【🎲⚓️】ダイスと安価で主要キャラが数名決まり、ダイス混じりでストーリーが進むスレ

[1 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 10:32:50]

※拙い文章力、学の無さ、そしてほぼ即興気味に出来上がる
　ストーリー構成の都合上、質の低いものになると思われます。


アンカー機能、ダイス機能により主人公やラスボス等のキャラクター像が決まり、
その後はこちら側で大まかに作り上げる構想を基に、ダイスを交えながら物語を進めて参ります。
※基本はダイス進行ですが、設定の追加等で範囲安価を取る可能性は大いにあります。


留意事項
・更新頻度に大きなムラがあります。　体調の悪化、もしくは連投規制を
　受けない限りなるべく完結させる所存ではありますが、その点はご留意ください。
・コメディ、シリアスの度合いは基本的にキャラ設定＋αで決まりますが、
　ダイスの出目で一変する危険性があります。
・“近年の朝夕アニメを基準とした線引き”を超える描写、表現には期待せずにご観覧ください。
・２３時前後から８時前後の間は、
　規制により身動きが取れない状況である危険性が高いことをお伝えしておきます。

[2 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 10:33:42]

まずは皆様に〈設定表〉に沿ったキャラクター作成をして頂き、

範囲安価＋ダイスによる抽選でキャラのポジション（３名前後）を決めていくところから始まります。

※詳細なキャラ作成が面倒な場合は、“上から４つの項目”だけを適当に埋めて頂ければ幸いです。

キャラの方向性についてはバトル、コメディ、スポーツ、日常系など、ある程度は何でもありです。

※ゴア要素やアダルト要素が強い場合のみ、大幅に修正を行います。

ただしキャラ選出がダイス任せであり、キャラの比率によりジャンルが決まるため

『想定した方向性と乖離しているキャラ』となる危険性がありますが、何卒ご了承ください。

安価の範囲は、>>4 〜 >>11 （超過した場合は＋１〜８レス）を予定しております。

↓設定表はこちら

[3 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 10:34:07]

ファンタジー

[4 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 10:34:14]

【名前】　（必須）
【性格】　（必須）
【種族】　（必須（例：地球人、異星人、天使、妖怪、エルフetc．））
【職業】　（必須（例：会社員、高校球児、アイドル、戦士、魔法使いetc．））
──────────────────────
【年齢】　（任意）
【性別】　（任意）
【容姿】　（任意）
【好き嫌い】　（任意）
【得手不得手】　（任意）
【主軸となる人間関係】　（任意（未記入の場合は概ね孤独からの始まりになります））
【備考やその他】　（設定を付け足し足りない場合等にどうぞ）
【特に守ってほしい設定】　（任意（１つのみ））

[5 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 10:40:22]

【名前】　クリスタリア・エリン
【性格】　お淑やか
【種族】　エルフ
【職業】　学者
──────────────────────
【年齢】　127
【性別】　女性
【容姿】　エルフ耳・長身(170cmほど)並乳安産体型・蒼目水色ロングヘア
【好き嫌い】　好き：ハーブティ・静かなところ　嫌い：騒がしい所・声の大きな方
【得手不得手】　得手：速記　不得手：運動
【主軸となる人間関係】　研究仲間もしくは教え子
【備考やその他】　研究にはコミュニケーション能力も大切なのでコミュ力は普通にあります
【特に守ってほしい設定】　

[6 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 10:42:53]

【名前】　桃屋　海斗
【性格】　明るく元気なスポーツマン
【種族】　地球人
【職業】　高校サッカー部員
──────────────────────
【年齢】　17
【性別】　男
【容姿】　黒髪でさわやかイケメン、身長は低め
【好き嫌い】　サッカーと仲間が好き、嫌いなものは特になし
【得手不得手】　サッカーが得意、勉強が苦手
【主軸となる人間関係】　サッカー部の中心的存在

[7 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 10:44:30]

【名前】アローネ
【性格】イタズラ好きの寂しがり
【種族】ハーフエルフ
【職業】弓使い
──────────────────────
【年齢】15
【性別】女性
【容姿】金髪ロングツインテ
【好き嫌い】いじりがいのある人が好き、エルフは嫌い
【得手不得手】単独でのゲリラ戦法が得意、協調に向かない
【主軸となる人間関係】親に捨てられ天涯孤独
【備考やその他】物心ついた時から孤独。エルフの里に居た頃は村八分状態
里に火矢を付けてまわって追い出されたが後悔は無い、自由に生きるのが心情
【特に守ってほしい設定】
メスガキを気取っているが心のどこかで孤独を埋めてくれる人を求めている

[8 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 10:55:22]

【名前】　リーリン
【性格】　素直になれないツンデレ
【種族】　天使
【職業】　見習い天使
──────────────────────
【年齢】　18
【性別】　なし
【容姿】　中性的な見た目のロリ、輪っかが大きい
【好き嫌い】　好き　甘いもの　嫌い　変態
【得手不得手】　得意　大食い　不得手　勉強　
【主軸となる人間関係】　学校の教師、クラスメイト

[9 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 11:19:45]

【名前】　七種鈴(さえぐさりん)
【性格】　おっとりで甘やかしたがり
【種族】　狐人（に●さんじのフミ様位のケモ度）
【職業】　巫女
──────────────────────
【年齢】　21歳
【性別】　女性
【容姿】　身長159Cm　3サイズ92-59-99 　腰まである茶髪で翠眼　狐耳と尻尾も生えている
【好き嫌い】　好き：きつねうどん、お稲荷さん　嫌い：虫
【得手不得手】　苦手：急がされる、早口言葉　得意：料理(何でも作れるが特に和食が得意)
【主軸となる人間関係】　両親　三人の妹
【特に守ってほしい設定】　一人称は“あて”で京都弁にしてほしい

[10 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 11:35:57]

【名前】　女神ガラテア
【性格】　無邪気で残酷、げらげら笑う
一見ちょっと天然な普通の女の子に見えるが…
【種族】　古き神
【職業】　死人を異世界に転生させる役職
──────────────────────
【年齢】　不詳(1000歳は超えてる)
【性別】　女
【容姿】　山羊のツノが生えた水色長髪の女性
ほとんど全裸に羽衣を纏ったような姿
【好き嫌い】　人間が大好き(玩具としても)
【得手不得手】　力加減、細かい作業
【主軸となる人間関係】　転生させた人間のことは最期まで手助けし観察する
【備考やその他】　長生きし過ぎて退屈になったので最近流行りの異世界転生を始めてみた
【特に守ってほしい設定】　非常に強力な荒ぶる神　そのルーツは神話に語られる大怪異らしい

[11 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 11:59:54]

【名前】　零々(れいれい)
【性格】　責任感が強く生徒思いな先生
【種族】　人間
【職業】　退魔巫女、高校教師
──────────────────────
【年齢】　28歳
【性別】　女
【容姿】　長身の巫女さま、普段は女物の黒スーツにお祓い棒を装備している
【好き嫌い】　教えるのが好き
【得手不得手】　歳下とのコミュニケーション
【主軸となる人間関係】　自分のクラスとの関係性は概ね良好
【備考やその他】　生徒たちと一緒に戦う感じで…
【特に守ってほしい設定】　退魔師としての力は強力だが、世界観的に怪異には到底太刀打ちできない

[12 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 12:03:12]

申し訳ございません……。　こちら側の不備により誤認を引き起こしてしまい、
1レス分消費されましたので、念の為に約20分ほど延期いたします。

[13 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 12:24:29]

１．>>5　２．>>6　３．>>7　４．>>8

５．>>9　６．>>10　７．>>11

安価が被った場合、１レス後のものを採用いたします。（最後尾の場合は>>5にループします）

抽選に外れてしまったキャラクターは、他のスレ内でキャラ募集があった際にでも

（節々を変えつつ）流用してあげてください。

なお、日常系の場合のラスボスは『超えるべき、または到達するべき存在』となります。

女性も当然主人公の可能性有り。　男性ももしかしたらヒロイン枠に？

↓運命のダイスロール

dice3d7=6 5 1 (12)

左＝主人公　中央＝ヒロイン　右＝ラスボス

[14 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 12:29:03]

少し難しい内容ですね……。
ただ今より『ファンタジー世界での神と人の物語』の物語の構想を考え始めます。
ダイス有りストーリーの開始予定時間は１６時３０分頃です。

[15 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 12:39:25]

期待
楽しみに待ってます

[16 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 12:48:39]

>>13

なんとなく狐巫女が主人公でエルフ教授がヒロインで無邪気残酷な女神がラスボスっぽいけど全然違うの草なんだ

[17 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 15:11:05]

女神を書いた人ですが得手不得手の部分は全部不得手です…今更ですが分かりづらくてすみません

[18 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 15:43:20]

エルフの教授、絶対神話とか因習村とか調べるタイプの研究してそう

[19 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 16:20:14]

思いの外自身の執筆速度が遅く、我ながら驚いております……。
このスレの閲覧は１日２回以下で良いかもしれません。

[20 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 16:20:31]

──────────────────────
とある緑の国に佇む《神魔学研究所》の一室に、
若き神魔学者である女性の声が響き渡る。

教え子
「エリン様、大変です！！
遥か果ての島国で、〈鬼神〉が現れたと報告が」

エリン
「……落ち着いてください、教え子さん。
私が大声を好まないことは、
幾度となくお伝えしておりますでしょう？」

教え子
「あっ、えっ……　すみませんっ……！！
私はまた、エリン様にご不快な思いを……！」

エリン
「あの島国で、鬼神が？」

教え子
「は、はい……。どうやら、
大洪水を引き起こしたらしく、
現地の被害は甚大であると……」


エリン
（鬼神め…………）

[21 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 16:21:40]

エリンは、敬虔な〈テアスラ教〉の信徒であった。
テアスラ教は全ての母である〈女神テアスラ〉を
信仰し、彼女が作り上げし自然や大地を尊び
大切にすることを教義とする宗教である。

だからこそ、許せるはずがなかった。
女神が作りし自然を、破壊し尽くすような者を。
剰えその者が《鬼神》と称されている事実を。


エリン
「……教え子さん。すぐに向かいましょう。
彼の者の存在を許すわけには参りません」

教え子
「あっ！　は、はい……っ！」


２人は手早く荷物を纏めると、
研究のために手配していた飛行船に乗り、
遥か果ての島国へと赴く。

[22 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 16:22:59]

──────────────────────

さて、２人は島国に向かうため、

飛行船に身を委ねることとなりましたが……

１〜３．何事もなく到着する（再登場早め）

４〜６．エンジントラブルが起こり、

　　　　別の島に不時着する（再登場少し遅め）

７〜９．大怪鳥の襲撃を受け飛行船が大破し、

　　　　海に放り投げ出される（再登場遅め）

　１０．別の異世界に迷い込む（再登場終盤）

dice1d10=5 (5)

[23 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 16:24:28]

続きは２０時３０分頃に……

[24 二次元好きの匿名さん 24/11/10(日) 19:06:44]

エンジンはあるのか…どういう異世界なんだろ
続きに期待

[25 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 20:27:24]

２人が乗る飛行船の動力炉には不備があった。
機械に弱い２人では、しっかりと
手入れが行き届いていないことには気付けず、
エンジントラブルを引き起こすこととなってしまう。

何とか陸地までたどり着けた飛行船だったが、
動力炉の修復には、かなりの時間を要するという。
一刻も早く島国に向かいたいエリンは教え子を連れて
客船に乗り込み、海上での移動に切り替える。

果たして彼女たちは、この先無事に
島国へと辿り着くことができるのだろうか。









時は、一週間ほど前まで遡る。

[26 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 20:28:27]

とある島国の首都郊外。

《鎮守の森》の中にそびえる、とても大きな社があった。

その社では、巨大なdice1d8=2 (2)　の

御神像が祀られており、信奉者にご利益があるという。

１〜２．狐／３〜４．猫／５〜６．豚／７〜８．狸

この社の若き巫女である七種 鈴（さえぐさ りん）も、

御神像が授けてくれるとされるご利益を信じている。

それは信仰心からくるものではなく、

この鎮守の森が持つ〈ある特徴〉をご利益として崇拝しているからだ。

その特徴とは、森全域に及ぶ〈虫除け効果〉である。

社の周辺一帯に自生している植物は全て、

虫たちが忌避する匂いを強く放っており、

虫を嫌う彼女にとってはこの上なく極楽と言える空間になっている。

＂ご利益＂を甚く気に入った彼女は、

神主を半ば強引に説得し、家族を連れて社に引っ越してきた。

年端もいかない遊び盛りな妹もいるため、色々と罰が当たるのではと

神主は心配しているが、特に何事もなく平和な時間が続いていた。

続いていた。

[27 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 20:29:33]

御神像周りを掃除していたりんの耳に、何やら喚き声が届く。

四女

「うそ吐き！！！　絶対三女がとった！！！」

三女

「何も盗んでへん言うとるやろ……。

うそ吐き呼ばわりのあんたがうそ吐いとるんちゃうの？？」

四女

「三女がとった！！！！」

三女

「証拠もなくうそ吐き言うとるあんたこそ、うそ吐きや。

怖いわぁ〜。家族にどろぼうが生まれてもうたわぁ〜」

四女

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛！ ！ ！ ！ ！」

りん

「どないしたんや、そんな喧しく争って……。

三女。あんたまたいけずしたんか？」

三女

「やめてぇや、すぐ人を疑うんを。

今回、何もしてへん言うとるやん……」

実際のところdice1d2=1 (1)

１．盗んだ　２．盗んでない

[28 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 20:30:51]

りん
「四女。何があったんか言うて。」

四女
「うぐ……
先生からもらった……　折り紙の狐……」
りん
「狐？」

四女
「うん……。先生が、
四女ちゃんのおともだちだよって……」


四女は、友達ができずにいた。
人見知り気味な性格と、異人としての扱い。
そして〈宗教一家の娘〉という少し誤った認識から
同年代の子供たちが誰も近づいてきてくれずにいた。

見兼ねた担当教諭が、慰めと親睦を図る目的で
不器用ながらに作り上げた、
「狐なあなたでいいんだよ」という思いが宿った
折り紙の狐を、四女は大切にしていたのだ。


りん
「そんな大層なもんをあんた……」
三女
「盗んでへん言うとるやろ！！」

[29 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 20:37:15]

三女
「あかん、腹立ってきた……！
話にならへん。みやこに行くわ！」

りん
「ちょい待ちぃ！」
三女
「虫、連れてきたろか？」
りん
「っ……！　あんた……！！」

三女
「四女が反省したら、帰ってきたるわ」

三女は鎮守の森を後にした。












三女
「……ほんましつこいわ〜、あいつら」

[30 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 21:07:59]

三女
「たかが紙切れ一枚でびいびい喚いて……。
折り紙程度、うちが折ったる言うねん」


「……にしても、まあ。何か魅力的やわ、これ。
折り目ぐちゃぐちゃな凡作のはずなんやけどな〜」

「あれか？　使うてる紙がええんかな。
気にしてみると、なんや材質からちゃう気するわ。
売ったら高値付かんかな？　なんて」

？？？
「よう、売らねーかい？」

三女の前に、フードを深く被った謎の人物が立ち塞がる。


三女
「いや怪し過ぎやろ！
あんた、もうちょい人目気にした方がええで……」

？？？
「怪しいと思ってる人物に対して、
随分な物言いしてんじゃねーの。
まあ、そういうところもアリかもね」

[31 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 21:29:41]

三女
「……ちなみに、いくら出してくれるん？」

？？？
「銀貨四枚」

三女
「もうちょい出せるやろ？」

？？？
「おいおい、常識的に考えなよ。
紙切れ一枚だぜ？　破格も破格じゃねーかよ」

三女
「いーや、この紙にはもっと価値があるな。
金貨三枚は出す価値あるやろ」

？？？
「うへー！　すっごい吹っ掛けるじゃねーの。
そんなに貰ってどーすんの？」

三女
「そりゃあうちも買いたいもんはぎょうさんあるわ。
　みやこの服も買いたいし、みやこの食べ物食べ尽くしたいし、

　……四女に人形、買うてあげてもええわな」

[32 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 21:50:15]

？？？
「ならよ、ならよ〜！　金貨三枚どころか
　金貨十枚、いや、二十枚くらい貰える話があるんだがよ〜」

三女
「あんた、怪しさ隠す気あるん……？
　そんなん乗るわけないやろ……」
？？？
「乗る乗らないじゃねーの！　報酬の話してんの！
　そんくらい出りゃ、多少キツくてもやる気が出んだろ？」

三女
「はぁ……？」


瞬間、謎の人物から白い縄が飛び出し、三女を捕えた。


三女
「ちょ、なんやこれ……！？」

？？？
「あまり暴れんなよ〜？　跡が残るくらいならまだしも
　デカい傷できたら価値下がんだからよ〜」


三女
（あかん……　なにしとんねん、うち……。
　こんな怪しいもんの相手なんかしてしまって……）

[33 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 21:51:31]

三女
「りんっ！！！　うちが悪かっ
？？？
「おっと、黙りな。タダ働きさせるぜ？
　大人しくついてきたら、金貨とともに返してやるからよ」

三女
「っ……！！　っっ…………！！」

？？？
「もっとも、お前の姉ちゃん呼んだところで
　＂俺達＂に太刀打ちできねーだろうがね。
　なんせ俺達〈虫人間〉。ちなみに俺様」



《蜘蛛男》。

[34 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/10(日) 21:55:48]

──────────────────────
よく見る王道展開に差し掛かったところですが、
そろそろ深夜ですので本日は終わります。
寝不足が祟って体調を崩している気配がありますので、
明日の午後まで更新ができないかもしれません……。

[35 二次元好きの匿名さん 24/11/11(月) 00:47:40]

お疲れ様です〜
やはり邪神主人公…導入が大変よな…

[36 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 07:35:48]

姉妹喧嘩から十数分後。
七種家長女としての自覚、責任感を持つ女性、りん。
彼女は意を決し、鎮守の森の外へと踏み出した。
そんな彼女の前に、数々の厄難が襲いかかる。



りん
「ひゃああああ！！　とんぼいやああああ！！


　にゃああああ！！　たがめいやああああ！！


　びゃあああああ！！！
　げんごろういやあああああああ！！！」






「…………帰ったらぐにぐにの刑にしたろかな」



いくつもの試練を乗り越えた彼女の足元に、
件のくしゃくしゃ折り狐が現れる。

[37 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 07:36:41]

りん
（これ、四女が言うてたやつか……！
　何でこんなとこに……。

　あ、三女か。あの子が落としたんやな。
　あれか。失くしたこと言い出せんかったんや。
　ほんま、世話焼ける子やなあ……）


折り狐は異様な雰囲気を醸し出している。
まるで、負の感情が溢れ出しているかのように。


りん
（にしても変わった色彩やなあ。
　茶色と白っぽいとこはわかるけど、
　狐を水色で表現しとるんは初めてやわ。鬼火やろか）

りんは折り狐の裏側を見て、違和感に気づく。

りん
（え……　これ、人の顔……？
　写真かなんかで作らはったんか……？）
　
そして、先生と四女に申し訳なさを感じながらも、
折り狐をばらして真相を確認してみることにした。


りん
（…………天女様の絵？）

[38 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 07:38:08]

紙に描かれていたものは、やぎ角と水色の長い髪を携え、

剥き出しの身体に羽衣を纏わせた、妙齢の女性であった。

りん

（なんてもんで作らはるんや……。

　女の子やからまだぎりぎりええけど、

　四女が弟やったら懲戒免職に追い込むとこやで……）

（アタシを有害図書みたいに言わないでよ）

りん

（！？　誰や？　思考に直に……）

天女？

（ねーお願い！　紙の表面に張ってる神通力の膜をさ、

　アンタの手でうまーく剥がしてくれないかな？）

りん

「……あんさん、悪鬼の類いやないやろな？」

天女？

（三女ちゃんの居場所、教えてあげたいんだけどなー）

りんはお願いを……　dice1d100=56 (56)

──────────────────────

〜１０＝聞かなかった　１１〜３５＝聞いたが失敗した

３６〜７５＝不完全だが剥がせた　７６〜＝綺麗に剥がせた

[39 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 11:14:50]

天女？
（ねーー、まだーーー？）
りん
「あんま急かさんといてな……。
　あて、急かされるんは苦手なんや」
天女？
（あー、もういいや。もう出られそうだし）


直後、紙の中から水飛沫を上げながら、
羽衣だけを身に纏った女性が現れた。


天女？
「うおーー……　全身凝り凝りじゃん……！
　アイツ、よくもやってくれたわね……」

りん
（うわぁ……
　顕在化したらほんまあかん格好やなぁ……）

天女？
「うえ……　しかもなんかベトってしてる……。
　剥がし切るまで待たなかった
　アタシが悪いんだろうけどさー……。うーん……」

[40 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 11:17:03]

りん

「あの……　出てきたばっかりで気づつないんやけど、

　はよう三女の居場所を教えてくれはらへん？」

天女？

「え？！　相手には「苦手だから急かすな」って言っておいて、

　アンタ自身はお構い無しに急かすタイプなの？」

りん

「あ、堪忍……。三女と早う一緒に帰りとうて、つい……」

天女？

「あーうん、それはわかってる。ちょっとだけ

　からかいたくなってさ。いけず言ってゴメンね？

　それとさ、実は『今の彼女の居場所』

　そのものは、まだアタシも知らないんだよねー」

りん

「え

天女？

「ダイジョーブ、時空超越すれば一発だから！

　さあ、行くぜ！　アンタもついてきな！」

彼女の時空超越は結果、dice1d10=6 (6)

──────────────────────

１〜２．失敗した／３〜５．予想外の場所についた／６〜７．根城についた

８〜９．連れ去られる直前まで遡行した／１０．三女が盗む直前まで遡行した

[41 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 19:10:32]

蜘蛛男が所属する組織、《黒虫義賊》のアジト最奥部。
長である〈皇帝蟻〉は、部下の提示物を見て頭を抱えた。

皇帝蟻
「……なぁ、蜘蛛男。コレがお前の言う＂上玉＂か？」


三女
「…………」


蜘蛛男
「絶対需要アリますよ？」
皇帝蟻
「若すぎんだよ！！！
　隙間産業にも程があるだろうが！！」
蜘蛛男
「＂買う奴がいるか＂が肝なんですって。
　『生意気系高学年狐人女児』とか、
　法外価格だとしても権利を買う奴は確実にいますぜ？」

皇帝蟻
「……そもそもな。未成年は摘発率たけーんだよ。
　色々誤魔化しが効く成人女と違ってな」

蜘蛛男
「いやいや、マジレスしないでくださいよー。
　勿論、コイツをラチった目的は別にあるんですって」

[42 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 19:11:34]

皇帝蟻
「もしや、あの女か？」

蜘蛛男
「さーすがボス！　話が早くていいや。
　『妹のためにカラダを張る適齢期の女狐人』の
　需要なんて、言わずもがなっすから。

　ほらアノ、『蝦で鯛を釣る』ってやつでしたっけ？
　同じ〈転生者〉なんですから、わかるでしょう？」
皇帝蟻
「阿呆が！　軽率にその言葉を口にするんじゃねえ！」

蜘蛛男
「エビタイ？」

皇帝蟻
「…………」
皇帝蟻は、目配せで三女を指す。

蜘蛛男
「あー……　そうでしたね。
　どうすっかな。無事で帰すわけにはいかねーか。


　〈植物〉にでもなってもらいましょうかね？」


三女
「……っ！？」

[43 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/11(月) 20:45:08]

同時刻、りんと謎の女性は空間転移に成功し、
アジトの中枢部に行き着いた。


りん
「ここに三女が……？」

天女？
「間違いないよ？
　アタシには望みの世界と繋がれる力があるんだ。
　この力で人々を救う仕事をしてたりもするんだよね〜」

りん
（ほんまに天女様なんかもな……）

天女？
「あーそうそう。勢いで連れて来ちゃってなんだけど、
　三女ちゃんを連れ戻したい場合、この先覚悟した方がいいよ？」

りん
「はい……？」

天女？
「ここ、虫の巣窟っぽいから」





（…………………………………………）

[44 二次元好きの匿名さん 24/11/12(火) 01:04:11]

お疲れ様です

[45 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 08:05:52]

？？？
「ナニモンだ、お前ら！！」

彼女たちの目の前に現れたのは、
コオロギの頭や翅を携し者、蟋蟀【コオロギ】男だった。



りん
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
　あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！ ！ ！ ！」


蟋蟀男
「おいおいそんなに怖が……　るわな、そりゃ……」

天女？
「おー、転生者５６号君じゃん！　おひさ〜！」

蟋蟀男
「！！？　よく見たら《ガラテア》じゃねーか！！
　お前、俺をこんな姿に転生させておきながら、
　一箇月も経たずに投げ出しやがって……！！」

[46 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 08:06:39]

ガラテア
「それがさー、聞いてよ！！　あの後
　〈オンミョージ〉？　って人がやってきてさ？
　アタシを紙の中に閉じ込めていったんだよ！！

　時空超越も試したんだけどさー！
　紙の中ってマジで力入らなくて！
　転生した皆のことは気掛かりだったけど、
　本当にどうしようもなかったんだよー！！」

蟋蟀男
「あー…………　そりゃ、あんだけ人様の命で
　弄んでたら、狙われても仕方ねーわ……」

ガラテア
「えーひどくない？！
　アタシは個々の命を『あるべき形』にしてるだけだよ？」

蟋蟀男
「全部お前の独断裁量だろーが……。

　あーやべぇ、腸が煮え返るぜ……。
　考えてみりゃアレも、ソレも、コレも、ドレも、
　お前が〈邪神〉だから起きた事ばかりじゃねーか……！」


ガラテア
「何でよー！　転生でチャンスあげてるんだから、
　むしろ崇めてほしいくらいなんだけどー？！」

[47 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 08:07:34]

蟋蟀男
「シラフとは思えねー事吐かしやがるなァ……？
　空気で酔っ払って現実見えてねーだろ、お前よォ！！」

ガラテア
「＂現実＂が見えてないのは、そっちじゃない？
　頭冷やして自己を見つめ直すなら、ちゃんと協力するよ？」


蟋蟀男は、背負っていた物を二人に向けた。
それは複数の砲身を携え、立て続けに放たれた
金属の塊により、容赦なく対象を破壊する非情の武器、
〈ガトリングガン〉であった。


りん
（何や、あれ……？）

蟋蟀男
「神経を逆撫ですることに固執しやがって……！
　こんな姿に生まれなければ、俺はやり直せたんだ……！
　平凡な家庭、普通の交友関係、有り触れた日常……
　この醜悪な見た目で、叶うはずがねーだろーがァ！！！」

ガラテア
（……何も変わってない）


蟋蟀男
「喰らいやが

[48 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 08:08:16]

ガラテア
「ちょっとタイム」


ガラテアは、世界の動きを止めた。
ただ一つ、『りんの脳の活動』だけを除いた、全てを。



ガラテア
（あのさー。アンタにちょっと聞いておきたいんだけど、
　アンタって戦えるタイプの巫女ではないっぽいよね？）

りん
（え、な、え……？　何が起こってるんや……？）

ガラテア
（時を止めたんだよ。無茶かもだけど慣れて？）

りん
（が、がらてあはん……　どしたか？
　あんさん、時の流れを止めることもできはるんか……）

ガラテア
（へへー♪　水を生み出せたりもするぜー）

りん
（はぁ……　ど偉いお人どすなぁ……）

[49 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 08:09:59]

ガラテア

（でさ。自分自身が戦いたいって気持ち、ある？

　もしあるなら、アタシが持つ力のうちの

　どれか一つを貸してあげてもいいよ？）

りん

（え……！？　えっと…………

　できたら争い事は嫌や……　そやけど……）

ガラテア

（今回みたいなことが、また起きたら……　でしょ？

　別に、無理して戦わなくてもいいけどね。

　しばらくはアタシが代わりに戦ってあげるから）

りん

（あては…………　dice1d10=2 (2)　）

──────────────────────

１〜２．戦えへん……／３〜５．戦う（腕力を貰う）

６〜８．戦う（水の力を貰う）／9〜１０．戦う（時空の力を貰う）

[50 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 11:41:43]

──────────────────────
ガラテア
（そっか。ゴメンね？　嫌なこと聞いちゃったかな）

りん
（…………）

ガラテア
（じゃ、アタシたちの争いに巻き込まれないようにね。
　なるはやで終わらせるつもりだけど、
　神通力のせいで本調子を出せるかわからないからさ……）

世界は再び、歩み始める。



蟋蟀男
がれ、“Genmai Grains Gatling Gun‼︎”」

砲身から放たれたのは、鉛ではなく〈玄米〉であった。
芯が通った未精製の米粒たちが、ガラテアに襲い掛かる。


ガラテア
「……アンタ、イナゴにでもなったの？？」

蟋蟀男
「実弾は国が規制掛けてんだよォォォ！！！」

[51 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 11:42:24]

超高速で放たれる玄米たちは、全てガラテアに命中する。

しかし当然ながら、玄米程度の硬さでは

超常的存在であるガラテアを傷付けられるはずがない。

ガラテア

（……鬼って子たちは苦手なんだっけ。穀物）

蟋蟀男

「何故だッ！？　お前みてーな奴にこそ、

　〈穀物の弾〉は絶大な効果が発揮されるはず……！」

ガラテア

「あーあ、お米が粗末に扱われちゃってる……。

　植物としても、食物としても、人の道具としても

　本分を果たすことが許されずに、朽ち果てる……

　なんて、ダメだよね！」

ガラテアは蟋蟀男に……　dice1d10=2 (2)

──────────────────────

１〜３．一粒ずつ丁寧に投げ返した／３〜６．激流で米を味わわせた

７〜９．稲子飯を用意した／１０．悪夢の世界を見せた

[52 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 12:31:47]

ガラテア
「受け取れ、５６号君ッ！！！」

ガラテアは、床に散らばった玄米を一粒拾う度、
送り主である蟋蟀男に返投を返した。
一投一投、思いを込めた玄米を相手に打つけ続けた。
心做しか、玄米たちの恨みが晴れ、輝いているように見える。


ガラテアの慈愛、憐憫、義憤、加虐の心が籠った玄米たちは、
しっかりと蟋蟀男の胸に届いていた。
彼女たちの思いを受け続けた蟋蟀男は、涙で頬を濡らし、
身体中の穴で風を感じながら、二度目の一生を終えた。



ガラテア
「アヒャヒャヒヒヒ！　アヒャヒャ！　アヒヒヒヒヒ……！！
　ヒヒ……♪　アヒ？　ﾌﾟﾌｯ　ヒヒヒヒャヒャヒャア……！！



　……やっぱり、悪者の末路はこうでなくっちゃ！」


りん
（……ど偉いお人どすなぁ）

[53 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 13:07:45]

蟋蟀男の霊体が、ガラテアに訴えかける。

蟋蟀男
「やりやがったなテメエッ！！！！！
　テメエはどこまで人の命を弄んだら気が済むんだァ！！？
　これが『命のあるべき形』だってのかッ！！！！！」

ガラテア
「因果応報だよ。我慢をせず、努力から逃げて、
　悪事に手を染めた人間には、すごく相応しい末路でしょ？」

蟋蟀男
「独善主義者め、人の都合も知らねーくせに……！！
　俺は！　蟋蟀人間に転生させられた結果！
　猿人間共から疎まれ！　他の獣人共には舐められまくって！
　前世の方がマシな程に孤立してんだよォ！！！」

ガラテア
「同じ蟋蟀人間の皆は？」

蟋蟀男
「あんな奴らと仲良くしたいわけねーだろッ！！！
　俺が俺自身を疎ましく感じている程に
　醜悪な姿形をしている連中に、
　何で寄り添わなくちゃなんねーんだァ！！！！」

ガラテア
「……前世と似た失敗してるね、アンタ」

[54 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 20:33:04]

蟋蟀男
「何で……　普通の人生を送らせてくれねーんだ……！
　全て平均値でいい……！　ただそれだけだってのに……！」

ガラテア
「送れるわけないじゃん。以前も伝えたはずだけど、
　アンタって相手が自身より下だと感じたら最後、
　無配慮で無遠慮な弄りを延々と続けるタイプでしょ？」
蟋蟀男
「別に問題ねーだろ！！
　相手を弄っておいて、俺の方は拒んでるとかならアウトだろうが、
　御互い様で弄り合う仲なら、顔を伺い合う仲より遥かに健全じゃねーか！」
ガラテア
「＂独善主義者め、人の都合も知らねーくせに＂
　これ、ついさっきのアンタの発言でしょ？

　他者と自分は同じじゃない。
　自己の心身に備わる、どうにもできない一要素に
　強い劣等感を抱く人たちだっているんだ。
　アタシがアンタをコオロギ人間にしたのも、
　二度目の人生の過程でそれを学んでほしかったからなんだよ」

蟋蟀男
「…………」

[55 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 20:33:57]

ガラテア
「アンタが全て間違ってるわけじゃないし、
　封印されて手助けできなかったのは、ほんとにゴメン。
　でもね。ちゃんとアンタのことを考えての転生先だったんだよ。

　見た目はあんな感じだけど、陽気でいい人たちだったでしょ？
　仲間の見た目を受け入れて、仲間の気持ちに共感して、
　苦労を分かち合いながら、皆と一丸になって差別に抗う物語。
　本当の幸せを見つけるための道標は、ちゃんとあの環境にあったんだよ」


蟋蟀男
「……今更おせーだろ。俺とお前、双方の所為でな。
　どうしろってんだよ、こんなんに成っちまって」

ガラテア
「どうもしなくていいよ、もう次は無いもん。
　こっちも大切な用事があるし、
　ササっと〈あの世界〉に送って終わりにするよ」

蟋蟀男
「……マジ反省し切れねー」


？？？
「蟋蟀男くん！！！！！」


蟋蟀男
「！？　バカ、こっちに来るな！！」

[56 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/12(火) 20:51:34]

談論が終わる今際の最中、彼らの目の前に現れたのは、
蟋蟀男との差異が正直わかりづらい
メスのコオロギ人間、蟋蟀【コオロギ】女だった。


りん
（に、二ひ……　二人目…………）

蟋蟀女
「蟋蟀男くん……　しんじゃ……って…………？」

蟋蟀男
「おいガラテア、こいつを巻き込むんじゃねーぞ……！
　こいつはただの世話好きで、俺が反体制的組織で
　大罪を犯さないように、監視目的で組織に入っただけで……」
ガラテア
「何も過ちを犯していないの？」

蟋蟀男
「見逃してくれ！　蟋蟀女は俺のために……」


蟋蟀女
「あなたですか、蟋蟀男くんの命を奪ったのは……？
　国防隊の方……　にしては
　反体制的な出で立ちですし、商売敵の方ですかね」


ガラテア
（……ちゃんと、ヒロイン候補な子もできたじゃん）

[58 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 08:04:05]

蟋蟀男を守るため、日々鍛え続けていた彼女の体躯は、
人の括りに属するオス達にも決して引けを取らない。

蟋蟀女
「覚悟してください」

発達した脚部を駆使し、縦横無尽に周囲を跳び回る。
微かな気の緩み、付け入る隙を狙う眼は、黒く澄み切っていた。
一度好機を見出せば、科学的、非科学的双方のエネルギーを
帯びた跳び蹴りを、相手の急所へ的確にお見舞いすることだろう。

だが、相手が悪すぎた。


ガラテア
「“Garden Space Pond.”」

蟋蟀女
（ッ？！）

虚空から現れた水の塊に、為す術も無く捕えられてしまう。
彼女は復讐を成し遂げるため、藻掻き、足掻く。
だが、神の姿は変貌し、切なる願いを容赦無く噛み砕く。

ガラテア
「“Form of Megalodon.”」


愛に生きたコオロギ娘の一生が、終わりを告げる。

[59 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 11:52:39]

蟋蟀男
「テメエッッッ！！！！！
　ついに見境無くなりやがったなァ！！！！！
　慈愛の女神気取っておいて、人の境遇を鑑みず
　残虐な手段で命を奪うたァ、どう言う了見だァ？？！」

ガラテア
「あのさ。アンタは＂よっつ＂勘違いしてるかもね。
　ひとつ、アタシは慈愛の女神なんかじゃない。
　人の生き様や因果応報を好む、ただの快楽主義者だよ。

　ふたつ、アタシは罪人に相応しい結末を用意しただけ。
　同情の余地はあっても、＂望まない仕事＂を
　無理矢理やらせる組織の一員で、色々やってたんだよね？」


蟋蟀男
「全部、俺のせいで…………」

ガラテア
「そして、みっつめ。今アンタが存在できてる理由、考えてみ」







「蟋蟀男くん……」

[60 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 11:53:13]

蟋蟀男
「蟋蟀女！！？　ああそうか……　霊体って概念は
　転生者だけの特権……　てわけじゃねーよな、そりゃ……」


蟋蟀女
「ごめん……　仇討ち……　できなかった……」

蟋蟀男
「お前、俺なんかに付き合うから、こうなったんだぞ……！」

蟋蟀女
「放っておけるわけないもん……！
　もう私たちが最後の……　生き残りだったんだから……」


蟋蟀男
「お前……　貴女だけでも、逃げてほしかったですよ。
　見た目こうでも、人は人なんですし。
　きっと、俺以外の誰かと幸せになれる可能性も……」

蟋蟀女
「そんなの考えられないよ！！　だって、
　私は子供同士だった頃から、ずっと愛してるんだもん！！」

蟋蟀男
「ええ、貴女はそうでしたね……。
　それなのに俺は、ただ見た目だけで避け続けて……」

[61 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 19:03:16]

蟋蟀女
「蟋蟀男くんって、昔から私たちのこと避けてたよね。
　「コオロギ人間が好きじゃないんだ」って。
　皆が心配してくれても、つい素っ気ない対応しちゃって、
　蟋蟀男くんの両親も含めて、皆が放任思考になっちゃった。

　でも、私は放っておくなんてできなかったんだ。
　だって、私は蟋蟀男くんより、ずーっと先に
　産まれてきた、お姉ちゃん的存在なんだもん。
　私より小さい子が悩んでたら、寄り添ってあげないとね。

　でね？　一緒にいるうちに気づいちゃったんだ。きみの優しさに。
　素っ気なく見えても、皆の好意を無下にしたりしないし、
　傷つけないように注意してるんだなーって、感じたんだ。

　皆に頼んで作った、大きすぎちゃった誕生日おにぎり。
　私が落として台無しにしちゃったのに、こっそり食べてくれて。
　砂も一緒に食べそうだったから止めに入っちゃったんだけど、
　気まずそうに目を逸らしてたの、可愛いかったよ。

　大人たちの命が奪われていったあの日。好きじゃないって
　言ってたのに、私たちを守ろうと国防隊に立ち向かってて。
　さすがにあんな事にはなっちゃったけど、
　皆のために戦おうとした姿、とってもかっこよかった。

　不器用だけど、ちゃんと人を見てくれてる優しい蟋蟀男くん。
　そんなきみと、いつまでも一緒に、いたかった……　よ……」

[62 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 19:03:57]

（本当、全部神様の言う通りだったじゃねーか……。
　前世を含めて、こんなに魅力的な女性は他にいなかった。
　きっと、俺が＂今＂から目を背けなければ、
　俺のためだけの、『幸せに繋がる物語』を歩めていたんだろうな……）


蟋蟀男
「本当、全部今更過ぎますよね…………　俺。
　こんな反体制目的で、ついには悪の道に落ちた俺を、
　最後まで見守り続けてくれた貴女を、見た目なんかで避けて。
　貴女は、俺なんかには勿体無いような、素敵な女性です。

　貴女は、貴女だけは……　幸せになってほしかった……」

[63 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 19:51:38]

ガラテア
「話は済んだかな？　それじゃ」

蟋蟀男
「ま、待ってくれ……　待ってください！！
　彼女は、彼女だけは転生させてやってください！
　俺と違って、蟋蟀女は初めて死に陥ったんです！
　俺みたいに、もう一度チャンスを……！」

ガラテア
「やっぱ勘違いしてるね。初めからそのつもりなんだけど。
　そして56号くん、アンタが彼女を守るんだよ」



蟋蟀男
「え…………　あ、えッ！？」

ガラテア
「勘違いよっつめ。アタシが蟋蟀女ちゃんの存在を知って、
　それでもなお、アンタたちを痛め付ける奴だと思ってること。
　アタシは慈愛の女神じゃないけど、苛虐主義な邪神でもないんですー。
　アタシにも非があるのに、非情な終わり方にするはずないじゃん。

　アタシは徹頭徹尾『快楽主義者』なの。
　満足できる終わり方じゃなきゃ、気が済まない性質なわけ」

[64 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 20:30:16]

蟋蟀男
「は、はは、ははは……！　え、本当ですか……！
　こんな、幸せになってしまっていいんですか……？
　本当に、その……　何から何まですみません……！」

ガラテア
「まあ、次は長年紛争が続いてる世界観に送るつもりだけど」

蟋蟀男
「えぇッ！！？」
ガラテア
「当然でしょ？　アンタたちはガッツリ罪人なんだから。
　やり直せるチャンスがあるだけ、ありがたいと思いなー？」
蟋蟀男
「あ……。ああ、はい……　そうですよね……」

ガラテア
「まあ要所要所で手助けしてあげるからさ。
　理不尽に命を落とすことは無いから、安心したまえ〜」

蟋蟀男
「はい。今度こそ、逃げ出したりしません……」

[65 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/13(水) 20:32:22]

ガラテア

「じゃ、二人とも手を繋いで〜。何なら抱きしめ合って〜。

　万が一別々の世界に移っちゃったら、こっちも大変だからね〜」

蟋蟀男

「言われずとも、絶対に離しませんよ」

蟋蟀女

「あ、あの、神様！

　先ほどは、ご無礼を働いてしまい、誠に申し訳なく……」

ガラテア

「気にしてないから、はよ抱けー！」

「◯◯さん。俺はもう、どんな姿形でも、貴女への愛を貫き通します」

「◯◯くん。どんな事があっても、ずっと、一緒に乗り越えていこうね」

新たな門出を迎えた二人の未来は……　dice1d2=1 (1)

──────────────────────

１．明るい／２．暗い

[67 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 08:12:54]

──────────────────────

弱者を苛む惨憺たる世界。そこからの解放を

先の二人が果たしたその頃、世界は静寂に包まれていた。

りん

（あら……？　また時が止まってはる……）

ガラテア

（ほんとゴメン！！　三女ちゃん救わなきゃなのに、

　他の子たちの弔いにかなり時間費やしちゃって……！）

りん

（あぁ、いえ……。おふたりには、幸せになってほしおす）

ガラテア

（少し待ってて？　三女ちゃんの居場所確認してくるから）

りん

（お、おおきに……）

《黒虫義賊》は、〈生まれに付随する枷〉に起因する社会圧から逃げ、

反体制主義や拝金主義に染まった虫人間達のみで構成されている。

静止世界の中、その構成員の群れを掻い潜り、アジトの構造を探る。

ガラテアが最奥部に辿り着いた時、三女は……　dice1d8=8 (8)

──────────────────────

１〜２．まだ全然無事だった／３〜４．少し痛め付けられていた

５〜６．大怪我をしていた／７〜８．〈植物〉になっていた

[68 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 08:39:15]

──────────────────────
『植物』
植物とは、生きとし生ける全ての生物にとって、大切な存在である。
生命の糧としては勿論、草の影や木のウロ、花々の見た目等が、
あらゆる生命体にとっての『憩いのひと時』を生み出してくれる。

だが、動物たちと違い、彼らは命が軽んじられやすい。
＂物を言わず、（一部を除き）大きな動作を見せない＂植物たちは、
感受性、共感性の強い者でなければ、庇護の意識は向かないものである。

日々恩恵を受けているからこそ、忘れてはならない。
植物もまた、物静かながら逞しき生命力を持った、＂生物＂なのだ。



りん
（あ、がらてあはん！　三女は……）
ガラテア
（ゴメン、ゴメン、ゴメン、本当にゴメンっ！！！）

りん
（え

ガラテアはりんの手を掴み、空間転移で最奥部へと向かった。

[69 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 09:20:17]

アジトの最奥部で、空を切る炸裂音が鳴り響く。


皇帝蟻
「……流石にもう充分じゃねーのか」
蜘蛛男
「首はッ！　念入りにッ！　やらねーとッ！
　すぐにッ！　復活ッ！　するんすよッ！！」

蜘蛛男は、体中から作り出すことができる
〈魔力の宿る糸〉を鞭に変え、振るう。

皇帝蟻
（可哀想に……）


ガラテア
「いい加減にしろ」

皇帝蟻
「？！　何だキサマはッ！」



蜘蛛男
「……おーいおいおいおい、ガラテアかよ……」

ガラテア
「落ちるとこまで落ちたものだね。転生者9号」

[70 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 11:47:41]

皇帝蟻
「おい！　ど、どういう事だ！？」
蜘蛛男
「こいつ、俺を転生させた神なんす。
　しばらく見ねーなと思ったら
　何か今突然現れたんで、俺も当惑してるっす」

ガラテア
「まずはその子を返しな。用はそれから」
蜘蛛男
「いやいや、まだ返すわけには……　ってそうか。
　どうせここが決戦の場になるんだし、関係ねーな」

蜘蛛男は、三女を吊るす糸を切り払い、りんの元へと送り飛ばす。

りんの元に返ってきた彼女は、ほぼ全ての意思疎通手段を失っていた。
感受性の強い方々への配慮により、細部の詳細な記述は控えさせていただくが、
腕と脚は動きを止め、声帯は熱を帯び、首は碌に動かせない状態である。


りん
「三女……　三女……？　返事しい、三女……！！！！」

蜘蛛男
「視線も喪失させるつもりだったが、間に合ってよかったな。
　ま、ガラテアがいると知ってりゃ、疎通手段が有ろうが無かろうが
　関係ねーから、＂傷一つ無く＂返せたんだがねぇ。

　元のままなら姉妹共々、何かしら価値は有ったろうし、
　いやはや正に『骨折り損のくたびれ儲け』だぜ」

[71 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 12:26:46]

りん
「あてが……　あてが…………　あてが…………

ガラテア
「リン・サエグサ。悪いけど、一旦三女ちゃんと一緒に
　別の世界に送るね？　安全面的に、何も無い異空間になるけど」

りん
「え……？」

ガラテアは、姉妹を避難させた。
これから始まる＂決戦＂に、巻き込まないために。




皇帝蟻
「おい、どうするんだ、蜘蛛男！！！
　明らかに《神》を怒らせてるじゃねーか……！！」

蜘蛛男
「やだなーボス。部下共のことを信じてくださいよ。
　俺達には、〈仲間〉が沢山いるでしょー？」

皇帝蟻
「そ、そうか、そうだな……！　よし……

　お前ら、非常召集だッ！！！
　《ショッカクローグ》！　《虫間管理者》共！
　全戦力を持って、迎え撃てェ！！！」

[72 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 20:18:08]

号令を受けた部下達が、どこからともなく現れる。

ショッカクローグ
「ヒ゛イ゛ィ゛ー゛ー゛ー゛ッ ！ ！ ！」
無数に湧き出る〈虫人間〉のならず者たち、《ショッカクローグ》。

蠍男
「俺らに歯向かおうたァ、何処の何奴だ？　あァン？？」
強烈な毒突きで数多の屍を築きし者、《蠍【サソリ】男》。

飛蝗男
「貴様が、二人を……！！」
元蟋蟀男達の目付役でもあった組織の古株、《飛蝗【バッタ】男》。

鍬形男
「あ……　あ…………♡」
自慢の角が戦闘で使い辛く、劣等感を抱く者、《鍬形【クワガタ】男》。

蜂男
「呼ばれて来ましたけど、なんかヤバそっすね……」
ヒトの体躯上難しい〈飛翔〉を可能とする者、《蜂男》。

蟷螂男
「……我が身の錆と化せ」
現皇帝を慕う寡黙な忠臣、《蟷螂【カマキリ】男》。


皇帝の命を承け、全ての構成員が一堂に会する。
誰一人として、自身の未来に疑念を抱いていない様子だ。
彼らの感覚中枢に、『虫の知らせ』などは備わっていない。

[73 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 20:19:23]

皇帝蟻

「神だか何だか知らねーが、あまり俺らを見くびらない方がいいぜ。

　先代を含め百年以上、伊達で反体制組織を続けてきたわけじゃねー。

　国防隊にも引けを取らねー最上級の戦力を、篤と味わいやがれッ！！！」

今、決戦の火蓋が切られた。

ガラテア

（今まででも一番よ……。まだ幼い子供を無理矢理捕まえた挙げ句、

　「不都合があったから」と、その子の未来を奪う悪党。

　そんな輩を不問にする長。付き従う衆愚共。

　快楽至上主義者として、余りにも不愉快極まりない展開。

　確かに、彼女の身に起きたこともまた、因果応報ではあるけれど。

　いたいけな子供に、自身の都合で凄惨な目に遭わせる奴がいること。

　私欲で悍ましい所業を行う奴を、許すような集団が存在すること。

　そして、彼らの存在を許してしまったアタシ自身のことも、許せない。

　でも、それとは別に……　〈憤り〉の横に、あるはずがない感情が……

　自分たちに明日があると信じ切ってる悪者たちを見て……

　やっぱちょっと、ワクワクしてる自分がいる……♪）

ガラテアは……　dice1d2=1 (1)

──────────────────────

１．一人ずつ相手をした／２．纏めて罰を下した

[74 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/14(木) 21:09:13]

皇帝蟻
「掛かれェ
ガラテア
「虫人間の皆ー！　人生、楽しんでるー？」

号令を遮り、一部の構成員にとっては
地雷的である質問を、これでも無意識に発している。

ＳＲその１
「てめぇふざけてんのかッ！！
人生に不満がねぇなら、こんな薄暗ぇ所にいねぇんだよ！！」

（皇帝蟻は、少し傷付いた）

ガラテア
「そんなアンタ達に、人生最大級のチャンスをあげちゃいまーす！
　この中の誰かがアタシに擦り傷ほどでも与えられた場合、
　アタシはすぐに負けを認めて、その人に神の力を継承しちゃうよ〜！」

彼女の衝撃的、挑戦的、魅力的な発言に、周囲が色めき立つ。


「か、神の力……？！　本当か……？」
「騙されんな！　俺達を挑発してるだけだ！
　仮に傷を与えても、気が変わったと吐かすに決まってんだろ！」
「も、もし神の力が有れば……　俺もきっと……！」

ガラテア
「嘘じゃないです〜。アンタ達に負けない確信があるんです〜。
　約束を反故にするようなサムいマネしないから、安心したまえ〜」

[75 二次元好きの匿名さん 24/11/15(金) 01:18:26]

今日もお疲れ様でした

[76 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 08:47:08]

戦場を包む高揚感は、さらに加熱する。

蠍男
「いいねェ、上等だ！
　だが継承する前に、俺様の毒で果てるんじゃねェぜ？」
飛蝗男
「蠍男。やる気を見せるのは構わぬが、平静を保てよ」

蟷螂男
「下がれ、俺がやる……」
先に口火を切ったのは、皇帝蟻の忠僕である蟷螂男だった。

ガラテア
「お〜。雰囲気クールだけど、色々アツそうだねー。
　じゃ、準備するね。“Form of Smasher”」

ガラテアの腕と胸部が極彩色に変貌する。
自慢の怪力をさらに磨き上げ、万全な備えを見せる腹積もりだ。


蟷螂男
「…………」

ガラテア
「にしても少し意外だね〜？　アンタは
　最後の方まで静観するタイプだと思ってたよ」

蟷螂男
「謀反のきっかけを、作らせはせん……。
　万が一にも、皇帝蟻様を傷付けるわけにはいかん……」

[77 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 08:48:32]

ガラテア
「あーそいやさ？　もしアタシに傷を与えられちゃった場合、
　神の力はアンタのものになるんだよ？
　アンタ的には、皇帝蟻様の物でなくてもいいの？」
蟷螂男
「愚問！！！　皇帝の資質は力に非ず！
　心根から民衆を想う、思慮深き慈愛の精神！
　重大な局面に陥ろうとも揺るがぬ、強靭な意志！
　その二つを兼ねし、〈高潔たる人格〉に有るのだ！！


