〈続きから〉【SS】阿慈谷ヒフミ♂主人公のギャルゲーブルアカ

  • 1R.H24/11/14(木) 00:07:56

    落ちた前スレの続きから

    https://bbs.animanch.com/board/4110935/?res=22

  • 2R.H24/11/14(木) 00:08:53

    翌日/自室


    今日は休日。補習授業部も休みだ。今日は何をして過ごそうかな?最近ずっと補習授業部にいたせいか、普段何をしていたか忘れてしまった。まあとりあえず…


    1.街に出よう

    2.部室に行ってみよう

    3.学園を散歩してみよう

    4.シャーレを訪ねてみよう

    5.ブラックマーケットに行こう

    dice1d5=5 (5)

  • 3R.H24/11/14(木) 00:45:24

    よし、ブラックマーケットに行こう。ペロロ様のグッズの掘り出し物が見つかるかもしれないし。誰かに見つからないよう、早めに出発しよう。


    ブラックマーケット、そこはキヴォトスの中でも有数の無法地帯。あのゲヘナと治安が同じくらいというのだから、その凄まじさが窺える。とはいえここには、トリニティ周辺では手に入らないようなものが沢山あるわけで。

    「ダムダム弾バラ売り、まとめ買いの方がお得だよぅ」

    「山海経から直送、最高にトベるのが入ってるぜ!」

    初めて来た時はこの雰囲気に気圧されたものだけど、もう何度も来ているせいで慣れてしまった。ペロロ様を含むモモフレンズのグッズはブラックマーケットでも取り扱い数が少なく、目を光らせておかないとすぐになくなってしまう。人気があるのは素直に嬉しいけどね。さて、確かこのあたりに……

    「大将、やってる?」

    「坊主、そろそろ来る頃だと思っていたぞ」

    裏路地を少し進んだ先にある、まるでラーメン屋のような見た目の店。暖簾をくぐった僕を出迎えたのは、所々錆びついた一体のロボット。

    「坊主、ご注文は?」

    「いつもの」

    もちろん、この店はラーメンを売っているわけではない。僕が欲しい物は……

    「モモフレンズ、ペロロ様のぬいぐるみシリーズ、新しいのが入ってる」

    「さすが大将。腕がいいね」

    ロボットが取り出したのは、ぬいぐるみではなく3つの箱だった。それほど大きくなく、それぞれ赤、青、緑の色がついている。

    「それは?」

    「中身はご所望の品だ。二つはそこそこの品。しかしたった一つだけ、プレミア付きのレアな品が入ってる」

    「!?!?!?」

    「一つだけ売ってやる。どれにする?」

    「いつものゲームってわけだね」

    この店主、腕はいいのだが、何故か客にゲームを吹っ掛けるきらいがある。それも時には赤字覚悟で。

    「決めた。赤にするよ」

    「毎度!」

    渡された箱を早速開けてみると、そこには…

    1、2 ノーマルペロロ様が

    3 レア物のペロロ様が!

    dice1d3=1 (1)

  • 4R.H24/11/14(木) 00:50:00

    箱の中には、ペロロ様のぬいぐるみが入っていた。それも最近は珍しい、完全にプレーンな、オーソドックスなペロロ様だ。
    「残念だな、坊主。だが、シンプルなアイテムってのも、たまにはいいもんだろう?」
    「……」
    正直、すごく惜しいけど、ブラックマーケットには流儀というものがある。ここは大人しく引き下がろう。

  • 5R.H24/11/14(木) 00:50:45

    「これはおまけだ。次もよろしくな」

    そう言って店主は、

    1 黒い箱を押し付けてきた

    2 白い箱を押し付けてきた

    3ピンクの箱を押し付けてきた

    dice1d3=1 (1)

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 00:54:59

    支援

  • 7R.H24/11/14(木) 01:06:19

    まあ、貰える物は貰っておこう。
    「また来るよ」
    そう言って店を出る。概ね目的は果たしたし、そろそろ帰ろうか。
    その時、サイレンの音が聞こえてきた。マーケットガードだ。どうやら誰かを追っているらしい。巻き込まれたら面倒だし、しばらくこの路地でやり過ごそう。

    「あれ、ヒフミ。久しぶり」

    この声は…
    「シロ……」
    コさん、と言いかけて、背後に立っている少女の姿を見て言葉を失う。制服を着て、覆面を被って、黒いボストンバッグを抱えている、知り合いの姿を。
    「ヒフミ、ちょうど良かった。手伝って欲しい」
    「人違いです」
    面倒ごとは避けたい。早急にここを離れよう。そう思っていたのに。
    「いたぞ、あそこだ!」
    路地の入り口に、こちらを指差すロボット兵が。続いてドタドタと幾つもの足音が聞こえる。
    「まずいッ」
    「逃げよう」
    路地の奥へ奥へと走る僕と覆面の少女。というか、仲間だと思われた!捕まったらまずい…どころか、顔を見られるのも避けたい。何か、顔を隠せるもの…
    「ん、お困りのようだけど」
    何故かドヤ顔をしているような雰囲気のシロ…覆面の少女と目が合う。その手にあるのは、紙袋。
    「顔、見られたくない、でしょ。これが欲しければ、仲間になるべき」

    「そこだー!逃すなー!
    「くっ!」
    マーケットガードは執念深い。ブラックマーケットを抜けるまで、どこまでもどこまでも追ってくる。
    ダダダダダダダダッ!!!
    後ろから銃を乱射する音が響く。当たっても大したダメージにはならないけど、このままじゃまずい
    バスッ
    「え?」
    乱射された銃弾が跳ね回り、そのうちの一つが僕が手に持っている赤い箱を貫いた。衝撃で、手を離してしまう。そして振り向いた僕の視線の先で、落ちた箱がロボットの集団に踏み潰された。

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 01:09:09

    このレスは削除されています

  • 9R.H24/11/14(木) 01:12:42

    今日は散々な目に遭った。結局グッズは潰されてしまったし。
    「はあ」
    ため息を吐きながらバッグを開けると、見慣れない箱が。
    そういえば、おまけを貰っていた。こっちは小さめだからバッグに入れていたんだ。中身は…
    ボールペンだ。何のことはない、側面にペロロ様がプリントしてあるだけの、ただのボールペン。でも、それを見ていると、なんだか元気が湧いてくるような気がする。そうだ。僕だって初めのころはこういうものを集めることから始めたんだ。限定品を変えなくても、手に入れたグッズが潰れてしまっても。また集めればいい。初心を忘れるなという意味で、あの店主はこのおまけを僕に渡したのかもしれない。こういうところがあるから、あの店に行くのは止められないんだ。

    アチーブメントを獲得
    『不良生徒lv.2』

    アイテムを取得
    〈ペロロ様のボールペン〉

    フラグ[アビドス廃校対策委員会]を獲得

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 02:59:49

    10

  • 11二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 13:04:24

    保守

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/14(木) 23:19:56

    保守

  • 13R.H24/11/15(金) 00:02:22

    数日後/補習授業部の部室

    「さて、皆さん。今日は第一次学力試験の日です。ここで全員合格すれば、晴れて補習授業部を卒業できます。逆に不合格であれば、強制的に一週間の合宿になります。そうならないように頑張りましょう!」
    と、一応部長らしく挨拶をしてみる。頑張るのは僕もなんだけどね。
    「私の実力を見せてあげるわ!」
    「うん、始めよう」
    「あらあら、ふふふ」
    それぞれ自信があるみたいだし、きっと大丈夫。
    「それじゃ、試験、開始!」
    先生の合図で、学力試験が始まった。

    「さて、先生。結果発表をお願いします」
    「ん、うーん、そうだね……」
    妙に歯切れの悪い先生が発表した試験の結果は以下の通り。
    阿慈谷ヒフミ 72点
    白洲アズサ  32点
    下江コハル  11点
    浦和ハナコ  2点
    結果 不合格

    「あれ?」
    「残念。紙一重といったところだな」
    「う……今回のテストは難しかったから……」
    「あらあら〜」
    三者三様の反応を見せる少女達。それを見て、絶句する僕と先生。
    「合宿決定、だね。ヒフミ……」
    「あはは……」
    泣きたい。

  • 14R.H24/11/15(金) 00:02:51

    翌日/ティーパーティー専用テラス

    コンコン
    「失礼します。桐藤ナギサ様の招待に応じ、参上いたしました」
    「どうぞ」
    試験の後、僕はナギサ様に呼び出されていた。遠慮しつつも着席する僕に、ナギサ様が話しかけてくる。
    「まずは試験、お疲れ様でした。結果も、既に聞き及んでいます」
    「あ、あはは…そうですか…」
    「そんな顔をなさらなくても、私はヒフミくんを責めるつもりはありません。大体これくらいの結果になることは予測していましたし、そもそも点数がどうであれ、本質的には関係ないのです」
    「?ナギサ様、それはどういう…?」
    「ええ、ここでヒフミくんにはお話しておかなければなりませんね。私が補習授業部を作った、本当の理由を」
    それからナギサ様が語ったことは、耳を疑うような、ありえないような真実だった。

    「さて、前提条件が共有されたところで、ヒフミくんに改めてお願いします。補習授業部に潜む、トリニティの裏切り者を探して欲しいのです」
    「しかしナギサ様…」
    「協力していただけないというのであれば、それでも構いません。ただし、このままではヒフミくんも、裏切り者と同じ末路を辿るということをお忘れなく」
    「ナギサ様!」
    「お話は終わりです。帰っていただいて結構ですよ」
    ここでできる話はここまでみたいだ。
    「失礼しました」
    どうしよう。こんな話を聞いて、僕に何が出来るというのか。誰かに相談するべきなのだろうか?それとも…。

  • 15R.H24/11/15(金) 00:07:33

    数日後/トリニティ総合学園別館

    「やっと着いたー!」

    ティーパーティーから貸し出された合宿所は、トリニティの校舎から数十分歩いた先にあった。長い間使われていなかったとはいえ、管理はされていたようで、しばらく過ごすのに支障はなさそうだ。

    「よし、じゃあ早速勉強を」

    「いえ、待ってください。勉強の前に、まずやるべきことがあります」

    「?」

    「お掃除、ですよ」

    「うん。衛生面は実際の戦場でも士気に関わる重要な要素。優先的に整えておくべきだろう」

    と、いうわけで、全員体操服に着替えて掃除をすることになった。スクール水着で掃除をしようとする浦和さんを説得するのに、しばらくの時間を要した…。


    「さて、それじゃ、場所を分担してそれぞれ掃除をしよう」

    「そうですね。本校舎に比べてそんなに広くはないとはいえ、5人だけではちょっと時間がかかりそうですし、効率的にいくべきだと思います」

    割り振りを行い、それぞれ掃除に取り掛かった。


    「ふう、こんなところか」

    外の草むしりを引き受けたけど、このペロロ様印の草刈りマシンがあれば大したことはなかった。早く終わってしまったし、みんなを手伝いに行こうかな?大変そうだったところといえば…


    1.廊下とお手洗いとシャワー室

    2.ロビー

    3.寝室

    4.教室

    dice1d4=4 (4)

