- 1◆xaazwm17IRZa24/11/30(土) 16:51:54
皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(7スレ目)です。(本編は1が書きます)
キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、そこだけご了承いただけると幸いです。
詳細はこちらから
https://w.atwiki.jp/mahousyouzyobr/pages/1.html
- 2◆xaazwm17IRZa24/11/30(土) 16:54:15
- 3二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 16:57:00
立て乙です
スピードランサーの最終決戦でハスキーロアを守って死にそう感ハンパない
託されたアキラ/サンファングに守るって約束しちゃったからね仕方ないね - 4二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 16:57:37
立て乙
出目でオチまでつけてきた全方位ヘイトスピーチナチスがもう大好きだ - 5二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 16:59:29
このレスは削除されています
- 6◆xaazwm17IRZa24/11/30(土) 17:01:14
前スレでは次スレ立てる前に消費してしまい、申し訳ありません……
改めて、ダイスの結果を貼らせていただきます - 7◆xaazwm17IRZa24/11/30(土) 17:02:32
【参加者】
桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパーdice1d100=2 (2)
アルセーヌ(マスコット)dice1d100=39 (39)
ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイdice1d100=93 (93)
妃咲 希/ティターニアdice1d100=22 (22)
清原 稞美/ウェンディゴdice1d100=86 (86)
刈屋 伊織/ミストアイdice1d100=16 (16)
轟 猫耳/ネコサンダーdice1d100=31 (31)
マク=ハク/ノーブル・サヴェージdice1d100=87 (87)
天城 千郷dice1d100=56 (56)
汐沫 夏実/ジェイルフィッシュdice1d100=68 (68)
犬上 沙美/ハスキーロアdice1d100=92 (92)
逢魔 愛裏/ナイトメア⭐︎メリィdice1d100=18 (18)
桐生 ヨシネ/バーストハートdice1d100=89 (89)
桐崎 香澄/クレアボヤンスdice1d100=90 (90)
蜂矢 恋蜜/ハニーハントdice1d100=98 (98)
栗田 柿子/ジャスティスファイアdice1d100=85 (85
姚 莉鈴/ハイエンドdice1d100=10 (10)
王城 姫子/クィーンdice1d100=70 (70)
再世 優/テンガイdice1d100=6 (6)
槍ヶ崎 舞矢/スピードランサーdice1d100=33 (33)
- 8◆xaazwm17IRZa24/11/30(土) 17:03:16
【(元)運営陣】
あ/ああああdice1d100=96 (96)
五十鈴カオリ/メッセンジャー・ブルーdice1d100=3 (3)
風間由利/ヴェンデッタdice1d100=54 (54)
フロストハウンドdice1d100=6 (6)
ナイナイホテプ/内藤 撤華dice1d100=64 (64)
勇者/灰江渚dice1d100=23 (23
グレンデルdice1d100=92 (92)
トート・アリアdice1d100=3 (3)
早瀬 光/クイックローラーdice1d100=71 (71)
蟹魔万/デッドマンズ・ハンドdice1d100=45 (45)
【怪異】
赤松華dice1d100=10 (10)
黒贄山羊dice1d100=12 (12)
- 9二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:10:11
スレ立て乙です、多くの生死が残す物語を見守っていきたいですね!
…でもとりまクイックローラーが別空間に雲隠れしてなくて良かった。 - 10二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:27:39
旧世代の終わりというか昔から活動してた層やそれと関わりが深いキャラほど出目低くてそれ以外が大体高めな感じかな
- 11二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:36:12
割と奇跡に近い確率で2巡目で二人っきりだった仲だし、スピードランサーとハスキーロアは最終回で出来ればコンビで見ていたいねんな…
いや自分が擦り切れたベテランと純真な新米のコンビが性癖なのもあるんだけど
- 12二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:45:54
言うまでもなくスレ主様に強制したいわけでは御座いませんし単なる独り言として聞き逃して頂きたいのですが
90以上でも運営キャラは死ぬ可能性があるということは生き残る可能性もあるということ。つまり末路として死ぬより遥かに酷い目に遭いながら生き続けるかもしれないという
ちょうどそこにウェンディゴ(死を司る神獣)の名を冠する魔法少女と繋がりがありそうな生存値90以上の運営キャラが… - 13二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:47:10
立て乙です
これは…出目の高低差が激しい… - 14二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 17:57:35
たて乙です。
死ぬのか…ジャック、ハイエンド、テンガイ、ブルー、ハウンド、トート・アリア… - 15二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 18:03:07
・実質的に魔法部部長のアルセーヌを殺す(殺してない)
・大人勢と関わりの深そうなアグネアほか近衛騎士団を洗脳改造
・ブレイズドラゴンを作った組織に関与
・始まりの魔法少女を(恐らく)複製
ポッと出のくせにパラさんやアルセーヌより参加者勢との因縁作ったり地雷踏んでたりしてて笑っちゃうんだよね
これはラスボスに相応しい巨悪ですね間違いない(適当)
- 16二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 19:03:12
🎲。o 0 (最終回やし少しくらい極端な出目にしてもええやろ)
- 17二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 19:24:48
名ありのモブ同然だったデッドマンズハンドが最終回で生きるか死ぬか分からない数値なのが良い味出してる
死んでもいいし生き延びて大人組の業を背負ってもいい
ただ、同じオオカワウソに因縁のある者同士ああああちゃんとは2巡目からの漫才コンビ続行だったら嬉しいし、どっちも生き延びたら蟹料理屋でも建ててのんびり暮らしてほしい - 18二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 19:43:07
・全方位ヘイトスピーチで華々しくデビュー
・バトロワでレイドボス化したブレイズドラゴンとの関わりが描写される
・魔法性能とその凶悪性、戦闘力の高さを見せつける
・策謀を巡らし偶然も活かして運営どころか魔法国自体を手に入れて第三帝国を復活させる
・直後確定死の出目を出してしっかり高転びする
悪役というか敵側として凄く読者を楽しませるムーブをしてくれたなあ - 19二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 19:51:16
しかも黒幕(死んでる)のパラサイトドールの正体を知った上で旧知の仲という
テンガイとティターニア(とスピードランサー?)と魔法少女部の面々と更にハイエンドと因縁があるってお前マジ? アリア…悪役として働きすぎだろ… - 20二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 21:19:40
ティターニア一門だとバルバロイだけが生存かなこれは
- 21二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 22:32:56
- 22二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 06:39:01
1巡目と2巡目通して全力で戦ったことすらない数少ないキャラだからね
大規模な戦闘を経験してるキャラは設定的に運営に切り札まで見抜かれてるから対運営戦でメチャクチャ不利だけど中心街コンビはそこらへん有利に立ち回れる
- 23二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 10:03:27
ジャックとテンガイは相討ちかそれとも関係ないとこ死ぬのか
- 24二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 17:54:03
贖罪のために死にたがってるキャラが生き残るのも一興かもしれないね
- 25二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 20:54:42
ジャックとテンガイに因縁なんかあったっけ?
- 26二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 21:39:30
真美ちゃんがテンガイに殺されててその真美ちゃんがジャックのお気に入りだったから横取りされた!!!って感じのジャックからの逆恨み…のはず
- 27二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 01:19:01
このレスは削除されています
- 28二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 07:46:04
よく見たら怪異も危ないじゃん!
めぇも… - 29二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 14:56:51
デッドマンズ事変は番外編で語られるのかな
- 30二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 19:39:30
スピードランサーさん、設定読んだら召喚できる槍の大きさについては言及されてないんで「ロボアニメ並のクソデカパイルバンカーを頭上から無消費ノーモーションで何本も撃ち込めます」みたいなアッパー調整されそう
- 31二次元好きの匿名さん24/12/02(月) 22:17:47
- 32二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 07:46:11
投擲具としての槍はシンプルに殺傷力が高いですからねぇ 射程内(身に見える範囲)なら確殺の範疇
- 33二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 10:53:27
ヴェンデッタはダメージ転化型の魔法なのか
パワーファイターはグレンデルが居るし、差別化的にもどちらかというとハンタのフェイタンみたいな放出系と強化系の複合みたいになるのかな?
条件次第で作中最強の火力を引き出せるとかありそう - 34二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 12:52:10
- 35二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 15:11:13
このレスは削除されています
- 36二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 15:16:25
生存ダイス見返すと確定死亡が相当多いね。今までの傾向からすると30未満が危ない感じかな?
それだけでも参加者と敵対してる運営はほぼ全員死にそうだし死亡者相当多くなりそうだけど
運営側は確定生存でも死ぬ事もあれば低くても参加者と敵対していなければ生き延びる事もあるみたいだし、もっと想像がつかないな - 37二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 23:29:51
保守
- 38二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 07:51:48
周りの戦闘状況が熾烈になる程、求められる出目は高くなりそうな気がする(実力とかその他要因で)
- 39二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 16:44:28
保守
- 40二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 17:13:55
今までの描写的に参加者最強格とそれ未満には隔絶した力の差があるけど、最強格揃いの運営幹部と大量のサイボーグナチスをどう攻略するのかが楽しみ
参加者側の最強格はもうスピードランサーしか残ってないし、上位も無傷なのはバルバロイと殺る気マンマンのジャックだけだからね - 41二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 19:22:20
そういや、推定ラスボス候補のウェンディゴとジャックってなんで交流あったんだろう?殺人癖をジャックは明かしてるらしいのが余計興味ある。
- 42◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:07:15
お久しぶりです……!
最終回のストーリーがある程度固まったので、投下します……! - 43◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:08:05
「私は——スピードランサーさんと一緒に行きます」
人を殺したこと。これから殺しに乗る可能性もあること。
自らの危険性を開示した槍兵に対し、ハスキーロアはそれでも同行を求めた。
即決ではなかった。実年齢九歳の彼女にとってスピードランサーの言葉は重く、抱え込めるものではなかった。
逃げたい、と思う。
殺しなんか嫌だ。殺人者と一緒に行動したくない。自分の命を奪うかもしれない人なんか、世界からいなくなってほしい。
けれど同時に、逃げたら駄目だ、とも思う。
どうして自分が生きているのか。九歳にだって、分かる。ナサリーブラウンが守ってくれた。ブラックブレイドが守ってくれた。
平瀬アキラが守ってくれた。そして、スピードランサーが守ってくれた。
たくさんの人たちに守られて、ハスキーロアには今がある。
だから、逃げるわけにはいかない。
何から、なんて分からない。とにかく、逃げたくなかった。ここでスピードランサーを拒絶したくなかった。 - 44◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:08:40
もし宣言通りに、彼女がクリックベイトという人のためにゲームに乗るのなら——止めなければ。
非力な自分にそんなことが出来るとは思えないけれど。
けれど、スピードランサーは、ナサリーブラウンやブラックブレイドの命を奪った正体不明の狙撃手では無い。二人の魔法少女の命を奪ったことを彼女なりに引き摺っていて、わざわざ言わなくていいのにハスキーロアに伝える誠実さがある。そして、殺し合いという極限状況で、ハスキーロアのために一歩も動かず守り続ける責任感がある。
ただの殺人鬼ではない。モンスターでも、エネミーでもない。
スピードランサーは人間だ。悩んで、苦しんでいる、魔法少女だ。
「一緒に、行動させてください」
決意を込め、熟慮の末に出した返答を、スピードランサーは
「ふーん。じゃあ好きにしな」
と、どうでもよさそうな口調で言った。
もう少し大きなリアクションがあるかと思ったハスキーロアはやや肩透かしを感じ、気づく。 - 45◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:09:16
ハスキーロアにとってスピードランサーは恩人であり、同時に放っておけないと思えるが。
スピードランサーにとってハスキーロアは、ただ魔法少女サンファングに託された魔法少女Aに過ぎないのだ。
悔しい、と思う。けれど、当たり前の話だとも思った。
参加者の中の数少ない知人、スカイウィッチ。彼女の師匠にあたる人物が、ティターニア。スピードランサーの口ぶりからして、そのティターニアとは旧知であるらしい。
つまりは、魔法少女としては大ベテランの域に達しているのだろう。
少女としても、魔法少女としても、新人であるハスキーロアとは、隔絶した差がある。
ハスキーロアがスピードランサーを人殺しだと詰っても、この場を逃げ出しても、はたまたスピードランサーに襲いかかっても、きっとスピードランサーは何とも思わない。好きにしなと思い、適切に対処してしまうのだろう。
(でも、やっぱり放っておけない)
ふと、どうしてそんなことを思うのだろう、と考えた。 - 46◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:09:59
意識を失う前の自分は、ここまで他者を慮る人間だっただろうか。恩人とはいえ、初対面の人物を。
ただ、何故か彼女のことが心配だと思うのだ。旧知の間柄であるかのように。
「さーて、そんじゃあいい加減移動するか……って言いたいところだが、そろそろ放送だな。何処に行くかは、放送の後でいいだろ」
「分かりました」
一回目の放送で、次は六時間後と言っていた、らしい。その間ハスキーロアは意識を失っていたので、知らないが。
……知らないが、何となく、どんなものだったのか掴めている。スピードランサーの説明が丁寧だったわけではないのだが。これもまた、不思議な感覚だった。
『魔に愛されし子らよ、聞こえているか』
頭の中に、声が響く。最初の空間で言葉を交わした、王様の言葉。
(あれ、何だか違う気がする……)
直接なのと、魔法を介した遠隔の違いだろうか。ハスキーロアと言葉を交わした魔法王とは、別人のように感じた。 - 47◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:10:35
そして、第一回放送から第二回放送間の死者、午前六時から正午までに退場した者の名前が語られる。
『佐々利こぼね/クリックベイト』。
スピードランサーの探し人の名が、そこにはあった。
◇
放送が終わった。
後六時間の決着。ゲームの殆どを意識不明状態で過ごしたハスキーロアにとって、残り六時間というのはあまりにも短い時間だった。殺し合い抜きにしても、残り20人、ハスキーロアとスピードランサーを除いた18人を探し出すことがまず六時間では不可能だ。
実質死刑宣告に等しい。
けれど、ハスキーロアの頭には、死への怯えは無かった。蛮勇ではなく、六時間後の死よりももっと切実な問題が、間近に迫っていたからだ。
彼女のためならゲームに乗る可能性がある、と語っていたスピードランサーの大切な人が、死んだ。
そして、このゲームの優勝特典には、死者の蘇生も含まれている。 - 48◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:11:19
彼女は、ゲームに乗るのだろうか。ハスキーロアに槍を突き立てるのだろうか。
(いや、っていうか、これ……私のせいだ)
スピードランサーはハスキーロアの保護を頼まれ、病院から動けなかった。そうやっている間に、クリックベイトなる魔法少女は死んでいた。
もし、スピードランサーがその機動力を生かせていれば、クリックベイトと合流できた可能性はある。
ハスキーロアという、縁も所縁も無ければ、戦力としてまるで期待できない魔法少女を守ったせいで、大切な人を失った。
スピードランサーは、ハスキーロアを一瞥した。そして、屋上の金網に体を預ける。
深く、長い溜息をついた。
「——あいつ、死んじまったのか」
その声色には、ハスキーロアに対する怒りは含まれていなかった。
ただ、寂しさだけを滲ませていた。
「スピードランサーさん……」 - 49◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:12:43
「お前は悪くないよ」
と、機先を制するようにスピードランサーは言った。
「お前を守るってのはアタシが決めたことだし、依頼したのはサンファングだ。お前はアタシに何も頼んでない。
つーか九歳のガキ見捨ててのこのこクリックベイトの所へ行ってたら、絶対説教されてたろうしなぁ。あいつ、怒るときは正論でがん詰めしてきてマジ怖いんだよ」
だから、お前は何も気にしなくていい、とスピードランサーは言った。
大人、なのだろう。同時に、どこまでもハスキーロアを突き放した言葉だ。ハスキーロアはそう感じた。
「で、アタシがゲームに乗るかどうかだが——悪いな、まだ保留だ。魔法王の用意した疑似餌の可能性もある。普通に考えて死者が生き返るわけねぇしな。世の理を覆すのは、そんなに簡単じゃねぇだろ」
ハスキーロアは、否定しなかった。その通りだ、とも思ったし、そうとも言い切れない、とも思った。 - 50◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:13:40
「——言っておくけど、油断するなよ。本当に死者が蘇ると分かったら、アタシはゲームに乗る可能性がある。後ろからお前の心臓を一突きするかもしれない。なんせアタシは、卑怯者、だからなぁ」
「その時は——止めてみせます」
「……昔のティターニアみたいな奴だな」
渋面を作ったスピードランサーは、スマホを取り出し、電話を架け始めた。
「……どこに架けてるんですか?」
「ん、ティターニアに。つっても、何度架けても繋がらねぇんだよ」
◇
ハスキーロアが意識を失っている間、スピードランサーは病院から移動しなかった。しかし、何もしなかったわけではない。
ティターニア、クリックベイトに彼女は電話を架けていた。だが、どちらにもつながらない。何らかの魔法によるものだとスピードランサーは理解した。一方、参加者以外の人間とは普通に通話ができ、あにまん市のローカル新聞社『アニマンタイムズ』に所属する新聞記者『敷島麗華』(魔法少女であることは隠して何度か情報を提供した過去がある)と情報交換は済ませている。 - 51◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:14:20
スピードランサーが認識していた以上に参加者は無茶苦茶やっているらしく、深夜だけでも地下鉄テロやタワー発光(これはスピードランサーが当事者だが)の他にも、廃墟の大量死や多数の行方不明事件、チェーンソー集団の練り歩きなど、魔法国から監査が飛んでくる案件ばかりだ。
だが、第二回放送で残り六時間というリミットを設定されたとき、ふと、スピードランサーは『通話制限魔法(仮)』が解除されたような気がしたのだった。そもそも残り六時間で市内各地に分散している魔法少女を全滅させるなど、不可能に近い。
ならばあえて通話をさせ、知り合い同士で合流することにより、参加者を一か所に集め、ゲームを加速させる狙いがあるのではないか。スピードランサーはそう予測したのだ。
(つーことは、運営側からしても、殺し合いは成立して欲しいわけだ。時間切れ全員死亡は観ていてつまらない、ってこと以外の理由もありそうだな)
電話を架けながら、スピードランサーはそんなことを思う。
ティターニアと話すということは、自身の殺人を告白することだ。 - 52◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:15:10
隠すつもりも、誤魔化すつもりもない。
ただ、ティターニアは悲しむだろうな、と当たり前のことを思った。
教え子が殺されたことは勿論、自分の『仲間』が外道に堕ちたことを。
(十年前も酷かったもんな……今度はアタシがそっち側ってわけだ)
通話が——繋がる。
スピードランサーは微かに自らの喉が震えていることに気づいた。
(けっ、後悔するなら最初から襲うなっつーの)
「よぉ、ティターニア。元気にやってるか? お前に幾つか話があるんだが」
きっと、外部から見れば、スピードランサーは平静に見えただろう。
まったく気負うことなく、落ち込むこともなく、嘆くことも怒ることもせず、普段と同じようにティターニアに電話を架けた。そう見えるのだろう。彼女の精神的葛藤が、混乱と後悔と喪失で荒れ狂う心が、外部に漏れることはない。
『あ、舞衣ちゃん、お久~。おいちゃんだよ~』
「——あ?」
この時までは。 - 53◆xaazwm17IRZa24/12/04(水) 20:15:28
投下を終了します
- 54二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 21:46:25
乙です、うわぁ沸騰した油に大量の水みたいなタイミング…!?
- 55二次元好きの匿名さん24/12/04(水) 23:31:36
ふ〜む。ティターニアの携帯からデットマンズハンドが応答…色々不穏だ、あとタイミングェ…
- 56二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 07:47:22
情報の波がスピードランサーを襲っている!
- 57二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 07:52:35
>「つーか九歳のガキ見捨ててのこのこクリックベイトの所へ行ってたら、絶対説教されてたろうしなぁ。」
こぼね先輩は小さい子を救った代償に親父さん亡くした人なんで天国で複雑な顔してそうっすね
- 58二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 08:56:13
通話制限が解けた事に気づくとナイトメア⭐︎メリィとクレアボヤンスがどう動くか
- 59二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 14:13:23
連絡制限解除されてもだいたい知り合い同士の片方、あるいはグループの大半が既に死んでる妙味
- 60二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:16:28
6時間まるごと戦闘無しでたっぷり休んだスピードランサーさんにゲームに乗られるといよいよもって参加者側が詰んじゃうんだよな…
- 61二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 22:28:31
- 62◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 22:55:58
投下します
- 63◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:08:17
デッドマンズ・ハンド。通称、蟹。アタシの、三つ上の先輩。先輩だって思ったことはないが。
「——何でお前がティターニアのケータイ持ってんだ?」
アタシは、直球でそう聞いた。
ティターニアへの、色々ぐちゃぐちゃしたものが一旦引っ込む。消えたわけじゃねぇが。消えるわけがねぇが。
『これには深い事情があってね~。ちょーとのぞみちゃんは今電話に出られないから、おいちゃんが電話番してるんだ。
連絡があったらおいちゃんが伝言するけど』
「それは、ティターニアがそう頼んだのか?」
『うーん、やっぽ舞矢ちゃん、鋭くて怖いね~』
何が鋭いだよ、とアタシは心中で吐き捨てる。
魔法の国で反乱起こして、アタシやティターニアと小学校からの付き合いだったグッドコミュが死ぬ原因を作って、今では魔法国から指名手配されているような極悪人に、ティターニアがケータイを預けるはずがない。
『あ、ちなみにおいちゃんがのぞみちゃんに何かしたわけじゃないからね~』
「知ってるよ。つーか、蟹じゃ無理だろ。弱いし」
辛辣だね~と液晶の向こうからデッドマンズの声が聞こえる。
まぁ実力はどうあれ、デッドマンズ・ハンドがティターニアに直接危害を加えたわけではない、とアタシは知っている。
蟹は、そういうキャラじゃない。 - 64◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:20:29
『それで、のぞみちゃんに幾つか話したいことがあったんでしょ。いいの、話さなくて?』
「お前に話すことは何もねぇよ」
『アレヰ・スタアとパペッタンを殺した件でしょ? おいちゃん、代わりに伝えるよ?』
「——てめぇ」
どうしてそのことを知っているのか。
そんなものは簡単だ。
「運営側だな?」
『元ね? 今は参加者の魔法少女たちを救うために頑張る所存だよ~、おいちゃん、愛と勇気が大好きだからね~』
「テメェが好きなのは金とティターニアだけだろ? 適当抜かしてんじゃねーよ」
『それは同義だよ~』
どうする? とアタシは自問する。
さっさと通話を切るべきか。元々ティターニアに電話をしたのは、アタシの殺しの告白もあるが、ハスキーロアの保護を頼みたかったからだ。サンファングに頼まれたとはいえ、いつ心変わりしてゲームに乗るか分からない卑怯者のアタシの傍に置いておくより、ティターニアの傍に置いた方が安全だ。
ガキの相手も教師なら慣れてるだろうしな。……いや、本当に慣れてるかな? 未だにあいつが教師やれてるの不思議なんだが……。 - 65◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:31:13
だが、ティターニアは何らかの手段で通話が不可能。そしてデッドマンズ・ハンドが居るとなると、ハスキーロアを置いておくのは危険だ。
——連れ歩くしかねぇか。
まぁ、通話が使えるようになった、ティターニアは戦闘不能という情報が手に入っただけでも結果オーライだろう。
……これであの馬鹿、スマホ落としただけとかじゃねぇだろうな、マジで。
アタシは、通話を切ろうとした。
だが、その前に。
『あ、ちなみにクリックベイトを殺した相手、おいちゃん知ってるよ』
指が止まる。
息が詰まる。
今のアタシに、刺さる言葉。
『——テンガイ。緑髪の、色んな魔法を使う相手だよ。すっごく強いから、敵討ちするなら頑張ってね』
そこで、通話が切られた。向こうから、切られた。
- 66◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:41:35
ハスキーロアが、心配そうにアタシを見ている。
通話の声は、どこまで聞こえていたのだろうか。
テンガイ。噂には聞いていた。全知全能を名乗る魔法少女が居ると。それに、ティターニアから話を聞いたこともある。あにまん市の魔法少女が一人、殺されているのだとか。
ガキの頃と違い、大人になったティターニアから逃げおおせているのなら、かなりの実力者だ。生存力に長けたクリックベイトが殺されるとしたら——そんな奴なのかもしれない。
もっとも、デッドマンズの口から出まかせの可能性もある。
卑怯者のアタシが言うのもあれだが、悪人の言うことを信じるほうがおかしい。
「……とりあえず、接触してみるか」
アタシは、もう一度敷島麗華に電話をかけ、緑髪の少女の情報が無いか聞くことにした。もしゲームに乗り、暴れまわっているのなら、何らかの目撃情報があるかもしれない。
——学生街で暴れていたバカでかいドラゴンと巨大ロボの情報で全てが塗り潰されているかもしれないが。
もしかしてティターニアが戦闘不能になったのは、それ関連か。
- 67◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:48:42
「悪いな、ハスキーロア。移動の前にもう一件架けさせてくれ」
アタシは麗華に電話をかけようとして。
「っ……!?」
即座に、ハスキーロアに槍を放った。
卑怯な不意打ち、というわけじゃねえ。
ただ、ハスキーロアに向かって振り下ろされる西洋剣から逃がすには、手や足じゃ遅かったからだ。
ハスキーロアの奥襟を刺しながら槍は移動し、ハスキーロアも一緒に移動する。
振り下ろされた西洋剣は空を切る。
「ふむ、戦い(プレイ)のノイズを排除しようと思うたが、中々上手くは行かんな」
ハスキーロアに襲いかかった魔法少女を、アタシは知っていた。
元、近衛騎士団副団長。デッドマンズ事変で最も多くの魔法少女を『殺傷』した魔法少女。魔法少女『ヴェンデッタ』。
かつてアタシが刑務所にぶち込んだ女が、アタシの前に立っていた。 - 68◆xaazwm17IRZa24/12/05(木) 23:48:57
投下を終了します
- 69二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 23:56:08
自分のモノローグでずーっと自分を卑怯者扱いしてるの引きずりまくってるな…
- 70でも死別って美味しいよね24/12/06(金) 02:19:31
多分素のメンタルがあんま強くなくて、辛いことは内に抱え込んじゃうタイプの人なんだろうな
芯が強くて思ったことがすぐ口に出るクリックベイトとはここでも正反対で、だからこそお互い遠慮なくガス抜きができる関係だったんだと思う
書いてて悲しくなってきたな これだけ良い関係性しといて片方もう死んでるんだもん - 71二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 07:49:35
相性が良かっただけに本人もクリックベイトが生きている体で行動してきてたもんなぁ…
- 72二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 17:04:43
保守
- 73二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 17:18:00
弱りまくってるけど対運営に着くつもりもないテンガイを嘘ついてスピードランサーに排除させるつもりなのか
やっぱ糞ヤクザじゃねえか! - 74◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 21:03:52
投下します
- 75◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 21:29:40
風間由利。魔法少女名『ヴェンデッタ』。
魔法少女になったのは16歳と平均よりやや遅く、しかし二年後には精鋭中の精鋭、近衛騎士団に入団を果たした、天才である。
26歳の頃には近衛騎士団副団長に就任。
受けた痛みを強さに変える——逆境であればあるほど輝くその魔法は魔法少女としては王道であり、優れた魔力量、確かな技量、経験知による判断力なども合わせ、アグネアのライバル、二枚看板と目される実力者だった。
だが、彼女は弾けた。
デッドマンズ・ハンドが主導した魔法王への反乱『デッドマンズ事変』。魔法国から見ればデッドマンズ・ハンドなど小物。すぐに近衛騎士団が派遣され鎮圧されるはずだった事件は、副団長『ヴェンデッタ』がデッドマンズ側に着いたことで、魔法国を揺るがす大事件となった。
事態を重く見たアグネアは近衛騎士団だけでなく、世界各国の強豪魔法少女を招集、だが中華最強『ブレイズドラゴン』までもがデッドマンズ側に着いてしまい、事態はいよいよ魔法国始まって以来の内乱となったのだった。
各地域で最強を誇っていた魔法少女は次々とブレイズドラゴンの凶拳に倒れ、ブレイズドラゴンが相手にしない者はヴェンデッタが血祭にあげた。
最終的にブレイズドラゴンはティターニアと相討ち、ヴェンデッタはスピードランサーが倒し、デッドマンズ・ハンドが逃亡したことで事変は解決されることになる。
スピードランサー16歳。正に魔法少女としての全盛期——ではなかった。 - 76◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 21:51:11
ハスキーロアは、魔法少女の知り合いがそう多くない。
サンファング。スカイウィッチ。抜刀金。そしてここで知り合ったブラックブレイド、ナサリーブラウン。スピードランサー。
誰もが自認はどうあれ善人だ。
だから、ヴェンデッタが全身から放つ異様な雰囲気は、ハスキーロアを戦慄させた。
殺意、敵意。それよりももっと悍ましい——悪意。
西洋剣を装備している以外は、軽装である。紫のボディースーツ。そのあちこちに、棘が内側についた鉄環が嵌められている。一体何の意味があるのか、ハスキーロアには分からない。
「のう、スピードランサー」
ねっとり、と形容できそうな、ねちっこく甘い声。男ならばその色気にくらりと来るかもしれないが、九歳の少女ハスキーロアには警戒心を高めさせるだけだった。
ヴェンデッタはボディースーツの裾をまくり上げる。
(うっ……)
生々しい傷跡が、そこには広がっている。何か太いもので貫かれたような刺傷。医療知識のないハスキーロアでも、それはかなり前の古傷ということは分かる。
「この傷を覚えているか?」
「さぁね。いちいち雑魚をボコったことなんか覚えてねぇよ」
挑発。
だがヴェンデッタは怒ることもなく、むしろやや頬を赤らめ、快感に浸っている顔をしている。 - 77◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 22:03:13
「では、この傷はどうだ?」
ヴェンデッタは肩口を捲る。
鞭、あるいはもっと細いもので刻まれた傷。古傷ではなく、今もなお血が滲んでいる。
「……いや、その傷はマジで知らねぇ」
「さっき付けられた♡」
(何この人……?)
困惑するハスキーロアとは対照的に、スピードランサーの表情は険しくなる。
「分かるか。10年前のように、わらわに痛みを与える前に倒す、という戦法はもう使えんのじゃ。既にわらわは痛がっておるからの」
「……ハスキーロア。できるだけ遠くに離れてろ」
スピードランサーに指示され、ハスキーロアは後方に跳ぼうとした。
瞬間、動きがあった。
奇妙な動きだ。
ヴェンデッタの剣が掲げられている。そして、周囲を五本の朱槍が舞っている。
スピードランサーが同時に槍を五本放った。その全てをヴェンデッタが切り払った。
どちらの動きもあまりに速かったため、過程が見えなかった。 - 78二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 22:40:00
ベテラン同士の戦いって感じで好き
- 79◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 22:51:37
一瞬のやり取りで、ハスキーロアは二人が類まれなる実力者——魔法少女一年目のハスキーロアとは隔絶した強者であると実感する。
自分が居ては足手纏いだ。足を引っ張るのは、もう御免だ。
ハスキーロアは足に力を籠め、言われた通りに、少しでも遠くに逃げる。
犬系である彼女は、俊敏性に優れる。
だが、どこまで逃げれば戦闘圏内から脱することが出来るのか。
分からないまま、とにかく逃げる。
(スピードランサーさん、無茶はしないで……)
そう願いながら。 - 80二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 22:54:50
フェイタンやFateのスパルタクスのように痛みを魔力放出に変えるのか、それとも身体能力を強化するだけか、どちらもか
- 81◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 23:05:20
ヴェンデッタはハスキーロアを追おうとはしなかった。
その名が示す通り、今の彼女は復讐者。自分により痛みを与える存在を欲する。近衛騎士団の一般団員よりも弱いハスキーロアなど、眼中には無い。
スピードランサーの背後で魔法陣が展開し、槍が放たれる。
展開速度も、射出速度も、並の魔法少女では視認すら出来ない。
闇の騎士、ダークワンですら凌ぐことすら不可能な連射攻撃。
その全てを、ヴェンデッタは斬り落とす。
「ふふ、次はこちらの番だ」
ぶん、とヴェンデッタは大薙ぎに剣を振った。
瞬間、剣から魔力の塊が放出される。
ティターニアやドレッドノートのように、特殊な効果が含まれるものではない。
ただ、痛みによって上昇した攻撃力を、魔力に転化しただけ。
それだけで、病院の屋上に亀裂が走り、斬撃の方向に破壊が発生する。
「どこ狙ってんだ」
脚力のみで攻撃を躱したスピードランサーは槍を放つ。だが、大技の直後とは思えない反射神経で、ヴェンデッタは槍を弾く。 - 82◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 23:17:57
だん、とスピードランサーは屋上を蹴り、空中にその身を躍らせた。
ヴェンデッタも後を追う。
即座に数本の槍が放たれる。空中で切り払い、ヴェンデッタは魔力をブーストし加速。スピードランサーに肉薄する。
「さぁ、わらわの間合い……っ!」
心臓を狙って放たれた一突きを、ヴェンデッタは慌てて剣で防いだ。
射出される槍。その数倍は速く、鋭い一撃。
「アタシの間合いだよ」
手に持った槍を回転させながら、スピードランサーは壮絶に笑う。
槍を射出する魔法少女、スピードランサー。彼女が最も得意とするのは——近接戦である。
空中で落下しながら、二人の魔法少女は斬り結んだ。
否、それは一方的な戦いとなった。ヴェンデッタの剣は悉く払われ、弾かれ、流される。
そして、スピードランサーの槍はヴェンデッタの全身を何度も刺し貫いた。
駄目押しとばかりに、スピードランサーはヴェンデッタの顔面を蹴り抜き、地面へと叩きつける。
そして、自分は槍を召喚すると、それに捕まり、水平方向に移動。ビルの壁に槍を刺し、滑るように地上に降りた。
- 83◆xaazwm17IRZa24/12/06(金) 23:46:46
全身を槍で貫かれ、高層から落下した。
普通の魔法少女なら死亡している。だが、全てが高水準だからこその元近衛騎士団副団長。
「痛い、わぁ……」
クレーターが出来る程の衝撃を受けながらも、ヴェンデッタはむくりと起き上がった。
「とっても、痛い……けど、うふふ……快感……」
うげぇ、とスピードランサーは舌を出す。
心臓や脳への一撃だけは防がれた。結果的に痛みだけを与えることとなってしまい、ヴェンデッタを強化する結果となってしまう。
「スピードランサー、貴様にも少しは痛みを与えてやらんと……わらわだけが甘受するのは、なんだか申し訳ない……」
「いらねぇよ、一人でやってろ変態女」
射出された槍を、ヴェンデッタは素手で掴む。
そして、握力で穂先をへし折り、笑みを浮かべた。
「遠慮するでない」
- 84◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 00:00:00
◇
逃げろ、と言われた。だが、ハスキーロアは逃げていなかった。
二人の攻撃が届かない範囲。もしヴェンデッタがハスキーロアに狙いを変えても、捕まらない距離。
——スピードランサーに危機が迫ったとき、助けに入れる距離。
自分なりに考えた適当な距離に、ハスキーロアは身を置き、二人の戦いを見ている。
(凄い……)
と、思う。
見ているうちに、剣の魔法少女はダメージを受ける度に強くなる性質を持つと気づいた。
事実、スピードランサーの槍は、刺さらなくなっている。
剣で弾かれたり、避けられているわけではない。肉体が硬すぎて、槍が刺さらないのだ。
だが、真に恐るべきは攻撃力にある。ヴェンデッタが剣を振るう度に剣先の方向で破壊が起こるのだ。道路が切断され、街灯が切り落とされ、ビルが抉られる。
一撃一撃が、魔法少女を一瞬で消滅させる威力を持っている。
それを振るうヴェンデッタの動きは洗練されており、武術の心得が無いハスキーロアでも、彼女が凄腕の剣士であると理解させられる。
だから、思うのだ。
凄い、と。
理不尽な強さを見せるヴェンデッタ……ではなく。
未だ傷一つ負っていないスピードランサーに対して。 - 85◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 00:17:16
ヴェンデッタの顔に——もはや余裕は無かった。
「おのれっ……!」
剣を振るう。大地を砕き、空を割り、魔法少女の装甲・武具など一撃で粉砕する破壊の剣。防御不可能な必殺剣。
それが——槍の柄で弾かれる。
道理が捻じ曲げられている。弾くことなど出来るはずがないのだ。受け止めた段階で柄は折れ、軽装のスピードランサーに剣は当たり、骨も残さず消失する。
そうでなければおかしい。
そういう攻撃なのだ、これ。
槍が硬い、わけではない。勿論並の魔法少女では折ることも斬ることもできない強度だが、今のヴェンデッタならば握りつぶせる程度の硬さ。
なぜ折れない。なぜ斬れない。剣を耳かきでいなされるような、そんな理不尽が発生している。
そして、スピードランサーの一撃が来る。もはや刺さらない。無力化した、攻略した一撃。
心臓に当たる、頭頂部に当たる。衝撃が響く。効かない。だが、当たる度に怖気が走る。わざと受けているのだ。防ごうと思えばいくらでも防げるが、あえて防がない。怖がる必要なんか、無い。
仕切り直すべく、剣から魔力を放とうとする。今のヴェンデッタならば、この周囲を更地に出来る。マジカル・ストラッシュを上回る威力の一撃を放てる。
剣に魔力を籠める。
石突で顔面を叩かれる。痛みは無いが、視界を一時的に奪われ、魔力が霧散する。
スピードランサーを圧倒するスペックになったにも関わらず、戦いの主導権を握られている。
- 86◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 00:41:55
装束につけられた鉄環に魔力を通す。棘が肉に食い込み、ヴェンデッタに新鮮な痛みを与えてくれる。
魔力上昇。スペック上昇。
「勝負はここからだ、スピードランサー!」
攻撃はより苛烈に、威力はより絶大に、反射神経、動体視力、諸々スペック更に向上。
フラットな状態の自分自身ならば瞬殺できる程強くなった。近衛騎士団時代に習得した、剣戟を披露する。術理に則った必殺剣の連続攻撃。並の魔法少女なら初撃で、どれ程の強者でも数秒後には斬り刻まれる、絶対斬殺空間。
槍一本で受け流される。弾かれる。凌がれる。数秒、数十秒の末、ヴェンデッタはスピードランサーから距離を取る。
快感すら、感じられない。ヴェンデッタはマゾヒストだ。だが、彼女の欲しがるものとは究極の痛み。自らが厳選し選択した痛みを求めている。
戦闘前に雑魚と罵られることは、快感に繋げることが出来た。十年前の油断を責められるのは気持ちが良く、同時に実力者のプライドも満たされたからだ。
あの時油断したせいで、こんな格下の魔法少女に雑魚扱いされてしまうわらわ♡という趣があった。
今は違う。プレイが思い通りにならない。好みのシチュエーションではない。マゾヒストのMとは、マスターのMであるともいう。格下と思っていた魔法少女に——実力差を見せつけられるという行為は、ヴェンデッタのプライドを……強い魔法少女に特有の負けず嫌いな部分を、大いに刺激していた。
(屈辱じゃ……)
- 87◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 00:42:12
スピードランサーの顔に浮かぶもの。戦いの高揚、無傷であることへの安堵、強者と渡り合えた誇り。そのどれでもない。
つまらなさそうな、退屈そのものといった表情を、浮かべている。
「いったい、何がどうなっておる……」
ヴェンデッタの言葉に、スピードランサーは溜息をついた。
「……まぁ、大したもんだよ。いつ脱獄したのか知らねぇが、ずっと監獄に閉じ込められてた割には強さが10年前と殆ど変わってねぇ。天才って評価も、間違っちゃいねぇだろうぜ」
だが、とスピードランサーは言葉を紡ぐ。
「アタシは10年前の10倍強ぇ。リベンジしたけりゃお前も10年修行してから来い」
「貴様……」
ティターニアの全盛期は、12歳の頃とされている。
スピードランサーの全盛期は——未だに来ていない。 - 88◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 00:42:31
投下を終了します
- 89二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 06:58:47
乙
メンタルが乱高下しやすくて、それでいてブレイズドラゴンのように戦いを楽しめる性格でもない代わりに調子良い時は強さを高められるのが特徴なのかしら - 90二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 09:18:25
未完の大器じゃったか…!先生は器用な人なんだけど、ねーちゃんは一芸特化で凝り性な気がするなぁ
全盛期に届きにくい訳だ - 91二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 10:56:44
10年捕まってたから10年停滞してた。なるほどなー
- 92二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 13:49:03
槍の技術自体は技量特化型の参加者と同等かちょっと劣るくらいだけど魔法少女としての素の能力がバカ高いから接近戦に限っても圧倒できるみたいな?
- 93二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 18:16:25
今回の戦闘シーンめっちゃアクロバティックで好き
- 94◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 18:22:10
投下します
- 95◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 18:32:05
(落ち着け……落ち着くのじゃ……)
ヴェンデッタは呼吸を整える。
元近衛騎士団副団長の肩書は伊達ではない。
マゾに目覚める前は、アグネアと何度も模擬戦をした。『格上』との戦いには慣れている。
(挑発に乗ってはいかん……必ずしも、スピードランサーはわらわの格上とは言えん)
近接スキル、戦闘センスはあちらが上。それは認めよう。
だが、こちらの攻撃はあちらにとって致命傷。
あちらの攻撃はこちらにとってノーダメージ。
その事実は揺るがない。
有利なのはヴェンデッタ。不利なのはスピードランサー。
魔法性能で完敗しているスピードランサーが、戦闘センスで何とか凌いでる。
という風にも表現できるはずだ。 - 96◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 19:45:37
(それに、わらわには切り札がある)
まだヴェンデッタは限界ではない。
(……今、切るべきか)
元々、使うつもりはなかった。ヴェンデッタの知るスピードランサーなら、今の上昇率で圧倒出来た。
だが、それは間違いだった。
今のままでは、負けないまでも、勝てない。
(……ふふ、もう、我慢できないな……)
ヴェンデッタの魔法は『痛み』を『攻撃力』に変えるもの。
痛みが強ければ強いほど、攻撃力は上っていく。
- 97◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 21:07:43
——いつから、痛みを求めていたのだろうか。
元々は、痛みに屈しないための魔法だった。身体の痛み、心の痛み、それらを乗り越え、正義(まほうしょうじょ)を為すための魔法だった。
いつからか、目的と手段が逆転した。より強い痛みは、より強い攻撃を生み。ただの女子校生『風間由利』は、超人の中の超人、英雄『ヴェンデッタ』として賞賛されるようになった。
もっと強さを。もっと栄光を。もっと賞賛を。
もっと——痛みを。
痛みこそが、自分を押し上げてくれる。最高の自分になるためには、最高の痛みが必要なのだ。
そして今。それは——手元にある。
夢に、手が届いている。
トート・アリアが精製した特殊な錠剤。飲めば、魔法少女でも狂死する痛みが全身を襲う。本来は希釈して拷問に使うものだが、ヴェンデッタはそんな勿体ないことはしない。
(飲む隙は——ある)
魔力の放出に比べ、錠剤を取り出し口に含む動作は、ほんの一瞬だ。
- 98◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 21:12:50
錠剤を取り出した。
どれ程の攻撃を放てるのか。恐らく、アグネアに匹敵する、市の中央部を一撃で吹き飛ばす程の攻撃を出せるに違いない。
そうなれば、スピードランサーの技術も速度も無意味だ。
呆気ない幕引き。じっくりと痛みを与えたかったが、仕方ない。
ヴェンデッタは錠剤を口に含もうとした。
「駄目!」
背後から、少女の声が響く。
同時に、右肘に熱が走った。
無視して錠剤を口に入れようとして、気づく。
右肘から先が、無い。
足元に何かが落下した気配があった。
「何じゃと……!?」
慌てて振り返る。
- 99二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 21:21:56
このレスは削除されています
- 100◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 21:22:45
スピードランサーが逃がした、無名の魔法少女が立っている。
戦力外の、無力で凡庸な魔法少女のはずだ。
戻って来た。それは、まだいい。愚かというだけだ。攻撃してきたのも蛮勇であるだけの話。
だが、今のヴェンデッタはスピードランサーですら貫けない程強化されているのだ。
肉体を切断するなど、どんな剣豪や名剣でも、出来るはずが無い。
出来るとすれば、万物を切断できるような、そんなインチキじみた魔法くらいだ。
第一、何で斬ったというのだ。距離は離れている。犬耳の魔法少女は丸腰だ。
(まさか……爪か?)
確かに手が犬の形に変化している。
——せいぜい顔を引っ掻ければ御の字の爪で、右肘を切断した。
異常な事態が発生していた。
(くっ……考察はいい……今は錠剤を拾わねば……) - 101◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 21:36:11
なるほど、今の状態ではあの犬耳の魔法少女に斬られてしまうのだろう。
だが、錠剤を飲み、最高の状態になれば、もう通用しないはずだ。防御力も飛躍的に上昇するし、何より一撃で粉微塵にできる。
斬られた右肘。その掌に握られた錠剤を回収するために、ヴェンデッタは視線を足元に向けた。
強く踏み込む、スピードランサーの足が見えた。
(恐れるに足らん)
スピードランサーの槍では、もはやヴェンデッタに傷を与えることは出来ない。
無視して良い。
「——穿槍(せんそう)」
それは、デスゲームが開始して初めて、スピードランサーが『奥義』を発動した瞬間だった。
戦国の世から名を馳せた、槍ヶ崎家に伝わる殺人術の一つ。戦場で多くの益荒男を屠った技術は、対魔法少女においても一撃必殺の威力を備える。
ヴェンデッタの強固な肉体に、穂先が刺さり——心臓が穿たれる。 - 102◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:23:55
自身の身体が倒れていくのを、ヴェンデッタは感じていた。
痛みは——無かった。
残念だ、と思う。
最高の痛みを味わいたかった。出し惜しみをせずにさっさと飲むべきだったか。
(いや……どうだろうな……)
それでも、上手くいかなかった。そんな気はする。監獄の10年間で錆びついてしまったのか。あるいは、自らの快楽のために近衛騎士団を——親友のアグネア・ミストリルを裏切った時に、魔法少女として失格していたのだろう。
視線を、犬耳の魔法少女に向ける。
悲し気な顔で、こちらを見下ろしていた。
(わらわにも……あんな時代が……)
その思考を最後に、ヴェンデッタは永遠に痛みの無い世界へと旅立ったのだった。
【風間由利/ヴェンデッタ 死亡】 - 103◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:36:11
ふぅ、とスピードランサーは息を吐いた。
奥義の発動には、溜めが必要だ。
防御力は並程度のスピードランサーにとって、ヴェンデッタの攻撃は全てが必殺であり、まともに喰らえば即退場の危険な攻防だった。
故に、中々奥義を繰り出せず、挑発を駆使して隙を伺っていた。
結果的にハスキーロアのアシストもあり、想定より魔力を消費せずにヴェンデッタを倒すことが出来た。
「……助かったぜ、ハスキーロア」
何で逃げてねぇんだよ、と言いたい気持ちはあったが、結果として事態は良い方に進んだため、感謝を示す。
スピードランサーは教育者ではない。逃げろ、と指示し、その指示に従わないのであれば、それはハスキーロアの自由だ。まっとうな魔法少女に育てる気も、あるいはブレイズドラゴンのように自身に匹敵する強者を育てる気も、まるで無い。
「死んじゃったんですね……」
「ああ、アタシが殺した」
悪人だから、罪人だから、大量殺人犯だから。だから殺した、とは言わない。
敵対したから殺した。仮にヴェンデッタが善人であったとしても、襲われれば始末する。
相手が悪人であることは、殺人の免罪符にはならない。 - 104◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:40:27
「参加者の方……なんでしょうか」
「いや、ヴェンデッタって名前は名簿に無かった。おおかた、運営が派遣した刺客ってところだろうぜ。……そんなのを派遣しなきゃいけないほど、あいつら、余裕が無いらしい」
それより、とスピードランサーはハスキーロアを見据える。
「お前のさっきの魔法、ありゃ何だ? 斬撃を飛ばすだけ、じゃねぇだろ?」
スピードランサーの技量を持ってしても、ヴェンデッタにダメージを与えるのは至難の業だった。
しかしハスキーロアの魔法はどこまでも無造作だった。
(相手の防御力を無視して攻撃できるってところか……? しかも遠距離から一方的に攻撃を届かせることができる……はっ、魔法性能ならアレヰ・スタアといい勝負ができるな)
不意打ちをされれば自分とて即死するだろう。なるほど、ティターニアやブレイズドラゴンが参加する殺し合いへの、参加権は確かに有している。
「その、私にもよく分からないんです……。ただ、何となく出来るというか………」
不安そうな、不思議そうな顔で、ハスキーロアはスピードランサーの顔を見上げる。
「託された、というか……」
- 105◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:47:05
◇
「ふむ、やはり駄目だったか」
モニターを見ながら、トート・アリアはつまらなさそうに言った。
廃墟となった魔法王の城にはテントが張られており、その中で『大総統』トート・アリアは椅子に腰かけ、白ワインを口に含んでいる。
周囲にはヒトラーが愛好したワーグナーの名曲の数々が流され、武装親衛隊の心を昂らせていた。
「げっげっげ、負けると分かっていて派遣したのかよ」
新しいボスも中々外道だぜ、とグレンデルは笑う。そしてソーセージに齧りついた。先ほどアリアが焼いたものである。美味しい。
「スピードランサーの情報は、他の参加者より足りなかったからな。それに、ハスキーロアのことも気になっていた」
仲間が死んだにも関わらず、アリアやグレンデルに悲しみは見られない。当然だ。彼女らに良心は無く、そもそもマジカル・マギカを狙うライバル同士でもあるのだから。 - 106◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:57:57
「ヴェンデッタの敗因は二つある。あの女は——既に望みを叶えていた。脱獄したい。そして最高の痛みが欲しい。どちらも吾輩が与えた。
満たされた者は弱い。満たされぬからこそ、人は強くなるのだ。
第二の敗因、それはヴェンデッタが世界最高民族アーリア人では無かったからだ。
勝利を渇望した者は強い。アーリア人は強い。第一次世界大戦敗戦の屈辱から生まれた我々の強さは歴史が証明している!」
うおおおおおおおおおおおおおおおお! と周囲の親衛隊が吠える。
(いや、お前ら最終的に負けたじゃん)
と、思っても口に出さない社会性がグレンデルにはあった。
(しかし、飢えか。げっげっげ、その点俺っちは問題ねぇな。
何しろ俺っちは常に飢えている。弱者を弄ぶことも、戦争で利益を得ることも、どこまで行っても満足なんかしねぇからな)
もしマジカル・マギカが手に入るならば。不老不死となり、永遠の快楽を得るのもいいだろう。
(まぁ無理そうならとっとと逃げるがね)
- 107◆xaazwm17IRZa24/12/07(土) 22:58:26
投下を終了します
- 108二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 22:59:25
殺人に加担してしまったハスキーロアに対して即座に「アタシが殺した」と断言するスピードランサーに気遣いを感じる
- 109二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 23:00:09
まーたナチスが因縁作ってる…
- 110二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 00:35:28
でもナチスの軍服かっこいいんだよな
- 111二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 09:06:03
保守
- 112二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 09:37:17
あれは格好いいデザインで人を惹きつけようと考えて作られてるからね
- 113二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 12:38:18
スピードランサーさんの奥義は対人用の刺突と対デカブツ用の投擲で二種類ありそう
- 114二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:29:15
保守
- 115二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 00:32:20
しゅほ
- 116二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 07:48:29
情報だけでスピードランサーの強さを測らない観察眼があるアリア
それでもヴェンデッタより格上なのは確信していた - 117二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 16:09:22
魔法少女の魔法が本人の欲求や願望とリンクしてるケースが多いこと考えると確かに飢えって大切そう
そう考えると第三帝国の復活が叶ったヘイトスピーチウーマンは… - 118二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 19:33:02
燃え尽きそうだよね…その後の事あまり考えていないし
- 119二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 00:44:30
ナチスはユダヤ人への態度さえなかったら好きな人は今の比ではない程いただろうに
- 120二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 09:58:39
保守
- 121二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 10:47:59
スピードランサー、最速の魔法少女って言われてるけど戦闘機のフライフィアーよりも速いのか
今んとこそんな感じは全くしないが、まだ本気出してないだけか? - 122二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 14:52:14
ブレイズドラゴンの必殺技は自分の魔法ありきだけどスピードランサーは魔法とは関係なく純粋な技術だけで使える上にまだ伸びしろがあるのか
スピードランサーが全盛期に到達したらブレイズドラゴンがなりかけた最強モードで暴れ回るの期待してる - 123二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 17:37:22
ハスキーロアは覚醒したら見た目や雰囲気が飼い犬のハスキー犬から原種のオオカミにレベルアップしそう
- 124二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 23:14:25
飢えによる解釈と振れ幅の増加と望みを叶えていた時の安定感は相反するから望んで手に入るものでは無いんだなぁ
今あるもので生き残らねば… - 125二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 07:22:26
このレスは削除されています
- 126二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 12:09:50
このレスは削除されています
- 127二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 13:36:18
スレ主さんがどう設定してるのかいまいち分からんけど、そう聞くとスピードランサーがこのバトロワで技量最強に見える
身体強化系魔法に匹敵するくらい素のスペックが高いのかと思ったら防御力は並みたいだし、魔法もそんな重要じゃないみたいだし
- 128二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:34:55
魔法とか使わずに槍だけでしばいてたからね(奥義以外は効いてなかったけど)
ハイエンドとか抜刀金の方が技量が上らしいけど似たようなことできんのかね - 129◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:08:46
お久しぶりです……!
