- 1124/11/18(月) 20:43:26
- 2124/11/18(月) 20:43:49初代スレここだけ病弱コハル|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す季節の変わり目でも風邪で熱を出す筋肉つかないし体力もほとんどないので前線張るのはムリ日焼けで黒くなるんじゃなくて赤くなるくらい肌も弱いそれでも憧れは止められないので正実には入るし…bbs.animanch.com
その2
ここだけ病弱コハルその2|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す季節の変わり目でも風邪で熱を出す筋肉つかないし体力もほとんどないので前線張るのはムリ日焼けで黒くなるんじゃなくて赤くなるくらい肌も弱いそれでも憧れは止められないので正実には入るし…bbs.animanch.comその3
ここだけ病弱コハルその3|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。えっちなことにも興味あ…bbs.animanch.comその4
ここだけ病弱コハルその4|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。えっちなことにも興味あ…bbs.animanch.com詳しいことは上記参照
- 3124/11/18(月) 20:45:04
【注意事項】
・原作批判、またはそれに繋がりかねないレスはお控えください。原作シナリオに言いたいことがある場合は別スレたててね!
・所詮二次創作であり落書きです。内容を間に受けないでください。展開に多少の粗があっても大目に見てね! - 4124/11/18(月) 20:46:58
工事完了だよー今日は更新ないので、申し訳ないけど10まで埋めてくれると嬉しいよー
- 5二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 20:51:39
建て乙&退院おめでとうです
- 6二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 20:55:15
建て乙ですー
- 7二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:03:52
建て
- 8二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:04:28
立て乙です
- 9二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:14:55
建て乙です
体に無理せず頑張ってください。 - 10二次元好きの匿名さん24/11/18(月) 21:17:24
建て乙です
- 11二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 07:22:53
立て乙!
- 12二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 17:33:44
保守
- 13二次元好きの匿名さん24/11/19(火) 21:03:25
保守
- 14124/11/19(火) 23:11:51
ひぃん今日も更新できないよーごめんねー
病み上がりなのと年末だからいろいろあってどうしても間隔が空いちゃうよー
ますます亀の歩みになるけど、期待せずに待っててくれると嬉しいよー - 15二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 07:51:02
ほしゅ
- 16二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 16:19:53
一万年と二千年くらいならマテルからゆっくり体直しておくれ
- 17二次元好きの匿名さん24/11/20(水) 23:01:46
一応保守
- 18二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 07:55:32
保守
- 19二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 16:43:00
待機
- 20124/11/21(木) 18:44:38
おまたせしました、前回の続きから更新するよ―
ミカと先生の会話だねー正直原作からあんまり変わってないんだけど、サイゼリヤの間違い探し程度には変更点もあるから暇な人は見てみてねー
初見の人はちんぷんかんぷんだと思うから興味を持てたら過去スレを読んでね
ではいくよー - 21124/11/21(木) 18:46:27
「……しっかしまあ、ずいぶんな入れ込みようだねぇナギちゃんも。わざわざこんな施設一つまるまる貸し出しちゃってさ。しかも業者雇って事前に清掃させるし、空気清浄機も導入するし。施設内はわかるけど、まさかプールまで綺麗にするなんてねー。……やっぱり、あの子がいるからかな?」
【(……あの子、か)プールはこっちで掃除させてもらったよ。残念ながら入る時間はなかったけれど】
「あ、そうなの? それは残念だったね。――ところで、合宿の方はどう? 遠いのをいいことに、何か楽しそうなことしたりしてない? 例えば皆水着でプールパーティー……は、1人参加できないか……」
【……】
矢継ぎ早に繰り出される彼女の会話に、沈黙で持って応える。彼女のペースに付き合っているといつまで経っても話が明後日の方向に進み続けるのは、この前嫌と言うほど理解した。それに……今の時期、彼女が一人でここに現れたことに、多少警戒を覚えているのもある。
聖園ミカ。【ティーパーティー】の一人にして、トリニティの中核を成す3つの派閥の内一つ、パテル分派の首長を務める人物だ。性格は……良く言えば天真爛漫、悪く言えば少々唯我独尊気味な、年相応の少女。かつてナギサに初めて会ったとき、横からひたすら茶々を入れてきた人物でもある。そんな彼女が、こうして私だけを呼び出して現れた。それも条約前でごたついているだろう今。それに何の意味もないと思うほど、私は耄碌していない。
「……あはっ☆」
こちらの警戒を悟ったか、彼女は誤魔化すように明るい笑い声をあげた。 - 22124/11/21(木) 18:47:52
「そこまで警戒されちゃうのは心外だなー。私、こう見えても繊細で、傷つきやすいんだよ?――ところでここ、食事とか大丈夫? 何か美味しいものでも送ろっか? ケーキとか紅茶とか……あー、コハルちゃんって何かアレルギーとかあったっけ? その辺気を使わないと、何かあったら困るし……何よりナギちゃんがキレるしね……」
ぐだぐだと呟いていた彼女は、それが独り相撲であることに気づくと、困ったように笑った。
「……ふふっ、ごめんね。先生も、あんまり長い前置きは好みじゃないかな? ――じゃあ、本題に入るとしよっか。……あ、ちなみに、私がここにいることについてはナギちゃんは何も知らないよ? 見ての通り、付き添いもなしの私の単独行動!」
【……ずいぶんと豪胆だね】
いくらトリニティ内とはいえ、付き添いもなしで現れるとは。彼女の立場上は憚られるであろうに。思わず感想が口から漏れた。
「ふふっ、こう見えても私、それなりに強いからね。貧弱もやしのナギちゃんとは鍛え方が違うから! というわけで、改めて本題だけど……先生、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?」
【……取引?】
「そう。例えばそうだなぁ……『トリニティの裏切り者』を探してほしい、とか」
……どうやら、彼女もまた、補習授業部を取り巻く事情について知っている人物のようだ。もっとも、彼女の立場上、おかしなことではない。
無言の肯定でもって返すと、ミカはどこか呆れたようにため息をついた。
「……ふぅ。やっぱり。もうナギちゃんったら、予想通りなんだから。何か詳しい情報とかは? そういうの何もなしで、ただ『探して』って言われた感じ? ――理由とか、目的とかは? どうして補習授業部がこのメンバー構成なのかとか、ナギちゃんは教えてくれなかった?」
【……いや。ほとんど何も聞かされていないに等しいね】
「……そっかー。もう、何も教えずに先生にこんな重荷を背負わせるなんて」
【……ああ。その提案についてだけど、もう断ったよ】
ミカは目を丸くした。 - 23124/11/21(木) 18:50:47
「え? そうなの? どうして? 自分の生徒たちを疑いたくないから? それとも――」
【それもあるけれど……私の役目では、ないからね】
私は"先生"であって、"先生"以外の何者でもない。そういう内偵じみたことはまた別の役割だ。少なくとも、トリニティの人間でない、私がすることじゃない。
「……へぇ?」
ミカは面白いものを見たように口角を上げた。
「そっかそっかぁ……確かに先生は【シャーレ】の所属で、トリニティとは本来無関係の第三者だもんね。まあ私たちにとってはトリニティが世界の中心みたいなものだからアレだけど……面白い答えだね。なるほど、それはそれで新鮮かも」
一人頷いたミカは、改めて私に問いかけてきた。
「――それじゃあ、先生は誰の味方?」
……誰の味方、か。
「もしトリニティの味方じゃないなら……ゲヘナの味方? 連邦生徒会の味方? それとも、誰の味方でもない……とか?」
その答えは、はじめから決まっている。
【私は、生徒たちの味方だよ】
「……。……あ、あぁー……」
ミカはしばし絶句した後、なんとも言い難い表情を浮かべた。
「生徒たちの味方、かぁ……そっかぁ……それはちょっと予想外だったなぁ……」 - 24124/11/21(木) 18:51:41
にへら、と誤魔化すように笑顔で蓋をするミカ。驚かせてしまったようだが……私の答えは変わらない。例えトリニティだろうがゲヘナだろうが明日には廃校になるような名もなき学校だろうが、生徒であるならば、それは私が味方すべき子たちだ。所属は関係ない。もっとも、今までトリニティが世界の中心として育ったのならこの反応も無理もないが。
「……あ、あのさ。……っていうことは、その……」
ポツリと、ミカがトーンを落として私に再び問いかけた。それは、今までの戯れとは雰囲気が異なるものだった。
「先生は一応……私の味方である……って考えても、いいのかな? 私も一応この立場とは言え、生徒であることに変わりはないんだけど……」
【もちろん、ミカの味方でもあるよ】
この問いには沈黙ではなく、即答した。ミカがティーパーティーだろうと、パテル分派の首長だろうと、関係ない。彼女もまた私の生徒であり……それすなわち、私が味方すべき一人なのだから。
「……わーお」
即答だったからか、それとも別の理由か……ミカは赤面して、そう返すのが精一杯のようだった。
「……さ、さらっとすごいことを言うね、先生。大人だねぇ。そういう話術? って思う気持ちもあるけれど……うん。純粋にちょっと嬉しいかも。えへへ……」
――でも、それを額面通りに受け取るのはちょっと難しいなぁ。 - 25124/11/21(木) 18:52:20
「だってそれって、同時に『誰の味方でもない』って解釈もできるよね?」
【それは……】
これもまた、正しい。私が言っていることは正直八方美人な言葉に聞こえても仕方のない内容だ。
ふっ、と笑ったミカは、困った私に一つ提案をしてきた。
「――だから、そのまま受け取るんじゃなくて……私から先生に、取引を提案させてもらおうかな」
【取引……?】
「補習授業部の中にいる『裏切り者』が誰か、教えてあげる」
【……っ!】
「ナギちゃんの言う『トリニティの裏切り者』。今必死に探して退学にさせようとしているその相手。……実際の所、もう少し複雑で大きい問題もあるんだけど……今このまま、先生がナギちゃんに振り回される姿をただ見てるだけ……ていうのは、ちょっと申し訳ないなって」
コツコツ。プールサイドをミカが歩く音が響く。真っ白なローファーが、掃除したばかりのプールサイドに少しばかりの足跡を残す。
「そもそも、先生を補習授業部の担任として招待したのは私だからね。知ってた?」
【ミカが、私を?】
初耳だ。てっきりナギサがシャーレの強権を利用するために招致したのだとばかり思っていた。 - 26124/11/21(木) 18:53:28
「うん。ナギちゃんにはずっと反対されてたんだけどね。せっかくの借りをこんな形で清算するなんてって……先生とナギちゃんの間で、色々会ったんだね?」
【……まあ、そうだね。少し前、力を貸してもらったよ】
思い出されるのは砂にまみれた学校と、その土地を目的とした企業の陰謀。その影に隠れたとある自称研究者の企み。紆余曲折を経て、問題解決の際にヒフミ経由でトリニティに協力してもらったのは記憶に新しい。
「まあ、私の方にもいろいろあって。トリニティでもゲヘナでもない、第三の立場が欲しかったの。……ああ、『裏切り者』の話だったね。――補習授業部にいる『トリニティの裏切り者』。それは……白洲アズサ」
【……アズサが。そうか……】
「うん。知ってるかもしれないけど、あの子、トリニティに最初からいたわけじゃないんだ。ずいぶん前にトリニティから分かたれた分派……【アリウス分校】出身の生徒なの。……うーん、よく考えると、『生徒』って呼んでいいのかすら良くわからないんだけどね」
【……? それは、どういう……】
「『何かを学ぶ』ということがない生徒のことを、生徒って呼べるのかな?」
……非常に気になる話だが、あいにくそこを詰めるだけの時間の余裕はない。今重要なのは……
【このことを、私に教える理由はなんだい?】
「……ふふっ。いい眼だね、本当に。期待しちゃうな……」
何かお眼鏡に敵うものがあったのか、ミカがさらに近づいてくる。もうほとんど目と鼻の先。至近距離だ。
「あれこれ誤魔化しても仕方なさそうだし……うん。端的に言おっか。――あの子を、守ってほしいの」 - 27124/11/21(木) 18:54:26
【アズサを、守ってほしい?】
「……あー、ごめんね。ちょっと単刀直入すぎたかな。ナギちゃんの悪い癖が移っちゃったのかも」
パッと、ミカは私から離れて距離をとった。
「戸惑っている先生のために、もう少し最初の方から説明してみようかな? 私はナギちゃんやセイアちゃんみたいに頭がいいわけじゃないんだけど……ちゃんと伝わるように、頑張ってみるね!」
――その後のミカの説明を要約すると、以下の通りだ。
【トリニティ総合学園】は、はるか昔、沢山の分派が集まってできた学園だ。かつて互いを敵視していた分派たちは、やがて争い合うことを辞め、一つに纏まった。それが、『第一回公会議』。しかし、その中で、ただ一つ、纏まることを良しとしない分派が存在した。それが【アリウス分派】。話し合いはやがて争いとなり、連合となったことで強大化したトリニティはアリウスを徹底的に弾圧し……アリウスは、潰された。自治区から追放されたアリウスは何処かへと姿を消し、連邦生徒会すら今の居場所は把握していない。……アズサは、そのアリウス分校の出身者。
「ナギちゃんが推進してるエデン条約。これは、第一回公会議の再現なの。大きな2つの学園が、これからは仲良くしようねって約束。……いい話に聞こえるでしょ? でも本当のところはどうだろう。だってその核心は、ゲヘナとトリニティの武力を合わせた全く新しい武力集団を作ることなのに」
【……ETO(エデン条約機構)のことだね】
「先生正解! ……とどのつまり、エデン条約っていうのはある種の武力同盟。トリニティとゲヘナの戦力を合わせた、一つの大きな武力集団の誕生が目的……」
そんな圧倒的な力をもつ集団が誕生するの。連邦生徒会長が行方不明っていう、こんな混沌とした時期に。……それだけの力で、ナギちゃんは何をする気なのかな? 連邦生徒会の襲撃? ミレニアムっていう新しい芽を耕す?