  • 16R.H24/11/15(金) 01:17:12

    確か教室を、先生が担当してくださってるはずだ。ただでさえ迷惑をかけまくっている先生に掃除まで手伝わせるのは心苦しい。サポートして少しでも早く終わらせるべきだろう。まあ、あの先生のことだ。もうとっくに全部終わらせているかもしれない。
    「先生、お手伝いしにきました」
    「うぇっ!?」
    ガラリと扉を開けて、僕は言葉を失った。床にはゴミと埃が敷き詰められ、机や椅子が横倒し、もしくは逆さまになって転がっている。それによく見ると、床や壁が水浸しだ。おまけに天井には、何本か箒が突き刺さっている。そして惨劇の教室の真ん中で、腕まくりをした先生が仁王立ちしながらばつの悪そうな顔でこっちを見ていた。
    「先生?」
    「何かな、ヒフミ?」
    「何があったんですか!?」
    「…私、掃除が苦手なんだよ」
    「苦手ってレベルで片付けられる範疇を超えてますよ!?何があったら天井に箒が突き刺さるんですか!?」
    「だからね、掃除をしようとしたら、教室の中で虫とネズミがシェアハウスをしてたわけ。半分パニックになりながら追い出そうとしてたら、ゴミ箱をひっくり返したり、机や椅子を蹴飛ばしたり、箒を投げつけちゃったり…それで収集がつかなくなって、教室を丸ごと水洗いしたら、いいんじゃないかって……」
    「……」
    言葉を失う。これが、いつも格好いい先生の
    掃除の実力だというのだろうか。
    「あの、ヒフミ?大丈夫だよ?ここは私がなんとかするから」
    「いえ、先生はもう十分に働いていますから、休んでいてください。あとは僕がやっておきますから」
    「うん、ありがとう。でも、せめて手伝わせて」
    「わかりました。では、一緒に頑張りましょう。まずは…濡れているので本当は良くないのですが、箒でゴミと埃を集めてしまいましょうか」
    言いながら、掃除用具入れを開く。あれ?
    「先生、この教室、箒はないんですか?」
    黙って天井を指差す先生。机を積んで届くだろうか。

  • 17R.H24/11/15(金) 01:18:09

    「やっと、なんとかなった、かな」
    正直、細かいところをどうにかする余裕はなかったけど、最低限使えるところまで回復したはずだ。
    「おつかれ、ヒフミ。ごめんね、余計な手間を増やしちゃって」
    「いえ、大丈夫ですよ。こうやって、なんとかなりましたし。…これは?」
    先生がペットボトルを差し出してきたので受け取る。
    「カフェオレだよ。掃除を頑張ったご褒美と、お詫びも兼ねて」
    キャップを開けて、一口。コーヒーの苦味がミルクと砂糖で覆い隠され、甘いまろやかな風味が広がる。疲れた体と頭に染みるようだ。

  • 18R.H24/11/15(金) 01:18:23

    「そう言えば、この掃除の腕前で、普段はどうしてるんですか?シャーレの部屋はそんなにきたな、散らかってると思わなかったですけど」
    「うーん、何日かに一度、シャーレの部屋を掃除しにきてくれる子達がいるんだよ。その子達には「一週間に一度以上は必ず来るようにしますから、何があっても絶対にご自分で掃除をしようとなさらないでください」と釘を刺されててね。おかげでシャーレは今日も綺麗だよ」
    「なるほど…」
    「その、さ。やっぱり、ちょっと幻滅だよね?大人である私が、掃除すらまともに出来ないなんて。できる限り生徒に信頼される先生でありたいから、普段は隠すようにしてるんだけど、ほんとは私、料理洗濯とか、家事全般ダメで。生徒の模範であるべき先生がこんなのなんて、信頼を裏切るような…」
    「そんなことないです」
    結構今回の失敗がこたえてるみたいだ。元気がない。僕に弱点を知られたことで信頼を失ったんじゃないかと心配しているらしい。けど。
    「この程度のことで、先生を信じられなくなるわけないじゃないですか。確かに先生の掃除の腕は壊滅的かもしれませんが」
    「うぐ」
    「先生が、誰よりも僕らのことを考えてくれていること、知ってます。きっとみんな知ってると思います。先生がいつも優しくて、綺麗で、そして時々すごくカッコいいということ、誰もが知っています。むしろ、ちょっとぐらい弱点があった方が親近感が湧くんじゃないでしょうか。僕も、完璧超人じゃない先生のことが、もっと好きになりました」
    精一杯の言葉を伝える。
    「そっか、そうだよね。生徒に信頼されようっていうんだから、私も生徒を信じなくちゃ。ありがとう、ヒフミ。ちょっと元気出たよ」
    「っ!それならよかったです」
    「あと。軽々しく好きとかいうんじゃないよ。それは好きな人への告白の時にでもとっときなさい」
    「あっ、すみません。慌てるとすぐ本心が口に出ちゃうのが、僕の悪い癖なんです」
    「…………うーん、先生はヒフミのことが心配になってきたかもしれない」
    何はともあれ、大掃除はそろそろ終わりそうだ。

    /先生の好感度が上がった/

  • 19二次元好きの匿名さん24/11/15(金) 12:34:32

  • 20二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 00:24:02

    それぞれの持ち場を掃除し終わった僕たちは、もう一度外で集まることにした。
    「結構綺麗になったわね。気持ち良い」
    「うん、悪くない」
    「これで掃除は終わりかな?」
    「いえ、あと一箇所だけ残ってますよ。こちらです」
    浦和さんに連れてこられた先は。
    「プール?」
    「はい。この屋外プールを掃除して、大掃除の締めと致しませんか?」
    「しかし、補習授業に水泳の項目はなかったはずだけど?」
    「試験に関係ないなら、別にこのままでいいじゃん。掃除する必要ある?」
    「それは…よく考えてみてください。キラキラと水の輝くプール。はしゃぎ回る生徒たち。素晴らしいと思いませんか?」
    「え、何!?私にはわからない次元の話してる?」
    確かに試験には必要ないかもしれない。けれど、こうして放置されているプールを見ていると…
    「なんだか寂しい気持ちになるね」
    「きっと昔は沢山の生徒たちで賑わっていた場所だろう。それなのに、いつかこうして寂れてしまう。「vanitas vanitatum」…それが、この世界の真実」
    「ばに…?」
    「古代の言葉ですね。「全ては虚しいものである」…確かにそうなのかもしれません」
    ハナコさんは一度言葉を切った後、意を決したように言う。
    「アズサちゃん、コハルちゃん、ヒフミくん。今から遊びましょう!」
    「えぇっ!」
    「今から掃除して、水を入れて、飛び込んだりしましょう!明日からは毎日勉強…今のうちにここで楽しく遊んでおかないと!さあさあ、はやく濡れてもいい格好に着替えてきてください!」
    「うん。たとえ全てが虚しいとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。待ってて」
    「はやっ、アズサさん…」
    「さあ、ヒフミくんとコハルちゃんも。濡れてもいい格好に!さあさあ!」
    「ハナコ、なんだか目が怖いよ…」
    「補習授業には関係ないんでしょ、なんで私まで…」
    「コハルちゃん…」
    「な、なんで無言で近寄ってくるわけ…え、あ、ちょ、わかった、わかったからこっち来ないで!」
    走り去るコハルさん。うーん、あんまり気乗りはしないけど、仕方ないか…。

  • 21二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 00:24:59

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 00:27:48

    こういうss書ける人尊敬する

  • 23二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 01:07:32

    「……」
    「……」
    「……」
    「さて、それでは、プール掃除を始めましょうか?」
    「「ちょっと待って!」」
    コハルさんと声がハモる。
    「どうして制服なの!あんたはどうしていつもそうなの!」
    「ハナコさん、汚れるかもしれないし、制服は流石に…」
    「ふふ、心配ありませんよ。中にちゃーんと着てるので♡それとも、そんなに私の水着姿を見たいんですか♡」
    「ハナコさん!?」
    「コハルちゃんとヒフミくんがどうしても、と言うのであれば、披露するのも吝かではないのですが…」
    「な、何言ってるわけ…」
    「どうですか。言ってくれないんですか?」
    「あ、あわわわわわ…」
    半分くらいパニック状態のコハルさん。そこに助け舟が出される。
    「みんな、そろそろ掃除に取り掛からないと、時間がなくなる」
    「そ、そうだね、アズサさん。早速掃除を始めよう!」
    「ふふふ、それでは改めて、お掃除始めましょうか♡」
    「見てください、虹ですよ!虹!」
    「こちらのブロックは完遂した。続けて次のブロックに向かう」
    「うぅ、どうしてこんなことに…」
    水が弾け、日に当たってキラキラ光る。そして三者三様の少女たち。それも水着姿の。目のやり場に困る…!さっきまでハナコさんが変な話をしてたせいで、余計に意識してしまう…コハルさんは上着がぶかぶかなせいでほとんど水着見えないのがなんかあれだし、アズサさんはポニテ似合ってるし、ハナコさんはスカートで掃除するのは諦めてくれたけど、ということは下だけ水着ということに…もしかしてスカートのままの方が良かったんじゃ…というかスクール水着じゃないんだ…どっちを向いても見ちゃいけないものが映り込んで、目が休まらない…!あ、プールサイドの先生なら。ふと顔を上げた先生と目が合う。ひらひらと手を振ってくる先生に手を振り返す…。
    バシャッ
    「うわっぷっ」
    「ふふふ、ヒフミくん、集中しないといけませんよ!」
    「わわ、わかったから、ホース下げて…」

    掃除は意外とはやく終わったものの、水を入れるのに思ったより時間がかかり、水が溜まった頃には日が暮れてしまっていた。

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 01:08:52

    「流石にこの時間から勉強というわけにもいかないですね。今日は早めに休んで、明日からまた頑張ることにしましょう」

    「ん、今日は疲れた…」

    「コハルちゃんもおねむみたいですし、早めに寝るのは賛成なのですが、一つ問題が……どうやら寝室が2部屋しかないようなんです。一つは先生の部屋として、もう一つを私たちの部屋とすると…」

    「何か問題が?」

    「なるほど、確かにそれは…」

    僕たちは生徒4人、先生1人。大人である先生を生徒と同じ部屋に寝かせるわけにはいかない。けれど、男である僕が、みんなと一緒の部屋というのは…

    「ヒフミ、私の部屋で寝る?」

    「!?!?!?どどど同衾!?エッチなのはダメ!」

    「コハルちゃん、おねむだったはずでは?」

    「私は別に、ヒフミが同じ部屋でも気にしない」

    「!?!?!?!?大人数!?余計にダメ!ていうか私を巻き込まないで!」

    「コハルちゃん、深夜テンションなんでしょうか…」

    結局、僕は廊下にマットレスを引いて、毛布に包まって寝ることになった。意外と快適で、すぐに眠れそうだ。そのはずだったのだが…

    「ね、眠れない」

    眠ろうとするほど、頭に色々なことがよぎって頭が冴えてしまう。どうしようか。誰かわからないが部屋から出て行ったような気もするし…少し散歩でもしてみようか?

