閲覧注意SS 大人になってもプライバシーが尊重されない感じのデクと・・・

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 09:40:00

    朝焼けが優しく輝く初秋の昼下がり。
    銀杏の色づきはまだまだ先の話だろうが、それでも街には秋を思わせる様々な広告が客を集めようとひしめいている。
    休日だからか、街を行く人の数は少ない。

    ヒーローが暇する社会の到来はまだもう少し先のようだが、先に戦い道を開いた先人たちと今を戦い地を固めた英雄たちが、確かな手ごたえを感じられる、そんな気配がある。

    今日は休日。学校も休みである。
    学校が休みであるとは生徒たちが休むだけでなく、教師たちにとっての、つかの間の骨休めでもある。

    緑谷青年は、この日、いつもよりも長く眠っていた。
    前日、生徒たちの悩み相談に乗り、教案を見直し、自らの鍛錬にアーマースーツの性能チェックと、少々根詰めすぎたのが影響したか、ゆったりとした寝息はまだしばらく覚めそうにない。
    そんな青年の脳内奥深く、青年自身すら知覚し得ない心の一室で、話合う声が響いていた。

    「では、今年度下半期第二回青年性癖会議を始めようか」

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 09:52:23

    人の心の中でんなもん話し合うな

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 09:59:51

    また無駄に文章力の高い継承者達の猥談か
    待ってた

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:00:34

    お か え り

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:06:06

    書き下ろしで戻ってきたか

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:07:15

    あのスレの再来!?ありがとう待ってた

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:10:30
    閲注 プライベートが保証されない感じのデクSS|あにまん掲示板晴れやかな秋空の下、ひらひらと紅葉が舞い落ちる。木の葉一片はささやかな風と戯れながらゆったりと街中を踊り、やがては速度を緩め軽やかにその身を落とす。行先は雄英高校の学生寮。その一室。とある少年の寮室の…bbs.animanch.com

    「今回の進行役は確か煙さんだったよね?」

    「任されましたよっと。それじゃ、今日の議題だけど」

    そう言って、六代目・揺蕩井は資料を配布し出した。


    「いつの間にか、この空間もにぎやかになったものだ」二代目・駆動は誰にともなく独りごちる。それに三代目・ブルースも同調して続けた。

    「椅子もどこから来たか分からなかったが、テーブルも突然生えてきたな」


    「ちなみにこの資料の紙も突然出てきた」揺蕩井は笑って資料を配る。

    「いずれは青年の心の中でクレープ屋を開業することもできるかもしれんな」四代目・四ノ森も珍しく冗談を飛ばす。このときの彼の発言が契機となってテーマパークとショッピングモールを併設した一大レジャー施設を建設する案が浮上するのだが、それはまた別のお話。


    「それで、議題だけど、

    ①九代目の性癖の推移について

    ②元級友たちの関係性変化について

    の二つにしといた

    小規模ヴィランの増加もあるけど、そっちは毎日話し合ってるし今回はいいかなって」

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:14:07

    このスレはネタだけど、そういえばトガちゃんは草原の中でマジでこの状態だな

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:20:58

    「うん、それがいいね、異議なし」
    「異議なし」
    「異議なし」

    「それじゃ、資料1のグラフを見てねっと。
    見ての通り、九代目のSMASHの動向をグラフ化したものなんだけど、学生の頃との比較もできるように過去データも併記しといた」
    「煙さん、相変わらずだね、見事な資料だよ」七代目・志村は直系の先代である揺蕩井に対して率直な賞賛を惜しまない。

    「おう、煙さん。小僧の性癖動向の推移ってタイトルだが・・・」
    「ああ、万縄。見ての通り、5年ほど前から学生制服モノが激減して、徐々にだが代わりにOLモノが増えてる」

    「妙だね」与一の声は大きくはなかったが、不思議と通る響きをもって継承者たちに届く。
    「九代目・緑谷くんは丸みを帯びた学生モノを愛用していたはず。愛の力はそう簡単には覆らないほど強い。僕らはそれを知っているはずだ。それなのに、明らかに特定の時期に性癖が変異している・・・」

    沈黙する継承者たち。

    「これってよ・・・」
    小さな声で一石を投じたのはかつて命を賭して立ち向かった十代目・志村転弧であった。

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:23:14

    しがらきまでおるんか…あいつの中にAFOの因子居ますよね…?

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:37:15

    「なにか気づいたのかい、十代目」与一はすかさず転弧に続きを促した。
    当初こそ多少のわだかまりはあったものの、今となっては同じ青年の中で世界を見つめる者同士である。
    どんな因果が絡んでいるのかは分からないが、転弧は他の7人に比べて因子の固定が弱いらしく、いつでも青年の中に常駐しているわけではないようであった。
    それでもこの「青年性癖会議」の場にはきちんと現れるあたり、根は真面目といったところか。

    「5年前っていや、あいつ19歳だろ?高校卒業して一年目だ。それまでは同級生が刺さってたけど一年もたてば変わるってことじゃねえかな」
    「そうか、つまり、九代目の性癖は本当は学生モノではなく、特定の個人であったということか!」孫の推理に納得した七代目・志村は思わず立ち上がって拳を握る。

    「しかし、青年に特定の意中の相手が居たようには・・・」二代目・駆動がつぶやく。
    「ああ、なんどか浮遊の少女・・・麗日少女と出かけてはいたようだが、恋心とは限らん」三代目・ブルースも続ける。

    「もしかすると、ヤッコさん、全員にホの字だったなんてことも・・・」五代目は茶化したように言ったが、自分で自分の発言の真実味にうなってしまった。
    「可能性は高いね。するとこの五年間、愛する者たちになかなか会えなかったもどかしい日々だっただろうよ。夫は会えない期間が愛と強くすると言っていたが、限度というものもあるはずだ」と志村。

    「幸い、来週末に青年の同窓会があるようだ。そこで青年が粗相をしないように我々が気を配ろう」四代目・四ノ森が持ちかける。
    「ああ、そうだね。それじゃ僕たちも奮発するとしようか。すべてはそう一つの目的のため・・・目指すは、」与一は面々を見つめつつ問いかける。

    「「「 ク レ ー プ 半 分 こ !!!」」」

    「はい、それじゃ定例会議はここまでね。次の進行役は志村よろしく」と、揺蕩井の言によって閉会となった。議題はもう一つあったはずだが、次回に持ち越しということだろう。

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 10:52:57

    クソボケ継承者達!!

