【SS】「ことねちゃん、クラスメイトで仕事手伝ってくれそうな子いる?」

  • 1二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 18:10:55

    ことね「……え? あー。まぁ、いないことはないと思いますケド……」

    店長「実は来週、○○さんと、□□さんが出られなくなっちゃってさ。学校の子で手伝ってくれる子がいるならお願いしたいんだよね」

    ことね「え゛っ。ら、来週ってイベントの日ですよね……?」

    店長「そうなんだよ、だから本当に困ってて……! もちろん、手伝ってくれた子にはバイト代も出すし、ちょっと色もつけるから!
    ぜひ声かけて欲しいんだ。あ、ことねちゃんにも特別手当出すつもりだから」

    ことね「ホントですかぁ!? ……わかりました。それじゃ、なんとか声かけてみますねっ!」

  • 2二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 18:12:57

    投下は、今日の夜9時頃から行う予定です

  • 3二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 18:15:24
    【SS】千奈「今年の冬は皆でスキーをすることになりましたの!!」|あにまん掲示板千奈「遭難してしまいましたわぁ~っ!!」bbs.animanch.com

    一応ですが、前回はこんなの書いてました。

    投下時刻は9時頃を予定しますが、落ち防止として8時頃にもう一回書き込み予定です。

  • 4二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 18:22:01

    前の読んでた
    面白かったから助かる

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 19:08:56

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 19:58:17

    SS書きのプロデューサーだ!囲め!
    供給ありがとうね!

  • 7二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 20:02:47

    たくさんの方が来てくださってる……!
    ありがとうございます! 
    投下予定は当初と変わりなく今日21時からの予定です~。

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 20:06:44

    >>3

    この話めっちゃ好きだったから楽しみ

  • 9二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:00:37

    というわけで、投下を開始いたしますー。
    前回より量が多いですが、よろしければお付き合いくださいませ。

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:01:14

    ことね「……というワケなんだけどさぁ。どうかなぁ、清夏っち」

    清夏「あ~。ごめん、ことねっち。来週ちょうど用事あるんだよね……」

    ことね「あー、ううん。それならしょうがないわ。ありがとう!」

    清夏「ごめーん、今度空いてるときあったら手伝うからさ!」

    ことね「うんうん、ありがとー!」


    ことね「……どうしよ、やっぱ結構みんな忙しそうだなぁ。あっ」

    リーリヤ「あっ……」

    ことね「えっと……リーリヤちゃんって来週時間ある? 実はウチのバイトが困ったことになっててぇ……」

    リーリヤ「ご、ごめんなさい。来週は私スウェーデンに帰ってて……」

    ことね「ご、ごめん、そりゃ無理だわ! 里帰り楽しんでねー!」

    リーリヤ「すみません。大変そうなのにお手伝いできなくて……」

    ことね「いいよいいよ! みんな都合ってあるからさ! 気にしないで!」

  • 11二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:03:09

    ことね「……ヤバイかもなぁ。最低でもあと二人必要なのに今のところノーヒット。
    最悪、あたしが三倍働く――。……できなくはない、とは思うけど。うーん」

    手毬「何そこで一人でブツブツ言ってるの。気持ち悪いんだけど」

    ことね「あ、手毬。……はぁ。手毬かぁ」

    手毬「な、何!? 人の顔見るなりため息ついて!」

    ことね「あー、いや。なんでも……」

    咲季「あら、また喧嘩でもしてるの?」

    ことね「いや、そういうわけじゃないけど……。んー、咲季……咲季ねぇ」

    咲季「何、私がどうかしたの?」

    手毬「さっきからずっとこの調子なんだよ。
    ……何かあるならいったらどうなの」

    ことね「……んー、じゃあ言うけどさ。実は今、ウチのバイト先が人手が足りないんだよね。
    二人って来週は暇だったりする?  具体的に言うと土曜日なんだけど」

    手毬「一応、空いてる」
    咲季「私も空いてるわ!」

    ことね「だっよねー! 二人ともどうせ自主練で忙しいだろうなとは思ってたから――え?」

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:04:20

    手毬「……耳の穴が詰まってたなら、もう一度言ってあげるけど」
    咲季「土曜日は、大丈夫よ。やろうとしてたことが前倒しになって片付いたから、やることがなくてヒマなの!」