短いですが、投下します - 130◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:09:27
桐ヶ谷裂華、魔法少女名『ジャック・ザ・リッパー』は、空を飛んでいた。
彼女本人に、飛行能力は無い。飛べているのは、彼女が『インテリジェンスウェポン』というマジックアイテムに乗っているからだ。
乗っている、というよりは、おぶられている。
インテリジェンスウェポンは所有者によって形を変化させるアイテム。アリスが所有していた時はワイバーンの姿をとっていたが、所有者がジャックに移ってからは小柄な少女の姿をとっている。
自分よりも小柄な少女におんぶされて移動するというのは、傍から見ればかなりみっともない光景かもしれないが、ジャックは気にしていなかった。
変身しているため素性が割れないから、というのもあるが。
そもそも周囲にどう思われようと気にならない性格というのも大きい。
(空、か……)
ふと、クラスメイト兼同じティターニアの弟子である、田中空、魔法少女名『スカイウィッチ』のことを思い出した。
一言で表すと、好みじゃなかった。 - 131◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:10:05
純粋で、輝いていて、前向きな子が好きだ。身の振り方を悩んでいたミョルニルは好みではないし、ガキのくせに大人びているジェイルフィッシュも範囲外だ。
ティターニアも……まぁ悪くは無いが、七海真美と比べると霞んで見える。
田中空は、普通だった。普通の女子高生だった。好みかと思って一時期ストーキングしたこともあったが、コンビニ巡りをしているだけの無害で凡庸で、別に純粋でもなければ輝いてるわけでもなく、特段前向きでもない少女だった。
出会って一週間で、ジャックはスカイウィッチから興味を無くした。
殺し合いが始まり、放送で名を呼ばれても、何の感慨も無かった。
ただ、空を飛んでいるからか、ふと思い出しただけだ。
一度くらい、箒に乗せてもらえば良かったかな、と少し思っただけだ。
先ほど、第二回放送があった。
山田浅悧も死んだらしい。学年は一つ上で、ティターニアの一番弟子だった。
——やはり、興味は無かった。親しいわけでは無かったが、彼女が暴力行為全般へ忌避感を持っていることは感じ取っていた。
何故? と思う。他者を殴っても、自分は痛まない。感じないことをわざわざ感じようとするなんて理解が出来なかった。 - 132◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:10:48
殺し合いでは実力を殆ど発揮できなかっただろう、とジャックは推測する。試合形式なら自分やドレッドノートを圧倒できるだろうが、実戦は話が別だ。
それはスカイウィッチも同様で、結果を見れば殺し合いに不慣れな魔法少女は死に、殺人鬼である自分や、喧嘩慣れしているバルバロイ、百戦錬磨のティターニアが生き残っている。
(まぁ、ドレッドノートも死んでいるんだけれども)
クラスメイトで、殺し合った仲。正直、死んでくれて良かった。あの無敵性を突破するのはかなり面倒だったし、殺し合いに積極的な以上、万が一でも先にテンガイを殺されてしまう可能性があったからだ。
(そして、後六時間……)
後六時間以内に参加者を全滅させる。
後六時間以内に何らかの手段でゲームシステムを破壊する。
どちらが成功確率が上か。……当然、前者だ。
昭和の時代に、一晩で三十三人を殺した男が居た。一般人に出来るのなら、殺人鬼の魔法少女であるジャックに出来ないはずはない。しかも自分だけが殺し役ではなく、他にもゲームに乗っている、あるいはこれから乗る魔法少女が発生することを考えれば、実際に手にかけるのは精々四、五人程度だろう。 - 133◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:11:16
(あー、でも嫌だなぁ)
好みの相手は殺したい。逆に、好みの相手でなければ絶対に殺したくない。殺人が趣味だからこそ、妥協したくない。
自分の命がかかっている状況であっても、ジャックは自分を曲げない。魔法少女になる前から殺人鬼であった彼女は、常にリスクよりも快楽を取る。
「もうすぐ学生街に入るよ、ジャックお姉ちゃん!」
「うんうん、ありがとうマミちゃん」
明るく元気よく答えるインテリジェンスウェポン(マミちゃん)の頭を撫でる。
ジャックが学生街を目指したのは、ドラゴンと巨大ロボのニュースを確認したからだ。明らかに魔法少女の仕業。
残り六時間ということを考えると、生存した参加者たちは一か所に集まろうとするだろう。ゲームに乗っている者も、乗らない者も。何しろタイムオーバーになれば死ぬのだ。危険から逃げ回っていては六時間後に死んでしまう。 - 134◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:12:03
それならば集まって情報を交換し脱出プランを練ろうとするだろう。そして、どこに集まるのかと考えればもっとも目立った学生街のはずだ。
ジャックとしても、集まった参加者から情報を入手し、テンガイへ復讐したい。
自分から七海真美を奪った女。
「テンガイ……絶対に許さないわ」
「『テンガイ』を、探しているの?」
「ええそうよ、マミちゃん」
「私には『検索機能』があるよ、ジャックお姉ちゃん!」
「マジで?」
知らなかった。
「テンガイの場所、分かったりする?」
「できるよ!」
「優秀ねぇ」
インテリジェンスウェポンの髪が妖怪レーダーのように逆立ち、一方向を指差す。
「こっちだよ!」 - 135◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 21:12:18
投下を終了します
- 136二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 21:22:06
しれっとストーキングしてやがる…このガチレズロリコン殺人鬼
- 137◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:48:27
投下します
- 138◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:49:06
テンガイはビルの屋上に魔法陣を描いていた。
七海真美に勝利(というには失ったものが多すぎたが)した後にやったことと同じ、自身の再調整ないし再構成だ。
ワンフロムアウタ―の魔力を奪ったことで『全知全能』に返り咲いたが、バラバラにされた物体を無理やりガムテープで修復したような、酷く不安定な状態になっている。
デッドマンズ・ハンド&ああああコンビとの戦闘を避けたのも、万が一を考えてのことだった。
(けど、優勝を考えるならあいつらとの戦闘は避けられないな)
実はテンガイは善人であり、パラサイトドールを倒すためにあえてゲームに乗ったフリをしていた——わけではない。
トリックスタ―を殺したのも、七海真美を殺したのも、ワンフロムアウターを殺したのも——数年前にパペッタンと呼ばれた魔法少女を殺したのも、全てテンガイの意思であり、本心である。
(ティターニアはもう戦闘不能、リタイア状態だ。ゲームが長引けば復活の可能性はあったが、残り六時間じゃ無理だろ。……普通ならな) - 139◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:49:52
魔法は、何でもあり。瞬時に傷を治す魔法があれば、復活もありえる。そうなる前に、確実に息の根は止めておきたい。
ただ、そうすればデッドマンズ・ハンドとああああは立ち塞がるだろう。
他の魔法少女も『最強』の復活を望むはずである。
(いや、本当にそうか? 六時間でタイムオーバー。ティターニアが復活すると、もし優勝に切り替えたときにティターニアが立ち塞がることになる。対運営の魔法少女も、よっぽど覚悟が決まった奴以外はティターニアが復活すると困るのかもしれないな)
例えば■■■ならば、絶対にゲームに乗らないだろう。
名前も、魔法少女名も思い出せない彼女。顔すらぼんやりとしている。
だが、普通の魔法少女は彼女ほど高潔でもなければ善人でもない。他の人間を殺してでも生き残りたい。紀元前出身の古代人であるテンガイからすれば、それは極めて自然な感情だと納得できる。
(ただ、七海真美といい、ワンフロムアウタ―といい、善良で高潔な魔法少女はこのゲームに参加している。あの子たちのような魔法少女が他に参加してるなら、自分が優勝できずにタイムオーバーで死ぬリスクを度外視して、ティターニアを復活させようとするかもしれない) - 140◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:50:30
やはり、急いでティターニアを始末した方がいい。
参加者の今後の流れを考えれば、十中八九学生街に集まり出す。
ティターニア連合のようなものを結成されるとテンガイとしては非常にやり辛い。
(いや、まぁ僕様なら楽勝なんだけどさ)
いかんいかん、と頭を振る。気を抜くとすぐに稚気が消えてしまう。傲慢で悪辣で無邪気、力に溺れた子ども、それがテンガイのロールモデルであり、アンチエイジングの秘訣であった。
大言壮語を吐くのも、あの世に行ったことがあるとスピリチュアルなことを口走るのも、その一環である。
(もう一度梟を飛ばすか。一回目は上手くいかなかったからな)
ゲーム開始直後、テンガイはバーストハートの心臓を確保するために梟を全参加者に飛ばしていた。
だが、梟が到着したのはすぐ近くに居た抜刀金、そして沼地付近にいた七海真美だけであった。 - 141◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:51:32
何故他の参加者に届かなかったのか。
(食べられちゃったんだよなぁ)
パンデモニカが監視のために放った悪魔、『タイプ・ベルゼブブ』。
蝿の姿をした群体型の魔獣であり、あにまん市全域を監視していた。
そして当時の運営(パンデモニカ)は、序盤で参加者が集合する展開を嫌がり、ベルゼブブによって飛ぶ梟を襲い、殆どの固体を喰い尽くしてしまったのだ。
結果として、テンガイの元には誰も来ず(もし来ていれば七海真美戦で弱体化しているテンガイは袋叩きにされ退場していた可能性が高いが)、テンガイ・ラッシュは呆気なく幕を下ろしたのだった。
梟一体一体にかつて知り合った魔法少女たちの名前をつけていたテンガイにとって、梟壊滅はけっこうメンタルに来ていた。
ちなみに梟が魔法少女の成れ果てというのはテンガイのハッタリである。まどマギ観て思いついた。
(まぁ、『梟を生み出す魔法』で補充はできるんだけど。同じこと2回やるのもなぁ……ああ、なんか駄目だな)
思考が散漫している。理由は分かっている。 - 142◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:52:14
パラサイトドールは滅んだ。かつてスターリングラードで戦った時とは違う。本体ごと完全に滅ぼしたのだ。今後復活することは無いだろう。
そして、更にもう一匹、殆ど活動をしていなかった個体も滅んでいた。
残るは一匹。三千年近くに渡った戦いは、いよいよ終わろうとしている。
特に、ずっと暗躍していたパラサイトドールを滅ぼせたのは大きい。
達成感は、無い。ただずっと抱えていた大目標の一つが消えた。どうしたってモチベーションに響く。
(しっかりしろよ僕様。まだ優勝が決まったわけじゃない。『背を伸ばす』という大願を成就させるために、もう少し気張らないと)
頬を叩く。
その時、テンガイの身体に震えが来た。
『敵意を察知する魔法(παρουσία)』に反応があったのだ。
逃げる——まさか。
「ニュー・僕様の調整相手にちょうどいいじゃないか……うん?」
こちらに向かって飛んでくる人影。 - 143◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:53:05
飛行できるタイプの魔法少女か、とテンガイは気を引き締める。
科学がそうであるように、魔法の世界でも『飛行』は高等技術。当然テンガイも飛べるが、魔力をかなり消費するので無暗に使ったりはしない。
その人影には、見覚えがあった。つい六時間ほど前に殺した相手——七海真美にそっくりなのだ。
そして、彼女が背負っているもう一人の魔法少女。
(確か、観客席に居た奴だったな)
冷静に観察すると、七海真美そっくりな少女は、魔法少女ではなくマジックアイテムだと判別できた。伊達に魔法少女歴が三千年近いわけではない。
「——見つけた」
背負われている少女から、怨嗟の声が漏れた。身に覚えはありすぎる。テンガイは挑発的に笑いかけた。
瞬間、銀の雨が降り注いだ。
「げっ、『矢避けの魔法(βέλοςαποφυγή)』!」
デフォルトで張っていた『空間を操る魔法(διάστημα)』の10m空間では足りないと判断し、矢ないしそれに準じるものを無効化する魔法を展開する。 - 144◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:54:24
テンガイを避けるように、無数のナイフがビルの屋上へ突き刺さった。
「——名乗れよ三下。僕様の前だぜ」
「ジャック・ザ・リッパー」
ロンドンのチンピラか、とテンガイは嘲笑する。
それを、ジャックは冷たく見下ろし、吐き捨てた。
「真美ちゃん殺したこと抜きにしても——あなた、論外だわ。ここまで醜い生物って存在したのね」
「おい、言葉を慎めよ」
「絶対に殺したくないけれど——絶対に殺してやる」
「頭バグってんの?」
ジャックはコートから次なる凶器を取り出す。
テンガイもまた、新たな魔法を発動させる。
殺人鬼VS全知全能。悪党同士の対決が始まろうとしていた。 - 145◆xaazwm17IRZa24/12/11(水) 22:54:37
投下を終了します
- 146二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:26:40
このレスは削除されています
- 147二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:29:50
勝った方が敵になるだけじゃないですかやだー!
- 148二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:42:23
- 149二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:45:27
多分ワンフロムアウターから奪った分の魔力でこの戦闘は回してる…とか?
- 150二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:55:53
- 151二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:56:50
- 152二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 01:00:44
魔力量に個人差があるのか? と思ったけど強力な魔法ほど魔力をたくさん使って魔力も制限されますってスレのルールをスレ主さんが直々に仰ってたしな
割と謎や - 153二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 01:04:31
あんまり魔力消費せずに済んだみたいなニュアンスじゃなかったっけ?
- 154二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 01:06:21
そこらへんこれからスレ主さんの説明あるんかな?
第一話だとアレイスターが一発魔法使っただけで苦しんでたのにティターニアは消費クッソ重そうなマジカルストラッシュを使い放題だったし
その割には魔力消費の話をちょいちょい挟んでくるし、戦闘回数が多いキャラほどキツい戦いにはなると思うんやけどなあ - 155二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 02:06:03
ぶっちゃけ魔力消費なんかフレーバーだろうしスレ主さんの好きに書いてくれたらいいよ
気になる人は各魔法のMP消費とか戦闘を数字で厳密に管理してるスレの方が合ってると思うぞ - 156◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 03:07:35
Qテンガイはどうして戦えるの?
Aワンフロムアウターから魔力を奪ったからです。魔力量だけならゲーム開始時と同程度まで回復してます。ただ七海真美に魔法を切断された影響で色々不具合が起きてます。
Q学生街編のキャラはもう戦えないの?
Aティターニアは何らかの手段が無いと無理。天城千郷は時間が経ってある程度回復してるかも。テンガイ、デッドマンズ・ハンド、ああああは全然元気。(ティターニアやワンフロムアウターと違って死ぬほど魔法を使ってないので) - 157◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 03:18:29
Q6時間休憩できたスピードランサーはどうしてヴェンデッタ戦だけで魔力消費を気にしてるの?
A『想定より魔力を消費せずにヴェンデッタを倒すことが出来た。』
なので魔力を消費してしまったことを気にしている文章ではなく、魔力を想定より消費しなかったことを安堵している文章です。分かり辛くて申し訳ありません。 - 158◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 03:46:52
Q魔力量に個人差はあるの?
Aあります。
Q「強力な魔法ほど魔力をたくさん使って魔力も制限されます」ってルールのはずでは?
A一応ルール内で書いているつもりです。
ただこのルールは以下の理由で設けたものです。
・どれだけ強い魔法少女が投下されてもダイス10以下で死亡させるための理由作り
・いわゆる必勝法を取らせないための理由作り
(例:スカイウィッチが永遠に成層圏待機、ブレイズドラゴンが気配殺して絶招連打)
- 159◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 04:15:12
Qアレヰ・スタアはどうして一発魔法使っただけで苦しんでたの?
A見ただけで事象を再現できるというぶっ壊れ性能なので、その分魔力消費も多め。
後は単純に第一話の段階では本作の魔法少女の戦闘規模を掴めていなかったのと、最初なので「普段より魔力消費が激しい」という描写が多め。
段々その辺の描写は省略していきました。(44回同じこと書くのもくどいですし)
Qティターニアはマジカルストラッシュ使い放題なのはどうして?
Aマジカルストラッシュは削った魔力分だけ自分の魔力を回復する仕様なので理論上は無限に撃てます。(弾かれたり避けられると不味いが)。ただ撃つ度に当然反動は来ます。作中でもダブルマジカルストラッシュ使用後は立ち上がれなくなったりしています。現在ティターニアが瀕死なのも火傷や外傷というよりマジカルストラッシュ撃ちすぎた反動が大きいです。
アレヰ・スタアが一発撃って死んでしまったのは、撃つ前から致命傷を負っていたからです。
Q戦闘回数が多いキャラほどキツイ戦いになるの?
A基本的には。ただその分経験を積んで強くなったりマジックアイテムを奪えたりと強化されることもあるので一概には言い切れなかったり。 - 160◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 04:16:37
他にも分からないことがあれば答えられる範囲で答えます~
- 161二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 07:09:08
やっぱティターニア先生とんでもないチートなんやな
しかしティターニア先生と明確に同格な扱いでテンガイとブレイズドラゴンはともかく現状は槍出して戦うだけのスピードランサーは一体どの辺が互角なんや……? そりゃまぁ凄いんだろうけども - 162二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 07:46:48
戦闘で理論値を叩き出し続ける魔法少女が弱い訳がない…
- 163二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 10:07:44
じゃあ今までの描写的に最強格とそれ未満はタイマンだと鎧袖一触されるくらいには差があるしジャックに勝ち目がないのか
と思ったら前スレで「同格は軒並み疲労困憊なのでスピードランサーが現参加者で最強です」って明記されてんな
だとするとマジックアイテムがある分ジャックの方が強いまであるか - 164◆xaazwm17IRZa24/12/12(木) 15:36:27
Qスピードランサーはどの辺がティターニアと互角なの?
Aこの二人が戦うと概ねスピードランサーが勝ちます。
近接戦闘→技量差&剣に対する槍の優位性
マジカルストラッシュ→高速三次元機動で回避可能
ティターニアの勝ち筋は閉所で不意打ちストラッシュ決めるくらいしかなく、「最強とは何だったのか」状態になります。
ただ、ティターニアが問題なく勝てる「ヒートハウンド」や「冨島千秋」にスピードランサーは勝ち筋が無いので、諸々の相性含めて二人は互角、という設定です。 - 165二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 20:50:50
このレスは削除されています
- 166二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 01:02:04
このレスは削除されています
- 167二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 07:29:39
先生は不意打ちストラッシュを当てる為の立ち回りとか再現出来そうなのが強みかなぁ
けどスピードランサー側もそうさせない立ち回りとか出来そうでここら辺の駆け引きは互角の者同士だから出来る事なんだよね - 168二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 15:19:24
対人特化ではないけど相手をわりと選ぶタイプがスピードランサー
だいたいの相手をぶっ飛ばせるのがティターニア - 169二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 15:56:16
なんかスピードランサーって同じく技量もあって相性無視技も持ってるブレイズドラゴンの下位互換みたいな感じじゃね
それともブレイズドラゴンほかハイエンドとか抜刀金みたいな技量型は魔法を使わずに薬抜きフルパワーヴェンデッタの攻撃を凌ぐのは無理なんじゃろか - 170二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 18:59:23
あにまん市最速の肩書きが本当なら他の参加者の下位互換にはならんよ
- 171二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 00:14:35
相性の不利有利を盤面コントロールでやり過ごすのもバトロワの醍醐味
- 172二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 07:55:31
保守
- 173二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 08:41:44
最強格なのに魔法は燃費が良いだけで弱いし物理攻撃が通じない相手には絶対に勝てないけど、物理攻撃で殺せる相手には同格だろうと絶対に勝てるってバランス設定がスピードランサーなんですかね?
- 174二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 10:10:59
ティターニアとスピードランサーの相性って他作品であげちゃうけどジークとリヴァイみたいな物を感じる。
高威力のバカでかい範囲攻撃に対しては三次元的高機動からの無駄ない攻撃でワンチャンスあるのとか。
あとどちらも経験豊富で実力も申し分ないのとか。 - 175二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 10:14:02
一撃に割り振ったティターニアの魔法がいくらでも使えるスピードランサーの魔法に刺さりにくい感じ
前者はマジカルストラッシュ撃つのに意識を集中させるけど、後者は攻撃しながら回避出来る上に高速で接近して技の出だしを潰せる - 176二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 10:38:32
三次元高速機動とやらに頼らずともベタ足の戦いでもティターニア以上の火力と身体強化魔法を併せ持つヴェンデッタを近接オンリーで捌ける究極の物理特化なピーキータイプか
これ本当に魔法少女か…?
戦国時代とか三国志の無双武将じゃないか…? 本多忠勝とか呂布奉先とかそういう… - 177二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 17:39:09
ぶつりまほうの使い手なんだ
- 178二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:11:44
そういえばスピードランサーが同じ実力で幼馴染のティターニアと比べて全く名前が知られてないのってなんか理由があるのか
他の同格キャラはなんやかんや出番無くても名前見るけど、知り合い以外でスピードランサーの名前を口にしてるとこ見たことないな - 179二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 00:50:44
戦国少女とかではないですよね
- 180二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 08:04:40
保守
- 181二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 08:16:37
シンプルに知り合いが少ないから説
- 182二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 09:40:39
ティターニアみたいな目立った事をしなかったからじゃなかろうか
ブレイズドラゴンは槍や大剣みたいな優位性が無いけど射程距離に入れば誰が相手でもワンチャンあるし
一番厄介なのは始まりの魔法少女の戦闘でみせた学習能力かなぁ
- 183二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 17:27:25
可愛ければいいんだ!
- 184二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 22:46:03
加虐性がヤバい子もいるけどね!
- 185二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 02:05:59
このレスは削除されています
- 186二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 07:47:54
過去のティターニアと戦ったとしてもスピードランサーが有利って感じかかなぁ
- 187二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 14:37:23
- 188二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 21:36:55
そういや結局パラサイトドールに誰と誰が洗脳されてたんや?
それとも使い手がくたばったけどまだなんかあるのか? - 189二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 00:25:21
それも安価かな?
- 190二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 07:44:27
不遇キャラの設定が盛られていってここぞというタイミングで暴れる展開大好き
- 191二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:39:29
このレスは削除されています
- 192二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 19:19:23
- 193◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 20:54:38
しばらく投下できず、申し訳ありません……!
続きを投下します - 194◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 20:55:26
ジャックとテンガイ。当然地力はテンガイが上である。伊達に四強と目されていない。
だが、情報のアドバンテージはジャックにあった。ジャックは七海真美戦でテンガイの戦闘スタイルを見ることは出来たが、テンガイにとってジャックは未知の相手だ。
魔法少女の戦闘スタイルは、魔法少女名とコスチュームで推察できる。
ジャック・ザ・リッパーという名前と、コートにスカートという姿。何より顔半分を覆う漆黒。
(名前的にナイフ使いなのは間違いないが……ジャック・ザ・リッパー、殺人鬼、殺人に関連する魔法か?)
念じただけで相手を殺せる魔法——そんな悍ましい魔法が存在するはずはない。
何らかの条件を満たすことで相手を確殺する、例えばナイフを当てるなど。
(だったらナイフには当たらないようにしないとな。今の僕様なら多少の被弾は耐えられるが、念には念を)
そして七海真美を模したマジックアイテム。ただの飛行ユニット、と考えるのは希望的観測だろう。 - 195◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 20:57:57
(まさか『万物切断』じゃないだろうな。もう一度あれと戦いたくはないぜ)
「『矢を射る魔法(βέλος)』」
魔法陣から矢を放つ。一射、二射では終わらない。間髪入れず、射続ける。これで倒せるとは思っていない。ジャックの魔法を見極め、それを攻略する魔法を探すために。
ジャックは、インテリジェンスウェポンから飛び降りる。飛び降りながらも、コートから次の凶器を取り出している。
山岳エリアを出た後、学生街に入る前にジャックは武器を調達している。オオカワウソのようにヤクザ事務所や警察署を襲撃したわけではない。
ただ街中を物色し、手ごろなアイテムを『拾った』だけだ。本来、人間が人間用に作った武器は、魔法少女戦では重宝されない。一般的な魔法少女でも身体能力は十倍、羆レベルの筋力・耐久性を備えている。傷をつけることは出来るが、確殺を求めるとショットガンや機関銃が必要になってくる。 - 196◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 20:58:11
魔法少女同士の戦闘ならば、市販のサバイバルナイフで斬りつけたり、警官から奪った拳銃で撃つより、その肉体で殴ったり蹴る方がダメージを与えることが出来る。
テンガイが放った矢は、当然対魔法少女のもの。魔法少女の肉を抉り、命を奪う威力——人間の矢とは比較できない威力を秘めている。
一方、ジャックの取り出した鉄パイプは、道端に転がっていたものである。大方あにまん市で起きた様々な異常事態に混乱した不良か半グレが落としたものであろう。こんなもので魔法少女の創り出した矢を受ければ、二撃、三撃で鉄パイプがへし折れる。
(ただ、物をしまえる魔法か? 生活に便利な素敵な魔法だが……)
違うな、とテンガイは見極める。
鉄パイプを覆う、黒い靄のようなもの。ジャックの顔面を半分覆っているものと同じもののようだ。
ジャックは、落下しながら鉄パイプを振るう。
何らかの武術の心得があるのか。そう錯覚するほどの、洗練された動作。テンガイの放った槍はジャックの鉄パイプで弾かれていく。
まるで、魔法少女が具現化した武器のような性能を、鉄パイプが示している。
(武器を創り出す魔法、か? だが、それならもっと効率的な武器を作るはず。わざわざ鉄パイプなんか作る理由が無い)
「なるほど、持った武器を強化する魔法か」 - 197◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 20:59:28
限りなく正解に近い答えに、テンガイは辿り着く。
着地ど同時に、ジャックは鉄パイプをテンガイ目掛けて投擲した。
「うおっ、『透過の魔法(διάφανος)』」
投げられた鉄パイプは、テンガイの身体をすり抜ける。
「お前の攻撃は僕様に通用しない。格が違うんだよ」
「そうかしら?」
コンクリを削りながら進む鉄パイプを見送りながら、ジャックは平静を保ったまま言葉を紡ぐ。
「そんな便利な体質なら、最初から棒立ちでいいはず。ナイフを防ぐシールドみたいなもの張ったりする必要はないわよね。
けど、実際はそうならなかった」
コートから取り出すのは——鉛筆。文房具も、ジャックにかかれば魔法少女を殺傷できる武器に変わる。
ダーツのように投げられた鉛筆は、テンガイの身体から逸れ、屋上の床に突き刺さる。
「ほらね、そのすりぬける魔法——あんまり使いたくないんでしょ?」 - 198◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:00:18
「さて、どうだかね」
(さすがに読まれるか)
ジャックの指摘は正解だ。『透過の魔法』はあらゆる攻撃を無効化できる。だが、『矢避けの魔法』や『空間を操る魔法』より、魔力消費は激しい。
それでも、今のテンガイは魔力潤沢。ある程度乱用はできる。
問題は。
どろり、と口内に鉄の味が広がる。
(なるほど、今の僕様じゃこの魔法はだいぶキツイな)
今のテンガイは、バラバラになった電子機器を無理やりガムテープで修理したような状態。魔法を運用する度に全身に負荷がかかる。
(真美と戦った後に身体スペック上げといて正解だったな。魔法で避けるよりフィジカルで避ける方が効率がいいかもしれん)
一方、ジャックもまた想定外の事態に思考を働かせていた。
(思ったより弱ってないわね)
ジェイルフィッシュを無視して単独で復讐に向かったのは、単にジャックが自己中だから、という理由だけではない。 - 199◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:00:55
天才である彼女は、真美がテンガイを著しく弱体化させていたことを見抜いていた。自分なら問題なく勝てるレベルまで。
しかし、ジャックの想定より、今のテンガイは強い。
(だからといって、退くつもりはないけど)
真美のことを思うと、心が憎悪で満たされる。
手に入るはずだった。真美の心も、身体も、命も、全てジャックのものになるはずだったのだ。
それを、テンガイは卑劣にも奪った。絶対に許さない。
「なぁ、君さぁ」
テンガイは、ジャックに語り掛けた。反動ダメージが回復するための時間稼ぎ。
ジャックもまた、今のテンガイを確殺する手段を閃くために、あえてテンガイの言葉を待つ。
「真美の復讐ってのは分かるんだけどさ。昔からの知り合いだったわけ?
違うだろ? たぶん、このゲームが始まって知り合った浅い関係だろ?
そんなインスタントな絆で僕様に挑むの、馬鹿馬鹿しいと思わない?」 - 200◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:02:23
テンガイの挑発に、ジャックは表情一つ変えなかった。
既にテンガイへの憎悪が頂点に達しているのだ。これ以上不快感を煽られたところで、やることは何も変わらない。復讐する。
「お前には分からない」
と、ジャックは断じた。
「お前は、私から真美ちゃんを奪った。あの子は、私のものだったのに」
「真美は誰かのものじゃねーだろ」
テンガイの茶々をジャックは無視する。談笑や議論ではない。挑発ですらない。ただ、厳然たる事実を口にし、自らの殺意をより高める。それは、ジャック流の祝詞(まほうのじゅもん)だった。
「あの子は、私の獲物(たからもの)だった。あの子を守って、あの子を愛して、最期には美しく飾り立てるはずだった。私とあの子を愛を、永遠にするはずだったのに。
お前が——全てを台無しにした」
「ふーん」
無関係の第三者でも怖気が走るほどの純粋で濃密な殺意。それを一身に受けても、テンガイは涼風に吹かれたように平静を保った。 - 201◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:03:49
「頭いかれてんのか、お前」
と、テンガイはジャックに診断を下す。そして、彼女に対する興味を失った。
仲間の敵討ちではない。単にシリアルキラーに絡まれただけだ。
ならばこれは、魔法少女同士のバトルではない。
「エネミー狩りも、魔法少女の役割だからな。いいぜ、『退治』してやる。僕様だって、偶には良いこともするんだぜ」
もはや、会話は不要だった。
ジャックは獣のようにテンガイに飛び掛かる。
投擲攻撃はテンガイに通用しない。ならば試すのは近接攻撃。
(って、判断か。悪手だぜ)
テンガイの魔法は多岐に渡る。攻撃手段を切り替えた程度で突破できるのなら、彼女は数千年も暗躍していない。
そして、ジャックがその程度の思考しか出来ないのなら、彼女はとっくに逮捕されている。
戦闘に参加していなかった、インテリジェンスウェポンが動いた。 - 202◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:04:33
テンガイの背後に回り込み。
「マミビーム!」
目からレーザーを発射する。
そして、ジャックはレーザーの着弾にタイミングを合わせるように、テンガイへ接近した。
近遠同時攻撃。
テンガイが全知全能であり、しかし一つ一つの魔法の完成度が一流に届いていないこと、そして『魔法の切り替えに僅かなタイムラグがあること』。この弱点を、ジャックはとっくに見抜いていた。
インテリジェンスウェポンを戦闘に参加させなかったのは、移動・索敵にしか使えないと誤認させる狙いがあった。
彼女は傭兵でもなければ殺し屋でもない。武術家でもなく、歴戦の戦士でもない。
ただ、天才である。あらゆることを、大した努力も無く達成できる。
勉学も、スポーツも、処世術も、殺人も、その隠蔽も、魔法少女も。
僅かな攻防で相手の性質を見抜くことは、ジャックの十八番だった。
——その観察眼でもなお捉えられぬ程、テンガイの底は深い。 - 203◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:05:36
ジャックの頬に衝撃が走った。
異なる手段で同時に攻撃されたテンガイは、魔法による防御を使わなかった。
拳を握り、ジャックの頬を殴り抜く。白兵能力はジャックが大きく上回っている。合理的に考えれば、テンガイは素手でジャックに攻撃しない。——天才はそう判断したからこそ、テンガイの攻撃に虚を突かれる。
(こいつ……拳が、重い……)
更に予想外だったのは、今のテンガイは、七海真美と戦った時よりも身体能力が上昇している。
殴られたジャックの足が、地から離れる。
インテリジェンスウェポンから放たれたレーザーは、テンガイの背面に命中し——反射される。
「反射の魔法(αντανάκλαση)」。
一定以下の威力の魔法攻撃を反射する利便性に優れた魔法。
当然、今まで使わなかったのは反動の大きさにある。
テンガイの口から血が零れる。
それでも、挟撃をテンガイは凌ぎ、ジャックの体勢は大きく崩れている。 - 204◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:06:32
——天才は、対応力が高いからこそ天才と呼ばれる。
頬を殴られた瞬間、ジャックの手は瞬時に動き、テンガイの右手首をナイフで切断していた。
「へぇ」
テンガイに動揺は無かった。切断された右手首を、そのままジャックに向かって蹴りつける。
予想外の動きに、僅かにジャックは面食らい。
「『爆発の魔法(έκρηξη)』」
切り取られた右手首が膨れ上がり、小規模な爆発を発生させる。
それは、ジャックの顔を吹き飛ばすには十分な威力があり。
それを浴びる程、ジャックは鈍くなかった。
ジャックの顔半分を覆っていた黒い靄が動き、手首を瞬時に包み込む。
非生物なら何でも武器に変えられるジャックの魔法は、当然テンガイの手首にも適用される。
一瞬の攻防であり、爆発させないことまでは追いつかなかったが、爆破の規模を最小限にする程度の操作はできた。 - 205◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:07:36
その間に、テンガイは次の魔法を編み上げている。
「『稲妻を落とす魔法(κεραυνός)』」
晴天にも関わらず、因果を無視して落ちる雷。
ジャックは後方に飛びずさって回避する。
右手首を修復しながら、テンガイは不敵に笑った。
「どうしたエネミー? 僕様を殺したいんじゃなかったのか?」
テンガイの挑発に耳を貸さず、ジャックはじっと観察した。
(真美ちゃんと戦ってたときとは違う……魔法を撃つ度に、顔に苦痛が現れている……)
ポーカーフェイスで必死に押し隠している。が、少女の苦悶の顔に熟知しているジャックは、テンガイの苦痛を感じ取っていた。
傍から見れば、ジャックはあしらわれているように見えるだろう。だが、今の両者にそこまでの実力差は無いと、ジャックは見抜いていた。
問題は、手数の違い。多種多様な武器を用意しようと、今のジャックが取れる戦術は「武器による近接攻撃」「武器を投擲」「マミちゃんの攻撃」に限定される。
だが、テンガイが取れる手段は、ジャックでは計り知れない。 - 206◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:08:31
全知全能。決して言葉通りの能力があるわけではないが、他の魔法少女と比べれば誰よりも近い場所にいる。
(けど、負けるつもりはない)
ジャックは殺人鬼であって狂戦士ではない。数多の少女を殺傷しながら捜査の眼を掻い潜れたのは、確実に事を為す慎重さもあった。
今のジャックには、それがない。自覚はしている。テンガイがただの敵ならとっくに退いている。仲間を集め、あるいはインテリジェンスウェポン以外のマジックアイテムを用意し、今のテンガイを確殺する体勢を整えている。
だが、テンガイは七海真美の仇だ。そのことを考えるだけで腸が煮えくり返り、怒りで視界が明滅し、心の底から殺意が溢れ出てくる。
殺してやる。
殺意の衝動に身を任せ、ジャックはテンガイに突っ込む。
テンガイもまた、迎撃の魔法を展開しようとし——。
突如、空間を切り裂くように、剣が出現した。
貴族妖精が最期に転じた姿。
魔法少女への呪詛が込められた魔剣——『アロンダイト』。 - 207◆xaazwm17IRZa24/12/17(火) 21:08:44
投下を終了します
- 208二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 02:09:46
おつ
- 209二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 03:14:27
続きだ〜!!
- 210二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 07:53:38
ジャックの戦闘前のルーティンエグいね…
- 211二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 13:09:36
そう言えばジャックの魔法のイメージとしてfateのランスロットが挙げられてたな…
- 212二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 23:44:53
待機
- 213◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:53:35
投下します
- 214◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:54:13
墓前に、老女が立っている。
際立つ特徴は無い。街を歩けば目に入る、極々平凡な老人だ。
老女は、墓標をじっと見つめている。その瞳は暗く、憂いている。
「やっぱり、駄目なのね」
と、老女は墓標に語り掛けた。
「人としてごく当たり前の一生を歩んでみたけれど……どうにもならなかったわ」
しわがれた声だった。厭世観を漂わせたまま、老女は語り続ける。
「少しでも■■■を真似れば天上に近づけるのかと思ったけれど……そんなわけがないのよね。あの子は、大人になる前に、お婆さんになる前に、死んでしまったのですから」
わかっていたのよ、と老女は続ける。
「わかっていたけれど、私は続けたの。諦めきれなくて……いいえ、諦めるために、私は人として生きたわ。魔法とは無縁の人生を完遂すれば、私の宿願も諦められるかもしれないと思ったから」
そっと、慈愛を感じさせる手つきで、老女は墓石を撫でた。そして、微笑を浮かべる。 - 215◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:54:48
「無理、だったわね。魔法少女だったころの2808年はただの夢、妄想の産物だと思えれば良かったのよ。けど、どれだけ普通に過ごしていても、働いていても、育てていても——毎晩私は、前世の夢を見る。
終わってない。私たちの旅は、まだ続いているのよ。
冒涜の竜の残滓は、まだ生きている。そして——■■■も、戦い続けている。私だけ、降りるわけにはいかないのね」
私は天上に昇るわ。老女は断言した。
「天上になって、■■■の代わりに、私が竜と戦い続ける。これ以上、私の友達を苦しませない。
——だから、此処に来るのはこれが最後」
もう一度、老女は墓石を慈しむように撫でる。
「普通の幸せをありがとう、貴方」
そう言って、老女は墓石に背を向けた。
一週間後、急激に体調を悪化させた彼女は、一人息子に見守られながら静かに息を引き取った。
人付き合いが悪く、亭主に先立たれた後は家に閉じこもっていた彼女を悼む者は少なく、葬式は親族だけで行われた。 - 216◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:55:35
◇
テンガイとジャック。両者の間を割って入るように現れた魔剣『アロンダイト』。
二人の魔法少女は、同時にその武器を認識した。
どれだけ弱体化しようと、どれだけ魔法を斬り刻まれようと、テンガイの知識は損なわれない。
一目で、テンガイはその魔剣の危険性を認識した。
魔法少女に対する、ありったけの呪詛が込められた剣。振るうどころか、握っただけで所持者は呪殺される。
テンガイは身を退いた。とんだデストラップが降ってきたと内心で毒づく。
ジャックもまた、魔剣を認識し——飛び上がって、柄を握りしめた。
マジックアイテムだと看破した。だが、テンガイ程の知識を持っていなかったジャックは、その危険性までは認識していなかった。
『呪呪呪呪呪呪呪呪』 - 217◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:56:10
呪いが、一瞬でジャックの身体を蝕む。
全身から血が噴き出す。死んだ方がマシだと思えるほどの苦痛に苛まれる。
戦いの勝敗を分けたのは、経験の差であった。ジャックは、世界の広さを知らなかった。握っただけで死ぬアイテムがある。そんな理不尽を知らなかった。
『呪呪呪呪呪呪呪呪』
そして殺人鬼は、無惨な屍を晒し——。
「——煩い」
黒い靄が、一瞬で魔剣を塗り潰す。
テンガイの眼が、驚愕で見開かれる。
「たかが剣が、私(まほうしょうじょ)に逆らうな」
魔剣が振るわれる。テンガイの反応は、一歩遅れた。
その一歩は、天才にとって絶対の一撃となった。
鮮血が舞う。テンガイの身体に、袈裟切りの一閃が走る。
顔を歪ませながらも、テンガイは魔法を発動させようとした。
だが、傷口から侵入した呪いは、テンガイの肉体を瞬時に冒し。 - 218◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:56:44
(魔法が……発動できない……!)
傷を回復する魔法、時間を操る魔法、魔法を解除する魔法。切り裂かれたのではなく、魔法を発動させる根本が壊死したような、そんな絶望的な感触。
ジャックが魔剣を振り上げている。刀身に、遥か昔に出会った妖精貴族の顔が映った——ような気がした。
(参った、なぁ……)
テンガイは思わず苦笑した。老いと諦めに満ちた、疲れ切った女の顔が浮かび上がった。
その表情に、ジャックは何も感じない。泣こうが喚こうが罵られような命乞いをされようが、ジャックの行動は何一つ変わらない。
魔剣『アロンダイト』はテンガイを滅多切りにした。
全身を斬り刻まれたテンガイは、血だまりに倒れ——駄目押しとばかりに、頸動脈を断ち切られた。
(これが……僕様の終わりか……)
血と呪いに塗れながら死ぬ。
転生の魔法さえも発動できない、三度目にして本物の死。 - 219◆xaazwm17IRZa24/12/18(水) 23:59:04
脳裏に浮かぶのは■■■の顔。
(くそ……ふざけんなよ……)
他の仲間の顔は、今でも鮮明に思い出せる。テンガイとなった後に出会った無数の魔法少女の顔も、全て覚えている。添い遂げた男の顔も、産んだ息子の顔も覚えている。
ただ、■■■の顔だけは、ぼんやりとしている。
ああ、やはり駄目だ。心はとっくに老いている。理性は既に諦めている。
それでも、テンガイは手を伸ばす。届かないと知っていても——完全に折れることが出来ない。
(超えてやる……今ここで……自分の限界を……天蓋を、こじ開けてやる……!)
呪いと激痛の嵐の中で、テンガイは気力を総動員し、更なる高みへと昇る。
さくり、とその額にナイフが刺さる。
(あ……)
意識が一瞬で遠のく。
目を見開いたまま、テンガイは空を仰いだ。
天は、あまりに遠い。
【再世 優/テンガイ 死亡】
【残り 19人】 - 220◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 00:00:25
◇
粒子化が始まったことを確認し、ジャックはその場を後にする。
(気持ち悪い、最悪な気分だわ)
怨敵を始末した。本来絶対に殺したくない相手を、殺意を込めて殺した。
(けど……耐えられない、わけじゃない)
「やったね、ジャックお姉ちゃん!」
「ええ、ありがとうマミちゃん」
もしマジックアイテムが空から降って来なければ、負けていたのは自分だったかもしれない。
(一人殺したのなら、もう何十人殺しても同じことね)
好みじゃない相手は殺したくない。その信条を、願いのために押し曲げる。 - 221◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 00:00:36
インテリジェンスウェポンに目を向ける。こんな模造品ではなく、本物の七海真美を手に入れる。生き返らせてたくさん愛でて——今度はちゃんと、芸術品に昇華させる。
「決めたわ、マミちゃん。私は、このゲームで優勝を目指す。ティターニアも、ジェイルフィッシュも、有象無象もみんな殺して——七海真美を取り戻す」
「すごーい! 私も協力するよ、ジャックお姉ちゃん!」
かくして、二つの悪の対決は、殺人鬼が勝利した。
最後の六時間。運命を決める最終決戦。テンガイは、その前哨戦で脱落した。
かつてと同じように——。 - 222◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 00:00:49
投下を終了します
- 223二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:58:06
投下乙です
テンガイ、逝ってしまったか
明暗を分けたのは、身も蓋もないことを言えば「若さ」なんだろうな - 224二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 07:50:08
魔法そのものが壊死されたらどうしようもねぇ…
- 225二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 08:59:55
完全に優勝狙いへと切り替わっていい感じに飢えてるなジャック
しかし優勝はないのだ。なぜならアーリア人ではないから - 226二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 11:13:56
どうぞ安らかにというより長生きした分先に行った人達と会ってくださいという感想
- 227二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 11:21:31
百年で天上の魔法少女の類似品を作り上げたナチスの科学者や、二十年とちょっとで同格に上り詰めた天才達がいるあたり因果応報と言いますか
数千年経っても目的を成せずに呪いに塗れて死ぬのは今まで積み重ねてきた宿業の報いか - 228二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 17:54:07
ブレイズドラゴンと同じで悪党は何も成せず何も残せず死ぬんやね
つまりジャックの最後は…… - 229◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 19:54:23
本日も始めさせていただきます……!
- 230◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 19:55:35
「電話しようZE!」
というアルセーヌ(マスコット)の唐突な言葉に、ミストアイは目を丸くした。
「電話……どこに?」
デスゲームのことを部外者に知られれば死ぬ。
かといって知り合いの参加者(メリィ、千郷)には何度架けても繋がらない。
「魔法少女部の皆にさ」
「いや、だから繋がらないんだよ。そういう仕様だ、きっと」
知り合い同士で合流されることを魔法王は嫌がったのだろう、とミストアイは推理する。
「いやー、今まではそうだったかも知れないけど。今は状況が違う。繋がると思うな」
「……部長、何か知ってるでしょ」
「知らないよ~」
訝しむミストアイだが、いくら彼女でもまさかアルセーヌが『一時期デスゲームの黒幕を張っていたがナチス残党にその座を追われた』という荒唐無稽な事実に辿り着けるわけがなく。 - 231◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 19:56:28
まぁ、部長が思わせぶりなのはいつも通りかと肩を竦め、メリィに電話を架けた。
千郷とメリィで、メリィを優先したのは千郷がデストロイ状態のときは会話にならないからだ。最悪スマホをぶっ壊している可能性もある。
コール音が響く。
(嘘、本当に繋がった)
『…………ミストアイ、久しぶりなのだ』
「……昨日ぶりだ」
『そうか、まるで一年近く会ってない気がするのだ』
確かに、とミストアイは思う。時間にすれば12時間と少し。それだけの時間で、ミストアイは三人の魔法少女を撃ち抜き、内二人を殺している。
私刑はゲーム開始前から行っていたが、殺人に手を染めたのは今日が初めてだった。
「とりあえず、無事で良かった」
放送で生存は知っていたが、通話が出来るだけの状態という事実に、ミストアイは胸を撫でおろす。
「ひとまず、合流しない? この後千郷にも電話を架けるから」 - 232◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 19:57:22
『……それは、僕がやっておくのだ』
「? そう、分かったわ」
大した負担では無いが、やってくれると言うのならありがたくお願いしよう。
ただ、ミストアイはどうにもメリィの言葉に歯切れの悪さを感じていた。妙に気を使われている気がする。
(あ、そうだ。部長の生存も伝えてあげないと。放送だけだと、死んだって勘違いしているだろうし)
つんつん、と肩を突かれる。デフォルメされたアルセーヌが変わって変わってと自分を顔を指差していた。
言われるがままに、ミストアイはアルセーヌにスマホを近づける。
「やぁ、メリィ。元気にやってるかい」
『部長も、外見以外は変わってないみたいで安心したのだ』
「うん、その反応。君——全部知ってるね?」
え? とミストアイは首を傾げる。
そして、メリィの魔法を思い出す。 - 233◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 20:10:08
『まさか。分からないことだらけなのだ。ただ——あにまん市で起こったことは、だいたい把握しているのだ。
山岳地帯で起こったことも、学生街で起こったことも、糧鮴で起こったことも、病院で起こったことも——僕は知っているのだ』
「それはつまり……ミストアイが山田浅悧を討ったことも知っているんだね」
「……っ」
知られている。自分の殺人を、部の仲間に把握されている。考えるだけで心臓がきゅうと縮まった。
『……責める気はないよ。メリィは山田浅悧とは無関係だし。デスゲームをしてるんだ、発狂するくらい誰にでもあるさ』
(発狂……。私は、発狂していた……?)
そうであるなら、どれほど良かったのだろうか。
あの時、ミストアイは冷静だった。冷静に魔法少女を殺した。
かつてテンガイがミストアイに見出した、英雄(ひとごろし)の素質。
どれだけ情報に強くても、メリィの魔法は人の内面までは覗けない。 - 234◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 20:10:28
「なるほど、なるほど……。つまり、ミストアイに千郷へ電話を架けさせたくないのは、千郷の傍に山田浅悧の関係者が居るからなんだね。クラスメイトとか、学校の先生とか」
『部長、どこまで把握してるのだ?
正解なのだ。千郷は、山田浅悧の師匠、ティターニアが保護していたのだ』
ティターニア。山田浅悧とは僅かにだが、情報交換の時間があった。彼女の同行者。師匠。市内最強。
「保護していた……? 何故過去形なんだい?
もしや、今は保護されていないのかい?」
『何か白々しいのだ……まぁいいけど。
ティターニアは戦闘不能……っていうか再起不能っていうか、瀕死なのだ。意識も無いし、この先目覚めるかも分からないのだ』 - 235◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 20:22:36
ミストアイが想起したのは自らの姉。レディースの組長をしており、山田浅悧に襲撃され植物人間になった。
果たして山田浅悧を撃ったのは復讐だったのか。ミストアイにもまるで分からない。
「へぇ、だったら逆にチャンスじゃないのかい? ティターニアが私たち魔法少女部の敵に回るとかなり厄介だろう? 意識を失っている間に、千郷に連絡を取って、合流を急ぐべきでは?」
ナチュラルにティターニアがミストアイと敵対した場合は魔法少女部総出で戦うことを決めている部長に抗議をしたいが、ミストアイが口を開く前に、メリィの声が響いた。
『ティターニアは意識を失ってるけど、一人、ちょっとヤバい奴が居るのだ』
「ヤバい奴? 君も千郷もミストアイも、世間から見れば十分ヤバい奴だとは思うが。私から言わせれば参加している魔法少女にヤバくない奴は居ないよ。序盤に脱落した者も含めてね」
『……なんか視点が運営側なんだよなぁ……』
メリィのぼやきにミストアイも頷く。だからといって撃とうとは思わないが。
『ヤバいのベクトルが違うというか……魔法少女とは別ジャンルなのだ』
(どういうこと?)
と、ミストアイも首を傾げる。今この街で、魔法少女よりヤバい存在は居ない。
「具体的に、どんな奴と一緒にいるんだい? 私にはまったく見当もつかないな」
『ヤクザ』
(あ、それはヤバいな)
予想していない答えだった。 - 236◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 20:33:16
ただ、言われてみれば納得ではある。
今から10年以上前は、あにまん市は日本トップクラスの犯罪都市であったという。特に糧鮴では毎日のように殺人が行われており、糧鮴の外でも、市内全域で不審死が相次いでいたとか。
糧鮴のボスは化物を飼っている、悪魔を召喚している、超能力者を雇っている。なんて噂まであったのだという。
たぶん魔法少女でも居たのだろう。それも複数。
今でこそ糧鮴にさえ足を踏み入れなければ普通の生活を送れるようになったため意識しないが、あにまん市で表向きもっとも危険な存在は『糧鮴のヤクザ』だ。
『ただのヤクザなら蹴散らせばいいけど、相手はヤクザの魔法少女なのだ。不用意に接触するのは危険なのだ』
「ちょっと状況が読めないな。千郷はティターニアに保護されていたんだろう? どうしてヤクザ魔法少女が絡んでくるんだい?