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 12:55:46

    クレープに汚染されちまったか

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 13:09:43

    やったー!待ってたー!おかえりー!!

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 15:19:25

    「緑谷くん、そこ配点ずれてるよ」
    「ヘイヘイヘイ九代目!教育委員会に提出する書類、提出期限が明日の午後までだぜ?」
    「九代目、先日の女生徒への返事は考えたのか?」
    「九代目」「九代目!」「九代目?」「九代目・・・」

    その日、緑谷青年はいつものように職員室に残って作業をしていたが、なぜか継承者たちのテンションが高い。
    普段からいろいろな知的作業を分担してもらっているが、今日はずいぶんと口数も多い。

    ただ、その心が青年には理解できた。
    何を隠そう、緑谷青年自身が昂っているのだ。この作業が終われば今日は久方ぶりに級友たちに会うことができる。
    その喜びが歴代継承者たちに伝播しているのだろうと思うだけで、青年は嬉しかった。

    普段は飲まないブラックコーヒーも、今日はいくらか甘く感じる。

    作業を終えて校舎を出た彼を幼馴染が新車で迎えてくれた。

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 15:26:12

    おっショート祝いの日か

  • 17二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 15:30:41

    道すがら、彼らはいろいろな話をした。

    「九代目、君は本当に立派になったね」と優しく微笑む与一の眼差しは、決して手も届かないような遠い未来を見ているわけではなく、いまこの日この時を歩む青年そのものを見ている。
    「俊典に任せたのは、本当にいい判断だったと、心からそう思うよ。」志村もほんのりとつぶやく。

    そもそもが無個性のままでも人を助けるために走り出した緑谷青年である。アーマースーツという力を得たといっても、教師という己が天職を投げ捨てるようなことはしない。
    教師もやる。ヒーローもやる。
    何も捨てない、すべてを助けようとした彼ならではの生き様である。

    継承者たちは自分たちの戦いの果てにいる、この青年が幸せに暮らしていることを何よりもうれしく思っている。
    それはそれとして・・・

    「さて、宴会場に着いたようだね。みんな準備はいいかな」と初代である与一から面々に対して注意喚起がなされた。
    「ああ、九代目の視線が誰に動くのか、しっかりと見極めないとな」と二代目。三代目もうなづいて同調する。

    「クレープは案外半分こが難しい。誰に頼めばいいのか、相手の個性も重要な判断材料だな」と四代目。
    「おいおい四ノ森さん、ちと気が早すぎるぜ」豪快に笑う五代目。

    「今日は十代目はいないのか」
    「転弧は今日は来れないみたいだね、そもそもいつもどこにいるんだろうか」
    六代目と七代目は十代目である志村転弧が不在であることに留意しつつ、九代目の心を射止めた者が誰なのか突き止めるのに集中している。

  • 18二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 15:42:51

    宴会が始まってからの青年は実に楽しそうな様子であった。
    継承者たちとしても実に嬉しいものである。今回は青年とのチャンネルをオフにしているのか、継承者たちの声は青年に届いていない。

    「今のところ、大きな動きはないね・・・」七代目・志村は警戒しつつ青年の視線の先を追っている。
    「ああ、だが油断は禁物だ」二代目・駆動も同調したが、その眼光には力がみなぎっている。駆動は青年の下半身に目を向けて面々に告げた。

    「みんな!下を見ろ!飲酒の影響か、若干だが九代目の九代目がプルスウルトラしている!まだローのようだが・・・」
    「きっかけさえあればすぐにでも四速に・・・だろ?」与一の額には小さいが汗の粒が浮かんで見えている。緊張の表れだろう。

    「いやしかし、おかしい。この宴では酒精のあるものは避けているようだが・・・」四代目・四ノ森の指摘はわずかな隙も見逃さない危機回避の使い手ならではのものであった。
    「となると、飲酒の影響じゃない・・・?」六代目・揺蕩井も当惑しつつ思考の筋道を拡げていく。

    「小僧、どこを見てやがる・・・?何を見てやがるんだ!?」五代目・万縄は少々語気を荒らげて歯がみした。

    そして、

    「意中の誰かを見ている・・・?」

    そうつぶやいたのは七代目・志村であった。丹念に紡がれた思考の鎖を発展させながら受け継ぎ、一つの推論という結実へと至った。これこそワンフォーオール継承者たちの面目躍如である。

  • 19二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 15:53:31

    「い、急げ!九代目の視線を確認しよう!」二代目・駆動にしては珍しく声も上ずっている。それだけ衝撃なのだろう。
    「今誰を見ている!?」三代目・ブルースも普段の物静かな空気感からは想像できない狼狽ぶりである。
    「酸の少女か!?カエルの少女!?それとも耳の少女か!?」と駆動。
    「も、もぎもぎの少年を見てるね」と与一。

    「そんなわけないだろ!なんでもぎもぎ坊主でプルスウルトラするんだ!」
    「僕に言っても仕方ないじゃないかマイヒーロー!」

    「あ、視線が移るようだぞ!?」
    「どこだ!?誰に移った!?」

    「壁際に付いたもぎもぎを見てる!」
    「なんでそうなるんだ!!?」

    「あ、今度は耳の少女と雷の少年がなんか言ってるぞ」
    「志村さん、あの二人好きだよね!僕もだよ!」

    継承者たちが喧々諤々の論争を繰り広げているとき、緑谷青年は道すがら幼馴染に言われた一言が気になっていた。
    「特別・・・」

    そうつぶやいて視線の先には大人になった麗日少女が・・・。
    しかし、継承者たちは緑谷青年の視線を追い切れず脳内での論争を白熱させていた。
    わずかな隙が戦局を変化させることを、彼らは平和の中で忘れてしまったのかもしれない。

  • 20二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:00:29

    なんか前も見たぞこの流れw
    学習しない歴代たちである

  • 21二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:08:08

    上耳推しの七代目でワロタ

  • 22二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:34:31

    警戒警報とともに走り出る戦士たち。
    瞬時に起動を展開する様にはもはや青い未熟さなど微塵もない。

    颯爽と夜空を駆ける姿。月光を配し、弱気を助け悪を挫く、その姿こそ、継承者たちが望んでやまなかった平和の象徴であり、希望の体現なのである。

    戦いは長くは続かない。

    一瞬にして事件は解決され、解散の段となる。
    このときばかりは継承者たちも静かに青年の感傷に寄り添う・・・かと思われた。

    少なくともそのつもりであった。
    青年が、いや、緑谷出久が駆けだすそのときまでは。

    「「「「「いけええええ!!!九代目ぇえええええ!!!!」」」」」

    この一件に関しては、筆者の筆など必要ないだろう。
    多くを語るは無粋というものである。

  • 23二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:23:18

    今日この日、大きな一歩を踏み出した緑谷青年。
    甘く色づいた瑞々しいひと時を過ごし、自室へと帰ってきた青年。傍らにかの少女の姿はない。

    独りで帰ってきたのだろう。
    そんな彼が自室のベッドで横になり、目を閉じたその瞬間、目の前に広がった光景。

    「congratulation」
    「congratulation」
    「congratulation」
    「congratulation」
    「congratulation」
    「congratulation」
    「congratulation」

