- 1二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:05:08
- 2二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:05:42
- 3二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:06:45
はい、前スレ主ではありませんが続けました
概念を出したりなんだりしていきましょう - 4二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:08:58
ギャグ適正の強いマコトちゃんがシリアスに洒落にならない目に遭うのは中々よくない快感
- 5二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 20:20:24
前スレでは救出後のお話と万魔・風紀の両方から無理矢理される概念の二つが出たね
- 6二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:04:24
キュートアグレッションの濃いやつみたいな物を感じる
- 7二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:35:25
なんか個人的にマコトはイブキと同じくらい万魔殿のマスコット感が強いから尚更手を出すのが禁忌に感じて興奮
- 8二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:56:56
このレスは削除されています
- 9二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:57:36
続けてくれてありがとうございます…ここからどうなるか楽しみですね
- 10二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 21:59:59
- 11二次元好きの匿名さん24/11/27(水) 22:15:16
弱いものイジメじゃなくて、普段から色々と頑丈でギャグ寄りっぽく強かだから落差みたいなものを感じるのかも
- 12二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 07:50:02
身内から凄惨な暴力()を振るわれたほうが精神にヒビ入りそうってのもある
- 13二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 14:13:32
前スレで出てきたSSとかどっかに纏めます?
- 14二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 18:43:45
是非とも
- 15二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 21:04:14
このレスは削除されています
- 16二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 22:33:46
- 17二次元好きの匿名さん24/11/28(木) 23:26:45
今のところそんな感じですね、まだ纏めるほどじゃないかな
- 18理不尽な目にあうマコトss24/11/28(木) 23:44:41
理不尽な目に遭うマコトの第二幕どうすっぺ……順当にヒナのデストロイヤー()でねっとりいじめられるか、弾幕みたいな激烈ピストンをかまされるか……
後に来るアコたちもどうすっぺ…… - 19マコトに関する経過報告書く人24/11/29(金) 00:11:31
前スレ185続き。
「ごめんなさーい! お怪我ありませんか?」
涙目でジュリが飛び出して来る。
「幸いな。自分で創った物は管理する事だ」
マコトはサイドアームである拳銃を懐に戻す。ジュリの生成した料理モンスターが厨房を脱した瞬間、誰よりも早く反応し、早撃ちで叩き落していた。
「はい、こっちが本来出したかった物」
「これは何かしら?」
フウカが持って来た二枚の大皿を見て、サツキが首を傾げる。
「ババロアって言うメニューよ。まさかクリームとフルーツ載せただけでジュリのとんでもが発動するとは思わなかったけど……ごめんなさいね」
「大丈夫です。でも、注文してなかったと思いますけど……」
「良いのよ、余って腐っちゃう牛乳と卵で試験的に作ってみただけだから。感想聞かせてくれる?」
「わあ、おいしそー! 食べていいの?」
「ええ、召し上がれ」
ジュリはめそめそしながらババロアだった物を回収した。
「ごめんねジュリ、トッピング載せるのは大丈夫だと思ったんだけど……ババロアは上層もセットで料理って事なのかな」
「こちらこそごめんなさい、一皿駄目にしちゃって」
「大丈夫、三皿に分けて作ってたし」
ババロアは卵と牛乳の入った生菓子だが、冷蔵庫に入れれば数日は持つ。この所、万魔殿の誰かがマコトの分の食事を弁当として持って行く事が度々あった。そしてイブキより、マコトからお菓子やデザートを分けて貰ったと言う話も聞いていた。そこでもしや食事をするのに適していない状態なのではないかと案じたフウカが、喉や消化器に優しく栄養を摂れる物として用意したのがこのババロアだ。
水道水がシンクで立てる水音に掻き消える程度の低音量で話す給食部。
「もし来なければどっかで持ってかないといけなかったけど、すぐに来てくれて助かったわ」
「ですね。食べてくれるでしょうか……」
「――うん、大丈夫みたい」
彼女には、相手のお腹が空いているか、食べられる状態か、そんな事しか分からない。だからこそ、美味しくお腹一杯食べて欲しい。スプーンでババロアを口に運びながら、何かの話題に高らかに笑っているマコトを見て、フウカは少しだけ安堵した。 - 20二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 06:15:18
うぉお新作来てる!!