　……貴女の力は、敵への抑止力として頂く。
　その力で、彼を〈真の皇帝〉の座へと、導いてみせる……」

ガラテア
（仕える相手を間違えてなきゃ、素直にいい子なんだけど……）


蟷螂男
「始めるぞ……」

ガラテア
「ん、オッケー、始めよっか！


　……えっと、ちょっとゴメン。
　そこの彼、なんか様子おかしいんだけど……」

ガラテアが拳で示した先にいる者は、鍬形男であった。

[78 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 11:42:05]

鍬形男
「あぁ……♡　あぁ…………♡」
鍬形男は、ガラテアの＂姿＂をじっと見据えている。


ＳＲその２
「あの、どーしたんす？　鍬形さん……」
鍬形男
「あー？　…………あ、ご、ごめん！！
　鬼の彼女が魅力的だったから、つい……」

彼は、ガラテアに一目惚れをした。
ガラテアとは異なる神の手による〈転生者〉の一人なのだが、
転生前後双方で、色々と『恋愛』に恵まれない人生を
歩んでいたため、＂伴侶＂に対する執着は相当なものである。

彼の身の上を語ると長くなるので、詳細は省かせていただくが、
転生前後の両親に『我が子』を見せるため、とても異性を求めている。



ガラテア
「あのー、アタシのこと鬼扱いは、少し心外なんですけどー？」

鍬形男
「あ、すみません！！！　決して貴女を卑しめている訳では無くて、
　素敵な角と、猿人間に近い可憐な姿を見て、鬼の方かなと……」

ガラテア
「ふーん？」

[79 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 18:21:15]

鍬形男
「……あ、あ、あの！！　俺は、鍬形男って名前です！
　貴女の、お名前を！　お聞かせ願えますでしょうか？！」
ガラテア
「そんな緊張しなくてよくない？　＂ガラテア＂だよー」

鍬形男
「ありがとうございます！　……あの、すみません！
　重ねての質問で恐縮ですが、お伺いしたいことがありまして……」
ガラテア
「なに？」
鍬形男
「えっと……！　もしもの話なのですが……、
　俺と結婚した後、子ども達が生まれてくるとしたら、
　何人くらいが理想的でしょうか！！」


ガラテア
（え）
鍬形男
「もしも、沢山の子ども達に囲まれて幸せになりたいようであれば、
　俺が粉骨砕身の心構えで、沢山の貨幣を稼いで見せます！
　お望みなら、この反体制組織を解体させて、真っ当な職に付きます！」

一同
「はあ！！？？」


ガラテア
（えーっと……）

[80 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 20:32:43]

鍬形男は今、惑乱状態に陥っている。二度の人生を歩む中で
出会ってきた女性たちの中で、一二を争う程に魅力的だと感じ、
同時に、この期を逃せば二度と好機は訪れないと直感したからだ。

蟷螂男
「貴様……　斬り刻まれたいようだな……」
ＳＲその２
「鍬形さん！！？　爆弾発言にも程が……」
皇帝蟻
（…………潮時が来ているのかな）

鍬形男
「ガラテアさん、よろしくお願いします！！」
ガラテア
「ゴメン、普通にいや。
　無遠慮に欲を押し付けてくるタイプの男性、好みじゃないっす」

鍬形男
「…………あ、あ　…………あ」


クワガタのオスは、拒絶したメスの命を奪うケースが多く見られる。
組織に潜入し、無理矢理に仕事をさせられている女性たち（のみ）を
身の危険を冒してでも救い出すことを生業としている程に
彼は紳士的なのだが、奥底で渦巻くクワガタの本能が、精神を侵食する。


鍬形男
「すみません、すみません……！　俺と結婚してください……！！
　俺、幸せにしてみせますから……！！」

[81 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 21:26:01]

ガラテア
「＂いや＂だって、断ってるでしょ！」
鍬形男
「悪いところは、直すよう尽力いたしますので……！！！」
ガラテア
「あの、そもそもゴメンね？　アタシ、クワガタムシに
　＂男性的な魅力＂を感じられないタイプなんだよね。
　来世で素敵な異性と一緒になれることを期待した方がいいよ」

鍬形男
「俺と…………　俺と…………！！！
理性のタガが外れた彼が、ガラテアに襲い掛かる。


鍬形男
「俺 と 結 婚 し て く だ さ あ あ あ あ
　あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ い ！ ！ ！ ！」



ガラテアは鍬形男に＂渾身の＂アッパーカットを叩き込み、
チリアクタの一つも残さず、消滅させた。

大いなる力を持つ神にとって、人の身を無に帰すことなど造作も無い。


ガラテア
「K i s s h o ．見た目アレなのに中身も終わってんじゃん」

無論、彼の境遇など、彼女が知るはずがなかった。

[82 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 21:27:26]

ショッカクローグ
「イ゛ヤ゛ア゛ー゛ー゛ー゛ッ ！ ！ ！」

味方の散り際を目の当たりにし、周囲は阿鼻叫喚の巷と化していた。

飛蝗男
「貴様……　鍬形男までも……！！」
蠍男
「どうしろってんだ、こんなバケモノ……！！」
蜂男
「えと、俺、逃げさせても……

全ての出入り口は、水の塊で封鎖されている。

ガラテア
「皆ゴメンねー遅れちゃって！
　それじゃ、神様チャレンジ、始めよー？


　……えー？　皆、戦意喪失しちゃってんのー……？
　じゃあー……　こっちから順番に行くね？」

熱意を感じる生き様にも期待していた彼女は、
早々に白旗を揚げる者たちを見て、少し落ち込んでいた。
だが、彼女は歩みを止めない。人の道を逸れた者共を裁くため。
三女の元へ向かうため。そして、りんの心を救うため。


なお、彼らの結末は分かり切ったものであるため、
残りの戦闘はほぼ全てダイジェスト形式でお送りさせていただきます。

[83 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 21:28:13]

飛蝗男
「貴様ああ
「昇天♪」

蠍男
「く、喰らいや
「おっそい♪」

蟷螂男
「コ ﾞウ ﾞテ ﾞイ ﾞア ﾞリ ﾞサ
「拍子抜け♪」

皇帝蟻
「オ ﾞマ ﾞエ ﾞヲ ﾞユ
「シュクセー！」

蜂男
「お、終わりだ
「アッパー！！」

ショッカクローグ
「ﾋ ﾞｨ ﾞｨ ﾞｨ ﾞｨ ﾞ
「虱潰し！！！」

[84 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/15(金) 21:29:59]

その地に残骸の湖が築き上げられても、彼女は決して歯牙にも掛けない。
それは残酷さが生む非情さから来るものではなく、
「同情の余地がある子は、転生させるから大丈夫」という、
罪人の命を過剰に軽んじているが故の、ある種の無邪気さから来るものなのだ。


ガラテア
「で、やっぱアンタが残るんだね」

天井から全てを眺めていた事件の主犯格が、骸の上に降り立つ。

蜘蛛男
「いやーすげーぜ。さすが神様。
　矮小な存在である人間共では、到底敵う訳がねーですわ」
ガラテア
「さっさと始めるよ。すぐに終わるだろうけど。
　アンタのための＂とびっきりの罰＂でね」

蜘蛛男
「勘弁してくれ〜。人間の身で怒りの籠った一撃なんぞ
　受けようもんならと思うと、ゾッとするっつーの。

　しっかしまあ本当に、ボスを始末してくれて助かったぜ。
　もし生きてたら、「巻き込むんじゃねー無礼者！」
　って怒鳴られて、少しだけ遣り辛かっただろうからよ」

ガラテア
「アンタなりの手段があるっぽいね」
蜘蛛男
「当然だろーがよ」

[85 二次元好きの匿名さん 24/11/16(土) 01:50:56]

蜘蛛男イケメンだな

[86 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 09:03:06]

蜘蛛男は、周囲全体に〈魔力の宿る糸〉を張り巡らせた。

蜘蛛男
「いやー本当、万能すぎるぜこの《神の糸》。
　紐の生成だけじゃなく、手足の生成、傷の修復、
　縦横無尽な移動手段、縁の生成と縁結び、感覚支配、
　言動操作。そして、あらゆる＂力＂の吸収。

　半端な転生主人公もビックリだろうぜ、このぶっ飛び具合！」

ガラテア
「……アンタへの憐憫と期待の気持ちで
　作って貰ったんだけど、見事に裏切ってくれたね」



少し、蜘蛛男の身の上話をしましょう。

彼は生前、事故による後遺症が原因で、
幼少期の頃から手足との別れを告げることとなってしまった。
生前当時はまだ義肢技術が発達しきっておらず、
簡易的行動のみ可能な、装飾義肢での生活を余儀なくされた。

両親は『生きて幸せになってもらうこと』を望んだ。
生きることに希望を抱いてもらうため、友人候補の子たちや
娯楽用のビデオテープ等を集め、環境作りに注力してくれたのだが、
この時はまだ、彼の心に希望は宿っていない。

[87 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 12:24:49]

転機は、少年期の半ば頃に訪れる。友人に勧められて観た
クモのヒーローが活躍する映画作品に、彼は夢中になっていった。

遺伝子操作により生まれし生物に起因して始まる、魅力的な世界観を持つ物語。
全身タイツに覆面姿でありながら、独特なスタイリッシュさを持つヒーローの造形美。
そして＂特別な力＂を手に入れ、意志や信念のために行使する主人公の姿。
ヒーローの姿は、彼に生きる希望と夢を抱かせる。

科学好きな主人公による影響と自身の夢の実現のため、彼は科学者への道を志す。
友人たちの協力もあり、学生の身分でありながら少しずつ成果を挙げていき、
機械工学の道で将来を有望視される程の存在になるなど、
幼少期の空虚に感じた日常が、性質の悪い夢であったかのように輝き始めた。

だが彼の人生に、再び暗雲が立ち込んだ。義肢の技術革命にも繋がる
研究成果を、欲に目が眩んだ友人たちに裏切られる形で横取りされてしまう。
その後、完全に梯子を外されて孤立した彼は、部屋に閉じ籠っていった。


季節は夏。学生たちがそれぞれの青春を謳歌する中、
彼は全てを諦め、勧善懲悪な映像作品に没頭する形で現実逃避をしていた。
そんなある日の夜、彼の行く末を決した事件が起きてしまう。

友人たちの名誉を過度に損なわないために付け加えておくと、
その事件自体には、彼らは関与していなかった。
彼らとは別のグループの不始末であることを留意していただきたい。



愚かな少年たちが遊びで使っていた花火の火が、
彼の家に引火した。

[88 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 13:38:45]

仕事のスケジュールというものは、なかなか変えられないものである。
日中の我が子を支えるため、両親は勤務時間を夜の間にしてもらっている。
今までは親御さんたちに許可をいただき、夜間は彼の友人たちに
面倒を見てもらっていたのだが、その友情は失われてしまっていた。

技術的な都合上、彼は簡易的な義肢での生活を未だに続けていた。
目が覚めたばかりなこともあり、その状態での避難が
上手くいくはずもなく、彼は煙と炎の中で一生を終えることとなる。

「俺の人生って、何だったんだろう」
誰に向ける訳でもないその問いを、最後の瞬間まで繰り返し続けた。


彼が迎えたそんな結末を、勧善懲悪を好む系統の
快楽主義者である《ガラテア》が、見過ごすはずが無い。

世界に影響を及ぼしてしまうため、現状ただの蘇生は
神々の取り決めにより＂神相手にしか＂許されていないが、
別の世界での居場所を与え、新たな人生を歩ませることは許されている。

彼女は当初、暇潰し目的で役職を引き受けたに過ぎなかったが、
元来『人間たちが（様々な理由で）大好き』だった彼女にとって、
罰も救済も自分の手で好きに与えることが
ある程度許されているこの役職は、まさに天職と言え……　るのかもしれない。


ガラテアは転生のサプライズとして、彼が好きだったヒーローを
モチーフとして含めた境遇と力を与えることに決めた。
《魔力の糸》は想定上、万能過ぎる力であるため、力を生み出す役割を持つ
上位の神様に苦言を呈されたが、オドシを交えて無理矢理作らせた。

[89 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 20:19:19]

〈星の大国〉と称されし地域の片隅で、彼は《蜘蛛男》として生を受ける。
乳児とは思えぬ程の利発さと、魔力の糸の力を見た両親は度肝を抜かれた。
（文字通りの）神童が現れた事をどこからか聞きつけた新聞記者の手により、
彼は生後数日にして、世間を大きく賑わわせる存在となる。

魔力の糸は余りに万能であった。縁の生成で望む存在との出会いを生み、
縁結びや感覚支配、言動操作、時に実力行使で人々の悩み、願いの解決を可能とする。
まるで〈神の使い〉かの如く、人々の信頼の獲得に成功した彼は
見た目等のハンデを物ともせずに、名実共に大国の英雄への道を歩んでいた。

この世界の住人ではない＂一歩引いた視点＂から彼の行動を見る限り、
既に不穏な様相を醸し出していることを感知できるはずなのだが、
ガラテアは欠片も疑いを持たずに、彼のサポートを続けている。

陰惨な人生を過ごした人間が、憑き物が落ちたように朗らかに笑っている。
自らの手で人の心を救えた実績から来る高揚感が、彼女から冷静さを奪っていた。

幸せに満ちた人生を見守っていたガラテアであったが、彼女は彼以外にも
〈転生者〉を抱えており、その内の一人をサポートしていた時に事件は起こる。
彼女のもとに謎の〈陰陽師〉が現れ、力を用いてガラテアを札の中に閉じ込めたのだ。

強力な封印下で彼女が身動きを取ることは叶わず、
転生者たちの手助けを行えなくなってしまった。

その一件は、蜘蛛男が成人の歳を迎える頃に起きていた。
その日以降、ガラテアが彼の前に姿を見せなくなった件を
『転生者のサポートは、大人に成る迄の期間限定』と推察した。

「じゃあ、もう良い子振らなくていいよな」
心の奥底で芽生えた野望を実現するため、彼はヒーローを辞めた。

[90 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 21:54:50]

蜘蛛男
「実際楽しかったぜ〜、ヒーローごっこもよ？
　殆どの連中が操られてることに気付かずに崇拝してくれるんだからな。
　残りの怪しむヤツらも《神の糸》を使えば、すぐに味方に成りやがる。
　最高の力を授けてくれやがって、サンクスなぁ！」

ガラテア
「前世以上に、今世の両親に同情してしまうよ。
　我が子が誇り高い存在になってくれたかと思えば、悪党になってしまってさ」

蜘蛛男
「それだぜそれ！　聞いてくれよ〜！
　アイツら、我が子のことを疑い始めやがったのさ！
　本当の親父とお袋は、んな真似しなかった分すげーショックでよ？
　堪らなくなったんで、＂俺様＂の糧にしてやったって訳！」

ガラテア
「なるほど、合点がいったよ。周囲の糸もそれでしょ？」

蜘蛛男
「さすがだ、ご明察」

魔力の糸の持つ力の内の一つ、〈力の吸収〉。
魔力、霊力、呪力、神通力等、あらゆる力を
生命、非生命を問わずに吸収し、
自身の力として蓄えることができる能力である。

蜘蛛男
「ボス共の分も貰っておかねーと勿体無さすぎんだろ？
　これから俺様が＂神に成る＂為の、大切な養分なんだからよ」

[91 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/16(土) 22:27:47]

ガラテア
「神に成る、ね……。『大いなる力には、大いなる責任が伴う』
　あの作品でも印象的に使われた、先人から受け継がれる格言。
　少しも届いていないところを見てると、皆が浮かばれないよ。
　むしろ緑のアイツに似てしまった感じよね、アンタ」

蜘蛛男
「責任なんざ気にしてたら、それこそ呪いになっちまうだろーがよ。
　俺様はこの世界の神に成る者だぜ？
　力を自由に行使してこそ、神に相応しい存在ってもんさ」

ガラテア
「……アタシも似た部分はあるんだけどさ。
　仮にアンタが神だとしたら、
　邪神が統治する世界なんてゾッとしなさすぎでしょ」

蜘蛛男
「関係ねーな。この世界の主人公は、俺様だ」


突如、蜘蛛男の身体が急激に膨張を始めた。
溢れ出し、身に纏わり付く＂数多の力＂により、アジトは崩壊していく。


「蜘蛛男などと言う凡百な存在じゃねー。
　俺様は、この国を破壊し、理想の地を創り上げる夢幻の神」


「改めまして、《ツチグモ》だ」

[92 二次元好きの匿名さん 24/11/17(日) 00:57:59]

かなしい

[93 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 08:05:57]

山間の地から雲に向かい、鴻大さを誇る蜘蛛が聳え立つ。

ツチグモ
「随分小せーもんだな、この大地はよぉ。
　こりゃ＂こんな島国の神＂で満足できる訳ねーな。
　祖国すら超えてこの宇宙……　いや、マルチバースでも果たしてやるか？」

ガラテア
「随分大きくなったもんだね、図体も自尊心も。
　なんかで『巨大化はまず負ける』って見たけど、大丈夫そ？」

ツチグモ
「フィクションにハマってんじゃねーぜ、神を名乗る者がよ。
　体格差から来る絶望感、挨拶代わりに受け取りな」

ツチグモは奪い取った＂力＂の一つに糸を巻き付け、腕を創り上げる。
具現された腕がガラテアに襲い掛かるが、彼女は拳で弾き飛ばす。

ガラテア
「拳じゃ無理だね。消し飛ばせない。
　力、蓄えてきただけ有るっちゃ有りそうじゃん」

ツチグモ
「さすが神だな。規格外だ。だが程度は知れた」

「＂八百万ノ渇望＂」

これまで奪い去ってきた全ての力を、自身の腕に変貌させた。
八百万と八の手足が、天を埋め尽くし、神の座に狙いを定める。

[94 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 08:08:04]

ツチグモ
「俺様を神にしてくれて感謝するぜ、女神様！
　だがお前が＂慈愛の女神＂を気取って
　俺様の邪魔をするなら、消えてもらうしかねぇよな？」

ガラテア
（５６号くんもそうだったけど、
　アタシってそんな優しい神様に見えてんだね……。
　やりたい事に忠実なだけなんだけどなー）

ツチグモ
「終わらせてやるぜ、この因縁をよォ！！！」

ガラテア
「すぐ終わるよ。格が違うもん」

ツチグモ
「はぁ？？
ガラテア
「Add “Bitter end Stream”
　to the “Oceans' Heaven.”」


天に、二つ目の海が現れた。力の化身が、海に飲まれ行く。
海は、禍々しい姿に変貌し、数多を断ち切る激流を生み出した。
離れ離れとなった力は、全て海に溶け出し、在るべき場所への還元を果たす。

力に溺れた神は、八百万と八の手足との別れを告げた。
だが、女神が下す裁きは、未だ終わっていない。

[95 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 08:51:30]

ツチグモ
「あ……　あ……　ち、力、チカラッ！！！！
　何故……　何故《神の糸》が使えねぇ……！！？」

ガラテア
「当然でしょ？　誰がアンタにあげたか忘れちゃったの？
　自身を全能だと思い込むと
　立場を忘れちゃうもんなんだねー、人間って」

ツチグモ
「あ、あ……」

ガラテア
「連れて行ってあげたい場所があるから、
　とりま一旦終わらせるね？

　Form of my master “Poseidon.”」


ツチグモより遥かに大きな体躯に変貌した彼女は、
自身の手を〈三叉槍〉に変え、邪智暴虚の神に力を振るう。

クモに魅入られし彼の二度目の人生が、幕を閉じた。

[96 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 11:33:06]

女神に格の違いを見せつけられたツチグモは、虚空を漂っていた。
だが、持って生まれたはずのものは、霊体と化してなお喪失している。


ツチグモ
「無い、無い……　俺の……」

ガラテア
「『俺』ってまあ、トーンダウンしちゃってんねー。
　見た目仰々しいのに、中身は人間相当になっちゃったかな」

ツチグモ
「かえ……　して……」

ガラテア
「えー？　元に戻っただけじゃん。
　アンタ、力あげたらまた増長しちゃうでしょ？
　心機一転、何も持たずに人生を始めた方が
　きっとアンタの為になるぞよ」

ツチグモ
「ひどい……
ガラテア
「非道なアンタが言うんじゃないよ。
　三女ちゃんの未来を、希望も残さず奪っていっちゃって。
　人並みのことができない辛さ、身をもってわかってるはずなのに
　同じ境遇にさせるようなマネするアンタに、相応しすぎる末路でしょ」

[97 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 11:34:25]

ツチグモ
「か、回復魔法……
ガラテア
「はぁぁぁ？？
　アンタ、意思疎通手段を奪うためにやったんでしょ？
　力を奪い取る〈魔力の糸〉で執拗に打ったんだから、
　あの子の体がそんな普通の方法で戻るわけないじゃん。

　そもそも被害者は三女ちゃんだけじゃないでしょ？
　力の出どころ、組織の内情、ボスって子への態度。
　殆どの事件はアンタが黒幕だったんじゃない？
　彼ら彼女らを相手に、どう償う腹積もりなの？」


ツチグモ
「ヒ、ヒグ……　ヒッ……
　モ、モウシワケ……　ゴザイマセン…………」

ガラテア
「叱られて泣いてんじゃないよ。実年齢もう中老のくせに」


彼は一度目の人生が十代後半で終わり、
二度目の人生で成人を迎え、その直前にガラテアがいなくなった。

同じくガラテアを失った蟋蟀男が生後一箇月頃であり、
彼がある程度大人になるまでの年月が経過しているため、
つまり彼の実質的な年齢は五十歳前後、もしくはそれを優に超える。
何ともいたたまれないものである。

[98 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 11:35:36]

ガラテア
「アンタの次の転生先、どうしよっかなー。
　生命力＂だけ＂与えて争いだらけの世界に送るかー、
　自由な代わりに＂ただのクモ＂にしちゃって、
　食に飢えた動物たちのハートフルな世界に放り込むか……

　アンタはどっちがいいー？」

ツチグモ
「ユルシテ……　クダサイ……
ガラテア
「甘えんな爺さん。因果応報を受け入れるんだね」

ツチグモ
「ウゥ…………　オヤジ、オフクロ……
ガラテア
「今世のご両親のこと忘れてんじゃないよ。
　四人への贖罪も兼ねて、次の世界では
　立派になってみせることだね。成れるなら、だけど」
ツチグモ
「ウゥ…………　ウゥ…………」



ガラテア
「……なーんて、冗談だよ♪　おめでとー！　アンタには
　第三の選択肢、神の世界に転生する権利が与えられてましたー！」

ツチグモ
「え…………？」

[99 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 12:56:36]

ガラテア
「曲がりなりにも神に成ったわけじゃん。
　神としての性質を失うの、色々もったいないと思わない？
　次の世界じゃ絶対に手に入らない地位だよ？」
ツチグモ
「ほ、本当ですか…………？」

ガラテア
「神々や人々に誓って、嘘なんかついてません！
　アンタが望むなら、＂未来永劫＂
　神として存在できる世界に連れてってあげるよ！」

ツチグモ
「へへ……！　あ、ありがとうございます……！」
　
ガラテア
「じゃあ覚悟はいい？　アタシも＂手助け＂してあげるけど、
　最終的にはアンタが頑張ることになるんだからね？」
ツチグモ
「はい、いつでもできてます……！」
（しかし、まさかここまで甘々な神様だとはな……）

ガラテア
「じゃ、アンタが望んだ最高の世界へ行くよ！
　どんな事が起きても、＂神である限り＂
　未来永劫存在し続けられる、素敵な世界！



　《 冥 府 の 底 》へ！」

[100 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 14:47:29]

ツチグモ
「メ、メイフ……！！！？？」

ガラテア
「そ♪　今から行くのはハデス様が治めている世界で
　タルタロスさんが領主（？）やってるとこなんだけど、
　ポセイドン師匠特製の、ものすごーく頑丈な牢獄でね？
　＂外界からの危険には＂怯えなくていい、安心設計なんだよね〜」
ツチグモ
「牢獄なんじゃねーかッ！！！！」
ガラテア
「当然でしょ？？　アンタはかなりの大罪人……じゃないっけ、もう。
　皆の人生を奪った〈邪神〉なんだから、お似合いの場所だよね？」

ツチグモ
「やめてくれ……！！
　これ以上俺を苦しめないでくれ……！！！」

ガラテア
「ダイジョーブ、いっぱい手助けしてあげるから！
　神の力で、アンタを何度でも蘇らせてあげる！
　正確にはちょっと違うんだけど、
　所謂『永劫回帰』って能力をプレゼントしまーす！」

ツチグモ
「やめて……　ください……！！！
　い、いやだ……　ヤダ……！！！」

ガラテア
「あとは冥府で詫びな。ね♪」

[101 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 20:14:01]

冥府の主ハデスに（渋々）許可をいただき、
ツチグモの《冥府の底》への転生が決まる。

冥府の底、正式には〈タルタロス〉とは。
どこかの世界の地の奥底に存在する、広大な監獄である。
静寂の時は症気のような霧が立ち込んで吐き気を促し、
時に荒れ狂う風が発生して受刑者共を襲うとされている。

さらに受刑者それぞれに罰が与えられており、
ある者は飢えに苦しみ続け、ある者は獰猛な怪鳥に襲われ続け、
ある者は岩と向き合い続け、ある者は燃え盛る車輪と共に回り続けているという。

この地で『定期的に同じ末路を辿る』
能力を備え転生を果たした神、《ツチグモ》。
周囲には神々ですら手を焼く者共が
暴れ回り、天変地異を日常的に引き起こしていた。


果たして彼は、この地で再び自由を手に入れられるのか？
最後は彼が送る日々の一幕を、ダイジェスト形式でお送りさせていただきます。

[102 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 20:16:28]

巨人たち
「何だコイツは！！」

ヤラレチャッタナ

大怪鳥
「キ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ！ ！ ！」

ヤラレチャッタネ

岩の受刑者
「何邪魔してくれてんだァ！！！」

ヤラレチャッタノ

飢餓の受刑者
「久し振りのゴハアアアアアアン！！！」

ヤラレチャッタヨ

炎の受刑者
「熱いぜ……」

ヤラレチャッタカ

ガラテア
「クモの糸を掴み取れ！
　…………風強すぎて無理だねこりゃ」

ヤラレチャッター

[103 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 20:17:55]

ガラテア
「飽きたー！！　よく考えたらアイツもう邪神じゃん！
　人間でも無いやつに、なんで付き合ってんだよアタシー！！」


ガラテアは、＂自身にも存在する責任＂から逃げていた。
彼女の力の一つ《時空超越》、つまり時間遡行が可能であるからこそ、
りんたちの元への帰還を、ずるずると後回しにしてしまっていた。

そう聞くと「そもそも時間遡行でやり直せないのか？」という
至極当然の疑問が浮かぶものではあるが、決してそう単純な話ではない。
数々の物語でも見受けられる概念『タイムパラドックス』が、事態を複雑にする。

過去へ干渉するタイミング次第では、りんや三女、転生者たちとの出会いが。
そして、アジト最奥部での惨劇以前の全てのタイミングで、
〈元コオロギ人間だった二人〉の結末が変わってしまう危険性があるからだ。

快楽主義者の彼女にとっても、あれ以上の結末は考えられなかった。
彼女は二人の結末と三女の未来を天秤にかけ、＂二人＂を選んでしまった。


ガラテア
（わかってる、向き合わなきゃって、わかってるけど……。
　でも、どのツラ下げてりんと三女ちゃんに会うつもり？
　まだ幼い子供で、心根はちゃんと姉妹思いだった彼女じゃなくて、
　事情有りとは言え、反体制組織所属だった５６号くんたちを選んだ、アタシが……）


精神に未熟さが残る女神は、未だ答えを出せずにいる。

[104 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/17(日) 23:37:11]

──────────────────────
長くなり過ぎるために
冥府の道程を全没にした弊害が現在出ております……
品質が著しく低下してしまい、誠に申し訳ございません

[105 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 00:57:35]

「いつまでそこにいるつもりだ？　お前は」

ガラテアに詰問するのは、百の腕と五十の頭を携えし
〈ヘカトンケイル〉の一人であり、主神ゼウスと共に
様々な苦難を乗り越えた英傑、《ブリアレオース》であった。


ガラテア
「……あ、レオっさん！　ゴメーン、居心地良くて」

ブリアレオース
「なら代わってやろうか？」

ガラテア
「それはイヤかなー。連中の監視なんて、絶対すぐ飽きちゃうし〜」

ブリアレオース
「転生マネジメントよりは良いんじゃないか？
　悪者だけを相手にしていれば＂気に病まずに＂済むだろう」

ガラテア
「……今更投げ出せるわけないよ」

ブリアレオース
「なら前を向け。責務を全うしろ。
　お前が人々と向き合わない限り、彼らが救われることはない」

ガラテア
「レオっさん…………」

[106 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 01:18:00]

ブリアレオース
「望まぬ未来が訪れたとて、歩みを止める理由にはならん。
　人間が好きなら、彼らのためにも＂常に＂最善を尽くしてやれ」
ガラテア
「えへへ……　ほんと、レオっさんの言う通り。
　ありがとー。アタシ、ちゃんと向き合ってくるね」
ブリアレオース
「疲れた時はいつでも来い。何度でも説教をしてやる」




ガラテア
（『大いなる力には、大いなる責任が伴う』
　そうだね。アタシも、向き合わなきゃね）






ガラテア
「あ、ゴメン。それはそれとしてなんだけど、たまにでいいから
　〈クモ釣りチャレンジ〉してあげてくれませんかね〜……？」
ブリアレオース
「必要なのか、これは……？」
ガラテア
「もう邪神ではあるけど、手助けするって言っちゃったし〜……」
ブリアレオース
「……行ってこい」

[107 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 02:08:49]

その場所は、時の流れも、存在するもの同士で干渉する力も、
外界からの一切の危険も、全く存在しない。
暗く、冷たく、だが確かに安全と言える静寂の世界。
ひたすらに広がる虚空が支配する異空間に、りんたちは居た。


りん
（あら…………？　いつの間に、こんなとこ……
　そ、そや、三女……！！！）

三女は、何かを訴えるように涙を浮かべていた。
それは、自身の不注意から起きた事件に対する、心からの反省の気持ち。
謝罪の言葉を、自らの手で紡げないがゆえの、悔しさと罪悪感。
そして、あるはずだった未来を失った、憂い、悲しみ、絶望によるものである。

りん
（三女……！！　ほんま……　ほんまに、取り返しつかんこと……！
　あてが……　あてがあの時、あんたを止めてたら…………！！）


互いが罪の意識を抱く中、＂時を経ずして＂女神が降臨する。


りん
（がらてあはん……？！　その、もう終わらはったんか……？）


ガラテア
（…………うん。ただいま）

[108 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 05:38:53]

自身が持つ責任を再認識し、女神としての自覚を取り戻した
ガラテアのもとに、少女の思念が届く。


三女
（神様なんか……？）
ガラテア
（まだまだひよっこだけどねー）
三女
（うちの思考届いた……？！
　お願いや……！　うちの謝罪、りんと四女に……
ガラテア
（それは＂まだ＂お断り。しばらく待っててね？）


りん
（がらてあはん……？）
ガラテア
（ゴメン、三女ちゃんとお話してた）
りん
（あの子は、なんて……？）
ガラテア
（今はまだ教えてあげなーい。
　それよりさ、アンタには色々と話があるんだよね）

りん
（……？）

[109 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 10:09:09]

ガラテア
（まずひとつめ。アンタには伝えてなかったと思うけど、
　アンタたちの世界って、今もちゃんとヒーラー……
　えっと、〈癒し手〉の人々っているよね？）

りん
（いやはるけど、あない怪我なおしよる印象は……）

ガラテア
（そ。大昔は少数ながらいたはずだけど、なぜか年々減ってったぽくてね。
　現代では疲れとか、病とか、日常的に起こる怪我だけ
　治せるヒーラーしか、いなくなってるはずなんだよ」

りん
（ほな、三女は……！！！
ガラテア
（アンタ、最上級のヒーラー、目指してみない？）


りん
（え……？）

ガラテア
（ふたつめ。アンタは神通力で皆を癒せる素質があるよって話。
　今は弱いけど、封印剥がしてくれてた時から感じてた。
　アンタには大きな伸び代があるなー、ってね」

りん
（あてに、素質…………）

[110 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 11:50:16]

ガラテア
（今後、神通力を鍛え、増幅させる修行をアンタにしてもらってさ。
　いずれこの現世では存在しない《蘇りの術》を生み出すの。
　完全に物にできたら、三女ちゃんの未来も取り戻せるはずだよ）

りん
（成ります、成らせておくれやす！！）

ガラテア
（おー勢いがいいねー。
　でもちょい待ち。まだまだ話は続くから。

　みっつめ。この先は間違いなく〈茨の道〉なんだ。
　と言うのも、大きな力を持つヒーラーが
　いなくなった心当たりが、二つあるんだよね……。

　ひとつめは、〈神々の介入〉説。
　アタシが持つ《時空超越》の力って、死者を異世界に
　転生させる能力の副産物だったりするんだけどさ。
　そもそもその〈転生〉に否定的な見方をしてる神様が何柱かいてね……。

　もしも彼らの内の誰かの差し金だった場合、
　その＂神様＂と対立する危険性があるんだよねー……）


りん
（ど、ど偉いお話どすなぁ…………）

[111 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 12:40:16]

ガラテア
（あ、確定じゃないからね？！！
　基本的には世界の多様性を認める方針だし！
　何より「転生制度を取り入れよう」と言い出したの、
　他でもない、うちの《主神》様だしさ……。

　昔なら大揉めしてたかもらしいんだけど、
　今はもう、不必要に争わないようにしようって
　取り決めがあるから、反逆者はいないはず
　なんだけど……　一応念のため、ね……？）

りん
（は、はぁ……）

ガラテア
（こっち、こっちが本命なんだけどさ……！
　えーっと、ふたつめ……　〈あの世界の支配者層の計画〉説。
　５６号くんたちの話でも出てきて気になったんだけど、
　アンタ《国防隊》って存在について、どう思ってる？）

りん
（え、えっと、『国を守るために頑張る偉い方々』どっしゃろか……）

ガラテア
（うん、それが本分なんだろうけどさ。
　彼らによって＂コオロギ人間＂の皆が
　殆ど滅ぼされちゃったのは、さっき聞いたよね？
　
　彼ら、国防隊を操れる立場の人間に、
　ヤバめな《転生者》がいる危険性が、結構高まってるんだよね）

[112 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 18:54:56]

りん
（てんせいしゃ……）

ガラテア
（アタシが５６号くんたちにしてあげた、あれの果てね？
　取り乱してて聞こえてなかったかもだから
　伝えておくと、あの蜘蛛男も転生者。

　アレ、他の国でも色々やってたっぽくて。
　強力な力を手に入れた転生者共って、欲に溺れて
　ひたすら自己中心的になりやすいってこと、一旦頭に入れておいてね？

　で、少し唐突だけどアンタってさ、
　虫人間を世界から消し去りたいと思ったこと、一度でもある？）

りん
（そ、そないえげつないこと、よう思わへんわ……！！
　確かに虫はいやどすけど、生命取ろうまで思わへんし、
　そもそも虫人間は、おんなじ人間やさかい……！）

ガラテア
（だよねー♪ 　うん、アンタは立派にあの世界の住人だ。

　時間遡行で過去を見たことがあるんだけどね？
　数百年以上前、元々アンタの世界って
　お人好ししかいなかったっぽいんだよねー。

　だからこそ転生先として神様連中にも人気があったんだろうけど、
　転生者たちがあの世界で幅を利かせていった中で
　少しずつ＂センミンシソー＂ってやつが広まっていったっぽいんだ）

[113 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/18(月) 19:38:47]

ガラテア
（でさ？　そういうやつらにとって、〈強力な回復手段〉って
　すごーく疎ましい存在なわけ。なぜなら、そんなのがあったら
　彼らにとってフカイな存在たちを＂消し去る＂ことができないじゃん。

　実際、転生者が増えていくのと反比例して
　〈偉大なヒーラーたち〉って人々は、姿を消していったんだよね。
　コオロギ人間たちの件と併せて考えてみるとさ。
　ものすごーくきな臭い雰囲気を醸し出してるように見えるね、って話。

　さすがにもうわかってるだろうけど、こっちの場合も
　自分たちの思惑に忠実な転生者、それも《強大な力》を持ち、
　国防隊を動かせるほどの地位にいるやつと対立しちゃうわけ。
　ガッツリ〈国、および権力者共〉に狙われる危険性が、非常に高いんだよ

　神様にしろお偉方にしろ、アンタは＂立ち向かえる＂の？）


りん
（っ……！！）

ガラテア
（妹が危険な状況で戦いを拒むくらいに、争いは苦手っぽいじゃん。
　相手が相手だからさ。そんな調子で挑んだら
　今度は＂全てを失う＂危険性が高いよ？

　どうしても争いが嫌なら、アタシが別の素質持ちを探してあげるけどね。
　ただ、見定めるのにも時間が必要で、そもそも居るかもわからないわけ。
　アンタ的にはどっちがいいかな？　自分の手で三女ちゃんを救うか、
　自身の弱さを認めて、まだ見ぬ誰かに三女ちゃんの未来を託すか）

[114 二次元好きの匿名さん 24/11/19(火) 00:23:31]

どうなるんや…

[115 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/19(火) 08:22:50]

りんは昔から、立ち向かうことを避け続けていた。

苦手な虫は克服しようとせず、喧嘩の仲裁も深くは介入＂できない＂。

無意識的にマイペースを至上としている彼女にとって、

自身の不出来さ、鈍臭さが直に影響する

＂争いの渦中＂に身を置く選択は、おいそれとできることではない。

今まで通りであれば、優秀な人々に希望を託すことを選んだはずだが、

（……愚問やわ。妹の心からの涙見て、まだ逃げるんならもう姉や無い。

　ほんまは始めから、ちゃんと三女の方にも寄り添うべきなんやけど。

　今日までの愚かもんに叱り付けたいわ。姉としての自覚が足りてへんて。

　半端な想い遣りで、守りたいもん守れるわけあらへんやろ）

（あてはもう、絶対姉としての責任を投げ出さへん。

　長女として、愛する妹たちのために、きばるんや）

長女としての成長を果たした彼女の意志は、もう決まっていた。

りん

（dice1d1=1 (1)　

──────────────────────

１．あてが、三女を救う）

[116 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/19(火) 08:23:33]

──────────────────────
ガラテア
（オッケー、覚悟は決まったみたいだねー……　ってとこで悪いけど、
　まだ話したいことが二つあるから、最後まで聞いてね？

　よっつめ。そもそも＂ただの人間＂が辿り着ける領域じゃない、ってこと。
　どれたけ癒しの心得を熟知しても、どれだけ神通力がすごくなったとしても、
　〈失われた物を蘇らせる力〉ってのは、人一人がそうそう生み出せるもんじゃない。
　アンタがただ闇雲に頑張った程度では、結局三女ちゃんは救えない、ってわけ）

りん
（えぇ……？？）
ガラテア
（ま・っ・て！　これが最後で大本命だから。

　いつつめ。＂神の加護を受けし者なら＂、その領域に到達できる。
　だからさ、《アタシとアンタ》で〈最上級のヒーラー〉を創っちゃおうぜ！）

りん
（あ、あ〜！　なるほどなぁ、それは可能なんや…………
　あれ？　がらてあはんの力でそれできはるんやったら、直に三女を……）
ガラテア
（ゴメン、それはマジでムリッ！！！！
　取り決めで『神は神以外を蘇生するな』ってあるから、
　《主神》様と親族の皆に、お仕置きされちゃう…………！！！）

りん
（か、堪忍な……）

[117 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/19(火) 08:24:58]

ガラテア
（……えーっと、そうそう。アタシが転生以外で
　直接蘇生させるのはダメなんだけどさ、
　元々回復のスベがあるあの世界で、アンタが誰かを蘇生したり、
　誰かが失ったものを復活させる分には、何も咎められないはずなんだよ。

　だからね？　アタシを『信じて』、神の加護を受けられる体になってほしいんだ。
　アンタに神の力をお裾分けしてあげるし、神の力で加護ってあげる。
　その代わり、アンタはアタシのための供物を毎日作ったり、
　心身の疲れを癒やしたりしてほしいんだ。『持ちつ持たれつ』ってやつね♪）


（リン・サエグサ。三女ちゃんを……、
　願わくば、あの世界を出身地とする皆を救うため、
　《アタシだけの信奉者》になってください）


りん
（女神がらてあ様……　あては、
　あんさんのことを、心の底から信じます……！）





今ここに、彼女たち二人を結ぶ信頼関係、
《がらてあ教》が誕生した。

[118 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/19(火) 08:25:46]

ガラテア
（じゃ、決まり！　今日から『人生修行』を始めるよ！
　アタシの神様パワーと、アンタの類い稀な神通力……予定で、
　超絶神的癒し系ヒーラー《リン・サエグサ》を誕生させてやろうぜ！）


りん
（……三女と、女神がらてあ様に誓います。
　今度こそ、絶対逃げたりしいひん！）


（待っとって、三女！）
（待っててね、三女ちゃん）





長女として、神としての自覚を取り戻した彼女たちは、
それぞれの悩みや願いを胸に、
神にも負けない《最上級の癒し手》を目指し始める。


これは、数々の転生者たちによる支配が及ぶ
空想的世界を舞台にした、神と人との物語である。


Chapter 1
『神への挑戦』　終

[119 二次元好きの匿名さん 24/11/19(火) 18:20:49]

お疲れ様です

[120 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/19(火) 22:42:25]

現在、諸事情により精神面、身体面ともにボロボロな状態に陥っており
継続可能かどうかが怪しい状況となっております……

誠に勝手な話で恐縮至極ではございますが、
ご観覧してくださっている方々からの新キャラクターの原案が
３名分来るまでの間は、一時中断させていただきたく存じます……
キャラクターの原案が集まらない場合は、
上げずにスレッドを落としていただいて問題ありません……

[121 二次元好きの匿名さん 24/11/20(水) 02:25:32]

了解です

お大事に

[122 二次元好きの匿名さん 24/11/20(水) 12:47:14]

快癒祈願

[123 二次元好きの匿名さん 24/11/21(木) 00:05:30]

お大事に

[124 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 07:32:40]

>>122

>>123

誠に恐縮至極ではございますが、もし素直な気持ちでスレッドの保持を行われている場合は

＂雑なもので良い＂ので新規キャラクター案を１名分ご用意していただきたく存じます……

『山田太郎/物静か/地球人/フリーター』ほどの雑さでも全く問題ありませんので……

その他に取り入れたい設定等がある場合は、

>>4をベースに取捨選択をしていただければ幸いです。

[125 二次元好きの匿名さん 24/11/21(木) 14:10:57]

ぶっ飛んだ設定だが大丈夫？

【名前】マルグリット・マガリ・ドラクロア
【性格】ちょっと陰キャでビビり
【種族】吸血鬼
【職業】メイド長
──────────────────────
【年齢】五百を超えてから数えるのを止めた
【性別】女性
【容姿】外見年齢は19歳ぐらい、身長百七十以上で一ｍ越えの爆乳巨尻にも拘らずウエストは六十代
身長より長い赤髪、つり目気味で琥珀と青のオッドアイ、背中には蝙蝠に酷似した羽が六枚生えてる(出し入れ自由で飛行可能)
【好き嫌い】好き：屋敷のお掃除等　嫌い：血を吸う・人を襲う
【得手不得手】　得手：歌・料理以外の全て　不得手：料理
【主軸となる人間関係】ご主人様一族、人間のメイド達数名
【備考やその他】真相の吸血鬼の一人、本気で戦えば最強クラスで大概の魔法を使いこなす
数百年前からこの一族に仕えており、月に一度血を飲ませてもらう代わりに身の回りの世話をする契約をした
日光や大蒜、聖水と十字架も克服済み　基本は主人の専属メイド
【特に守ってほしい設定】

[126 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 14:29:12]

>>125

ご協力頂き誠にありがとうございます……！

次のお話から積極的に採用していく所存です。

心身の調子もある程度戻りましたので、２０時頃から数レス分投稿し、

翌日の朝以降には本格的にお話をご提供できるよう精進してまいります。

[127 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 18:45:06]

少し早めではございますが、睡魔に負ける予感があるため
予定時刻より前倒しで話を進めていくことにいたします。
ただ、次話を始める前に１つ、謝らなくてはならないことがございます……


スレッドの冒頭でヒロインとしての立ち位置が決定した＂七種鈴(さえぐさりん)＂の
【特に守ってほしい設定】である『京都弁』を極力取り入れようとしたところ、
筆の進みが著しく鈍化し、睡眠時間に支障を来す状態に陥りました……

誠に自分勝手な話であり、恐縮至極ではございますが、
私の力量の都合上、次話からは前話よりさらに質が下がった
エセ京都弁（関西弁風）に変更となってしまうことを、深くお詫び申し上げます。
原案者の方の期待を裏切る形になってしまい、誠に申し訳ございません……


完走に向け精進してまいりますので、何卒ご了承ください……

[128 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 18:46:14]

──────────────────────
『がらてあ教の誕生』から程無く、三女の怪我の悪化を防ぐため、
《鎮守の森》に聳える社殿の隣に建てられた家屋である
〈七種宅〉に、りんたちは帰還を果たした。


次女
「っ……　三女、りん姉……！！？」
学び舎での課外活動を終えて帰宅したばかりの彼女のもとに、
泣き腫らした顔の三女とりんの二人が姿を見せる。
今朝までは五体満足だった妹に、その面影は残っていない。

りん
「次女…………！！」
次女
「りん姉代わって、あたしが背負う……！！
　何があったんか、あとで教えてな……！！」
彼女はりんを問い質さず、家の中へと脇目も振らずに三女を担いで行った。


ガラテア
「優しい子だね」
りん
「はい…………。あの、四女は……」
ガラテア
「アンタたちのお父さんに事情を話して、遠ざけてもらった。
　四女ちゃんには色々と見せられないでしょ、あの大怪我……」
りん
「は、話がはよおすなぁ……。おおきに……」

[129 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 18:47:23]

三女は母の部屋へと運ばれ、母の応急処置を受ける。


七種母
「なんで……　なんで三女が…………！！！！
　鈴っ！！！　あんた何をしとるんや……！！！」
りん
「ほんま、ほんま謝って済まんわ、あて……」
ガラテア
「あー、お母様。あまり娘さんを責めないで」
七種母、そして次女の眼前に、彼女は姿形を現した。

次女
（なんか、すっご…………）
七種母
「な、なんや鬼……？！　いや、天女、様…………？」
ガラテア
「どうもどうもー♪　これから先、娘さんと一緒に
　《この世で最上級の癒し手》を目指すこととなりました、
　＂女神＂ガラテアと申しまーす♪」
七種母
「あ、あんたまさか、人を騙す怪物の類いや……？！」
ガラテア
「えー、女神相手にその言い草〜？？
　そんな態度なら、娘さんたち連れて……
りん
「がらてあはんっっ！！！！」

ガラテア
「…………ゴメン」

[130 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 18:48:33]

りんたちは、事の顛末を説明した。

ガラテア

「……そういった事情で、この国のお偉いさん方にこの件は知られたくないんす。

　なんで、都の癒し手の方々の力は借りられないんすけど、

　そこでりんとアタシの出番！ ってわけっす♪」

七種母

「あんさんがほんまに、三女を治せるんか……？？」

ガラテア

「直接治すのは娘さんっす。アタシが彼女の神通力を色々すごくして、

　そう遠くない頃に《最上級の癒し手》に成長した彼女とアタシで

　『三女ちゃんの未来』を取り戻す予定なんすよ。

　試しに今から少しだけ、りんに神通力で癒させるっす」

りん

「え、き、急なんはやめてぇな……！！」

ガラテア

「リン、集中して。今からアンタの神通力を増幅させるけど、

　この初回でアンタの基礎が出来上がると言っても過言じゃないから。

　できれば一万パワー、最低でも五千パワー分は会得してね」

りん

「ぱわあ……？　わ、わかったわ…………！！」

現在、りんが内に秘める神通力は〈五十六〉（>>38）である。

女神ガラテアの助力により、

彼女の神通力は、そのdice1d9999=5357 (5357)　倍に増幅した。

[131 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 19:40:42]

ガラテア
「ほー、なかなか見込みあるね、やっぱり」
りんの神通力は〈二十九万、九千九百九十二〉となった。

りん
「その……　あとなんぼあったら、ええんやろか…………？」
ガラテア
「最上級名乗るのにほしいのは〈八百万〉だから、〈約二十七倍〉かな」
りん
「せやったら、あと二十七回繰り返したら…………？」
ガラテア
「この爆発的成長は、そう起こるもんじゃないよ。
　基本的には乗法的じゃなくて、加法的成長を繰り返す形になると思う。
　仮に＂一日五千ずつ＂成長したとして、四年半前後くらいかかるかな」

りん
「よ、四年半…………　三女、育ち盛りやのに…………」
ガラテア
「あー、そっかー……。若い子にとっての四年半は大きいかー……。
　まあ、アンタ自身が成長する機会に恵まれたら、
　もう少し早めに《蘇りの術》を生み出せるだろうから、頑張ろうぜー」


りん
「…………」
ガラテア
「そうそう。神通力を大きく成長させたところだしさ。
　早いとこ三女ちゃんを癒してあげてみて？」

りんは祈りを込めて、三女が快方に向かうことを願う。

[132 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 20:27:15]

りん
（三女、ほんま堪忍……。あてが、もっと寄り添ってあげるべきやった……。
　虫に怯えず、あんたの腕引っ張って、抱きしめて、話を聞いてあげるべきやった……。
　遅れてもうたけど、あんたのことは＂絶対に＂救ってみせたるからな……。
　つらいかもやけど、希望を持って、頑張って生きてて……　お願いや…………！」






三女
「りん…………？」


りん
「っ！！！？？」
次女
「三女っ……！！！！」
七種母
「さ、三女…………！！！」


ガラテア
「騙すみたいになっちゃっててゴメンだけど、
　ほしい〈八百万パワー〉は＂最上級名乗るのに＂であって、
　三女ちゃんを寛解に持っていくこと自体は
　〈百万パワー〉くらいあれば可能なはずなんだよねー。

　で、首回りくらいなら、今のアンタでも問題無く治せた。ってわけだね」

[133 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/21(木) 21:04:29]

三女
「話せる、話せるやん……！　りん、その……　ほんまごめ

希望を一つ取り戻した妹を、長女は優しく、しっかりと抱きしめる。



りん
「おかえり、三女」
三女
「ただいま、りん…………　姉ちゃん……！」

次女
（良かった、ほんまに……　ほんまに…………！）


七種母
「女神様ぁ！！　女神様、ほんま、ほんまおおきに…………！！！！」
ガラテア
「三女ちゃんが救われたのは、娘さんの力あってのものであるぞよー？
　今はアタシへの感謝より、娘さんたちの回復と成長を喜びたまえー」
七種母
「ほんま、ほんまおおきに………………！！！」



ガラテア
（ほんと、ひとまず良かったね。リン、三女ちゃん）

女神の微笑みは、慈しみの心を感じさせるものであった。

[134 七種鈴の設定主 24/11/22(金) 00:01:38]

>>127

スレ主の健康第一で話書いてもらって構わないですよ

作った本人が言うのもなんだけどめんどくさい設定で申し訳ない

[135 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 07:38:00]

絶望が希望に変わり、安堵感に包まれた七種家は憩いのひと時を過ごす。
三女と四女のお世話を代わりばんこに行い、食事をして、入浴を済ませ、
りんと母の部屋の二手に分かれ、妹たちに寄り添いながら眠りについた。

就寝を見届けた後、女神は鎮守の森から抜け出して、＂彼ら＂の待つ場所へと赴く。






ガラテア
「ゴメンね〜、長く留まらせちゃって」

皇帝蟻
「……これもまた、俺らが受けるべき当然の報いだろう」


ガラテアの手により、反体制組織《黒虫義賊》は、チリ一つも残さずに壊滅を迎えた。
霊体と化してなお事態を飲み込めない者共もいる中、裁きの時は訪れる。

ガラテア
「まずはアンタかな、〈皇帝蟻〉サマ？　アンタ、よその神様のとこの子なんだっけ？
　蜘蛛男の所業や野望について、どれだけ知ってたの？」

皇帝蟻
「全て、把握していた……」

ガラテア
「潔いね〜」

[136 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 07:46:12]

