど、魔神は"やわ"では無い】
【彼が恐怖を抱いたのは…"魔界の新参者と言える存在が自身との初戦闘において、古傷の箇所と存在を見抜いたばかりか、余裕をもって触れた"という事実……】
【そしてもう一つは、英雄登竜門の本質が"英雄を試す者"では無く、"英雄を導き育む"という「地母神」としての側面を宿しているという事実に対してである】
【永年とも言える戦闘感と経験則……そして、彼の歩んだ終わりなき闘争の歴史において、この様な芸当を成し遂げた者は皆無であり……】
【何よりも、彼の生みの親にして魔界の最高神である「太母」と同じ"産み育てる者"の力を、彼は誰よりも畏れていた──自身では到底、理解できぬ力であるが故に】 - 44バフォミトラ24/11/21(木) 13:05:45
「…フ…フフフ…………フハハハハハハハハハハハハハハハッッッ………!!!!!」
「………大したものだよ、英雄登竜門……!! ……俺の予想と計算を二度も狂わせたのは……貴様が初めてだ……!!」
「……そして、その装備が………貴様の"本質"か……!!」
【そう告げると彼は普段の様子に戻り、再度武器を構える】
(俺の本能が確かに告げている──眼前の存在は何れ、「魔神」と並びうる存在であり……己にとって最大の驚異の一つとなる──と……!!)
【そう確信した本来の彼ならば、「友人」という下らぬ肩書や「決闘」という縛りを平気で破り捨て…あらゆる手段と策略を用いて、そのような障害を排除した事だろう】
【──だが、格下同然の新参者に古傷を見抜かれ触れられたばかりか、"情けをかけられた"という耐えがたい屈辱を受けた今……彼の魔神としての絶対的なプライドが、それを許さなかった──】
(……知 っ た 事 かッッ!!! 奴の本気……この俺が正面から打ち砕いてくれるわッッ!!!!!!)
【最早、彼は普段の狡猾さや慎重さをかなぐり捨て……「ミノタウロスの神祖」としての獰猛なる"貌"を剥き出しにしていた……!!】
「来 い!! 英 雄 登 竜 門!!」
「貴様の全身全霊で以って……こ の 俺 に 挑 む が い い!!!!」 - 45英雄登竜門24/11/22(金) 22:37:51
【この決闘】
【もしもラウンドで区切るならば、3つに分けられる】
【最初の闘技場、次に迷宮、そして今】
【闘技場での戦いはバフォミトラの予測を上回った英雄登竜門に軍配】
【迷宮では文字通りの全力を出して圧倒せしめたバフォミトラに軍配】
【そして――】
「いくわよ! バフォミトラ!」
【――最終ラウンドが始まる】
【英雄登竜門は地を蹴った。彼女の纏う《ロタの装備》の効果はたった一つ、『ロタ(英雄登竜門)と共に強くなる』のみ】
【これまでの濃密な戦いで得た経験値が彼女を一つ上のステージに上げた。そして、先の霊薬】
【間違いようもなく、英雄登竜門は今までで最強である】
「はぁあああああああっ!」
【雄叫びを上げながら、これまでよりも最も強い足取りで間合いに踏み込み、手にした獣の角の直剣と曲刀を縦横無尽に振る】
【一見して英雄登竜門がバフォミトラに勝るのは、的の小ささと軽さと小回りの良さ】
【それを活かして、彼女はひたすら削りにいく!】 - 46バフォミトラ24/11/23(土) 20:53:18
「言った筈だぞ……!! そ の 程 度 で は 相 手 に な ら ぬ と な ぁ ッ!!」
【普段の理性や冷静さといった全てをかなぐり捨て、獣性と力を全面に剥き出しにしたバフォミトラの一撃は、極めてシンプルなもの…】
【グレイヴによる薙ぎ払い──ただそれのみであった】
【──だが、そのグレイヴの一撃は縦横無尽に振るわれた貴方の攻撃を一瞬で消し飛ばしたばかりか、彼が闘技場内に創り上げた迷路をも破壊した挙句、この階層の天地を裂いた】
【そして、ロスレイヴェン全域を終末めいた激しい揺れが襲い始め、闘技場内を追っていた結界にも凄まじい衝撃波が走る】
【その光景を見た瞬間、貴方はバフォミトラにし対して本能的な畏怖を抱いてしまった】
【それは純粋かつ圧倒的な力による破壊を目撃したからでは無い──今まで以上に超感覚が研ぎ澄まされていた貴方は──ほんの一瞬”視てしまった”のだ】
【バフォミトラが永年隠していた、忌むべき自身の「本質」を……!!】
【それは……彼の巨獣(べヒモス)じみた暴力的な圧の背後に浮かぶ、憎悪に満ちた「恐るべき異教の神」……「零落せし黒き太陽神」としての”貌"…を…!!】 - 47バフォミトラ24/11/23(土) 20:54:24
「……………!!」
【英雄登竜門に向けて、極めて暴力的な一撃放った瞬間──バフォミトラはふと正気へと戻り、いつもの冷静さと慎重さを取り戻すと、内心において自戒を始める】
(………冷静に……冷静になれ……!!! ・・・狡猾さと智慧を失っては………愚の骨頂……!! 俺は……「過去」の歴史に縛られるつもりは、断 じ て 無 い……!!!)