    ことね「……マジ? え、いや。でもバイトの手伝いしてほしいって言ったら――」

    手毬「いいよ、付き合ってあげる」
    咲季「土曜日ね! 何時から集合?」

    ことね「えぇ!? なんで!? いつもちょっと引くくらい付き合い悪いのに!?」

    手毬「あ、あなたも相当付き合い悪い方でしょ!」

    咲季「私は合理的な理由さえあれば、いつだって参加してるじゃない」

    ことね「……わかった。一応、手伝いっていうけどちゃんとバイト代も出る奴だから。
    今日、バイトから帰ったら二人に内容送る。言っとくけど、飛ぶのはナシだかんね!」

    手毬「誰が。私、自分で言ったことからは逃げないから」

    咲季「そうよ、大船に乗った気でいなさい!」


    ことね「これで二人揃った――けど。大丈夫、かなぁ……?」

  • 13二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:05:57

     ――そして、時間は流れ、バイト当日に。

    ことね「……ほ、本当にいる」

    手毬「そりゃいるでしょ。飛ぶなっていったのは他ならぬあなただし」

    咲季「それで、まだ開始時間までは少し時間あるけど、どうする?」

    ことね「あー、それじゃ。一応、二人には内容送ったけど、改めてもう一回内容確認しとくわ」

    ことね「今回、ウチらがやる仕事はイベントの出店。
    基本的には、ウチの精肉店で普段取り扱ってる冷凍ハンバーグやお肉を売る――って感じなんだけど。
    ただ、イベント限定の特別商品として、ハンバーガーをその場で調理して販売してる。正直、お客さん的にはこっちがメイン。
    一応、めっちゃちっちゃいけどフードコートもあるから、そこで食べることもできるようになってる。

    主に役割は3つ。
    ハンバーガーの調理役、お客様の対応をする販売役、そしてお客様にお運びする配膳役」

  • 14二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:06:47

    よかった、みんな空いてなかったけど何故か会長とP空いてたみたいなオチじゃなくて…

  • 15二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:08:08

    誰がどの配役かで成否変わりそうな…期待

  • 16二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:09:20

    ことね「それで、この三役の内訳なんだけど、まずは調理役は――」

    咲季「私ね! 任せて! 最高のハンバーガーを作って見せるわ!」

    ことね「そう、調理役は咲季。よろしく」

    手毬(……改めて確認するけど、咲季に任せて本当に大丈夫なの?)
    ことね(いやまぁ……味はそんなに悪くないから。それに変な料理じゃなければ大丈夫だと思うし)

    咲季「……? 何そこ二人でコソコソ話してるの?」

    ことね「あ、ううん。それで、咲季。あたしが送ったハンバーガーの作り方は――」

    咲季「もちろん、完ッ璧にマスターしてるわ! この日までに何度も何度も試行錯誤を重ね、精度を高めてきたもの。任せなさい!」

    ことね「うんうん、頼もしい。……アレンジせずに、ちゃんとレシピ通りに作ってね」
    咲季「もちろんよ!」

    ことね「ソースをプロテインにしたり、パテをささみのペーストにしたり、ピクルスとかタマネギをブロッコリーの千切りとかにしたりとか――」

    咲季「わ、わかってるわよ!」

    手毬(……作ってたの?)

    ことね(実験作の写真が何枚かこっちに送られてきた。なんとか、説き伏せてレシピ通りに作ってもらうことにしたけど……)

    手毬(……ハンバーガー注文してそれが出てきたら、私なら迷わず返金要請する)
    ことね(あたしも。……まぁ、最終的にはちゃんとウチのハンバーガーになったから大丈夫、だと思う)

    手毬(……だといいけど)

  • 17二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:10:37

    ことね「それで、あたしが販売役。まぁ、細かい処理とか判断はあたしじゃないとできないしね。……んで最後が配膳役」

    手毬「まぁ、私。……正直、消去法って感じするけど」

    ことね「まぁ、実際そんな感じ」

    手毬「ちょっと!?」

    ことね「でも、とっても大事な役だから。あたしは、基本レジ前から離れられないし、咲季は調理してる間は動けない。だから、動ける人間としてあんたが必要」

    手毬「ふぅん、私がいないと困るんだ」

    ことね「だから来てもらったんだっつーの! ……まぁ、でも実際いてもらわないと困る。あと、ここのブースが結構狭くて、食材は全部ここに置けないから、一部は倉庫にしまってある。つまり、補充も手毬に任せる」

