(SS注意)拷問

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:15:49

    「我が君よ────私に、拷問をしていただけませんか?」

     カツン、とトレーナー室に軽い音が響き渡る。
     それが、手に持ったボールペンを落とした音だと気づくのには、少しだけ時間がかかった。
     俺が呆然としている隙に、目の前の少女は俊敏に落としたボールペンを拾い上げてくれる。
     さらりとした金髪のポニーテール、エメラルドのように輝く碧眼、凛とした立ち振る舞い。
     担当ウマ娘のデュランダルは、宝物でも扱うかの如く、恭しくペンを差し出してくる。

    「落とされましたよ、どうぞこちらを」
    「あっ、ああ、ありがとう……目にも止まらぬ速さだったね、見惚れちゃいそうだったよ」
    「このくらいのことで、大袈裟です…………ふふっ」

     デュランダルは耳と尻尾をぴょこぴょこ動かしながら、謙遜して見せる。
     なんと謙虚な騎士なのだろう、憧れてしまうなー……と現実逃避をするのはここまでにして。
     俺は受け取ったペンを一旦机の上に置いて、頭の中を整理してから、再び彼女へと向きあう。

    「ごめんねデュランダル、聞き間違えたかもしれないから、もう一回やって欲しいことを言ってくれる?」
    「ええ、私に、拷問をしていただきたいのです」

     ────非常に残念なことに、間違いではなかったようである。
     その言葉を口にするデュランダルの瞳は真剣そのもの、一切の虚飾や疑念を感じられない。
     つまり、彼女は本気で、拷問をして欲しいと頼んでいるのだ。
     俺は心の中で頭を抱えつつも、なんとか平静を装って、問いかける。

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:16:07

    「…………なんで?」
    「先日、とある騎士物語を読んで妄そ……自問自答をしてみたのです」
    「なにを?」
    「仮に囚われの身になった時、私は敵からの尋問に耐えきることが出来るだろうか、と」
    「……えぇ」
    「無論、いかなる責め苦を受けようとも我が忠誠は揺らぎません、ですが実際に拷問されるというのはどんな感じなのかと興味が────いえ、もしもの時の備えとして鍛錬や経験と積んでおくのは、騎士として当然の心がけだと思ったのです」
    「まず、そういう状況にならないように、備えをするべきじゃないかな……?」

     俺としては騎士として愕然の心がけだよ、とはさすがに口に出さない。
     まあ、言わんとすることはなんとなくわかった。
     好きな物語のシチュエーション等に憧れてしまうことは、良くある。
     テロリストに占領された学校で一人抵抗する自分とか────まあ、それは置いておくとして。
     そういう時期は、誰にだって、あるものなのだ。
     彼女のように、多感な年頃であれば特に。
     とすれば、俺は返せる答えは決まっていた。

    「……ダメです」
    「ええっ!? なっ、何故なのですか!? お願いですから拷問をしてくださいよー!」
    「大声でそういうこと言わないで……! 担当の子に対して、そんなこと出来るわけないでしょ?」
    「そっ、そんなことを言わずにお願いします! 本格的なものではなく、簡単なもので良いのです!」
    「…………一応聞いておくけど、例えば?」
    「鞭打ちとか水責めとか」
    「はい却下」
    「わっ、我が君~~っ!?」

     デュランダルは泣きそうな顔で、必死に縋り付いて来る。
     簡単なもので出てくるのがアレだったら、本格的なものとは一体なんなのだろうか。
     ……若干の興味は惹かれるものの、心を鬼にして俺は彼女の要望を拒絶する。

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:16:23

    「一度で! 一度で満足しますから! もっと良い騎士になりますから~っ!」

     まるでクリスマスプレゼントをねだる子どものように駄々をこねるデュランダル。
     サンタに拷問を希望する子どもとかあまりにも嫌すぎるが、それはともかくとして。
     ……普段から真摯に俺を支えて、真面目にトレーニングへと臨んでくれているデュランダル。
     そんな、彼女にこんなことを言わせてしまうのは、あまりにも心苦しい。
     俺はがっくんがっくんと揺らされる中、思考をぐるぐるとかき混ぜて、やがて大きくため息をついた。