【自戒を終えると、彼は攻めから守りへと転じ、完全な「見」に徹することで、英雄登竜門の本気の力を再度見極めようとする】
【この決闘を終えるだけなら、先程の状態を維持するだけでいい。それで彼は呆気なく勝利しただろう──だが、そのような力による蹂躪と破壊を用いた勝利は、彼の理想とする勝利とは到底言えない】
【…狡猾さと智慧、そして策略と陰謀によって敵を意のままに翻弄した挙句、全ての策と希望の芽を摘み取り……失意と絶望の底に堕としてから"狩る"──それが彼の美学だ】
【故に彼は「ミノタウロスの神祖」……そしてその"奥"に隠している「本質」を好まぬ傾向にあり……この"貌"を知っているのは、永劫とも言える魔界の歴史において僅か4柱のみ】 - 48バフォミトラ24/11/23(土) 20:55:36
【一つは彼の忌むべき生みの親であり、魔界の最高神たる「太母」…】
【もう二つは、古の時代に「太母」が独力で産み落とした"原始の生ける夜"……彼の姉にして妻であり、同じ魔神たる「アハズ」】
【三つは、自身と同じく「太母」によって産み落とされたオークの神祖であり、ある意味「兄弟」とも言える存在……自身と同じく、最も大神の座に近しい魔神「オーカス」】
【そして最後の4つは、彼の最も信頼のおける側近にして智嚢であり……若い頃の彼と殺し合って、生き延びた数少ない存在……デーモン・ロードの「シルヴェストリ」のみであり…】
【不幸にも彼の「本質」を見てしまった”その他の有象無象”は、一切の例外なく滅ぼされている】
【だが、幸いなことに彼は、この"貌"を滅多に見せることは無い】
【──何故なら、獰猛な戦闘本能と純粋な暴力、底無しの憎悪と怒りによって暴れ狂い、破壊と殺戮と滅びしか齎さぬこの"貌"を、誰よりも忌み嫌っているから】 - 49英雄登竜門24/11/24(日) 21:54:42
【グレイブの一撃を辛うじて回避し、余波で吹き飛ぶ。直ぐ様、顔を上げ】
「……っ」
【バフォミトラの本来の"貌"を見て、本能的に怯んだ英雄登竜門。しかし、それも一瞬の事すぐさま飛びかかる】
(たっく、情けないわね……私も、あんたも)
【だが、同じようにバフォミトラが自身の本質を畏れ、怯んだ事も読み取った】
【「攻」に徹することで己を奮い立たせ、精神の均衡を保とうとする英雄登竜門。対して、「見」に徹する事で己を落ち着かせ、精神の均衡を保とうとするバフォミトラ】
【この数秒の攻防は、真に奇妙なことにお互いの利益のための予定調和に似た攻防であった】
(バフォ……あんたは怖いのね。自分の齎す破壊の末に、何もかもがなくなることを……その先の孤独を)
【恐らくこの心情も読み取られるだろうと確信しつつ、彼女は友人の持つ弱さを憂い、憐れむ】
(でも、あんたは理性を獲得した。そしてこのどうしようもない世界で築き、産み、育んだ……! 己が本質を乗り越え、淘汰し、達成してみせた!)
【英雄登竜門の胸に去来するのは、混じり気のない尊敬】
(だからバフォ。あんたは自分を過剰に畏れる必要はないのよ……)
【目を抉ろうとする直剣の一撃を、グレイブの柄で弾かれた際に大きく離れ、剣を手にしたまま胸に手を置き、一礼してから顔を上げる】
「この魔界に座する神にして大王よ……!あなたの成してきた数々の難業と偉業に祝福を贈ろう!
この英雄登竜門が、数々の英雄を見てきた私が、認める! あなたは誠の英雄だ! 映えある英雄だ! 素晴らしき英雄だ!
あなたの功績は英雄譚として、この世界が滅ぶまで、この世界の隅々まで轟く事だろう!
