『“白いちっち”ってなんだよ

  • 1二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:11:26

    “シャン化”ってなんだよ』

    その一通の手紙を残して親友は消息を絶った。

    八月の話だ。
    その日は昨日以上の降雪量で、町中のみんなが雪かきの辛さに喘いでいた。
    まだ14になったばかりだったおれは父親の言う通りスコップを握り、腰まで積もったフカフカ雪をひたすら側溝に捨てる作業に務めた。それの繰り返しだった。

    はじめは勇ましく脳内に響いていた“ビンクスの酒”も“新時代”も、30分もすれば肉体と精神の疲労によって敢なく沈黙し、気付けばおれは何も考えることなくただ言われるがまま命令をこなす奴隷のようになっていた。

    除雪作業に人の心はいらない。

    おれは一時的に心を持たないパシフィスタとなることで最悪の事態を免れたが、雪の壁に隔たれた通りの向こう側からは「ウア゛アアアアアアアア!!!」と雪に狂わされた八百屋の親父の叫び声が断続的に上がっていた。

  • 2二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:17:34

    何この…本当に何??

  • 3二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:22:32

    南半球…?

  • 4二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:23:12

    どうリアクションしたらいいかわからんから続きはよ

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:24:25

    怪文書?

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:24:29

    一時間もすればこの道も通れるようになるだろうという期待は、突然海上にて発生した時化に影響され発生した大吹雪により失せる。
    おれと父親の雪かきは振り出しに戻ったが、嘆く時間すら惜しいと言わんばかりに雪のハリケーンが近付いていたので慌てて家に入った。

    隣の家の爺さんは屋根の雪下ろしでドジを踏んで逝ってしまった。

    おれの住む島、セッカ・チ島は四季を二日で巡り終える。
    まず一日目の午前に春、そして午後に夏が来る。二日目の午前に秋、午後には冬。三日目の午前はまた春に……時折島の外からやってくる海賊や旅人たちはこの周期についていけず二日ともたず出航してしまう。

    この島の短い歴史においても、このルーティンが崩れたことは無いと言う。
    しかし、最近進んだ研究によればこの島は近々雪にのまれて凍り付くと言う。

    全く正反対の言説を唱えたのはおれの目の前に居るこの男、クラウ・クラブ。
    どこからかふらりと現れてはいつの間にか島に住み着いていた男だ。

    学者だと名乗るその男に最初は好意的だった住人たちだったが、なんでも住む場所を追われたとか政府は我々の命を狙っているとか、口を開けば陰謀論が飛び出すような人間なので、いつしか誰もまともに取り合わなくなったらしい。

    今ではおれとおれの親友でもあるクラブ博士の一人息子くらいしか相手にしていない。

  • 7二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:26:15

    釣りタイトルのクソスレだと思ったのに文豪かよ

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:26:37

    なんか続いたぞどうすんだよこれ

  • 9二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 21:43:41

    「この島は雪に沈む!!いや、雪が島を沈めるのじゃァッ!!!」

    泡を食いながら熱弁するクラブ博士は、かれこれもう三回は同じ話を繰り返している。

    父親のコーヒーが冷める度に淹れなおしている親友はキッチンとダイニングをもう五往復はしていた。
    おれは茶請けに出されたクリームブリュレを頬張りながら適当に相槌を打つ。

    右から左へ抜けていく博士の話にうんざりして、バレないよう横目に窓の外を眺める。
    今朝は満開だった桜が少しずつ散って徐々に絨毯を敷き始めていた。
    時刻を確認するために時計を見れば、あと二時間ほどで正午になるようだった。

    親友がコーヒーを持ち戻ってきたところで、クラブ博士の話もまた振り出しに戻る。

    「この島は雪に沈められるッ!!」
    「その話はさっきも聞いたよ親父」

    コーヒーカップを置きながら笑う親友は島に住む人間の中で唯一この男を見くびっていない。父親がどれだけボケた話をしようが常に穏やかだった。

    穏やかな男はおれの隣に腰掛け、申し訳なさそうに笑う。父に向けた笑顔と違い眉の下がったそれは親友が町の人間に向けて常に浮かべる表情だ。

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 22:02:02

    やっぱシャン化は良いな笑顔になれる

  • 11二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 22:03:53

    『よそ者なのにすみません』

    おれとの初対面時にそう言ってのけたコイツは、その後おれにぶん殴られることによって矯正に成功した。

    島に住む以上盗みでも働かない限り仲間である。

    『いっしょの島に住むんだからそういうの嫌だ』と一喝した時のコイツの顔と言ったら、鼻水と涙とよく分からない液体でグシャグシャに崩れていた。

    その顔を見て爆笑したおれはたまたまその現場を見かけた自分の父親の手によって半殺しにされ、後日菓子折りを持参して謝罪に出向くこととなる。

    しかし無駄な犠牲ではない。

    何故ならおれの骨折と引き換えにコイツは徐々に眉を下げず笑うようになっていったからだ。
    思ってもない謝罪を口にすることも、全て自分が悪いんですと鬱屈した表情も浮かべなくなった。

    安いもんだ、骨の一本くらい。

    あの最悪のファーストコンタクトから親友にまで発展できたのかについては話すとあまりに長くなるので割愛する。

    ハッキリしていることは、おれと親友は生涯の友であるということ。
    そして、おれにとって自称・歴史を求める天才学者クラブ博士の話よりも、ただの料理人であるその息子の話の方が大いに価値があるということだ。

    「ごめん、いっつもこんなんで……」
    「慣れてるから気にすんなよ。それよりマーマン、この菓子美味いなァ!」
    「ありがとう。自信作なんだ、焼く前にちょっとだけジャムを練り込んでてね……」
    「ちゃんと聞かんか貴様らァ!!!」

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 22:09:15

    時々多方面の語録を巻き込んでるのは何なんだ…

  • 13二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 22:09:53

    文豪だ!!囲め!!!

  • 14二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 22:34:52

    クラブ博士が語るには、この島の気候は狂っているらしい。

    ここが偉大なる航路に浮かぶ島でなければ全くその通りである。しかしここは偉大なる航路後半の海、新世界。狂ってるも何も……べつにいーんじゃねェのか?
    非常識が常識とされる海だ。

    たとえそう疑問に思っても口にしてはいけない。
    博士は自分の言論に少しでも異を唱えられたと感じると実力行使に出る。そしてそういうところが他の町民から遠巻きにされている所以でもある。

    「庭の木を見ろ!もう葉桜に変わっている!!
    去年までこの時間はまだ桜の花も咲き誇っていたにも関わらず!!」

    シルクハットを被ったハトのハト時計は10時50分頃を示している。
    そんなことを言われても去年の桜がいつ葉桜になったかなんて覚えてないし、そもそもこの島の植物は一生が速い。桜ひとつとっても蕾から萎むまでがとにかく速い。
    一週間前ならいざ知らず、よく一年前の桜の記録なんてあるなァと半ば呆れてしまう執念深さである。

    「それで、桜が散ったらなにがおかしいんだ?」
    「桜が散るのは当然の事!だが開花から散るまでの周期が徐々に速くなっている……つまり雪に沈むんじゃァ!!!」
    「意味わかんねェよジジイ!!」

    話が進まないと踏んでか、親友が咳払いをひとつして場の空気を正す。
    博士の話。
    おれがまともに聞こうとしてもおれと相性が悪いのか最後まで会話が成り立たない……博士もおれに聞かせる気があるのか無いのか、突拍子も無く結論へ飛ぶからタチが悪い。

    「親父。昨日おれに聞かせてくれた話をしてあげてくれよ、シャクはまだ何も聞いてないんだから」
    「一理あるのぅ。でははじめから話すとしようかの」
    「『ハイ、お願いします』」

    不服そうなおれの口をカパカパと動かしながら声を真似たマーマンが答えた。

  • 15二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 23:30:13

    「最も強い四季はどれじゃと思う?」
    「え?」
    「最も強い四季はどれじゃと思う?」
    「なんだその世界最強の剣士議論みてェな……」
    「直感でいいよ、ほら早く」

    焦れたマーマンからもせっつかれ、渋々意味のわからない質問に脳味噌を使う。

    四季の強さ議論ってなんだよ。

    浮かんだ疑問は置いておいて、やはり強さと聞けばライバルとの決闘やまだ見ぬ強者たちへの挑戦を連想してしまう。

    「夏だと思う」
    「へ〜!どうして?」
    「ギラギラ暑いし一昨日は熱中症で一人逝ったし、あと世界最強の剣士の鷹の目は夏に麦わら帽子で畑作業してるのが似合いそうだから」
    「なにそのイメージ……あと世界最強の剣士は赤髪な?」
    「何を言ってやがる…どう考えても一人でふらっと現れては不定期に海賊船を沈めてる鷹の目だろ、こないだもガレオン船を三隻沈めた記事が出てた!」
    「ナワバリにこもってても実力衰えず、あっちこっち神出鬼没にレベリングしてる鷹の目と互角以上に渡り合える赤髪の方が強いと思うけど?」
    「一番強いのは冬じゃ」
    「「誰だよソイツ!!」」
    「季節の話じゃ言うとるだろうが!!」