    「…………一度だけ、だからね?」
    「……! なんと寛大な処置! 心より感謝致します……っ!」
    「ただし! 痛みが伴ったり、水や道具を使ったりするのは、絶対ダメだからねっ!」
    「うっ、わっ、わかりました、でしたら『アレ』でお願いします、正直、私には効果が薄いと思いますが────」

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:16:42

     ────ぴちょん、ぴちょんと水滴が垂れていく音。極寒の地下牢にはあるのは、かび臭い匂いと微かに聞こえてくるネズミの鳴き声。王に仕える第一の騎士デュランダルは、民衆を人質に取るという敵から卑劣極まりない手段によって捕らえられてしまっていた。幾多の敵や困難を切り払う聖剣は奪われ、戦場を駆け巡る手足を縛りあげられ、仲間も従者も忠誠を捧ぐ王もおらず、ただ一人、幽囚の身となっている。毎日届けられる僅かなパンの欠片のみを糧に脱出手段を探る中、初めて聞く足音が牢へと近づいて来ていた…………という感じのシチュエーションでお願いしますっ!」
    「アッハイ」

     きらきらと輝く目で熱弁を振るうデュランダルの勢いに、俺は圧倒されてしまう。
     無論、トレセン学園に地下牢などは(多分)存在せず、場所はいつも通りのトレーナー室。
     一つ違うのは、ソファーの上の彼女が、勝負服を身に纏っている────いや、これも割といつも通りかな。
     とすれば唯一違う点は、彼女の手足がちょっとした紐で縛られていることだろうか。
     本人は、頑丈な縄などを希望していたが、流石にそんなことは出来ない。
     ウマ娘の力をもってすれば簡単に千切れてしまうが、それはいざという時すぐ外せるようにするための処置。
     彼女はそれを少し不満げに見つめながらも、しばらくすると、表情を引き締める。

    「では我が君よ、宜しくお願いします」
    「あっ、ああ……えっと、じゃあ、その、拷問するよー…………なん、て」

     ────しんと、空気が重苦しいものになり、静寂がのしかかってくる。
     そして押し寄せてくる『やってしまった感』、なんとも居たたまれなくなり、思わず顔を伏せてしまう。
     やがて聞こえてくる小さなため息、デュランダルは少し困ったような表情で言葉を紡いだ。

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:17:08

    「僭越ながら、一つだけ諫言をお許しください」
    「……どうぞ」
    「優しい貴方には大変難しいことだとは思いますが────どうか、真剣にお願いします」

     デュランダルの優しくと厳しい言葉に、俺はハッとさせられた。
     そうだ、彼女は真剣に、拷問を求めている。
     ごっこ遊びに等しい、おふざけの絵空事だったとしても、本気で臨んでいるのだ。
     それに対して、俺が本気で挑まないで、どうするというのだろうか。
     俺は背筋を伸ばし、改めて、彼女へと向きあった。
     その心に、もう迷いはない。

    「ごめん、デュランダル、今度は大丈夫だから」
    「……ええ、それでこそ我が君、否、今この時だけは、我が敵です」
    「ああ、任せておいて、キミの敵として、キミの誇りを、矜持を、存分に汚してみせるから」
    「宜しくお願いします────あと、敵のイメージなのですが背筋はなよっと、表情はいやらしく、笑顔はにやりと! 人を人とも思わない、最期の台詞が『この僕がこんなところで、こんなやつに……!?』となりそうな、慇懃無礼な鬼畜眼鏡でお願いしますね!」
    「注文が多い」

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:17:26

    「────フフッ、我が軍を散々に苦しめた忌まわしき騎士が、どんな蛮族かと思ってみれば」
    「……」
    「まさか、こんな小娘だったとは思いませんでしたよ、貴国は随分と人手不足のようですね?」
    「…………」

     ぽやんとした顔で俺のことをじっと見つめて来るデュランダル。
     何を言っても反応がないので、少し心配になって、俺は素に戻って声をかけてしまった。

    「…………デュランダル?」
    「…………えっ、あっ、はい! えっと、その、そうだ! …………くっ、殺せっ!」

     デュランダルは少しわたわたとした様子で取り乱すと、すぐにお決まりの台詞は決めた。
     ────尻尾をぶんぶん振り回し、とても生き生きとした眩しい笑顔で。
     あの台詞をこんな嬉しそうに言う人初めて見たな、そもそも実際に言う人も初めて見たけど。
     俺は気を取り直して、伊達眼鏡(賢さトレーニングに使うやつ)をくいっとした。
     そして、半笑いの表情を作りながら、出来るだけ相手を舐めたような口調で言葉を続ける。