    1.ロビーの方に行く

    2.教室の方に行く

    3.2階に行く

    4.先生の部屋を訪ねる

    dice1d4=1 (1)

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 11:48:53

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/16(土) 15:06:52

  • 27二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 01:27:18

    本日休載

  • 28二次元好きの匿名さん24/11/17(日) 13:13:19

  • 29二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 00:36:39

    ロビーの方に歩き出す。廊下には外から微かな月明かりが差し込み、暗いながらも歩くのに困るほどじゃない。歩きながら、考える。
    (「トリニティの裏切り者を探して欲しいのです」)
    ナギサ様は確かにそう言った。補習授業部はゴミ箱だ、とも。いざとなったらまとめて捨てるのだと、そう言った。
    本当に、補習授業部にエデン条約を阻止しようとする裏切り者がいるのだろうか?あの3人の内の誰かが?ありえない。みんなどこか普通とは違うところもあれど、それでも普通の女の子だ。誰かを傷つけるようなことを望んでいるとは思えない。
    それに、もしも本当に裏切り者がいたとして、僕はどうすればいいんだろうか?ナギサ様に伝えるのか?伝えて、そうしたらその子は捕まって、監獄に入れられて、とても恐ろしい目に遭うのだ。そんなことをしたくないと思うのは、僕が臆病だからなのだろうか。裏切り者が捕まって拷問を受けるとすれば、その子をそこに追いやるのは僕なのだ。疑いたくないのは僕が傷つきたくないだけなのか、それとも。

    「ヒフミ?」

  • 30二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:26:38

    気づけば、ロビーにいた。いつの間にかかなりの距離を歩いていたらしい。そしてロビーには、先客がいた。
    白洲アズサがそこにいた。月光を反射して輝く銀髪は、この世のものとは思えないほど幻想的だ。ガラス玉のような薄紫色の目を少し見開いて、僕を見ている。
    「ヒフミ、どうしてここに?」
    「えーっと、眠れなくてちょっと散歩に…アズサさんは、その…どうして制服なの?」
    さっき寝室に入った時は体操服姿だったのに、今目の前にいるアズサさんはいつもの制服姿だ。銃まで携帯している…のはいつものことか。
    「私も、眠れなくて。襲撃があってもみんなを守れるように、見張りをしている」
    「しゅ、襲撃?見張り…」
    予想外の言葉だ。僕の知る限り、夜襲を警戒しなければならないほど、トリニティの治安は悪くないはずだ。
    「襲撃なんてきっとないと思うよ。そんなに警戒しなくても…」
    「そんな保証はどこにもない。常に全ての可能性を想定して動くのが、戦場の常だ」
    「……」
    戦場。いつもそうだ。アズサさんはいつも、実戦を想定した行動をしている。そしてその戦闘力は、正義実現委員会相手に1人で3時間も戦い続けられるほどのものだ。一般のトリニティ生に、そんなことができるだろうか?いや、きっとできない。これまでどんな生活を送れば、彼女のような少女が生まれるのだろう。話に聞くゲヘナのように、常に身の危険を感じるような場所だったのだろうか。もしくは……いや、そんなことを考えるのは意味がない。それに、アズサさんはなんとなく、このことについて詮索されたくないと思っているような気がするし。
    「そういうわけだから、ヒフミ。私のことは構わず、寝て。私は5日は寝ないで見張りができるけど、ヒフミはそうじゃないでしょ」
    もう話は終わったとでも言うように、玄関の方に向き直るアズサさん。淡い逆光になったその背中は、なぜだかいつもより小さく見えた。
    だからだろう。
    「アズサさん」
    「何、ヒフミ」
    「僕も見張り、手伝いたいな」
    こう提案したのは。

  • 31二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:29:02

    2人並んで、玄関の方を向いて立ち尽くす。見張りとは、こういうものなのだろうか。思わず見張りの手伝いを申し出たものの、見張りというのは本来、何事も起きなければあまりに退屈な役目なのだろう。そして今の状況で、何事かが起きるはずもなかった。
    「あの、アズサさん」
    「何、ヒフミ」
    「ただ立っているだけなのもあれだし、何か話さない?自分から申し出ておいて、勝手だとは思うんだけど」
    「いや、仲間と話し続けることで眠気と退屈を紛らわすというのは、見張り慣れしてない新兵にとっては有効な手段だ。ヒフミは慣れていないみたいだし、仕方ない」
    「あはは…」
    「で、何を話すの?」
    「あ、えーっと…」
    考えていなかった。僕から話しかけておいて話題を相手に任せるなんてダメ男もいいとこだろう。
    「えっと、今日はいい天気だね?」
    会話下手くそか!
    「うん、そうだな。こういう日は見通しがいいから、見張りをする上では有利だ。逆に襲撃をかける側には不利だから、こういう日に動くことは少ない」
    「そうなんだ」
    「うん」
    「……」
    「……」
    会話終わっちゃったよ。再び静寂が2人の間に流れる。何か、別の話題……
    「えっと、アズサさんって、何か趣味とかあるの?」
    合コンか。ダメだ、普段あんまり人と話さないから、こういう時どんな話をしたらいいかわからない。
    「趣味か…難しいな、そういったことはあまり考えたことがない」
    「毎日していることとか、休みの日にすることとかは?」
    「銃の手入れは毎日している。常に周囲の状況に気を配り、突然の襲撃に備え遮蔽物や退路の確認は欠かさない。休日も、いざという時の避難場所やトラップの有効な設置場所を探したりしている」
    趣味にしては物騒だな……
    「でも、これはきっと趣味じゃない」
    「そうなの?」
    「趣味というより、むしろ…」
    アズサさんは言葉を切って俯いてしまう。趣味でないなら、なんなのだろう。

  • 32二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:29:26

    「ヒフミは?何か趣味があるのか?」
    「僕?僕は、モモフレンズのグッズを集めたりしてるかな」
    「モモフレンズ?聞いたことがない」
    「ええ?知らない、あのモモフレンズを?」
    「生憎そういうものには疎い。それはどういうものなの?」
    「!ええとね、モモフレンズはキヴォトスで大人気のキャラクター達でね、ペロロ様やウェーブキャットをはじめとした個性的なキャラが揃っていて、ああ、実際に見ながら説明した方がわかりやすいかな、でも今何も手持ちのグッズがない…スマホもないし、待ってて、今取って…」
    「ヒフミ」
    ちょいちょいと袖を引っ張られる。
    「ヒフミ、声大きい」
    「あっ」
    そういえば今は夜で、それも見張りの途中だった。モモフレンズのことを聞かれてつい興奮してしまった。反省しなきゃ。寝室の方を向きかけていた体を戻す。
    「でも、そんなにも夢中になれる何かがあるというのは、いいことだと思う」
    「そうかな」
    「きっとそう。私には、そういうものがないからわからないけど」
    「アズサさんにもきっと見つかるよ」
    「そうかな」
    「そうだよ」

  • 33二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:32:29

    っと、話が脱線してしまっている。何の話だったか。そうだ。
    「他の休日の過ごし方といえば、えっと、時々だけど、ナギサ様に呼ばれてお茶を飲んだり……」
    (「トリニティの裏切り者を探して欲しいのです」)
    ナギサ様のことを考えたら、憂鬱なことまで思い出してしまった。ナギサ様の命令は絶対。だけど、僕に仲間を疑えだなんて、そんなことできるわけない。裏切り者…
    「ヒフミ?」
    「裏切り者…」
    「ッ!」
    気づいた時には、言葉に出ていた。口に出してはならない言葉だ。
    「えっと、これは」
    「……」
    「これは、そう、映画の話で。主人公が仲間の裏切りを知ってしまって、本部に伝えるかどうかで葛藤するシーン。一体どうするのが正解なんだろうって」
    「……」
    「い、いや、何の話だろうね、あはは…なんでもないから気にしないで」
    「ヒフミ」
    強い口調だ。顔は俯いたまま、それでも何か強い感情が彼女の中に渦巻いているのを感じる。
    「もし裏切り者がいて、その裏切りが発覚したんだとしたら、その末路は一つだけだ」
    「それは…」
    「処刑だ。逆に、誰かの裏切りを知ったとしたら、その時は一刻も早く上官に伝えるのが義務だ」
    「それがもし、仲間でも?」
    「当然だ。裏切った時点でそれはもう仲間じゃない。敵だ。いつか自分を脅かすかもしれないのに、放置はできない」
    「悲しく、ない?」
    「悲しくても、必要なことだ。裏切りとは、そういうものだから」
    ひと言ひと言、噛み締めるように話すアズサさんは、見ていてなぜか痛々しい。戦闘において、僕よりよっぽど知識のあるアズサさんが言うのだ。それはきっと正しいのだろう。

  • 34二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:32:48

    だけど、そう思えば思うほど、やっぱり納得はできない。
    「僕は嫌だ。だって、そんなの悲しすぎる」
    「甘いな、ヒフミ。戦場でそんなことでは、自分だけじゃなく仲間まで危険に晒すことになる」
    「それでも。見捨てるようなことはしたくない。事情があるなら話して欲しい。困ったことがあるならできる限り手伝いたい。そしてその結果がどうなろうと、最後まで見届けたい」
    そうだ。僕が仲間を疑いたくないのは、誰かを傷つけることが怖かったからじゃない。僕が傷つくのが怖かったからじゃない。
    「僕は仲間を信じたい。信じて、その責任は自分で取りたい。それを人任せになんてしたくない」
    いつの間にかアズサさんは顔を上げていた。薄闇の中でも輝く瞳が、こちらをじっと見ている。そしてその表情がふっと綻んだ。
    「やっぱり甘いな、ヒフミ。でも、ヒフミはそれでいい。兵士には向かないけど、ヒフミは兵士じゃないんだし。ヒフミは普通の生徒だ。だから、私が守る。ヒフミがヒフミでいられるここを、守ってみせる」
    そして、また正面に向き直る。月明かりに照らされる横顔は、いつものように無表情だけど、どこか雰囲気が柔らかいように感じた。

  • 35二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 01:34:33

    「さて、もう遅いから、ヒフミは戻って休んだ方がいい」
    「うん。いや、それはアズサさんもだよ」
    「私は…もう少しここにいる。心配しないで、私も直ぐに戻るから」
    心配だけど、アズサさんの意思は固いようだった。仕方ない、先に戻ろう。

    マットレスに寝転んでみるけど、何か落ち着かない。アズサさんはまだ戻らない。まだ見張りをしているのだろう。たった一人で。マットレスから起き上がる。
    「アズサさんが頑張っているのに、何もせず寝るわけにいかないよね」
    意を決して、扉を叩く。
    「先生、まだ起きていますか?」

    /アズサの好感度が上がった/

    {疑惑}白洲アズサ①を獲得

  • 36二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 13:17:11

  • 37二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 00:42:16

    翌日/トリニティ総合学園別館/廊下

    やばい、寝坊した。朝起きたら誰もいなかった。ちょっと焦ったけど、辺りを見渡したらみんなの寝室の扉にメモが一つあるのを見つけた。
    「おはようございます。起きたら身支度を整えて、教室までお越しください。急がず、ゆっくりで大丈夫ですよ」
    とは書いてあるものの、一人だけ寝坊で遅刻は格好悪い。急いで着替え、最低限身なりを整え、ダッシュで教室へと向かった。

    「おはようございます!お待たせしてすみません!」
    駆け込んだ教室は、何故かというか、いつも通りというか、様子がおかしかった。
    「あら、おはようございます」
    ハナコさんはいつもの2割増しでニコニコしており。
    「うぅ……全部見られた……もうダメ……」
    「コハルも私のを見たんだから、何も問題はないはず」
    何故かすごく落ち込んでるコハルさんと、よくわからない励まし方をしているアズサさん。ていうか見たって何を?見られたって何を!?僕が寝てる間に何があったの!?
    「あら、それでは今度は、私がしてあげましょうか♡」
    「はぁっ!?だっダメ!あんただけは絶対に嫌っ!」
    「え、えっと……」
    ツッコむべきなのか?ツッコんでいいのか?
    「おはよう、ヒフミ」
    「先生、おはようございます」
    よかった、先生は普通だ。
    「ところで、ここ、寝癖ついてるよ」
    「うぇっ」
    身なりは整えたつもりだったけど、油断してたか…
    「ちょっと寝坊してしまいまして」
    「まあ、昨日は遅かったからね、しょうがないね」
    「それは先生もでは……」
    「私は……ほら、慣れてるから」
    遠い目をする先生。いいことなのだろうか?