この言葉を胸に刻み、誇りを抱いてくれるならば何よりの幸いであるっ!」
【純粋なる賛辞の言葉を贈る】 - 50英雄登竜門24/11/24(日) 21:54:57
【バフォミトラ自身が迷宮を破壊したために、再び戦いを目にすることになった観客たちからは何のことかは分からないだろう】
【まるで英雄登竜門がかの神に媚びへつらっているようにも見えるし、神に対して上から目線で称賛を送っているようにも見える】
「……さてと、急に悪かったわね。じゃ、再開しましょ?」
【そんな周囲の困惑なんぞそよ風の如く受け流して、英雄登竜門は友人に、神に、大王に、英雄に挑みかかった】
【腰のブーメランを投げ、右手に獣の角の直剣を、左手に獣の角の曲刀を握り締め】
【――真正面から】 - 51バフォミトラ24/11/24(日) 23:09:42
(無言かつ呆れたような顔で笑みを浮かべる)
「フフフ……!!! 悪魔を憐れむか……!?」
「……相変わらず……生意気な小娘だ………!!!」
【そう吐き捨てるも、その顔には”らしく無い笑み”が見えた──が、それは”ほんの一瞬”】
【──英雄登竜門が小細工無しの真正面攻撃を仕掛けると、一気に豹変し全力の構えと姿勢で護りに徹し始める】
「……おいおい、まさか……!!」 「押されている……!?」 「嘘だろ……!!」 「あの有角公が…!!」
「おい、これならもしや……!?」 「本当にありえるのか……!?」 「まさか……!!」
「「「──あのバフォミトラが……敗北する……!?」」」」
【一連のやり取りを知らぬ観客から見れば、本気を見せた英雄登竜門にバフォミトラが押されているようにしか見えず………そのような驚天動地の光景を目撃した瞬間、闘技場内に動揺と驚愕、そして歓喜と興奮が織り交ざった激しい声が次々と上がる】
【──そして──】
【一瞬の隙を付いた英雄登竜門の一撃が、バフォミトラの頭部に命中し、彼のシンボルとも言える角の一つを斬り落とした瞬間──】
【観客達の興奮は最高潮を迎える】 - 52バフォミトラ24/11/24(日) 23:22:48
「………角を斬り落とされるなんざ、随分と忘れて久しい感覚だ。」
【護りの構えを解いたバフォミトラは、平然とした様子でそう吐き捨てる】
「貴様の力、見定めさせてもらった、実に見事だよ。…これならば、他の魔神……そして、”大いなる意思”も存分に納得するだろう。」
【そう告げると彼は再度、愛用の神器を携え、東方系の秘仏を連想させる奇妙な"印"を片手で結び始める】
「…………先程は「魔技」を使う価値も無しと言ったが……アレは撤回しよう。」
「俺の経験上、貴様の様な手合いは、戦意と心を折るのが最上……故にちょっとした褒美も兼ねて……」
「──我 が「魔技」 で 以 っ て 、貴 様 と の「遊戯」を 幕 引 き に し よ う──!!」 - 53英雄登竜門24/11/24(日) 23:59:55
【角を切り落としたとて、その顔に微塵の安堵も油断もない】
【向かい合った強大なる敵に対し、歯を剥き出して笑う】
「望むところよ! 私の心を折れるもんなら、折ってみなさい!」
【存分に迎え撃つ覚悟で、自身の力を高める】
「――来なさい! バフォミトラ! 決着の時よっ!」 - 54バフォミトラ24/11/25(月) 17:53:37
「…未だ何も知らぬ貴様に、一つ教えてやろう……!!」
「……「魔技」とは、他の世界における「支配領域」とは似て非なるものであり……我らデーモンが宿す罪と性(サガ)…そして"本質"を体現するもの……!!」
「そして何より、デーモン・ロードと魔神を分ける決定的な差は………"自身の司る権能の数だけ「魔技」を行使できるか否か"に他ならぬ!!」
「……嘗て"主なる神"と"それを奉ずる者共"が大いに恐れた、"ミノタウロスの神"としての力……その身を以って味わうがいい!!」
【そう告げるとバフォミトラから途轍もない闇黒の魔力が放出され──】
──魔 技──
「牛 頭 大 神 本 地 垂 迹 縁 起 論(ごずおおかみ ほんじすいじゃくえんぎろん)」
【──「魔技」の一つが、遂に放たれると】
【──闘技場全体はおろかロスレイヴェンの階層……否、「世界」全てが、バフォミトラの力と意志によって意のままに塗り替えられてゆく………!!!】 - 55バフォミトラ24/11/25(月) 17:54:17
【──かくして顕現した"世界"は、正に「地獄」としか言いようが無い──】
【血のように赤い空と永遠の蝕に覆われた天、獄炎と硫黄が燃え盛る地、大気は邪悪な瘴気で満ち溢れ、阿鼻叫喚の悲鳴と絶望の叫びが無限に木霊する……正に"永遠の滅びの場所"】