    「まあまあ、そんな物騒なことを言わずに……僕はね、貴女を助けようと思って来たのですよ?」
    「……何ですって?」
    「少しばかり貴女の国の話をしてくれれば、すぐにでもこんな場所から出して差し上げましょう」
    「…………貴殿に話すことなど、何もありません」
    「ククッ、つれないご返事だ……それとも女騎士様は、お得意のベッドの中の方がお好みかな?」
    「……! ぶっ、無礼な……ッ!」

     かあっと頬を染めて、怒りを露にして睨みつけて来るデュランダル。
     我ながら良くもまあこんな台詞がスラスラ出るもんだと思いながら、その視線を受け流す。
     そして、そんな彼女に一歩近づいて、そっとその小さな顎の下に触れて軽く持ち上げた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:17:43

    「……ッ!?」
    「まあ良いでしょう、たっぷりと時間はありますから、存分に語らうとしましょうか?」
    「…………どんな時間をかけようとも、どんな責め苦に遭おうとも、何も話はしません」
    「ええ、そうでしょうね、ですから────その身体に、聞くとしましょうか?」

     俺は話しながら、空いている方の手で、デュランダルの背筋をつうっとなぞった。

    「……ひゃんっ!?」

     ────刹那、デュランダルの嬌声がトレーナー室へと響き渡った。
     びくんと彼女の身体が震えて、背筋がぴんと仰け反って、その瞳を大きく見開かせる。
     やがて我に返った彼女は、自分でも信じられないと言わんばかりの表情で、口を手で押さえた。
     
    「……大丈夫?」
    「なっ、情けなど……っ!」
    「ああ、そのまま続ける方向なんだ……おやおや、随分と可愛らしい悲鳴が聞こえてきましたね?」
    「少し、驚いただけです……っ!」
    「そうでしょうね、ここからが、本番なのですから」
    「……ッ!」

     身構えるデュランダルの両腕を、俺はぐいっと持ち上げる。
     無論、吊したりはしていないので、すぐ降ろせるのだが、彼女は律儀に上げたままにしていた。

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:18:06

     議論の末、彼女にすることになった拷問とは────くすぐり、である。

     子どもの遊びと侮るなかれ、実際に拷問として用いられることもある、立派な責め苦、らしい。
     とはいえ所詮はくすぐり、彼女も大して効かないと話していたし、大丈夫だろう、と思っていたのだが。
     ……さっきの反応を見る限り、結構くすぐりに弱いのではないか、という疑念が湧いて来る。
     しかし、耳をぴょこぴょこ動かしながら、今か今かと待ち詫びている姿を見ていると、今更ダメとも言えない。
     俺は意を決して、彼女の勝負服の上着の下へと慎重に手を忍び込ませた。
     蒸れているのか、少しだけしっとりとしている腋の下へと、指先をちょんと触れさせる。

    「……っ!」

     ぴくんと、反応を示すデュランダル。
     目をぎゅっと閉じて、身体を緊張させるように身構えて、防御体勢を取った。
     逆効果なんじゃないかな、と思いながらも指の腹で、すりすりと撫でるように腋の下へ触れていく。

    「ひゃ、あっ……ふっ……くぅっ……ん~……っ!」

     デュランダルは必死に声を抑えながら、身を捩らせて、もどかしそうに悶える。
     そんな彼女に顔を寄せて、耳元で、そっと囁くように語りかけた。

    「…………どうでしょうか、お話をしたくなったのではありませんか?」
    「言語、同断……ひぅ…………この程度の、ことで……わっ、がぁ、忠誠は、あっ……っ!」
    「────では、少し本気を出させてもらいましょうか」
    「……えっ?」