    継承者たちが拍手で自身を讃えてくれる、そんな光景が眼前に広がったのだった。

    そう、すべては見られていた。
    見られていることを忘れてしまうほどに、夢中になっていたのである。
    およそ自覚するのは初めての感情、それこそ彼がつかんだどこまでも瑞々しく尊い感情、

    「恋」

    であった。

  • 24二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:31:47

    もうこれじゃん

  • 25二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:37:44

    その日の晩、継承者たちは静かに青年に寄り添った。心の一室で彼を讃え、これからどんな風に関係性を育んでいくのか、またさらには具体的にどんなデートをしようというのか、話題には事欠かない。

    そうして話し込んでいるうちに、睡眠モードに入ったのか、青年はひとこと断わりを入れて今晩はここまでで継承者たちとのチャンネルを切ることにした。続きの議論はまた後日である。

    しかし、興奮冷めやらぬ健康な若者。
    それも想いつのった心の奔流を形にしたばかり。

    ともなれば、SMASHが必要になるのは当然の話である。一度チャンネルを切っているため、継承者たちの声は聞こえない。オンオフも自在になったのは、彼の修行のたまものだろう。

    力強いデトロイトSMASHと嫋やかなニューハンプシャーSMASHを紡ぎ出した辺りで眠りに入る青年。
    その表情は少年の頃のように無垢で穏やかな寝顔であった。

  • 26二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 20:48:05

    wwww

  • 27二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 23:56:51

    スレ主の文章がガチで好きすぎる
    またスレ立てしてくれて嬉しいです!

  • 28二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 08:36:18

    心ときめく祝賀会の夜から数日、緑谷青年は相変わらず職員室で教育業に精を出していた。昨晩はベッドの上で独り精を出していたが、今日は学校でかつての師と共に生徒たちのテスト採点に精を出している。

    もちろん「精を出す」という慣用句を使うことに、筆者の他意はないと強調するのを忘れてはならない。

    「毎度のことながら、期末考査ってしんどいですね、オールマイト・・・」
    「私も初年度はミスを連発したものさ。といっても、私に事務方は期待されていなかったのか、バックアップもついてくれていたがね」

    激戦を経たかつての師。その相貌にはいまだ若々しい希望の光が灯っている。
    期末考査は職員たちにとっても一大決戦である。英気が鈍っては戦はできない。
    二人とも消耗に消耗を重ね、このまま職員室で仮眠を取ることにした。

    二人の目元には生徒たちにもらったアイマスク。
    英雄オールマイトは弟子とお揃いの恰好で休むことに、秘かな嬉しさを感じていたが、人類の希望として戦ったにしてはあまりにも素朴すぎではないだろうか。いや、野暮は言うまい。そのささやかな幸せこそ、彼が守ろうとしたものなのだから。

    まどろみの中で意識を手放すオールマイト。次の瞬間、彼の耳に入ってきたのは懐かしい声。


    「・・・・俊、典・・・か?」

  • 29二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 10:12:20

    師弟再開……

  • 30二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 13:36:42

    「お・・・師匠・・・?」

    「八木くん?」
    「八代目か」
    「おお、彼が」

    なんの因果が働いたのかは分からない。
    隣で緑谷青年が寝ていることと関係しているのか、それとも別の要因が働いたのか、ともかく、八代目継承者・八木俊典はいま歴代の継承者たちの部屋に立っている。

    「ここは・・・」

    さすがのオールマイトも動揺を隠せない。
    ただ、彼の直感は瞬時に答えを見つけていた。
    ここはワンフォーオールの継承者たちの空間であり、危険はないということ。

    そして、ここには自分と同じく使命に生き、戦いに果てた先達がいるということ。

    「お師匠っ・・・!」

    彼の年恰好が若かりし頃の姿に変わっているのは、決して超常ではない。その魂の在り方こそが姿形を成しているのだ。
    若き八木青年を取り囲む、歴代の面々。そのまなざしはどこまでも深く、優しい色に満ちていた。

  • 31二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 15:27:41

    「積る話もありますが・・・」
    再開の喜びもそこそこに、八木が切り出したのは本質的な問い。

    「お師匠たちはここで何を?」
    当然の疑問であった。
    この殺風景な空間で、これほどの歴々が一堂に介している。

    しかも聞けば、いまはいないものの、十代目にはあの少年もいるとか。
    心は踊るが、不安もある。ここは先達に問うのが一番である。
    だが、師である七代目・志村から告げられたのは、彼の想像を裏切るものであった。

    「性癖会議だよ」

    「・・・・・?・・・・すいません、お師匠、もう一度聞いても」
    「性癖会議」

    「せ、性癖会議・・・お、お師匠の?」
    「いや、九代目の」

    「み、緑谷青年の?」
    「そう、九代目の緑谷出久くんの性癖を皆で解析しているんだ」

    オールマイトは後に、このときの衝撃を、オールフォーワンが生きていた報せよりも強かったと、回顧録の中で述懐している。

  • 32二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 15:32:18

    感動の師弟再会…と思いきやオールマイトも巻き込まれちゃったかー

  • 33二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 15:38:46

    「いや、あの・・お師匠たちのことだから何か考えが・・・いや、なんでもありません」
    「そうか、実は俊典の席も用意してあるんだ。いつかこんなときが来るような気がしていてね」

    「八木くん、よろしく頼むよ」与一はにこやかに声をかける。

    八木はもはや苦笑いをするしかなかった。
    しかし、数刻の後、彼は膝を打ってのめり込むことになる。

    「なるほど!クレープ!これは盲点だった!」八木の弁はどこか上り調子。
    「八木くんは後継者を見事に選んでみせたね。」与一も嬉しそうな空気を隠せない。
    「あの緊迫した場面でクレープ半分こはなかなか言い出せることじゃない」駆動も珍しく素直に誉める。

    後ろ髪をかいて照れて見せる八木。
    自分のことのように嬉しく思うのは、彼が少年を何より大切に思ってきた証左でもある。

    「九代目は今週末にデートの確約があるらしい。八木くんも同行してはどうかな?」と提案する与一。
    実ににこやかな座談会の雰囲気である。

  • 34二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 15:57:37

    同行って現場に肉体で行くってこと...じゃないよね...?!

