- 1二次元好きの匿名さん24/11/23(土) 23:59:48
- 2124/11/24(日) 00:02:18
静かな鎮守の社で、私はユイと一緒に恒星を観に行った。
「本当に良かったの?」
と、前を歩くユイは私に聞いた。
「他にも、もっとやりたいことあったんじゃないの?」
「いいよ、別に」
と、私は答えた。
「今すぐ終わるわけじゃないんだから」
恒星の肥大化。数十億年後と予想されていたそれが、突如として始まって、私たちはあっという間に滅ぶことが確定してしまった。 - 3124/11/24(日) 00:03:14
宇宙に逃げることも肥大化を阻止することも、私たちの科学力では不可能だった。
私たちは静かに種としての終活を始めた。
今、ユイと一緒に社へ向かっているのも、その終活の一つだ。
鎮守の社は、禁制地。私やユイのような一般人は入れない。入れば、祟りがあるという。
といっても、人類が星ごと滅ぶときに祟りなど何も怖くない。
私たちはあっさりと禁足地へと足を踏み入れた。
意外にも山道は整備されていた。禁足地といっても、社主は管理していたのかもしれない。 - 4124/11/24(日) 00:04:00
社に辿り着くのに、15分ほどかかった。貴重な15分を浪費したと考えるべきか、満喫したと捉えるべきか。
社に手を合わせようとする私に、ユイはまず恒星を観ようと言った。
私とユイは、サングラスを掛け、恒星を見上げる。
「変わらないね」
「そうだね」
家の庭から見る恒星と、何ら変わることはなかった。考えてみれば当たり前だ。きっと、恒星を観るなんてのは、ただの建前だ。
その後、私とユイは、社に手を合わせた。
私は、とりあえず鎮守されている「掻サマ」に怒らないでね、とお願いした。 - 5124/11/24(日) 00:04:56
別に怒ってもいいけど。恒星に焼かれて死ぬのと掻サマに祟り殺されるの、どちらがマシか分からないし。
街へ戻りながら、私はユイに、手を合わせたとき、何を考えていたのか聞いてみた。
「地球が救われますように」
と、ユイは大真面目な顔をして言った。
その後、ダメ元ダメ元、と笑った。
釣られて私も笑った。浪費ではなく満喫だと、実感した。
それから。
恒星の肥大化は計算間違いだと判明し、人類滅亡は遥か未来に先延ばしにされた。
嘘みたいな話だが、何故かそうなってしまった。
「鎮守の社に行ったからだとおもう?」
私が聞くと、ユイは頬を掻きながらどうだろうね、と笑った。
痒いの?と私は聞いた。
「うん、水虫」
祟りって怖い。私はそう思った。 - 6124/11/24(日) 00:05:22
以上です
- 7二次元好きの匿名さん24/11/24(日) 00:15:52
20分でコレ書いたのかスゲぇな
オチいらないなって思うほどいい感じにまとまってる - 8124/11/24(日) 00:41:51