- 21二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 09:35:27
- 22二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 09:36:16
- 23二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 12:18:09
割とこんな動機でマコトを攫ってめちゃくちゃヤる感じのやつならいい具合に怖い
- 24二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 20:05:34
なんというか、サツキはマコトに物凄いじっとりとした重い感情を向けていたら美味いなって
それこそ陵辱レイ○もするくらいの - 25二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 22:38:11
- 26二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 06:09:25
普段ギャグキャラしてるけどマコト先輩かわいいしな…
- 27二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 08:23:58
好き放題にマコトを汚した後で抹殺されても息絶える寸前に「種は蒔いた……血は絶えぬ……」と言い残すやばいやつ
なお普通に病院で処置された模様 - 28二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 14:07:45
可愛いからちょっとイキすぎた好意が出ちゃう
- 29二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 18:20:48
- 30二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 21:00:48
- 31二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:12:51
ヒュージキャノンって英語圏のスラングでち○このことらしいからピッタリや
- 32二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 04:45:41
というか万魔殿がおかしくなったのはギリギリ救助が間に合った(あと数秒遅かったらち○こ入ってた)件で犯人をボコボコにしたのは怒りや正義感もあるが、やりたかった事を先越されたような気がしてキレたからだったとか
- 33二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 06:58:16
- 34二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 13:11:10
>>29イロハ『風紀委員が風紀をまだして良いんですか』ヒナ『大丈夫よ思いは貴女達と同じよもうちょっと楽しみましょ愛してるわマコトフフフ』マコト『やめろヒナ命令だ⁉︎今すぐ助けろ⁉︎風紀委員の仕事をへらしてやる⁉︎』
VCVの続き風にやりました自分は別人です
- 35二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 16:16:07
レイ○魔を蹴散らした後でマコトをいただくヒナ
「ヒナ委員長?マコト議長の救出では?」
「そうだったかしら?でもまあ、こっちの方が気持ち良いわよ」ドチュッドチュッ - 36マコトに関する経過報告書く人24/12/01(日) 18:59:21
くどいかも知れないけど本当に曇るのはここからな気がするからまだ行かせて貰うぜ。
マコトに関する経過報告:氷室セナの場合
ゲヘナ学園救急医療部の長、氷室セナは常に冷静であり、自らの業務、信条、そしてペースに忠実だ。だから、全身傷だらけの議長が運び込まれて来た時にも、第一声は「生きてるんですね。死んでたら歓迎しましたのに」だった。その時は、いつも通りのセナだと思われるばかりで、誰も敢えて反応しなかったが。
「しかし、改めて考えてもあれは酷くないか? 流石のマコト様も、少なからず身の危険は感じていたんだが」
