【閲覧注意】アズサ、夏に溶ける【SS】

  • 124/11/13(水) 18:51:37

    ほっこりする話です。



    田畑の隙間を抜けて、午前10時。
    ヒフミの見事なクルセイダー捌きで、予定より早く到着できそうだ。

    「見えますか?」

    ヒフミは手際よくレバーを動かしながら、私と雑談までしてくれる。

    「ここ、穴場なんです。スケバンの人たちもあまり来ないみたいなので、ゆっくり遊び倒せると思います」

    自慢げに戦車を爆走させるヒフミ。
    ともすれば履帯が外れかねないハードな操作。だというのに、繊細かつ大胆なヒフミの手によって、戦車は田舎の丘を駆け上る。

    私は車内から双眼鏡を伸ばし、外を覗こうとする。

    「あっ。ダメですよ、アズサちゃん」

    ヒフミがからかうような口調で咎めてくる。

    「外に出て、風を感じてください」
    「狙撃の危険が……」
    「ここは戦場じゃないですよ」

    ……そうだな。敵対勢力がいないことは、ヒフミの事前調査で把握済み。何より、私たちはここに青春を楽しみに来ているのだから、ヒフミに従うべきだ。

    私はハッチから顔を出し、外の景色を見る。

  • 224/11/13(水) 18:53:04

    「わあ……」

    感嘆。私らしくもないものが、他でもない私の口から飛び出す。
    それもそのはず。見たことのない、美しい海が広がっていたからだ。
    あの時の海水浴場とは少し違う、きらめくような輝き。海の色が濃く、泡が多いように感じられるのは、きっと気候や海流の違いによるものだろう。
    砂浜はあまり広くない。しかし、その分周囲の木々の緑が視界に入ってくる。それがまた、海の青に似合っていてよく映える。
    私は芸術に詳しくないが、これが綺麗なことくらい、感性で理解できる。

    「うん。目視による確認で正解だった」

    私はヒフミに感謝をしつつ、ハッチを閉じる。

    「いいものだった」
    「でしょう!?」

    ヒフミは私の笑顔を横目で見て、笑顔を返してくれる。
    私が嬉しいと、ヒフミも嬉しいらしい。
    こういう関係性を、友達と呼ぶのだろう。

    「友達と、二人きりで海水浴」

    声に出してみると、少しだけ照れ臭く感じる。

  • 324/11/13(水) 18:54:39

    さて。
    クルセイダーを駐車して、いざ待ちに待った海水浴場へ。

    「もう待ちきれない!」

    気分は突撃兵。しかしながら、恐怖も殺意も銃も持たずに駆け出すのは、初めてだ。

    そんな私を、ヒフミが慌てて追いかけてくる。

    「あ、待って!」

    今更になって、何をじらしているのか。ヒフミだって、ペロロ様のグッズが目の前にあるとなれば、我先にと飛びつくだろうに。
    そんな僅かな不満と共に、振り向くと……。

    ビリッ、という音が。

    「あ」
    「ああ……」

    ヒフミ曰く。
    クルセイダーの内部に、やけに引っかかりやすい手すりがあるらしい。ヒフミも以前、それで水着を破いてしまったことがあるそうだ。

  • 424/11/13(水) 18:57:35

    「あの時は先生にご迷惑をおかけしてしまいました」
    「そうか……」

    私はトラップを仕掛けることが多いため、常に周りに注意を向けているのだが……これはやられた。味方と思っていたクルセイダーに、一杯食わされるとは。
    しかし、これは私のミスでしかない。誰を責めるわけにもいかない。海水浴が初手で躓いたのも、ヒフミを困らせてしまったのも、私の責任だ。

    「……すまない。水着の替えは無いんだ」
    「……えっと」

    ヒフミは何やら気まずそうな顔をして、荷物に目を向ける。

    「一応、私のが……ありますけど……」
    「本当か!」

    今ここに鏡があったら、私はまさに満面の笑みを浮かべていただろう。
    虚しい世の中にも、救いはある。かつて死を覚悟した私がファウストとなったヒフミに救われたように、またしてもヒフミは、私に救いの手を差し伸べてくれたのだ。

    「ヒフミは本当に準備がいいな……。尊敬が深まるばかりだ」
    「えっと、過大評価をいただいたところ、申し訳ないんですけど……」
    「ん?」

    ヒフミは替えの水着とやらを広げて、その全貌を見せてくる。

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 19:02:25

    まさか...

