- 1二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:43:15
「トレーナー、ネオユニヴァースは“断絶”を『発見』したよ」
「へっ……?」
彼女とともにお出かけをしていた最中、その言葉とともに上着をくいっと引っ張られる。
反射的に振り向いてみると、そこにはさらりと流れる金色の長髪。
担当ウマ娘のネオユニヴァースは、その青い双眸で指先で摘まんだ上着の裾をじっと見つめていた。
俺もそれに誘われるように、彼女と同じ場所へと視線を動かしてみる。
「あっ、ホントだ」
ユニヴァースが示している上着の裾には────小さくはあるがちょっとした破れ。
彼女は服を摘まんだまま、視線を俺の方へと向けて、心配そうな表情を浮かべる。
「“TRBL”? “接触”があったのかな?」
「どこかに引っかけたのかもしれないね、まあ目立つような場所でもないし、放置でも」
「……ネガティブ、小さな『不備』でも“重大インシデント”に繋がる可能性があるから」
そう言ってユニヴァースは裾から手を離して、持っている鞄の中身を探り始める。
しばらくすると、耳とピンと立ち上げて、鞄から何かを取り出した。
「“MOLT”をして────ネオユニヴァースが『直す』をしてあげるね」
どこか誇らしげに、言うなればドヤ顔を浮かべるユニヴァース。
その手の中には、小さなソーイングセットが握られていた。 - 2二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:43:26
「……えっと、それを貸してくれれば自分でやるけど」
「“NPB”、ユニヴァースに『おまかせ』だよ、“ハップル”していて」
「…………怪我とかしないようにね」
「トレーナーの“WORR”『質量』は上昇中? “NOST”、これは“平常運航”だから」
近くの公園のベンチに腰かけて、ユニヴァースは俺の上着を膝の上に広げた。
そして、ソーイングセットを開けて針と糸を取り出して、破れた個所をじっと見つめる。
しばらくすると、彼女は安心したように優しく微笑んだ。
「これなら『かんたん』だね、トレーナー、“JAM”」
「あっ、ああ」
ユニヴァースはそう告げて、破れた上着の裾を繕い始めた。
その手つきはとても慣れたもので、全くの危なげなく、淀みなく、作業は進んでいく。
俺はその様子をぽかんと見つめつつ、ついつい、思っていたことを口にしてしまう。
「……裁縫とか、出来たんだ?」
「アファーマティブ、トレーナーにとっては“想定外”だったかな?」
「…………正直に言うとそうだね、ごめん、キミに対して失礼だった」
勝手なイメージで、出来ないものと決めつけてしまっていた。
担当トレーナーとしてはあってはならないことであり、頭の中で罪悪感が積もっていく。
俺は頭を下げてユニヴァースに謝罪の言葉を口にすると、彼女は静かに首を振った。 - 3二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:43:41
「“NVEM”、スティルインラブも『びっくり』をしていたから」
「……でも、本当に上手だね、動きに迷いがないというか」
「購入した服への“EXIN”は時々するんだ、この服のポケットもネオユニヴァースがつけたよ」
「そうなの!?」
ユニヴァースは、片手で自らの白いワンピースをちょっとだけ広げる。
そのスカート部分についている大きめのパッチポケット。
この手の服にしては珍しいとは思っていたが、まさか自作だとは思わなかった。
思わずまじまじと見つめてしまっていると、彼女は苦笑いを浮かべた。
「服を“ASEM”するのは“EXDFF”だけど」
「いや、それでもすごいよ、違和感とも全然ないし、すごい似合ってると思う」
「……! この服はネオユニヴァースの『お気に入り』なんだ、だから」
少しだけ照れたように、それでいて嬉しそうに、ユニヴァースは口元を緩める。
「スフィーラ、トレーナーと“同期”が出来て、とっても『うれしい』をしているよ」 - 4二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:43:58