「あら、では、腫れ物に触れる様に慎重な対応を行った方が良かったですか?」
「……お前は、物言いに忌憚が無さ過ぎる」
「美徳だと思っております」
「そうかもな」
救急医学部には様々な要因で患者が担ぎ込まれる。当然心まで届く傷を負った患者も少なくない。その様な、自らの専門知識では救えない患者を数多く見て来たセナは、生半可な優しさと心配が最も深く傷を抉る、と言う結論に辿り着いた。だから彼女はどの様な患者が相手でも姿勢を崩さない。それが誘拐されて辱められた者だとしてもだ。
「さて、診断結果が出ました」
「確定診断が下せないからと、振り返ってみれば一ヶ月近く待たされた。ようやくか」
「お聞きになりますか?」
「無論だ! 勿体ぶらずに教えてくれ」
セナはモニターに映るデータ群を最後に確認し、返事を待つ患者へ向き直る。
「ご懐妊なさってます」
- 37二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 23:17:25
保守
- 38二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 06:10:43
oh……マコトちゃんデキちゃってたか……
- 39二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 08:37:24
なんてことだ…
- 40二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 15:41:17
良いねぇ、唆られる展開だ
- 41マコトに関する経過報告書く人24/12/02(月) 18:54:16
彼女らしく明確で間違い様の無い、端的且つ無慈悲な宣告。
マコトはそれを聞き、確かめる様に目を閉じて、開く。椅子の背凭れに深く体重を乗せ、ゆっくりと息を吐いた。
「まあそうだと思っておった、驚く事も無い」
「母体が知覚出来る物なのですか?」
「ただの勘だ」
そうですか、と興味無さげに返しつつ、机の傍らに置いてあった三冊のバインダーをマコトへ差し出す。
「これは?」
「今後の治療方針についてです。選択肢は大きく二つ、一番上のバインダーには、判断基準について説明があります。二冊目と三冊目は、それぞれの方針に関する詳細です」
渡されたバインダーに、気怠げに目を通す。
「お前は、何かを殺す選択肢をそもそも考慮に入れないと思っていたんだがな」
「医学的に申し上げれば、『ソレ』はまだ生命ではありません。体内に付着した細胞片です。私は医学の徒ですので」
「細胞片、か」
一通り読み終え、バインダーを返した。
「資料は差し上げます、判断にお役立て下さい」
「要らん、全部覚えた」
「……もう判断が固まったから、では無いんですね」
「名君とは、判断は慎重に下し、行動は迅速に行う。衝動的に動く奴の多いゲヘナでは特に重要だ」
「そうですか」
「もう少し興味ありそうに相槌打てんのか?」
- 42二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 23:09:24
地獄は終わらない…
- 43マコトに関する経過報告書く人24/12/03(火) 01:46:39
突き返されたバインダーを仕舞い込み、席を立って診察室の外の様子を伺う。
「内密にしますか?」
「いや、イブキ以外の万魔殿には、訊かれれば答えて構わん。私も隠すつもりは無い」
「了解しました。何か疑問点があればいつでもどうぞ、可能な範囲でお答え致します」
「では、早速一つ良いか?」
「どうぞ」
「あくまでただの参考としてだ。お前はどうするべきだと思う?」
数秒考える様な仕草をし、再び席に着くと、まっすぐにマコトの目を見る。
「私は医療従事者ですので、患者の意見を尊重し、そこに過度に干渉する事は避ける必要があります。今まさに死体になりそうな容体なら別ですが、議長にその兆しはありませんし。なのであくまで、事実に基いた一般論としてお聞き下さい」
「ああ」
「……私の立場としては、今存在している命を最優先で考えます。健康を阻害する身体的負担やストレスを取り除く事が務めです。時には、現段階で命では無い物を度外視する必要も生じます」
「迂遠な言い方だな。お前らしくも無い」
「私は冷淡かも知れませんが、非情では無いと自覚しています」
一息を置き、部長は僅かに姿勢を崩す。
「そして、これは救急医学部としてで無く、一人の友人としての意見です」