  • 35二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 20:01:05

    「い、いやさすがに気まずいかと・・・」
    「そうかな。そういうなら仕方ないけど・・・」

    「ちなみに、緑谷青年のデートのお相手というのは・・・?」
    八木の質問はこれまたもっともなものであった。

    与一も、はにかみながら告げる。
    「浮遊の少女、麗日さんと言ったかな。彼女さ」

    七代目・志村も補足情報を付け足すようで、
    「九代目は学生の頃からたびたび彼女でSMASHしていたよ。手あたり次第食い荒らす食いしん坊かと思っていたが、存外一途じゃないか。女はそういうのに弱いんだ」

    継承者たちとの歓談もたけなわになった辺りで、意識がまた遠のいていくのを感じた八木。
    おそらく青年が起床するのだろう。

    八木は今回のことは、胸の奥に秘めておくことにした。
    いくら師とはいえ、知らず知らずのうちに心の中に他人が入り込んでいるというのは、温厚な緑谷青年であっても良い気分ではないだろうとの判断であった。

  • 36二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 07:31:15

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 08:24:13

    お師匠とんでもないこと言ってて草

  • 38二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:05:23

    数日後、緑谷青年の姿は都心の水族館の前にあった。
    脳内にはこれ以上ないほど生暖かい目の継承者たちが並んでいる。この日は十代目の志村転弧も参列していた。
    ちなみに、彼も若干生暖かい。

    水族館へやってきた目的は当然、デートである。
    おそらく、彼の認識の中でははじめてのデート。実際には学生時代に似たような経験を複数回重ねてはいるものの、自覚してのデートは初めてのこと。

    青年は緊張していた。
    昨晩、唯一の女性である七代目に入念なファッションチェックをしてもらい、普段はつけないオーデコロンまでつけている。手首と首筋にほんの数滴たらした香りの雫はむしろ青年自身を興奮させている。

    万が一にも遅刻があってはいけないとして、青年は二時間近く早く出発していた。
    そして当然二時間近く早く到着している。
    それだけ気持ちが高まっていたのだろう。そんな振舞いすら継承者たちには生暖かい目で見守られてしまっている。

    だが、そんな彼らにも予想だにしない事態があった。それは青年にとっては嬉しい誤算。


    麗日お茶子もまた二時間近く早く到着していたのである。

  • 39二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:11:54

    こいつらはよー!!!!
    にやにやしちゃう

  • 40二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:12:37

    ミッドナイト先生がいたらめっちゃ喜んでくれただろうな…

  • 41二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:18:12

    「は、早い・・・ね」
    「う、うん・・・デクくんこそ」

    「う、うん・・・遅刻しちゃいけないと思って・・・」
    「あ、えと・・・う、嬉しいな・・・へへ」

    「「あ、あの」」
    「あ、麗日さんからどうぞ!」「いやいや、デクくんからどうぞ!」

    「あ、そ、それじゃ・・・今日"も"きれい、だね」
    「!!!へへ・・・うへへ・・・参ったな・・・デ、デクくんもカッコいい、ね」

    「「へへへ」」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    「夫との日々を思い出すよ」志村は生暖かい目を崩さない。
    「ちゃんと言えたな、偉いぞ少年」四ノ森も生暖かい目である。
    「ヘイヘイヘイ九代目!」揺蕩井もにこにことしている。

    「しかし、勝負はこれからだよ」初代である与一も生暖かさを隠しれていないが、それでもデートが始まったばかりであることを忘れてはいない。
    「ああ、手をどこで握るか・・・そこが最初の関門だろう」と駆動も続ける。彼も若干生暖かい。

    「おいおいヒーロー、顔真っ赤じゃねえか」とつぶやいたのは十代目の志村転弧。眼差しはどこか優し気であった。
    「ヤッコさん、大人になってきやがったな・・・へへっ」鼻頭をこすって涙ぐむ万縄。

    「九代目、勝負のタイミングを見逃すんじゃないぞ・・・」ブルースも遠くを見ているかのような眼差しをしている。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    互いの服装を誉めつつ、水族館の入り口へと立つ二人。デートにしては少々大荷物だが、バッグの中にはヒーローコスチュームが収納されている。いつ何時も戦えるように準備しているのは彼らがヒーローであるからだけではなく、愛する人の隣に立つにふさわしい者であろうと努力しているからでもある。

  • 42二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:24:35

    6代目のヘイヘイヘイ!が汎用性高い定期
    何気にカバンがヒロスになるの凄い技術よな

  • 43二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 11:30:34

    水族館といえばデートの定番である。

    雨が降ろうと予定変更の必要はなく、屋内の間接照明はほんのりと美肌効果をもってパートナーの魅力を底上げしてくれる。
    水族館特有の青みがかったライティングは幻想的な空気感を演出してくれる上に、時期によっては様々なショーを見ることができる。
    動線も事前に把握しやすく、デートの初心者たちにとってはハードルが低く、一歩を踏み出しやすいのだろう。

    麗日お茶子は意外なほどにこなれた動きで緑谷青年をリードする。男の威厳などののたまうような感性をもちあわせていない彼にとっては嬉しいことである。

    今日は比較的空いている。何か事件があったわけではないが、何はなくともこういう日もあるのが人の世である。魚たちは幻想的にライトアップされ、実に雰囲気のいい空間が形作られていたが、実のところ、二人はいっぱいいっぱいであった。

    隣に愛する人がいるという事実。
    この事実と今日の思い出だけで二人は生涯を幸せに生きていける確信があったが、いままさにその思い出を生産している只中にいるのだから、二人の緊張はもはや戦場と見まがうほどである。
    魚など見ていられるはずもない。

    緑谷青年の左側には麗日お茶子が歩いている。ほんのりとした香水の匂いは青年から喧騒を奪い、音を奪い、世界を奪って二人だけの空間を作り出している。そして、それは彼女も同様であった。

    一方継承者たちは、
    「「「「キース!!キース!!」」」」
    と大合唱である。

  • 44二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 12:20:58

    お歴々自重して?

