- 1二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:00:18シュヴァルの目の前で契約書を破り捨てたい|あにまん掲示板シュヴァルと契約して半年ほど、あまり勝ち星がつかなくこのままじゃトレーナーに迷惑をかけ続けてしまうと考えたシュヴァルがトレーナーの元に自分の名前を書いた契約解除の紙を持ってきて、トレーナーに「これはど…bbs.animanch.com
これのSSです。若干設定変わってますがよしなに。
僕のトレーナーさんは凄い人だ。
僕がもっていないものを全部持っていて、僕に足りていないものを一緒に埋めてくれた。指導も的確で、人望もあって、かっこよくて、何より『偉大なウマ娘になる』という僕自身ですら信じ切れていなかった目標を一度も疑うことなく信じ続けてくれた。
でも僕はそんなトレーナーさんに、あの目に応えられていない。
メイクデビューでは差しきれずに2着。その後はなんとか未勝利戦で1勝できたけど、それから半年以上で5戦出たが僕は一度も1着になれていない。
トレーナーさんは僕のために120%で頑張ってくれている、それなのに勝てないのは僕のせいだ。僕が分不相応な夢を抱いてしまったから、トレーナーさんにその夢を語ってしまったから。そのせいでトレーナーさんを縛り付けてしまっているのだ。
トレーナーさんは優しいからそれは決して伝えてくれないだろう。きっと僕を最後まで信じて、全力で一緒に戦ってくれると思う。でも、トレーナーさんに僕なんかと心中させるわけにはいかない、だから。
今日で終わりにしよう。これ以上トレーナーさんに迷惑をかけないためにも。
- 2二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:00:47
その日の午後、僕はトレーナー室の前にいた。今日はミーティングの予定だからここにいるはずだ。深呼吸をして部屋に入る。
「……あの、トレーナーさん。今いいですか?」
トレーナーさんは僕に気づくと作業をやめ、こっちを向く。
「あれ、シュヴァル? 大丈夫だよ。でもミーティングにはまだ早いと思うけど……」
「あ、そうじゃなくて……お話ししたいことが」
「どうした? 次のレースのことなら今ちょうど……」
「じゃなくて、その……トレーナーさんとの……」
「俺? 俺がどうしたの」
あと一言が出てこない。言いたくない、別れたくない、でも。
「……これを」
結局言えずバッグから出した『専属トレーナー契約の解除申請書』と書かれた紙を手渡す。
「これは……どういうこと? シュヴァルの名前も書いてあるし。何か不満があるなら言ってほしいな」
「不満なんてないです! トレーナーさんのおかげでここまで来れたんですから、感謝しかないですよ」
「だったらなんで」
「これ以上僕なんかのせいでトレーナーさんの大切な時間を奪いたくないんです。トレーナーさんに教えてもらうようになってから確かに僕は強くなった……と思います。タイムは目に見えて縮みましたし、レース中の位置取りとかラストスパートのタイミングみたいな細かいところもトレーナーさんに指導してもらってからどんどん上達しました。でも、それじゃダメなんです」
「駄目? 何が駄目なんだ?」
「位置取りは完璧、タイミングもぴったり。フォームの無駄を無くして、コースや対戦相手の分析もトレーナーさんがやってくれた。やれることは全部やった“のに”勝てなかった。それはもう、僕に力がないからです」
「それは違う、シュヴァルは」
「違くないです、トレーナーさん。僕には才能が無かったんです。姉さんやヴィブロスやキタサンたちみたいなキラキラしたウマ娘にはなれないんです。だから、トレーナーさんにこれ以上迷惑をかける前に。それ、お願いします」
トレーナーさんは話を聞き終終わると軽くため息をついた後、口を開いた。
「とりあえずシュヴァルの思いはわかった。でも本当にいいの?」
「……はい。半年間、ありがとうございました」
そう言いながらできる限りの笑顔を作る。無理にでも笑っていないと、涙が出てきてしまいそうだから。
「じゃあ好きにさせてもらうね」 - 3二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:01:50
トレーナーさんはそう言いながら紙を両手で持つと、真っ二つに破いた。
「え、トレーナーさん!?」
僕が何を言ってもトレーナーさんは無視してビリビリに破き続け、やがて紙吹雪のようになってしまった。
「……なんで!」
「何か不満があるのなら別だけど、俺はシュヴァルのトレーナーをやめるつもりないよ」
「それじゃダメなんです、トレーナーさんには僕なんかのためじゃなくてもっと大事なことに時間を使ってほしいんですよ!」
「俺にとってはシュヴァルに捧げる時間が一番大切だから」
トレーナーさんは僕の目をまっすぐ見てそう言う。目の中には僕以外何も映っていなかった。
「……でも、僕が勝ててないのは事実です。僕に力がないから」
「それも違う。今までのレースはシュヴァルには少し短かったんだよ。シュヴァルの最大の武器であるそのスタミナを生かすには2400m以上の長いコースこそが君の……ってシュヴァル!? なんで泣いてるの!」
「え……? あ……ごめんなさい!」
この人は“僕”を見てくれている。ずっとわかっていたはずだったのに、その事実がたまらなく嬉しかった。
「謝らなくていいから、とりあえずこれ使って。今日まだ使ってないから」
「すみません……」
トレーナーさんがポケットからハンカチを受け取って涙をふく。仄かに香ってきたトレーナーさんの匂いに少し安心感を覚え、少しずつ落ち着くことができた。 - 4二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:02:34
「どう? 少しは落ち着いた?」
「はい、その……急にごめんなさい! これはちゃんと洗って返しますので」
「気にしなくていいのに」
「そういう訳には行かないですよ、と言うかやらせてください」
「いやいや……まあ、そこまで言うなら」
トレーナーさんはもう一度言い返そうとしたが、僕が譲らないのを察して折れてくれた。
「トレーナーさん」
「どした?」
「さっきの話なんですけど、こんな僕ですけど。もう一度僕を信じてくれますか?」
「もう一度も何も、俺は一度もシュヴァルを疑ったことは無いよ」
トレーナーさんはサラッとそう言った。何もおかしな事など無いように。
「……トレーナーさん、ありがとうございます」
「お礼されるようなことなんて」
「それでも、ありがとうございます。ここまで来れたのも、これから頑張れるのも、全部トレーナーさんのおかげなんです」
「それは違うよ、シュヴァルが頑張ったからで」
「いえ、トレーナーさんがいたから……」
2人で少し言い合った後、目が合い、同時に少し笑った。
「では……これからも頑張りましょう。一緒に、2人で。」
「そうだな、まずは次のレースで〜……」
僕がこの先どうなるのか、『偉大なウマ娘』になれるのかは分からない。でも、この人の期待に、目に、思いに応えたい。いや、僕は応えなきゃいけない。僕のために全てをかけてくれたこの人には、きっと僕の全てを捧げなきゃ釣り合わないから。ならば僕は走るしかない。それが僕がこの人のためにできる最大の恩返しなのだから。 - 5二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:17:27
- 6二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:29:11
いい……
- 7二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:41:31
自尊心低い子が引っ張られて自信をつけることでしか得られない栄養素がある
- 8二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:49:11
シュヴァトレがスパダリすぎる
- 9二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 03:53:02
しゅき……
- 10二次元好きの匿名さん24/12/01(日) 05:18:13
まデ尊