「頼む」
「もし、その細胞片が独立した生物になった場合。その生物に対してもマコト議長に対しても、数多くの、奇異や非難の感情が向けられるでしょう。生まれながらに敵だらけの環境の中で、『ソレ』……いえ、『その子』が幸福な生を送れるとは思えません。私個人は『処置』を強くお勧めします」
カチコチと時計の針が、まるで急かす様に時を響かせる。
「最後に、氷室セナ個人としての意見……いえ、要望を添えても宜しいですか?」
「許可しよう」
「もしも『処置』を行う事になった場合には、私が担当する事になるでしょう。外科を専門とする生徒の中では一番経験があると自負していますから。その上で、仮に私が『処置』を任せられる可能性があるのでしたら、出来るだけ早く決めて頂きたいのです」
「それは、発達上の期日とはまた別の話か?」
「はい。より具体的に言えば、私達と同じ『形』を取る前に判断して頂きたいと思っています。」
- 44二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 09:23:10
素晴らしい…これほどの芸術作品は存在し得ないでしょう。
- 45マコトに関する経過報告書く人24/12/03(火) 10:45:20
「目安はあるか?」
「十二週とも言われますが、早ければ早い程望ましいです」
患者の精神状態、そして自身の心情と信条を鑑み、直接な言い方を意図的に避けた。マコトも言った通り、先程から彼女らしく無い物言いだが、それだけ彼女自身も迷っていると言う事だろう。
患者の為に手段は選ばない。だからマコトが望むのであればまだ生き物の要件を満たさない胎児の成長を終了させる事も厭うつもりは無い。だがそれとは別に、命として生まれて来る可能性のあるモノを拒絶する罪悪感がどうしても付き纏ってしまうから、せめて人型を取る前に決めて欲しい。
マコトはその意味を理解した上で、「善処しよう」とだけ答える。
患者は思考を打ち切る様に視線を逸らすと、小さく笑みを浮かべた。
「すまん、変な事を訊いた。また来るとしよう」
マコトが立ち上がり診察室の扉を開けると、白い塊が駆け寄って来る。
「お疲れ様。セナ、また連れて来るわね」
「ええ、お願いします」
「お前は私の後見人か何かのつもりか?」
立ち去る重鎮達を見送ったセナは、仕舞い込んだバインダーを再び取り出し、ゴミ箱に放り込もうとして、止めた。
彼女とて、こんな資料は作りたくなかった。医の道に進む以上いつか触れる問題だと覚悟はしていたが、それでも嫌な物は嫌だ。だが、これの対処は救急医療部の長たる自分の仕事だとも分かっている。
まだ必要かも知れない。そう考え直し、苦虫を噛み潰した様な表情と共に、診察机の上に乱暴に放った。
- 46マコトに関する経過報告書く人24/12/03(火) 10:46:19
アイデアストックがまだあるのでもうちょっと続きます。
曇らせのアイデアはあるけどオチだけが何も思い付いていない() - 47二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 13:35:07
素晴らしい…これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう。
- 48二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 17:52:25
うぉぉ……お辛い……
- 49二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 22:33:07
いいなこれいいなこれ…
- 50二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 06:22:23
おつらいマコトで過酷できてしまう…
- 51二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 17:38:23
やっぱマコトは色々と4545適正高いって
- 52二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 23:18:30
- 53二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 06:08:50
いい匂いしそうなストッキングとかね