  • 38二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 00:42:42

    「さて、皆さん。早速ですが今から模擬試験を受けて貰います」
    言いながら取り出す紙の束。昨日の深夜までかかって先生と共に仕上げた一品である。昨年にトリニティで行われた試験の問題と模範解答を集め、まとめることで作成した。
    「1週間しかないとはいえ、闇雲に勉強しても効率が悪い。まずはできること、できないことをはっきりさせるところからです!」
    「なるほど」
    「ですね」
    「うぅ、いきなり試験だなんて……」
    用紙を配り、着席する。
    「みんな、準備はいいかな?それじゃ、試験開始!」
    先生の号令と共に、第1次補習授業部模試がスタートした。

  • 39二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 00:43:57

    第1次補習授業部模試結果
    ハナコ 4点
    アズサ 33点
    コハル 15点
    ヒフミ 68点

    「そうか…」
    「え……?」
    「あらまぁ」
    「これが今の僕たちの現実です。このままだと、僕たちに明るい未来はありません。そこで!作戦を考えてきました」
    これぐらいの結果になることは予想通り。先生と話し合って、効率的な勉強法を探し出した。
    「まず、アズサさんとコハルさんは1年生用のテストなので、僕とハナコさんでおふたりの勉強を手伝います。ハナコさん、最近何があったのかわかりませんが、1年生の時の試験は高得点だったんですよね?」
    「ええ、まあ、そうですね?」
    それは、昨夜先生と一緒に試験の情報を集めるときに発見したもの。ハナコさんは、1年生の試験で90点以上を叩き出していた。
    「きっと元々の頭は悪くないはず。不調の原因は追々突き止めるとして、今は教える方に集中してください」
    「……ヒフミくん、すごいですね。昨晩だけでここまで……」
    「あ、いえいえ、先生が協力してくださったおかげです」
    「私だけの力じゃないよ。これはヒフミの頑張りの成果」
    「そして!頑張った方にはご褒美として、この……」
    鞄に詰めてきたものを取り出す。
    「モモフレンズのグッズをプレゼントします!」

  • 40二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 00:44:08

    机の上に大小さまざまなぬいぐるみたちを置く。
    「モモフレンズ?聞いたことがありません……いえ、どこかでちらっと耳にしたような?」
    「何これ、変なのばっか……」
    反応があんまり良くない…?最近人気だし、こんなに可愛いのに!
    「……か」
    「あ、アズサさん?」
    「可愛い……!!!」
    「「「!?!?」」」
    いつも無表情を貫いているアズサさんの顔がふにゃふにゃになっている。
    「可愛い、可愛いすぎる……このふわふわした白くて丸いのも、長くて首に巻いたら暖かそうなやつも、黒いおっきなやつも、みんな可愛い!」
    「アズサさんはこの良さをわかってくれるんだね!」
    やっぱりモモフレンズは人気なんだ。あんまりハナコさんとコハルさんには受けてないみたいだけど……。
    「こ、これをもらえるのか?まさか、選んでいいのか……?」
    「もちろん!アズサさんが欲しいのを持って行っていいよ!」
    こんなに喜んでくれるなんて。モモフレンズファンの一員として嬉しい限りだ!
    「あらあら…」
    「正気?」
    「……やむを得ない、全力を出して任務を果たし、そのふわふわした動物を手にしてみせる!」
    「よし、その意気だよ!」
    よし、僕も燃えてきた。一緒に頑張っていこう!

    「なんか意気投合してるね。仲間ができて嬉しいみたいだ」
    「ヒフミくんが初めて見るような笑顔をしてますね」
    「な、何なの…」

  • 41二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 08:28:00

    ほほ

  • 42二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 09:14:31

    全然健全なギャルゲーだ

  • 43二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 13:27:12

  • 44二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 00:18:52

    その日の夜。今日も僕は、廊下に敷いたマットレスの上で眠りにつく……振りをして皆が眠りにつくのを待った。状況は割と切羽詰まっている。呑気に眠ってはいられない。

    のだが、みんななかなか眠りにつかない、どころかなんかみんな部屋から出て行ってしまったような気がする……


    1 ロビーの方に行く

    2 教室の方に行く

    3 2階に行く

    4 先生の部屋を訪ねる

    dice1d4=2 (2)

  • 45二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 01:33:24

    教室の扉を開け、中に入る。今日は朝から夕方までずっと教室に居て、その上夜まで訪れることになろうとは思ってもみなかった。裏切り者のことは気になるけれど、今は目の前の問題に集中しなければ。差し当たって一番問題なのは……
    「ハナコさん、かなぁ……」
    「私がどうかしましたか?」
    「うわ!」
    突然声をかけられて驚いて思わず叫んでしまった。誰もいないと思っていたが、教室には先客がいたらしい。暗闇に目を凝らすと、机の上に腰掛けたシルエットが薄ら見える。
    「ハナコさん、おどかさないでよ。心臓が止まるかと」
    「ふふ、すみません。全然気づかないものですから、ちょっといたずらしてみたくなっちゃいました♡」
    「もう……ハナコさんは、どうしてここに?」
    「まだいつも寝ている時間より早いもので、少し散歩でもしようかと思いまして」
    「あ、じゃあ僕と同じだ。ところで……」
    今この教室は半分だけ月明かりが差し込んでいる。僕のいる前半分は多少明るく、後ろ半分はカーテンが閉まっているせいでほとんど真っ暗だ。僕がハナコさんに気付かなかったのは、ハナコさんが暗い場所にいたからだった。
    「どうしてそんなところにいるの?こっちの方が明るいのに。こっちに来たら?」
    「ふふふっ、暗い場所には暗い場所なりに利点があるものですよ。例えば、どんな格好でいてもわからない、とか♡」
    「は!?」
    ど、どういう意味だ?
    「ですが、ヒフミくんのせっかくのお誘いですから、恥を忍んで、そちらに行きましょうか♡」
    「え?あ、ちょ、ちょっと待って!」
    「うふふ……♡」
    ずんずんと近づいてくる人影。ど、どんな格好って、一体!?まさか……?わわわ、もうすぐそこまでぇ……。
    「さあ、遠慮なさらずに♡」
    「待って待って待ってぇ!」
    ついにハナコさんの体が淡い月明かりに照らし出される……直前にギュッと目を閉じてそっぽを向く。この目は開けないぞ、僕と彼女の安寧のために!

  • 46二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 01:33:36

    「……ふふふ、ヒフミくんは面白いですね」
    「え……?」
    恐る恐る目を開けて、彼女の姿を目に映す。彼女はいつもの体操服姿だった。つまり、またもや揶揄われていただけだったということだ。
    「うふふっ、どんな格好を想像したんですか?」
    「い、いや、別に何も……」
    しどろもどろになる僕を見てくすくすと笑うハナコさん。コハルさんと話す時といい、こういう時はすごくいきいきとしているな……。
    「からかってしまってごめんなさい。反応があまりに面白いもので♡コハルちゃんもそうですが、ヒフミくんも本当にからかいがいがありますね」
    「心臓に悪いからできればやめてほしいな……」
    「ふふ、善処しますね?」
    信じていいんだよね?

  • 47二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 12:33:17

    「そういえばヒフミくん」
    「ん?」
    少し真剣な声色で話しかけてくるハナコさん。
    「アズサちゃんのことについてなのですが、気付いていますか?」
    アズサさんのこと、といえば、
    「見張りのこと?」
    「知っていたんですね。ええ、アズサちゃんは昨夜、そして今夜も、睡眠時間を削って見張りをしています。恐らく明け方まで」
    「アズサさんは慣れているといってたけど、流石に心配だね……」
    「そうですね。何か悩みがあるなら、相談していただけたらいいんですが……」
    「それはハナコさんもだよ」
    「あら?」
    今までずっと思ってきた。そして今日、一緒に勉強してほとんど確信に変わった。ハナコさんは間違いなく頭がいい。きっと僕たちよりもずっと。そしてそれは、全く衰えてなどいない。
    「ハナコさんが試験で本来の実力を発揮できない理由は僕にはわからない。けれどもし、何か悩みがあってそうなっているなら、力になりたい」
    「……」

  • 48二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 00:12:18

    「言いにくいなら、僕じゃなくてもいい。先生なら、きっとどんな事でもなんとかしてくれるから」
    「……ひとつ、聞いてもいいですか?」
    黙っていたハナコさんが口を開く。
    「そうまでして私を、いえ、私たちを気にかける理由は何ですか?補習授業部は落第の危機に瀕した生徒を救済するための部活だったはずです。そしてヒフミくんはすでに合格点に届いています。もう補習授業を受ける必要はないはずですよね?」
    「それは……」
    ニコニコと微笑みながら問いかけるハナコさんは全くのいつも通りで、なんの感情も読み取ることができない。
    「本当に、全くの善意でしている事なのでしょうか?」
    「……」
    それは違う。僕は好意で補習授業部にいるわけじゃない。必要があるからここにいるのだ。そしてそれを命令したのは……
    「ナギサさん、ですか?」
    「ッ!!」
    「図星、なんですね。つまりヒフミくんは、ナギサさんの指示で動いているだけで、私たちを助けるのは仕事に過ぎないと」
    「ッ違う!」
    最初は仕事だった。今だって、必要に迫られてやっている。けれど、今はそれだけじゃない!それだけじゃないんだ!けれど、それを言ったところで何になる?僕がナギサ様に協力する立場なのは間違いないのだから。
    「……」
    「……ヒフミくんは優しいですね」
    「それは、どういう……?」
    「ほんの少し、嘘とも呼べない嘘をつくだけで、全くの善意だと言うことも、ただの仕事だとも言うこともできるのに、ヒフミくんはそれをしない。ええ、わかっていますよ。ヒフミくんが少なくとも悪意を持ってここにいるわけではないと」
    「僕は、そんないい人じゃないよ」
    「ええ、ええ。わかっています。そういうところが、優しいんです。優しくて、純粋で、高潔。私には、ちょっと眩し過ぎます」
    困ったように笑うハナコさん。それは、いつものハナコさんの笑顔とは少し異なるように見えた。
    「それと、心配しないでください。私の点数の件は、本当に個人的なことなんです。どうなろうとも、誰にも迷惑をかけるつもりはありませんから」
    「ハナコさん……」
    告げるべきなのだろうか。この部のシステムを。でも、告げることで何か致命的な影響があるかもしれないと考えると、僕は何も言えず立ち尽くすしかなかった。

    /ハナコの好感度が上がった/

    {疑惑}浦和ハナコ①を獲得

  • 49二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 00:54:45

    翌日/トリニティ総合学園別館/教室

    今日も、模試を元に苦手を潰すように勉強を続ける。切羽詰まってはいるものの、穏やかな日だ。ちなみに先生はいない。どうしても休めない会議があり、そのついでに色々な仕事を片付けてくるらしい。先生には本当に感謝しかない。とにかく、穏やかな教室。そこで、事件が起きた。
    「コハル、質問」
    「うん、え?私?私に!?」
    「そう、コハルに。今同じところを勉強しているはずだ。この問題なんだけど……」
    「うーんと、これ、確か参考書で見た気がする……ちょ、ちょっと待ってて」
    そんな2人の様子を、少し離れたところで見る僕とハナコさん。
    「あの2人、随分と仲が良くなりましたね。やっぱりお互いにふかぁい所まで、感じあった仲だからでしょうか♡」
    「あ、あの、あはは……」
    反応しなければちょっと冷たいし、反応したらしたで何を言ってもダメそうだから、笑ってお茶を濁しておく。
    「どの参考書だったっけ……これかな?んしょっ」
    とコハルさんが机に一冊の本を出す。参考書にしては少し薄い。ピンク系の色で占められた表紙には、「Rー18」の文字。明らかに、これは……
    「エッチな本、ですね」
    「この参考書に載ってるのか?」
    「え?あれ?うわあぁぁぁっ!?な、なんで!?」
    「コハルちゃん、それエッチな本ですよね?まあある意味参考書かもしれませんが。隠しても無駄です、「Rー18」ってバッチリ書いてありましたよ?」
    いつのまにかコハルさんのそばに移動していたハナコさんが、コハルさんに詰め寄っていく。
    「いや、ちが、見間違い!これは違うの!」
    「私の目は誤魔化せません。確実にエッチなことをする本でした。それも結構ハードな……トリニティ、いえ、キヴォトスでもなかなかお目にかかれない、肌と肌、敏感な部分を擦り合わせ、嬌声が飛び交い理性が飛び去るような……!そんなものをコハルちゃんが持っているだなんて……お気に入りなんですか?」
    「う、うぅ……」
    あ、まずそう。
    「こっ、これはちがうんだってばああぁぁぁぁっ!!」

  • 50二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 00:55:31

    「うっうっ……ひぐっ……ぐす」

    「ハナコさん……」

    「すみません、つい興奮してやり過ぎてしまいました……」

    泣いてしまったコハルさんをなんとか宥め、話を聞ける状態まで持っていく。

    「つまり、正実の活動中に押収した品を、間違えてそのまま持ってきてしまった?」

    「うん……私、押収品の管理とかしてたから、それで……」

    「なるほど、それでしたら、早めに返しておく方がいいかもしれませんね」

    「確かに……ずっと忘れてたけど……」

    「騒ぎになる前に、今から返しに行った方がいいのでは?」

    「ええっ?今から?む、無理よ、私1人じゃ……」

    「1人だけだと危ないし、誰か事情を説明できる人が付いていった方がいいかも」

    「ええ、ではヒフミくん、誰が行くのがいいと思いますか?あとコハルちゃん、他におすすめの本があればぜひ」

    「あんたはもう黙ってて!!」

    誰が行くのがいいだろうか?