ティターニアが倒れた後、千郷は拉致されたのかい?」
『いや、どうやらティターニアとヤクザは旧知の関係みたいなのだ』
(えぇ……)
市内最強のティターニア。裏ではヤクザと繋がりがあったらしい。
(清濁併せ呑むってことなのか……でも、なんか思ってたイメージと違ったな)
もっと清廉潔白な、王道の正義のヒーローをイメージしていた。 - 237◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 21:15:08
『ミストアイはティターニアの身内を殺した。きっとヤクザはそこを突いてこっちを支配しようとしてくるのだ』
「だったら君が電話かけるのも危険じゃないのかね、メリィ」
『僕は電話を架けなくてもスマホ越しに連絡が取れるのだ』
「なるほど、確かに君はそういう魔法だったね」
ふむ、とアルセーヌは顎に手を乗せる。
「魔法少女部が集合するのは前提として、一旦私たちと君とで合流するべきだろうな。千郷が上手く逃げ出せればいいが、最悪ヤクザとドンパチすることになる」
『まだトラブルになると決まったわけじゃないのだ。……ただ、経歴を調べるとえげつない奴なのは間違いないのだ。デッドマンズ・ハンド。糧鮴を統一した魔法少女。魔法国からも指名手配されてる』
「強敵だな。やはり私たちと君たちとで合流して」
『それでも戦力に不安があるのだ。僕らのチームも……決してアベレージが高いわけじゃないのだ。千郷と合流する前に、スピードランサー、あるいはジャスティスファイアと合流したい』
「ふむ、だが仲間が増えれば、それも強力な仲間が増えればその分リスクが上がるぞ?」
『同じことを言っていた仲間が居たのだ。……もう居ないけど』
「ふむ、どちらせによ我々は一旦合流するべきだろうね」
それでいいだろう? とアルセーヌに訊かれ、ミストアイは頷く。
そこまで仲間想いという自覚は無かったが、今は無性に日常を過ごした仲間と過ごしたかった。 - 238◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 21:24:15
「よし、待ち合わせ場所は……」
どこか生き生きとした口調でアルセーヌは話している。マスコット状態……変身能力も、魔法少女のフィジカルも無くしたという、完全に詰んでいる状態なのに、やっぱり部長のバイタリティは凄いとミストアイは感心した。
『ふざけるなっ!』
突如、液晶の向こうから怒号が響いた。メリィの声ではない。ミストアイの知らない声だ。
「……修羅場かね?」
『そうみたいなのだ……待ち合わせ場所も決まったし、一旦切るのだ。次はオフで』
「ああ、お互いに生き残ろう。せっかくのデスゲームだからね」
『ほんと、部長って人でなしだな……。合流する時はマジで自重して欲しいのだ。印象悪すぎ』
溜息と共に、電話が切れる。
「さて、ひとまずの行動指針が決まったね」
「そうだね……」
アルセーヌを肩に乗せ、ミストアイは歩きだした。
彼女の心を折ったテンガイは既に亡く。
それを知らないまま、約束された待ち合わせ場所へと、悩めるスナイパーは進んでいく。 - 239◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 21:24:34
(一旦投下を終了します)
- 240◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 22:04:20
ジャスティスファイアは電話を架けている。
誰に架けてんだろ、とバルバロイは思うが、聞こうとは思わなかった。
ジャスティスファイアはどうやら警官のようだ。FBIなので厳密には違うが、バルバロイはその辺りを区別しない。
基本的に、大雑把に生きている。ティターニアの弟子の中では、一番師匠に性格が似ているのかもしれない。
手持無沙汰なので、改めて名簿に目を通す。
『木羽マミ』
『陣内葉月』
『逝凪素鈴』
『山田浅悧』
『田中空』
赤く彩られた名前。もう居ない人の名前。
木羽マミ、陣内葉月、逝凪素鈴はクラスメイトだ。マミはよくわからん変な奴、葉月はつえー奴、素鈴は優しい奴。
日本語が拙く、それでいて喧嘩大好きのバルバロイはクラスでも浮いていた。
ブラジルからやって来た不良娘。
それでも、三人とは僅かにだが思い出はある。
マミにはブラジルの民間伝承を訊かれた。
師である祖父ならともかく、バルバロイはあまり詳しくないので力にはなれなかったが。
葉月は喧嘩を申し込んだが断れた。他流試合に辛い思い出があるらしく、バルバロイもそこまで踏み込まなかった。
素鈴は転校初日に学校を案内してくれた。バルバロイが不良として学内で有名になっても、ちょくちょく声をかけてくれた。うん、良い奴だ。
(死んじゃったのか)
バーガー屋の店主と同じ。泣き叫ぶ程の仲ではないが、寂しいなぁとは思う。 - 241◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 22:09:07
山田浅悧は、同じティターニアの弟子だった。
稽古を見たことがあるが、強いと太鼓判を押せる。
喧嘩形式ならともかく、試合形式だとちょっと勝てないかもしれないなと感じた。
逆に、実戦に近くなればなるほど腰が引けていた。勿体ない。
(そして、空は……)
彼女には、リベンジをしたかった。
バルバロイの心を折った唯一の相手。故郷の悪漢にもそんな奴は居なかった。ティターニアでさえ、ここまでの敗北をバルバロイには突きつけなかった。
バルバロイは、空との一戦を思い出す。
その日、バルバロイは自分が小娘に過ぎないと思い知らされたのだ。 - 242◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 22:18:35
◇
「alta!(高い!) alta!(高い!) Me baixa aqui!(降ろして!) Me baixa aqui!!(降ろして!!)」
「何て言ってるかわからないけど、喜んでくれてるみたいで良かった! よーし、今日は行けるとこまで昇るよ~」
「Aaaaah!? Socorro!(助けて!) Socorro, vovô!(助けてじいちゃん!)」
「うふふ、ようこそ日本へ! これが日本の空でーす!」
◇ - 243◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 22:25:28
今思い出しても体が恐怖で凍りつく。だが、いつかはリベンジし、克服するつもりでいた。
その機会は、もう二度と無いが。
「organizado、mover(段取り着いた、移動)」
ジャスティスファイアに促され、バルバロイは頷く。
残ったクラスメイト、そしてジャックやティターニアは無事なのかと考える。
(まぁ、考えても仕方ないか)
念じたところでどうにかなるものではない。
今はこのポリスと一緒に行動しようと、バルバロイはジャスティスファイアと共に進むのだった。 - 244◆xaazwm17IRZa24/12/19(木) 22:27:32
本日はここまでとさせていただきます……!
ちょっと最終回の完結がいつになるかは見通しが経ちませんが、話の筋は出来たので、毎日少しずつでも進められればと思います……!
それでは、本日もありがとうございました……! - 245二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 22:42:41
乙
ジャック確死でティターニアも死にそうだからバルバロイは知り合い軒並みいなくなりそうなんだよね - 246二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 01:31:49
乙ジャック
- 247二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 07:47:16
乙です!
早い更新ありがてぇ、けど無理はなさらず… - 248二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 13:19:30
ここの二人は因縁と状況的に対怪異かな
- 249◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:08:20
本日も始めさせていただきます……!
- 250◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:18:53
天城千郷は廃ビルの一室に居た。
思えば、ゲームが開始してすぐの場所もビルの中だった。あの時出会った魔法少女のうち、生き残っているのはティターニアだけだ。
生き残っている、という表現も適切なのかは分からないが。
包帯を巻かれ、ベッドに横たわる彼女は、意識が無い。
いつ目覚めるのかも分からないのだという。
パラサイトドールを倒した後、デッドマンズ・ハンドはああああと千郷を引き連れて、ある場所に向かった。
『遺言医院』。死した者の遺言を聞くことができる、という噂が語られる、どこにあるかも分からない医院。
その場所を、デッドマンズ・ハンドは知っていた。
- 251◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:24:22
ティターニアは生きているのに、遺言を聞ける場所に連れて行くと言うのは、色々段階を端折りすぎというか、普通に不謹慎なだけじゃ? と疑問に思ったのだが、噂は噂、実体は遺言医院は闇医者……アングラ魔法少女の治療を請け負っている場所らしい。
金髪でグラマーな女医は担ぎ込まれたティターニアを見て眉を顰めたが、てきぱきと治療を始めた。
女医の見立てでは、火傷や骨折は命に関わるものではないのだという。
問題は、魔法の反動。これがティターニアの身体を蝕んでおり、意識が戻るかどうかは五分五分だとか。
応急処置を終えた女医は、デッドマンズ・ハンドと幾つか言葉を交わした後、医院を出て行ってしまった。 - 252◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:34:51
「あの先生はね、元魔法少女なんだ~。昔は糧鮴でぶいぶい言わせてたんだけど、のぞみちゃんと舞矢ちゃんがぶっ飛ばしてね~。今はもう引退して、魔法少女専門の闇医者やってるの。治療道具なんかは、魔法の国から仕入れてるから、変身できなくても成り立つんだよね~。千郷ちゃんもこの場所を覚えておくと損は無いよ~」
「あ、はい……」
どうも、このガンマン風の魔法少女は苦手だ、と千郷は思う。
口調こそ優しいが、妙な圧を感じる。小5の時の担任と、中1の時の学級委員長がこのタイプだった。自分の思い通りに動いているときは優しいが、逆らえば徹底的に制裁する。そんな圧。
事実、一緒に行動している帽子の魔法少女、ああああは明らかにデッドマンズ・ハンドを恐れていた。
「その、女医さんはどこに行ったんですか……?」
応急処置をした後患者を医院に残して出ていく。それは普通のことなのだろうか。
千郷の問いかけに、デッドマンズは目を細めた。
(え、もしかして地雷踏んだ……?)
こういうところも苦手だ。顔色を窺うことを強要されている感じが。
思えば、ティターニアとは僅かな絡みしかないが、自分のことをすごく気を遣ってくれていたのだと、今なら感じる。
「ちょっと折り合いがつかなくてね~。なんか、この街から出てくんだって」 - 253◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:47:56
どうして? と疑問に思ったが、すぐに納得した。
巨大なドラゴンとロボが戦い、街のあちこちで破壊が巻き起こり、市内最強が瀕死で担ぎ込まれてくる。
元魔法少女なら思うだろう。あ、この街もう終わったな、と。
千郷だって、もうけっこう破壊して発散したし、さっさとこの街から出ていきたい。
もちろん、部のみんなと一緒に。
「世知辛いよね~、千郷ちゃんはさ~世の中で一番大切なことは、何だと思う~?」
「うーん……スクラップ! &、ビルド……?」
「何でビルドが訝し気なの? まぁいいけどさぁ。
おいちゃんはね~お金~」
普通に嫌な大人だった。
「お金は大事だよ~、いくら魔法少女が超人でも、お金が無いとやっていけないからね~。年がら年中変身しているわけにも行かないし、魔法の国だって貨幣経済を採用してるからね~」
「そうなんですね……」
どうしてそんな話を今……?
千郷は首を傾げる。
「けど、お金にも限界があるんだよね~」 - 254◆xaazwm17IRZa24/12/20(金) 23:57:10
「限界?」
それは、どれだけ金持ちでも資産は有限という話だろうか。
「お金じゃ解決できない問題もあるんだよ~。例えば、ものすごく強いエネミーに襲われたときに、1兆持ってようと100兆持ってようと、どうしようもないでしょ。
仮に100兆で核ミサイルを買うとしても、買う前に殺されちゃったら終わりだし、核ミサイル程度じゃ死なない奴だっているかもしれない」
千郷は頷く。
「けど、もしその場にティターニアが居たらどうなる~?」
「え?」
何故そこでティターニア? と不思議に思う。全然関係ないじゃん。
「ティターニアなら、どれだけ強いエネミーだって倒せる。のぞみちゃんは最強で最高の魔法少女だからね~。おいちゃんはね~、絶対勝てるギャンブルが好きなの~。だからいつだってのぞみちゃんを信じてる。のぞみちゃんに全賭け。この世界の中心で主人公で光だから」
正義は必ず勝つんだよ~とデッドマンズは笑った。
子どものように純粋な笑みだった。
- 255◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 00:05:24
(……この人、気持ち悪いな)
デッドマンズの狂気に触れ、千郷が怖気を感じた時だった。
「うわぁ、ヤバいヤバいヤバい……!」
唐突に、ああああが叫び始めた。
彼女はデッドマンズに命じられ、窓から見張りを任されていたはずだ。
それが叫び出したということは。
「ナチスが攻めてきた!」
ああああの悲鳴と同時に、銃撃音が響いた。
廃ビルが弾幕によって割られていく。
千郷は咄嗟に身を屈めた。
今の彼女は戦闘力を失っている。
頼りになるのは魔法王より配られたマジックアイテム、『地獄篇』。
だが、今いち使い処が分からず、未使用のままだ。
(……というか、ナチスって何?)
魔法少女同士の殺し合いのはずでは?
疑問に思いながらも、千郷は隠れることしか出来なかった。 - 256◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 00:06:29
投下を終了します……!
短いですが、本日はここまでとさせていただきます……!
できれば明日で話を大きく進めたいところですね~…… - 257二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:12:28
デッドマンズ・ハンドはとあるガンマンが死に際に手にしていたポーカーの手札なのだ。つまりある意味では蟹は既に死人なのだ
- 258二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:31:54
お疲れ様です
ワイアルドとアリー・アル・サーシェスが元ネタな戦争屋のグレンデルも居るし数百人単位のサイボーグ軍団を軍略で統率されたら死ぬほど厄介か
設定的にこのバトロワで戦争させたら右に出るキャラは居なさそうだし - 259二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 06:48:33
- 260二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 12:51:24
なるほど深いなぁ
- 261二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 13:21:55
ティターニア、スピードランサーが相手だと割と一方的に負けるらしいけどデッドマンズハンドはそこら辺どう思ってんだろ
- 262◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 19:20:02
本日も始めさせていただきます
- 263◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 19:29:03
放送が終わり、清原稞美、魔法少女名『ウェンディゴ』はペストマスクの下で溜息をついた。
また、人が死んだ。
このデスゲームが開催されたのは、きっと自分のせいだ。
ウェンディゴの意思に無関係に、関わった人間を死の運命に近づける。舞台がウェンディゴが暮らすあにまん市なのも、参加者にウェンディゴのクラスメイトが多いのも、きっと悪いのはウェンディゴだ。
(やっぱり、死んだ方がいいんだろうな)
知り合い——決して友達ではない——ジャック・ザ・リッパーが誰がどう見ても殺人鬼であるように、ウェンディゴは誰がどう見たって疫病神だ。
ゲームが始まる前に首を括っていれば、デスゲームが始まることもなかった。
(けど、死にたくないんだよなぁ)
我ながら身勝手だとは思う。
生きがいもなければ目標も無い。死ぬのが怖いわけでもない。
ただ、漠然と、しかし強固に、死にたくない、死んでは駄目だと感じるのだ。
生き汚い、と思う。 - 264◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 19:50:56
クラスメイトからは『玉柳水華』『山田浅悧』『佐々利こぼね』の名が呼ばれている。
佐々利こぼねとは実際に遭遇した。ゲームに乗っており、しかし最後には仲間を庇って殿を務めた。
あれから追手が無かったことを考えると、彼女は立派に仕事を果たした。
生きてるだけで大迷惑の自分が生き残り、他者を救うことが出来る者が死んでしまった。
玉柳水華も、困っている子のためにいつも動くいい子で。
山田浅悧もきっと、剣道部で鍛えた実力で悪と戦ったのだろう。
(それに比べて私は……)
ジャックもまた生き残っていることは特に嬉しいとは思わない。一緒にデュエットをした仲ではあるが、死んでも何とも思わないし、むしろ早く死んだ方が世の為人の為になるだろう。
- 265◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 19:59:30
ジャックとは、奇妙な関係だ。
一緒にマックに行ったり、カラオケに行ったことがある。愚痴を聞いたりもする。
ウェンディゴは、ジャックが殺人鬼だと知っている。知っているからこそ、一緒に遊ぶのだ。
ウェンディゴと行動を共にすればするほど、死ぬ確率は上昇する。だから死んでほしくない相手とは一緒に行動しない。
が、ジャックは殺人鬼なので、社会のためを思えば、早く死んでもらったほうがいい。
つまり、「死なせてしまって申し訳ない」と感じずに共に居ることが出来る。
ジャックが殺人鬼であることを公表しないのは、それが「死のトリガー」になる可能性が高いからだ。
ウェンディゴが殺されるわけではない。ジャックは好みではない相手は絶対に殺さないから。
が、ウェンディゴが「桐ヶ谷裂華は殺人鬼だ」と伝えた相手がどうなるかは分からない。もしその人物がジャックが『絶対に殺したくない』ほど好みではない相手、ではなかった場合、殺されてしまう可能性がある。
本来なら考え過ぎなのだろう。
だが、ウェンディゴの魔法は、死を呼び寄せる魔法。ウェンディゴがアクションを起こすことによって、ジャックの大量虐殺が発生する可能性は高いのだ。
だからウェンディゴは桐ヶ谷裂華が殺人鬼だと、日常では言いふらさない。
この殺し合いではどういうスタンスを取るかは、決めあぐねているが……。 - 266◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 20:10:22
(本名と、魔法少女名『ジャック・ザ・リッパー』が載っている。今までの生活と比べて格段に『殺人鬼』とバレる可能性は高い)
今彼女はどうやって誤魔化しているのだろうか。
ゲームのどこかで生きている知り合いに思いを馳せる。
(一緒に行動しているメリィに伝えた方がいいのかな。魔法少女『ジャック・ザ・リッパー』は殺人鬼だって)
ナイトメア★メリィは情報の収集・拡散において参加者随一の能力を持っている。彼女(※ウェンディゴはメリィの中身が男だとは知らない)の力を持ってすれば「桐ヶ谷 裂華 殺人鬼」をSNSのトレンド1位にすることだって可能だろう。
そこまではしないにしても、全参加者にジャックの危険性を伝えることもできる。
(けど、藪蛇かな)
ジャックの行動は、読めない。
殺し回っている可能性もあるし、無害なフリをして潜伏している可能性もある。何しろ彼女は、ティターニアに殺人鬼だと感づかせることなく、彼女の弟子になっているのだ(※情報源はジャック本人から)。
これでジャックは最後まで無害なフリをして、仲間たちと共に本気で脱出を目指していたのに、ウェンディゴが暴露したせいで、秘密を守るために優勝狙いに切り替える……なんてことも、あるかもしれない。
(まずは、ジャックのこのゲームでのスタンスを見極めないとな) - 267◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:15:59
今、ウェンディゴが四人チームの一人として行動している。
といっても、意識があるのは二人だけだ。
ネコサンダーとバーストハートは外傷こそ無いが目覚めることはなく、メリィとそれぞれ一人ずつ背負って行動している。
本来なら、誰かと共に行動したりはしない。
一緒にいれば、その分死ぬ確率が高まるからだ。
が、今回はそういうわけにはいかなかった。
①メリィが意識を電子の海に潜らせている間、身体は無防備になるため、誰かが見張りをしなければならない。
②そもそもメリィはバトルが弱く、他2人も意識が無いので、別行動を取るとどっちにしろ死亡率が上昇する。
③やっぱり死にたくないし、一人で行動すると危険。
④同じゲームに参加している以上、一緒にいても別行動でもどのみち同じ。デカい竜とか参加してるっぽいし。
以上の理由から、ウェンディゴはナイトメア★メリィと共に行動している。
情報収集の際には見張り役兼二人の見守り役を務めた。
- 268◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:22:23
情報収集を終えたメリィは深く考え込んでいた。
どこまでの情報を入手したのか。ウェンディゴは問い詰めようとせず、メリィが口を開くのを待っていた。
そうこうしているうちに第二回放送が始まったのだ。
「知り合いは呼ばれた?」
「……一人、呼ばれたのだ。けど……妙なのだ」
くる姉、とメリィは不思議そうに言った。
「……いや、いいのだ。どっちにせよ、終わったことなのだ。それより……」
メリィが口を開きかけたときだった。彼女(※省略)のスマホに着信があった。
「話している間、見張りをお願いするのだ」
「うん、わかった」
誰から? とも訊かない。ウェンディゴにはウェンディゴの人間関係があるように(殆ど死んでいるが)、メリィにもメリィの人間関係があるのだろう。
頼まれた通り、見張りをしていると
「う、うーん」
「…………」
意識を失っていたネコサンダーとバーストハートが目を覚ました。
- 269◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:33:08
覚醒したネコサンダーは飛び起きた。
そして周囲を見渡す。
「ブレイズドラゴンは……?」
「死んだよ」
端的に伝える。ネコサンダーは安心したような、けれどどこか残念そうな顔をした。
ゲームが開始してすぐに、ウェンディゴ、ネコサンダー、ブレイズドラゴンはチームを結成し共に行動していた。
六時間程度の付き合い。ただそれだけの付き合いだが、ネコサンダーはブレイズドラゴンを単純な敵として見れないらしい。
甘い、と見るべきか、魔法少女らしい、と見るべきか。
危機は去ったことを知ったネコサンダーは、きょろきょろと周囲を見渡した。
「先輩……クリックベイト先輩は?」
「死んだよ」
衝撃で、ネコサンダーの身体が硬直した。 - 270◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:33:19
「ごめんね」
と、ウェンディゴは頭を下げる。
「たぶん、私のせいだ。クリックベイトが死んだのも、プアが死んだのも、ブレイズドラゴンが死んだのも、全部私の魔法のせいなんだ」
ごめん、ともう一度頭を下げようとして。
ネコサンダーに、胸倉を強く掴まれた。
「ふざけるな!」
バチバチと放電しながら、ネコサンダーはウェンディゴを睨みつける。
怒るのも無理はない、とウェンディゴは思う。
大切な人を死の運命に巻き込んだのだ。
「いい加減……その中二くさい設定……やめろ!」
「設定じゃない……君の雷が本物であるように、私の魔法も『本物』だ」 - 271◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:43:45
「お前……!」
攻撃される、とウェンディゴは気づいた。
が、避けようとは思わなかった。死ぬことは無い、と知っているからだ。
一緒に居た六時間で、彼女が善良であることは知っている。どれだけ怒っても、人を殺せる少女ではない。
「二人とも落ち着くのだ」
いつ通話を終えたのか、メリィが間に割って入った。
「仲間同士で争っても仕方ないのだ。まずはバーストハートも交えて四人で話し合うのだ」
「あんたもそうよ! のだ、のだってバカみたいなキャラ付けやめろ……ラノベキャラじゃないのよ私たちは!」
「——僕は魔法少女ナイトメア★メリィなのだ」
力強くメリィは断言した。
「こんな状況で素に戻っても、メリットはないのだ。異常なことばっかり起こっている、だったら僕たちもぶっ飛んだキャラでやっていくしかないのだ☆」
そうじゃないと勝てないからな。
と、メリィは言った。
「ネコサンダーは勝ちたくないのだ? こんな殺し合いを強要した運営たちに」
「私は……」
ネコサンダーはウェンディゴから手を離す。
「私だって……負けたくない。このゲームを、黒幕の一人勝ちみたいな、悪趣味なエンドにしたくない……したくないニャ」 - 272◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:49:21
「だったら今は協力しあうのだ☆」
「……悪かったニャ、ウェンディゴ。私、気が動転して……」
「無理もない。大切な人を喪った直後なんだから……私にも、覚えがある」
「うんうん、仲直りも済んだし、情報交換をするのだ」
バーストハートもそれでいいのだ? とメリィはエジプト風の魔法少女に声をかける。
バーストハートは無言でメリィを見下ろした。
そして、口をぱくぱくと動かす。
メリィは首を傾げた。
バーストハートは喉を指差し、口をぱくぱく動かし、口元でばってんを作り。
やがて、苛立たしそうにスマホを取り出し、文字列を三人に見せた。
『声が出ない』
ふざけんなよぼけが、という顔をバーストハートは浮かべた。 - 273◆xaazwm17IRZa24/12/21(土) 21:49:38
投下を終了します
- 274二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:56:35
乙
これで後は山編のメンバーだけかな - 275◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 01:36:02
投下します
- 276◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 01:56:26
ヒャハハハハハハハ、という声が聞こえた……ような気がした。
ミストアイは後ろを振り返る。
学生街の風景が広がっている。
(気のせい?)
「どうしたんだい、ミストアイ?」
「いや、何でもない」
それにしても、とミストアイは学生街の通りを見渡した。
「人、減ってるね」
「無理もないさ。ドラゴンだのロボだの大暴れした後なんだから。
その前からどの学校も臨時休校になっていたしね。
市民の大抵は家に篭るか、市外に避難しているよ」
「ふーん。あれ、でもドラゴンとかロボとか出てきたのならさ。市外から機動隊とか自衛隊とか、後は他市の魔法少女が来るんじゃない?」
「そんなすぐには来られないさ。『呪い』があるからね」
「『呪い』?」
「ああ、君たちに課せられた『呪い』は、実は外部勢力を儀式に介入させない狙いがあって……」 - 277◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 01:56:40
と、明らかに運営側っぽいことを話し始めたアルセーヌ(マスコット)の話に耳を傾けながら、ミストアイは周囲に目を配る。
仮面にローブ、おまけに肩には小人を乗せ、長いステッキを持つ。今のミストアイはめちゃくちゃに目立つ格好をしているが、道行く人々は、もはやミストアイに目をくれない。
というか、道行く人々もどこか狂っている。
「世界の終わりだあああああああああ!」と叫んでいる男。
「宇宙人の救済だわ!」と叫ぶ女。
「これも全部政府の陰謀なんだ!」と力説する老人。
「いまや暴力が支配する時代なんだよ~!」と自販機をバットで殴るモヒカン。
そんな混沌とした状況ではミストアイもまた、コスプレ少女として受け容れられてしまう。
秘匿性を考えたら変身を解くべきだが、これから激化していくであろうデスゲームの中で、無防備な姿を晒したくはなかった。
「とりあえず、モヒカンは撃つか……」
「やめときなよ、魔力の無駄遣いは」
アルセーヌに促され、渋々ステッキを降ろす。
普段のミストアイなら撃っている。 - 278◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:10:20
「うわ、見て部長。
あれ、ナチスのコスプレだよ。しかもモデルガンまで準備してる。
よくやるね。まぁでも、コスプレは悪いことじゃないし、スルーしとこっか」
ミストアイが指差す方向には、悪名高き武装親衛隊の黒衣に身を包んだ男たち。持っているのはマシンガン、中にはロケットランチャーを装備している者までいる。
数十人規模という大所帯で、奇妙な威圧感があった。
「あー……さすがに生きてるのがバレたか」
アルセーヌは肩を竦め。
「逃げるよ、ミストアイ!」
「えっ」
銃撃音が学生街に響いた。
往来で騒いでいた一般人たちは竜やロボとは違う、地に足のついた恐怖に凍りつき、慌ててその場を逃げ出していく。
ミストアイもまた、脚に力を込め、謎のナチス集団から距離を取る。 - 279◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:10:34
「何あれ? 魔法少女? エネミー?」
「うーん、少女ではないし、エネミーかな」
銃火器に追い立てられ、兎のようにミストアイは逃げていく。
親衛隊の男たちの顔に、嗜虐的な笑みが広がった。
いたいけな少女を追いかけまわし、散々弄んで命を奪う。これぞ戦争の醍醐味。
アリアの改造により全身を機械と魔法で埋め尽くされながらも、彼等の獣性は未だ損なわれていない。
アルセーヌの処刑がアリアから下された任務。
だがその過程で自由に虐殺することを許可されている。
市街を逃げ回る少女を兵士たちは追いかけ。
(壁?) - 280◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:13:47
突如街中に出現した土壁に面食らう。
瞬間、数人の親衛隊が爆散した。
「どうした!?」
「さっきのガキ、応戦してきました!」
土癖からステッキの先端を出し、ミストアイは愉快そうに笑う。
「ヒャハ」
「馬鹿な! 奴はミストアイ! こんな魔法は持っていないはずだ!」
上官らしき男が疑問の声をあげる。
ミストアイはあくまで狙撃特化。だからこそ遭遇戦なら一方的に殺せるはずだった。
土壁を作れるなど、聞いていない。 - 281◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:20:07
「向こうも戸惑っているみたいだね」
「うん、それにしても、このトランプ凄いな」
かつて『メンダシウム』と呼ばれた魔法少女がいた。ゲーム序盤にティターニアと死闘を繰り広げ、最終的に千郷、浅悧、メリアの協力(内2名は偶然の産物だが)もあって討伐された。その残留魔力から貴族妖精『アロンダイト』が作ったマジックアイテム。
それが今ミストアイが持っている『メンダシウム・トランプ』。
パンデモニカによって高く売りつけられたこのアイテムは、未だ所有権がアルセーヌにあり。今はそれを、ミストアイに譲渡していた。
「今の私は魔力も空に近くてね。そのトランプを使いこなせないんだ」
メンダシウムの魔法をある程度再現した『メンダシウム・トランプ』は、魔力を込めれば様々な効果を発揮する。
ミストアイが行ったのは、トランプを地面に置き、土壁を創り出した。
狙撃を行うための盾。それさえあれば。
「撃ち合いで、私が負けるはずがない」
- 282◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:25:00
撃つ。魔力の弾を高速で撃ちだす。ただそれだけのシンプルな魔法。
しかし命中すれば、一度に4,5人の親衛隊員をバラバラに爆散させる。
彼等は一人一人が平均的魔法少女に匹敵する実力を持つ。
仮に素手で殴り合えば、変身した状態であってもミストアイは押されるだろう。
だが、遮蔽物を挟んでの撃ち合いであれば、平均的魔法少女はミストアイにとって有象無象に過ぎない。
全知全能を一度殺した魔法少女。
一方的に、親衛隊員はその数を減らしていく。
「土壁の裏から回り込め!」
- 283◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:30:07
上官に指示され、部下たちはその通りに動く。
だが。
「5時の方向」
アルセーヌの言葉に従い、ミストアイは振り返ることなくステッキを向ける。
「ヒャハ」
回り込んだ兵士たちは肉塊へと変わる。
「ヒャハハハ」
ミストアイは笑う。
自分は今、人を殺している——わけがない。
これは、エネミーだ。21世紀、令和に武装したナチスがいるはずもなく。身のこなしだって人間離れしている。
そして、どう見たって少女ではない。
だからエネミーだ。エネミー退治は魔法少女の仕事。
「ヒャハハハハハハハハハ」
狂笑を挙げながら、ミストアイは次々と標的を撃っていく。
- 284◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:30:48
(投下を中断します)
- 285◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:37:35
(投下を再開します)
- 286◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:49:45
「くそ、埒があかん!」
上官は部下に声をかけた。
「かくなる上は仕方ない。『ドミナートル』を出せ!」
「はっ!」
兵士たちは、数人がかりで運んでいた棺を下に降ろす。
「ドミナートルよ、出番だ!
第三帝国への忠誠を示すがいい!」
兵士の言葉に呼応するように、棺は内側からゆっくりと開かれていく。
そして、一人の少女が棺の中から顔を覗かせた。 - 287◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 02:52:07
ドミナートルの素体
dice1d22=15 (15)
1薬師院 怜那/ミョルニル
2夜祖神 髑髏/ドレッドノート
3松崎 新一郎/ハートプリンセス
4ナサリーブラウン
5冨島千秋
6ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス
7王 龍明/ブレイズドラゴン
8麦/ヒートハウンド
9和妻 颯葵/トリックスター
10木羽 マミ/ビリーバー
11ミア/プア
12玉柳 水華/アレヰ・スタア
13裁原 編/パペッタン
14陣内 葉月/ブラックブレイド
15逝凪 素鈴/ワンフロムアウター
16佐々利 こぼね/クリックベイト
17柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド
18らいと/フライフィアー
19七海 真美
20田中 空/スカイウィッチ
21抜刀 金
22山田 浅悧/慈斬
- 288◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 03:01:58
星空のような、美しいドレスの少女だった。ドレスからは影のようなものが滴り落ちているが、濡れているわけではない。
かつて逝凪素鈴という名を持ち、魔法少女名『ワンフロムアウター』の名を持っていた少女。
死者が蘇ったのか。これもナチスの技術の賜物なのか。
「惨いことをするなぁ」
と、アルセーヌは呆れた調子で言った。
棺から現れた少女は、ミストアイの方を向くと——蠱惑的な笑みを浮かべた。
本来のワンフロムアウターなら絶対にしないであろう、妖艶で支配的な笑み。
「あれも、魔法少女?」
「……いいや、エネミーだよ。外見はともかく、中身はね」
「ふぅん」 - 289◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 03:02:37
ズドン、とミストアイは魔力を発射した。
知り合いならば。あるいは山田浅悧やトリックスターならば、まだ躊躇はあったかもしれない。
が、知らない魔法少女で。中身はエネミーだと断言されたのならば。容赦なく引き金を引ける。
だが、ワンフロムアウター……否、ドミナートルの身体は弾けなかった。
魔法陣より出現した触手が、魔力弾を弾いたのだ。
「……ちょっと厄介だね」
「さて、どこまでサルベージされたのか……もし魔力量を。いや、本体まで完全再現されたとなると……」
アルセーヌは困ったように笑った。
「今の『私たち』では絶対に勝てないぞ」 - 290◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 03:02:49
投下を終了します
- 291◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 03:08:58
本日はここまでとさせていただきます……!
いつも感想ありがとうございます、とても励みになってます……! - 292二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 09:36:43
乙
死者の再利用=ゾンビ=ナチスのお家芸 なにもおかしくないな - 293二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 09:47:51
武器人間
サイボーグ
ゾンビ兵
死体の再利用♻️においてナチスは世界一ぃー! - 294二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 14:18:06
あとはサメだな
- 295◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 21:31:15
投下します
- 296◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 21:42:41
絶対に勝てない。
アルセーヌの言葉に、ミストアイは眉を顰めた。
(あれが?)
随分大仰な登場こそしたが、外見はただの魔法少女だ。
死んでも蘇るテンガイ。ビルよりも大きいドラゴン。それらと比べれば、大したことない。
魔弾を撃つ。
やはり、魔法陣から現れる触手に弾かれる。
(弾くってことは、当たりたくないってこと)
テンガイのように当てても倒せない敵ではない。当てさえすれば勝つ。
ぶん、と魔法陣から伸びた触手が土壁に当たる。
途端に、土壁は崩壊した。
(わ、ヤバい)
慌てて退避する。
ナチス軍団の銃撃にも耐えた壁を、一撃で破壊する威力。
(当たれば負けるのはこっちも同じか) - 297◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 21:52:44
「ヒャハ」
と、声が漏れる。
はて、自分はこんな風に笑うキャラだっただろうか。
疑問に思いながらも、ミストアイはドミナートルから距離をとる。
「右からスライムが来てるぞ!」
アルセーヌの声に応じ、即座に札を地面に投げつける。
同じように土壁が現れ、魔法陣から召喚された巨大スライムの攻撃を防ぐ。
しゅうしゅうと溶けていく土壁にぞっとしながらも、ミストアイは更に後方へ逃げる。
どん、という音と共にドミナートルは一瞬でミストアイに肉薄した。
(速っ……!)
驚愕しながらも、半ば反射的に魔弾を発射。
ドミナートルの拳がミストアイに届くより先に、ミストアイの魔弾がドミナートルの額に命中する。
魔力を練っている時間が無かったため、威力はさほど無い。
それでもドミナートルをのけ反らせる程度の威力はある。
(思ったより硬い……召喚だけじゃなく、本人も強いタイプか……)
バックステップで距離をとりながら、ミストアイはドミナートルの評価を上方修正する。 - 298◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 21:58:58
「なるほどね」
と、肩のアルセーヌが言った。
「部長、解説よろしく」
「あれは、このゲームで死んだ魔法少女の身体に、エネミーをぶち込んだものだ。
死んだ魔法少女は召喚士タイプ。ただ、本人の魔力量が尋常じゃ無いから、本体も速くて硬いことになってる」
「ふーん、どうやったら倒せる? それとも逃げた方がいい?」
「スピードは向こうの方が上だ。逃げるのは難しい。倒し方は……」
その方法を聞き、ミストアイは目を丸くした。 - 299◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 22:16:42
「俺達を忘れてもらっちゃ困るな!」
「くたばれJAP!」
獰猛な親衛隊兵士がミストアイに襲いかかる。
ミストアイはステッキを構える。
「馬鹿め、囲んでしまえばスナイパーなど怖くないわ!」
「——散れ」
ステッキの先端から放たれるのは——散弾だった。
全方位に放たれた魔弾が、兵士たちを粉微塵にする。
残骸を薙ぎ払うように、触手の一撃が来る。
「くっ!」
トランプで土壁を作り、僅かな猶予を作る。その隙に攻撃範囲の外へ脱出。
先ほどと同じ展開。
触手をやり過ごすと、スライムが来る。
それに対処すると本体が来る。
- 300◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 22:26:23
(投下を一時中断します)
- 301二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 22:33:11
唯一の科学者ポジだから何でも自分で作ったことにできるアリアちゃん便利すぎる
- 302二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 22:48:24
退場キャラのエドテンで戦闘シーン増やすのいいね。他にもいるのかな?
- 303◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 23:48:03
それらを躱しながら、ミストアイは疑問に思う。
(私って、こんなに動けたっけ?)
趣味は絵画やJ-POP、運動部にも所属していない。
撃ち合いなら負けない自信はあるが、互いに目視できる距離でのバトルでここまで動けることに、違和感を覚える。
(部長がサポートしてくれるから?)
勿論それもある。
攻撃の方向を教えてくれるし、場合によっては次の行動を指示してくれる。
部長から貰ったトランプで土壁を作れる。それによって凌げている面もある。
けど、やっぱりおかしいのだ。
触手の一撃をマトリックスのように上体を逸らして回避しながら、ミストアイは覆う。
以前の自分に、こんな動きは出来なかった。
強いストレスによって、魔法が覚醒した?
それなら狙撃性能が上がるのが自然で、近接戦闘スキルが上がるのはおかしい。 - 304◆xaazwm17IRZa24/12/22(日) 23:49:03
「ヒャハハハハ」
と、無意識のうちに笑い声が漏れる。
これも、やっぱりおかしいのだ。自分はもっと陰気に笑うはずなのだから。
(まぁ、考えるのは後でいいか)
メリィや千郷と合流してから。あるいは、ゲームが終わった後にでも、考えればいいことだ。
「JAP!」
「うるさいですね……」
コンバットナイフで斬りかかって来たナチスエネミーをステッキで撲殺する。
このエネミーは、殺せる。撃てば死ぬし、殴れば死ぬ。
けど、ドミナートルと呼ばれた魔法少女型エネミーはそうはいかない。
触手に当てても意味ないし、スライムはもっと意味が無い。
唯一反応を見せるのは本体に当てたときだが、高密度の魔力を纏っているためか、倒すまでには至らず、精々のけ反らせたり、足を止めるくらいだ。 - 305◆xaazwm17IRZa24/12/23(月) 02:42:21
(千郷みたいにバカ魔力で攻撃してくるタイプじゃないのは良かったけど)
いつもより、いつもとは隔絶して動ける。トランプもあるので実質魔法二つ分だ。
それでも、バトルの展開としてはミストアイが追い詰められ、ドミナートルが攻め続けている。
何度目になるか分からない、ドミナートル本体の肉薄。
予定調和のように、ミストアイは魔弾を撃ち、命中させる。
が、やはり有効打になっていない。
蠱惑的な笑みの中に、残忍な影を滲ませながら、ドミナートルは触手を繰り出そうとして。
ぴたりと、その動きを止めた。
その額には——トランプの札が、張り付いている。
ふぅ、とミストアイは息を吐いた。
「よし、仕留めた」
ドミナートル。魔法少女の死体を操るエネミー。肉体を別種が支配している、とも表現できる。 - 306◆xaazwm17IRZa24/12/23(月) 02:42:57
「だから、メンダシウム・トランプを張りつければ支配を上書きできる」
メンダシウム・トランプ。その効果は、対象者の魂の一部をトランプに込め、張った対象に魂の一部を憑依させるというもの。
使えば使う程、魔力だけでなく魂もまた摩耗していく。
だからミストアイは効かないと分かっても何度も魔弾を当て続け、ドミナートルに躱さなくていい攻撃だと学習させた。
そして、頃合いを見て魔弾と一緒にトランプを射出。ドミナートルに張り付けることに成功したのだ。
ドミナートルの肉体、魔法少女『ワンフロムアウタ―』は今ミストアイに憑依された。
これにより、元々内部で操作していたドミナートル本体は上書きされ、消滅したのだ。
『ワンフロムアウター』はミストアイに使役されるのか。
さすがにそこまで上手くはいかなかった。
「あ、消えていく」
ワンフロムアウターの肉体が、光の粒子へと還っていく。 - 307◆xaazwm17IRZa24/12/23(月) 02:43:24
「やれやれ、本体が出てきたらどうしようか思ったが、杞憂だったみたいだね」
「本体?」
「いや、こっちの話さ」
ドミナートルを倒したことで、ナチスたちも撤退を開始した。
「追撃するか」
その背中に向けて、ミストアイは散弾を発射する。
爆発四散する彼等の全滅を確認すると、ミストアイは何やらすっきりした顔で、メリィとの集合場所に向かうのだった。 - 308◆xaazwm17IRZa24/12/23(月) 02:54:03
- 309二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 07:40:40
アリアちゃんがマジワーカーホリック…
- 310二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 08:09:10
ナチスは史実でオカルトにかぶれてたから何を研究してたことにしてもいいんだよな
- 311二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 09:53:27
後付けするならドミナートルも始まりの魔法少女を再現する実験の過程で生み出された副産物なのかしら
- 312二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 12:11:05
ここまで来ると便利屋のご褒美としてアリアちゃんも破壊された前任者達と同じボスポジの一人としてキャラを盛ってくれると嬉しいぜ
- 313二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 15:32:12
アリアはなんか第三帝国復活の夢が叶ったのにいまだにバトロワ継続に執着してるあたりが謎というか、本質をヘイトスピーチ芸とナチス芸で雲隠れしてる感があるというか
キャラシートの「魔法少女を超えた存在」の願望について勇者とかブレイズドラゴンの過去編とかで示唆はされてるけどあんまり触れてないあたり、なんか重大なことを隠してる感 - 314二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:28:01
初登場時は「なんか思想強い奴いて草」くらいの認識だった奴が突然ラスボス候補tier1に躍り出てきたのほんとおもろい
- 315二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 00:05:14
パラさんは支配魔法頼みの脳筋だったし、アルセーヌは唐突に出てきて唐突に転落人生を歩み始めたし…
で、ヘイトスピーチナチスは多方面に因縁と伏線ばら撒いて、色んな策謀を巡らしてと今んとこ一番ラスボスというか物語の黒幕っぽいことしてるんすよね - 316二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 07:39:44
地力があるって事よね
クレバーと言うか世渡り上手と言うか - 317二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 09:00:50
バーストハートの声、めちゃくちゃな力の反動かそれとも代償か
どれにしても蘇生なんて大それたことの対価としては安いけども - 318二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 13:15:30
生まれながらに種として強者な前二人と違っておそらくは元普通の人間だから立ち回りというか
根回しとかの事前準備が必要なことを理解してたんだろう
前任者達はゴリ押しでなんとかなるというかそれが一番早いまであるし - 319二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 18:08:11
アルセーヌが生存値27で生き延びてるあたり「実は全部アルセーヌの掌の上でしたー!」でアリアを噛ませ犬にしてラスボスに返り咲く感じやろか
まぁどっちにせよアリアにはこの際ボスキャラの一角として思う存分大暴れしてからくたばってくれたら嬉しいもんやで。悪役としては大好きなキャラ造形だし - 320二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 23:45:00
- 321二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 07:51:24
死体の利用もそうだけどオオカワウソが生きてて出会っていたらどうなっていた事か…
- 322二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 11:17:06
逆にナチスが出来なかったことは出来ないというか創作の通り最後は敗れる運命
- 323二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 18:44:54
ナチスの魔法力は世界一だな
- 324二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 23:29:27
ドミナートルは素人ではあったが学習能力やセンスは感じられたな
- 325◆xaazwm17IRZa24/12/25(水) 23:35:21
投下します……!
- 326◆xaazwm17IRZa24/12/25(水) 23:55:45
「このゲーム、破壊できるかもしれないのだ」
VRゴーグルをかけたゴスロリ人形、「ナイトメア★メリィ」の言葉に、ネコサンダーは思わず身を乗り出した。
「破壊って、どういうこと……ニャ」
「『呪い』を解除できるかもしれないのだ」
本当に? 疑念が浮かんだ。実際のところ、ネコサンダーにとってそれは信じがたい話だった。
『呪い』のせいで、強制的に殺し合いを強いられ、外部に助けを求めることも、市外に逃げることもできなかった。そして、『クリックベイト』は命を落としてしまった。
もし『呪い』さえなければ、ネコサンダーはとっくにこの地を離れ、遠くに逃げていたはずだ。殺し合いのような非道なことは、ブレイズドラゴンのような異常者に任せておけばよかった。
「……にわかには信じられないな」
ペストマスクをつけた魔法少女、ウェンディゴも同じように訝しげだった。彼女もまた、ネコサンダーと同じクラスに属しているが、直接の面識はない。ただし、放送を聞いた限り、タイムリミットが残り六時間であることは確かだ。
メリィが伝えた第二回放送の内容を思い出すと、時間が刻一刻と迫っているのを感じる。その間にも、殺し合いの強制は続いており、魔法王への怒りが沸き上がる。しかし、怒りを抱えていても状況は何も変わらないことは分かっていた。
- 327◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:16:01
「僕は三回ダイブしているのだ。
一回目は深夜に。見張り役はクリックベイトとプア。
二回目はブレイズドラゴン戦の時に。
三回目は午前中に。見張り役はウェンディゴに任せたのだ」
「確か、ダイブするとネットの情報を閲覧できるんだっけ……?」
第二回放送の内容を教えてもらう時に、その説明もされた。
「うん、機密情報だろうと他人の預金口座だろうと自由に閲覧、侵入、改竄ができるのだ」
「つっよ」
思わず素の口調に戻ってしまう。 - 328◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:16:15
「三回目のダイブでは、一回目と違って名簿があったのだ。
だから本名、魔法少女名でそれぞれ世界規模で検索が出来たのだ」
「すごい……ってちょっと待てお前!」
さらりととんでもないことを言われたのに気づき、ネコサンダーはメリィに詰め寄る。
「私のプライバシーは!? あ、あんたまさか……私のパソコンの中身とか、購入履歴とか、ラインの記録とかを覗いて……!?」
「そんなのいちいち見ないのだ……時間は有限なのだ」
そ、それもそうか……とネコサンダーは腰を押し付ける。
確かに、市井の民、ネコサンダーの個人情報を把握したところで、ゲームの役にはまるで立たない。
危険な魔法少女の情報や、強力な魔法少女の弱点、そういったものを探るためのダイブだったはずだ。
「話の腰を折ってごめんなさい、続けて、メリィ」
- 329◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:29:54
「了解したのだ。各参加者の名前と魔法少女名を確認したことで、検索の精度が飛躍的に上昇したのだ。
ネコサンダーのコスプレ写真や3話だけ書いて更新が途絶えている小説も発見できたのだ」
「ぎゃああああ!?」
雷撃をメリィにぶつけようとして、バーストハートとウェンディゴに取り押さえられる。
「本題はそこじゃないのだ。僕はとある参加者の個人サイトを発見したのだ。マジックショーの感想や、映画の感想が綴られてる、ただそれだけのサイト。作成者は『トリックスター』。……既に亡くなっているのだ」
「そのページがどうしたの?」
ぐるる……と怒りで喉を鳴らすネコサンダーの代わりなのか、ウェンディゴがメリィに問いかける。
「トリックスターは魔法国の役人……それもかなりのやり手だったようなのだ。彼女はこの殺し合いを予期して、前々から準備を重ねていた」
「準備?」
「殺し合いを破綻させるための準備。トリックスターの個人サイトには、巧妙に隠された隠しページがあったのだ。
そこには、殺し合いによって願いを叶える魔法、『マジカル・マギカ』のことが書いてあったのだ」
「ふざけた魔法だね……」
ウェンディゴの言葉に、取り押さえられたままネコサンダーが頷く。 - 330◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:36:00
「ただ、この魔法はとても繊細なのだ。
あるいは脆いからこそ『願いを叶える』という破格の効果を発揮するかもしれないのだ。
まず、儀式を維持するには莫大な魔力を長期間消費し続ける必要があるのだ。仮にこの場の魔法少女が維持しようとしたら10分も持たないのだ」
「……だから六時間制限なの?」
ネコサンダーの指摘に、メリィは頷いた。
「儀式を維持するはずだった魔法少女が、何らかの理由で辞めてしまった。だから儀式を残り六時間にしたかもしれないのだ」
「け、けど……それって私たちにも不利なんじゃ……」
たった六時間で脱出。普通に考えれば無理だ。プリズンブレイクでももっと時間がかかっていた。 - 331◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:44:49
「儀式を成立しなくさせる方法は他にもあるのだ。
例えば参加者が参加者同士の殺し合い以外の理由で死んだ場合、その割合が一定を超えれば参加者が全滅しても儀式は不成立となり、願望を叶える力は喪われるのだ」
「でもそれだと……私たちはどのみち死んでしまうことになるニャ」
「うん。だから僕らはもう一つの手段を取るのだ」
「もう一つの手段?」
「うん、これはある意味正攻法。最初からリスクとして儀式に組み込まれている仕様なのだ。
舞台となるフィールドには、儀式を維持するための魔法陣が幾つか描かれているのだ。その魔法陣を全て破壊できれば、儀式は未成立……デスゲームは、ご破算になるのだ」
トリックスターはここまで調べ上げていたのだ、とメリィは感嘆の声を上げる。
「じゃ、じゃあ、六時間以内にその魔法陣を壊せれば……もう、殺し合わなくていいんだ!」
ネコサンダーの心は歓喜に包まれていた。
ようやく、光明が見えた。 - 332◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:49:57
「……この広いあにまん市に、魔法陣……。
探すのは不可能じゃないかな」
ウェンディゴの言葉に、メリィは首を振る。
「魔法少女と縁が深い場所、あるいは魔法と関連している場所。そこに魔法陣が描かれている可能性が高いのだ」
「それにしたって、莫大だよ」
「別にこの四人だけで探す必要はないのだ。
他の参加者にも連絡して……いや、ゲームのことさえ隠せば、一般人にも協力してもらえばいいのだ」
十分に間に合うのだ、とメリィは言った。
ネコサンダーにとって、その自信が何よりもありがたかった。 - 333◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:50:10
投下を終了します
- 334◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:50:59
魔法陣の数dice1d6=6 (6)
- 335二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 00:52:28
最大値でくさ
そういえばこれから前作みたいに敵キャラ募集する機会あったりします? - 336二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 00:53:29
間に合いますか…?
- 337◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:55:05
魔法陣の場所dice6d14=7 5 13 4 10 10 (49)
1武器屋
2ナイトクラブ〝Man-Man〟
3あにまん市駅
4ネッカーピン資料館
5アニー・アーマーン邸
6女性専用カフェ「リリィ」
7狂愛の木蔦部屋
8あにまん大橋
9老いた魔法少女工房
10地下研究棟(病院地下)
11掩蔽壕
12偽装貨物船『アニマーレ号』
13あに高地下防空壕
14あに高礼拝堂
- 338◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 00:57:18
魔法陣の場所
狂愛の木蔦部屋
アニー・アーマーン邸
あに高地下防空壕
ネッカーピン資料館
地下研究棟(病院地下)
掩蔽壕 - 339◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 01:01:36
魔法陣の場所
狂愛の木蔦部屋……中心部
アニー・アーマーン邸……南部(歓楽街周辺)
あに高地下防空壕……学生街
ネッカーピン資料館……山岳部
地下研究棟(病院地下)……中心部
掩蔽壕……中心部 - 340二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 01:08:31
地下研究棟にはスピードランサー達に行ってもらう感じかね。解錠のマジックアイテムがおあつらえ向きだし
資料館はそのまま山岳編のメンバー?
学生街のメンバーは戦うどころか動ける状態ですらないから合流必須な上にジャックがうろついてるのが厄介だなぁ - 341二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 01:09:27
中心部に集中してるあたり、いったんそこにだいたいの参加者が集結する流れになるのか?
- 342◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 01:15:20
- 343二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 07:44:11
ここに来て無慈悲な魔法陣最大数ですか…
- 344二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 09:50:23
どのメンバーがどこにいるんだっけ…
- 345二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 16:41:55
西部にいる一応戦闘可能なジャスティスファイアとあんまり消耗してないバルバロイをどこに行かせるか
- 346二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 17:47:25
エリアを超えた新しい組み合わせが見れそうです楽しみ
今まではほぼ固定されちゃってたからな - 347二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 17:49:52
ハスキーロアはブラックブレイド以外にもナサリーブラウンの透視魔法も受け継いでないかしら
スカイウィッチがちろっとだけバルバロイの回想に出てきたから、二人を庇った以外だと魔法を使ってすらないのナサリーブラウンだけになっちゃったのよね - 348二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 18:55:05
ほなお言葉に甘えて…
アリアの部下がモブナチスだけだと寂しんぼなので中ボス魔法少女投げときます。よろしければ好きに殺して下さい
【魔法少女名】ハーゲン
【外見】メカメカしい機械鎧と巨大な大槍を装備したヤバい目つきの女サイボーグ。片方の眼はレーザーサイトのように赤く発光する義眼。
人間に戻れないので変身前は存在しない。
【年齢】96歳(見かけは20代半ば)
【好きなもの】死力を尽くした戦い
【嫌いなもの】アメリカ、イギリス、ソ連
【性格】比類なき暴力性を思うがままに、哄笑しながら発露する外道。
裏表が無く、殺戮欲求に任せて行動する姿は異常者や狂人というより凶暴な爬虫類に近い。
【得意な魔法】
『たくさん魔力を使えるよ』
固有魔法を持たない代わりに、心臓の代わりに埋め込まれたリアクターを魔力炉として稼働させて無尽蔵に近しい魔力を発揮できる。
肉体強化・再生、槍の穂先から魔力の大砲として撃ち出す、ジェット噴射で高速移動などが主な用途。
鎧で隠されたリアクターが無事なら頭部を吹き飛ばされても再生できるが、逆に破壊された場合は問答無用で死ぬ。
【魔法少女になったきっかけ】
作中の約80年前にトート・アリアが「製造」し、80年間も戦い続けた魔法少女。
【詳細】
サイボーグ武装親衛隊の隊長格。アリアの命令に従い、部下を率いるだけの理性はある。
荒々しい槍術の白兵戦を主体として戦う。
【備考】
家族も、故郷も、名前も、元の姿も失ったため「戦うこと」以外のアイデンティティは無い。
名前の元ネタはニーベルンゲンの歌に登場するハーゲン/ハゲネで、タイマンイベントのパラサイトドールとアリアの会話のジークフリートの例え話に合わせた感じで(勇者のプロトタイプや劣化版的な意味合い)
- 349◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 20:53:51
投稿ありがとうございます……!
設定や能力が「中ボス」に相応しい格でいいですね~
以前のパラサイトドールとアリアの会話を引用してくださったのも嬉しいです……!
運営キャラなので90以上でも死んでしまう可能性もありますが、生存ダイスを振らせていただきます……!