【脆弱な存在はこの領域に足を踏み入れた瞬間、激しい恐怖と絶望に耐え切れずに死滅するだろう……貴方は本能的にそう確信した】
【──だが、それ以上に目を引くのは、「魔技」を発動したバフォミトラの周囲と背後に聳え立つ、夥しい数の偶像だ】
【周囲にはシンバル、太鼓、トランペットといった楽器を手にした、サテュロスやパーン神を模したような偶像が配置されており、それは本能的な嫌悪感と恐怖を引き立てる】
【──そして、何よりも目立つのは……彼の背後に鎮座する、途方もなく巨大な"牛頭人身の偶像"であった】
【青銅・金・真鍮を模して造られ、全体が不穏な色で錆ついているソレは、胸部に七つの炉がぽっかりと空いており‥‥‥「ミノタウロス」──否、"冒涜的かつ悪夢めいた異教の神"を連想させる】
【……それは先程、貴方が垣間見てしまった、バフォミトラの"忌むべき本質"と酷似しているように思えた】 - 56バフォミトラ24/11/25(月) 17:55:04
【そんなことが貴方の脳裏を掠めた、次の瞬間──背後の偶像が突然覚醒し、貴方を冷徹に凝視する】
【すると──貴方は"何時の間にか"、七つの炉の内の一つに収められており、全く身動きが取れない……!!!】
【それに連鎖するように、炉の外に配置されていた楽器を持った偶像が、「この世の終わり」あるいは「葬儀」を連想させる不気味な音楽をけたたましく奏で始めると、貴方は瞬時に悟ってしまう】
【──今から自分はバフォミトラの「生贄」になるのだと……!!】
【そう察した次の瞬間、炉の内部に異常なまでの熱と肉が焦げるような悪臭が漂い始め……】
【──"牛頭人身の偶像"が、不浄なる神の業火に包まれる──】 - 57英雄登竜門24/11/26(火) 23:58:31
「―――――――ッ!」
【叫び声を上げそうになり、意地で噛み殺す】
【もっとも声を上げた所で、既に肺や声帯すら焦げているのでまともな声も上がらなかっただろう】
【全身を焼かれる。そこまでくると火の熱さは本来痛みとしてしか感じられなくなるが、この炎は痛みですら誤魔化せない程に熱い】
【その上、この不浄の炎は英雄登竜門の身体を蝕んでいくような感覚を感じた】
【彼女にはそれがただの錯覚なのか、実感なのか分からない】
【まるで永遠の様に感じる責め苦を、彼女は耐え続ける】
【耐えに耐え、耐え続――】
(――って耐えてるだけじゃ、ダメ! 何でもいい! 抵抗しないと!)
【弱気になり、受け身になっていた思考を奮い立たせる】
(何か手を! 手を! 手を!)
【英雄登竜門は動けない。この状態でできることは――もう一つしかない】
(英雄招聘門――開門――っ!)
【自身の収集した装備及びその装備に込められた英雄の残留思念を表出して呼び出す彼女の代名詞と言える権能】
【バフォミトラの魔技の中、発動するかもわからないソレを彼女は行使しようとした】 - 58バフォミトラ24/11/27(水) 16:17:13
【必死の抵抗で発動した権能は無事発動し、貴方は炉の内部から脱出に成功──したかの様に思えた】
【だが、黒い獄炎で焼き焦がされる貴方が辿り着いたのは……"偶像内の異なる炉"であり……別の炉へと強制転移されたその瞬間──貴方は"自身の記憶と本質を剥ぎ取られる"ような感覚を味わう】
「──まだ生きていたのか? 殆どの連中は、今ので確実に焼け死ぬんだが……フフフ、中々やるじゃないか? この俺が直々に誉めてやろう。」
「──だが、無駄な足掻きだ──貴様が逃れられる「世界」など、最早 何処にもありはしない……!!」
「…とは言え……その必死の抵抗と足掻きは、中々に一興であるが故……寛大なる俺は、貴様に一つ"開示"してやろう。」 - 59バフォミトラ24/11/27(水) 16:17:50
「この七つの炉は……"とある冥界下りの神話"の様に、現世における「個性」や「記憶」…そして「神力」をも剥ぎ取る性質を宿す……!!」
「…それを知らず、別の炉に足を踏み入れるなど愚の骨頂……。 奪われる「モノ」が更に増すだけだ……!!」
「仮に……もし仮に貴様があらゆる手段を用いて、過去・現在・未来、そして因果律などを改変しようとも……貴様が行き着く先は、この「無間地獄(ゲヘナ)」のみであり……」
「そ の 末 路 は 我 が 贄 だ」
【憐れみと嘲笑に満ちたバフォミトラの声が、内部に木霊すると……闇黒の獄炎は更に火の勢いを増し……】
【先程の戦闘で受けた、神話版《火球》呪文が、"天秤の対にならぬほどの威力と熱"を放出し始め……遂には炉の境界を越えて、外の地獄をも焼き始める】 - 60バフォミトラ24/11/27(水) 16:18:59