「――もちろん、細かい目的はわからないけど……これだけははっきり言える。そんなに大きな力を手に入れたら、きっと自分が気に入らないものを排除する……昔、トリニティがアリウスにしたようにね」 - 28124/11/21(木) 18:55:27
そこで、ミカはトーンを落とした。その目に宿るものは……少しばかり、薄暗い。
「あるいはもしかしたら、セイアちゃんみたいに…… ! ううん、ごめんね。今のは失言だったかな」
【……セイアは、何かあったの?】
ここで私は一歩踏み込んだ。答えてくれるかは分からなかったし、機嫌を損ねてしまう可能性もあったが……幸いミカは口をつぐむことはなかった。
「……。セイアちゃんは、入院中なの」
【……今どこにいるか、聞いてもいいかい?】
その言葉に何処か白々しいものを感じて、私はミカに問いかけた。杞憂ならば、それでいい。だが……もし、違うのならば……
「……先生は、本当に知りたい?」
ミカの雰囲気が変わった。決定的に。プールサイドに、張り詰めた空気が走る。……私は今、パンドラの箱を開けようとしている。
「この話をしたら、私はもう戻れない。もしこの先の事実を知った先生が私を裏切ったら……私はもう終わり。それでも、知りたい?」
【裏切るだなんて――】
私の言葉を遮って、ミカは続けた。半ば独白するかのように。
「――ううん、でも大丈夫だね。だってさっき、先生は私の味方って言ってくれたもん。もしこれで裏切られたとしても、何ていうのかな……うん。それはそれで悪くないかもね。えへへ……」
「セイアちゃんは入院中なんかじゃない。――壊されたの。ヘイローを」 - 29124/11/21(木) 18:56:30
【……っ!?】
……予想はしていた。していたが……正直、外れていて欲しかった予想だった。私は苦虫を噛み潰した。
「……冗談なんかじゃないよ。全部本当のこと。去年、セイアちゃんは何者かによって襲撃された。対外的には入院中ってことになってるけど……そっちのが、真実。私たちティーパーティーを除けば、このことはまだトリニティの誰も知らない。もしかしたら【シスターフッド】には知られてるかもだけど、まああそこの情報網は半端じゃないからね」
ともかく、それくらい秘匿事項なの。
そう言って、ミカは目を伏せた。……このキヴォトスにおいて、ヘイローを砕かれることは即ち、『死』を意味する。つまり、セイアはもう……。
【一体、誰が……】
「……うん、わかってない。捜査中っていうか、何もわかってないっていうか。もともとセイアちゃんは秘密の多い子だったから……うん、まあそういうことなんだ。とは言っても、目星が付いてないわけじゃないんだけど……今の段階で、推測を口にするのも、ね……」
それで、話は戻るんだけど……
ミカはそこで言葉を切ると、しばし沈黙した。何を言うか、考えているようだった。
「『白洲アズサ』。……あの子をこの学園に転校させたのは、私なの」
【ミカが?】
「うん。ナギちゃんには内緒でね。生徒名簿とか、関係する書類全部偽造して、あの子を入学させた」
……なぜそこまで? 危ない橋、というレベルではないリスクを負っているが……
私の疑問が顔に出ていたのか、ミカはすぐに答えてくれた。
「……どうしてって? ……アリウス分校は今もまだ、私たちのことを憎んでる。私たち(トリニティ)はこうして豊かな環境を謳歌してるのに、彼女たちは劣悪な環境の中で、『学ぶ』ということがなんなのかもわからないままでいる……。私たちから差し伸べた手も、連邦生徒会からの助けも拒絶し続けてるの。過去の憎しみのせいで」 - 30124/11/21(木) 18:57:47
「――私は、アリウス分校と和解がしたかった」
【……それは】
茨の道、というレベルではない。話を聞いただけでも、アリウスのトリニティへの憎しみは察して余りあるほどだ。
それがもう分かっていたのか、ミカは力なく肩を落としていた。
「でも、その憎しみは簡単には拭えなくて……これまでの間に積み重なった誤解と疑念も、多すぎて……私の手には、負えなかったの。それに、ナギちゃんもセイアちゃんも、私の意見には反対だった……政治的な理由でね。でも、それがわからないわけじゃない。私だってティーパーティーだから」
【それでも、諦められなかった?】
コクリと、ミカは頷いた。
「私は不器用だから、そういう政治とかの話はちょっと得意じゃないんだけど……でも、また今から仲良くしようとするのは、難しいことなのかな?――前みたいにお茶会でもしながら、お互いの誤解を解くことはできないのかな?」
【ミカ……】
君は、心優しい子だ。他者をそこまで気にかけられる人は、そうはいない。私の内心の慰めが聞こえるはずもなく、ミカはそのまま話を続けた。
「私はあの子……『白洲アズサ』という存在に、和解の象徴になってほしかったの。あの子についてはそれほど詳しいわけではないんだけど、アリウスでもかなり優秀な生徒だったみたいだし、その可能性に賭けたかった」
ナギちゃんを説得して正式な手順で進めるって手もあったんだけど、そこはちょっと疑っちゃったっていうか……ナギちゃんはそういうの、聞いてくれないだろうなって。
さもありなん。確かに、この前のナギサの様子を見る限りでは、彼女の意見は聞き入れられそうにない。
「もしエデン条約が締結されたら、その時は今度こそ本当に、アリウスとの和解は不可能になっちゃう。その前に、どうにか実現させたかった……アリウスの生徒がトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれるんだって……皆に証明して見せたかった」
はぁ、とミカはため息をこぼした。その姿に、最初の頃の元気さはどこにもない。何処かくたびれた様子だった。 - 31124/11/21(木) 18:59:01
「そんな中で、ナギちゃんがトリニティに『裏切り者』がいるって言い出して……」
【……】
これはまた、なんともタイミングの悪いものだ。
「ナギちゃんが、どうしてそんなことを言い始めたのかはわからない。私が色々やってるときに何かやらかしちゃったのかもしれない。……それでナギちゃんは、条約の邪魔をさせまいとして、【補習授業部】(ここ)を作ったの」
あはは……と、ミカは乾いた笑い声をあげた。もう笑うしかないと言った感じだった。
「最初は補習授業部なんて何のことやらって感じだったけど……あ、そういえば先生。なんであの子たちなのかって聞いたことある?」
【……いいや。ある程度予想はしているけど】
「んー。ネタバラシするとね……あそこにいるのは、ナギちゃんが疑った子たち。一部除いて、ね――」
ハナコちゃんは、すんごい優秀な子なの。本当に、本当に優秀な生徒。成績的な意味でもね。なんなら生徒会長……ティーパーティーの候補に挙がってた時期もあったの。シスターフッドも、あの子を引き入れようとしてすごい頑張ってたらしいね。上手くいかなかったみたいだけど。……まあ、知っての通りいつからか奇行に走るようになって、成績も楽台寸前まで落ちて。礼拝堂の授業のとき凄かったよ? 私たまたまそこに居合わせたんだけど、あの敬虔な空気の中水着姿で現れて……皆の表情がそれはもう……あはっ。――まあ、今はその奇行も、鳴りを潜めてるみたいだけど。やっぱり例の一件がトラウマにでもなったかな?
「確かに、それで探りを入れたくなる気持ちはよくわかる。あの子は既にトリニティの上層部とか色々交流があって、結構な数の秘密を知っちゃってたから。ナギちゃんにとっては、気にせざるを得ないだろうね」 - 32124/11/21(木) 19:00:32
ヒフミちゃん。優しくて可愛くていい子だよね。ナギちゃんもすっごく気に入ってる。……でも、それでもナギちゃんの疑いの目が向いちゃったの。どうも、こっそりと学園の外に出て怪しいところに行ってたみたい。トリニティの生徒は出入り禁止になってるブラックマーケットとか、あちこちにね。
「それに、どこかの犯罪集団と関わりがあるって情報も流れてきた。あんなに全良そうで純粋な子に見えるのに……」
【……………………】
思わず沈黙する。どこかの犯罪集団……まさか、ね。脳裏に、覆面を被った謎の銀行強盗団の姿が浮かんだ。――ん。銀行を襲う。
「ナギちゃんだってヒフミちゃんのことを気に入ってるのに、それでも疑いの目を向けた。まあ、ナギちゃんらしいと言えばらしいんだけど……さて」
ミカは今まで饒舌に開いていた口を急に閉じた。その表情はどことなく困ったような雰囲気だ。
「あとは……あの子だね。下江コハルちゃん。――申し訳ないんだけど、正直コハルちゃんが選ばれた理由に関しては、私も断定できるわけじゃないの。私なりの推測混じりになっちゃうんだけど……」
コハルちゃん。この子は結構特殊でさ。たぶん唯一、ナギちゃんが疑ってない子なんじゃないかな。先生も知っての通り、この子って『裏切り者』をやれる体じゃないし……。そこを疑うってことは、ティーパーティーは愚か、正義実現委員会も、救護騎士団も全員節穴ってことになるから、まあまずないかな。
なら疑われてるわけでもないのになんで選ばれたのかって話だけど……これは、コハルちゃん本人じゃなくて、正義実現委員会が疑われたから、かな。原因はハスミちゃん達だね。
【ハスミたちが……?】
「巨大な武力を持った存在。それも、ハスミちゃんみたいな、ゲヘナに対して強い憎しみを持っている存在が、自分の統制下にないという不安感……何かが起きるんじゃないかっていう疑念……ナギちゃんはそこに対して、何らかの備えが欲しかったんだと思うよ」 - 33124/11/21(木) 19:01:22
【……一つ、いいかい?】
ミカが首肯するのを確認して、問いかける。
【だとしても、どうしてコハルなんだろう。あの子はかなりハスミたちから目をかけられてるようだった。その上で、こうして選ばれて、体に負担をかけている。……これでコハルに何かあったら、その方がよっぽど『何か起きる』と思うんだけど】
「そこなんだよねぇ……」
うーん、とミカは首を傾げた。
「正直、今の理由ならコハルちゃんじゃなくてもいいの。正義実現委員会に所属する生徒なら誰だって。その上で、コハルちゃんを態々選んだ理由……ここから推測になるんだけど、まず1つ目が『ちょうどよかったから』。コハルちゃんって直近の学力試験を体調不良で欠席してるの。だから、扱いとしては無得点。補習授業部の表向きの選出理由としては、まあ強引だけどこじつけられないわけではないかな。だから選ばれた。2つ目が……まあ、有り体に言えば『人質』かな。ハスミちゃん達がことさら目をかける大事な子だからこそ、選ぶことで正義実現委員会に圧をかけた。……ただこれは先生も言った通り諸刃の剣もいいところで、もし負担をかけすぎてコハルちゃんに何かあったらそれこそ『何か起きちゃう』から、これも選んだ主目的ではなさそうなんだよね……」
……うん、全然わかんないや。こればかりはナギちゃん自身の胸の内を見ないとなんとも、ね。
あははっ、と笑ったミカは、「あ、でも……」と言葉を続けた。
「ハスミちゃん達が原因なのは、たぶん本当。前、こういう事があったって聞いてね……」 - 34124/11/21(木) 19:02:37
正義実現委員会建屋内に、響き渡る破砕音。
「……」
どこか引き気味の正義実現委員会委員長、剣先ツルギに、
「……」
心配そうに見つめる静山マシロ。
「あ、あの。ハスミ先輩、落ち着いてくださ――」
見かねた正義実現委員の一人が止めに入ったのは、その視線の先。破壊活動を行っていた張本人。
「はぁ……はぁ……」
息を荒げ、翼を広げ、目を血走らせ。明らかに興奮状態にある一人の少女。正義実現委員会副委員長、羽川ハスミ。
「――絶対に、絶対に許しません!! 万魔殿!! ゲヘナっ!! どうして、どうしてあそこまで……!!」
「ひっ……!」
怒りがぶり返したのか、恐ろしい形相で憤懣を撒き散らすハスミ。怯える正義実現委員。それに気づかず、ハスミは怒りのままに破壊活動を再開する。
(……だいぶ荒れてるな。これは長くなりそうだ)
ツルギは若干引きつつも冷静にハスミの様子を見ていた。まあ、前線で気楽に暴れ回れる自分とは違い、普段から色々面倒事を押し付けているのだ。こういうときくらい、好きにさせておいてやろう。人間、ガス抜きも必要だ。
そんなふうに半ば達観した姿勢でいたのだが…… - 35124/11/21(木) 19:04:46
(……? 足音?)
