【ss】考えてみよう

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:32:15

    有明日輪(ありあけにちりん)は、非常に優秀な十五歳の少女だ。

    中学生の頃は学年主席で、試験で必ず九十点以上を取り、通知表の十段階の評価でも殆どが十で、稀に九か八がある程度。

    規則やルールを徹底的に厳守し、規則違反を一切許さない強い正義感の持ち主である。

    礼儀や作法にも精通しており、目上の人物に対する態度もしっかりと完璧に心得ている。

    ヘアカラーの類を一切していない美しい黒髪や、ピアス一つついていない耳からも優等生然とした出で立ちをしている。

    運動全般も大の得意で、サッカーや野球といった球技はもちろん、走りも泳ぎも非常に速い。

    通っている中学校の教師からも、全ての生徒が見習うべき模範として評されており、他の生徒から憧れられる事も多かったという。

    そんな日輪はその成績の優秀さから、高校への進学と共に都内で二番目に偏差値の高い渋谷国立高校への入学を果たした。

    学園の制服を美しく着こなし、背筋を伸ばして堂々と歩く姿は数多の新入生達の中でも一段と輝いて一際目を引く。

    入学式でも居眠りをしたり姿勢を崩す者が多い中、上品かつ優雅に座って学園長の演説を聞き続ける。

    服装が乱れている者には自ら率先して注意しに行き、先輩が相手であっても恐れず厳しく指導する。

    そんな日輪に対し、教師達は既に信頼の感情を抱き始めていた。

    そして入学式を終えた日輪は教師の引率に従い、各々の属する教室へと向かった。

    教室に到着した日輪は指示された通りに席に座り、静かに担任が来るのを待つ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:32:36

    しかし………。

    「私達の担任、どんな人が来るのかな。」

    「厳しかったり怖い人は嫌だなあ。優しい人がいい。」

    日輪は入学初日でありながら、既にクラスメイトに対して呆れと苛立ちの混ざった感情を抱いていた。

    クラスメイト達はこれから来る担任の教師について話しており、それは日輪にもはっきり聞こえていたのだが、その内容が日輪は気に入らなかったのだ。

    「はあ………駄目ね。」

    クラスメイト達は、厳しかったり怖い教師ではなく、優しく温和な教師が来る事を望んでいた。

    それ自体は一般的に普通な事のように思えたが、日輪は違った。

    日輪は人間の成長の為には厳しい教師や指導者が必要で、自ら厳しい人間を求められないようでは駄目だと考えていた。

    過酷な環境でこそ人間は立派に成長し、一人前へとなっていくのが日輪の持論であった。

    確かに厳しい指導が結果として良い成果を出す事があるのは事実だが、十代の中高生のうちはそれを理解するのが難しく、日輪の持論は中々共感を得られない。

    若い頃は自分に厳しい事を言ってくる人間が敵かつ悪で、優しい言葉や褒め言葉をくれる人間が善かつ正義だと捉えがちだからだ。

    故にまだ高校生の彼等が厳しい教師よりも優しい教示を求めるのはごく自然な事で、何も批判されるべき事はないだろう。

    しかし、日輪はそれで納得はしない。

    「呆れた。人は厳しい環境に置かれてこそ強く立派に成長するもの。自分から厳しい存在を求められないようでは、成熟は遠いわ。」

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:32:58

    やがてガラガラと扉が開き、優しげな雰囲気を放つおばあさんの教師が入ってきた。

    非常に人当たりのよい、見るからに優しそうな見た目の老いた女性で、燻んだピンク色のセーターに、真珠のネックレスを身につけている。

    肌は歳故かしわで波打っており、年季の高さを感じさせる。

    「えぇ………渋谷国立学園にようこそ。都内で二位の偏差値のこの高校に、よくぞ入学出来ましたね。私は能登篝火(のとかがりび)。今日からあなた達の担任を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。」