ハーゲンdice1d100=53 (53)
- 350◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:11:01
投下します
- 351◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:22:25
魔法少女『ナイトメア★メリィ』は『アルセーヌ』という魔法少女のことをよく知らない。
魔法少女部の部長で、怪盗で、どんな姿にも変身できて、意外とゲームが弱い。
知っていることはそれくらいだ。人間名『星月夜』も、偽名なんじゃないかと疑っている。
実は人間じゃない、とさえ思っている。
魔法少女部に集めた人選も破壊大好き天城千郷だったり、私刑大好きミストアイだったり、魔法少女の正道からズレた、むしろ悪役側の者ばかり揃えている。
胡散臭いし、信用できない。
(まぁ、それはそれとして尊敬してるし、この先も一緒に遊びたいとは思っているんだけど)
どちらも本音。
故にメリィは、『ゲームの破壊方法を発見したこと』を、アルセーヌに伝えていなかった。
言動の節々から、アルセーヌが運営側らしいことは察せられたからだ。
果たしてアルセーヌはデスゲームの主催者になるような人格なのか。
そう訊かれれば三分ほど悩んだ末に、メリィは「YES」と答える。
アルセーヌは、盗賊でも「二十面相」ではなく「黒蜥蜴」のタイプだ。
殺人を忌避するタイプの悪党ではない。
- 352◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:36:22
もっとも、部員たちの前でドン引きするような悪事は一切行っていなかった。
だからこそ、今まで付き合ってこれた部分はある。
(けど、このゲームを破壊することを考えたとき、アルセーヌは味方にできない)
内心なので「のだ」を付けずにメリィは思考する。
(俺らの味方になるか、敵になるか。まるでわかんねぇ)
どちらもありえる。
(これがTRPGとかなら全然付き合うんだけど。残念だからガチだからなぁ。しかもタイムリミット付き。部長には悪いけど、無視して進めさせてもらおう)
必然的にミストアイも戦力にカウントできなくなるが、仲間として今の彼女を戦場に出したくはない。……一か月ほど安静にするべきだ。体力ではなく、メンタルの部分で。
殺人なんて、一般中学生が背負うものでもない。彼女の罪は許されないものかもしれないが、今すぐ償うべきものでもなく、一生かけて背負うべきもののはずだ。
(それは俺も同じなんだけどさ)
- 353◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:36:36
ブレイズドラゴンは、王龍明が本名らしい。くる姉と一緒に何度も通った中華料理屋の店主だ。春巻きが絶品だった。正当防衛とはいえ、彼女の死にメリィは関わっている。
クリックベイトは、メリィたちを逃がして死んだ。もしメリィが居なければ、彼女一人ならば逃げ切れたかもしれない。
プアも、メリィの目の前で死んだ。短い付き合いだが、優しい人柄の人だった。
バーストハートが喋れなくなったのも、自分がブレイズドラゴンを倒してくれと願ったせいだろう。いつになったら治るのか、はたまた一生このままなのか。生き残るためには仕方なかったとはいえ、そのことを考えると罪悪感で息が詰まりそうになる。
このデスゲームに参加していた柩枢は、本当にくる姉だったのだろうか。メリィの知るくる姉は、もう何年も前に亡くなったはずだ。赤の他人、なのだろうか。分からない。 - 354◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:45:30
例えゲームを脱出しても、償いきれない選択。
それを全部背負って、ナイトメア★メリィは前に進まなければならない。
(まずは、魔法陣の場所を探るべきだ。
といっても、当てはあるんだけど)
この街のありとあらゆるカメラは、メリィの眼だ。けれど、「眼」に関しては、もっと適任が居る。
(クレアボヤンスなら、魔法陣の位置を特定できる)
千里眼の魔法少女。
山岳でハイエンドに指を噛み千切られ、その後突然筋骨隆々に変身し、ハイエンドを蹴飛ばして逃走した魔法少女。
彼女に協力を仰げば、特定はスムーズだ。
運営も馬鹿ではない。恐らく魔法陣にはそれぞれ護衛が付いているだろうし、実際の破壊は武闘派の皆さんにお願いするしか無いだろう。
(千郷と一緒にいるヤクザも何とかしないといけないし、くそ、やることが多すぎる)
ひとまず、クレアボヤンスに連絡を取るべきだろう。
——彼女が協力してくれるかは、賭けだが。
メリィは、クレアボヤンスに電話を架けた。
- 355◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 21:45:50
投下を終了します
- 356二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 22:00:26
クレアボヤンスっておクスリで頭おかしくなってなかったっけ…
- 357◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 23:24:21
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- 358◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 23:51:07
——1943年、ベルリン。
金髪の偉丈夫が、暖炉の火を眺めている。
屈強な肉体、怜悧な瞳。眉目秀麗といった形容が相応しい男。
ただ、纏う雰囲気はどこか支配的で、周囲を不安にさせる男だった。
「来ていたのか、パラサイトドール」
研究室から出てきた家主は、談話室に立っている男に気づくと、動揺することなくグラスを取り出し、男へ差し出した。
注がれた酒に男は目を向けると、一息に飲み干す。
高級酒であるにも関わらず、男の顔には快の感情が一切浮かばなかった。
「相変わらず無愛想な奴だね、君は」
呆れた様子で家主はソファに腰かける。
「頭の中は魔法少女への復讐でいっぱいというわけか」
「いつだ」
男は家主を一瞥することなく、低く響く声を発する。 - 359二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 23:51:22
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- 360◆xaazwm17IRZa24/12/26(木) 23:56:43
「いつ、見つかる?」
「アーネンエルベが全力で探している。君の力を十全に発揮できる新たな依代……恐らくアーリア人の少女だと思うが」
「アーリア人以外の可能性もある。我を滅ぼした者は、アーリア人では無かった」
「君のような存在を滅ぼす時点で原始人だからな。もしその少女が優秀なアーリア人であったなら君と取引し契約を結んでいたはずだ。吾輩がそうしたように」
「我はお前たちの野望など、どうでもいい。かつての力を取り戻し、魔法少女に復讐する。それが我の望み。この身体は比較的優秀だが——十全には、まるで足りん」
「それでも人間と比べれば、否、凡百の魔法少女と比較すれば遥かに優秀だよ。君に勝てる魔法少女なんて、第三帝国最強、まぁつまりは世界最強ということだが、あのハーゲンくらいだろうさ」
こぽり、と泡が弾ける音。
パラサイトドールはそちらを一瞥すると、興味を無くしたのか家主に視線を戻した。
「スターリングラードの戦況はどうなっている」
「我が第三帝国が負けるはずがない」
「魔法少女部隊も投入したらしいな」
「ああ。ユーゲントの中に混じっていたからね。ソ連も魔法少女部隊を組織してぶつけてきたが、相手にもならない。勝っているのは数だけ、正しく烏合の衆だ」 - 361◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 00:12:01
「いずれ、我が全て滅ぼす相手だ」
「アカの女たちはともかく、第三帝国の勇敢なる戦士たちは、後回しにしてくれたまえよ」
パラサイトドールは鼻を鳴らす。それを見て家主は肩を竦めた。
再び、こぽりという音が室内に響いた。
「おい」
「何だい」
「部屋の隅に置いてある、それは何だ?」
そう言って、パラサイトドールはフラスコを指差した。
「貴様、何を造っている?」
「——ホムンクルス」
と、家主は言った。
- 362◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 00:12:41
「吾輩の研究をサポートし、吾輩の死後も第三帝国を永遠に支え続ける存在になる者だ。
今はフラスコの中でしか生きられないが、やがて外に出て、第三帝国の威光を世界に知らしめす存在となるだろう!」
「それは——魔法少女、なのか?」
「それを超えた唯一無二の存在になる。
故に吾輩は、このホムンクルスに名前をつけた。
独唱曲。『トート・アリア』」
こぽり、とフラスコの中で泡が弾ける。それは未だ、謳うことなく静かに揺蕩っていた。 - 363◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 00:12:55
投下を終了します
- 364二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 00:20:23
ヘイトスピーチナチス、人間じゃなかった
- 365二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 00:38:51
ホムンクルスなら仕方ないな…仕方ないのか?
- 366二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 07:44:13
フラスコの小人…
- 367二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 13:41:26
まあアーリア人というか純粋な民族なんて現実にはおらず感性の産物だってドゥーチェも言ってたし…
現実に存在しないなら作るしかないか - 368◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 20:49:58
投下します
- 369◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:15:01
——三年前。あにまん市。桐崎家。『香澄の部屋』。
カタカタ、と香澄はキーボードを叩く。
14歳の香澄は、最近チャットに嵌っている。
臆病で気弱な性格のため、中学校では中々友達を作れなかった。
ガラの悪いクラスメイトは苦手だ。明るいクラスメイトも苦手だ。陰気で、性格も良くて、かつ香澄を大切にしてくれる子としか仲良くしたくない。けど、そんな子は居なかった。
運動神経が良いわけでもないのに、すらりと背が高いことも、マイナスに作用した。香澄は目立つのだ。目立つから、欠点がすぐに露呈してしまう。
だから香澄は、チャットルームに入り浸るようになった。
(これは逃げではなく、選択だお。香澄は好きなことだけして生きていくお)
- 370◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:24:12
チャットの中では、香澄はデカ女ではない。臆病で気弱な性格を封印して、ふてぶてしく、賢者のように振る舞える。
様々な部屋を覗くうちに、いつしか二人の友人が出来ていた。
最近はその二人とばかり話している。
ナイナイホテプ【やっぱり、学校に行くのは怖いのら】
クレアボヤンス【学校なんて行かなくていいお。本当に才能がある人は学校に行かなくても成功できるお】
ナイナイホテプ【登下校で車に轢かれたら死んでしまうのら。私はまだ死にたくないのら】
クレアボヤンス【ナイナイホテプはまだ小学生なのに危機意識がしっかりあって偉いお。クレアボヤンスのクラスはそんなこと考えないガキばかりだお】
ナイナイホテプ【けど、私はこの恐怖から解放されたいのら。死ぬのはこわいのら】
クレアボヤンス【それは正常な感覚だお。クレアボヤンスだって死ぬのは怖いお】
キーボードを打ちながら、例えば自分がデスゲームに参加する想像などをしてみる。爆弾付きの首輪を嵌められたり、ワイヤーを持った鬼に追いかけまわされたり。怖がりのクレアボヤンスにとっては考えたくもない光景だ。
(まぁ、そんなこと人生で起こるはずないお)
- 371◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:32:30
未だ魔法少女に覚醒すらしていない14歳の香澄は、そう思ってさっさと妄想を振り払う。
その時、チャットに動きがあった。
岸村文華【おいすー^^】
クレアボヤンス【あ、文たんインしたお!】
ナイナイホテプ【こんばんわ~^^】
クレアボヤンスのもう一人のチャット仲間、ハンドルネーム【岸村文華】がチャットルームに現れたのだ。
岸村文華【またホテプがヘラってるww 大変だねぇ】
ナイナイホテプ【文華さんは悩みとかないのら?】
岸村文華【だって悩むの面倒だし……。あーしは何もしたくないから】
(それはそれで拗らせてる気はするお)
チャット仲間、ナイナイホテプと岸村文華。二人は対称的な性格をしていた。ナイナイホテプは心配性で、病的なまでに死を怖がる。岸村文華は面倒くさがりで、あらゆる物事に執着しない性格だった。 - 372◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:41:21
ナイナイホテプ【例えば枕元に死神が立っていたら、文華さんはどうするのら?】
岸村文華【どうもしなーい】
ナイナイホテプ【じゃあ殺人鬼だったら? 幽霊だったら?】
岸村文華【何もしなーい】
ナイナイホテプ【死ぬのが怖くないのら?】
岸村文華【どーでもいい】
(相変わらず噛み合わない二人だお)
モニターを見ながら香澄は苦笑する。
岸村文華。聞いた名前だ。岸村家のご令嬢。不登校でありながら全国模試で1位。カリスマギャルとして華々しくデビューし、三日後に「飽きた」と電撃引退。
ただ、現実に存在する岸村文華と、チャットルームで駄弁っている【岸村文華】が同一人物だとは思っていない。
知っている人は知っている程度には知名度がある名前なので、ハンドルネームとして使っているのだろう。
【明石家さんま】というハンドルネームを使っているからといって、中身が明石家さんま本人である可能性は限りなく低い。
それと同じことだ。 - 373◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:47:31
(できれば、この二人とずっと友達でいたいお)
香澄の願いは、しかし、叶うことはなかった。
それから1年後、唐突に【岸村文華】はチャットルームに姿を見せなくなる。
そのことで【ナイナイホテプ】とも気まずくなり、話す回数は自然と減少していった。
香澄が魔法少女クレアボヤンスになってからは、【ナイナイホテプ】とチャットすることはなかった。 - 374◆xaazwm17IRZa24/12/27(金) 21:47:42
投下を終了します
- 375二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 21:48:42
麦ちゃんマニアになるのはもう少し後か
- 376二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 01:50:21
お疲れ様ー
- 377二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 09:30:20
ナイナイホテプは参加者なら安全水域だけど運営側だと危険ラインっぽいんだよな…
- 378二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 17:33:06
にゃるおつ
- 379◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 18:56:08
投下します
- 380◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 19:08:59
(なんだか昔のことを思い出したお)
クレアボヤンスは学生街をふらふらと歩いていた。
強化アンプルはすっかり抜けており外見は元通りだが、噛み千切られた指はそのままだ。
断続的に訪れる痛みにクレアボヤンスは涙を流す。
それだけでなく、劇物である強化薬アンプルを摂取したことで、軽い虚脱状態にも陥っていた。
(漁夫の利とか……優勝とか……もう、馬鹿馬鹿しいお)
クレアボヤンスは、出遅れている。
ブレイズドラゴン戦後、しっかりと情報を収集し、殺し合い打破の目途まで立てたナイトメア★メリィと比べ、クレアボヤンスは今さっきまで思考が支離滅裂になっていて、まったく千里眼を使えていなかった。
一緒に行動する仲間も居ない。情報も第一回放送前で止まっている。
(はぁ……どうして殺し合いなんか……)
その時、音楽が聞こえてきた。
ブラスバンドのマーチのような、明るく軽快な音楽。
(な、なんだお……?)
- 381◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 19:09:10
きょろきょろと周囲を窺ったクレアボヤンスは、自分の身に起こった異変に驚愕した。
(指が……治っていくお!?)
欠けていた指が、再生していく。
痛みも退いていく。
(まさか、この音楽の効果なのかお……?)
「あら、あなたも魔法少女ね」
マーチングバンドの衣装に身を包んだ魔法少女が、クレアボヤンスの前に姿を現わす。
「私はメッセンジャー・ブルー。今、辻ヒーラーをしているんだけど、ちょっと協力してくれない?」 - 382◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 19:18:29
◇
「へぇ、そんなことがあったのね」
クレアボヤンスはメッセンジャー・ブルーにこれまでのいきさつを話していた。
最初は【殺し合いを外部に明かしてはならない】というルールから黙秘していたが、メッセンジャー・ブルーが運営から逃げ出してきたことを聞き、じゃあ大丈夫だおと全てを話すことにしたのだ。
十二時間あまりのゲームの中で、クレアボヤンスは仲間を作れなかった。勧誘してくれたクィーンともすぐに離れ離れ(というか強化アンプルで混乱したクレアボヤンスが勝ってに走り去った)になってしまい、はっきり言って話し相手に飢えていたのだ。
うんうんと頷きながらもメッセンジャー・ブルーは演奏を止めない。
「どこへ行くつもりだお?」
「他の参加者。怪我している人も多いだろうし」
「嫌だお! 襲われたら困るお!」
「だからあなたの魔法が使えるんじゃない。近づく相手を千里眼で見れば、危険かそうじゃないか分かるでしょ」
- 383◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 20:59:53
「た、確かにそうだお……」
クレアボヤンスはとりあえず周囲を千里眼でサーチ。
「うん、周囲に魔法少女はいないお」
「そう、じゃあ他の場所へ」
「——追いついたぞ、メッセンジャー・ブルー!」
え!? とクレアボヤンスは振り返る。
そこには——誰もいない。
「あ、フロストハウンド、私たちまだ『透明』のままにゃのら。
——心臓を動かすのら」
「なるほど!」
声だけが聞こえ、次の瞬間には、二人の魔法少女が姿を現わす。
ゲーミングカラーを基調とした、猫耳を生やした魔法少女。
白を基調とした、犬耳の魔法少女。
ナイナイホテプとフロストハウンド。 - 384二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 21:12:09
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- 385◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:12:45
二人は如何にしてクレアボヤンスの千里眼を潜り抜けたのか。
ナイナイホテプの魔法『倒した相手をいなくしちゃうよ』。自分の視界に入った死体を透明にする魔法。
では、死体の定義とは何か。ナイナイホテプはこれを「脳、あるいは心臓が停止している、あるいはそれらを失った者」と仮定。
これにより「心臓を停止させた者」は「死体」と定義され、「透明」の対象となる。
ナイナイホテプとフロストハウンドはトート・アリアの部下である。彼女によって改造も受けている。
通常の魔法少女を超える身体能力。そして、ナイナイホテプの魔法とシナジーさせるための、「肉体の不死身化」。心臓を自由に止められ、仮に心臓を停止、あるいは破壊されても死ぬことは無い。
二人は互いの心臓を止め、「透明」になった状態でメッセンジャー・ブルーを追跡した。
メッセンジャー・ブルーを探し当てた魔法は、フロストハウンドの『落とし物が必ず見つかるよ』。本来は生活を豊かにするタイプの魔法だが、フロストハウンドはメッセンジャー・ブルーを「トート・アリアの所有物」と定義。これによりメッセンジャー・ブルーを広義の落とし物と強引に解釈し、魔法の対象にした。
以上の説明を、当然クレアボヤンスは把握していない。
ただ、自分の千里眼の天敵が現れたことに恐怖し、強化薬アンプルを使うという発想も思い浮かばないまま、硬直するしかなかった。 - 386◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:23:03
「さぁメッセンジャー・ブルー! 私たちと一緒に来なさい!」
「嫌よ。誰を治すかは私が決めるもの」
「駄目、駄目、駄目~! お前が誰を治すか決めるのはアリア様だ!」
「はぁ……あんたのボスは『病人』だけど、治すのは後回しよ」
「はぁ!? マジ不敬なんですけど!?」
舌戦を始めたブルーとフロストハウンドとは対照的に、ナイナイホテプはクレアボヤンスをじっと見つめていた。
「な、なんだお……?」
「クレアボヤンス」
にっこりとナイナイホテプは笑いかける。
「こっち側に付くのら」
「え、意味わかんないお……っていうか、その口調……」
そんな馬鹿な、と思いつつもクレアボヤンスはその名を口にする。
- 387◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:23:21
「ナイナイホテプ……? え、マジかお」
「久しぶりにゃのら。私も魔法少女になったのら。そして……」
さくり、とナイナイホテプは自らの心臓を手刀で刺した。
「アリア様に不死身にして貰えたのら。……もう、怖くないのら」
すぅ、とナイナイホテプが透明になる。
「ど、どこに行ったお!?」
「あ、しまったのら!? ちょっと待って欲しいのら!?」
心臓を破壊したことで一時的に死体扱いになったナイナイホテプは透明になってしまう。
だが、数秒で再び姿を現わした。
「あ、心臓治ったのら。ね、もうナイナイホテプは不死身なのら。
クレアボヤンスも不死身になるといいのら。
そうしたらもう痛い思いもしないのら」 - 388◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:30:51
(そ、そんなこと言われても……)
その「アリア」とは何者なのか。
不死身にしてくれるとか、胡散臭いにもほどがある。
(というか、ブルーを追って来たということは、明らかに運営側の魔法少女。
クレアボヤンスに殺し合いを強要した側だお)
じゃあ絶対信用できないじゃん、とクレアボヤンスは結論づける。
(ナイナイホテプは騙されてるお……ど、どうすれば、助けて麦チャン!)
イマジナリー麦「仲間になるフリをして近づき、隙を見てアリアなる人物を燃やしてしまえば?」
(さすが、麦ちゃん! 冴えてるお! け、けど、クレアボヤンスにはそんな勇気はないお)
イマジナリー岸村文華「面倒だし、流されちゃえば~」
(一般ネット廃人は黙ってるお!)
汗をかきながら考え込むクレアボヤンスを、ナイナイホテプは心配そうに様子を窺う。 - 389◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:41:23
「ちょっとナイナイホテプ! こっち来て手伝ってよ! 私の出世に関わるんだから!」
クレアボヤンスが目を向ければ、メッセンジャー・ブルーがフロストハウンドに取り押さえられていた。
メッセンジャー・ブルーの魔法は破格だが、戦闘力はそう高いわけではない。通常の魔法少女を上回る身体能力を手に入れたフロストハウンドに掴みかかられれば成す術もなく拘束されてしまう。
「クレアボヤンスも連れて行きたいのら」
「はぁ? そいつ、このゲームで何もしてない奴でしょ? アリア様の役に立つのかしら?」
(何様だお……)
クレアボヤンスだって必死に生き抜いてきたのだ。千里眼を駆使して安全な場所を探し、一生懸命情報を集め、推しが死に、殺し屋に拷問を受けたりもした。
自分たちの殺し合いをポテチでも齧りながら観てたであろう(クレアボヤンスの偏見)運営側に、偉そうな品評をされたくなかった。
「クレアボヤンスはナイナイホテプの友達なのら! 悪く言わないで欲しいのら」
「友達? そんなもの、出世には不要よ! ナイナイホテプもシゴデキ魔法少女になりたいなら、友情なんて非現実的な概念は早く捨てなさい! ぺっ、しなさい、ぺっ!」
「いや、人との繋がりはメンタルをケアする上でとても大切なものよ」
「お前は口を挟むな!」
フロストハウンドはメッセンジャー・ブルーの額を殴る。流血が飛ぶ。
ひっ、とクレアボヤンスは顔を逸らした。 - 390◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:52:17
(いったい、クレアボヤンスはどうすれば……)
ブルーを助けるべきか。指を治し、身の上話を聞いてくれた人だ。恩義はある。アンプルを使えば、取り戻せるだろうか。
(けど、あれは使いたくないお……)
以前使ったときは極度の混乱状態に陥ってしまった。
使えば使う度に精神が蝕まれる。きっとドラッグみたいなものなのだろう。
(逃げるべきかお……)
フロストハウンドの方はクレアボヤンスは眼中にないようだ。きっと逃げても追撃されない。
だが、ナイナイホテプは心配だ。友達として、危ない奴らとは縁を切ってほしい。
(ナイナイホテプについていく……? それも危険だお……)
ローブの上から頭を掻きむしり、クレアボヤンスは呻く。
最適解が分からない。決断ができない。
アンプルの影響がまだ抜けていないのか。あるいは、生来の気質か。
だが「長考」が出来る程——殺し合いは甘くない。
- 391◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 21:52:31
ぶぅん、とエンジン音が鳴った。
(え……?)
メッセンジャー・ブルーと、フロストハウンドの首が宙を舞っている。
もし、クレアボヤンスは百戦錬磨の強者であったならば、千里眼で気づけたのだろう。
だが、状況に困惑しいっぱいいっぱいになっていた彼女は、それの接近に気づかなかった。
くぐもった呼吸音が、マスク越しに響く。
チェーンソーを持ったホッケーマスクの怪人が、そこには居た。
舞っていた生首は重力に従い、落下する。
既に、二人の眼に光は無かった。
首を切断されて生きていられる魔法少女など——もう、この世界には居ないのだから。
【メッセンジャー・ブルー 死亡】
【フロストハウンド 死亡】 - 392◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 23:00:05
「え……嘘……どうして、私たち、不死身になったんじゃ……」
ナイナイホテプは自分と同じ改造をされたはずの、フロストハウンドの死に動揺し、身体を震わせた。
クレアボヤンスもまた、チェーンソーを装備した怪人の出現、そして恩を感じていたメッセンジャー・ブルーの死に硬直してしまう。
呼吸音が、ホッケーマスクから漏れる。
ぶつぶつと何事か呟いているが、クレアボヤンスには聞き取れなかった。
(あ……やばい……逃げないと……死ぬお……)
魔法少女の武器として、チェーンソーはあまりに物騒だった。
立ち向かおうという気力を根こそぎ刈り取ってしまう。
チェーンソーの刃先が、クレアボヤンスに向く。
どうして自分が先に狙われるのか。
大きいからだろうか。目立つから。目立ちたいわけではないのに。
(嫌だお……死にたくないお……) - 393◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 23:00:19
「うわあああああああああああああああっ!」
悲鳴をあげたのは、ナイナイホテプだった。
彼女は悲鳴をあげながら——ハニーハントに体当たりした。
「逃げてええええええええええええええええっ!」
ナイナイホテプは、普通の魔法少女よりフィジカルを強化されている。
場合によっては生身の魔法少女にも押されるハニーハントのフィジカルでは、容易く吹き飛ばされ——。
「うっ!」
ハニーハントは、ぐらつかない。
ブレイズドラゴンと戦闘していた時より——フィジカルが向上している。
刃が振り下ろされる。
袈裟切りに斬られ、ナイナイホテプは崩れ落ちる。
——透明になる。
「!?」
- 394◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 23:00:54
ハニーハントは見失う。
その後頭部を、ナイナイホテプは殴りつける。
不死身に改造されたナイナイホテプはこの程度のダメージならば、まだ死なない。
「クレアボヤンス、早く逃げて!」
「で、でも……!」
「早く!」
一緒に戦う。魔法少女なら、友達なら、そうするべきだ。
けれどクレアボヤンスには、勇気が無かった。
「ごめん、ごめんお……!」
背を向け、逃亡する。
エンジン音が聞こえる。まだナイナイホテプは戦っている。
(誰か……誰かに助けを求めるお……あの怪人を倒してくれる誰かお……!)
逃げる言い訳を唱えながら、クレアボヤンスは必死に足を動かすのだった。
【ナイナイホテプ/内藤 撤華 死亡】 - 395◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 23:01:10
投下を終了します
- 396二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 23:04:05
アリアちゃんマジで何でもできるな…ドラえもんかな?
- 397二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 23:07:17
アリえもーん!
- 398◆xaazwm17IRZa24/12/28(土) 23:43:07
投下します
- 399◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 00:02:06
『遺言医院』では、銃撃戦が展開されていた。
攻めるはナチス親衛隊。魔法と機械のハイブリット。蘇った第三帝国の尖兵たち。その数は百を超える。
迎え撃つはジャパニーズ・ヤクザ。魔法少女。その数は——たった一人。
糧鮴のヤクザたちは、オオカワウソの襲撃によって壊滅している。
偶々糧鮴を後にしていた残党も。
(来なかったね~)
デッドマンズ・ハンドは招集をかけたが、誰一人集まらなかった。
主力は皆殺しにされているので仕方ない、と見ることはできるが。
(やっぱり金の力は限界があるよね~)
自身の生命より金を取る人間は、そう多くない。
ヤクザたちは、デッドマンズ・ハンドがもたらす利益よりも、自己保身を選んだ。
(いいよ。おいちゃんにはのぞみちゃんがいるし~)
- 400◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 00:02:32
と、そんなことを徒然と考えながら、デッドマンズ・ハンドは踊っている。
死の踊りだ。縦横無尽に動き回りながら、弾丸をばら撒いていく。
何しろ自分は一人で、敵は大勢だ。
同行者は全てのぞみの防衛に回している。気兼ねなく戦える。
ナチスたちは様々な銃火器を駆使して、デッドマンズ・ハンドを殺しにかかる。
デッドマンズ・ハンドの武器はリボルバー。一方相手はショットガンに、マシンガンに、機関銃に、火炎放射器。
装備では圧倒的に負けている。
だが、それらの攻撃はデッドマンズ・ハンドに当たらない。
「あはは、おいちゃんはね、魔法少女なんだよ~」
笑いながらデッドマンズ・ハンドは攻撃を掻い潜っていく。
「魔法少女(しゅやく)に、エネミー(ざこてき)の弾が当たるわけないでしょ~」
「舐めるな、JAP!」 - 401◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 00:11:53
激昂したナチスの一人が隊列を乱し、手榴弾を投げつけようとする。
「はい、馬鹿発見~」
すかさず手榴弾を撃ち抜く。
味方を巻き込んで爆発。
「うーん、おいちゃんは当時を知らないから断言はしかねるけどさ~」
まだ若いからね、と念押しし。
「君たち、戦場行ったことないでしょ?」
嘲笑と共に言葉の弾丸を撃つ。
「昔傭兵と組んだことあるけど、もっと洗練された動きしてたよ~。君たちはさ~、ただ武器持ったチンピラじゃん」
「黙れ! 栄光なる第三帝国を愚弄すると許さんぞ!」
「我らはスターリングラードを戦い抜いた、百戦錬磨の古強者」
「世界を恐怖に陥れた、世界最強にして最も偉大なる戦士なのだ!」
「口だけは立派だね~」
- 402◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 00:23:07
火炎放射器を持ちだされる。撃ち抜く。暴発する。一気にキルスコアが3増える。
「うーん、これはどっちなんだろうね~。
本物だけど、強くなったことで劣化したのか。
それとも偽物なのか」
まぁ、どっちでもいいか、とデッドマンズ・ハンドはナチス兵士の頭を撃ち抜いていく。
「どの道皆殺しだからね~」
マシーネン・コマンダンテは、一人一人が平均的な魔法少女を圧倒するスペックを有する。
即ち、一人一人が超人。
「何故我らがこうも圧倒される! 肉体スペックでは我らが上のはずだ!」
「経験も! 装備も! 肉体性能も! 全て我らが圧倒しているはず」
「ん~、やっぱり分かってないな~」
苦笑しながらも、デッドマンズ・ハンドは撃つ。
必中の弾丸を、使うまでもない。
「軍服とか、兵器とか、改造とか。そういう現実で、空想に勝てるわけないんだよ~」
リボルバーを撃ちながら、自嘲するようにデッドマンズ・ハンドは笑う。
「魔法少女は、最高なんだから」 - 403◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 01:10:18
(中途半端ですが、本日の投下はここまでとさせていただきます)
- 404二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 08:45:52
このスレにおける"魔法少女"の概念、どうもステレオタイプな魔法少女像よりもニンジャ(忍殺)に例えた方がしっくりきそうなんだよな
- 405二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 12:46:17
そういやハニーハントも乗ってるというかクィーン以外殺す方針だった…
- 406◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 15:04:41
投下します
- 407◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 15:26:44
(と、煽りつつ……)
ナチスを虐殺しながらデッドマンズ・ハンドは思考する。
(こいつらはのぞみちゃんかおいちゃんを殺しに来てるはず。
だったらこの程度の軍勢で来るはずが無い)
ビルの裏手から爆発音が響く。
(やっぱりね~)
向かおうとするが、ナチスが立ちはだかる。
撃つ、撃つ、撃つ。
デッドマンズ・ハンドの弾丸は魔力消費は軽い。リボルバーを撃ち切ったところで殆ど疲労を感じない。
だが、決して無限リロードというわけではない。
(此処にいるナチスは問題なく皆殺しにできる。
けど、それが二倍、三倍……四倍くらいになるとちょっと怪しいかも)
おいちゃん喧嘩弱いからな~と敵の頭を柘榴にしながら思う。
(のぞみちゃんなら大丈夫とは思うけど、ああああ、ちゃんと守れよ~)
もし役目を果たせないならお仕置きをしなければいけない。
- 408◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 15:26:56
糧鮴のヤクザを飴(金)と鞭(死)で統治した魔法少女は、側方から攻めるナチスの額を撃ち抜き。
「っ!?」
その場を飛び退いた。
次の瞬間、デッドマンズ・ハンドが足場にしていた場所に亀裂が走り、砕ける。
「……へぇ、真打登場ってことかな~」
「なんだその西部劇のガンマンのような恰好は? 白人コンプレックスか?」
白衣を靡かせ、武装親衛隊将校服に身を包んだ魔法少女が姿を現わす。
「滑稽な奴だな。原始人は石でも投げてろ」
「君こそ可愛い恰好だね。ドンキホーテで買ったの?」
糧鮴ヤクザの顔役、デッドマンズ・ハンド。
ナチス残党を率いる大総統、トート・アリア。
悪の親玉二人が対面した瞬間だった。 - 409◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:07:06
◇
ビルの裏手から回り込んだナチス親衛隊の部隊は、銃火器を用いて窓に弾丸をぶち込む。
「撃て! 撃て! 撃て!」
「このビルの戦力はデッドマンズただ一人だと確認が取れている!」
「もはや戦える戦力は残っていない!」
「爆弾を投げ込め! ティターニアを始末するのだ!」
学生街に銃撃音と爆発音が響く。
もはやこれは殺し合いではなく、戦争の様相を示していた。
学生街の住民たちは異常事態に怯え、家に閉じ籠る。
警察に通報する者も居た。だが、あにまん市の警察署はオオカワウソによって既に襲撃済みである。
隣町からの応援は駆けつけない。駆けつけたところで、特殊部隊程度では、魔法と機械のハイブリッドで超人となったナチス兵士には敵わない。 - 410◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:10:19
「さぁ、進軍だ! 魔法少女を蹂躙しろ!」
雄叫びと共に、屈強な男たちはビルの中に進もうとする。
その頭に、白刃が突き刺さった。
「な、誰だ!」
「増援か!」
兵士たちは慌てて周囲を警戒する。
「居たぞ! 上だ!」
「飛んでいる! 飛んでいるぞ!」
上空に、二人の少女がいる。
正確には、少女を模した機械(マジックアイテム)と、それに背負われる殺人鬼。
「あの姿は、ジャック・ザ・リッパー!」
「ティターニアの弟子か!」
「ふん、師匠を助けに来たというわけだな」 - 411◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:27:57
男たちを、ジャックは見下ろし、憂鬱げに息を吐く。
「殺したくないなぁ……」
慈悲深い少女の台詞にも聞こえるが、ジャックが使う場合「殺したくない」は「生理的に無理」とか「キモい」と同義である。
「いい歳してナチスのコスプレとか、恥ずかしくないの……?」
もしこの場にウェンディゴが居れば
「いい歳して実在の殺人鬼を名乗る君も同類だろ」
とツッコミを入れるだろうがインテリジェンスウェポンは所有者の願望に応える性質があるため
「そうだね、ジャックお姉ちゃん!」
と、全肯定した。 - 412◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:28:21
「けどまぁ、持ってる武器は魅力的か……」
銃火器は好みではない。ナイフで加工する方が好きだ。が、ナイフだけで優勝できるほどこのゲームは甘くないと、それくらいは分かる。
先ほど手に入れた魔剣も、扱うだけで一苦労だ。支配下には置いたが、悪意すら感じるほど魔力を異常に消費させてくる。おいそれと使えるものではない。
「うう……真美ちゃんに会うためだもん、我慢しないと……」
顔を顰めながら、ジャックはインテリジェンスウェポンから飛び降りる。
「馬鹿め、蜂の巣にしてやる!」
落下するジャックに向け、兵士たちは銃撃する。
落下中は自由に動けない。——それは、人間の世界の話。
ジャックに向かって放たれた弾丸は、ジャックに当たる前に、黒い靄のようなものに絡めとられる。
「そんな遅い武器じゃ、私を傷つけられないわよ」
分かり切ったことを言わせるなとでも言いたげな表情で、ジャックは兵士たちを見据える。
「せめてこれくらい速くないと」
- 413◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:56:03
瞬間、黒い靄からジャックに向けて放たれたのと同じ数だけ、弾丸が発射された。
だが、その速度は三倍増しになっており、撃った男たちを蜂の巣にする。
速度だけでなく、威力もまた上昇していた。
掠るだけで魔法少女に匹敵する兵士たちの肉体が削がれ、千切れ、破壊されていく。
ジャックが足を地面につけたとき、百名近くいた兵士は半分ほどになっていた。
「ふーん、機関銃、火炎放射器、うわ、ロケットランチャーまである」
殺意を滾らせる兵士たちを見回しながら、ジャックは品定めをする。
持っている男たちは論外なので思考にも登っていない。ただ、所持している武器だけが興味の対象だ。
「……ティターニアにはどれを試そうかしら」
既に、それらの武器はジャックのものとしてカウントされていた。 - 414◆xaazwm17IRZa24/12/29(日) 16:56:19
投下を終了します
- 415二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 21:16:16
今のティターニアなら問題なく撃破出来そうだけどはたして
- 416二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 21:22:39
蟹死にそう
蟹の刺身になっちゃう - 417二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:50:43
蟹はお寿司が好き
- 418二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 07:46:32
蟹の刺身ナチスを添えて
- 419二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 12:08:11
せめて仮死(カニカマ)で勘弁してもらえないか…
- 420二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 12:21:15
ってか言動的に運営、ジャックの性癖把握してなかった説でてるか…?
- 421二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 20:38:11
たしカニ
- 422◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 22:26:12
投下します
- 423◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 22:33:53
ハーゲンは、懐かしい臭いを嗅いだ。
血と、油の臭い。かつて戦場で慣れ親しんだ臭い。
(生ぬるい時代の、生ぬるい国で、この臭いを嗅ぐことになるとは)
独ソ戦という名の地獄を、かつてハーゲンは駆け抜けた。第三帝国最強の魔法少女として、ソ連の魔法少女部隊と鎬を削った。
数では向こうが勝っていたが、質では第三帝国の圧勝だった。一騎当千のハーゲンに適う魔法少女など、ソ連には居なかったのだ。
そして今、ハーゲンは令和の時代に、日本に立っている。
あの時代に、あの場所で、ハーゲンに勝てる者など居なかった。
この時代に、この国で、ハーゲンに勝てる者は居るのだろうか。
(——こいつならば)
地獄が、広がっている。 - 424◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 22:53:18
ハーゲンの眼前に展開するのは、「杭」だ。
先端を上へ向けられた杭が、道を埋め尽くすように広がっている。
杭には、突き刺さっている物がある。
人型だ。屈強な男の姿をしている。そして、ナチスの隊服を纏っている。それぞれが近代的な銃火器を武装している。
血と、油の臭い。
魔法と機械のハイブリットで超人となり、今、串刺しで死に絶えた男たちから漏れる臭いだ。
ティターニアを確保するために迫った第一部隊は、デッドマンズ・ハンドと銃撃戦を繰り広げた。
逆方向から攻めた第二部隊は、ジャック・ザ・リッパーと遭遇戦に陥った。
更に違う方向から攻めた伏兵、第三部隊は——戦闘にすらならなかった。
兵士たちがその「赤」を認識し、銃口を向けた時には、全てが終わっていた。
- 425◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 22:53:31
一瞬で展開した槍が、男たちを下から貫き、瞬時に絶命させた。
第三部隊は全滅した。ハーゲンを除いて。
「——素晴らしいぞ、スピードランサー。俺の名はハーゲン! 貴様に俺への挑戦権を与えてやろう!」
槍の穂先を向ける。スピードランサーは、無手だ。
だが、その立ち姿だけで、彼女が魔法性能に依存するタイプではなく、積み重ねた武を備えていることも理解させる。
「さぁ、戦争を始めよう!」
戦意を滾らせ、地を蹴る。
射出される槍を弾きながら、哄笑が、ハーゲンから溢れた。 - 426◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 23:10:44
◇
風切音が走る。
生存本能に身を任せて、デッドマンズ・ハンドはその場を飛び退いた。ほぼ同時に、デッドマンズ・ハンドが立っていた場所が、不可視の何かでズタズタに切り裂かれる。
避けながらも、デッドマンズ・ハンドは銃弾を撃つ。
ナチス兵士を虐殺した弾丸は、しかし標的に当たることなく、二つに切断され落下する。
「無駄だ。猿ではヒトに勝てんよ」
「あはは、ヒトより猿の方が普通に強いよ~。 握力とか筋力とか」
「勝敗の基準が猿のそれだな」
(うーん、これはちょっと勝てないな)
舌戦を展開しながらも、デッドマンズ・ハンドは撃つ。磨き抜かれた早打ちで送り込まれる弾丸を、アリアは眉一つ動かすことなく対応している。
実はトート・アリアは『天上』で、格下の攻撃は一切通用しないのだ……ということなら、デッドマンズ・ハンドはまだ納得できる。
だが、今アリアがやっていることはそういうズル、インチキ、チートではなく。純然たる戦闘技術によるものだと、デッドマンズ・ハンドは理解させられてしまった。
(見えない刃の正体は……アスファルトに刻まれた跡から、剣や鞭ではなく糸、ワイヤーの類だね)
それを超反応・超精密・超高速で操っている。
(うーん、魔法性能も練度も、おいちゃんは負けてるな~)
- 427◆xaazwm17IRZa24/12/30(月) 23:11:13
(一旦投下を中断します)
- 428二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:16:49
スピードランサーって読み返すと一巡目が洗脳状態、二巡目が導入で終わりで、ティターニアやブレイズドラゴンみたいに他人の回想で出てくる訳でもないから、リアルタイムで一年以上マトモな出番が無いまま最終回を迎えたのか……
最終回では登場シーン盛ってもらえるといいね…… - 429二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:19:44
もしかしてナチス軍団の方が死ぬのかこれ?
参加者あんまり殺しちゃダメなのにわざわざ蟹だけじゃなくて戦闘不能状態のティターニアを狙う理由が分からんけども - 430二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:39:18
アリアちゃんは相性が良い相手なら詰ませるくらいの魔法性能はあるみたいね
安易に踏み込めばズタズタになるワイヤーの結界を張り巡らせることで敵を自分の得意距離に誘い込んで切り刻むのが本領かな?
逆にワイヤーを容易く切ってしまえるオートクチュールは天敵中の天敵だったのね - 431二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 00:40:34
ナサリーとか空ちゃんとかもっと活躍シーン少ないキャラが多いなかでスピードランサーだけ毎回不遇扱いされるのはちょっと違和感
同じ生存キャラでもクレアボヤンスとかウェンディゴの方が活躍シーン少ないし
洗脳が不遇というならハートプリンセスの方が悲惨だし - 432◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 01:14:27
投下します
- 433二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 01:17:27
ハスキーロアなんかゲーム開始してからちょろっと出てきただけで後は最終回まで寝てただけだしなっ
クレアボヤンスやウェンディゴも一巡目、二巡目で長尺のシーン貰えたティターニア、千郷、ハニーハントあたりと比べると酷え差だ - 434◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 01:32:52
それでも凌げているのは、デッドマンズ・ハンドもまた、歴戦の魔法少女だからだ。
こちらに向かって放たれるワイヤーを避け、掻い潜り、弾丸を当てに行く。
だが、縦横無尽に動き回るデッドマンズ・ハンドを見下すように、トート・アリアはその場を一歩も動かない。
動かぬまま、ワイヤーを動かし、デッドマンズ・ハンドの弾丸を捌いていく。
紛れもなく、トート・アリアは強者。それを実感したからこそ、デッドマンズ・ハンドは笑った。
「そんなに強いのに、君は何を怖がっているのかな~」
「怖がる? 吾輩に怖いものなどない」
「嘘つき。怖いんでしょ——ティターニアの復活が」
だからこれだけの兵隊を動員し、瀕死のティターニアを殺しにかかっている。
トート・アリアも分かっているのだ。ティターニアはここから必ず復活し、全ての悪を滅ぼすと。絶対的な正義、全ての魔法少女の希望として、最強伝説を築くと。
「ティターニアがゲームに参加した時点で、君もおいちゃんみたいに対運営に切り替えるべきだったんだよ~。
ギャンブルに負けたのさ。それを今更ひっくり返そうたって、もう遅いよ~」
「——驚いたな」
トート・アリアは目を見開いた。
彼女がデッドマンズ・ハンドを見る目には、今までにない確かな敬意があった。 - 435◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 02:02:44
「吾輩は生まれて初めて、劣等人種を尊敬している。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ……。
まさかアジアの猿に、ここまで『ユーモア』のセンスがあったなんて……。
くそっ、認めよう……お前は吾輩より勝っている……コメディアンとして……」
本気で悔しがっているアリアを、デッドマンズ・ハンドは唖然とした顔で見た。
裏社会で生きてきた。罵倒や侮辱、挑発は慣れ親しんだものだ。
だが、このような態度を取られたことは初めての経験だった。
「……どういう意味?」
喉から低い声が漏れる。
デッドマンズ・ハンドは世界の真実を伝えたのだ。
それをトート・アリアも理解しているからこそ、今こうして相対しているはずなのだ。
ならばアリアの行動は、図星を突かれたことによる焦りであるはずなのに。
「ティターニアを始末するために来た、か。
ぐぬぬ……よくぞここまで爆笑フレーズを生み出したものよ」
「だから、どういう意味かって、聞いてんだよッ!」
怒声と共に放たれた弾丸を、アリアに触れることなく切断される。
アリアは無造作にビルへ、【遺言医院】へ視線を送った。
「ふむ……ああ、着想は吾輩の部下か。
そうだな、ティターニアさえ手に入ったなら、こいつらの何割かは勇者の経験値にするつもりだったからな。
それを悟らせないために、あえて『ティターニアを始末しろ』と命令しておいた。
それをまさか利用するとは……恐るべし……」 - 436◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 02:20:19
「……なるほど……。なるほど、ね~。おいちゃん読み違えてたよ! のぞみちゃんを殺したいんじゃなくて、のぞみちゃんを生け捕りにしたいわけね。確かにアグネアみたいに人形状態にすればそっちからすれば大戦力だもんね~。
舞矢ちゃんとでもぶつけるつもりかな。それともいつか『始まりの魔法少女』とやらとぶつけるため。テンガイなんかも油断できないもんね~。
けど、駄目駄目。のぞみちゃんが君たちのものになるわけないじゃん。まだ分からないの? のぞみちゃんはね、この世界の絶対的主人公で、全ての魔法少女の希望なの。どれだけ強い相手でも、光の力でやっつけちゃうの。
弱った隙に手駒にしようなんて、浅はかなのはフィクションの世界だけにしときなよ、ナチスちゃん」
「ん? いや、吾輩は死体の回収に来ただけだぞ」
人間態で死ぬパターンは貴重だからな、とアリアは何てことのない風に言った。
「…………………………………………は?」
「オートクチュールは強さの比重に経験則が大きい故に、素体として不適切だった。
だが、ティターニアの魔法は、大いに有用できる。ドミナートルを寄生させてもよし、サイボーグにしてもよし。魔力の残滓から肉体を構成する場合と違って、肉体がそのまま残っているとスペックに大きな違いが出るのだよ」
「何を、言って……」
「吾輩たちは、死体を回収に来たのだ」
と、アリアは断言した。
「第二回放送の直後に事切れたティターニアの死体をな」
- 437◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 02:20:48
投下を中断します
- 438二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 03:58:03
- 439二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 04:08:51
部下のモブナチスがバカスカ死にまくってるせいかミ…ミーにはリターンが見合ってないように見える
それとも実はそこらへんの人間を攫ってナチス化してるだけなのか? - 440二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 05:54:43
デッドマンズハンドが早口で捲し立てるシーンが逆裁やダンロンの発狂シーンみたいで好き
勇者は既にティターニアとテンガイとブレイズドラゴンの魔法が使えるみたいだけど、経験値とはどういう仕組みなんだろうか - 441二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 10:10:54
ナチスお手製ヤクザ蟹の切り身〜ヘイトスピーチを添えて〜
- 442二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 10:11:02
- 443二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 10:16:32
弱い駒はまた作れるだろう たぶん
- 444二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 16:25:35
化けの皮が剥がれ始めた蟹かわいい
もっと曇ってほしいぜ - 445◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 18:10:20
- 446◆xaazwm17IRZa24/12/31(火) 18:15:33
皆様のキャラの使用権が私にだけあるのも変な話ですし、もし『番外編SS』などを投下していただけたのならwikiに収録します……!
過度なエログロ、ヘイトSSで無ければロワのIF展開、過去編、学パロ等自由に投下してください
一人称や魔法の解釈、人間関係も自由に設定してもらって大丈夫です
ただ、番外編の独自設定は本編には基本的に反映されないことはご了承ください。
(後から本編に反映させる可能性はあるかもです) - 447二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 18:37:16
ウェンディゴとかどこをどう考えても創作だと扱いづらい能力じゃからなぁ
そういえば魔法国が過去編だと一貫してクソカス扱いだけど現代の魔法王アグネアは良い人なの? 悪い人なの? どっちも死んじゃったけど - 448二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 21:34:29
- 449二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 01:24:32
あけおめ
- 450二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 10:05:18
才能に左右されないシンプルに強力な魔法を素体にすると…確かに尖ってるステータスしてる方が編成する上で運用し易いしな
- 451二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 17:06:47
- 452二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:51:09
デッドマンズハンドと比較しコメディアンとして敗北してるって、自分の芸風がカモフラを兼ねているのを明かしてるって事なんだよね。未だ底が見えず…
- 453二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 08:22:36
保守
- 454二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 16:50:37
このレスは削除されています
- 455◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:06:01
あけましておめでとうございます。今年も当企画をよろしくお願いします。
短いですが、続きを投下します。 - 456◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:07:49
世界がクラクラと揺れている。
そんなはずはないのだ。
ティターニアが、のぞみちゃんが、もう死んでいる。
そんなことはないのだ。
主人公は死なない。
あの時も、あの時も、あの時も。ティターニアは逆境を跳ね返して勝ってきた。
だから、きっとこれはおいちゃんを動揺させるための嘘に過ぎなくて——。
——攻撃が来る。
避ける。足が重い。
おいちゃんの右腕が宙を舞う。避け切れなかった。
だって、仕方ないでしょ。おいちゃんは騙されたんだから。
でも、これはきっと罰だ。のぞみちゃんを、ティターニアを信じきれなかった罰。
だったら甘んじて受け入れないと。
受け入れたうえで、このナチス女を殺さないと。
ナチス女は仏頂面でこっちを見ている。でもおいちゃん知ってるよ。心の中では勝ち誇っているんでしょ。
おいちゃんが魔法少女になった時みたいにさ。口では純粋な正義の味方のフリをしていたけれど、変身しているときは優越感に浸っていた。おいちゃんの服が汚いことを馬鹿にしたクラスメイトよりも、おいちゃんをごく潰しだって罵ったパパやママよりも、おいちゃんを下品な言葉で嘲る借金取りたちよりも。おいちゃんは優れている存在なんだって証明になったから。
- 457◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:08:09
お前もそう思っているんだろう、ナチス女。騙して勝った。自分の方が上だって、そう思っているんでしょ。
違うよ、知らないの? 魔法少女は、ここからが本番だよ。
おいちゃんのリボルバーは、五発のうち一発は必ず当たる。周囲にはランダムだって言ってるけど、実は内部のシリンダーをおいちゃんは操作できる。
だから、おいちゃんは撃った。必中の弾丸を。
今までと同じように、弾丸はナチス女のワイヤーに絡めとられ、切断される。 - 458◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:09:17
相性最悪? シンプルに実力不足?
そうかもね。でも。
「必ず当たるから、必中の弾丸なんだよ」
切断された弾丸は——瞬時に再生し、ナチス女の額に風穴を開けた。
何が起きたのか分からない。そんな顔をしながらナチス女は倒れる。
おいちゃんはすかさず脳天と心臓にもう二発、弾丸をぶち込む。
……粒子化しない。まだ生きている?
けれど、おいちゃんの魔法では、これ以上のオーバーキルは難しい。
それに、さっきのナチス女の妄言。『ティターニアはもう死んでいる』。
確かめないと。
リーダーの死に動揺しながらも、ナチス兵士たちはおいちゃんの行く手を防ぐ。
それを撃ち殺しながら、おいちゃんはビルの中に戻ろうと走り出した。 - 459◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:13:19
投下を終了します
※アリアはまだバリバリ生きています - 460◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:17:42
- 461二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 23:23:40
やっぱり悪いやつだったのか…
アグネアさんが希少種なのでは - 462◆xaazwm17IRZa25/01/02(木) 23:28:27
魔法王は祖先譲りのやや悪人よりの性格だったみたいです。
ただ治世の前半は善政を敷いていたり、アグネアからも慕われているので、場合によっては非道な手段を行ったり少数を犠牲にできる、「清濁併せ吞む君主」だったのかもしれません。
殺し合いの開催も、真に国益のためなら行う可能性もある……くらいでしょうか。 - 463二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 00:02:35
正体がホムンクルスだった過去だったり、蟹に対するコメディアン発言だったり、アリアちゃんほんとはナチスのあれこれに関して「くだらね……」って思いながら演じてたりする?
- 464二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 00:04:17
他人を人形にしてきた女の正体が作られた人形でした、とは見事やなー
- 465二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 00:35:07
どんな汚い仕事も安い給料でこなすタイプの人でしたか魔法王…
- 466二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 00:45:31
どっちかっていうと史実の王とか大名のイメージ
- 467二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 08:33:10
あけおめ2025
至極真面目な独白シーンなのに一人称がおいちゃんのままだから集中できねえ! - 468二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 17:12:14
このレスは削除されています
- 469二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 00:42:49
このレスは削除されています
- 470↑頼むから普通に保守してくれ25/01/04(土) 08:05:25
保守
- 471二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 10:03:17
- 472二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 19:12:18
先生まだ死んでいないと思うけど単なるブラフだといいなぁ…
- 473二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 01:31:45
切断された弾丸がアリアに命中するんじゃなく弾丸そのものが概念みたいなもので形が崩れると再生すると
- 474二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 11:03:28
保守
- 475二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 20:04:54
保守
- 476二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:09:45
魔法国では必要な人材ではあったんだろうね
自分の身も犠牲に出来るし「正義」の人ではあった - 477二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 07:49:42
なんかティターニアだけ脱落表記がおかしかった記憶があるがもしかしてそれが…?