- 54マコトに関する経過報告書く人24/12/05(木) 06:46:56
マコトに関する経過報告:錠前サオリの場合
空崎ヒナは、彼女には珍しく全速力でゲヘナ中央区を駆け抜けていた。傍らには、たまたま業務で一緒にいた銀鏡イオリが連れて来られている。
いつもの様に暴徒鎮圧の後始末に当たっていた折、ヒナの私用デバイスに届いた『安全保障上の重大事案』に関する通知。「イオリ、付いて来て頂戴」と言う呼び掛けに、褐色は僅かな違和感を覚えた。いつもなら、仕事よ、や、同行しなさい、と、語弊を恐れずに言えば冷たい命令口調を感じさせる言葉を使う。だから私用デバイスに連絡が来ていた事も鑑み、何か風紀委員会の業務以外の問題が発生した事は分かった。と言って詮索したり断ったりするつもりは毛頭無かったが。無敵の風紀委員長が敢えてワンオペ以外を選ぶのはいつも相当の緊急事態であるし、委員会業務以外で少しでも委員長の頼りにされると言うのが嬉しかったのもある。
重要施設の立ち並ぶ区画を風の様に通り過ぎ、ヒナが駆け込んだのは万魔殿の本部棟。イブキに身の危険でも迫ったのかとイオリは身構えたが、いつもイブキがたむろしている談話室や通常執務フロアを無視して行くので違う様だ。
そして、議長室の扉を蹴破る様に押し入る。であればとうとう堪忍袋の緒が切れたので議長にカチコミ掛けるのかと邪推したが、そこに当の議長が座っていないのを見ても立ち止まる様子が無いのを見るにそれも違うらしい。
- 55マコトに関する経過報告書く人24/12/05(木) 07:16:17
巻き込みホスト規制なんかに負けない!(IP偽装)
ヒナは執務机近くの本棚の一つに近付くと「イオリ、目を瞑ってなさい」と告げた。理由を聞きたかったが、何か言語化出来ない凄みを感じ、黙って従うイオリ。
ピッピッと無機質に響く操作音と、何かがずりずりと引き摺られる音。
「開けて良いわ」
再び目を開けると、先程まで本棚があった筈の場所に、ぴったり同じサイズの金属製の扉が設置されていた。おもむろに扉が開き、中がエレベーターボックスになっている事が分かる。
そこへ躊躇無く踏み込む委員長。
「何これ、議長の脱出経路か何か?」
「脱出は別の本棚。そっちのパスキーは知らないけど」
「それはそれであるんだ」
「これは機密保管庫。万魔殿でも一部の者しか知らされてない場所よ」
「どうして委員長がそれを知ってるのさ」
「後で教えてあげる」
幾つかあるボタンの内、ヒナが迷い無く最下層を押すと、エレベーターは動き始めた。
やけに強い浮遊感の後に停止。
駆け出す上司とそれに続く部下。
嫌に白い照明ではっきり照らし出される通路の向こう側で、パチン、パチンと、恐らくは電気性の何かによる炸裂音が響いている。ヒナはこの音をエレベーター内で察知しており、脳内の地下空間見取り図と照合しつつ、出所へ向かってイオリを引き離さないギリギリの速度で急いでいた。
音のする方へ歩みを進めると、広い空間に出た。二十メートル四方程度で、奥に両開きの扉がある。ここまでの通路を考慮しなければ、エントランスの様にも見える。
奥の扉は開け放たれており、二つの人影が出て来た所であった。
「!」
「……どうしてあなたがここにいるの」
イオリとヒナは、咄嗟にそれぞれの得物を構える。
その時、出て来た影の内、向かって左側、羽沼マコトがもう一人を庇う様に左手でマントを広げた。
「万魔殿議長の名の下に来賓として招待した、アリウス分校の元要人、錠前サオリ氏である。狼藉は許さん」
- 56マコトに関する経過報告書く人24/12/05(木) 13:55:32
誰も何も答えない、短くも粘り気のある時間。
最初にその澱みを揺らしたのは、右足から崩れる様によろめいたサオリだった。それを見るや、異常に近い反射神経で飛び出すヒナ。
サオリは何とか右足を踏み込み直して踏ん張ろうとし、同時に左手でサバイバルナイフを引き抜こうとした。が、刀身が鞘から完全に抜かれると同時に、引き攣った様に左腕全体を震わせたかと思うと、そのままナイフを取り落とす。
足の力に入らず、ここが年貢の納め時かと観念し、目を閉じる。が、想像していた衝撃がいつまで経っても訪れず、代わりに胴体を抱え上げる様な優しい力が加えられた。
「やっぱり、随分酷い怪我ね。私じゃ身長が足りないわ、イオリ、肩貸してあげて」
「う、うん」
「見た感じ、両手とよろけた方の足に、骨まで届かない位の裂傷って所かしら。多分放電系の攻撃で体表をやられて。よく動けるわね。ああ、何も言わなくて良いわ」
