荼毘くんの成長振り返り日記

  • 1二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:09:16

    冷たい風の吹く冬、優しい光の中できみは生まれます。
    柔らかな輪郭の白い頬が、薄ら赤く血を通わせていました。
    燃えるように揺れる赤い髪の毛も、夜明けのように透ける青い瞳も、神さまからの素敵なプレゼントでした。
    緩く開いた瞳を滲ませ、精一杯に生を叫んでいましたね。
    祝福のような、あるいはこれからの生を予期する呪縛のような、そんなきみの声を聞き、私の瞳からは思わず涙がこぼれるのでした。
    お母さまもまた、その冷たい相貌を溶かして、いっそ春の日差しのような暖かさできみを見て笑い、そして泣いていました。
    お父さまは席を外されているようでした。
    離れたところにいたけれど、きみの知らせが来た時に、緊張させていた肩を緩ませ、きみに似通った自身の赤髪を撫でていました。
    それからゆっくりと息を吐き、静かに頬を緩めていたのを覚えています。
    きみの誕生は、たしかに望まれ、愛され、幸福を願われていたのです。

  • 2二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:11:18

    出たわね

  • 3二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:14:34

    元気そうだな文豪妖怪

  • 4二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:14:51

    離れたところにいたけれど、きみの知らせが来た時に、緊張させていた肩を緩ませ、きみに似通った自身の赤髪を撫でていました。
    〉どうやって知らせが来たんですか?

  • 5二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:15:30

    やっぱり荼毘って妖怪の発生源なのでは?

  • 6二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:23:23

    さて、それからのきみは随分と愛らしくありました。
    触れると優しく押し返してくる柔肌。
    そっと手を伸ばすと力強く握る両の手。
    静かに私を見つめ、やがてゆっくりと弧を描く唇。
    ふんわりとして、ほのかに甘い香りを漂わせる頭髪。
    私は肺の深くまで息を吸い、それらすべてに惜しみなく愛を注ぎました。
    私の愛が人のかたちを作るなら、きっときみを象るだろうと思うほど、ただひたすらに愛を囁いたのです。
    お父さまは仕事に励み、お母さまはきみと共に過ごす。
    そんな円やかな生活を送っていましたね。
    私は、きみとお母さまが額を合わせ、よく似たやわらしい瞳を細めるのを見るのが、とても好きでした。
    好奇心旺盛なきみは、なにかと手を伸ばして掴み、口に入れようとするものですから、私もお母さまも大変だったのですよ。
    何度ふたりで慌てたことか思い出せないほどです。
    思い返せば笑ってしまいますが、私もお母さまも、そしてきっときみも、日々を一生懸命に過ごしていたのでした。

  • 7二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:25:54

    荼毘というからには荼毘になるまで日記続く…?

  • 8二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:27:19

    また荼毘に脳を焼かれた妖怪が出てきたな

  • 9二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:27:52

    家庭に入り込んでどんな立場なのか不明なだけでまだ妖怪じゃないだろ!

  • 10二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:31:07

    荼毘の妖怪になりたい
    理性に打ち勝った妖怪たちを尊敬する

  • 11二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:53:44

    少しして、雪のように白い、可愛らしい女の子が生まれます。
    冬美と名付けられた君とよく似たその子を、私はそっと抱きしめました。
    かすかに冷たい体温が、きみと彼女の大きな違いでした。
    頬をつけても、やわく撫でても、やはり私はきみが一番好きなのだと、そうじんわり心に思うのでした。
    ふと気づけばきみは四つん這いで歩くようになっていました。
    その頃からきみはお父さまのことが大好きで、なにをするにも着いて回っていましたね。
    私はそんなきみが大好きで、きみに着いていくものですから、三人で並んで歩くことも多々ありました。
    道を塞がないでと、お母さまに少し注意を受けたこともありましたね。
    きっとよく分からなかったろうに、怒られたことはわかったのでしょう、拗ねたきみの尖らせた唇はとても愛らしかったものです。
    ツンとしたその口先をちょんとつつくと、今度は頬をふくらませて、きみは自身の不満をあらわにしました。
    私はそれすら愛おしくて、怒るきみをぎゅっと抱きしめるのです。
    私よりも高いその体温を肌に感じて、柔らかなその髪に頬を埋めるのでした。

  • 12二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:56:17

    お前、荼毘くんの親愛なる私より書いたやつだろ

  • 13二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 18:59:32

    正直エンデヴァーと冷がどんな感じでこいつと付き合ってるのかが凄く気になる

  • 14二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:01:31

    誰なの?怖いよおッ!!

  • 15二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:04:25

    なんで生まれたときの冷さんと燈矢の様子を見てるのに離れたところで出産の連絡もらったエンデヴァーの仕草まで知ってるの?
    偏在してるの?