- 478二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 17:41:58
このレスは削除されています
- 479二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 17:53:50
マジックアイテムのダーマットをなんか元の持ち主と喋り方が似てたスピードランサーに譲渡される感じかと思ってたら特に役立つわけでもなく消滅しちゃった
唯一の槍使いだしロンギヌス使わないかな - 480二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 18:07:33
- 481二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 18:12:05
- 482二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 18:58:49
狭いリングでミサイル一斉投下とかいうくそチート技を槍で打ち消してるし、ヒートハウンドにとってめっちゃくちゃ脅威だからブラフとして機能したわけでしょ
メタ張られて壊された怪異戦はともかく、無かったら戦いが成立しないレベルのヒートハウンド戦は役に立った扱いでいいと思うけどな…
- 483二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:34:08
ある前提の戦いだったから印象が薄いだけで縁の下の力持ちとして十分機能したね
- 484二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:52:46
つくつぐ物理無効+大火力を両立させてるの強キャラだわ
しかも頭も回るし容赦もしない - 485二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:56:17
このレスは削除されています
- 486二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 00:00:24
ティターニア、ブレイズドラゴンあたりの四強キャラはタイマンイベントで一歩手前のランクだったヒートハウンドを問題なく倒せるらしいしやっぱ別格だわ
- 487二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 00:05:02
このレスは削除されています
- 488二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 00:52:43
生存報告も無いしそろそろスレ落としも視野に入れるか
スレ主が生きてたら総合スレで報告してもらうってことで - 489二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:29:24
前回投下あったの四日前だしちょっと早くない?
年末年始忙しいだろうし - 490二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:44:30
というか最近規制多めみたいだしね 様子見様子見
- 491◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:38:40
しばらく顔を出せず申し訳ありません……!保守や感想で繋いでいただき、ありがとうございます……!
投下します……! - 492◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:39:30
◇
殺しよりも、加工の方が大変だ。その分、楽しいけれど。
深夜の山林で、桐ヶ谷裂華は断続的に息を吐いた。呼吸が荒い。スポーツ万能の彼女は、バスケのワンゲームでも呼吸一つ乱さない。今、彼女の呼吸を乱しているものは疲労ではなく、興奮によるものだ。
「ふぅ……ふふ、綺麗よ、なっちゃん」
妖艶に微笑み、裂華は『作品』を持ち上げる。
一級の絵画じみた光景だった。艶々とした黒髪を靡かせる美貌の少女。その少女が持ち上げるのは、完璧に化粧を施された美しい茶髪の少女——その頭部。
「綺麗……とても綺麗だわ、なっちゃん……」
髪を撫で、頬を押し、顔全体を愛撫する。陶酔に満ちた顔で、裂華は情事(さんげき)を行う。
「もうこれで、あなたの美しさは損なわれない。あなたの尊さは、完全なものになった……」
同級生だった。可愛らしい顔立ちをしていて、純朴で、努力家だった。好みのタイプだった。だから殺した。
好きな人しか殺さない。桐ヶ谷裂華は偏食の殺人鬼だ。 - 493◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:40:27
これで殺した相手の数は七人目。
(人を殺してはいけない。何故なら、捕まると監獄に幽閉されて死刑になるから。
だから私は——人を殺しても許される。だって私は捕まらないから)
天才だった。痕跡すら掴まれていない。生まれながらの特権階級。
最適なタイミングで、最適な手段で、最適な場所で、命を奪う。
そうすれば、バレない。
殺して埋める。そうすればバレない。
万が一死体が見つかっても、裂華までは辿り着けない。
客観的には「裂華」と「なっちゃん」は一クラスメイトでしかないのだ。
(ふふ、もう少しだけなっちゃんを堪能したいわ……)
頬ずりをする。そして舌先を断面に這わせようとしたとき。
生来鋭敏な裂華の五感が、遠方に人の気配を感じ取った。
(……は? 人? え、何で……?)
この山には滅多に人が立ち入らない。念入りなフィールドワークで裂華はそう結論を出していた。 - 494◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:41:20
ましてや深夜に、登山道から離れた場所になど。
想定外の事態に、裂華は硬直する。
……実のところ、裂華は天才であっても、只の天才に過ぎない。どれだけ人を殺しても絶対に捕まらない、そんな魔法のような芸当を可能にするほど、彼女の才能は逸脱していない。
彼女の殺人が今まで露呈しなかったのは、生来の才能も大きいが、実のところ幸運だっただけだ。
ロンドンの怪人、切り裂きジャックが捕まらなかったことも、警察の捜査のミスが主因であるように。
そして、切り裂きジャックには訪れなかった正義の鉄槌が、日本の幼き殺人鬼には徐々に振り下ろされそうとしていた。
(どうする……!? 念の為に始末する? けど、相手が男だったら……? 好みの相手じゃ無かったら?
私、好きな人以外は殺したくない! 淫売なんかじゃない!)
どうして自分がこんな理不尽な目に遭わなければならないのか。
神様は自分のことが嫌いなのだろうか。目尻に涙を浮かべながら、裂華は必死に知恵を絞る。 - 495◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:41:56
(血抜きは済ませてる……臭いはしないはず……気配を殺せばバレない……? けど、もし鉢合わせしたら……)
ゆっくりと、縄で首を絞められる感覚。
息が乱れる。疲労でもなく、興奮によるものではなく、不安によって。
(嫌だ……私、こんな理由で人を殺したくない……誰か、誰か助けて……)
——そして、奇跡は起きる。 - 496◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:42:20
◇
「佐藤さん、やっぱり此処じゃないみたいだわ」
「……そっか。俺の勘も鈍ったのかねぇ」
現れたのは、二人組だった。
奇妙な二人だ。一人は警官の恰好をしている、初老の男。
もう一人は、灰色の髪が特徴的な少女。
「少女の断続的な失踪事件。俺は魔法少女の仕業と踏んでるんだが」 - 497◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:43:25
「それは否定しないのよ。けど、この山は無関係みたい」
「だがなぁ、パペッタン。俺が犯人だったら此処を使う。全てにおいてちょうどいい山だからな」
「それは人間の理屈よ。きっと犯人は魔法少女。……最近噂の『テンガイ』とかいう魔法少女が最有力で怪しいのだわ」
二人組は去っていく。
気配を殺し、『樹上から』二人を見送る裂華の外見は、異形のそれに変化していた。
紺のウインドブレイカーはロングコートに。黒髪の美貌は別人に変化し、更にその半分を黒い靄で覆っている。
(行ったみたいね……)
コートの中——黒い靄で覆われている——から、なっちゃんの頭部を取り出し、裂華は安堵の息を吐く。
(けど、これはいったいどういうことかしら。私の身に、いったい何が……)
外見の変化。収納能力。人知を超えた身体能力。
突如目覚めた『異能』に、裂華は面食らう。
(いえ、これはもしかして……) - 498◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:44:07
「悪魔の力、かしら」
もしこの『異能』が手に入っていなければ、裂華は頭部を持ったままあの奇妙な二人組から逃げなければならなかった。
気配を隠すにしろ、走って逃げるにせよ、リスクの高い行為だった。
人間は、山では大きい生き物だ。どうしたって目立ってしまう。
だが、異形に変身した裂華は、二つのことができた。
一つは、ネックとなる頭部を完全に隠すことが出来たこと。
もう一つは、音も無く樹上に駆け上ることが出来たこと。
それでも、二人組が完全に当たりをつけていれば発見されたかもしれない。
だが、裂華は幸運だった。男の方は人間の常識から抜け出せず、魔法少女の方は事件の犯人を錯誤していた。
(神様が私に力をくれるはずはない。天使も違うでしょうね。こっちから願い下げだし。だとしたら悪魔。もしかしたらジャック・ザ・リッパー様かも。切り裂きジャック悪魔説とかあるし)
そう考えると、裂華は高揚を覚えた。
「そう、私は令和の切り裂きジャックなのね」 - 499◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:44:36
ただ自分の欲望を満たし、誰にも捕まらず、その生涯を謳歌する。
何でもできる天才には、魔法少女の才能もあった。その才が土壇場で開花した。客観的にはただそれだけのこと。
だが、裂華はそこに意味を見出した。
かくして殺人鬼の少女は、殺人鬼の魔法少女へと進化する。
——とある殺し合いで無残な最期を遂げるのは、これより数年後のことである。 - 500◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:45:48
◇
「……交した約束、忘れないよ♪ 目を閉じ、確かめる♪」
扉が開く音がして、見知った顔が入って来た。
「……随分楽しく熱唱してるね、殺人鬼」
「あんたこそ毎回陰気な顔をしてるわね、疫病神」
「自分の魔法で家族を殺しておいて、陽気になれるわけないだろ」 - 501◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:47:05
「そうかしら。誰かに殺されるくらいなら、自分で奪った方が素敵だと思うのだけれど」
疫病神、と呼ばれた少女——魔法少女「ウェンディゴ」は、嫌悪感に満ちた顔でジャックを睨んだ。
もっとも、今の二人は変身を解除している。
桐ヶ谷裂華と清原稞美として、ここに居る。
裂華は稞美を無視して、再び熱唱を始める。
学校ではクール系で通っているが、陰気でも無口でもない。クラスの打ち上げには必ず呼ばれるし、その時流行りの曲をほどよい巧さで歌い上げる。
が、本気を出せばざっとこんなものだ。100点が浮かび上がる画面を裂華は当然のように眺める。
「その歌好きなの? 殺人鬼には似つかわしくないと思うけど。まぁ君に似つかわしい歌なんか無いし、君が歌っていい歌なんか存在しないけどさ」
「疫病神に言われたくないわよ。それに、私は別に興味ない。私が好きだった子が好きだったのよ、この歌」 - 502◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:48:20
「君以外の奴から聞いたらエモく聞こえるけど、君の口からだとおぞましさしか感じないな。あー、早くくたばってくれないかな……」
そのために君と一緒に居るのにさ、と稞美はメロンソーダをストローで吸いながら愚痴る。
「私がくたばるより先にあんたがくたばるべきでしょ、疫病神。私は殺したい相手を自分の意思で選んで責任を以て芸術品にしてるけど、あんたは無意識でしょ。殺したくて殺しました、と、殺したくなかったけど殺しちゃいました、だったら後者の方が最悪よ。死んだ人も浮かばれないわ」
「……自分の罪から逃げるつもりはないよ。君の口ぶりはあまりに傲慢で、たとえ君が殺人鬼じゃなくても何らかの罪に問えそうな妄言だけど、でも、君がそういう真性のクズ女だからこそ、私は君と一緒に居ようと思えるんだ」
「逃げるつもりはないなら、とっとと首吊れば? 疫病神なんだから。それとも私を挑発するのは殺して欲しいから? 嫌よ、あんたみたいにじめじめしてて穢い奴、絶対殺したくないわ」
「……そうだね。私は最悪なことに、死にたくないんだ。自分でもどうしてだか分からない。生きる希望なんか何一つないのに。親しい人はみんな死んだし、これから親しくなる人をみんな殺してしまうのに。
死にたくは無いんだ。死んだら駄目なんだ。どうしてか、そう考えてしまう」 - 503◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:49:26
「はぁー、陰気ねぇ。話してるだけで辟易してくるわ」
そう言いながら、裂華は次の曲を入力し始める。
「……私が君と一緒にいるのは、私の魔法で君を死なせることだ」
「それもう聞いた。勝手にすれば?」
「けど、どうして君は私と一緒に居るんだ? キモイ性癖で私を殺せないんだとしても、とっとと私から離れればいいだろ。私が君を殺人鬼だと暴露しないよう監視するためかい?」
「違うわよ、あんたがそれを出来ないことくらいとっくにお見通しよ。あんたが能動的に動いた結果、私がヤケになって大量殺人に走るのが怖いんでしょ? 私がそんなことするわけないけど、まぁあんたの魔法ならありえない可能性も引き当てるかもね。疫病神だし。だからまぁ、あんたを監視する理由なんか無い」
「じゃあ、どうして?」
画面に、入力された曲のタイトルが浮かび上がる。
「これも、あの子が好きだった曲なのよ。
あの子がこの世に居ないこと、私に殺されたこと。それを知ってるのは私を除けば、あんただけでしょ」
だから歌ってるのよ。そう言って裂華はマイクを手に取り、熱唱を始める。稞美は黙ってそれを聞いていた。 - 504◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:50:03
◇
(どうすりゃいいんだ……!?)
『拒絶』を部屋全体に拡大しながら、ああああは心中で叫んだ。
ああああの新たなボス(不本意だが)、デッドマンズ・ハンドはああああに命令を下した。
『ティターニアを守ってね。ちょっとでも弾が掠ってたら撃ち殺すからね~』
かつてああああが所属していた裏社会の魔法少女と酷似した雰囲気、かつイジメかと思うレベルでああああの魔法を完封できるデッドマンズ・ハンドの命令に、ああああは頷くしかなかった。
理不尽だと思う。 - 505◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:50:44
縁も所縁も無い、それどころかメンダシウム戦では直接ぶっ殺し宣言をされているティターニアを守れと言われ。
味方であるはずの運営(ナチスは運営側だよな……!? まさか野生のナチスとかじゃないよな!?)に襲撃され、必死に弾丸を弾く。
デッドマンズ・ハンドが頑張っているからか、幸い届く弾丸は少ない。
ああああの拒絶魔法は、威力ではなく回数で魔力消費が決まる関係上、攻撃が少ないことは嬉しい。
ぶっちゃけマジカル・ストラッシュを一発撃ち込まれるより機関銃で連射されるほうが脅威なのだ。
だからティターニアを守れ、という命令は問題なくこなせる。
本来なら。
(ティターニア……死んでない、これ?)
遺言医院に担ぎこみ、グラマーな金髪医師とデッドマンぞ・ハンドは交渉をしていた。
医師はティターニアに応急処置をこなしていた。だが、その顔はどこか余裕のないものだった。 - 506◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:51:22
デッドマンズ・ハンドが怖いからというより、盛大な茶番に付き合っているかのように。
もちろんああああは医師ではない。死は見慣れたものであり、仮に今のティターニアがダンジョンや裏路地に落ちていたら「死体」と判断するが、あくまで素人の意見だ。
死んでるか、生きてるか、分からない。いや、守れと言われたのだから、きっと生きているのだろう。
そうでないと、デッドマンズ・ハンドは狂人ということになってしまう。
自分を殺せる魔法を持った狂人。そんなの、オオカワウソと同じだ。
(ああ、分かっている。分かっているよ、くそ。近づいて鼓動の音を確かめりゃ済む話だよ、くそったれ!
だけどなぁ、それで本当に死んでたらどうする!?
生きてる前提で動いてるあのイカレガンマンの前で、合わせて演戯しなきゃいけないってことだろ!?
そんな危険なこと出来るかよ!? 嘘つきは死ぬってオシウリエルで学んだんだ、私は!) - 507◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:52:11
だからああああは判断を保留し、命令遵守、専守防衛に専念する。
君子、危うきに近寄らず。事実、ああああはパラサイトドールを含めた古参運営陣で、一番の下っ端であったにも関わらず、今や唯一の生き残りである。
と、階段を駆け上る音が聞こえ、ああああの顔に緊張が走る。
誰かが来た。デッドマンズ・ハンドか。
もし他の魔法少女なら、それはいったいどんな奴なのか。敵か、味方か。
たん、と地面を蹴る音が聞こえ、現れたのは——コートを纏った異形の魔法少女。ジャック・ザ・リッパー。ティターニアの弟子の一人。
このゲームにおいても七海真美やジェイルフィッシュと行動を共にし、ゲームに乗っている様子は無かった(あくまでああああがあにまん市に派遣される前までの話だが)。
(師匠を助けに来たのか!?)
ああああは微かに安堵し
「あはぁ」
向けられた無数の銃口に気づく。
右手に機関銃、左手にも機関銃。 - 508◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:52:50
放たれたのは、弾幕だった。
「うおおおおおおおおおおおおお!? 拒絶!」
一秒間で三十発もの弾丸がああああを襲う。
(これ、ただの弾丸じゃねぇ……!?)
一発一発が重い。もちろんどれだけ重くても、ああああには関係が無い。
だが、威力が高いということは、もし拒絶を解除すれば直ちに絶命することを意味する。
通常の弾丸ならば魔法少女はある程度までなら死なずに済むが、これは駄目だ。
だからああああは拒絶を解除しない。
トリガーハッピーのように乱射していたジャックは、んん? と訝し気に首を捻る。
「——どいつもこいつも、面倒な魔法ね」
その言葉と共に、ジャックは持っていた機関銃を、ああああ目掛けて投げつけた。
魔法少女の膂力で放たれたそれは、投石など比較にもならない威力を秘める。
ましてや、投げたのはジャック・ザ・リッパー。 - 509◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:53:35
手に持ったあらゆる物が魔法少女を殺傷できるレベルまで強化される。
「拒絶!」
だが、投げつけられた両機関銃は、あえなく弾かれる。
ああああからしてみれば、弾幕と比較して、鈍器の投擲はよっぽど楽に対処できる。
「ふーん、じゃあこれだ」
つまらなさそうな顔で、ジャックはコートから無数のナイフを取り出し、ああああ目掛けて投擲する。
「拒絶、拒絶、拒絶……!」
銀閃を描いて疾走する刃は、弾幕と同じ末路を辿る。
(そ、そうだ。私だってあのマンションを生き残ったんだ。こんな一般女子高生魔法少女に負けてたまるかよ、くそったれ)
「私は、ティターニアのマジカル・ストラッシュだって防げる。お前じゃ勝てない、どっか行くんだな!」
ジャック・ザ・リッパーはティターニアの弟子、という情報を利用し、ジャックにとって絶望的な一言を叩きつける。 - 510◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:54:20
これで撤退を促すのがああああの狙い。後でデッドマンズに告げ口すれば「ティターニア狙った罪」とかで殺しておいてくれるだろう。
「へぇ……」
すぅ……とジャックの目が細まる。
(そうだ、厄介だと感じて、退け……!)
「じゃあ、単純に威力で突破できるものじゃないのね」
そう言って、ジャックはコートからサーベルを取り出し、投げつける。弾く。
「ナイフもそうだったけど、銃弾だけじゃなく、刃物も無効化と。
じゃあ、武器じゃ無ければ?」
コートから取り出したものを見て、ああああは悲鳴を呑み込んだ。
頭部である。若い白人の男の頭部だ。だが、断面からは機械のコードのようなものが伸びている。
雪玉を投げつけるかのように、ジャックは男の頭部を投擲する。ジャックの膂力と魔法が組み合わされれば、それは当然魔法少女を害する威力を持ち。
弾く。頭部は損壊しながら階段を転がっていく。 - 511◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:54:52
(ど、どうして全然退かないんだ、こいつ!?
殺意が高すぎるだろ!)
ああああは後方に視線を向ける。生死不明のティターニアと、その傍で蹲っている天城千郷。
(お前もなんかしろよ!? 私にばっかり働かせやがって)
「次はこれね」
(そしてこいつはどれだけストックあんだよ!? くそっ、そうやって色々試すスタイルはオオカワウソを思い出してトラウマががががががが……)
だが、いい。ジャックがどんな武器を、あるいはアイテムを取り出そうが、ああああは全て弾く。
デッドマンズ・ハンドのように「必中」でもない限り、あるいはオオカワウソのように「人海戦術」を使われない限り、ああああは無敵だ。
だから。
ぬらり、とコートの奥から取り出された剣を見た瞬間、ああああに恐怖の戦慄が走った。
あの剣は、駄目だ。 - 512◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:55:43
マンションで鍛えた直感が、全力で警鐘を鳴らしている。
初見殺しのデストラップに酷似した雰囲気。
(やばい、やばい、やばい……! あの剣は、やばい……!)
今度は、投擲では無かった。剣を握り、突撃。勇敢なる騎士のように、先陣を切る武者のように。正義のために戦う、魔法少女のように。
「拒絶!」
半ば、本能的な動作だった。
ああああの拒絶に、ジャックは魔剣「アロンダイト」を突き刺す。
ああああの全身が痙攣したかのように震えた。拒絶が解除される。
(なんだよ……これ……!?)
毒を浴びたかのような嘔吐感と痛み。
直ちに死に直結するものではないと経験上判断できるが、直接触れたわけではない、ただ拒絶ごしに接触しただけで、このダメージ。
(この剣……危険過ぎる……) - 513◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:56:48
「ん……?」
部屋に押し入ったジャックは、ベッドに横たわるティターニア、正確には妃咲希の姿をまじまじと視認する。
その顔が、驚愕で固まった。
「え、マジ……?」
「よ、よろしくお願いします!」
素っ頓狂な声が部屋に響く。
同時に、天城千郷とティターニアの前に、長身の女が立っていた。
銀髪、褐色の肌、有角、白翼。
その名を、赤松華。天城千郷のマジックアイテム『地獄篇』から呼び出された——怪異である。 - 514◆xaazwm17IRZa25/01/07(火) 02:57:23
投下を終了します。改めて、今年も当企画をよろしくお願い致します
- 515二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 03:03:05
乙
やっぱあーちゃんは可哀想で可愛いな - 516二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 07:46:04
良かった…先生が生きてた…けどアリアの言ってた事が具体的過ぎたからまだなんかあるよな…
- 517二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 07:55:32
運営総出で大乱闘スマッシュブラザーズしてるのにグレンデルだけ影も形もないのが不気味だ
- 518二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 08:49:50
グレンデルは別所派遣か漁夫の利狙いで潜んでるか
- 519二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 11:07:36
投下乙
やっぱジャックってやばいわ - 520二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 13:37:01
グレンデルとこの前出てきたハーゲンはボスキャラとして長持ちするかな
ヴェンデッタは終始圧倒されたまま死んでしまったからなぁ - 521二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 14:01:35
こんな一般女子高生魔法少女って考えてるし殺人鬼とは知らなかった…っぽい?
- 522二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 16:39:19
魔法の知識が薄いグレンデルが願いが叶う土壇場までアリアを裏切る必要性は皆無だしまぁどっかで別行動してんじゃね
- 523二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 16:40:56
ヴェンデッタ、最強格みたいな雰囲気で出てきてずっと監獄に居たんだから現役に勝てるわけないだろってオチは妙なリアリティがあって好き
- 524二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 16:54:15
流石に怪異と戦って死ぬことはないだろうが魔法少女絶許剣は効くのだろうか
- 525二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:00:43
そういえば確かにヴェンデッタ、「監獄に入れられる前と実力は変わってない」的な事は言われてたような気はするが、後から投げられたキャラなのもあってどの程度の強さなのかあんまし分からなかったぜ!
マッチアップが悪かっただけでまぁまぁ強いほうなのかは知りたかったところ - 526二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 23:13:10
ああああは回避力だけなら十分やれるな
- 527二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 07:45:56
ダメージを攻撃力に変換する魔法を持っていて飼い殺しされてたら本人が実力を維持出来たとして現役には負けるよね…
だから監獄生活中も痛むを欲していたのに同僚に無視されてたヴェンデッタぇ… - 528二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 12:42:21
このレスは削除されています
- 529◆xaazwm17IRZa25/01/08(水) 21:36:34
前回くらい書き溜めてから投下するので、ちょっと更新遅れます……
- 530二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 22:18:23
了解しました!
- 531◆xaazwm17IRZa25/01/09(木) 00:35:10
まぁまぁ強いです。
ハスキーロアが乱入しなければスピードランサーも負けることはないにしてももう少し苦戦してたと思います。
ただ、メンダシウムやパンデモニカよりは1ランク下がるかなと。
実力的にはクライオニクスやフライフィアーと同程度くらいだと思います。
- 532◆xaazwm17IRZa25/01/09(木) 01:07:43
スピードランサー的には
クライオニクス:冷気で速度が低下するので相性悪い。冷気と翼をなんとか突破して心臓を抉っても、本編のごとく第二ラウンドが始まってしまう。場合によっては普通に負ける。
ヴェンデッタ:スペックのごり押し(スピードランサー基準)なので苦戦はするが負けることはない。隙を作って穿槍を叩き込めば勝てる。
フライフィアー:空を飛ばれても槍で撃ち落とせるのでけっこう一方的に倒せる。爆撃も避ければいいし。
と、こんな感じで得意な相手と苦手な相手が居ます。
なお、ティターニアはこの順番が逆になります。
クライオニクスは冷気とか翼の自動防御はマジカルストラッシュで魔力ごと消し飛ばすので得意な相手。逆にフライフィアーは高速で飛行されるとストラッシュが当たらないので苦手な相手です。 - 533二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 07:49:31
防御無視のマジカルストラッシュ強いな
けど防御力が無ければ穿槍でも一気に削れるから相性差が大きいな… - 534二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 16:48:42
保守
- 535二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:44:27
速さと軌道力が売りの魔法少女には強くデバフには滅法弱いって聞くと確かにピーキーで技量とメンタルのバランスが大事
あと最上位格の中でも普通にデバフ入るのがスピードランサーの痛い所 - 536二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 00:04:32
ぶっちゃけ初っ端の第一話で醜態晒しまくったスピードランサーに強いイメージ全く無いなぁ
つかパラサイトドールに成すすべなく洗脳されたのにティターニア先生と同格ってよくわからん… - 537二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 01:48:30
- 538二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 02:04:07
パラサイトドールの洗脳、ティターニアは効かないみたいな設定あったっけ…?
- 539二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 02:21:30
- 540二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 04:38:26
このレスは削除されています
- 541二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 04:53:37
成す術なく洗脳されたから格下なら成す術なくデスゲーム強制されてる魔法少女はみんな格下ということになるんですがそれは…
- 542二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 04:58:54
まぁでも盤面把握力に長けててマジカルストラッシュでぶちかませる先生ならクリックベイトだけでも逃がすとかできそうな感じはする
- 543二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 07:27:04
- 544二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 07:32:28
ティターニアとスピードランサー見てると承太郎とポルナレフみたいな関係っぽいと勝手に納得している
- 545二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 09:18:27
出来そうな凄みはあると思いつつ、天上設定でストラッシュも効かないから無理じゃねとも思う
- 546二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 17:33:17
このレスは削除されています
- 547二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 18:52:19
ブレイズドラゴンは謎の気功術的なやつで、先生はマジカルストラッシュでパラさんの洗脳デバフ解除できるからその事を言ってるんじゃない?
確かにスピードランサーはそういう特殊能力一切ないから言われてる通り何もできないね。そこで見劣りするのも仕方ない
そのぶん物理攻撃が強いのかもしれないけれども
- 548二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 19:22:05
やっぱ生存能力だとハートプリンセスが頭一つ抜けてたね、スピードランサーとティターニアの両方ともから片方だけなら逃げれそうor耐えられそうだし
絶対安全なゆりかご - 549二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 00:59:22
けどなんだかんだ美味しい立ち位置にいるよなーって思う
- 550二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 01:27:27
- 551二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 08:23:59
保守
- 552二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 08:59:50
ブレイズドラゴン、武術特化型かと思いきやテンガイに劣る手札の数、ティターニアに劣る火力、スピードランサーと互角の技量、相性無視の必殺技を全部併せ持つバランスタイプの極地みたいな方向性だったな
- 553二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 11:25:13
炎犬の2匹が悪い
- 554二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 12:30:12
フライフィアーはどう考えても黒幕から積極的に狙われたとしか
- 555二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 13:21:36
- 556125/01/11(土) 15:23:00
お久しぶりです
また規制されてしまい、PCからはあにまん掲示板に書き込めなくなりました…
幸い、今回はスマホから書き込めるので、生存報告はできそうです - 557125/01/11(土) 15:26:08
規制が解除されるまでは
①wikiの仮投下ページに投下
②ここで投下報告
とさせていただきます
今まで通り規制が解除されればあらためてこちらにも再投下します - 558二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 15:26:33
あららご愁傷様
携帯回線が無事な感じかな。ご自愛なすってくだせえ - 559125/01/11(土) 15:27:44
ひとまず続きはウィキの仮投下ページに投下しました
- 560二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 16:31:20
乙。読んだぜ
アリアちゃん、ナチスごっこに飽き始めてない? - 561二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 20:17:26
死体(未鑑定)のティターニアと変身できない千郷と攻撃力0のああああを守りながら魔法少女ブッ殺ソードとマミちゃんロボを従えたジャックと戦わなきゃいけないハスキーロア、エクストリームハードモード
- 562二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 01:01:39
心臓部を外で持ち運びしてもらえれば実質不死身の分霊箱形式
- 563二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 09:14:07
保守
- 564二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 09:29:16
勇者に対する製造者呼びでコンプレックスが滲み出てるアリア
- 565二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 19:55:10
火力に乏しいスピードランサーでは勝てないか
というか無限魔力+無限再生の化け物に勝てる参加者ってほぼいないんじゃ? - 566◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:29:00
規制解除されたので、ウィキに仮投下したものを再投下します……!
- 567◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:29:42
出現した「赤松華」を一目見て、ああああはそれが「マンション」由来のものだと気づいた。
何年もマンションに囚われていた故の、直感。
魔法を「アロンダイト」で切り裂かれたことによるダメージとは別に、赤松華への恐怖で身が竦む。
千郷もまた、自身で召喚したにも関わらず、赤松華の異様な雰囲気に呑まれていた。
「邪魔」
そんな中で、ジャックだけが平静だった。
殺人鬼は、赤松華に興味を持てなかった。殺したいとも、殺したくないとも思わなかった。
煙を払うかのように、ジャックは魔剣「アロンダイト」を振り、赤松華の頭部を切断する。
斬首とは、一つの高等技術である。ジャックは剣の修行などまるでしたことはないが、天才であるがゆえにこの程度のことは出来る。 - 568◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:30:16
(まぁ、先生とか山田さんから見れば下手くそなんだろうけど)
今しがた斬殺した赤松華のことは気にも止めず、ジャックはベットに横たわるティターニアを見下ろす。
(うん、やっぱりこれ死んで……)
ぞわり、と鳥肌が立った。ジャックはその場を飛び退く。
赤松華が、手を伸ばしている。
切断したはずの頭部は何事もなく元通りになっている。
「はぁ? どういうこと?」
不愉快そうにジャックは唸った。よく分からないが、自身が持つこの剣は、魔法少女に特効のようだと感じ取っている。 - 569◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:30:54
事実、帽子の魔法少女(ああああ)の魔法は無効化できた。もしこの長身の女が回復魔法などで首を治せる猛者だったとしても、その回復魔法ごと殺せるはずなのだ。
(やっぱ魔法少女じゃないのね、通りで)
おそらく、他の魔法少女の使い魔。それでも、魔法由来ならば殺せるはずなのだが。
(まぁ、考察はどうでもいいわ。今重要なのは)
「役立たずめ」
罵って、魔剣「アロンダイト」をコートに戻す。
魔力は持っていくくせに殺せていないとは。
赤松華は無造作に右腕を振るう。その動作から、ジャックは触れられると何らかのマイナスが発生すると推理。 - 570◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:31:17
(試してみるか)
伸ばされた右腕を、ジャックはナイフで切断した。
赤松華は決して鈍重ではない。普通の魔法少女を超える、異常な身体能力を秘めている。
それでも、ジャックから見れば遅い。
誰にも気づかれることなく(疫病神は例外として)魔法少女を殺してきたジャックの殺人技術は、達人の領域に入門している。
切断した右腕は、黒い靄に包まれ、ジャックの支配下に置かれる。
自らの武器へと加工した赤松華の右腕を、ジャックは無造作に、されど的確に振るった。
ビンタに近い動作で、赤松華の右腕は赤松華の顔に触れる。
瞬間、赤松華の顔が、塵のように崩壊した。砂の人形が崩れるようだった。 - 571◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:31:39
「うわ、えっぐ」
想像だにしていなかった右手の効果に、ジャックはしかめっ面を作る。
触れられていれば自分もどうなっていたか……。
(どいつもこいつもチート魔法持ちすぎでしょ。理不尽だわ)
改めてこのデスゲームの理不尽さに苛立ちながらも、ジャックは顔を失った赤松華をじっと観察する。
赤松華の破壊の力で赤松華を破壊する。実のところ、数時間前にこの方法は試されている。ジャックの同門、バルバロイによって。
結果は、無駄。
巻き戻すかのように、赤松華の身体が元に戻っていく。真に不死身な存在なのか。
(いや、不死身なんかいるわけがないわ)
どんな者でも、殺せば死ぬのだ。
魔剣でも死なない。自身の力でも死なない。 - 572◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:31:56
(だったら次は……)
ジャックは周囲に目を配った。
魔法を魔剣で斬った影響か、未だ蹲っている帽子の少女。好みじゃない。
ベッドで寝ているティターニア。恐らく死んでいる。
そして、二人から離れた場所でじっとこちらの様子を窺う、これといった特徴の無い少女。けっこう好み……いやなんか二面性がありそうでやっぱり好みではない。
(って、そうじゃなくて)
無個性の少女が握っている紙片……今の状況で武器ではなくそんなものを握りしめる理由が不明瞭だ。
考えられるとすれば。 - 573◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:32:15
(試してみるか)
赤松華が失踪し、こちらに手を伸ばす。
後方に跳んで回避しながら、ジャックは叫んだ。
「マミちゃん、よろしく!」
「うん、ジャックお姉ちゃん!」
窓の外から可愛らしい少女の声が聞こえ、次の瞬間、空間を炎が支配した。 - 574◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:32:33
◇
インテリジェンスウェポンは、飛行しながらビルの外で待機していた。一緒に室内に入らなかったのは、奇襲を狙ってのこと。
事実、ああああも天城千郷も、ビルの外の兵器に気づくことはなかった。
(ま、間に合った!)
魔法を魔剣で斬られたことで弱っていたああああだが、炎が迫った瞬間、咄嗟に動くことが出来た。
少しでも挙動を誤れば即死するあにまんマンションでの経験がここでも生きている。
自分の身を守るだけでなく、ティターニアの前に立つことで、彼女を守ることにも成功する。
例え死んでいようと、火葬されている姿をデッドマンズ・ハンドに見つかれば、命の保証は無い。 - 575◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:32:57
(間に合った、けど、守れたのはティターニアだけか)
マンション由来であろう赤松華はどうでもいいが、僅かなりとも一緒に居た天城千郷を見殺しにしてしまったことは、ああああとしても思うところがないわけではない。
(仕方ない……仕方ないだろ! ティターニア庇えただけでも御の字だよ、くそっ)
それに、助かったわけではないのだ。
フロア一帯を燃やし尽くした下手人は、まだ生きている。
向こうが妙な剣を持っている限り、ああああに勝ち目は無い。
(ティターニア背負って逃げるか……? 駄目だ、身のこなし的に向こうの方が私より速い!)
炎が収まっていく。 - 576◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:33:17
ああああは目を疑った。
天城千郷は健在だ。腰を抜かし、呆気に取られた顔をしている。その手に持つ、焼き焦げた紙はマジックアイテム「地獄篇」の残骸だろう。
そして、天城千郷を庇うように前に立つのは、犬耳の小柄な少女だった。
(魔法少女、ハスキーロア……)
雑用とはいえ運営に籍を置いていたああああは、一応参加者全員の情報を頭に入れている。
ハスキーロアは、じっとジャックを睨む。
「どうして、人を襲うんですか?」
ジャックもまた、乱入してきたハスキーロアを見つめ、口角をあげた。
「生き返らせたい子がいるのよ」 - 577◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:33:41
ハスキーロアの顔が、悲痛に歪んだ。
「それでも、人の命を奪うのは……」
「綺麗ごとね。嫌いじゃないわ」
あなた、すごくいいわね。
ジャックの声色に喜悦が混じる。
「モチベ上ってきたわ」 - 578◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:34:06
◇
「ふははははははは! どうだスピードランサー、俺の槍捌きは!」
魔法少女ハーゲン。その体躯は成人女性の平均を超えている。その身に纏うはメカメカしい巨大鎧。振るうは馬上槍に酷似した大槍。左目は義眼であり、レーザーサイトのように赤く発光する。
一目で「強者」と分かるいでたち。そして、ハーゲンは見かけ倒しではない。
ずん、と強く踏み込む。それだけでアスファルトにクレーターが発生する。重い。
振るわれる槍は嵐の如く。掠れば魔法少女とてミンチは必至。
そしてハーゲンは、ただの力任せの匹夫ではない。
数多の戦場で磨かれた超実戦流槍術。魔法少女の中でも上位に位置する筋力で、魔法少女の中でも上位に位置する戦闘技術を奮う。 - 579◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:34:27
普通の魔法少女なら持ち上げるのもやっとな重さの大槍を玩具のように縦横無尽に振り回し、スピードランサーを責め立てる。
かつて、ハーゲンはソ連の魔法少女部隊をたった三度の突撃で皆殺しにしたことがある。
かつてドイツで最強だった魔法少女が、更に数十年の実戦経験を経た正真正銘の怪物。
ならば、その最強と互角に打ち合う、この朱槍の魔法少女は何者なのか。
「ふはははははははは! まさかJAPにこれほどの強者が居たとはな! 先の世界大戦ではどの戦場で戦っていたのだ?」
「産まれてねぇよ」
「なるほど、どうやら当代の日本最強は貴様らしいな! ここは、国を代表する『勇者』同士、優劣を決めようではないか」
「ナチスがドイツの代表面するのは色々センシティブじゃねえか?」
それによ、とスピードランサーは一歩引く。ブラフだと読んだハーゲンは、追撃せずに、防御の構えを取る。 - 580◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:34:46
が、それでも反応が一歩遅れ、肩口の装甲を抉られる。
(なまなかな魔法少女の必殺技では傷一つつかない俺の装甲を飴細工のように。何という威力よ!)
「アタシは最強じゃねぇし、勇者でもねぇよ」
ただの卑怯な人殺しだぜ、という言葉と共に穂先が喉に伸びる。
対応すると思う前に、側頭部を柄で殴られる。衝撃で意識が明滅する。
それでも、致命的な被弾を防ぐために後方へ逃れることは出来た。
——出来たと、思ったが。
刹那の間に、距離をつめられる。
反応する間もなく、脳を抉られ、ハーゲンは絶命した。 - 581◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:35:05
◇
「お前が、俺を生き返らせたのか」
「そうだ、吾輩こそがお前の製造者だ。『勇者』ハーゲンよ」
「勇者?」
「吾輩と盟友の宿願を叶える、世界最後の英雄のことだ」
「よく分からんが、俺はまだ戦えるのか?」
「そうだ。勇者として、貴様は吾輩の下で闘争を続けるのだ」 - 582◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:35:23
◇
魔法少女は人間を超えた身体能力、耐久性を持つ。
だが、脳を破壊されれば魔法少女とて死ぬ。
スピードランサーの穂先は、確かにハーゲンの脳を抉った。
——抉られた脳が、再生する。
「ふはははははははははは! その攻撃では俺は倒せんぞ!」
「面倒だな」
妙な奴だ、と脳を再生しながらハーゲンは思う。
この女は強い。鍛え上げ、研ぎ澄ました、確かな実力がある。 - 583◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:35:45
どんな分野でも、楽しんだ者が上達する。きっとスピードランサーも戦闘を心から楽しみ、成長したに違いない。
にも関わらず、スピードランサーは戦闘を楽しんでいない。自分という強敵を相手にしているにも関わらず、この闘争を大事にしていない。
心ここにあらず、というわけではない。真っ直ぐとした殺意は、ハーゲンを刺し貫き、戦意を滾らせている。
ただ、スピードランサーの動きは、戦闘というより、駆除や処刑のそれだ。
さっさとくたばれ。
スピードランサーの槍から伝わってくる感情は、その一点。
「分からんな。それほどの実力者でありながら、何故闘争の快楽を享受しない?
貴様は勇者だ、俺がそうであるようにな」 - 584◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:36:08
そうだ、とハーゲンは思う。
自分は勇者なのだ。祖国を救う勇者として仲間と共にソ連の魔法少女共と戦い、瀕死の重傷を負った。
『君を、本物の勇者にしてやろう』。
ハーゲンを治療し、改造したトート・アリアは確かにそう言ったのだ。
「——人殺しに、勇者の資格なんかねぇよ」
吐き捨てるように、スピードランサーは言った。
「アタシも、テメェも、勇者とやらじゃねぇ。
少なくとも、魔法少女の勇者じゃない。
そういうのは——きっと、ティターニアみたいな奴のことさ」 - 585◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:36:26
スピードランサーの声色に籠っているのは、諦めと憧憬。
「……分からん。お前は何を言っているんだ?
祖国のためにどれだけ多くの敵を殺傷できるか。それが勇者の資格よ!
人殺しは勇者じゃない? 馬鹿馬鹿しい!」
もしそれが事実なのだとしたら。
大人たちに言われるがまま、祖国のために戦場で戦ったハーゲンたちは、ハーゲンの仲間たちは。
勇者ではなくなってしまう。
「…………ははっ!」
ハーゲンは、哄笑した。 - 586◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:36:43
「そんなわけが、ないだろうがっ!」
機械鎧の背部に備え付けられたジェットが火を噴き、ハーゲンに速度を与える。
——所詮は、平和ボケした時代の、平和ボケした国で育った者の、戯言に過ぎない。
人殺しこそが勇者であることは、歴史が証明している。魔法少女だけが、例外であるはずがない。
今、ハーゲンは騎乗していた。ジェット噴射の速度に乗って、かつての騎士のように、高速で動きながら大槍を構える。
(貴様の方が速いのだとしても、高さは俺が有利よ!)
ジェット噴射の角度を調節すれば、ハーゲンは高度さえも自由にできる。
歩兵が単独で騎兵に勝つことは難しい。戦闘とは、より高度を取ったものが有利になるのだ。 - 587◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:37:17
「終わりだっ! スピードランサー!」
上から下へ。歩兵を貫くためにハーゲンは獲物を見下ろし。
——スピードランサーは、ハーゲンより高い場所に居た。
上方向に射出された槍を掴み、共に上昇。ただそれだけで、スピードランサーは一瞬でハーゲンより上へ陣取れる。
「き、貴様……」
「『穿槍』」
ヴェンデッタを仕留めた、スピードランサーの奥義が放たれる。
ハーゲンが纏う機械鎧が、瞬時に抉られ、大穴が空く。
脳を破壊しても止まらなかった。ならば心臓を破壊する。
対魔法少女戦のセオリーをスピードランサーは忠実に実行し、その判断は適切である。
ハーゲンのコアは心臓部に埋め込まれたリアクターである。これを破壊されると、ハーゲンは死ぬ。
そして、スピードランサーの槍は確かにハーゲンの心臓部を貫いたのだ。 - 588◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:37:42
◇
デッドマンズ・ハンドによって射殺されたトート・アリアの遺体はナチス兵士たちによって運ばれ、あにまん市に仮設されたベースキャンプに移動していた。
「大総統!」
「大総統が死んだ! JAPの人でなし!」
「…………煩い」
こめかみを押さえながら、アリアはむくりと起き上がる。
頭頂部を撃ち抜かれたにも関わらず、トート・アリアは生きていた。
——この程度のダメージで、彼女は滅びない。 - 589◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:38:02
「で、どうなった?」
「は。デッドマンズ・ハンドはティターニアの元へ向かいました」
「そうか。あのイカレは腕はそこそこ立つ。あそこで吾輩自ら処断するのは惜しい。
ティターニアの死を受け入れれば、あいつは必ず優勝を目指すはずだ。その時は快く参加者に追加登録してやろう」
トート・アリアを始め、運営幹部は複雑な状況に立たされている。
何でも願いを叶える魔法『マジカル・マギカ』は儀式の参加者でなければ手に入らない。だが、一度参加者として登録されてしまうと、残り時間までに他の参加者を皆殺しにできなければ、呪いが発動して死んでしまう。
まだ参加者がたくさん残っている状況で登録してしまうと、時間内に殺しきれずに死亡。かといって、参加者が残り二人まで待っていたら、乱入する間もなくゲームが終了して、優勝特典を掻っ攫われる恐れもある。 - 590◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:38:18
「そのためには、吾輩が舞台に役者として上がる前に、モブ共で潰し合いをしてもらわなければならないのでな」
ジャック・ザ・リッパー。ハイエンド。ゲームに乗った二人の魔法少女。ハニーハントもクイーンを優勝させるために動いている。この三人に、ゲームに乗っていない有象無象を皆殺しにさせ、疲弊した三人を参加者に追加登録した幹部陣で仕留める。
だが、三人では心もとない。よってデッドマンズ・ハンドを優勝狙いに切り替える必要があった。
ティターニアが死んですぐに優勝狙いに動くかと考えたが、軟弱にも現実逃避を始めたので(ゆとり世代は雑魚だな、とアリアは思った)、ティターニアは死んでいることを改めて突きつける必要があったのだ。
問題はスピードランサー。四強の中では最も弱い(アリア評)彼女が生き残ったのは奇妙な話だが、それでも現在生き残っている参加者では最強と言っていいだろう。
スピードランサーに、ゲームを加速させる要因である三人を、殺させるわけにはいかない。
「そのために、ヴェンデッタ、続いてハーゲンを投入した」 - 591◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:38:35
「で、ですが、大総統」
と、アリアを運んだ兵士の一人が口を開く。
「ハーゲン様が敗北すれば、いったいどうするつもりで」
「あれは負けん」
「ですが、万が一も……」
「絶対に負けん」
(なんという深い信頼! アリア大総統は勇者ハーゲンの強さを信じているのだ。何て尊いんだ! うおおおおおおおお! ナチス最強! ナチス最強!)
兵士は涙を流した。 - 592◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:38:57
それをくだらなさそうに眺めながら、アリアは白衣のポッケを漁る。
「ハーゲンは、リアクターを破壊されない限り、何度でも再生する」
「はい! スピードランサーが心臓部のリアクターに気づいたとしても、ハーゲン様はそう易々とリアクターを破壊させないでしょう!
彼女は歴戦の勇者なのですから!」
「そしてそのリアクターはここにある」
無造作に、アリアはハーケンクロイツ状の拳大のサイズの機械をポッケから取り出した。
「……はい?」
「言っただろ? ハーゲンは負けないと。リアクターを破壊すれば、ハーゲンは殺せるが、そのリアクターはあの場所には無いのだ」
だからハーゲンが負けることはない、とトート・アリアは断言した。 - 593◆xaazwm17IRZa25/01/12(日) 21:40:28
投下を終了します
残り短いですが、本企画をよろしくお願いします - 594二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 21:40:42
「赤松華」はかえんほうしゃで呼び出しアイテム焼かれて消えちゃった感じかな?
- 595二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 23:08:13
分霊箱が別の場所にあるので殺せませーんって感じか
- 596二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 03:07:37
このレスは削除されています
- 597二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 10:44:04
おつした
- 598二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 11:37:33
再投下お疲れです…
ここでアリア側に不幸が降り注いでハーゲンが巻き添えをくらうことにリアクターを賭ける - 599二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 13:24:32
設定読んだら無限魔力でビーム撃ちまくりながら無限再生するフィジカル強者で、しかも弱点無し追加は間違いなく最強クラスだなぁ
ここに来てメンダシウム級の敵キャラが出てきてくれるとは戦闘も盛り上がりそうで嬉しいぜ - 600二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 18:53:25
メカガジェット鎧をガチャガチャやりながら戦う敵キャラ正直好き
魔力大砲は槍を展開して撃つ感じかなー。アグネアと同じで魔力半端ないらしいし威力エグそう - 601二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 22:54:15
デッドマンズがティターニアの死を受け入れる見立て通りにいくとは思えないからそっち方面で上手い感じに撹乱してくれれば…
- 602二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 23:46:47
ハスキーロアはブラックブレイドのように概念切断ができる領域に達してる感じではないから、ああああと同じで所詮は魔法って事で万物斬撃飛ばしてもアロンダイト脊髄剣で対応されちゃう?
ナサリーブラウンの魔法も使えたらハスキーの動体視力&身体能力+飛ぶ斬撃とのシナジーがヤバいんやが - 603◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:10:45
本日投下できないので、おまけを……
魔法少女の学力
(非学生キャラは学生時代、あるいはもし学生だったら)
(設定に反する場合は、設定優先で)
1.桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパーdice1d100=34 (34)
2.星月 夜/アルセーヌdice1d100=72 (72)
3.ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイdice1d100=85 (85)
4.妃咲 希/ティターニアdice1d100=95 (95)
5.清原 稞美/ウェンディゴdice1d100=13 (13)
6.薬師院 怜那/ミョルニルdice1d100=98 (98)
7.夜祖神 髑髏/ドレッドノートdice1d100=49 (49)
8.刈屋 伊織/ミストアイdice1d100=71 (71)
9.轟 猫耳/ネコサンダーdice1d100=5 (5)
10.松崎 新一郎/ハートプリンセスdice1d100=4 (4)
- 604◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:11:27
11.ナサリーブラウンdice1d100=83 (83)
12.冨島千秋dice1d100=84 (84)
13.ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクスdice1d100=10 (10)
14.マク=ハク/ノーブル・サヴェージdice1d100=6 (6)
15.天城 千郷dice1d100=77 (77)
16.汐沫 夏実/ジェイルフィッシュdice1d100=94 (94)
17.犬上 沙美/ハスキーロアdice1d100=78 (78)
18.王 龍明/ブレイズドラゴンdice1d100=19 (19)
19.逢魔 愛裏/ナイトメア⭐︎メリィdice1d100=61 (61)
20.麦/ヒートハウンドdice1d100=1 (1)
- 605◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:12:02
21.和妻 颯葵/トリックスターdice1d100=78 (78)
22.大川 羽蘇/オオカワウソdice1d100=29 (29)
23.木羽 マミ/ビリーバーdice1d100=94 (94)
24.桐生 ヨシネ/バーストハートdice1d100=63 (63)
25.ミア/プアdice1d100=67 (67)
26.桐崎 香澄/クレアボヤンスdice1d100=68 (68)
27.玉柳 水華/アレヰ・スタアdice1d100=68 (68)
28.裁原 編/パペッタンdice1d100=9 (9)
29.陣内 葉月/ブラックブレイドdice1d100=24 (24)
30.蜂矢 恋蜜/ハニーハントdice1d100=83 (83)
- 606◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:13:03
31. 逝凪 素鈴/ワンフロムアウターdice1d100=73 (73)
32. 栗田 柿子/ジャスティスファイアdice1d100=5 (5)
33. 姚 莉鈴/ハイエンドdice1d100=24 (24)
34. 佐々利 こぼね/クリックベイトdice1d100=98 (98)
35. 柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドdice1d100=19 (19)
36.らいと/フライフィアーdice1d100=16 (16)
37.王城 姫子/クィーンdice1d100=59 (59)
38.再世 優/テンガイdice1d100=42 (42)
39.七海 真美dice1d100=77 (77)
40.田中 空/スカイウィッチdice1d100=31 (31)
- 607◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:13:36
41.抜刀 金dice1d100=39 (39)
42.槍ヶ崎 舞矢/スピードランサーdice1d100=10 (10)
43.山田 浅悧/慈斬dice1d100=68 (68)
44.メリア・スーザン(分身)dice1d100=33 (33)
運営
00.岸村 文華/パラサイトドールdice1d100=73 (73)
01.パンデモニカdice1d100=96 (96)
02.メリア・スーザン/メンダシウム(本体)dice1d100=49 (49)
03.あ/ああああdice1d100=100 (100)
04. 若麻績 裁華/オートクチュールdice1d100=3 (3)
05.鷺島 鷽/熾店長オシウリエルdice1d100=33 (33)
- 608二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 00:15:37
これは単純に低い出目のキャラは頭悪いクソバカって事でいいの?
- 609◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:26:37
- 610◆xaazwm17IRZa25/01/14(火) 00:51:28
近日中にVSハーゲン、VSジャックを投下します……!
2月中には完結したいですね~(1月完結はちょっと難しそうです)
いつも感想や保守、ありがとうございます……! - 611二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 00:53:54
ジャックは設定的に目立ちたく無いからそこら辺に行ってそう。もしくはティターニアとの接触機会増やすためにわざと低くしたりもあり得る…か?
- 612二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:04:40
>妃咲 希/ティターニアdice1d100=95 (95)
これは教師の面目躍如ですわ
>麦/ヒートハウンドdice1d100=1 (1)
犬だもんな……
>マク=ハク/ノーブル・サヴェージdice1d100=6 (6)
野生児だもんな……
>あ/ああああdice1d100=100 (100)
ダークホースにも程があるだろ
- 613二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 07:45:07
ミョルニルとクリックベイトが高い…そういう気はしてたなぁ
- 614二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 08:48:42
どっちも義務というかやるべきことをちゃんとやった上で好きなことするイメージ
- 615二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 09:06:24
武術家タイプが軒並み低めなのそれっぽい
- 616二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 09:31:27
2月中完結はかなりのハイペースになると思うが、どうか無理をなさらぬよう…
それはそれとしてラスボス戦は学生街編の参加者だけで倒さなきゃいけなかった都合上で弱体化してしまったパラサイトドールとは違って、全力の神話規模の魔境大戦やってくれたら嬉しいぜ! 誰になるか分からんけど! - 617二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 16:53:03
VSジャックVSハーゲンが終わったら残りのエリアの参加者でVSハイエンドとVS怪異やって、そのあと対運営とラスボス戦かな
あと確かあにまん市各地の魔法陣破壊も挟むんだっけ? - 618二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:02:28
一際輝くああああの100よ
智将かな? - 619二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:32:31
もしかしてアリアちゃんナチスごっこ飽き始めた? 100年くらい製造元の命令で続けてたみたいだけど
なんか本性現し始めそうでワクワクする - 620二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:49:09
パラさんとOFOの学力同じでなんか繋がりを感じる
あとアルセーヌも1点低いだけ - 621二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 00:45:43
- 622二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:05:45
ゆっくりミョルニルですわ。
今日は「魔法少女」の三つの要素について解説しますわ。
まず、「魔法少女と変身」です。
魔法少女は、変身すると服装が変わりますわ。魔法少女らしい可愛らしいドレス
姿の人もいれば、私(わたくし)のような騎士姿、お人形さんや犬ロボットへの変身など千差万別ですのよ。
そして変身した魔法少女は認識阻害によってプライバシーが保証されますわ!