蟷螂男
「貴様に何がわかるッッ！！！！　皇帝蟻様は……
　皇帝蟻様は、圧政を敷く者共の支配が及んだ、この国を救うため……

ガラテア
「国を救うための資金を、人々の思いを踏み躙りながら得てきたんでしょ？」

蟷螂男
「それは、必要な……！！！
皇帝蟻
「蟷螂男、口を慎め。
　……ああ。全て、女神様の仰せの通りさ」

ガラテア
「少しは言い訳聞くよ？」


皇帝蟻
「俺は、蜘蛛男に希望を見出していた。俺と違って、あいつの力は凄かったからな。
　非道な所業を目にしても、節々で＂操られている＂ことに気付いても、
　俺は信じていたかった。あいつと《神の糸》に、縋っていたかったんだ……」

ガラテア
「数々の悪事に気付いてなお、アイツを止めなかったんだね」

皇帝蟻
「恐かったんだ……　部下達が人質になるかもしれねーって……」

ガラテア
「……ゴメン。変にイジワル言った」

[137 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 11:04:39]

皇帝蟻
「見過ごしてきた事実に変わりはねぇ。どんな裁きでも受けるさ」

ガラテア
「アンタの組織が起こした悪事、さすがに規模が広すぎるからね。
　二度目の人生だったし、とりあえず《冥府》に送るよ」


蟷螂男
「皇帝蟻様……！！」

皇帝蟻
「口を慎めと……
蟷螂男
「皇帝蟻様、貴方は俺にとって、〈至上の皇帝〉でした……！！」

皇帝蟻
「……その感性は、俺の〈能力〉によるものだ。
　例え威光が足りていなくても、説得力を持ち合わせていなくても、
　自身を魅力的に映し、闇を抱えし者たちに希望の光を見出させる能力。
　偽りだらけの〈カリスマ〉さ……」

蟷螂男
「覚えていらっしゃいますか？
　俺を救ってくださった、あの日のこと……」

皇帝蟻
「あ……　ああ。　そうだ、お前はそうだったな……」

[138 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 11:06:41]

蟷螂男
「虫人間の身で在りながら何とか国職に就けた、かつての俺に課せられた職務。
　それは『重要な品物を含む、物資の調達』というもの。
　内容に違和感を抱きながらも、俺は職務を全うしようとしました。
　逆らえば一族諸共が闇に葬られる……　そのように思えてならなかったのです。

　違和感は的中しました。俺の＂手＂では、全てを傷付けることなく運ぶことは叶わず、
　何が重要なのか理解できない代物も含め、数多の品を傷付けてしまう。
　罠に掛かった俺は刃向かうことも許されず、集団による＂私刑＂を受けました。
　命辛辛逃げ出して尚、奴らの追撃は止まず、俺は全てを諦め始めました。

　その時、当時公職に就いていらっしゃった貴方が、奴らに向かい、
　「人には様々な特性があって当然だろう。
　　鋭利な手を持つこいつに任せた、お前達が悪い」と、言い放ってくださいました。

　奴らからの反感を買い、理不尽な仕打ちを受ける貴方の姿を
　目の当たりにした俺は、＂全て＂を諦めて、奴らを一人も残さずに葬り去りました。
　その選択に、一切の悔いはありません。

　多くの命を奪った俺は当然として、
　俺を庇ったことにより、貴方自身も国と相容れない存在になってしまった。
　ですが貴方は、「俺と一緒に、この国を不当な差別の無い国にしよう」と、
　命の略奪者である俺を拒まずに手を差し伸べ、生きる道をくださったのです…………」


皇帝蟻
「…………俺も、あの時の選択そのものに悔いは無い。
　だからこそ、俺は道を踏み外すべきではなかったんだ。
　お前や皆を守るため、悪魔に魂を売ってはならなかったんだ…………」

[139 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 11:09:56]

蟷螂男
「女神がらてあ……　全ては、俺から始まったことだ……！
　どうか、どうかッッ！！　皇帝蟻様に慈悲をッ……！！！
　組織の罪や業の報い、全てを俺に与え給えッッ……！！！！」

ガラテア
「それはアンタが決めることじゃないよね」

蟷螂男
「女神、女神様ッ……！！！！　何卒、皇帝蟻様に……
ガラテア
「そうだね。アンタも彼の運命の終着点は見たくないだろうから、
　先にアンタの転生から始めることにするよ」

蟷螂男
「？？！　な、何を……？？」
皇帝蟻
「助かるぜ、女神様。いい世界に送ってやってくれ」

ガラテア
「次は名君のところに仕えるか、いっそ皇帝蟻くんの意志を継いで
　アンタが名君を目指すのもアリかもね？」

蟷螂男
「な、何を言っている……！！
　俺にとって、名君は〈皇帝蟻〉様だけだ……！！！
　ましてや俺のような愚臣が、皇帝蟻様の代わりになるなど……！！！！」

[140 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 11:11:04]

皇帝蟻

「蟷螂男。この世界以外にも、〈高潔な指導者〉を求めている所は多くあるはずだ。

　これまでの人生経験を活かして、次の世界を救ってやってくれ」

蟷螂男

「皇帝蟻様ッッ！！！　俺には皇帝の資格はありませんッ！！！

　俺にとって、貴方という＂壁＂が、余りに高すぎます……！！」

皇帝蟻

「俺を失望させるな。お前は一番の忠臣なんだろ？」

蟷螂男

「俺は……　俺は…………！！！！」

皇帝蟻

「達者でな、〈相棒〉！」

蟷螂男

「こ……　こ…………！！」

　皇帝蟻様あああああああああ

　ああああああああああああ！！！！！

ガラテアは、dice1d2=1 (1)

──────────────────────

１．彼を送った／２．彼らを送った

[141 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 11:32:01]

（次の世界では、アンタを手助けしてあげるからね…………）



ガラテア
「さて。それじゃ、他の皆も始めよっか」

皇帝蟻
「女神様、冥府送りは何人になる？」

ガラテア
「アタシの主義的に、送る先が良い世界か悪い世界かはともかく
　『命を落とした回数が一度だけ』なら、全員転生対象者だよ。
　なんで、転生済みらしいアンタと、サソリくんと、ハチくんと……
　あと、あのクワガタ野郎もその括り……　のはずなんだけど……」

皇帝蟻
「あいつは違うさ。むしろひっそり、蜘蛛男の邪魔ばかりしてたぜ」

ガラテア
「えー……？？　なんであんな事するやつが善玉側っぽいのよ……」

皇帝蟻
「色々あったのさ、あいつの人生にも。
　だがあいつは俺と違い、最後の最後以外は正義を貫き通した。
　俺が昔憧れた、ヒーローと似ていたかもしれねーな……」

ガラテア
「ふーん…………」

[142 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 12:21:35]

皇帝蟻
「蠍男！！　蜂男！！　冥府送りだ、腹を括れ！！！」
蠍男
「二度目の人生、もっとやれると思ってたんだがねェ……」
蜂男
「ハ、ハハ……　ハ…………」

皇帝蟻
「女神様。ショッカクローグ達と飛蝗男、鍬形男、
　そして《この世界》のこと、宜しく頼みますよ」
ガラテア
「当然でしょ？　鍬形男は、正直イヤだけど……」
皇帝蟻
「あいつは、純粋な〈ヒト〉にしてやってください。
　それで女神様の助けがあれば、あいつは幸せになれますよ」
ガラテア
「……考えとく」


ショッカクローグ
「皇帝蟻様、今まで大変お世話になりましたッッ！！！」
飛蝗男
「あなたと共に歩めたこと、誇りに思います」


皇帝蟻
「じゃあな、お前ら！　来世でこそ幸せになれるよう、努力を怠るなよ！！」


〈皇帝の志〉は、彼らの胸にしっかりと刻み込まれた。

[143 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 16:37:00]

ガラテア
「じゃあ、次はアンタたちか。
　ほんとは個別で考えるべきなんだけど、数が多すぎて面倒見辛いし、
　団結は固いっぽいから、特例で皆一緒のとこに転生させてあげる」
飛蝗男
「なあ女神よ」
ガラテア
「なに？」
飛蝗男
「その……　コオロギ人間の二人は……」
ガラテア
「さすがにまだ赤ちゃんだし、紛争が絶えない世界に送っちゃったけどね。
　理不尽な目に合わせたりはしないし、あの二人ならきっと幸せになれるよ」
飛蝗男
「娘の件、済まなかったな……」
ガラテア
「彼女だけじゃない。お金のために犠牲になった人々が大勢いるでしょ。
　それにアンタ爺さんなんだから、ちゃんと若者の過ちを止めなさいよ」
飛蝗男
「長く続けてきた組織を……　潰したくなくてな……。
　金に目が眩み、見て見ぬ振りを続けてしまったよ……」
ガラテア
「いたたまれない爺さんだね。そんなんで次の世界いける？」
飛蝗男
「＂二度目は無い＂、であったな？
　抱える命が数多くある以上、道を逸れたりはせんさ」

[144 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 16:38:22]

ガラテア
「ま、ほどほどに期待するよ。
　じゃあ皆、離れすぎないように集まって」

ＳＲその２
「あの！　鍬形さんは……」
ガラテア
「あー…………　ちゃんと呼ばなきゃかー……」
飛蝗男
「いや、しばらくあんたの側に居させてやってくれ」
ガラテア
「は？！　イヤですけど？！！」
飛蝗男
「あの状態なら、暴れ始めることもないだろう。
　あんたにはもう少しだけ、あいつのことを見ていてやってほしい」
ガラテア
「……《女神ガラテア》史上、とっても面倒なことになっちゃったなー」


ガラテアは、飛蝗男たちを次の世界へと送り飛ばした。



ガラテア
「……えーっと、鍬形男？　もう残りアンタ……

鍬形男が佇む方向へと視線を向けた彼女の目に、
この島国には似つかわしくない服を着た、不思議な女性の姿が映った。

[145 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/22(金) 18:07:40]

ガラテア

（なにあの……子？　なんか〈子〉って感じじゃない気もするけど）

ガラテアの目に映る女性は、島国より遠くにある《酔の国》を思わせる

〈背中が大きく開いた給仕服〉を身に付け、地に付くほどの長き赤髪を＂浮かせて＂いる。

ガラテア

（異国の魔法使い？　なんか雰囲気の割にはオドオドしてるねー）

少し様子を見ていたくなったガラテアは、

遍在できる神の性質を利用して、彼女の跡をつけることにした。

赤髪給仕

〔いや本当にどこにあるのよ『特別な香草』……。

　早くしないとお嬢様のお誕生日までに間に合わないでしょ……〕

ガラテア

（って、考えてるのか〜。香草って、あそこ周辺のかな？

　教えてあげよ。“Form of Peach lady.”）

ガラテアはおばあさんの姿に化け、

鎮守の森周辺へ案内しようとする。

変化は、dice1d3=1 (1)

──────────────────────

１．怪しまれなかった／２．鬼と勘違いされた／３．見破られた

[146 二次元好きの匿名さん 24/11/23(土) 00:45:30]

よしよし

[147 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 08:11:01]

がらばあ
「もし、
赤髪給仕
「ヒギィッ！！？　あ、な、何でしょうか、ご婦人」

がらばあ
「そこのお方。なにか、お困りごとがあるご様子。
　あたくしでよろしければ、お力添えいたしますぞ」

赤髪給仕
「な、何でもありま
がらばあ
「えー、もしここの特産品目当てでしたら、剰茸【あまつたけ】と呼ばれております
　甘い香りが特徴的なきのこであったり、たから豆と呼ばれております
　甘味と辛味を併せ持つ、不思議な豆などがございますが……」

赤髪給仕
「あの、いえ、それでは……
がらばあ
「ああ、あと近くに爽やかな香りが特徴的な〈香草〉もございます」

赤髪給仕
「！！　あ、あ、あの、すみません……。
　そちらの香草について、少しお話を……　お伺いできますか……？」
がらばあ
「ええ、ええ。お力になれるようでしたら、何でも。
　いえ、いっそ香草の群生地へと案内いたしましょう」

ガラテアは、赤髪の女性を見通しの悪い木々の中へと誘い込む。
そして、林を利用した空間転移を行い、《鎮守の森》の近くに舞い戻った。

[148 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 08:12:01]

赤髪給仕
「あれ？？！」〔こんなとこあったっけ……？？〕

がらばあ
「この国には〈いたずらな神様〉がいらっしゃいましてねぇ。
　よく異国の方々を迷わせて、お楽しみになられておるようですわ」
赤髪給仕
「そ、そうでしたか……」
がらばあ
「ああ、あちらです。あの森と、その周りにある植物全てが〈香草〉でございます」

赤髪の女性は早速、鎮守の森周辺に芽吹く香草を摘み取り始める。
だが、ひとつめの香草を摘み取る際、彼女は顔をしかめた。

赤髪給仕
〔うぅ！？　何、この匂い……？？〕
がらばあ
「いかがなされましたか？」
赤髪給仕
「ご、ご婦人？　こ、こ、こちらが、この地に根差す特有の〈香草〉……？」
がらばあ
「ええ。あたくし自身は、いただいたことがございませんが、
　心が爽やかになる香りは観賞用だけでなく、食用としても愛されておりますよ」
赤髪給仕
「そ、それは魅力的ですね…………」

ガラテア
（この植物たちを苦手としてるの、虫に属する子たちだけかと
　思ってたけど、特定の人間たちにとっても苦手な香りなのかな？
　…………あれ、もしやこの子って）

[149 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 08:12:50]

赤髪の女性は必要とする量を採り終えたらしく、踵を返して立ち去ろうとする。

がらばあ
「顔色が優れぬようですが……」
赤髪給仕
「お、お心遣い、痛み入ります。ですがご安心ください。
　これは、い、所謂〈文化的衝撃〉に似た、ただの生理現象ですので……」
がらばあ
「あまり、ご無理なさりませぬよう。その草の香りは
　人々の心を癒しますが、同時に〈虫や鬼が忌避するもの〉でもありますゆえ」


赤髪給仕
「…………私が鬼です。と？」
がらばあ
「いえいえ！　そのような……
赤髪給仕
「『当たらずとも遠からず』ですね。
　確かに私は〈おに〉の性質を持ち合わせております。
　ですが彼らのような粗野で品の無い存在と一緒にされるのは心外です」

がらばあ
「……あなた様のお召し物、《酔の国》のものでございますね？」

赤髪給仕
「よくご存知で」

がらばあ
「なるほど、合点がいきました。翼が見当たらぬゆえに
　気がつきませんでしたが、あなた様は《吸血鬼》でいらっしゃいますね？」

[150 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 12:54:44]

給仕吸血鬼
「ご明察の通りです。やはり只者ではないようですね。
　何故私のもとに？　やはり《チュアー・デ・ヴァンピール》の者でしょうか？」
がらばあ
「ちゅあ……？　もしや〈吸血鬼狩り〉のことでしょうか。
　仮に、その通りであれば？」
給仕吸血鬼
「私はこんな地で朽ち果てるわけにはまいりません。
　あなたがそのつもりであるならばこちらも力を振るうのみ」
がらばあ
「もう少しだけ、呼吸を挟まれてはどうでしょうか……」
給仕吸血鬼
「はずかしめましたね？　許しません。ご主人様一族に仕える
　《メイド長》の誇りにかけてあなたを討ちます」
ガラテア
（ちょっとめんどくさいな、この子……）


給仕吸血鬼
「覚悟しろ。“Geler……
がらばあ
「＂ふぉーむ、おぶ、うみぼうず＂」


瞬間、吸血鬼は闇の空間へと引き摺り込まれる。
数多の魔法を駆使して脱出を図るも、
〈大いなる力〉の前には為す術も無く、漆黒の海に飲み込まれていった。

[151 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 12:56:48]

給仕吸血鬼
（…………こ、ここは？）

見渡す限りの黒。一筋の光も無い、純然たる闇。
自身が形を保てているかも判らない世界。その中に、彼女はいた。

給仕吸血鬼
「暗闇で私が怖がるとでも？　吸血鬼をご存知ないわけがないでしょう。
　確かに私は太陽を克服済みですが元は夜に生きる身。
　むしろ光が存在しない方が気分が昂るというもの。
　そもそもただの人間風情が私に勝てるとは思わないことですね。
　ご主人様一族を護る為に魔法を概ね習得し全ての弱点を克服しました。
　もしも私が本気を出そうものなら世界を容易く滅ぼすことも……

突如、彼女の足元で水面のように波紋が広がる。
次に地鳴りのような音が耳に届き、少しずつ彼女の脳を支配し始める。
得体の知れぬ存在を認知するにつれ、彼女の理性は恐怖に侵食されていった。


ふと、上を仰ぎ見た彼女の瞳に、＂それ＂が映る。
身の丈八百尺（約242m）に及ぶ人型の姿。
暗闇の中に光る、大きな二つの目。

《大いなる闇の化身》が、彼女を見つめていた。





※画像はイメージです

[152 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 12:58:06]

給仕吸血鬼
「V i â â â â â â â â â â â â â â â â â â â â â ! ! ! !」
彼女は平常心を失い、辺り構わず強大な魔法を放ち続ける。


「ゴメンゴメン！！　ほんと悪いことした！
　謝るから落ち着いて！　ね！？」

《大いなる闇》は姿を変えて
羽衣姿の女性と成り、吸血鬼の前に舞い降りた。

給仕吸血鬼
「フー……！！　フー……！　フー…………

　だ、誰ですか、あなたは……！！　妖怪ですか……！？」
ガラテア
「一応、神様なんだけど……　ほんとゴメンね？
　ついつい、からかいたくなっちゃってー……」

給仕吸血鬼
「あ、あなたみたいなのが、
　か、神様なんて、信じられるわけがないでしょう……！！！」
ガラテア
「まだまだ見習い（？）神様でさ〜！　人々の反応を色々見たくて、
　つい＂いたずら＂したくなっちゃうんだよね〜……。
　神様なりの『お詫び』、いっぱいするからさ〜？　許してっ！！」

給仕吸血鬼
（神は神でも邪神でしょこいつ……）

[153 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 16:49:12]

東の空に朝の兆しが見え始める頃、彼女らは鎮守の森に帰還を果たした。


ガラテア
「じゃ、ひとつめのお詫びとして
　＂この国の＂特産品、全種類アンタのとこに送っておいてあげるね♪」
給仕吸血鬼
「あ、新手の嫌がらせ、ですか……？？」
ガラテア
「え……？？　普通に、心からのお詫びなんだけど……」
給仕吸血鬼
「『定期便』とやらで……　お、お願い申し上げます……」
ガラテア
「ﾒﾝﾄﾞ……　うん、ちゃんとやるよ……」

給仕吸血鬼
「あの……　ひ、『ひとつめ』ということは、まだ何か……？」
ガラテア
「あー、ふたつめはね、＂アタシの主義に反するものでない限り、
　どんな願いでも一つだけ叶えて進ぜよ〜＂。ってやつ」
給仕吸血鬼
「へー……」
ガラテア
「いやー、ほんとお詫びとしても破格だよ、これ？
　さすがに、〈亡くなった誰かの蘇生〉とかは、勘弁してほしいけど……」
給仕吸血鬼
「ああ……　じゃあまた今度お願いしますね」
ガラテア
「あ、すぐじゃないんだ……。うん、わかった……」
（ゴメン、リン。変な縁作っちゃって、修行の時間取り辛くなったかも……）

[154 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 16:50:08]

給仕吸血鬼

「……まだ何か、ありますかね」

ガラテア

「えっとー……　逆にしてほしいこと、ある？」

給仕吸血鬼

「定期便が、お、終わり次第、二度と顔を、見せないでください……」

ガラテア

「ゴメンて〜……」

給仕吸血鬼

「そ、そもそも身内……　以外と、あまり関わりたくありません、ので……」

ガラテア

「あー、そっか……。重ねてゴメンね。もう押し付けないよ。

　ご主人様一族とアンタに、幸多きことを願っておくね」

給仕吸血鬼

「あなたが、か、神様でしょうに……。

　えっと、そ、それでは…………」

ガラテア

「あーゴメンッ、名前聞いときたい！　アタシ、ガラテア！」

「マルグリット、です…………」

マルグリットは翼を広げ、まだ明けぬ西の空へと飛び去っていく。

彼女を見届けたガラテアもまた、りんたちのもとへと帰っていった。

ちなみに彼女、《マルグリット》は今後dice1d2=2 (2)

──────────────────────

１．頼れる味方となる／２．対立することとなる

[155 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 18:50:53]

りんたちが暮らす国、《紅の島国》に日の光が差し込み、朝を告げた。


四女
「…………三女……　…………三女……」
四女は夢の中で、三女の身を心配していた。
姿こそ見ていないものの、どうやら既に三女が戻っていることには気づいている様子だ。

りん
（さすがに、会わせたほうがええわな……）
りんは覚悟を決める。

七種父
「ん。起きたか、鈴……」
父は誰よりも先に起床し、朝食の支度をしていた。

りん
「あぁ、おとうはん。ありがとうな……。
　せやけど、ちゃんとあてが作るのに……」
七種父
「色々疲れたやろ、鈴。
　たまには誰かを甘やかすんやなくて、お前自身も甘えとき」
りん
（…………ほんま、おおきに）


七種家当主である父は、寡黙だが情に厚く、物分かりもいい。
鎮守の森への住居の移転も、母は難色を示すなかで即座に賛同してくれた。
娘たちの好き嫌いをしっかりと把握しており、時に好きの気持ちを共有してくれて、
時に少しずつ苦手の克服に協力してくれる父を、娘たちは心から尊敬している。

[156 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/23(土) 18:52:02]

ガラテア

「素敵なお父様だねえ〜」

りん

「が、がらてあはん……。おはようさん」

ガラテア

「うん、おはよー。と言っても、封印中に殆ど眠ってたのもあって、

　アタシ自身にはまっったく眠気が無いんだけどねー」

りん

「難儀やなぁ……」

ガラテア

「にしてもさー……　ご両親、すごいよね。色々」

りん

「？」

ガラテアが指しているのは、りんたちの両親の種族に対することだ。

両親の＂きつね度合い＂は、父がdice1d100=44 (44) 、母がdice1d100=95 (95) である。

──────────────────────

※ちなみにりんは推定２０（>>9）、

　次女はdice1d100=51 (51) 、四女はdice1d100=77 (77) となります。

　なお、三女は諸事情により割愛させていただきます。

[157 二次元好きの匿名さん 24/11/24(日) 00:43:17]

母親ほぼ狐！？

[158 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 08:10:18]

ガラテア

「言っちゃなんだけど、お母様だいぶ〈狐〉じゃない？

　模範的〈狐人〉っぽいお父様が、彼女を好きになったのが以外だな〜。って」

りん

「えっと、確かおとうはんは昔dice1d8=7 (7) やったらしくて、

　おかあはんは、そんときの相棒やった言うとったわ。

　（※１〜２．忍者／３〜４．義賊／５〜６．国防隊員／７〜８．発明家）

　真面目すぎる言うて、仲間内で煙たがられとったらしいんやけど、

　おかあはんの目には人間としても異性としても、魅力的に映っとったんやて。

　殆ど狐なおかあはんのこと、どうしても皆は下に見てまうなかで、

　〈仲間の一員〉として接してくれるおとうはんに、惚れてったらしいわ。

　そんで、おとうはんの方も、得意の嗅覚や呪力つこうて

　ひたむきに支えてくれるおかあはんを見とるうちに、

　可愛らしい思う愛情から、添い遂げたい思う愛情になってったんやて」

ガラテア

「ずっといい間柄なんだね、ご両親。

　まー、アタシの身内にも似たような方々はいるし、

　やっぱ見た目より中身だよねーーー…………　ハハッ」

りん

「あの、がらてあはん……。あちらの彼……」

鍬形男

「…………あっ！　俺の姿、見えていらっしゃいましたか……！

　その……　妹さんを救えず、すみませんでした……」

鍬形男は、未だ霊体のままである。

[159 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 08:11:55]

ガラテア
「昨日の反体制組織の子だよ。
　不埒な言動で、アタシに襲いかかってきたの」
りん
「え……？」
鍬形男
「ガラテア様……。この度は、多大なるご無礼を働いてしまった結果、
　大変不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません……」
ガラテア
「ねー、もう少し普通に喋れないの？？　逆にイライラするんだけど」
鍬形男
「え……！？　あ、えっと、すみません……。
　俺、ガラテア様にこれ以上嫌われたくなくて……」
ガラテア
「無理無理。初回の印象最悪すぎだもん。諦めて」
鍬形男
「うぅ…………」


りん
「がらてあはん、さすがにかわいそうや……」
ガラテア
「いや、やめてよ！！　正直なとこ、すっごく怖かったんだからさ！！
　アタシが人間の女の子だったら、
　絶対生涯残る心の傷になってたからね！！？」

りん
（難儀な状況やなぁ…………）

[160 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 12:43:50]

鍬形男
「あの、俺、大人しくしてるんで……。修行？　の時間とか、
　妹さんたちとの触れ合いの時間とか、作ってあげてください……」
ガラテア
「あのさー。バッタの爺さんには、よろしくって頼まれちゃったんだけど、
　アンタ自身は『次の世界で頑張るぞー！』って意志は無いの？
　こっちとしては、早いとこ日常系って世界に送ってしまいたいんだけどー」
鍬形男
「ああ……　すみません、そうですよね……。
　これ以上迷惑をかけてしまうのも本意ではないので、
　ガラテア様の都合に合わせて送ってもらって…………

　いえ、あの……　できれば『異世界転移』の方が、ありがたいですが……」
ガラテア
「はあ？？！　アンタ、そのクワガタ姿で行くつもり？？
　一度目の人生のことなんてよく知らないから、
　アンタの元の体とかも用意できないし、色々無茶な注文なのわかってる？？」
鍬形男
「すみません……。その、次の世界でまた、＂親＂と出会うと思うと……」
ガラテア
「その親御さんたちのためにも、立派で紳士的な男の子になることだね」
鍬形男
「は、はい…………　　うぅ……」


りん
「……幻滅するわ、がらてあはん」

ガラテア
「な、なんでよ！！？　アタシ、おかしなこと言ってる！？」

[161 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 12:44:57]

りん
「あんさんの言動からは、拒絶の意思しか感じられへん。
　曲がりなりにも《神様》なんやったら、
　事情があるらしいゲンジの彼にも、もう少し慈悲の心を見せてあげてや」

ガラテア
「いや、だって……
りん
「あても虫は苦手やから、がらてあはんの怖かったいう気持ちもわかるけど、
　彼は＂そん時の彼＂なんか？　ちゃんと反省しとるんちゃうん？
　変わっとらんように見えたら、そん時に見放したらええやん。

　男女の仲は軽々しく紡いだらあかんし、お付き合いしいなんて言わへん。
　せやけど、もっと＂彼の心＂にも、寄り添ってあげておくれやす」

ガラテア
「リンー……　だって、マジで怖かったんだよー…………！」
未だ未熟な《女神ガラテア》は、信奉者であるはずの彼女に縋り付く。

りん
「がらてあはん……　しゃーないなぁ…………」
りんはガラテアの気持ちにも寄り添うため、彼女を抱きしめた。


りん
「女神様……　これから一緒に、成長していこなぁ…………」


二人の『人生修行』は、まだまだ始まったばかりである。

[162 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 17:25:05]

ガラテア
「…………ゴメン、鍬形男、りん。アタシも反省した」
ひとしきり思いをぶつけたガラテアは、再び彼女なりの《神様》を演じ始める。

鍬形男
「本当に、申し訳ございません……。
　俺の欲が、あなたをそこまで怖がらせてしまっていたとは……」
ガラテア
「うん。でも、あの一回だけは特別に許してあげる。
　これから少しの間、＂アンタの中身＂を見定めつつさ？
　次の転生先……　あるいは『転移先』のこと、しっかり考えてあげるからね」
鍬形男
「ありがとうございます、ガラテア様……」

りん
（それでこそやで、女神様…………）



七種父
「りーん！　そろそろ朝食の時間やー！　四女起こして居間にきぃ！」
りん
「あ、はーい！　四女、起きぃ。おとうはんが作ってくれたで」
四女
「三女…………　んぅ……」


りん
（朝食終わったら、三女に会わしたるな…………）

[163 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 17:26:14]

朝食を終えた七種家の人々は、それぞれの責務を果たすため、鎮守の森を発った。
次女は学び舎へ、父は所有する豆畑へ、母は〈警ら〉のために都へと赴く。
一方、住み込みの巫女であるりんと、特別に学び舎を休ませてもらった
四女の二人は、療養中である三女のもとへと訪れていた。


四女
「！！！　三女、だいじょうぶ……？」
三女
「すまんかったわ、四女……　罰当たったわ……。
　盗んだあげくどろぼう呼ばわりしてもうたから、
　そのお詫びしたいんやけど……　折り紙失くしてもうて……
　体も、このざまで……　ほんまあかんわ、うち…………」
四女
「う ﾞ……　う ﾞぅ ﾞ…………！！」

四女の胸中は複雑であった。大切な折り紙を盗み、汚名を着せ、
あまつさえ当の折り紙を失くしたとする、自分勝手な姉への憤り。
沈痛な面持ちで行われる、嗚咽交じりの謝罪を受けての憐憫の情。
一連のできごとに対する判断を、彼女は考えあぐねている。



ガラテア
（リン、怒らないでね？）
りん
（え……？）


ガラテアは、彼女らの眼前で顕現を果たした。

[164 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 17:27:24]

ガラテア
「どうもー♪　〈元、折り紙の狐〉だった《ガラテア》でーす♪」

三女
（あ、神様）
四女
「あーー！！！　折り紙の女の人ーーー！！！！」
ガラテア
「あれ、気づいてた？　ありがとー♪」
四女
「狐！！？　狐！！？」
ガラテア
「そうだよー♪　四女ちゃんとお友達になりたくて、
　人の姿になっちゃいましたー！　狐の方がよかったかなー？」
四女
「いい！！　かわいい！！」
ガラテア
「そう？　よかったー♪
　四女ちゃんに負けないくらい、かわいくなりたかったんだ〜♪」
四女
「うひひ〜……♪」
ガラテア
「四女ちゃん！　改めて、アタシとお友達になってください！」
四女
「！！　うん、お友達ーーー！！！！」


りん
（がらてあはん、さっきまでが嘘みたいに変わりはったなぁ……。
　羽衣だけの姿やなかったら、憂いは少しも無かったんやけど……）

[165 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/24(日) 18:39:57]

女神ガラテアの助力もあり、三女の手足を除く全ての憂いは消え去った（？）。

その＂三女の手足＂を取り戻すため、〈本日の人生修行〉の方針決めが始まる。

りん

「神通力を鍛える……って、どうすればええんどっしゃろか？」

ガラテア

「えーっとね？　アタシ、『人生修行』って言い方してるけどさ、

　要は『一日毎に色々な経験をして、その経験を力に換えよう』ってことなんだよ。

　りんが数多くの経験をして、経験の中で得た様々な感情を

　アタシが都度〈神通力に変換する〉って流れになるんだよね。

　正直なとこ、初日は何をやってもいいと思うけどー……　うーん……」

ガラテアが決めた一日目の方針は……dice1d4=1 (1)

──────────────────────

１．ヒト気の少ない《黒虫義族》のアジトの跡地で、精神統一を行う

２．都や都の周辺に赴き、できる範囲での人助けを行う

３．マルグリットへの見舞いを兼ねて、《酔の国》へ赴く

４．神様たちに会いに行く

[166 二次元好きの匿名さん 24/11/25(月) 00:52:19]

ガラテア可愛い

[167 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 03:51:11]

ガラテアたちは山間の地、面影の残らない〈黒虫義族のアジト跡地〉へと向かった。

ガラテア

「とりあえず修行らしく、森羅万象に意識を向ける

　〈精神統一〉から始めてみよーぜー」

りん

「こ、ここでやる必要はあるんどっしゃろか……？」

ガラテア

「いや、アンタん家って近くに《神主》って人いるじゃん。

　「ぼーっとせずに巫女の責務を果たせー！」って言われちゃうよ？」

りん

「言われてみたら、そやわ……」

ガラテア

「じゃ、夕刻まで目一杯自然を感じちゃって〜？

　その間アタシが四女ちゃん、三女ちゃんと遊んでおくからー」

りん

「おおきに……」

三女

「頑張れ〜」

四女

「りんお姉ちゃん、がんばれーーー！！！」

りんが夕刻までの精神統一で得た〈＂最大＂経験値〉は、dice1d6400=5548 (5548)

[168 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 05:03:43]

ガラテア
「どー？　経験得られたー？」
りん
「なんとなくやけど、得られた気はするわ……！
　あぁそや、妹たちは大丈夫どしたか？」
ガラテア
「うん、全然ダイジョーブ〜♪
　いや〜四女ちゃん、ほんとかわいいっすね〜♪」
りん
「え、えぇ、そやで……。仲良くしてあげてな……」
ガラテア
「あ ﾞ〜！　四女ちゃんの姉になりたーい！！」
りん
（やったら姉らしく、ちゃんとした格好しておくれやす……）



ガラテア
（…………リン、先に帰ってて）
りん
（え……？）
ガラテアはりんを七種宅へと帰し、気配を感じ取った方へと向かう。



「見事に壊滅していますね……」
「全く以って好い気味だ。なあ？　虫螻共」

ガラテア
（……《国防隊》か）

[169 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 08:57:53]

警ら及び職務執行、救援活動、国内外の監視及び防衛、反乱分子の制圧等、
部隊毎に様々な役割が与えられた、国家直属の実動組織《国防隊》。
国家への従属の証を首に付けた隊員が数名、無人となった山間の地に来訪する。


一般隊員その１
「蜘蛛人間のあいつも、昨夜の＂集中豪雨＂に巻き込まれて……？」
長黒髪の隊員
「御上の通達と照らし合わせて考えれば、その様だな」
一般隊員その１
「……これで少しは、被害者の方々も報われますかね？」
長黒髪の隊員
「胸が空くだろうな」

ガラテア
（……事情を知らなきゃ、こんなもんだよね）



長黒髪の隊員は袖を捲り、括り付けていた＂黒い箱＂を触り始める。


長黒髪の隊員
「こちら〈ＫＸ－Ｌ〉、長黒髪。〈ＢＲ－Ｋ１〉の壊滅を確認」
？？？
「えぇ、ホント！！？　よかったわ〜〜、あんな奴らがいなくなって！！」

ガラテア
（〈通信端末〉！？　二十年そこらで、だいぶ進んだね……。
　転生者たち、この世界でほんと好き勝手やってんなー……）

[170 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 12:01:16]

？？？
「あんな奴らが影で蠢いてると思うと、もう七時間くらいしか眠れなくてぇ〜！
　健康に悪いし〜、早くこの世界からいなくなってほしかったのよね〜♪」
長黒髪の隊員
「？？？様の憂いがなくなり、喜ばしい限りです」
？？？
「ン〜、お気遣いありがと♪　けど、ミンナに手間かけさせちゃったわねぇ。
　他の子たちにも『ご苦労様』って、伝えておいてくれない？」
長黒髪の隊員
「はっ」
？？？
「ン♪　それじゃ、また何かあったらよろしく、ネ ﾞッ♫」



一般隊員その１
「長黒髪さん、彼女にすげー好かれていますよね…………」
長黒髪の隊員
「フッ……」

「お前達、撤収だ」
彼らは誰一人として足並みを乱さずに、その場を後にする。




ガラテア
（早速、黒幕の一人っぽいのが判明しちゃったかな？）

ガラテアもまた、りんたちのもとへと帰っていき、山間の地に静寂が訪れた。

[171 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 12:58:37]

りんが精神統一で得た＂経験＂を神通力に換えるため、

ガラテアは彼女の体内に意識を向け、力の変換に勤しむ。

ガラテア

「正直それっぽいから〜って理由で選んじゃったけど、

　「精神統一で得られる経験ってなんだよ」って、後になって気づいちゃったんだよねー。

　でもアンタにとっては、結構有意義な時間だったっぽいね？」

りん

「はい。自然と一体になるよう集中してみたら、

　想像より色んな生き物がおるんやなぁって、世界の広さに気づかしてもろたわ」

ガラテア

「そーいやさ？　鎮守の森の外だったわけだけど、虫は大丈夫だった？」

りん

「………………い、いつか克服するわ」

りんが精神統一で得た最大経験値は、〈五千五百四十八〉である。

ガラテアの変換術により、経験値はdice1d5548=1191 (1191) の神通力へと変容を遂げた。

[172 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 16:41:11]

三女と四女の再会も果たし、七種家は再び一家団欒の時を迎えられた。
初めてのお友達ができたことを上機嫌に話す四女の姿を見て、
それぞれがそれぞれの笑みを返し、彼女を中心とした幸せな時間が流れる中、

女神ガラテアは、ひどく落ち込んでいた。


ガラテア
「ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン
　ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン」
りん
「しゃーないて、がらてあはん……！　初めてなんどっしゃろ……！
　あてにとって絶対に有意義な時間やったし、だんないだんない…………！」
四女
「がらてあちゃん、泣かないで……！！」

ガラテア
「……四女ちゃあん、ギュッてさせてー！！」
四女
「いいよー……！
　がらてあちゃん、いい子ー……　いい子ー…………」
ガラテア
「ありがとー……♪
　ね、二人でリンお姉ちゃんに甘えない？
四女
「えっ？！　う、うん……」

りん
（がらてあはん…………　ほんま、あんさんは……）
この有り様だが、《女神ガラテア》のトシは千を超えている。

[173 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 16:42:12]

ガラテア
「と言うわけでさ、りん。四女ちゃんと三人で寝よ？」
りん
「いや、それはええけど……」
ガラテア
「変換術、別の方法を試してみるからさ。明日に備えようぜー」
りん
（…………しゃーない神様やわぁ）



次女、三女
（すこい（※ずるい）…………）




七種家の一日、及びりんとガラテアの『人生修行』の一日目が、終わりを告げた。
現在、りんの神通力は〈三十万、一千百八十三〉である。（※301183）

[174 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 16:43:13]

りんとガラテアの『人生修行』、二日目。

ガラテア

「よーし！　今回は、たぶんダイジョーブ！

　りんの経験を無駄にしない……　いや、上手くいけば

　＂倍＂になるかもしれない変換術を、さっき教わったから！

　で、今日はどこに……

りん

「あの、がらてあはん……　堪忍やけど……

　今日はdice1d4=3 (3) 」

──────────────────────

１．巫女のお仕事しいひんと……

２．三女のお友達が、お見舞いにきはるんよ……

３．都の復興をお手伝いしいひんと……

４．国のお偉いさんに、お呼ばれしとるんよ……

[175 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 17:57:05]

ガラテア
「ふ、ふっこー……？？」
りん
「あても気づかんかったんやけど、一昨日の夜に『集中豪雨』が起きたんやって。
　お社の周りは、なんでか無事やったらしいんやけど、
　「都は結構被害が大きい、後始末が大変や」って、おかあはんがぼやいとったわ」


ガラテア
「…………リン、アタシもうダメかも」
りん
「なんや、急に……？！
　がらてあはん、あんさんはもうちょい神様らしゅうした方がええで……？」
ガラテア
「ハハッ、そうだね……。神様の不始末は、神様がしないとね…………」

りん
（どないしはったんや、がらてあはん……）

──────────────────────


《紅の島国》の政治的、経済的中心地として君臨する〈都〉。
その都は一昨日、突如として空に現れた〈広大な水の塊〉から
降り注いだ＂甚大な量の雨水＂による、洪水被害に遭った。

国家存続に関わる重要な各機関は、専属の術者たちの手により
被害を最小限に抑えられたものの、その他の地域は壊滅的であった。
術者たちの働きもあり、幸いにして命を落とした者こそ存在しないが、
未曾有の洪水被害は、都の民たちの心に暗い影を落とした。

[176 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/25(月) 19:37:48]

一般隊員その２
「…………なぁ、俺たちまで暗くなってどうすんだよ！
　都の皆に希望を抱かせるためにも、前向きに復旧作業に勤しむべきだろ！！」

《国防隊・復興支援課》所属の実動隊員の一人が、他の隊員たちに活を入れようと試みる。

一般隊員その３
「理屈じゃねーだろ……　現実見えてんのか……」
一般隊員その４
「そりゃ作業はするがよー……　感情の操作自体は無理だっつの……」
一般隊員その５
「その２さん。さすがに今その説教は違いますよ…………」

一同
「……………………」
彼の情熱も、被災直後の彼らの心には響かない。


一般隊員その２
「……手足は動かせよ！　歩みを止めたら、いつまでも暗闇の中だからな」

彼は仲間を含む、都の民である者たち全ての心に
希望を取り戻させるため、一人笑顔を絶やさずに、復旧作業を続けている。

「何笑ってやがんだ、あいつ……？」
「仕事が山ほどできて嬉しいんだろうよ」
「うちにはもう、仕事なんか…………」


彼の想いは、空回りし続けていた。

[177 二次元好きの匿名さん 24/11/26(火) 00:43:45]

物悲しいな

[178 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 08:05:44]

一般隊員その２
（復興は、倒壊した建物を元通りにさえすればいいというものじゃない……。
　心身両方の＂拠り所＂を用意し、皆に希望を取り戻させてこその『復興』だ……！）

都の片隅に、〈テアスラ教〉の信徒たちのために建てられた、小さな教会があった。
〈テアスラ教〉とは、この世界の大地、そこに根差す全ての生物の
母として崇められる《女神テアスラ》を信仰し、彼女が作り上げし自然を
自分たち自身も大切にしていくことを、至上の教条とする宗教である。

信奉者である彼らの拠り所でもある教会も、先の豪雨の影響で全壊してしまった。
元より迫害傾向にある彼らは、拠り所を失った悲しみにより深く心を閉ざしてしまう。
復興支援課の彼は、民の一員である彼らの心も救うため、教会の再建に尽力する。
『術者たちの協力もあり、二日で粗方元通り』というのは、なんとも夢のような話である。


一般隊員その２
（この鐘、無事でよかったな……）
教会が倒壊したことで行方不明となっていた、教会を象徴する存在である〈緑の鐘〉。
その鐘の音は、聴いた者の〈負の感情〉を浄化し、心を落ち着かせる作用があった。
彼らの日常を取り戻すため、彼は〈緑の鐘〉を取り付けに掛かる。

一般隊員その２
（……な、中々付いてくれんな）
要因は鐘の僅かな歪みだけでなく、働き詰めの復旧作業から来る〈疲労〉にもあった。
目は微かに霞み、腕は時折震え、足は意識を向けない限り、もつれ始める。
平静を欠いていた彼は、鐘を取り付けるために無理な体勢を取り、

足場から足を滑らせ、落下した。

[179 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 08:06:25]

一般隊員その２
（やってしまった……）
彼の体は、大地へと吸い寄せられていき、


軽い衝撃が、彼の体を襲った。




一般隊員その２
（…………？　生きてるのか……）
瞼を開けると、そこにはしかめっ面の女性がいた。
水のように綺麗な長い髪に、山羊の角を携えし姿は、鬼人のように見受けられる。
だが彼女の瞳は、哀れみと慈しみを帯び、まるで天女を思わせるものであった。


山羊角の女性
「アンタが事故に遭ったら、余計に皆が気に病んじゃうでしょ？
　休憩も大事。無理はしすぎちゃダメ。わかった？」
彼女は彼をゆっくりと降ろし、彼に代わって復旧作業に取り掛かり始める。

[180 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 09:53:36]

街の全ての国営施設に通じる〈都の大通り〉。その周辺。
りんと七種母は、復旧作業に勤しむ者や傷心する者たちを、
それぞれの得意とする方法で、寄り添ってあげていた。

りん
「おきばりやす……」
りんは神通力を用い、人々の心身を癒し周っている。
民
「あ、ありがとうございます…………♡」
神通力が無くても、りんは人々の＂心＂は癒せるのかもしれない。


七種母
「ほんま、随分立派なったなぁ、鈴」
りん
「おかあはん……　ふふっ、かわいらしい……♪」
七種母は、都のこどもたちにいいように遊ばれていた。
一名がマゲを作り、数名はリボンを結び、大勢がおもちゃを取り付けている。

七種母
「これで笑顔なって、この子らの心が癒されるんやったら、安いもんや……」
りん
「尊敬するわ、おかあはん……♪　　あら、がらてあはん……」

彼女は遠方に、倒壊した建物の復旧に励む《女神》の姿を見た。

[181 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 09:55:28]

「ウ オ ﾞオ ﾞオ ﾞオ ﾞ……………………！！！」

ガラテアは、自身の手により引き起こされた

洪水被害の後始末を果たすため、全身全霊で復旧作業に取り組んでいる。

りん

（がらてあはん。まだあては、あんさんのことがようわかってへんけど、

　『人一倍、責任感が強い』神様なんは、短いお付き合いでもわかったわ。

　面倒や思うことはあるけど、間違いなく《がらてあはん》の美徳どすえ……）

「ウ オ ﾞオ ﾞオ ﾞオ ﾞ……………………！！！」

ガラテアは、次々と建物を蘇らせていく。

りん

（え……？　う、嘘やろ……？？

　がらてあはん、dice1d10=9 (9) 分でdice1d4=3 (3) の復旧終わらしとる……）

──────────────────────

※dice1d4

１．民家／２．施設／３．一画／４．都

[182 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 12:04:22]

ガラテアが全力を尽くした結果、都は夕暮れ前に復旧を果たした。

「な、何だあいつ……？！！　
　こんな早く、都を元通りにしやがった……」
「鬼……　いや、《神様》なんじゃねえか！？」
「か、神様……？　神様、ありがとうございます……！！！」

「でも、家は戻っても、＂物＂は…………」
ガラテア
「全て元通りとはいかないけどさ、ほら」

女神は民衆の眼前に、どこからか持ってきた
食料品、衣料品、家具、雑貨、娯楽用品等を海のように顕現させる。

ガラテア
「アンタたちが頑張らないと、いずれ子供たちや他の国民たち、
　もしかしたら、他国の人々にもしわ寄せが来るかもしれないわけ。
　今すぐにとは言わないけど、皆のためにも、ちゃんと前を向いて生きていこうぜ。

　『大丈夫。女神はいつでも、あなた達を見守っていますよ』　……なんて♪」


人々は、《女神がらてあ》の降臨に歓喜し、皆で喜びを分かち合った。
希望を取り戻した人々の手により、〈都〉が輝きを取り戻す日も、そう遠くはない。


りん
「がらてあはん、素敵な女神様やったで……！」
ガラテア
「……リン、ゴメン。＂目立ち過ぎた＂、かも…………」

[183 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 14:12:35]

「そこの御仁。少し、お話がございます」

ガラテアの前に、長き黒髪を携えたdice1d2=2 (2) が現れる。

（※１．男性／２．女性）

ガラテア

「……どもどもー♪　アタシになにか用っすかー？」

長黒髪

「ここでは、お互い不都合があるやもしれません。

　他でお話を＂します＂。お好きな場所をお選びください」

ガラテア

「じゃあ、dice1d4=2 (2) で」

（※１．城／２．鎮守の森／３．アジトの跡地／４．異空間）

りん

「が、がらてあはん……」

ガラテア

「リン、dice1d2=2 (2) 」

（※１．先に帰ってて／２．悪いけど付き合って）

りん

「わ、わかったわ……」

長黒髪

「それでは、赴きましょう」

[184 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 15:48:52]

鎮守の森に帰ってきたりんたちは、

《国防隊・交渉課》を自称する、長き黒髪の女性隊員を客間へと案内した。

長黒髪の隊員

「それでは、お話を始めさせて頂きます。

　ガラテア様、貴女は類い稀な力を用い、我等が〈都〉を救って頂いたようですね？」

ガラテア

「あー、うん。放っておけなかったからねー」

ガラテアは、詳細な事情を伏せて話を進める。

それは、『神の力や《蘇りの術・誕生計画》の秘匿』だけが目的ではなく、

目の前でこちらを見据える、国防隊員に対する警戒心によるものでもあった。

長黒髪の隊員

「民の心に希望を取り戻して頂き、感謝致します。

　そして、ガラテア様の卓越した力を目の当たりにした

　我等が〈御上〉による会議が開かれ、決を採られました。

　ガラテア様、貴女にはdice1d4=1 (1) 」

──────────────────────

１．ある組織の壊滅に協力して頂きたい

２．ある伝承に関する調査をお願いしたい

３．我々の配下に入って頂きたい

４．この世界から立ち去って頂きたい

[185 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/26(火) 17:54:37]

ガラテア

「組織？」

長黒髪の隊員

「ええ。あるdice1d8=3 (3) の末裔を長とする企業組織が在りまして。

　（※１〜２．商人／３〜４．聖人／５〜６．鬼狩り／７〜８．竜人）

　連中は貧しい民衆や、身寄りの無い子供達を利用し、

　彼等を使った〈非人道的な実験〉を、日夜繰り返している模様です。

　異国の問題ではありますが、〈御上〉は深く心を痛めていらっしゃいまして、

　「是非とも貴女のお力で、弱き彼等を救ってあげてほしい」との所存であられます」

ガラテア

「どうしろって？　上層部の連中を消し去ればいいの？」

長黒髪の隊員

「いいえ。「貴女には＂ただ一人＂だけ、亡き者して頂きたい」と」

ガラテア

「へー」

長黒髪の隊員

「その者は数百年の時を生きる蝙蝠【コウモリ】の怪物らしく、何の因果か

　その身を〈長の一族〉に捧げ、一族に刃向かう者達を葬り去っているとの事です。

　その者が繰り出す強大な魔法は、世界中の歴戦の強者たちを以てしても

　太刀打ち可能なものでは無いらしく、現在膠着状態が続いております」

ガラテア

「…………アンタ、その子の名前を言ってみろ」

長黒髪の隊員

「ええ。その者の名は、

　《マルグリット・マガリ・ドラクロア》……との事で御座います」

[187 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 08:18:18]

ガラテア
「悪いけど、お断りするね。被害者たちは、アタシが……
長黒髪の隊員
「いいえ。貴女に拒否権は有りません」

突如、国防隊員と思しき十数名の黒服たちが現れる。
そこには体中を縛り上げられ、首に何かを巻かれた《次女》の姿もあった。

りん
「次女っ……！！！！」
ガラテア
「アンタ、やっていいことと悪いことくらい、わかるでしょ？」
長黒髪の隊員
「少しでも我々に楯突く姿勢を見せれば最後、
　彼女の頭は身体を離れ、宙に舞う事に成ります」
ガラテア
「神様相手に通用するとでも？」
長黒髪の隊員
「救えるようで有れば、その姿をお見せ下さい」
ガラテア
（ッ……　コイツら…………）


この状況、『時間停止や遡行を駆使すれば解決できるのでは』と
考えてしまうものだが、これまた単純な話ではない。

まずは〈時間停止〉だが、残念ながら停止中に＂物体に干渉する＂ことはできない。
物体が完全に停止中だと、外部からエネルギーを与えても無に帰してしまう。
『停止中に目一杯攻撃し、一気に衝撃を与える』という芸当は叶わない。
彼女の時間停止術は、あくまで『移動』と『対話』を支える手段でしかないのだ。

[188 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 08:18:56]

時間停止を繰り返し、全ての敵対者を気絶させる方法は、人質がいるため厳しい。

攻撃手段は全て現実的な速度であり、一人でも察知すれば次女は助からない。

では〈時間遡行〉の方はというと、彼女がその手段を選べるはずがなかった。

『力加減、細かい作業』が苦手（>>10、>>17）な彼女が、都の復旧を果たせた理由は、

『時間遡行を繰り返し、望む結果になるまで何度もやり直したから』である。

＂何度も＂は、より正確に言えば『二十年分以上も』であり、

りんたちの世界が停止する中、ガラテアや他の世界は既に二十年の時を重ねていた。

『次女を救うためなら、二十年程度また繰り返せばいい』とも決断できない。

なぜなら『＂二十年程度＂で都を復興できたのは、＂奇跡的＂かもしれない』からだ。

次は百年、千年……　いや、永久に復旧を果たすことができないかもしれない。

《女神ガラテア》が、人々の笑顔を再び奪うような所業を、行えるはずがなかった。

もっとも、実は今ガラテアたちがいる《鎮守の森》の中では、

悲惨な出来事は＂絶対に起こらない＂のだが、未だ彼女たちが知る由もない。

ガラテア

「……目的を果たしたら、次女ちゃんを解放するって＂神＂に誓える？」

長黒髪の隊員

「元より『貴女を必ず服従させる為の手段』でしか有りません。

　我等の〈御上〉は、子供達を大切にする主義でして」

ガラテア

「どの口で言ってんだ……」

長黒髪の隊員

「私も、〈御上〉を悲しませる結末を望みません。

　ガラテア様、何卒ご協力の程、宜しくお願い申し上げます」

[189 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 08:19:31]