    手毬「……なんか、雑用っぽいな」

    ことね「雑用も立派な仕事だから。雑用が回ってくれないと、世の中は成り立たないんだよ」

    手毬「まぁ。受けた以上はどんな仕事だろうと完璧にこなしてみせるよ」

    ことね「よしよし、その意気で。……あと二人とも、そろそろ時間だし持ち場に移動!

    ――それじゃあ! アルバイト、開始ッ!」

  • 18二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:12:42

    客「……あれ、この辺、かな?」

    咲季「ん……? ことね、あのキョロキョロしてる人って」
    ことね「うん、お客さん。手毬、行ってきて」

    手毬「えっ? わ、わかった」

    ことね「そんな緊張しなくても、事前の練習の通りにやれば大丈夫だから」

    手毬「き、緊張なんかしてない! ……行ってくる」


    手毬「――お客様。なにか、お困りでございますか?」
    客「えっ、あぁ。トーラス精肉店のブースってこの辺ですか?」

    手毬「――それなら、こちらでございます。ただいま私がお連れいたします」
    客「えっ? あ、あぁ。ありがとうございます……」

    ことね「あ、あはは……。いらっしゃいませー」

    客「あ、ことねちゃん……。今日は、普段と違う人たちが多いね」

    ことね「そうなんです、○○さんと、□□さんが今日ちょっと体調崩してて……急遽、お手伝いとしてこの二人に入ってもらってます」

    客「そうなんだ、てっきりなんか執事カフェに突然方針転換したのかと思っちゃったよ」

    ことね「あ、あはは……そういうのに憧れあるんじゃないですかね。ところでご注文は何になさいますー?」

    客「あ、それじゃあ特製和牛バーガー、バンズはライ麦で」

  • 19二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:13:48

    ことね「はーい、720円になりまーす。咲季~」

    咲季「特製和牛バーガー、ライ麦ね! わかったわ! すぐ作るから待ってて!」

    手毬「わ、和牛……ッ!?」

    客「えっ、何か……?」

    手毬「あ、い、いえ……なんでもないです」

    咲季「おまちどおさま! 特製和牛バーガー、ライ麦バンズ。一丁上がりよ!」

    客「おっ、これだこれ……これを楽しみにしてたんだ」

    ことね「焼き立てなので大変お熱くなっておりまーす。気をつけて食べてくださいねー」


    手毬「……ちょっと、ことね」

    ことね「お、手毬。あのさー、さっきのはちょっと仰々しすぎ。言っちゃなんだけどハンバーガー売ってるような店なんだし、もっと軽い感じで――」

  • 20二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:15:47

    手毬「和牛って――どういうこと」

    ことね「え?」

    手毬「和牛ってどういうこと!? ハンバーガーのお肉ってもっと普通のお肉じゃないの!?」

    ことね「え……あぁ。まぁ、高級肉って普段みんな買わないじゃん? だからこういう時に格安で手軽く食べられるハンバーガーにして販売してみんなに高級肉の美味しさを知ってもらおう、みたいな……」
    手毬「格安で!?」