私の場合、変身すると、黄金のプレートメイルを纏うだけで、金髪碧眼なのも、ツインテドリルなのも魔法少女ミョルニルではなく、薬師院怜那の個性ですのよ。
では、薬師院怜那を知る者が変身した私、魔法少女ミョルニルを見れば正体が分かるというと、何故か絶対に分かりませんの。
例え私のお父様が魔法少女ミョルニルを見ても「金髪ツインテドリルの美少女黄金騎士がハンマーを振り回しとる!?」とは思っても「うちの愛娘が金ぴか鎧着てハンマー振り回しとる!?」とはなりませんのよ。
本編ではティターニアを始め、何人かの魔法少女が衆人の前で戦いましたけれど、これで身バレすることはありませんわ。
裏を返せば変身前は知り合いでも、変身してしまうと互いのことが分かりませんわ。
その逆も然り。魔法少女としての姿しか知らないと、変身を解除したら気づきませんわ。現に、かつて殺し合ったティターニアとブレイズドラゴンですけれど、王龍明のお店を妃咲希は何度か訪れていますわ。お互いに気づいていなかったみたいですが。 - 623二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:13:14
- 624二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:21:31
- 625◆xaazwm17IRZa25/01/15(水) 01:26:12
(トリ付けるの忘れてました……)
本日はこの辺りで切り上げます……!
いつも感想、本当にありがとうございます……! - 626二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 07:34:21
身バレ防止機能ありがたいな
極端な話変身前と全く同じ見た目でも支障ないのか - 627二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 07:52:27
ゆっくりミョルニルは博識で可愛げもある完璧生物…!
- 628二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 11:35:03
かわいい
- 629二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 17:43:04
このレスは削除されています
- 630二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 23:09:34
別人に変身してるのではなくあくまで認識が妨害されてそう思い込んでいると…なるほどね
- 631◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 01:12:19
今日は本編を書きながら投下します、眠たくなったら眠るので中途半端なところで終わるかもしれません……
- 632二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 01:18:54
体に気をつけてね〜
- 633◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 01:45:04
手応えが、無い。
スピードランサーは驚愕した。ハーゲンの心臓を貫いたのだ。普通なら、これで戦いの幕は下りる。だが、スピードランサーの直感が、攻撃の失敗を告げていた。
「ふははははははっ、甘いぞスピードランサー!」
大槍の穂先に魔力が収束する。それを感知した瞬間、スピードランサーは全力で回避に集中した。
一瞬後、重戦車の砲撃音のような轟音が、空間に響いた。
穂先に収束した魔力は、先端が槍のように尖った、魔力の流星となって放たれた。
周囲のアスファルトや兵士たちの遺体を衝撃波で粉砕しながら、流星は直線に進軍した。
背後にあった家屋に着弾した流星は、勢いを殺されることなく進撃。
そのまま射線上の物質を根こそぎ貫通・破壊しながら500mの破壊跡を刻む。
「ふふ、やはり市街戦は良い。戦車を破壊するのとはまた違う快楽だ……!」
恍惚とした表情を浮かべるハーゲン。
側頭部から血を流しながら、スピードランサーは舌打ちをした。
回避しきれなかった。魔力砲の直撃は避けれたが、周囲の衝撃波にその身を刻まれたのだ。 - 634◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 01:45:15
「ふはっ、どうしたJAPの英雄よ? 竹槍では近代兵器に勝てないと学習できたか?」
「…………けっ、槍捌きで勝てないからってビーム撃ちだしたよ、この馬鹿」
「生憎俺は中世の勇者ではなく、20世紀の勇者! 兵器を使いこなすことこそ俺の誇りよ!
第一、槍より砲撃の方が、敵をたくさん殺せるだろう?」
「たくさん殺せば勇者か? だったらペストでも讃えとけよ」
挑発しながらも、スピードランサーの胸中は焦燥していた。
(脳も違う、心臓も違う。こいつの核は何処だ?)
不死身の魔法少女など存在しない。この敵にも必ず弱点はある。
(見つけ出して殺せばいい。だが、見つけ出すまでにどれだけこいつは暴れる? どれだけの人が死ぬ?)
相性は悪いのだろう。だが、純粋な脚力ならスピードランサーが勝っている。
さっさと逃げ出して、もっと相性の良い魔法少女にバトンタッチも出来る。
スピードランサーはその選択肢を選ばない。 - 635◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 02:29:15
(……これは賭けだな)
スピードランサーは覚悟を決めた。
「武術家としての奥義はもう見せちまったからな」
スピードランサーとハーゲンの視線が絡み合う。
ハーゲンは愉快そうに笑った。彼我の戦力差を見せつけた後の、足掻き。これを粉砕することもまた、戦場の愉悦だ。
「どうするというのだ?」
すぅ、とスピードランサーは右手を掲げた。
空中に魔法陣が浮かび上がる。
「今から見せるのは、魔法少女としての奥義だ」
——千槍。 - 636◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 02:38:54
瞬間、ハーゲンの視界は——槍で埋め尽くされた。
迎撃も、回避も、声を上げることすら不可能だった。
何が起きたのか思考する間もなく、ハーゲンの全身は粉微塵になる。
粉砕機に投げ込まれた果実のように、原型を留めることなくバラバラにされる。
再生が開始される。遠隔のリアクターという非現実的な代物によって、ハーゲンには無尽蔵に近い魔力が供給される。
だが、再生は始まらない。否、始まっている。再生速度が破壊速度に追いついていないのだ。
明滅する意識の中で、ハーゲンは今自分に何が起きたのか理解しようとする。細切れになった脳髄の一瞬の再結合に思考を展開して、攻撃の正体を探ろうとする。
辿り着けない。槍の濁流に呑み込まれたハーゲンには理解できない。
仮に、第三者がその場に居れば、恐怖で身を凍らせていただろう。
ある意味それは、ハーゲン以上に戦争めいた攻撃方法だった。 - 637◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 03:05:23
魔法陣から放たれたのは、槍である。スピードランサーを象徴する朱槍が、次々と放たれていく。
ただそれだけの攻撃。
異常なのは、その密度。槍の雨、という表現すら生ぬるい。奔流、濁流、熱線、巨槍。
『千槍』とは、千本の槍を放つ攻撃、ではない。
——秒間で千本の槍を放つ攻撃である。
物量による飽和攻撃。一秒間で千殺する魔法。
既にハーゲンは今まで殺した数より、殺された数の方が上回っていた。
スピードランサーの視界が霞む。
発動すれば一方的な蹂躙となるこの魔法は、当然莫大な魔力消費を発生させる。
ヴェンデッタ戦で温存したのはこれが理由であった。 - 638◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 04:02:52
本日の投下はここまでとさせていいただきます
- 639二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 07:51:33
お疲れ様です〜
- 640二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 11:15:03
自分のこと卑怯者とか言ってるけどちゃんと心根は正義の魔法少女じゃんね
認めてないのは自分だけとかそういう? - 641二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 13:30:55
一撃必殺じゃなくて多撃必殺か
- 642二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 16:22:10
必殺技なのにノーモーションで撃てるのが偉いね
- 643◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 20:24:17
続きを投下します
- 644◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 20:47:39
◇
国防魔法少女隊「ハーゲン」。十三人の魔法少女で構成された、新進気鋭の戦闘部隊だった。魔法少女部隊は既に「ジークフリート」「ブリュンヒルド」「クリームヒルト」の三隊があり、「ハーゲン」部隊は暗殺・斥侯部隊として活躍した。
アデーレもその一人だった。魔法少女になり、最初は村に現れるエネミーを倒していたが、それだけでは国は良くならないと感じてもいた。
国を立て直すには、強い指導者が必要だ。当時の若者の多くがそう感じ、一人の扇動者を支持したように、アデーレもその熱狂に加わった。
ハーゲン部隊は、対ソ戦線において、成果を上げ続けた。
だが、ソ連は魔法少女の強制徴兵、および強制覚醒実験によって夥しい魔法少女を量産し、第三帝国の魔法少女を殲滅した。
ハーゲン部隊もまた、ソ連の魔法少女「フロストハウンド」によって拠点を探し当てられ、魔法少女の大部隊によって蹂躙された。
仲間の死体に押し潰されながら、アデーレは最期の時まで敵への呪詛を吐き続け。
次に意識が目覚めたとき、アデーレは「ハーゲン」という一人の勇者になっていた。 - 645二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 20:57:53
勇者の姿か? これが…
頭を切られ体を貫かれ潰され、負けを認めぬ醜さ - 646◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 21:37:47
◇
水槽に浮かぶ一人の少女。名を、灰江渚。——本物の勇者。水槽の外側から、ハーゲンは少女の顔を眺めた。
あどけない、どこにでもいる、普通の少女の顔をしている。
これが、ハーゲンから勇者の地位を奪った女なのだという。
人どころか、掌より大きな生き物を殺したこともないような、こんな少女が。
百戦錬磨、戦場で鬼神の如く暴れまわるハーゲンを差し置いて、勇者。
「トート・アリア。俺を騙したのか。勇者で無いのなら、俺は……」
家族も、故郷も、名前も、元の姿すら思い出せない。
「勇者」という肩書すらも幻想だった。
「俺にはもう、戦うことしか無い」
戦闘だけが、己の存在証明。
帝国はとっくに滅んでも、ハーゲンは動き続ける。
全ての敵を滅ぼすまで。 - 647◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 21:51:17
◇
赤い閃光が走った。
「ぐぅっ……!」
スピードランサーは胸を抑える。
血がアスファルトに滴り落ちる。
元々、魔力消費が限界に近づいたのもあるのだろう。
集中が途切れ、千槍が消失する。
残ったのは——大穴である。
直径数十メートル、深さ数百メートルの穴が、学生街に出現していた。
千槍の余波によるものだ。
(さっきの攻撃は……)
咄嗟に槍で壁を作り、かつ体軸を逸らした。
攻撃は壁を貫通し、スピードランサーの胴体を貫いた。後僅かにでも逸れていたら、心臓を貫かれていた。
(槍を再生成する隙なんか、与えなかったんだがな。……まさか目玉だけで攻撃してくるとは)
ハーゲンの片目はレーザーサイトのように赤く光る義眼だ。そして、その義眼からレーザービームが発射される。
ハーゲンは槍でも鎧でも脳でもなく、義眼だけを真っ先に再生させた。そして、義眼が槍に砕かれる前に、スピードランサーを狙い、レーザービームを放った。
- 648◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 22:05:49
足音が響く。
(……仕留めきれなかったか)
脳を刺しても駄目。心臓を刺しても駄目。
この事実から、スピードランサーは「再生回数あるいは魔力が無くなるまで殺し続ける」という戦略をとった。
そもそも一切の物理攻撃を無効にするタイプではなく、ヴェンデッタのように莫大な魔力量で不死身を成し遂げているタイプ、と推測したのだ。
(アタシの想像以上の魔力バカなのか、そもそも攻撃することが無意味なタイプなのか……)
千槍を使ったのはおよそ10秒。その10秒で、スピードランサーは大幅に魔力を消費している。
出血もある。身体に穴が開いているのだ。
(……アレヰ・スタアも、パペッタンも、もっと重傷なのに戦った。あの二人と比べたら、アタシのは『無傷』の範疇だろ……!)
槍を構える。同じ人殺しとして、ハーゲンは此処で始末する。
真っ当な魔法少女を傷つけさせない。 - 649◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 22:36:27
穴の外に顔を見せたハーゲンの表情に、スピードランサーは疑問を覚えた。
先刻までの凶暴な爬虫類のような表情は無く、どこか憂いを含んだ顔をしていたのだ。
ジェット噴射で加速することもなく、魔力砲やレーザーで攻撃することもなく、ハーゲンは地上に帰還する。
血が、ハーゲンの額から頬にかけて流れた。
それを手で拭うと、ハーゲンはくっくっくとおかしそうに笑った。
「無尽蔵に近い……無限ではない。勇者にだって終わりは訪れる、ということか」
ハーゲンのリアクターは魔力炉として機能する。無尽蔵に近い魔力を生成し、ハーゲンを不死身の勇者へと変わる。
だが、短時間で幾多の再生を強要された魔力炉は暴走し、リアクターは破損した。
ハーゲンは、これ以上魔力を生成できない。不死身では無くなったのだ。 - 650◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 22:37:18
(なんだか、妙に爽やかな気分だ……)
敵に追い詰められ、死が近づいている。
その屈辱に悔しがり、激怒する場面のはずだ。
が、何故かそんな気が起こらない。
『アデーレは、槍捌きが上手だね!』
『きっと誰よりも強い魔法少女になれるよ!』
『国を守る、立派な魔法少女にさ!』
(この声は、誰の声だったか……)
思い出せない。それを、少し悲しく思えた。
「スピードランサー」
名を呼ぶ。日本の、当代の、勇者。本人は否定するが、その強さ、その技量。勇者の名に相応しい。
勇者とは、戦士にこそ相応しい。
偶々才能があっただけの一般人など、勇者に相応しくない。——村人として、黙って守られていればいいのだ。
「——魔法少女として、手合わせ願いたい」
「いいぜ」
即答にハーゲンは面食らい、苦笑を浮かべた。 - 651◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 22:52:07
スピードランサーは、槍を中段に構えた。
(何という美しい立ち姿か……)
さっきまでの自分は、どうして気づかなかったのか。ハーゲンは不思議に思った。
大槍を腰だめに持つ。速度は負けている。技量は負けている。だが、身に纏う機械鎧は頑丈で、大槍の威力もこちらが上だ。
(もはや魔力砲は撃てないが……)
じりじりと、スピードランサーへ距離を詰める。
(恐らく、スピードランサーは頭部か心臓を狙うはず)
先刻までの自分なら、その攻撃は無意味だった。
だが、不死身で無くなった今のハーゲンでは、どちらも致命傷となる。
(槍を当てさえすれば、俺の勝ちだ……)
「スピードランサー」
名を、呼ぶ。勇者の名を。
- 652◆xaazwm17IRZa25/01/16(木) 22:52:17
「何故貴様はそんなにも強いのだ? 槍を振るった年数は俺の方が上のはず。どうしてここまで技量が開いた? ……才能か?」
「お前が稽古不足なんだよ。基礎練しろ基礎練」
「……なるほど、確かに稽古などここ数十年していないな……」
槍で殺した数ならハーゲンはスピードランサーを圧倒している。
だが、槍でかいた汗は、スピードランサーの方が上だ。
ずん、とハーゲンは一歩踏み込んだ。
そして、大槍を突き出す。
(きっと、スピードランサーは避ける。魔力砲さえ避けて見せたのだ。この攻撃を、避けないはずがない) - 653二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:36:20
駆け引きの経験値不足感が否めないなハーゲン
- 654◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 01:05:50
中途半端ですが、本日の投下はここまでです……!
感想ありがとうございます、いつも励みになっています……! - 655二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:33:50
マジカルストラッシュは一撃技だからおそらくハーゲン相手では回復で延々と持久戦で戦うハメになっていたんだろうけど、千槍は一発一発が即死級を連発する訳だから滅茶苦茶メタになるのね
殺傷力が高過ぎて使う相手を選ぶけど刺さればマジカルストラッシュ以上だな - 656二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:38:07
全部失った魔法少女が最後に誇りを取り戻す展開好きやで
- 657二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:39:05
このレスは削除されています
- 658二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:40:05
第一話の後悔(当時責任能力ナシ)を最終話まで引きずってるの重い女すぎる
- 659二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 16:59:14
>>槍を振るった年数は俺の方が上のはず。どうしてここまで技量が開いた?
強いて言うなら「誇り」ですかね…
- 660◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 21:12:04
投下します
- 661◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 21:23:11
回避される前提で動く。
現状況で、スピードランサーは後退しない。
前進し決着を狙うか、側方移動で隙を狙う。
(そこを——殴る)
脳内で動きをシミュレーションする。膂力は自分が勝っている。
顔、胴体、どこを殴打しても、スピードランサーに確実なダメージを与えることが出来る。更に大槍で追撃できれば、勝利だ。
ハーゲンの武技は戦場で形作られ、磨かれたものだ。型通りの稽古では身につかない泥臭さが、ハーゲンにはある。
(この緊張感……心地よさすら感じる。いざ! 決着をつけようぞ!)
ハーゲンは大槍を突き出す。愚直に勝利を信じ、勇者は攻撃を行う。
- 662◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 21:32:17
スピードランサーは、避けなかった。
ハーゲンが見惚れる程の流麗さで槍を構え、一気に突き出す。
朱槍の穂先と、大槍の穂先、二槍が衝突する。
拮抗したのは一瞬だった。
ハーゲンの大槍が、砕け散る。
花が散るように、機械仕掛けの大槍は、細かな工業部品となって散らばっていく。
(——見事)
読みの深さで負けたのか。あるいは、自分の武器を信じきれなかった未熟さか。
ハーゲンは静かに敗北を受け入れ、頭部を破壊せんと迫る穂先を眺めた。 - 663◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 21:43:43
『アデーレは、きっと誰よりも強い魔法少女になれるよ!』
懐かしい声が、脳裏に響いた。
同時に、ハーゲンの右足はスピードランサーの脇腹を蹴り砕いた。
肋骨を折られたスピードランサーは、しかし一切動きを変えることなく、ハーゲンの頭部に槍を突き刺す。
頭部を破壊されながらも、ハーゲンは笑みを浮かべる。
「一矢……報いたぞ……!」
「ああ——強いよ、あんたは」
スピードランサーの賛辞に胸を躍らせ、ハーゲンは地響きをあげて倒れ込んだ。
【ハーゲン 死亡】 - 664二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:16:48
スピードランサー、抱え込みがちで義理堅すぎる性格だなぁ
- 665◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 23:15:46
ハーゲンの肉体が粒子化するのを見送り、スピードランサーは小さく息を吐いた。
魔力砲の衝撃による外傷。「千槍」使用による魔力消費。レーザーが貫通した胸部。折られた肋骨。
「まだ、戦える……」
スピードランサーは視線をビルへと向けた。
先行したハスキーロアは無事なのか。
窓から黒煙が上がり、各部で炎が揺らめいている。
スピードランサーは手元に槍を具現化し、柄を掴んだ。
上方へ槍は射出され、スピードランサーも共に空へと昇っていく。
そのまま窓を割り砕き、スピードランサーはビルの中へと突入した。
視界に、デッドマンズ・ハンドとハスキーロアが映る。
デッドマンズ・ハンドは、ハスキーロアに銃口を向けていた。 - 666◆xaazwm17IRZa25/01/17(金) 23:31:29
◇
時は僅かに遡る。
殺人鬼の魔法少女「ジャック・ザ・リッパー」と最年少の魔法少女「ハスキーロア」は炎の中で相対していた。
ジャックは笑みを浮かべる。
(浮気じゃない……これは決して浮気じゃないわ、真美ちゃん!)
想い人に言い訳をしながらも、ジャックは相対する少女へ殺意を昂らせていく。
七海真美のために、自分のポリシーを曲げて誰でも殺傷すると決意した。
が、それはそれとして好みの女の子を殺せるのは嬉しい。人生捨てたもんじゃない、そんな気分になる。
タイムリミットを考えれば、サーチ&デストロイ。参加者は速攻で始末していかなくては。けれど、できればじっくり加工したい。ハスキーロアはそんな逸材だった。
(私がこうやって隙を晒してるのに攻撃しないところが良い。けれど、逃げ出そうともしないところが良い。凄く凄い良い!)
逡巡の末、ジャックは決断した。素早く命を奪おう。けれど、できるだけ好みのやり方で殺そう。
七海真美のために戦う愛の戦士、ジャックには趣味に耽溺する余裕など無いのだ。
コートからナイフを取り出し、逆手に構える。
そして、獣のようにジャックは飛び掛かった。 - 667◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 00:00:47
一瞬で距離を詰め、首を掻き切る。光を失っていく瞳を観察しながら愉悦に浸るのだ。
だが、ジャックのナイフは空を切った。
ハスキーロアがジャックの予想以上に俊敏だったためだ。
(犬系だし並より速いとは思ってたけど、これはちょっと想定外ね)
ジャックは知る由も無いが、ハスキーロアは強化魔法の使い手「初代ハスキーロア」のスペックをそのまま引き継いでいる。
純粋な身体能力ならばジャックを上回っているのだ。
(まぁ、特に脅威では無いんだけど)
逆手に持ったナイフをハスキーロアの頸動脈目掛けて投擲する。
失血死する前に抱擁しながらもう二三刺そうとは思っているが、ジャックはこの攻撃で戦いを終わらせるつもりだった。何しろ時間が無いのだ。 - 668◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 00:13:16
キン、と金属音が響く。
縦に割られたナイフが、地に落ちた。
(……うん?)
目の前で起きた怪現象に、ジャックの思考は停止する。
ハスキーロアは、どこか決意を感じさせる眼差しでジャックを睨んだ。
その表情に、ジャックは薄ら寒さを感じる。
(あれ、何かこの現象、見覚えが……)
ハスキーロアの爪が動く。空間を無視して、万物切断の斬撃がジャックに届く。
「……っ!」
ジャックは咄嗟にコートの中から魔剣「アロンダイト」を取り出した。
鈍い金属音が響く。 - 669◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 00:13:30
ジャックは一歩後退した。その顔からは余裕が失われている。
ジャックの五体は無事であった。
ジャックの右腕を切断するつもりで斬撃を放ったハスキーロアは、自身の目論見が失敗し慄いていた。
アロンダイトがカタカタと震えた。まるでハスキーロアに反応するかのように。
「調子に乗るな。あの子は私の獲物よ」
魔剣に冷酷な言葉を浴びせ、ジャックは注意深くハスキーロアを観察する。 - 670◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 00:45:05
本日の投下はここまでとさせていただきます
今夜もお付き合いいただきありがとうございます……! - 671二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 01:14:20
>ジャックの右腕を切断するつもりで斬撃を放ったハスキーロアは~
いつの間にそこまでの覚悟を
- 672二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 09:17:56
保守
勇者(称号)と勇者(魔法少女名)が居るの紛らわしいわね - 673二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 10:50:05
ブラックブレイドと同じで魔法は強いけどズブの素人であることが弱点かぁ
- 674二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 10:56:58
終盤だからかチートの押し付け合いになってきて楽しい
- 675◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 20:21:11
投下します
- 676◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 20:27:17
ハスキーロアの魔法を、ジャックは知っている。七海真美がテンガイとの戦いで使っていた魔法だ。
確かあれは、ジェイルフィッシュのマジックアイテム「反魂香」の効果だったはず。
(この子も同じマジックアイテムを持っている? あるいは同じような魔法を使える?)
先刻見せられた俊敏性も合わせれば、ハスキーロアは決して与しやすい相手ではない。
が、ジャックは退きたくなかった。
七海真美を殺せなかった悔しさを、ハスキーロアで晴らしたかった。
これ以上、お預けをされたくない。 - 677◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 20:33:01
ハスキーロアもまた、ジャックの想像以上の強さに怯えていた。
9歳の少女に、人殺しの覚悟など無い。だが、無傷で無力化できるほど甘い世界ではないと、彼女は知ってしまった。
腕を、あるいは足を、切り落とす。ゲームが終わった後に責任をもって治せる魔法少女を探す。誰かを生き返らせるために殺し合いに乗ってしまった、本来は善人のはずの少女を止めるには、そうするしかない。
(まさか、『ぶった斬る魔法』を防がれるなんて……)
あの剣も、怖い。斬られたら、全てが終わってしまう気がする。
(けど、止めないと……! 魔法少女同士の殺し合いなんて、間違ってる……!) - 678二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:48:07
そういえば鉄火場にハスキーロア単騎で突入してきたんやね
自分から行くって申し出たのかな? - 679二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:48:50
ハスキーロア…そやつは根っからの悪人じゃ…
- 680◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 21:47:36
ジャックは天才である。どうすればハスキーロアを攻略できるのか。かつ、自分の欲求をできるだけ叶えられるのか。
瞬時に計算し、最適解を導き出す。
魔剣を構え、ジャックはハスキーロアへと飛び掛かる。
ハスキーロアはジャックを止めるため、爪を振り被った。
ジャックは、魔剣をコートに仕舞い、両腕を広げた。抱擁するかのような動作で、ハスキーロアに接近する。
ハスキーロアの動きが止まった。
今『ぶった斬る魔法』を発動すれば、ジャックの胴体を切断してしまう。
慌てて狙いを変える。
「遅いよ」
甘く囁き、ジャックは一気にハスキーロアへの距離を詰めた。
ハスキーロアは——咄嗟に爪を振り下ろすことが出来なかった。
その、強すぎる善性にジャックは愛おしさを感じ、それを永遠のものにするためにナイフを振り下ろす。 - 681◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 21:56:38
ハスキーロアは、後方に引っ張られた。
代わるように前に出るのは、青いドレスの騎士だった。
ジャックの顔色が変わる。
それの乱入を、ジャックは想定していなかった。
何故なら彼女は——死んでいたからだ。
「ティターニア……」
「最強」の復活。
大剣が振り下ろされる。
蘇生したばかりの者とは思えない程、その一閃は鋭く、力強かった。
本能に従い、ジャックはコートから魔剣「アロンダイト」を取り出す。
最強の一撃を、ジャックは紙一重で躱した。
そして、魔剣を最小限に動かし、ティターニアに袈裟切りを浴びせる。
- 682◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 22:13:31
ジャックは、ティターニアの強さを知っている。
今の剣戟は半死人のものとは思えないほど鋭かったが、それでも普段と比べればあまりに遅かった。
それでもティターニア相手に嗜好を満たそうとか、様子見をしよう、という気にはなれない。持てる最大の力で最速に。
魔剣による即殺。
呪いがティターニアに浸蝕し、一度浮かび上がった命を、再び闇へと沈め——。
大剣が、振り下ろされた。
「っ!?」
ジャックは後方に飛び退いた。
異常な事態が起きようとしている。
(落ち着きなさい、私。確かに魔剣で斬った……! もう、ティターニアは死ぬ……! だから、このまま…………嘘でしょ)
ティターニアは、剣を構えている。
- 683◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 22:20:37
剣には、光が収束している。
マジカル・ストラッシュが、放たれようとしている。
(ティターニアには、魔剣が効かないの!?)
この剣は全ての魔法少女にとって猛毒であるはずだ。ジャックの直感がそう告げている。
だが、ティターニアは倒れず、死なず、臨戦態勢でこちらを見据えている。
この場の全員の生殺与奪は、ジャックが握っている。
ナチスから奪った武器の数々、魔剣、インテリジェンスウェポン。それらを駆使すれば死人同然のティターニアを倒すくらいわけはないはずなのに。
(………………駄目よ、ここで万が一でも負けたら、真美ちゃんを殺せない!)
「マミちゃん、退くわよ!」
そう叫び、ジャックは窓に体当たりし、外に身を投げ出す。
インテリジェンスウェポンにキャッチされ、そのまま空高く、殺人鬼の少女は逃げていく。 - 684◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 22:40:47
ジャックが去ったことを確認したティターニアは部屋の中を見渡す。
「…………みんな大丈夫? 怪我とかしてない?」
魔法を魔剣で斬られたああああは、ふらふらと立ち上がり、怪我が無いことを示す。
天城千郷も、紙片の燃え滓を握りながら、頷いた。
ハスキーロアは、喉を震わせる。
自分を庇って、この魔法少女は斬られたのだ。
あの、明らかに異常な剣で斬られたのだ。無事なわけがない。
(また、また私は……)
ナサリーブラウンに庇われ、ブラックブレイドに庇われ。
スピードランサーに守られ。
そして今、この騎士のような魔法少女にも、身を挺して庇われている。
「ごめ、ごめん、なさい……私の、せいで……」
速くこの魔法少女を治さなくてはならない。
病院に連れて行けば治るのだろうか。それとも、一度スピードランサーに相談を……。
涙を流しながら必死に頭を捻るハスキーロア。ティターニアは少女の頭を優し気に撫でた。 - 685◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 22:54:38
「みんな無事なんだね」
(あれ……? なんか雰囲気が……)
この場で、天城千郷だけが、それに気づいた。
ティターニアの部屋で言葉を交わしたときは、もっと学校の先生のような、大人としての立場を明確にさせるような話し方をしていた。
今のティターニアは、まるで少女のようで。
「そっか……良かったぁ」
にっこりと、ティターニアは微笑んだ。
そして、その場に崩れ落ちる。
慌ててハスキーロアは抱きかかえた。千郷も、ああああも、彼女に駆け寄る。
ティターニアの身体が粒子化していく。
ハスキーロアは、涙を流しながら彼女に呼びかけた。だが、言葉が帰ってくることは、二度となかった。
【妃咲希/ティターニア 死亡】
【残り 18人】 - 686二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:01:00
先生ぇえええ!?
久々に見にきたらティターニアが死んでた…読み返さないと…!! - 687◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:05:19
ティターニアが死んだ。その衝撃に千郷は身を震わせた。
最初の印象は良いものではなかった。それでも、命がけで他者を守る姿に、心を動かされていたのだ。
心のどこかで、ティターニアが生きていたら何とかなると、そう信じている自分が居た。彼女の戦いを見ると、誰もがそれを期待してしまうのだろう。
(今の、私に出来ることは……)
世界を破壊したい欲求が、無くなったわけではない。
それでも今は、別の事をやりたいと思った。
(まずは、この犬耳の子を慰めて、お礼も言わなきゃ……っていうか、この子、最初の場所で魔法王に喰ってかかってた……)
「——は?」
声が、部屋の外から聞こえた。
呆けた、世界がひっくり返ってしまったかのような、そんな声だった。
千郷は声の方へ顔を向ける。
デッドマンズ・ハンドが立っている。
常に危険かつ余裕そうな雰囲気を漂わせていたガンマンの魔法少女は、今まで見たことも無い表情で、三人を見下ろしていた。
- 688二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:08:56
親友の弟子と無辜の魔法少女をブッ殺して(不可抗力)二度も親友の死に目に会えないスピードランサーちゃん……
どこかに救いがあるといいね! これが罰だと言われればそれまでだけど! - 689◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:12:59
(あ、やばい……)
千郷は、本能的に悟る。
今、この魔法少女の中で、何かが致命的に破壊されたのだと。
デッドマンズ・ハンドは足早に三人に近づき——ハスキーロアの顔面を蹴り上げた。
「うっ……」
ハスキーロアは苦悶の声を上げ、顔を押さえながらデッドマンズ・ハンドを見上げる。
二人に面識は無い。新たな敵かもしれない。
「お前みたいな有象無象のモブを庇って、のぞみちゃんが死んだ……?」
デッドマンズ・ハンドの言葉は、ハスキーロアの戦意を一瞬で挫いた。
その言葉だけで分かってしまったのだ。二人の間にあった絆を。デッドマンズ・ハンドの怒りを。
「ごめんなさい……私のせいで……ぐぅっ!」
鳩尾に蹴りを叩き込まれ、ハスキーロアは血を吐いた。
- 690◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:21:58
「ま、待って!」
ハスキーロアは頑張っていた。マジックアイテム頼りで、それが燃やされてしまえば震えて見ていることしか出来ない千郷と比べ、彼女は必死に戦っていた。
何よりハスキーロアは、襲撃してきた魔法少女の炎攻撃から千郷を守ってくれたのだ。
「ちゃんと説明するから、その子に暴力は……」
「邪魔」
ハスキーロアを守るように立った千郷は、デッドマンズ・ハンドに突き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
変身している魔法少女の身体能力は、常人の十倍である。
ああああは、震えることしか出来なかった。
ティターニアに少しでも傷がつけば、ああああは報復される。そういうルールだった。そして今、ティターニアは死んだのだ。
(逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ……)
この場にいる魔法少女のことは、デッドマンズ・ハンドを除き、嫌いではない。
が、優先されるべきは、自分の命だ。
- 691◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:22:11
炎の中飛び込んできたハスキーロア。
致命傷を帯びながらも戦い続けたティターニア。
全身を震わせながら立ち上がろうとしている天城千郷。
(逃げなきゃ、でも……)
自分が、酷く浅ましい生き物のような気がした。
そんな迷いも拒絶し、ああああは駆けようとして。
足元に、銃弾が炸裂した。
「ひっ……」 - 692◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:41:19
「まだだよ……まだ、まだ、まだ、物語は、終わらない……」
デッドマンズ・ハンドは、笑みを浮かべていた。
「こんなところで、のぞみちゃんの物語が、ティターニアの伝説が、終わるわけない! だって、主人公だもん! こんな中途半端なところで、舞台から降りるはずがない……!」
ああ、そういうことなんだね。
デッドマンズ・ハンドは納得したかのように首を振った。
「それが、おいちゃんの役割。おいちゃんという脇役の存在理由。おいちゃんは、のぞみちゃんを生き返らせるために……」
リボルバーの銃口が、ハスキーロアを向く。
「——蟹、銃を降ろせ」
窓辺から声が聞こえ、苛立たしそうにデッドマンズ・ハンドは視線を向けた。
血塗れの槍兵が立っている。 - 693◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:41:29
「ちょっとぶりだね、舞矢ちゃん。おいちゃん忙しいから、懐かしトークは後にしてね~」
「——銃を、降ろせ」
「舞矢ちゃんとは小学校からの付き合いだけど、そればっかりは聞けないなぁ~」
「子どものときはアタシの金魚のフンだったくせに、随分偉そうな口効くじゃねぇか、蟹。三度目だぜ、銃を降ろせよ」
二人の視線は交わり合う。
「のぞみちゃんは、死んだよ。この犬耳のモブを庇ってさ」
「………………………………そうか」
スピードランサーは溜息をついた。だが、集中力が途切れることはない。
目論見が外れたデッドマンズ・ハンドは、銃口をハスキーロアに向けたまま、スピードランサーに笑いかけた。
「舞矢ちゃんはさ、こいつのこと許せるの?」
「お前は許せるのかよ、のぞみを裏切る自分のことを」
「許せないよ。だからのぞみちゃんに殺してもらうの。そして巨悪デッドマンズ・ハンドを倒したのぞみちゃんは、もっと上のレベルに上がるんだよ。……ね? これって、絶対勝てるギャンブルだと思わない? だって、魔法少女ティターニアは——」
「主人公なんだから、か。何度も言ったよな、それはお前の妄想だって。この世界に主人公なんか居ねぇよ」
良い奴も、強い奴も、運が悪かったら死ぬんだよ。
二人の魔法少女は睨み合う。
誰もが動けない中、時間だけが静かに流れていた。 - 694◆xaazwm17IRZa25/01/18(土) 23:45:51
本日の投下はここまでとさせていただきます……!
いつも感想で盛り上げていただき、ありがとうございます……!
また、文章量かなり多いので読み返すのは大変だと思います、時間あるときに少しずつ読んでいただけるだけでも嬉しいです……!
明日は一日用事があって本編は更新できないと思うので、深夜に3レスほどゆっくりミョルニルやります。
それでは、お疲れ様でした~ - 695二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:47:11
乙。
そういやジャックこれで実質テンガイとティターニアの二枚貫き達成!?すげーなおい - 696二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 00:01:51
スピードランサー見た感じメンタルそんな強い感じじゃないのにいくらなんでも抱え込みすぎじゃね?
親友と幼馴染が死んだんですよ? もっと感情爆発させてもいいんですよ? - 697二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 08:41:31
良くも悪くも、周りの子より"大人"になるのが一足早かったんだと思う
多分スピードランサー本人は大人=周りに頼らず自立して生きられる人 だと思ってて、だから誰に対しても負の感情を吐き出せずにいるんじゃないかと - 698二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 17:57:46
裏切りの夕焼け
- 699二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 18:51:24
魔法少女で感情を押し殺すなんて事はデバフになりかねんからね
スピードランサーは今こそ遅れてきた全盛期がやって来たって感じか - 700二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 23:36:49
ティターニア死亡の余波が魔法少女達を静かに狂わせる…貴方って罪作りな先生ね…
- 701◆xaazwm17IRZa25/01/20(月) 00:46:42
- 702二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:51:38
このレスは削除されています
- 703◆xaazwm17IRZa25/01/20(月) 00:52:37
- 704◆xaazwm17IRZa25/01/20(月) 00:56:17
- 705二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:59:52
!?
- 706◆xaazwm17IRZa25/01/20(月) 01:05:27
- 707◆xaazwm17IRZa25/01/20(月) 01:14:19
- 708二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 07:49:07
クリックベイト!クリックベイトじゃないか!オマエモマンジュウニナルノダ
- 709二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 16:28:24
バルバロイはステゴロスタイルなのに何をイメージしてカウガールスタイルになったんだろうか
- 710二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 22:53:59
武器を持ってないタイプは隠し種を持ってて
実際に戦うまでタネが分からないと… - 711◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:04:21
すいません、今日は本編進める予定だったのですが、思うように時間が取れず……
昨日と同じく、3レスほどゆっくりミョルニルします
- 712◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:06:14
- 713◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:13:02
- 714二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 00:19:00
このレスは削除されています
- 715◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:23:20
- 716◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:30:05
- 717◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 00:31:33
本日はここまでとさせていただきます、明日はちょっとずつ本編更新する予定です……!
今晩もありがとうございました……! - 718二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 07:49:40
魔法国だと片手間にしか帰れないのね…
- 719二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 09:06:21
同窓会で「都会で働いてる」一本で誤魔化し切るにはしんどいな
- 720二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 17:35:48
いつ見てもかわいい
- 721◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 21:38:13
投下します~
- 722◆xaazwm17IRZa25/01/21(火) 21:52:40
◇
蟹とは、小学校からの付き合いだ。歳は三つ上。いつもアタシにくっついていて、アタシが昼休み、校舎裏で槍術の練習してるときも、ニコニコ笑いながらそれを眺めていた。
蟹の家は貧乏で、それが理由なのか蟹はいじめられていた、らしい。学年が三つ違うから詳しいことはよくわかんねぇ。
その頃アタシはとりあえずムカつく奴は六年生だろうと中学生だろうと蹴り飛ばしてた。蹴り飛ばしたなかに、蟹をいじめてた奴がいたらしい。
それ以来、妙に懐かれた。アタシと一緒に居ればいじめられない、って打算もあったのかもしれない。
アタシは、そういうことに、興味なかった。なんて言うと、いじめを許さない正義漢みたいに聞こえるかもしれないが、単純に学校生活に興味がなかったんだ。
当時のアタシは槍にしか興味を持てなかった。稽古の時間以外は自主稽古と休息の時間であって、勉強とか、友達とか、遊びとか、どーでも良かった。
ああ、別に親父に虐待とか洗脳されてたわけじゃないぜ? そもそも親父は一度も槍術を習うことを強要しなかったし、稽古の時間も1時間程度だったからな。
だからアタシが生まれつきそういう人格ってだけだ。戦うこと、強くなることしか、興味がない。子どもの頃はな。大人になってからは釣りとか、写真とか、色々趣味は出来たけどよ。 - 723◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 00:15:05
アタシが8歳になったころ、妃咲希、後にティターニアになる女と出会った。
その日、アタシは公園で槍の練習をしていた。
そうしたら隣町の六年生が公園を占拠して、砂場で遊んでいる低学年を追い出そうとした。
アタシがそれがムカついたから六年生を全員蹴飛ばして追い払った。蟹はにこにこそれを見ていた。
まぁよくあることだ。
そうしたら見慣れない奴が近づいてきた。
- 724◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 00:15:18
アタシより少し年上のそいつは、胸を張ってアタシを見下ろした。
「下級生のために怒って偉いわ! でも、暴力は駄目よ! 次からは話し合いで解決しなさい」
後からやってきて偉そうに説教したからアタシはムカついて、そいつを蹴った。
偉そうなやつはこれで逃げるか泣くかする。
「何すんだ!」
そいつはぶん殴って来た。
暴力は駄目とは何だったのか。アタシとそいつは取っ組み合いになって、アタシが勝った。
「次会ったらボコボコにしてやる!」
という捨て台詞を吐いて、そいつは去って行った。
それが、ティターニアとのファーストコンタクト。大人になってよくよく考えればティターニアの言い分は正論だと思うので、アタシはこの出来事は忘れたことにしている。
都合の悪いことは忘れる。それが魔法少女の賢い生き方だぜ。
……冗談だよ、そんなドン引きするような目で見んなよ、クリックベイト。 - 725◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 00:23:46
一週間経って、そいつと学校で遭遇した。
喧嘩になるかと思ったが、そいつは胸を張って言った。
「ごめんね、私は強くなりすぎちゃったから、もうあなたとは喧嘩できないの。怪我させちゃうからね。立っているフィールドが違うのよ」
ムカついたのでアタシはそいつを蹴った。
「何すんのよ!」
そいつはぶん殴って来た。
喧嘩できないとは何だったのか。
アタシとそいつが取っ組み合いをしていると、蟹が仲裁に入った。アタシは驚いた。今まで蟹はアタシの喧嘩を止める気配はなかったからだ。
もっと驚いたのは、そいつも蟹に止められると大人しくなったことだ。
「蟹ちゃんがそう言うなら……」
アタシの知らない間に、いつの間にか二人には繋がりが生まれていた。
その時は混乱していたが、後になって分かった。
あの時、二人はもう魔法少女だったんだ。
蟹はずっと前から。ティターニアはこの一週間で。
- 726◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 00:36:07
一年後に、アタシも魔法少女になった。
その時のことはこの前話したっけ?
エネミーに襲われて、鉄柵を槍代わりにして戦ってたら魔法少女になってたって。
エネミーをぶち殺して変化した自分の姿に戸惑ってたら、ティターニアと、デッドマンズ・ハンドがやって来た。
変身しているから、その二人が知り合いだとは分かんなかったよ。魔法少女の説明を聞いて、三人で一斉に変身を解除したときに、蟹とのぞみだって分かった。
そこからは三人でつるむようになった。アタシとティターニアが前衛、蟹が後衛。
アタシら三人は強かった。小学生3人のチームなのに、大抵のエネミーは倒せたし、年上の魔法少女に喧嘩を売られても返り討ちにできた。
んん? ああ、昔はあにまん市ってけっこう治安悪かったんだよ。最近はそうでもねーけどよ。治安の悪い地域には、治安の悪い魔法少女もいる。
オムネグ討伐にアタシら3人が呼ばれたのも、歳の割には強いから、が理由だろうぜ。
まぁ主力というよりは、育成枠、十年後を見据えて経験を積ませたい新人って雰囲気だったが。 - 727◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 02:23:12
短いですが、投下を終了します……
- 728二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 07:44:37
ティターニアとスピードランサーが出会ったのもデッドマンズ・ハンドの仕込みだったり?
- 729二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 07:45:08
投下お疲れ様です
- 730二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 09:19:05
全員がほぼ一貫して蟹呼びなのじわる
- 731二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 16:32:48
保守
- 732二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 17:34:20
あんなに一緒だったのに
- 733二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 17:38:48
強くなるのも戦うのも好きだけど殺し合いは好きくないって自分の毒で死ぬフグみてえな生態してんなお前な
- 734二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 20:06:42
ティターニア先生は「スピードランサーに勝ちてえ」って思ってたのにケンカでも魔法少女としても勝ち目が無いまま死んじゃって
スピードランサーは「アタシは……ティターニアみたいには、なれない……」してるのだいぶ拗らせた関係になってる - 735◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 22:05:41
本日も始めさせていただきます~
- 736◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 22:12:41
オムネグっつーのは、でっかい蛸の怪物だ。百メートル以上はあったな……。招集された魔法少女は三十人弱。その中にはアグネアとかヴェンデッタみたいな魔法国の主力も居た。
当時のアタシらじゃ、あのメンバーじゃ下から数えた方が早いくらいだった。
オムネグは馬鹿デカイだけじゃなく、ボス級のエネミー複数体に、雑魚エネミー数百体を率いていた。
殆ど魔法少女とエネミーの戦争だったな、ありゃあ。
どんどん混戦になっていって、アタシはティターニアや蟹と逸れて、ひたすら周囲のエネミーを殺しまくってた。
だから、ティターニアがオムネグを倒した、その瞬間は見てない。
アグネアの火力でも殺しきれない再生力を持っていた化物を、どうやって当時のティターニアが倒したのか。後から二人に詳しい話を聞いたが、とても信じられなかった。
- 737二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 22:24:25
このレスは削除されています
- 738◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 22:25:11
ティターニアと蟹は、オムネグに呑まれたらしい。
二人はオムネグの体内で、中の人というか、オムネグを操っている張本人と遭遇した。
名を、アザトース。そいつは、そう名乗ったらしい。
とんでもない魔力量だったと蟹は言った。水たまりと海ほどの格差を感じたと。絶対に覆せない圧倒的な絶望感を味わったんだという。
「だけど、ティターニアはそれに打ち勝ったの」
と、蟹は夢見る乙女のような口調で言った。
「のぞみちゃんは私を守るように立ち上がってね、剣に光が集まって、うん、あの瞬間、きっと世界中の希望が集まっていたんだわ、その光でアザトースは滅ぼされた。正義が悪に勝ったんだよ。おいちゃんはね、分かったの。どれだけ絶望的でも——希望の光は絶対に負けないって、気づいたんだよ」
嘘くせぇ話だった。
希望の光とやらで、強弱が入れ替わるなんて、あるわけねぇ。
格下が格上に勝つときは、格上が油断していたか、わざと負けたかのどっちかだ。
アザトースとやらが倒されたことでオムネグも消滅し、私たちは勝ったわけだが、蟹の話をアタシは半信半疑で聞いていた。 - 739二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 23:22:48
格上を倒しうる若い頃の爆発力…?
- 740◆xaazwm17IRZa25/01/22(水) 23:50:33
蟹が変になったのはこの頃からだった。
それまでの蟹は気弱で軟弱な、とても年上とは思えないヘタレだったが、魔法少女に変身しているときは、アタシやティターニアに先輩として、年長者として、あるいはリーダーとして接していた。
けれど、オムネグ討伐の後から、蟹はティターニアを特別扱いするようになった。
この世界の主人公はティターニア、だとか。
ティターニアなら海の向こうの戦争も解決できる、だとか。
「糧鮴を浄化しよう」
と言い出したのもその頃だ。
糧鮴は魔法少女犯罪の巣窟で、魔法国も手を焼いていた。
アタシらは小学生ということもあって、犯罪絡みの問題には首を突っ込んでいなかった。あくまでエネミー、あるいは喧嘩を売って来たチンピラ魔法少女を相手にするくらいだ。
「ティターニアなら糧鮴の悪党どもを倒せるよ!」
ティターニアは天狗になっていたのか、あるいは蟹の「今この瞬間も糧鮴の悪党のせいで泣いてる子どもが沢山いるんだよ? のぞみちゃんは見捨てるの?」という言葉が聞いたのか、糧鮴の魔法少女犯罪に関わりだした。
二人を放っておけないのでアタシも参戦した。
- 741◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 00:07:01
長い戦いだった。アタシらが中学を卒業する頃には、遂に糧鮴を根城にしていた魔法少女たちを追いだすか魔法国の監獄に放り込むことができた。
やっぱりティターニアは凄い! と蟹は絶賛していたが、アタシに言わせれば勝てたのは偶然が大きかった。
仮に糧鮴の悪党共が一つに纏まっていたら絶対に勝てなかった。あの地域は幾つものグループに分かれていて、互いに抗争を繰り広げていた。結局最後まで連携を取れず、個別撃破の形になったんだ。
それに、中学生相手に本気を出せないという、向こうのプライドもあったのだろう。
アタシらの家族に危害が及ぶことはなかったからな。
——あるいは、家族に手を出すことでティターニアやアタシがブチ切れて殺しを厭わなくなることを恐れたのか。
まぁ、色々思惑はあったにせよ、アタシたちは勝った。
——糧鮴は、人間の悪党が巣くうようになった。
まぁ、現実はこんなものだろう。
蟹は人間の悪党もやっつけようとし、ティターニアも渋々付いて行った。けど、主要幹部を全員やっつけて警察署の前に縛って置いておいても、全員釈放された。 - 742◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 00:07:16
魔法国と違って人間の国は証拠がないと逮捕できないからな。
まぁ、暴れている奴を取り押さえるならともかく、組織犯罪を民間人の魔法少女が解決するなんて土台無理な話だったんだ。
蟹は、そのことに苛立っていた。詳しい話は聞かないが、あいつの家に借金の取り立てに来たのは糧鮴のヤクザらしい。
ギャンブル狂いの父親のせいで、蟹の家はいつも貧乏だった。
ティターニア本人も、浮かない顔をすることが多くなった。糧鮴の悪党をみんなやっつけるという作戦が上手くいかなかったからだ。小学生の頃のあいつにあった「根拠の無い自信」が揺らいでいるようだった。
剣道部の活動も、アタシから見ればけっこう頑張っているように見えたが、本人としては中途半端にしか参加できないことを心苦しく思っていたらしい。
アタシはそんな二人を見ながらどうしたもんかねぇと思い、槍を振っていた。
今になっても、どうしたらよかったのか、わかんねぇけどな。人でなしの自覚はあるよ。
- 743◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 00:22:53
アタシが高校に入学してしばらく経ったころ、蟹は魔法国に反乱を起こした。
理由なんかわかんねぇよ。
今考えてもわかんねぇ。
確かに魔法国は色々胡散臭かったし、アタシもある程度距離は置いていたが、だからって王の首を獲ろうとは思わない。
蟹は弱いくせに妙な才能はあったのか、それとも元々反乱分子が燻ぶってたのか、蟹の反抗は魔法国を揺るがす大事件になっちまった。
ティターニアはその時所属してた近衛騎士団を脱退して、蟹を連れ戻すために奔走した。
アタシは……ティターニアと一緒に蟹をぶちのめすことにした。妙にムカついたからな。
死闘に次ぐ死闘。魔法少女はどんどん死んでいった。犠牲がたくさん出て、魔法国は勝利して、蟹は行方不明になった。
ティターニアはここでも英雄になった。けど……アタシたちは負けていた。蟹のせいでたくさんの人が死んで、蟹に償わせることはできなかった。
- 744◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 02:07:00
投下を終了します……!
- 745二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 07:50:42
蟹がキレたナイフ過ぎる…
- 746二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 14:51:55
保守
- 747二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 15:07:52
vsアザトース⭐︎
vs天城千郷 ⭐︎
vsメンダシウム ⭐︎
vsアグネア ⭐︎
vsパラサイトドール ⭐︎
vsジャック ★
ティターニアの戦績が死してなお補強されてゆく…! - 748二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 16:18:21
ティターニアの全盛期が小学生でアザトース=アルセーヌ?を倒した時
ティターニアとスピードランサーの友達だったらしい魔法少女グッドコミュが亡くなって、
ティターニアとブレイズドラゴンが引き分けで相討ちになり、
裏切ったヴェンデッタをスピードランサーが監獄送りにしたのが蟹が裏切った時
時系列的にはこんな感じ?