  • 624/11/13(水) 19:03:58

    紐。
    いや違う。牛柄の布が僅かにある。

    えっ?これが水着?
    そんなわけない。これはきっと、ヒフミなりの、ちょっとずれた気遣いだ。

    「ヒフミ。いいんだ。紐を水着と言い張る必要はないんだ。全てはミスをした私が……」
    「あはは……。えっと、アズサちゃんが嫌なら、これは私が着ることにしますね」

    なんだと?
    ということは、この細長い何か奇怪な代物は、まさか本当に、水着として作られたもの……。

    「ふう。……よし」

    私は破れた水着と共に、さっきまでの愚かな自分を脱ぎ捨てる。
    私には驕りがあった。ヒフミたちと仲良くなって、少しは世の中を知ることができたという驕りが。
    だが、違った。まだまだ見えていなかった。世の中の広さと、奥深さを。

    「ヒフミ。私が着る」
    「えっ。無理はしなくても……」
    「ほとんどが紐だから、サイズを調整するのが簡単だろう。それに、私は未知を克服しなければならない」

    水着を名乗る、未知。その正体を、私は知りたい。

    「貸してほしい」
    「あの……えーと……はい」

    ヒフミは顔を赤らめながら、私にその紐水着を手渡した。
    私は挑む。私は足掻く。未知なる世界に飛び込んで、希望を掴み取ってやろう。
    ……そんな啖呵を切ったものの、着る方法がわからなかったので、ヒフミの手を借りることになった。

  • 724/11/13(水) 19:06:28

    多少のトラブルはあったものの、海水浴場に足を踏み入れることができた。

    気温、水温、共にまずまず。暑すぎず冷たすぎず、快適だ。
    だというのに、穴場というだけあって、他に客がいる気配がない。これで儲けが発生しているのだろうか。気になるところだが、私では考えてもわからない。

    「アズサちゃん……」

    砂浜に足跡をつけながら歩く私の後ろを、ヒフミは顔を真っ赤に染めながらついてくる。

    「どうしたの?」

    尋ねてみると、目を逸らす。

    「えっと、人がいなくて、よかったなあって」
    「……うん」

    確かに、二人だけで海を満喫できるというのは、ことのほか気分がいいものだ。マシロという狙撃手やツルギという正義実現委員会の委員長がいた時も、あれはあれで騒がしさが愉快に感じられたが……。

    ヒフミといる時間は、やはり特別だ。

    「いい休日になりそうだ」

  • 824/11/13(水) 19:09:28

    私が波を蹴ると、泡が細かく散って、砂に溶けていく。
    ヒフミと食べた、ペロロ様しゅわしゅわアイスクリームを思い出す。溶けるのが早くて、大変だったな。

    「教えてくれ、ヒフミ」
    「は、はい。何をでしょうか!?」

    やけにかしこまった態度のヒフミ。
    私は彼女と向かい合う。

    「二人だけの砂浜では、何をするべきなんだ?」
    「え、えっとですね……」

    ヒフミは私のために用意してくれただろう案を、ひとつずつ提示してくれる。

  • 924/11/13(水) 19:12:24

    まず、追いかけっこ。
    人が多いと迷惑になるが、二人だけなら気にせず駆け抜けられる。

    「待ってくださーい!」
    「ふふん。捕まえてみろ!」
    「もうサンダル脱いじゃいます!」

    次に、水のかけあいっこ。
    大袈裟な身振りで海水を掬い上げ、遠く、広く、飛ばす。

    「やったな!」
    「ひゃあっ!」

    続いて、穴掘り。
    砂の山を作り、向かい合ってトンネルを掘り、手を繋ぐ。

    「届いた」
    「あったかいですね、アズサちゃん!」
    「うん。あったかい」
    「まるで恋人みたいだな」

    山の下で手を繋ぎながら呟くと、ヒフミは汗ばんだ手をぎゅっと握ってくる。

  • 1024/11/13(水) 19:13:48

    この辺りで、腹の虫が鳴く。
    少し早い気もするが、夢中になって体を動かせば、補給が必要になるのは当然だ。

    私たちはヒフミが調べてくれた海の家にやってくる。

    「はいよ」

    店員はひとりだけ。DJ B.o.Bという名札がある。人生に疲れたような顔をしているが、諦めたような雰囲気ではない。
    彼もまた、挑戦の途中なのだろう。

    「料理人じゃねえから、美味くはねえが……そのぶん安くしとくぜ」
    「ありがとうございます」
    「いいってことよ。お嬢ちゃんみたいな客なら、大歓迎だ。アウトローはもうこりごり……と、今のは独り言だ。忘れてくれ」