タッタッタッと、それほど速くはないが、確かにハスミの方へ駆けてくる音。今のハスミに近づくとは物好きな……そんな余裕は、走ってきた対象を視認した瞬間崩れ去った。
「――ッ!? マズっ!」
対象がハスミに駆け寄るのと、ツルギが動き出すのはほぼ同時だった。それでも、ツルギが暴れるハスミの腕をつかんで押さえる方が数段早かった。
「――ツルギ!? 何を……!」
「ハスミ、落ち着け。良く見ろ。……事故って一生後悔したいなら、話は別だが」
「? ……!? コハル!?」
「はぁっ……はぁっ……」
駆け寄ってきた正体。今ハスミを止めようとしてしがみつき、息を荒げている者こそ、密かに正義実現委員会の光と呼ばれている人物。下江コハルだった。 - 36124/11/21(木) 19:05:14
「コハル! 走るなんて、その体でなんて無茶を……いや、私のせいですね。申し訳ありません。なんと言ったらいいか……」
大切な後輩に負担をかけてしまったことで一気に頭が冷えたのか、広がっていた翼を折りたたんだハスミがコハルを抱えた。心臓に負荷がかかったせいか息も絶え絶えなコハルは、それでもハスミを抱きしめるかのように両手で包みこんだ。
「はぁっ……はぁっ……ゲホっ……。――大丈夫です、ハスミ、先輩……。嫌なことが、あったんでしょう? ……ゲホっ。……話なら、聞きますから……そんなに悲しい顔を、しないで……」
「コハル……」
ポン、ポンと、安心させるようにハスミの背中を叩き、小さな両手でハスミの大きな体に手を回しながら、コハルは精一杯笑顔を見せた。
罪悪感で居た堪れなくなったか、ハスミはコハルをぎゅっと抱きしめて、ただ謝り続けた。
「ごめんなさい、コハル。私のせいで。無理をさせてしまって、走らせてしまって……本当に、ごめんなさい……」
「……マシロ、救護騎士団を呼べ」
「もう呼んでます。……でも、いいんですか? 原因を知ったら間違いなくツルギ委員長が怒られますけど……」
「コハルに何かあってからじゃ遅い。それに……問題が起きたとき責任を取るのが、上の仕事だ」 - 37124/11/21(木) 19:05:50
「まあ案の定、ツルギ委員長は救護騎士団の子にすんごい怒られたらしいよ。自分の状態がわかってるのに走っちゃったコハルちゃんもね。……まあそんなこともあったし、ハスミちゃんがゲヘナのことをすごく憎んでるってこと は周知の事実かな。だからこそ、エデン条約に全力で反対するだろうってのは、火を見るより明らかじゃない? あのゲヘナとの同盟なんてー、って」
【……だから、人質としてコハルを選んだ?】
「さっきも言ったように、完全に推測だけどね。穴もあるし。――まあそんな感じで、ナギちゃんの中にあった『トリニティの中に裏切り者がいるかもしれない』っていう疑念は、色々と情報が集められて進んでいくうちに『あの中の誰が裏切り者なのか?』っていう疑念に変わったんじゃないかな。実際にいるかどうかじゃなく、『裏切り者』は既にナギちゃんにとって確定事項の現実問題になってる。……それが、今の状況。長くなっちゃったけど、これで私が知ってることは全部かな」
【……『裏切り者』、か……】
「……『裏切り者』っていう言葉が何を指すのか。それを多少はっきりさせた上でなら、ちゃんと解答は出せるの」
コホン、と1つ咳払いをし、ミカはさらに話を続けた。
「まずナギちゃんは今きっと、『自分たちを、トリニティを騙そうとしてる者がいる』って思ってる。誰かがスパイなんじゃないかって。そういう意味だと、今ナギちゃんが言ってる『裏切り者』は『白洲アズサ』。経歴を偽って入り込んでるからね。あの子はさっき話した通り、本当はトリニティが敵対してるアリウス出身の子だから。……あの子は何も知らないまま、こんな政治的で複雑な争いのど真ん中に立つことになっちゃって……でも」
ミカは私の眼をまっすぐ見つめた。
「こんな形で、あの子を退学になんてさせちゃいけない。だから、守ってほしいの。それは今、先生にしかできないことだから」
……それで、先程のアズサを守ってほしいという発言に繋がるわけか。 - 38124/11/21(木) 19:06:43
「それからある意味では……ナギちゃんにとっての『裏切り者』は私でもある。私は、ナギちゃんが進めてるエデン条約に賛成の立場じゃないから」
ホストじゃない私には何の力もないから、邪魔も何もできないんだけどね。
無力さを誤魔化すかのように笑顔で、ミカは言葉を吐いた。
「……それと、別の視点からはこういうことも言えるよね? 『トリニティの裏切り者』……それは、ナギちゃんだって言うこともできる。そう思わない?」
【……】
否定も肯定もしない私に、ミカはさらに言葉を重ねた。
「これまで調和を保ってきたトリニティを巨大な怪物(リヴァイアサン)に変えようとしている存在……そういう見方があっても、そんなにおかしくないよね」
「――まあ、それもこれも全部私の一方的な話でしかないんだけどね☆……だから、最終的には先生が決めて」
白洲アズサを守るのか。
裏切り者を見つけるのか。
ナギちゃんを信じるのか。
私を信じるのか。 - 39124/11/21(木) 19:07:15
【……ミカは、それだけで大丈夫?】
「あの子のことについては私に責任があって……でも、私にはお願いすることしかできないから。――ん? あれ? もしかして今のって……私のことを心配、してくれてるの?」
私の発言に頭が追いついたミカは、楽しそうな笑みを見せた。
「あはっ。本当に優しいね、先生は。うーん、なんだかつい勘違いしちゃいそう」
そのまま上機嫌な様子で、力こぶを作る。ミカの細腕に力がこもるのが見て取れた。
「私の心配は大丈夫! さっきも言ったでしょ。私、結構強い方だから。ナギちゃんとは鍛え方が違うんだよ♪」
そのまま腕時計へと眼をすべらせた彼女は、「うわ、もうこんな時間かー」と眼を丸くした。
「じゃ、今日はこんなところかな。そろそろ本校舎に戻らないと、ナギちゃんがお冠になっちゃう。……先生とまたこうしてお話できて、楽しかったよ。――それに、あんまり2人でいると変な噂が立っちゃいそうだもんね。ふふっ……まあ、私はそれでも構わないけどね☆」
【私は構うかな……】
「ふふっ……じゃあまたね、先生」
そう言って、ミカは合宿所から去っていった。
先程まで騒がしかったプールサイドに静寂が戻る。ミカがいた証は、うっすらとした足跡だけが示している。
【……戻るか】
色々と……それはもう、色々と考えながらも、私もまたプールサイドから離れるのだった。 - 40124/11/21(木) 19:08:48
今日はここまで!
次回、最近数多の先生の脳を焼いたあのアイドルが登場だよーまあまだアイドルやってないけどね!
気長に待っててねー - 41二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 19:46:58
原作よりも先生に話した内容が多いからミカのメンタルはアッパー修正かかってるかな
それを帳消しにして足りないほどにナギサのメンタルが死んでるけど…その…生きて… - 42二次元好きの匿名さん24/11/21(木) 22:12:39
ナギちゃんがコハルを気にかけてるならテスト会場ゲヘナは流石にやらなそうだけどどうなるかな?
- 43二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 01:09:04
- 44二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 07:52:01
- 45二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 10:25:24
- 46二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 21:29:35
保守
- 47二次元好きの匿名さん24/11/22(金) 23:55:17
保守
- 48二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 10:44:03
ほ
- 49二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 21:24:55
し
- 50二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 01:44:57
の
- 51二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 07:59:31
怖い…怖いのだ…この物語がいつかRE:I AMが似合う物語になりそうな空気が少し漂っているのが怖いのだ…
- 52二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 18:56:48
保守
- 53124/11/24(日) 22:21:34
ひぃん次の展開悩んでるからまだ時間かかるよーごめんねー
- 54二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 04:00:33
一応保守
- 55二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 13:02:51
保守
- 56二次元好きの匿名さん24/11/25(月) 22:15:33
ほ
- 57二次元好きの匿名さん24/11/26(火) 07:40:33
保守
- 58二次元好きの匿名さん24/11/26(火) 17:42:19
保守
- 59124/11/26(火) 19:01:05
ある程度目処はついたから、明日あたり続きを出せると思うよー保守ありがとねー
- 60二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 00:28:54
- 61二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 07:56:56
ほ
- 62二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 19:06:33
ほ
- 63124/11/27(水) 19:58:15
「――連絡はつきましたか?」
「はい。言われた通り、私が声をかけられるところには声をかけました。皆さんコハルさんのことは心配してますから、有事の際はすぐ動いてくれると思います。……でも、本当に起きるんですか?」
「何も起きなければそれで結構。コハルさんが無事にテストを通過できれば、それに越したことはありません。……ですが、そうはならないでしょうね」
「そうはならないって……」
「……ここだけの話ですよ、シミコ。――ティーパーティーは、はじめからテストに合格させる気がありません」
「……は? ……そ、そんなバカな話が!?」
「あるんですよ。今のティーパーティー……桐藤ナギサは、彼女たちをまとめて退学させるつもりです。妨害手段は、おそらくですがテストの条件から弄ってくる可能性が最も高い。前日になって急に試験範囲を変更する……あるいは、時間と場所を変えてそもそも受けさせない、なんてことも考えられます。時間帯を夜間にでも指定すれば、まずコハルさんは受けられませんから」
「そんな……一体、コハルさんが何をしたと言うんですか……!!」
「……ある程度推測はできますが、ふざけた話ですよ。本当に。これだから政治屋のやることは……ふぅ。だからこそ、私たちのすべきことはシンプルです。――コハルさんたちをサポートします。車の準備をしておくよう言っておいてください。移動手段は確実に必要になるでしょうから。他の方にも、情報共有を密に」
「分かりました。スイーツ部の皆さんと自警団の方々にはそうお伝えしておきます」
「頼みましたよ。……あとはコハルさんの体調次第なんですが……合宿所にいてこちらの目が届かないのが難点ですね」
「一応、今日マリーさんが用事もあって向かわれるそうなので、ついでにコハルさんの様子も見てほしいとお願いしましたが……」
「それでも確実とは言えません。今は無事でも容態が急変することも考えられますから。……はぁ。もろもろ後手に回らざるを得ないのが癪に障りますが……」
「そう何事も思い通りになるとは思わないことです。――吠え面かかせてやりますよ、ティーパーティー」 - 64124/11/27(水) 20:00:14
私が合宿所に戻った時には、既に今日の分の補修はあらかた進められていたようだった。
「あ、先生!」
【遅れてごめん。皆調子はどう?】
「いえいえ……あ、こちら今日の皆さんの模試の結果なんですが……」
見てください、とテスト用紙を突き出され、受け取って結果を見る。
浦和ハナコ――100点
白洲アズサ――62点
下江コハル――82点
阿慈谷ヒフミ――76点
【これは……】
「全員合格圏内に入ることができました! アズサちゃんもギリギリですが、今度は手が届きましたよ!」
まるで我が事のように嬉しそうなヒフミ。実際、この模試を作り始めたのは彼女だ。その努力が実を結んだのだ、喜びもひとしおだろう。
「……紙一重だった」
「はい! 本当に紙一重ですが、それでも合格ですよアズサちゃん! 良く頑張りましたね!」
ぐっと拳を握りしめて心なしか嬉しそうなアズサを褒めるヒフミ。一番最初は何もわからなかったのが、一次試験ではギリギリまで食らいつき、こうして今合格圏内まで達した。本当に良く頑張ったと思う。
勿論頑張ったのはアズサだけではない。満点という驚異的な点数を叩き出しているハナコや、最初の試験のような満点でこそないが、高得点を維持しているコハルも良く頑張ってくれている。 - 65124/11/27(水) 20:01:04
「やったね、アズサ! 今までの努力が形になってる。この調子で本番もやれれば大丈夫だから、引き続き頑張ろうね」
その頑張っている一人、コハルもまた、アズサに対してパチパチと軽く拍手をしながら褒めていた。同学年として同じ試験を受ける都合上、彼女がアズサの先生役を務めることが多かった。いわば師匠のようなポジションにいたわけだ。教え子の成長が喜ばしいのは、似たような立場にいる分よくわかる。
――ただ、少し引っかかることがある。
手元の試験用紙に視線を落とす。大半のマルと、少しのバツ。それが刻まれた試験用紙には、82点の点数と、下江コハルの名が書かれている。
一次試験は満点だった。その次、1回目の模試が88点。そして今回、2回目の模試が82点。少しずつだが、点数が落ちてきている。ただのケアレスミスというなら、それはそれでいい。私の考えすぎで話は終わる。だが……バツのついた解答。それが全て、模試の後半の問題であることが、なんだか気にかかるのだ。後半に行くほど問題が難しくなるとは言え――もしかして、今のコハルは割と不調で、テスト後半まで集中が持たなくなっているのではなかろうか。
思わずコハルを見つめると、向こうも気づいたのか、アズサを撫でる手を止めて不思議そうに首を傾げた。
「……? 先生?」
【……いや、なんでもないよ。急に見つめてごめんね】
「大丈夫ですけど……」 - 66124/11/27(水) 20:01:53
あれ? もしかして寝癖でも残ってる?