ガラテアは、〈怪物退治〉を引き受けた。
引き続き次女は拘束されているものの、彼らは可能な範囲で丁重に扱っている。
りんが作った料理を隊員の手で食べさせ、洗身と洗髪も女性隊員たちが行う。
就寝時は長黒髪が添い寝をし、他の隊員たちが交代で見張っていた。

りん
（がらてあはん……。あては、どうしたら…………）
ガラテア
（リン、ほんとに悪いけど一緒に来て。アンタの力が必要になるかもだから）
りん
（あ……　そや、がらてあはん。《どらくろあ》はんは、お知り合いなんどっしゃろか？）
ガラテア
（ちょっとね……）
りん
（対峙するなんて、やりにくいんとちゃう……？
ガラテア
（やるしかないよ、次女ちゃんのために…………）




？？？
「…………」

ガラテア
「にしても、まさかアンタがそんなやつだったとはね。
　正義感、責任感のある子だと思ったんだけどなー。助けなきゃよかった」

ガラテアが冷めた視線を送る相手は、都の復興に尽力していた青年、
国防隊・復興支援課に所属する《一般隊員その２》である。

[190 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 12:20:22]

一般隊員その２
「…………」
ガラテア
「皆の希望を作るのが、アンタの役割なんじゃないの？
　もしかして、＂皆＂の中に次女ちゃんは入ってないのかなー？」
一般隊員その２
〔女神様…………〕
ガラテア
（……？）
一般隊員その２
〔俺を、信じていてください…………〕
ガラテア
（…………）



夜明け頃、ガラテアはりんと次女、
国防隊員たちを連れて《酔の国》に赴くため、鎮守の森をあとにする。








「マルグリットさま、お誕生日、おめでとう！」
マルグリット
「もう……　本当はお嬢様だけのお誕生日会ですのに…………」
一方、とあるお屋敷では〈二人のためのお祝いごと〉が開かれていた。

[191 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 12:21:25]

給仕一同
「マルグリット様、おめでとうございます！」
マルグリット
「あなた達私の誕生日がもう少し先なことはご存知でしょう……？」
給仕その１
「マルグリット様、これは、ご主人様のご意向でございまして……」
マルグリット
「ご主人様の……？」
給仕その１
「何でも、「今年は早めに、二人の誕生日会を開いておきたい」と……」
マルグリット
（末裔様…………？）

マルグリットが仕える一族の末裔である現当主は、先祖代々継承される
製薬会社の代表取締役、及びその企業が大口出資する〈国際的医療団体〉の会長である。

マルグリット
「そう言えばご主人様は？」
給仕その１
「「今はちょうど忙しい。後で必ず向かう」と……」

現当主はとある目的のため、日夜研究員たちと＂共に＂新薬の開発に勤しんでいた。

給仕その２
「マルグリットさまー、早く頂きましょうよー。お嬢様もお待ちですよー」
お嬢様
「マルグリットさま、『あーん』して！　『あーん』！」
マルグリット
（末裔様お先に頂きます。心よりお待ちしておりますね）

[192 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 15:35:28]

それから約一時間ほど経過し、《酔の国》の時刻は二十二時を迎える。

お嬢様
「…………パパ……　ンゥ…………」
給仕その２
「お嬢さまー、おやすみの時間ですよー」
給仕の一人がお嬢様を連れ、屋敷へと戻っていった。

給仕その３
「結局こられませんでしたねー、ご主人様」
マルグリット
「ご主人様は多忙の身ですので仕方ありません。


　……と、ところでその、その３さん」
給仕その３
「え……？　な、何ですかー……？」
マルグリット
「お、お料理の、件……　色々と、感謝いたします……」
給仕その３
「あー、料理ですかー！　何かやっちゃったかと思いましたよ〜……！
　マル様、料理ド下手ですし、マル様とお嬢様に喜んでほしかったんで、
　今回ばかりは本気出させてもらいましたよ〜？」
マルグリット
「あ、ありがとうございました……」
（いい子なんだけど苦手だわこの子……）

[193 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 17:56:05]

給仕その３
「でもまー、今回の成功はマル様のおかげでもありますね〜！
　マル様に集めていただいた食材たちが、ほんと良くって！
　あれだけいいのが揃ってたら、
　三流シェフでも〈ミツボシ〉？　ってやつを、ワンチャン狙えますもん！」
マルグリット
「が、頑張って集めた……　甲斐が、ありました……」
給仕その３
「特にあれが良かったですね、〈香草〉！　あれで作ったお茶は
　心がスーッとするだけじゃなくて、疲労感に胃もたれ感、
　さらに〈あらゆる後味〉すら消してくれる優れものなんで、
　全部の料理を皆がおいしく食べ切ってくれた、ってわけなんですよ〜！

　マル様は、苦手みたいでしたけど……」
マルグリット
「い、いえ……　衝撃的だった、だけですので……」
給仕その３
「あの！　もう一度採ってきていただけませんか！！
　今度はマル様のための〈特別なお茶〉、作ってみせますから！」
マルグリット
「あー、えー……　す、すみません。
　あれの、採取は……　割と奇跡的で……


「アタシが持ってきてあげようか？」


マルグリット
「……？！！　あ、あの時の…………！！」
異国の地にて、一人と一柱は再会を果たす。

[194 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 19:27:48]

給仕その３
「マル様、あの凄そうな人、知人の方ですか……？」
マルグリット
「す、少しだけですが、一応……」

ガラテア
「ゴメンねー、定期便ってやつできてなくてー……。
　約束だから、いっぱい送ってあげたかったんだけど……」
マルグリット
「ど、ど、どの様な、ご用件で……　 しょうか……？」
ガラテア
「ゴメン、先に聞いておきたいことが、ひとつあってさ。
　アンタの《ご主人様》が、貧しい人々や子供たちを使って
　実験してるって聞いてるんだけど、それってほんと？」
マルグリット
「え、ええ、その通り……　ですが…………。



　……あーはいはいなるほどあなたも〈彼ら〉と同じですか。
　私が思った通りですね。やはりあなたは《邪神》でしたか」
ガラテア
「その人々を、救わなきゃだからさ。
　立ち塞がるつもりなら、アンタを消さなきゃなんだよね」
マルグリット
「こちら側の事情もお構い無しに私たちの全てを奪うわけですか。
　無邪気で愛嬌のある神様の振りをしてとんだ食わせ者ですこと。


　キサマが失せろ、《邪神ガラテア》」

[195 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 21:05:54]

ガラテア
「まだ早いでしょ？　その子、巻き込んじゃうよ？」
マルグリット
「……その３さん。お嬢様のこと頼みますね」
給仕その３
「マ、マル様……？」
マルグリット
「〈特別なお茶〉。いつか私に振る舞ってください」
給仕その３
「…………絶対に、絶対に帰ってきてくださいね！！
　特別なお茶と、おいしいお菓子の作り方、お教えいたしますから……！！」
給仕は彼女の意思を継ぎ、屋敷へと避難していった。


ガラテア
「いい子だね、彼女」
マルグリット
「そんな彼女を深く悲しませる腹積もりなのでしょうか？」
ガラテア
「……ゴメンね」
マルグリット
「良心がある振りをするな邪神風情が。潔く貫き通しなさい」
ガラテア
「…………ほんと、ゴメン」

マルグリット
「……もしも仮にあなたに良心があるのであれば
　残していた私の《願い》叶えていただけますよね？」
ガラテア
「命乞いとかだったら、無理だから諦めてね……」

[196 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/27(水) 21:07:01]

マルグリット
「私に〈夢〉を見せてください。あなたに勝てるかもしれないという〈夢〉を。
　あなたの人智を超えた強大さは充分に体験しております。
　ですが私は消えたくない。諦めたくない。最後まで足掻いていたい。
　末裔様。お嬢様。メイドの子たち。皆様と共に生きていたい。

　女神様。私に〈希望〉を授けてください。希望を持って抗いたいです。
　最初で最後で一度だけの願いをどうか……　叶えて……　ください…………！」
ガラテア
「…………一瞬で終わらないから、逆につらい気持ちになるよ？」
マルグリット
「皆様を護ることを諦めるより辛いことなどございません……！」
ガラテア
「わかった。できるだけ手加減してあげるね」


マルグリット
「“Geler et être jugé!!”」
ガラテア
「“Form of Mizukuma.”（水熊）」


かつてを共にした聖人、その者から連なる一族との契約。
歩んできた生涯の中で生まれた、人々との絆。彼女たちとの約束。笑顔。
信義と情、見せかけの希望を胸に抱き、彼女は《女神》に立ち向かう。

[197 二次元好きの匿名さん 24/11/28(木) 00:21:23]

頑張れ

[198 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 08:03:03]

ガラテア
「炎幕【エンマク】」
神の炎は、〈下界〉の冷気を無に帰す。

マルグリット
「ッ！！！　“Pluie Impitoyable”!!!」
数多を滅ぼす死の水を、神へと向ける。が、
ガラテア
「河界【ガカイ】」
水を司る神に、通じるはずも無い。

《酔の国》に、小さな〈天の河〉が生まれた。

マルグリット
「“Flamme de Crier”!!!」
業火の如き炎で、神の河を蒸発させることは＂叶わない＂。

ガラテア
「神雷【ジンライ】」
神の雷が、マルグリットの眼前を通り過ぎる。


マルグリット
「き、希望を……　見せていただける……　約束では…………？」
ガラテア
「……弱音を吐いちゃうけど、正直加減できるほど冷静じゃなくてね。
　こっちにも事情があるんだ。なんて、こんなこと言って、ゴメン……」

マルグリットは、戦場から少し離れた場所で
戦いを見据えている集団がいることに気がついた。

[199 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 08:03:42]

ガラテア
「やめてね？　あの子たちに危害を加えるなら、容赦はしないよ」
マルグリット
「そのつもりはありません。あなたも私以外は眼中に無い様子ですし。
　あの狐の子でしょうか？　あなたが守りたい＂命＂は」
ガラテア
「合ってるよ……」
マルグリット
「余程大切な存在なのでしょうね。私を消してお嬢様たちを
　悲しませることを選ぶような《邪神》に成り下がる決断をするほどには」
ガラテア
「……………………」


〔なぜ…………〕

ガラテア
（……？）

〔なぜあいつらは末裔様を目の敵にしているの……？！
　人々の希望のために尽力している彼を尊ぶではなく忌み嫌うなんて……！！
　薬の実験だって望んだり協力を申し出てくれた人々に限定しているし
　術者たちと共に最善の注意を払って行なっているのに…………！！

　実際今までの歴史上深刻な後遺症が残った人や命の危険に晒された人はいないし
　ご主人様一族がお作りになった薬の数々で人々が救われた実績も知っているはず
　なのに臆測混じりで人格を断定して阻害するなんて破滅願望でもあるの…………？！！〕

ガラテア
（口に出せないのは、彼女の性格なのかな…………）

[200 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 08:42:03]

〔絶対にご主人様一族をお護りしないと……！！
　発作的に血を求める《生物の敵である私》に生きるって選択肢をくれた彼らを……！！
　一族の希望である末裔様を……！　一族の未来であるお嬢様を……！
　一族を支えるメイドたち社員たち被験者たち医療団体の子たちを……！

　護らなきゃ……　護らなきゃなのに……　希望が見出せない…………！！！
　消えたくない……！　生きていたい……！　恩を返したい…………！！
　だらしないところのある末裔様を最後までお世話したい…………！！
　お嬢様が大人になって子供を授かり幸せな家庭を築くところを見たい…………！！

　メイドの子たちに色々教えたい……　教えてもらいたい…………！！
　時々無茶を言う末裔様についてきてくれる社員の子たちを何度でも労いたい……！！
　実験に快く協力してくれる優しい被験者たちの未来を護りたい…………！！
　人々の悩みをそれぞれの方法で救ってくれる医療団体の子たちを応援したい…………！！

　消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない…………！！！
　助けてください……！！！　《神様》…………！！！！〕




ガラテア
（…………あー、知りたくなかった。ほんと、知りたくなかった。
　やっぱりこの子、すごくいい子じゃん。ご主人様たちと共にいるべきだよ。
　でも彼女を生かしたら、代わりに次女ちゃんが命を落としちゃう。
　リンたちを悲しませないためにも、絶対にやらなきゃダメなんだ……。

　でも、こんなにいい子の命、奪いたくなんかない…………！
　自分の都合で、彼女をこの世界から消し去るなんて、
　絶対に……　絶対に、したくない…………！！　なのに…………！！！）

[201 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 11:50:22]

長黒髪の隊員が、ガラテアに合図を送る。『早くやれ』、と。

ガラテア
（わかりましたよ…………）
「ゴメン、マルちゃん。少しずつ、本気出させてね？」

マルグリット
「……あなたもまた〈大いなる力の被害者〉なのでしょうね。
　ですが同情する余裕はありません。こちらも＂本気＂を出させていただきます」

マルグリットは、音を超える速度を以て〈国防隊たちがいる場所〉へ向かう。
他の者には目もくれずに《りん》の首に掴み掛かり、天高くへと昇った。

次女
「りん姉、りん姉っ……！！！！」
長黒髪の隊員
（ほう……）


ガラテア
「…………アンタ、さすがに許せないよ？」
マルグリット
「私は元より不死性を持つ身。神であろうと一撃では葬れないでしょう。
　私に危害を加えれば最後、この子を道連れにいたします」
りん
「が、がらてあはん……　次女を…………！！！」

ガラテア
（マルちゃん、アンタまで堕ちちゃってどうすんだよ…………
　って、アタシが言えたことではないんだけど…………）

[202 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 11:51:36]

〔消えたくない…………！！！〕

ガラテア
（っ……！！）

マルグリット
〔消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない…………！！！
　皆と一緒に生きていたい……！！！　皆と一緒に笑っていたい……！！！
　《神様》お願い申し上げます……！！　《邪神》に打ち勝つ強さをください……！！！
　どうか……　どうか一度だけ…………　〈願い〉を叶えてください…………ッ！！！！！〕

ガラテア
（アタシだって、消したくないし…………　《神頼み》、したいよ…………！！
　師匠……　ゼウス様……　ハデス様…………　神々の皆様…………！！
　どうか、りんを、次女ちゃんを、マルちゃんたちを、皆を…………！！！
　不出来なアタシに代わり、彼女らをお救いください…………！！！！！）


マルグリット
〔消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない！！！！！〕
ガラテア
（消したくない、消したくない、消したくない、消したくない……！！！！）


〔助けてください《神様》ッ！！！！！〕
（助けてください、《神様》……！！！！！）



だが、神々は何も応えない。

[203 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 11:52:31]

彼女らの願いが、虚空の彼方へと消え去っていく中、
眼下では〈これから起こり得る未来〉に備え、対策が講じられていた。

長黒髪の隊員
「お前達、一人だけででも＂生きて帰る＂事に注力しろ！
　暴走したガラテアが、〈御上〉や《天上者の方々》に危害を及ぼすやもしれん！
　彼らをお護りする為に、危険が身に迫れば、逃げ出してもらって構わない！」

一般隊員その１、６、７、８、９、１０
「は、はっ……！！」
一般隊員その２
「……準備完了だ」
一般隊員その１１、１２
「隊長、逃げ道はあちらです……！」
一般隊員その１３
「あのー……　もう逃げてもよろしいでしょうか……？」
一般隊員その１４
「軟弱者！！　少しは、足並みを揃えろ！！」

長黒髪の隊員
「総員、態勢につけ！　何が起こるか、判らんぞ！
　《我等の国》を護るために、死に物狂いで取り掛かれ！！」
隊員一同
「はっ！！！」




長黒髪の隊員
（…………準備、＂完了＂？）

[204 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 18:09:34]

一般隊員その２
「おーーい！！　こうもりのお嬢さん！！」

マルグリット
（な、何…………？？）
一般隊員その２
「いきなりで悪いが、その狐の子を《がらてあ様》に渡してくれ！！」
マルグリット
「は？？！！！　なぜ……
ガラテア
「ちょっとタイム」

ガラテアは、世界の動きを止めた。

ただ一つ、『マルグリットの脳の活動』だけを除いた、全てを。

ガラテア
（ゴメン、色々唐突で戸惑うよね？　でも、彼の言葉を信じてあげて？
　もしも彼の言葉を信じてくれるなら、
　アタシは二度と、『マルちゃんたちに危害を加えない』ことを誓うよ）
マルグリット
（な、何を……　企んで、いらっしゃるの、ですか……？？
　私が……　あなた達なんかを、信じる……　とでも……
ガラテア
（お願い、信じて。アタシは根っからの悪者はおもちゃにするタイプだけど、
　アンタみたいな子は、皆、幸せになってほしいんだ。本当に。

　アンタ、不死体質なんでしょ？　もしも「嘘をついた」と感じたらさ。
　アタシの身内の誰か、道連れにするつもりで動いていいよ。
　〈おもちゃ共〉を相手に嘘をつくことは、正直に言えばあるんだけどさ。
　アンタみたいな子を相手には、＂絶対に＂嘘をつかない。信奉者たちに誓ってね）

[205 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 18:10:51]

マルグリットは、これまでの《女神》の言動を振り返り、

マルグリット
（…………裏切らないで、くださいね）
彼女を信じることにした。


世界は再び動き出し、マルグリットは、りんを女神のもとへと帰す。

一般隊員その２
「じゃあ、お嬢さん！　〈これ〉を、迎撃してくれッ！！！」
彼は次女を締め付けていた首輪を外し、マルグリットを目掛けて投げつけた。

マルグリット
「！？　“Balle de Feu”!!!」
彼女の放つ〈火の弾〉が、忌まわしき首輪に直撃し、

大気を揺るがす衝撃と熱が、辺り一面に広がった。



ガラテア
（隊員くん、疑ってゴメンね。アンタは紛れもなく、皆を護るヒーローだよ。
　『女神として』なんて、偉そうなもんじゃなくて、
　『リンの友人、マルちゃんの知人』として、心から感謝するね。
　……本当に、ありがとうございます。《国防隊員》様）



女神を縛る鎖は、《酔の国》の夜空の中へと溶けていった。

[206 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 18:11:39]

長黒髪の隊員
「…………どう言う積もりだ？」

一般隊員その２
「こちらの台詞だ、〈似非国防隊員〉！！！
　民を護る存在であるはずのお前が、民の命を脅かしてんじゃねえ！！
　『目的のためなら、どれだけ民を苦しめても良い』ってか？？
　民を、人々を護る者としての〈自覚〉を、どこに置いてったんだ！！！」

長黒髪の隊員
「『目的のためなら、何とやら』、その通りだ。
　国という〈全体〉を護る為には、時に〈個〉を犠牲にする必要を迫られる。
　《我等の国》を支えてくださる〈御上〉の切なる願いを叶える為にも、
　《確実性を持つ者》を支配下に置く必要が有った。それだけだ」

一般隊員その２
「それがお前の言い分か？　くだらん！！　臆病者の戯言だな！！！
　人質なんて真似を取らず、頭を下げて協力を願えばいいだけだろうが！！！
　「彼女を信用してなかった」か？　「だから暴力に頼った」ってか？？
　本当に国を護るつもりがあるなら、疑心暗鬼に陥って力に溺れてんじゃねえ！！！」


長黒髪の隊員
「…………」

[207 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/28(木) 18:12:32]

一般隊員その２
「お前は、自信が無かったんだろ？　自分の言葉で説得できる自信がな。
　『相手を信頼しきれなくて、それが声色に出て、失敗してしまうかも』という
　後ろ向きな予測が、少しずつ自信を奪っていった。ってところか？
　それ自体を責めるつもりはねえぜ。人には、得手不得手があるもんだからな。

　だが、そこで『否応無く従わせる』という手段を選ぶ、お前の弱さは大問題だ！！
　遺恨が残るような手段を取って、その後協力を拒まれたら、どうするつもりだ！！
　また暴力での支配を図るのか？　いずれ、寝首を掻かれる危険性を考えろ！！！

　人々に、国に対する不信感を抱かせやがって……！！！
　お前はそれでも、《国防隊》かッッ！！！！！」


長黒髪の隊員
「どうやら、忘れてしまったらしいな」
一般隊員その２
「ッ！！」
長黒髪の隊員
「《我等の国への忠誠を誓う証》、
　その証たる〈首輪〉は、＂お前も、身に付けている＂」


彼は次女を、マルグリットを、ガラテアを救ってみせた。
その彼の首が、鈍く赤い光を放ち、一つの終わりを告げる。




大きな衝撃と熱が彼を襲い、彼は恒久の眠りについた。

[208 二次元好きの匿名さん 24/11/29(金) 01:24:48]

熱い男だ

[209 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 07:50:40]

次女
「隊員はんっ！！！！」
りん
「た、隊員はん……　隊員はんっっ！！！！」
ガラテア
（…………！！！）
ガラテアは時間遡行を試みようとするが、すぐに無駄だと気づいた。
力の加減ができない彼女が、纏わり付いた首輪を手早く外せるはずも無く、
他の隊員共に怪しまれて彼を……　いや、次女たちすらも危険に晒す結果になりかねない。

長黒髪の隊員
「《我等の国》に仇を為す者よ。業火の中で悔いるが良い」

りん
「隊員はん、きばりぃ……！！！　生きておくれやす…………！！！」
りんは、全身全霊で治療に勤しむ。
だが、今の彼女の神通力では、彼の蘇りを果たせそうにない。
ガラテア
「隊員くん……　本当に、ゴメン…………ッ！！！！」



マルグリット
（男の人が命を落としたっぽい……？　なぜ……？？　仲間割れ…………？？
　彼のおかげで女神様は救われたらしいけど
　黒髪の方の逆鱗に触れてしまった。ってところ…………？？
　
　なぜ彼女は私あるいは末裔様のことを憎んでいるの……？？
　もしかして私が消えていれば男の人は助かったの…………？？
　私って……　＂やっぱり＂生きてちゃいけないの…………？？？）

[210 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 07:51:48]

りん
「がらてあはん、あての神通力を増やしておくれやす……！！！」
ガラテア
「『焼け石に水』ってやつだよ……。
　数万パワー増えたとしても、蘇生は無理だね…………」
りん
「『爆発的成長』が起こたら…………！！」
ガラテア
「意識的にできるもんじゃないんだ……。
　大切な人が窮地に陥ったりしない限り、期待はできないよ…………」
りん
「なら、〈あての中のあて〉は、隊員はんのことを
　「どうでもええ人や」思うとるんか……？？
　次女と、がらてあはんを救ってくれはった、隊員はんのことを……？
　せやったらあては……　あて自身のことが、心底嫌いになるわ…………！！！」
りんは、ひたむきに祈りを捧げ続ける。

りん
「隊員はん、生きておくれやす……！！！
　次女とあての心のために、《紅の島国》のために……　お願いや…………！！！！」
ガラテア
（アタシが、〈神々の掟〉を破れば…………）


（あの、ガラテア様…………）

ガラテア
（！！？　ア、アンタいたの……？
　そっか……　アレ以来、ほんとに＂大人しく＂してたんだ…………）
ガラテアに呼びかける＂声無き＂声は、《鍬形男》のものであった。

[211 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 07:52:46]

ガラテアは再び世界の動きを止め、彼の提言に耳を傾ける。

鍬形男
（突拍子もないことである自覚はありますけど、
　俺を彼に憑依？　融合？　させて復活！！
　とか、できませんかね…………？）

ガラテア
（……………………は？）
鍬形男
（いや！　何かの作品で見たんですよ、そんな感じで主人公が復活するやつ……！
　ガラテア様は、俺を易々とぶっ飛ばせるんで、印象無いかもですけど、
　俺って一応〈転生者〉でして！　俺の能力が作用して復活〜…………　とか……？）
ガラテア
（その＂作品＂、何かと何かが混ざってたりしない……？？）
鍬形男
（何かで見たはずなんですけど…………）
ガラテア
（無理でしょ……。だって、彼自身がもう駄目そうなんだし……）
鍬形男
（いえ！！　全然希望はありますよ！
　だって、《彼の霊体》、まだ見えてないじゃないですか！）

ガラテア
（あ…………！！）

鍬形男
（彼は皆を護るため、〈絶望〉に立ち向かってるはずなんです！
　俺なんかと違い、ガラテア様を救った《本当のヒーロー》である彼が！！
　そんなヒーローに、俺の〈力〉を貸してやりたいんです！！）

[212 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 11:22:15]

ガラテア
（そうだね……　可能なら、そうしたいけど……。
　アタシが彼を生き返らせたら《神様たち》の怒りを買うかもだし、
　今のリンの神通力じゃ、人の命を取り戻すまでは……
鍬形男
（俺、転生させてくれた神様に、能力を＂四つ＂貰ったんです！
　その内の一つ、〈無尽蔵の生命力〉が彼に備われば、
　りんさんの力でも〈蘇生〉を果たせると思うんです！！）
ガラテア
（へー……　アンタ、そんな特徴あったんだ……？）
鍬形男
（女神様相手には、形無しでしたけどね…………）


ガラテア
（…………本当に、情けない神様でゴメン。アンタたちは希望を失ってないのに、
　勝手に絶望視しちゃってさ……。希望を授ける立場のはずなのに…………。
　こんなアタシが、神や女神を名乗るなんて…………
鍬形男
（その、不敬極まりないことを言いますけど……
　ガラテア様は、『今はまだ未熟』ってだけなんです！！
　責任感があって、思いやりの心もある素敵な女神様ですけど、
　人並みに臆病だったり、不安定だったり、優柔不断なところもあったりで……

　でも！　その程度で、神様を名乗れないってことはありませんよ！！
　ぶっちゃけ、ガラテア様の身内にも、《変な神様》いらっしゃいますでしょう！？）


ガラテアは彼の問いを受け、自身の記憶と照らし合わした後、
全ての動きが止まった世界で、大きな笑い声をあげた。

[213 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 16:28:48]

ガラテア
「アハ！？　アヒヒヒヒヒヒャヒャ！！　ヒャハ……　アヒヒヒヒ…ィ………？？
　ヒヒ、ヒャアヒャヒャヒャフヒヒ…………！！　アハーーハヒャヒャヒャ…………！！！」


（…………うん、アンタの言う通りだ……♪）

鍬形男
（ガラテア様は、未熟でも立派な《女神様》です！！
　俺も、七種家のみなさんも、黒虫義賊の皆も、
　隊員さんも、都の人々も、たぶん〈吸血鬼の彼女〉も……
　皆が、あなたを《女神ガラテア》として、信じていますから！！！）


ガラテア
（女神ガラテア、何度目かの、ふっかーーーつ！！！

　って、ほんとは言いたいところなんだけどさ。
　ゴメンね、鍬形男くん。女神の復活、アンタにかかってるかも）
鍬形男
（任せてください！　彼を救ってみせます！）
ガラテア
（じゃ、時の流れを戻すね。　頑張れ、《もう一人のヒーロー》！）



世界は、また歩み始める。

[214 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 16:29:24]

（お、俺は…………）
男は薄れゆく意識の中、生と死の境を彷徨っていた。

（俺には……　何か、やるべきことが…………）

鍬形男
（あの〜、すみません）

男
（？？！　く、くわがた人間……　か…………？？）
鍬形男
（あ、はい、一応クワガタ人間です……。
　あの、時間がないので、簡潔に希望をお伝えしますね？
　皆を護るために、俺と一つになってください！）


男
（……………………は？）
鍬形男
（俺と一つになることで、あなたの体に〈無尽蔵の生命力〉が備わるはずなんです！
　その能力を以てすれば、りんさんの力で、必ずあなたは蘇りますから！！）

男
（お前は、何を言ってるんだ……？？）
鍬形男
（すみませんが、詳しく説明できる時間が、あなたの体に残されていません！
　お願いします！！　りんさん達が、ガラテア様が、
　《あなたの帰り》を待っているんです！！）

[215 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 16:30:05]

男
（がらてあ……　様…………？
　お前、《がらてあ様》の使いなのか……？）
鍬形男
（まあ、そんなところ……　です……）


（思い出してきたぜ…………　俺には、護るべき存在が沢山いる…………！！
　民の皆、国防隊員たち、そして《がらてあ様》もだ…………！！）


男
（お前を信じてやる。絶対に、裏切らないでくれよ）
鍬形男
（え！？　あ、はい！！

　その……　少しの間、よろしくお願いします！！）
男
（おう！　力を貸してくれ、『相棒』！）
鍬形男
（え？！　あ、相棒認定は、
　早いと思いますけど……　頑張りますッ！！）


次女を、りんを、ガラテアを、マルグリットたちを、
そして《国防隊員たち》を救うため、
ヒーローたちは、帰路につく。

[216 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 20:16:23]

《酔の国》に聳え立つ〈大きな邸宅〉から少し離れた場所で、
一人の巫女が英雄の復活を希い、治療を施し続けていた。

りん
（お願いや、隊員はん……！！）

りんの祈りは、ついに英雄の御霊へと届き、
絶望の淵に沈んでいた彼を、次女を、そして自分自身を救うことができた。


男
「…………お……　お、お…………」

りん
「！！！　た、隊員はんっっ！！！！」
次女
「隊員はんっ！！！　ほんま、ほんまに…………！！！？」

長黒髪の隊員
（ば、ばかな……！！！　あの衝撃を首から直に受けて
　蘇らせられるはず…………　が……………………？）


何かがおかしい。


りん
「た、隊員はん…………？？」
男
「お…………　おお、お………………」

[217 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 20:17:22]

ガラテア
（〈鍬形男くんのタマシイ〉の影響、強すぎたっぽいね…………）


彼の姿は、闇を思わせる漆黒へと変色し、
頭の縁に、鹿の角……　いや、〈クワガタの顎〉が生え始める。
輪郭が少しずつ、《鬼人》を思わせるものへと移り行き、
変貌を終えた直後、彼は何事も無かったかのように立ち上がった。

男
「りんちゃん、俺を呼び戻してくれて、ありがとうな！」
りん
「よ、良かったわ……　ほんまに…………」
男
「次女ちゃん、心配させて悪かったな。もう大丈夫だぜ？」
次女
「隊員はん…………？？」
男
「《がらてあ様》、彼女らをよろしく頼みますぜ！！」
ガラテア
「彼らの目を覚まさせてあげな、＂二人とも＂！！」


異様な雰囲気を漂わせている＂男＂に、国防隊員たちは各々の武器を向ける。
長黒髪の方へと歩を進める男に対し、隊員の一人が立ち向かった。

一般隊員その１
「近づくな、化け物ッッ！！！！」
男
「りんちゃん、＂よろしく＂な！」

[218 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 20:18:24]

りん
（え……？）

男は、隊員が繰り出す攻撃を直に受け止め、
多少加減のある拳で、りんの近くへと＂殴り飛ばし＂、辺りに轟音が響き渡った。


国防隊員の彼らに、戦慄が走る。
だが、勇敢さを残す隊員の一人が、男に対して鉛玉の雨を直撃させて見せた。が、

男
「りんちゃん、こいつも＂治療＂してやってくれ！！」
彼は、電光石火で隊員の背後へと回り、再びりんの方へと殴り飛ばした。


りん
「ちょっと待っておくれやす……！！
　ち、治療しろ言われても、早すぎるわ…………！！！」

男
「おお、すまなかった！！　ここからは、俺が＂惹きつけ続ける＂ことにするぜ！！」

半狂乱に陥る隊員たちの攻撃を幾度となく受け続けても、
彼が地に伏す予兆を見せることは無かった。



ガラテア
（鍬形男くんとこの《神様》、
　たぶん〈クワガタムシ〉だけじゃなくて、別の虫の要素も混ぜてるよね…………）

[219 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 20:19:10]

一般隊員その６
「な、何なんだ、お前は…………！！？」

男
「俺か？　俺は《国防隊・復興支援課》所属の……
一般隊員その１４
「嘘を吐くなっっ！！！！　お前のような存在が、《国防隊》など…………！！！！」
男
「あぁ？？　…………まあ、これだけやりゃあ、居場所は無くなるもんか。
　〈今の俺〉は…………　そうだな……………………　


　鬼人…………　そうだ、鬼人の如き強さを手に入れた…………
　それは『相棒』、くわがた人間のおかげ…………　！！
　決めたぜ！！　今この時から俺……　いや、〈俺たち〉の新たな名前は！！」



「人々を護る義人たる鬼人、《クワガタオニ》だおらああああああ！！！！」



ガラテア
（ず、随分と『High』になっちゃったな、彼…………）

夜も更けた《酔の国》全体に、傍迷惑な騒音が響き渡った。

[220 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 20:47:21]

次女
「み……　耳が…………」
クワガタオニ
「あ、すまん！！！　りんちゃん、次女ちゃんを……
りん
「いたい…………　いたい…………！！！」
りんは今、自身の痛みを消し去ることに集中している。

クワガタオニ
「あーーー…………　やっちまったな、俺…………」
ガラテア
「〈転生〉して〈全能感〉に浸りたくなる気持ちはわかるけど、
　護るべき人々を傷つけてたら、アイツらと変わらないでしょ…………」
クワガタオニ
「あ、はい……　仰る通りです、女神様…………。
　この度は、俺の無分別さで彼女らを苦しめてしまい、誠に…………



長黒髪の隊員
（な、何だあれは……？！！　あれも、《女神》の仕業なのか……？？）


隊員一同
「ぅ…………　ぁ…………」

長黒髪の隊員
（あ、諦めるしか無いのか？　〈御上〉の、＂切なる願い＂を…………！！）

[221 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/29(金) 21:19:34]

マルグリット
（ふ、防ぎ切れ……　なかった…………）
マルグリットは地に膝を付け、うずくまっている。

長黒髪の隊員
（こ、好機……！！！）
彼女は〈銀の魔弾〉が込められた猟銃を、

ガラテア＆クワガタオニ
「させるかよ」
〈鬼の如き神と人〉に、壊されてしまった。

ガラテア
「ま、あの子って粗方弱点克服してるっぽいし？
　せっかく用意したソレでも、アンタじゃ倒せなかっただろうけどねー」
長黒髪の隊員
（くっ…………）
＂常識的な策＂を失った彼女は、与えられた任を果たすため、首輪に手を当てる。

長黒髪の隊員
（やるしか……　無い…………！！）
彼女が、自身の首を強く掴むと同時に、彼女の身に異変が生じ始めた。


クワガタオニ
「何か、犬くさいぞ、長黒髪…………？」

ガラテア
（ふーーーーーん？）
ガラテアは彼女の＂変貌後＂を察し、少しだけ〈怒りの感情〉をあらわにする。

[222 二次元好きの匿名さん 24/11/30(土) 01:21:10]

おつおつ
いいネーミングセンスだ

[223 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 08:33:23]

長黒髪の隊員の体から、＂禍々しさに満ちた＂霊気が溢れ出す。
霊気は彼女の体に纏わり付き、異形の姿へと導いていく。

長黒髪の隊員
〔〈御上〉の盟友様から授かった、この力で…………！！〕

眠りにつくかのように、彼女は首を垂れた。
だが、霊気を纏う長髪だけは重力に抗い、〈無数の蛇〉へと変貌を遂げる。
さらに、生気を失った頭部を支えるように、双肩から〈二頭の犬〉が顕現した。

ガラテア
（へー、《ケルベロスちゃん》のマネかーーー？？）


人身を供物に、《酔の国》の空に《亡霊の魔犬》が生まれ出づる。



魔犬
「神々に等しい《天上者様》により生み出されし我々の力で、
　忌々しい〈鬼共〉と《邪神》を、現世から葬り去って見せよう…………！！」



ガラテア
「…………　はぁ……………………」

女神ガラテアは、ため息をついた。

[224 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 08:34:04]

ガラテア
「悲しいなー。《天上者様》？　の《ケルベロスちゃん》に
　対しての認識が、こんな〈ありふれた化け物〉って感じなのがさー」
魔犬
「何……？？」
ガラテア
「会ったことないだろうから、教えてあげるけどさ。
　ケルベロスちゃんって、すっっごくかわいくて、
　すっっっごくいい子なんだよねー♪

　のんき者でうっかり者なチャームポイントもあるんだけどね？
　《ハデス様》の命に従って、皆でずっと冥府を監視してくれたり、
　内外の不届き者たちに立ち向かってくれたりする、忠義の士なんだよねー。

　そんな、＂かっこよさ＂とさ？　甘いものあげたら
　尻尾をビタンビタンして喜んでくれる無邪気なとことか、
　綺麗な音が大好きで、リラックスしてごろごろしちゃって、
　時々皆して眠っちゃうとこに見える＂かわいさ＂を兼ね備えた子なんだよ♪

　そんな＂尊い＂子をさ。アンタみたいに
　《見た目だけで中身が無い怪物》として、再現したつもりっぽいのがさ。
　ほんとーーーに、許せないんだよね」


魔犬
「吐かせ…………！！！」

亡霊の魔犬は牙を剥き、女神から全てを奪い去らんとする。

[225 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 09:40:42]

ガラテア

「人工物風情が」

女神は、得意の変身を介することなく、怒りを込めた〈双拳〉による

風圧で、霊気共を宙の果てへと葬り去った。呆気ない幕切れである。

長黒髪の隊員

〔な、何が起こった…………？？？

　＂力＂は……？？　《天上者様》から授かった、力は…………？？！〕

長黒髪の隊員は再び自身の首を掴み、力を取り戻そうとする。

ガラテア

「しつこいなぁーーー！！！　りん、お願いッ！！

　あの女の禍々しい霊気、アンタの力で鎮めてやって！！」

りん

「え！？　ま、待っておくれやす……！　まだ状況飲み込めてへんし、

　そもそもあての神通力って、癒すためのもんや……

ガラテア

「アンタ、〈巫女〉さんでしょ！！　転用すれば、いけるいける！！！」

りん

「急かさんといてぇな…………」

りんの〈三十万、一千百八十三〉の神通力により、

霊気は……　dice1d3011=2337 (2337)

（※６６６以下で鎮静化失敗、６６７以上で成功）

[226 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 11:55:12]

長黒髪の隊員
「な、何故だ！！！　何故、＂力＂が湧き上がらない！！！！」

りんの神通力の働きかけにより、彼女の霊気は勢いを失っていった。


長黒髪の隊員
「お、女あああああああ！！！！」
彼女はりんに襲いかかるが、ガラテアに抱かれて身動きが取れなくなる。

長黒髪の隊員
「《邪神》ガラテアアアアアアアア！！！！」
ガラテア
「長黒髪ちゃん、もう少しだけ待って。
　たぶん、もう少しで＂全てが終わる＂から」
長黒髪の隊員
「何を言って……
ガラテアは彼女の口を塞ぎ、
目配せで《マルグリット》の方へと視線を誘導する。



マルグリット
（終わった……？？　終わったの…………？？
　ガラテア達も敵っぽいやつらも皆が無事って現実味が無いけど…………
　もしもそうだったらこれ以上の良い終わり方も無いでしょうね…………。

　でも私やご主人様一族は今後も狙われ続けるはず…………。
　もしもそれが〈私のせい〉なら…………　《血に飢えし怪物》である
　＂私が存在している＂せいなら…………　皆のためにも…………！！！）

[227 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 11:56:14]

「おーーい！！　マルグリットーーー！！」
街へと続く道の方から、彼女の〈ご主人様〉が姿を現す。

マルグリット
「ご、ご主人様！！？　あ、あの、誠に申し訳なく、存じます！！！
　ご連絡が、無いことを認知……　していながら、お迎えに、参らず…………！！！」
末裔
「いや、それはマルグリットは悪くないんだ！　私が皆に
　「時が来るまで、彼女には内緒にしてほしい」と伝えてあったからで…………！」
マルグリット
「え？！！　わ、わた、私、何かしてしまい、ましたか？？！
　私、もしやご主人様に、距離を置かれる……　ようなことを…………
末裔
「落ち着いて！　……＂マルグリット様＂の悪い癖だよ？
　ゆっくりと気持ちを落ち着けて……　ゆっくりと……………………」


マルグリット
「申し訳なく存じます…………。私、昔からこの様でして…………」
末裔
「今更だね？　マルグリットの良い所も悪い所も、全てわかってるよ。
　それよりこちらこそ、色々と誕生日会に間に合わせられず、申し訳ない……！」
マルグリット
「いえ、ご主人様はお忙しい身ですので…………」
末裔
「今回ばかりは、それでも早めに終わらせたかったよ…………。
　娘も含めて、皆で＂マルグリット様＂をお祝いしたかったんだ…………」
マルグリット
（…………？？）

[228 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 18:06:28]

末裔
「マルグリット様、お誕生日おめでとうございます。
　先祖代々お続けくださる〈我が一族〉へのご支援、改めてお礼申し上げます。

　…………マルグリット様、昔から変わらずお綺麗でございますね」
マルグリット
「あまり良いものではございませんよ、私の性質は…………。
　この身を維持するために、数々の命が犠牲となってしまいました……。
　最初のご主人様だけでなく、末裔様達や、夫人の方々……。
　皆様を苦しめながら……　私だけが、生き続けて…………」


マルグリットは、《吸血鬼》として生を受けた。生まれた時から吸血鬼だった彼女だが、
成長しても何者をも襲おうとせず、栄養不足に陥る時もある娘に、両親は苦労していた。
彼女は赤子の頃から、母親が用意してくれた〈生き血〉を器に入れ、
それを飲むことで生き続けてきた。元来『争いを好まない』気質であるがゆえの対処法だ。

ある日、彼女らを忌み嫌う為政者が民衆を扇動し、大規模な《吸血鬼狩り》が行われた。
彼女の両親も犠牲になり、一人逃げ続けた先で、ある《聖人》との邂逅を果たす。
境遇を憐れんだ聖人は、仲間たちと共に為政者の企みを暴き、失脚へと導いた。
だが、人々に遺恨は残り続けていた。聖人は彼女を護るため、養育を決意する。

彼女を養うため、聖人はある方法で『不死の性質』を我が物にする。
果て無き生命力を手に入れた彼は、〈自身の血〉で彼女に栄養を与え続けた。
マルグリットは《吸血鬼》である自身に対し、親身になりながら
生かし続けてくれる彼に感銘を受け、ご主人様への〈恒久に続く忠義〉を誓った。

[229 ◆JT7q7ah4XkDe 24/11/30(土) 18:07:07]

時が経ち、聖人はある人との間にこどもを授かった。
聖人に仕える身であったマルグリットは、当然夫人や子息も大切な存在として
認識していたのだが、ある日の夜、吸血鬼の衝動により夫人の血を吸い尽くしてしまう。

愛する者を亡くし、悲しみに暮れる聖人だったが、彼女を責めることはしなかった。
そればかりか、「子息の二人目の母親になってほしい」と任じ、彼女と夫婦の間柄となった。
この関係性は、時にマルグリットの〈大きな重し〉となりながらも、
彼女自身の生きる意味、生き続けるための希望ともなり、彼女の心を護ってくれていた。


ある日、〈後ろめたさ〉を抱えつつも、幸せな日々を過ごしていた彼女のもとに、
「身元不明の〈ツジギリ〉による凶行で、聖人が亡くなった」という訃報が入った。

＂生命を司る＂数々の術者、能力者の命を奪い、いつしか時の＂怪人＂となった存在、
《アンデッド・キラー》の手により、永久に続くはずだった〈聖人との時間〉は奪われた。


それでも、彼女は歩みを止めるわけにはいかなかった。
彼女は＂彼と夫人の子息＂を護るため、自らの『気質と性質』に向き合い、
吸血鬼の弱点や悪しき部分の改善に励みながら、子息やこどもたちを支えていった。
彼女の働きのおかげもあり、聖人の家系は数百年先まで繁栄することとなる。

だが、その間にも数々の＂夫人の命＂を、衝動に駆られて奪い続けてしまい、
一族間での対立を生んでしまったことにより、元の彼女へと戻ることとなる。

[230 二次元好きの匿名さん 24/12/01(日) 01:12:42]

悲しいな

[231 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 07:59:35]

〈吸血鬼の性質〉に苦しみ続ける彼女に同情した当時の当主は、彼女の苦しみを
和らげるための新薬の研究、開発を主目的とした製薬会社を創業する。
初めは彼女が持つ衝動を緩和する薬に焦点を合わせた研究、開発のみを行っていたが、
その過程で〈体中の熱感を正常化し、殆どの血液がんを根絶する薬〉の創薬に成功する。

創薬を機に会社は急成長を遂げ、十数年ほどで世界有数の製薬会社へと成長していく。
だが、〈彼女を救える薬〉は一向に開発まで漕ぎ着けることができず、一族の女性たちの
命が奪われていく中で、いつしか誰もが彼女の存在を〈自然災害〉として諦めていった。
創業から二百年近くが経過してもなお、マルグリットが救われることは無かった。




末裔
「完成したんだ、特効薬が！！」


マルグリット
「…………え？」
末裔
「マルグリット様の＂吸血衝動＂を完全に消滅させられる薬が、ついさっきできたんだ！！
　似た境遇の人々に協力してもらってね？　その人たちの衝動を根絶できたんだよ！
　これできっと……　いや、＂絶対に＂マルグリット様は救われるよ！！」


マルグリット
「何故ですか…………」
末裔
「え……？」

[232 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 08:00:07]

マルグリット
「何故あなたは……　末裔様は、こんな私を救おうとしてくださるのですか……！！？
　私はご先祖様だけでなく、《末裔様の奥方》の命までも奪ってしまった身です……！！！
　最悪の場合、《お嬢様》の命を奪ってしまうかもしれない存在なんですッ！！！！
　こんな怪物を……　生かし続けるなんて…………！！！！」

末裔
「ま、まあ……　さすがに娘までもを奪われたら絶対許せないし、
　「今は〈妻の件〉を気にしてない」なんて言ったら、大嘘つきになるけどさ……。
　マルグリット様自身が＂吸血鬼の衝動＂に苦しんでるのは理解してるし、
　何よりマルグリット様は、それ以上に《皆》を救ってきたじゃないですか！！」

マルグリット
「救えて……　きたのでしょうか…………」

末裔
「もちろんです！　日頃の僕もそうですし、娘だってそうです！
　それに、身寄りのない子どもたちを見つけて、孤児院に導いてあげたり、
　何人かの子をメイドとして迎えて、養育してくれてるのもあなたです！
　そしてきっと、ご先祖様方だって…………！」

長黒髪の隊員
「聞こえの良い言葉ばかり並べやがって……！！！」
マルグリット
「ッ！！　キサマ…………！！！」


ガラテアが長黒髪の隊員を連れて、二人のもとへとやって来た。
ガラテアは〈ある結末〉を信じており、彼女の接近を許したようだ。

[233 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 11:56:23]

長黒髪の隊員
「怪物の言う通りだ……！　お前はその怪物を生かす為に
　数多の人々を犠牲にしてきているはずだ…………！！
　人々を苦しめてまで〈怪物を救う〉など、正気の沙汰では無い…………！！」

末裔
「それは！！
マルグリット
「確かに、私は多くの人命を奪ってきた罪人です！！
　ですが、末裔様がお生まれになってからは、奥方以外を手に掛けておりません！！！
　その奥方の死も、決して末裔様に責任などはございません！！
　＂末裔様自身＂は、誰も犠牲にしておりませんッ！！！」
長黒髪の隊員
「お前は、知らないようだな……？？
　其奴はお前を救うために、被験者達を…………

二人
「それは違いますッ！！！！」

長黒髪
「！！　何…………？？」

マルグリット
「末裔様は、皆様に健康被害が出ないよう、最善を尽くしておられます！！！
　術者の方々に協力していただきながら、被験者の方々の体調管理を怠らず、
　具合が悪くなった方々にも寄り添い、快く引き受けてくださった
　心優しい人々を、心身ともに支え続けておられました！！

　昔のご主人様方の中には、命を軽視されていた方もいらっしゃいますが…………
　《末裔様》は、＂人命は、誰一人として奪っておりません＂ッッ！！！！」

[234 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 15:03:33]

末裔
「殆どは、彼女が述べた通りでございます。
　もっとも、家内の件に関しては、間違いなく私の責任ですが…………」
マルグリット
「末裔様！！
末裔
「しかし、被験者の方々に禍根を残すような、
　ましてや命を奪うような真似は、一度たりともしておりません！！
　あなた方は、何かを誤解されていらっしゃいます！」

長黒髪の隊員
「曲り形にも＂企業の長＂、口ではそう言うだろうな……！
　だが此方には、〈御上〉から賜った……
末裔
「！　そうです、あなたにもご覧になっていただきましょう！
　ドラクロアのために用意した、この〈ビデオ映像〉を…………！」

彼は、おぼつかない手つきで〈端末〉を触り始める。

マルグリット
「ま、末裔様…………？」


ガラテア
（《転生者》共の手によって、この世界もかなり変わっちゃったなー。
　人々の選別もそうだけど、技術革新ってやつも人々に＂色んな＂影響を与えちゃった。
　持たざる者への救済であり、〈身近な暴力〉の普及であり、紛争の火種であり…………。


　でも、あれはきっと、〈技術革新の功罪〉の＂功＂なんだろうね…………）

[235 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:46:41]

もたついた末裔の手により、端末は光を放ち始める。


「マルグリット様！　お誕生日、おめでとうございまーす！」

（っ……！！）

男性その１
「……マルグリット様って、おいくつなんすかね？」
女性その１
「あんた、マドモアゼルの歳を詮索するんじゃないよ……！」
児童その１
「なんで？」
男性その２
「あとにしな」

女性その２
「えっと……　改めまして、おめでとうございます。
　マルグリット様のおかげで、うちらも生活を続けられております」
少年
「どちらかと言えば社長様じゃね？」
女性その１
「何言ってんの！！　あんたの場合、あんたが暴れそうになった時に
　抑えてくれてたの、他でもないマルグリット様だったでしょ！！」
少年
「ア……！　あー、そんなこともあったかー…………」


マルグリット
（皆様…………）

[236 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:47:47]

少女
「てか、それで惚れたんじゃん」
少年
「な……！　ほ、惚れてるわけねえだろ……！！」
少女
「えーー！　マルグリット様のこと好きじゃないの〜〜？」
少年
「好きじゃない……　なんて、こと、ねえけど……
少女
「マルグリットさまー？
　大きくなったらこいつ、よろしくお願いしまーす」
少年
「アッ！！　お前……
──────────────────────

「マルグリットさま、おたんじょうび、おめでとうございます！」


児童たち
「マルグリットさまー、はい！！」
児童たちの手で、それぞれの気持ちが込められた
〈マルグリットと自分〉の絵が掲げられている。

女性その３
「マルグリット様、よく描けていますでしょう？　この子たちの絵。
　『おたんじょうび』をお祝いするために、みんな熱心に描いていましたよ」


マルグリット
（本当に……　皆、お上手ですね…………）

[237 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:48:54]

女性その３
「◯◯くん、いいの？　見せられずに終わっちゃうよ？」
児童その２
「…………」
こどもたちの内の一人は、恥ずかしがって絵を隠している。

女性その３
「……マルグリット様、またこちらにいらっしゃってくださいね。
　その時にでも、この子たちの実物の絵を、ご覧になってあげてください」
児童その３
「先生ー！！」
こどもたちの内の一人が、撮影を止めようとした女性を呼び止めた。

児童その３
「マルグリットさま、
　マルグリットさまのお花、さいた！！　来て、来て！！」
マルグリットは、一人になってしまった少女の心を救うために、
複数の花の種を彼女にプレゼントした。
ひた向きに育てていた花々が、どうやら見頃を迎えたらしい。

女性その３
「マルグリット様。マルグリット様にも、色々とおつらい過去がありましたでしょう。
　ですが私たちは、あなた様によって救われてきた身でございます。
　マルグリット様。他の方々があなたを拒んだとしても、子どもたちと私めは
　マルグリット様とまたお会いできること、楽しみにしておりますよ」


マルグリット
（私、色々な縁を作ってきちゃったみたいね…………）

[238 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:50:04]

──────────────────────

「マルグリット様、お誕生日、おめでとうございます」

男性その３
「アッハッハッハ！　マルグリット様のおかげで、
　我々の暮らしもとても充実しておりますよ！」
女性その４
「ええ、本当に。マルグリット様、その節はどうも……」
男性その４
「見てくださいよ、マルグリット様！　『マルグリット様の悩み』を解決するための
　研究の副産物で、俺もだいぶ健康体になりましたよ〜！」
男性その５
「お前！　マルグリット様はまだ悩みを抱えたままだというに……！」
男性その４
「あ、え……　悪かったっすか……？」
男性その６
「いや、マルグリット様のお誕生日までには、
　我々の手で〈あなたを救う新薬〉を完成させて見せますよ」