  • 16二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 23:31:35

    白熱しかけた最強議論は強制的に打ち切られ、不完全燃焼を抱えながらも異論を呑み込んでやり過ごすしかなかった。

    ここは博士の家で、おれは家主の息子の招待客で、ゲストといえどホストを立てねばならないマナーくらい知っていたからだ。

    「おまえも昨日見たじゃろ、雪嵐」
    「アレは酷かったなァ、せっかく家の周りはスッキリしたのに振り出しに戻され放題だった!」
    「本来ならこの島で発生する雪嵐なんぞすぐにおさまる小さ〜〜いものなんじゃ。それが昨日の冬は異例の豪雪のせいでブクブク肥え太りよってからに!アレほどの被害が!」
    「隣の爺さんが死んだくらいじゃん。しかもアレべつに雪嵐関係無ェし」
    「隣の爺さんとタメの私に気を遣わんか貴様ァ!!!!数少ないゲートボールする仲じゃったんじゃぞ!!」
    「半分ボケてて要介護だった人だよね。おれが雪下ろしに行けてればよかったんだけど……」
    「台風が来りゃ畑の様子を見に行くし川が氾濫すりゃ見物に行くような人だぞ、止めても聞かねー爺さんだったしよォ……」
    「人間誰しも好奇心には敵わぬ!!」

    居心地悪く思ったのか若者によるあの爺さんもうたまらんねん談義を切り上げさせた博士は、話している内にいつの間にか天高い場所に座していた太陽を憎々しげに睨め付けた。

    もうじきセミが鳴き始めるだろう。

  • 17二次元好きの匿名さん24/11/07(木) 23:35:32

    ONEPIECEをベースにしてるとは言えど不思議な世界観で楽しい
    続けよ

  • 18二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:06:09

    「シャクの答えも間違ってはおらん……」
    「え?」
    「冬が最も強い。が、夏も強い。特にここ半年は酷いもんじゃ、間接している季節が割りを食うとる」

    夏が近付くにつれ日差しが強く差し込んできて鬱陶しい。
    察したマーマンが腰を上げるより一瞬速く博士が席を立った。

    おれは何か博士らしくない雰囲気を感じて、太陽の視線を遮るためのブラインドを下ろしながら語る背中を見つめる。

    「まず春が死ぬじゃろう。桜が咲かなくなり、植物が芽を出さず、この島に生息している虫の数が減る」
    「次に秋が死ぬ。木は紅葉せず、冬眠の間も置かず、全てを雪で覆う冬が来る」
    「いずれこの島は四季を失い、最終的には冬島か夏島へと変貌する。残念だが、これが真実である」

    「……なんで?」

    この世界の滅亡でも知らせるような低く嗄れた声は、おれをまるで高名な学者の背中でも見ているような気分にさせ、世界とまでは言わずとも、この島の終わりを告げた。

    「ある日、庭の桜を見ていると一足速く葉桜になっている枝があった。その五日後、そのせっかちな枝は二本に増えていた。

    おかしいと思いここ数年の桜の枝すべてを観察し記録をつけていた。

    記録を付ける間にも島の異常気象は起こり、それは時折死人を伴った。
    虫の大量発生、異常な気温上昇、来たのか来てないのかハッキリしない秋、そして少しずつ、だが着実に増えていく降雪量。
    これらは全て最近に起こっていること。

    私がこの島に来てから今日に至るまで、一度も起きたことの無い現象じゃ。

    この島は秒単位で正しく四季を巡らせている」

  • 19二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:11:30

    な島の中に縮小されてるがやけに耳が痛い話題だな…

  • 20二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:34:55

    「午前零時に桜は蕾を付け始め、正午にそれらが葉桜へすげかわり、また午前零時を迎えては一様に紅葉し、正午になれば枯れ木は雪を被る。

    この島に住んどる者ならよくよく分かっていることじゃろう」

    博士の言葉はひとつを除いてすべて正しい。

    確かにこの島は四季の巡りが速いが、それは寸分の狂いも無く厳正に移り変わるものだ。
    一秒でも早く次の季節が来たなと思ったならば時計の故障を疑え、と常套句にもなっている。

    狂いが無いからこの島に人が住めているし、生物は適応して生存できているし、植物がみのり育つ。
    季節に気まぐれが無いから生きていけるのだ。

    だがそれが狂うとなればこの島に生息する生き物はバッタバッタと死んでいくだろう。
    新たな環境に適応するのがはやいか、世代交代が間に合わず絶滅するがはやいかのチキンレースとなってくる。

    「でも博士、ひとつ間違ってるぜ」
    「なんじゃとォ!!!?私の言論の正当性に難癖付けようってか!!?」
    「ちょっと親父……」
    「博士が来てからじゃねェ。博士が来るよりずっと前から、この島に異常気象なんか一度も起こったことはない」

  • 21二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:44:46

    博士の仮説が当たっているとしたら、この島を捨てるかこの島と心中するか選ばなければならない。

    冷房の効いた室内にいても聞こえてくるセミの鳴き声をぼんやり聞きながら、いつの間にか置かれていたアイスコーヒーに口を付ける。

    博士が居てよかったな、と初めて思った。

    規則正しい島に住んでいるからといって、住人まで規則正しくなるわけではない。
    ある程度の季節差ボケは文字通り“島が治してくれる”ので、四季の移り変わりを時報代わりにしている者も居ると聞く…。

    この島に長く住んでいる者ほど季節に違和感を抱かない。
    まさか島が間違っているなんて夢にも思わない。

    島外の人間は寄り付いたとしてむちゃくちゃな気候についていけず飛び出すように出ていくし、同じ理由で移住を決める人間も見たことが無い。

    少なからず島の外へ出ていく者も居たが、帰ってきた者は居ないらしい。
    十中八九海の藻屑となったか、そうでなければ現地で家族でもできたか、もしくは外の四季に慣れてしまいそこに定住してしまったか。

    島の中で唯一外を知っている住人だからこそ気付けたのだろう。
    そう思うと、この親子は一体どこから来て、なぜこの島に住み着いたのだろうかとはじめて疑問が浮かんだ。

    「でもさ、解決策はあるんでしょ?」

    どことなく沈んだ空気を打ち破るためか、明るい声色で親友はニカリと笑う。

    向かいに座っている博士の後ろにあるホワイトボード。
    その真正面に立ち、おれにとってはラクガキにしか見えない図解や数式をすべて消して、キュポンと蓋を開けたマジックペンを滑らせる。

  • 22二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:44:58

    間違っていたらすまないが
    あんたもしかし梅雨ごろにコンポートに素晴らしい解釈で傑作を書いていた文豪さんか?

  • 23二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 00:46:41

    語り手の名前がシャクなのはシャンク化に関係ある伏線か?
    とりあえずとても読みやすいし雰囲気が良い

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 01:32:13

    >>22

    あれほどに素晴らしい文章は書けぬ…読んでいて涙した…ポロッ

    話の構成力においても敵わぬと聞く…

    しかし私は…さてはコンポート傑作SSの方ではないかと思われたこと…心より誇らしく思います




    「親父が言うには、この島を捨てなくても共存できる道があるかもしれないんだって」

    「机上の空論じゃ……」

    「またそんなこと言って〜」


    あらかた盛り上がって体力が尽きたのか語気の弱い父親を小突き、親友はおれに背を向け何事か綴る。


    …………シ?なんて書いてあるんだ。


    角度が悪いかと体を傾けようとするより親友が書き終わる方が速かった。

    白いホワイトボードの真ん中を整った字が陣取っている。


    「“シャン化?”」

    「そう!“シャン化”!!」


    バン!と音が鳴るほどの勢いでホワイトボードを叩く親友。揺れるボード。

    指に触れられ四角目が僅かに欠けた化の字。


    何を言ってやがる……。


    「あのさ、詳しい実態は判明してないんだけど、でもこの島を救うキーワードらしいんだよね!」

    「まだ確定しとらんわいバカ息子」

    「明るい話があるのに隠すのも変じゃない」

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 01:35:07

    けたけた笑うのはなにも愉快だからじゃない。

    出自故か、はたまた生来の気質かは分からないものの、親友は幸か不幸か人の顔色を読める側の人間だった。

    おれの顔に差した影を感じ取ったのだろう。
    親友の気遣いに気付き申し訳無さを覚えるも、それ以上の感謝の念を抱き親子の会話に参戦する。

    「その“シャン化”ってのがどう島を救うんだ?」
    「いいやまだ仮説も立ってなければ根拠も無いんだ」
    「?……ならなんで島を救えるって分かった?」
    「そんなことすぐわかるだろ?」

    「何故なら父は“歴史の本文”の解読者!!おれ達は歴史に選ばれし子羊!タイヨウの民だ!」

    嫌なスイッチを押してしまったと気付いた時には遅かった。

    アクセルを踏み抜いた親友による父がどう凄いのかなにを成してきたのかマシンガントークをかまされ、話が終わる頃には短針は一周しており、渦中の人物は私室に引っ込んでしまっていた。

    「あ、でも“シャン化”自体はちゃんと存在してるみたいだよ」
    「……どういうモンかも分かんねェのに?」
    「おれもそこが疑問。存在はしてるはずなのに実態が見えないって、質量のある物とは思えない」

    幽霊みたいだ、と続けながらホワイトボードの裏、色々な書類に埋もれた長机を漁る親友。

    幽霊、幽霊ねえ。
    ホワイトボードの“シャン化”をぼーっと眺めながら、探し物をしているらしい親友の大きな独り言を聞き流す。

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 08:33:32

    流れ変わったな

  • 27二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 17:12:48

    変わったというか戻ったというか…?