     ぽかんと、最期の希望を打ち砕かれたかのような表情を浮かべるデュランダル。
     その隙を突くかのように、俺は十の指先を蠢かせて、かりかりと、腋の下を軽く引っ掻いていった。
     瞬間、びくびくと、小刻みに彼女の身体が痺れるように震えあがる。
     恐らくは、心よりも先に身体が反応してしまったのだろう。
     腋の下から発せらる電気信号は、やがて彼女の脳へと到達し、その端正な顔つきを大いに歪めた。

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:18:24

    「ふふっ……んふふふふっ……くっ、ふふふふふふっ……!」

     デュランダルは、ぎゅっと口元を引き締めて、なんとか最後の門を守ろうとする。
     しかし、それは俺から見ても、あまりに頼りない砂上の楼閣としか思えなかった。
     少しでも風が吹けば、たちまち決壊してしまいそうな、そんな健気で儚い抵抗。
     そして俺は、その風を彼女の耳元に、ふぅっと吹かせてみせた。

    「────んあっ」

     びくりと、デュランダルの身体が一際大きく跳ね上がり、口が小さく開いてしまう。
     一度開いてしまった門は、容易く閉ざすことなど出来るはずがない。
     押さえ込んでいたものが濁流のように溢れ出して、その流れに身を流せるほかないのだ。

    「あはっ、あははははははっ! あははははははははははっ!」

     デュランダルの小さな唇が大きく広げられて、あられもない笑い声が響き渡った。
     顔を左右へと振り乱して、くねくねと身体を動かしながら、くすぐったさから逃れようする。
     しかし俺は、それに合わせて手を動かしていき、執拗にくすぐりを続けていった。

    「ハハハッ! 随分な歓び様、王国一の騎士の御趣味が、まさかくすぐりとはとんだ機密ですなあ!?」
    「ちっ、ちがぁ、あっ、あはははは! これ、ひゃめ! ひうっ、ふふふっ、あはははははは!」
    「さて、どうでしょうか? 少しはお話をしたくなったでしょうか?」
    「はぁはぁはぁ……! こっ、これしきのことで、我が忠誠はぁ、んん……っ!」
    「そうですが、ではもう少しばかり、こちらに聞くとしましょう」
    「ぜっ、ぜったいにぃ、ひっ、ははははははっ! だめ、だめぇっ、しょこ、だめっ!」

     デュランダルは、一瞬だけ凛々しい表情を浮かべてみせるが、それもすぐ瓦解してしまった。
     くすぐりの勢いを激しくすれば激しく乱れ、弱くすればぴくぴくと震えながら気丈に振舞う。
     その姿が、どこか可愛らしくて、どこか妖艶で、どこか淫靡で。

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:18:40

     ────もっと、苛めてしまいたくなってしまう。

     俺は一旦、くすぐりの手を止める。
     デュランダルは笑いを止め、乱れた呼吸を整えながら、不思議そうにこちらを見つめた。

    「ダメだというならば、一つ、ゲームでもしましょうか?」
    「ゲーム?」
    「10です、僅か10を数えるまでの間、貴女が口を割らなければ腋へのくすぐりはやめましょう」
    「……貴殿の、何を信じろと言うのですか?」
    「私もこの国においては一介の騎士階級、貴女風に言うならば、剣に誓わせていただきますよ」
    「…………好きになさい、いくらこの身を弄ぼうとも、この心までは自由に出来ないのですから」
    「……そうですが、ではそのように」

     そして、俺は再び、デュランダルの腋の下へと指先を走らせていく。
     爪で掠めたり、時折くにくにと窪みを揉み解したり、少しだけくすぐる位置をずらしたり。
     決して慣れされることがないように、あの手この手で与える刺激を変えていく。

    「んあっ……! ふふっ、ふひ、ひぁ、あはは、あはははは……っ!」
    「いぃ~ちぃ~、にぃ~い、さぁ~~ん」
    「かぞえるの、おそ、いぃ……くふふ、ふはっ、はははははははははっ!」
    「よぉ~ん、ごぉ~、ごぉ~、ごぉ~、ごぉ~」
    「ひうっ……!? きふじんしきかうんとも、やめ、てぇ……っ!」