    見た目通り穏やかな性格のようで、ゆっくりと自己紹介をした。

    多くの生徒は、自分達の担任が優しそうな人であった事に安堵していた。

    歓喜の声を上げるものも現れ、それに対しても篝火は「あらあら、元気ですねえ。」と微笑む。

    しかし、日輪だけは違った。

    「教師がこんなに甘そうな人なら、その分私が自分自身と、そしてこのコイツら悪ガキ共にみっちり厳しく接しないと………。」

    日輪は、もっと厳しい教師が来る事を望んでいたのだ。

    指導者は厳しくて怖く威厳のある存在でないと務まらない、という持論を持っていたからだ。

    そして、他の生徒も自分と同様に厳しい教師を望んでいると思い込んでいた。

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:33:21

    優しい教師では、生徒のためにならない。

    それに大勢の人間を一度に動かして率いるには、ある程度の威厳と怖さが必要だ。

    現に自分も母に厳しく育てられてきたからこそ、今こうして都内で二位の高校にいる。

    本気で己の成長を望むならば担任が厳しい存在である事を嫌がらず、むしろ喜ぶはずだ。

    それが日輪の価値観であり、彼女が幼少期からずっと持ち続けた考えであった。

    都内で二位の偏差値の高校ともなれば、自分のように高い意識を持った生徒が多くいると思った。

    だが、現実はというと、生徒もまともに叱れなしそうな老婆の担任と、担任が甘い人であった事に喜んでいる悪ガキ共。

    日輪は態度にこそ出さなかったものの、心底ガッカリしていた。

    都内二位の偏差値というのは、これほどまでにレベルの低い世界だったのかと。

    そして同時に、とある使命感に燃えていた。

    担任の教師が甘い人ならば、その分私がしっかり厳しくなって皆を徹底的に教育せねば。

    (本当はアンタ達がこの状況に危機感を持ってぬるま湯を脱してくれたらいいけれど………まあ、厳しいよね。)

    きっと皆には恨まれ嫌われるだろうが、構わない。

    そもそも私は馬鹿共と仲良しごっこをする為ではなく、真実の学力を得る為にここに来たのだから。

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:33:42

    それ以来、日輪はとにかくクラスメイトに厳しく接し始めた。

    ある日、日直の仕事をうっかり忘れた男子生徒に対しては………。

    「ねえ日直、誰!?」

    「………あっ俺だ! えへへ、忘れてたぞ。」

    「えへへじゃないよね、仕事を忘れてごめんなさいだよね? 任された仕事をすっぽかしたくせに、最初に出る言葉が謝罪じゃないってどういう事?」

    日直の仕事を忘れた男子生徒を、厳しく言葉で詰める。

    男子生徒はつい自分の役目を忘れてぼんやりしてしまっただけで、悪気は一切なかったのだが、そんな言い訳は日輪に通用しない。

    間違いは誰にでもある事で、そこまで厳しく責めなくてもとクラスの皆は思ったが、日輪は容赦なく叱責する。

    「はいはいごめんなさい。これでいい?」

    「駄目、やり直し。仕事に対する誠意と、任された責務を忘れて申し訳ないという気持ちが全く感じられないんだけど。」

    言葉責めにされる男子生徒に同情したのか、クラスメイト達も男子生徒を庇い始める。

    「そんなに厳しく言ったら可哀想だろ。お前だって、係の仕事を絶対に忘れないって証明出来るわけじゃないんだし。」

    「そうよ、別に金貰ってするプロの仕事でもないじゃない!」

    男子生徒を庇った者達に対しても、日輪は辛辣な言葉を吐いた。

    「私なら任された仕事は絶対忘れないけど? それに、給料を受け取る価値もない仕事すら出来ない人間が、給料を受け取るようなプロの仕事をどうして出来ると思うの?」

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:34:06

    別の日。

    体育の授業で、一年二組の女子のみグラウンドに出てサッカーをしていた時の事だった。

    自身の高い身体能力に自信があった日輪は、他のチームメイトを信用してポールをパスする事が出来ず、ほぼ一人の力でゴールして勝ってしまったのだ。

    筋肉と体力がある日輪はインスウィングもインサイドキックも軽々とこなし、敵にボールの動きを悟らせる事なくボールをシュートする事が出来た。

    単純な足の速さも一年生ではトップクラスなので、並みの生徒では追いつく事すらも難しい。

    加えて他人にパスをするのを嫌い、チームメイトにボールを奪われまいとドリブルでどんどんボールを回し、奪われそうになると激しく怒って威嚇し、体当たりをしてでも阻止する。