「――すまない」
イオリに肩を借りたサオリが、吐き出す様に一言だけ言った。
「で、マコト。あなた……」
マコトも負傷している事は分かっていた。長袖とタイツに隠れているが、布の下で血を流している。そしてヒナの勘違いで無ければ、それは主に胴体下部、正中線から出血している様に見えた。
「壊したの?」
「壊したって何を?」
「イオリには言ってなかったわね。風紀委員長を目指すなら知っておきなさい。ここ、壊せなかった雷帝の遺産の保管庫なのよ」
本来、二年生以下には知って欲しくない、ゲヘナの暗黒面。だが今の三年生の卒業までに仕事が間に合わなければ、次に当たるのはイオリ達、次世代の首脳部だ。だから、彼女には遺産の朧げな情報だけは教えていた。
「え、じゃあ、壊せなかった遺産を壊せたって事?」
「どうなの、マコト?」
「ああ」
マコトは正面を見据えたまま、端的に答える。
「入ったのはこの二人だけよね?」
「ああ」
「特別な装備も無しね」
「ああ」
「確か、破壊する為に命の力の器……神秘が一人分要る奴があったかしら」
「ああ」
「――『使った』の?」
「……ああ」
- 57二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 14:29:34
…なるほど、そういう解決法かぁ(白目)
- 58マコトに関する経過報告書く人24/12/05(木) 15:43:22
ヒナは何か言いたげな表情をほんの一瞬浮かべたが、すぐにいつもの無表情で覆い隠し、マコトの腰の辺りを抱き抱える様に手を添えた。
「どう、少しはマシ? 抱き抱えても良いけど、どっちの姿勢が良い?」
「立っている方が楽だ。すまんが、執務室まで頼む。セナを呼んでいる」
ヒナは「分かった」と言うと、イオリとサオリに目配せし、今来た道を戻り始めた。
エレベーターを昇り執務室に戻ると、二人の救急医学部生を従えて待つセナの姿が。
「セナ、この二人を医務室に!」
「いや、私は歩ける、議長を先に頼む」
「外傷はこっちの方が酷いけど、多分マコトは内臓が酷い事になってるわ」
セナはサオリとまっすぐ目を合わせ、「歩ける」と言う言葉に恐らく偽りは無いと判断。「委員長、お願いします」と言い残すと、マコトを担架に乗せ、部下二名と共に足早に出て行った。
そう、もし本当に雷帝の遺産の破壊手段として『使った』のなら、マコト自身が無事な筈が無い。手当が遅れ過ぎると命に関わるかも知れない。そう考えたヒナは、サオリには申し訳無く思いつつも、マコトを先に送り出した。
- 59二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 22:55:21
- 60マコトに関する経過報告書く人24/12/06(金) 06:16:49
ヒナはサオリの隣、イオリの反対側に寄り添うと、サオリの腕を肩に担ぎ、肋骨の下辺りを抱き締める様に手を添える。
その時、喧しい着信音。音の出所は二つ、どちらも風紀委員の公用デバイスだ。
「こんな時に温泉か!」
「イオリ、行って頂戴。サオリは私が運ぶわ」
「了解」
銀のツインテールは風の様に走り去った。
残された者達は、黙って歩き始める。
「錠前サオリ。ごめんなさい、本当は私がやらなければいけなかったのに。破壊も、その怪我も……あなたが聞かされた方法への協力も」
「いや、大丈夫だ。全て慣れている」
ここまで言った所で、苦痛に呻く声を上げる。両手足が軽く裂けているのだ、間違い無く重傷である。
「良いのよ、無理して話さなくても」
「問題無い……ふぅ。聖園ミカに半殺しにされた時に比べればな」
冗談の様に笑いながら言うが、ヒナは笑えなかった。
「……そう、慣れているんだ。アリウスでは、物の壊し方、命の壊し方、壊す物の選び方、そんな物ばかり覚えてな。酷い治安だったから、不本意に人数が『増えてしまう』様な事も何度もあったし、皆自分一人が生きるのに必死だったから、『増えるのを防ぐ』手伝いをした事もある。だから、大丈夫だ」
これを聞いて、はいそうですかと納得出来る人間など殆どいないであろう事は、サオリ自身もよく理解している。だが、この手の事柄に対する感情の起伏が小さくなってしまっていると(そんな事は無いのだが、少なくとも本人は)思っている身として、正直に話す以外、何をどう言えば良いのか分からなかった。
「マコト議長が言っていたな。風紀委員長はこの判断を尊重するだろうが納得はしない筈だ、力量は十分だが今回は適任じゃ無い、と」