そう言って自分の頭を触りだすコハルに、「髪が乱れてるようには見えませんが……」とヒフミが声を掛ける。
……ここでコハルの体調について問うと、周囲の反応が過剰になる可能性が高い。ましてやつい昨日、軽くとは言え発作を起こしたばかりだ。テストの点数にそれが影響していないとは言えない。
ただ幸いなことに、今ここにはコハルの体調に関してスペシャリストがいる。含むものを視線に乗せて彼女に目を向けると、察してくれたのか彼女――ハナエはコクリと、小さくだが確かに頷いた。後で少し時間をもらおう。
【ハナコも満点だし、本当に良く頑張ったね。お疲れ様】
「……ありがとうございます、先生」
ハナコは笑って礼を言ってきた。……点数を褒められたその一瞬、ものすごく複雑そうな顔をしていたが……まるで、成績について持ち上げられることにうんざりしているように見えた。
ハスミの話では、ハナコはトリニティ始まって以来の天才という話だった。ミカも彼女をすごく優秀と評していた。しかし、ある日から突然成績が極端に落ち、落第寸前まで至ったという。結果として、ナギサに疑いをかけられたのもあり補習授業部に来たわけだが……一次試験の時といい、模試の結果といい、やはり成績は意図して落としていたのだろう。一次試験で名前を書かなかったのは、コハルとの一件で既に自身の優秀さを吐露してしまって、点数調整の言い訳がつかなくなったが故の苦肉の策か。加えて今の反応……推測になるが、恐らく的を射ているはずだ。――彼女は優秀すぎるが故に、周囲との人間関係に疲れてしまったのではなかろうか。だからわざと成績を落として周囲の期待を裏切り、痴女染みた奇行に走って人を遠ざけた。
当初の彼女の目標は、恐らく『退学』になること。今必死になってヒフミが回避しようとしていることこそ、彼女の本来の目的と合致しているとは皮肉なものだ。今、こうしてハナコが点数を調整することなく模試を受けているのも含めて。最も、ハナコはそれを知らないわけだが。
それもこれも、コハルとの一件がなければ、彼女は今も奇行に走り、成績を偽って落第しようとしていたのではなかろうか。 - 67124/11/27(水) 20:03:14
ただこれは、私が軽々しく触れていいことではないな。
今までのやりとりで確信したが、ハナコはかなりデリケートなメンタルをしている。しかも今、それはかなり揺らいでしまっているようだ。ハスミが言っていたように、表情を隠す事が下手になっている。今さっき、私に成績を褒められて複雑な顔をしたのがその証拠だ。コハルとの一件、それからハスミの釘刺しがかなり効いているようだ。そんな状態の彼女に、悪戯に刺激を加えたくない。
それに……これは完全に勘だが、彼女については私が口を出す必要はないと思う。何故なら、彼女がいるのだから。
「……? ??? 先生? 私がどうかしましたか……?」
【……いや、なんでもないよ。何度もごめんね】
疑問符を大量に浮かべて困惑するコハルに謝りつつ、考える。今ハナコは一人じゃない。補習授業部の皆が、何より――友達が、コハルがいる。どんな理由があろうとも、彼女がハナコを見捨てるとは到底思えない。例えハナコが当のコハルに負い目を感じているのだとしても、彼女なら、時間をかければきっと……。
「あ、あはは……なにはともあれ、全員目標圏内には到達しました。あとは、これを本番までに維持するだけです! 皆さん、後一踏ん張り、頑張りましょう!」
「了解した。この調子で2次試験も突破して、必ずやペロロ様グッズを手に入れてみせる。それが今、私がここにいる理由で、戦う目的だ……!」
「え、えーと、アズサちゃん? 私たちがここにいる理由は試験と勉強のためであって、目的は落第を免れることですよ!? いつの間に挿げ変わって……」
「ああ、そういえばそんなこともあった気がするな。ついでにそれもやっておこう」
「『ついで』!? ついでなんですか!? あ、あうぅ……モモフレンズファンとしては嬉しいんですが……」
「見事に目的が入れ替わっちゃってる……ま、まあどんな形にしろ、やる気が出るのはいいことだから。ね、アズサ」 - 68124/11/27(水) 20:04:47
「うん。私はやってみせるぞ、コハル……!」
「……(アズサちゃんをフォローするコハルちゃんも可愛いですね。羽が連動してパタパタ動いて……まあコハルちゃんは何をしていても可愛いんですが。……間違ってもこの思考は表に出さないようにしなければ。気持ち悪がられたら死にます、私が)」
ふんすと息巻くアズサに、困惑するヒフミ。それを見てフォローを入れるコハルに、少し遠目でその様子を見ているハナコ。……何故だろう。無言のはずなのに、ハナコが何を考えているのか分かってしまう。笑顔の仮面の下から何か滲み出ている。――うん、言わないでおこう。ハナコが知ったらまた窓から身投げする気がする。
と、そんな折だった。ピンポーンと、玄関チャイムの音が鳴り響いた。
「……? 今の音は……」
「……どなたかいらっしゃったみたいですね」
「来客? 態々この合宿所まで来るなんて、一体誰が……?」
困惑する一同。そこに、来客であろう人物の声が投げかけられる。
「し、失礼致します……!」
私も聞き覚えがあるその声に、2人の人間が反応した。
「あら、この声は……」
「もしかして――マリーさん?」 - 69124/11/27(水) 20:06:58
どうやら知り合いらしいハナコとコハルがそれぞれの反応を示す中、アズサは飄々とした様子で口を開いた。
「侵入者か。大丈夫、準備はできてる」
「……え? 準備ってまさか……」
「ア、アズサちゃん?」
嫌な予感を覚えたのか、コハルが何か感づいたのと、ヒフミが困惑して声を掛けるのと――何かが爆発する音が聞こえてきたのは、ほとんど同時だった。
「――きゃあっ!?」
「ブービートラップだ。誰かの侵入を感知したら起動するようにしておいた」
「ア、アズサちゃん!?」
「いつの間にそんなものを……」
開いた口が塞がらないといった様子のヒフミ。その横で、コハルが目も当てられないと言わんばかりに手を目元に当てている。なんなら頭の羽根すらそれに追随してすっかり目元を覆い隠していた。
「こ、これは一体……? え、あ、こっちにも!?」
連鎖する爆発音。それに混じって聞こえてくる悲鳴。
「きゃあああっ!?」 - 70124/11/27(水) 20:07:43
「逃げても無駄だ。逃走経路を予測して、その先にもちゃんと仕掛けてある」
「アズサちゃんっ!!?」
「……凄いけど、できれば来客を引っ掛けるようには仕掛けないで欲しかったなって。――マリーさん! 大丈夫ですか!?」
……用意周到と褒めるべきか、警戒しすぎだと諌めるべきか。ともかく、罠の仕掛け方としては百点の回答を叩き出したアズサに対し、ヒフミはもはやショックで倒れかけていた。コハルはと言えばアズサに苦言を呈した後、大声でロビーに向かって呼びかけている。……横にいるハナエがさりげなく肩を掴んで止めていなかったら、きっとロビーに向かって走り出していたに違いない。一瞬足に力が入っているように見えたし。ハナエ、グッジョブ。
【……ひとまず、様子を見に行こうか】
「けほっ……けほっけほっ……」
ロビーは酷い有様だった。一体いくつのトラップを仕掛けていたのか、連鎖爆発したそれらの影響で煤が舞い、煙が充満して視界が悪い。その中から、軽く咳き込む声が聞こえてくる。
「コハルちゃん、これで口元を。健康に悪いですから」
「あ、ありがとハナちゃん」
「いえいえ!」
すかさずハナエがハンカチをコハルに差し出して口元を覆わせた。流石の対応の早さだ。……同じことをしようとして本職に出足を潰されたためか、見事に出遅れて隣でハンカチを持って固まっているハナコはさておき。 - 71124/11/27(水) 20:08:41
「だ、大丈夫ですか……!? 怪我とかは……!?」
焦った様子のヒフミが煙に向かって呼びかけると、弱々しいものの確かな反応が返ってくる。
「きょ、今日も平和と、安寧が……けほっ、けほっ……貴方と共に、けほっ、ありますように……」
「まずご自分の安寧を心配してください!?」
「……プロ根性が過ぎるよ、マリーさん……」
思わずといった体でヒフミのツッコミが飛び、コハルが感心半分、呆れ半分の声を上げる中、当の『マリーさん』……伊落マリーは、咳き込みながらも祈りの言葉を投げかけるのだった。
伊落マリー。トリニティは【シスターフッド】に所属する二年生。組織名の通り、シスター服のような制服に身を包んだ修道女(シスター)であり、本人の優しさと献身性も相まって、正に模範的なシスターと言えるだろう。……優しすぎるというのも、少しばかり考えものだが。今回のように。 - 72124/11/27(水) 20:09:09
「――あれ? 良く見たらその服装、シスターフッドの……?」
煙が薄れてきてマリーの姿が見えるようになったため、ヒフミが彼女の服装に気づいた。トリニティ広しといえども、シスター服のような改造制服を着ているのはシスターフッドの人間くらいなものだから、そう思うのは当然だろう。実際正解だ。
「……あら。マリーちゃんじゃないですか」
フリーズから復帰したハナコが、先程までの様子をおくびにも出さず、笑顔でマリーに話しかけた。――なんだかお気に入りの玩具を道端で見つけた子供のように見えるのは気のせいだろうか。
「あ、ハ、ハナコさん……」
それを見たマリーが一瞬固まって、少し引き気味に言葉を返した。……マリーが人にこんな反応を示すなんてなかなかないんだけれど、一体ハナコは彼女に何をしたのだろうか。まあコハルに会う前だろうから大体予想はつくが。
初手から災難にあっていたものの、こうして合宿所に新たな来訪者がやってきたのだった。 - 73124/11/27(水) 20:10:09
「――はい、お水です。よければどうぞ」
「あ、ありがとうございます。コハルさん」
コハルが差し出したコップを受け取ったマリーは笑顔を浮かべて礼を言うと、両手で握って一息に煽った。
「(こくこく……)……ふぅ。びっくりしましたよ。入った途端に何かが作動して……」
「……アズサちゃん」
「……」
ヒフミがアズサの首根っこを掴んで連れて来る。自分でもやりすぎたと思ったのか、特に抵抗せず子猫のように運ばれてきたアズサは、バツの悪そうな顔をしてマリーに話しかけた。
「……ごめん。てっきり襲撃かと思って」
「し、襲撃……? え、えぇっと……?」
困惑するマリー。まあ合宿所(ここ)を態々襲撃してくるような者は不良でもそうはいないだろうから、疑問符を浮かべるのも仕方ない。
「と、ところでどうしてシスターフッドの方がこんなところに……?」
ヒフミが話をそらすように質問をぶつける。……確かに、ティーパーティーや、救護騎士団の人間が来るならまだ分かる。ティーパーティーならば、つい先程のミカのように様子を見に来たのだろうし、救護騎士団ならばコハルやハナエの様子を見に来たで説明はつく。しかしシスターフッドは、この補習授業部に今まで関連を持っていない組織だ。
――【シスターフッド】。私も詳しくはないが、このトリニティにおいて最古参に近い組織だと聞いている。その情報収集能力は折り紙付きで、少なくともティーパーティーであるミカが認めるほどには耳がいいらしい。また、秘匿主義で色々と抱えているらしい、とも。
勿論だからといって先入観を持って接したりはしないし、少なくともマリー自身は本当にいい子だ。だからこそ、この訪問もそう悪いものではないと思うが…… - 74124/11/27(水) 20:11:02
「あ、それはその……2つほど理由がありまして……」
チラ、とコハルを見たマリーは、すぐに視線を外して訪問の理由を話し始めた。
「まず、こちらに補習授業部の方々がいると聞いていまして……まさか、ハナコさんもいらっしゃるとは思いませんでしたが……」
「……まあ私にも、色々とありまして」
「そう……ですか。はい……」
誤魔化すようにそう嘯くハナコに対し、マリーはなんとも微妙そうな表情を浮かべた。いやほんとにマリーがこんな反応を見せるなんて珍しいってレベルじゃないんだけど、彼女に何をしたんだいハナコ……。
「ハナコ、マリーさんと知り合いなの?」
「は、はい? あ、えっと、えー……少しばかりご縁がありまして、ですね……」
コハルに話しかけられた途端に、ハナコはそれまでの余裕そうな様子を一変させて一気にしどろもどろになった。……この調子だと、合宿が終わるどころか学生生活が終わるまでこの有様かもしれない。本当にコハルに弱いね、ハナコ……。
「……コホン。えー、マリーちゃんは、私を訪ねて……というわけでは無さそうですね。さっき私がいるとは思わなかったと言っていましたし。では補習授業部に、どういったご要件で?」
「まずは、白洲アズサさん。貴方を訪ねてこちらに参りました。伺ったところ、こちらにいらっしゃるとお聞きしまして」
「私?」
きょとんとした反応をするアズサ。マリーがアズサを訪ねてきた? 何か繋がりがあるのだろうか。正直あまり想像はつかないが。 - 75124/11/27(水) 20:11:47
「はい。――実は、先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、感謝をお伝えしたいとのことでして。諸事情ありまして、代わりに私が」
「……?」
「感謝……?」
アズサはあまりピンと来ていない様子だった。なんだか毛色の違う話に、ヒフミも疑問符を浮かべている。
「……クラスメイトの方々から、いじめを受けてしまっていた方がいらっしゃいまして。その日もどうやら突然、建物の裏手に呼び出されてしまったのだと聞きました」
……いじめ、か。どれだけ年月が経とうと、場所が変わろうと、どうしても学生生活の中では発生しうる問題だ。まだ学生であり、未熟であるがために、他者の痛みを理解できず、軽い気持ちで行ってしまう者も多い。被害者には一生引きずる者も少なくないというのに。教育者の端くれとして、頭の痛い問題だ。根絶不可能という意味で。
「そ、そんなことが!?」
「……っ。いじめ……」
「……まあ、聞かない話ではありませんね。皆さん狡猾に、陰湿に行いますのであまり表沙汰にはならないのですが」
それに対する反応は三者三様だった。
周囲も本人も善良なためか、驚愕するヒフミ。
何か心当たりがあるのか、痛ましい顔をするコハル。
冷静に、されどどこか呆れた様子で俯瞰的な感想を述べるハナコ。
「私たちも、その方から相談を受けてようやく知ったのですが……」
気づけなかったことを恥じ入るように苦々しい顔をしたマリーは、話を続けた。 - 76124/11/27(水) 20:12:39
「そうして呼び出されてしまった日……そこを偶然通りかかったアズサさんが、彼女を助けてくださったとのことで」
「そうだったんだ……アズサ、ありがとう」
「……? コハルに礼を言われるようなことじゃない」
「ううん。……本当は、こういう問題は正義実現委員会が対応すべきことなの。いじめなんて学園の正義を乱す行為、私たちは許さない。許してはいけない。……でも、人手不足なのと、ハナコが言ったように表沙汰になりにくいせいで後手に回りやすくて……気づいた時には手遅れ……なんてこともあったの」
だから、正義実現委員の端くれとして、私からもお礼を言わせて。――助けてくれて、本当にありがとう。
そう感謝を伝えるコハルに、アズサはどう対応していいかわからないといった様子で、目を逸らして頬をかいた。
「……別に、大したことはしていない。ただ数に物を言わせて弱い対象を虐げる行為が目障りだっただけだ。正直忘れていたし」
「……そしてその後、アズサさんに怒られた方が、正義実現委員会と連絡を取られて……どこで情報が歪曲したのかわかりませんが、正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの規模の戦闘に発展してしまったとか……」
「それなりの規模の戦闘……まさか!?」
「そうしてアズサさんが催涙弾の倉庫を占拠し、正義実現委員たちを相手にトラップを駆使して、3時間以上戦い続けたと……」
「……それってあの時の……だよね……」
思い至ったのか、コハルが萎れた声を出した。……初対面の時のアズサの罪状には、そんな理由があったのか。 - 77124/11/27(水) 20:14:04
「――何はどうあれ、売られた喧嘩は買う。あの時も弾薬さえ切れてなければもっと長く戦えたし、あれ以上に道連れも増やせたのに」
「あ、あうぅ……」
なんでもないことのように言い切ったアズサに、ヒフミが鳴き声を発した。
「それで、その方が報告も兼ねて私たちの元を訪れてくださり、アズサさんに感謝をしたいと……ただ学園では見つけられず、ある方から話を聞いてこちらに来たという次第です」
「そうか……さっきも言ったけど、別に大したことじゃない。私の自己満足だから、感謝されるようなことでもない。結局最終的には捕まったわけだし」
――それに、あの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられてるだけじゃダメ。それが例えどんなに虚しくても、抵抗し続けることを辞めるべきじゃない。
「世界は不条理に満ちている……だからこそ、慎ましく、されど諦めず生きるべきだ。vanitas vanitatum, et omnia vanitas(空の空、全ては空である)――だろう? コハル」
「その解釈は……――うん。そうね。何もかも虚しいと思うよりは、よっぽどいいと思う」
かつて自身が解説した解釈を持ち出され、一瞬面食らったコハルは、少し笑ってアズサを肯定した。うん。私も、そう思うよ。端から諦めるより、よほどいい。
「……そうかもしれませんね。はい。被害者の方にも、そうお伝えしておきます。……アズサさんは暴力を信奉する氷の魔女、だなんて噂がありましたが、百聞は一見にしかず、ですね」
にっこりと、マリーは笑みを見せた。待って、そんな噂があるのかい? 大方いじめをしていた側が腹いせに流したんだろうけど…… - 78124/11/27(水) 20:14:56
「……ふふっ。アズサちゃんには『氷の魔女』らしいところも少しはありますよ? ほら、他の方からすると表情がちょっとだけ読みにくいですし」
「ハナコさん……」
わかりづらいが、茶化しつつフォローを入れたハナコに、マリーは今日始めてハナコに目を合わせた。
「……マリーちゃんが元気そうでよかったです。ところで、2つ理由があると言っていましたが、一つがアズサちゃんの件だとして……残るは?」
「あ、はい。もう一つは、コハルさんの様子を見に来たんです」
「私、ですか?」
「はい。アズサさんがどこにいるのか探していたときに、ある方にここを教えてもらいまして。そのついでに、コハルさんの様子も見てきて欲しいと。……お体の具合はどうですか? コハルさん」
心配そうにコハルを見つめるマリー。優しい彼女には、コハルの体調に関して我が事のように辛いのだろう。
「だ、大丈夫ですよマリーさん。今のところ特に不調は……「この前発作を起こしました」ハナちゃん!?」
安心させるように笑顔を見せたコハルだったが、途中でハナエに横槍を入れられて振り向いた。
「嘘はいけませんよ、コハルさん。いくら心配させたくないのだとしても、こういうことに関して事実関係は明確にしておきませんと。――とはいえ、発作も軽度です。少し興奮した程度なので大事には至っていません。この後どう転ぶかは要観察……といったところですが」
「発作を……そう、ですか……」
医療従事者としての見解を述べるハナエ。それを聞いて、マリーは辛そうな表情を浮かべていた。 - 79124/11/27(水) 20:15:40
「コハルさん、こっちに」
「え? は、はい……」
マリーに呼び寄せられて、コハルはおずおずと近づいた。マリーの正面に立ったとき、彼女は引き寄せられて、マリーの腕に抱かれていた。
「……ごめんなさい、コハルさん。あなたの苦しみを、私が代わってあげられるならどんなにいいか……」
「マリーさん……」
ぎゅう、と腕に力を込めながら、マリーは心中を吐露する。……本当に、優しい子だ。他者への共感性、献身性の高さはトリニティ、否、キヴォトスでもトップクラスかもしれない。その腕に包みこまれたコハルは、小さく笑ってマリーを抱き返した。
「いいんです。マリーさん。こればかりは仕方ないですから。生まれつき、貧乏くじを引いてしまっただけです。それに――『主は乗り越えられない試練は与えない』と聞きました。シスターフッドの教えでも、そうでしょう?」
「コハルさん……」
「――笑って。マリーさん。悲しい顔をされる方が、発作よりよほど辛いから。だから、笑って」
「……っ。コハルさんっ!」
「わぷっ!」
感極まったのか、マリーの抱きしめる力がさらに強くなった。コハルが潰れてしまうほどに。一瞬大丈夫かと心配になったけど、隣にいるハナエが動いていないので考え直した。どうやらセーフのようだ。 - 80124/11/27(水) 20:16:28
「あ、あはは……本当に顔が広いんですね、コハルちゃん。まさかシスターフッドの方とまで知り合いだなんて思いませんでした」
「あ、うん。トリニティに入学してすぐの頃は、いろいろ慣れなくて体調を崩すことも多くて……いろんな人に助けてもらったんだけど、マリーさんもそのうちの一人なの」
「初めてお会いしたときは、教会の階段でうずくまっていらっしゃって……心配になって声をかけたのが切っ掛けです」
「あのときはご迷惑をおかけしました……」
「いえいえ、お気になさらないでください。コハルさんのおかげで、こちらが助けられたこともあるんですから。あ、皆さんご存知でしたか? コハルさん、とてもピアノがお上手でして「わー!」むぐっ!?」
マリーが何か言い出そうとした時、コハルがすごい勢いで(といっても昨日の時程ではないが)マリーの口を塞いだ。……ピアノ?
