- 1二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:49:10
- 2二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:49:43
カタカタカタ...
「ふぅ...」
薄暗い部屋の中、今日の作業を終えモニターの電源を落とす。いつもと同じ作業のはずなのに、どっと疲れが押し寄せてくる。
理由には心当たりがある、今日はユウカちゃんがいないのだ。
ミレニアムに入学してから初めて...いや、それより前を含めたとしても、初めてできたと言ってもいい、私の大切なお友達、ユウカちゃんは、今朝早くからいつもより入念に準備をしてシャーレへと向かった。
鏡の前で何度も確認し、その上で私にも確認の連絡をするユウカちゃんが可愛くて、思わず笑ってしまった、それと同時に、ユウカちゃんにこんな表情をさせる先生を、すこし羨ましく思ってしまった。
(今頃2人は、仕事も終わって楽しく過ごしているのでしょうか?)
そんなことを考えながら私は家路につく。 - 3二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:50:23
家に着き、読書をしていると、不意にチャイムが鳴った。
(こんな時間に一体、どなたでしょうか?)
すこし疑問に思いながらも、ドアを開けるとそこには、ユウカちゃんが息を切らしながら立っていた。
なぜか高鳴る鼓動を抑えて声をかける。
「ユウカちゃん?こんな時間に一体どうしたんですか?」
『はぁ...はぁ...ノッ、ノア!聞いて!私っ、私ね!...先生と付き合うことになったの!』
「...あら」
不意に胸を刺されたような痛みが走る、そして、この時気づいてしまった、それを悟られないよう...あたかもなんでもないように。
「ふふっ、おめでとうございます、ユウカちゃん、やっと思いが伝わったんですね」
『そうなの!先生には秘密にしておいてって、言わたんだけど、どうしてもノアだけには伝えたいって、わがまま言っちゃった!』
「立ち話もなんですし、寄っていってください、お茶だしますよ」
それから、いろいろな話を聞いた、どう告白しただとか、先生の反応だとか...
あらかた語り終えると、ユウカちゃんは満足そうに自宅に帰っていった。 - 4二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:51:01
(思ったよりも堪えますね...)
ユウカちゃんの先生への恋心は知っていた、というより、相談を受けていた、その時から胸の中にある【なにか】には気づいていたが、それがなんなのかわからなかった、けれど、今、はっきりとわかった。
(私はユウカちゃんに恋していたんですね...)
先生が生徒に手を出さない、というのはミレニアムの、いや、キヴォトスの住民なら薄々気づいていることだった、もちろん私も知っていた。 - 5二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:51:34
(私って、ひどい人だったんですね...)
口ではユウカちゃんを応援していたくせに、心の奥底では叶わないと決めつけていた、だから今まで気づかなかったのだろう、ユウカちゃんに対する恋心に...
(初恋もまだだと思っていたのに、いつのまにか失恋までしてしまいましたね...)
私は、高校入学まで孤立していた、記憶力が良いせいで、他人の嘘がすぐわかってしまうのだ、小学生の時のこと
「この間の話と違いますよ」
と、何気なく指摘してしまった、すると、その子は泣き出してしまい、私は悪者になってしまった、数日経つと、私の周りには誰もいなくなっていた、陰でめんどくさいやつ、と言われていたのを、今でも覚えている、その件以降、私は人付き合いに疲れてしまったのだ、けれど、そんな私の心を溶かしてくれたのは、ユウカちゃんだった。
『あなたがノアね』
ミレニアムで最初の定期テストが終わった後、急に声をかけられた、私と同じくらい勉強ができる人は初めてと、いきなり話しかけられた時は驚いた、それから何度も会いに来られたから私は、嘘を指摘して嫌われるつもりだった、けれど... - 6二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:52:03
(ユウカちゃんって、すごい正直者なんですよね、自分をよく見せたり、他人を傷つける嘘は絶対につかない...照れて素直になれないことはありますけど)
そんなユウカちゃんを見て、私はだんだんと心を開いていった、ユウカちゃん以外の友達も増えた、けれど、私の中で、1番の友達はユウカちゃん、だと思っていたのに...
(ほんとう...いつのまに恋していたんでしょうか...)
胸が痛い、頭が重い、こんなこと考えたって無駄だとはわかっているけれど、どうしても考えてしまう、今までのユウカちゃんとの思い出を、私にかけてくれた言葉一つ一つを。
私を変えてくれた大切な思い出たちが、私を傷つける。
「...」
いつのまにか、胸元が湿っていることに気づく、今は何もする気が起きない。 - 7二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:52:30
「...んっ...」
眩しさに耐えきれずに目が覚める、昨日はいつ寝たのかもわからない、目を覚ますために洗面台に向かう、鏡に映るのは、涙と寝不足で目を真っ赤に腫らした私、ユウカちゃんに悟られないようにと、いつもより準備に時間をかけて学校へ向かう。 - 8二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:53:10
『ノア〜、おはよう』
なんで言ってユウカちゃんは私の肩を叩く、そんなユウカちゃんの言葉に、行動に、いつもとは違う感情が入り混じり、そして、すぐに現実に戻り、叩き落とされる、私はユウカちゃんにこの感情を向ける資格はない、前まではあったのかもしれない、けれど、もう遅いのだ。
私の反応が遅いのを気にして、ユウカちゃんが顔を覗き込んでくる、抵抗しようにも、寝不足の頭ではうまく反応できなかった。
『...ノア?すこし目が赤いわよ?...読書もいいけどキチンと寝てよね』
よかった、ユウカちゃんにはバレてないみたいだ、いつもの私なら、この後どのように返しただろう、覚えているのに口がうまく動かない、すこし遅れて口が動き出す。
「......ユウカちゃんの方こそ、クマが隠しきれてませんよ?一体誰と夜更かししたんでしょうね?」
当てずっぽうだ、ユウカちゃんの顔なんか見れやしない
『えっ?嘘、なんでわかったの!?バッチリ隠せたと思ったのに!』
すこし前まで、こんなこと、なんでもなかったのに、自覚したらこれだ、私は一体これからどうすればいいのだろう... - 9二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:53:53
「では、お先に失礼しますね」
私はそう言って部室を後にする、ここ数日、ユウカちゃんとは最低限の話しかしていない、コユキちゃんから何か言われたが、見逃していた罰をちらつかせると、何も言わなくなった、我ながら最低だとは思うが、コユキちゃんにかまっている余裕はない、自分の気持ちですら整理がついていないのだ、コユキちゃんにうまく説明なんてできるわけがない。
ガタッ!