    咲季「お肉だけじゃないわ!
    使われてる小麦も、ライ麦もかなり上質ね……! まさに『特製』というのにふさわしいわ!」

    手毬「ね、ねぇ……ことね。このバイトってまかないは――!」

    ことね「あー……。出ないよ、四時間勤務だから……」

    手毬「受けるんじゃなかったこんなバイト! 客として来ればよかった!!!」

    ことね「バッ、声がでかいって!? あ、余ったら店長に相談して食べられるかどうか聞いてみるから……!」

    手毬「本当!? ……お、お肉につられたわけじゃないから。
    正当な働きには、正当な報酬があって然るべきだと思っただけだから!」

    ことね「……それが、バイト代なんだけどなぁ」

  • 21二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:18:39

    ことね「ありがとうございましたー! ふー、さばいたさばいた」

    手毬「……だんだん人が増えてきたね。特製和牛バーガー以外もわりと売れてるし」

    ことね「まぁ、もちろん一番の目玉は特製和牛バーガーだけど、他のお肉とかハンバーグとかも普段より安く売ってるからね。咲季、ハンバーガーの材料は補充は必要そう?」

    咲季「今はまだ大丈夫よ! けど、この感じ30分以内に一回補充したほうが良いと思うわ!」

    ことね「というわけでよろしく、手毬」

    手毬「はいはい……ん、客――」

    千奈「あぁ、篠澤さん、花海さん、ここですわ! 特製和牛バーガーの出店!」
    広「おー……」
    佑芽「わー! 美味しそうな匂い……! 」

    手毬「……どこでも見るな、この落ちこぼれたち」

  • 22二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:20:19

    千奈「あっ、月村さんっ!? ど、どうしてここに?」

    手毬「……ことねのバイトの手伝いで」

    広「ということは、今は手毬は店員なんだ」

    手毬「まぁ、そういうこと」

    佑芽「あっ、お姉ちゃんもいる! やっほー、お姉ちゃん!」

    咲季「あら、佑芽じゃない! 佑芽も食べに来たの?」

    佑芽「うん! そうだよ!」

    咲季「なら待ってなさい、とびっきり美味しい特製和牛バーガーを作ってあげるから!」

    ことね「というわけで、注文は何にしますー?」

    千奈「えっ、えっと。テイクアウトで! それであちらのお席で食べたいのですけれど……」

    ことね「はいはい、フードコートのご利用、と」

  • 23二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:22:08

    千奈「皆様、どういたしましょう。どれもとても美味しそうですわ……!」

    広「バンズやタレも選べるんだね。バンズはもっちりベーグルに、サクサクライ麦。
    ソースは甘辛ソースに、ちょっとスパイシーなマスタード……」

    手毬「……ゴクッ!」

    広「なんか、今生唾を飲む音が聞こえた」
    手毬「の、飲んでないから!」

    佑芽「うーん、どれも美味しそう……迷っちゃうよー。きっとどれもアッツアツなんだよね、えへへ」

    手毬「ちょ、ちょっと早く決めてくれないっ!? あなたたちの会話、聞くに耐えないから!」

    千奈「えっ、えぇ……っ!? ど、どどうしましょう」
    広「どれも捨てがたいね……」


    千奈「――わかりましたわ! それでは全部一つずつ頼みましょう!」


    手毬「えっ」

    ことね「はーい。咲季~! 全種類一個ずつ!」

    咲季「了解よっ! ふふん、見てなさい。腕によりをかけるわ!」

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:23:36

    千奈「全種類といっても4種類ですし、皆さんで分け合えばきっと食べ切れると思いますわ!」

    手毬「えっ、分け合う!?」

    佑芽「楽しみー! みんな、食べ終わったら何が一番好きだったか、教えてね!」

    咲季「……ふんふんふーん、バンズザクザク♪ 塩ぱっぱ♪ ジュージュー焼いたらソースに和えて♪ サッと挟めばはい、完成♪」

    広「手毬、この世の終わりみたいな顔してる」

    手毬「ーーどうして私はこっちに立ってるんだろう」

    千奈「つ、月村さんが様子のおかしいことを言い始めましたわ!?」

    ことね「はいはい、手毬。配膳したげて」

    手毬「くっ……覚えてなさい。この借りは必ず返すから……」

    千奈「なっ、なんの借りですの……!?」

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:25:34

    手毬「……はい、特製和牛バーガー、4種類。お持ちしました」

    千奈「わぁ……っ! こうして紙に包まれておりますのね!」
    広「……ハンバーガーはチェーン店でよく食べてたけど、個人商店の自家製だとまた全然違うね。すごくしっかりしてる」
    佑芽「うわぁ、やっぱりアツアツだぁ!」