男性その７
「マルグリット様、被験者の方々だけでなく、
　我々もあなた様に救われてまいりました。
　危険地帯にある原材料の調達、暴徒襲撃への対応、精神面の支援等、
　我が社が今日まで成長を続けられたのは、間違いなくあなた様のおかげです」


マルグリット
（末裔様と共に働く子たちですもの、当然よ。
　……この子たちも、立派に成長してくれたものね…………）

[239 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:50:51]

女性その５
「マルグリット様、あなたのおかげで、息子が一命を取り留めました……！
　現場にあなたが現れなければ、私は……　一人きりになっていました……。
　マルグリット様、私達をお救いくださり、心より感謝いたします…………！！」

男性その８
「マルグリット様、このように、私達はあなた様に救われてきました。
　あなた様によって亡くなられた命以上に、救われた命が多くございます。
　亡くなられた方々を忘れてはなりません。しかし、今を生きる人々の
　想いも汲み取っていただき、自暴自棄に陥らず＂生きて＂いただきたく存じます。

　もしかしたら、今もなお難しい状況であるのかもしれません。
　ですが必ず、我々があなたの〈衝動〉を根絶する薬をお作りいたします。
　どうかその日まで、我々や人々のご支援のほど、引き続きよろしくお願い申し上げます」


一同
「改めまして……
　マルグリット様！！お誕生日、おめでとうございまーーす！！！」


男性その８
「お前たち……！！
──────────────────────


マルグリット
（……………………）

[240 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 18:51:42]

長黒髪の隊員
「何だこれは……　幻術か何かか…………？？」
ガラテア
「＂幻＂かどうか、行って確かめてみる？」
長黒髪の隊員
「何……！？」
ガラテア
「アタシ、時空を超越できるんだよねー。
　アンタが望むなら、現地の人々のあの子への印象、直接聞きに行けるよ？
　まー、もしそれでアンタの心が壊れたとしても、リンが癒せるかはわかんないから
　その後は保証できないし、もしかしたら補償もできないけどね」
長黒髪の隊員
〔何かが……　何かがおかしい…………！！！〕


末裔
「マルグリット様。僕らにとっても、あなたは大切な存在なんです。
　仕方ないところはあるけど、僕の母様はあなたを怖れて、
　僕と父様を置いて遠くの地へと逃げて行きましたよね？
　そんな僕にとって、マルグリット様は〈母様〉以上に母様だったんです。

　勉強も、作法も、身だしなみも、何から何までお世話していただきました。
　伴侶になる前の妻を見つけてくれたのも、マルグリット様でしたね。
　曰く「借金が原因で、命で償うよう脅されていたところを救われた」と。
　惨めな人生の終幕を覚悟していた分、彼女にとっても救世主だったそうでした。

　娘が産まれたあの日、マルグリット様は衝動に駆られてしまいましたが、
　妻は意識が続くなかでも、あなたを責めるような反応は見せなかったはずです。
　衝動を予期して用意していたらしい〈遺書〉にも書かれていました。
　「マルグリット様、素敵な五年間をありがとうございます」って…………」

[241 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 23:15:13]

マルグリット
（……私は…………）
末裔
「当然ではありますが……　娘にとっても、あなたは母親のような存在のようです。
　何なら、仕事ばかりの僕より、《マルグリット様》の方が好きみたいですね？

　娘の、僕の、皆の大切な存在であるマルグリット様への恩返しがしたかった……。
　だから、僕は…………」
彼は、カバンから包装された物を取り出し、彼女へと贈る。


末裔
「今日この日まで、〈あなたを救う薬〉を、皆と一緒に開発してまいりました！
　マルグリット様、どうか、《僕ら》の想いを受け取ってください！！」


マルグリット
「あの…………　ありがたく頂戴しますが、ひとつお尋ねいたします…………。
　何故、お嬢様のお誕生日に合わせるようなことを…………？」
末裔
「最近、何者かに襲撃されることが増えてきましたよね？
　僕らを憎んでか、マルグリット様を憎んでかはわかりませんが……。
　マルグリット様には、なるべく早く〈衝動〉を治していただいた上で、
　娘と共に《平和な場所》へ向かい、二人で静かに暮らしてほしかったんです。

　それに、あなたは長年〈我々〉のためだけに尽くしてくださいました。
　ですがそろそろ、＂契約＂という鎖から放たれ、
　日々を自由に過ごしてもいい頃合い……　ではないでしょうか」

[242 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 23:16:12]

直後、マルグリットは包みを開け、箱の中にある物を飲み下した。


マルグリット
「ッ……！」
末裔
「あ、あれ？！　すみません、もしかしてお体に合いませんでしたか……！？？

　あ……！？　もしかして、香草は今も苦手でしたか……！？
　吸血鬼の弱点は粗方克服されたとお聞きしておりましたので、
　〈ある香草〉を材料にしても問題無いと踏んでの代物でしたが……！
　当然だけど美味しいものでもありませんし、合わないなら改良を…………！！」

マルグリット
「いいえ…………　心が落ち着いて、とても好きです…………！」

末裔
「え、あ……！　よ、良かった…………」
マルグリット
「末裔様、私は使命感だけで〈あなた〉にお仕えしているわけではございません。
　少し前までは、一族との契約に疲れを感じ、全てを終わらせることも考えましたが、
　末裔様がお生まれになって、日々を重ねていく中で、
　私自身にとっても、あなたやお嬢様、支えてくれる人々が《大切な存在》になりました。

　私が自由を手に入れても、やりたいことは何も変わりません。
　あなたを最後までお世話して、お嬢様が築かれるご家庭のお手伝いをして、
　メイドの子たちと交流を続けて、社員の皆様とも今以上に仲良くして…………
　ああ、身内以外の方々との輪は、＂もう少しだけ＂広げても良いかもしれませんね」

[243 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/01(日) 23:17:22]

末裔
「いや、もっと広げていってもいいんじゃないかな……？」
マルグリット
「いいえ、広げすぎてしまうと、末裔様やお嬢様を護りづらくなります。
　あくまで私は、聖人様一族に仕える〈メイド長〉ですので」

末裔
「えっと……　つまり、その……　これからも一緒に…………？」
マルグリット
「愚問にも限度というものがあります、末裔様……！
　私は一度たりとも、あなたへの忠誠心を失ったことはございません！
　これからもずっと、私は一族に仕える〈メイド長〉で居続けさせていただきます！


　何があっても、末裔様を……　お嬢様を……　一族の皆様を…………
　不肖私《マルグリット》が、未来永劫お護りいたしますとも…………！！！」





吸血鬼である彼女が、一族との間に抱えていた＂後ろめたい思い＂は、
一族たちと彼女自身、少しの《女神の助け》により、宵闇の中に溶けていった。

《吸血鬼マルグリット》はその一生を終え、
《不死人マルグリット》への転生を果たし、再び〈主〉への忠誠を誓う。



今ここに、純粋な想いから成る『新しい主従関係』が結ばれた。

[244 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 07:05:31]

長黒髪の隊員
〔…………話が違う〕

《女神ガラテア》は彼女から離れ、

ガラテア
「“P e a c e” ♪」

あどけなさの残る笑顔を、彼女へと向けた。



ガラテア
「いやー。次女ちゃんや、マルちゃんたちを苦しめてくれちゃったりさ？
　＂ほんとの国防隊である彼＂を命の危機に陥らせたり、色々やっちゃってたけどね。
　結局皆生きてるし、アンタなりに国を思っての行動だったのは察してるから、
　今回だけは裁きを与えないであげる♪　すっっごい特別扱いだよー？」


長黒髪の隊員
〔〈御上〉は…………　《国防隊》は…………　《私》は…………〕
ガラテア
「「アンタが＂本当に＂国のことを考えているなら」だけど、
　仕える相手は、ちゃんと選んだ方がいいよ？
　今回の彼女らみたいな人々の幸せを、また奪うことになるかもだからさ」



長黒髪の隊員
（《私》は…………）

[245 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 07:07:04]

ガラテア
「ほら！　国防隊の子たち連れて、さっさと帰りな？
　もしも仕事が嫌になって、辞めちゃって、道に迷ったりした場合はさ？
　早朝か夜辺りに来てくれたら、いつでも相談相手になってあげるよ。

　『あなたに善き心がある限り、
　女神はあなたを見捨てません』　なんて♪」


長黒髪の隊員
「…………お前達、撤収だ」
心身ともに疲弊しきった隊員たちは、ふらつきながらも互いを支え合い、共に歩み出す。
国防隊員たちは《英雄》を残し、ガラテアの＂導き＂で先に《島国》へと帰還していった。



クワガタオニ
「ふっはっはっはっは！！　これで……
ガラテアは彼の口を塞ぎ、りんたちの方へと視線を向けさせる。


「……すぅ…………　すぅ………………」


クワガタオニ
〔あらら、眠っちゃいましたね……。起床後三時間くらいですけど……〕
ガラテア
〔二人とも、色々頑張ったからねー。そっとしておこうぜ？〕

女神は狐人の姉妹も、こっそりと帰宅させてあげた。

[246 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 07:08:01]

ガラテア
「さーて、お二人さん♪　初めましてと、こんばんは！
　アタシ、《女神ガラテア》って言いまーす♪」


マルグリット
「あ、あな、あなた……
末裔
「マルグリット、落ち着きなさい。深呼吸だよ。
　初めまして…………　め、女神？？　ガラテア様……」
クワガタオニ
「ちなみに〈俺たち〉は、
　人々を護る義人たる鬼人、《クワガタオニ》と申します」
末裔
「ああ！　お二人合わせて、そういった活動をされていらっしゃる？」
ガラテア
〔誤解生んじゃったじゃん…………〕
クワガタオニ
〔すみません…………〕


末裔
「この度は、うちのマルグリットをお世話してくださったご様子。
　彼女の主として、心よりお礼申し上げます」
ガラテア
「あーいや、その……。こっちが迷惑かけただけですのでー…………」

マルグリット
（……思い返せばその通りな気はするけれど
　色々と救っていただいたのも紛れもなく事実だから何も言わないでおきましょう）

[247 二次元好きの匿名さん 24/12/02(月) 12:59:19]

おつおつ

[248 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 17:59:42]

《酔の国》も静まる中、当主のご厚意、もとい＂ご好意＂により談笑の時間が設けられる。

性格、経緯、運命（>>154）により、マルグリットは未だ打ち解ける兆しを見せないが、

きっと、時の流れが彼女との『わだかまり』を解いてくれることだろう。

ガラテア

「…………それじゃ、マルちゃんのご主人くん、ここらで『おいとま』させてもらうね！

　ほんとは、マルちゃんとも仲直りしたかったんですけどね〜……？」

マルグリット

〔仲良くなった覚えはありません……！！〕

ガラテア

〔うわ、脳内から直接訴えてきた……！〕

マルグリット

〔……私の気質にお付き合いくださり感謝いたします。

　そしてこの度は数々のご助力を賜り誠にありがとうございました〕

ガラテア

〔ねー、直接お話しない？？　そんで、仲良くしようよ〜！！〕

マルグリット

〔＂重ねてゴメンね。もう押し付けないよ。＂でしたね？

　私に思いやりを向けてくださるようでしたら過度な干渉はお控えください〕

ガラテア

〔ゴ、ゴメン……。あーでもさ、《お嬢様ちゃん》に合わせたい子がいるんだよねー。

　狐人の子たちいたでしょ？　あの子たちの末っ子なんだけど……〕

マルグリット

〔ああそうですね。狐人の姉妹には再びお会いしたいところですし

　お嬢様のご友人候補の子を共に連れて来ていただきその後あなただけお帰りください〕

ガラテア

〔あの…………　ほんとに傷つくんだけど…………〕

[249 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 18:00:22]

マルグリット
〔……申し訳ございませんが私にとってあなたは『トラウマ』的存在なのですよ…………〕

ガラテア
（あー……　鍬形男くんと同じことやっちゃったんだなー、アタシ…………）


末裔
「あの、マルグリットが何か……！！？」
ガラテア
「あ、いや、『思い出し泣き』です、思い出し泣き……！
　こっちの問題ですんで、お気になさらずー……！」
末裔
「そ、そうでしたか……。あまりご無理なさらず、ご自愛ください……。


　それではガラテア様、またお会いできる日を楽しみにしております。
　マルグリット、あなたもガラテア様にご挨拶を」

マルグリット
「は、はい……。その、《女神ガラテア》様…………





　……二度と相見えることの無いよう願います」
〔……また会える日を、心待ちにしております〕

[250 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 18:01:01]

末裔
「マルグリット？？！」
マルグリット
「え……　あ、違……！！！　その、誠に申し訳ございません！！！！」
ガラテア
「えへへー♪　ダイジョーブです！　アタシ神様なんで、
　マルちゃんの『ほんとの気持ち』、伝わってまーす♪　じゃーね！」
マルグリット
「……ッ　…………ッッ！！！」




クワガタオニ
〔嬉しそうですね、女神様〕
ガラテア
〔うん、《True Happy ending》って感じ〜♪〕




吸血鬼を巡る〈命〉の物語は、幕を下ろした。
《不死人マルグリット》の新たな人生は、いずれ光溢れるものに成るだろう。
愛する人々は誰一人として欠けることなく、彼女と再会を果たすことができる。
《女神ガラテア》が予期した〈最高の結末〉を、人々は迎えられたのだ。



ある者たちを除いて。

[251 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 21:03:31]

時は少し遡り、《紅の島国》で八時を少し過ぎた頃。
《都》に聳え立つ城の一角にて、《国防隊・特別実動課》の者たちが〈御上〉に謁見する。


転生者Ｍｓ．
「あら？　ミンナどーしたの、そんな暗い顔しちゃってぇ？
　……え？　あの、復興課の子がいないけど……　ま、まさか…………？？」
長黒髪の隊員
「彼は無事ですが……　《ミズ様》から承っておりました
　『吸血鬼討伐』の任は、果たせませんでした…………」
転生者Ｍｓ．
「あ、あらそう……。でも良かったわ〜、あの子が無事だったなら…………！
　あの子、何か怪我でもしちゃったの？」
長黒髪の隊員
「……《女神》の下に、寝返りました」
転生者Ｍｓ．
「…………アナタ、相当＂やらかしちゃった＂みたいね？　まあ、いいわ。
　気が進まないけど、〈あの人〉たちに協力を願うことにするわね」

長黒髪の隊員
「……………………」

転生者Ｍｓ．
「ミンナ、ご苦労様♪　疲れたでしょ？　しばらくは、休暇を取っていいわ。
　元気を取り戻したら、またアタシのお願い、聞いてちょうだいね♪」

長黒髪の隊員
「……《ミズ様》、お尋ねしたい事が御座います」
転生者Ｍｓ．
「ン？　なぁに？」

[252 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 21:04:17]

長黒髪の隊員
「製薬企業組織の件ですが、《ミズ様》から伺ったお話と相違点が御座いまして。
　被験者の方々は、その……　誰一人として、苦しまれていませんでした。
　それ処か、吸血鬼や組織の者共に〈感謝の意〉を述べていまして…………」
転生者Ｍｓ．
「《女神様》の幻術じゃない？」
長黒髪の隊員
「《ミズ様》、何卒、真実をお聞かせ願いたく存じます…………！！
　《ミズ様》の真意を、私めに…………！！」
転生者Ｍｓ．
「…………アナタの心、壊れちゃうかもしれないわよ」
長黒髪の隊員
「疑心に塗れた私めの心を、お救い下さい…………！！！」



転生者Ｍｓ．
「もういいわ。アタシの思い、アナタに聞かせてあげる。
　そうよ。被験者たちのことは、ちょっと盛らせてもらったわ。
　大嘘じゃないんだけどね？　度々、暴れそうになった子は居るみたいだし。
　悲劇性を足した方が、アナタたちも『裁き』を下しやすいかな〜って、ね？」

長黒髪の隊員
「しかし、被害は出ていない様子でした……！
　何も、製薬会社の者たちや《吸血鬼》を手に掛けずとも…………
転生者Ｍｓ．
「その《吸血鬼》よッッ！！！！」

長黒髪の隊員
（ッ……！！）

[253 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 21:05:03]

転生者Ｍｓ．
「あんな不気味な奴が、いつ現れるかもわからない世界じゃ
　ぐっすり眠りづらいし、夜間警備の子たちにも迷惑かかっちゃうでしょッ！！！
　《天上者》であるアタシのために、あんな奴は居ない方がいいのよッ！！！」


長黒髪の隊員
「そ……　それが、理由…………
転生者Ｍｓ．
「知らないわけじゃないでしょ？　あいつが飛べるの。
　あの不気味な翼を羽ばたかせて、《アタシたちの国》にやってくるのよッ！！
　地元の洞窟で一生を終えればいいものを、身の程を弁えずにねッ！！
　《アタシたちの国》に、不気味な存在はいらないのよッッ！！！！」


長黒髪の隊員
「あの……　推測ですが、若しや《奴等》も…………？？」
転生者Ｍｓ．
「……もしかして、《黒虫義賊》共のこと？　そうよ。だから頼んでたの」
長黒髪の隊員
「奴等も……　吸血鬼と同じ……
転生者Ｍｓ．
「あいつらは、もっと悪いわよッッ！！！！　他の《天上者》からも聞いてるでしょッ！！
　組織に所属する〈クモ人間〉が、何百万人もの命を弄んできたのをッ！！！
　悪者が支配する〈不気味な奴らの巣窟〉なんて、潰れるべきとこだったのよッッ！！！！」

長黒髪の隊員
「組織以外を……」
転生者Ｍｓ．
「…………なぁに？？」

[254 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/02(月) 21:05:54]

長黒髪の隊員
「＂組織以外の＂〈虫人間〉達を……　巻き込む必要性は……
転生者Ｍｓ．
「不 気 味 だ か ら に 決 ま っ て る で し ょ ッ ッ ッ ！ ！ ！ ！
　なんで、あんな奴らと一緒に過ごさなくちゃいけないのッッ！！！
　あんなよくわからない異形共と居たら、おかしくなっちゃうわよッッ！！！！」
長黒髪の隊員
「命を……　何だと…………！！
転生者Ｍｓ．
「充分、大切にしてるじゃないッ！！　アタシが、こども好きなの知ってるでしょッ！！
　他の《天上者》が殆ど無関心だから、《教育長》として先生たちと一緒に
　こどもたちを育てたり、身寄りの無いこどもに居場所をあげて寄り添ったりッ！！
　何より、まだ小さかったアナタを救ったの、他ならぬアタシじゃないッッ！！！」
長黒髪の隊員
「〈虫人間〉達の間にも、子供は……
転生者Ｍｓ．
「小さくても、無理なものは無理ッッ！！！！　愛せないわよ、あんなのッ！！！
　あいつらが居続けることで、アタシが心労で倒れたらどーするのよッ！！！
　こどもたちが悲しむし、先生たちの負担も増えちゃうでしょうがッッ！！！！」


長黒髪の隊員
「……………………」



もしも《女神》が、本当の〈最高の結末〉を望むなら、
彼女たちを先に帰すべきではなかった。彼女の側に居るへきだった。

《女神》は見誤った。彼女の、強すぎる正義感と〈国〉への帰属意識を。

[255 二次元好きの匿名さん 24/12/03(火) 00:34:56]

熱い女だ

[256 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 08:17:44]

転生者Ｍｓ．
「…………わかった？　アタシの思い。　アタシもね、同情はしているの。
　あんな存在じゃなきゃ、仲良くできたかもだしさ。
　でも、無理なものは無理。我慢なんてしてたら、アタシの方が終わっちゃう。
　そうなると、あとは〈天秤〉よね。間違いなく、アタシを優先するべきなの。

　〈実務〉を任せっきりなのは、ごめんなさいね。本当に苦手なのよ、あいつら。
　だからこそ、頑張ってくれてるアナタたちのこと、アタシは絶対に見捨てないわ。
　他の《天上者》たちが敵になっても、アタシだけは守ってあげる。
　アナタとミンナとアタシ、お互いがお互いを支え合って生きていきましょ♪」

長黒髪の隊員
「………………キ……」
彼女は＂国を護る＂ため、覚悟を決めた。

女神たちに壊された猟銃を刀に変え、〈御上〉に斬り掛かる。



長黒髪の隊員
「キ サ マ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア
　ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア





転生者Ｍｓ．
「…………ホント、＂残念ね＂」

[257 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 08:18:26]

長黒髪の隊員
「ッ……！！！！！」

長黒髪の隊員は＂全ての力＂が弱まり、床に倒れ込む。
力の喪失は、〈御上〉の『失望の言葉』による、絶望感から来るものだった。

長黒髪の隊員
（な、泣いているのか、私は…………？
　あんな、〈自己中心的な怪物〉の言葉を受けて…………？？）


転生者Ｍｓ．
「＂優しいアナタなら＂、
　アタシの気持ちもわかってくれると＂思ってたのに＂」

長黒髪の隊員
（長年、疑問だった……。何故〈御上〉の言葉は、こうも心に響くのか……。
　何故〈御上〉は、想像を超える＂奇跡＂を幾度となく起こせるのか…………。
　まさか……　これが、奴の《力》…………！？？）


《転生者Ｍｓ．》が《神》から授かった力、
それは、『＂この世界を郷とする全て＂を操れる言葉』である。
彼の者の「何でも願いを叶えられる魔法使いになりたい」という願いに、
流れ作業的に対応した〈転生担当者〉が与えてしまった代物だった。

『言葉』が＂届いた＂ほぼ全ての生物、無機物、『世の理』を、
彼の者は自在に服従させ、時に世界を捻じ曲げながら操ることができる。
まさに非常識な力だが、『他の転生者や別世界の者、神々相手には
全くの無力』 という弱さを持つのは、神自身の『保身』によるものであろう。

[258 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 08:19:09]

〈御上〉は長黒髪の隊員に＂新たな首輪＂を付け、
事態を沈痛な面持ちで見ていた他の国防隊員たちに、ある物を渡した。

転生者Ｍｓ．
「ミンナには酷なことさせちゃうけど、これも忠誠心の確認のためだから許してね。
　アナタたちに渡した箱に『丸い出っ張り』付いてるでしょ？
　そのうちのどれかは、彼女の首輪を爆発させるための起爆用の物なの。
　裏切り者は居ちゃいけないから、アナタたちの手で、終わらせてあげて？」

一般隊員その１
「い…………」
転生者Ｍｓ．
「ン？」
一般隊員その１
「嫌です…………！！　長黒髪さんは、皆のために……
転生者Ｍｓ．
「アナタのとこ、こどもが生まれたばかりでしょ？
　その子のために、生きて帰ってあげてよ。ネ？？


　ミンナもさぁ？　彼のために協力してあげて〜？
　優しいアナタたちだもん。こどもたちの悲しむとこ、見たくないわよね〜〜？？」22



隊員たちは覚悟を決める。
だが誰一人として、嗚咽を起こさぬ者はいない。

隊員たちは皆、その想いに差はあれど
『ひた向きな彼女』を心から尊敬し、愛していたのだ。

[259 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 08:19:58]

転生者Ｍｓ．
「 ミンナ？　つらい役目でしょうから、終わったらホントに休みなさいよ？
　こんなやつのことなんて早く忘れて、国のためにも元気を取り戻してね？」

（《女神様》……　どうか、お願いします…………）

転生者Ｍｓ．
「 にしても、ホント＂残念よ＂。＂飼い犬＂に牙を剥かれちゃった。
　あんなに＂可愛く見えてたのに＂、ホントもう、＂どうでも良くなっちゃったわ＂」


（忌々しき《為政者》に、裁きを…………！！！）



転生者Ｍｓ．
「それじゃ、長黒髪ちゃん。＂ゆ っ く り お や す み＂」




人々がそれぞれの日常を取り戻していく中で、
ただ一人、〈尽忠報国の侍〉が、この世界から消え去った。



Chapter 2
『人の営み　護る人々』　終

[260 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 08:21:01]

誠に勝手な話で恐縮至極ではございますが、
溜め込んでしまった私用の整理整頓と休息を兼ねて

１．『七種家の妹たちと鍬形【クワガタ】男の名前』（さん付け不可が厳しい……）
もしくは
２．『新キャラクターの原案』１〜２名分
　　（※雑なものでも、ぶっ飛んだ設定でも（活かせるかはさておき）問題ありません）

以上のどちらかが集まるまでは、一時的に中断させていただきたく存じます……
以前の文言の繰り返しになりますが、
『原案が集まらない場合、上げずにスレッドを落としていただいても問題ありません』ので、
しばらくの間、なるべく保守目的のみでのレス投稿はお控え願いたく存じます……

[261 二次元好きの匿名さん 24/12/03(火) 17:22:22]

1七種 渚、七種 葵

クワガタ男
桑原 剣(つるぎ)

[262 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/03(火) 17:48:35]

>>261

『クワガタ男/桑原 剣(つるぎ)』のご提供、心より感謝いたします……！

『七種 渚、七種 葵』は二名分のようですので、

この際一人には名無しを貫いてもらう方向で、次のお話の構想を作り始めます。

更新は翌日（４日）の朝以降となりますが、何卒ご了承ください。

名前を貰える子は、左が渚、右が葵で……dice2d3=1 1 (2)

──────────────────────

１．次女／２．三女／３．四女

※数字が被った場合は、下の子を優先します（四女＞三女＞＞次女）

[263 二次元好きの匿名さん 24/12/04(水) 00:45:03]

期待しております

[264 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 07:51:35]

──────────────────────
《酔の国》での騒動終結から七時間後、《鎮守の森》の七種宅。
《酔の国》での騒動を終え、りんとなぎさ（次女）は眠りについていた。


なぎさ
「…………すぅ……」
りん
「大丈夫やでぇ……　なぎさぁ……………………」



あおい（四女）
「お姉ちゃんたち、寝てる…………」
学び舎から帰ってきたあおいは、遊びに付き合ってもらうつもりだった長女が
次女と共に眠ってる姿を見て、少し落胆している。

ガラテア
〔そんな時こそ、アタシの出番だよ♪〕
あおい
「がらて……！！！！
ガラテア
〔あおいちゃん、むずかしいかもだけど、〈頭の中〉でしゃべってみて？〕
あおい
〔え……？　こ、こう…………？〕
ガラテア
〔すごい！　あおいちゃん、すぐできたのすごいよー！〕
あおい
〔うひひ〜……♫〕

[265 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 07:52:28]

ガラテア
〔あ、そうだ！　ところで、あおいちゃん！
　アタシ、今のこの辺りのこと、よく知らないからさ？
　あおいちゃんにこの辺りを案内してほしいんだー♪　いいかなー？〕
あおい
〔うん、いいよ！！〕
ガラテア
〔じゃ、出発しよ♪〕
あおい
〔うん！！　しゅっぱーーつ♪


　……………………〕


七種宅の玄関に佇む人影を見て、あおいは足を止めた。


ガラテア
（あーっと…………）
ガラテアは世界の動きを止め、人影の脳内に語りかける。



ガラテア
（アンタたち……　どうしたもんかな…………）

クワガタオニ
（えっと、《俺たち》、何か悪いことをしましたかね…………？）

[266 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 07:53:07]

ガラテア

（アンタたち的には、『角の生えた漆黒の大男』って、どう思う？）

つるぎ（鍬形【クワガタ】男）

（あー……。さすがにこの姿じゃ、怖いですよね…………）

元隊員

（いやいや！！

　まだ、あおいちゃんがどう思っているかなんて、わかりませんよ！）

ガラテア

（一応、あおいちゃんの反応を確認するけどさ、

　彼女が怖がっちゃったら、元に戻るなり、どっか行くなりしなよ……？）

クワガタオニ

（はい…………）

さて、まだ齢六つの《あおい》の、鬼人に対する第一印象は……　dice1d100=69 (69)

（※数字が高いほど好印象。低いほど悪印象）

[267 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 09:24:26]

あおいは、ただひたすらに鬼人をじっと見つめている。


クワガタオニ
「やあ、初めまして！
　俺はがらてあさんの友達で、《くわがたおに》っていう名前なんだ！」

あおい
「お友達……？」

クワガタオニ
「そうさ！　がらてあさんの友達のりんさんと、妹のなぎささんが
　大変なことになってね？　彼女たちをお家に帰すために、協力していたんだよ！」
あおい
「！　ありがとうございます！」
クワガタオニ
「そうだ！　君の名前を教えてくれないか？」
あおい
「えと……　《あおい》です！」
クワガタオニ
「あおいちゃん、俺も友達になっていいかな？」
あおい
「えっ？！　うぅん…………」

ガラテア
〔ダイジョーブ♪　この人、やさしくて、強くて、かっこいいよ♪〕

あおい
「！　よ……　よろしくおねがいします！！」

[268 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 09:25:15]

クワガタオニ
「うれしいぜ、あおいちゃん！！　じゃあ、さっそく……
ガラテア
「あー、《くわがたおに》くん。悪いけど、りんたち見ててくれない？
　あの子たちが起きた時に、状況を伝える人がいたほうがいいでしょー？」
クワガタオニ
「あ、はい。わかりました…………」

ガラテアはあおいと一緒に、《鎮守の森》から出立した。




あおい
「えっとね、あれが〇〇はんのお家で……
　あ！　あれ、おとうはんの畑！！」
あおいが指を差した先にあるのは、
七種家の父と、彼が所有する〈豆畑〉だった。


七種父
「おお、あおい。と、がらてあ様か。
　がらてあ様、うちの娘たちの面倒を見てくださり、ありがとうございます」
ガラテア
「いーですよー、好きだから付き合ってるだけなんで♪
　他の子たちもですけど、特にあおいちゃんほんとに可愛いっすね〜♪」
七種父
「女神様にお気に召されている様子で、父親としても誇らしい限りです」

[269 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 12:34:31]

ガラテアは畑を見回し、草の一つも芽吹いていないことに気づいた。


ガラテア
「あの…………　もしかしてですけど、先日の豪雨で…………？」
七種父
「豆たちは既に収穫済みでしたんで、あまりお気になさらず。
　今は土壌を整える時期でございますよ」

ガラテア
「あの！！　アタシに協力できることがあれば……
七種父
「がらてあ様、『畑仕事』できはります…………？」

ガラテア
「…………み、水の供給なら……」
七種父
「暑くなる時期にでも、よろしくお願いいたします」


ガラテア
（…………泣くな、女神！！！　くどいぞ！！
　あおいちゃんも心配するし、泣く暇あったら皆のために働け！！）
幾度目かの決意を固めた女神はおたけびを上げ、自身に活を入れた。

あおい
「がらてあちゃん、がんばれーーー！！！」
七種父
「ご自愛くださいね…………」

[270 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 12:35:06]

豆畑をあとにしたあおいたちが向かったのは、
七種家の母の勤め先である、都にある〈詰所〉だった。


七種母
「あら、あおいと《女神がらてあ》様！
　がらてあ様、色々とほんまおおきに……」
ガラテア
「いえいえ〜！　都に活気が戻ってきて、よかったっすねー♪」
あおい
「おかあはん、お仕事おつかれさまー！」
七種母
「あおい〜、すてきなお友達ができてよかったなぁ〜♪」
あおい
「うん！！　うひひ〜……♫」

ガラテア
〔お母さん、やっぱりあおいちゃんって、他のお友達は…………？〕
七種母
〔えぇ、そうどす……。『半端に人間っぽい狐』って見た目と、
　お社に住んどるところが、他の子たちにとっては怖いらしゅうて…………〕
ガラテア
〔任せてください！　アタシがあおいちゃんの魅力伝えて、
　お友達百人分の縁、結んであげますから！〕
七種母
〔え、え…………？！〕


ガラテアはあおいを抱え、詰所を去っていった。

[271 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 15:54:49]

その後、ガラテアは（親御さんたちの許しを得た）こどもたち九十七人を連れ、
《黒虫義賊》のアジトがあった山間の地へと赴いた。


ガラテア
「皆ーー！！　元気、戻ったーーー？？」
こどもたち
「う……　うんっ…………！！」
こどもたちは、いきなり連れてこられたことに当惑しながらも、
＂自分たちを救ってくれた恩＂に報いるため、《女神様》に元気（？）な挨拶を返した。

ガラテア
「よかったー♪　皆のためにがんばってよかったよーー♪
　でねー？　そんな元気な皆に、さいきんアタシのあそび相手になってくれてる
　〈すてきなお友達〉を紹介したいんだー♪
　《あおい》ちゃーーん、来てーーー！！！」


……………………



ガラテア
〔あれーー……？？　あおいちゃん、どうしたのーー…………？〕

あおい
〔むりぃ……！！　むりぃ…………！！！〕

ガラテア
（あーー……　そっか、そもそもこの子人見知りかー…………）

[272 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 15:55:56]

こどもたち
「ねー……　《あおいちゃん》って、一年一組のあの子…………？？」
「あの子こわいー…………」
「めがみさまと、仲よしなん……？　なんで…………？」

ガラテア
「ちょっとー！　あおいちゃんは、すてきな子なんだよ！！
　これから皆に、『本当のあおいちゃん』を見せてあげるから！！」
あおい
「が、がらてあちゃん…………？？」
ガラテア
〔あおいちゃん、変身だよ！〕
あおい
「え……


ガラテア
「＂☆むげんの水かがみ☆＂！」


ガラテアは、不思議な＂薄い水面＂を宙に生み出した。
水面には、ぼんやりと何かが映し出されている。



ガラテア
「さ、あおいちゃん！　皆に『本当の自分』を見せるために、
　水に向かってとびこんじゃってー！！」
あおい
「え、え、えぇ…………？？！」

[273 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 15:56:57]

ガラテア

〔この水はね？　とびこめば、『なりたい自分になれる』んだよ♪

　あおいちゃん、さっそくとびこんで、皆にすてきなアナタを見せてあげて！〕

あおい

〔むりぃ…………！！！〕

ガラテア

〔あおいちゃん。ほんとーーにだめそうなら、これ以上はもう押しつけないけどね？

　アタシも、お母さんも、お父さんも、お姉ちゃんたちも、

　あおいちゃんが『学び舎の子たちと仲よくしてるとこ』が見たいんだ〜♪

　あおいちゃんが学び舎で一人ぼっちっぽいの、皆気にしてるんだよ。

　「あおいちゃんにとって、〈学び舎〉ってつらい所なのかなー」って。

　だから『学び舎の皆と仲よしで、皆と笑ってるあおいちゃん』が見たいんだよね♪

　本当の本当にむりなら、あおいちゃんのためにも、あきらめるけど…………

　だめ……　かな…………？〕

あおい

〔……や、やる…………！！〕

あおいは勇気を出して、水面へと飛び込んだ。

彼女の姿が少しだけ（？）変わり、dice1d8=3 (3) に成った。

（※１．りんに似た姿／２．ガラテアに似た姿／３．お姫様の姿／４．忍者の姿

　　５．魔法少女の姿／６．怪盗の姿／７．アイドル風の姿／８．ヒロイックな姿）

その姿はこどもたちに……dice1d2=2 (2) （１．好かれた／２．拒まれた）

[274 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 16:20:07]

こどもたち

「何あれ……　怖い…………！」

「どうぶつなのに、すごい服着てる…………」

「めがみさま、なんでぇ…………？？」

学び舎の子たちに怯えた表情で見つめられ、

あおいの心は、限界に達しようとしていた。

ガラテア

「まだ、『本当のあおいちゃん』じゃなーーーーーい！！！！！」

《女神ガラテア》は、『思い描く未来』を歩ませるために、必死である。

ガラテア

〔あおいちゃん、〈じんずうりき〉をきたえるよ！！！〕

あおい

〔も、もうむりぃぃ…………！！！〕

ガラテア

〔ダイジョーブ、リンお姉ちゃんみたいになれるから！！！！〕

女神ガラテアは《あおい》を幸せにするため、

彼女の内に秘められた〈神通力〉の増幅を、後先考えずに＂全力で＂試みる。

それにより、あおいの神通力は

dice1d800=464 (464) のdice1d9999=3563 (3563) 倍に増幅した。

[275 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 18:40:43]

一方、＂全てが解決した安心感＂から眠りについていた
七種家の長女《りん》は、八時間近くに及ぶ眠りから、ようやく目覚めた。


りん
「…………んん……　あー……　眠ってしもうたんか……？」
三女
「りん、おはよ」

りんとなぎさは《女神ガラテア》の思いやりにより、
それぞれの部屋ではなく、三女の部屋で眠らせてもらっていた。

りん
「あー……　三女、ありがとうなぁ…………」
三女
「見とっただけやし、お礼言われること無いけど…………」

　あ、そうや……。部屋から見える＂あれ＂、なんなん…………？？」
りん
「＂あれ＂…………？」




「う ﾞ……　う ﾞお ﾞお ﾞ……………………」

三女の部屋の前に、生い茂る〈香草〉の香りを吸引しすぎた結果、
丸まりながら床に伏せることとなった『＂虫＂の性質を持つ＂鬼＂人』が居た。

[276 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 18:41:53]

りん
「だ、大丈夫どすか、隊員はん……！！！！」
りんは自身の〈神通力〉を用い、具合を悪くした彼の心身を癒す。

クワガタオニ
「た、助かったぜ、りんちゃん…………！！
　何だか、段々と気分が悪くなってきてな…………」
りん
「そうやわ……！　お社の周りの植物、『虫』だけやなくて
　〈鬼の方々〉にとっても苦手な香りを出しとるはずなんよ…………！！」
クワガタオニ
「本当かい……？？　困ったな…………。君たちを護りづらいぜ…………」

なぎさ
「隊員はん、大丈夫なんか…………？？」
少しだけ遅れ、ある意味『誰よりも疲弊していた』であろう彼女も、目を覚ました。

クワガタオニ
「おお、なぎさちゃん！　そちらこそ、もう大丈夫かい？
　いやー本当に、助けることができて良かったぜ！」

りん
「隊員はん、あまり無理したらあきまへんえ…………！」
クワガタオニ
「そうだな……　一旦、別の寝床を探すよ…………！
　じゃあ、元気で……………………


りん
「隊員はん…………？？」

[277 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 18:43:03]

クワガタオニ
「……まずいな、凄い力を感じるぜ…………！
　《女神様》や《天上者》ではない……　別の何者かの＂力＂だ…………！！」
りん
「え……！？」
クワガタオニ
「りんちゃん、寝起きで悪いが付き合ってくれ！
　もしかしたら、君の力が必要になるかもしれない…………！！」
りん
「え、えと……　心の準備を……
りんは《クワガタオニ》に、半ば強引な形で抱きかかえられた。

クワガタオニ
「なぎさちゃん！　三女ちゃんのこと、よろしくな！」
なぎさ
「は、はい…………」


クワガタオニは電光石火の速さで、力の持ち主のもとへと向かう。
りんは気絶しそうになりながらも、なんとか意識を保ち続けた。

そして…………




りん、クワガタオニ
（え……………………？？？！）

二人は《彼女》の様子を目の当たりにし、衝撃を受けた。

[278 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 18:44:35]

こどもたち
「あおいちゃん、すごーーい！！！！」
あおい
「うひひ〜……♫♫」
女の子その１
「ねー、『桜』咲かせて！！」
あおい
「いいよ〜♫♫」

類い稀な〈神通力〉を手に入れた《あおい》の手により、
寂れた山間の地だった辺り一面は、多種多様な〈植物の楽園〉へと様変わりしていた。


女の子その２
「じゃーね、次は『雪』ふらして！！！」
あおい
「えと……　お花たちかわいそうだから、『暖かい雪』だよ……？』

彼女の＂力＂により、『暖かい』けれど『なかなか溶けない』、
優しい潤いで植物たちにとっても嬉しい、摩訶不思議な雪が降り注いだ。

こどもたち
「じゃーね、じゃーね！！！　次は…………」




りん
〔あ、あおいが嬉しそうなんは、ほんまに嬉しいけど……
　あおいに何が起きたんや…………？？？〕

[279 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 18:46:29]

ガラテア
〔えーっと……　それがですね、リンさん……。
　アタシ、あおいちゃんと皆に仲良くなってほしくて…………
　勢い余って、彼女の〈神通力〉を増幅させてしまいまして…………〕
りん
〔ま、まぁあの子が幸せそうなんは、ええんやけど…………。
　大丈夫なんどっしゃろか……？　神通力使えるようなってもうて…………〕
ガラテア
〔どーかなーー……？　あそこまで増えると、色々とねー…………）
りん
〔な、なんぼ増えはったん…………？？〕


ガラテア
〔〈百六十五万、三千二百三十二パワー〉……　っすね…………〕

りん
〔え…………？？？？？〕



姉の力を軽々と超えた妹。その妹に忍び寄る、二つの魔の手。
『友情』、『家族愛』、そして種族を超えた『絆』の物語が、ここに始まる。




Chapter 3
『目ぇ覚めたら、末っ子が《最高の神様候補》になっといやした
　～可愛いらしい《狐の女の子》が、みんなを護るだけの物語（？）～』　始

[280 二次元好きの匿名さん 24/12/04(水) 19:29:32]

お疲れ様です
ついに本格始動か
そして相変わらずタイトル秀逸だ！

[281 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 21:49:38]

夕暮れ時になり、多くのこどもたちが家路につく中、
何人かのこどもたちはそれぞれ保護者に頼み込み、七種宅にお泊まりすることとなった。
甚大な〈神通力〉を手に入れた《あおい》の下に、友人（？）たちが集う。


猫人の友達
「あおいちゃーん！　あたし、あおいちゃんに
　よろこんでほしくて、お母さんから『煮干し』もらってきたー！」
豚人の友達
「あおいちゃん、ごめんね……！　怖がっちゃって…………！
　えと……　『しんじゅ』ってやつ、きれいだからあげるっ……！！」
狸人の友達
「あおいー！　ねーそれちょうだい、それ！
　あたまのそれ！　うちの『ちゃがま』とこうかんしよー？」
あおい
「まって……！　おうち着いたら、話そ…………！」



ガラテア
〔いやーいいお友達……　お友達なのかなー、あれは…………？〕
りん
〔悪い子たちや無さそうなんやけど、ちょっと怖いなぁ…………〕
ガラテア
〔ゴメンねー……。あおいちゃんの人生、色々大変になっちゃうかも…………〕
りん
〔あおいが生き続ける限り、ず っ と お友達でいてあげておくれやす♡〕
ガラテア
〔あ、圧力かけなくても、アタシはずっとあおいちゃんの友達だよ……！！〕

[282 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/04(水) 21:51:01]

りん

〔安心やわ〜…………　あら……？〕

友人たちに待たせる素振りを見せたあと、

あおいは何かを思いついたかのように、一目散に駆けていった。

りん

〔どうしたんや、あおい…………〕

ガラテア

〔あ……　もしかして…………！！〕

りん

（…………？）

あおい

「三女、じっとしてて……！！」

三女

「お、おう…………」

あおいが一目散に駆け込んだのは、彼女の姉の内の一人であり、

愛憎の念が混じり合いながらも、何だかんだ好きな存在である《三女》のところだった。

あおいは三女の〈手足の機能〉を蘇らせるため、

自身の〈神通力〉を彼女に集中させて、治療を試みる。

あおいの〈神通力〉は、三女の……　dice1d100=55 (55)

──────────────────────

〜４０＝手足の蘇生失敗／４１〜７０＝手の蘇生成功／７１〜＝手足の完全蘇生完了

[283 二次元好きの匿名さん 24/12/05(木) 01:54:40]

なんとか上手くいったか…

[284 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 08:15:05]

《あおい》の祈りが、一つの奇跡を起こした。


三女
「あ……！！　動く！！！　手ぇ動くやん……！！！
　え､これ、あおいがやったん…………！！？」
あおい
「なんで……！！！　なんで、足治らないん…………！！！！」
だが、三女の『完全快復』を願う彼女は、まだ祈りを捧げている。

三女
「い、一旦ええって！　ありがとうな！
　ほんま、あおいには悪いことしたのに…………」
あおい
「うぅ…………」
いつまでも続けようとするあおいのもとに、女神が現れる。

ガラテア
「あおいちゃん、すごい！！　もう、そこまでできるなんて！
　こりゃいつかは、この世界の《めがみさま》になれちゃうな〜！」
あおい
「がらてあちゃん…………」
ガラテア
「今は治せなくてもね？　リンお姉ちゃんみたいに『人生しゅぎょう』を
　していけば、いつか必ず治せるようになるよ！　アタシが『ほしょう』しまーす♪
　でもさ、今は皆のとこ行こ？　お友達も待ってるから！
　皆に三女ちゃんの手が治ったとこ、見せてあげよー♪」
あおい
「う、うん…………」

[285 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 08:16:02]

あおいたちは居間に向かい、三女の快復を伝えた。
ある者は称賛し、ある者は涙を流し、ある者は……　複雑な胸中だった。


りん
「ほんま偉いわぁ、あおい。三女を治してくれて、『おおきに』やで」
あおい
「うん……。うひひ〜…………」
りん
〔ほんま、偉い子になったわ……。
　あてはもう、あおいを護ることに集中したほうがええんかな……
ガラテア
〔駄目。アンタも『人生修行』、継続しな〕
りん
〔がらてあはん…………〕
ガラテア
〔以前、伝えたよね？〈百万パワー〉あれば、三女ちゃんを寛解に持っていけるって。
　あおいちゃんはそれを優に超えてるけど、手を治すのが限界だった。
　アタシの見立ての問題じゃなくて、リンほど特化してないんだ、あおいちゃん。
　『幅広くできる』系統の子でさ？　治療は特別得意ってわけじゃないっぽい。

　だから鍛えていけば、たぶん……　いや、絶対《リン》の方が早く治せるよ。
　それにね？ ＂あおいちゃんや皆を護るため＂にも、修行は続けるべきだよ。
　前線に立つことがあるかもしれない《あおい》ちゃんのことをさ？
　苦手な『武術』方面じゃなくて、得意の『治療、鎮圧』で支えるためにもね。

　人々にとっては《救世主》なんて、数多く存在してくれた方がいいだろうしさ！
　アタシとあおいちゃん、三人一緒に頑張ろうぜー♪〕

[286 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 08:16:47]

りん

〔……えぇ、がらてあはんの言う通りやわ。

　今度はあてが、たしなめられてしもうた……♪〕

ガラテア

〔リンー……？？　一応《神様》ぞよーー……？？？〕

りん

〔そやな、素敵な《女神様》やわ…………♫〕

ガラテア

〔あーそうそう！　アンタ、二日分の〈変換術〉がまだでしょ？

　あおいちゃんに追いつくためにも、やっとこーぜ？〕

りん

〔あ、そやな……　やろか…………！！〕

ガラテア

〔今回はすごいよ〜？　マルちゃんの時の頑張りもあって

　最大で〈二十四万、一千九十六の＂二倍＂パワー〉だからねー？？〕

りん

〔そんなに……〕

ガラテア

〔じゃ、やるぞー！！〕

ガラテアの〈新たな変換術〉により、dice1d2410=627 (627) +96と

dice1d2410=2040 (2040) +96を足した経験値が、りんの神通力となった。

[287 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 08:19:32]

>>286

+のせいで４桁になってしまってますが、

『62796』と『204096』でございます……

[288 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 12:00:28]

りん
「どうどっしゃろか……！？」
ガラテア
「……〈二十六万、六千八百九十二パワー〉増えて、
　合計〈五十六万、八千七十五パワー〉だね…………」
りん
「よかったわ……　ちゃんと、おおきゅう数字で……！！」
ガラテア
「もっといけると思ってたんだけどなーー…………」
りん
「最大ぱわあから見て、中央値なんどっしゃろ？　充分どすえ……！」
ガラテア
「そうなんだろうけどねーー…………」



《クワガタオニ》の結成、《吸血鬼》への救済、《あおい》の覚醒…………
数々の出来事が起こった、りんとガラテアの『人生修行』の三日目が、幕を下ろした。





つるぎ
（すみません。分離を試みたんですけど、
　まだ＂俺の力で生きてる状態＂らしく、分離はできませんでした…………）
元隊員
（この姿で〈都〉に帰るわけにもいかねえし、野宿だなこりゃ…………）
つるぎ
（すみません…………）

[289 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 12:01:34]

りんとガラテアの出会いから五日目、及び『人生修行』の四日目。
本日は〈学び舎〉の休舎日であり、昨日できた友人たちが大挙して押しかけたため、
お社の周りは＂騒がしすぎるほどの賑やかさ＂となっていた。


男の子その１
「なーー、おれ『空飛びたい』！！」
あおい
「や、やってみる……！」
あおいの力により、な ん と 彼 に『 飛 行 能 力 』が 備 わ っ た 。

こどもたち
「すごおおおおおおおおい！！！！」
「次！！！　次、おれっっ！！！」
「あ、わ、わたしもっっ！！！！」

りん
「あおいっ！！！　危ないやろっっ！！！！」
あおい
「だいじょうぶ……！！　『けがしない力』にしたから…………！！」
あおいが与えた飛行能力は、所謂『半自動式』だった。
何かにぶつかりそうになった際、安全な場所への移動が＂無意識＂で行われるのだ。



ガラテア
（いやーー……。なんかほんとに〈神様〉っぽくなっちゃったなー…………。
　これ、アタシ《神々の皆様》に怒られるんじゃ…………？）

[290 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 13:17:42]

「いやはや…………　賑やかであることは構いませんが、もう少しここが

　『〈神聖な場所〉である』という意識を持っていただいてですね…………」

ガラテア

「ああ《カンヌシ》様、おはようございまーす。

　まー、一桁歳の子たちなんで、多めに見てあげてあげましょうよー？」

ガラテアが挨拶の言葉を掛けた相手は、正式には《鎮守の森》に聳え立つお社の

『宮司』であり、周辺の地主でもある〈dice1d10=5 (5) 〉の〈神主様〉である。

（※１．狐人／２．雉【キジ】人／３．兎人／４．鶏人／５．牛人

　　６．鶴人／７．鹿人／８．鳩人／９．犬人／１０．烏【カラス】人）

〇〇神主

「正直なところ、七種家の方々をここに住まわせていることも特例措置なのですよ。

　本当は《狐花様》への信仰心が薄い者たちに、《鎮守の森》の領域内での

　住居を与えるべきではないのですが、鈴さんへの慈悲でですねぇ…………

ガラテア

「嘘つくんじゃないよ、dice1d2=2 (2) 。『リンにべた惚れだから』なくせに」

（※１．婆さん／２．爺さん）

〇〇神主

「…………初めは疑いましたが、

　やはり、あなた様も《神様》の一柱のようですね…………」

ガラテア

「〈都〉で流行りの《神様》でーす♪　よろしくお願いしまーす♪」

〇〇神主

「時代も変わりましたね…………」

[291 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 14:00:01]

ガラテア

「そうそう。あおいちゃんたち、見守っててもらえます？

　リンとの修行がありますんで、子供たちの面倒まで見てられなくて…………」

牛人神主

「……《狐花様》に誓って、子供たちを見捨てたりはしませんがねぇ…………」

りん

「あの、がらてあはん…………！！」

ガラテア

「え、何？？　なんかあった……？？」

りん

「そやなくて、今日はおとうはんとおかあはん以外、

　あてと妹たちのみんなが休みの日なんや……」

牛人神主

（鈴さんは、勝手に何日間も休んでいるだけですがね…………）

りん

「そやから、今日は……dice1d4=2 (2) わ……！」

──────────────────────

１．あおいの願いを優先したい

２．三女の願いを優先したい

３．なぎさの願いを優先したい

４．みんなで旅行に行きたい

[292 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 16:15:50]

三女
「…………え、うち？」　（多いな……）
りんたちは、三女の部屋に集まった。
こどもたちも来てしまったので、少しとんでもない状況になっている。

りん
「せっかく腕が元通りになったんやから、
　三女がしたいこと、何でも付き合ったるで……！」
三女
「いや、あおいたち優先しようや……。
　うちのやりたいことやったら、明日以降いつでもできるやろ……？」
りん
「何言うとるん！　明日から『自宅通学』やで？　腕動かせるんやから！」

ガラテア
（え、『自宅通学』できるの……？？）

三女
「え、ひど……」
りん
「あんた、他の子たちに置いてかれてええの！！？」
三女
「よ、良くないけど……　わ、わかった、通学するわ……。
　その代わり、い、言うこと聞いてな…………？」
りん
「今日は、何でも聞いたるで！」