「へぇ、分かってるじゃない。あなたにはマコトから連絡が来たの?」
「ああ。前に使っていた守秘回線でな。念の為にアクセス可能な様維持していたんだが、役に立った」
今日は休日で、この本部棟にも生徒は殆どいない。ただ、二人の不規則な足音だけが生き物の存在を主張している。
「説明は何て?」
「全てを正確に。何も隠されなかった。対象も手段も伝えられたし、私が負傷する可能性も聞いた。その上で請け負った」
「そう」
- 61二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 06:17:43
このレスは削除されています
- 62マコトに関する経過報告書く人24/12/06(金) 06:18:37
つまり、ヒナは納得しないがサオリならば納得する、と。地獄で生まれ育ち、飛行船を墜落させ、式典会場に巡航ミサイルを撃ち込み、キヴォトスの外の人間に銃弾を撃ち込む様な人間は、神秘を使い潰す事に理解を示すだろうと。
そんなの、サオリにあんまりじゃない。ヒナは激しい憤りを覚えた。人を殺そうとする奴は命の重さを理解していないから大丈夫だとでも? 私は錠前サオリの人となりを詳しく知っている訳では無い。だが、錠前サオリが仲間を救う為に自らの命を賭した事は聞き及んでいる。だから、もし本当にサオリの事をそう思っているなら、失礼にも程がある、と。
ヒナの表情から内心を察したのか、サオリが苦笑交じりに話し掛けた。
「余り、彼女の事を怒らんでやって欲しい」
「どうして?」
「議長は何も、私を血も涙も無い殺人鬼だと思って呼んだ訳じゃ無いんだ。きっと……」
「きっと?」
「きっと、認めて欲しかったんだと思う。全てに配慮しなくてはいけない、次世代を守らなければならない、貴重な機会を逃す事は出来ない、誰かを犠牲にする事は許されない。その中で苦渋の決断を下した事を、分かって欲しかったんだ」
小さく咳き込む様に言葉を切る。
「気持ちは痛い程よく分かる。私は、あいつの比じゃ無い程、酷い事を散々して来た。全ては家族――アリウススクワッドの皆や他のアリウス生と一緒に生きる為にした事だと自信を持って言えるが、罪を犯した事に何の変わりも無い。そんな事は自分が一番よく分かっている。言い訳にしか聞こえないかも知れないが、罪の意識はあるんだ。私が傷付けた人達の声に責められる、そんな幻聴や夢もよくある」
声色が、次第に祈る様な、噛み締める様な物に変わる。
- 63二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 06:48:31
キマっておる……
- 64二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 18:41:32
保守
- 65マコトに関する経過報告書く人24/12/06(金) 18:45:01
サオリは前を向いている。サオリは小さく笑っている。
「でも、罪に塗れた私でも。アリウススクワッドの皆から、私の判断のお陰で生きている、私の行動の結果で今があると言って貰えると、信じられない程に心が軽くなるんだ。私の行いを知った上で、それで得られた物があった、守れた物があったと伝えて貰える事が、どんなに嬉しいか。私は言葉で表せる程文才が無い」
俯いたまま歩き続けるヒナの方を向き、今度は懇願する様に言った。
「私はとやかく言える立場に無いし、そもそも何かに干渉する資格のある人間でも無いが。空崎ヒナ。もし可能であれば、彼女を責めないでやって欲しい。議長として守ろうとした物、その為に自分の心を削った事、それを評価して、認めてやって欲しい。駄目だろうか?」
ヒナは何も答えられなかった。
その後、サオリはセナ達極一部の生徒により治療が施され、他の誰にも知られぬままゲヘナを後にした。数日の入院期間にヒナは見舞いに行く時間を取れなかったが、セナより「助けてくれてありがとう。マコトを頼む」と伝言を聞かされた。
ヒナはまだマコトの見舞いにも行けていない。
- 66二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 23:11:26
みんなおいたわしや…
- 67二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 06:05:18
困ったな、こういうの大好きなんだ。