  • 28二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 17:22:14

    初めスレタイで食わず嫌いしてたけど開いたらなんか思ってたのと違った 続き楽しみ

  • 29二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 18:34:05

    “シャン化”

    どう読むのだろう。
    シャンか、シャンけ、シャンばけ……もしかしてシャンイヒ?

    化ということはそれに化けるということなのだろうか。悪魔の実の中にはそういう能力もあると聞くが、実ひとつで島を救うなんて可能なのか?

    もしくはシャンばけという獣か妖怪の類なのだろうか。そう思うとなんとなく恐ろしげなモンスターの名前にも見えてくる。怪物が島を救うのは絵物語でも王道パターンだ。
    その後受け入れられるか異形を厭われ追い出されるかは筆者次第だが。

    シャンけ、人や魚の名前に思えなくもない。
    おーいシャンケ、ちりとり持ってきてくれ。今年はシャンケが大漁だ、特にこのシャンケはよく身が付いていて美味しいなあ。あまり違和感は無いな……けど人ならいざ知らず魚に島が救えるか?

    シャンイヒ。一番無いな。
    なんだよイヒって、笑い声か?いや、人名ならまだ……イヒ、イヒさん、イヒちゃん、イヒくん、イヒ様。
    バカみてェな名前だな。イヒは無いだろう。さすがに。

    ホワイトボードと見つめ合ううちに、おれの脳裏はシャンで埋め尽くされていく。

    シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…
    シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…シャン…

  • 30二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 18:41:14

    こわい
    続けて

  • 31二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 18:53:35

    「うわあああああっ!!助けてくれえええええええ!!!」
    「えっ!!?どうしたのシャク!?」

    脳裏を埋め尽くすシャン…に怯んで挙げた大声が親友をビビらせてしまった。
    突き刺さる視線は痛いものの、無事シャン…は失せた。

    「いや、ちょっと……ゲシュタルト崩壊みてェのが……」
    「ああ〜時々あるよね、おれもこないだ三時のおやつに悩みすぎてさ。ぼーっとレシピ本眺めてたらずーっとコンポートって文字が頭から離れなかったよ」

    あはは、と笑いながら引き出しの底を開けた親友は目当ての物を見つけたようで、あった!と声をあげ興奮気味に紙の束を手に戻ってくる。

    「これ!これだよこれェ!」
    「どれだよ!」
    「ここ!見て!他のページはほとんど読めないけど、このページだけはなんとか読み取れるんだよ」

    お茶菓子と飲み物を脇に寄せ二人揃ってテーブル中央に置いた一枚の紙を覗き込む。
    細かくて小さい字が並んでいて、これを一人で読むのはキツいな…と思わず怯む文量だった。

    薄らゲンナリしているおれを知ってか知らずか、親友は興奮冷めやらぬといった様子で解説に移る。

    「全体を読んでみて分かったのは、この島には超技術の名残があること。まあこれは前から知ってるよね?」
    「ほかの島には無いんだっけか、冷暖房も自動水やりジョウロも水に落とすと一瞬で紅茶になる茶葉も」
    「そう!ここまで文明の進んでる島は偉大なる航路広しと言えどなかなか無い!」

    「この島は特別なんだ!」

    そう目を輝かせて語る親友の顔は父親とよく似ている。
    外の世界を知らない身としてはなんとも反応に困る話だが、この島の技術力について話す親友はいつも夢を見ている人のようだった。

    「で、そんな特別な島の変貌を食い止めるにはどうすりゃいいんだ」

  • 32二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 20:26:09

    「あ、そうだ……えーっと、それはね…そう!ここに書いてある!」

    紙の端、もっと言うなら右下の隅に、明らかに手書きの文字でそれは書かれていた。

    “島 んぼう”
    “白  っち”
    “かんきょう”
    “シャン化”
    “しま す る?”

    だいぶせっかちな人物が書いたのか、後半に進むにつれ簡単な字すら崩している。崩しすぎて元の字が読めない。
    誰がどう見ても大雑把で読みにくい走り書き。
    だからこそ途中の行が際立っている。

    “シャン化”ってなんだよ……。

    心に湧いた疑問により自然と眉間に皺が寄る。

  • 33二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 20:26:37

    「ね!?シャン化ってあるでしょ!」
    「あるけどおまえこれがどう島と繋がるんだよ」
    「おれが解読してみたところ、
    一行目は“島だんぼう”
    二行目は“白のりっち”
    最後の行はしまをすくえる?
    だと思ってるんだけどな〜……」

    言ってはみたものの納得はしきれていない表情に、つられておれも解読する方へ思考がシフトする。

    「しままんぼうの可能性は?」
    「それも考えたけど、魚の種類をこんな書類にわざわざ書くかなァ?」
    「それもそうか……しまだんぼうって、Dr.ベガパンクが作ろうとしてたあの島暖房?」
    「そう!その島暖房!もしかしたらベガパンクと関係あるのかもしれないと思うと胸が踊らない!?」
    「いや全く」
    「……。白の立地はそのまんま、雪に覆われた土地のことかなあって」
    「博士も冬が一番強いって言ってたしな。確かに」
    「で、トドメの“しまをすくえる?”ここに書かれてることが何かの救いの手なのは間違いない!」
    「まあ無いとは言い切れねェけど……」

    浮かれ切った親友は勝利の美酒かのように自分のアイスティーを飲み干す。
    だらしない表情筋を見せびらかす様から視線を逸らし、目下の書類に目を落とした。

    「で、シャン化ってなんだよ」
    「…………それはおれにも分からないんだ」

    先程までの有頂天が嘘かのように影を背負う親友に呆れながらも、振り出しに戻った気分で並んで頭を悩ませる。

  • 34二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 20:47:15

    >>24

    コンポート文豪をリスペクトしてるけど1も相当な文豪でアラマキ

    最早比べるなんて出来ない程よく出来ている

  • 35二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 21:08:19

    「“シャン化”と言うくらいだからシャンになるって意味なのかな」
    「まずこのシャンってなんだよ、シャンって……人の名前?どっかの地名?」
    「シャンシャンって鳴るのはクリスマスのジングルベルなんだけどねェ」
    「冬に繋がりはするな。でもなんでサンタクロース?」
    「その場合ジングルベル化?サンタ化?」
    「そのどっちでも島は救えねェだろ…いや、何かの隠語か暗号か?」
    「あっ確かに!こんな意味のわからない単語そのまま読み取ろうとする方がおかしいんだよ!」
    「もしかしてもしかするかもな!」
    「じゃあ早速暗号の解読パターンに当て嵌めてって考えていこう!」
    「スパイにでもなったみたいだぜ、テンション上がるなぁ〜ファッファ!」
    「ぐふふふふふ……」

    袋小路に活路が見えた気がして、親友と二人で笑いながら早速解読に取り掛かる。

    結論から言うと、シャン化はシャン化でしかなかった。
    おれ達がやっとそれを認める頃にはひぐらしの鳴き声が夕暮れを告げる時刻となっていた。

    「結局このシャン化については分からずじまいか……」
    「分かんねえモンは仕方ねェ、とりあえず帰るぞおれは」
    「うん……」

    よほど手応えがないことが堪えたのか、親友は見送りの際までどこか上の空だった。それが気がかりではあったものの、おれにも家族がいるので帰らなければならない。

    「じゃ、また春にな」
    「うん、また明後日!」

    明日の雪は昨日ほど降らなければいいな。
    燃えるような夕日を目一杯に浴びながら帰路に着く。

    不幸なことに、おれが親友の失踪を知るのは彼と別れてから八日後のこととなる。

  • 36二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 21:21:06

    おれの願いも虚しく、翌日豪雪が町を襲った。
    積もった雪によってまともに出歩くこともできない状態で、これはもうお手上げだと父と並んで雪の壁を見上げる。
    春と夏に溶かしてもらおうとそのままにしておくにもあんまりにあんまりな量だったので、結局一日の大半を除雪作業に費やした。

    夜になってから詫びを入れようとかけた電伝虫が繋がらないことに疑問を覚えたものの、きっとシャン化に夢中になっているんだろうと思っていた。

    そう思っていたのに。

    親友の家を訪ねた際、暗い目をした博士から渡されたのは震える字が綴られたメモ紙だった。

    『“白いちっち”ってなんだよ、“シャン化”ってなんだよ』

    一人息子を失い消沈する親に対してかける言葉が見つからない。
    テーブルには皺の寄った紙だけが鎮座している。

    ここ数日の雪は降っては溶け、溶けては降りを繰り返した。
    まだマシな降雪量の日かと思えば二日後には倍の雪が降る。
    春夏というインターバルを挟んでも、積もった雪が溶け切る頃には夕日が差しているなんて日も珍しくなく、夏の日差しを浴びる道の脇に小さな雪の山が立っていることも当たり前になってきている。