「(マ、マリーさん! 人様に自慢できるほどじゃないから黙っててって言ったのに!)」
「そうですか? あの時はとても素晴らしい演奏でしたけど……」
「コハルちゃん、ピアノ弾けるんですか?」
ヒフミの質問に、誤魔化せないと悟ったか、コハルは諦めたように肩を落とした。 - 81124/11/27(水) 20:17:54
「……ほんとにちょっとだけ。1日中ベッドの上にいると暇で仕方なくて、その時貰い物でピアノがあったから手を出したの。それが高じて、多少なりとも弾けるようになった……てだけ。言っておくけど、そんなに上手くはないからね? ワイルドハントの人たちとは悪い意味で比べものにならないし」
「ですが、そのおかげでシスターフッドが助かったことがありまして……ある日の集会でピアノの演奏を披露することになっていたんですが、当日に奏者の方が指を怪我してしまい……代役も立てられず困っていたところ、たまたま私の誘いに応じて来てくれていたコハルさんが急遽代理奏者を務めてくださいまして……」
あの時は本当に凄かったです。一度譜面を見ただけとはとても思えないくらいの演奏でした。サクラコ様も感激されていましたし。
そうマリーは絶賛する。そこまで凄いのか、コハルのピアノ。1回くらい聴いてみたいものだけど……
「……シスターフッドが代役を立てられなかった? 珍しいこともあったものですね」
「あ、それはその、曲の難易度が原因でして……弾ける方が少ない難しい曲だったんです。その譜面をコハルさんにお見せしたら、「これなら私弾けるよ?』と言ってくださいまして。時間もなかったので信じておまかせしたら、それはそれは素晴らしい演奏を……」
「ううぅ……そんなベタ褒めされても恥ずかしい……」
ハナコの疑問に、マリーがさらに説明を加える。それを横で聞いていたコハルが恥ずかしがって両手で顔を隠した。頭の羽根が照れ隠しかパタパタと羽ばたき、縮こまっているせいか小柄な体がより小さく見える。 - 82124/11/27(水) 20:18:42
【そこまで恥ずかしがらなくてもいいんじゃないかな。実際、凄いことだと思うよ】
「先生……そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど、そこまで持ち上げられるような腕ではないんです。あくまで暇つぶしで覚えたものだから、自慢できるようなものでは……」
【そうかなぁ……】
弾ける譜面だからといって、急に代役を頼まれたのにさらっとこなすのは相当すごいと思うけど。シスターフッドの集会という、いかにも人が集まりそうなところでなら尚更だ。それにしても、コハルがピアノを弾けるとは……ハナコほどではないが、なかなかに博識だし、割と何でも卒なくこなせるところがあるのかもしれない。体調さえ良ければの話だろうが。……ただまあ本人が嫌がっているので、これ以上の追求は辞めておこう。
「へぇー、コハルちゃんのピアノ……凄く気になりますね! 今度、聴かせてもらってもいいですか?」
「ヒフミ先輩……うーん、まあ体調が良くて、ピアノに触る機会があったなら、そのうちね。昔ピアノは持ってたけど、もう処分しちゃったから手元にないし……ほんとに期待しないでほしいけど」
目を輝かせてのヒフミのお願いに、とうとう折れたコハルは躊躇いながらも頷いた。もしその時があったら、是非とも私も呼んでもらおうかな。本人は謙遜しているけど、マリーがここまで絶賛する腕前には興味がある。……時間取れるかな。最悪リンちゃんに泣きつこう。
そんなふうに話がまとまっていた時だ。 - 83124/11/27(水) 20:19:35
「……恥ずかしがって小さくなってるコハルちゃんも可愛いですね、食べちゃいたいです」
「え?……ハ、ハナコ?」
突然ハナコがそんなことをのたまった。……ハナコさんや。もしかして、心の声がダダ漏れになってやしないかい?
困惑するコハルの声に、自分が何を口走ったのか漸く気づいたのか、ハナコの顔色は赤くなっているコハルとは対照的にどんどんと青褪めていった。
「……もしかして、声に出ていましたか?」
「もしかしても何も全部丸聞こえですハナコちゃん……」
「ハ、ハナコさん……? 突然何を……? 食べ……え?」
「え、ええーとー……」
頭を抱えて呆れるヒフミ。
困惑を通り越して混乱しているマリー。
フォローしようとするも言葉にならないハナエ。
三者三様の姿に、ただ呆然とするハナコだったが、そこに救いの手が差し伸べられた。 - 84124/11/27(水) 20:20:23
「ハナコ……」
「ア、アズサちゃん……」
「――コハルは食べものじゃないぞ?」
訂正。トドメを刺しに来ただけだった。
アズサの天然ボケが炸裂し、哀れハナコはピシリと石像のように動きを止めた。しばしの静寂……。
「――ふ、ふふふ……」
「ハ、ハナコちゃん?」
突如笑い出したハナコは、顔を上げると……それはそれは透き通るような、まるで何か答えを得たかのような笑顔を浮かべていた。
「――いい人生でした」
そのまま流れるように窓を開けて身を乗り出してってちょっと待った!!
「ハナコちゃん!?!!? 待ってください何してるんですか!?」
「離して!! 離してくださいもうだめです終わりですなんですか食べちゃいたいってカニバリズムなんて生まれてこの方持っていませんよいやそうではなく言葉の綾でして本当にコハルちゃんを食べたかったわけではないんですでもこれ本人に聞かれたらもうおしまいなんですよどう考えてもドン引きされますもん友情も冷めきって少しずつ距離を取られていつの間にか他人になってるんですもうだめいっそ介錯してくださいできれば痛くないようにお願いします!!」
「医療従事者の前で死のうとしないでください! いいから落ち着いて!」
「……え? もしかして私ってスイーツの類だった?」
「コハル、落ち着いて。シャワーで触った限り、ちゃんと人間だ」
やいのやいの。錯乱するハナコを止めようとしたり、これまた混乱するコハルを落ち着かせたりと、場はしっちゃかめっちゃかだった。それを見て唖然としていたマリーは、ポツリと私に問いかけて来た。 - 85124/11/27(水) 20:21:26
「……あの、さっきから気になってはいたのですが……ハナコさんって、もしかしてコハルさん相手だとおかしくなります?」
【……色々あってね。本当に色々と……普段はマリーも知ってる通り、理知的なんだけど……】
「は、はぁ……」
良くわからない、といった体だがそれでも状況を飲み込んだマリーは、今も騒いでいるハナコを見つめて……ふっと安心したかのように微笑んだ。
「――でもよかったです。ハナコさんも、以前よりお元気そうで。少し元気すぎる気もしますが……」
あんなふうに騒げるようになって、本当によかった。
感慨深そうに、マリーはそう呟いた。……以前と言うと、私やコハルに会う前のハナコだろう。私の推測は、ある程度間違いではなさそうだ。
結局騒ぎが落ち着いたのは、ある程度時間が経ってからだった。 - 86124/11/27(水) 20:22:05
「で、では皆さん、お邪魔いたしました。先生も、急に訪ねてきてしまってごめんなさい。それでは、また」
「マリーさん、今日はありがとうございました。お陰でアズサの真実を知ることができました」
「いえいえ。――コハルさん。あなたに主のご加護がありますことを、微力ながら祈っております。けして、無理はしないでくださいね」
「は、はい。善処します……」
「善処ではなくご自愛ください……先生も、コハルさんをよろしくお願いします」
玄関ロビーにて、私はコハルと2人、マリーの見送りに来ていた。本当はハナコも来たほうがいいのではないかと思ったが、いまだにメンタルブレイクしていて「生まれ変わったらカタツムリになりたい……」と死んだ魚のような目で呟いているのを見て誘いを断念した。この戦いにはついてこれそうもない。
【任せて。ハナエもいてくれるし、コハルは私たち皆で見守るから】
「……ううぅ。ちっちゃい子みたいな扱いだけど、何も言い返せない」
「ふふっ。では、これで」
軽く手を降って、マリーは合宿所を去っていった。……なんだか激動の一日だった。 - 87124/11/27(水) 20:22:36
「……では戻りましょうか。これ以上ハナコを放っておけないし……」
【半ば以上ハナコの自爆だったけどね。まあいいんじゃないかな、あれはあれでハナコらしいし】
「……うん。ちょっと驚いたけど、ハナコの調子が戻ってよかったです。ハスミ先輩の釘刺しが効きすぎたかなとは思っていたので」
複雑な表情を浮かべるコハル。ハスミの気持ちは嬉しい反面、それでハナコに矛先が向いたことに苦慮しているのだろう。難しい話だ。
【……ハスミの気持ちも分かる部分はあるよ。アレはやりすぎだと思うけど。ただまあ、今後接するうちに解決するんじゃないかな。ハナコとコハルが友人関係を続ける間はどうあっても接触するだろうし。友だちを辞める気はないんだろう?】
「当然です。私から"友だちになって"と言ったんですから。ハナコから辞めたいと言われない限りは、友だちでいるつもりです」
力強くコハルは断言した。……つくづく、この場にハナコを引っ張ってこれなかったのが残念でならない。これを聞いたら、きっとハナコの悩みは割と解決しただろうに。
【……その言葉、ハナコに直接言ってあげてね】
コハルが頷くのを見ながら、私はゆっくりとコハルの足取りに合わせて教室へと戻るのだった。もうすぐいい時間帯だ。3日目の夜がやってくる。 - 88124/11/27(水) 20:23:03
少し足早に、合宿所から本校舎へと戻る最中。携帯がモモトークの着信を知らせる。
歩きスマホはマナー違反なので立ち止まり、道端の木陰に入って画面を見る。
「どうでしたか?」
文面はとても簡潔だった。人嫌いのあの人らしい。それにしても、連絡が来るならてっきりシミコさんからだと思っていたのだが、この人から直接来るとは。よほどコハルさんの事が心配なようだ。
「大丈夫そうです……と言いたいところですが、昨日軽く発作を起こしたそうです。要観察と救護騎士団の方が」
しばらくの間を置いて。
「分かりました」
とだけ返ってきた。本当に簡潔な人だ。ちゃんと委員会の人たちとコミュニーケーションが取れているのか少し心配になるが、まあシミコさんがいるから大丈夫だろう。たぶん。
益体もないことを考えていると、続けて通知音。画面を見ると、文面が増えていた。
「私の考えすぎならば結構ですが、最悪今までの『貸し』を清算してもらう時が来たかもしれません。いつでも動けるよう準備をと、そうサクラコさんにお伝え下さい」
「ウイさん……そこまで……!?」
文面には打たず、しかし驚きで声が出る。――本気だ。シスターフッドと図書委員会の『貸し借り』の話まで持ち出すなんて、よっぽどのことだ。それも、あのウイさんからサクラコ様の名前が直接出てくるなんて……正直、確かに今回の合宿の話は聞いたときからキナ臭いものを感じていたが、ウイさんがそこまで動くとは……
「一体、何が起きようとしているのでしょうか……」
文面には「お伝えしておきます」と返しながらも、私は溢れる心配を抑えられず呟いた。――コハルさん、どうかご無事で。 - 89124/11/27(水) 20:29:15
- 90二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:38:29
アリウスが何かするまでもなくトリニティが内部崩壊しそうだよ~!