    1 ハナコさんに頼む

    2 アズサさんに頼む

    3 自分で行く

    dice1d3=3 (3)

  • 51二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 12:32:30

  • 52二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 23:52:53

  • 53二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 00:43:41

  • 54二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 11:45:49

  • 55二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 12:22:12

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 23:16:19

    「ここは僕が行くよ」
    「あら、いいんですか?」
    「うん。僕が行った方が、一番しがらみが少ない気がするし……」
    「ああ、ヒフミなら安心だ。襲撃されても、私が援軍に行くまで耐えてくれるだろう」
    「襲撃は、ないと思うけど、ちゃんとコハルさんを守って見せるよ」
    「そうですか。わかりました。では、いってらっしゃいませ♡」

  • 57二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 23:16:52

    と、いうわけで。
    「なんか久々に来たような気がする」
    「うぅ、見つかったら、見つかったら……」
    数日ぶりにトリニティ学園に足を踏み入れる僕と、僕に半分隠れるようにしてついてくるコハルさん。頭の羽で顔をほとんど隠すようにしているため、ちょっと危なっかしい。
    「きゃっ」
    「!…おっとと」
    何かにつまづいて転びかけるコハルさんを、なんとか受け止める。心づもりをしておいてよかった。
    「大丈夫?怪我、ない?」
    「ん…うん、あ、ありがと」
    ぱっと離れていくコハルさん。けれど歩き始めるとすぐに……
    「きゃっ」
    「わ」
    転びかけてしまう。前がまともに見えてないんだから当然か。
    「前見ないと危ないよ」
    「うぅ……わかってるけど……」
    今の僕らはルールを破っているわけで、元正実のコハルさんが気にするのもわかる。けれど、このままだと目的を果たす前に大きな事故が起きそうだ。
    「よかったら、コハルさん」
    「?」
    「前が見えないと危ないでしょ。僕が案内するよ」
    そう言って手を差し出す。一瞬の逡巡の後、それでもコハルさんは差し出した僕の手をおずおずと握ってくれた。
    コハルさんの手を引くように先導する僕。しずしずとついてくるコハルさんは小動物みたいで可愛らしい。僕に妹はいないけど、もしいたらこんな感じかもしれない。

    「着いた。ここだよ、コハルさん」
    正義実現委員会の部室。少し扉を開けて中の様子を伺う。今は出払っているらしい。
    「誰もいないね。今なら大丈夫」
    「う、うん。行ってくる」
    そそくさと部室に入っていくコハルさんを見送る。
    さて、僕がコハルさんについて行くことを申し出たのには理由がある。もちろんコハルさんが心配だったのもあるけど。時間的にはそろそろ……
    「あら、もう来ていたんですね」
    来たようだ。僕と同じくらいの女性にしては高い身長。長い黒髪や大きな翼、ハナコさんにも匹敵するほどの豊満な……コホン、まあとにかく、迫力のある女性。正義実現委員会の副委員長、羽川ハスミその人だ。

  • 58二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 11:12:28

  • 59二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 11:47:17

    「久しぶりですね、ヒフミ。元気そうでなによりです」
    「あはは……お久しぶりです」
    「最近は校区外に侵入して連行、引き渡しなんてことがなくて安心していましたが……今度は苦労しているみたいですね」
    僕がまだ校区外で行動する時のコツを知らなかった1年生の頃、毎回迎えに来てくれていたハスミ先輩には感謝してもしきれない。僕が校区外に行っても捕まらなくなってからは会っていなかったが、ご健勝そうでよかった。
    「終わったわ、ヒフミ。はやく帰りって……は、ハスミ先輩!?」
    戻ってきたコハルさんがハスミ先輩を見て腰を抜かしかけている。
    「コハル、勉強は頑張っていますか?」
    「え、う、はぃ……えぇ?」
    目を白黒させて「なんでここに!?」と思っているのがはっきりと伝わるコハルさん。
    「ヒフミくんから急に連絡がきて驚きましたが、こういう案件なら私を呼んだのは正解ですね。補習授業部は合宿所から出ることを禁じられているわけですから」
    「ヒフミ、ハスミ先輩と知り合いなの?」
    「うん、まあ、昔ちょっとお世話になってね」
    「ええ、本当に手のかかる後輩でしたよ。ところで、持って帰ってしまっていた押収品はどこですか?」
    「あっ、ええと、もう戻して来ました、から……」
    「そうですか。それで、押収品の種類は」
    「あぅ、えと、それはぁ……」
    「ハスミ先輩、それより」
    割り込むように、ハスミ先輩に呼びかける。オロオロしているコハルさんに助け船を出すため、そして、本題に入るためだ。
    「ハスミ先輩。補習授業部について、教えていただけませんか?」

  • 60二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 22:56:59

    これって攻略対象は補習授業部内だけなんだろうか

  • 61二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 01:54:41

    「補習授業部について?それはどういう……」
    「もちろん、補習授業部が作られた目的について、です」
    「なるほど、そういえばヒフミくんはナギサさんと懇意にされていましたね」
    スッと目を細めるハスミ先輩。どうやら何か知っているらしい。
    「補習授業部に集められた生徒たちには共通点がありました。もちろん試験の点数が悪いことはそうですが、それだけで退学はあまりに不自然でしょう」
    「た、退学!?」
    「それも、知っているんですね」
    「共通点はそれだけではなく、彼女達にはそれぞれ不審な点がありました」
    ナギサ様が説明した通り、僕は先生のサポート役兼、ナギサ様の協力者という立場なので除外として、アズサさんは戦闘に対する豊富過ぎる知識と過剰過ぎる意識、そして素性の知れない転校前の学校が。
    ハナコさんは明らかに本来の実力を発揮していない試験の点数が。それぞれ不審に思えるだろう。
    「しかし、コハルさんにはそれがない。全く、少しも存在しませんでした」
    曲者揃いの補習授業部で、唯一の普通の生徒。ではなぜ、コハルさんは補習授業部に入らなければならなかったのか?
    数合わせ?いや、無闇に数を増やすことは監視の目を紛れさせる危険がある。
    カモフラージュ?いや、何の関係もない一般生徒を巻き込むことは、流石にナギサ様もしないだろう。
    「考えるほど、コハルさんが疑われる理由はわからなくなる。それで思いついたんです。理由はコハルさん本人ではなく、コハルさんに関係のある人物、または組織にあるのではないかと」
    そこまで考えれば、ナギサ様の狙いが見えてくる。コハルさんが所属していた組織は一つしかないのだから。
    「コハルさんの入部は、正義実現委員会への牽制だと考えました」

  • 62二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 01:56:02

    重苦しい沈黙は一瞬で、ハスミ先輩がすぐに口を開く。
    「色々と調べているようですね。ナギサ様の指示ですか?」
    「ええ、僕に、裏切り者を探して欲しいと依頼されました」
    「それで、コハルや他の部員を疑っていると?」
    「違います。いえ、違うとは言えないかもしれませんが……僕の目的は裏切り者を見つけることです。もちろん、いれば、の話ですけど」
    ハスミ先輩の眼光が、僕を射抜いている。僕が入学する前から、数えきれないほどの悪を滅してきた人の目だ。場合によっては、先輩と敵対することになるかもしれないが、僕のような普通の生徒では太刀打ちできないかもしれない。
    「それなら、ヒフミくん。あなたが裏切り者を探す理由は何ですか?裏切り者を見つけて、一体何をするつもりなのですか?」
    「……もし本当に裏切り者がいるのなら、まずは話がしたい。事情を聞いて、守るのか、止めるのか、もしくは手伝うのか、それは自分で判断したい。ナギサ様にも、他の誰にも任せたりしない。何も知らずに悪者だと決めつけたりしない。僕は、みんなのことを信じているから」
    確固たる自分の意思を伝える。僕のやろうとしていることは決して正しいことじゃない。ハスミ先輩がどう受け止めるか、僕にはわからない。

  • 63二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 01:57:26

    「……ええ、ヒフミくんはそういう子でしたね」
    不意にハスミ先輩の表情が和らぎ、同時に緊迫した空気が緩む。
    「ナギサさんの言いなりになって裏切り者探しをしているのかと疑ってしまいましたが、ヒフミくんは昔から、きちんと自分の意思で行動できる人間でした」
    「あはは……買い被り過ぎですよ」
    「本当のことですよ。それと、申し訳ないのですが、私たちもそこまで多くの情報を持っているわけではありません。もしかすると、ヒフミくんの方が事情に詳しいかもしれませんよ」
    「いえ、今日の目的は事実の確認と情報の共有ですから」
    「な、何の話をしてるの……退学って、裏切り者って、一体何のこと?」
    コハルさんがしばらくぶりに口を開く。雰囲気に気圧されて話に入って来られなかったようだ。
    「ええ、コハルにもちゃんと話さないといけませんね。余計な心配をさせないように黙っていましたが……今は正しい情報を持っておくほうがいいでしょう。ヒフミくんもいることですし」
    コハルさんに説明しながら、ハスミ先輩としばらく話した。目新しい情報はなかったが、情報が噛み合わないところも特になかった。

  • 64二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 01:58:55

    「それでは、頑張ってください。応援することしか出来ないのがもどかしいですが……こちらからも何かできることがないか、探してみます」
    「ありがとうございます、ハスミ先輩」
    「コハル。あなたはやればできる子です。今はただ、勉強に集中して、試験に受かってください。それと、ヒフミくんと先生をできる限り手助けしてあげてください。また一緒に委員会ができること、楽しみにしてますよ」
    「は、はい!頑張ります」
    ハスミ先輩と別れ、合宿所に帰ることにした。

  • 65二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 02:00:27

    このレスは削除されています

  • 66二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 02:03:41

    「はぁ……」
    思わずため息が漏れる。ハスミ先輩と話して、事実確認ができたのはいいけど、やっぱり状況はなかなか深刻なようだ。ナギサ様はエデン条約に向けてますます警戒を強めているようだし、裏切り者を極度に怖がっているのか塞ぎ込み、誰かと会うのにも消極的らしい。ナギサ様が心配なのもそうだけど、補習授業部をこれまで以上に積極的に排除しようとしてこないかどうか……そもそもテストの点が上がらない限りは、退学は免れないわけだし……って、
    「うわっ」
    縁石の出っ張りに蹴つまずき、倒れそうになるが何とかバランスを取り、無様に倒れ伏すことだけは回避した。
    「ちょ、ちょっと、気をつけて歩きなさいよ」
    「……ごめん」
    考えごとをしながら歩くのは危ない。わかってはいても、考えずにはいられない。
    「……えっと、しょうがないわね」
    そう言って、コハルさんが手を差し出してくる。
    「これは……?」
    「あんたがさっきから上の空で危なっかしいから、私が引っ張ってあげるって言ってるの。ほら、手、出して」
    えーっと、どうすればいいのかな?と考えていると、コハルさんの頬がちょっとずつ赤くなっていく。
    「い、いやならいいわよ!」
    「わっ、ごめん、お願いするよ」
    引っ込められかけた手を何とか掴む。女の子に差し出された手を掴まないなんて、格好悪いことはしたくない。ちょっとびっくりしたように固まったコハルさんだったが、すぐに前に向き直ると、そのまま歩き出してしまう。僕は慌ててついていく。繋いだ手を離さないように。