    春の陽気を感じながら父親と必死になって雪をかいている時、脳裏にはずっと冬が最も強いという言葉が響いていた。

    「このままじゃ冬に殺されちまう」
    「今この島の気候に一番追い付けていないのは植物じゃ。このまま半月も経てば絶滅する種も出てくるじゃろう…一部代替わりは間に合うじゃろうがの」
    「……マーマンはなんか言ってなかったのか」
    「…………私一人分の朝食を置いて、……」

    博士はそこで顔を覆ってしまった。それ以上の言葉を続けることはなく項垂れるばかりだった。

    現在時刻10時30分。
    せっかちな庭の桜は早々に花弁を散らし始めていく。

  • 37二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 21:42:23

    「おう!スンのせがれ!」

    博士の家を出たおれを呼びとめたのは父の友人である八百屋の親父だった。

    この島で博士の次に気候について詳しい男だ。
    野菜を育てるということはとてつもなく忙しなく、息をつく間もないような仕事だから従事者は少ない。この間酒場で休む暇もないと嘆いていた。

    「珍しいなオヤジさん、畑に居なくていいのか?」
    「いい加減ウチの娘婿も仕事を覚えてきたからな、今日は休みにすると決めて出てきた!」

    ゆたかな髭を撫でながら島中に響き渡りそうなほどの大声で豪快に笑う。
    こんなに騒がしい人とあの寡黙な父がどうして友人関係を続けていられるのか、おれは未だに分からない。

    「いやいや、おれのことはいいんだ。お前こそどうした?とんちき博士の息子とティーパーティーの時間だろう」
    「…マーマンとはよ!別の日に会うことにしたんだ。体調が悪いみたいだったから」
    「ああ、近頃はちょっと肌寒い時もあるもんなァ」
    「……なんか、変だと思わないか?冬が強くなってきてるっていうか…」
    「いやァ……?特に考えたこともなかった。豪雪の日ならこれまでも何度か経験したしな」
    「そうでもねェさ!こんなに大量の雪が続いたのは初めてだ!」
    「そのうちおさまるだろ、ちゃあんと春も夏も秋も巡ってんだからよ!そう深刻に考えることでもねェさ!」

    能天気すぎると言い返そうにも、現状島の異常を知っているのも信じているのもおれと博士と親友だけだ。

    昼間からそこら辺をほっつき歩く定職に就かないドラ息子、外からやってきて住み着いては陰謀論を喚くとんちきジジイ、ご近所付き合いはあるも家にこもっていることの方が多い腹の読めない優男。
    信じてもらおうにも厳しい顔触れだ。

    たまには気晴らしに飲みに行こうと肩を組まれ、何も言い返せなかったおれはそのままズルズルと酒場へと連行されるのだった。

    その日の夜は親友を頭から追い出したくて、秋の夜長を言い訳にして、虫の合唱を肴に飲み明かした。

  • 38二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 21:58:24

    ワンピカテ草子並に語録挟まれてて笑うしかない

  • 39二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 21:58:57

    怖い

  • 40二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 22:42:58

    何にもわからんけどとりあえずブクマしたわ

  • 41二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 23:01:20

    フルネームがスン・シャク
    あっ……

  • 42二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 23:02:56

    >>41

    と思ったらまだ父親の名前の可能性があった

  • 43二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 23:12:20

    けたたましいセミの声が頭にこびりつく真夏日だった。

    ぶらぶら釣りでも行こうかと海岸に向かっていたおれを引き止める声。振り返れば、立っていたのは八百屋の娘だった。
    聞けばおれがどうやら落ち込んでいるみたいだから元気付けてやってくれと父から頼まれたと言う。

    「バレないようさりげなく元気付けてやってくれって言われたの」
    「じゃあ言ったらダメだろ!」
    「…そうだった。話しちゃダメだった」

    右手に持っていたうちわで口元を隠す姿に呆れる。このやり取りも数え切れないほど繰り返してきた。
    元気付けてもらうため、ひとまず太陽が照りつける道の真ん中から木陰に移動する。

    額から流れた汗を拭いながら、隣で水筒のお茶を飲んでいる幼馴染へと不服をぶつける。

    「言っとくけどな、別に落ち込んでなんかねェ」
    「ハイ嘘〜。あのね、昔っから悩んでる時だけ海釣り行ってるのバレバレ」
    「気が向いただけだ!」
    「そんなこと言って、どうせマーマンとケンカでもしたんでしょ?シャクって口喧嘩弱いもんね」

    ケラケラ笑って木の根元に座り込む彼女に倣って腰を降ろす。

    本当にそんなくだらない理由だったならいつも通り不平不満をぶちまけて発散できただろう。
    素直に親友の話をするにも、息子が突然失踪したなんて話が広まりでもすれば、刺激を求めている人たちによってどうなるかは明白だ。

    人の出入りが少ない分みんな刺激には飢えている。
    あの人の肩身が狭いのは自業自得だが、あんなに疲弊した博士をこれ以上追い詰めたくはない。

  • 44二次元好きの匿名さん24/11/08(金) 23:52:40

    答えあぐねている時、木漏れ日に反射して煌めいた指輪を見てちょうどいいスケープゴートを思い付いた。

    「おまえこそ、婚約者が居んのにこんなところで男と二人っきりになっていいのか?」
    「バレたら怒られちゃうかもね、相手がシャクじゃなかったらだけど」
    「式は来月だったっけ」
    「そう!春の日差しの中で挙げるの。フラワーカーペットはハデに飾るから楽しみにしていいよ」
    「ああ、だから最近ずっと桜の花弁集めてんのか」
    「そうなの!ほら、あんまり動くなって言われてるんだけど、ジッとしてても退屈じゃない?」
    「いやァ……おれでも夏に出歩くのはやめとけとは思うけどな」
    「大丈夫。ちゃあんと熱中症対策してるもの」

    得意気に笑いながら畑作業で焼けた手があまり目立たない腹を撫でる。

    不意に、式を挙げるより一足先に母になってしまったと笑いながら報せてくれた時のことを思い出す。
    とても幸福そうに生涯の伴侶と並んで微笑む様は、この世に生まれてきた意味を見つけたのだとでも言うように輝いていた。
    あの時のおれは、周囲の祝福の声を真似して中身のないおめでとうしか言えなかった。

    「シャクはさ、いい人いないの?」
    「この島の女たちは魅力に溢れた奴しか居ねェが残念、おれがスーパーすぎて釣り合わねェ」
    「はあ……バカなこと言ってないでさ、いつまでも。このままじゃ一生独り身じゃない」
    「……最近はそれでもいいかって気もしてんだ」
    「ええ?それこそ嘘でしょう。子供もいらないの?」
    「ううん……別にそこまでじゃねェけど…」
    「でしょ。求めてるハードルが高すぎるんじゃない?」
    「でもビビッと来ない相手とそういう関係になっても…」
    「なに言ってるの。こういうのは勢いも大事なの、足踏みしすぎ!」

    親友の話題からは離れたものの、おれ自身が生贄となってしまった。
    知られるよりマシか……そう思いながら幼馴染の話を右から左に聞き流す。
    結局釣りには行けなかった。

  • 45二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 00:03:13

    隙あらば語録挟むスタイルでも除けないレベルのシリアス

  • 46二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 00:07:57

    親友の失踪を知ってから数日後の春、おれは博士の家に居た。
    庭を彩る桜の花とは対照的に博士は一見死んだかと見紛うほどの土気色をしている。一人息子の喪失は彼を別人のように変貌させた。

    おれの家族は父親しか居ない。
    母は物心ついて間もなく逝った。幼いおれは人の死を理解できず、どこか旅行に行ったのかな?とさえ思っていた。
    そのせいか、未だに母の写真を見ても故人だという実感が湧かない。

    今の博士は母を亡くしたばかりの父の姿によく似ている。

    「博士、あのよ……」
    「“白いちっち”をお前に教える」
    「え?……いや、……え…、ハァ?」

    思いもよらぬ発言に面食らってしまい、返す言葉が見つからない。
    とうとう完全に頭がイカれてしまったのだろうか。家族の喪失は自称・歴史を求める天才学者の脳味噌すら蹂躙してしまうほどの衝撃だったのだろうか。

    お互い口を開くことなく、そのまま時が経った。
    時計の針が立てる規則正しい音だけが部屋を支配する。

    なかなか二の句を告げない博士に対しいよいよ本格的に頭の心配をし始めた頃、おもむろに一枚の紙がテーブルに置かれた。
    人体図のようである。マネキンをそのまま模写したようなのっぺりとした人間が描かれている。

    「しかし…その話をする前に、我が子の半生について語らねばならない」
    「……マーマンの…」

    半生。

    人の一生は春と冬に喩えられる。
    二つに割って、若葉から天へ向かって伸び進む時代を春。種子を蓄え安寧の土地に座す時代を冬。
    マーマンはなぜ、海を越えてこの島に根ざすことを選んだのだろう。

  • 47二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 00:09:07

    何このスレ………ええ?