- 91二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:45:21
またハナコが暴走してる•••
- 92二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:23:47
ハナコは対人がアホみたいに上手いけどコミュニケーションがアホみたいに下手だからな
人間不信の状態からある意味一目惚れして人生初の感情を浴びまくってるみたいなもんだし - 93二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 22:35:37
ラ・カンパネラ!?しかも周りから絶賛される腕前って相当の実力者じゃないか……
- 94二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 06:35:39
一応保守
- 95二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 13:45:40
- 96二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 14:16:11
- 97二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 23:27:53
保守
- 98二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 01:15:28
それを聞いて最優秀賞が似合っていると思ってしまった
- 99二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 07:57:14
なんかボンドルド味を感じる…
- 100二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:05:49
ほ
- 101二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 00:32:33
生きろコハル!ドレスヒナが待っているぞ!!
- 102二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 08:40:16
しゅ
- 103124/11/30(土) 18:44:32
ひぃん間に合えば明日更新するよー
- 104二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 00:31:33
保守
- 105二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 00:37:35
そういやここのコハルって放課後スイーツ部と仲良かったよね。
バンドイベの時にスイーツ部の皆がコハルにアドバイス聞きに行ってそうなイメージがふと湧いたんだよね。 - 106二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 02:06:40
超細かい事だがマリーって二年じゃなくて一年………
と思ったがコハルがこうなってるからそうゆう変化起こってるとも捉えられるからスルーは可能
そういや大きい所属なのにあそこだけ二年居ないな? - 107124/12/01(日) 08:44:55
……(wiki確認)
……(頭を抱える)
ひぃん何故か2年生だと思い込んでいたよーファンの方申し訳ありませんでした
幸いなのはキャラの掛け合いが変わるわけじゃないから地の文修正だけで済むことかな
というわけでその部分だけ脳内変換頼みます、今後は一年生として扱うよー
- 108二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 16:06:57
ほ
- 109二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 23:35:57
マリーの学年勘違いはよくあるから仕方ねぇ
一年生で出していいえっちさじゃないからなアレは - 110二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 08:11:19
しゅ
- 111二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 08:18:56
多分だが一年だよ~言った人も超細かい事とかスルーは可能言ってた辺りよくある勘違いだと判断したと思われるからしゃあないしゃあない
- 112二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 16:44:03
ほ
- 113二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 21:28:15
し
- 114124/12/02(月) 22:38:24
明日からのローソンコラボ、コハルが選ばれてて嬉しいよークリアファイル欲しいけど手に入る気がまるでしないよーひぃん……
うちのコハルの場合コンビニバイトなんてしようものなら半日も経たずして体力を使い切ると思うよー
バイトリーダーセリカ! 後のことは任せた!
他にもモミジと読書談義して欲しいしココナ教官と教育について語りあって欲しいしハルカの自己を肯定して欲しいしコユキに振り回されて欲しいしなんなら一本短編書けるね、ちょっとそっちまで書いてる時間がないけど
そしてごめんなさい色々あってまだ完成してません……明日には更新できるといいなあ…… - 115二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 23:05:46
個人的にはミサキと絡んで欲しさがある
ここのコハルとはいっそ最強に相性悪いかもしれないけど - 116二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 07:53:48
お待ちしてますよぉ
- 117二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 10:09:13
アイドルイベの立ち振る舞いとかも相まってマリーからは何となく次期当主の空気を感じるよね(1年なのを知らなかった人)
- 118124/12/03(火) 19:54:23
ひぃんなんとか出勤前にローソン滑り込んでコハルを確保したよー
ついでに帰り際にも寄ったら残ってたから残りの五人も揃えてあげたよーお菓子が凄いことに……一人菓子パーティでもするよー
只今次話執筆中……できたら今日、無理でも明日投稿するよーもうちょっとだけ待っててねー - 119二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 21:28:51
- 120二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 06:44:29
ほ
- 121二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 12:37:53
ほ
- 122124/12/04(水) 20:10:18
「――さあ、ではお洗濯を始めましょうか。ふふ♡ 皆さん、制服や下着や靴下など洗うものは全部この籠に入れてくださいね」
「あ、ああ。ありがとう、よろしく」
「は、はい。……あれっ!? し、下着もですか!?」
ニコニコ。そんな擬音が顔に張り付いた状態の、以下にも上機嫌そうなハナコちゃんが洗濯を始めた。さっきまで白濁した、有り体に言えば死んだ魚のような目をしていたというのに、えらい変わりようだ。
さっき先生と戻ってきたコハルちゃんが、壁際で澱んだ空気を撒き散らしていたハナコちゃんに近づいて、耳元で何かを囁いて。途端ハナコちゃんが真っ赤になって百面相していて……気づけばこれである。一体何があったというのか。
ま、まあそれ自体は別にいいのだが。コハルちゃんが絡んだときのハナコちゃんは大体こんな感じだし正直いつものことだ。今重要なのは洗濯について。今下着も全員分まとめて洗おうとしてないだろうか。
「まあ、洗濯はまとめてしちゃったほうが洗剤とお水の節約にもなるし、いいんじゃない? ちょっと恥ずかしいけど」
「コハルの言うとおりだ。ハナコの方針は別に間違ってはない」
「お水は大事ですからね。トリニティにいるとつい忘れちゃいますけど」
コハルちゃんの肯定意見に、アズサちゃんの援護射撃が加わる。ハナエちゃんも別視点からだが肯定的だ。あうぅ……た、確かにそれはそうなんですが……ま、まあそこまで否定するようなことでもないですし、皆さん納得してるならそれで。 - 123124/12/04(水) 20:11:34
「あ、あうぅ……ではお願いします……」
割と恥ずかしかったが、ハナコちゃんが持っていた籠に自身の洗濯物を放り込んだ。5人分が突っ込まれただけあってあっという間に籠が埋まる。
「はい、任されました。あ、先生は【遠慮しておくよ】……ふふ♡ わかりました。洗濯機回してきますね」
何も問題なければ明日の朝には乾かすところまで終わりますよ♪
先生の食い気味な否定を受けて楽しそうに笑ったハナコちゃんは、籠を抱えて寝室から出ていった。るんるんとスキップして、鼻歌まで歌って。……本当に、何があったというのか。さっきまでネガティブオーラ全開だったというのに。
「こ、コハルちゃん。さっきハナコちゃんになんて言ったんですか? 明らかにテンションぶち上がってましたけど」
「ん? 『変なこと考えてたとしても、そうそう嫌いになんてならないから大丈夫。ずっと友だちでいようね』って言っただけよ? 特別なことを言ったりはしてないんだけど……」
「「「ああ……」」」
合点がいった私とアズサちゃん、ハナエちゃんの反応が重なる。ハナコちゃん……ドン引きされたと思ってたコハルちゃんから全肯定されて、お友達継続も決まって舞い上がっちゃったんですね……なんてわかりやすいのか。それともコハルちゃんがとことんハナコちゃん特攻すぎるというのか。思わず彼女が退出していった扉を遠い目で見つめてしまう。 - 124124/12/04(水) 20:12:35
「あー……じゃあ、そろそろ寝る準備をするとしよう。今日もお疲れ様」
「……うん。ハナちゃん、歯磨きしに行くから付き添ってもらえる?」
「了解です!」
生暖かい目をしていたアズサちゃんがそう言って、寝室を退出した。歯磨きでもしにいったのだろう。あわせてコハルちゃんも、ハナエちゃんに支えられつつ洗面所へ……ちょうどハナコちゃんとブッキングしそうだが、大丈夫だろうか。アズサちゃんの生暖かい目に、ハナコちゃんのお豆腐みたいなメンタルが果たして耐えられるのか。
……あ、そうだ。ハナコちゃんで思い出した。
「あの、先生。ちょっとお話したいことがあって……後でお部屋に行っていいですか? ハナコちゃんのことなんですが……」
先生は静かに頷いてくれた。 - 125124/12/04(水) 20:14:49
コンコンコン。規則的なノックの音が響く。
事前に話を聞いていた私は、腰を上げて近づくと、扉を開けて迎え入れた。
「――こんばんは、先生」
そこにいたのは、ピンクの長髪の……
【ハナコ……?】
「ふふ、こんなに簡単に開けちゃうなんて……不用心ですね♡」
予想外の来客に面食らう私に、ハナコがからかうように声をかけてくる。……こんな感じのハナコは、本当に久しぶりに見る。あの地下牢の初対面以来だろう。流石に水着は着ていないようだが。コハルがいないからだろうか。
【……どうしてハナコがここに?】
気を取り直して要件を尋ねる私に、ハナコは真面目な顔をして口を開いた。
「少しばかり、相談したいことがありまして。実は……――アズサちゃんのことなのですが」
【……】
……アズサか。今朝のミカとの会話が頭をよぎる。
――あの子を守ってほしいの。
白洲アズサ。アリウス分校出身者。トリニティとアリウスの、和解の象徴となるはずだった少女。……頭の回るハナコのことだ。いずれ言及してくるとは思っていたが……さて、どうするか。アズサとハナコ、双方にとって丸く収めるためには……。
その時、控えめなノックの音が鳴り響く。 - 126124/12/04(水) 20:16:32
「し、失礼します……先生、いらっしゃいますか……?」
ゆっくりと扉が開き、向こうから本来の来客――ヒフミが顔を出した。
「この前より遅い時間になってしまってごめんなさい。実は……え?」
一度頭を下げた後、戻した彼女の目に映るのは、本来ここには居ないはずの人物。
「ハナコちゃん……?」
「あら……ヒフミちゃん」
ハナコはそれを見て、小首をかしげる。ハナコからしても、ヒフミが来るのは想定外だったのか。
「ど、どうしてハナコちゃんが先生の部屋に……こんな遅い時間に」
「……ふふ。どうしてだと思います?」
「は、はい!?」
ヒフミの口から飛び出した疑問に、ハナコは少し考えた後、からかうように逆に問いかけた。
「こんな時間に、男女が二人っきり……それはもう、やることは1つですよね。いや、『ヤルこと』でしょうか。ふふふ♡」
「ハナコちゃん……」
なかなかに際どいセリフを吐くものだ。間違いなくコハルが目の前にいたら出てこないセリフでもある。そもそもコハルを目の前にしてまともに物を言った試しがほぼないが。そう思うと結構貴重なものが見れてるのではなかろうか。
ヒフミも今まで目にしたことのないだろうハナコの様子にタジタジ……あれ? なんか呆れてるような…… - 127124/12/04(水) 20:17:04
「今更そのキャラは流石に無理があると思いますよ……」
「――はい?」
思わず素で反応したハナコを他所に、ヒフミはなんだか生暖かい目でハナコを見つめた。
「今までどれだけハナコちゃんがキャラ崩壊したのを横で見てきたと思ってるんですか。コハルちゃんの一挙手一投足に反応してツチノコになるわ石像になるわ粉々になるわ……あなたの人体構造どうなってるんですか? って聞きたくなるような挙動のオンパレードですよ? その度に私が後片付けをしているんです。最近は箒とちりとり常備しようか考えてるくらいなんですよ。にも関わらず、今更それを投げ捨ててからかい上手なキャラになろうとするのはもう一周回って称賛ものだと思います。――要するに」
ビシッ! とヒフミの指先がハナコの頬を突っついた。ビクッとハナコの肩が跳ねる。
「ハナコちゃん、もうギャグキャラ(カートゥーン)に両足突っ込んでるんですから、今更キャラチェンは諦めたほうがいいですよ」
う わ あ 。
あまりのオーバーキルっぷりに思わず目を逸らした。た、確かに、ヒフミは今日まで、ハナコの奇行をそれはもう飽きるほどに見てきたはずだ。その上でからかうような言動をされても、いまひとつピンとこなかったに違いない。……コハルに会うまでは、ハナコの処世術だったんだろうけどなぁ。自爆を繰り返した果てがこれとは……あああヒフミさんやその目で見つめるのは辞めてあげておくれ。その優しさと気遣いと呆れを含んだ生暖かい眼差しはハナコのメンタルを吹き飛ばして余りある。ほらいわんこっちゃないハナコ涙目になってるよ! - 128124/12/04(水) 20:18:27
「……え、ええっと。……ヒ、ヒフミちゃん! 今さっき『この前より遅い時間』と口にしてましたね!? つまり以前もこんな夜も更けた時間に来たんですね!? そして先生と二人っきりに!」
「そうですが、それがどうかしましたか?」
「……」
――ハナコ、キミの負けだよ。
悲しいかな、ハナコもヒフミの言葉を拡大解釈して反撃したのだが、何でもないことのようにきょとんと素で返されて敢え無く轟沈した。ヒフミがハナコの様子を隣で見過ぎてもう耐性が出来てしまっている……。
【……あー、とりあえず2人とも。入り口で立ち話もなんだから、ひとまず上がっていいよ】
あまりにもハナコがいたたまれなくなって、私は2人の話に介入した。時刻は既にかなり遅くを示していた。 - 129124/12/04(水) 20:22:24
「……なるほど、アズサちゃんが毎晩不審な動きをしていると……それを先生に相談しに来ていたんですね」
ヒフミは納得したように頷くと、目の前のカップを口に運んだ。この時間帯にカフェイン摂取なんて本当は良くないんだけど、いかんせんコーヒー党なもので出せるものがこれしか無かった。今度から適当な紅茶くらい買っておこう。
「……そういうヒフミちゃんは、これからについて先生にご相談していたと……」
心なしか目が死んでいるように見えるハナコは、こちらも合点がいったようだった。……なんだかコーヒーを飲む機械と化しているが、大丈夫だろうか。
「……アズサちゃん、毎晩どこに出かけているんでしょう。夜明けまで戻ってこないというのは、散歩にしては長すぎますし……」
「……コホン。最初は慣れない環境で寝れないのかと思ったのですが、そうではないようです」
コーヒーをがぶ飲みしてやっと落ち着いてきたのか、ハナコが再び真剣な顔で語り始めた。
「……私はアズサちゃんが夜眠っているところを、ほとんど見たことがありません」
「確かに……言われてみれば、私も見たことがないです。アズサちゃんはいつも先に起きてますし、私より早く寝てることも無かったような……」
ヒフミがハナコの訴えに同意する。私は別部屋なので朝晩の様子は分からないが、そういうことなら割とマズイだろう。生き物である以上は、睡眠は取らないと体に悪い。キヴォトス人だろうがそこは同じだ。
気になるのは、さっきもヒフミが気にしていたように、毎晩どこに行ってるのかだが……。 - 130124/12/04(水) 20:23:05
「……アズサちゃんが一体何をしているのかはわかりませんが、そろそろ多少無理矢理にでも寝かせてあげないといけないのでは、と。短い付き合いですが……なんだかアズサちゃん、どこか、すごく不安そうに見えて」
そういうハナコの目には、からかいも、コハル相手に見せるキョドりもない。真摯にアズサのことを案じている眼差しだった。
「どんな事情なのかは想像の域を出ませんが、どうにかその不安を軽減してあげたくて……このままですと、いつかは倒れてしまいます。……コハルちゃんのように」
「ハナコちゃん……」
――ああ、そこが気がかりだったのか。合点がいった。ただでさえコハルの一件がトラウマになっているのだ。アズサがあの時発作を起こしたコハルのようになってしまうことを、彼女は危惧したに違いない。
「……これは、アズサちゃんだけでなく、ヒフミちゃんと先生にも言えることですよ? しっかり寝ないとダメです。コハルちゃんの寝つきの良さを見習ってください。朝が辛そうなのが難点ですが……」
――試験も大切なのはわかりますが、ただ落第というだけです。体の健康と比べられるようなものではないと思いませんか?