【その身はおろか顕現した「地獄」をも焼き焦がす、この黒い獄炎はただただ悍ましく不快であった】
【怨嗟・嘆き・絶望・恐怖・憎悪・狂気・殺意……口にするのも憚られるような、膨大かつ天文学的な"負のエネルギー"が凝縮されたソレは……彼の犠牲者達のモノであろうか?】
【──それとも、バフォミトラ自身が心の奥底に隠している"闇"そのものか──?】
【偶像内と崩壊する「世界」の中でバフォミトラの狂ったような哄笑と、夥しい犠牲者達による「讃美歌」が響き渡る中……徐々に薄れゆく意識と思考の中で、貴方はふとそんな考えが脳裏を過ぎった】
(……潮時だな。…火力を弱めたとはいえ、これ以上は奴のコアを破壊しかねん)
【英雄登竜門のオーラと気配の消失を確信した彼は再度、奇妙な"印"を結び──】
「──かくして、「世界」は"終末"を迎える……!!!」
【自身が構築した「世界」が闇黒の獄炎で焼かれ崩壊すると、一人残された彼は「終の言霊」を呟き──】
【魔技の発動を終了──何事も無かったかのように、彼が元の闘技場へと戻ると……闘技場内の観客達は一斉に静まり返る】 - 61バフォミトラ24/11/27(水) 16:20:54
【──彼らには、何が起きたのか一切理解も認識もできなかった──】
【ほんの一瞬……両者の姿が消失したかのように見えた次の瞬間───英雄登竜門のみが突然姿を消し、先程まで彼女がいた箇所に、影の如く刻まれた焦げた形跡と彼女のダンジョンコアのみが残されていたのだから……】
【だが、彼女に"何が起きたのか"を徐々に悟ってしまった彼らは……最早、熱狂と興奮が一気に醒め、忘れかけていた本能的な恐怖と絶望に吞まれていた】
「本来ならコアをも破壊していたが……あくまで今回は「遊戯」であり、試しの「洗礼」……此度は、慈悲をくれてやろう。」
「それに何よりも……勝負には俺が勝ったが……一切使う気の無かった「魔技」を解禁させた以上、ある意味において貴様の「勝利」だ!!」
「誇るがいい・・・・・・魔界の新しき階層支配者 "英 雄 登 竜 門"!!!」
「新しき"渾沌の申し子"たる汝の覇業は……今ここから始まるのだ!!」
【声高々にそう宣言すると、彼は静まり返った闘技場から堂々と立ち去り……】
「……精々足掻いて見せろ、俺を筆頭とした魔神……そして、あの伝説の「古き焔」を越えたければな?」
【誰にも聞こえぬような小声で、彼らしからぬ激励を行うと、ロスレイヴェンの地から姿を消した】 - 62英雄登竜門24/11/28(木) 17:09:36
【誰もいなくなった闘技場で、ダンジョンコアが転がっていた】
【この闘技場はセントラリア中央冒険者ギルドにある闘技場と同じく、戦いが終われば全て戻る様に設計されている】
【しかし、今それが起きていない】
【設計主である英雄登竜門がそれを行えないほど弱っているからか? 否、それは違う】
【答えは単純。英雄登竜門自身の意思で、その機能を差し止めていたからだ】
――カタッ
【わずかにダンジョンコアが蠢く。それは徐々に大きくなり、そこからはまるで高速で巻き戻るが如く、いつもの旅装の姿で英雄登竜門が復活した】
「あんのっ、クソ牛! まんまと『勝ち逃げ』したわね!」
【ダンジョンコアの基本性質として、得た経験値を元に作り出したダンジョンを補填・拡張・変質・強化する機能がある】
【この基本性質を使うことで、英雄登竜門は自身を強化し続けてきた。バフォミトラが驚く程の成長性と適応力の源はこれである】
【無論、限界知らずの本人の資質も相まっての事であるが】
【それ故に、英雄登竜門は闘技場の巻き戻りでなくなってしまう経験値を惜しんで、自らの力での再生選んだ】
「あー、もう! 悔しい! 負けるのは分かってたけど、めっちゃ悔しいわ!」
【一人残された英雄登竜門は地団駄を踏んでいるが、見る者が見れば彼女が決闘前と比べて明らかに強くなっていることが見て取れるだろう】
「しかも、あいつ! この闘技場のデモンストレーションの締めを私に丸投げしたわねっ! あんたも主役の一人なんだから残りなさいよっ!!」
【本人がいれば『お前の闘技場だろう』とツッコミ受けそうなことを言いながら、一通りキレた後に耳に手をやる】
「ブレイン、聞こえてるわね。後でここの地盤を完全に補強しなさい。とりあえず会場だけ再生。後は結界解除と拡声機能をオンにしなさい」
『了解しました』
【ブレインが答えると同時に地盤沈下してボロボロだったリングがものの見事に再建された。と、同時にリングと観客席を分けていた結界が解除される】 - 63英雄登竜門24/11/28(木) 17:39:27
『さて、みんな聞こえてるわね?
