- 11◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:48:02
- 21◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:48:41
その日は朝から雨だった。
しとしと、ぴちゃん。
「ねえトレーナーさん、雨ですよ」
「見ればわかるよ」
「つれませんねえ」
むっ。と頬を膨らませて暫し黙る。
そしてまた口を開く。
「泥団子とか泥んこ遊びとか、懐かしくなりません?」
「あいにく汚れることは好きじゃなかったからな」
「ふぅーん…」
ミラクルは男の膝に頭を乗せて、窓外の雨音に思考を委ねるように目を閉じる。
「トレーナーさん」
「なんだい」
「ごめんね」
「っ」
芦毛の美少女は目に涙を浮かべて男に微笑む。
「ミラ───」
「…私を……見捨てないでくれて、ありがとう」
「………」
彼女の悟ったような目を見て、彼は不安になる。
「ミラクル。それ、どういう」
「わかってるでしょう?……卒業だってこと」
「!!」
いつか訪れる結末だとはわかっていた。
それでも、この空間に閉じこもっていたかった。 - 31◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:49:25
だから。
自分の気持ちをたくさんぶち撒けた。
「っ………あ、あぁあっ!!」
「………ミラクル………!」
どくん、どくん。
……ちゅっ
ぎゅ、ぎゅっ。 - 41◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:50:05
───
桜舞う季節。
男と女は手を繋いで学園を眺める。
生徒会長も、理事長も、その秘書も。
春の季節とは思えぬほど冷めた目を向ける。
「卒業おめでとう、◇◇ミラクル」
「おめでとうございます。●●トレーナー」
「………門出っ。と素直に祝えたら良いのだがな」
「……みなさん、ありがとうございました」
「本当にお世話になりました」
駆け巡る思い出を振り払うように、忙しく愛がが胸を締め付ける。
「見て●●。綺麗な桜吹雪だよ」
「うん。……ミラクルみたいに、儚くて綺麗だね」
桜の木の下で唇を重ねて、これからも続く爛れた関係によろしくの挨拶。 - 51◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:50:46
- 61◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:51:16
ぶつかって行き過ぎた互いの悲しい物語はこれで
【おしまい】 - 71◆ZBEAgOLwfw24/11/13(水) 01:51:57