  • 1124/11/13(水) 19:15:40

    どうやら私は、アウトローに見えていないらしい。
    普通の少女。ヒフミと同じ。

    ……嬉しい。
    そして、僅かに切ない。

    サオリはどうしているだろう。どうしても、私の思考にはアリウスのみんながついてくる。
    今はヒフミとの時間なのに。私が不安そうにしていたら、ヒフミも不安になってしまう。

    私は誤魔化すように、焼きそばを口に運ぶ。

    「うん。食える」
    「そうかい」
    「私もおいしいと思います。もっと人を雇って、お店を大きくすれば……」
    「悪いが、今のところ成り上がる気はないぜ。今は錆びついた腕前と泥まみれの心を磨いているところなんだ。それに、バイトを雇うのも怖くてかなわねえ」

    店主との会話をこなしつつ、私の腹は満たされていく。
    なんとなく、彼とここで会ったことは、不思議な縁のような気がしてならない。ただの勘でしかないが。

    「ありがとうございました」

    丁寧にお礼をするヒフミを真似て、私も少しだけ頭を下げる。
    またひとつ、新しくなれた。そんな気がする。

  • 1224/11/13(水) 19:20:11

    午後はのんびりと過ごすことに決めた。
    あらかじめ持ってきていたシートを使い、日光浴だ。

    「ねえ、アズサちゃん」

    サングラスをかけたヒフミは、感慨深そうに呟く。

    「今、楽しい?」

    実に抽象的で、捉えどころのない質問だ。
    だが、私は明確に答えられる。

    「うん。楽しい」

    ヒフミといるから。そう答えたかったが、やめておく。なんとなく、重さのようなものを感じたから。

    言葉には重さがある。乗せられた想いの分だけ、重さが増える。私はそれを知っている。
    だから、言わない。今日は水着で身軽になって過ごす日だから。

  • 1324/11/13(水) 19:22:22

    私はそよ風を肌で感じながら、ふと我に帰る。

    「やっぱり、これは水着だったんだ」

    体の要点を隠す機能に問題はない。店主も指摘しなかった。ならば、私の感性が間違っていたということなのだろう。
    紐のような水着もある。新たな知見だ。

    「ありがとう、ヒフミ。私にこれを着せてくれて」
    「あ、あはは……」

    ヒフミは困った時の笑い方をしている。
    隠し事があるのか、それともかける言葉に迷っているのか。

    私はまだ、正解を導き出せていないのだろうか。そう思ったところで、ヒフミの方から白状してくれる。

    「実は、それ……結構危ないデザイン、らしいです」
    「危ない?」

    爆発物を仕込む余地はなさそうだが。そう考えていると、ヒフミが補足説明をしてくれる。

  • 1424/11/13(水) 19:25:24

    「私も先生から聞いて、初めて知ったんです。それが一般的な水着からかけ離れた、ちょっとコハルちゃんには見せられないタイプのデザインだって」
    「コハル……」

    なるほど。コハルのように純朴で、正義感のある人物は着ないのか。

    「なら、少し背徳的で大人な水着ということか」
    「……まあ、その認識で合ってると思います」

    ようやく正しい知識に辿り着けた。
    ヒフミが顔を赤らめていたのも、私にこれを着せた罪悪感によるものか。

    しかし、一度はヒフミ自身が着ようとしていた。そもそも、この場に持ってきていた。ならば、ヒフミはこれをどう思っているのだろう。

    私は体を横に向けて、ヒフミに水着姿を見せる。

    「ヒフミはどう思う?」
    「えっ!?」

    ヒフミは突然大きな声を出して、上半身を起こす。

    「ど、どうって……」
    「この水着を着た私を、どう思う?」

  • 1524/11/13(水) 19:28:49

    ヒフミは湯気が出そうなほど赤くなっている。
    日光浴のしすぎだろうか。

    「すごく……」
    「すごく?」
    「魅力的、だと、思います……」

    やっぱり、そうか。
    ヒフミはファウスト。銀行強盗だってする。ならば、背徳的な大人の水着も、魅力的に感じるのだろう。もとより悪党としての一面があるのだから。
    自分で着る分にはよかった。だから持ってきた。しかし、私に着せるのは気が咎めた。私を悪党にしたくなかったから。