  • 16二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:07:02

    私もお母さまも、うっすらと思っていたのですが、やはりきみの第一声はお父さまを呼ぶ声でした。
    想像をそのまま沿っていくものですから、やはり私もお母さまも笑ってしまいます。
    つられてお母さまの抱いていた冬美ちゃんまで表情を緩めました。
    そんな私たちを不思議そうに見つめ、嬉しそうな気配を感じたのか、きみもゆるりと目尻を下げるのでした。
    きみは変わらず元気いっぱいであったので、お母さまによく似ている冬美ちゃんをとても気にしていましたね。
    隙あらば、と言わんばかりに彼女のそばに行ってはちょっかいをかけようとするのですから、これまた私もお母さまも大慌てできみたちのもとに飛んでいくのでした。
    いくら冬美ちゃんのお兄ちゃんといえども、きみはまだまだ幼い子どもです。
    お母さまがとられたように感じて不安だったのかもしれないし、冬美ちゃんがなんなのかがわからなくて気になっていたのかもしれません。
    それでも、私たちは仲良くできそうな二人の様子に、これからの幸福を信じて一層口の端に愛を滲ませるのでした。

  • 17二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:28:13

    お父さまに着いてまわるきみは、まるで小鴨のように一途でした。
    未だ幼いきみは、お父さまと行っている訓練をとても好んでいるように見えます。
    一生懸命に手足をばたつかせ、お父さまの動きを真似る姿は、けれども迫力や恐ろしさのない、遊戯のような可愛さが滲んでいました。
    きみはあらんかぎりの力いっぱいに全身を使うものですから、勢い余っていつかひっくり返るんじゃないかと、私はハラハラが止まりませんでした。
    きみは、お父さまから一言もらう度に、瞳に銀河を抱かせ、ひどく高揚して頬を赤らめていましたね。
    幼い肌がほんのりと赤く染まるさまは、夕空に漂う雲のようでした。
    周りの空気が華やぎ、めいいっぱいに目を開いて思い切り口角を引き上げる姿は、自分が愛されていることを信じきっていて、ひどく無垢で美しくありました。
    何故かきみが眩しく感じて、私は目を細めます。
    感嘆で滲んだ視界から、穏やかな雫が落ちてしまったことに驚きました。
    けれどもこの気持ちも、零れた涙も、きみへの愛で溢れていたので、私は安心してまぶたの縁を優しくなぞりました。

  • 18二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:37:14

    燈矢の顎の骨盗んだ怪異…!

  • 19二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:37:35

    個性が目覚めたきみは、お父さまとおそろいのそれに、飛び跳ねて全身で喜びを表現しました。
    お父さまは期待と違った個性だったので、やや残念そうでしたが、それでも自分の個性が受け継がれているのが喜ばしいのか、ゆるりと口角を持ち上げています。
    はしゃいだきみは、誕生日のケーキをかこんだときも、自分が火をつけるのだと張り切って指先をろうそくにくっつけていましたね。
    私にはあまり個性の善し悪しはわかりませんでしたが、きみがとても嬉しそうなのを見て、ひどくいい気分になりました。
    好きなひとが喜んでいると、自分も嬉しくなるものです。
    見上げた夜空が、美しく煌めいていた時に似た、高鳴る鼓動と染まる両頬を止めることができませんでした。
    いえ、もしかしたら、そもそも止める気もなかったのかもしれません。
    きっとお父さんのようなヒーローになるのだと、瞳を輝かせて宣言するきみを、私はずっと応援しようと、そう心に決めたのでした。

  • 20二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:42:10

    >>18

    あげませんよ

    荼毘くんの下顎部は私と共に幸福に過ごすのです

    幸せに暮らす者たちを引き裂くのはヴィランにも劣る外道極まりない汚泥のような存在ですからね

  • 21二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 19:44:15

    怖いよぉ…

  • 22二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 20:07:00

    これが噂の文豪か…

  • 23二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 22:54:13

    あるとき、お父さまがきみの変化に気づきました。
    首を傾げ、きみの赤にまじる白に、疑問を呈します。
    しばらく前からほんの少しずつ混ざっていく白に、私は言い知れぬ不安を感じていました。
    頭頂部あたりだったので、きみには自覚はありませんでした。
    ですので勿論、その理由はきみにはわかっていないようでした。
    ふわふわとした髪を自分で触り、直接その目で確かめようとくるくる回るきみは子犬のように加護欲を誘います。
    けれども、この時ばかりはなぜか、私はその愛らしさをうまく見つめることができず、静かに瞳を揺らしました。
    翌日も、翌々日も変わらず日々は続きます。
    きみはお父さまと訓練をし、白色は少しずつ比率を増していきます。
    炎の温度が上がって、お父さまに撫でられ、きみは嬉しそうに破顔します。
    更に温度を上げて、笑って、上げて、上げて。
    そしてある日、燃える音だけが聞こえる静かな部屋に、きみの声が響くのです。
    そこには、焼けた皮膚と、うっすら立ちのぼる焦げた煙がありました。

