- 1二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:38:42
「ふぅ〜、暖まる。素敵なサプライズ、ありがとう、フジ」
「ははっ、お気に召したかい。ここの所トレーナー業で忙しい君に、安らぎをあげたいと思ってね。たまにはこうしたサプライズもいいじゃないかな」
「本当、最高だよ。ありがとう、フジ。」
隣にいるフジキセキの再三感謝をしつつ、足に浸けている湯から温もりが体全体に広がり、ぽかぽかになる。
葉もようやく紅に染まるも北風が吹き始め、朝晩も空気が冷え込み、体が堪えるようになり始めた。
クローゼットにしまったジャケットなどの出番が、本格的になる冬の到来。
そんな寒空模様な日々に誘われた、フジからのサプライズはなんと足湯カフェ。
なんでも今日は語呂合わせでいい風呂の日らしく、それにあやかってのフジからの誘い。
今月に入ってから、リンゴやポッキーと言った、語呂合わせに合わせたサプライズを受けていたが、今日みたいに一緒に出掛けて受けるサプライズは久々だった。
今年もあと残す所、一ヶ月。特に今回は年末のレースに向けて、ラストスパートをかける時期。
本当なら、トレーナーの立場にある自分が練習と休みのONOFFの付け方に注意を払わなくてはいけないのだが、どうやら、フジにはお見通しだったらしい。
「最近の君は根を詰めすぎな気がするからね。適度にリラックスも必要さ」
ここに来る前に彼女から言われた言葉。
自分自身、トレーニングメニュー作りとレースの出走手続きやスケジュール調整などに追われ、私生活もおざなりになっていた。
流石、寮長しているだけはある。何人も娘を見ているだけあって、人の機微に長けている。
確かに、ここの所、休む暇がなかった。フジには感謝しきれない。 - 2二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:39:23
フジはこちらが温まったのを待っていたのか、頼んでいたこの店特製、レモンスカッシュのグラスを手に持つ。
こちらもフジと同じものが入ったグラスを握りしめ、
「そうかい。それじゃあ、日頃の頑張りに乾杯といこうか」
「「乾杯」」
彼女の合図で、キンッと、グラス同士がぶつかり合い、中の氷が揺れ、そのまま口に入れ、ゴクゴクと鳴らしながら喉に流し込む。
口にした瞬間、爽やかなレモンの酸っぱい風味と甘さの炭酸が、口に広がり、喉を潤す。
こたつでみかんを食べるような、熱さで乾いた喉に柑橘類特有の酸っぱい甘さが染み渡る感覚に近いだろう。
「あぁ~、美味しい」
「ふふっ、それは良かった。でも、君はアルコールが入ったサワーの方が良かったんじゃないかな」
フジはこちらが内心考えていることを見透かすように言う。
確かに彼女が言うようにアルコールがあればほろ酔い気分で更によくなると思うが、今はする気はない。 - 3二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:39:51
「アルコールがあればまぁ、それはそれで良くなるけど。流石に生徒の前では……。控えるよ」
「なるほど。それじゃあ、トレーナーさんは私が成人した時にこういうお誘いをしたら、遠慮なくお酒に付き合ってくれるのかい」
「まぁ、その時が来ればな……。フジはお酒に酔わなさそうな感じがするなぁ」
「ふふっ、そうかな。案外、弱いかもしれないね。その時が来るまで、楽しみに待つことだね。君だけの特等席用意してあげようじゃないか」
「そうだな。その日が楽しみだな」
なんて、少し先の約束に胸が弾む。
ニコニコと笑いながら語る彼女を横目に見ながら、そんな将来の出来事を想像しながら、もう一度、レモンスカッシュを飲む。
先ほどより心地よい味わいが口内に広がっていく気がした。 - 4二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:42:30
- 5二次元好きの匿名さん24/11/30(土) 23:43:42
良SSに感謝