    千奈「えへへ、実はわたくしハンバーガーを食べるのは初めてなのです! それでは、いただきま――」

    手毬「――――――――――――――――――――――ッ!」

    千奈「す、すっごく見られてますわ……!」

    手毬「み、見てない! ……眺めてるだけ」
    広「同じだね」

    千奈「あ、あの……月村さんもお食べになります……?」

    手毬「……ッ! い、いいの……!?」

    ことね「ちょっと、手毬。仕事中だから。店の商品、店員が食べてたら問題になるっしょ?」

    手毬「ぎ、ぎぎぎ……!」

    ことね「……わかったって。バイト終わる間際になったらあたしのお金で一つ買っとくから。バイト終わってから食べて」

    手毬「話が早いね、ことね。
    そういう物わかりの良いところ嫌いじゃないよ」

    ことね「うわ、突然人間に戻った。……とにかく、仕事仕事! そろそろの方補充お願い!」

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:29:54

    手毬「……たしか、このあたりに倉庫があるって言ってたような」

    手毬「……めちゃくちゃ、ボロいな」

    手毬「えっと、この辺りに店のクーラーボックスがあるとか言ってたような」

    手毬「――ひっ!?」


    ことね「……すっご、去年のペースより全然早いペースで売れてんなー。在庫の相談、店長としておいたほうがいいかも」

    手毬「ことねッ! ことね!」

    ことね「なっ、何!? あれ補充は……」

    手毬「む、虫! 虫出たッ!」

    ことね「あ、あー。まぁ、あそこボロボロだし虫はねぇ……」

    手毬「……どうにかして」

    ことね「え、えぇっ!? あたしも別に虫得意なわけじゃないんですケドォ!?」

    手毬「虫の中でも特にアレは苦手。……見るだけで、昔のトラウマを思い出すんだ」

    ことね(そんなトラウマになるような虫の相手させられんの、あたし!?)

  • 27二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:30:50

    咲季「……ッ! ことね、あとお肉10枚!」

    ことね(う~……。い、今はちょうど、客も少ないタイミングかぁ。今抜けてすぐ戻れば、間に合う――かな。これ以上、もたついてると多分お肉が先になくなっちゃうし)

    ことね「わ、わかった。でも一回だけだかんね! あたしもそう何度も持ち場離れられないし!」

    手毬「わ、わかってる。……あ、ありがとう」


    ことね「おし……ホウキは持った。手袋もした。じゅ、準備は――できてる」

    手毬「ド、ドアの隙間から見たけど、まだいた。……それじゃ、お願い」

    ことね(足の長いやつとか、足の多いやつとか、跳ねるやつとか、変にテカってるやつとか、マジ勘弁してください……!)

    ことね「うぉー! かかってこいやーッ! ……どれ! 手毬!?」

    手毬「ク、クーラーボックスの上――!」

    ことね「おし、クーラーボックスの上ッ!」



    手毬「――そ、そこにカマキリがいるのッ!」

  • 28二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:33:12

    ことね「殲滅対象カマキ――。

    ……カマキリ?」

    手毬「そうッ! ち、小さい頃、思いっきり挟まれて……! 
    い、今でもアレを見ると昔の記憶が蘇って――!」

    ことね「……」

    手毬「見てッ! カ、カマを振り上げて威嚇してる! すっごく痛そう……!」


    ことね「えいっ」


    手毬「あっ」

    ことね「……ホウキ使えば追っ払えるから。今みたいに」

    手毬「あっ、うん……」

    ことね「それじゃ補充の方、よろしく」

    手毬「え、あ、あぁ……わかった」

  • 29二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:34:48

    咲季「補充どう!? そろそろなくなるけど!」

    ことね「大丈夫、すぐに手毬が補充してくれる! あたしがいない時に、お客さんは来なかった!?」

    咲季「一人来てるわ! そこのフードコートでお待ちいただいてるけど……」

    ことね「やっべ……! そ、そこそこ時間使っちゃったし、かなり待たせちゃったかも。
    ちょっとあたし対応してくる!」

    咲季「あっ、ことね。その待っていたお客さんっていうのが――」


    ことね「申し訳ありません! 大変お時間を取らせてしまいました。ご注文を――」




    会長「あら、そんなに慌てて――お疲れ様、ことね」

  • 30二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:39:38

    ことね「じゅ、十王会長……!? き、来てたんすね……」

    会長「えぇ、このイベントには初星学園の生徒もたくさんバイトで来てるっていうから。その頑張りにほんの少し協力してあげようって」
    ことね「そ、そうなんですね……」

    会長「でも、まさかこうしてことねにも会えるだなんて。
    ふふっ、奇遇ね。以前はバーガーショップで、今回は精肉店のイベントブース……」

    ことね(奇遇か……!? 本当に奇遇か!?)