三女
「……み、〈みやこ〉の子らん中で流行っとる…………
　げ、『げえむ』ってやつがしたい……　です…………」

[293 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 16:19:54]

ガラテア
（え！？？　今のこの世界、『ビデオゲーム』あるの…………？！）
りん
「さ、三女？　げ、『げえむ』は、ちょっと…………」
　
三女は、嘘偽りの無い涙を浮かべた。それを見て、あおいも涙を流す。
涙を流すあおいを見て、こどもたちは《りん》を睨む。ただ一人、なぎさは同情してくれた。

りん
「買ったるわっっ！！！！！」
妹たちの涙を見て、りんは少し暴走し始めた。

牛人神主
「鈴さん……？　愛する妹の頼みとは言え、時にはお断りする厳しさも…………」
りん
「神主はん、お給料の前借り、お頼申します…………♡」
牛人神主
「給料の……　前借りぃ…………？？
　何を、突飛なことを……………………




　私 が 買 っ て あ げ ま し ょ お お お お お お う ！！！！」


こどもたちは、盛大に沸いた。

ガラテア
（じ、爺さん…………）

[294 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 16:20:53]

りん

「がらてあはん、神主はん連れて都の店へ！！」

ガラテア

「まー、皆喜ぶだろうから別にいいかーー」

三女

「あ、ちょっ、まだ何の『げえ……

ガラテアと牛人神主は、〈都〉にある〈大型家電量販店〉に足を運んだ。

ガラテア

（これも全部、《転生者》の影響なんだろうなー…………）

牛人神主は大型受像機（テレビ）と電子遊戯用機械（ゲーム機等）一式、

そして、とあるdice2d13=12 12 (24) が遊べる装置を購入し、七種宅へと舞い戻った。

──────────────────────

１．アクションゲーム／２．シューティングゲーム

３．経営シミュレーションゲーム／４．パズルゲーム

５．戦略シミュレーションゲーム／６．リズムゲーム

７．格闘ゲーム／８．ロールプレイングゲーム

９．テキストアドベンチャーゲーム／１０．レースゲーム

１１．コミュニケーションゲーム／１２．パーティーゲーム

１３．探索アドベンチャーゲーム

[295 二次元好きの匿名さん 24/12/05(木) 18:37:35]

パーティーゲーム好きなのかな

[296 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 19:13:44]

りんと牛人神主は準備を足早に済ませ、居間で『げえむ』を始めた。

それは、個性的で魅力的な見た目の登場人物たちを操作して、

一風変わった形式で『すごろく』を行う……　というものであった。

ガラテア

（色々好き勝手やってんなー…………）

三女

「えっと……　じゃあ、この片目隠れた人で……」

あおい

「この『みつあみ』の子、うちのでいい……？」

猫人の友達

「じゃー右の似てる子ー！」

狸人の友達

「あおいちゃんの左の『かえるー』」

ガラテア

（その子、カエルじゃないねー…………）

さて、三女たちはここから夕暮れ時まで、

代わりばんこで『げえむ』をすることとなる。

だが当然、それぞれ『げえむせんす』に差はあるもので、

それによる雰囲気の落差というものが

生まれたり生まれなかったりするものではありますが、

彼女らの腕前は……dice7d100=26 60 28 49 90 41 44 (338)

──────────────────────

三女／あおい／なぎさ／りん／ガラテア／牛人神主／こどもたち

[297 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 19:34:48]

ガラテア

「えっと……　皆ゴメン、一人がちしちゃって…………」

あおい

「がらてあちゃん、つよーい…………！」

男の子その１

「もう一回！！　もう一回！！」

男の子その２

「次、おれ！！！！」

牛人神主

「こらこら、今日はもう帰りなさい。また来週来ていいから」

三女

「…………うち、もう『げえむ』やらん……」

りん

「あ、あてが頑張って働いて、別の『げえむ』買うたるさかい……！」

なぎさ

「そういう問題ちゃうよ、あたしら…………」

りんとあおい、二人が四日目の『人生修行』で得た経験値、及び〈神通力〉は、

りんがdice1d1017=609 (609) 、

あおいがdice1d2024=369 (369) となった。

[298 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 20:08:25]

りんとガラテアの出会いから六日目、及び『人生修行』の五日目。

現在の〈神通力〉は、りんが〈五十六万、八千六百八十四〉、

あおいが〈百六十五万、三千六百一〉である。

本日から三女も含めた学び舎への＂通学＂が始まり、

「これで《りん》の修行も捗るだろう」と、ガラテアは考えていたが……

りん

「三女を一人にできひんから、『通学』中は無理やわ……　堪忍な…………」

ガラテア

「あー……　そりゃ、そうなるかー…………」

《最上級の癒し手》への道のりは、まだまだ長い。

ガラテア

（えーっと、つまり……？　夕方近くまで、何もできないってことかー……。

　さすがに暇だから、それまでどっかに行こうかなー…………？）

ガラテアは十五時頃まで……dice1d8=1 (1)

──────────────────────

１．三女を見ていた／２．あおいたちを見守りに行った

３．なぎさを見守りに行った／４．クワガタオニと旅をした

５．《酔の国》へ赴いた／６．担当する転生者たちの手助けをした

７．《天上者》共を見に行った／８．《神々》の下へと赴いた

[299 二次元好きの匿名さん 24/12/05(木) 20:10:15]

葵ィマイチか

[300 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 20:33:41]

ガラテア

「どー？　やってけそー？」

三女

「…………頑張っとる」

ガラテアから見た三女は、思いの外真剣に取り組んでいるように見えた。

ガラテア

「勉強、どれくらいできる？」

三女

「全教科、平均dice1d100=82 (82) 点……」

ガラテア

「友達いる？」

三女

「dice1d10=8 (8) （－１）人……」

ガラテア

「好きな人とか、居たりする？」

三女

「はぁ！！？　dice1d4=4 (4) 」

（※１．お、おるけど……／２．おるわけないやろ……！！（いる）

　　３．おるわけないやろ！！（いない）／４．神様の方こそ、どうなん……！？）

ガラテア

「へーーー……………………」

[301 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/05(木) 20:58:03]

ガラテア
「え……！？　結構充実してるんだね、三女ちゃん…………」
三女
「見えへんかもしれんけど、色々頑張っとるからな」
ガラテア
「ゴメン、嘘ついてたりしない……？」
三女
「《神様》相手に、よう嘘つかんわ……！！」
ガラテア
「おー、偉いね〜……　あれ、でもその割には、お見舞い……」
三女
「…………友達や思うてたけど、あの子ら友達やないんかな……？」
ガラテア
「ゴ、ゴメンッ！！　た、たぶんそんなこと無くて、
　普通に事情があって、来られなかっただけなんじゃないかなー……？？」

三女
「……ほんまに傷ついたから、お詫びに教えてや、〈好きな人〉…………」
ガラテア
「〈七種家の皆〉……　なんて答えじゃ、ダメだよね。
　少し『心の古傷』的な子なんだけど、昔は＂いた＂よ」
三女
「ふーん。誰なん？」
ガラテア
「《アキくん》って、いい子でねー…………」


三女
「……ごめん、悪かったわ…………」
三女は深い悲しみを感じ取り、それ以上は聞かなかった。

[302 二次元好きの匿名さん 24/12/06(金) 01:09:01]

対応が神ってるな
神だけに

[303 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 08:48:32]

せっかくだからと、神主に買ってもらった『受像機』を使って『通学』する三女。
受像機の先の光景を見たガラテアは、先ほどの疑いを払拭することができた。


赤い子、橙の子、黄の子
「三女、大丈夫！！？」
青い子
「七種さん、心配していました……！」
三女
「顔見せに来てくれて良くない……？」
青い子
「え……　す、すみません……。私は……」
三女
「あ、ごめん。青はあかんかったな、〈香草〉……」
赤い子
「えっと、ごめん……！　あたし、忙しくて……」
三女
「「ご年配の方々の相手で忙しい」んやっけ……　ごめんな？」
橙の子
「うちはそもそも、家のことが大変で……」
三女
「そうやった……　橙のとこ、豪雨の被害大きそうやもんな…………」
黄の子
「……………………えと」
三女
「「忘れてた」やろ？　黄は、いつもほんま…………」


ガラテア
（へー、自宅から学び舎と直接繋がれるんだ…………）

[304 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 08:49:15]

三女
「あんたらは、ええわ。緑と藍と紫は？」
青い子
「その……　藍さんは七種さんと同じく、療養中らしく……」
三女
「あー、豪雨で？！　そっかー…………」
赤い子
「えっと、緑は「お土産採ってくるー！」って……」
三女
「それっきり！？？　いや、探した方がええやろ……！！」
赤い子
「緑の親御さんや《国防隊》の人たちも探してるらしいけど、
　「どこ探してもいない」って……」
三女
「任せとき！　うちの《神様》が、見つけたるわ！」
ガラテア
（あ、はい…………）

三女
「……で、《紫》は？」
青い子
「紫さん、四日前から七種さんのお見舞いに向かわれたはずですが…………」

三女、ガラテア
（え……　見てないけど…………？？）




「いたよ…………」

[305 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 08:52:06]

三女、ガラテア
「うわっ！！！？？」
置き物に化けていた《紫の子》は、彼女らの前で変化を解いた。

ガラテア
（ア、アタシでも存在を認知できない子が…………？）

三女
「む、紫！！　いつから……
紫の子
「ごめん、機会失っちゃった……。お姉さんが『精神統一』？　に行く前から
　置き物に化けてたけど、驚かせようとしてたら、色々起こっちゃって…………」
三女
「その時から化けとるんやったら、あんた…………」
始業の鐘と同時に、紫の子から『くぅ』と音が鳴る。

紫の子
「おなか、すいちゃってます…………」
三女
「……神様、紫になんか持ってきたって。一緒に授業受けるから」
ガラテア
「はーい」



二人は寄り添いながら授業を受ける。女神は彼女らの＂お手伝い＂をしている。
仕事の途中で様子を見にきたりんは、《紫の子》の存在に困惑するも、
巫女のお仕事をこなしつつ、三女たちのための食事作りに励む。
三人と一柱の時間が、流れるように過ぎていった。

[306 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 08:52:58]

時刻は十五時近く。あおい＂たち＂は仕事を終えた七種父と共に帰宅した。


あおい
「ただいまーーー！！！」
七種父
「三女ー、りんー、帰ったぞー。
　がらてあ様、娘たちの面倒を見てくれて、ありがとうございます」
ガラテア
「あおいちゃん！！　と、お父さん……　と…………？」
ガラテアは彼女らの背後に、複数の人影を見る。
人影はあおいの友人たち数十人と、推定三十代後半の男女、鷲【ワシ】人の老人、


そして、筋骨隆々の女性と《国防隊員》数名で構成されていた。


「やーっぱりいいわね〜〜♫　この清々しい香り♪
　〈悪〉が寄りつかない、聖なる空気をたっぷり感じとれるわ〜〜♫」

ガラテア
（コイツ……！！　《転生者》特有の＂力＂が出てる…………！！！）

転生者Ｍｓ．
「あら、アナタが《女神様》ね？　初めまして〜、《ミズ》でーす♪
　〈都〉、及び《紅の島国》の教育機関を統制する
　《教育長》やらせてもらってまーーす♫」

[307 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 08:53:57]

ガラテア

「アンタ、もしかして……

転生者Ｍｓ．

「そうそう！！　アタシのことなんかより、早く彼らを救ってあげて〜！

　彼らのとこの子の《緑の子》ちゃんが、四日前から行方不明なのよ〜！！」

ガラテア

（あー、ここでそうなるか…………）

緑の父

「お願いしますっ！！！　うちの子を……　うちの子をっ…………！！！！」

緑の母

「供物なら、実現可能な限りご用意いたしますので…………！！！！」

ガラテア

「あー、いいですいいです。子供の命ですんで、お礼は信仰心だけで。

　と言いますか、三女ちゃんのお友達の子ですよね？

　元より救うつもりですんで、任せておいてくださ〜い」

緑の両親

「あ、ありがとうございますっ！！！！！」

ガラテア

（とは言っても、手がかり無いんだよねー…………。

　強い力持ってるならまだしも、＂普通の子＂の『特定』かー…………）

あおい

〔がらてあちゃん……！！〕

ガラテア

〔んー？　どうしたのー、あおいちゃん？〕

あおい

〔たぶん、dice1d5=4 (4) におる……！）

──────────────────────

１．近く／２．遠く／３．海の向こう／４．空の向こう／５．別の世界

[308 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 10:02:16]

ガラテア
〔そらァ！！？　え、空って、もう……
あおい
〔んん、だいじょうぶ！
　だいじょうぶ、だけど……　やっぱり空におる……〕
ガラテア
〔あーー…………　たしかに、空に人がいるっぽいね…………〕
あおい
〔がらてあちゃん、行こ！！〕
ガラテア
〔なにかあったら、＂うしろで＂きょうりょくしてね？〕
「わるいけど、皆ー！　あおいちゃんといっしょに
　《みどり》って子さがしてくるから、明日会おうねー！」
男の子たち
「おれ（ぼく）も行くーー！！！」
ガラテア
「危ないかもだから、だめ！　もし大きな『けが』をしちゃったら、
　お父さんやお母さんだけじゃなくて、＂あおいちゃんも＂かなしむよ！！」
男の子たち
「はーーい…………」

鷲人の老人
「あー、すみません。わしも、同行させていただけませんかの？」

ガラテア
「あなたは……？」
鷲人の老人
「なーに。困っている人々を放って置けない、ただのじじーですじゃ。
　わしは〈鷲〉に恥じぬ、飛行能力と戦闘力を持っておりましての。
　可愛らしいお嬢さんを護るくらいのことは、わしにもできますぞ」

[309 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 10:03:14]

ガラテア

「えっと……　信じてもよろしいのでしょうかねー……？

　ご年配の方に多く見られる、所謂『根拠のない自信』だったり……

鷲人の老人

「まー、断られても付いて行きますがの。

　邪魔はせんので、どうかお気になさらず」

ガラテア

〔……あおいちゃん、全速力で行くよ〕

あおい

〔え？！　う、うん……！！〕

ガラテアとあおいは、疾風の如く雲の上へと昇っていった。

ガラテア

〔……えっと、この辺り…………　え〕

ガラテアたちが目撃した《緑の子》は……dice1d7=7 (7)

──────────────────────

１．大怪鳥に＂掴まって＂いた／２．龍に＂掴まって＂いた

３．異星人に連れさらわれようとしていた／４．何者かに運ばれていた

５．見知らぬ少年と一緒に、巨人に追われていた

６．乗り物の実験に付き合わされていた／７．魔法少女になっていた

[310 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 11:45:15]

緑の子
「いいやっほおおおおおおう！！！」
緑の子は、可愛らしい服に身を包みながら、上機嫌で雲の上を駆け巡っていた。


あおい
「みどりちゃん、かわいいいいい！！！！」
緑の子
「え、あおいちゃん？？！
　あおいちゃんも、《そふぁみこ》になれたの？！」
あおい
「そふぁみこ……？　なにそれー？」
緑の子
「え！？　じゃあなんで、空飛べてるの！？」
あおい
「へへー♪　がらてあちゃんが、してくれたー♪」
ガラテア
「ど、どうもー、ガラテアでーす……。《女神》やってまーす……」

緑の子
「女神様！？　じゃあ、一緒だよー！
　わたしも《神様》って人から授かったんだーー！！」
あおい
「うち、そふぁみこ知らん…………」
緑の子
「うーーん……　『流派』？　が違うのかなーー？」


ガラテア
（神様から、＂授かった＂…………？？？）

[311 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 11:46:00]

あおい
「あ、えっと……！　みんな、待ってる！！
　みどりちゃんのおとうはんと、おかあはんと、三女！！」
緑の子
「あーー！！　忘れてたーーー！！！
　三女のお土産、まだ採ってなーい…………！」
あおい
「おみやげ、なに？」
緑の子
「えっとねー、『いちご』！　『自生』してるやつ、見つけたんだー！」
あおい
「いっしょに、取ろ！！」
緑の子
「うーーん……　どうせなら、競争しよ！　多く採れた方の勝ち！！」
あおい
「えぇ……？！　う、うん……
緑の子
「あっちだから！　競争ね！！」
あおい
「あ……！！　待ってっ！！！」




鷲人の老人
〔女神様は、お気づきですかの〕
ガラテア
〔！！？　お、お爺さん……〕
鷲人の老人
〔あの子、＂一度亡くなられております＂ぞ〕

[312 二次元好きの匿名さん 24/12/06(金) 17:12:21]

不穏だな

[313 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 18:42:06]

〈都〉から遠く東の方にある〈苺の群生地〉にて、
二人の少女の苺摘み競争が行われていた。


ガラテア
「あまり取りすぎちゃ、だめだよーー！！」
あおい
「だいじょうぶー……！　たね、ここに帰すからー……！！」
ガラテア
（イチゴのこと、理解してるのかな……？）



鷲人の老人
〔恐らく『イチゴ摘み』の際、あるいは道中で命を落としてしまい、
　見かねた〈何者〉かの手によって『心身の同一性を保ったまま、
　＂新たな生命＂として蘇生させる』手段が採られたのでしょうな。
　何とも慈悲深いお方ですな、その《神様》を名乗る者も……〕
ガラテア
〔お言葉ですが、数百年ほど前の『神々の取り決め』により
　＂神が人々を直接蘇生する行為＂は、禁止されてしまいまして…………〕
鷲人の老人
〔きっと、あなたたちとは派閥の違う《神様》なのでしょう。
　最近は様々な《神を称する者》が増えてきましたからの〕
ガラテア
〔ず、随分と……　神々の事情に、お詳しいですね……？〕
鷲人の老人
〔ほっほ。わしは＂世界旅行＂を趣味としておりましての。
　長年様々な世界を見続けておりますと、
　こういった『浮世を離れた話』にも詳しくなるというものですじゃ〕

[314 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 18:43:34]

ガラテア
〔なるほどー……！　道理で、一目見た時から『叡智の備わりが醸し出された、
　苦み走る素敵なご尊顔』だと感じられたわけですー……♡〕
鷲人の老人
〔遠回し気味に『じじー』だと、仰られておりますな？
　言っておきますが、本当の＂私＂はこんな…………〕



ガラテア
〔ゼ、《ゼウス様》……　ですよね…………？？？〕

鷲人ゼウス
〔……バレちゃったか。昔から『変身』には、自信があるんだけどね ;-P 〕


ガラテア
〔ご、ご無沙汰しておりますッ……！！！！　二十年以上もの間、私用を優先して
　復帰の挨拶を怠ってしまい、お詫びの申し上げようもございませんッ…………！！！！〕
鷲人ゼウス
〔おいおい。もう＂昔の私じゃない＂んだから、もっと砕けちゃっていいんだよ？〕
ガラテア
〔す、すみません……！　その、《新生ゼウス様》に慣れておらず…………〕
鷲人ゼウス
〔私は、も っ と 素のままの君が見たいな？ ;-) 〕

ガラテア
〔……《へーラー様》に怒られますよ〕
鷲人ゼウス
〔お願い、告げ口しないでね……？ :’-( 〕

[315 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 18:44:30]

あおい

「がらてあちゃん、早く帰りたい……！！！」

あおいと緑の子は、＂周りが削ぎ落とされた＂苺を大量に抱えていた。

ガラテア

「なにこれ……？？！」

緑の子

「「種は、ここに植えてあげたい」ですって！　あおいちゃん、優しいですから！」

ガラテア

（まー、あの子の＂力＂なら〈素敵なイチゴたち〉になるんだろうけどさ…………）

鷲人ゼウス

「ほっほ。可愛らしいお嬢さんたちですの。きっと想いは通じますぞ」

ガラテア

「えっと、じゃあさっさと〈空間てんい〉で帰ろっか……」

あおい

「うん！！！」

緑の子

「え、すごい！！？　神様すごい！！！」

鷲人ゼウス

（……《ガラテア》。やっと、本来の君らしい姿を見れた気がするよ。

　今の君なら、《アキくん》もきっと安心できるはずさ）

なお、あおいが想いを込めて植えたことで、苺たちは……dice1d4=4 (4)

──────────────────────

１．すくすくと成長していく／２．ある事件に巻き込まれる

３．『不滅の再生力』を手に入れる／４．後に〈苺人間〉となる

[316 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/06(金) 22:11:06]

女神と次代の女神候補（？）は、新たに《魔法少女》として誕生した少女と共に、
少女の両親と、友人である三女（と紫の子）が待つ《鎮守の森》へと舞い戻った。


緑の両親
「緑子、その格好は……！？？」
緑の子
「わたし、《そふぁみこ》になったーー！！！」
緑の父
「そふぁ……？？　と、とにかく、無事で良かった……
緑の母
「緑子！！！　勝手に遠くに行っちゃだめでしょ！！！！」
緑の子
「……！！　ご、ごめん……
緑の母
「さすがに許せんよ！！　しばらく外に出さんからね！！！」
緑の子
「ま、待って！！　三女にお土産渡してから……

ガラテア
「あのー、すみません。しばらくの間、ご両親も《緑の子》ちゃんと
　一緒に〈うち〉に同居していただけませんかね？」
緑の両親
「え！！？」

ガラテア
「緑の子ちゃん、どういうわけか＂力＂を持っちゃったらしくて、
　色々な意味で＂何が起こるか＂がわかりませんので、
　できればアタシが対応しやすいように、近くに居てほしいんですよねー」

[317 二次元好きの匿名さん 24/12/07(土) 02:05:30]

おつおつ
ゼウス様なんかかわいいな

[318 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 08:02:06]

緑の母
「い、いきなりそんな……
緑の子
「やったあああああああああ！！！！
　三女とあおいちゃんと一緒おおおおおおおおお！！！！」
緑の子は、一目散に七種宅に入っていった。

ガラテア
（あれ、他の皆は……　あ、居間にいるんだ…………）
　複数の『気配』が、居間に密集していることに気づく。
ガラテア
（〈アイツ〉もか…………）






転生者Ｍｓ．
「ミンナ〜〜♫　あおいちゃんたちのお土産の『イチゴ』と〜、
　アタシの手土産の『大福餅』ってやつ〜、一緒に食べちゃって〜〜？」
こどもたち
「いただきまーーーす！！！」
こどもたちは、夢中になって食べ始める。

転生者Ｍｓ．
「あ、コラ！！　ゆっくり食べないとダメよ！！！」
りん
「色々と、ほんまおおきに、《みず様》…………」

[319 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 08:03:18]

転生者Ｍｓ．

「全然、いいのよ〜！　というか、むしろお詫びを兼ねてるのよね。

　アタシの部下が、なぎさちゃんにひどいことしちゃったみたいで、ゴメンなさいね」

りん

「え、〈御上〉って、《みず様》のことやったんどすか……？？！」

転生者Ｍｓ．

「＂信じて＂！！　アタシは、こどもたちを脅かす者には容赦しないけど、

　なぎさちゃんみたいに、まだ『こども』な子をひどいめに遭わせようなんてこと、

　＂神々に誓って＂、＂絶対に＂提案しないからッ！！！」

りん

「わかってますわ、《みず様》がそんなことしいひんことくらい」

転生者Ｍｓ．

「ありがと〜♪　アナタも昔から、優しいわネ……♡」

りん

「み、《みず様》……！！

ガラテア

「リン〜？？　改宗するつもり〜？？？」

りん

「ひゃあ！！！　が、がらてあはん……！！」

ガラテア

〔アイツの言ってること、何もかも嘘ってわけじゃないだろうけど、

　アイツが《国防隊》の子たちを駆り立てたこと、忘れちゃ駄目だからねー？〕

りん

〔け、けど《みず様》やし…………〕

ガラテア

〔リン、お願い。アタシを信じて〕

りん

〔…………dice1d2=1 (1) 〕

（※１．《がらてあ様》を信じるわ／２．堪忍やけど、《みず様》のことを……）

[320 二次元好きの匿名さん 24/12/07(土) 12:49:06]

信じる

[321 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 14:26:26]

転生者Ｍｓ．
〔ちょっと、女神様〜！！　お誘いの邪魔しないでよ〜！！〕
ガラテア
〔ゴメンねー？　リンは、アタシの大切な信奉者の一人だからさ〜。
　《神様》として、邪な者の魔の手から護ってあげないとなんだよねー〕
転生者Ｍｓ．
〔誤解よ〜ッ！！！　アタシは女神様と同じく、こども好きな人間よッ！？
　他の想いやりの無い《転生者》たちと、同じ扱いしないで〜〜！？？〕

りん
〔が、がらてあはん……？　みず様とお話しとるんどっしゃろか……？〕
ガラテア
〔あー、ゴメン。意思疎通できるようにするね〕

女神は『思考を通じての意思疎通手段』の＂更新＂を行った。

ガラテア→全体
〔どー、お二人さん？　これで＂向けたい人たちに向けて＂、
　脳から直接話せるようになったはずだけど〕
りん→全体
〔え……？？　えっと……
転生者Ｍｓ．→全体
〔どうも〜、《ミズ》でーす♪〕
りん→全体
〔びゃあっ！！？　み、みず様の声……！？〕

転生者Ｍｓ．→ガラ
〔これでいいのよね、女神様？〕
ガラテア→全体
〔さすが、《転生者》は順応が早いねー〕

[322 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 14:27:28]

りん→全体
〔え！？　みず様、《てんせいしゃ》やったんどすか！？〕
転生者Ｍｓ．→全体
〔隠したかったわけじゃないのよ？
　そもそも『転生』なんて概念、この世界の人はミンナ知らないし。

　それより聞いてよ、りんちゃ〜ん！！
　女神様、アタシを悪者みたいに扱ってくるのよ〜！！
　りんちゃんも、女神様の誤解を解くのに協力して〜〜？？〕
りん→全体
〔た、確かに、みず様は素敵なお方なんやけど、
　《国防隊》の方々を使うて、《どらくろあ》はんたちに
　『えげつないこと』しようとしてはったんは、事実らしいし…………〕
転生者Ｍｓ．→全体
〔……否定はしないわ。でもね、その彼女は《吸血鬼》だったの。
　今は治ったらしいけど、「〈衝動的に血を吸う怪物〉が
　海の向こうからやってくる」なんて、さすがに恐ろしい話でしょ？

　この国にも伝わっちゃってるから、怖がってるこどもたちもいるのね？
　その子たちの心を守るためにも、見過ごせない存在だったのよ。
　「アタシは間違ってなかった」とは言わないけどね。ミンナを想ってのことだったの。
　こどもたちを守る《教育長》としてのアタシのこと、どうか信じてちょうだい〕

りん→ガラ
〔がらてあはん…………〕
ガラテア→鈴
〔さっきも言ったけど、＂嘘だらけではない＂と思うよ。
　でも、十中八九＂隠しごとだらけ＂だね。
　『精神統一』の日、長黒髪の子との会話を聞いたんだけどね？
　〈虫人間騒動〉の黒幕も、間違いなくアイツだからさ〕

[323 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 14:28:29]

りん→全体

〔……みず様、あなた様の尊さは、昔からよく存じとります。

　あてが小さかった頃から、みず様は色々教えてくれはったし、

　なぎさも、三女も、最近はあおいもお世話してくれはったそうどすな。

　〈七種家の長女〉として、心根からお礼を申し上げます〕

転生者Ｍｓ．→全体

〔いいのよ〜！　好きだからしてることだし〜〜♫〕

りん→全体

〔けど〈あて〉は、みず様より《女神がらてあ様》を信じます。

　信頼する女神様があなた様を危険視しとる以上は、

　あなた様を＂心根から信頼する＂ことはできひんわ〕

転生者Ｍｓ．→全体

〔それって、盲目的な信仰じゃない？〕

りん→全体

〔堪忍やけど、あては何があっても《がらてあはん》を信じますさかい〕

ガラテア→鈴

〔リンー♪　アタシが一生〈七種家の皆〉を護るよー♪〕

転生者Ｍｓ．→全体

〔…………どうやら、《女神様》に信じてもらうしかないみたいね〕

ガラテア→全体

〔アンタ、何をするつも……〕

転生者Ｍｓ．→全体

〔dice1d4=1 (1) わ〕

（※１．交流会を開く／２．世界中で救護活動をする

　　３．悪の《天上者》を討つ／４．辞職して権威を捨てる）

ガラテア

（…………は？？）

[324 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 16:25:58]

転生者Ｍｓ．→全体
〔女神様がアタシの人格を疑ってるの、
　一部の方々が苦しんだ『原因』を、作ってきちゃったからでしょ？
　その方々へのお詫びも兼ねて、種族や民族の壁を越えた
　縁作り、あるいは親睦を深めるための〈交流会〉を開催するの♪

　アタシが『主催者』兼、裏方作業の一部を担当するわ。
　女神様たちは、アタシたちの働きを横目で見ながら
　『人々との交流の輪を広げる機会』を楽しんでちょうだい♪
　もちろん、『酔の国』の人々もちゃんと招待するわ♪〕

ガラテア→全体
〔アンタ、何か企んでない……？〕
転生者Ｍｓ．→全体
〔何でよッ！！！　女神様、疑り深すぎじゃない！？
　常識的に考えてよ！　《神様》に疑われてるのよ！？
　疑念を晴らすためにも、『誠心誠意』で応えるのは当然でしょ！！？〕

りん→ガラ
〔がらてあはん、＂一旦＂信じてええんちゃう……？
　何かあっても、きっとあてらでみんなを護れるさかい…………〕
ガラテア
（……今なら《ゼウス様》もいるし、
　最悪、《ゼウス様》に頭下げて頼み込めば、大事にはならないかな）

ガラテア→全体
〔わかった。アンタのこと、まだ信じてあげる。
　でも、次自分勝手に人々を傷つけるようなことしたら、
　そん時は＂裁き＂を下す予定だから、気をつけなね？〕

[325 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 16:27:01]

転生者Ｍｓ．→全体

〔ありがとうございま〜〜す♫　全力で、取り組ませていただくわ〜♪

　開催はスピーディーに『六日後』予定よ〜♪　楽しみにしてて〜〜♫〕

「ミンナ〜！　《女神様》のご神託で、

　『世界中の人々との交流会』の開催が決まったわ〜〜♫

　アタシも精一杯頑張るから〜、楽しみにしててちょうだいね〜〜♫」

こどもたちは熱狂し、《国防隊員》たちは先の苦労を予測して頭を抱えた。

ガラテア

（ア、アタシが決めたことしやがった…………）

あおい

「がらてあちゃん、いい！！！　すごく、いい！！！」

ガラテア

（……まー、あおいちゃんたちが喜んでるから、いいかー♪）

こうして、りんたちの『人生修行』の五日目が幕を下ろした。

七種宅に新たに〈緑の子と彼女の両親〉が加わり、より賑やかになることだろう。

嫉妬して居座ろうとした《紫の子》が、母親に連れ帰られていった一幕を挟みつつ、

『人々が平和な時を過ごした一日』が、また一つ終わりを告げた。

なお、りんとあおいの二人が五日目の『人生修行』で得た経験値、

及び〈神通力〉は、りんがdice1d800=691 (691)

あおいがdice1d3535=である。

[326 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 16:28:05]

>>325

あおい＝ dice1d3535=522 (522)

[327 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 19:03:57]

りんとガラテアの出会いから七日目、及び『人生修行』の六日目。
現在の〈神通力〉は、りんが〈五十六万、九千三百七十五〉、
あおいが〈百六十五万、四千百二十三〉である。


緑の子
「三女と一緒に『自宅通学』、嬉しい〜〜♫」
三女
「いや、あんたは〈学び舎〉行こうや……」
緑の子
「え……　嫌なの…………？」
三女
「嫌やないわ！！　けど、あんた歩けるやろ？」
緑の子
「だって、お母さんが「外出るな」って。ねーーー？？」

緑の母
「……………………」
緑の母は夫と〈七種家の両親〉に代わり、二人の面倒を見ることになった。

ガラテア
「いやー正直助かりますよー、お母さん♪
　アタシ、リンに『修行』させてあげたかったんで、
　三女ちゃんを代わりに見守ってくれる人が、ほしかったんですよねー♪」
緑の母
「……お気をつけて、いってらっしゃいませ」
りん
「ほんま、おおきに…………」

[328 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 19:05:05]

ガラテア

「さーて、今日はどうしよっか？」

りん

「特に予定もあらへんし、がらてあはんの判断に委ねますえ」

ガラテア

「そーだなー。じゃ、《クワガタオニ》たちを久々に呼んで、

　皆でどこかに『日帰り旅行』することにしようかな」

りん

「ええなぁ、それ…………　そう言えば、《くわがたおに》はんたちは……？」

ガラテア

「そこら辺で、毎日人々を助けてるっぽいよー？

　アタシと違って、『信仰心』って副次的報酬すら無いのに、すごいよねー」

さて、ガラテアが決めた旅行先は……dice1d11=3 (3)

──────────────────────

１．〈都〉／２．南の〈繁華街〉／３．東の〈苺の群生地〉

４．南西の火山周辺地域／５．北東の雪原地帯

６．《酔の国》／７．《緑の国》／８．《星の大国》

９．《真紅の大国》／１０．《活の国》／１１．《貴の島国》

[329 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 21:04:41]

ガラテアは＂ある予感＂の当否を確かめるため、
りんとクワガタオニを連れ、再び〈苺の群生地〉へと足を運んだ。



ガラテア
（うわ）
りん
「わぁ……！！　一面、綺麗な赤と緑やねぇ……♫」
クワガタオニ
「この苺たち、どのくらい食べてもいいものなんですかねー♪」
一連の出来事を知らない一人と一組は〈眼前に広がる景色〉に目を輝かせているが、
流れを知る女神は、＂前日より十数倍勢力を広げた苺の群れ＂を見て、困惑した。

ガラテア
（一日で育っちゃったかー…………。あおいちゃんの＂想い＂は、すごいなー……）
りん
「がらてあはん、もしかして昨日の『いちご』って……！」
ガラテア
「そーだねー、ここであおいちゃんたちが摘んできたやつだねー…………」
りん
「あれだけぎょうさんあって、まだこんな生ってるんどす……？」
ガラテア
「えっとねー……？　あのイチゴ、外が剥がされてた状態だったでしょ……？
　あおいちゃんが律儀に同じ場所、つまり〈この地〉に再度植えたんだよ……。
　その想いが通じたのかなー……　一晩で、こんなに育っちゃったっぽいねー…………」
りん
「そ、そうやったんどすか…………」

[330 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 21:06:32]

クワガタオニ
「あのー！！　『自然の恵み』に感謝して、少し頂きませんかーー？？」
クワガタオニは、既に群生地の＂中＂へと足を運んでいた。

りん
「あ、はーー……
ガラテア
「ゴメーン！！　もう少しだけ、様子見させてー？？」
りん
「が、がらてあはん……？？」
ガラテア
（＂あの子の想い＂が通じてるなら、おそらく…………）


突如、複数の苺が急成長、いや『変態』を遂げて人型に形作られていく。
急激な変化を終えた苺たちは、ゆっくりと立ち上がり、そのまま佇み始めた。


クワガタオニ→全体
〔な、何ですか、これはあああああ！！？？〕
りん→全体
〔に、に、人間……　どっしゃろか…………？？！〕
ガラテア→全体
〔この世界って、＂植物系の人間＂っていたっけ？〕

彼らは首を横に振り、否定の意を示した。

ガラテア→全体
〔じゃあどうやら､その＂植物系の人間＂第一号となる
　新たな『種族』が、あおいちゃんの手で誕生しちゃったっぽいね…………〕

[331 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/07(土) 21:07:14]

──────────────────────

さて、《あおい》の〈想いの力〉により生み出された《いちご人間》たちだが、

彼らの性質、気質は……（※１＝最低、１００＝最高）

dice8d100=96 97 57 96 26 22 16 55 (465)

左から、『知性』『品性』『根性』『主体性』『協調性』『社会性』『社交性』『道徳心』である。

──────────────────────

[332 二次元好きの匿名さん 24/12/07(土) 21:25:57]

社交性が……

[333 二次元好きの匿名さん 24/12/08(日) 00:59:27]

反骨精神旺盛な子かな

[334 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 08:09:39]

《いちご人間》たちは辺りを見回すような仕草を見せた後、
ある者は立ち尽くし、ある者は当ても無く彷徨い始め、ある者は……　こちらにやってきた。


苺人一号
「…………」

りん→ガラ
〔が、がらてあはん…………！！〕
ガラテア
「どうもー。初めましてー……　いや、一日ぶりなのかな？
　アタシに、何かご用でしょうかー？」

苺人一号
「…………」
《いちご人間》は、身振り手振りで何かを伝えようとしている。


ガラテア→苺１
〔あのー、もしかして『発音器官』が無いが故の挙動ですかねー……？〕
苺人一号→ガラ
〔はい、仰せの通りでございます〕
ガラテア→苺１
〔おー、結構理知的な雰囲気だねー……。さっきの動きは、何と……？〕
苺人一号→ガラ
〔「一日ぶりです」、「私は、どうすればよろしいのでしょう？」、でございます〕
ガラテア
（すごいの生まれちゃったなー…………）

[335 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 08:11:18]

ガラテア→苺１
〔えーっと、ゴメンねー……？
　アタシとしても、〈アンタたち〉に対して『どうしてあげればいいのか』は
　『わからない』っていうのが正直なところでねー…………〕
苺人一号→ガラ
〔返答に窮する相談を持ちかけてしまい、誠に申し訳なく存じます。
　しかし、私と致しましても『他の方々にご迷惑をおかけしてしまう状況』は
　極力起こさぬよう努めていく所存ではございますが、同時に『自身が不利益を被る状況』も
　なるべく避けていきたいところでございまして、一体どうしたものかと
ガラテア→苺１
〔あー、ゴメン。仕事の間柄でもないし、アタシ自身『上下関係』は苦手な方なんで、
　もう少しだけ、砕けた雰囲気で対話してくれると助かるんだけど……〕
苺人一号→ガラ
〔……承知致しました。『程々の雰囲気』を意識した対話を心がけます。
　さて、それでは単刀直入に質問を行います。私の《母》は、どこでしょう？〕
ガラテア→苺１
〔……は？？〕
苺人一号→ガラ
〔早い話が、『私を〈元の姿〉に戻して頂ければ』それで良く、後は何も望みません。
　ですので、私をこの姿に変えた《彼女》に会い、
　早急に元通りにして頂くためにも、居場所の目星だけでもお教え願えれば。と〕
ガラテア→苺１
〔ほんとゴメン。アタシの友達に何するかわかんないから、無理かな〕
苺人一号→ガラ
〔何もしません。＂私は＂ただ、一刻も早く静かに、普通に過ごしたいだけでございます。
　何卒、ご友人の居場所の目星をお教えください。後は、私自身の足で探します〕


ガラテア
（うーーん……………………）

[336 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 10:58:02]

クワガタオニ
「女神様！！　ご無事でしょうか！！！」
彼は膠着状態に陥った彼女の身を案じて、大声で呼びかけた。


苺人一号→ガラ
〔暫し、お待ちください〕
そう告げた後、いちご人間は〈鬼人〉の方へと歩を進めた。

クワガタオニ
「な、何だ……！？　何か気に障ったか……？？」

突如、いちご人間の頭部と思しき赤い果実、ではなく『偽果』が膨張し始め、
膨張を終えたと同時に、いちご人間は偽果の部分を＂引き剥がした＂。

クワガタオニ
「な、何をしてるんだ、お前ッ！？」
ガラテア→苺１
〔イチゴのキミー？　『意思疎通』できるから、彼に意図を伝えてあげてねー？〕
苺人一号→クワ
〔あなたの欲しいものを差しあげますので、＂《私》に干渉しないよう＂願います〕
クワガタオニ
「は！？？　あ、ああ……　どうも…………」

そして直後、引き剥がしたばかりの頭部は『再生』し、
何事も無かったかのように＂元通り＂になった。


ガラテア
（あおいちゃーん……　すごい子たちが生まれたよー…………）

[337 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 14:09:20]

苺人一号→鈴
〔そちらにいらっしゃ……　もしかすると、あなたが私の《母》でしょうか？〕

りん→全体
〔え ﾞっ！？？〕
ガラテア→全体
〔イチゴくーーん、リンに 何 を 言ったのかなーーー？？〕
苺人一号→ガラ
〔記憶の中にある〈私を生んだ者〉と雰囲気が似ていらっしゃいますので、
　「あなたが私の《母》でしょうか？」と、お尋ねした次第です〕
ガラテア→全体
〔うん、経緯の説明ありがとー。今から『皆』に意識を向けてくれる？〕
苺人一号→全体
〔承知いたしました〕
ガラテア→全体
〔ありがとね。で、アンタの願いを叶えてあげてもいいんだけど、
　アタシの友達、今は『忙しい状況』ってやつなんだよね？
　だから時間かかると思うんだけど、その間に他の《イチゴくん》たちを
　呼び止めることに協力してほしいんだけど、頼める？〕
苺人一号→全体
〔私は構いませんが、『引き留め続けること』は難しいかと思われます。
　彼らが私と同じ気立てであれば、
　他者との関わりを＂極端に＂拒む者も存在しているはずですので、
　時間がかかればかかるほど、離散は免れないでしょう〕

ガラテア→全体
〔あー……　アンタたち、そういう系統なんだー…………〕
苺人一号→全体
〔ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳なく存じます〕

[338 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 14:10:18]

ガラテアは《あおい》を早退させてもらい、《いちご人間》たちの下へ連れてきた。

あおい

「！！！　『いちご』たちが、《いちごさん》になったーーー！！！！」

苺人一号→全体

〔おや。私の《母》は、記憶の中より＂可愛らしいお方＂でしたね〕

ガラテア→全体

〔アタシの友達にひどいことしたら、許さないからね〕

苺人一号→全体

〔野蛮な真似は致しません。極力、敵を作りたくありませんので〕

ガラテア

「えっと、あおいちゃん。《イチゴさん》たち、人になっちゃって困ってるみたいなんだ。

　彼らを元の『イチゴ』たちに戻してあげられないかなー？」

あおい

「え……？　あたまの中で、お話できるようになったのに…………？」

苺人一号→全体

〔おやおや。このような存在に、好意を抱いて頂けるとは〕

ガラテア

「きもちはすごくわかるけど、彼らの＂ねがい＂を叶えてあげて？」

あおい

「う……　うん…………」

あおいは《いちご人間》を……dice1d3=1 (1)

（※１．元に戻せた／２．元に戻せなかった／３．さらに成長させた）

[339 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 16:17:37]

あおい
「《いちごさん》たち、ごめんね…………！
　でも、お話したくなったら、いつでも戻っていいからね…………！！」
ガラテア
「あおいちゃーん、余計なことしちゃだめだよー……？」
あおいは自身の責任を感じながら、彼らを元の姿へと戻していった。



あおい
「いちごさん…………」
ガラテア
「あおいちゃんの『皆を思うやさしいきもち』は、とってもすてきだよ。
　でもね、その＂やさしさ＂の全てが、相手のためになるとは限らないんだよね。

　《イチゴさん》たちはね？　『皆に怖がられるのが、怖かった』んだと思うよ。
　『目』や『口』がないから、《イチゴさん》たちが
　何を思ってるのかは、アタシたちじゃないとわからないでしょ？
　『ごかい』を生んじゃって、体や心をきずつけ合いたくなかったんじゃないかな？

　「できることいっぱいで、幸せになってほしい」って思い、アタシはすごく大好き。
　だけど、『相手に合った、相手がほしい幸せ』だけを与えてあげた方が、
　皆のための『本当の幸せ』になるんだぞーって、アタシは『ていしょう』しまーす」


あおい
「がらてあちゃん、その……　ありがと…………」
ガラテア
「いっしょに『皆のきもち』や『皆の幸せ』、勉強していこ♪」

[340 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 16:19:25]

クワガタオニ
「俺も勉強に協力するよ、あおいちゃん！」
あおい
「あ……！！　《くわがたおに》さん！！！」
クワガタオニ
「あれから会えてなくて、ごめんね？　人助けで忙しくてさ！
　そうだ！　早退したことだし、いっしょに『人助け』をしないかい？」
あおい
「す、するっ！！　するーーっ！！！」
ガラテア→クワ
〔アンタたち、〈都〉ダイジョーブなの……？？〕
クワガタオニ→ガラ
〔さすがに〈都〉は無理ですね……。今は専ら〈郊外〉担当です〕

りん
「あの、あんま《あおい》を危険な目に……
クワガタオニ
「りんちゃんも、付き合ってくれ！　あおいちゃんを護るためにもね！」
ガラテア
「いいねー。『修行』にもなりそーじゃん」
りん
「え、あ……　と、当然どすわ……！！」

あおい
（りんお姉ちゃん、がらてあちゃん、くわがたおにさん、みんなで人助け…………
　『どきどき』と『わくわく』が、いっしょにおるー…………♪）

[341 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 16:21:12]

ガラテア

「それじゃ、あおいちゃんといっしょに、＂旅行＂けいぞーーく！！」

あおい

「けいぞーーく！！！！」

りん

「あおい、帰りたなったらいつでも言いや？　無理したらあかんよ？」

クワガタオニ

「心配しなくても、あおいちゃんとりんちゃんは《俺たち》が護ってやりますよ！！」

生命の在り方を少し学んだ『まだまだ幼き少女《あおい》』は、

自身の過ちを深く胸に刻みながら、しかし歩を止めることはしなかった。

〈大切なみんな〉と一緒に、『大切なみんな』を助け、護るために。

大きな志を抱く彼女の『人生修行』もまた、始まったばかりである。

『人生修行』六日目で得たりんとあおいの経験値、及び〈神通力〉は、

りんがdice1d1515=979 (979) 、

あおいがdice1d8815=4054 (4054) である。

（私の《母》、あおい様。あなたの想い、決して無駄にはいたしません。

　いつか＂我々＂は、あなたの温情に、必ず応えてみせます）

[342 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 22:18:24]

りんとガラテアの出会いから八日目、及び『人生修行』の七日目。

現在の〈神通力〉は、りんが〈五十七万、三百五十四〉、


あおいが〈百六十五万、八千百七十七〉である。

女神との邂逅から＂一週間＂が経過するその日の朝も、七種家は平和に迎えていた。

七種母

「昨日からほんま堪忍え、〈緑母〉はん…………」

緑の母

「いえいえ……　私ができることなど、これくらいなものですので…………」

緑の子

「七種お母さん、いってらっしゃーい！」

七種母

「今日も三女と仲良うしたってなぁ」

緑の子

「はーーい！！！」

ガラテア→鈴

〔いやー、すごく仲いいよね。彼女と三女ちゃん〕

りん→ガラ

〔えぇ。ほんま、ぎょうさんお友達ができて良かったどす〕

ガラテア→鈴

〔そう言えば、《なぎさ》ちゃんの交友関係ってどんな感じ？〕

りん→ガラ

〔あの子は、dice1d400=188 (188) （－１００）おる言うとったなぁ……〕

ガラテア→鈴

〔へー〕

[343 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 22:53:34]

ガラテア→鈴

〔＂八十八人＂！！？　きょ、教育機関にもよるだろうけど、

　確か〈一つの教育機関〉の同年齢の子たちの人数が、それくらいだっけ……？？〕

りん→ガラ

〔あの子、dice1d12=7 (7) 部？　の筆頭部員？　らしいんよ。それの縁やろねぇ〕

（※１．柔道／２．弓道／３．剣道／４．相撲

　　５．魔術／６．陸上／７．水泳／８．美術

　　９．演劇／１０．錬金／１１．科学／１２．新聞）

ガラテア

（少なくとも、なぎさちゃんの学び舎には〈〇〇部〉があるんだ…………）

りん→ガラ

〔なぎさの様子、見に行きはります？

　一応あてには巫女のお仕事もあるし、がらてあはん次第どすけど……〕

ガラテア→鈴

〔うーーん、今日はねーーー…………〕

ガラテアが決めた、本日の予定は……

──────────────────────

１〜３．＝なぎさの一日を見守る

４．＝りんたちと一緒に、久しぶりに《酔の国》に赴く

５．＝りんと一緒に、〈都〉を巡る

６．＝クワガタオニと一緒に、気ままに『人助け』をする

７．＝りんたちと一緒に、《神々》に挨拶をしにいく

[344 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 22:54:25]

>>343

dice1d7=1 (1)

[345 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/08(日) 23:37:34]

〈都〉から少しだけ離れた場所にある、広々とした敷地を持つ〈国立の学び舎〉。

七種家の次女、七種 渚（さえぐさ なぎさ）は、その学び舎に通っていた。

なぎさ

「……………………」

ガラテア

（《なぎさ》ちゃんは……　勉強dice1d5=2 (2) っぽいか）

（※１．大得意／２．得意／３．普通／４．苦手／５．壊滅的）

一日の授業を終えたなぎさは、矢継ぎ早に水泳部の活動に打ち込む。

ガラテア

（友達は、八十八人中『女の子』がdice1d88=16 (16) 人……　かな？）

なぎさ

「…………！！　っ…………！」

ガラテア

〔なぎさちゃん、dice1d3=1 (1) もうそろそろ、挨拶しとこっかな〕

（※１．順調そうじゃん。／２．スランプなのかな？／３．疲れてない……？？）

女神は、まだ幼さを残す少女の下へと舞い降りた。

[347 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 05:52:02]

ガラテア

「やあやあ〈水泳部員〉諸君、《女神ガラテア》が降臨したぞよ〜♪」

生徒たち

「うぉ……　《がらてあ様》じゃん…………！！？」

「ど、どうも、がらてあ様…………！！」

〔う……　が、がらてあ様……　がらてあ……　様ッ…………！〕

ガラテア

（おっと、申し訳ないねー……　そこの子ねー…………）

なぎさ

「今日は、あたしのとこ来てくれはったんや、がらてあはん……」

ガラテア

「なぎさちゃん、充実してそうじゃーん♪　嬉しいよ〜？」

なぎさ

「……おおきに」

ガラテア

（この子って、ちょっとクール……　いや、このくらいの子はこんなもんか）

「にしても、男の子に好かれてるのすごいねー？　『モテモテ』ってやつー？」

なぎさ

「そんなんちゃいます……」

ガラテア

「ふーーん？」

女神は自身の＂目＂を以て、〈彼ら〉の＂意識調査＂を試みる。

男子生徒たちが抱く、《なぎさ》への『惚れ具合』の平均値は……dice1d100=6 (6)

──────────────────────

〜３０＝恋愛対象外／３１〜５０＝普通

５１〜６５＝『脈あり』級

６６〜８０＝アイドル級／８１〜＝メロメロ

[348 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 06:35:26]

ガラテア

（あ、ほんとだ……。『狐』要素強すぎるのもあるのかな……？

　ちなみに、女の子たちの方はdice1d100=22 (22) ……っと）

なぎさ→ガラ

〔ちょっかいかけに来はったんどすか……？〕

ガラテア→渚

〔あー、ゴメンゴメーン〕

「いやー、姉妹の中で《なぎさ》ちゃんの交友関係だけ知らなくてさー？

　今日はなぎさちゃんや皆のことを色々教えてほしいなー、ってね？」

なぎさ

「別にええですけど……。

　みんなー、自己紹介できる人は《女神様》にしたってー？」

「お、お久し振りです！　俺、〇〇っていいます！　こう見えて……

「女神様、生活を取り戻してくれて、ありがとうございます……！！　俺は……

「……〇〇です」　「〇〇っす！」　「女神様、今度俺と……」

ガラテア

「皆、ありがとねー♪　これからも《なぎさ》ちゃんと、仲良くしてあげてねー？」

一同

「はい！！！」

ガラテア

（気になる子は男の子にdice1d4=4 (4) （－１）人、女の子にdice1d4=4 (4) （－１）人かなー）

[349 二次元好きの匿名さん 24/12/09(月) 13:08:58]

両方最大値か……

[350 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 14:24:41]

──────────────────────
ガラテア
（まー、まずはあの子だよね…………）
「どうもー、《烏賊人の少年》くーん……？
　なぎさちゃんと仲良くしてくれて、ありがとねー……」