  • 45二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 12:33:05

    キース!キース!
    まあおばあちゃんと一緒にてんこくんもシュプレヒコールしてると考えたらかわいいもんさ

  • 46二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 14:21:03

    お互いに距離感を掴みかねている若者二人。

    緑谷青年は左手が、麗日女士は右手が空いているにもかかわらず、その手は互いにぶらぶらと宙を踊っている。
    そのまま互いの手は触れ合うことなく食事へと移っていった。
    麗日お茶子24歳、これまた見事な動線誘導である。

    とてもはじめてのデートとは思えないスムーズさ。
    とはいってもその顔は真っ赤に染まり、彼女自身もいっぱいいっぱいになっていることが伺える。

    食事の一瞬一瞬がきらめくように美しく感じられる二人。
    相手の一挙手一投足が気になってしまう。

    巷では"デートが終わったときのスマホの充電量がそのデートの点数である"という言説があるのを聞いたことがある緑谷青年だが、今日の彼はスマホを見る余裕など微塵もない。
    目の前の女性以外の何もかもが彼にとっては路傍の石でしかなかった。

    彼の脳内の奥の奥。継承者たちの部屋で固唾をのんでことの成り行きを見守る面々であったが、唯一の女性である志村菜奈はどこか違和感を感じていた。

  • 47二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 14:33:06

    「おかしい・・・」

    直前まで囃し立てていた継承者たちだったが、志村が一言つぶやいた途端に静まり、その発言の真意を伺うことにした。この切り替えの速さは彼らが戦場に生き戦場に果てた生え抜きであることを如実に物語っている。

    「おかしい、っていうのは?」与一の質問はどうも要領を得ない。というのも、彼自身違和感を覚えてはいるものの、どこにそのポイントがあるのか分からないからである。

    「麗日さんと言ったね。彼女の恋愛経験は分からないが、見たところそう豊富な方ではないだろう。そのわりにはあまりにデートがスムーズすぎる。女は想い人との初めてのデートにそこまで余裕はないものさ」
    志村の発言はまさに正鵠を射ている。

    「ってこたあ、なにか、あの嬢ちゃん、なんか隠してやがるってのか?」五代目は信じがたいといった様子で独りごちる。
    確かにこの可憐な少女に裏があるとは思い難い。万縄が荒ぶるのも無理からぬことであった。

    「いや、麗日さん自身が何かを企んでいるとは思えない。これはおそらくだけど、彼女には・・・


    ”ブレーン”がいるかもしれない。」

    「「「「~~~~~っっっ!!!」」」」

    「へっヒーロー・・・お前の戦いはまだ続く見てえだな・・・?」誰に聞かせるでもなくそうつぶやく志村転弧の目はどこか優しく、それでいて深い色をたたえていた。

  • 48二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 14:49:13

    まあA組女子が総出で面倒見てるよね、間違いなくね

  • 49二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 16:31:46

    「しかしよ、同級生の連中もいるんだし、そこまでおかしいことじゃあ・・・」万縄の額には小さな汗のつぶがついている。声は上ずっているというほどではないにしても、少々動揺気味である。
    「いや、志村、なにか感じてるんだろ?」六代目・揺蕩井は何か確信に近いものをもって尋ねた。

    「ああ、煙さん。麗日さんの今日の表情を見てたかい?」
    「そ、そりゃ幸せそうだなって・・・」

    「確かに表情はそうだった。幸せそうだった。お預けをした後にご褒美を与えたときの夫を思い出したよ。でも、問題はそこじゃない・・・」
    「視線・・・か」四ノ森は静かに、だがよく通る声で告げた。

    「浮遊の少女、麗日女士は明らかに舞い上がっているように見える。だが、その視線はあまりに作為的に動いていたようにも見えた。いまこうして解散地点に向かう中でも彼女の視線は何かの意志を感じさせるように動いている・・・」四ノ森の分析は他の継承者たちをして異論の余地がないほどに完成している。

    「なまめかしい視線というわけでもないようだな」駆動も四ノ森の分析に加勢する。
    「直感だが・・・」ブルースが前置きをおいて短く告げた。
    「複数人の意志を反映しているかのように感じる・・・。まるで我々のように彼女の中に別の意識があるかのようだ」

    「決まりだね・・・」与一がまとめるように宣言する。
    「麗日さんの中に何かがいるのか、いるなら何がいるのか。それを解き明かそう。そのためには九代目にはもっと積極的になってもらわないと。そろそろデートも終わりそうだし、自室に着いたら九代目に今日の所感をレポートしてもらおうか」

    継承者たちの戦いはこれから始まるのかもしれない。

  • 50二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 16:39:18

    「一方の麗日お茶子。
    実に充実した休日の過ごし方であった。
    これ以上ないほどに美しい愛の営みであった。緑谷青年はお茶子の腰に手を添えて・・・」

    「お茶子ちゃん、何独り言してるの」
    「はえ!?」

    一方の麗日お茶子。夢見心地のままデートは終わった。まだ明るいうちにランチを済ませて、それから解散。初デートでおかしがちな時間配分のミスを巧妙にかわしきった見事な手腕が光る。
    "個性"を使っていないにもかかわらず、ふわふわとした足取りで自室にたどり着いてから一人でナレーションをつけて思い出を反芻する浮かれぶり。

    そんな彼女に声をかけたのは彼女の頭の中の住人、トガヒミコであった。

    「頑張ったね!すっごくいいデートだったのです!」
    「いやあ///へへ、ヒミコちゃんのおかげです///相談乗ってくれてありがとね!」

    「なんの!まだまだこれからだよ!しっかり作戦立てて、出久くんを骨抜きのメロメロに悩殺するのです!」
    「っ!・・・・へへ・・・・うへへへ・・・・・よ、よろしくお願いします////」

    「「ぐへへへへ」」

    トガヒミコの戦いもまた、はじまったばかりなのかもしれない。

  • 51二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 16:50:50

    やっぱトガちゃんだったかw
    乙女?なトガちゃんwithお茶子と歴代継承者with九代目の恋愛バトル楽しみ

  • 52二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 17:46:19

    トガちゃんが作戦立案やってるとか知ったら転弧くんなんて顔するのかな…?