    「私、ヒフミが何を悩んでるのか、全部わかったわけじゃないけど」
    前を気持ち早足で歩くコハルさんが、不意に話し出す。
    「1人で悩まないでよ。私に相談しても、何も出来ないかもしれないけど、それでも、1人で悩むよりましでしょ」
    繋がれた左手が強く握られる。コハルさんがさらに早足になっているので、僕もほとんど小走りでついて行く。
    「それに、結局はテストでいい点を取らなきゃいけないんでしょ。ならどっちにしろ勉強しなきゃいけないんじゃない。何をしていいかわからないときは、できることから先にやるの」
    もう完全にランニングの速度で前をゆくコハルさんは、前をまっすぐ向いているから表情が見えない。けれど、走っているせいかちょっと火照った小さな手は力強く、そしてとても心強く感じた。

    /コハルの好感度が上がった/

  • 67二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 13:09:04

  • 68二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 00:02:33

  • 69二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 00:43:01

    翌日/トリニティ総合学園別館/教室

    「……よし」

    「……」

    「んん……?」

    合宿4日目。今日も勉強を始めようと思ったのだが……

    「あれ、先生は?」

    「それが、先ほどから姿が見えず……」

    「えぇ……それってまずいんじゃ」

    「襲撃に遭って拉致監禁、ということも考えられる。捜索すべきかもしれない」

    どうしようか?


    1 探しに行かない

    0 探しに行く

    dice1d1=1 (1)

  • 70二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 02:02:09

    とりあえず、モモトークで聞いてみることにした。
    “先生、教室にいらっしゃらないようですが、大丈夫ですか?”
    直ぐに返信がくる。
    ‘ちょっと用事があってね。先に勉強を始めておいて’
    「すぐに返信ができる状況で、文章もそこまで不審ではない。拉致監禁の可能性は低そうだ」
    「そうだね。先生もこう言っていることだし、先に始めてしまおう」
    先生は大人だし、きっと大丈夫だろう。

  • 71二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 02:02:39

    「お待たせ〜」
    「あ、先生。どこに行っていたんですか?」
    「何でもないよ。心配してくれてありがと」
    はぐらかされる。まあ先生をあまり詮索するものじゃないよね。
    「あ、ところで見てください!これは、ちょうど先ほど受けた模試の結果なのですが……」
    第2次補習授業部模試結果
    阿慈谷ヒフミ 64点
    白洲アズサ 58点
    下江コハル 49点
    浦和ハナコ 8点
    「お、上がったね」
    「……紙一重の差だった」
    「うん、今回は本当に紙一重でした!アズサさん、すごい!」
    「ひ、ヒフミ!私も結構上がったよ!?」
    「そうですね!伸び率ならコハルさんが一番です!すごい!」
    「ふ、ふふん、私は本当の実力を隠してたのよ!」
    「そして、ハナコさん、は……」
    「あら?ヒフミくん、急に元気がなくなってしまったようですが、どうかしましたか?」
    「えーっと……」
    思うところは色々ある。でも、今は何も言わないでおくべきだろう。
    「みんな頑張ったね」
    「次こそは任務を成功させて、あの可愛いやつを受け取ってみせる。それが、今私が戦う理由だ」
    「いや、理由は落第回避だったはずだけど……」

  • 72二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 02:03:37

    その時だ。
    ドカアァァァァン!
    「ば、爆発!?一体何が」
    「襲撃だ。全員警戒を」
    「しゅ、襲撃!?」
    まさか、本当に襲撃が起きたというのか?このトリニティで?しかもこんな真っ昼間から?ありえない、けど、
    「爆弾が投げ込まれた以上、信じるしかないか……」
    「いや、さっきの爆発は私が仕掛けたブービートラップだ」
    「えぇ!?」
    「私たち以外の者がここに足を踏み入れた瞬間に、起爆するようになっている」
    「えぇえ!?」
    ドカアアアアン!ドカアアアアン!!
    「もちろん複数設置してある。爆発から逃れようと動く方向を予測して、さらにダメージを与えるようになっている。一個小隊程度なら、ここに来るまでに全滅させられる」
    どこか得意げにトラップの解説をするアズサさん。でも、すると一つ疑問が。
    「私たち以外が侵入したらって、じゃあ普通の来客とはどうやって見分けるの?」
    「……?ここには私たちしか用はないんだし、来客の予定もない。入ってくるのは全て侵入者だろう?」
    そこまで聞いて、僕は教室を飛び出した。

  • 73二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 02:04:22

    煙が立ち込めるロビーに、倒れ伏す少女を発見した。
    「大丈夫ですか!?怪我とかは!?」
    何とか助け起こそうとしながら声をかけると、少女はうっすらと目を開け、震える両手を軽く胸の前で組んだ。
    「きょ、今日も平和と、安寧が……けほっ、けほっ……あなたと共に、けほっ、ありますように……」
    ガクリ、と少女の体から力が抜ける。
    「きゅ、救護班ーーー!!」

  • 74二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 02:10:11

    「少し気を失っているだけですね。しばらくしたら目を覚ますでしょう」
    「そっか、よかった。ありがとうセリナ」
    「いえいえ、大事なくてよかったです。それでは」
    そう言って教室から出て行くピンクの髪の少女を見送る。爆発に巻き込まれて意識のない少女を教室に運ぶのを手伝ってくれ、そのまま診察までしてくれたのだが……
    「あの、先生、あの子は……?」
    「救護騎士団のセリナだよ。怪我人が出たら、あの子を呼べばすぐに来てくれるの」
    「ここ、校舎からは結構離れてますが……」
    「……ブービートラップが発動しなかった。私の知らない侵入ルートが?」
    謎だ。そして先生が何も疑問に思っていないのも謎だ。
    「う、うぅん、ここは……?」
    気絶していた少女が、目を覚ましたようだ。

  • 75二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 12:38:24

  • 76二次元好きの匿名さん24/11/26(火) 00:34:58

  • 77二次元好きの匿名さん24/11/26(火) 12:02:24

  • 78二次元好きの匿名さん24/11/26(火) 23:18:51

    「シスターフッド所属、伊落マリーと申します。先ほどはご迷惑をおかけしました」
    そう言って頭を下げる、シスター服の少女。髪は鮮やかな山吹色で、頭を覆う黒いベールを押し上げる2つの三角の膨らみが、彼女の耳の形を想起させる。
    「いえ、迷惑をかけたのはむしろこちらの方で……ほら、アズサさん」
    「うん……ごめん。てっきり襲撃かと……」
    「え、えぇっと?」
    「はい、お水」
    コハルさんが水の入ったコップを手渡す。
    「あ、はい、ありがとうございます」
    コップを両手でもってこくこくと水を飲むその動作も、無垢さというか、清貧さというか、何かシスターらしさのようなものを感じさせる。
    「マリーちゃん、久しぶりですね」
    「あ、ハナコさん……お久しぶりです……」
    ハナコさんは伊落さんと知り合いなのかな。会話がどことなくぎこちないのが気になるけど。
    「それで、伊落さんはどうしてここに?」
    「あ、私はシスターですから、呼び名はマリーで構いませんよ」
    「えっと、シスターマリー?」
    「ふふ、改めて呼ばれるとちょっとくすぐったいですね。はい、今日は補習授業部を訪ねてここに来ました。まさかハナコさんもいるとは知りませんでしたが……」
    「私も、成績が良くないので」
    笑顔を崩さないハナコさんと、何か言いたげなマリーさんとの間の空気が少し重くなる。最終的にマリーさんは、何も言わないことを選択したようだった。

  • 79二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 02:15:17

    「それで、補習授業部所属の白洲アズサさんに用事があってこちらに参りました」
    「私?」
    「はい。実は、先日アズサさんに助けられた生徒の方から、感謝をお伝えしたいとのことでして、諸事情により私が代わりに」
    そうしてマリーさんが話してくれたのは、補習授業部が始まったあの日に起きた出来事だった。

    「なるほど、そうだったのか……」
    同級生からいじめを受けている生徒を助けるも、恐喝と誤認されて正義実現委員会と交戦からの立てこもり……あの事件の裏にはそんな事情があったのか。
    「大したことじゃない。数にものを言わせて誰かを虐げる奴らが気に食わなかっただけだ。最終的には私も捕まってしまったし」
    「後半は多分関係ないと思うよ?」
    「それにあの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられているだけじゃダメ。それがたとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきじゃない」
    虚しいことに屈さず、抗うこと。アズサさんは以前にもそう言っていた。
    「……そうかもしれませんね。あの方にも、伝えておきます。ふふ、人を噂で判断するのはよくありませんね。暴力を信奉する『氷の魔女』と言われてはいますが、噂は噂でした」
    氷の魔女?アズサさんはそんな風に呼ばれているのだろうか。
    「ふふっ、アズサちゃんには意外と『氷の魔女』らしいところもありますよ?ほら、他の方からするとちょっとだけ表情も読みにくいですし」
    「ハナコさん……」
    「マリーちゃんが元気そうでよかったです。玄関まで送りますよ。さあ、行きましょう」
    「あ……はい、そうですね」
    何か言いたげなマリーさんだが、いつもより少し強引なハナコさんの手前、何も言えないようだ。
    「それでは、補習授業部の皆さん、先生、お邪魔いたしました。またお会いしましょう」
    「はい、また」
    「マリー、道中気をつけて」
    マリーさんはハナコさんに連れられて帰って行った。

  • 80二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 13:14:40

  • 81二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 00:55:39

    今日も一日が終わろうとしている。
    「さて、洗濯機を回してきますから、今日の洗濯物は全てこのカゴに入れてしまってください」
    「し、下着も?」
    「もちろんです♡」
    「水や電気の節約を考えれば、それが一番合理的だ。ほらコハル、ヒフミも早く」
    「ええ!?僕はいいよ……」
    「あら、下着を見られるのが恥ずかしいなら、ヒフミくんが干すところまでする、という手もありますが」
    「!?!?!?何考えてるの!?そんなの許すわけないでしょ!」
    「というわけで、観念して下さい、ヒフミくん」
    根こそぎ奪われてしまった。
    「先生はどうしますか?」
    「私は、うーん、遠慮しとこうかな……」
    「そうですか。では、行ってきます」
    ハナコさんがその場を離れたタイミングで、僕も先生に近づく。
    「先生、今夜、先生の部屋に行ってもいいですか?」
    「なあにヒフミ、夜這い宣言?」
    「ち、違います!ちょっと相談が」
    「あはは、ごめん、わかってたよ。前と同じくらいの時間なら大丈夫だから」
    「ありがとうございます」

  • 82二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 12:41:33

    ほほ

  • 83二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 00:24:27

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 00:28:05

    今日もまた、部屋を抜け出した人がいるようだ。見つからないように、慎重に……
    「先生、失礼します」
    言いながら扉を開ける。そして、ベッドの上の先生と、その上にのしかかる水着姿のハナコさんを見る。
    「……」
    「えっと……」
    「ヒフミ?違うの、これは……」
    ……邪魔しちゃいけないね。
    「失礼しました」
    忘れよう。僕は何も見てない。
    寝床に戻ろうとしたが、動けない。扉の隙間から伸ばされた手が僕の腕を握りしめているからだ。
    「ヒフミ、お話、しようか」
    答える間もなく、先生の部屋に引きずり込まれた。