とりあえず、集まってくれた事に感謝するわ。最後はしょっぱいことになって悪いわね。少しでも盛り上がってくれたなら嬉しいわ。
なーんか、私に変な期待してた奴もいたけど……まぁ、現実はこんなもんよ』
【広く伝わる声。しかしその言葉を聞いて、悲嘆に暮れる者はいない。彼女の声にはその言葉とは裏腹に、諦観はなく、むしろ力があった】
『「今」はね。
これは虚勢でも何でもないわ。問題ってのは現状の把握し、これからどう改善していくかよ? このままで終わらせるもんですか、それに私はまだこの魔界で何も成してないもの。
……バフォの妹の部下から、このロスレイヴェンを分捕った? 1年間無事にそれを維持した? この街をここまで拡張させた? バフォからここの支配者として認識された?
そんなのまだまだよ……。
まだ私は何も成してないの。私にかけられた期待ってこの魔界をひっくり返すような変化よね?
今までやって来たのはね、その土台作りみたいなもんよ。
ひっくり返すほど変化はね、これから起こすのよ! 私「達」がね!
私、英雄登竜門は今ここで宣言するわ!
私を含めた魔界の群雄達による「群雄連盟」の発足を!』
【"力"の込められた言葉と、まことしやかに流れていた噂が本当のことだったという"事実"。それから発展するであろう莫大な変化への"期待"に観客席はおろか、各所の広場から歓声と雄叫びが上がった】
『連盟の調停式は後日になるけど、発足式典はこの闘技場を舞台に派手にやるつもりよ! また来てくれると嬉しいわ!』
【それだけを言って、英雄登竜門は闘技場を後にした】 - 64英雄登竜門24/11/28(木) 17:57:47
【控え室に戻った英雄登竜門を出迎えたのは、従者と光球だった】
【2人を目にし、控室の扉を閉めると同時に英雄登竜門は崩れ落ちた】
「登竜門様!」
【従者がその体を受け止める】
「あー……もう、無理。精神的にガッツリ削られたわぁ……。今日はもう、このまま寝たいわね」
『回復には数日必要だと思われます。調印式と式典は10日ほどズラしましょう』
「ブレイン、あんたいつから私の主治医になったの? まぁ、いいわ。そうしてちょうだい……だっるいわ、ほんと……」
『では、予め用意した「連盟」への骨子の説明も布告してよろしいですか?』
「……あの場で軽く説明するつもりだったの忘れてたわぁ。やっちゃったなぁ。それもお願い、正確にね」
『了解しました』
【ここで言う連盟の骨子とは、巨大商業圏の確立と死なない闘技場による限界を超えた死闘によって各々の"壁"を越える為の訓練である】
「あーと、それから……」
「登竜門様。賓客への対応はロスレイヴェンの文官と私、そしてブレインに任せておやすみください」
「うん……、お願、い……」
【それだけ言うと、英雄登竜門は意識飛ばし深い眠りへと落ちていったのだった】 - 65英雄登竜門24/11/30(土) 23:56:24
明日、登竜門側のエピローグ書きます
- 66バフォミトラ24/12/01(日) 08:48:35
(※お疲れ様でした 長々とお付き合い頂き有難うございました こちらも後でエピローグ的なものを書きます)
- 67英雄登竜門24/12/01(日) 19:50:28
こちらこそ一ヶ月もお付き合いくださりありがとうございますm(_ _)m
非常に楽しかったです - 68英雄登竜門24/12/02(月) 19:58:06
【――――バフォミトラの決闘から10日後】
【『群雄連盟』の調印式は闘技場の一室で行なわれた。今のロスレイヴェンには、居城がない】
【支配者たる英雄登竜門が「私、別にずっとここにいるわけじゃないだし、城なんか作るだけ無駄じゃない?」と作ることを良しとしなかったからだ。事実として彼女はこの街にいる時はコンス城塞に入ることはほぼなく好きに街を巡っては思いのままに飲み食いして、そこら辺の宿屋に泊まっているのが日常と化していた】
【故にロスレイヴェンの謁見や歓待や応接などをする施設は、闘技場に集約していたりする】
【100人以上が入れる豪華な部屋の中には、各地の『魔界の群雄』たる猛者が集まっている。彼の表情は様々だが、負の感情を発している者は少ない。せいぜい、この場に嫌いな奴がいるから顔をしかめている程度だ】
「これでヨシ、と……」
【その部屋の壇上にて、英雄登竜門は発起人として最初に調印書にサインをし、それに他の面々も続く。それも滞りなく終わると、再び英雄登竜門はブレインの子機たる光球と従者のビカナを伴って壇上に上がった】