    会長「ところで、今日もずいぶんと頑張ってるようだけど、疲れが顔に出てるわ。バイトが終わったら車で家まで送ってい――」
    ことね「ご、ご注文は何になさいますかぁ!?」

    会長「……? 
    あ、あぁ。そうね。ふふ、ことねのオススメは何かしら」

    ことね(今一瞬、ここが店ってこと忘れてる顔してた……!)

    ことね「オ、オススメ――オススメっすか。えっと、今日はどれも特別メニューなんでどれも美味しいと思いますケド……」

  • 31二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:40:33

    会長「そうなの。それじゃあ、ことねのオススメなら全部いただくわ」

    ことね「え゛っ。あ、あの一人で、ですよね……?」

    会長「レッスンが終わったあとだから、別にこれくらいは食べ切れると思うけど……。
    えぇ、でもたしかにちょっと多いかもしれないわね」

    ことね「お、大きさだけなら他のバーガー店のバーガーの方が大きいですけど。結構しっかりしたバーガーなので大人の男の人でも3つが限界だって」

    会長「それは……困ったわ。


    ――そうだ、2つと2つ、あなたと私で分け合うのはどうかしら」

    ことね「……は?」

  • 32二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:43:57

    会長「えぇ、ことねのオススメだから、どれも食べ残したくはないし……。
    けれど、私一人では全ては食べられない。
    でも、二人なら――この困難もきっと乗り越えられると思うの」

    ことね(何ちょっと格好良く言ってるの、この人!?)

    ことね「いや、でも。あたし今仕事中なんで~……」

    会長「それなら、仕事が終わってからでもいいわ。
    あなたも疲れてるだろうし、そのねぎらいとして。……どうかしら?」

    ことね「えっ、えっと……あ、あはは」


    手毬「ことね、補充の方終わったけど、倉庫にあったこの空のタッパーって私たちのブースの――」

    ことね「ナイス手毬!  それもらうわ!」

  • 33二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:45:44

    手毬「えっ!? な、何っ?」

    ことね「でしたら会長、タッパーに入れてお持ち帰りください! 
    タッパーに入れておけば明日までは多分持つと思うんで!」

    会長「えっ? 
    あぁ。そ、そうね。ありがとう。

    ……でも、そういう話じゃ」


    男性客「あっ、あれって――初星の一番星じゃないかっ!? サインもらわないと!」
    学園客「きゃっ、会長! いつみても眩しい……!」
    女性客「きっとあの店、星南様が食べるくらいなんだから美味しいんだわ……!」