【……それは】
思わず声に出てしまった。――やはりハナコは知らなかったのだ。この試験の裏側を。落第なんて生易しいものは用意されていないことを。 - 131124/12/04(水) 20:26:07
「……ふぅ。普通だったらそうかも知れません。でも……」
「ヒフミちゃん……?」
コーヒーを一杯飲んで口を潤したヒフミが、苦々しげに口を開いた。不穏な空気を感じ取ったか、ハナコが困惑したようにヒフミを見る。
「……ただ落第で済む話ではないんです。あと二回、どちらの試験も不合格だった場合――退学なんです。私たちは、トリニティを去らなければいけません」
「――は?」
ハナコが背景に宇宙を背負った。ここまで思考が止まったハナコを見るのは、あの地下牢でコハルが倒れた時以来だ。
「――退、学? ……ま、待ってください。ヒフミちゃん、それはどういう……? そ、そんなこと、校則的に成り立ちません。生徒を退学させるにはそれなりの理由と煩雑な手続きが必要で、いくらなんでもそんな……」
【……ハナコ。世の中にはね、例外というものが存在するんだ。申し訳ないことにね】
「先生……? ――ッ! ……【シャーレ】。そういうことですか。確かに、それならば退学させることも不可能では……しかしなぜ……」
流石はハナコというべきか。色々あったけれど、元々の優秀さはまるで変わっていないようだ。私の制服を見て瞬時に気づいたハナコはそのまま思考を巡らせ始める。
「……ハナコちゃん。お話します。この補習授業部の裏に隠された事実を」
ヒフミが一拍置いて、真実を語りだした。 - 132124/12/04(水) 20:27:34
「……なるほど。そういう……全て不合格であれば、全員退学……この仕組み事態イカれていますが、シャーレの超法規的権限を組み込めば、こんな裏技も不可能ではないと……」
全てを理解したハナコは、何故か顔を青褪めさせていた。小刻みに体が震えている。……? 一体どうしたというのか。
「……退学。――当然、コハルちゃんも……私は、なんてことを……!」
「ハ、ハナコちゃん? いったいどうしたんです!?」
ヒフミも困惑している。正直ハナコがこの話で自罰する理由が分からない。話についていけない私たち二人を見て、ハナコは自嘲気味に口元を歪めた。
「……一次試験。私は、名前を書かずに提出して不合格となりました。――あれは、ミスではありません。意図的なものだったんです」
「……」
【……】
私とヒフミが沈黙する中、ハナコは息を吸って……自身の内心を吐露し始めた。まるで懺悔する罪人のように。
「私は……自分で言うのもなんですが、皆さんが知っての通り、優秀な部類の人間です。当時の私は愚かで、それをひけらかすかのように行動していました。……その結果、私の周囲に集まる人間は、皆思惑のある者ばかりでした。表ではちやほや人を持ち上げて、裏では醜い足の引っ張り合い。勝手な期待を被せてきて……私は……私はただ、『普通』に生きたかっただけなのに!」
「……ハナコちゃん」
ヒフミの反応も意に介さず、彼女は言葉を並べ立てる。 - 133124/12/04(水) 20:28:19
「ティーパーティーも、トリニティも、どうでもよかった。政治ごっこして満足しているような連中がどうなろうが知ったことではありません。でも、周囲はそれを知らず私を利用しようとする。自分たちの都合のいいように。それが本当に低俗で……うんざりした私は、人を遠ざけるような言動をするようになりました。成績も落第寸前まで落として……詳しくは、皆さんもうご存知でしょう?」
やはり、私のあの時の推測は当たっていたようだ。まったくもって嬉しくも何ともないが。
「そうしてトリニティの鼻つまみ者になって……ゆくゆくは、この学園を去るつもりでした。……あの日も、そう思っていたんです。でも――私は運命に出会った」
ギュッと、ハナコが胸を――ちょうど心臓がある辺りに手を当てた。
「許されない行いをしてしまいましたが、あの子はそれを許してくれた。その上、友だちにまでなってくれました。――初めてだったんです、友だちができるのは。嬉しくて、つい舞い上がってしまって……少々おかしな挙動をしてしまいましたが」
……少々? 思わずヒフミと顔を見合わせる。ヒフミも同じことを思ったのか、顔に「何言ってんだこの人」と書いてあった。
幸いなことに、ハナコは話に夢中でこちらの動きには気づいていなかった。よかった。
「……でも、一次試験の時。問題を解いている間に、ふと思ったんです。この試験を合格したらどうなるか。――補習授業部が解散して、コハルちゃんと疎遠になるのではと。……私は……わた、しは……魔が差して……」
【……それで、名前を書かなかったんだね】
コクリと、ハナコは力なく頷いた。 - 134124/12/04(水) 20:29:56
「こんな、こんなことになるとは思わなかったんです。あの子の状態を把握しているはずのティーパーティーが、合宿に強制参加させるなんて……その上、退学……。片棒を担いだのと同義ですね、私」
「そんなことは!」
「あるんです、ヒフミさん。……アズサちゃんも落ちていたから、私が名前を書いていても同じことだった、というのは通じません。私の意思で不合格になった事実そのものは変わりませんから。……私が、コハルちゃんの足を引っ張った。あの子を合宿に強制参加させて、あまつさえ退学の危機に陥らせている。……全部、私のせいです」
ハナコは頭を抱えて俯いた。ポタ、ポタと水滴がテーブルクロスに垂れる。
「ハスミさんの言う通りでした。こんな……こんな私が、コハルちゃんの友だちであっていいはずが……」
「――それは、違う」
私でも、ヒフミでもない。第三者の声が聞こえた。この場にいない、されど今の話の中心人物の声が。
反応して扉を振り返ったヒフミが目を見開いた。
「――コハルちゃん……」
「――え?」
ハナコも釣られて扉の方を見る。無論、私も。
閉まっていたはずの扉は開け放たれており……しんどそうだし、ハナエに支えられてこそいるものの、コハルが自身の両足でもって立っていた。 - 135124/12/04(水) 20:32:52
水着パーティまで行きつけませんでしたごめんなさい(土下座)
ひぃん今日はここまでだよー - 136二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 20:50:16
ハナコの尊厳にダメージが入ったけど仲は原作以上に深まる、かも?
- 137二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 21:03:13
あんまり脳を焼くと逆の意味で友達でいられなくなるぞ
- 138二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 22:11:54
それが恋愛ならまだ良いが感情が「憧れ」や「推し」に転じればより悲惨な末路を迎えることになる
- 139二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 06:32:40
ほ
- 140二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:07:42
ほ
- 141二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:24:32
コハル、ミカとかハナコみたいな重い子との絡みが多い割にカラッとした人間関係築くイメージがある
- 142二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 23:35:49
保守
- 143二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 06:52:52
原作コハルもここのコハルも友達が(あと地味にカップリング相手も)多くて湿度が分散するのはあると思う
- 144二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 16:38:54
保守
- 145二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 23:43:35
ほ
- 146二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 02:30:51
あの・・・コハルさん・・・?あなた寝なくて大丈夫なの・・・?
- 147二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 07:01:22
勿論ダメなんだけど、まぁ今回は元々先生に話があったみたいだし、ハナエも一緒にいるから大丈夫でしょう。
- 148二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 16:48:41
保守
- 149124/12/07(土) 21:21:55
- 150二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 21:38:17
ここまで来たらもうピアノ系の神秘だろw
- 151二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 08:53:39
ほ
- 152二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 17:48:03
ハナコの感情は憧れというか崇拝に近いものに見える
- 153二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 20:57:57
- 154二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 20:59:52
ハナコにとってのファタールか
- 155二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 06:24:32
ほ
- 156二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 16:39:12
ほしゅ
- 157124/12/09(月) 19:31:31
「コハ、ル、ちゃん……」
ハナコの唇が戦慄く。言葉にならない音がいくつもこぼれ落ちては消えていく。
「どうして……い、一体、いつから……」
「――盗み聞きしてごめんなさい。さっきまで寝てたんだけど、ちょっとお手洗いに行きたくて起きたの。その帰りに話し声が聞こえてきたから、つい……」
――時はしばらく前まで遡る。お手洗いに行きたくなった私は、微睡みから抜け出した。……なんかまた狐みたいな子とお話する夢を見た。細かい内容までは覚えていないけど。寝る度に同じ夢を見るなんて、不思議なこともあるものだ。
夢の話はさておき、体を起こそうとして難儀する。薬が切れたせいで、酷く体が重たい。筋肉が全部鉛に置き換わったみたいだ。そもそも筋肉なんてほぼついてないけど。
それでも何とか体を起こして、隣のベッドで寝ているハナちゃんを起こそうと試みる。流石にこの状態では一人でたどり着ける気がしない。
「んん……。ん? コハルさん、どうしました?」
寝ているところを起こされたというのに、ハナちゃんは嫌な顔一つせず私を介助してくれた。こんな夜中に起こしてごめんね……。 - 158124/12/09(月) 19:32:33
廊下の手すりにつかまり、ハナちゃんに支えられつつ何とかお手洗いまでたどり着いた私は、用を済ませた後帰路についていた。夏とは言え、夜中であることから、廊下はかなり肌寒い。思わず寝間着の上から羽織っていた
カーディガンの前を両手で引っ張る。
「さ、部屋に戻りましょう。 空気も冷えてますし、長居は無用ですよ」
「うん。……あれ? 何か聞こえない?」
「ん? ……本当ですね。話し声……? 先生の部屋から?」
夜中のため声量をかなり落としたハナちゃんに促され、さっさと部屋に戻ろうとした矢先、かすかに話し声が聞こえてきた。ちょうど向かいの部屋だったため、嫌でも通ることになる。
「……先生と、ヒフミ先輩と、ハナコが何か話してるみたい。ハナちゃん、ちょっとだけ付き合ってもらってもいい?」
「うーん……。まあ、私も何の話か気になるので……でもちょっとだけですよ。無理しちゃだめですからね」
「ありがとう」
ハナちゃんと二人、先生の部屋の扉の前で耳を傾ける。――部屋を出る前、いたのは私とハナちゃんの二人だけだった。アズサはどこに行ったのだろう。そしてこの3人はこんな時間に何を話しているというのか。
『……ただ落第で済む話ではないんです。あと二回、どちらの試験も不合格だった場合――退学なんです。私たちは、トリニティを去らなければいけません』
『――は?』
――は?
扉から漏れてきた話し声、その内容に、部屋の中のハナコと廊下の私の反応がシンクロした。……退学? え? 試験に落ちたらって……そんなのアリなの? い、いくらなんでもそんなもの、ティーパーティーの強権でも通るはずが…… - 159124/12/09(月) 19:33:17
『――退、学? ……ま、待ってください。ヒフミちゃん、それはどういう……? そ、そんなこと、校則的に成り立ちません。生徒を退学させるにはそれなりの理由と煩雑な手続きが必要で、いくらなんでもそんな……』
【……ハナコ。世の中にはね、例外というものが存在するんだ。申し訳ないことにね】
『先生……? ――ッ! ……【シャーレ】。そういうことですか。確かに、それならば退学させることも不可能では……しかしなぜ……』
ハナコも同じ疑問を抱いたようで、しかし先生の発言から矛盾がないことに気づいてしまった。……【シャーレ】。連邦生徒会長が残した、超法規的機関。"キリちゃん"から話には聞いていたけれど、悪用するとここまで好き勝手できる権限があるなんて……なぜ連邦生徒会長はそんなものを……それを握っているのがこの先生でよかったと見るべきか、あるいはそれも織り込み済みで先生を今の立場に指名したのか。色々と考えられるけど、今重要なのはそこじゃない。
「た、たいがむぐっ!?」
「ごめんハナちゃんちょっと静かにしてて」
思考が追いついたか、驚きの声を上げようとしたハナちゃんの口を掌で塞いだ後小声で制する。今かなり重要な話をしているのだ。ここで腰を折って止めさせるわけには行かない。
少しばかり申し訳なさを感じながらもハナちゃんに目を合わせると、察してくれたかハナちゃんはコクコク頷いて、口をジッパーで閉めるような仕草をした。お口チャックだ。ごめんね本当。
『……ハナコちゃん。お話します。この補習授業部の裏に隠された事実を』
そう言ってヒフミ先輩が話しだしたのは、この部活創設の裏に隠れた、ドロドロの暗闘劇。 - 160124/12/09(月) 19:34:46
――トリニティの裏切り者。そしてそれを排除しようとするティーパーティー。私はそれに巻き込まれた形か。……いや、ただ正義実現委員会への牽制目的なら私じゃなくてもいい。体の関係上、配慮すべきことが多すぎて、いくら都合が良かったとしてもそれだけでは理由足り得ない。にも関わらず、合宿所の清掃や整備までして私を選んだ……自分のことは自分が一番良くわかってる。ここまでピースが揃った以上予想はついた。私が態々選ばれた理由、それは……
『……退学。――当然、コハルちゃんも……私は、なんてことを……!』
『ハ、ハナコちゃん? いったいどうしたんです!?』
思考を巡らせている間に、部屋の中では雲行きが怪しくなってきていた。
そこからハナコが話し始めた内容は、いじらしくも重たいものだった。……ハナコ……。私が友だちになろうって言ったことが、そんなにも貴方にとって重たいものになっていたのね。
友だちになったことに後悔はない。けれど、結果的にハナコを苦しませてしまったのが心苦しい。
『アズサちゃんも落ちていたから、私が名前を書いていても同じことだった、というのは通じません。私の意思で不合格になった事実そのものは変わりませんから。……私が、コハルちゃんの足を引っ張った。あの子を合宿に強制参加させて、あまつさえ退学の危機に陥らせている。……全部、私のせいです』
でもねハナコ。これはもう結果的にそうなってしまっただけで、貴方がそこまで自罰的になる必要はないと思うの。試験に落ちたら合宿だなんて予想がつかないし、全部落ちたら退学なんてそれこそ未来予知でもしなきゃ難しい。……なんか今、頭の片隅を狐がコンコン鳴きながらよぎっていった気がする。なんで?