「……“TYFW”、これで、どうかな?」
「すごいきれいに直ってる……俺だったここまで出来なかったな」
「ふふっ、でも、あくまで『応急処置』だから」
「了解、直してくれてありがとう、何かをお礼をしないとね」
すっかり元通りになった裾を見て、俺はユニヴァースに感謝を伝える。
そして、上着を彼女から受け取ろうと手を差し出すのだが、一向にして服は戻ってこない。
それどころか、彼女は手を無視しして立ち上がり、上着をばっと大きく広げてみせた。
「……どうしたの?」
「“INVN”をして欲しいな、ネオユニヴァースが、着せてあげるから」
「いや、別にそこまでしてもらわなくても」
「……♪」
「…………まあ、それじゃあお願いします」
断ろうとしたが、どこかわくわくした様子で尻尾を大きく振るう彼女に何も言えなかった。
俺は仕方なくユニヴァースへと背中を向けて、軽く両手を広げる。
すると、彼女は片腕から袖を通し始めた。
流石にこれには慣れていないらしく、どこかたどたどしい手つきで進めて行く。
しばらく時間をかけて着せてもらうと、彼女は満足げな顔で頷いた。 - 5二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:44:13
「うん、とっても“DIGG”だよ」
「大袈裟な……まあ、でもありがとう、それじゃあ行こうか」
俺はユニヴァースの言葉に苦笑しながら、少し上着を整えて、歩みを進めようとする。
────すると、何かに引っ張られるような感覚。
引っ張られるというよりは、何かが引っかかっているような、というべきだろうか。
先ほどと同じように、反射的に振り向く。
「あっ」
「……ビックバン」
そこには────繋がっている俺の上着の裾とユニヴァースのスカートがあった。
一緒に縫い合わせてしまったのだろうか、幸い捲くり上がるようなことはないけれど。
彼女は少しだけ恥ずかしそうにスカートを押さえると、困ったように照れ笑いをする。
「えへへ……ちょっとだけ『失敗』、“CONT”をしちゃった」
「ごっ、ごめん、すぐに脱ぐから、切ってもらえると」
「────それじゃあ、“ホールドモード”だね」
その言葉とともに、背中へ柔らかな感触と温もりが押しつけられる。
次いで、腰にほっそりとした両腕が回されて、ぎゅっと締め付けて来た。
つまるところ、ユニヴァースに背中から抱き着かれた状態になったのである。 - 6二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:44:27
「ネッ、ネオ?」
「これで“ランデブー”すれば“NPB”だね?」
「いや、繋いだ糸を切ってもらえれば」
「ふふっ、『あたたかい』で『優しい』をしていて、とっても“COMF”」
そう言って、ネオはすりすりと顔を擦るつけて来る。
表情を見ることは出来ないが、察するに、多分満足気な顔をしているのだろう。
…………まあ、歩けないこともないし、直してもらったお礼もしないとな。
俺はお腹の辺りに回された彼女の両手に、自らの手をそっと重ねる。
小さくて、細くて、柔らかくて、暖かな少女の手。
一瞬だけピクンと震えると、彼女は体勢をそのままに少しを指を広げて、尻尾を足に絡ませてきた。
「……りょーかい」
なんとなく、ユニヴァースの要求を理解出来た。
俺は広げた彼女の指の間に、自分の指を絡ませるように、上から手を握ってあげる。
すると、彼女は嬉しそうにぴこぴこと耳を動かしながら、俺の背中へ優しくノックをした。
そして、深く息を吐きかけながら、小さく呟く。
「────“ミューテフ”」
鼓膜を揺らす、幸せそうな声色に、俺も思わず顔を綻ばせてしまうのだった。 - 7二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 05:44:46
お わ り
私服実装記念ということで一つ - 8二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 07:27:40
なんて時間に投げてるんや・・・
ユニちゃんが相変わらずかわいい - 9124/11/30(土) 07:35:22