    前回もチームメイトがボールを奪って明後日の方向に蹴ってしまい、激しく激昂した事があるようだ。

    まるで公園で遊具を独り占めする子供のように、ボールを譲らまいと牽制する。

    それを見かねた体育の教師によって、日輪は珍しく叱られてしまった。

    「体育のサッカーの授業は、集団教育や情操教育も兼ねてるんだ。ああやって一人でボールを独占するようなプレーは駄目だ。」

    日輪は勝ったのに何故叱られなければならないのか分からず、きょとんとしている。

    「お言葉ですが、よろしいでしょうか。私は自分の勝利に貢献しない人間は要らないんです。どれだけ実力があるのかも分からない相手にパスをして、明後日の方向にでもボールを飛ばされたらこちらにいくら実力があってもカバーしきれません。」

    「サッカーの授業では勝敗はあくまで結果であって大事じゃないんだぞ。」

    「ここにいる全員が実力は下の下の下。使えない奴にパスはしませんよ。」

    段々と反論を続けたが、それは教師にとってただの屁理屈でしかなく、日輪は小学生の頃以来にこっぴどく叱責を受けてしまった。

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:35:45

    また別の日。

    成績の優秀さが認められ一年生でありながら生徒会のメンバーとなった日輪は、皆の学校生活をより良くする方法について同じ生徒会の者達と話し合っていた。

    生徒会長は、とある一枚のプリントを持っていた。

    それは、生徒会メンバーに先日配られた学園の改善案を書く為のプリントで、日輪のものであった。

    そこに書かれていたのは、やれ「毎日の休み時間を五分ずつ減らして授業をもう一限増やすべき」だの「課題を今の五倍にすべき」だの「厳しい指導の出来ない教師は全員辞めさせて、代わりにスパルタな指導が出来る教師を雇うべき」だのと実に無茶苦茶なものであった。

    当然ながらそれは生徒会長に了承されるはずがなく、あっけなく却下されている。

    他のメンバーのものは常識的な内容であったり、そもそも現状に満足しており何も書いていない者が多かったので、余計に落差が激しい。

    却下されるだけならまだ良かったのだが、その内容は相当に生徒会長を怒らせたようで、会長は日輪の書いたプリントを皆の前で掲げている。

    「有明、これはどういう事だ?」

    生徒会長は、日輪を睨みながら尋ねる。

    「一度疲れたら十分も回復にかかるような貧弱な体力では、社会に出て必ず困ります。一日に面接を一社しか受けられない人と三社受けられる人がいたら、就職にかかる時間の早さは段違いでしょう。
    社会人の生活は学生の生活よりずっと大変ですから、休み時間を五分にする事によって、強制的に厳しい環境に慣れてもらいます。」

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:36:08

    「そして課題を五倍にする事によって、強制的に彼等が怠惰な時間を過ごせないようにします。学生の本分は勉強であって本来ならば勉強して寝るだけの生活が一番望ましいのですが、アイツらは暇を与えるとすぐカラオケだの映画だのと生産性のない事に時間を費やし始めますので。
    そもそもただ黙って数をこなすだけなんて、どんなに馬鹿で無能な人間でも出来る一番簡単で効率的な方法なんですよ。それを『詰め込み』だなんて言って批判する奴は、もっと効率的な方法を知っているわけではなく、ただただ楽していたいだけですから。」