  • 24二次元好きの匿名さん24/11/29(金) 23:07:04

    連れられた病院で、お医者さまは静かに告げました。
    個性と体質が合っていないと。
    お父さまのご結婚の事情にも少々口を出し……けれど、口を噤みます。
    空気の凍った部屋の中、きみはよくわかっていないようで、不満そうな顔をしていました。
    どうして病院に連れてこられたのかも、なぜお父さまの表情が強ばっているのかもわからずに、きみは首を傾げます。
    火傷なんて気にしないのにと零し、こんなの痛くもないよと笑いました。
    それでもお父さまの顔は晴れません。
    冬美ちゃんはきみの火傷に眉を寄せ、たまに心配を口に出します。
    いつからか、お母さまが怯えの影をまとい始めました。
    きみはどうしてお父さまが訓練を止めるのかわからず、毎日毎日話しかけていましたね。
    お父さまは返事を濁し、目線を横に逸らしました。
    あくる日、母屋に新たな声が聞こえ始めました。
    やはり冬を纏った様相のその子どもは、夏雄と呼ばれます。
    私は、きみが心の芯の冷えていく予感にひぅと喉を強ばらせるさまを、うしろから静かに見つめていました。

  • 25二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 02:20:28

    この文豪は轟家のなんなの?
    勝手に住み着いてる妖怪なの?

  • 26二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 11:14:55

    ガチで轟家のどの立場なんだよ

  • 27二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 11:55:19

    穏当(?)なら家政婦さん、、、?
    なんか家族からは見えない何かっぽくて怖い
    力ある術師には見えるのかも、そして祓える、、、?

  • 28二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 12:02:54

    この文豪さらっと家族の輪に紛れ込んでてこわい
    きたねえ座敷童か何かかな?

  • 29二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 18:44:04

    江戸川乱歩の人間椅子とかの人間怖い系ホラーなのかなって思って人間椅子を青空文庫で読んできたけど、人間椅子は語り手の素性と目的が明確な分、こっちより遥かに怖くなかった

  • 30二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 22:10:24

    来る日も来る日もまとわりつくきみを、お父さまは仕事が忙しいからと一蹴します。
    お母さまは酷く疲れた顔をすることが多くなりました。
    何かを察したのか、冬美ちゃんも沈んだ顔を見せることがありました。
    きみは聡くて賢い子でしたので、その理由がわかったのでしょうね。
    言葉に焦りを乗せ、けれども顔には懸命に笑顔を浮かべてお父さまの手を引いていました。
    無碍にされても構わず、何度も、何度も。
    零れ落ちる涙も、軋む心も無視して進むきみは、痛々しくいたいけで、愛らしくも哀れでした。
    私はきみの濡れる目元に手を震わせ、きみから滲んだ痛みの欠片をそっと撫でるのでした。
    いつからか、お父さまがお母さまに怒鳴りつけはじめていました。
    冷えた日本家屋に、きみの焼ける音が静かに浮かんでいます。
    空虚で停滞した空間は、けれどもたしかにときを進めてしまったのでした。
    冷たい風の吹く、寒い冬の日です。
    柔らかな輪郭の、なにも知らない純真な赤と白の子どもが生まれました。
    しかして、お父さまは歓喜に、お母さまは諦観に、きみは絶望に包まれたのです。

  • 31二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 22:35:38

    他人の家に勝手に上がり込み勝手にくつろぎ勝手に帰り家の人は違和感を感じない……
    この妖怪ぬらりひょんの亜種じゃね?

  • 32二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 22:43:48

    それからのきみの荒れようは酷いものでした。
    ひとりで山に向かい、火傷を増やし続ける日々。
    学校ではほかの子供たちの声が聞こえてきます。
    ヒーローに、ヒーローが、ヒーローの……。
    純新無垢にヒーローに憧れて瞳を輝かせる彼彼女らは、きみには毒であったに違いありませんでした。
    ヒーローが飽き飽きするほどいましたから、どこにいたって話題に事欠きません。
    そのわりには、助けを求めるものに手を差し伸べる存在は、そう多くいませんでした。
    世界は随分ときみに厳しくありました。
    ある日、ついにきみは炎を片手に焦凍飛びかかってしまいます。
    悲鳴じみた要求を叫び、生後間もない弟を消そうとするその姿は、とても悲しく、けれども人間的な生の輝きを纏っていました。
    結局きみは失敗し、焦凍は隔離され、きみはお父さまと接する機会が減ることになりましたけれど。
    ひとりにしている罪悪感からか、お母さまも焦凍にかかりきりになってしまいましたね。
    冬美ちゃんも夏くんも、寂しかったでしょうに何も言わずにいました。
    私は変わらずきみと共にいたので、それだけでもう夢のような心地だったのですが、きみはなおもずっとお父さまのことばかりを考えていましたね。
    気づけば、きみが焦げる匂いを嗅ぐのにも慣れてしまったような気がします。

  • 33二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 22:50:22

    私は変わらずきみと共にいたので

    サラッと恐ろしいわ!

  • 34二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 04:14:21

    学校の様子までちゃんと知ってる…
    ついてきてるんだ…

  • 35二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 06:54:25

    Q.これは純愛ですか?

  • 36二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 09:34:29

    お父さんお母さん荼毘君冬美ちゃん夏くん
    焦凍
    何故なのか

  • 37二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 12:20:36

    >>35

    狂愛と呼ばれるものでは、、、(困惑)

  • 38二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 13:10:23

    >>36

    燈矢との心理的距離感?