  • 48二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 00:26:23

    「フィッシャー・タイガーは知っとるじゃろう」
    「…マリージョア襲撃事件の?」
    「そうだ。…あの子はもともと天竜人のもとに居った」
    「……え」

    最悪の気配が足元から忍び寄り背中を冷たい汗が伝った。

    「聖地から連れ出されたマーマンは、逃げ出す際同じ船に乗っていた私に預けられることとなった。同じ冒険家だった頃のよしみでタイガー本人から託されたんじゃ。
    私はそれまで勤めていた職場を辞め、あの子を育てられる環境を探した。島はたくさん巡ったが、安住できる土地はなかなか見つからなかった。

    ある時、目的の島へのエターナルログポースを紛失してしまい、この物資量では近場の島を目指すにもまず食糧が持つかどうかという危機に陥った。
    予定していた航路の半分を過ぎとったから、そこから別の島へと舵を切るには手遅れじゃった。
    あわやここまでかと膝をついた時、波の狭間からこの島の影を見つけたんじゃ。

    海図に乗っとらん島は私たちのような訳アリには好都合。抵抗されれば力尽くででもどうにかしようと思っとった。
    しかし、最悪の事態は訪れず…住人はヒレのあるとんがった歯を持った子供を人間として扱ってくれた。私の顔も知られておらず、政府の追手の心配もしなくていい。四季の周期などさしたる問題ではなかった。

    私たちはここに根ざすことに決めた」

    親子の人生の春はまるで吹き荒ぶ春嵐だった。芽を伸ばすことさえ難しい春風に吹かれながら生き延びてきた苦労は計り知れない。
    計り知れなさすぎる。想像の範疇を容易く越えた話は一気に受け止めるには壮大で、そして脳で処理するには膨大過ぎて、おれの口からは当たり障りのない言葉しか出せない。

    「なんでこの島にやってきたのかは分かった。けど……それなら尚更、マーマンは外に出て行っちまって大丈夫なのかよ」
    「なにを言っとる。あの子は島の外になぞ出とらん」
    「ハァ?だって失踪したんだろ?」
    「失踪したなぞ言うとらんわ!」
    「死にそうな顔で息子が消えたって言ってたじゃねェか!」
    「……それは」

    博士の言葉を遮るようにして、意識の外から見知った声が飛んできた。

  • 49二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 01:27:45

    「あれ、来てたんだ。ごめんよ出迎えられなくて」

    ソファから飛び上がり声のするほうを見れば螺旋階段の途中、親友が立っていた。
    声も口調もマーマンその人である。
    だが、その姿はかつての親友とは異なっていた。

    「マーマン……?どうしたんだ、その目の傷…肌もちょっと焼けたか?あと、首がやけに太くねェか?」
    「首に突っ込まないでもらおうか」

    地雷を踏んでしまったのか鋭い声がおれを突き刺す。思わず居住まいを正してしまうほどに迫力のある一声だった。首や傷跡以外はあの頃のマーマンと変わりないのに、その二点が加わるだけでまるで別人に見える。
    とてもあの穏やかな親友から放たれたとは思えない。

    「あ、ごめん……いや、てっきりどっか別の島でも目指して出て行ったのかと思ってたからよ!よかった!心配したんだぞ!?」
    「ごめんね、馴染むまで結構かかっちゃってさ……」
    「……?」

    さっきから会話が噛み合っていない気がする。
    困惑する俺をよそに、マーマンは晴れやかな表情で階下へ下りてくる。
    本来なら駆け寄って憎まれ口のひとつでも叩きながら無事を喜ぶはずが、異様なオーラによって近付くことすら躊躇われた。
    おれの戸惑いを知ってか知らずか、座っていた博士がおれを背に庇うようにして息子に向かい合う。

    「マーマン。シャクを悲しませるようなことをするなと言ったじゃろう」
    「親父、首を突っ込まないでもらおうか。おれはシャクと話すためにわざわざ降りてきたんだ」
    「おれと……?」

    博士の肩越し、以前は無かった三本線の傷跡が走る左目がおれを射抜く。

    「シャク、お前もシャンクスになれ。そうすればおれとお前だけは助かる」
    「なにを言ってやがる…」
    「……やっぱりそうだよね。応じてもらうには一から説明しないといけない」

  • 50二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 01:53:12

    >>お前もシャンクスになれ


    ???????????

  • 51二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 02:28:46

    ここまでワンピの世界観に則っておいてシャン化は本当にシャンクス化なのかよ

  • 52二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 09:14:13

    何だろうこの
    俺は一体何を読んでいるんだ…

  • 53二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 09:55:03

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 09:57:23

    悲しげに目を伏せる親友に対し、湧き上がるのは心配よりも恐怖だった。
    なにか異常なことが起こっている。それだけは理解できた。

    「私の口から説明しよう」
    「親父」
    「待ってくれ、ちょっと一回待ってくれ!どうしてそう一気に言葉の洪水をワーッと浴びせに来んだ!?」
    「そうじゃな、まず、MADSという組織について……」
    「聞けよ!!」

    頭にコブを五つほど乗せた博士は、おれとマーマンの向かいに座って経緯を話し始める。

    かのDr.ベガパンクが過去に在籍していたMADSという研究チーム。彼はそこで血統因子なるものを発見する。

    チーム解散後、政府の膝元で研究を進める彼が特に手を掛けたのは血統因子による“本人の再現”。
    血統因子を用いることで、打ち込まれた側の人間を因子の持ち主その人に作り替えようという研究内容。

    しかし人間ひとりを別人にすげ替えるなんて無茶はなかなか実現せず、数々の功績を恐るべき速度で残していくベガパンクにさえ達成することは容易くなかった。

    数々の功績の裏で山ほど生まれていった“失敗作”たちの一部はベガパンク自身の計らいにより、日の目を見ることなくどこかの無人島に棄てられ続けたらしい。

    「おそらくここがベガパンクのゴミ捨て場であり、その中に血統因子に関する“失敗作”も当然混じっていたのじゃろう」
    「島にある自動水やりジョウロや水に落とすと一瞬で紅茶になる茶葉もか?」
    「おおかたどこでも虹を架けられるジョウロや水に落とすと一瞬でコーヒーになる豆粒でも作ろうとしとったんじゃろ。あの男は度を越した完璧主義のきらいがあるからの」
    「ていうかやけに詳しくねェ?」
    「昔に職場が一緒じゃったんじゃ。話こそしなんだが」

  • 55二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 10:56:31

    そこで一息つき、コーヒーを啜る。
    淹れたのはマーマンである。親友を横目で盗み見れば、異様な威圧感を発揮しながら父親の顔を見つめていた。

    「じゃあ、マーマンのこれもベガパンクの失敗作によるものなのか…?」
    「十中八九そうじゃと睨んどる、血統因子に関する研究の過程で生まれた副産物か失敗作か……」
    「どっちだっていいよ。どの道おれにとっては幸運だもの」

    口を開けば異常な存在感がより増す親友の首は先程より太くなっているように見える。見る角度が悪い、と自分を納得させ紅茶を飲むことで気を紛らわせる。

    「マーマン、何度も言ったが成功作でなければどうなるか分からんのじゃ。打っちまったモンは仕方ねェといえど」
    「おれはこの島に恩義を感じてる。漂着した島にこんなおあつらえ向きな物が転がってたなんてタイヨウの導きとしか思えないよ」
    「なあ。さっきから思ってたんだが、マーマンは何のためにそんなモンを……」

    おれの発言を受けてマーマンが立ち上がる。

    「じゃあ、解決策について説明しようか」

    向かいに座っている博士の後ろにあるホワイトボード。
    おれにとってはラクガキにしか見えない図解や数式をすべて消して、キュポンと蓋を開けたマジックペンを滑らせる。

    “シャンクス化”

    ホワイトボードに書かれた文字を指しながら、マーマンはおれに向けて説明を始める。

    マーマンの打った失敗作は某四皇の因子を使ったものらしい。
    血液でなくとも、髪や爪でも血統因子としての役目は果たせる。
    どこから手に入れたか、いつ手に入れたのか、そもそも大海賊ともなると近付くことすら容易じゃないだろうに。ベガパンクの研究への執着心は天井知らずのようだった。

  • 56二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 11:07:45

    「おれはシャンクスと化すけど、その代わり強靭な肉体と人間性の喪失を得ることができる」
    「喪失を得る?」
    「簡単に言っちゃえば人間じゃなくなるんだ、機械になるって意味じゃなくてね。その人個人の特徴が消え失せて、生殖機能がなくなる」
    「じゃあ、お前も…?」
    「おれはまだそこまで進んでないよ。でも、いずれそうなる」
    「いつ打ったんだよ、そんなモン」
    「最後に会った春の、たしか次の日だったかな。雪がひどかっただろ?
    雪下ろししようと地下にスコップ取りに行ったら木が腐ってたのか床が抜けてさ。地下室の更に下の物置に落っこちたんだ。よく分からない機械がでたらめに置き捨てられてるそこで見つけた」
    「面倒がらずさっさと補強しとくんじゃった」
    「おれにとっては幸運だよ、これで島が滅ぶ可能性は減るんだ」

    父親のぼやきを野次としていなしてマーマンはおれを見つめる。

    「四季が狂うのは止められない。この島の気候自体が失敗作なんだ、きっと島暖房を作ろうとしたら六時間ごとに季節がリセットされる失敗作でも生まれたんだろうね」
    「異常気象なんかじゃないんだ、この島はもともと夏島もしくは冬島だったんだよ」
    「そんな急激な変化についていける生き物はいない。移住するにも、それこそ異常気象だらけで海賊蔓延る新世界の海をどう航海していくのかって話だよ。このままじゃ心中になる」
    「だからシャン化して命を繋ぐんだ!少なくとも全滅は避けられるし、この島の文化や伝統は失われない!」
    「人間死んだら骨だけなんだよ、おれ達だけでも何としてでも生き延びないと」

    親友の考えは理解した。

    たしかに島の住人全員が死に絶えるより、細々とした人数で歴史を後世へ繋いでいくほうがマシなのかもしれない。
    マーマンのような考え方を否定する気は無い。きっと賛同する人もいる。
    だからその結論に至ること自体、おれは構わないが……そんなに早々と希望を捨ててしまってもいいのだろうか?