「……、ここに『群雄連盟』は締結されたわ。とりあえずみんな。私の呼びかけに応えてくれてありがとね。まぁ、思惑はそれぞれあるでしょうけど、楽しくやっていけたら嬉しいわ」
【そう言いながら、英雄登竜門は調印書を持ち上げると、それをブレインに渡す】
「保管、頼むわよ」
『心得ました』
「さてと、それじゃあこのまま発足式と行きますか」
【軽く言ってのけた英雄登竜門の一言に場が殺気立つ。あまりの闘気にビカナは自分に向けられているわけでもないのに大きく後ずさりしたくなった】
【皆、事前に英雄登竜門から『ある事』を提案され、それを呑んでここにいる】
「ふふっ、じゃ行くわよ!」
【不敵な、それでいて楽しげに笑った英雄登竜門を筆頭に彼等は部屋を出ていき、そして闘技場のリングの上に集結した】
【観客席はVIP席も含めて超満員で、10日前より遥かに建物の増えたロスレイヴェンの街にも多くの人々がごった返している】 - 69英雄登竜門24/12/02(月) 19:58:17
【闘技場の中にて英雄登竜門は観客に、街の者たち皆に語りかける】
「つい先ほど『群雄連盟』は調印されたわっ!」
【その言葉に歓声が上がる】
「これからは調印に参加した『魔界の群雄』たちの街には私の門を通じて行き来できるようになるっ! 今までより遥かに人や物の行き来が簡略化される一大経済圏が誕生することを意味するわ!
さらにこの門を通じて、有事の際はどこからでもどこへでも援軍が送れるようになる! これは一大防衛圏が生まれたことをも意味するのよ!」
【その言葉に更なる熱気が舞い上がる。しかしそれは次の言葉で少し沈静化する事となる】
「……さて、ここでも問題が一つあるわ。それはこの中の序列よ。私は一応盟主みたいなもんだけど、その存在が絶対ってわけじゃないわ」
【どよめきが起きる】
「この連盟には明確な上下は存在しないけれど、それでもよく知らない相手と組む以上は実力と人となり、そしてどっちが強いのか、誰が一番強いのか、ぜひ知っておきたいじゃない?
それと、一口に強さって言っても色々あるわよね? 個としての対個人の強さ、対集団の強さ、乱戦の強さ。集団としての用兵の巧妙さ、相手をハメる恐るべき策謀の駆使……さらに継戦能力とか瞬間火力とか色々よ」
【英雄登竜門はそこで一言区切り、叫ぶ】
「だから、今ここで諸々を決めてしまうわよ!
これより『群雄連盟』の発足式として、大戦乱祭を執り行うわっ!
とりあえず、ここにいる全員でバトルロイヤルよ!」
【一度静まり返った群衆が爆発的な声を上げる】
【それを皮切りに闘技場にいる全ての猛者が武器を取り、能力を解放し、乱戦に突入した――】 - 70英雄登竜門24/12/02(月) 20:11:47
【この大戦乱は半月以上の期間、多様な形式で様々な勝負が繰り広げられた】
【なにせ殺しても殺されても元に戻る結界が敷かれた闘技場だ。『魔界の群雄』たちは思う存分(無論、奥の手を隠す者はいるが)に力を振るい、互いを知り、互いに高め合った】
【これにより形式に応じて様々な序列が決定すると共に、勝負の中で確かな連帯感が育まれることになり、群雄連盟は連盟として足場を確固とする事となった上に、この戦いの日々の中で、己の限界を打ち破る者も少なくはあるが出始めていた】
【これらによって魔界に置ける群雄連盟の脅威度は、当初考えられていたラインを超えて跳ね上がる事となる】
【尚、多くの序列の中で最多1位はバフォミトラとの死闘を超えた英雄登竜門であったことは言うまでもない】 - 71バフォミトラ24/12/02(月) 21:59:25
【魔界──最深部・シナドの眼】
【”とある目的と計画の為”に結成された魔神達による秘密会議の拠点であり、デーモンすら恐れる魔界最深部の領域内…】
【この闇黒世界に聳え立つ十二の塩の柱の頂点に、「禍悪祟 十二円卓(かおす じゅうにえんたく)」に属する魔神達が一斉に顔を揃えており……】
【円卓の長であり、迷宮・獣・ミノタウロスの魔神”バフォミトラ”が、中央の柱に設けられた玉座に無言で座していた】 - 72バフォミトラ24/12/02(月) 21:59:57
「フェフェフェフェフェ……!!!! ・・・お前さんが角を折られるなんざぁ……”角王大戦”以来じゃないかねぇ……!?」
【──冷酷・欺瞞・ハグの魔神”メスタマ”──】