    他の家族ともそこまで近くないけど

  • 39二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 18:29:43

    私は荼毘くんが大好きですので、弟妹方は荼毘くんの呼び方とおんなじように呼ばせていただいています。
    ただ、荼毘くんを作り出した両親のおふたりには言い表せないほどのご恩がありますので、最大限の愛と敬意を込めさせていただき、お父さまお母さまとお呼びしているだけですよ。

  • 40二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 18:55:37

    轟家の犬か猫説は病院まで来てるから否定されるんだよね…
    轟家に纏わり付く空気か半野生化した文鳥か何かかな?(すっとぼけ)

  • 41二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 03:43:27

    やっぱ妖怪だろこれ

  • 42二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 12:32:27

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 19:13:21

    今日もひとり、きみは山で個性を鍛えます。
    泣きながら、笑いながら、高ぶる感情を薪にして炎を焚き上げます。
    激情を熱に変え、燃え盛る火の中にいるのに、冬の化身のように白いきみは、晴天に降る雨を連想させる、不一致の美しさを放っていました。
    時折青く色を変える炎に、きみから降った雫は地面に落ちる前に空気に溶けて消えてしまいます。
    それはまるで、きみのこれからを示唆しているかのようで私は不安を覚えました。
    きみは正しい傷つき方を知らなかったのです。
    きっと、家族みんながそうでした。
    誰も正しさを知らなかったから、間違いに気づけないのです。
    間違いに気づけないから、そのまま進み続けてしまうのです。
    人は未知を恐れる生き物でありましたので、きみたちは自らの間違いを察しながらも、触れることに恐怖して目を逸らし続けてしまうのです。
    そして、誤った道を歩き続けると、いつかは踏み外して転がり落ちてしまうのです。

  • 44二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 19:26:40

    冬。
    空気から水分が消え、炎が弾ける季節に、鮮やかな蒼炎が、静かな山奥で火花を散らしました。
    耐え難い熱を帯びたそれと、きみはワルツを踊ります。
    リズムはバラバラでステップはめちゃくちゃ。
    音楽を奏でるのは、焼かれたきみの喉でした。
    劈く悲鳴を響かせて、きみはダンスを続けます。
    だって、きみは炎の消し方を知らないのだから。
    誰もそれをきみに教えてはくれなかったのだから。
    下がることを知らない熱は、ただただ温度を上げていきます。
    乾いた空気は更に炎を煽りました。
    焦げた木と溶ける人体の匂いがあたりに立ち上ります。
    きみからどんどん欠片が零れ落ちていきます。
    きみの体積がすっかり減ったころ、きみはそっと川辺に体を横たえるのです。
    くすんだ黒に色を変え、途切れ途切れに引き攣った空気を落とすきみは、哀れにも愛おしく思えました。

  • 45二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 07:11:50

    全然見てるだけなんだ……?
    荼毘の炎で死なないんだ……?

  • 46二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 18:47:33

    気づけば、見知らぬ男が焼けたきみのそばにいました。
    彼は丁寧にきみを抱き上げ、そっとどこかへ持ち去ります。
    爛れたきみの表皮が崩れぬよう、精密機器でも触るように優しく優しく立ち去ります。
    私は彼について行こうとし、けれど、少し悩んでうしろを振り返りました。
    私の視線の先にはとろけ落ちたきみがいました。
    煤けていても尚輝くような真っ白なきみがいました。
    私はそれをゆっくりとなぞり、共に行こうと誘います。
    けれど、ふと目を話した合間にきみを連れた彼は遠くに行こうとしていました。
    私はきみの意思を尊重したかったので、静かなきみに一緒に在ろうと急かします。
    けれどもきみは、私を一瞥もせずに月の見えない冬の夜のように沈黙しています。
    一緒にいたかったけれど、きみの返事がないのならば仕方がないと、私はひとつため息をこぼしました。
    共に在れない切なさに瞼が震える心地でした。
    最後にきみをそっと撫で、表面の炭を優しく払い、私はきみと彼のあとをついて行くのでした。

  • 47二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 19:06:15

    それからの日々はとてもゆっくりと過ぎていきました。
    きみはなにも物言わず、動かず、ただ真っ白なベッドに横たわるばかりです。
    お医者さまが治療を施してくださったおかげで一命を取り留めたものの、きみの様相はすっかりと変わり果ててしまいました。
    けれども私はそんなきみすら愛おしく感じ、今は無き下顎を想いながらきみの喉元をくすぐります。
    それになんの反応もないことを残念に思い、けれど無抵抗にされるがままのきみにも愛らしさを感じていました。
    ここではきみは、おねむりくん、と呼ばれています。
    摩訶不思議なひまわりや多くの少年少女を見ても、やはり私の心が最も踊るのは、きみを瞳に写した時でした。
    稀に、ひまわりでなくお医者さまが様子を見に来ることもありました。
    お医者さまはきみを見たあと、静かに首を振って、電話で誰かに話をします。
    その先から聞こえるのはあの時の彼の声で、彼らが語るのは、きみの容態があまり芳しくないという話です。
    私はそんな彼らの話を聞きながら、きみの深く沈んだ海のような瞳と再開する日を、心待ちにしていました。
    きみのあの、ふつふつと滾るような、恐ろしくも美しい執念の炎が、この程度でかき消せるわけがないと、そう信じていたからです。