    それにひとつ気掛かりなのは、不自然すぎるほど話題に挙げない父親である博士の存在だった。

  • 57二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 11:20:02

    「けどよ、マーマン…それならどうして博士じゃなくておれに打とうとしてんだよ」
    「それは…」
    「老い先短いジジイは見捨ててよし!!」
    「いくら言ってもこの調子なんだよ」
    「そもそも私はそうまでして生きることにしがみつく気になれんわい。親族も故郷も歴史の闇に消え失せた私にとって、この島が第二の故郷なんじゃ…ここが死ぬというなら、私も殉じるまでよ」
    「親父はポーネグリフを読める貴重な学者だ。逝かせるには惜しい…それを抜いてもぼくの父親、本当なら生きててほしいんだ。雪かきの休憩中に何度もぶつかったよ、けど親子喧嘩に発展してもダメだった……おれにこの傷を負わせたのはおれの父親だ…今…!!疼くのはこの傷だ…!!!」
    「けっこう最近に付いたんだな」

    目の傷を指差しながら凄む親友。迫力は十二分だが原因が親子喧嘩となると泊が足りない気もする。

    「私も怪我なぞさせたくなかった。じゃが応戦するのに精一杯でな、親として情けないわい…」
    「今のマーマンって一応シャンクスの幼体なんだよな?強すぎねェ?」
    「素体が箱入り息子じゃ完全にシャン化するまで実力を発揮しきれんのじゃろう」

    博士の秘めたる実力に思わず戦き、今後はナメた口を聞かないようにしようと胸に決めた。
    話しすぎてかわいてしまった喉をすっかり冷めてしまったコーヒーで潤す。
    この話を照らし合わせた今、あの殴り書きに書いてあった内容も察せられた。

    “島だんぼう”
    “白いちっち”
    “かんきょう”
    “シャン化”
    “しまにすてる?”

    カラになったコーヒーカップを置くとのっぺりした人体図がおれを見つめている。

    「とりあえずまだ分かりきれてないけど分かった……で、“白いちっち”ってなんなんだよ」
    「私が考えるに……おそらくは人の脳漿でないかと思われる」

    博士の枯れ木のような指先がのっぺらぼうのハゲ頭を差す。

  • 58二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 11:21:22

    すごい話になってきたぞ(今更)

  • 59二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 11:32:43

    けっこう最近に付いた傷でダメだった

  • 60二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 11:55:07

    「オ゙ェ……」
    「シャン化に限らず、人体の物理的な作り替えは脳にもダメージを与える。だからこそ成功しなんだのだろうが…」
    「幸運にも、この失敗作はきちんとおれを作り替えてくれようとしているよ」

    仔細を語られれば語られるほど、親友の変化がおぞましいものに見える。

    見た目がシャンクスになっても、まあ中身がマーマンならいいじゃないかと思っていたが、世界最高峰の頭脳が生み出した研究成果に対し考えが甘かったのかもしれない。

    「おれの考えは理解してくれたよね?この島で最も信頼してるのはシャク、お前なんだ。環境に慣れるまではサバイバルかもしれないけどお前となら上手くやっていけると確信してる」
    「いや……おれはシャンクスにはならない」
    「……え?…どうして……」
    「まだ人生の青春時代を味わってるところなのにいきなり20年分大人になるとか嫌だし、万が一顔を見られたら海賊や海軍に狙われまくって赤の他人なのに追いかけ回される羽目になるかもしれないし、そんなのは御免だ」

    おれの指摘により豆鉄砲を食らったハトのような顔をする親友。
    ちょうど正午を告げるハト時計がクルッポー!と鳴いた。

    思い出したように窓の外を見ると陽炎が揺らめいている。
    ブラインドを下ろそうか立ち上がりかけるもそれは親友の声に遮られた。

    「で、でも…そんなことより生き残る方が大事だよ…」

    喧嘩を売ったつもりだったからてっきり怒声が返ってくると思ったのに、その声は僅かに震えていた。

  • 61二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 12:04:14

    「その“生き残る”ってのも疑問なんだよ」
    「え?」
    「島の文明を遺すってんなら、それこそ博士や町には史官紛いのことしてる人だって居んだから。そういう人を優先すべきじゃねェか?」
    「……」
    「抵抗されたってシャンクスなら問題ないだろ、博士のことだって無理矢理襲っちまえばよかったのに……いくら元が箱入り息子といえどそれができる力は付いてるはずだ。シャンクスの幼体だしな。
    おまえにだけ傷があって博士には掠り傷の一つもないのは、父親を想って実力行使に踏み切れなかったんだろ」
    「……違う」
    「違わねェよ。おまえは優しいやつだ、父親が望まないことを無理強いしたくなかったんだろ。そんなことしたら、おまえを過去に虐げてきた天竜人の連中と同じに」
    「違う!!!」

    つんざくような声がその場の空気を張り詰めたものへと変えた。
    今まで聞いたこともないような声量で、なのに風邪で枯れたような声に面食らう。

    俯いて顔の見えない親友の様子に、おれは遅れて勢いのあまり口を滑らせてしまったことを理解した。

    「いや、ごめん、違ェ…!ごめん、いまのは配慮がなかった、おまえにかけていい言葉じゃねェ。本当にごめん」
    「おれは奴隷じゃない」
    「そうだよな、分かってる。おまえはこの島の人間で、博士の息子で、おれの親友だ」
    「イヤ、おれ達は魚じゃない。人間だ」
    「?……ああ、人間だ。当たり前だろ?」
    「こりゃあ…いかん……!!」

    ガキの口喧嘩に沈黙を貫いていた博士が口を開く。
    冷や汗を垂らして瞳孔の開いた目は揺れ動きながら親友を見つめている。
    見たこともない形相にぎょっとするより博士が動くのが速かった。

    「シャク!お前はもう帰れ!!ここにおってはいかん!!」
    「は!?いや、待ってくれ、たしかに今のはおれがわるかったけどマーマンを放っとけねェよ!!」
    「もうお前の知るマーマンではない!!このままじゃお前まで覇王化してしまう!」
    「覇王化ってなんだよ!!!」

  • 62二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 13:12:27

    おれ達は魚じゃないでダメだった
    そっちの語録も出るのかよ

  • 63二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:04:29

    「説明しとる暇は無いッ!!いいからはやく」

    言葉の続きは獣の咆哮に遮られる。

    「あああああああああああッ!!!!」
    「マーマン!?」
    「まずい!激情に引きずられシャン化が歪に進行しとる!!このままではマーマンが危ない!!」
    「そんな、どうすれば……!!」

    「てめェら…!早く逃げやがれ!」
    マーマンの悲痛な叫びが部屋に響き渡る。
    Dr.ベガパンクの生んだ失敗作、シャンクス化。既にマーマンの症状は首が太くなり、顔に傷跡が出るステップまで進んでいた。
    それが見る見るうちに髪の半分は燃え上がるような赤色に染まり、服装まで首元の空いたシャツと特徴的なステテコへと変わっていく。
    「マーマン!お前を置いて行けるか!」
    父親は手を伸ばしキッド(息子)を救おうとする、しかしキッド(息子)はその手を払った
    「ぐっ…!おれはもう半分以上赤髪になっちまった…!いずれ思考も赤髪になるだろう」
    親友の変わり果てていく様に思わず目に浮かぶ涙。
    「マーマン!声が!」
    マーマンの声はもう池田秀一になっていた。
    「ここはおれが何とかする!だからお前らは!うぐっ…!がっ!あああああああああああ❤︎」
    マーマンの左腕から白いちっちが吹き出る。
    「マーマン!?なんであんなところからちっちが!!」
    「身体の急激な変化についていけとらんのじゃ!!腕から脳機能の一部が飛び出すなぞありえねェだろ人体の構造上……!」

    バリバリと空気を割るような音がして、黒い稲妻が走る。
    あまりの衝撃に博士と揃って吹き飛ばされ、床へと打ち付けられた。

    痛む身体を抑えながら起き上がる。めちゃくちゃになった部屋の中央、完全にシャンクスと化したマーマンが呟く。

    「覇王化をお前に教える」

  • 64二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:17:11

    成ったか……

  • 65二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:17:16

    見慣れたテンプレートに行き着いた時のカタルシスが凄い

  • 66二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:30:49

    「マーマン…!目を覚ませ!!おまえはシャンクスじゃない!!」
    「シャク。お前も早くシャンクスになることを勧める」
    「いやだッ!!!!」

    あんな変化を見せつけられた今ではますますシャン化への抵抗と嫌悪が増す。
    そんなこと普通なら分かりそうなものを、それでも促してくるのは、おそらくもうまともに脳味噌が働いていないのだろう。