    ことね「おっと、なんだか急に忙しくなってきたナ~! 
    それじゃ、会長あたしは仕事に戻りますんで~」

    会長「あっ、ことね……。



    ふふ、相変わらず強敵ね。でも、いいわ。
    障害があればあるほど燃えるもの。
    きっといつか、あなたを振り向かせて見せる……!」

  • 34二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:48:14

    ことね「か、会長効果すご……さっき補充したのにもうほぼなくなりかかってるじゃん」

    手毬「イベント終了まであと一時間ってとこ……今ある分を売り切ったらどうするの?」

    ことね「ん? 多分倉庫にまだあるっしょ? 今年は去年より量多く用意してたはずだし」

    手毬「いや、さっき補充した分で全部。今の分を売り切ると、品切れになる」

    ことね「……えっ、マジ? 
    売上の数みたらまだ在庫表にある分売り切ってない、ことになってる、んだけど」

    手毬「……そんなに信じられないなら自分の目で確認してくれば?」

    ことね「ちょ、ちょっとあたし店長に確認の電話して――あ、でも今離れると」

    咲季「ことね!」

    ことね「な、何。咲季」

    咲季「この場は私がなんとかしておいてあげる。
    だから、行ってきなさい!」

    ことね「……す、すぐ戻るから! それまでの間、任せる!」

  • 35二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:50:04

    ことね「あ、もしもし? あの店長! イベントの在庫なんですけど……」

    店長『ごめん、ことねちゃん! 
    実は今、俺も気づいたところなんだ。業者の人が持っていき忘れたみたいで……』

    ことね「マジっすか! 発送ミスかぁ……」

    店長『今、☆☆君にバン走らせて向かってもらってるから、それ受け取って! 入口に行くように言ってあるから!』

    ことね「うぇっ!? あ、あぁはい! わかりました! 取りに行きます!」

    店長『頼むねー!』ガチャッ


    ことね「……やっべ。今の言い方だと『あたしが』取りに行く流れじゃね? 
    あー、もう。しょうがない! あたしがバッと受け取って、サッとブースに戻ろう!」


    ことね「はぁ、はぁ……咲季、手毬! 補充――持ってきた、から」

    咲季「ちょっ、ことね!? それ抱えて、走ってきたの!?」

    ことね「あ、あたしが長く店空けるわけには行かないし……それで、店の方はどうだった?」

    咲季「えぇ、大丈夫よ! 大盛況だわ!」

    ことね「そっか、そっか。それは良かった……」

  • 36二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:51:49

    手毬「――スペシャルスタミナ弁当をご注文のお客様」

    メガネの客「あ、自分です。
    ……お、おぉ。これがスペシャルスタミナ弁当。
    すごいな、スタミナとはかけ離れた見た目をしている。ペーストばっかりだ」


    ことね(あたしの知らない商品が販売されてるぅ――ッ!?)