  • 48二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 19:16:50

    ある日、ついに、きみの目を開きます。
    あの時から三年ほどの月日が経っていました。
    私は嬉しくなり、ほろほろと目から雫を零しながら、ぎゅっときみを抱きしめました。
    きみは状況を把握できていないのか、ぼうっとしたまま、自身の手足を見つめています。
    一等好きなきみの瞳を覗き込む私など、目にも入っていないようでした。
    しばらくしてきみは立ち上がり、ゆっくりと声の聞こえる方に歩き出します。
    あんなに寝ていたのに、しっかり歩けるなんて、やはり私が頑張っていたマッサージは無駄ではなかったのだと、胸に明かりが灯ったように暖かくなりました。
    歩いた先で、きみは子どもたちに話しかけられ、自分の喉から出た音に驚いて口を押さえます。
    私も、まさか寝てる間にきみの声が変わっているなんて、と驚きました。
    思えば、きみの下顎部はまるきり、まったくの別物になっていたので、当たり前だったのかもしれません。

  • 49二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 19:19:59

    >>36

    かあさん とうさん おれ なつくん ふゆみちゃん >>1って家族とナニカを描いたクレヨンの絵が押し入れから見つかっても驚かないよ

  • 50二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 07:16:12

    ここまで来たら最後まで見たい

  • 51二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 18:42:09

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 21:30:28

    子どもたちから離れたきみは、ひまわりの男に出会いました。
    ここからは出られないのだと、そう告げるひまわりにきみは懸命に言葉を飛ばします。
    なにか事情があったんだと、仕事で来られなかったに違いないと、必死に目を逸らして言葉を綴ります。
    端の掠れた言葉たちは、星に呟く無垢な願いのようであり、敬虔な使徒の祈りのようでありました。
    ふいに、同室においてあったパソコンから声が響きます。
    うっそりと脳を撫でるような、甘くおぞましいそれは、きみを連れてきた彼の声でした。
    彼は的確にきみの傷を嬲り、抉り、けれども最後には一等優しく手を差し伸べました。
    自身だけがきみの救いになるのだとでも言うかのようでした。
    染み入るような言葉たちは、しかしきみには一歩及ばず、反吐のように低い声を出したきみは放火して場をあとにします。
    あんなに苛烈で煌々と眩かった青は、やわらかな赤に成り下っていました。
    けれどもそこに宿る意志は変わらず、きっときみはまたあの青にたどり着くに違いないと、私はひとりきみのあとについて行くのでした。

  • 53二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 21:53:32

    あの孤児院のような場所から逃げたきみは、家を目指してただただ歩き続けます。
    看板を見て進み、少し行った先で道が違ったら戻り、また進み……。
    何度も何度も歩き、躓き、曲がって、上って、走って、下りました。
    やっとの思いで家に帰りついたきみは、三年越しの家族の姿を瞳に写します。
    きみのいた時と変わらない、訓練に励むお父さまと焦凍の姿でした。
    目指していた家に着いたことに喜んで顔を綻ばせる私をよそに、きみは暗く影をつくってそっと場所を移しました。
    進む先には、仏間があります。
    扉を開けたその先で、あの頃のきみが、四角い枠の中に佇んでいました。
    きみは暫しそれを見つめたあと、そっと近づいて両手をあわせます。
    自らの遺影に手を合わせ、静かに目を伏せるきみの姿は、ゾッとするほど神秘的で、息を吐くほど恐ろしいものでした。
    儚くも永かったそのときを、私は生涯忘れることはないのでしょう。
    ゆっくりと手を解き、きみは家から立ち去ります。
    痕跡も残さず、誰にも告げずに居なくなります。
    この日、ただ沈黙した空気だけを残して、轟燈矢は正しく生を失ったのでした。

  • 54二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 22:06:52

    あ、轟燈矢時代が終わった

  • 55二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 22:14:06

    はじめは大変でしたが、家も戸籍もない生活にも随分と慣れました。
    どんなに辛く苦しいときも、きみといたから、私はいつだってこの世で最も幸福であったのです。
    お父さまを地獄に引きずり落とすために虎視眈々と息を潜め、きみは狩り時に備えます。
    ある日、とあるニュースが目に留まりました。
    ヒーロー殺しという、世間を揺るがせた、一芯の通ったヴィランのものでした。
    きみは食い入るように彼の言葉を見つめていました。
    偽りのヒーロー。
    自身のことしか考えていない、醜い贋物。
    この世に正しく英雄など在りはしないのだと、そう語る文字たちに、きみは酷く共感を引き起こしているようでした。
    ちょうど、かのヒーロー殺しがいっときでも所属していたという、敵連合なる組織に繋がりのあるブローカーと接する機会があり、そこに紹介を受ける手筈となりました。
    引き攣るように口をつりあげてきみは笑います。
    正しく父を貶めて、正しく自分を認めさせて、正しく世界を睥睨して、次こそ正しく葬儀をするための、その第一歩が、ここに踏み出されたのでした。

  • 56二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 06:11:48

    答えてもらえないだろうと分かった上で聞くけれど、この語り部は一体何者なんだ?