    「ヒフミは優しいな」

    私はヒフミのところまで這っていき、隣に寝そべる。
    ヒフミの腕に、ぴとりと縋り付く。

    「でも、私は……ヒフミがしたいことを、応援したい。今日みたいに戦車で旅行に来てもいいし、ペロロジラのために金庫を襲ってもいい」
    「アズサちゃん……」
    「なんだってできる。だって、友達だから」

    ヒフミは私の肩をぎゅっと掴んで、引き寄せる。
    抱き合うような形になってしまった。日光浴の最中だというのに。

    「アズサちゃん。私、とても幸せです」
    「いい1日にできたなら、よかった」
    「きっと明日も、いい日になりますよ。アズサちゃんが隣にいてくれたら」

    私たちは顔を見合わせて、笑う。

  • 1624/11/13(水) 19:31:01

    日が傾く前に、お待ちかねの水泳だ。
    私は海水のしょっぱさを口いっぱいに感じながら、多少上手くなった泳ぎを自慢する。

    「これでも少しは練習したんだ」
    「でも、あんまり奥には行かないようにしましょう」

    危険だから。そう言われると、納得だ。自分を過信してはならない。昔、よく言われたことだ。

    私たちは少しだけヒリヒリする体で、夏の恩恵を全身に浴びる。
    この思い出だけでも、きっと一生を戦い抜ける。そんな確信を胸に抱きながら。

  • 1724/11/13(水) 19:34:45

    日が傾いてきたところで、帰り支度をする。
    海水を洗い流し、問題児のクルセイダーへ。

    「ねえ、アズサちゃん」

    ヒフミは戦車からカメラを持ち出し、懇願するような目でこちらを見てくる。

    「写真に残しても、いいですか?」

    むしろ、今まで撮っていなかった方が不思議だ。あの時の海水浴は、たくさん写真に残っているというのに。

    「何枚でも構わない。フィルムが尽きるまで撮るべきだ」
    「えっ。そんなに積極的に……。そ、そこまで言うなら、ちょっとポーズを……」

    ヒフミは私の周囲をぐるぐると動き回り、やけに熱のこもった視線と共に激写し続ける。
    腕を上げて3枚。片目を閉じて3枚。座り込んで3枚。ようやく腕を下ろして3枚。

    「あっ、翼……。そうか、翼!」

    さっきまでのポーズに、翼の動きを加えて……更に3枚ずつ。

    「写真家になりたいのか?」

    私が問いかけると、ヒフミはぐるぐると目を回しながら笑う。

    「アズサちゃんとの大切な思い出を、目と脳とあらゆる機材で、焼き付けておきたいんです!」
    「それなら仕方ない」

    これもまた、彼女が言うところの、青春の物語なのだろう。私の水着姿をアーカイブ化して、いつまでも保存するつもりのようだ。

  • 1824/11/13(水) 19:38:26

    「じゃ、じゃあ次は、次はッ……!」

    息を荒くしながら、ヒフミは唐突に周囲を見回す。
    敵兵を警戒するような……いや、違う。天敵から逃げる時の、ケダモノの目つき。

    「クルセイダーちゃんの中で!」
    「海じゃなくてもいいのか?」
    「十分撮りました!」

    私はヒフミの圧に押されるがまま、戦車の中へと戻される。

    「我ら学生にとって、水着は戦いの装束……。だからこそ、私はその水着を買いました。先生には止められてしまいましたけど!でも!あのとき素敵だと思った感性は!大事にしたかったので!後日、結局買ってしまいました!」
    「そんな思い入れがあっ……」
    「だから、アズサちゃんが気に入ってくれて……とても嬉しいです!」

    ヒフミは感極まって泣いている。
    ……えっ。そんなに?そんなに嬉しいのか?