    「そうじゃ、息子よ…!意識までシャンクスに引っ張られるな……!」

    よろよろと博士が起き上がる。老体に鞭打ってでも子の為に立ち上がる姿は歴戦の勇士のように勇ましい。

    「親父。邪魔をするなら斬り伏せることを教える」
    「刃物なんぞ包丁しか握ったこともないくせに…やれるもんならやってみんか!!」
    「やめろ博士!本当に危ねェ!!」

    制止を振り切り親は叫んだ。

    「私は兄弟も友人も故郷さえも捨てて今まで生き延びてきた!とっくに死んでいたはずの命なぞ今更惜しくないわい!!」
    「……そうか」
    「オイ!やめろマーマン!!何考えてやがる!?馬鹿な真似はよせ!!博士も早く逃げんだよ!!」

    サーベルを抜く息子とそれに真っ向から立ち塞がる父親。
    止めたくても、初めて見る人を殺すための道具を恐れた身体は震えるばかりで動いてくれない。

    あんなに仲が良かったのに。とんちきな父親とそれを呆れながらも支える息子。おれからしたら理想の親子だった。

    振り上げられた凶刃が光に反射して煌めいた。

    「やめろ!!博士が死んじまう!やめてくれェ!!!」

  • 67二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:44:00

    このレスは削除されています

  • 68二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:46:50

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 19:50:19

    親友が凶行に走る瞬間を見たくなくて目を瞑る。
    一瞬の静寂のあと聞こえてきた呻き声は、老人のものではなかった。

    恐る恐る目を開けば、サーベルが突き刺さっているのはマーマンの方だった。

    「ッマーマン!!腕が!!!!」

    叫んだのはおれか博士か。負傷した本人よりも悲鳴らしい悲鳴があがる。身体から離れた片腕とともに崩れ落ちるマーマンを支えるように傍らに膝を着く博士。
    その顔は勇士などではなく、ただ子を心配する親の顔をしていた。

    ゼェゼェと苦しそうな呼吸、脂汗。

    「マーマン……」
    「…どんな理由があろうと、おれは友達を傷つけるやつは許さない……!!シャクの心に傷をのこしたくない…!!」

    シャン化の進行によりマーマン本来の思考はもう失せていた。
    父親を傷つけることに抵抗を覚えるのではなく、あくまでシャンクスの思考に則って物事を考えている。
    とても、あの父親想いの穏やかな親友とは思えない発言だった。
    博士の目からは滂沱の涙が流れ落ちる。

    「シャク、頼みがあるんだ……」
    「このままじゃ友達を傷つけるモンスターになる。その前に……お前が」

    床に転がるサーベルを見つめる。

    血に塗れ鈍い輝きを放つ凶器を手に取って、マーマンを見ても、親友の輪郭はぼやけてもはやまともに映らない。

    泣く赤子をあやす親のような笑顔でマーマンは言った。

    「さぁ、早く殺しておくれよ、親友」

  • 70二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 20:16:29

    八月の話だ。
    脇道に積み上げられた雪は、燦々と惜しみなく降り注ぐ太陽の光を受けてあちこちの地面に水溜まりを作っていた。

    母親のために摘んだひまわりが腕の中でそよ風に揺れる。

    流れる汗が睫毛を越えて目に染みた。瞬きの度に流れる涙を何度か拭いながら、あぜ道を抜けて石畳の街路へ戻る。

    「シャク!」

    同じくひまわりを抱えた酒場の飲み仲間がおれを呼んだ。おれも日を除けるべくそっちに向かう。
    二人で摘んだ分を合わせれば立派な花束が出来上がりそうだ。

    「よう、今日も暑ィな。年寄り連中は外に出りゃひっくり返りそうだ」
    「ここ二、三日はセミも鳴かないほど気温が高いからな、さっさと戻ろう」

    そのまま並んで取り留めもないことを話しながら歩く。

    この一年で島は変わった。
    最も変わった点は、周期が二日で巡らなくなったことだ。

    春に咲いていた花木は減って、街路沿いに植えられていたチューリップやスズランはひとつ残らず枯れ果て島から彩りが少し消え失せた。

    夏の直射日光が強すぎて浴びると肌が痛むので、少しでも外を歩こうものなら通気性の良い上着と麦わら帽子を手放せなくなった。

    秋は来たのか来てないのか曖昧な季節と化し、涼しくなってきたかと思えばあっという間に冬が来る。

    冬が島を襲う間は家にこもってやり過ごす他無く、吹き荒れる吹雪を見ながら家族と過ごすのが当たり前となった。

  • 71二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 20:22:05

    「花屋の兄ちゃんはもう着いてんのか?」
    「おれが出る前に歩いてるのを見かけたからとっくに着いてるはずだ」
    「こんな暑い中集めてきたんだからそれなりの形にしてもらわねェとな」
    「それなんだが、おれより先に摘みに行ったのにひまわりはそれだけか?何をしてたんだ」
    「いやァ……あんまり摘みすぎてもよくねェし、厳選してたら時間がかかってよ」
    「そんな能天気でいいのか?真夏日だってのに強気だな…」
    「おれはこの程度の暑さじゃ倒れねェ」

    呆れたような溜息を無視してケタケタと笑う。
    じゃれ合いに興じているうちに見慣れた道に入った。
    もう少しだ。
    逸りそうになる足をこらえながら、家の建ち並ぶ緩やかな坂道を登りきったころ入道雲を背負った一軒家が視界に映る。

    よく見ると玄関先に誰か立っていた。
    空を見上げていた麦わら帽子のシルエットは、おれたちが向かってくるのに気付くなりズンズンと肩を切って歩いてくる。

    「シャク、ノンベー!おまえら遅いぞ!」
    「じゃ自分で行けよフロス!」
    「おれが遅れたのはシャクがモタモタしてたせいだ」

    文句をつけながらもその目はしっかりと腕のひまわりを見つめている。
    花屋を継いでから初の大仕事だ。いつもと違ってその眉間には皺が寄っていた。

    「まあこれだけあれば充分だ、ありがとう」
    「あいつらは?」
    「部屋で休んでる。赤ん坊の方はさっきまで大泣きしてたんだけどな、今はぐっすりだ」
    「そっか。ノンベー、花束できるまでキッチンでアイスでも食ってようぜ。親父さんが戻ったら食べていいって言ってた」
    「アイスか、悪くない」
    「くれぐれも騒ぐんじゃねェぞクソガキ共」
    「「ハイ、分かりました」」

  • 72二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 20:49:04

    外とは打って変わって室内は快適なもので、あれだけ流れていた汗も数分もすれば引っ込んでいた。

    親父さんがおれ達の昼飯を作ってくれているあいだ、冷房の効いたキッチンでトランプゲームに興じる。

    「それにしても暑い中わるかったな坊主ども」
    「親父さんそれ三回目。別にいいよ、おれ達も祝いたくてやってるだけだし」
    「ああ。母子共に健康で何よりだ」
    「ハハハ、そう言ってもらうと助かる!ひまわりは娘の大好きな花だからな、きっと大喜びだ」

    孫が生まれてからというもの親父さんは常にニコニコしているので少々気味が悪い。
    娘が病院から帰ってきたのはつい最近のことだし、無理もないのかもしれないが、なんでもない時にまで笑っているのでぎょっとはする。

    ババがおれの方に回ってきたところで、手札から捨てられたトランプ達の上にピラフの盛られた大皿が二つ置かれた。

    「さあ食え坊主ども!」

  • 73二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 20:51:03

    「おいおいおいおい何だいこれは一体どういうことなんだろうねえ……?」

    産後の不調がようやく回復してきたという幼馴染は、子を産んだからか天真爛漫な娘から数多の死線を潜り抜けてきた母親のようになっていた。

    困惑気な声とは裏腹にその顔は喜色を浮かべている。

    「なんて素敵な花束なんだろう!枯れるのがもったいない…」
    「その時はドライフラワーにするからいつでも言ってくれ」
    「フロス…ありがとう」

    花束を抱える母親はひたすら幸福そうに微笑んでいた。

    「シャク、ノンベー、二人もありがとう!こんなに立派なひまわりを……暑かったでしょ」
    「大したことはしてねェ」
    「違いない」

    おれが生まれた時、おれの母親もこんな風に喜んでくれてたのかな。

    人の気配を感じ取って目が覚めたらしい赤ん坊が大声で泣き始める。
    おろおろとオモチャやぬいぐるみであやそうとする祖父に、すわオムツかミルクかと慌てふためく大の男が二人、我が子をあやしながら男衆を一喝する母親。

    腕の中でけたたましく自分の存在を訴える赤ん坊。
    この子が大人になる頃には大きく変化していく島に適応できるだろうか。先に全滅する方が先だろうか。

    残酷な問題が立ちはだかるが、それでも、生まれてきた以上この子は望まれてこの世にやってきた。それは確かだ。

    万物はみな望まれて生まれてくるのだから。

  • 74二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 21:24:02

    ひまわりを抱えた男が道の向こうからやってくる。
    玉のような汗がふつふつと浮き上がっては肌を流れていった。

    無防備に開け放されたままの門は男の侵入を拒まない。

    男は家主に断りも入れず敷居を跨ぐと、迷いの無い足取りで立派なベルのついた玄関を横切る。
    男の歩む先には立派な桜木の植えられた庭があった。
    花弁がほとんど残っていない葉桜の根元に紐で括っただけの簡素な花束を手向ける。