  • 85二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 02:12:41

    「ハナコさんが先生の部屋にいるのは偶然で、水着姿なのも偶然、ハナコさんがつまづいて先生をベッドに押し倒してしまったのも偶然……」
    「なあにその目は。本当のことだよ」
    「ええ、水着で先生の部屋を訪れるのは悪ふざけが過ぎましたね……」
    ちょっと顔を赤くして弁明する2人。まあ、先生に限って生徒と……なんて、そんなことをするわけがないか。ちなみにハナコさんはすでに水着から体操服に着替えている。
    「それに、よくよく考えてみると……ヒフミくんも、こんな時間に先生の部屋を訪ねるというのは、普通のことではないのでは?もしかすると、私は秘密の逢瀬の邪魔をしてしまったのかもしれませんね?」
    「いやいやいや!先生と僕はそんな関係じゃないよ!」
    「まあまあ。それで、ハナコ。私に何か相談があるんでしょ」
    「あ、はい。そうでしたね」
    「ハナコさんも?あ、じゃあ僕は席を外すよ」
    「いえ、ヒフミくんもいてくれて構いません。むしろ、一緒に聞いてもらう方がいいかもしれません」
    一転、真剣な表情で話し出すハナコさん。奇行とのギャップで頭が混乱してきそうだ。
    「ヒフミくんは知っていますよね。アズサちゃんが、毎晩自主的に見張りをしていることを」
    「うん。そっか……アズサさん、まだ続けているんだね」
    「アズサちゃんはいつも、夜が明けるまで帰ってきません。少なくとも私はこの数日間、アズサちゃんがぐっすり寝ているのを見たことがありません」
    「それは……ちょっと、いやかなり問題だね」
    「ええ。最初の頃は不安で眠れないのかと思っていましたが、どうやらそうではないようです。しかしこう何日も続くとなると……せめて睡眠だけでもとっておかないと、アズサちゃんの体が限界を迎えてしまいそうで」
    アズサさんはあの日、僕を、僕らを守ると言っていた。それは、一体何から?ほとんど過剰とも思えるようなトラップまで設置して、それでも見張りを続ける意味は?アズサさんは今、何を見ているんだろうか?

  • 86二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 02:12:55

    「……それと、しっかり寝ないといけないのは先生とヒフミくんもです」
    「っ!」
    「いくら落第を防ぐためとは言え、それは健康を害してまでなすべきことではないと思いませんか?何か事情があるのは知っていますが、体を壊してまで私たちを……特に私のような生徒を助ける意味があるのでしょうか?」
    「それは……」
    先生の方を向く。事情を知らなければ、確かにそう思うかもしれない。でも、そうではないのだ。だが事情を説明してしまえば、余計に混乱させるだけかもしれない。僕はどうするべきなのか、先生に助けを求めてみるが……
    「これはヒフミが決めるべきことだよ。私が決断すべきじゃない」
    「先生」
    「大切なのは、ヒフミがどうしたいか、どうなってほしいのか、だよ。大丈夫、ヒフミがどっちを選ぼうと、その結果がどうなろうと、私は生徒の味方だから」
    「先生?ヒフミくん?いったい何の話を」
    僕がどうしたいか。そんなものはとうに決まっている。ハナコさんの方を向き、その黄緑の瞳をまっすぐ見つめる。
    「確かに普通なら、試験に落ちても落第で済む話。だけど今回に限っては違うんだ。あと2回、特別試験が不合格だったら、僕らは退学になる。トリニティを去らなきゃいけないんだ」
    ハナコさんが目を見開く。
    「ヒフミくん?何を言って……?そんなことはありえません。退学にはいろいろと手続きが必要で、校則的にもそう簡単には……」
    「……普通なら、だよ。」
    「先生?」
    「ヒフミが勇気を出した。私はそれを尊重しよう」
    僕と先生は補習授業部について、知っていることを話した。ハナコさんは、黙って聞いていたが、だんだんと表情が険しくなっていくように感じた。

  • 87二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 13:56:33

  • 88二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 00:03:11

    「なるほど……部員のうち一人でも不合格なら全員が不合格、そしていずれは退学……こんなでたらめなルールを、シャーレの権限で無理矢理……」
    事情を聴き終えたハナコさんは、1人考え込んでしまう。けれど、この流れでどうしても聞いておきたいことがある。
    「ハナコさん、ハナコさんが、テストであんな点数を取り続けている理由を、教えてもらえないかな?」
    踏み込むべきか、踏み込んだらどうなるか、結論は出ない。でも、これ以上待っていることもできなかった。真実を伝えた流れで、こちらも聞いておきたかった。
    「……ええ、やはりそれが気になりますよね。ヒフミくんの予想通り、私のあの点数はわざとです」
    「…!やっぱりそうなんだね。でもなんでそんなことを」
    「ごめんなさい、言えません」
    「僕じゃなくてもいい。先生だって、コハルさんだってアズサさんだっていい。一人で悩んでいるよりはきっと……」
    「心配していただけてとても嬉しいです。でも、ごめんなさい。すごく個人的な理由なんです。話すのもためらわれるほどに」
    「そっか……」
    「安心してください。事情を知った以上、もうこれまでのようなことはしませんから。最低限迷惑のかからない点数をとりますし、それ以外のこともできる限りお手伝いしますから」
    「ありがとう、ハナコさん」
    「ごめんね、ハナコ」
    「お礼なんて……謝罪もしていただくようなことじゃありません。むしろ私のほうから謝罪するべきことです。裸で手をつくだけで足りますでしょうか?」
    「やらなくていいよ!?ていうかやらないで!」
    「うふふ、冗談ですよ。ちょっと場を和ませようと思って」
    ハナコさんなりの気遣い、なのだろうか?

  • 89二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 02:10:11

    「ところで、この事実を知っているのはヒフミくんと先生だけですか?」
    「いや、コハルさんも知っているよ。僕から話した」
    「あら、そうだったんですね。なるほど……となると、アズサちゃんの気がかりはそれではない、と。いえ、それよりも今はこの部の存在のほうが気になりますね。ナギサさんが今一番警戒していることといえば……そうですか。さしずめこの補習授業部は、エデン条約を邪魔しようとしている疑惑のある容疑者たちの集い、といったところでしょうか」
    「……!!!」
    「え、えぇっ!?」
    「なるほどなるほど、いかにもあの狡猾な猫ちゃんが考えそうなことです。まとめて処理したほうが楽、というロジックでしょうか。私たち、なんだか洗濯物みたいな扱いですねぇ」
    実際はもっとひどい表現をされていたけどね。
    「アズサちゃんは書類の時点で怪しかったですし、コハルちゃんは……正義実現委員会への人質、でしょうか?かなり無茶というか、横暴ですが……しかし、それならヒフミくんは?」
    「あ、僕はきっと監視役というか、協力者?みたいな感じかと……その意味では、僕は全く役に立ってないけど」
    「あら……それが事実だとすれば、ナギサさんはだいぶ追い詰められているようですね。たったそれだけの理由で、大好きなヒフミくんを生贄にするなんて」
    「だ、大好き?」
    「とにかく、まだわからないことが多すぎますね。私のほうでも色々調べてみようと思います」
    というわけで、深夜の会議に心強い味方が加わった。

  • 90二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 13:29:08

  • 91二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 01:17:21

    翌日/トリニティ総合学園別館/廊下

    「うーん、困ったことになったね」
    「困りましたねえ」
    「あうう、どうしよう……」
    翌日の朝。薄暗い廊下に佇む影が3つ。いつもならそろそろ着替えて教室に行くべきな時間だが、今日に限って、僕たちはまだ誰も着替えていなかった。
    「んん……みんなおはよう。遅くなった」
    3人で途方に暮れているところに、アズサさんが起きだしてくる。
    「あ、おはよう、アズサさん」
    「うん、おはようヒフミ。って、なんでみんなそんなにびしょ濡れなんだ?コハルは泥まで被ってるし。まさか」
    「襲撃ではありませんよ。いえ、ある意味、襲撃でしょうか?自然の」
    天気予報も自然の気まぐれまでは読み切れなかったようだ。昨日の夜中から降り出したらしい雨は、朝になってさらに勢いを増していた。空は黒々とした雲に覆われ、大粒の雨が窓をばしばしと叩き続けている。廊下の薄闇を雷が切り裂き、続く轟音が一瞬だけ、雨音をかき消していく。
    「ごめんなさい。こうなるとわかっていれば、服を全て洗濯しようとは言わなかったのですが……」
    「ハナコのせいじゃないでしょ。それに、洗濯物が泥だらけになっちゃったのは、私が転んだからだし……」
    そう、僕たちは昨日の夜、ほとんど全ての衣類を洗濯してしまっている。今朝までには乾いているはずだったのだが、残念ながらそうはいかなかった。
    「とりあえず服は洗濯し直すとして、濡れた服のままでは風邪をひいてしまう。何かに着替えるべきだ」
    「そうですねえ。しかし、今持っている、乾いている衣類といえば……」
    言いながら、すーっと寝室に消えていくハナコさん。着替えを残していたのだろうか?
    「なんかやな予感がする……」

  • 92二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 01:54:18

    「お待たせしました♡」
    「やっぱり!そうくると思った!何考えてるの!?エッチなのはダメ!禁止!」
    数分後、戻ってきたハナコさんは水着姿だった。う、なんか久しぶりに見た気がする……
    「あら、水着は嫌いですか?」
    「好き嫌いじゃないでしょ!水着は水に入る時に着るものなの!」
    「でもコハルちゃん。恥ずかしがって濡れた服のままでいては、すぐに風邪をひいてしまいますよ?」
    「う、それは……」
    「……いえ、なるほど、乾いている服はない、水着は着ない……つまりコハルちゃんが言いたいのは……裸でいろ、ということですね!」
    「!?!?!?そんなわけないでしょ!?なんでそんな発想になるの!信じらんない!」
    「いや、状況を考えれば、合理的かもしれない。防寒性能は若干劣るが、何も着ないより遥かにいい」
    「ほら、アズサちゃんもこう言っていることですし、早く着替えてください♡」
    「で、でも」
    「あら、1人で着替えるのがお嫌でしたら、私がお手伝いしますよ?」
    「ううぅうぅうぅう」

  • 93二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 13:12:36

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 00:10:42

    と、言うわけで。
    「第1回、補習授業部水着パーティを始めます♡」
    「なんでこんなことに……あと2回目はないから!」
    「僕もそう思うな……それとアズサさんは、別に水着じゃなくて良かったんじゃ?」
    「……いや、服装の統一はチームの団結に大きな影響を与える。この緊急事態だ、少しでも和を乱すわけにはいかない」
    「そうなると、私が場違い感あるな……でも私は水着持ってないし……」
    僕らが今いるのは体育館だ。本当は教室で勉強しなきゃいけないんだけど。あの後、合宿所に落ちた雷により、備え付けの発電システムが停止した。夕方ごろには業者が来てくれるらしいけど、それまでは乾燥機もドライヤーも使えない。明かりもつかない状況で勉強するのも困難なために、ハナコさんが提案したのがこの水着パーティだった。
    「ていうか、わざわざパーティをする意味は!?部屋で大人しくしてればいいじゃない」
    「でもこういうの、合宿の醍醐味って感じがしませんか?何も見えない暗闇の中で語らい合う、秘密の時間。お互いの弱い部分を曝け出し合える、そんなパーティは……青春と言えるのではないでしょうか♡」
    「そんな青春あってたまるか!」
    「まあまあコハル、ちょっとくらいいいんじゃないかな。折角だから」
    「先生まで……」
    「ハナコも楽しみにしてるみたいだしさ、ちょっとだけ、ね?」
    「ううう……」