  • 1924/11/13(水) 19:40:42

    もしかすると、モモフレンズを共有できた時の喜びが蘇ってきているのかもしれない。
    価値観の共有。同じものを愛し、同じ心を持つ。なるほど。それなら納得だ。

    「アズサちゃん。今日は本当にありがとう!」

    ヒフミはこれ以上ないほど可愛らしく、美しく、魅力に満ち溢れた笑みをたたえる。

    私が喜んでいる時、ヒフミも喜ぶ。
    ヒフミが嬉しい時は、私も嬉しい。
    うん。やっぱりそうだ。
    私も釣られて、笑顔になってしまう。

    「こちらこそ。ヒフミと青春ができて、幸せだ」

    私たちはゆっくりと戦車を走らせて、トリニティに戻ることにした。

  • 2024/11/13(水) 19:42:47

    後日。
    ヒフミがバッグの中の大量の荷物を整理している時、あの時の写真が風に運ばれてしまった。

    風下にいたのは、ハナコとコハル。

    「あらあら。これはこれは」
    「!?!??!!?!、!、!?」

    驚いた様子の2人。
    無理もない。同じ補習授業部だというのに、置いていってしまったようなものだからな。

    「その写真は帰り際に……」
    「こ、こここ、これ!これって!これってぇ!」

    コハルがいつも以上に冷静さを失っている。

    「ヒフミと!アズサが!」
    「そうだ」

    私はせめてもの埋め合わせとして、土産話をする。

    「これはヒフミが持ってきた水着なんだが、なかなか面白い見た目をしているだろう?」
    「おや。ヒフミさんがこれを……」
    「私の提案で、交換して着てみることにしたんだ。滅多にない機会だからな」

    あの後も、宣言通りフィルムが尽きるまで、何枚も写真を撮ったのだ。

  • 2124/11/13(水) 19:45:03

    「この紐水着は便利だぞ。普通の水着は海の中で一日中着ていると肌に張り付いてしまうものだが、これは簡単に脱げるし渡せる」
    「渡せる……。つまり、夏の空の下で一日中汗をかいて、砂をかぶって、海水とそれ以外の液体を染み込ませた水着を、ヒフミさんに着せたのですね?」
    「そうだが?」
    「!、??、!?、!!????!!!、!」

    コハルの中の何かが爆発しそうになっている。大人の水着は、正義実現委員会にとって許し難い存在なのだろうか。だとしても、少し落ち着いてほしい。

    「ヒフミにも、やはり似合っていた。選んだ本人だからかな」
    「お互いに水着を……。そんな相互理解の形があったのですね。私も今度、試してみましょうか」
    「えっ、あっ、えっ、ああっ!?」

    コハルは半狂乱になりながら、別の写真を指差す。

  • 2224/11/13(水) 19:46:50

    「こ、こここ、これ、裸!裸じゃない!!」
    「ああ、そうだ」

    黙って目を見開くハナコをよそに、私は当時の失敗談を面白おかしく語る。

    「朝に日焼け止めを塗っていたのだが、写真を撮る頃には落ちてしまっていた。それで、肌がヒリヒリするのが我慢ならなくて、ヒフミが持っていた痒み止めの薬をお互いに塗りあったんだ」
    「塗りあっ……!?」
    「お互いに。それは良いことですね」

    ハナコの言う通り、実に効率が良かった。背中まで簡単に手が届いたからな。

    「分量を間違えて、写真を撮る頃には全身ぬるぬるになってしまったが、これも今思えばいい失敗だった。こうして改めて見ると、まるで溶けたペロロ様アイスのようだな」
    「え……えっ……エッ……!!」

    荷物整理の手を止めておろおろしているヒフミの前で、コハルが叫ぶ。

    「エッチなのはダメッ!!死刑ッッ!!」

    写真の何枚かは、コハルに没収されてしまった。
    食い入るように見つめていたので、きっと大切にしてくれるだろう。思い出のお裾分けができて、何よりだ。

    《完》

  • 2324/11/13(水) 19:47:19

    以上です。ご高覧いただきありがとうございました。

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:11:58

    面白かった!

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:22:51

    安定のコハルオチ

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 20:29:12

    素晴らしいSSだった

  • 27二次元好きの匿名さん24/11/13(水) 22:12:26

    青春濃度が高い良いSSだった

  • 28二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 09:54:59

     ( -_- )

     ( -_.::::..

     ( -.:.::::..

     ..::::.:.::::..

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