     ゆっくりカウントをしながら、強弱をつけて、じっくりと煮詰めるように腋の下をくすぐっていく。
     心の中でほくそ笑みながら、カウントごとに耳をヒクつかせる、デュランダルを見やる。
     不屈の意思はそのままに、僅かな希望に縋るような、潤んだ瞳。
     俺はその目に、心の奥底から湧き上がるドス黒い感情を覚えながら、彼女の耳元へ小さく最後のカウントを伝える。

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:18:55

    「……じゅーう」

     そして、俺はデュランダルの腋の下から手を離した。
     彼女は息も絶え絶えのまま、力なくその場に崩れ落ちていく。
     全ての緊張の糸が解けて、安心感に思考を満たされて、警戒心が失われてしまうその一瞬。
     俺は────彼女の細い脇腹を、こしょこちょとくすぐった。

    「んひっ!?」

     ぴんと、デュランダルの背筋が伸びて、耳と尻尾が立ち上がる。
     触れている指先からお腹が震える感覚、そして、それはすぐに嬌声と変わった。

    「んくっ、ふふっ、ふひゃっ、ははははははっ! やっ、やくそくが、ちがっ、あははははっ!」
    「ええ、ですから約束通り、『腋へのくすぐり』は止めたではありませんか?」

     俺は、にやりと口角を吊り上げる。
     それをデュランダルは、全ての希望を失ったかのような、絶望の表情を浮かべた。
     しかし、それもすぐに歪んだ笑顔へと変わってしまい、切なげに身体を躍らせてしまう。

    「ひっ、ひきょうもの! ひれつかん! へんたい、いひひっ、やあ、あっ、はははははははっ!」

     デュランダルの精いっぱいの罵声が、虚しく木霊するのであった。

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:19:12

     ぴぴぴぴ、と無機質な電子音が鳴り響く。
     その瞬間、俺はデュランダルの身体からぱたりと手を離した。
     始める前に約束した拷問のタイムリミット、それが過ぎたことを表すアラームである。
     散々にくすぐられ続けた彼女は、しばらくふわふわとした様子で、身体を揺らめかせていた。
     瞳は熱っぽく虚ろで、口の端には川が流れ、肌は赤く上気して、呼吸は激しく乱れている。
     やがて、ふらりと力なく、俺の下へと倒れ込んで来た。
     彼女は顔を俺の胸元へと埋めて、ゆっくりと熱い息を吐き続ける。
     身体には火傷するような熱がこもっていて、汗もびっしょりとかいていた。
     鼻腔をくすぐる甘い匂いと汗の匂いが、妙に煽情的な香りとして伝わってくる。

    「はぁー、はぁー、はぁー」
    「……デュランダル、大丈夫? そんな耐えなくても良かったのに」

     どの口が言うのか、と自分でも思う。
     けれどデュランダルの手の拘束は、俺の力でも容易に外せる程度のもの。
     いかにくすぐりの猛威に晒されていたとしても、いつでも抜け出せたはずなのだ。
     俺の言葉を聞いた彼女は、顔を上げて、焦点の合わない瞳で俺を探して、やがて見つけ出す。
     すると、ふにゃりと顔を弛緩させて、嬉しそうな、安堵したような、そんな表情になった。

    「わがきみ、わたし、がんばりましたよ、きしのほこりを、まもりぬいたんです」
    「うん、頑張ったね、キミは素晴らしい忠誠を見せたよ、俺の誇りだ」

     そう言って、俺はデュランダルの頭をゆっくりと撫でてあげる。
     彼女は気持ち良さそうに目を細めて、そのまま再び顔を埋めて、すりすりと鼻先を擦った。

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:19:28

    「……えへへー♪」

     すっかりと甘えるデュランダル。
     しかし、彼女が甘えている相手は、先ほどまで彼女を責め立てていた相手なのだ。
     その事実に思うと────背中が、ぞくりと走ってしまう。
     そんな想いに蓋をしながら、俺は静かに、彼女の頭を撫で続けるのであった。

     後日、事あるごとにデュランダルが拷問を所望するようになったのは、また別の話。

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:20:33

    お わ り
    謙虚な騎士

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:23:31

    そういうプレイなん?

    でも好き♡

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/03(火) 01:41:34

    鬼婦人式カウントは知れ渡ってるのか…

スレッドは12/3 13:41頃に落ちます

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