  • 95二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 00:10:53

    「でもハナコさん、本当に楽しそうだね」
    「そうですね。こんな経験、これまでしたことなかったので、少しテンションが上がっているのかもしれません」
    「わかるよハナコ。私も何なら、合宿が始まってからずっとそんな気持ちだ。勉強したり、みんなでご飯を食べたり、掃除や洗濯だって、その一つ一つが楽しい」
    「あら……♡」
    「水着というものがかなり機能性の高い衣類だということも知った。ハナコがこれで学校に行くのも頷ける」
    「頷くな!水着で外を歩くのは犯罪なの!公然猥褻で死刑よ!」
    「コハルと一緒に勉強するのも楽しい」
    「っ!?きゅ、急になに!?なんでそんなに恥ずかしいこと言えるの!?……まあでも、私もアズサと勉強するの、楽しいし……それに!私みたいなエリートと勉強して、ためになることは多いと思うし?」
    「うん、本当にそうだ」
    「あらあら……♡」
    「ハナコもそうだ。いつも勉強教えてくれて、感謝してる」
    「あらあらあら……♡」
    「アズサさん、最初はコミュニケーションをとるのにも戸惑っていたのに、もう大丈夫みたいだね」
    「ああ、もちろんヒフミもだ。本当にいつも世話になってる。ありがとう」
    「っ!」
    ふう、危うく涙を流すところだった。純粋な感謝、それもアズサさんからのだ。娘の成長を見守る父親の気持ちになってしまった。僕に娘はいないけどね。

  • 96二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 03:03:32

    それから僕たちは語り合った。色んなことを。ジャンルは問わず、面白さも求めない。取り留めもない話を。

    「今、トリニティのアクアリウムで珍しいマグロが展示されているみたいですよ。トリニティ近海で見つかって、そこがたくさんお金を出して買い取ったそうです」
    「海か……そういえば一度も行ったことないな」
    「一回も!?」
    「私は、正義実現委員会の演習で何回か……よかったら、次はアズサも来る?」

    「それでね、その時ハスミ先輩はこう言ったの。「悪がどれだけ強大でも、正義を貫くのが私たち正義実現委員会です」ってね!」
    「かっこいいね。さすがハスミ先輩」
    「ああ、あの迫力のある人か。あの人はすごく強かった」
    「そうですね、迫力、すごいですもんね♡」

    「とっくに潰れたアミューズメントパークなのにも関わらず、夜になると何やら騒がしい音が聞こえてきて……」
    「そ、そんなわけないじゃん!聞き間違いよ!」
    「でも、真っ暗な遊園地の中を飛び回る、真っ黒な影を見た、という噂も……」
    「やだ!絶対嘘!全部誰かの悪ふざけ!」
    「あ、あはは……」
    「遊園地。そういうのもあるのか」

    「私のおすすめは、カーマ・スートラという本です」
    「どんな本なんだ?」
    「それはもう、人類の叡智というか、エッチというか、全てが詰め込まれた一冊ですよ♡」
    「!?!?!?何言ってるの!?あんな本はダメ、絶版!」
    「コハルさん、読んだことあるの?」
    「!?!?????あああああるわけないでしょ!?」

  • 97二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 03:07:34

    「手榴弾は銃に比べれば威力が高い代わりに比較的躱しやすい武器だが、躱されやすいなりにメリットがある。それは」
    「躱しやすいから、躱してしまうということだね。動くべきでない状況で、思わず動いてしまうという」
    「正解だ、ヒフミ。ヒフミは基本がわかっているようだ」
    「正義実現委員会の訓練でもそんなこと習わないけど……」
    「アズサちゃんもですが、ヒフミくんも謎が多いですよね」

    「じゃあヒフミって、記憶喪失なの?」
    「うん。3年前にナギサ様に拾われるまでの記憶が全くないんだよね」
    「ヒフミくんがナギサさんを慕う理由はそこにあったんですね」
    「……」

    「アズサちゃん、ちゃんと寝ないとダメですよ?」
    「そうだよ」
    「ああ、すまない。今朝は寝坊して迷惑をかけてしまった」
    「いえ、それは別に構わないのですが……見張りはほどほどにしてくださいね」
    「見張り?アズサ、そんなことしてたの」

    「やあみんな、ただいま〜」
    「先生、どこ行ってたんですか?雨も降っているのに」
    「結構小降りになってたよ。最近みんな頑張ってたからね、ご褒美が必要かなって」
    「あら、これって……!」
    「ハナコ、知ってるの?」
    「トリニティ郊外ではかなり名の知れたスイーツ店のパフェです。しかも、これは数量限定の特別なもので」
    「パフェ!すごい、これがパフェか……!」
    「ちょうど5つあったからね、みんな食べられるよ」
    「ありがとうございます、先生!」

  • 98二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 03:08:19

    水着パーティは意外にもかなり盛り上がり、夕食後もしばらく続いた。コハルさんとアズサさんがしゃべり疲れて眠ってしまうまで。

    /アズサの好感度が上がった/
    /コハルの好感度が上がった/
    /ハナコの好感度が上がった/

    アチーブメントを獲得
    「4人の絆」

  • 99二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 14:04:15

  • 100二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:31:08

    保守

  • 101二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:40:04

    翌日/トリニティ総合学園別館/教室

    「では、発表します」
    「ゴクリ……」
    「今度こそ……」

    第2次補習授業部模試結果
    ハナコ 69点
    アズサ 73点
    コハル 61点
    ヒフミ 75点

    「や、やった!」
    「ほ、本当っ!?嘘ついてない!?」
    「……!」
    「あらあら♡」
    僕たちの点数は全員、60点を超えていた!これなら、試験に合格できる。
    「やったね、アズサさん、コハルさん、ハナコさん!」
    「……!!」
    「これが私の本来の実力よ!見たか!」
    「ふふふ、いい感じの点数ですね♡」
    「私はみんなのことを信じていたよ。このまま頑張れば、試験は危なげなさそうだね」
    みんなで喜びを分かち合う。もちろん本試験に合格したわけじゃないけど、何はともあれ目標達成だ。

  • 102二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:40:18

    「と、いうわけで……モモフレンズグッズの授与式をとり行います!」
    「……!!!」
    どさりと机にグッズを取り出す。お別れは少し名残惜しいけれど、頑張ってくれたみんなのためだ。
    「さあ、誰でも好きな子を持っていってください!」
    「なるほど……と、なると……」
    真剣な眼差しで悩み出すアズサさん。そんなにも本気で悩んでくれるなんて……!よほど嬉しいのだろう。うんうん、わかるよ!
    「えっと、私は謹んで遠慮しますね」
    「わ、私も……」
    「ええ!?ほんとに!?僕のことは気にしなくていいんだよ!?」
    「ええ、本当に、大丈夫ですから……」
    「……」
    断られてしまった。そんなに名残惜しそうに見てしまっていただろうか?まあ必要ないというのならしょうがない。
    「くっ!私には選べない!この中から1匹だけを選ぶだなんて、私には……!」
    アズサさんはうんうん唸って考えていたが、決心したように顔を上げた。
    「決めた。このメガネのカバを貰おう」
    「ペロロ博士はカバじゃないよ!?れっきとした鳥だよ!?……まあ、いいか。アズサさん、はい、どうぞ」
    ペロロ博士のぬいぐるみを差し出す。アズサさんは恐る恐るといった様子で手を伸ばし、そっと受け取ってくれた。まじまじとぬいぐるみを見つめ、触り心地を確かめて、それからぎゅっと胸に抱く。
    「うん、気に入った!大好きだ。ありがとう、ヒフミ!これをヒフミだと思って一生大事にする」
    「いや、それはちょっと照れるというか、なんというか……でも、これはアズサさんがやり遂げたからこそのものです。本当によく頑張りましたね!」
    「よかったね、アズサ」
    「うん!えへへ……」
    「うーん……趣味の世界は広いですねえ」
    「何なのよ、もう……」
    ぬいぐるみを抱きしめて幸せそうに笑うアズサさんを見ていると、こっちまで嬉しくなってくる。いやあ、ファン冥利に尽きるなあ!よし、あと2日、頑張ろう!

  • 103二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:41:25

    そして、時間は流れる。

    「さて、いよいよ明日ですね。明日の特別学力試験で、僕たちが補習授業部を卒業できるかが決まります。けれど、僕たちが積み重ねたこれまでの努力は、決して無駄にはならないと信じています。みなさん、明日は頑張りましょう!」
    「うん」
    「そうねっ!」
    「はい♡」
    「みんな、本当によく頑張ったね」
    準備は万端、気合いも充分。あとはもう、試験に合格するだけのことだ。
    「そして、最後は笑ってお別れをしよう!」
    「お別れ……そうか、合格したらもう、ここは……」
    途端、アズサさんの表情が陰る。
    「出会いがあれば別れがある。虚しいものだな」
    「合宿含め、とっても楽しかったですもんね。でも、そんなに虚しいものじゃないと思いますよ。補習授業部が解散しても、同じ学園にいるんですから。会おうと思えば、すぐに会えますよ」
    「わ、私、いつも大体正義実現委員会の部室にいるから……暇な時には遊びに来たら」
    まだ試験を受けてないのに、もうドラマのエンディングみたいな感じだ。無理もないか。
    「とにかく、明日に備えて今日はもう寝よう」

  • 104二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:42:09

    「そういえば、明日の試験会場って前と同じなの?」
    「あ、告知を見るのを忘れていたね」
    まあ、大きな変更なんてそうそうないと思うけど……スマホでトリニティの掲示板を見る。
    「は?」
    思わず声が漏れる。見間違いを疑いたくなるような内容が、そこには羅列されている。
    「一体何が……ええっと、『補習授業部の第2次特別学力試験に関する変更事項のお知らせ』?……試験範囲の拡大、合格ラインを90点以上に引き上げ……」
    「はぁっ!?何よそれ!」
    試験直前でこれは一体?いや、原因はわかっている。
    「ナギサ……」
    先生が呟く。その顔からは一切の感情が読み取れない。
    「ナギサさんが、何らかの手段で私たちの模試の結果を把握したみたいですね。でもまさか……」
    言わずとも、言いたいことが理解できる。まさかここまで。ここまでするのか……!?これはまずい。流石に想定外だ。ナギサ様……
    「こ、これ、どうすればいいのよ……」
    誰もが俯きたくなる状況。だがそれでも、前を向く者がいた。
    「状況は理解した。とにかく出発しよう」
    「アズサさん!?出発って、一体」
    「ヒフミくんここを!試験会場はゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟1階……時間は午前3時」
    「ゲヘナ!?」
    「この距離、今すぐ出発しないと間に合わない。驚くにせよ、怒るにせよ、絶望するにせよ……それは試験を受けてからでも遅くない。障害物の多さに文句を言ったところで、状況が変わるわけじゃない。大切なのは、それでも最後まで足掻くこと」
    「そうですね、今は試験を受けることが最優先です。それにしても、ゲヘナで試験を受けるだなんて、面白いですね、初体験です♡」
    「言ってる場合か!ああもう、とにかく行くのね!?」
    「よし、みんな行こう。銃の用意を忘れずに」
    「ああ、ゲヘナは無法地帯と聞いている。備えは万全にすべきだ」
    「私も行くよ。私には見届ける義務がある」
    「しかし、先生、先生には危険すぎます」
    「大丈夫。色々手があるからね。心配しないで」
    郷愁に浸る間も無く合宿所を飛び出す。何としてでも障害を排除して、無事に試験を受けてみせる!

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