    燈矢含む登場人物に存在を認識されてないらしいから目には見えない怪異の類だと思っていたけれど、その割には

    >今は無き下顎を想いながらきみの喉元をくすぐります。

    なんて物理的干渉が可能であることを匂わせたり

    >一等好きなきみの瞳を覗き込む私など、目にも入っていないようでした。

    と燈矢に認識されていないのが異常であるかのような描写もあるし

  • 57二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 09:37:20

    違和感なく周囲に溶け込んでるだけの普通の人間です。
    自宅に置いている家具が普段通りに家に置いてあったとして、それが目に入ったとしても特段気にしないでしょう。
    ふとした時に見つめることはあっても、それがあること自体に違和感が生じる場合はほとんどありません。
    そういう風に、私は私がその場に在ることに違和感を抱えられなくさせるだけの一般市民ですよ。

  • 58二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 12:50:10

    産院で生まれた燈矢を冷さんと見てたのに離れた場所で出産の連絡もらったエンデヴァーの様子も見てるのは?

  • 59二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:26:19

    >>57

    変態に持たせちゃイカン個性を持ってそう

  • 60二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 21:48:24

    離れたお父さまの様子が分かったのは愛の力ですね。
    愛しい荼毘くんが生まれた記念すべき日ですから、その時ばかりはお父さまのご様子もしっかりお伺いしたかったのです。
    ですのでこちらは、ごく一般的に見られる愛の力による視界の二分化に過ぎません。

  • 61二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 22:03:35

    愛の力すげー

  • 62二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 08:11:00

    ほしゅ

  • 63二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 18:15:18

    敵連合に入ったはいいものの、きみは随分と不服そうでありました。
    それはきみが集団での行動に慣れていなかったからでもあり、連合の彼らが思うような思想を持ちえていなかったからでもあります。
    まるで子どものような青年をリーダーとした彼らは、”先生”なる存在のアドバイスを聞きながら、行動を決めているようでした。
    その先生とやらが、あの焼け焦げた日にきみを連れ去った彼とそっくりな声を発していたことを、私は覚えています。
    おそらくきみも、どこか聞き覚えのある声だとは感じていたでしょうね。
    けれど、聞き覚えのある声など世の中には溢れているものなので、特に気にすることもなく過ごしているようでした。
    ただ、先生のことが気に入らないようで、きみは彼が話す度に不快そうに眉を寄せ、口から音のない息を漏らしました。
    その顔は、幼い頃にきみが見せていた、不満があるときと酷く似通っていました。
    先日までの、私と二人で暮らしていた頃は、無表情か、あるいは、お父さまが瓦解する、来たる未来に執念を滾らせるだけでした。
    ですので、懐かしいきみの表情を見せてくれた先生には、きみには申し訳ありませんが、ほんの少しの感謝の気持ちがありました。
    あの表情が見られただけでも、ここに来た価値があったのだと、言葉にできるほどでしたから。

  • 64二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 18:34:49

    気まぐれで自己中心的なきみは、連合でもあまり指示に従わずにいました。
    そんなきみが、初めて任務にあたることになりました。
    内容は、合宿中の雄英高校の学生たちを襲撃する、というものです。
    その中には、赤と白の子ども……成功作の、焦凍もいます。
    もしかしたら、だからこそ、きみはこの任務に参加することを決めたのかもしれません。
    私は、体育祭のニュースで、焦凍が出ていた時のきみの顔を覚えています。
    底の方から煮立つような、湧き上がって止まらぬ、ギラギラと光る仄暗い双眼も。
    いずれ来る、輝かしい焦凍を、汚泥に突き落とす日を夢見る口角も。
    爆発する感情と同期して噴き上がる、底冷えするような妖しさを孕んだ蒼炎も。
    溢れる熱の中で、俺を見ろと必死に叫ぶ、幼いきみの願いも。
    その全てが、私の心を射止め、震わせ、熱くさせました。
    もしかしたら、焦凍に会ったとき、またあの姿を見せてくれるのではないかと、準備を進めるきみたちを見て、私の胸は高鳴るのでした。

  • 65二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 20:35:25

    一気見したけどとりあえず1がヤバイということはわかった

  • 66二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 20:49:19

    >>65

    同感

  • 67二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 20:53:25

    思ったんだけどいつ燈矢に目をつけたの?
    生まれた瞬間から見てるから、生まれる前に目をつけてると思うんだが…

  • 68二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 21:59:47

    合宿先の森で、矛盾した言葉ばかりを述べる男性と共に、きみは着実に仕事を進めていきます。
    トゥワイスと名乗る男性は、二倍という個性を持っていました。
    個性を使うと対象者が増える、つまり、トゥワイスと共に行動する際に、きみは二人に増加しました。
    私はあまりに驚き、感銘を受けて声を漏らします。
    両手に花とは、まさにこの事を言うのでしょう。
    右を見ても左を見ても、どちらにもきみが存在するのです。
    私が震えている間に、増やされたきみは施設の方へと向かいました。
    その先できみは、生徒たちの先生と争い、片腕の骨を折られてしまいました。
    柔らかな肉の下で、なまめかしい白の骨が、鈍い音を立てます。
    けれども、そこにいるきみはきみであってきみではないので、実際のきみはなにひとつ痛みを抱えた様子はありません。
    なんという、なんという素晴らしい個性なのでしょうか!
    私は思わずトゥワイスを抱きしめ、涙ながらに、あらんかぎりの賞賛を送ります。
    それほどまでに、彼の個性は誇るべき、素晴らしいものなのでした。