    ことね「ちょっ、咲季!? これどういうこと!?」

    咲季「えぇ、こういう時のことを見越して私も実は材料を用意してたの。即席で作ったわ! リーズナブルなお値段で、自信作よ!」

    ことね「なんてもの販売してんだッ!?」

    手毬「大丈夫だよ、ことね」

    ことね「何が!?」

    手毬「ご注文のお客様には、自己責任でお願いしますって念を押させたから」

    ことね「そういう問題じゃねぇーッ!」


    ことね「あーもう、販売中止中止! これウチのお店では売ってないですからね!」

    手毬「でも、結構好評だよ。……信じられないけど」

    ことね「えぇ……?」

  • 37二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:54:16

    屈強な客A「素晴らしい……! これほど栄養が考えられた食事は見たことがない!」

    屈強な客B「なんて筋肉が喜ぶ食事なんだ……! 毎日これだけを食べていたい!」

    屈強な客C「味こそ改善の余地はあるが……これをベースにすれば最高の食事が作れるのではないか!? 
    もっと食べたい! おかわりで!」


    ことね「……何、あの猫の額より狭そうな界隈」

    咲季「うふふ! だから言ったでしょ! 大盛況だって!」

    ことね「……あぁ、わかったよ。現品限りな。
    あと、咲季、材料来たから――」

    咲季「えぇ、わかったわ! 特製和牛バーガー、販売再開ねっ!」

    ことね「……さて。あと、30分。
    ラストスパート――。


    あ、あれ……?」

  • 38二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:55:42

    屈強な客で草

  • 39二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 21:56:04

    咲季「ちょっと、フラついてるけど!?」

    ことね「あー……。
    ちょっとさっき走ってきたから、クラって来ただけで。全然大丈夫大丈夫!」

    手毬「……いい加減、少しは自分のコンディションくらいは把握できるようにならないの? 足手まといになるだけなんだけど」

    ことね「はぁ!? ふ、二人だけだと心配だし! 
    それにあたしが今この場の責任を――」

    手毬「近くで、ずっとあなたの仕事ぶりを見てたから。
    ……もうあれくらいはとっくに覚えた」

    咲季「それに、ことねが怒られるなら、その時は私たちも一緒。
    もう勝手なことはしちゃったしね」

    ことね「……そしたら少しの間だけ、お願いしても良い?」

    手毬「そのために、私たちがいるんでしょ」

    ことね「へぇ、頼もしいじゃん。


    ……ありがとう、二人とも」


    咲季「さぁ、行くわよ! ここから最後まで駆け抜けるわ――ッ!」

  • 40二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:00:23

    ことね「完売御礼でーす! ありがとうございましたーっ!」

    咲季「お、ちょうどイベント終了のチャイムも鳴ったわね」



    ことね「あ~っ! 終わったぁっ!」

    手毬「……たった4時間なのに、すごい濃密だった」

    ことね「今日、イベントがまず、例年にもましてお客さん多かったみたいだからねぇ。
    はー、働いた働いた」

    咲季「それで片付けは――」

    ことね「夜中に店長たちがやってくれるってさ。
    売上は倉庫の金庫に移して、今日のバイトはこれでおしまいっ!」

    手毬「……バイトが終わった、ということは」

    咲季「えぇ、もちろん! 取り置きしておいたわ! 手毬の分の特製和牛バーガーねっ!」

    ことね「あー、そっか。それじゃ、あたしのおサイフから出しとかないとね」

    手毬「あつあつの……サクサク、ライ麦特製和牛バーガー!」

    ことね「目ェキラキラしてんじゃん、本当に楽しみにしてたんだね……」

    手毬「当たり前でしょ! こ、このために頑張ってたんだから……!」

  • 41二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:04:11

    ことね「……あのさ、二人とも」

    手毬・咲季「何?」

    ことね「改めてその、言っとく。
    ……今回、あたし一人じゃこのバイトは絶対に回せなかった。
    これだけ売り上げて、今これだけ達成感があるのは、二人がいてくれたから。

    本当、ありがとう。感謝してる」

    手毬「……三倍働くとか聞いた時は正直、ぎょっとしたよ」

    ことね「えっ、聞いてたの、それ」

    咲季「あのね……普段から人の何倍も働いてるのに、それで三倍って。
    そんなんじゃ、レッスンも身にならないでしょ」

    ことね「あはは……まぁ、それは別にあたしの頑張り次第だと思うし」

    手毬「こんなのをいくつも掛け持ちしてたら、普通は倒れるから」

    ことね「……そう、かもね」

  • 42二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:07:33

    手毬「でも……今回は少しは負担が軽くできてたなら、良かった」

    ことね「えっ……」

    手毬「か、勘違いしないで。
    アイドルと関係ないところで脱落したやつがいたら、興ざめになるってだけ」

    咲季「でも……全力でやってみてわかったわ。
    眼の前のお客さんを満足させる――こういうところから、アイドルはもう『始まってる』のね」

    手毬「たしかに。私も通じるところを感じた」

    ことね「……まぁ、ずっとやってるわりに、あたしは成績としては出てないんだけど」

  • 43二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:10:12

    手毬「……食べなよ」

    ことね「えっ、何突然。それって手毬の――」

    手毬「私が別で買った。さっき、店番してた時に」

    ことね「えっ、いつの間に!?」

    手毬「……それ、私のおごりだから。感謝して食べると良いよ」

    ことね「いや、あたしもさっきアンタにあげたじゃん!? 
    いや、まだお金は出してないけどさ!」


    咲季「そうそう、実を言うと私も自分用のやつ買っておいたの。ちょうどいいから、皆で食べましょう!」

    ことね「咲季もかよ! 抜け目ないなぁ。ま、いいけどさ。
    ……美味しいものって皆で食べると美味しいし。

    ――そしたら、せーの」


    ことね・咲季・手毬「「「いただきますっ!」」」

    -END-

  • 44二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:12:02

    以上です、お疲れ様でしたー! 
    前回よりもさらに長くなってしまいましたが、お付き合いくださりありがとうございました!

  • 45二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:12:23

    後日談

    店長「……あのイベントの後から、鳥のささ身を置いてくれって要望が多いから置いたらバカ売れしていくんだよね。ことねちゃん、何か知らない?」

    ことね「あー、はは。なんで……っすかねぇ?」

  • 46二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:14:24

    乙 面白かった パサチキ看板メニューになってて草

  • 47二次元好きの匿名さん24/11/10(日) 22:48:16

    今回も楽しかったぜ!

  • 48二次元好きの匿名さん24/11/11(月) 10:05:33

    >>46

    乙でした! 

    ……正直自分はちょっとものは試しで食べてみたいかも。


    >>47

    ありがとうございます!

    そう言ってもらえると本当嬉しいです……!

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