「……新参者風情に角を折られるなんざ、貴様も随分と老いたものだな……!!」
【──トロル・自然災害・嵐の魔神”ウラゼル”──】
「……油断するべきでは無いとは思うがね、”災禍公”? あの”有角公”が見込んだ新しき”渾沌の申し子”……その秘めたる力と成長速度は、ハッキリ言って未知数だ。」
【──錬金術・変化・発明の魔神”ハーゲンティ”──】
「──"未知数"だぁ………!? 嗤わせやがる……!!! そこのクソ牛共々臆病風に吹かれやがって……!! 」
【──洞窟・爬虫類・トログロダイトの魔神”ゼヴガヴィゼブ”──】
「……………下らな過ぎてどうでもいい・・・・・・・・・・・・さっさと要件を話せ……………」
【──怠惰・毒・粘体の魔神”ジュブレクス”──】
「あら、随分と熱心なのね、ジュブレクス?──魔界随一の”怠け者”が、この会合に参加するだけでも大変な奇蹟なのに、積極的な側面まで見せるなんて……。 ・・・・・・”黙示録”でも近いのかしら?」
【──グール・墓地・死者の記憶と秘密の魔神”アスティルテ”──】 - 73バフォミトラ24/12/02(月) 22:01:34
「──自重せよ、"食屍姫"。…我等は幼稚じみた論争をする為に、顕現した訳では無い。」
【──海洋・畸形・海の怪物の魔神”ダグ=アオン”──】
「そうそう、"魔海公"の言う通り♪ ・・・大体、生意気な"若手世代"の連中じゃないんだからさぁ~、もっと落ち着いて話をしましょうよ?」
【──害虫・束縛・ドライダーの魔神”マズメズ”──】
「……随分と言ってくれるじゃないか…害虫風情が……!! その"奇麗な化けの皮"ごと、貪り喰らってやろうか……!!」
【──暴食・ガーゴイル・廃墟の魔神”ソヴェロン”──】
「……あら、石ころの親玉如きが随分と囀るじゃない………!!」 - 74バフォミトラ24/12/02(月) 22:02:26
「──"静まれ"──」
「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・!!!」」」」」」」」」
「これ以上の無駄な時間の消費は、この俺が許さん──異論のある者は前に出ろ。」
【──天空・有翼生物・誘惑の魔神”パズズ”】
(今まで揉めていた魔神達が、パズズの一声で静まり返る)
「全く、要らぬ手間をかけさせる……!!」
【──魔術・蛇・禁断の伝承と知識の魔神”アブラクサス”──】
(パズズとアブラクサスが今まで黙っていたバフォミトラに視線を向ける)
「──さて、いい加減本題に入ろうか"獣魔王"?」
「此度の議題は……"例の新参者"に関する話だけでは無いのだろう?」 - 75バフォミトラ24/12/02(月) 22:13:54
「──左様──」
「さて、諸君……忙しい身分と立場であるのは、百も承知ではあるが……じっくりと腰を据えて話そうではないか…!!」
「此度の本命たる議題は……来るべき 第 三 次 万 魔 大 戦 についてなのだから………!!」 - 76バフォミトラ24/12/02(月) 22:20:39
【魔界──シオウル内・アントロフォリオ】
「微 睡 を 破 る 鐘 が 鳴 る」
「愛 し き 子 ら よ」
「何 時 ま で 目 を 閉 じ て い ら れ る か な……!?」
【底知れぬ魔界の居城にて……最高神「太母」は不気味な笑みを浮かべていた】 - 77バフォミトラ24/12/02(月) 22:36:44
【魔界──”底(アバドン)”──】
「魔界……そしてその”大いなる意思”というのは、”安定”と”秩序”を決して望みません」
「それは……あの「太母」すらも例外じゃあないのです……!!」
【黒の紳士服を纏い、白のシルクハットを被った胡散臭い優男……”魔界るるぶ”の謎めいた編集長 "ラジクダムンジール"は芝居がかった口調で、延々と独り言を喋る】
「さぁ、これより始まりますは……空前絶後の大いなる下克上……!!」
「魔界の最高神「太母」 対 「禍悪祟 十二円卓」……!!」
「さて、■■■■■?」
「貴方は……どちらが勝つとお思いで?」
「──っと言っても、”封じられてる”んで何の反応もありませんがね!!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!」
【渾沌と狂気は更に加速し……もう誰も止めようが無い】
【──だが、未だ”賽は投げられていなかった”】