『ハスミさんの言う通りでした。こんな……こんな私が、コハルちゃんの友だちであっていいはずが……』
……本当は、話が落ち着いたところで切り上げて部屋に戻るつもりだったけど、そうも言ってられないようだ。このままだとハナコが自戒の念で文字通り自壊する。
長丁場になる覚悟と、明日以降の体調を犠牲にする覚悟を決めて、私は扉を開いた。
「――それは、違う」 - 161124/12/09(月) 19:36:30
そして現在。私はハナコと対峙している。
「あのね、ハナコ。片棒を担いだーとか言ってたけど、これはもうどうしようもないと思うの。ハナコですら、試験に落ちたら強制合宿とか、ましてや全部落ちたら退学なんて予想できなかったんでしょ? ならもう仕掛け人以外はわからない事実よ。結果的にそうなってしまったことを自分のせいだと悔やみ続けるのは、美徳でもあるけど、前に進めないよ?」
「で、ですが……」
難色を示すハナコ。……理解はしていても、感情が追いつかないのだろう。私の存在が、そこまで彼女にとって大切なものになっているのは、気恥ずかしいやら嬉しいやらだけど……正直、少し重すぎる。考えすぎなのだ、ハナコは。
「ですがもヘチマもないの。人間、生きてる以上必ず何かしらで失敗する生き物なの。ハナコは頭が回ってなんでも卒なくこなせたから、これが初めての……ううん、私と初めてあった時から失敗し始めたのかもしれないけど、だからこそ、重たく考えすぎるのは良くないよ? もっと『次から気をつけよう』くらいの軽さで丁度いいの。反省は前に進めるけど、後悔は先に立たないんだから。」
「でも……」
んもう、本当に私相手になると口が回らなくなるんだからハナコは! 初対面の余裕と弁の達者さはどこに行ったの!
……正直、薬が切れてる今、ハナちゃんが支えてくれているとはいえこうして立って話しているだけで結構キツイ。突発的な行動なのに察して介助してくれてるハナちゃんに感謝だ。 - 162124/12/09(月) 19:37:24
「……ハナコ。こんな風に言うのもあれなんだけど……正直言って、重たいよ」
「お、も……」
「ハナコにとって、私が初めてできた友だちだから、色々と思うところがあるのはわかった。それだけの感情を向けてくれてること自体は嬉しいの。でもね……私は、ハナコが思ってるほど凄い人間じゃないの。むしろ普通の……ううん、こうしてハナちゃんや皆に支えられないと生きていけない分、人よりも劣ってるかもしれない。そんな人間に、重たい感情を向け続けても何も得られないよ? 私は、私が与えられるものしか与えてあげられないから」
――それに、私にばかり執着していたらダメなのだ。彼女の傍に、ずっといてあげられるわけではないのだから。あともう数年もすれば、私は……
だからこそ、ハナコには私だけじゃなく、もっと周りを見てほしい。貴方の周囲には、もう貴方を利用しようとする人しかいないわけではないでしょう?
「ハナコ。貴方は私を友だちだと言うけれど、貴方の友だちは、もう私だけじゃないでしょ?」
「……え? ど、どういう……」
「気づいてないの? 隣を見て」
「隣……?」
困惑するハナコが視線を向けた先には……
「え? えっと……私、ですか?」
同じく困惑しながら自身の顔を指さすヒフミ先輩の姿が。唐突に矛先を向けてごめんなさい。でも今から言うことは、間違ってないはずだから。 - 163124/12/09(月) 19:38:04
「まだ付き合いは短いけれど。名前で呼びあって、同じご飯を食べて、同じ部屋で寝て、同じ時を過ごした。それはもう、友だちと呼んで差し支えないんじゃない? 違う?」
「――! そうです!」
ヒフミ先輩は話の流れに乗っかって、私の意見を肯定してくれた。……補習授業部の部長がヒフミ先輩でよかったとつくづく思う。この善良な人は、必ずハナコの助けになってくれるはずだ。この先、私がいなくなったとしても。
「ハナコちゃん! 私も貴方の友だちです! 今まで色々と関わってきましたが、その関係性に名前をつけるなら『友だち』で正しいはずです!」
「え、ええ……!? いやあの、部活の同輩とかは……」
「響きが他人行儀で嫌です!」
「はい!?」
……うん。ちょっとゴリ押しみたくなってるけど、ヒフミ先輩がハナコのことを友だちだと思ってることそのものに変わりはない。
「それに、部活の同輩だと、補習授業部が解散したら繋がりが切れてしまいます。そんなの嫌です! 部活が解散しても、私はハナコちゃんとお話したりしたいんです!」
「ヒフミちゃん……」
「……ほらね、ハナコ。貴方のことを友だちだと思ってる人、私以外にもいたでしょ? 色々と事情があるみたいだけど、きっとアズサもそう思ってる。だから……私のことで悔やみ続けるのは、もう辞めよう? もっと軽く考えようよ」
ゆっくりと、彼女の方に近づく。ハナコはもう思考すらおぼつかないのか、心ここにあらずといった状態だ。逃げないでくれるのは助かる。私じゃどうやっても追いつけないから。
「――もう、貴方は一人じゃないの。大きい失敗をしたとしても、相談すれば必ず友だちが助けてくれるから。もう大丈夫。ね?」
「――」
ギュッと、ハナコの体を抱きしめる。安心させるように、背中をポンポンと叩く。……言うべきことは言った。あとはハナコ次第だ。
しばらくそうしていると、ポツポツと肩に水滴が落ちてきた。少し冷たい。 - 164124/12/09(月) 19:39:22
「……」
ハナコは無言で崩れ落ちた。膝立ちの体勢になって、私に体を預けてくる。私とハナコには結構身長差があるから、これくらいの高さのほうが抱きしめやすくて助かる。……とはいえ、ハナちゃんが支えてくれてなかったら、重さに耐えきれずに後ろへ倒れていたに違いない。ありがとうハナちゃん。
「……んもう。また泣いてるの? ハナコって意外と泣き虫さんなのね」
「違……ご、ごめんなさ……」
「――いいよ。いろいろ抱えてたもの、全部ここで吐き出しちゃえ。私が受け止めてあげるから」
「……っ! でも! 私は、私……こんな私が、コハルちゃんやヒフミちゃんの友だちでいていいはずが「――友だちに、器や資格なんて必要ない!」!」
「言ったでしょ? もっと軽く考えようって。失敗なんて、誰にでもあるの。勿論私にも、ヒフミ先輩にも、先生にだってある」
ね? と問いかけると、「あはは……そもそも補習授業部に入れられたのは試験をブッチしたせいでして……失敗しました」【しょっちゅう計算ミスしてリンちゃんやユウカに怒られてるよ】と、それぞれの反応が返ってきた。いや先生はともかくヒフミ先輩は何してんの? ……ペロロ様のゲリラライブ見に行ったら試験と丸被りした? ああ、うん……そう……。 - 165124/12/09(月) 19:40:18
「ほらね? 皆失敗して、その都度反省して前向きに生きてるの。悔やんでばかりが人生じゃないよ。ハナコは知ってるだろうけど、今まで実感湧かなかったろうから教えてあげる。『失敗は成功の母』って言うのよ」
だから、自分を責めるのはもうやめましょう? 失敗は、次に活かせばいい。ハナコはそれができる子だから。
「そうやって反省して、次に活かして。一人じゃどうしようもないことは周りに、友だちに頼る。……今のハナコには、難しいことじゃないでしょ? だってもう、2人も友達がいるんだから。アズサも含めれば3人ね」
3人よれば文殊の知恵っていうんだから、四人も集まればもう無敵よ。そう思わない?
問いかけると、ハナコはもう言語を投げ捨てていた。
……その後のことはご想像におまかせする。ただ1つ言えることは、カーペットの水はけが良くて助かった、とだけ。また洗濯しなきゃいけないところだった。まだ今日の分だって終わってないのに。 - 166124/12/09(月) 19:41:14
「――先生、少しよろしいですか?」
泣きつかれて寝てしまったハナコ。それを抱えたまま、とうとう体力の限界が来て動けなくなったコハルをそれぞれ寝室に運び込んだ後。私の部屋に、最後の来客が訪れた。
【いいよ。入って】
「失礼しますね」
そう言って静かに入ってきたハナエは、後ろ手で音を立てないように扉を閉めた。
「本当は明日伝えようと思っていたんですが……ちょうどいいので、今伝えておきます。先生が危惧されていた、コハルさんの体調についてですが……」 - 167124/12/09(月) 19:41:46
運び込まれたベットの中、疲れ切った体を横たえながら、微睡みがやって来るまで少し考える。内容は、先ほど廊下で思い至った、私が補習授業部に選ばれた理由。
「――悪化の一途をたどっています。緩やかにですが、確実に。発作を起こしたのもありますし、今夜のこの夜更かしも響いてくるでしょう。そうでなくても、慣れない環境下で体力の回復が追いついていないんです。……このままでは、2次試験は受けれたとしても、3次試験までコハルさんが持ちません」
ずっと不思議に思っていた。直近の試験が無得点だったとは言え、この補習授業部に入れられたこと。加えて、この試験のルールの歪さ。学力試験であるにも関わらず全員合格という条件。……それも、補習授業部全員を、裏切り者ごと退学にさせたいのなら納得がいく。私が選ばれた意味も。
「恐らくですが、ティーパーティーはこの展開を織り込み済みだったはずです。コハルさんの事情と体調については、昔から救護騎士団より情報共有がされていましたから。……それがわかっていた上で、コハルさんを補習授業部に入れた。その真意は――」
長く付き合ってきた体だ。予想はつく。――恐らく3次試験まで持たない。ティーパーティーも、これを予測した上で私を選んだのだろう。ティーパーティーが私に求めたもの。この補習授業部における私の役目は……
「――3次試験で皆さんを確実に落とすため。裏切り者を排除するために、ティーパーティーはコハルさんを利用したんです」
――時限爆弾だ。 - 168124/12/09(月) 19:45:23
今日はここまで! ひぃん昨日はごめんねーまさか18時台から巻き込み規制がかかってるとは思わなかったよー
スレの消費速度にもよるけど、次回更新はあと1回できるならここでやって、その後次スレになるかなー……また水着パーティまで行きつけなかった……ひぃん待て次回だよー - 169二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 19:57:09
ナギサの覚悟が決まりすぎててセーフハウスで自爆とかしそうで怖い
- 170二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 20:29:17
……私は、ハナコが思ってるほど凄い人間じゃないの。(>>162)
いや、ラ・カンパネラをシスターフッドが絶賛するレベルで弾ける地点ですごいのですが・・・。
- 171二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 23:19:46
ハナコの苦悩の原因だった「補習授業部が終わったら関わりがなくなるんじゃないか問題」を「そんなの嫌だから友達になりましょう!」の一言で解決しちゃうヒフミさんマジ光属性
- 172二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 08:00:24
自分だけかもしれないがここのナギサって過去にコハルに脳焼かれてる疑惑あるんだよな
本当に時限爆弾として入れたのなら………ナギサ自身も爆弾(比喩抜き)になりそうだなって - 173二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 08:11:44
これでコハルへの強烈な憧れが和らぐといいが逆効果になってないか心配だ…
あなたがいないと生きていけない
何もかも捧げてしまってもいい
あなたの愛がまだ足らない
欠けたものは何で埋めたらいい?
なんてことになったらやばい - 174二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 12:49:23
コハルの体力が悪化してるのは、ナギサもさすがに想定外なんじゃないかな。
このまま駆け抜けてしまったらナギサが壊れそう。 - 175二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 19:12:56
大丈夫?時限爆弾にしていることばれたらティーパーティー以外のほぼすべてのトリニティの部活敵に回さない?
- 176二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 20:12:49
正義実現委員会
救護騎士団
補習授業部
放課後スイーツ部
シスターフット
図書委員会
トリニティ自警団
・・・あとなんの委員会(部活動)があったっけ?(ティーパーティーを除く) - 177二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 21:38:39
ハナコハはもうどれだけ健全に着地しても関係性の名前は「友達」にはならなさそうかなって
そしてナギサ様はもう裏切り者と心中する覚悟とかじゃないとこんなことできないだろうし心配
幸いなのはハナコがあははできるメンタルでは到底ないってことか - 178二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 07:15:26
最終的にハナコにはナギサ様ともお友達になってくれると嬉しいかなって
- 179二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 17:57:52
期待!
- 180124/12/11(水) 22:22:58
ひぃん明日あたり更新する予定だよーもうちょっと待っててねー
- 181二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 22:47:02
(もう次の更新は新スレに移ってもいいんじゃないかなという顔、新規さんも集まるだろうし)
- 182二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 06:24:04
ほ
- 183二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 17:05:39
し
- 184124/12/12(木) 20:44:28
残業が長引いたせいで完成できませんでした、明日に持ち越しです……申し訳ない……
そして残りレス数も少なくなってきたので続きは明日次スレ立ててそこでやるよ― - 185二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 04:05:00
保守
- 186二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 08:00:24
了解!
- 187二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:06:08
保守
- 188二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 03:05:08
一応保守
- 189二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 13:26:44
保守
- 190二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 20:55:05
保守
- 191二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 00:51:38
1さん・・・。生きてるかな・・・?
年末年始だし >>184 で「残業が長引いた」って言ってたし忙しいのかな・・・。
- 192124/12/15(日) 07:56:45
おまたせしております、大変申し訳ない……ちょっと色々ありまして休日返上しておりました……正直スレ落ちてても仕方ないと思ってたので残ってたのに驚きです、ありがとうございました
そして全然手を付けられておりませんごめんなさい……
完走するまでには間に合わせるので何卒どうか……
ひぃん歳の瀬は忙しいよ― - 193二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 07:57:15
仕事に追われてるだけならまだいいけどね
- 194二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 07:58:33
どうかご自愛くださいね。
- 195124/12/15(日) 12:03:16
- 196二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 12:04:21
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