  • 69二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 22:18:04

    さて、しばらくするときみたちは、爆発する少年含め、計二名を確保することが出来ました。
    今から帰還するというそのとき、彼らを取り戻さんと複数名の学生が迫ってきます。
    そのうちのひとりは、半々の髪を風に揺らせる少年───焦凍でした。
    焦凍は、まだ私たちがあの家にいた頃と比べると、ずいぶんと表情が豊かになっていたように思います。
    連れ去ろうとしたふたりの生徒がそれほどまでに大切な存在だったのか……さして興味が惹かれませんでしたが、焦凍にとって、なにか心の柔らかい場所にいたのでしょう。
    ともかく、焦凍が目に入った私は、大好きな映画の名シーンが今から流れ出すような、心躍るような心地でありました。
    最近はめっきり静かに過ごすきみの、激情溢れる姿に見とれられることに、涙腺がふるりと緩む気配を感じます。
    もっとも、結局きみは澱んだ瞳を細め、ゆるやかに笑みを象るだけでした。
    期待したものとは違いましたが、勿論、そんなきみも胸が痛むほどに私の心を揺らすのでした。

  • 70二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 08:26:21

    トゥワイスを解放しろ

  • 71二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 18:30:38

  • 72二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 20:18:43

    早いけどほ

  • 73二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 22:41:02

    ひとり取り逃がしたものの、目的であった生徒自体は、なんの問題もなく拠点に連れ帰ることができたようでした。
    ここから先は、たいして興味のある話ではありません。
    爆破の少年が仲間になろうがなるまいが、それがきみに影響を及ぼすことなど無きに等しく、また、きみ自身も少年に興味が欠けているようでしたから。
    ただ、雄英の生徒というビッグネームを攫ったせいか、数刻の間に場所が特定され、ヒーローたちから襲撃を受けてしまいました。
    きみの火力を危険だと捉えた見る目のあるヒーローが、颯爽ときみの意識を刈り取ります。
    力の抜け、ぐらりと揺れる身体は、雨の下で見るてるてる坊主のようないじらしさを感じます。
    それは無力で哀れでつめの甘い、とっておきに可愛いきみの一面なのです。
    きみから香る整髪剤の匂いに頭を擦り寄せながら、私はきみがどこかに体をぶつけぬようにと、優しく抱きとめるのでした。

  • 74二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 09:22:31

    詰めの甘い…地味にディスってる?

  • 75二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 09:29:16

    生誕から連合加入まで取り憑いてるガチの怪異

  • 76二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:20:17

    まさか、きみを連れ去った先生が、ナンバーワンヒーローと因縁のある敵だったとは、夢にも思いませんでした。
    巨悪と呼ばれる力があればこそ、焼けてなお輝く、きみのような宝石を見つけることができたのでしょう。
    ここに関して、私も彼の見る目の良さには思わず舌を巻いてしまいます。
    連合のスポンサーたる先生と、死柄木のサポートを行っていた黒霧を失い、私たちはまた停滞してしまいました。
    変化を望み、最期のために命を焦がすきみには、とても耐えがたかったでしょうね。
    きみから、ジリジリとあぶく立つ、じっとりとした炎が煙る音が聞こえるようでした。
    けれど、ヒーローたちに対抗するには、いまだ駒が足りません。
    それはきみにも分かっていたので、私たちは仲間集めに励みます。
    しかしながら、私たちと共に歩むならば、それ相応の信念があってほしいものです。
    なんとなく、かっこいいから、敵の方が楽だから……そんな程度のしれた者たちに、万が一きみの道が邪魔されるなど、許されることではありません。
    故にこそ、私は駒に成りうる可能性があっても、きみによって、路肩の石にも満たない者たちが薪に変わるのを、ただ横で熱を浴びながら待っているのでした。

  • 77二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:20:17

  • 78二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 22:24:10

    黒霧と先生の声が聞こえない空間も、随分と慣れてきました。
    私ときみが無為に薪を燃やして日々費やしている間に、どうやらトゥワイスが連れてきた、死穢八斎會なる集団と手を組む手筈になったようでした。
    私ときみは、彼らが目的にはなんら関係ない存在だったからと、放っていましたね。
    気づけば死穢八斎會は崩壊していました。
    きみがしたことと言えば、貴重な銃弾の回収のため、護送車襲撃の手伝いをするくらいでした。
    そこで私たちは、砂を操るヒーローと会うのです。
    かのヒーローはきみに、遺族の気持ちを考えたことはあるかと、そう告げました。
    追ってきたヒーローらは、特に問題なく処理することはできましたが、彼の一言はきみに少し考える時間を与えたようです。
    連合のみんなと別れたあと、私とふたりきりのきみから、赤の雫がこぼれます。
    くすんで濁った、粘度のあるそれは、涙と呼ぶにはあまりにも枯れていました。
    そして私はまた、もうきみは泣けないのだと思い知り、流星のように瞬いていたきみの澄んだ涙に思いを馳せるのです。