ブレイズドラゴンと相討ちになったティターニアが英雄や最強扱いで、ヴェンデッタを討ち取ったスピードランサーが周囲の話にほぼ出てこないのは性格的にそういう評価を嫌って雲隠れしたから? - 749二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:25:01
ティターニアが過去に見せた最強格の全盛期を、本編でも同じ最強格でまだ到達していないらしいスピードランサー見せてくれぇー
でも「戦うのが好きだけどやっぱり戦うのは好きじゃない」みたいな謎の矛盾を解消しないといけない気がする! - 750◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 22:20:58
続きを投下します
- 751◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 22:35:18
◇
スピードランサーの話を、クリックベイトは黙って聞いていた。釣り堀に糸を垂らし、一度も視線を向けることなく、相槌一つ打たず。ただ空気のようにその場に溶け込んでいた。
スピードランサーが黙すると、しばし静寂がその場を包んだ。
「ん? それで終わり?」
不思議そうな調子で、クリックベイトは訊いた。
「あー……終わりだな。蟹とはそれっきりだ」
「ふーん……」
客観的に考えれば、重い話だ。更に言えば、デッドマンズ事変の裏話でもある。スピードランサーは同情や好奇心を期待してこの話をしたわけではないが、クリックベイトの冷めた態度は僅かに彼女を驚かせた。
「僕にこの話をするってことはさ、スピードランサーは後悔してるんだよね」
「そう、なのかねぇ」
「じゃなかったら急に語りださないでしょ」
確かに、とスピードランサーは納得する。
慰めてほしくて語ったわけではない。ただ、いつものように二人で釣りをしていて、急に話したくなったのだ。語る理由はないが、語らない理由もない。
クリックベイトはどこまでもフラットだ。人から悩みを相談されやすい体質だと、以前本人から聞いたことがある。
過度に慰めることもしないが、周囲に言いふらすこともしない。そんな態度が、魔法少女に口を開かせるのかもしれない。 - 752◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 22:52:14
「後悔か……」
スピードランサーは思い出す。小学生の頃、黙々と稽古をする自分を微笑んでみていた少女の顔を。
魔法少女として熱心に指導する姿を。
まくしたてるようにティターニアを褒めたたえる姿を。
「アタシはどうすりゃ良かったんだろうな」
「分からないの?」
「全然わからん」
「前から思ってたけど、スピードランサーって超然としてるようで中身子どものままだよね。20代の魔法少女ってみんなそうなの?」
「ああ!? んなことねーよ……いや、でもティターニアもガキの頃から性格変わってねぇよなぁ……」
デッドマンズ事変以降は、敵方にいた拳法使いの魔法少女と相討ちになって以降は、無鉄砲ではなくなった。それでも、取り繕うようになっただけで、素の性格は真面目で正義感が強く、沸点が低く負けず嫌い、のままだ。少なくともスピードランサーからはそう見える。
自分は、と顧みるが、趣味は増えたが、やはり素の性格は小学生の頃から変わっていない気がする。ムカつく奴を蹴飛ばすことは無くなったが。うん、今は揶揄うくらいで、成長を感じる。 - 753◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 23:21:12
「僕が思うに——アザトースとかいう奴は、君が倒すべきだったんじゃないのかな」
「アタシが?」
「そうしたら、デッドマンズ・ハンドの執着は君に向けられていただろう。で、君はティターニアほど責任感も強くないし、正義の味方って柄でも、圧倒的主人公ってキャラでもないから、そのうちデッドマンズ・ハンドは冷めてたんじゃないのかな」
ティターニアはデッドマンズ・ハンドの理想に届くポテンシャルはあった。だからこそデッドマンズ・ハンドは光に焼かれ、凶行に走った。
仮にスピードランサーであったなら、アザトースとやらを槍で刺し殺し。理想の魔法少女にまるで遠い性格のスピードランサーであったなら。
きっとデッドマンズ・ハンドは魔法少女に幻滅し、引退し、今頃は普通の社会人になっていたのかもしれない。
「……ティターニアは、のぞみのアホは、蟹がおかしくなったのは自分のせいだって思ってる。デッドマンズ事変で死んだ魔法少女は、グッコミュ含めて自分のせいだってな。あいつが教師になったのも、元々はグッコミュの夢だ」
アタシがもう少し上手くやれてれば、あいつに背負わさせずに済んだのかな。
スピードランサーの独白に、クリックベイトは静かに受け流した。
「だったら話は簡単だよ。君、スピードランサーだろ。これから、何か悪いことが起こったら、魔法国とか世界全体を揺るがすような事件が起こったら……君が真っ先に駆けつけて解決しちゃえばいい」
「それは——いいな。シンプルで、アタシ好みだ。お前も協力しろよ?」
「え、嫌なんだけど……」
スピードランサーの釣り竿が揺れた。笑いながらリールを巻く。ずっと抱えていたもやもやが、少しだけ晴れた気がした。
——二人が魔法国の依頼で黒竜の噂を調査するのは、半年後のことである。 - 754◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 23:42:49
◇
ティターニアは死に、デッドマンズ・ハンドはハスキーロアに銃口を向けている。
そしてスピードランサーは、デッドマンズ・ハンドに静止の言葉を投げかけていた。
「もう一度言うぜ、銃を下ろせ、蟹」
デッドマンズ・ハンドはシニカルな笑みをスピードランサーに向けた。
「おいちゃんと早撃ち対決するつもり? 舞矢ちゃん、肩で息してるよね? しかも全身血だらけ。おいちゃん喧嘩弱いけど、今の舞矢ちゃんなら勝てそうな気がするな~」
「——お前が強いことは、よく知ってるよ。だから言ってんだ。銃を下ろせ。——加減できねぇんだよ」
デッドマンズ・ハンドの弾丸は必中だ。一度撃たれてしまえばもうどうすることもできない。
唯一の対処法は——引き金を引く前に、全てを終わらせることだけだ。
「それは、諦めろってことだよね? のぞみちゃんを諦めろ。おいちゃんの夢を諦めろ。おいちゃんみたいな不幸な子どもが生まれない世界にすることを諦めろって、舞矢ちゃんはそう言ってるんだよね!? そんなの、絶対に嫌だね!!」
「——ティターニアが、そんなこと望むわけねーだろ。お前なら、よくわかってるだろ、アタシ以上に」 - 755◆xaazwm17IRZa25/01/23(木) 23:43:01
「知ってるよ。のぞみちゃんはおいちゃんを許さない。今度こそおいちゃんはのぞみちゃんに殺されちゃうの。十年前じゃ上手くいかなかったからね。もっともっと英雄にしてあげるつもりだったのに。
でも、今回は大丈夫。魔法王が起こした最悪のバトルロワイアル。それに乱入して善良な魔法少女を皆殺しにした最低最悪の魔法少女、デッドマンズ・ハンド。それを倒す正義の魔法少女、ティターニア!
今度こそ、のぞみちゃんは伝説になる! 始まりの魔法少女を塗り替える、最高の物語が始まるの! こんな『絶対に勝てるギャンブル』、やらないわけないよね」
早口でまくし立てるデッドマンズ・ハンドを、スピードランサーは沈痛な表情で見ていた。
「それを舞矢ちゃんみたいな『脇役』が邪魔するなら——おいちゃん、容赦しないよ?」
「…………少しはアタシの方も見ろよ……」 - 756◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 03:05:42
スピードランサー。デッドマンズ・ハンド。二人の魔法少女の視線は絡み合った。
音が響いた。
銃声より重く無機質な音だった。
壁に槍が突き刺さっている。
首から上を吹き飛ばされたデッドマンズ・ハンドは、引き金に指をかけたまま仰向けに倒れ込んだ。
【蟹魔万/デッドマンズ・ハンド 死亡】 - 757◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 03:16:16
「…………怪我は無いか、ハスキーロア。遅くなったな」
デッドマンズ・ハンドの血を頭から浴びたハスキーロアは、髪を濡らしながらスピードランサーを見上げた。
ぱくぱくと、その口が動いた。
だが、今のスピードランサーにどんな言葉をかければいいのか。9歳の少女には見当もつかなかった。
ハスキーロアが軽傷であることを確認すると、スピードランサーは安堵の表情を見せた。
そして、部屋の壁に背中を預け、腰を下ろす。
「悪い、少しだけ、ちょっとだけ休ませてくれ……」
スピードランサーは長い溜息をついた。
その場を沈黙が支配する。
デッドマンズ・ハンドの身体が音も無く光の粒子になり、消えていった。
- 758◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 03:16:31
投下を終了します
- 759二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 07:50:48
狂乱のデッドマンズハンドも落ちたか…既に正気を失ってたんかな…
- 760二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 08:50:50
ガンマンが最期はお得意の早撃ち対決で負けて終わる構図、ちょっと美しいなって思ってしまった
- 761二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 11:38:32
誰も守れないし救えない魔法少女
ティターニアなら救えたのに……🤖 - 762二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 12:39:12
自分にとっての救いすぎて信仰となってしまってたわけか
現実のティターニアではなく自分の中にある理想のティターニアにばかり目を向けてしまうほどに - 763二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 20:08:41
後顧の憂いもなく英雄として死ぬことができたティターニアと、薄汚い卑怯者の人殺しで今度は洗脳もなく自分の意思で幼馴染も手にかけたスピードランサーの対比が残酷でステキ
- 764◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 22:03:34
投下します
- 765◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 22:09:15
学生街を目指そう、と提案したのはクィーンだった。
ジェイルフィッシュも同意する。
学生街でドラゴンとロボが戦ったという情報は、山岳地帯にも伝わっている。テレビこそ無いが、スマホが圏外になるほど奥地にいるわけではない。SNSで情報は入手できる。
アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドを撃破した後、クィーン、ジェイルフィッシュ、ノーブル・サヴェージは消火活動を行っていた。
アリスの眷属にされた者の中には何人か生存者も混じっており、彼等を山から避難させながら、三人は少しでも山火事を鎮静化しようとした。
消防隊が駆け付けてからは大人に任せ、三人は静かにその場を後にする。
……というわけにはいかなかった。 - 766◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 22:16:47
「パダギパジャラビボボス(私は山に残る)」
生まれはアマゾン育ちはジャングルのノーブル・サヴェージは、自然から離れることを拒否したのだ。
説得しようにも言葉が通じない。
というか、実のところ山に残るというノーブル・サヴェージの意思も正確に伝わっているわけではない。
ただ、嫌がっていることは身振り手振りで伝わった。何だかよく分からないが嫌らしい。
言葉が通じれば説得するなり交渉するなり説教するなりできたが、通じないので話し合いのしようがない。
力ずくで団体行動を取らせる理由も義理もない。
三人は、二人と一人に分かれた。 - 767◆xaazwm17IRZa25/01/24(金) 22:32:19
学生街に向かう途中で、放送が聞こえた。
残り六時間。それまでにゲームが終わらなければ死ぬ。
普通の人間ならパニックになっておかしくない宣告だが、二人は静かに受け入れた。
アリスとの交戦、それによって生じた無数の犠牲者が、10歳と14歳の少女の心を麻痺させていた。
「残り六時間で呪いをどうにかしないといけないわね」
「……私たちの知識じゃ太刀打ちできないの。生き残った魔法少女の集合知が必要なの」
「ねぇ、ジェイルフィッシュ。もしかして、知り合いの名前が呼ばれた?」
クィーンの問いかけに、ジェイルフィッシュは頷く。
「ミアっていう、魔法少女なの。仲が良かったわけじゃないけど」
好きか嫌いかで言えば、嫌いだ。反社会的な、危険な空気を漂わせながら、善良な宮島家に上がり込んだ女。
……決して祐樹がミアに夢中だからとか、そんな子どもっぽい理由じゃない。マジで違うの。
さっさと出て行けとは思っていた。が、死んでほしかったわけではない。
ミアの死は、宮島姉弟を悲しませる。それくらい、神童じゃなくても分かる。
「安心して欲しいの。取り乱したり、戦意喪失したり、優勝狙いに切り替えるような関係の相手ではないの」
ジェイルフィッシュの言葉が虚勢や虚言ではないとクィーンは悟り、心中で安堵する。……そして、安堵したことに軽い自己嫌悪を覚える。 - 768◆xaazwm17IRZa25/01/25(土) 01:25:24
短いですが、投下を終了します
- 769二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 07:51:08
梃子でも動いてくれなさそうなノブ子は今後どうするんだろ
駆けつけた消防隊と異文化コントやって終わりじゃないと信じたいが - 770二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 08:09:47
この二人で近くを徘徊しているハイエンドと戦うのはきついか?
- 771二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:07:32
「二手に分かれる」そうかー
サヴェージと行動すると向こうの足枷になりかねないし単独の方が動きやすそうだな - 772二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 13:50:41
- 773二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 19:17:24
山岳エリアのジェイルフィッシュとクィーンとノーブルサヴェージとクレアボヤンス
南部エリアのバーストハートとネコサンダーとメリィとウェンディゴは戦闘回数が少ないからどこかで戦闘シーン挟むと思うけど
余りの敵対者がジャック、ハイエンド、運営のグレンデルと殺意高くて挑むには戦力的に心許ない感じ - 774二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:26:55
保守
- 775◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:02:15
投下します
- 776◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:16:11
第二回放送では、クィーンの知り合いは呼ばれなかった。
ただ、「麦」という名は呼ばれた。チャイナドレスの魔法少女が探していた名だ。
(彼女はゲームに乗るのかしら……)
優勝を目指していてもおかしくない。そんな情念を感じた。そして、もし彼女がゲームに乗ったのなら、とてつもない強敵になるという予感も。
躊躇なく他者の指を噛み千切る、他者を害することに一切のブレーキが無い怪物。
先ほど倒した……否、殺したアリスも、言動の端々にどこか人間らしさを漂わせていた。同時に他者を操り、殺し、傷つけることに躊躇いが無かった。
魔法少女は変身を解除すれば普通の少女であり、殺人や犯罪とは無縁の存在——そんなイメージを捨てなければならない。
ドレッドノート、アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド、チャイナドレスの魔法少女。いずれも変身前は学校に通うごく普通の少女——ではなかったはずだ。 - 777◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:16:30
裏社会。あるいはもっと深い場所に根を張る怪物たちだったはずだ。
(ドレッドノートとアリスは舞台から降りた。残る危険人物は、チャイナ少女と、ジェイルフィッシュが言っていたテンガイ……)
その時、ジェイルフィッシュのスマホが振動した。
クィーンは立ち止まる。
歩き通話は危険、もあるにはあるが。
この状況で架けてくる電話は貴重な情報を運んでくる可能性が高い。
ならば、立ち止まって周囲に気を配るべき、という判断である。
架けてきた相手を見て、ジェイルフィッシュは複雑そうな顔を浮かべていた。
嬉しさ半分、不安半分。
仲間から、というわけではないのだろう。
「——もしもし、祐樹、何の用なの?」 - 778◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:57:37
『夏実、大丈夫だった?』
液晶の向こうから聞こえてくるのは、声変わりもしていない少年の声。ジェイルフィッシュの弟だろうか、とクィーンは推理を働かせる。
「うん、大丈夫だったの。祐樹の家は無事だったの?」
『うん、俺んちも無事。けど、父さんと母さんが怖がって、街を出ようって話してる。今、家を出るところ』
「そう。私もそれがいいと思うの。あの馬鹿デカイドラゴンはいなくなったけど、また現れるかも知れないし」
『ところで夏実。プア、見なかった?』
「——っ」
ジェイルフィッシュの顔が固まった。
- 779◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:57:49
だが、すぐに言葉を返す。
「知らない。家に居ないの?」
『昨日の夜に家を出て行ったんだ。もし見かけたら、俺達は一旦街の外に出たって伝えて』
「分かったの」
『なぁ……本当にプアがどこに行ったか知らないんんだよな?』
「私はプアの家族でも友達でもないの。今どこで何をしているかなんて、知るわけが無いの」
『そっか、そうだよな……。じゃあ通話きるぞ。夏実も早めに避難しろよ」
「了解なの」
そして、通話は切れた。
- 780◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 02:58:20
短いですが、ちょっと眠気が我慢できないので、投下を終了します……
- 781二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:17:21
乙
- 782二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:58:04
主戦力が粗方脱落してるもんなぁ…
目に見えてスピードランサーに掛かってる負担が増していってる - 783二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:36:02
睡眠はしっかり取ろう
- 784◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:07:13
投下します~
- 785◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:15:57
◇
家の外で、宮島祐樹はスマホに目を落とした。
(今の夏実、ちょっと変だったな……)
夏実とミアは仲が悪い。悪い奴から必死に逃げてきたミアに冷たくするなんて、意地悪な奴だ。けれど、普段の冷たい感じとは少し違っていた。
(もしかして、ミアが今どこに居るか知ってるのかな)
すぐに、そんなわけないと首を振る。夏実は知らないが、ミアの正体は魔法少女だ。
夏実がどれだけ偉そうにしていても、この世界に魔法があるなんて知らないだろう。
この前、「夏美は魔法とかあると思う?」って聞いたら「いい加減そういうのは卒業するべきなの」なんて言ってたし。ミアが魔法少女だって知ったらひっくり返るに違いない。
- 786◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:23:55
学生街の竜とロボの戦い。祐樹はワクワクしながら観戦していた。きっとこの戦いにミアも関わっているに違いない。
映像ではロボットから飛び出した人影が、竜に一撃を浴びせて倒していた。
正義は勝ったのだ。
祐樹の両親はすっかり怯えて市外に脱出しようとしている。
クラスLINEでも何人かの友達が同じように逃げようとしているようだ。
もう逃げなくていいのに。親にそう言ってみたが、聞く耳を持ってくれなかった。
ミアを置いて逃げるのは心苦しい。けれど、親に逆らって家に残るほど、祐樹は強情ではなかった。
引っ越すわけではない。安全だと分かればすぐに帰ってくる。だから祐樹は部屋に置手紙を残し、姉や両親と一緒に街を出る。
(ミア……今、何してるんだろ)
きっと、悪い奴と戦っている。他の魔法少女とも協力してるのだろうか。あのロボとも関係があるのだろうか。
(俺も一緒に戦いたいな……)
姉には否定されたが、祐樹はきっと力になれると信じていた。自分にだって魔法が使えるようになるかもしれないし、魔法が使えなくても勇気と機転で悪者と戦えるはずだ。 - 787◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:35:38
「落ち込んでいますねぇ、宮島祐樹くん」
「えっ!?」
耳元で甘く囁かれ、祐樹は飛び上がった。
いつのまに、そこにいたのだろう。
頭から山羊の角を生やしている、異形の少女。
「めぇは、黒贄山羊と申します」
「もしかして、魔法少女……?」
げぇ、と黒贄と名乗る少女は顔を顰めた。
「なんという侮辱。めぇはこんなに酷い悪口を言われたのは初めてです」
「魔法少女じゃ、ないの……?」 - 788◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:35:52
「めぇは、黒贄山羊です。魔法少女、という名前ではありません」
「は? 違うよ、魔法少女っていうのは名前じゃなくて、えーと、何だろう……ヒーローみたいな意味で……」
「だったらヒーローとか超人とかバケモノと言うべきです。魔法の少女なんて、酷い悪口。めぇは傷つきました、ぐすん」
祐樹がもう一二歳幼ければ、勢いに負けて謝っていたかもしれない。
今の祐樹は黒贄に対し気味の悪さを感じていた。祐樹の知る魔法少女はプア/ミアだ。ならば魔法少女呼びを嫌がる黒贄はミアの敵サイド=悪党ということになる。 - 789◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 21:48:50
(悪い奴……やっつけないと……でも、どうやって。こいつも、ミアと同じくらい強いのかな……)
妄想では怪人や怪物相手に大立ち回りができる。だが、現実の祐樹は大柄なクラスメイトにも勝てない。
恐怖で足が竦む。
「あれ、怖がらせちゃってる……ううむ、子どもの扱いは難しいですねぇ。めぇ、反省。怖がらないでください。めぇは祐樹くんに、魔法少女ミアの居場所を教えるために来たんです」
「本当!? ミアは、ミアは無事なの?」
けらけらけら、と黒贄は笑った。
「知りたいですか? 知りたいですよね! だったら、祐樹くんもナラカに入りましょう!」
「ナラカって、何……?」
「それを説明するには、今のあにまん市の状況を理解する必要があります。少し長くなるので、とりあえず入ってから考えましょう」
ぬるり、と黒贄は祐樹に近づく。
祐樹は、足を竦ませていた。
ミアは、すごい力をもっていたが温厚な性格だった。
夏実は意地悪だが、普通の女子だ。
黒贄のように性格に捉えどころがなく、超常的な雰囲気の存在。そんな危険な存在に出遭ったことはなかった。
怖い。
クラスメイトや、先生や、お化けとは、まるで別種の怖さ。 - 790◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 23:01:14
「——すいません、ちょっといいですか」
第三の声に、祐樹と黒贄は声の方を向く。
警官が立っている。年配の男と、小柄な若い男。
「君、この家の子?」
年配の警官に声をかけられ、祐樹は頷く。
「で、君のそれはコスプレ? 君もここの家の子?」
「めぇは、黒贄山羊と申します」
年配の警官に、黒贄は頭を下げる。
警察が来てくれたという安堵。そして、警察では相手にならないという予感。
黒贄が危険であることを伝えるべきか、祐樹は悩み、口を開こうとしたところで。
突如、背後から目と口を抑えられる。
(しまった、この警官も悪者だったんだ!)
必死に手足を動かすが、びくともしない。
「ゴメンネー」
どこか片言な日本語が聞こえるが、祐樹は気にも止めず、何とか逃れようと手足を振り回す。 - 791◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 23:12:40
黒贄は、三人目の警官に取り押さえられた祐樹を訝し気に見た。
「めぇ? いったい何をして——」
銃声が響く。
黒贄の額に風穴が空いた。
黒贄は呆けた表情のまま、仰向けに倒れ込む。
撃ったのは、小柄な若い警官である。
倒れた黒贄に慎重に近づくと、更に頭部に二発、心臓に二発、弾丸を叩き込む。
- 792◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 23:12:56
それが終わると、撃った警官は帽子を脱いだ。
「……終わりましたか、ジャスティスファイア?」
「敬語はやめてください、佐藤さん。それに、恐らくこいつはこの程度じゃ死なない」
男の制服に身を包んだジャスティスファイアは、ステルスモードからジャスティスモードに変身、ロボット犬の姿で黒贄が蘇生するのを待ち構えた。
(容赦ねぇなぁ)
と、子どもにショッキングなシーンを見せないために目を覆ったバルバロイは思う。
銃声が響いたことで少年はますます暴れている。
とん、とバルバロイは少年の首を軽く叩いた。
瞬時に少年は意識を失う。
(……初めからこうすれば良かったか? 私もまだまだ修行不足だ)
気絶した少年をどこに置こうか考えながら、バルバロイは来る戦いの空気を鋭敏に感じ取っていた。 - 793◆xaazwm17IRZa25/01/26(日) 23:23:37
投下を終了します……!
いつも感想ありがとうございます!
ノブ子は後二回バトルする予定で、2戦目の対戦相手は決まっているんですが、1戦目は誰にしようか考え中です~
山岳地帯近くのの魔法陣、『ネッカーピン資料館』はノブ子単騎攻略の予定で、そこで魔法陣を守るボスキャラと戦わせようと思っているんですが。
既存の参加者や運営キャラは手が空いていないので、まだ出していないエネミーか、ドミナートルで退場した魔法少女か、ハーゲンのように新キャラを募集するか…… - 794二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:29:46
ダイスで決めてみたら?
- 795二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:32:20
ボスだからエネミー以外が良いかな…?完全新規のキャラも面白そう
- 796二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:35:11
Wikiのエネミー見たら影女ってのがまだ出てない?
ボス級のエネミーとしてはちょうどいいかも - 797二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:40:38
前作みたいに敵キャラ(魔法少女)募集は適当に投げてもいい感じ?
瞬殺でも大丈夫 - 798二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:49:30
めぇもなんだかんだ可愛い
ちょっとどころか大分、腹黒っぽいけど - 79976925/01/27(月) 08:07:49
せっかく安価カテに立ってることだし選択肢の中から安価ダイスで選ぶとか
あと気を遣わせてごめんスレ主!!けどそれはそれとして先の展開はあんまり具体的に言わないでほしい!!我儘でごめんね!!!! - 800二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 17:07:16
募集かゾンビが丸いかな?
- 801二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:43:30
単騎攻略が前提だからボスは単独か少数先鋭にはなりそうかしらねぇ
- 802二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:47:24
- 803◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 02:47:10
皆さん感想やご意見ありがとうございます~
ノブ子の1戦目の対戦相手は候補の中からダイスで決めようと思います~
1月30日の24時までに挙がった候補の中からダイスで決めます
既存のエネミーや第二回放送前に退場済みの魔法少女のゾンビでもいいですし、新キャラの設定を投げていただいてもOKです
(ダイスで選ばれなかった新キャラは、何らかの出番を用意します) - 804◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 03:00:59
- 805二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 07:46:53
了解ですー
- 806二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 09:49:05
The・かませなキャラを考えるか…
- 807二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 16:57:08
これはノブ子の対戦相手とは全く関係ないんですが、魔法王が居たら魔法女王もいるのかなぁ、と思い投げてみた次第です。
良かったら使ってください。使わなくても全然大丈夫です。
【魔法少女名】ミネルヴァ・ミストリル
【変身前・変身後の外見】
変身前:車椅子に座った、年老いた美しい銀髪の老婦人
変身後:同じく車椅子に座り、12歳ほどに若返った豪奢なドレスの銀髪少女
現在は変身状態を強制的に維持させられ、血涙を流しながら謎の機械に接続された状態
【年齢】魔法王と同年齢/変身中は12歳
【趣味/魔法少女としての日課】チェス/後進の育成
【好きなもの】魔法国と魔法王、アグネア、ティターニアとスピードランサー
【嫌いなもの】国を脅かすもの
【性格】穏やかで心優しい良妻賢母
現在は改造手術の影響で自我は殆どない
【得意な魔法】
『計算が得意だよ』
限定的な未来視すら可能にする極めて高い演算能力。
強力だが使い過ぎると脳に多大な負荷を掛ける。
車椅子を使用しているのも過去の後遺症のため。身体能力も皆無。
【詳細】
魔法王の妃。若い頃は魔法少女として夫を支え、魔法国の安寧に勤めていた。
近衛騎士団時代のティターニアや、ティターニアと同期のスピードランサーとは年の離れた親友のような間柄。
現在はトート・アリアによって脳を弄られた上で演算魔法を利用され、アリアや勇者の使い捨て強化パーツのような扱いを受けている。
【備考】
魔法の危険性からパラサイトドールに初手で洗脳され、アグネアに対する人質として利用された。
人質となった自身を前に絶望し、アリアの手で改造されるアグネアを目にしたのが最後の記憶。 - 808二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:00:32
【エネミー名】
ドミナートル・ドライ
【説明】
ドミナートルの発展強化型。
三人の魔法少女の死体を結合させて作ったフランケンシュタインの怪物。
素体それぞれの固有魔法を同時に操ることができるが、通常ドミナートル同様に素人な上に無理矢理な合体の影響で理性が無いバーサーカー状態にある。
現在は見張り役のナチス兵士を皆殺しにして山岳地帯を徘徊している。
(ダイスで死亡済み魔法少女から三人選んでください。) - 809二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:17:59
せっかくなのでブレイズドラゴンとクライオニクスを合体させたゾンビ魔法少女
- 810二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:55:40
【エネミー名】
ツィヴィリザツィオーン
【説明】
「文明」の名を冠した機械兵器。
内部に魔法少女(死体でも可)を組み込む事で力を増す機能を有する。対象が生きていると増す力も大きい。
数人組み込むだけでただの魔法少女には太刀打ちできないほどの性能を発揮するが、魔法少女と敵対した場合可能な限り生かしての無力化と組み込みを優先する行動パターンを持つため動きが読まれやすいこと、スピードはあるが魔法少女ほどの小回りがきかないことなどが弱点。 - 811二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:57:11
噛ませ犬魔法少女を投げておく
【名前/魔法少女名】弓ヶ浜 ヒカリ/ランドウ
【変身前・変身後の外見】
変身前:上下黒の長袖スウェットを着た黒髪の女性
変身後:鬼を象った鉢金と面頬を装備した侍風コスチューム
【年齢】23
【趣味/魔法少女としての日課】道場破り、奥義盗み、名刀収集/傭兵
【好きなもの】新しく手に入れた奥義や名刀を使った試し切り
【嫌いなもの】バカにされること
【性格】傲慢かつ残虐で、煽りに弱く頭に血が昇りやすい
【得意な魔法】
『手にした物はなんでも名刀だよ』
手に持った棒状の物体、および自身の肉体を「名刀の模倣」に変化させる魔法。いわゆる武⚪︎色。
木の枝から丸めた新聞紙まで、手にした全てが名刀を模倣した切れ味と強度を有する。
自身の肉体であれば手刀・貫手や足刀が斬撃と化し、硬化部位はマジカル・ストラッシュすら通じなくなる。ただし全身硬化は消耗が激しいので一瞬しか使えない。
なお、あくまで「模倣」に過ぎないので完成に至った斬撃や本物の名刀には断ち切られてしまう。
【魔法少女になったきっかけ】楽して強くなりたかったから。道場破りも変身状態で行っている。
【詳細】
一目見ただけで他者の流派や奥義を完璧に真似できる模倣の天才。
槍ヶ崎流槍術、陣内流剣術、抜刀流居合術、ブレイズドラゴンの拳法などの技術や奥義を使いこなす。
技量自体は非常に高いが、技の本質には全く頓着せず、独自の技を開発する気概も皆無なので完成に至ることは決してない。
【備考】
自称『最強の魔法少女ティターニア、最強の傭兵ブレイズドラゴンのライバル』だが、彼女達からは意識どころか認知すらされてない。 - 812二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 19:04:39
特に背景も何も喋らない刺客的なやつです。つまりディ・ス・コですね。ぜひラスボスのチョコスナックとして使ってあげてください!
【名前】佐神 正(さがみ せい)/ピスケス
【変身前・変身後の外見】青髪のセミロング、黒いセーターと黒いジーンズ/顔以外の全身が沢山の赤いベルトで覆われてる
【年齢】43
【趣味/魔法少女としての日課】ドライブ/なし
【好きなもの】相手と同化すること
【嫌いなもの】話の通じない者
【性格】無口で無表情、同化すると狂暴な笑みを浮かべるが無口
【得意な魔法】あなたとわたしで一心同体だよ
ピスケスのベルトが外れ他の者に巻かれるとピスケスとその者の間で様々な物を交換、共有できる。対象は傷、立ち位置、バフ・デバフ問わず様々で、これらの行使は全てピスケスの裁量となる。魔法の交換は行えない(発生した効果に関しては範囲内)
ピスケスはこれを同化魔法と呼んでいる。
【魔法少女になったきっかけ】車と共に身を投げる直前に妖精からスカウト
【詳細】滅多に人前に出たがらず言葉も最低限。経歴は不明だが他人を拒絶する姿から確実に碌な人生は送れてないと推測される。過去を詮索した人間に魔法を用いて自身に移す形で記憶を消去している。
【備考】潜伏してた所をバトロワ開始前に運営勢に捕まり、解放を条件に魔法陣防衛にあたっている。 - 813二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 19:14:59
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- 814二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 19:15:56
【名前】アイン
【変身前・変身後の外見】
変身前:なし
変身後:サイバーチックなボディスーツに機械装甲を装備した金髪ロリっ娘。
固有武装としてMG34マシンガンを手に持つほか、強力無比な12.8cm戦車砲や7.5cm副砲を自由に発現できる。
【年齢(製造年数)】80年以上
【趣味/魔法少女としての日課】
【好きなもの】戦争、第三帝国、トート・アリア
【嫌いなもの】弱卒
【性格】傲慢で幼稚
【得意な魔法】
『重力を操れるよ』
「自重で地面にめり込んで動けなくなる」という自身の致命的な欠陥を解決したいという思いから発現した魔法。
118トン近くもある自分の体重を軽くして活動しているほか、魔力消費が重くなる代わりに空中を飛行することもできる。
魔法としては凡庸の範疇だが、自身の戦車としての武装と組み合わせて戦闘を行う。
【魔法少女になったきっかけ】
トート・アリアによって終戦間際にナチスドイツの兵器庫から持ち出された試作型超重戦車『マウスhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/マウス_(戦車)」が魔法少女化した。
つまりフライフィアーやパペッタンの同類である。
【詳細】
アリアの配下の魔法少女。機械ゆえに支配を受けない特性から対パラサイトドールの戦力として温存されていたが、先んじて仮想敵が退場してしまったために持て余されている。
本人はまるで気づいていないが、現在は対参加者の捨て駒か、『勇者』の最終実戦テストの当て馬として生かされている状態である。
【備考】
超重量と重装甲に任せた格闘戦も得意。
同じ立場のハーゲンのことは心の中で小馬鹿にしまくっていた上に「自分は役目を失ったアイツとは違う」と考えている。
失敗作として打ち捨てられた自分に役目をくれたアリアのことが心の底から大好き。
- 815二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 19:33:24
【名前】いくつもある
【魔法少女名】機骸の大怨霊(マシンナリー・ゴースト)
【変身前・変身後の外見】無残な死体とガラクタ/ガラクタでつながれた肉塊の下半身を持ち両腕が異形の大腕となった化け物の魔法少女
【年齢】13から18さいの子がメイン
【趣味/魔法少女としての日課】色々あった/都市伝説として暴れてた
【好きなもの】ない
【嫌いなもの】この世の全て、特に自分を殺した人
【性格】もとは前向きで無邪気な少女であったが現在は悉くを恨む大怨霊であり魔法少女のようなものとなってしまった
【得意な魔法】『怨念だけで再生し変貌したりするよ』
無残に殺された少女たちの恨みがガラクタに宿り生まれた魔法、常に再生し異形の肉塊へと変換されてしまっている。また物を取り込むことができ、取り込んだものに類似した能力を得る事が出来る、この能力で現在まで生存してきた。
【魔法少女になったきっかけ】無残に殺された少女の怨念が魔法少女として具現化してしまった
【詳細】様々な原因で無残に殺された少女の恨みが具現化した存在であり彼女らの最後に抱いた絶望を晴らす為だけに殺しを行っており長らく都市伝説として存在してきた。
エネミーに近い存在だが核となった少女が魔法少女であり魔法少女のようなものとして成立した。
ガラクタは依り代として使われているし現在も補充されているが、肉塊の比率も大きくなっている。
【備考】今まで起きた事件での少女の死者たちの集合体であり明確な意識ももつが融合した少女たちの影響で様々な口調が入り混じっている。 - 816二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 20:49:07
あくまでノーブルサヴェージ単騎で戦う相手であることも忘れてはいけない(戒め)
【エネミー名】スティールソウル
【説明】低級エネミーであるスラグソウルが大量に倒された際に生まれる変異個体。
魔力を帯びた体片が一ヵ所に密集した結果疑似的な魔法金属が形成され、そこに外部から更なる魔力を浴びることで新たなスラグソウルとして生まれ変わったもの。
魔法金属とは即ち魔法少女のコスチュームに用いられる材料であり、このエネミーの身体もまたそれらに匹敵する強度を誇る。
強化された体当たり・のしかかり攻撃に加えて全身から魔力弾を放つため、元のスラグソウルとは比べ物にならない強敵といえるだろう。 - 817二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 21:12:11
【エネミー名】エルドリッチ
【外見】腐りかけた屍肉を機械部品で強引に纏め上げた悍ましい姿
【説明】
手で触れたもの、もしくは自らの吐息を吹きつけた対象を有機物、無機物問わず腐敗させる能力を持つ
腐敗はゆっくりと確実に広がっていき、侵食を止めるにはエルドリッチを始末するか、腐った部位を切り離すしかない
動きは極めて緩慢だが、ゾンビ特有の耐久力と腐敗の感染力で戦う
アリアが作り出した最初期の実験体であり、冷凍保存されていたところを番犬として解き放たれた
【備考】
実はこんな状態でも自我が僅かに残っており、死後も続く冒涜から解放されることを願っている - 818二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 22:02:56
【エネミー名】
ツヴィリング
【説明】
ドミナートルの強化型。運営を含む死亡した魔法少女から二人をダイスで決定し、それをドミナートルに混ぜ合わせて作る
どちらの魔法も使えるが、動きはドミナートル同様に素人 - 819二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 22:16:27
【エネミー名】
合体最強超生物メンダオニクスフィアードラゴン
【説明】
メンダシウム、クライオニクス、フライフィアー、ブレイズドラゴンの四人の実力者の魂をドミナートルにぶち込んで完成したゾンビ魔法少女
アリアの趣味で作ったが、中身がど素人でしかもそれぞれの魔法が喧嘩しあって最強どころか全く強くならなかった上に魔力を勝手に消費しまくる失敗作である - 820◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 22:27:52
投下します!
- 821二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 22:34:08
読み返したらブラックブレイドと抜刀ちゃんがすれ違ったまま亡くなってしまうのがちょっと悲しかったので、二人を繋ぐことができるハスキーロアが居ることもあって、それっぽいマジックアイテム投げときます
武術交流会で断ち切られてしまった願いを繋げてあげてくれたら嬉しいなと…言うまでもなく登場させなくとも、別のキャラで使用して頂いてもぜんぜん大丈夫です!
マジックアイテム案
【名前】極光丸(きょくこうまる)
【説明】
陣内 葉月/ブラックブレイドの父親が抜刀 金の父親から借金のカタとしてせしめたもので、抜刀家に伝わっていた、もう一振りの名刀。
デスゲーム開始に際し、ブラックブレイドが家から持ち出したが、抜刀 金への罪悪感から使うことなくそのまま死亡した。
誰にも気付かれることはなかったが、実はマジックアイテムであり、魔法少女が手にすれば如何様に扱おうとも、如何なる概念的・物理的干渉を受けようとも、決して刃毀れすらしない不壊の概念を宿す神剣となる。
その不壊の特性ゆえ、ぶった斬る魔法などの斬撃系魔法や、マジカル・ストラッシュなどの放出系魔法の極めて強力な触媒になり得る。
現在の所在は不明。上洛した学校に埋もれているのか、それとも別の場所か…… - 822◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 22:42:16
黒贄山羊の死体を、ジャスティスファイアは見下ろしていた。
機械犬だからか、その表情をバルバロイは読み取れない。
(まぁ、仲間を殺されてるんだから、激怒か憎悪だろうな)
警官、ならば激怒の方が近いか。あるいは使命感、正義感なのかもしれない。
ジャスティスファイアの動きは徹底していた。
彼女はまずFBI本部に電話をかけ、FBIを通してあにまん警察署に働きかけた。
警察署そのものを魔法少女の集団(オオカワウソ)に襲撃され、市内各地でパニックが起こり、挙句の果てにはドラゴンが暴れた地獄絵図の中で、警官たちはその殆どが逃げ出さずにそれぞれの職務を果たしていた。
「山羊頭の少女」を今回の事件の重要参考人としてリークし、人海戦術と監視カメラを駆使してその動向を追った。
もし「あにまんマンション」が健在であったなら、黒贄山羊は神出鬼没であり、動向を追うことは出来なかっただろう。 - 823◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 22:42:33
だが、ハニーハントがマンションの核となる存在を取り込んだことが原因なのか、今の黒贄山羊は人間と同様に徒歩で移動していた。
警官たちから送られた情報を元にジャスティスファイアとバルバロイは駆けつけ、警官の恰好で不意打ちを浴びせた。
これで終わり、ではない。
冨島千秋が亡くなった現場には、弾痕が刻まれていた。
ハートプリンセスが撃ったものではないことは、撃った方向から判断できる。
恐らく何らかの敵に向かって放たれ、弾丸はその肉体を貫通して壁に刻まれた。
そして、撃たれた相手の死体が残っていないということは……。
(十中八九、この山羊女は生き返る)
バルバロイの見立て通り、倒れていた黒贄がむくりと顔を上げた。 - 824◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 22:58:45
「うう……めぇ虐はやめてください。めぇはただ、みんなをナラカに入れたいだけなのに」
「ジャスティス・ファイア!」
カパリ、とジャスティスファイアの顎が開き、炎が発射された。炎は黒贄山羊の両足を瞬時に焼き尽くす。
「ぎゃああああああああああああああああああ!?」
逃げ足を封じたジャスティスファイアは前脚で黒贄山羊の腹部を抑えつけた。
「『拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約』をご存じですか?
取り調べにおいて、どれだけ悪党であっても、我々は決して拷問はしません。それが私たちの正義」
ですが、とジャスティスファイアは言葉を続ける。
「これは、人間にのみ適用されます。貴女は人間ですか?」
「め、めぇは……黒贄山羊……」
がぶり、とジャスティスファイアは黒贄山羊の角に噛みつく。
そして、強靭な顎で角をかみ砕いた。 - 825◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 22:58:57
「もう一度確認します。あなたは人間ですか?」
「め、めぇは……」
黒贄山羊の足は、再生しようとしていない。
これもまたマンション陥落が原因なのか。
黒贄山羊の瞳に、初めて恐怖が走った。
正義の使者は、その感情に一切忖度しない。
「貴女は——」
機械的な言葉は、しかし続かなかった。
ジャスティスファイアの身体がくの字に曲がる。
灰色の体毛に覆われた、丸太のような足が潜り込んでいる。
「俺っち、参上」
サッカーボールのようにジャスティスファイアの身体は浮かび上がり、周囲の石壁に叩きつけられた。 - 826◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:00:02
佐藤二郎dice1d100=32 (32)
- 827二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 23:06:09
遂に擁護不可能クズのグレンデルが来たか……
変身前の時点でバトロワに関わる魔法少女の中でもトップレベルの肉体強度らしいのに変身後となれば…… - 828◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:07:12
あにまん署の総合生活安全対策室(魔法少女関連対策の秘密部署)に所属する巡査部長佐藤二郎はこれまで数多くの魔法少女やエネミーに相対してきた。
象よりも大きな怪物に銃を向けたこともある。殺人経験のある魔法少女に襲われたこともある。
重ねてきた無数の経験が、告げる。
この化物は、別格だと。
大きさ、約五m。人間と狼とゴリラを組み合わせたような異形の、灰色の化物。
もっと大きな化物を知っている。もっと凶悪な姿をしっている。
だが、違う。優秀な警官としての本能が警鐘を鳴らしている。
この怪物の視界に入ってはいけない、と。
——一陣の風が、傍を通り過ぎた。 - 829◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:20:38
ジャスティスファイアが蹴られた瞬間には、バルバロイは既に動いていた。
強者だ、と直感が告げている。
初めてティターニアに相対したときのような高揚。
灰色の怪物は、ノーギだ。服を着ていない。
柔術使いもこれにはお手上げ——そんなわけがない。
バルバロイはグレンデルの手首を掴む。
この瞬間、グレンデルの敗北は確定した。通常の魔法少女の数倍のパワーを誇るバルバロイに掴まれれば、絶対に振り解けない。後は一撃必殺の投げが襲うのも祈りながら待つしかないのだ。
掴まれたら負け。それはティターニアとて例外ではない。
バルバロイはそのまま投げに行こうとして
「おっと、危ねぇ」
強引に、振り解かれる。
自分の数倍の力を持ち、卓越した柔術スキルを持つ。ブラジリアン柔術をマスターした羆に、人間が素手で挑むような絶望的な戦いを、バルバロイは対戦相手に強いる。 - 830◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:20:58
掴ませない、なら今まで何度もあった。
だが、膂力だけで振り解かれたのは初めてだ。
それを可能にするということは——グレンデルは、バルバロイより数倍上のパワーを持つということになる。
驚愕しながらも、バルバロイは再び掴みに行く。
身体に沁み込んだ技術は、心とは無関係に発動する。
轟音が、腹に響いた。
みるみるうちにグレンデルが遠くなる。自分の背中が硬いものを壊した感覚。
(くそ、殴られた……!)
慌てて立ち上がろうとして、バルバロイの足はたたらを踏んだ。
口に鉄の味が広がり、思わず吐き出す。
たった一発のパンチで、通常の魔法少女を遥かに凌ぐ頑強さのバルバロイが、効かされている。 - 831二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 23:36:19
イップ・マンでドニーがタイソンにマウント取った状態からでもパンチ一発でひっくり返されたのと同じ絶望を感じる
- 832二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 23:46:46
トップレベルの技量持ち相手に単純なパワースピードとイカれた反射神経だけで渡り合う設定はちょっとロマン感じちゃう
- 833◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:50:15
佐藤二郎は、判断を下した。
この化物には、勝てない。
銃を構えることはしない。意味が無いからだ。
魔法少女を一撃で吹き飛ばすパンチを放てる怪物を相手に、拳銃に何の意味があろうのだろう。
「……お前は、何だ」
と、佐藤はグレンデルに呼びかけた。
ジャスティスファイア、バルバロイが復帰するまでの僅かな時間稼ぎである。
グレンデルは佐藤の呼びかけを無視し、黒贄を拾い上げた。
「めぇ……酷い目に遭いました。ところであなたはどなた様ですか?」
「げっげっげ。なーに、気にすんなよ。俺っちはお前に用があるんだ」
「なんと。では、貴女もナラカに?」
「げっげっげ」
グレンデルは愉快そうに笑う。
「どーも、この殺し合い。雲向きが妖しくなってきやがった。今の俺っちじゃ、まだ足りねぇ。アリアだけならともかく、勇者だの来られたらさすがにあぶねぇからな」
「おー、そういう今よりスキルアップを狙っている人ほどナラカはおすすめです」 - 834◆xaazwm17IRZa25/01/28(火) 23:50:43
「マンションの力、それさえあれば俺っちは勇者や……ゲルニカが言っていたウェンディゴとやらにも対抗できそうだ」
「そうでしょう、そうでしょう。さぁ、レッツナラカに。めぇと契約して、ナラカに入りましょう」
ぎょろり、とグレンデルは黒贄を見下ろす。
「知らねぇのか?」
「何をですか?」
「山羊と狼の関係性——捕食者と被捕食者」
「へ?」
黒贄が最期に見たのは、視界一杯に広がる、グレンデルの大顎だった。
【黒贄山羊 消失】 - 835◆xaazwm17IRZa25/01/29(水) 00:02:29
(こいつ……)
佐藤二郎は戦慄していた。
事件の重要参考人と思われた黒贄山羊が、灰色の怪物に捕食されたのだ。
(常軌を逸している……)
「ん、いまいち変わった感じがしねぇなぁ。失敗だったかな?」
グレンデルは頭をぽりぽりと掻く。
そして、佐藤に、ジャスティスファイアに、バルバロイに背を向ける。
「待て、お前はいったい何者なんだ!」
恐怖を押し殺して佐藤は叫んだ。
「いったい今、あにまん市で何が——」
そこで、佐藤の言葉は途切れた。
グレンデルは、何もしていない。
- 836◆xaazwm17IRZa25/01/29(水) 00:02:41
ただ、突如として佐藤二郎の下顎から上が吹き飛んだ。
糸の切れた人形のように、佐藤はその場に倒れ伏す。
【佐藤二郎 死亡】
「おいおい、日本で警官殺しは不味いだろ」
グレンデルは呆れたように言った。
彼女の視界には、周囲の住宅街に潜んでいる、武装した仲間たちの姿が映っている。
迷彩服を着た、屈強な男たちの集団。
ナチスでもなければ、エネミーでもない。グレンデルが率いる傭兵団。全員が生身の、戦場の荒らし屋である。
「どうせこの街はもう終わりですよ。死体が増えたところで誤差誤差」
「もっとパニックが拡大すりゃあ街に繰り出しましょうよ。ブラッド・パーティの始まりですぜ!」 - 837◆xaazwm17IRZa25/01/29(水) 00:03:01
中途半端ですが、投下を終了します!
- 838◆xaazwm17IRZa25/01/29(水) 00:07:20
たくさんのキャラクターやアイテムのアイデアありがとうございます~
ダイスで外れたものも本編のどこかで最低限名前だけでも出していきたいですね~! - 839二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 03:41:07
対運営戦の敵、ラスボスのおやつ枠でも前作の終盤見てると冷遇されてる訳では決してないんだよな
茜音沢vs蛇vsジジイvsセピアさんみたいなのをまた見たい - 840二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 07:28:15
よく考えたら残りの運営陣って化け物しか居なかったわ
勝てるのか……? - 841二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 08:31:31
グレンデル、傭兵ってことはナサリーやブレイズドラゴンと同業かー。
本人が強いし、指揮した部隊が戦地で略奪や虐殺するのを止めようとしないだろうから甘い汁を吸えるヒャッハー部下からはメチャ人気ありそうだけど、良識ある傭兵のナサリーからはクソほど嫌われてそうな感じ。 - 842二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 13:15:45
グレンデルはシンプルに強いな やっぱトップ勢じゃないと正面からはキツイか
- 843二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 16:11:42
ジャスティスファイアはブレイズドラゴンの必殺技もどきが使えるけど、同格以下相手に隠し玉として使うから有効なんであって、ブレイズドラゴンの魔法と技量の両方ないのに格上に使ってもただの一発芸にしかならんっぽいしなー。
しかも手の内が完全に割れてるし。 - 844二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 21:12:17
グレンデル、アリアをなんとかできるつもりでいるあたり、クライオニクス・フライフィアー級じゃなくてティターニア・テンガイ級の強者なのかぁ
それでいて戦争屋で頭もキレるそうだからたまらんネ - 845二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:36:57
不覚にもここの調子の良い黒贄山羊に萌えてしまう
- 846二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:51:39
滑り込みセーフ!
【エネミー名】ガダビ・ン・バリバシ
【説明】ニマンア族の伝承に伝わる巨大な梟の魔物。その名は『裁きの雷』を意味し、雷雲を呼び争いを仲裁する善き聖獣であるという。
伝承通り雷を操る能力を持つが、あにまん市に現れた個体は山火事のせいでかなり気が立っている様子。 - 847◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 01:50:01
申し訳ない、今日は投下できないです……!
現状誰がノブ子の対戦相手になるのか未定ですが、現在投下されたキャラだけ先にダイスを振っておきますね~
※ノブ子対戦相手の締め切りは今日の24時までです~
※90以上でも死ぬ可能性があります
※ダイス振ったけど本編に登場しない可能性もあります - 848◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 01:56:46
ミネルヴァ・ミストリルdice1d100=78 (78)
弓ヶ浜 ヒカリ/ランドウdice1d100=91 (91)
佐神 正(さがみ せい)/ピスケスdice1d100=2 (2)
アインdice1d100=5 (5)
機骸の大怨霊(マシンナリー・ゴースト)dice1d100=32 (32)
※エネミーはノブ子のバトル候補には含まれますが、今回ダイスは無しで。
今まで挙げていただいた全エネミーに作中で言及するのは恐らく不可能なので……。
- 849◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 01:58:47
↑上のダイスはあくまで各キャラの生存ダイスで、数字の大きいキャラがノブ子の対戦相手というわけではないです……!
募集期間終わったらエネミー・魔法少女合わせて誰と戦うか決定します - 850二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 07:44:58
ヒカリちゃんが凄い出目を出してる!
- 851二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 07:57:36
続けろよ弓ヶ浜
- 852二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 08:05:45
キャイイイッ
- 853二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 08:27:42
生存してもダメな殺し屋に堕ちそうなヒカリちゃん
- 854二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:06:56
登場時は1幹部に過ぎなかったアリアやグレンデルがこのレベルって考えると
改めて初期運営の層の厚さヤバいな…
当初の構想ではパラさんとかパンデモニカとかどう倒す予定だったのか気になる - 855二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:08:21
【名前/魔法少女名】柏木 彩/デスグラシア
【変身前・変身後の外見】
変身前:薄緑色の髪をポニーテールにした陰のある美女 服装はブランド物の赤いスーツ
変身後:白銀のベネチアンマスクをつけた白いタキシード姿で両手にマチェットを持っている
【年齢】27
【趣味/魔法少女としての日課】ガーデニング/世の中の理不尽を正すこと
【好きなもの】人から優しくされること
【嫌いなもの】理不尽
【性格】自己顕示欲と自己愛が強いが臆病で引っ込み思案
【得意な魔法】
『怒りを魔力に変えるよ』
自分の怒りの感情を魔力に変換しブーストをかける
彼女は常に理不尽に対して怒りを感じておりその出力は凄まじい
あまりにも長時間かけ続ければ自分の肉体を傷つけるが一時的にであれば本来の魔力量以上にも変換できる
【魔法少女になったきっかけ】世の中の理不尽を正したいから
【詳細】
あにまん市ではかなりの力を持つ会社の社長令嬢
何不自由なく、少なくとも客観的には社会的にも経済的にも家庭的にも恵まれて育った
だが自己愛と他責思考と減点主義の権化であるため彼女は「もっといい家庭に生まれるはずだった」
「親の会社がもっと大きいはずだった」「もっと素晴らしい才能を持って生まれるはずだった」と思っている
そしてそれらは彼女にとって「世の中の理不尽」として変換され「理不尽な仕打ちを受けている可哀想な自分」に酔うための材料となる
結果としてこの年齢になっても一度も働いたこともなく好きに生きているのに自分を「世界一不幸な悲劇のヒロイン」だと心の底から信じているモンスターと化した
【備考】
才能は本物で単純な戦闘力ならあにまん市の魔法少女最上位層となんら遜色ない
しかし精神が未熟なため実際に戦えばよほど運に恵まれない限り勝利は不可能である
それを自覚しているが故に「自分より強いなんて理不尽」と最上位層に一方的な憎しみ、特にティターニアは親の仇のように憎んでいる
同様に自分より恵まれた環境で生まれ育ったミョルニルも同じぐらい憎んでいる
強いけどかませにしやすく心も痛まないタイプを考えてみた - 856二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:01:51
【魔法少女名】ヴンダー
【変身後の外見】モスグリーンの軍用コートを羽織り、枯れ果てた薔薇の髪飾りを付けた金髪碧眼の少女軍人。
死んだ魚のような眼に深い隈が出来ている。
【年齢】80歳以上(見た目は14歳)
【趣味/魔法少女としての日課】草花を愛でること/拷問
【好きなもの】夢、綺麗な花
【嫌いなもの】夢
【性格】機械のように任務を遂行する。他者を傷つけることに何の感慨も抱かない。
【得意な魔法】『夢を見るよ』
精神に干渉して虚像を見せる幻覚魔法。
相手が最も恐れる記憶を探り、見せ続ければ精神を完全に破壊してしまうほどに強力。
本来は美しい夢を見せることもできたが、大人に強制されて戦い続ける内に悪夢以外を作り出せなくなった。
【魔法少女になったきっかけ】戦火に見舞われる家族を想い、助けになりたいと感じたことで発現した
【詳細】アリア配下の魔法少女。第二次世界大戦時は敵に悪夢を見せる拷問執行人だった。
戦闘力は低いため、敵に幻覚を見せながら味方と連携したり、地雷原やトラップ地帯に誘い込むなどの戦術を取る。
【備考】
幼い頃は植物園の館長になって家族や友人を招くことが夢だったが、現在は悪夢以外は見れなくなった。
「きっと死ぬ時も悪夢を見ながら死ぬのだろう」と諦観を抱いている。 - 857二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:36:18
タイマンイベントでだいたいの参加者の力関係は知れたけど、一巡目で退場した参加者と運営のざっくりした強さ設定をいつか教えてくれたら嬉しい
運営はパラサイトドールが別格で、あとは蟹とああああを除けばほぼ団子でティターニアと同格ぐらいの設定だと勝手に思ってるけど合ってるかな? - 858◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 23:16:13
締め切り直前ですが、投下します……!