  • 53二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 19:45:12

    翌日になって、青年は継承者たちが大人しいことを不思議がっていた。
    普段なら起床とともに力強く勃ち上がる自身の自身に対して興味深げにインタビューする七代目の声が聞こえてきたり、現代の娯楽について質問を投げかける四代目が居たり、その日の職務内容を前もってリマインドする二代目の声が響いてきたりするものだが、今日はずいぶんと静かであった。

    気配はするので彼らが消えてしまったわけではないことは分かっているのだが・・・。

    (なんかまたイタズラしようとしてるのかな)
    以前も五代目と六代目がアダルトな茶化し方をしてきたり、SMASHに励んでいるタイミングで志村転弧がわざとらしく声をかけてきたりしたものである。
    緑谷青年にとってはそのすべてがかけがえのない大切な思い出であった。

    訝しがりながらも出勤する青年。職員室では八木が生暖かい目で見守ってきたことを不思議がるのであった。

    ところ変わって、青年の心の中。継承者たちは会議に臨んでいた。
    「だからよ!あいつは正攻法の方がいいだっつんてんだろ!」
    「いや、転弧。いくら九代目が純粋とはいっても彼は童貞だよ?歯の浮くようなセリフは荷が重いような・・・」

    「僕らの世代とはだいぶ離れてるからね・・・そもそもモテてもいないからアドバイスしづらいよね、マイヒーロー」
    「いっそ腹筋を見せるというのはどうだろうか、女子はみな腹筋を好むと聞く」駆動の提案もどこか迷走気味であった。

    なにしろ恋愛などろくにしてきていないのだから、作戦会議は迷走を極めるばかり。

  • 54二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 19:59:47

    >>50

    独りナレーションしたり笑い方がクセ強かったり

    トガちゃんに影響されてるの抜きにしても何か濃いなお茶子さん

  • 55二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 20:03:07

    これ恋愛戦力比9:1(トガ:継承者合計)ぐらいないか

  • 56二次元好きの匿名さん24/12/07(土) 20:11:15

    >>53

    菜奈さんマジで何やってんの…

  • 57二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 00:16:17

    そのうちデクの中の転弧とお茶子の中のトガちゃんがお互いに気づく可能性もあるかな?

  • 58二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 09:28:15

  • 59二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:31:25

    一応保守

  • 60二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:21:08

    「ときに九代目、もうすぐクリスマスだが、何か贈物の考えはあるのか?いやなに、君と共に在る中で私たちも学習したよ、プレゼントを贈り合うのだろう?」四ノ森は現代的感覚で緑谷青年に助言を行った。
    「あ、いや、まだ決めてなくて・・・」緑谷青年の方は、忘れていたわけではないにしても、どうも決めかねている様子。

    なにしろ女性に贈物をするなど初めての経験である。考えただけで顔が赤くなってしまうが、そんな様子も生暖かい目で見守られてしまうのは最年少の悲しきさだめか。

    「手編みのマフラーなどはどうだろう?」駆動からの提案。
    「いや、マフラーはもう持っているだろう。ここは別のがいいのでは?」ブルースからの否定。

    「商品券は?」与一からの提案。
    「そいつは悪くねえじゃねえか?」万縄からの肯定。

    「なんだかんだ現金が一番うれしいよね」志村菜奈からの提案。
    「ちと色気が無さすぎないか?」揺蕩井からの疑問。

    議論は踊る、されど進まず。

  • 61二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:21:23

    同時刻、麗日お茶子の脳内ではトガヒミコとの作戦会議が始まっていた。

    「お茶子ちゃん、出久くんへのプレゼント、一緒に考えるのです!」
    「おーっ」

    「ここはやっぱり重すぎず軽すぎず?」トガヒミコは楽しそうに提案する。
    「普段使いもできるようなもの?」麗日もまた楽しそうに返す。

    「お財布は?」
    「いいね」

    「ネクタイピンとか」
    「素敵」

    「マフラーはちょっと重いのです」
    「重いのもたまにはいいけどね」

    議論は静か、されどスムーズ。

  • 62二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 21:41:25

    クソッ、恋愛経験値の差が大きすぎる!!!!!!

  • 63二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 22:10:46

    「服装はどうする?」
    与一の質問は出久自身に向けられたものであった。自主性を重んじる彼らしい質問である。

    「デートの服装ってどんな感じがいいのか、迷ってて・・・」
    いつもなら長台詞をたたみかけてくるところだが、どうも歯切れが悪い。それだけ彼の中で大きな思いが動いているのだろう。

    「君らしいのが一番・・・といっても納得はできないだろうね」志村菜奈は慈しむような眼で若き継承者を見守る。
    「九代目、私は逢引の経験はあまり多くないが、年長者として言うなら、あまり気負っても仕方ないものだよ」四ノ森の助言もまた優しいものである。

    「とはいえ、何かしらの方向性は必要だろう」と駆動。
    「だな。女の好みを意識するなら・・・」万縄はあごをさすりながら斜め上を見て考え込む仕草を見せる。
    「九代目の武器を活かすなら・・・」揺蕩井も眉間に指をあてて思考を深めている。

    数刻の後、志村菜奈以外の継承者たちは声を合わせて緑谷青年に提案した。

    「「「「上半身裸で肉体美を見せよう!!」」」」

    一方その頃、トガヒミコたちは・・・
    「大人のデート服はスマート系でいきたいのです」
    「あ、私もそう思う!こういう合わせでどうかな?」

    「すっごくいいのです!さすがお茶子ちゃん!」「えへへ」

    「「うふふふふふ」」

  • 64二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 22:15:49

    >>62

    言うてトガちゃんだってそこまで実際の恋愛経験なさそうなのに

    大の大人×7(うち一人既婚者女性)が経験値で負けてるの悲しすぎる…

  • 65二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 22:21:42

    トガちゃんは自分の本性は可愛くなくて人から嫌われる物だと理解してるし、一般的な女子中学生を演じられたくらいの分析力はあるから

  • 66二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 08:05:58

    平和!