  • 79二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 08:46:23

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 19:21:46

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 19:48:39

    一応⭐️

  • 82二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 07:45:42

  • 83二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 12:23:24

    最後まで行くのかな文豪妖怪

  • 84二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 22:31:10

    神野の件でオールマイトが引退をし、そのため、今回のビルボードチャートではお父さまがナンバーワンに輝くこととなりました。
    宿願のナンバーワンは、さぞやいい眺めだったことでしょうね。
    前人未到の地に足を踏み入れた達成感のような……あるいは、やっと辿り着いた目的地が、ただの更地でしかなかった虚無感のような、そんな感情を抱いたのかもしれません。
    きみはというと、ただ静かに画面を見つめていました。
    ホークスからマイクを渡されたお父さまが、一言、ある一言を口にします。
    俺を見ていてくれ、と。
    きみの心音が、一度激しく弾けた気がしました。
    瞳孔が勢いよく開き、留め具により形を保っている口端が、咬筋が間見えるほど高く高く持ち上げられます。
    ちぎれるのではないかと思うほどのそれは、あるいは、きみはもう忘れてしまった泣き顔だったのかもしれませんでした。
    きみの中で、複雑にねじ曲がり絡み合った感情がぶつかり合うのが手に取るようにわかります。
    それほ恨みのようであり、同時に喜びのようでありました。
    沸き立つような怒りを内包して、深く沈む悲しみが染み入るようでした。
    憧憬を孕んだ愛を持って、自壊するほどの憎悪を膨らませていました。
    けれど、きっときみ自身にすら理解できない、押し寄せる感情の名前を分かってあげられないことが、私は呼気が止まるほどに悲しく思えてしまうのです。

  • 85二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 07:07:37

    いつもの荼毘に湧く妖怪の一種には違いないんだけどあまりの美文と燈矢への愛が本気過ぎるせいで最初の方なんか読みながらつい泣かされちまったよ…
    原作でこれほどまでにちゃんと燈矢の事見てくれる大人がいたらどうなってたかね…いやそれはそれでやっぱ危ねぇわ

  • 86二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 12:40:02

    まさか最終決戦まで同行するつもりかこの妖怪

  • 87二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 13:08:31

    この妖怪の顔が見てみたいな

  • 88二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 23:05:42

    あれ、なんだかこの1が羨ましく思えてきた…
    荼毘とずっと一緒にいれるなんて
    しかも荼毘からは認識されず本当に傍観できるなんて1番の私の望みじゃないか

  • 89二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 08:47:19

  • 90二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 18:09:41

    機械に入れられるところまで着いていくのかな

  • 91二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 18:45:50

    ある日、ドクターに声をかけられて、きみは試験を頼まれます。
    ドクターは脳無を作り上げた鬼才の持ち主であり、あの日のきみを生かした人でした。
    きみは、初めてドクターにあった頃から、それを察していたのだと思います。
    きみはドクターと話す機会をつくり、ドクターにいたく気に入られたようでした。
    頼まれた内容は、ハイエンドという上位脳無の性能テストです。
    誰か適当なヒーローを相手にする予定でしたが……福岡で、ホークスとお父さまが会食をすると、きみは小耳に挟んだようです。
    ちょうどいいからと、きみはハイエンドをぶつける先にヒーローエンデヴァーを選びました。
    せっかく仲間になったホークスまで巻き込むのは如何なものかと、私は苦言を呈そうかとも思いましたが、まあ、抱えるものの多いきみが、少しでも胸のすく思いをするならば良いかと、しばしの熟考の末、開いた口を閉じるのでした。

  • 92二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 19:06:28

    街の中、嚇々たる太陽の下で、エンデヴァーが自らの腕を掲げます。
    全身に傷を負い、ヒーロースーツを赤色で彩った姿は、まさに正義のヒーローそのものでした。
    きみはドクターの支持に従い、ハイエンドの回収に向かう予定……だったのですが、どうやら、お父さまを直接目の前にして抑えが効かなかったようで、ついつい飛びついてしまいました。
    私としましては、以前よりお世話になっているお父さまの傷ついた姿を見るのは、大変胸が痛む思いでありました。
    けれども、蒼炎を手に踊るようなきみを見ると、その痛みをたちまちに癒えて、暖かい気持ちが臓腑いっぱいに広がるようでした。
    折角の対面でしたが、悲しいことに、充分に堪能する暇もなく、ミルコに邪魔をされてしまいます。
    きみとて準備不充分なまま、お父さまに見てもらうのは本意ではないでしょう。
    あっさりと引くことを決め、小さな脳無の力で私たちは帰ることにしました。
    しかし、勿論、きみの中で現状に不満が生まれたことは確かです。
    私は、早くきみの願いが叶えば良いのにと、夜空の輝きによく似た、眩いきみの瞳に願いながら、傷んで硬くなった髪の毛に、そっと手を沿わせました。

  • 93二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 22:42:32

オススメ

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