- 859◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 23:30:11
「Espera!(待て!)」
血を吐きながらも、バルバロイは叫ぶ。
一撃で尋常ではないダメージを受けている。それは戦わない理由にならない。
傭兵たちは短機関銃をバルバロイへ向け、発射した。
魔法少女でも浴びれば蜂の巣になる弾幕。
が、バルバロイを止めるには威力が低すぎる。魔法少女の数倍の頑丈さとは、銃火器程度ではもはや致命傷になりえない。
傭兵たちもそれは理解していた。
彼らは弾幕を巻きながら後方へと下がる。
グレンデルと共に無数の戦場を蹂躙した彼らは、魔法少女の脅威を理解している。
ただ、少しだけバルバロイの動きを遅らせれば良かった。
魔法少女の魔法には、一瞬で戦局をひっくり返す類のものがある。
僅かな時間が、逆転へと繋がる。
バルバロイの突進は鈍り、グレンデルが先手を取る。
傭兵との連携は完璧だ。一々指示を出さなくても、彼らはグレンデルの意のままに動く。
バルバロイがグレンデルを掴む前に、グレンデルがバルバロイを掴む。
「寝てろやクソガキ」
側頭部を掴まれ、バルバロイは壁へ叩きつけられた。
コンクリが粘土のように砕かれる。
血が弾け、バルバロイは崩れ落ちる。 - 860◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 23:46:19
身体を震わせるバルバロイを、グレンデルは悠然と見下ろした。
(変身は解除されてねぇ)
未だ、戦闘不能に達していない。
(頑丈だな。……いいサンドバックになりそうだ)
他を圧倒するグレンデルの膂力には、欠点がある。
本気で殴れば、魔法少女でもあっという間に壊れてしまう。
グレンデルの技術と経験があれば、相手を殺さないギリギリのラインで加減してより長く遊ぶこともできる。
だが、一度本気で殴って壊れないサンドバックが欲しいとも思っていた。
人間を辞め怪物になった自分のフルスペックを試したい。
「なんすか大将。一人じめっすか。俺にもおこぼれくださいよ」
「げっげっげ。死んだらくれてやるよ」
「そう言って、この前も粒子化させちゃってたじゃないですか~」
「ばーか、あれはわざとだよ。俺っちは簡単に飴はあげない主義なの」 - 861◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 23:46:35
「はぁ、大将のいじわ——」
ぱぁん、とグレンデルと話していた傭兵の頭が弾ける。
狙撃された。
瞬時にグレンデルは見抜く。同時に頭部と心臓に弾丸が放たれ、傷すら残さず消失する。
「げっげっげ。そこか」
歓楽街のタワーマンション。狙撃はそこから行われている。
「あそこは確か、金持ちたちが使ってたはずだが……」
非合法な手段で悦楽を貪るものたち、俗に暗黒金持ちと呼ばれる富豪たちが、この殺し合いを鑑賞するために用意された施設。
——もっとも、彼らもまた贄に過ぎないのだが。
「お前らは撤収しろ。俺っちはVIPの様子を見に行く。倒れてる魔法少女には手を出すなよ。藪蛇だぜ」
「心得てますよ。変身している限り、自分らは魔法少女で遊ばない。それを守れなかった奴から死んでいきますから」 - 862◆xaazwm17IRZa25/01/30(木) 23:58:18
グレンデルの傭兵一人一人の戦闘力はマシーネン・コマンダンテに劣る。彼らは機械化もしていなければ魔法の恩恵も受けていない。
だが、彼らの知能は劣化していない。もとから下劣ではあったが、下等ではない。
魔法少女の力量を正確に把握し、手負いであろうと近づかない。
倒れているバルバロイとジャスティスファイアに構うことなく、彼らはスナイパーから隠れながら撤収を始める。
そしてグレンデルは地を蹴り、高速で歓楽街のタワーマンションまで駆け始めた。
(狙撃する魔法少女、ミストアイ。あの半端者か)
何故ミストアイがタワーマンションに居るのか。そんなことは、本人に拷問して聞けばいい。
バルバロイとジャスティスファイアにトドメを刺さずに駈け出したのは、狙撃手相手に一か所に留まり続けたくなかったからだ。
ミストアイの魔弾程度ではグレンデルは殺されない。だが、例えば魔弾で周囲を爆撃されれば目立ってしまい、参加している魔法少女に袋叩きにされる可能性もある。
タイマンで自分を殺せる魔法少女など居ないとグレンデルは自負しているが、極論、生存している全魔法少女を一度に相手取るのは、さすがに面倒だ。
タワーマンションが光り、複数の魔弾が放たれる。
それはグレンデルの頭上を通過する。
「げっげっげ、どこを狙ってやが——」
グレンデルは背後を振り返った。 - 863◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:08:40
潜伏している傭兵。グレンデルの仲間たち。射線を塞ぎながら、ある者は民家を盾にして、ある者はマンホールの中に潜り、またある者は車に乗り込み。
それぞれが粛々と撤退を開始している。
その全てに魔弾が降り注いだ。
(——何だ、そりゃあ?)
歓楽街からここまで飛ばす飛距離。魔法少女を一撃で仕留める威力。
使い手の内面はどうあれ、ミストアイは優秀な魔法少女だ。
もし彼女が中学生ではなく、歴戦の狙撃手であったなら。優勝の最有力だったに違いない。
(それだけじゃ、無いのか?)
今、撃たれた弾丸は、途中で曲がっていた。
自動追尾機能でもあるかのように、民家を迂回し、マンホールに潜り、爆走する車に追いすがった。
狙撃手の魔法少女。グレンデルは、ミストアイをそう捉えていた。
『ステッキから魔法の弾丸を飛ばすよ』。それが、ミストアイの魔法。
魔法の弾丸は——物理法則に囚われない。 - 864◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:12:05
短いですが、投下を終了します……!
一応補足しておくと、バルバロイの喧嘩はまだ始まったばかりです
そして、0時を回ったので、ノブ子の一戦目対戦相手ガチャを引きます - 865◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:21:27
ノブ子の一戦目の相手はdice1d15=9 (9)
1影女
2ドミナートル・ドライ
3ブレイズドラゴンとクライオニクスを合体させたゾンビ魔法少女
4ツィヴィリザツィオーン
5弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ
6佐神正(さがみせい)/ピスケス
7アイン
8機骸の大怨霊(マシンナリー・ゴースト)
9スティールソウル
10エルドリッチ
11ツヴィリング
12合体最強超生物メンダオニクスフィアードラゴン
13ガダビ・ン・バリバシ
14柏木 彩/デスグラシア
15ヴンダー
- 866◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:23:33
ノブ子の一戦目の相手、ネッカーピン資料館を守るボスは「スティールソウル」に決まりました……!
たくさんのアイデア、本当にありがとうございます……! - 867◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:26:27
最後に魔法少女だけダイス振っておきます
もしかしたら名前だけ登場になるかもしれませんが……
柏木 彩/デスグラシアdice1d100=34 (34)
ヴンダーdice1d100=64 (64)
- 868◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 00:49:02
1巡目で退場したキャラだとブラックブレイド(覚醒)がブッチギリで強いです。
他にはクライオニクス、フライフィアーも『同格』との戦闘経験をもう少し積めれば四強に並べる強者です。
ナサリーブラウンは変身できない参加者ですが、透視抜きでも狙撃を感知できるレベルで人類最強なので、四強も1割程度の確率で討伐できます。
運営陣はメンダシウム、パンデモニカ、パトリシアは四強レベル
蟹はクライオニクス・フライフィアーより下(勝ち筋が無いわけではない)
グレンデル、トート・アリア、勇者は未知数です - 869二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 00:54:21
パトリシア四強レベルだったのか
最近死んだハーゲンも素直に死ぬならそこまでだけど無限ゾンビアタックも含めると強そうだったね。最終的にスピードランサーに手傷負わせてるし - 870二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:02:46
やべえ弓ヶ浜ヒカリちゃんの名前の字面だけでもう面白い
バルバロイかハイエンドの技量組か、ぶった斬る魔法を使えるハスキーロアあたりを見下してからぶちのめされてほしい - 871二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:15:52
未知数っていうのは今後の展開によるってことなのだろうか…
個人的に終盤で急に出てきた勇者がアリアやパラサイトドールより強いのはモヤモヤするからラスボスであって欲しくはないなぁ… - 872二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 03:27:54
パラさんはともかく勇者を名乗るからにはアリアより強くあって欲しいかなぁ、自分より弱い奴しか生み出せないって研究者としてどうかと思うし
…それはそれで美味しいキャラか? - 873二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 07:42:10
ブラックブレイドの成長性がブッチギリでヤバかったな…
- 874二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 12:57:41
勇者は描写的に弱体化前のパラサイトドールがビビり散らかしてた始まりの魔法少女が乗り移ったバーストハートと同質の存在(つまり天上)
かつマジカル・ストラッシュとブレイズドラゴンの必殺技とテンガイの時間戻しが使えるみたいだから現状どころかバトロワ通してもブッチギリで最強の存在やね
自我とかなさそうだけど、技量皆無でスペックぶん回して戦うのはパラさんも始まりの魔法少女も同じだしね - 875二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 18:45:02
- 876二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 19:18:50
これで優勝狙いならまだしも「即呪い切ってゲームエンド」狙いだからなあ
- 877二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:06:53
ハスキーロアが概念攻撃の領域に至るには何が必要なのか?
覚醒したところで天上には通じないっぽいが - 878二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:21:04
対ハーゲン想定だと
ティターニア→マジカルストラッシュで魔力奪っても即供給されて再生するから反動ダメージの蓄積ヤバい
テンガイ、ブレイズドラゴン→そもそも殺し切れる手段を持ってない
だから、他にはクライオニクスが氷漬けで行動不能にするか、覚醒ブラックブレイドが魔力供給を断ち切るくらいでしか突破できないヤベー化け物なのよね
というか勇者のプロトタイプなら完成品の魔力供給リアクターが勇者に搭載されている可能性が微粒子レベルで存在している…?
- 879二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:48:44
- 880二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 23:03:33
蟹は成仏しろよ
- 881◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 23:07:49
投下します
- 882◆xaazwm17IRZa25/01/31(金) 23:27:49
狼は地を駆ける。
乗用車を遥かに超える速度で、射手の方へと疾走する。
仲間の死は、グレンデルの足を止めない。彼らの死に思うところは何もない。グレンデルはそういう生き物だ。
再び、魔弾が放たれる。複雑な軌道を描きながらグレンデルへと迫る。
グレンデルの両腕が高速で動き、魔弾を弾いた。
回り込んだ二発の魔弾が、グレンデルのアキレス腱に命中する。
グレンデルの足は止まらない。
微かな損傷こそあったが、瞬時に回復する。
変身したグレンデルが強化されるのはパワーやスピードだけではない。不死身とも思えるほどの回復力。
- 883◆xaazwm17IRZa25/02/01(土) 02:03:28
アレックス・J・ウォーカーdice1d100=59 (59)
- 884◆xaazwm17IRZa25/02/01(土) 02:05:20
魔弾を浴びながら、グレンデルは笑った。
改造前なら、グレンデルはとっくに挽肉になっている。今は違う。魔法少女のけなげな銃弾は、グレンデルの命を脅かさない。
魔法少女は人間の上位種だ。だが、魔法少女の更に上位に、グレンデルという個は存在する。
(そうだ、俺っちは死なない、滅びることはない……!)
タワーマンションの壁を駆け登りながら、グレンデルは吠えた。
そして、屋上へと降り立つ。
長杖を構え、仮面をつけた少女がこちらを見据えている。
先端から魔弾が発射される。グレンデルは回避することなく接近し、少女の首を一撃でへし折る。
(げっげっげ……あぁ?)
奇しくもそれは、同時刻にスピードランサーが感じたものと同質だった。
手応えが無い。
それを裏付けるかのように、ミストアイの死体が消え失せる。 - 885◆xaazwm17IRZa25/02/01(土) 02:06:04
光に変わるのではなく、霞のように消えた。
(これは——魔法か?)
一般的な傭兵、あるいは普通の魔法少女と比較すれば、グレンデルは魔法に造詣が深い。
だが、運営陣の中では門外漢に分類される。100年近く魔法研究を続けてきた者や、最古の使い魔、冒涜の竜の生き残りと比較すれば、仕方のないことだ。
今、自分の身に起こった現象を理解するパーツが、グレンデルには欠けている。
だが、それを補って余りある程、グレンデルは戦場に慣れ親しんでいる。
(…………あー、そういうことかよ)
どのような魔法なのか、までは分からない。
だが、どうしてこんなことが出来たのか、については推理できる。
(あいつら、一つに纏まったのか)
戻るべきか、と考える。
だが、グレンデルの本能が警鐘を鳴らしていた。
負けるつもりはない。が、最終的な仮想敵はアリアであり勇者である。 - 886二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 08:43:22
寝落ちか規制?
- 887二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 08:54:33
時間帯からして寝落ちだろうねえ
グレンデルの言う『あいつら』のもう片方が誰かわからんがミストアイがその誰かと融合して強くなったんだろうか - 888二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 14:51:35
保守
- 889二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:43:39
- 890二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 00:50:29
ブレイズドラゴンの最後の一撃とか範囲を極力縮めた強力な攻撃だったしなぁ…
- 891◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:13:55
昨日は寝落ちしてしまい、申し訳ありません……
昨日投下するはずだった分を投下します - 892◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:14:38
(黒贄を取りこんだ結果がどう出るのかも分からねぇ……。ここは安全策を獲るか)
あえてジャスティスファイア・バルバロイにトドメを刺しに行かない。
グレンデルはそう判断した。
◇
『ナイトクラブ〝Man-Man〟』。歓楽街の中心に聳えるタワーマンションの内部を地下3階から20階のフロアまでぶち抜いて作られた巨大ナイトクラブ。魔法国との繋がりが深いあにまん市だけあって、各国財界や裏社会の要人もお忍びで来場することも。酒やダンスはもちろん、高級レストランの食事も楽しめる上、ホテルも併設されている。地下3階より更に下層のVIPエリアには違法な娼館や魔法国のモンスターの取引場が経営されており、地下街や地下下水道と非常口で繋がっている。
本デスゲームではVIPたちが魔法少女の殺し合いを愉しむための観戦施設という側面も備えていた。
その場所に、五メートル近い灰色の巨体が姿を現わす。 - 893◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:15:16
気の弱い者なら失神しかねない事態だが、この場に悲鳴を挙げるものは居なかった。
濃密な血の臭い。
慣れ親しんだ臭いに、グレンデルは口角を上げる。
ナイトクラブ〝Man-Man〟。そこに生者は残っていなかった。
クラシックなスーツを纏った男が、華やかなドレスを着た女が、顔を恐怖で引き攣らせて死んでいる。
テーブルはひっくり返り、ガラスの破片が床に飛び散っている。
(ここで、殺戮があった)
彼らが今までそうしてきたように、今度は彼らが蹂躙される側となったのだ。 - 894◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:36:09
投下を中断します
当初のプロットだと市内各地の散発的なバトルでキャラクターが減っていく展開にする予定でしたが
①各キャラの目的や行動が複雑になりすぎ
②残り1か月で完結は難しそう
と思いましたので、次回からはちょっと強引に状況を
【魔法陣破壊】運営打倒チームVS【魔法陣防衛】運営陣&優勝狙いチーム
に整理します。
その戦いを生き残ったキャラクターでラスボス戦or優勝決定戦をやろうかなと
皆さんのアイデアをお借りする時も出てくると思いますので、今後もよろしくお願い致します - 895◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:52:41
七海真美を模したインテリジェンスウェポンに負ぶわれながら、桐ヶ谷裂華、魔法少女名『ジャック・ザ・リッパー』は逃走を続けていた。
ジャックには今、三つの武器がある。
一つは、学生街の住民及びマシーネン・コマンダンテから強奪した武器の数々。ナイフからショットガンまで幅広く集まっている。ジャックが魔力を流し込めば、ペーパーナイフでも魔法少女を殺傷できる武器になる。また、ジャックのコートにはいくらでもアイテムを収納できるため、かさばることはない。
二つ目は、ドレッドノートから強奪したインテリジェンスウェポン。知性が宿った武器であり、所有者によって形を変える。所有者が無意識に求めている要素によって姿や機能が変化し、今は七海真美を模した姿をとっている。飛行能力・火力武装を備えた、参加者にも引けを取らない強力な兵器だ。
三つめは、魔剣「アロンダイト」。貴族妖精アロンダイトが魔法少女への憎悪を持って姿を転じたものであり、魔法・魔法少女への特効効果を持つ。本来なら魔法少女が装備すれば絶命するが、ジャックは自らの魔法『なんでも武器に変えられるよ』でアロンダイトを支配下に置いている。といってもその支配には通常の刀剣とは比較にならない魔力消費を強いられるため、普段はコートに収納しているが。
- 896◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 02:59:43
ジャックの目的は『優勝』である。デスゲームの中で出会った魔法少女『七海真美』。彼女を蘇生するためにゲームに乗っている。
それは仲間意識や恋心によるものではない。
ジャックは殺人鬼だ。殺人対象は『好みの相手』。そして七海真美は好みにドンピシャ。
デスゲームを優勝して七海真美を蘇生、今度こそ自分の手で■す。
それがジャックの目的。殺人鬼の異常な心理。
(ティターニアは本当に殺せたのかしら? それともまだ生きて……)
- 897◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 03:01:23
投下を終了します
- 898二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 07:15:23
そういえば今月で一周年か 早いもんだね
- 899二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 10:19:14
せや
- 900二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 11:40:51
アリア裏切る気マンマンのグレンデルとか、優勝はしたいけど運営と敵対してるし同類と組むつもりもない優勝狙い勢も一纏めにしてチーム組ませるってことかな?
最終回に入っても他のエリアのメンバーと会話することあんまなかったから各個撃破よりいいかもしれないね - 901二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 14:56:19
優勝狙い&運営は一枚岩ならほぼ勝ち確だけど先のこと考えたら背中から撃った方がいいと考えたり
そもそも組む気はなさそうだったりだからなあ - 902二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 15:43:10
となると味方チームと敵チームで作戦会議か会話するシーン挟んでくれたら嬉しいね
世渡り上手のアリアの勧誘術とか、こぼねラブ勢生き残りで会話してるの見たいね - 903◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 17:36:57
本日も始めさせていただきます~
陣営として一纏めにして、各魔法陣にそれぞれ挑戦者/ボスとして配置しようかと思います
その際に様々な事情でメンバーシャッフルがあるかもです
本当はもう少しそれぞれの裏工作や謀略を描こうと思いましたが、後1か月だとちょっと無理だと思い、一旦仲良く(?)してもらうことにしました。
勿論途中で鞍替えして魔法陣ぶっ壊したり、やっぱり優勝狙いに切り替えて味方を後ろから撃つ可能性もあります
時間の都合(午後6時までに優勝者決定/魔法陣全破壊しないと全滅)があるので全員で一旦集まるのは難しいかもです
とりあえずメリィはグループライン作るみたいなので、そこで会話はあるかもです
優勝狙い勢の勧誘はこれからアリアが頑張ります
- 904◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 17:37:41
では、昨日の続きから始めます
- 905◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 17:44:15
魔剣『アロンダイト』の一撃。ジャックは魔剣に詳しいわけではないが、殺人鬼としての感覚から、この剣で斬られれば魔法少女は絶命することを感じ取っている。
ならば、ティターニアも死んだはずだ。
平気そうに見えたのはあくまで痩せ我慢。そのはずだ。
(じゃあ、私ティターニアを殺せたんだ。ふーん)
思ったより、感慨が来ない。
もっと嬉しいものかと思ったが。
(先生はもう大人だから? それとも真美ちゃんって最高の子が見つかったから? よくわからないわね)
まぁいいと思考を切り替える。死んでいるのなら優勝はぐっと近づいた。死んでいないとしたら……楽しみが増えたと、そう考えることにしよう。
「ジャックお姉ちゃん、ちょっと相談があるの」
「ん? どうしたのマミちゃん?」
インテリジェンスウェポン「マミちゃん」に声を掛けられ、ジャックは応じる。
「もうすぐエネルギー切れなんだ……ごめんね……」
「え、マジ?」 - 906◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 17:59:04
無理もない話だった。
ジャックが強奪する前からインテリジェンスウェポンはドレッドノートの命令で山を焼いていた。
その後も二人の魔法少女によって、戦闘で酷使されてきたのだ。
落下は嫌なので、近くの屋上に着陸し、コートに収納しておく。
テンガイは殺した。ティターニアも恐らく殺せた。後は優勝するだけだ。
(ハスキーロアちゃんはぜひ私自身の手で殺したいわね。もう一回襲撃しに行こうかしら)
と、そんなことを考えていた時だった。
『聞こえるか、ジャック・ザ・リッパー』
頭の中に声が響く。魔法王の放送と同じ感覚だった。
だが、声が違う。老人の声ではなく、10代前半の少女の声だ。
(あ、こいつは無理だわ)
少女ソムリエのジャックは声だけで瞬時にアリナシを判断した。こいつはナシ。殺したくない。
『お前は七海真美を蘇生させるために優勝を狙っている。合っているな?』
「は? 誰よアンタ。勝手に真美ちゃんの名前出さないでくれる?」
『おっと、サルの怒るタイミングは分からないな。バナナ不足か』
(よし、殺そう) - 907◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 18:07:15
憎悪の殺意を滾らせるジャックに、電話の主はどぅどぅと宥める。
『吾輩の名はトート・アリア。偉大なる新・第三帝国の大総統にしてこのゲームの黒幕。この世界の主役であり、中心に立つものだ』
(魔王だの大総統だの、このゲームは誇大妄想狂しか関わっていないのかしら)
『貴様に声を掛けたのは他でもない、貴様を衛兵として雇いたいからだ』
「無理よ、私、介護や看護のスキルは持っていないもの」
『ん? いや、衛生兵ではなく衛兵だ。Z世代だから分からなかったか? 済まなかったな』
遠回しにイカレ扱いしたことをスルーされ、ジャックの額に青筋が浮かぶ。 - 908◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 19:11:34
アリアはジャックにこの儀式を維持する魔法陣の役割とその場所について説明した。
『もし魔法陣が全て破壊されれば貴様のバナナをお腹いっぱい食べたいという願いは敵わんぞ? ならばまずは、魔法陣を破壊しようとする害虫どもを駆除するべきだと思わんか?』
既にジャックの殺意ゲージは振り切っている。が、彼女は冷静にアリアの言葉を受け止めていた。
「——魔法陣の場所はどこかしら?」
『狂愛の木蔦部屋、アニー・アーマーン邸、あに高地下防空壕、ネッカーピン資料館、病院地下研究棟、掩蔽壕だ。ふむ、資料館では既に戦闘を開始しているな。どのみち山岳エリアまでは遠い。他の場所に行って貰うぞ』
「そうね。だったら私は……」 - 909◆xaazwm17IRZa25/02/02(日) 19:13:08
dice1d5=5 (5)
1愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
3あに高地下防空壕
4病院地下研究棟
5掩蔽壕
- 910二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 19:17:36
クソ狭い地形だから火炎放射してくるような相手にも相性有利に持ち込めるしピッタリだっぺな
- 911二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:37:23
掩体壕
>運営が保有するマジックアイテムやバトロワの情報、旧軍の銃火器が保管されており、もし辿り着くことができればバトルロワイアルを有利に進めることができるだろう。
節分だけに鬼に金棒ってか ガハハ
- 912二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 01:37:08
恵方巻食べたい
- 913◆xaazwm17IRZa25/02/03(月) 02:45:23
ジャックが「掩蔽壕」を選んだのは、そこに旧軍の銃火器やマジックアイテムが安置されていると、アリアに伝えられたからだ。
まだ武器のストックには余裕があるが、達人や使い手ではないジャックにとって武器とは消耗品。あればあるだけ良い。
(あのイカレナチスの言うことに従うのは癪だけど……。ゲームを壊されるのは御免だわ)
不快感を胸に滾らせながら、ジャックはあにまん市中央部へと足を向けたのだった。 - 914◆xaazwm17IRZa25/02/03(月) 02:45:50
投下を終了します
- 915二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 07:46:25
マジックアイテム争奪戦だぁ…
- 916二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 10:33:27
マジックアイテムの中になにかしら有用なものがあるかどうか
- 917二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 16:50:19
誰がどの魔法陣を守るかダイスで決めていくのかな
- 918◆xaazwm17IRZa25/02/03(月) 21:04:24
暗黒金持ち全滅……下手人は
dice1d4=1 (1)
1ミストアイ
2アルセーヌ
3勇者
4安価&ダイス
- 919二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 22:31:10
全く関係ないのに候補に入ってる勇者が選ばれてたらどうなってたのか気になる
最終回で勇者が影も形もないのでそろそろ敵陣整理も含めて描写あるかな? - 920◆xaazwm17IRZa25/02/03(月) 23:40:44
- 921◆xaazwm17IRZa25/02/03(月) 23:48:51
メリィの作った対運営グループラインの名前
dice1d4=3 (3)
1デスゲーム参加者の会
2メリィと愉快な仲間たち
3対運営チーム
4安価&ダイス
- 922◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:06:10
アルセーヌ・ミストアイの攻略先
dice1d5=5 (5)
1愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
3あに高地下防空壕
4病院地下研究棟
5掩蔽壕
- 923◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:12:14
短いですが、投下します
- 924◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:12:53
アルセーヌという魔法少女は、ある意味本デスゲームで最も複雑な立場の持ち主である。
その正体はかつて魔法国を滅ぼしかけた怪物『冒涜の竜』。その竜のうち『好奇心』を司る部位が独立した存在、『アザトース』。更にそれが、全盛期のティターニアに敗北し精神だけを切り離したものが『アルセーヌ』である。
ゲームに参加していた『アルセーヌ』はドレッドノートに斬られ、ゲームから脱落。
その後は盤面の外から第三勢力として事態を見物した。パラサイトドールが滅ぼされた隙に王宮に乗り込み、新たなゲームの黒幕として君臨した。
その2時間後にはパンデモニカ&アロンダイトコンビと戦闘している隙にトート・アリアの秘密兵器『勇者』によって致命的なダメージを負い、黒幕の地位から転落。
今ではミストアイのマスコットとして辛うじて存在を保っている。
ミストアイの肩に腰を下ろしながら、アルセーヌは「ふむ」と唸った。
「分身がやられたようだ」
「……帰ってくるかな、あいつ」
「五分五分だね。とっとと逃げ出したいところだけど」 - 925◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:13:40
そう言って、アルセーヌは揉めている二人を見た。
奇妙な光景だった。
泡に包まれているのはカウガール風の衣装の魔法少女。泡の外に居るのは水着の魔法少女。
泡の中でカウガールは大声で喚き、水着の少女は呆れた様子で眺めている。
(しかし、ここに来て状況が大きく動いたな)
アルセーヌはミストアイにを繁華街のタワーマンション、暗黒金持ちの根城に誘導した。
邪悪な魂を取り込むことで少しでも力を取り戻すという算段だったが——それはミストアイによって阻まれた。
暗黒金持ちがどういった集団か、この殺し合いをどのように観戦していたのか。道中仔細に説明したのが仇となった。
あるいは、他の魔法少女が紛れていないか探るためミストアイを変装させて潜り込ませたのが悪手だったのだろう。
彼らの悪徳ぶりは、ミストアイの「私刑魔」の性質を刺激してしまった。 - 926◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:15:47
血の雨が降り注ぐ中、アルセーヌはこれはこれでいいと納得し——胸がズキリと痛んだ。
その後、再びメリィから連絡があり、「対運営チーム」というグループラインに招待された。アルセーヌの把握している限り、そこには善玉の魔法少女が殆ど入っており、どうやらミストアイとアルセーヌが二人旅をしている間に大同盟が結成されたのだと分かった。
特にネットワークを掌握しているナイトメア★メリィと、千里眼であにまん市全域を把握できるクレアボヤンスがタッグを組んだことは大きかった。
バルバロイ・ジャスティスファイア救出作戦はスタートし、アルセーヌが知恵を貸したことで「メンダシウム・トランプ」を使った戦術が生まれた。
即ち、トランプで分割したミストアイの分身を用意し、更にその彼女にトランプを使わせて魔弾に魂を憑依。これによりミストアイの魔弾は撃った後にある程度の捜査が可能となった。
(なんかズルじゃない? とミストアイは言っていたが、後10年、いや5年でその領域に自力で辿り着いていたとアルセーヌは睨んでいる) - 927◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:16:06
こうして分身でグレンデルを撃ち、タワーマンションに誘導。その間にジェイルフィッシュ、クィーンの二人がバルバロイとジャスティスファイアの救出に向かった。
ジャスティスファイアは装甲が歪み、戦闘に支障を来す状態となっている。
無理もない。クライオニクス戦から始まり、ヒートハウンド戦、ハートプリンセス戦と参加者でもトップクラスに死線を潜っている。
万全ならグレンデルとももっと勝負になっただろうが、今の疲労困憊した状態ではそうもいかないのだろう。
(一方バルバロイはまだまだ元気いっぱい。ふふ、だからこそ揉めているんだけど)
『で、部長。ミストアイ。皆はどの魔法陣を攻略するのだ』
「そうだな……」
「部長、どこにする?」
「——私たちは、掩蔽壕に向かおう」
「けど、地下だと私の魔法は不利なんじゃ……」
」「いや、今のミストアイは近接戦もある程度出来るようになっている。それに、メンダシウム・トランプを使えば魔弾をコントロールできる。決して不利というわけではないさ」
(というのは建前さ。あの場所に隠しているマジックアイテム、他の誰かに見つかる - 928◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 02:17:28
こうして分身でグレンデルを撃ち、タワーマンションに誘導。その間にジェイルフィッシュ、クィーンの二人がバルバロイとジャスティスファイアの救出に向かった。
ジャスティスファイアは装甲が歪み、戦闘に支障を来す状態となっている。
無理もない。クライオニクス戦から始まり、ヒートハウンド戦、ハートプリンセス戦と参加者でもトップクラスに死線を潜っている。
万全ならグレンデルとももっと勝負になっただろうが、今の疲労困憊した状態ではそうもいかないのだろう。
(一方バルバロイはまだまだ元気いっぱい。ふふ、だからこそ揉めているんだけど)
『で、部長。ミストアイ。皆はどの魔法陣を攻略するのだ』
「そうだな……」
「部長、どこにする?」
「——私たちは、掩蔽壕に向かおう」
「けど、地下だと私の魔法は不利なんじゃ……」
「いや、今のミストアイは近接戦もある程度出来るようになっている。それに、メンダシウム・トランプを使えば魔弾をコントロールできる。決して不利というわけではないさ」
(というのは建前さ。あの場所に隠しているマジックアイテム、他の誰かに見つかる前に回収しないと) - 929二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 07:44:44
おお…勢力が集結している…
- 930二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 10:22:31
魔弾を奪われる心配はなさそうだけど地形的にジャック有利なのは不安だ
- 931◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 17:12:29
バルバロイの攻略先
dice1d5=3 (3)
1愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
3あに高地下防空壕
4病院地下研究棟
5掩蔽壕
- 932二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 17:39:19
すでにダイスで当たっている箇所も候補に含まれるということは複数で攻略する場合もあるということかな?
- 933◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 17:47:32
ノブ子は場所的にも単騎で行ってもらおうと思ってるんですけど、他は1~3人くらいで行ってもらうつもりです(ボスによっては単騎だと厳しそうな組み合わせもあるので)
魔法陣攻略に参加しないメンバーも出るかもです
(例えばジャスティスファイアと天城千郷は疲労困憊&変身不能、他のキャラとの活躍の兼ね合いもあって魔法陣攻略戦はお留守番にする予定です……!)
- 934二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 17:48:11
まさかとは思うがアルセーヌちゃん、身内に対してだけは情らしきものが芽生えているのかね?
今までさんざん全てを操ってる風な悪党やってたのに今さらそんな半端者になっちゃったら、半端者に相応しい末路に期待しちゃうじゃないの
良いキャラに良い顔してくれそうだし楽しみ - 935二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 17:52:42
割と味方側の最高戦力なのに重傷患者のスピードランサーちゃんとジャスティスファイアちゃんは休んでてもろて……(ジャスティスファイアに至っては再起不能の可能性すらあるが)
回復アイテムのマジックアイテム使ってなかったはずだし融通してやってくれえ - 936二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 18:16:11
アルセーヌが空虚な人形と嘲ったパンデモニカは「面白かった」と満足死していたあたり、アルセーヌは「何も成せない、何も面白くない」ことが対比になりそうだと予想するぜ
- 937◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 20:31:35
ここ最近何度か規制されて書き込めないことがありましたが、今後、5日ほど顔出さなくなったら落としてもらって大丈夫です……! 規制解除されたら立て直すので……!
今までちゃんと明記せず申し訳ありません…… - 938二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 20:33:18
あに高にナサリーが残した銃火器があるはずだし、縁深いハスキーロアが行きそうな感じあるがどうか
- 939二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 20:34:03
- 940◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 20:49:47
- 941二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 20:54:16
四強の一人のスピードランサーと一歩落ちるけど生き残りの中じゃトップクラスのジャスティスファイアが重傷の今、現状最強戦力のバルバロイと成長期待値ナンバーワンのハスキーロアが一緒にあに高行く感じかぁ
ボスキャラも相当ヤバげなのが出てきそうだぜ - 942二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 20:56:36
ナサリーの対物ライフルと、前に投げられてた日本刀のマジックアイテムでマジカル・ガン=カタしてくれたらおもろいな
- 943◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 21:05:54
ウェンディゴの攻略先
dice1d5=3 (3)
1愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
3あに高地下防空壕
4病院地下研究棟
5掩蔽壕
本編も後ほど投下します……!
- 944二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:06:51
ジャックとウェンディゴ対面しないのか
- 945◆xaazwm17IRZa25/02/04(火) 21:14:27
ハスキーロアは高校内定しているので、これで高校行きはバルバロイ、ハスキーロア、ウェンディゴで3名。次の対運営キャラのダイスからは外します。
この二人に関してはダイス運に任せた方がらしいかなと……
ゲーム開始前までは一番接触時間が多いのに、デスゲーム始まったら一切疫病神に接触しない悪運も、ジャックの厄介さなのかもしれません
- 946二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:16:54
あー確かにそれっぽい
- 947二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:21:11
この三人を相手取るに相応しい因縁と格のボスキャラってもう決まってるようなもんか…
- 948二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:36:40
殺傷力と回避力が備わったジャックはなぁ
状況を掻き乱しやすいんやな… - 949二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 01:46:07
ほ
- 950◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:25:16
投下します
- 951◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:25:54
掩体壕のマジックアイテムが何なのかまでは、アルセーヌも把握していない。だが、マジックアイテムの存在は時に盤面を大きく動かす。
『ある目的』を達成するために、未だアルセーヌは雌伏に徹していた。
◇
バルバロイ・ジャスティスファイアを保護したクィーン、ジェイルフィッシュだったが、一つの問題が生じていた。
「Não me faça de bobo! Eu ainda posso lutar!(ふざけんな! 私はまだ戦えるぜ!)」
ジェイルフィッシュの泡に閉じ込められながらも、バルバロイは叫ぶ。叫ぶと同時に、額から血が迸るが、彼女は気にも止めていない。
自分より格上の身体性能を持つ灰色の獣人(グレンデル)。魔法少女に成って以降、身体能力で圧倒されたことなど無かった。
面白い、とバルバロイの全身が震える。自分より強い相手にどうやって技をかけ、どうやって極め、どうやって絞めるのか。武術とは弱者の武器だ。バルバロイは弱者/挑戦者として、グレンデルに挑みたい。
だからこの場から逃げ出すというクィーン、ジェイルフィッシュの提案に、バルバロイは応じなかった。 - 952◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:26:40
待っていればグレンデルは戻ってくるかもしれない。あるいは、奴を追いかけてもいい。
まだ喧嘩は終わっていないのに、逃げるのは嫌だ。
「ああもう……どいつもこいつも……」
ジェイルフィッシュは毒づく。ジャック、ノーブル・サヴェージ、そしてバルバロイ。自分勝手に動く魔法少女が多すぎる。本来他人をマイペースに振り回すのはジェイルフィッシュのはずなのだ。
クィーンは中学生だという。大同盟を作ろうとしているメリィも中学生なのだとか。
そしてジャックやバルバロイは高校生らしい。
(何? 魔法少女って年取れば取るだけジコチューになる生き物なの?)
バルバロイの話す言葉も良く分からないし。せめて英語で話してほしい。
「バルバロイ」
と、ロボット犬……ジャスティスファイアが泡の中のバルバロイに語り掛けた。
「Não estou fugindo, vou para uma nova batalha.(逃げるわけじゃない、新たに戦いに行く)」 - 953◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:27:22
話者ではないため片言だが、バルバロイにはそれで通じた。
「Bem, se é assim, tudo bem.(まぁ、それならいいけどさ)」
一応納得の様子を見せたバルバロイに、ジャスティスファイアは魔法陣の説明を的確に済ませていく。
バルバロイは、あにまん高校地下の防空壕を選んだ。通う高校にあるから、というシンプルな理由だった。
◇
ナチス兵士が大挙して攻め、ハーゲン、ティターニア、デッドマンズ・ハンドが散った、ビル内の遺言医院。
今そこには、たくさんの魔法少女が集まっていた。
元から居たハスキーロア、スピードランサー、天城千郷、ああああに加え。
ナイトメア★メリィ、ウェンディゴ、ネコサンダー、バーストハートのグループも合流し。
更にはハニーハントから逃げ延びたクレアボヤンスもまた、メリィの誘導でこの場所に辿り着いていた。 - 954◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:27:53
業務に忙殺されているメリィとクレアボヤンス。今しがたここで起きた惨劇(ティターニアの死と、スピードランサーのデッドマンズ粛清)の影響で、部屋の片隅で無言で佇むスピードランサー、そのすぐ近くで後悔と罪悪感、無力感で顔を伏せているハスキーロア。担任教師(ティターニア)の死にショックを受けているネコサンダー。
ウェンディゴだけが、他人事のように突っ立っている。名目上は見張りと、どの魔法陣を攻略するかの思索、という役目を負ってはいるが。あるいは、ティターニアも担任教師なので、ショックから立ち直るための時間、という言い訳もあるが、ウェンディゴは不登校なのでティターニアとは殆ど面識も無い。最強が死んだというのはショックだが、ブレイズドラゴンのような化物でも最後には死んでしまったのだ。
むしろ、ウェンディゴの関心はジャックにあった。遺言医院に襲撃をかけ、ティターニアの命を奪ったのはジャックなのだという。
(善人が呆気なく死んで、殺人鬼は今も生きてるか……。皮肉な話だ)
参加者の中で、最も疫病神と縁が深い殺人鬼が、未だ死神に捕まることなく生きている。
(私はいつ死ぬのかな)
このゲームも、きっと自分の魔法のせいだ。ウェンディゴはそう考えている。 - 955◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:28:55
ならば、早く死んだらいい。分かっているが、どうにも死ぬ気になれない。死ぬのが怖いのか、まだ生に未練があるのか。
(魔法陣の攻略だっけ……誰かと一緒に行くと、その人も死んでしまうのだろうか)
ならばこの場に留まるのか。いや、この対運営チームから離れた方がいいのだろうか。
(どのみちあにまん市から出られないのなら同じことかな。だったら魔法陣解除に協力して、こんなゲームから、そして私からさっさと解放してあげるべきなのかもしれない)
流されよう、と思った。
ゲーム開始時からウェンディゴはずっと流されている。ブレイズドラゴンに強制的に拾われ、その後はメリィに着いてきている。
このゲームで——何も為していない。
だからウェンディゴはあに高地下防空壕を選んだ。高校生だから、という簡単な理由だった。不登校だけど。
◇ - 956◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:29:39
撃った。
テンガイを撃った。透明になれる魔法少女を撃った。山田浅悧を撃った。ナチス共を撃った。ゾンビ魔法少女を撃った。
ミストアイは夜中に街を監視し、悪党を撃って成敗(殺しはしていない)を趣味としていたが、明確に人を殺したことはなかった。
箍が外れたのだろう、と自分でも思う。
アルセーヌの誘導でタワーマンションに行き、富豪たちが自分たちの殺し合いで賭けをして享楽に耽っていると知ったとき。
殺そう、と素直にそう思ったのだ。
引き金は軽かった。富豪たちは屈強な護衛を何人も連れていたが、魔法少女の前では人間がつけられる筋肉など、豆腐のようなものだ。
その場の全員を撃ち殺すのに、一分も掛からなかった。
冷静になって考えれば彼らもまた被害者なのだろう。何故ならタワーマンションには、魔法少女の護衛が誰も居なかった。誰か一人でも魔法少女が忍び込み、その気になればいつでも皆殺しにされる贄でしかなかった。
きっと彼らも騙されていたのだ。——知らねぇよ。 - 957◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:30:12
魂を引き裂いて分身を作ることも、魔弾に引き裂いた魂を乗せることも、分身ごしとはいえ生身の傭兵たちを皆殺しにすることも、簡単に出来た。
テンガイに囚われてからかかっていた霧が、ようやく晴れた気がした。
自分はこれでいい、これがいい。
アルセーヌに言われるままに、ミストアイは掩蔽壕を選んだ。
そこで何が待ち構えていようと構わない。——射殺するだけだ。
◇
先生が死んだ。妃先生が死んでしまった。
それはつまり、最強の魔法少女ティターニアが死んだということでもある。
(私たち、どうなっちゃうんだろう……)
担任の先生が魔法少女だった、という事実さえ容易に受け止められないのに。それが死んでしまったというのは更に受け止められない。
ネコサンダーは平和に生きてきた魔法少女だからだ。
いつもなら、クリックベイトが冷めた態度で諭してくれた。けれど、彼女は居ない。自分たちを逃がすために死んでしまった。 - 958◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:30:52
ふと、部屋の隅に座る、赤色のボディースーツの魔法少女に目をやる。
面識は無いが、特徴に該当する魔法少女のことを、クリックベイトから何度か聞いていた。
「……もしかして、スピードランサーかニャ?」
ん? とスピードランサーは顔を上げる。
バーストハートがまだ僅かに残していた回復促進剤を半ば無理やり飲ませたからか、外傷は塞がっている。
だが、心の傷は……。
ネコサンダーは、生者と話している気になれなかった。
「その姿……ああ、お前がネコサンダーか」
「クリックベイトから話は聞いています……ニャ!」
こんな地獄のような空気で、語尾をふざけていいのだろうかと思う。が、これが魔法少女ネコサンダーなのだから、仕方ない。クリックベイトならきっとそう言うはずだ。
「そっか。クリックベイトとは会えたか」
「会えたニャ」 - 959◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 03:34:42
投下を終了します、今週はこんな感じで進行するのでバトルは起きないと思います
(もしかしたらノブ子はバトルの導入までやるかも)
本来なら参加者の合流までもう少し紆余曲折あったのですが、短縮のためその辺りはショートカットしました……
それでは、今夜もありがとうございました……! - 960二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 07:50:54
クリックベイトの置き土産達…頑張れ
- 961二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 08:28:04
大ボス格になるであろうアリアは自分の体と繋がった神経を武器にしてる都合上ネコサンダーの雷が割と天敵だと思われるので一発かましてくれそう
- 962二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 10:51:35
そうかワイヤーが全部当たり判定になるのか
- 963二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 16:52:36
まさかの天敵か
- 964二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 17:52:39
年取ると自己中になるというか年取っても魔法少女やってるやつは自我が強いというか…
- 965◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 20:00:39
ネコサンダーの攻略先
dice1d4=4 (4)
1愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
3病院地下研究棟
4掩蔽壕
- 966◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 20:02:36
掩蔽壕もアルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダーと三人集まったので、次のダイスからは外します~。あぶれる子が出てきたら高校共々復活するかもです。
- 967二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:03:46
まーた一般魔法少女のネコサンダーがやべーやつと殺し合わされてる…
- 968二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:06:18
放出系魔法少女が不利地形で殺人鬼VS狙撃手&雷使いは対戦カードとしてキツすぎるぜ
- 969◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 20:23:57
そろそろアマゾン奥地に暮らす部族ニマンア族について語らなければならない……。
・言語はグロンギ語
・戦いを重視する文化
・ノブ子が部族基準で「心優しい少女」な程、我々から見ると野蛮・残酷な文化
他にも幾つか設定を増やしたいので、先着3レスの設定を採用します~
※矛盾したらダイスで決めます
※全員宇宙を破壊できる、などの世界観壊れちゃう設定は弾くのでご了承ください - 970二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:34:04
「戦いにおける勝利は最大限の名誉、敗北による死はその次に名誉な事」
「死者を侮辱、冒涜することは許されぬ」というプレデター的な生死観 - 971二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:35:54
独自の信仰を持っており、現実に例えると神道の八百万の神に近い信仰が根強い
- 972二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:37:18
勇敢な者、自分より強い者と認めた相手には異種族性別問わず最大限の儀礼をもって敬意を払う
- 973◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 20:46:03
ありがとうございます!
ニマンア族の文化が徐々に明らかになってきました……!
・「戦いにおける勝利は最大限の名誉、敗北による死はその次に名誉な事」
「死者を侮辱、冒涜することは許されぬ」というプレデター的な生死観
・独自の信仰を持っており、現実に例えると神道の八百万の神に近い信仰が根強い
・勇敢な者、自分より強い者と認めた相手には異種族性別問わず最大限の儀礼をもって敬意を払う
今後ともご協力よろしくお願い致します……! - 974二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 20:48:51
戦士の一族って感じ 確かにこれは現代社会との相性最悪だな…
- 975二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 21:24:24
ネコサンダーとスピードランサーはクリックベイトハーレムだし、学力ダイスで10以下叩き出してる学力おバカ同士だしで割とウマが合うんじゃないかと思っている
- 976◆xaazwm17IRZa25/02/05(水) 23:47:34
dice1d6=3 (3)
1ジェイルフィッシュ
2クィーン
3バルバロイ
4ジャスティスファイア
5宮島祐樹
6宮島優香
- 977◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:00:44
短いですが、書けたぶんだけ投下します……!
- 978◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:01:28
そう言って、ネコサンダーは目を伏せた。
「私たちを助けるために、敵を足止めして——」
「そうか」
スピードランサーはくしゃりと笑った。
「かっこいいなぁ、あいつは」
ネコサンダーは頷いた。
頼りになる人だった。ドライなようでいて、しっかりと人を見て、最後まで寄り添うような、そんな人だった。
「私は、こんなゲーム許せない。クリックベイト先輩や、たくさんの人を失わせた、魔法王たちが許せない。——絶対に、やっつけてやるニャ」
あえて、語尾にニャをつける。それは、魔法少女ネコサンダーの宣戦布告だった。
◇ - 979◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:02:13
ジャスティスファイアがバルバロイを説得し、ようやくジェイルフィッシュ、クィーン、ミストアイ&アルセーヌのグループは移動を開始することにした。
(最悪。ここ宮島家の前なの)
ジェイルフィッシュが片思いしている(本人は絶対に認めないが)宮島祐樹とその姉優香が暮らす一軒家だ。
バルバロイが気絶させた祐樹は、グレンデルが襲撃をかけたタイミングで敷地内に移動させられていた。
バルバロイは日本語が拙く喧嘩屋だが、その辺りの機微はある。
ジェイルフィッシュは自分が魔法少女であることを祐樹や優香に明かしていない。優香には薄々バレている気はしたが、祐樹は馬鹿だから隠しきっている。
巻き込みたくないからだ。
ましてや今は殺し合いの最中。 - 980◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:03:04
ゲームが終わるまで、日常を生きる人たちとは会いたくないし、言葉も交わしたくない。
さっきのように電話をされたら出るしかないが。心配かけたくないし。
「あの、もしかして魔法少女ですか?」
だから、誤算だった。
バルバロイが手加減し過ぎたのか、あるいは祐樹がバルバロイの想像以上にタフだったのか。
気絶から目覚めた祐樹が、家から飛び出しジェイルフィッシュに声をかけた。
ジェイルフィッシュは硬直した。
「えっと、プアを知りませんか! あ、本名はミアって言って、お姉さんたちと同じ、魔法少女なんです!」
(どうする……どう言うべきなの? 知らないって言って、会話を打ち切る。いや、駄目なの……!
それだと祐樹が他の魔法少女にも、危険な魔法少女にだって声を掛けかねない!
だからここは……) - 981◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:04:06
「知っているの。私たちも彼女を探しているの。合流したら君が心配していたよ、って伝えてあげるわ」
これ以上魔法少女に関わせないために咄嗟に思いついた、嘘。
私たちは殺し合いをしていて、君の探している魔法少女は数時間前にオオカワウソという魔法少女に狙撃されて死にました、などと言えるはずがない。
咄嗟に誤魔化せたことにジェイルフィッシュは内心で安堵する。
だが。
「その口調……お前、夏実か?」
(あ……!?)
迂闊だった。嘘をつくことに集中しすぎてしまい、自分のキャラクター性を偽ることを忘れていた。
何より失敗だったのは、夏実かと言われ、顔色を変え絶句してしまったことだ。怪訝な顔でもしてみせれば、まだどうにでも誤魔化せたのだ。
「ね、ねぇちょっと……」
見かねたのかクィーンが割って入ろうとする。
「夏美、お前も、魔法少女だったのかよ……」 - 982◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:05:11
少年の声には驚きと——棘が混じっていた。
「プアだけじゃなくて、お前も……。
だ、だったらどうして、知らないなんて嘘ついたんだよっ!
同じ魔法少女なのに……! 仲間じゃないの!?」
祐樹の顔は、徐々に怒りに染まっていた。
揶揄うときに見慣れた顔とはまるで違う。『家族』が無事か分からないという不安が、少年の心を荒れさせていた。
「それとも、夏実……お前、まさか、プアの敵だったの……?」
そんなわけないの、と普段ならすまし顔で、お馬鹿な幼馴染を窘めることが出来たのだろう。
だが、祐樹の怒り顔に、敵意に、ジェイルフィッシュは怯んでしまった。
聡明な頭から、何も言葉が出てこない。ただ立ち尽くすことしか。
クィーンもまた対応に困り果てていた。相手が大人、あるいは自身と同年齢程度であれば「今は立て込んでいるの、そういうのは後にしなさい」と叱責できた。あるいは、ミア/プアという参加者の死を正直に伝え、受け入れることを求めただろう。 - 983◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:06:37
だが、宮島祐樹は若すぎる。小学生……それも最高学年でもない。絆を結んだ魔法少女の死を伝えていいものか、クィーンには判断できない。
ジャスティスファイアは、あえて口に出さず、事の推移を見守っていた。最終的には、少年を無視して行けばいいと考えている。
幼い少年の心のケアも大切だが、ここで時間をロスして被害が増えては元も子も無い。佐藤二郎という警官も、ジャスティスファイアに協力したせいで殉職したのだ。
今は当事者同士に任せているが、拗れるような大人として介入する。
祐樹に目を合わせられないジェイルフィッシュの様子に、クィーンが悩みながら、ジャスティスファイアは迷わずに動こうとしたとき。
「exagerado(しゃらくせぇ)」
ずん、とカウガール風の魔法少女——バルバロイが祐樹とジェイルフィッシュの間に割り込んだ。 - 984◆xaazwm17IRZa25/02/06(木) 00:08:36
投下を終了します~
ノブ子パートはジェイルフィッシュの次に回します……!
アイデアのご協力、ありがとうございます……! - 985二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 00:14:48
これは他のキャラがダイスで選ばれてたらどうなってたのか気になるね
説得役? - 986二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 07:47:40
こういう状況で沈黙は不味いよな流石に…
- 987二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 08:06:58
野蛮で戦死上等な価値観を持つ割に仲裁役らしきフクロウを崇めているニマンア族
その謎を探るため我々はアマゾンの奥地へと向かった…… - 988二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 13:30:41
運営は何処にどう敵を配置するんだろう
向こうは地形に合わせて適材適所してくるのか最終的には殺し合うから勝つにしてもある程度削られて貰うのを期待して不利地形配置するか - 989二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 20:17:04
ひさびさに見にきたら自分の作ったキャラが死んでた まあ終盤まで生き残ってるし活躍もあったから満足なんだけどね
もう一人はどうか生き残って世界を破壊して欲しい - 990二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 00:02:50
祐樹の観察眼も相当鋭い
もう完全に尋問の流れじゃんね… - 991◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:31:21