  • 67二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 16:27:03

    恋多き乙女(意訳)だったもんな、そりゃ戦い漬けのおっさんたちよりは戦力になるよな

  • 68二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 17:09:52

    トガちゃんにとっては、生前はできなかった「普通の恋愛」を大好きな二人に託してる面もあるのかな

  • 69二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 18:34:09

    たしかにデクの上半身は見事な筋肉ではあるけど…
    違うそうじゃない…

  • 70二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 22:48:16

    まあお茶子さんならデクが上半身裸でも冷めたりはしないだろうけど…

  • 71二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 07:50:37

    むしろちょっとアガるまでありそう

  • 72二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 09:10:27

    「まあ、交際ははじまったばかりなんだし、ゆっくりと愛を育めばいいさ」
    と、告げたのは七代目・志村菜奈であった。その額には小さな汗のつぶが浮かんでいるが、それは先人たちの迷走ぶりに困惑しているのか、それとも若き継承者の朴念仁ぶりに困惑しているのか・・・。

    「あっ・・・?」
    しかし、緑谷青年はなにかに気づいたように声が上ずる。
    「「「???」」」
    継承者たちは何事かと青年を見るが、彼の口から出てきたのは衝撃のひとこと。

    「僕、麗日さんに告白してない・・・」
    刹那、継承者たちの顔に浮かぶ戦慄の汗。
    十代の学生たちの青い恋愛ならともかく、二十代の成熟した男女が踏むべき手順をろくに踏んでいないどころか、最初の一歩の前で足踏みしている状況に気づいた先人たち。

    「い、いや、まあ九代目も動転していたことだし」と与一。
    「そ、そうだな!小僧らしいじゃねえか!嬢ちゃんも分かってくれるさ」と万縄。
    「ヘイヘイヘイ・・・・ヘイヘイヘイ九代目!」と揺蕩井。
    「ギ、ギリギリセーフか!?」と四ノ森。

    「いや、完全にアウトだよ」と志村菜奈。

  • 73二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 09:21:52

    「いい歳した大人が告白するしないのところでもじもじしているのは、ラブコメ世界でもないと許されないよ」
    唯一の女性である七代目継承者・志村菜奈の発言は少々辛辣なものであった。しかし、彼女もまた平和を愛するヒーロー。優しさを捨ててはいない。

    「まあ、与一さんの言ったとおり、二人の関係は始まったばかりなんだし、告白して踏むべきステップを踏んで、愛を育むんだね」
    口調こそ少々乱暴なものの、志村菜奈の助言は緑谷青年を支えるものでもある。
    「ゆっくり・・・」
    志村菜奈の言葉を繰り返して、心に刻む青年。彼は、元々人間関係においてぐずぐずと立ち止まるようなタイプではないが、過程をおろそかにするタイプでもない。まずは二人で出かけて、時間をともにして、手をつないで・・・青年は心の中で今後の計画を立て始めるのであった。

    一方、トガヒミコ陣営では。

    「デクくんに時間を与えちゃダメだと思うんよ。ここは今が攻め時かなって」
    「いぇーい!さすがお茶子ちゃん!ダイナミック!たしかに出久くんをメロメロにするにはたたみかけるのが一番っぽいのです。ここはやっぱり・・・?」
    晴れやかな精神世界で、二人は顔を見合わせて、にかっと笑い合う。

    「「おうちデート!!」」

    麗日お茶子とトガヒミコは、出会った頃の少女の姿で、手を取り合ってきゃっきゃと声を上げて喜び合う。標的の青年を逃がすまいとする彼女らに隙はない。

  • 74二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 09:50:50

    デク陣営とお茶子陣営のスピード感が違い過ぎる!

  • 75二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 09:54:18

    もう連合テレパシーとかなんかでトガちゃんと転弧でやりとりできるようになって間に入るのが一番早い気がしてきた

  • 76二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 10:51:24

    お茶子さんがイケイケ肉食系モードになってるの、トガちゃんの影響もあるだろうけど
    ずっと恋心を我慢してしまっておいた反動もあるのかな…

  • 77二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 18:39:52

    数日後、麗日お茶子の姿はおおむね彼女の計画どおり、緑谷青年の住まいにあった。
    "完全に計画通り"ではなく、"おおむね計画"なのは非常に単純な理由による。
    つまり、麗日お茶子自身もかなりいっぱいいっぱいになっているからである。本人のイメージではもっとスマートで洗練された雰囲気を醸しながらのお部屋訪問となるはずだったが、実際のところは猟奇的ストーカーに近い迫力を以て、半ば強制的に愛しい彼の部屋に上がり込むことになった。

    もちろん、緑谷青年は緊張でいっぱいいっぱいになりながらも、自分の部屋に愛しい彼女の姿があるという事実を噛みしめている。
    「マズいな、九代目がもう2速まで入っている」
    「早いな、いつもはこの段階ではまだローギアのはず」
    駆動とブルースは冷静に青年の状況を分析するも、予想外の事態に少々困惑している。

    「緑谷くん、落ち着くんだ。女は挙動不審な童貞を好まない。落ち着いてお茶子ちゃんが求めていることを読み取るんだ」
    志村菜奈も焦りはしていたが、それでも的確にアドバイスを届けるあたり、さすがはワンフォーオールの継承者といったところか。

    継承者たちの励ましもあってか、緑谷青年は全く想定していなかった愛しい人の訪問という椿事を受け止めている。とくにその下半身は彼の情熱を如実に表していた。

  • 78二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 19:09:36

    一方の麗日陣営だが、彼女の脳内にいるトガヒミコも普段とは少々様子が違った。
    どうやら”何か”に気づいたようである。いや、”ナニか”というべきか。

    (お茶子ちゃん、気づいてる?)
    緑谷青年に挙動を気づかれないように注意しつつ、麗日はこくりと頷く。

    (この栗の花みたいな匂い・・・連合に居た頃に弔くんの部屋とかで嗅いだ記憶があるのです・・・お茶子ちゃん、ゴミ箱かティッシュ箱、確認できる?)
    トガヒミコの指示の意味に麗日は薄々気づいていた。その意をはっきりさせるため、目線だけを動かして部屋の隅を視認。そのなかにある無数のチリ紙を見て二人はほぼ同時にひとつの結論にたどり着く。

    (これは・・・SMASHしてるのです・・・)
    (だね・・・)

    (でもちょっと問題が・・・)
    (問題?)

    (チリ紙の量が尋常じゃないのです。弔くんでもここまでなかった・・・たぶん、出久くんは・・・)
    (・・・性豪?)
    麗日の問いにこくりと頷くトガヒミコ。

    (お茶子ちゃん、私たちは相手の大きさを見誤っていたのです。今日は様子見くらいに留めておいた方が無難かも・・・)
    (そ、そうやんね!デクくんもいきなりで驚いてるみたいだし・・・)

    独りで百面相している麗日を困惑しながら見守る緑谷青年。その下半身にはいつまでの変わらぬ熱がこもっていた。

  • 79二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 19:47:55

    デクくん...消臭は...しっかりしよう...!!!!

  • 80二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 21:58:38

    唐突な流れ弾が弔くんを襲う!!