烏賊人の少年
「はい。渚さんとは、仲良くさせていただいております」
ガラテア
「なぎさちゃんの、どこを気に入った感じー……？」
烏賊人の少年
「目を見張るほどの『身体能力』でございます。我々〈海洋人間〉に匹敵する
　『水中での機動力』を持つ彼女は、とても魅力的でございます」
ガラテア
「へー……　すごいねー、なぎさちゃん…………」
（でも確かに、彼ら並に泳げるのはすごいよね。
　純粋な身体能力からくるものなのか、後で聞いてみよっかなー）


烏賊人の少年
「他にも何か、ご用はございますでしょうか？」
ガラテア
「今はありがと。じゃあ、えっと……　これからも仲良くしてあげてね…………？」
烏賊人の少年
「はい。今後も渚さんとの友好関係を継続していく所存です」

ガラテア
（『見た目』や『短時間の言動』で偏見を持つのは、良くないんだけど…………。
　なんか〈イチゴくんたち〉っぽいというか、
　なんか〈異星人〉っぽいというか、〈異界人〉っぽいというか……　ねー…………？）

[351 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 14:25:29]

──────────────────────

熊人の少女→無意識的

〔か、勝てない…………！

　渚すごいなー……。《烏賊人》くんや《人鳥人》くんより速いなんて…………〕

ガラテア

「頑張ってるねー、キミ。神様は応援するよー」

熊人の少女

「あっ、えっ！？　ど、どうも……」

ガラテア

「なぎさちゃんの、どういうとこが好き？」

熊人の少女

「え？　えっと、dice1d5=2 (2) …………」

（※１．『憧れとして』の好きですかね／２．面倒見の良さですかね

　　３．命の恩人ですので／４．可愛くて／５．実はそこまででも）

ガラテア

（あ、そういう感じなんだ。ふーん）

「教えてくれて、ありがと。個人的に応援しちゃうつもりなんで、

　なぎさちゃん目指して、無理しすぎないくらいに頑張ってねー♪」

熊人の少女

「は、はい……！！」

（女神様が、私を応援…………？

　……よし、これからも頑張るぞ…………！）

[352 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 18:31:04]

──────────────────────
川獺【カワウソ】人の少年
「渚は俺の『好敵手』ってやつっすよ！　文武ともに、俺に匹敵するやつなんす！」
ガラテア
「えっと……。気にしてたらゴメンだけど、
　少なくとも『競泳』に関しては不調だったりしない……？」
川獺人の少年
「た……　確かに、最近の俺は＂今ひとつ＂っすね…………。
　けど！！　今の俺は《本当の俺》じゃないんで！！
　いつか調子を取り戻して、《渚》を軽々と追い越して見せますよ！！！」

ガラテア
「ほーいいねー、気に入った♪　＂最推し＂は別の子にするつもりだけど、
　《女神ガラテア》は、アンタのことも応援してるからねー♪」
川獺人の少年
「いつか、がらてあ様の＂最推し＂に成ってやるつもりなんで！！
　よろし……　げほっ！　……げふ、げほっ、げほっ……！！！」
ガラテア
「ちょっとアンタ、大丈夫……！？？」
川獺人の少年
「……大丈夫っす！　けど、今日は早めに……　早退しときますね…………」
《川獺人の少年》は『警告』を予見してか、逃げるように去っていった。


ガラテア
（『ぜんそく』とかなら、＂喉の観点だけで言えば＂水泳はそこまでらしいけど、
　普通に『別の病気』な危険性もあるし、
　将来のためにも無理はしない方がいいと思うけどなー…………。

　リンとあおいちゃん、もっと鍛えておいた方がいいのかねー…………？）

[353 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 18:32:12]

──────────────────────
葦鹿【アシカ】人の少女
「水中での競技と言えば『競泳』のみを思い浮かべる方もいらっしゃいますが、
　『水球』や『水中舞踊劇』もまた、人々を魅了する可能性に満ちたものでしょう。
　私は《渚》さんとは違い、＂水の中で行われる、ありとあらゆる競技＂を通じて、
　水中に恐れを抱く者を救う救世主を志す、《 真 の 筆頭部員》でございます。

　水を極端に恐れず、上手に付き合っていくために必要となる
　『水泳』に触れるための足掛かりと成り、一人でも多くの人々が
　〈水の世界〉を好きになる＂きっかけ＂を作れるよう、日々精進しておりますの」

ガラテア
「なぎさちゃんのこと、嫌いなの？」
葦鹿人の少女
「き、嫌いとするほどではございませんが……！
　……彼女だけが、〈筆頭部員〉として扱われている現状は、不服でございます」
ガラテア
「いつか、二人一緒に筆頭部員……
　あるいは、＂二人一組で＂同じ場所に並び立てるよう、応援するね♪」
葦鹿人の少女
「からかわないでくださいッ！！　彼女は『 好 敵 手 』ですので！！！」
ガラテア
「えへへ、ゴメンねー♪」


（やっぱり＂この世界の子たち＂って、ほんといい子ばっかりだよねー♪
　だからこそ、勧善懲悪系の快楽主義者であるアタシは護りたくなるんだけどー♪


　ほんとなんで、《烏賊人の少年》くん相手にだけ怯えてるんだろ、アタシ…………？）

[354 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 21:59:33]

──────────────────────
ガラテア
「この辺じゃ見かけない雰囲気の子だけど、別のとこ出身だったりする？」
人鳥【ペンギン】人の少年
「はい、スッゲー南の方から来ました！　《ミズ様》って人に呼ばれて！」

ガラテア
「……気候とか土地柄とか、色々違いに戸惑ったりしてない？」
人鳥人の少年
「正直心配でしたけど、スッゲー快適です！！
　ミズ様たちが支えてくれますし！　内外の『魚』、いっぱいくれますし！
　思ってたより人気者になれましたし！　《ナギサ》との勝負、楽しいですし！」

ガラテア
「えっと、『寒暖差』とか大丈夫……？」
人鳥人の少年
「最初はフラフラしましたけど、ミズ様に励まされてからは、スッゲー大丈夫です！
　ミズ様のおかげで、ミンナともすぐに馴染めましたし！　ミズ様、スッゲーです！」

ガラテア
「……色々教えてくれて、ありがとー！
　これからもなぎさちゃんと、仲良くしてあげてねー♪」
人鳥人の少年
「こちらこそ、今後ともよろしくです！」



ガラテア
（＂励まされてから＂、ねー……？　もしかしたらアイツ、
　＂《あおい》ちゃんの力と似た力＂を持ってるのかもしれないなー…………）

[355 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/09(月) 22:01:28]

──────────────────────

ガラテア→亀少女

〔ダイジョーブ、キミのことを少し知りたいだけだよー♪

　お顔見せてー♪　アタシとお話しよー♪〕

亀人の少女→ガラ

〔さ、先ほどお伝えした通りです……。私は、ただのマネージャーでしかありません……〕

ガラテア→亀少女

〔んー、キミにも色々あるのかなー……？　ゴメンねー…………。

　じゃ、キミのことじゃなくて、『なぎさちゃんへの印象』なら教えてくれるー？〕

亀人の少女→ガラ

〔か、彼女はすごい人です。狐人でありながら泳ぎを得意としていて、

　それでいて勉強も得意で、面倒見も良くて、皆に慕われて…………。

　私みたいな『ぐず』では、彼女のようにはなれなくて……　だから、逃げて…………〕

ガラテア→亀少女

〔……友達って言ってたけど、実際は違ってたり？〕

亀人の少女→ガラ

〔dice1d5=3 (3) …………〕

（※１．いいえ、大切な友達です／２．友達というより、昔からの憧れの人です

　　３．正直、苦手です／４．片思い中です／５．因縁がありまして）

ガラテア→亀少女

〔……今度ゆっくり、お話しない？　できれば、＂三人＂でさ〕

亀人の少女→ガラ

〔dice1d4=3 (3) 〕

（※１〜２．わかりました／３．二人でなら／４．迷惑です）

（……………………）

[357 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 08:08:46]

ガラテア

（思ってた以上に、色んな子がいたなー。

　《クマちゃん》や《アシカちゃん》とか、とってもかわいかったしー♪

　《カワウソくん》や《ペンギンくん》もいい子…………

　えっと、《イカくん》もいい子そう……　だったよね…………？

　イカくん、普通に偏見の可能性はあるから、早く払拭しないとなー…………。

　…………《カメちゃん》、もうちょっとお付き合いしたいなー。

　干渉しすぎは困らせちゃうんだろうけど、

　《なぎさ》ちゃんが中心にいる部だから、あのままだとつらいだろうし……。

　少しずつ、彼女にも自信を付けさせてあげたいよねー…………）

──────────────────────

ガラテア

「ゴメーン、時間かかっちゃったー」

なぎさ

「ええですよ。〈空間転移〉？　使うたら、一瞬でしょうし」

ガラテア

「えーー！？？　帰り道で一緒にお話しようよー！！」

なぎさ

「〈うち〉でもできますやろ……？

　あおいや三女たちも、待ってますえ」

ガラテア

「うーーーん…………　dice1d2=1 (1) （※１．すぐ帰る／２．ゆっくり帰る）」

[358 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 12:56:33]

ガラテアとなぎさは、〈空間転移〉で七種宅へと舞い戻った。

緑の子

「あーー！！　女神様となぎささんだーーー！！！」

あおい

「がらてあちゃん、なぎさお姉ちゃん、おかえりーー！！！」

ガラテア

「ただいまー！！　あおいちゃんと緑の子ちゃんは、今日どうだったー？」

二人

「えっと、今日はーー…………！！！」

ガラテアはしばらくの間 二人を中心とした話し相手となり、

彼女らを寝かしつけた後、りんを交えて《なぎさ》の話を始めた。

りん

「へぇ……！　学び舎でのなぎさ、そんな感じなんやねぇ……！

　なぎさ、学び舎でのことそこまで話してくれんくて……」

なぎさ

「話してるやん、水泳のこととか……」

りん

「お友達のこととか、もっと聞かしてえや……！」

なぎさ

「友達言うても、大体は『取り巻き』と変わらん間柄やし。

　親友言えるんは、dice1d6=1 (1) （－１）人くらいやし……」

[359 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 13:11:10]

りん

「おらんの！？？」

なぎさ

「うん……。だからいつも、部活終わったらすぐ帰るんやし」

ガラテア

（あれー……？？　実はなぎさちゃんの方にも何かしら問題ある……？？）

りん

「仲良くなりたい子とかも、おらん……？」

なぎさ

「dice1d8=1 (1) …………」

──────────────────────

１．りん姉たちだけでええし／２．＂もう＂友達作りたくないんや

３．……《烏賊人》とかかな／４．《熊人》なら／５．《川獺人》は気になるかな

６．実は《葦鹿》が／７．そや、《人鳥人》／８．《亀人》にお礼はしたいかな）

[360 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 14:45:23]

ガラテア

（……《カメちゃん》、＂この子の本質＂を見抜いたりしてたのかな…………？）

りん

「仲のええ友達作らんと、将来困るよ…………？」

なぎさ

「その時々の関係性任せでええし……。りん姉たちが一番やし…………」

りん

「もう…………」

ガラテア

「そうだ、話変わるんだけどさー。なぎさちゃん、泳ぐのすごい速いじゃん？

　あれって、全部『身体能力』由来なの？　それとも何か＂力＂使ってる？」

なぎさ

「dice1d2=2 (2) （１．全て／２．少しだけ） 『dice1d4=4 (4) （※）』」

（※１．自力／２．呪力／３．魔力／４．霊力）

ガラテア

「あー、そうなんだー……！　へーー…………！」

なぎさ

「……女神様、あたしにも〈神通力〉授けてくれへん…………？」

ガラテア

「え！？？　いや、〈神通力〉はほんと、そう易々と持っていいもんじゃ……

なぎさ

「お願いや……！！！　あたし、もう《りん姉》に迷惑かけたない……！！

　あおいも頑張ってんのに、＂次女＂のあたしが見てるだけなんて、嫌やし……！！！」

ガラテア

「dice1d3=3 (3) （１．さすがに駄目／２．……考えさせて／３．……いいよ）」

[361 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 15:52:22]

りん
「がらてあはん、何を考えてはるんどすか…………！！？」
ガラテア
「なぎさちゃん、ものすごく『姉妹想い』みたいじゃん？　他と深い関係を作らないほどに。
　加えて、もしアンタやあおいちゃんに危険が迫ったら、
　『霊力』を駆使しながら立ち向かいそうじゃん？　勝ち目の無い〈怪物〉相手でもさ。
　最終的にはアタシが護ればいいだけだし、自衛手段として持っててもいいかなー。って」
りん
「けど、あんま持ってたらあかんのどっしゃろ……！？」
ガラテア
「まー、その力持ってると＂色々＂巻き込まれやすくなるから、ほんとは駄目なんだけど、
　なぎさちゃんは姉妹のことなら、むしろ積極的に巻き込まれにいく気質の子だろうし、
　＂鍛えなければ＂〈人智を超える者たち〉から狙われることも無いだろうしさ？
　『経験の変換』を行わない前提でなら、持ってて損は無いと思うよ」

なぎさ
「え！？　いや、あたしも修行……！！！
ガラテア
「なぎさちゃんもだよ。七種家長女の＂リンの想い＂をわかってあげて。
　リンは〈家族〉皆を、なるべく危険な目に合わせたくないんだよ」
なぎさ
「あたしだって……
ガラテア
「『経験の変換』はしない。それが条件。譲らないよ」


なぎさ
「……………………」

[362 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 15:53:55]

《女神ガラテア》はまた一人、〈神に通ずる力〉を持つ者を誕生させる。

ガラテア

「それじゃ、集中しててー？　じゃないと、＂思った力＂は手に入らないよー？」

なぎさ

「…………」

りん

「なぎさ、心配してくれて『おおきに』やで。

　例え〈神通力〉が小さい力やったとしても、気にせんでええよ。

　あてと《がらてあ》はんが、なぎさたちを絶対に護ったるさかい、

　なぎさは＂護れる人々を護る＂ことに集中しいや」

なぎさ→無意識的

〔護りたいのは……　《りん姉》なんや…………〕

ガラテア

（…………）

現在、なぎさが内に秘める〈神通力〉は〈dice1d73=7 (7) 〉である。

女神ガラテアの助力により、

彼女の〈神通力〉はそのdice1d9999=8811 (8811) 倍に増幅する

はずだったが、彼女を纏う〈特異な霊力〉により阻害され、

本来得るはずの〈神通力〉の九割ほどが、《虚空》へと消え去った。

[363 二次元好きの匿名さん 24/12/10(火) 17:40:14]

元がアレだけどかなり増えたな

[364 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 18:34:16]

ガラテア
（あれ……？？　〈六万、一千六百七十七パワー〉くらいになったはずだけど、
　すぐに消えちゃったな…………。今は『十分の一』になっちゃった……）

りん
「がらてあはん、なぎさの〈神通力〉は……？」
ガラテア
「〈六千百六十七パワー〉だねー」
なぎさ
「それって、多いんですか…………？」
ガラテア
「まず、なぎさちゃんの〈神通力の性質〉がわからないとねー。
　あおいちゃんみたいに、幅広く色々できる系統だと正直今ひとつだけど、
　＂何かに特化してるなら＂そんなに悪くないんじゃないかな？」

なぎさ
「そのくらい……　なんですね…………」
ガラテア
「リンにとっては朗報だよ。このくらいなら、自衛手段としてはすごく実用的だろうし、
　それでいて〈人智を超える者たち〉にはまず狙われないから、安心していいよ」
りん
「え、えぇ。それやったら安心……　どすけど…………」

なぎさ
「……………………」


りん
（なぎさを心配させへんためにも、早うつよならなあかんな…………）

[365 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 18:35:28]

ガラテア

「それじゃー、あおいちゃんは眠っちゃったから明日に持ち越しだけど、

　とりあえず、アンタだけでも変換しとこっか。今日は何やってたの？」

りん

「お社の掃除と、参拝者の方々の応対……　まぁ、『巫女のお仕事』どすねぇ…………」

ガラテア

「うーーん、最大〈八百パワー〉かなー…………。最近、伸び悩んでるねー…………」

りん

「みんなを心配させへんためにも、もっと力付けなあかんのに…………！」

ガラテア

「何か大きな出来事でも起こらないかなーー…………

　いや、むしろ起こってないか探しに行くべきなのかもねー……」

七種家の長女と次女は、それぞれ『小さくはない悩み』を抱えることとなってしまった。

彼女らの『うっせき』が晴らされる日は訪れるのか。運命は、まだ誰にもわからない。

『人生修行』七日目で得たりんの〈神通力〉はdice1d800=88 (88) である。

一方その頃、〈西の海〉の海上に浮かぶ『客船』では…………

[366 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 20:27:22]

教え子
「エリン様！　明日には《島国》に着くそうです！」
エリン
「随分と、遅れてしまいましたね……。
　民の皆様、どうかご無事であってほしいですが…………」

《緑の国》を中心に発展を遂げた学問である『神魔学』。その神魔学を研究、
いや＂追究＂する神魔学者である《エリン》と《教え子》は、現在船旅の途にいる。


教え子
「すみません……。私が『動力炉の点検』を、軽く済ませてしまったばかりに…………」
エリン
「あなた1人の責任ではありません。むしろ、あなたに入念な点検を求めず、
　《鬼神》に捉われ続けて『全て』を任せっきりにしていた私にこそ、重い責任があります」
教え子
「あー、言われてみればそう…………　あ！！　も、申し訳ございません！！！」
エリン
「あなたの素直さは美徳でもありますが、それに伴う正直さが
　私以外に向かう危険性を考えると、手放しでは褒められませんね…………」
教え子
「申し訳ございません…………」

エリン
「教え子さん。明日に備えて、今日はゆっくり休みましょう」
教え子
「は、はい…………！」

彼女らは＂目的＂を果たすため、明日に向けて英気を養うことにした。
《エリン》を母のように慕う教え子は、寝床を共にできて幸せそうであった。

[367 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 20:29:20]

それから約八時間後、海上にて＂事件＂は起こる。


船乗りその１
「おい、何なんだ《あれ》は！！！」
船乗りその２
「わかりません！！！　突然、姿を表しまして……！！！」
船乗りその３
「お前、一刻も早く進路を変えるよう、操舵手と航海士に伝えてくれ！！！
　そして他の連中は、いざという時のために脱出の手配を……！！！」


教え子
「うるさいですねー……！！　エリン様は、騒々しいのが苦手で……
船乗りその４
「君！！　お連れの方と一緒に、脱出の準備をしてくれ！！
　とんでもなくやばいやつが、こっちに来てるんだ！！！」

教え子
「へ…………？」


直後、船の前方から〈大きな音〉が響き渡る。
乗客乗員は類を見ない事態に混乱し、船内のそこかしこで悲鳴が上がった。



〈西の海〉を行く、多くの人々を乗せた『客船』に、危機が訪れる。

[368 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/10(火) 21:36:20]

りんとガラテアの出会いから九日目、及び『人生修行』の八日目。

現在の〈神通力〉は、りんが〈五十七万、四百四十二〉、

あおいが〈百六十五万、八千百七十七〉である。

七種家と居候の人々は食卓を囲みながら、

牛人神主から賜った『受像機』に映し出される光景、『放送番組』を見ていた。

ガラテア

（思い返せば、〈都〉にテレビ局っぽい建物もあったんだよねー…………。

　空想的で牧歌的な世界だったはずなのに、《転生者》共ときたら…………）

受像機

「速報です……！　〈西の海〉にて巨大なdice1d8=1 (1) が現れ、周辺の島々や

　海上を移動していた『客船』等を襲撃しているとの情報が入りました……！

　我らが《紅の島国》に及ぼされる影響は＂現在調査中＂とのことですが、

　海岸沿いに住む方々は、念のため〈都〉の災害時用収容施設内への避難を…………

（※１．イカ／２．タコ／３．龍／４．怪獣

　　５．人影／６．人魚／７．戦艦／８．浮遊する円盤）

りん

「た、た、大変や！！！　《あおい》が、おらんっ…………！！！！」

七種母

「あおいっ！！！　どこ行ったんや……！！！！」

ガラテア

（「大きな出来事でも起こらないかな」とは、言ったけどさあ…………！！！！）

[369 二次元好きの匿名さん 24/12/11(水) 01:09:31]

おつです
これが本当の侵略！イカ娘か？

[370 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 08:10:49]

緑の子
「あおいちゃんっ！！！！」
緑の子はあおいの行き先を察知し、《鎮守の森》から飛び出していった。

緑の母
「緑っ！！！　あの子もまた……！！！」
七種父
「がらてあ様、鈴と一緒に、葵と緑の子ちゃんをよろしくお願いします」
ガラテア
「当然です……！　リン、行くよ！！」
りん
「あ、え、は、はい！！」

なぎさ
「待って！！！　あたしも連れて……
ガラテア
「今回は、ゴメン！！　また別の機会で！！」
ガラテアはりんを連れて、〈空間転移〉で現地へと出向いて行った。


七種母
「あんた、何ついて行こうとしてんの！！！　遊びやないんよ！！！」

なぎさ
「 遊 び や な い っ っ ！！！！！」




七種宅は、沈痛な雰囲気に包まれた。

[371 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 08:11:45]

巨大なイカの被害を受ける《陰花島》にやってきた、女神ガラテアとりん。
彼女らはそこで、＂皆＂を護るために行動する者たちの姿を目撃する。


あおい
「《いかさん》、だいじょうぶ！？？　何があったの！？？」
クワガタオニ
「あおいちゃん！！！　やさしいのは良いけど、皆をゆうせんしないと……！！」
緑の子
「ええ、え、えっと……！！　とりあえず、どうしよ…………？？？」



りん
（くわがたおにはんも、飛べるんどすなぁ…………）
ガラテア
「リン！！　何かあったら、強く念じて！！　すぐに行くから！！！」
りん
「お、お気張りやす……！！」
女神は空を飛べない巫女を島に置き、客船の下へと向かう。




ガラテア
（まっず、沈没し始めてんじゃん…………！！）

『客船』は既に甚大な被害を受けており、
十数名ほどの乗客乗員が、海に投げ出されてしまっている状況だった。

[372 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 08:12:57]

ガラテア
（何より『生命』優先……　あれ？？）
船から離されてしまった人々は、どうやら命の危機を迎えてはいない様子だ。
彼らを〈不思議な膜〉が覆い、外界の衝撃から護ってくれているらしい。

ガラテア
（優しい……　と言うか、色々すごいよねー《あの子》…………）
幼き少女の＂想いの力＂に呆然としかける中、女神は海に漂う者の内に
一人だけ、彼女の力が及んでいない者がいることに気づいた。

想いの力が及ばないその《彼女》は、〈見慣れないローブ〉を身に纏い、
〈頭を槍で貫かれた、王冠を被る『頭蓋骨』のペンダント〉を首にかけている。
女神ガラテアが彼女を救おうとしたところ、近づいた直後に＂激痛が走った＂。

ガラテア
「いっっった！！！！　何あの子、近づけないじゃん……！！！
　でも、放置するわけにもいかないし……　許してね…………！！！」

「“Rebellious Whale”!!」


女神の持つ〈水を操る力〉により彼女は空高くへと打ち上げられ、
《陰花島》で見守るりんの下へと、勢いよく飛ばされていった。


ガラテア
（彼女はきっと、リンが救ってくれると信じよー、そーしよー……。

　さて、残りは未だ船にいる皆だね…………！！）
女神は人々を救うため、脇目も振らずに救助活動に勤しむ。

[373 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 11:19:51]

教え子
「エエ、エ、エ、エリン様が飛んでいったあああああ！！？？」
教え子は沈みゆく船の上で、一部始終を目撃していた。

ガラテア
「キミー！！　危ないから、早く逃げよー？？」
教え子
「あ、あなた！！　エリン様に何を……！！
ガラテア
「あ、ゴメン……！！　キミの知り合いだったんだねー……？？
　＂導いて＂あげるから、早く逃げちゃってー！！」
教え子
「え、え、
女神は彼女を、〈空間転移〉で《陰花島》へと送り飛ばす。
その後、他の人々を〈都〉近くの港町へと導き、全ての『生命』の救出を果たした。



ガラテア
（さーて、お次は……）
女神は、事態の対応にあたる者たちのもとへと向かう。


クワガタオニ
「女神様！　人々の救出、感謝いたします！」
ガラテア
「巨大イカの対処、ご苦労様！　あおいちゃんたち、大丈夫？」

クワガタオニ
「えっと、無事ではありますが…………」

[374 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 15:47:04]

あおい

「がらてあちゃんっ、助けてっっ！！！！

　くわがたおにさんたち、《いかさん》きずつけようとするっっ！！！！」

心優しき女の子《あおい》は、周辺を荒らし回る巨大イカを

クワガタオニや国防隊員たちの攻勢から護ってあげていた。

防衛担当たち

「何なんだ、あの子は！！！　利敵行為ばかりをして！！！」

「もう無理ですって！！　《天上者》様に頼りましょう！！！」

「あの子がいる以上、《ミズ》様は期待できない！！　《ドク》様は音信不通！！

　《クロ》様は〈本土〉に影響が無い限り、間違いなく動いてくださらない！！

　お前は、あの《ブレス》様に頼めと言うつもりかっ！！？？」

ガラテア

（彼らも大変そうだね…………）

クワガタオニ

「あおいちゃーん！！！　これ以上は、君に対する皆の『いんしょう』がー……！！！」

あおい

「 だ め え え え え え え え ！！！！！」

《あおい》は＂全てを護る＂ため、〈想いの力〉を行使する。

ガラテア

「……えっと、《緑の子》ちゃん？　キミは、どういう＂力＂を授かったの……？

　この状況を打開できる能力だったりしないかな…………？？」

緑の子

「そのー…………　dice1d7=1 (1) です…………」

（※１．『風』を操る力／２．『植物』を操る力／３．『毒』を操る力

　　４．『光合成』ができるん／５．『かめれおん』みたいになれるん

　　６．『蛙』みたいになれるん／７．『かっぱ』みたいになれるん）

[376 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 18:14:16]

ガラテア
「へー、良いねー……　けど、この状況じゃ今ひとつかなー…………」
緑の子
「どうしましょう、女神様……！！　あおいちゃん、護らなきゃですし……
　でも、周辺の人たちや、国防隊の人たちも護らなきゃですし…………！！！」
ガラテア
「とりあえず、説得してみるね…………。おーーい、あおいちゃーん！！！」

あおい
「がらてあちゃん、《いかさん》助けて！！！」
ガラテア
「あおいちゃーん、皆を護りたいって＂やさしい気持ち＂は大切だけどー！！
　《イカさん》をそのままにしてたら、もっと大変なことになっちゃうよー！！」
　
あおい
「え…………」

ガラテア
「時にはねー？　皆をまもるために、だれかを『ぎせい』……　見捨てなきゃなんだー！
　《イカさん》を許しちゃったら、いつだれがきずついちゃうか、わかんないよー！！
　一人でも多くの＂皆＂をまもるために、大切な『せんたく』なんだよー！！
　あおいちゃん、人々をまもる《めがみさま》になってあげようよーー！！！」


あおい
「がらてあちゃん……　なんで…………？？
　なんで、《いかさん》だけいじめるの…………？？」

ガラテア
「い、いじめじゃないんだよー！！　これは……

[377 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 18:15:29]

あおい
「なんで《いかさん》だけ、よりそわないのっっ！！！！！
　いかさん、すっごく悲しんでるよっ！！！　「大切な人、きずついた」って！！！
　なんで《いかさん》だけ、まもってくれないのっっ！！！！
　がらてあちゃんの＂わからずや＂っ！！！！　＂大きらい＂っっ！！！！！」

《あおい》は拒絶の意を示し、周囲から＂力＂を奪い始める。

防衛担当たち
「な、何だ……　この、倦怠感は…………」
「俺たちが……　国を、護らないと…………」
「《がらてあ様》……　助けて……　ください…………」

緑の子
「ね……　眠たい…………」
クワガタオニ
「まずい……　《つるぎ》の力を持つ俺たちでも……　少し眠くなってきました…………！
　女神様……　早く、あの子を止めてください…………！！


　女神様…………？？」


ガラテア
（「大切な人、傷ついた」……？？　何であおいちゃん、そんなことを…………
　あおいちゃん、もしかして自力で、『思考』を知れるようになったの…………？？！
　じゃあ、つまり…………）

ガラテアは、世界の動きを止めた。
ただ一つ、『《巨大イカ》の脳の活動』だけを除いた、全てを。

[378 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 18:16:32]

巨大イカ→無意識的
〔ナゼ！！　ナゼ、カラダ、ウゴカナイ！！！
　ハンニン、サガセナイ！！！　ツグナイ、サセラレナイ！！！！〕

ガラテア→大イカ
〔あのー……　対話は、可能でしょうかー……？？〕
巨大イカ→ガラ
〔ナンダ、オマエ！！！　オマエ、ハンニン、ナノカ！！！！〕
ガラテア→大イカ
〔違います！！　あの、狐の彼女から、大切な人が傷ついて
　《イカさん》が悲しんでいる……　と…………〕
巨大イカ→ガラ
〔オマエ、ナニモノ、ナンダ！！！　ナゼ、ジャマ、スルンダ！！！！〕
ガラテア
（駄目だー……　冷静さを、完全に失っちゃってる…………。
　あおいちゃんには悪いけど、もう…………）
巨大イカ→ガラ
〔ユルサナイ……！！！　《ムスコ》、キズツケタ！！！！　テアシ、ナクナッタ！！！！
　《シマグニ》、ツブス！！！　ハンニン、イノチ、ツグナワセル！！！！〕

ガラテア→大イカ
（…………え、息子……？？！）
〔あのー！！　息子さんって……！！

巨大イカ→ガラ
〔ジャマ、スルナ！！！！　ジャマモノ、ユルサナイ！！！！〕

ガラテア
（……＂彼＂の好意が本物なら、もしかしたら…………）

[379 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/11(水) 20:25:01]

《鎮守の森》の〈七種宅〉。残された人々は
女神たちの帰還を信じ、それぞれの日常を送ろうとしていた。


七種母
「あんた、いつまでくよくよしてんの……！！
　遊び扱いしたんは謝るから、早う〈学び舎〉行く準備しぃ……！！」
なぎさ
「おかあはんは、わるないよ……。役立たずなんは、事実やし…………。
　学び舎、今日は無理やわ……　そんな気分なれへん…………」
七種母
「あんたっ……！！！　っ…………」
七種母は娘の傷心を感じ取り、かけるべき言葉を見失う。


そんな中、未だ沈痛な雰囲気に包まれる七種宅に《女神》が舞い戻った。


ガラテア
「なぎさちゃんッ！！！　さっきは、ゴメン！！！
　今回の事件、誰よりも《キミ》が必要な存在だったかもなんだ！！！」

なぎさ
「どうされはったんや、女神様……。役立たずの、あたしなんかに……」

ガラテア
「なぎさちゃん！！　キミに、会ってほしい《お方》がいるんだよ！！！」

なぎさ
「《お方》…………？」

[381 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 08:18:29]

事態解決の鍵となる《少女》を背負いながら、
女神ガラテアはとんぼ返りで〈西の海〉の海上へと再臨した。


ガラテア→大イカ
〔《イカさん》！！　息子さんのご友人が、息子さんに会いたいそうです！！！〕

巨大イカ→ガラ
〔ガアアアアア……ア……ア…………　ゴユウ……　ジン…………？？〕
なぎさ→大イカ
〔お、お初にお目にかかります……！！　七種渚と申します……！〕

巨大イカ→渚
〔ナギサ……　ナギサ…………　さん…………？？
　《渚さん》……？？　あなたが……　息子のご友人の…………？〕
なぎさ→大イカ
〔いつも、学び舎で『切磋琢磨』しております……！！
　その……　《烏賊人》の身に何か…………？〕
巨大イカ→渚
〔……『泳ぎ』を、見せてください…………〕
なぎさ→大イカ
〔は、はい！！〕
なぎさは、得意とする霊力交じりの泳ぎを見せつける。


巨大イカ→渚
〔…………息子が……　嬉しそうに話している……
　《渚さん》の姿、そのものです…………　うぅ…………〕
＂自身の無力さ＂に打ち拉がれる《少女》が積み重ねた
日々の努力と交流により、事態は終息へと向かっていく。

[382 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 08:19:14]

なぎさ→大イカ
〔その……！！　烏賊人のお見舞いを……！〕
巨大イカ→渚
〔……暫し、お待ちください…………〕
巨大イカは数秒ほど深海へと潜り、すぐさま戻ってきた。

巨大イカ→全体
〔息子よ、《渚さん》が来てくれたぞ……〕
巨大イカの触腕に包まれながら、『満身創痍』の少年が姿を見せる。
《烏賊人の少年》は、全ての手足が無くなっている状態であった。

なぎさ
「《烏賊人》っ！！！！」
あおい
「《いかさん》！！！！」
あおいは〈想いの力〉を集中させ、失われた二つの『腕』を復活させた。

烏賊人の少年
「……腕が…………　戻った…………？？」
巨大イカ→烏賊少年
〔も、戻っタ……！！？　モドッタ！！！！　ムスコ、ヨカッタ！！！！！〕
あおい
「う ﾞぅ ﾞ…………」
あおいは自身の＂非力さ＂を感じ、再び悲痛な面持ちを見せる。


ガラテア
（あれ……？？　でも、『イカ』って…………）
女神ガラテアは、まだまだ幼い《めがみさま》に＂ある解決案＂を提言する。

[383 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 08:20:29]

ガラテア→全体
〔《イカお父さん》！　烏賊人の少年くんって、『再生能力』は？〕
巨大イカ→全体
〔ム、息子は……　人の性質が強いらしく、私ほどでは……〕
ガラテア→全体
〔＂少しはある＂と捉えますね？
　あおいちゃん、小さい方の《イカさん》の『再生する力』を向上させてあげて！」
あおい→ガラ
〔え……！？〕
ガラテア→全体
〔＂元にもどる力＂ってかんじ！　彼の力をさがしてみて！〕

あおいは《烏賊人の少年》に宿る＂力＂を全身全霊で探し、
奥底に眠っている『再生能力』を見つけ出す。
そしてその＂力＂に想いを込め、彼の『再生能力』を大きく成長させた。


巨大イカ→全体
〔……お…………　おお……！？　おおオ…………！！？
　モドル！！！　『アシ』、スコシズツ、モドル！！！！〕
烏賊人の少年
「あ、足が……　再生していく…………！？」
あおい
「や……　やったああああああああ！！！！！」
なぎさ
「ほんま……　ほんま、良かった…………！！！」

ガラテア
（すごいね、＂二人とも＂……♪　彼らの身も心も、救ってみせちゃってさ）
《女神ガラテア》は、人々を祝福する。

[384 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 11:41:47]

イカの親子が救われたことにより《あおい》の警戒心が解かれ、
＂没収されていた力＂が、持ち主たちの元へと帰っていった。


防衛担当たち
「な、なんだ……　急に疲れが…………？」
「何でもいい……！！　今が好機……
クワガタオニ
「おおっと、邪魔するんじゃないぜ？」
クワガタオニは兵器たちを＂程々に＂壊し、使い物にならなくした。

防衛担当
「お、お前……！！！
クワガタオニ
「修理担当者には「申し訳なかった」って、伝えておいてくれよ！」



元隊員
（情けないな、《俺たち》。力任せに解決しようとして、
　それで奪ってしまったかもしれない命を、彼女らに救われてな…………）
つるぎ
（あおいちゃん……。あの子、本当に《女神様》になれるかもしれませんね…………）


緑の子
「……う…………　んぅ…………」
クワガタオニ
（それでも、俺たちは＂俺たちにできること＂をしないとな…………）
《クワガタオニ》は一足先に、緑の子を家族の下へ送り届けにいった。

[385 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 11:43:55]

〈西の海〉に浮かぶ《陰花島》は、決して小さくはない被害を受けていた。
あおいはりんに協力してもらいながら、＂壊された物＂や人々の心の救済に奔走している。
そして、息子の身に希望を見いだした《巨大イカ》は我に返り、自身の行いを『懺悔』する。


巨大イカ→全体
〔この度は……　多くの人々の身を傷つけ、
　平穏な暮らしをおびやかしてしまい……　大変申し訳なく存じます…………〕
ガラテア
「まー、幸いにして誰かが命を落としたわけじゃないっぽいし、
　『エルフ』の彼女以外はほんとに無事っぽいから、背負いすぎなくても……
船乗りその１
「＂無事＂なんかじゃねえですよッッ！！！！」
客船の乗組員の一人である彼は、悲嘆の思いを帯びる怒号を浴びせた。

船乗りその１
「そこの《化け物》のせいで、＂船長や俺たちの思い出が詰まった船＂が、
　海の藻屑と化して消えちまったんですからねッッ！！！！」
船長
「〇〇、皆が無事だったんだ。それでいいじゃないか。
　そちらの《イカ》にも事情があったようだ。船はまた、新たなものを……
船乗りその１
「＂親父さんから受け継いだ船＂のこと、船長はどうでもいいってんですかッッ！！！！」
船長
「そんなことはないが…………」

巨大イカ→全体
〔私は……　怒りに任せて、なんてことを…………〕
ガラテア
（…………）

[386 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 16:19:49]

船乗りその１
「あんた、《女神様》なんですよねぇ……！？　女神様なら、そこの怪物に
　『天罰』を与えるべきですよねぇ……！？　お願いしますよ、女神様ぁ……！！！」
船長
「〇〇、いい加減に……！！！
船乗りその１
「俺たちだけの問題じゃねえでしょうがッッ！！！！
　例え事情があろうとも、ひとたび癇癪を起こせば周囲を恐怖に陥れるような存在を、
　このまま野放しにしていいはずがねえんですよッッ！！！！」
船長
「し、しかし…………！！！」

巨大イカ→ガラ
〔女神様、私に『裁き』をお与えください…………〕
ガラテア→大イカ
〔《巨大イカ》さん……。ですが、せっかく息子さんが……
巨大イカ→ガラ
〔《船乗りの彼》の言う通りです……。私が私を抑えられない以上、
　いつかまた同じことを繰り返し、今度こそ命を奪ってしまうかもしれません……。
　人々を護るため、〈私の命〉を以て、起こり得る災厄を防ぎましょう…………〕
烏賊人の少年→大イカ
〔父上、いかがなさいましたか？〕
巨大イカ→烏賊少年
〔《息子》。私は、報いを受けなければならない。母さんも眠りについている以上、
　お前を一人にしてしまうことになるのは、とても心苦しいがな…………〕
烏賊人の少年→大イカ
〔そう、ですか…………。私をここまで育ててくださり、ありがとうございました…………〕

ガラテア
（〈異世界送り〉……　の方法でも、別れは別れなんだよね…………）

[387 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 16:21:34]

巨大イカ→ガラ

〔女神様、私の意思を〈彼ら〉にもお伝えください…………〕

ガラテア

「……えー、乗組員の皆様。不肖女神ガラテアが、《巨大イカ》さんの意思をお伝えします。

　「船乗りの方が仰る通り、私が生き続ける限り人々を不安にさせてしまいます。

　　罪の償いとして、女神様の裁きを確と受ける所存ですが、

　　どうか《烏賊人の少年》だけは見逃してくださいますよう、お願い申し上げます。

　　彼は私と違い、人々を恐怖に陥れるほどの力は備わっておりません。

　　そして、彼自身はただ純然たる被害者であり、誰一人として傷つけておりません。

　　恐怖の元凶である私は罰を受けますが、決して彼には手を及ぼさないでください。

　　何卒、よろしくお願い申し上げます」……　とのことです」

なぎさ

「そ、そんな……！！！」

船乗りその１

「…………船長がよろしければ、《息子》は見逃しましょう」

船長

「私は……　何もそこまで…………！！」

巨大イカ→ガラ

〔《女神様》……　《息子》の今後を、よろしくお頼み申し上げます…………〕

ガラテア

（…………）

《女神ガラテア》は、《巨大イカ》に裁きを……dice1d2

「待って！！！！」

[388 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 18:58:52]

女神による＂刑の執行＂を見届ける心構えである人々の眼前に、
博愛の精神を心に宿す《温情の女神》……　候補の《あおい》が現れる。


あおい
「《いかさん》たち、いじめないで！！！！　もう、だいじょうぶだよ！！！！」

船乗りその１
「お嬢ちゃん……。これはいじめではなくて、＂受けるべき『罰』＂でね……
あおい
「みんなの『船』、＂治った＂よ！！！！」
船乗りその１
「はぁ？？　…………え？？」

〈西の海〉に、一隻の『客船』が浮かんでいた。
客船は事件発生前の、手入れが行き届いた立派な姿のままである。
次代の神様候補である《あおい》の〈想いの力〉により、船は『再生』を果たしたのだ。

船乗りたち
「な、何が起こってるんだ……？？　確かに沈没したはず…………」
「これは夢……　悪い夢……？　いや、＂いい夢＂……　だよな…………？？」
「奇跡……　いや、あの〈狐の子〉の…………　『お慈悲』…………！？？」


りん
「がらてあはん……。あおいくらいの〈神通力〉があったら、
　あても命を蘇らせることができるんどっしゃろか…………？？」
ガラテア
「いやー、たぶん『非生物』だからできたことだと思うけど…………
　ほんとすごいよねー、《あおい》ちゃんの＂想い＂はさ…………」

[389 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/12(木) 19:00:07]

船乗りその１
「ま、待て！！！　よく考えりゃ、根本的には解決してねえじゃねえか！！！
　そこの《怪物》がいる限り、周辺の海の平穏は…………
あおい
「待ってて！！！」
あおいは《巨大イカ》に、＂切なる祈り＂を捧げる。


突如、《巨大イカ》の体躯が急速に縮んでいき、平凡な《イカ》の姿へと変貌した。


船乗りその１
「……………………え？？？」
あおい
「もう、だいじょうぶ！！！」
烏賊人の少年
「父上……！？　こんなに小さく…………」
父イカ→全体
〔た、確かにこの大きさなら、人々を傷つけません……　ね…………〕
船長
「な、何はともあれ、これで憂いも無くなったな？　〇〇？」
船乗りその１
「は……　はい。これ以上は、必要ねえでしょうね…………」


なぎさ
「よ、良かった…………。あおい、お手柄やわ…………！！！」
りん
「ほんま、＂偉い＂子やなぁ……。ねぇ、がら……　てあはん…………？」
彼女の＂力＂を目の当たりにした《女神ガラテア》は感心を越え、ただ呆然としている。

[390 二次元好きの匿名さん 24/12/13(金) 01:57:58]

お疲れ様です
イカした解決方法だった

[391 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/13(金) 08:03:32]

《陰花島》の建造物を含め、《巨大イカ》の体躯を除く全てが元通り…………
ではなく、『エルフ』の女性だけが、苦悶の表情を浮かべながら横たわっていた。

教え子
「エ、エリン様、お返事ください！！！　お願い申し上げます！！！！」
あおい
「なんで、治らないの……！！？　なんで…………！！！？」
ガラテア
「リンー……？　やっぱり彼女、癒せない……？？」
りん
「見ての通りどす……。何遍祈っても、力届かへん…………」

女神は《エリン》を暫し観察し、〈力を遮るもの〉の正体に気づく。

ガラテア
（あの〈ペンダント〉、微かに異様な力を放ってるな…………！！）
「そこのキミー！！　彼女のペンダントについて、何か知ってるー？？」
教え子
「あ、あなたは、エリン様を飛ばした《悪魔》！！！！
　悪魔に教えることなんて、何一つもありませんよ！！！」
ガラテア
「悪魔じゃないよー……　ってのはこの際 置いとくとして、
　アタシじゃなくて、＂〈狐の子たち〉の為に＂教えてあげて！！」

あおい
「治って！！！！　治ってっ！！！！　治ってっっ！！！！！」

教え子
「……し、〈死上【シニガミ】の首飾り〉だと、聞いております…………」

[392 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/13(金) 08:04:25]

ガラテア
「それがどんな物かって、わかる？」
教え子
「えっと……　「これがある限り、＂外なる力＂は受けない」、と……」
ガラテア
「えー、要は『回復できない状態』ってことかな……？？
　彼女の〈首飾り〉って、外せないかなー？」
教え子
「少なくとも、私では間違いなく無理です……。その首飾りの『紐』は、
　エリン様の『うなじ』から＂身体中に＂埋め込まれておりますので…………」

ガラテアは目を凝らして力の流れを探り、真偽を確かめる。

ガラテア
「あーー……　マジで、そうっぽいね…………。どうすんの、これ…………？？」
教え子
「〈魔力〉が回復すれば、元気を取り戻してくださるはずですが、
　これほどの事態が初めてですので、私もどうすれば良いのか…………」
ガラテア
「とりあえず、『ローブ』は外そっか。冷えて『風邪』ってやつになっちゃうし……」
教え子
「そ、それは駄目です！！！　そのローブは、〈魔力〉を得る為のものなんです！！！
　外してしまったら、余計に回復まで時間がかかってしまいます！！！」
ガラテア
「すごい重装備（？）だね……。何か、目的があったりするの……？？」
教え子
「当然です……！！　《鬼神》討伐のためですので……！！！」

ガラテア
（……き、《鬼神》…………？？）

[393 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/13(金) 12:10:26]

《エリン》を慕う彼女は、＂師と共に進めている計画＂を得意げに話し始める。

教え子

「私たちはですねー？　あちらに見える《紅の島国》の人々をおびやかす

　《水禍の鬼神》を討ち滅ぼすために、こちらにやって来たのですよ！

　＂鬼神の力を無力化できる＂エリン様が蓄えた〈魔力〉を、私が背負う

　このdice1d13=6 (6) に宿して彼の者を倒す！！　って寸法なのですよー♪」

（※１．槍／２．剣／３．斧．／４．弓と矢／５．棍棒

　　６．鎌／７．大砲／８．ハンマー／９．鞭／１０．十手

　　１１．ブーメラン／１２．スコップ／１３．チェーンソー）

ガラテア

「へ、へー……！　すごい話だねー…………！」

教え子

「そして島国を救った後、《母なる神テアスラ》様の想いを継ぐ

　〈テアスラ教〉を再びこの地に広め、＂自然を大切にする心＂を

　失い始めている皆様の目を覚まーす！！！　って、寸法なのです！！！」

ガラテア

「立派な心がけですねー……！　頑張ってくださーい…………！」

教え子

「あなた、見かけによらず『善い人』そうですね……！

　《悪魔》扱いしてしまい、誠に申し訳ございません。

　そして、もう疑いません！　一緒にエリン様をお救いください！！」

ガラテア

「当然ですよー……♪」

（え……？？　《エリン》様って人、救っていいの…………？？？

　この先に待つの、どちらかにとっての『悲劇的結末』ってやつじゃない…………？？）

[394 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/13(金) 16:51:11]

あおい
「がらてあちゃん…………　この人、治らん…………！！！」
あおいは悲痛な面持ちで、友人であり＂現役の女神＂であるガラテアに縋りつく。

ガラテア
（まあ、これ以上《あおい》ちゃんを悲しませたくないし、
　素性を知らない人を見捨てるようなこと、＂アタシ＂がしちゃ駄目だよねー…………）
「〈さえぐさ家〉の皆ー！　この人、お家につれて帰っていいかなー？
　たぶん〈じんずうりき〉じゃだめだけど、『かんご』すれば良くなると思うんだよー！」
あおい
「！！　うんっ！！！　うちん家つれて帰ろーーー！！！！」
りん
「苦しんではる人救うんは、当然どすえ！」
なぎさ
「あ、はい……。ええですよ……」

教え子→無意識的
〔すごく『善い人』たちばかり……！！　島国に、これほど尊い人々が……！！！
　こ、これはいつか、私も彼女らに『恩返し』をしなくてはなりません……！！！〕

ガラテア
（うーーん……。今後対立するかもと思うと、すっごく辛くなるなーー…………）


〈七種宅〉の輪に、また新たな〈同居人〉が二人加わることとなった。
異国からの来訪者である彼女らでも、七種宅の人々は温かく迎えてくれる様相である。
りんやあおいの『人生修行』にも、きっと良い影響を与えてくれるだろう。


だがいずれ、彼女らとの＂決別の時＂が訪れることは、運命により約束されている。

[395 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/13(金) 18:37:09]

物語的には非常に中途半端なところではございますが、
身体面での疲労が極めて限界まで近づいておりますので
約２日間ほどお休みをいただきます……


私個人としては１６日の朝頃の再会を予定してはおりますが、
更新の無いスレッドを保ち続けてくださる状況も気が引けますので、
もしスレッドの保持を手間だとお感じになる場合は
この２日間のうちに落としていただければと存じます……

[396 二次元好きの匿名さん 24/12/14(土) 01:45:03]

お疲れ様です
毎日の楽しみにしてるし保守も全然手間じゃないのでこのまま続けて欲しい

[398 二次元好きの匿名さん 24/12/14(土) 17:31:12]

お待ちしております

[402 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/15(日) 18:51:32]

予定通り、明日の朝頃からスレッドの更新を再開していく所存ではございますが、

継続、及び＂ラスボス『エリン』＂の完遂に向けた睡眠時間の確保の都合上、

校正、校閲作業に費やす時間をいくらか減らしますので、

文体の乱れや設定の齟齬等の増加が予想されます。予めご了承ください……

（例：①（>>103）『ガラテア』の＂りん＂呼び

　　　②（>>293）誤「買ったるわっっ！！！！！」　正「買うたるわっっ！！！！！」

　　　③１０歳未満の児童、及び彼らとの対話中における一部人物の漢字表記の変容

　　　（※ただし、人物間における『皆』と『みんな』等、意図的な差異もあります））

[404 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 06:31:52]

時刻は朝の九時前。＂事件を終えてすぐ＂という
過密な予定になってしまうものの、ガラテアは少年少女たちに
〈学び舎〉での『経験』を積ませることを重視し、〈空間転移〉の準備を始めていた。


ガラテア
「お二人……　特に、《なぎさ》ちゃん？？　〈学び舎〉で仲良くしよーねー？」

烏賊人の少年
「渚さん……？　もしや、私のことが……」
なぎさ
「いや、その……！！　正直、今までは姉妹優先して〈学び舎のみんな〉を
　軽んじとったところはあるけど、決して『苦手』とかやないし！
　むしろ《烏賊人》は、特に好意持てるほうやし……！」
烏賊人の少年
「なるほど、『ごきょうだい思い』が故でしたか……。学友である我々といたしましても、
　我々との時間のために『大切なご家族との時間』を割いてくださる状況は
　不本意でございますので、渚さんたちの時間を大切にしていただければと存じます」
なぎさ
「大丈夫やって……！！！　うちの姉や両親以外で妹たちを看てくれる人も色々増えたし、
　最近は＂姉妹で一緒におったら足を引っ張る＂ってことも増えてきとるから、
　逆に『あたしの時間』を作りやすくなったんや……！
　女神様たちの戦力に成れへん以上、普通に過ごした方がええやろうしな……」

ガラテア
「ゴメン！　その件なんだけど、撤回する！
　今後は《なぎさ》ちゃんも、〈経験の変換〉を行う予定だよ！」
なぎさ
「…………え……？」

[405 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 06:33:05]

ガラテア
「今回の一件で、よくわかったんだー。
　アタシ程度の神様じゃ、＂誰がどんな時に必要になるか＂なんてわかんないって。
　だから、いざって時のために、《なぎさ》ちゃんの力を鍛えておくのも重要なんだよねー」
なぎさ
「え、つまり……　あたしも『修行』に……！！？
ガラテア
「だ・け・ど、《リン》と違ってなぎさちゃんは『学生』で、まだ大人じゃないんだよ。
　＂命を巡る日々＂じゃない、今後キミが送る＂社会での将来＂のためにも
　学生らしく学業や部活動、そして『友達との交流』に時間を費やしてほしいんだ。
　なぎさちゃんの場合、それらも間違いなく『経験』になるしさ？」
なぎさ
「あ…………　ええ、はい……」
ガラテア
「誤解しないでね！　次の休日……　は、ミズって人の〈交流会〉があるから
　駄目だろうけど、休日は基本的に《なぎさ》ちゃんと《あおい》ちゃんを
　鍛える日にする予定で、絶対に仲間外れにしないよ！
　あくまで＂平日は学生らしくいてほしい＂ってだけだから！

　でさ、《イカくん》の方にもお願いがあるんだよ。
　学び舎に通う日でも彼女に経験を積んでもらうために、これまで以上に
　＂色々な友達付き合い＂をしてあげてほしいんだけど、キミとしては問題ない？」