    「おお、来とったんなら声をかけんか」
    「博士。ごめん、これ置いたらすぐ戻るつもりでよ」
    「ひまわりか。花の多くが絶滅したがそいつは見事に生き残ったのう」

    どっこいしょと言いながら博士はテラスの縁に腰掛けて隣を叩いた。
    時間が気になったが、おれも話したいことがあったので博士の横に並ぶ。

    しばらく沈黙を保ち、桜が風に吹かれて散っている様をただ眺めた。

    「おれはよ、博士」
    「定職に就いてねェし、顔と頭も大して良くねェし、手先も不器用だ。家庭を持つより独り身のが気楽だし、おれなんかが真っ当に育てられると思えないから別に子供も欲しくねェ」
    「人に誇れるような特技も無ェし、自分のこともそんなに好きじゃねェ。おれの人生の中で唯一の自慢だった親友は逝っちまった」
    「人の役に立ったと思ったことなんか一回も無かった。みんなは働いたり子供をのこしたり、この島が滅ばないように何かを生み出してんのに」
    「気付いたんだ。おれは誰かの役に立ったことなんか一度も無い」
    「何も生み出さない消費するだけのおれがこのまま生きてってもいいのかな」

    多くを語らず寡黙に働く父の背中、我が身の不調も承知で宿した我が子を慈しむ幼馴染の横顔、酒の席では愚痴を零すのに仕事中は生気に満ち溢れている八百屋の親父、趣味の料理を得意分野にまで昇華させ誇らしげに笑っていた親友。

    みんな人生の意義を知っている顔をしていた。なのにおれはこの体たらくだ。

  • 75二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 21:38:09

    美しい群像劇でカモフラージュされてるが途中でとんでもない語録ラッシュが挟まってるんだよなこのSS
    そういうの大好きだよクソ!!

  • 76二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 21:47:13

    島の外からやってきた器用で顔も頭も良いマーマンがおれを親友にしてくれたことにアイデンティティすら見出していた。
    死ぬほど情けない人間だ。

    おれよりよっぽど必要とされていた親友が先に逝ってしまい、自分の存在意義が分からなくなった。

    博士が困った顔をしているのは見なくても分かる。ふぅん……と考え込むような唸り声がして居た堪れない。

    おれが変な話をしてしまった謝罪を口にするより、博士の答えが飛び出す方が速かった。

    「万物はみな望まれて生まれてくる」
    「シャン化により息子はあんなことになってしまったが…我が子の選んだ選択として、私はたとえ何十年かかろうとそれを受け入れようと思う」
    「生きてていいかなんて、そんなもんは……そんなの、生きとったらそのうち分かる」

    庭の桜はもう葉桜へと移り変わっていた。

    「……そろそろ行くわ!知り合いの出産祝いに花摘んでかなきゃいけねェし」
    「ああ、八百屋の娘さんか。めでたいのう、何の花を持っていくんじゃ」

    抜けるような青空を指さして親友を思い出しながらニカリと笑う。

    「タイヨウの花!」

  • 77二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:10:05

    最初は本気で白いちっちやシャン化について聞くスレの予定でしたが、聞いてもどうせ答えは出ないだろうと建てる直前に思い直しました。
    それなら自分の中で「白いちっちとは何か」「シャン化とは何か」を追求しようと決め考えた結果、シャン化コピペをベースにした話を書くことになりました。

    コピペ部分に繋がるまでの過程をどう繕うか必死で、叩けば埃と粗しか出ない酷い出来になってしまいましたが、ここまで読んでくださった方がいたおかげで投げずに書き切ることができました。

    このスレでは白いちっちとシャン化について明確な答えが出ていますが、ちっちとシャン化はこんなものではないと思った方も居ると思います。
    私自身、自分の出した答えに納得しきれてはいません。
    きっとこの言葉を見掛ける度に今まで通り、「白いちっちってなんだよ」「シャン化ってなんだよ」という疑問が頭に浮かびます。

    しかし、一個人の書いた白いちっちとシャン化の一つの顛末は、各々の胸の中にそれぞれが思うがままのちっちとシャン化があるのだということを示せたのではないでしょうか。

    最後になりますが、
    釣りタイトルのクソスレに釣られてくださった方も、目を通してくださった方も、ここまでお付き合いくださった方もありがとうございました。

    このスレが少しでも、皆様のちっちとシャン化への疑問の足掛かりとなれば幸いです。

  • 78二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:25:47

    素晴らしいSSをありがとう!!!!

  • 79二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:35:13

    あにまん版FAN LETTERを見た気分
    おつ

  • 80二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:40:47

    完結おめでとうございます
    語録がふんだんで内容はシリアス気味な良い濃厚SSでした!
    きっと読むだけでシャン化に効く

  • 81二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:54:37
  • 82二次元好きの匿名さん24/11/09(土) 22:56:49

    ワンピースの世界観でシャン化を実現するなら?と言う思考実験みたいだった
    案外血統因子があれば本当にシャン化は起こりうるのかもしれない

    でもやっぱり白いちっちってなんだよ

  • 83二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 02:42:05

    「マーマン……?どうしたんだ、その目の傷…肌もちょっと焼けたか?あと、首がやけに太くねェか?」
    「首に突っ込まないでもらおうか」

    ここホント草

  • 84二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 12:51:13

    >>77

    丁寧な挨拶の中にぶちこまれる致死量の「ちっち」草

  • 85二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 12:52:39

    キャラクターの名前に元ネタがあるのかは知りたい

  • 86二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 15:23:59

    >>85

    名付けはかなり安直です。


    半魚人だからマーマン

    シャンクスのアナグラムでスン・シャク

    クローバー博士からもじってクラウ・クラブ

    花屋だからフロス

    飲兵衛だからノンベー


    あまり本編キャラ以外の人名は出したくなかったので、できる限り役職名で呼んでいます。

    名前がないと誰が誰か分かりにくくて不便だなと思った場面で付けているので残りの人物に名前はありません。

  • 87二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 17:31:37

    完結おつ

    >>61

    「イヤ、おれ達は魚じゃない。人間だ」

    「?……ああ、人間だ。当たり前だろ?」

    ここで爆笑しちゃった

    このスレでナルト語録を見るとは思わなかったわ…

  • 88二次元好きの匿名さん24/11/11(月) 00:54:58

    ワンピ語録だけじゃなくて金カム語録出てたの笑う

  • 89二次元好きの匿名さん24/11/11(月) 11:29:35

    キッド(息子)
    で耐えきれなかった

  • 90二次元好きの匿名さん24/11/11(月) 17:14:39

    完結してた すごい文才だ、面白かったありがとう

  • 91二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 01:03:48

    なぜこの題材でこんな手の込んだものを作ろうと思ったのか理解に苦しむがそれはそれとして見事なSSだったことをお前に教える。

  • 92二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 11:14:33

    あにまん文学にまた一つ歴史が刻まれたか……

  • 93二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 12:06:56

    >>91

    あにまんで書くなら語録を入れるべきだろうとしつこいほど擦ったことをお前に教える。

    スレが落ちていなかったので博士の出自とシャクの地味な裏設定についても教える。


    クラウ・D・クラブ

    Dを名乗った長兄を殺されてから「研究を続ける」「殺されるくらいならやめる」と意見が対立した結果、次兄のクローバーと袂を分かちDを隠して冒険家を続ける。

    その折にタイガーと知り合う。

    オハラ滅亡後、自身もヤバいと身の危険を感じて各地を転々と隠れ逃げるもCPに居場所を突き止められ、政府機関に尽くすなら助命するという提案を受けベガパンク率いる政府の科学班の雑用係として働く。尚天才の集う天才の為の職場環境の下っ端なので科学に明るくない雑用はゴミ同然に扱われる。

    MADSが解散するまで何とか命を落とすことなく生きていたものの、ここで働かされていてはいつ死んでもおかしくない。

    転属先はCP事務職員。仕事関係でマリージョアを訪れたところ、襲撃事件にかち合い奴隷たちとともにそのまま船に乗り込む。

    再会したタイガーから託されたのは奴隷同士の間に産まれた半魚人の子供だった。

    タイガーとしては太陽のある地上で暮らすほうが幸せだろうという気持ちと人間の血が混じった子を常に目の届く同じ船に乗せられないという気持ちが半々だった。

    友の言葉を受けて、博士は子供と安全に暮らせる島を探し現在に至る。

  • 94二次元好きの匿名さん24/11/12(火) 12:13:10

    シャク
    名前だけでなくシャンクスのアナグラムだけあり前向きすぎるところを継いでいる。
    人が号泣してる顔を見て爆笑したり、シャン化にも中身がマーマンならまあいいじゃないかと楽観的だったり時々まわりと後先のことを考えていない悪癖が出る。
    極めつけは親友が奴隷出身であるという重い過去を、当人が居ない場で一方的に知ったのにも関わらず配慮もクソも無いただの勢いだけでその本人に向けて過去の件について口走ったこと。書いてる内にシャンクス以上にデリカシーの無い前向きさになっていったことを教える。

    まあしっかり報いを受けるならいいじゃないかとやった事としっぺ返しのバランスは意識していたので骨を折ったり親友を失ったりしている。

オススメ

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