  • 81二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 22:26:28

    お、お茶子が強引に上がり込まなかったら消臭できたはずだから……

  • 82二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 22:27:53

    デクのデクはものすごいという謎の共通認識正直好き

  • 83二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 22:50:02

    弔君はまぁ薄そうだしな

  • 84二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 23:38:33

    弔くんは指サックとか必須だろうし色々面倒そうだな…

  • 85二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 01:05:36

    このレスは削除されています

  • 86二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 01:09:34

    >>35

    オールマイトは自分のフェイバリットともいうべきSMASHを一人遊びの代名詞に使われている事実に怒っていいと思うの

  • 87二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 07:39:35

    お茶子陣営の総人数は二人。
    出久陣営の総人数は九人。

    おかしいぞ。数で劣るお茶子陣営のほうがしっかりしてる

  • 88二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 09:43:44

    (お、お茶子ちゃん・・・)
    (待って・・・せめて何か情報だけでも持って帰りたい!デクくんの性癖とかだけでも分かれば今後の戦いに活かせる!)

    (お茶子ちゃん!深入りは禁物なのです!よく見たら出久くんのズボンがちょっと盛り上がってるし、どこで火がつくか・・・!)
    (虎穴に入らずんば・・・や!)

    「う、麗日さん?」
    百面相する麗日に対して、緑谷青年はただただ困惑するばかり。それでも茶を供し茶菓子も出してどうにかフィールドを形成するあたり、戦況確認はお手の物である。もちろんそこには継承者たちの助言があることを忘れてはならない。

    「やはり入念にSMASHしておいたのが功を奏したね。童貞の部屋に想い人が来たって状況の割には落ち着いているよ。童貞なのに対してものじゃないか。童貞なのに」
    七代目・志村菜奈は青年の冷静な戦局眼を手放しでほめている。しかし、数名の継承者たちは流れ弾を食らったように胸を押さえて痛みに耐えていた。

    (お茶子ちゃん、それならPCとかスマホ、もしくは・・・)
    (古典的にベッドの下・・・?)

    (それです!でも慎重にですよ?連合の頃に弔くんのベッドの下から純愛イチャイチャもの見つけたとき、弔くん凄い顔してたのです・・・)
    (もしかたら、私たちが思ってるより傷つくかもってこと?)

    (そこはオープンな人もいるし何とも・・・コンプレスおじさんはだいぶオープンだったのです。荼毘くんはバレたこと自体を喜んでたぽかった・・・なんか注目されたり、見られるのが好きだったみたいです。出久くんもそのタイプかも・・・)
    (そのあたりも含めて慎重に調査やね・・・)

    「あ、あの?麗日さん?麗日さーん?」

  • 89二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 09:47:57

    このレスは削除されています

  • 90二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 09:50:18

    連合への流れ弾が酷い
    あとトガちゃんはなんでそこまで連合の性癖を分析してるんだ

  • 91二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 10:17:39

    トガちゃんはほら、分析得意な子だから...

  • 92二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:29:04

    「あ、危なかった~」
    「でもお茶子ちゃん、収穫はあったのです」
    冬空の月が徐々に丸みを帯び始めたその日の夜、麗日は緑谷青年の部屋を強襲し、かつ比較的短時間で撤退して自分の部屋に戻ってきた。
    脳内の住人であるトガヒミコとの会話のタネは当然緑谷青年のコト。

    「収穫?」
    「うん。お茶子ちゃん、出久くんの性癖を調べたいって言ったでしょ。それで、お茶子ちゃんが出久くんとお話してる間に視界に入るものを片っ端から凝視していったの。手は出せないから。そしたら見つかったのです。ベッドの下に。」

    ”ベッドの下”というワードが出た時点でその情報が致命的な威力を持っていることは分かる。
    麗日はゴクリと喉を鳴らして戦友の言葉の続きを待つ。

    「出久くんの性癖、たぶんかなり広いけど・・・”丸み”と”制服”と”純愛”は間違いないのです」
    「丸み・・・制服・・・」

    何かのピースがハマっていくような感覚に、雄々しく獰猛な笑みを浮かべる麗日。窓辺の観葉植物の葉には夜露が降りている。その露には麗日お茶子という一人の女傑の猛々しい姿が映し出されていた。

  • 93二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:31:46

    肉食系って感じのウラビティだ...!!

  • 94二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:44:07

    同時刻、緑谷青年の陣営では作戦会議が執り行われていた。

    「みんな聞いてくれ」与一は改まって面々の注意を集める。

    「今日の麗日さん強襲事件だけど、こちらの準備不足が露呈したと思う。このままではいつまで経っても九代目は童貞のままだ。先達である僕らの経験値を合わせれば九代目の助けにもなると思う。彼のケアこそが、いまの僕たちの本質だ」

    「しかし、与一。思った以上に相手はやり手だぞ。策もなく接触回数だけを増やしたところで被弾回数が増えるだけだ。その日のSMASHが増える程度の影響しかないだろう。みんな、何か策はないか」駆動も与一に同調して会議を進めるようである。

    「やはり当初の目的である遊園地で手をつないでクレープ半分こはブレてはならないだろう。ここに合わせて考えていくべきではないか」四ノ森は一同の目的を再認識することで会議の意義を明確することに成功した。

    「とはいえ小僧はなぁ・・・部屋まで女連れ込んどいて手も握らずに帰らせるとは思わなかったぜ」と万縄。
    「いやいや万縄さん、いまの時代は明確なOKをもらわない限りは、手を出したらセクハラになってしまうよ。夫もそのあたりは奥手で参ったがね。」と志村が補足する。

    「やはり、後手に回るべきではないな。こちらから攻めることができればいいのだが、如何せん相手は相当な使い手のようだ。今日もなかなか隙を見せなかった」とブルース。
    「九代目くらいの歳だと、結婚も考えちゃうだろうな。俺らの時代じゃ考えてらんなかったけど、そのあたりの相談にも乗ってやるべきかも?」揺蕩井はこの中では若手の印象だが実年齢でいえばとうの昔の人間であるため、価値観も相応のものである。

    「・・・・自分からデートに誘わせろ・・・。で、相手の好みに合わせて着せ替え人形になるんだよ。服とか好きに選ばせて、よ。そしたら勝手にポイント上がるだろ。」自分なりの分析だが、決してなおざりではない十代目・志村転弧の懸命な助言であった。

  • 95二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 00:15:13

スレッドは12/12 12:15頃に落ちます

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