『のっ、ノア!...今日も1人で帰るの...?』
ユウカちゃんも、気づいているのだろう、私がユウカちゃんを避けていることを
「ええ、寄らなくてはいけない場所があるので...」
そんな言い訳を何度も続けながら、時間を稼いでいた、そんなことは無駄だと気づいている、ユウカちゃんに対する気持ちは、あってはならないものだ、忘れなくてはいけないのだ、けれど、私にはそれはできない、今ほど、この記憶力を恨んだことはない、ユウカちゃんの返事を待たずに私は家路につく。 - 10二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:55:02
なんの進展もないまま、さらに数日が経った、日に日に、セミナーに向かう足が重くなっているのを感じる、ユウカちゃんと一緒にいたいのに、会いたくない、相反する気持ちが私の中でグルグル巡り、気持ちが悪い。
『ノアっ!』
部室に入ろうとすると、扉の前にユウカちゃんが立ちはだかっていた。
「どっ、どうしたんですか?ユウカちゃん?」
『それは私のセリフ、ノア、ちょっと時間もらうわよ』
ユウカちゃんに手を引かれ、私たちは空き教室に来ていた、校舎はずれにあり、一般生徒は立ち寄らないような場所、窓から差し込む夕陽が教室を赤く染めている。 - 11二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:55:40
『...ノア、単刀直入に聞くわよ、なんで最近、私を避けてるの?』
その質問に対しては答えを用意していた。
「避けていたわけではありませんよ?書記の仕事が重なり、なかなか時間が取れなかっただけです、それに、ユウカちゃんとお話しだってしてないわけではありませんよね?」
『...嘘よ...』
ユウカちゃんの握り込んだ手がすこし震えていた。俯いてしまったので表情は見えないが、怒っているのだろうか...まあ無理もない、私はユウカちゃんに対して嘘を重ねてしまったのだから、だけど、ここで本音を言うわけにはいかない、ユウカちゃんと友達でいるためには、私があの感情を消してからでないといけないのだ。
「嘘じゃありません...信じてください...」
ユウカちゃんを見ると肩が震えていた...
『...お願いだから...私に嘘をつかないでよ...』
よく見ると、ユウカちゃんの胸元はぐっしょりと濡れていた
『...私っ、私はっ、ノアのこと...1番の友達だって、親友だって思ってる...親友の嘘くらいわかるわよ...』
震えた声で、それでいて、呆れたような声で私に告げた、ユウカちゃんの【親友】と言う言葉に、チクリと胸が痛む、けれど、それ以上に心が温まるのを感じた、私は、これを失うところだったのか。
目線を上げ、顔を見ると、ひどい顔をしていた、そしてそれは私も同じだろう。
浮かんだ涙が溢れ出し、頬を濡らしていた。
「...ごっ、ごめん...ごめんね、ユウカちゃん...」
私は、何度も何度も、その言葉を繰り返した、ユウカちゃんは、黙ってそれを聞いていたが、どこかほっとしたような顔をしていた。 - 12二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 13:56:17
呆れた声でユウカちゃんが私に言う
『避けてたことは認める、それでも理由は言えないってどう言うことよ...」
「ごめんね、ユウカちゃん...」
今回の一件で、ユウカちゃんの私に対する気持ちがすこしわかった、私は結局、自分のことしか考えられていなかったのだ、自分で精一杯で、避けられているユウカちゃんのことなど考えられていなかった、それに気づくことができただけでも成長だろう、けれど問題は何も解決していない、依然として、私はユウカちゃんに恋をしている、しかし、私は思ったのだ、0か100でなければいけないわけではないと、この感情を消すのは無理だろう、だけど、受け入れることはできる、この先、辛いことがあるのは分かりきっている、それでも私は、ユウカちゃんと一緒にいたいのだ。
「...でも、これだけは信じてください」
私は、いつの日か口にした言葉に、さらに深い気持ちを込めて、それでいて気づかれないように、ユウカちゃんに告げる。
「私、ユウカちゃんのことが大好きですよ。」
完 - 13二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 17:33:12
おつ。辛いけど美しい
- 14二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 22:26:18
感想ありがとうございます!
報われない恋もいいものですよね!