烏賊人の少年
「はい。学び舎の方々の中にも、人付き合いそのものを好まれない方が
　いらっしゃることと存じますが、私や水泳部の皆様、級友の方々は、
　もとより＂渚さんとの交友＂を強く望んでおりますよ」
なぎさ→無意識的
〔みんな、そんな好意持ってくれてたんか……？
　なんか、今まで悪かったな……　ほんま…………〕

[406 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 06:34:35]

ガラテア
「じゃ、《あおい》ちゃん、《なぎさ》ちゃん、《イカ》くん！
　《学び舎》で、がんばってねーー！！」
あおい
「行ってきまーーーす！！！」
なぎさ、烏賊人の少年
「行って参ります」
ガラテア→渚
〔なぎさちゃん、『青春謳歌』してきなね♪〕
なぎさ→ガラ
〔は、はい……！！！〕

女神ガラテアは、未来あるこどもたちを〈学び舎〉へと送り出した後、
意識不明の状態にある《エリン》と彼女を抱く《教え子》、
七種家の長女である《りん》と共に〈七種宅〉への帰還を試みたのだが…………

教え子が〈空間の境目〉に足を踏み入れたその瞬間、＂エリンの体＂が
境目を拒むかのように反発を生み、二人は大きく吹き飛ばされてしまった。



りん
「だ、大事ないどっしゃろか……！！？」
教え子
「な……！？　なぜ、私たちは入れないのですか！！！？」

ガラテア
（あーっと……。〈空間転移〉も不可なのは、困るなーー…………）
彼女らが送ろうとしている＂新たな日常＂に、早くも暗雲が立ち込めている。

[407 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 12:20:11]

教え子
「…………そう言えば、《リンさん》……　ですよね？　と、
　先ほどの可愛らしい妹さんも、エリン様に〈何か〉を施そうとしていらっしゃいましたが、
　もしかして〈あなたたち〉は、《良からぬ何者か》に仕える人々でいらっしゃる……？？」
りん
「な……！！？　がら……
ガラテア→鈴
〔リン、アタシに任せて〕

「……さすがに、《コノハナ（狐花）様》を＂良からぬ何者か＂呼ばわりは、やめてね？？」
教え子
「あっ、その……！！　ま、誠に申し訳なく存じます！！！！」
ガラテア
「うちの国にも、〈テアスラ教〉の信徒の方々がいてねー？　《テアスラ様》が
　「この世界の生命と、生命の拠り所を創り上げし『崇高なる御方』」ってことは
　よく知ってるよー♪　アタシ的にも、主であらせられる《コノハナ様》に並ぶほどの
　＂素敵な女神様＂だな〜♪　って、テアスラ教のお話を聞いて感じてるんだー♫」

教え子
「私は……　《テアスラ様》を貶めるような、失言を…………！！！！」
ガラテア
「大丈夫だよー♪　《コノハナ様》は《テアスラ様》みたいに慈悲深い御方だから、
　二 度 と 疑 い を 持 た な け れ ば 、キミのこともお許しくださるはずだからねー♪」
教え子
「きょ……　恐縮至極に存じますっっ…………！！！！」


りん
（……がらてあはん、ほんま＂色々ど偉い＂お人やなぁ…………）

[408 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 12:20:50]

ガラテア
「……にしても、困ったねー。《コノハナ様》の力が〈首飾り〉の判定に
　引っかかっちゃうとなると、どうやって七種家に連れて帰ったもんかなー…………」
教え子
「わ、私が《エリン》様を背負いながら泳いで……！！！
ガラテア
「『鎌』と一緒には、無理じゃないかなー……？？」
教え子
「うぅ…………」

ガラテア
「…………ところで、疑問があるんだけどね？　アタシが吹っ飛ばしちゃった割には
　＂《エリン》様に傷が一つも見当たらない＂のって、力によるものだったりする？」
教え子
「え、あ、はい……！！　エリン様は〈地従属者〉？　という存在らしく、
　「大地に逆らえないが、大地に傷つけられない」……　と、お聞きしております……！
　おそらく、『落下による衝撃等で傷つかない力』かと存じますが……
ガラテア
「あ、じゃーさ？　もう一度＂同じこと＂すればいいんじゃないかな？」
教え子
「いっ、いくら傷つかないとは言え、さすがに……！！！
ガラテア
「え、だって早く看病しなきゃじゃない……？？　今取れる手段、もう無いよー…………？」


「……………………」


《教え子》は不服そうにしながらも、師である《エリン》を海に浮かべる。
彼女の決断に感謝しながら、《女神ガラテア》はエリンを《鎮守の森》へ吹き飛ばした。

[409 二次元好きの匿名さん 24/12/16(月) 16:32:11]

パワーあるなこの子

[410 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 18:16:58]

女神の〈導き〉で本土に着いた教え子は、西の空から飛来するエリンをしかと受け止めた。

その後、《鎮守の森》にある〈七種宅〉に＂難無く＂辿り着いた彼女は、

七種宅の一室を借りてエリンへの看病を始める。

教え子

「私共のような異邦人に居場所をお与えくださり、誠にありがたく存じます……！！！」

ガラテア

「いいっていいってー♪　この国での『我が家』だと思っちゃってよー♪」

りん

（がらてあはんは、『家主』とちゃいますけども…………）

教え子

「えっと！　エリン様の看病は基本的に私一人で担えますので、

　お二人はお二人の時間をお過ごしください！！」

ガラテア→鈴

〔って言ってるけど、これからどうするー？〕

りん→ガラ

〔え？　えっと…………〕

彼女らが決めた、『人生修行』八日目の予定は……　dice1d7=7 (7)

──────────────────────

１．りんはお仕事。ガラテアはエリンの『看護』と〈ヒーローたち〉への『労い』

２．りんはお仕事。ガラテアは《クワガタオニ》と旅行

３．りん、ガラテア、クワガタオニで旅行

４．りんはお仕事。ガラテアは〈担当する転生者〉の手助け

５．りんを＂猛烈に＂鍛える

６．りんはお仕事。ガラテアは巨大イカ事件の＂真相＂の調査

７．りんと共に、《狐花様》についての知見を深める

[411 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 21:11:02]

《女神ガラテア》は、自身と異なる『神』である《孤花様》についての知見を得るため、
友人であり信奉者である《りん》と共に《牛人神主》の下へと赴いた。


牛人神主
「鈴さん……　ついに、ついに《狐花様》に関心を抱いていただけましたか…………！！！」
りん
「ほ、ほんま堪忍なぁ、神主様……。
　虫除けのためだけに志願したあてを、〈巫女〉さんに成らしてくれはって…………」
牛人神主
「え…………　ええ、そうですとも！！　私は、苦手な存在に怯えるあなたを見て
　憐憫の情を抱き、 仕 方 な く 本殿の裏隣に〈お家〉を建ててあげてですねぇ…………」
ガラテア
（「＂半世紀近く＂年下の娘に惚れたから」なくせにー）

三十分後、＂りんとの思い出話＂を終えた牛人神主は、ようやく《狐花様》の話を始めた。

牛人神主
「……えー、《狐花様》はですね。「《大いなる者》の手により《紅の島国》に顕現なされた後、
　かつて火の海に包まれていた我が国に『水』と『豊かな植物』をお与えくださり、
　この地に＂平穏＂を生み出してくださった《偉大なる『狐』の女神様》」として
　二千年ほど前から人々に崇められてきた、とても崇高な御方でございます」
りん
「そ、それほど素晴らしいお方やったんどすか……　《狐花様》…………！！？」
牛人神主
「若い方々には伝わっていない様子で、悲しい限りですよ…………」

ガラテア
（＂《大いなる者》の手＂って……
　もしかして《コノハナ様》って、神様じゃなくて《転生者》だったりする……？？）

[412 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/16(月) 21:12:22]

牛人神主は本殿の中心に鎮座する〈狐の御神像〉に視線を向け、話を進める。

牛人神主
「《鎮守の森》と周辺に芽吹く〈植物たち〉も、《狐花様》によるもののようでして。
　先人の皆様曰く「人々の心を落ち着け、さらに〈悍ましき者共〉を退かせる性質を
　香りに持たせることで、知恵を持って協力し合える＂人々＂の安寧を護ろうという
　《狐花様》の思し召しにより生み出された存在」……　とのことでございます。

　不敬を承知で率直に言えば、私は「何も『虫』たちまで退けることはないのでは」という
　考えを抱いておりますが、おそらく『小ささ』、『繁殖力の強さ』、『思考の読みづらさ』を
　憂慮してのものでしょう……。それが〈虫人間〉の皆様を苦しめている状況は
　見るに忍びないですが、実際〈黒虫義賊〉のような者共がいたことも事実であり、何とも…………」

「……………………」


牛人神主
「そしてこちらに鎮座しておりますものが、《狐花様》の姿を模したと伝えられる
　〈狐の御神像〉でございます。鬼や虫を退ける植物が、この社の周りだけに
　今でも根付いている理由は〈御神像〉によるもの、という伝説もございますね」
りん
「今まで、ご立派な『彫刻』やとしか思てへんかったけど、
　あてが思うとった以上に、偉い謂れを持つもんやったんどすなぁ…………」

ガラテア
（こうして見ると、確かにすごいねー。『信徒の方』の執念によるものかな？
　何だか＂力＂が込められてるっていうか、宿ってるっていうか……

？？？→ガラ
〔まったく……　あなたは《神様》として＂まだまだ＂ですわね〕

[413 二次元好きの匿名さん 24/12/17(火) 00:28:16]

鍛える方じゃなくて良かった……

[414 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 08:06:17]

女神ガラテアの『思考』に、〈狐の御神像〉からと思しき『思考』が介入する。

？？？→ガラ
〔一週間以上に亘り、これほど近くに居座り続けながら＂私の存在＂に気がつかないとは。
　その様子ですと、いつか〈邪なる者共〉に足を掬われてしまいますわよ？〕
ガラテア→御神像
〔ア、アンタはまさか、《コノハナ様》…………？？〕

狐花→ガラ
〔ええ、この国の『元・守護神』的存在である《狐花【コノハナ】》でございますわ。
　まあ、ある〈辻斬り〉に敗れて命を落としてからは、お墓代わりである
　＂彫刻＂を依り代にする『土地神』に成り下がってしまいましたが」
ガラテア→狐花
〔ツジギリ……？〕
狐花→ガラ
〔あなたも、緊張感は持っていた方がよろしくてよ。今もご存命かはわかりませんが、
　彼の者は＂神に等しい存在であった＂私の生命を刈り取れるほどの強者でした。
　私に劣っていそうなあなた程度でしたら、いとも容易く消し去れるかもしれませんわね〕
ガラテア→狐花
〔……なかなかな言い種だけど、まー否定はできないし、＂ありがたい御忠告＂として
　受け取っておきますね。で、話は変わるんですけど、この周辺に群生している
　植物たちを「《アンタ》が生み出した」って話は、本当なんですかね？〕
狐花→ガラ
〔そのように伝わっているそうですわね。
　実際は『生命力』を与えているだけで、《彼らを生み出した方》は別におられますが。
　あなたなら＂香草の起源＂について、何か心当たりがあるのでは？〕


ガラテア→狐花
〔…………まあ、何となくわかっちゃったかも、かなー……〕

[415 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 08:07:02]

狐花→ガラ
〔香草の件は、そんなところですわね。他に何か、ご質問はございますか？〕
ガラテア→狐花
〔質問っていうか……　リンたちと話すつもりは無いの…………？？〕
狐花→ガラ
〔まがりなりにも《神様》として崇められる身でございますわよ？
　人々を惑わさないためにも、そう易々と存在を知らせるわけには参りませんの。
　無思慮にその身を衆目にさらし続ける、＂あなた様＂にはわからないことでしょうが」
ガラテア→狐花
〔あー、うん。もういいや、イライラする。アンタが悪いやつじゃなさそうなのは
　わかったし、知識や力が必要にならない限りは二度と関わらないようにするね〕
狐花→ガラ
〔ふふっ……　お可愛らしい《神様》ですわね♪　何かが起これば、またいらしてください。
　『元・守護神』として、あなたを含めた皆様の身を護ってみせますわ♪〕


牛人神主
「がらてあさん……？　先ほどから、いかがなさいましたか……？？」
ガラテア
「あー、いえ！　とても立派な＂彫刻＂だなー、と感心してまして〜♪」
牛人神主
「ああ、そうでしたか……。ええ、この〈御神像〉は、私の先祖代々…………


ガラテア→鈴
〔リンー……　なんかモヤモヤするから、『手』握ってー……？〕
りん→ガラ
〔え……　どないしたんどすか、急に…………？？　よろしおすけど…………〕

《女神ガラテア》は、未だ色々と未熟な神様である。

[416 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 08:07:49]

りんとガラテアが《狐花様》への知見を深めた頃には、既に夕暮れ時だった。

ガラテア

「長すぎでしょッ！！！！　あの爺さん、『コノハナ様の話』だけじゃなくて

　聞いてもない『自分語り』まで始めやがってーー……！！！」

りん

「まぁまぁ……！　あての経験（？）には、なったんちゃいます……？？」

ガラテア

「まー……。《イカお父さん》の件と合わせて最大〈一万、八百七十パワー〉だから、

　ここ数日の間では間違いなく＂実りある日＂だっただろうけどねー……？」

りん

「今日はぎょーさん、〈神通力〉を得られそうどすなぁ……♪」

ガラテア

「あおいちゃんとなぎさちゃんも『経験値』すごそうだし、

　今回は五日ぶりに、〈二倍変換術〉で神通力への変換をしてあげよっかなー」

りん

「まぁ、おおきに……♫

　……あ、なぎさ！　おかえりやす♪　どうやった、今日の学び舎……！？」

なぎさ

「dice1d8=5 (5) 」

──────────────────────

１．すっごい良かったわ♫／２．みんなと仲良うなれたわ

３．『親友』がdice1d6=1 (1) 人できたわ／４．こ、『恋人』ができました…………

５．うん、有意義な時間やった／６．……まだ、時間かかりそうやわ

７．失敗してもうた…………／８．ごめん、もう〈学び舎〉行けへん…………

[418 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 14:04:27]

「居候の身として、ご夕食くらいは作らせてください！」と買って出た《教え子》に
夕食の準備を任せ、りんは《なぎさ》を中心に〈妹たち〉の話を聞くことにした。


なぎさ
「今までは「学び舎では、ただ優等生っぽく過ごすことだけ重視しよう」って、
　《烏賊人》みたいに目立つん以外は＂誰が誰か＂なんて意識してへんかったけど、
　意識向けて話してみたら、みんな可愛かったり面白かったりでええ人ばっかりやった。
　ほんま、誘いも理由付けて断ってばっかなん悪かったなーって、今やったら言えるわ」
三女
「なぎさは〈うちら〉のことばっか考えすぎや。人付き合いで得られるもんもある言うんに。
　うちを見てみい？　勉強に運動…………　は、今はあれやけど、それだけやなくてな？

　仲良い友人作ったからこそ＂《あおい》の遊び相手が増えた＂とか、
　 〈あんたら〉への誕生日の贈り物を、友人たちに協力して作って貰うたりとか、
　交友関係があるからこそ、＂みんなを喜ばせること＂ができたりするんやで？」
緑の子
「友達！！　すっごくいいですよ、友達！！」
三女
「まー友人選ばんと、《緑》みたいなん付いてくるけどなー」

緑の子
「え……………………」


三女
「ひひ、冗談やって♪」
緑の子
「もうっっ！！！！！！！」
人一倍『人懐こい』緑の子をからかうのが、（現在の）《三女》の趣味である。

[419 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 14:05:08]

なぎさ

「……あんたに教えられるんは癪やけど、まあその通りやな。

　これからは積極的に『親友関係』を築いていこう思うてるわ」

あおい

「…………？？？」

まだ幼いあおいは、『お友達の話』をしていることしかわかっていない。

ガラテア→葵

〔えっとね？　「お友達いっぱいだと、たのしいね！」って話だよ〕

あおい→ガラ

〔！！！　がらてあちゃん、ありがと！！！〕

「なぎさお姉ちゃん、お友達できてよかった！！！」

なぎさ

「え？！　えっと、まだ……

ガラテア

「なぎさちゃん的にはさー！　＂だれとなかよしになりたい＂とかあるー？」

なぎさ

「え、え……？？！　えっと……dice1d6=5 (5) ですかね…………？」

（※１．烏賊人／２．熊人／３．川獺人

　　４．葦鹿人／５．人鳥人／６．亀人）

ガラテア

「へー、そうなんだー♪　その子の＂どういうとこ＂が気になったー？」

なぎさ

「dice1d6=1 (1) …………」

（※１．優しそうなところですかね／２．頼りになりそうなところですかね

　　３．なんだか気になるんです（※恋）／４．向こうから来まして

　　５．放っておけない『危うさ』があって／６．て、適当です）

[420 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 15:37:08]

ガラテア
「へー、《ペンギンくん》！？　たしかにいい子っぽいかんじだったけど、
　《イカくん》じゃなくてそっちなんだー！　『やさしそう』のお話、聞かせてくれない？」
→渚
〔ゴメンだけど、《あおい》ちゃんにも理解できる話し方でお願い！〕

なぎさ
「えっと……　前から『水泳部』……　泳ぎでのかけっこ（？）でも
　あたしと《いか人》、《じんちょう人》の三人で一番をきそっていたんですけど、
　今日初めて話をしたら、海や川で『人助け』をいっぱいしてることがわかりまして。
　話していくうちに、なんとなく《あたし》と近いところがあるなって思ったんです。

　あたしからも、海での人助けについての思い出話をしたところ
　向こうもあたしを……　えっと、本当は＂前から＂だったらしいですけど、
　あたしを気に入ってくれまして。「今度二人で、海の人々のお手伝いしましょう」って
　さそわれたんです。なので、まずは彼と仲良くなりたいな……　と」
あおい
「《じんちょうさん》、いい人そう！！　うち、会いたい！！！」
なぎさ
「うん、彼もよろこんでくれるはずやわ」
あおい
「うひひ〜♪　楽しみ〜♫」

りん
（良かったわぁ、ほんま……。なぎさ、家では笑うこともあるけど、
　学び舎帰りは基本的に『表情』無かったし……。幸せそうで何よりやわ…………）


教え子
「皆様ーっ！！　ご夕食の時間ですよーっ！！！」

[421 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 15:38:45]

教え子はガラテアの分も含めた計＂十一人分＂の食事を作り上げ、食卓に運んだ。

あおい

「《えりんさま》のごはんは……？」

教え子

「えっと……　エリンさま、そもそも起きなくてですね……。

　『ごはん』をあげられそうにないのですよ…………」

あおい

「えりんさま……　うちがもっと、強くならんと…………

　！！！　　がらてあちゃん、〈へんかん〉して！！！」

ガラテア

「よーし！　〈にばいへんかんじゅつ〉、やっちゃうぞー！！」

　なぎさちゃん、リン、二人も早く準備して！！」

りん

「い、今からどすか……！？　え、えっと、待っておくれやす…………」

なぎさ

（今日こそは『集中』して、いっぱい手に入れたる…………！！）

女神ガラテアの〈二倍変換術〉により、『人生修行』八日目で得た

りんとあおいの経験値、及び〈神通力〉は、

りんがdice1d2174=1252 (1252) 0、あおいがdice1d1031=607 (607) 84となった。

そして、なぎさが得る〈神通力〉は本来dice1d1737=882 (882) 3になるはずなのだが、

やはり、〈特異な霊力〉により九割ほどが消え去ってしまう。

[423 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 18:00:49]

ガラテア
「リンが合計〈五十八万、二千九百六十二パワー〉で、
　あおいちゃんが合計〈百七十一万、八千九百六十一パワー〉、
　そして……　えっと、なぎさちゃんは今回で〈八百八十二パワー〉増えて
　合計〈七千四十九パワー〉……　あれー……？？　なんでこんなに……
なぎさ
「あたし、もうあかんわ……。『げえむ』もへたやし、〈神通力〉はこの様やし……。
　もしかしたら、運動と勉強以外は＂全部壊滅的＂なんかもしれへんな……
りん
「自信持ちぃ、なぎさ……！！！　まだ、なぎさの神通力でどんなことができるんか
　わかってへんやろ……！？　それに、交友関係深めるうちに〈経験〉が増えて
　ある日 急に伸びるかもしれへんやん……！　きっと『大器晩成』なんよ、なぎさは……！！」
なぎさ
「そうやとええな…………」

教え子
「ガラテアさん……？　皆様と一緒に、何を…………？？」
ガラテア
「アタシ、《コノハナ様》の力で＂彼女らに宿る力＂を鍛えることができるんだよねー？
　彼女らが暮らしの中で得た『経験』を、〈神通力〉ってやつに換えられるんだー♪」
教え子
「〈ジンズウリキ〉……　そんな力が…………！？」
ガラテア
「その力で、リンやあおいちゃんは人々の心身を癒したりしてるんだけどなー。
　なんで〈首飾り〉は、こんなに素晴らしい『力と想い』を拒むんだろうねーー？？」

教え子→無意識的
〔そ、そうですよね……。あんなに『善い人』たちで、生命や物を救う＂尊い力＂ですのに、
　なぜ〈首飾り〉は頑なに拒み続けるのでしょう…………？？〕
《女神ガラテア》は、起こり得る＂対立＂に備えて《教え子》の懐柔を図っている。

[424 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/17(火) 18:02:38]

教え子

「あれ……　そう言えば、《アオイ》ちゃんは……？？」

ガラテア

「エリン様のとこ」

心優しき女の子《あおい》は変換術が終わるや否や、エリンの下へと駆けつけていった。

そして、成長した＂力＂をエリンに施そうとするも、『想い』が彼女に届くことは無かった。

あおい

「えりんさま……　おなか空いちゃう…………。

　このまま起きんかったら……　えりんさまは…………！！」

教え子→無意識的

〔なんて……　なんて『健気』で『善い子』なのでしょうか……！！！！

　こんな尊い子の力を拒むなんて、もしや〈首飾り〉は呪物なのでは…………！！？〕

ガラテア

（あおいちゃん、ほんとに『ナイス』だよー♫）

教え子は失意に暮れるあおいを励ましながら、七種宅の居間へと戻った。

食卓に置かれた料理は、全てが《教え子》の手によるものである。

ある者は期待を抱きながら、ある者は恐る恐るに料理を口へ運んでいく。

彼女が作り上げたその料理は所謂〈dice1d7=4 (4) 〉なのだが、

（※１．カルボナーラ／２．ラザニア／３．ピザ／４．ピロシキ

　　５．リゾット／６．ピラフ／７．ミネストローネ）

その〈〇〇〉の出来は……dice1d100=11 (11) ものだった。

（※〜１０＝数名が入院するほどの／１１〜３０＝数名が四日後まで寝込むほどの

　　３１〜５０＝食卓に静寂が訪れるような／５１〜６５＝普通に美味しい

　　６６〜８０＝食卓が賑やかになるほどの／８１〜＝料理長を任されるほどの）

[426 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 08:02:37]

ガラテア
（あれ……？？？　これ、『人間』が食べていいやつ…………？？？？）
危険を予期したガラテアは、誰よりも先に《あおい》に無理矢理吐かせた。

あおい
「えふっ……えふっ…………　がらてあちゃん、なんで……？？
ガラテア
（ま、間に合わなかったかーー……………………）

《教え子》が作り上げた〈ピロシキ〉を食べた七種家と居候の人々のうち、
あおいと張本人を除いた全員が床に倒れ込み、うめき声を上げている。

ガラテア→鈴
〔リン、大丈夫！！？　リン！！！！〕
りん
「あう……　ぅ…………　ぅあ…………」
ガラテア
（こりゃ、しばらくはダメそうだなーー…………）

教え子
「え……　あれ…………？？　なぜ、皆様は倒れ込んで…………？？？」

ガラテア
「《教え子》ちゃーん？？　このパンの作り方教えてー？？？」
教え子
「えっと、わずかに温めた『ミルク』に、『砕いた小麦』や『魔酵母』を……
ガラテア
「ちょーーーーっと待って？？？？　何かな、〈魔酵母〉って？？？？」
教え子
「ま、『魔酵母』は、『魔酵母』ですよ……？？？」

[427 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 08:03:16]

ガラテア
「ゴメンねー？　最近はこの国でも『パン』は流行ってるみたいなんだけど、
　基本的に主食は『お米』で、馴染みの無い人々も普通にいるんだよねー。
　アタシも『小麦』は知ってるけど、＂〈魔酵母〉は＂聞いたことないなー？？」
教え子
「なるほど、そのような事情が……。それでは、ご説明いたします！
　まず先に『酵母』ですが、魅力的な味や食感を生み出してくれる、とても小さな……
ガラテア
「あーゴメン、『酵母』の話じゃないよ。そもそも、酵母はこの国でも活用されてるし。
　こう言うべきだったね。『 酵 母 』と〈 魔 酵 母 〉の 違 い を 教 え て く れ な い ？？」

教え子
「え、え、えっと……　『アルコール』や『炭酸ガス』という物質を生み出してくれる
　とても小さな生き物たちの活力を、〈魔力〉で増幅させたことによる＂素早い発酵＂、
　魔力を帯びた生き物たちからくる＂幸せな気持ちになるうま味＂、その２つの性質を
　持たせるための＂特別な儀式＂で生まれるのが『魔酵母』であり、私の故郷で……」
ガラテア
「要は、〈魔力が込められた酵母菌たち〉ってことだね？」
教え子
「あ、はい……！　この度使用させていただいたのは、手作りの自信作で……
ガラテア
「味見はした？」
教え子
「当然しましたよ！！　おいしかったです！！！　私が与えた魔力を帯びた
　『菌たち』の味が『他の具材』と絡み合い、まるで＂心に沁み入る＂ような……♫
ガラテア
「それ、＂キミの魔力だから＂であって、他の人には合わないんじゃないかとか考えなかった？」

教え子
「……そ、想像すらしませんでした…………」

[428 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 08:04:56]

ガラテア
「あのさー？？　キミ、＂自身の魔力を人に食べさせた＂ことを自覚した方がいいよー？？
　キミの故郷では普通なのかもだけど、〈魔力〉等の力もある意味『血液』みたいなものでさ？
　人にもよるけど、『血液』ってそれ同士が混ざった時に『赤血球』ってやつが固まったり、
　破壊されちゃったりで＂最終的に命を落とす場合もある＂んだけど、それは知ってる？」
教え子
「存じております…………」
ガラテア
「でね？　〈魔力〉等の力も、人によって合う合わないがあるんだよ。
　合わない場合は強い吐き気を催したり、何かに怯えるようになっちゃったり、
　心身どちらか、あるいは両方に異常をきたしたりするんだよね？
　そんな＂危険性の高いもの＂を、＂皆に食べさせちゃった＂わけなんだ、キミ。

　今回の件に《テアスラ様》は関係ないから、そこは気にしなくていいけどさ。
　監督義務者っぽい《エリン様》の名誉、傷 つ け ち ゃ っ た ん じ ゃ な い ？？？」

教え子
「ま…………　まﾞ……………………


　まﾞこﾞとﾞにﾞもﾞうﾞしﾞわﾞけﾞこﾞさﾞいﾞまﾞせﾞぇ゙んﾞ……！！！！！」

《教え子》は自身が起こした＂大きな過ち＂を認めて猛省し、
その結果、「敬愛する《師》を著しく貶めてしまった」と少し過剰気味に捉え、号泣する。


あおい
「がらてあちゃん、いじめちゃだめ！！！！！」
ガラテア
「……ゴメン。本当にゆるせなくて、怒りすぎちゃった…………」

[429 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 08:05:51]

あおい

「《教え子》さん、待ってて！！！」

あおいは〈大切なみんな〉を救うため、〈想いの力〉を彼女らに捧げる。

倒れていた者たちは まばらに起き上がり、どうにか事なきを得た。

ように見受けられたのだが…………

一同

「まだ……　気分が悪い…………」

あおい

「うちの力、弱くなったん…………？？」

ガラテア

「たぶんねー……。〈こうぼきん〉って子たちが、〈まりょく〉を持ったままなんだよねー……。

　〈まりょく〉がダイジョーブになるまでの時間は人によるから、

　ここからは＂皆を見守る＂しかないと思うよー…………」

教え子

「ﾓｳｼﾜｹｺﾞｻﾞｲﾏｾﾝ…………」

《女神》の発言通り、＂馴染まない力＂への適応力には個人差が存在するため、

もしも《りん》や《なぎさ》の適応が遅れた場合、その分『人生修行』による

〈神通力〉の鍛錬に支障をきたすこととなりますが、はたして…………。

（※１〜３＝数字通りの日数（夕刻頃回復）／４〜＝四日間（夜頃回復））

適応にかかった日数は、dice8d6=3 6 3 6 2 3 4 5 (32) となった。

──────────────────────

りん／なぎさ／三女／緑の子／七種父／七種母／緑の父／緑の母

[431 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 18:14:21]

教え子が生み出した〈魔酵母〉の影響はほどほどに大きく、《転生者Ｍｓ．》によって開かれる
〈交流会〉に参加可能な七種家の人々は、《あおい》と《七種父》だけとなってしまった。
事情を知り、日程を変えようとするＭｓ．だったが、既に〈異国のお偉方〉が
何組か来訪している状況であり、部下からの懇願もあり予定通り開催することを決意する。

りんの『人生修行』を行えなくなったガラテアは、交流会前日である二日後の夜までに
〈担当する転生者たち〉への施しや、敬愛する〈神々〉への挨拶を済ませることにした。
だが数ある予定をこなし続けても、《あおい》を除く〈家族〉が寝込んでしまい、
彼女らとの交流を碌に行えない時を過ごす《女神》の心が満たされることはなかった。


少し時は流れ〈ピロシキ事件〉から三日後の朝。数時間後に開かれる
〈転生者Ｍｓ．主催の交流会〉の準備を手伝うため、あおいたちは現場にやってきた。

[432 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/18(水) 18:15:39]

──────────────────────
非常に中途半端なところで誠に申し訳なく存じますが、
自分勝手ながら体調の回復を優先するため、
＂一日における＂更新頻度を鈍化させていただきたく存じます……

さすがにそう何度も 更新の無い期間を設けるわけには参りませんので
極力『一日３レス以上』を心がける所存ではございますが、
ただでさえ進行の遅いスレッドの進みが遅くなりますので、
今後は『レス数（書き込み数）の２桁目の数字が進んだ際』に
当スレッドをご観覧していただく形を推奨いたします……
──────────────────────

[433 二次元好きの匿名さん 24/12/18(水) 20:31:33]

了解です

[435 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/19(木) 08:20:11]

あおい
「みなさんっ、おはようございますっ！！！！」

設営担当たち
「あおいちゃん、おはよう！　皆のために、がんばっちゃってるぜ〜？」
「おはよ♪　うちの《ねこちゃん》と仲良くしてくれて、ありがとね♪」
「おはよう、あおいちゃん！　見てくれよ、この色んな『そうしょく』や『けんちくぶつ』！
　〈海の上〉にこれほどのばしょを作り上げるの、苦労したんだよなー！」

開催宣言から六日後、〈都〉から少し北にある海上に新たな社交場、《祝卓場》が顕現した。
たった六日間で大きな会場を造り上げたとすれば、何とも夢のような話だが、
実際は《ある転生者》が創り上げた実験施設を、Ｍｓ．が借りているだけである。


あおい
「すごいですっ！！　とっても、いい！！！」
設営担当その１
「いや〜！　あおいちゃんによろこんでもらえるなら、『苦労もむくわれる』ってやつだぜ！
　あおいちゃんや友達の皆、そして海の向こうからの『新しい友達』のためにも、
　さいごの仕上げを全力でがんばるから、楽しみにしていてくれよ！」
あおい
「ありがとうございますっ！！！！」


ガラテア
（いやー、やっぱり《国防隊》の子たちもいい子ばっかりだねー♪
　子供たちの笑顔のために頑張ってる姿、ほんとに素敵だよー♪

　だからこそ、そんな子たちに＂非道なことを強いる〈権力者共〉＂を
　さっさと＂おもちゃ＂にしたいとこなんだけどねー）

[437 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/19(木) 12:29:22]

ガラテア
（…………あれ？）
「ねー、あおいちゃーん！　お父さん、どこー？？」
あおい
「《どくさま》って人のとこ、行くって言ってたー！！」
ガラテア
「そっかー、ありがとー！」
（《どくさま》……　防衛担当の子が言ってた《ドク》様かな。
　口振り的に《転生者》っぽいけど、お父さんはなんでそんなやつのとこに…………？）


「あーーら、あおいちゃんと《女神様》♪　おはようございま〜〜す♪」

ガラテア
（うわ）「あー、どーもーミズ様。《天上者様》自ら現場に赴かれるなんて、感心っすねー」
転生者Ｍｓ．
「当然じゃないッッ！！！！　女神様への信用がかかってるのよッッ！！！！」

あおい
「がらてあちゃーん、けんかーー…………？？」
ガラテア
「けんかじゃないよー！！　しんぱいさせちゃって、ゴメンねー？？」


転生者Ｍｓ．
「《女神様》、あおいちゃんのためにも、今日ばかりは警戒心を解きましょ？
　せっかくの『人々の垣根を越えた交流会』なんだから、仲良くしましょうよ♪」
ガラテア
（……しばらくは『様子見』で済ませないとか…………）

[438 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/19(木) 20:33:29]

彼女らのやり取りから数時間が経過し、人々が《祝卓場》へとまばらに集い始めた。

猫人の友達
「あおいちゃーーん！！！」
あおい
「《ねこちゃん》っ！！？　ねこちゃんも来たの！！？」
猫人の友達
「うん！！！　お母さん《こくぼうたい》だから、＂とくべつ＂って！！！
　あおいちゃんと《ぶたちゃん》と遊びたい！！！！」
あおい
「いいよ！！！　がらてあちゃん、来て！！！！」
ガラテア
「はいはーい！！」
（ほんとは《転生者》共とか見に行きたいんだけど、
　お父さんがいない今はアタシが保護者だから、まあ仕方ないよね…………）

ガラテアはあおいたちと一緒に、
＂この世界における＂『富裕層』の人々が集う、会場の一角へと足を運んだ。

豚人の友達
「あ……！　二人とも、こんにちは……！」
あおい、猫人の友達
「《ぶたちゃん》、こんにちは！！！！」
ガラテア
（この子、いいとこの子なんだねー。〈海の子〉って感じでもないのに
　あおいちゃんへのプレゼントに『真珠』をポンと出せたのも、それが理由かなー？）


？？？→無意識的
〔うっ……！？　そう言えばこの国は《ガラテア》様の…………！？？〕

[439 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/19(木) 20:34:14]

ガラテア
「あーー！！　《マルちゃん》たちじゃーん、おひさーー♫」
転生者Ｍｓ．の誓い通り、元・吸血鬼である《マルグリット》も会場に訪れていた。

末裔
「ご無沙汰しております、ガラテア様。ほら、マルグリット」
マルグリット
「ご無沙汰しております、＂女神＂ガラテア様…………」
ガラテア
「ほんとゴメン！！　あれから結局、『特産品』届けられてなくて……」
マルグリット
「お心遣い痛み入りますが、あまりお気に留められませんようお願い申し上げます……。
　貴国の『特産品』はこちらで調達することも可能です故、何卒……
ガラテア
「＂緊張＂、解けたっぽいね♪」
マルグリット
「…………おかげさまで」
＂身内以外との会話をこなしている＂彼女を見て、ご主人様は微笑みを浮かべている。


ガラテア
「あ！　ところで、《お嬢様》ちゃんは？」
マルグリット
「あちらにいる〈メイド〉の後ろに、いらっしゃいます…………」


お嬢様
「ん……　んん…………」

《末裔様》の一人娘である《お嬢様》は、慣れない土地に対し不安な気持ちを抱いていた。

[440 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/19(木) 20:35:03]

給仕その２

「お嬢さまー？　お友達になれそうな子、いっぱいいますよー？」

《お嬢様》は給仕の腹部に顔をうずめ、他者への拒絶の意を示している。

ガラテア

「そこの、キミー！」

お嬢様

「……！！？」

ガラテア

「ゴメンねー、おどろかせちゃって……？　アタシ、この国に住んでる《神さま》で

　《ガラテア》って名前なんだー♪　《マルグリット》さまのお友達なんだよー？」

お嬢様

「マルグリットさまの…………？！」

ガラテア→マル

〔お嬢様ちゃんのために、合わせて！〕

マルグリット

「は、はい。そのお方は『香草』を手に入れるさいに、お友達になってくださいまして……。

　何でも、＂お嬢様のお友達＂になってくださる子に、お心当たりがあるそうです…………」

お嬢様

「お友達……？」

女神ガラテアは、未だ人見知りな《お嬢様》の下へ

人見知り＂だった＂狐の女の子、《七種葵》をお友達候補として連れてきた。

あおい

「は、はじめまして！　《さえぐさ、あおい》……　ですっ！」

お嬢様の《あおい》に対する第一印象は……　dice1d100=55 (55)

（※数字が高いほど好印象。低いほど悪印象）

[442 二次元好きの匿名さん 24/12/19(木) 22:59:54]

それなりだな

[443 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/20(金) 08:02:47]

お嬢様
（《サエグサ》ちゃん……　お友達…………？）

「初めまして、〇〇です…………」
あおい
「《おじょうさま》ちゃん、お友達になってください……！！」
お嬢様
「え、え……！！？」
ガラテア
「《あおい》ちゃんって、すっごくやさしくていいヒトなんだよー？」
マルグリット
「お嬢様、いつでも〈私たち〉が見まもっております。
　ですから少しの間だけでも、『お友達』になってみてはいかがでしょうか」

お嬢様
「…………よ、よろしくおねがいします……」
あおい
「やったああああ！！！！　よろしくおねがいしまーーーす！！！！」
猫人の友達
「ねーねー、あたし《あおい》ちゃんの友達！　だから、《お嬢様》ちゃんの友達ねー？」
お嬢様
「え……？？！」
猫人の友達
「でー、《ぶたちゃん》も友達だからー、友達三人だよー」

お嬢様、豚人の友達
「え、え……？？！！」

[444 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/20(金) 08:03:34]

猫人の友達

「ねー、あおいちゃん！　あたし、みんなでdice1d6=4 (4) したい！」

（※１．空中さんぽ／２．どうくつたんけん／３．国内旅行

　　４．世界旅行／５．海中旅行／６．〈そふぁみこ〉ごっこ）

あおい

「えっと、二人はいい……？？」

《お嬢様》と《豚人の友達》は戸惑いながらも熟考した後、

＂友達付き合い＂を優先する形で《猫人の友達》の提案を承諾した。

豚人の母

「ちょっと《豚子》、だめよ！！！　あぶないでしょ！！！！」

ガラテア

「あー、ご心配なさらずー。アタシが＂見護り＂ますんでー」

豚人の母

「え……！！？　め……　女神様が、付いていてくださるなら…………？？

　で、ですが絶対に、《豚子》をお護りくださいね……！！！」

ガラテア

「『《女神ガラテア》の名に掛けて、子供たちをお護りします』　……ってとこで♪

　マルちゃーん！　そんなわけだから、《お嬢様》お預かりするねー？？」

マルグリット

「…………いってらっしゃいませ、お嬢様、お友達の皆さま、《女神ガラテア》様」

一同

「いってきまーーーす！！！」

お嬢様は初めてできた〈友人たち〉と共に、見知らぬ世界への一歩を踏み出した。

彼女らの『友情』と『安全』を護るため、女神ガラテアもまた《祝卓場》を後にする。

その選択が、人々の身を危険にさらしてしまうことなど知らずに。

[445 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/20(金) 12:33:58]

〈お嬢様御一行〉が出発してから約一時間後。《祝卓場》の中央区画にて、
《転生者Ｍｓ．》が主催する〈シン・人類交流会〉の開会式が始まった。
交流会は、〈様々な国〉の首脳や富裕層、著名人等の人々が出席し、
紅の島国の《天上者》、《国防隊員》、富裕層や著名人等が迎える形となっている。


司会担当
「……えー、皆様。この度は急な開催であるにも拘らず、遠路はるばるご参加いただき
　誠にありがとうございます。只今より、我らが《紅の島国》の教育長《ミズ》が
　主催する…………　シ、〈シン・人類交流会〉……？？　の、開会式を挙行致します…………。

　わ、私はこの度司会進行を務めさせていただきます、《国防隊・外交課》所属の〇〇と申します。
　至らぬ点も多々あるかと存じますが、皆様の『交歓の機会』を損なわぬよう
　尽力して参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
　それでは始めに、本交流会の主催者であります《教育長ミ
転生者Ｍｓ．
「ミナサ〜〜〜ン♫　この国のこどもたちを導く《教育長》をやらせてもらってる、
　アナタたちの親愛なる恋人《ミズ》でーーす♫　仲良くしましょうネ〜〜〜♫」

観衆
「…………え……？？　…………え……？？？」

？？？
「貴様ッッ！！！　我が国の『品位』を下げるなッッ！！！！」
転生者Ｍｓ．
「ちょっとッ！！！　なんで、下品扱いされなきゃなんないのよッ！！！！」
？？？
「客観性を、何処に捨てたッッ！！！　真面目な挨拶もできんのか、貴様はッッ！！！！」
転生者Ｍｓ．
「じゃー、アンタがやって見せなさいよッ！！！　《 ブ レ ス 様 》ッ！！！！」

[446 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/20(金) 12:35:41]

《紅の島国》では、〈島国に根差す人々〉に希望と安寧を与え、その恩恵を享受する
人々から尊ばれている者である《御天道様》が、名実ともに島国を＂治めて＂いた。

だが《御天道様》は＂ある事情＂により、島国のどこかに存在する宮殿で
療養生活中である。現在、その《御天道様》に代わり紅の島国を統治する者こそ
〈竜人〉の身として転生を果たした者、《転生者Ｐｒｅｓ．》（通称、ブレス）である。


転生者Ｐｒｅｓ．
「……皆の衆。今し方、＂我が国に於ける数少ない汚点＂を
　 衆目に晒してしまった件に関して、当人に代わり謝罪する」
《転生者Ｍｓ．》が抗議の意を示そうとするが、もう一人の《天上者》により阻害される。

転生者Ｐｒｅｓ．
「さて、此処からは我輩が挨拶を行う。此の度開催する〈交流会〉に関してだが、
　《本集会の主催》に代わり、此の国の《代皇帝》で在る我輩の＂私見＂を述べよう。
　『人々の間に存在する壁を取り払い、隔て無しに親交を深めよう』という目的らしいが、

　其の様な論意は＂芥＂だッ！！！　『夢想家の戯言』に過ぎんッ！！！」



観衆
（……………………　えぇ……？？？）

首脳たち
（〈集中豪雨〉以来、調子が戻ってきたな…………）


司会を担当する《国防隊員》は、『頭が真っ白な状態』に陥っている。

[447 二次元好きの匿名さん 24/12/20(金) 18:14:45]

世界旅行はちょっと……

[448 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/20(金) 21:01:21]

転生者Ｐｒｅｓ．
「掲げられし論意の行き着く先は、『隙を狙いし悪鬼共に依る＂社会の崩壊＂』だ。
　盲信は軈【やが】て知性を欠落させ、人々を都合の良い傀儡【かいらい】へと変貌させるだろう。
　『人類』としての矜持を失いたくなければ、常に本質を見極め続けなければならない。
　『卓越せし理性こそがヒトの価値』不変の道理を努努【ゆめゆめ】忘れぬよう、宜しく願う」

呆然としていた人々だったが、核心を垣間見た瞬間に『疑心』は『感心』へと変容した。
刺々しくも人々の関心を集めるその姿に、＂統一者＂としての風格を感ずる者も少なくない。

転生者Ｐｒｅｓ．
「盲目的な思想、及び＂シンコウ＂に警鐘を鳴らし、以上を我輩の挨拶としよう」
観衆からの拍手が徐々に重なり、《代皇帝》としての名誉は一層堅固なものとなった。


転生者Ｐｒｅｓ．
「それでは《司会》…………
　貴様ッ、何を呆けているッ！！！　司会進行の役目を果たさんかッ！！！！」
司会担当
「え、あ、はいッ……！！　えー……

？？？
「あー、すみません。《ブレス代皇帝》に、お聞きしたいことがございましてなぁ」
司会担当
「え……？！！　えっと……
転生者Ｐｒｅｓ．
「何の用だ、《緑の代主長》」

進行を遮り質問を投げかけるのは、《緑の国》を治める代主長であった。
《代主長》とは、教徒が信仰する《女神テアスラ》に＂代＂わり
人々を導く役目を担う者に贈られる、他国における『主席大臣』に相当する役職である。

[449 二次元好きの匿名さん 24/12/21(土) 00:53:27]

出てきたか

[450 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/21(土) 08:02:21]

緑の代主長
「いえ、先程から気になっていたことがございましてぇ。
　《紅の島国》には、真皇帝であらせられる《御天道様》に仕える＂長＂が
　４人いらっしゃるとお聞きしましたが、＂１人＂はご不在の様子ですねぇ？」

集会の場には主催者である《Ｍｓ．》、国の首脳である《Ｐｒｅｓ．》の他に、
《祝卓場》の改造元である〈実験施設〉の持ち主であり、《女神ガラテア》の不在中に
この世界の『機械技術』、『大衆文化』等を急速に発展＂させた＂張本人である
《転生者Ｄｒ．》（通称、ドク）を含めた、計三名の《天上者》が出席していた。

だが、この国に根差す《天上者》はもう一名存在する。『人々の暮らし』を支える
全ての国防隊員（及び職員）への指揮権を有し、日々国内の『警ら』（実状は『行脚』）や
『大衆文化の視察』、反体制的思想を持つ者への『指導』や『鎮圧』を行う
《国防総長》を務めし者、《転生者Ｘ》（通称、クロ）である。（※『警ら』、『指導』、『鎮圧』は全て独断専行）

転生者Ｐｒｅｓ．
「《クロ》は＂極度に内向的、且つ保守的＂な思考の持ち主であり、
　〈交流会〉には不相応な人物である故、我々の判断で欠席させた次第だ」
緑の代主長
「心配ですなぁ。そのような者が、＂国の一翼＂を担っていらっしゃるとはぁ」
転生者Ｐｒｅｓ．
「彼は愛国主義を掲げる《国防総長》だが、理由も無く異国の民を
　傷付けるような真似は行わない。其の点は保証しよう」
緑の代主長
「どうでしょうかねぇ……。《ブレス様》を疑うような態度をとってしまい
　申し訳なく存じますが、こちらにも《彼》を信用できない事情がございましてぇ……。


　何ぶんそちらの《クロ》さんには、我らの《緑の国》周辺に於いて
　〈術者たち〉の生命を奪いし咎人、〈ツジギリ〉の嫌疑がかけられおりまして、ねぇ」

[451 二次元好きの匿名さん 24/12/21(土) 13:08:05]

辻斬りかぁ

[452 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/21(土) 17:33:40]

首脳同士の会話の中で『衝撃的な事実』が露わとなり、場内は騒然となった。

転生者Ｐｒｅｓ．

「下らんッッ！！！　クロが職務を放棄し、渡航した事例など＂一つも＂存在せんッ！！！」

緑の代主長

「しかしですねぇ、私の配下の者曰く「《紅の島国》でクロさんがお作りになった亡き骸と、

　〈ツジギリ〉により作り上げられた亡き骸の状態が酷似しすぎていた」とのことでしてぇ……」

転生者Ｐｒｅｓ．

「クロが出国していない以上、紛れもなく＂偶然の一致＂だッ！！！」

緑の代主長

「絶命直後の遺体に＂力＂が残らぬ状態など、そうありますかのぉ……」

転生者Ｐｒｅｓ．

「其れ程迄に疑惑を抱くようであれば、気の済む迄調べ尽くすが良いだろう！

　成果が無ければ、貴様等の所業を『国際問題』にしてやるがなッ！！！」

緑の代主長

「始めから、そのつもりでございますよぉ。お互い『強硬手段』にならないのは、助かりますのぉ。

　問題は＂ブレス様がクロさんを大切にされていらっしゃる様子＂であることでしてぇ、

　身内の為に、あらゆる方法で『隠蔽』なさるのではないかとぉ……

転生者Ｐｒｅｓ．

「キ、貴様ッッ！！！！　曲がり形にも『友好国……

「そうカッカすんなって、ブレス閣下よー。

　《緑の国》のdice1d2=2 (2) も、ブレス様を鎮めるために一旦引いていただけませんかねー？」

（※１．婆さん／２．爺さん）

二国間の首脳同士で行われる論争に割り込んだのは、約二十年前に＂生を受けた＂青年。

牧歌的な世界に『数多くの功罪』をもたらした者、《転生者Ｄｒ．》だった。

[453 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/21(土) 21:06:02]

緑の代主長
「おお、これは《ドク》さん！　ご無沙汰しておりますのぉ」
転生者Ｄｒ．
「だいぶ、調子戻りましたねー！　俺が贈った〈フリーメーカー〉、役に立ちましたっしょ？」
緑の代主長
「えぇえぇ、その節はありがとうございましたぁ！
　おかげさまで、《雲孫の孫》のお顔を見ることが叶いましたよぉ！」
転生者Ｄｒ．
「うへー……！！　本当に長生きっすよねー、爺さん！」
緑の代主長
「《雲孫の孫》が大人になるまでは、長生きしたいものですねぇ」

《Ｄｒ．》の介入により一触即発の雰囲気は一変し、緊張感は消え去った。

転生者Ｄｒ．
「で、そうそう。〈ツジギリ〉？　の件っすけど、俺が〈事件調査用の機械〉を
　あとで贈りますんで、一旦この場は抑えていただけないっすかねー？
　何よりほら、ここは＂我が国と貴国だけの場じゃない＂んで……　ね？」
Ｄｒ．の忠言を受け、代主長は〈他国の首脳たち〉からの呆れた視線を感じ取る。

緑の代主長
「ああ……！！　これは、お恥ずかしい限りでございます……！
　私のせいで、皆々様のお時間を浪費してしまい、誠に申し訳ございません……！」
転生者Ｄｒ．
「まあ、人命の関わることですんで、熱血漢的思考になるのも仕方ないっすよ！
　ただそもそもここって『交流』の場なんで、喧嘩に時間を使うのはもったいなくないっすか？
　首脳陣、及び〈お偉方〉の皆さんも、これ以上開会式に時間使いたくないっしょ？
　さっさと挨拶を済ませて、自由に交流を深めていきませんかねー？」

《転生者Ｄｒ．》の働きかけにより、〈交流会〉はあるべき形へと戻っていく。

[454 ◆JT7q7ah4XkDe 24/12/21(土) 21:07:23]

緑の代主長
「えー皆様、甚だしくお見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳なく存じます。
　そうは思えぬ醜態を晒してしまいましたが、私は《緑の国の代主長》を務めております、
　〇〇と申します。『犯人探し』の目的もございますが、私としても一番の目的は
　＂皆様との親睦を深めること＂ですので、手早く挨拶とさせていただきますねぇ」

司会担当
「…………い、以上で終わり……　でしょうか……？？」
緑の代主長
「時間を多く費やしてしまいましたからなぁ。それに、私にこれ以上の時間をお与えに
　なりますと、《テアスラ様》の素晴らしさを延々と語る場になってしまいますよぉ？」
司会担当
「……《緑の代主長》、ありがとうございました…………。続きまして、
　《星の大国》からお越しいただきました、《星の大統領》にご挨拶をいただきたく存じます」

星の大統領
「キサマラッ！！！　いつまで、待たせるつもりだッ！！！


　愚者共め……。　…………あー、この場にいる全ての『知恵者』よ。
　我こそが《星の大国の大統領》であり、この＂世界＂の『現統治者』であることは周知であろう。
　その身である我、並びに《星の大国》が、この度行われる〈交流会〉に参加する理由はただ１つ、

　「『人間社会』に仇をなす、＂全ての反乱分子＂の撲滅を
　　目的とする、新たな〈同盟〉創設の喧伝」であるッッ！！！！

　つい先日、人間社会を脅かす悪鬼共による組織〈黒虫義賊〉の壊滅が確認されたッ！！
　奴らの壊滅に尽力せし《紅の島国》と我が国、そして反乱分子撲滅を実現できる
　＂力＂を有する〈４つの国〉を含めた６箇国で、悪鬼共を＂絶滅＂させるッッ！！！！」

[455 二次元好きの匿名さん 24/12/22(日) 00:46:27]

星の大統領熱いな