    「そして最後に教師についてですが、他人を率いるには威厳とある程度の恐怖が必要です。優しい指導だと人は覚えません。「この人なら忘れてもまた教えてくれる。」という甘えが生じ、結果的に何度も同じ事を教える無駄な時間が生じます。
    対して恐怖の伴った指導は一回で身体に叩き込まれ、決して簡単には忘れません。厳しい教師はきっと生徒には嫌われるでしょうが、そもそもどんなに振る舞っても必ず誰かには嫌われるので、好感度なんて気にするだけ無駄です。本気で生徒の事を考えて向き合っていたのなら、自然と厳しい指導になるはずですよ。ここで言う厳しい指導とは、理不尽な体罰や依怙贔屓ではないので。私は少し気付くのが早かっただけで、厳しい人間のありがたみというのは、誰しも大人になれば必ず分かりますからね。」

    日輪の持論は立派なようでいて、結局はただ視野の狭い子供のわがままであった。

    その頃から、日輪は学園で『独裁の女王』と呼ばれるようになった。

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:36:37

    その後も、日輪の圧政は続いた。

    所属しているサッカー部の試合で東北に行く機会があり、帰り際に「せっかく地方の外に来たんだから、もう少し遊んで行こうよ。」と部員に誘われるも、「此処へは遊びに来たんじゃない。地方の外に出る機会なんて大人になればいくらでもあるんだから、その程度で浮かれないで。」と厳しく突っぱねる。

    中高生に人気のアニメがあり、それを観ているか聞かれるも「アニメなんて非生産的なもの、私は小学生で卒業したわ。」と冷たく返す。

    読書感想文の題材にラノベを選んだクラスメイトの男子に『登場人物の用紙が表紙に書いてあるような本は、漫画と同じ。読書として認められない。』と辛辣に説教をする。

    そんな事を繰り返しているうちに、日輪はやがて段々とクラスで孤立していった。

    日輪は、どうして自分が嫌われているのか分からなかった。

    自分が皆に厳しく接するのは、クラスを、ひいては学園をより良くする為だ。

    この程度でパワハラ扱いをするなんて身も心も弱すぎるし、こういう場面で踏ん張れないから将来ホームレスになったり、生活保護を受けるような大人になるのだろう。

    意識が高すぎて一緒にいて堅苦しいとよく言われるが、そもそも意識は高くても高すぎる事などなく、意識が低くて成功した者はこの世に一人も存在しない。

    しかし、日輪にとっては、皆に嫌われる事は大した苦痛ではなかった。

    「群れるのは弱小者がする事。私は仲良しごっこをしにここに来たわけじゃない。」

    自分に何のメリットももたらさない人間は、側に置いておく価値がない。

    存分に嫌ってくれて構わないし、逆に嫌ってくれてありがとうと言いたいほどであった。

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:40:36

    日輪が高校一年生になってから、半年が経過した頃。

    ある日、放課後教室に残って一人で自習をしていると、いきなり何者かに髪を乱暴に掴まれてしまった。

    「おい、コイツだぞ。」

    髪を掴んだのは、ガタイのいい上級生の男子生徒であった。

    日輪はその顔に、確かな覚えがあった。

    確か数週間前に学園の外壁に落書きをしていて、厳しく叱りつけたんだ。

    当時は都内二位の偏差値でもこんな低レベルな遊びをする者がいるのかと呆れたものだ。

    言われたくなければ、言われないようにすれば良いものを。

    その頃は十分に懲りたようだから見逃してあげたけど、今はどうしているのだろうか。

    その事で自分に対して恨みを抱き、自分を負かして憂鬱を晴らしに来たのかもしれない。

    男子生徒が仲間を呼ぶと、その仲間の男子生徒達がゾロゾロと教室に入ってきた。

    みな筋肉質で肩幅があり、日輪よりずっと強そうだ。

    数の差で勝負するなんて、実に卑怯だ。

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 16:40:59

    日輪は抗議した。

    「ちょっと、数の差がある状態で勝負だなんて卑怯じゃない!」

    しかし、予想外の反論をされてしまった。

    「卑怯? ならお前も仲間を呼べばいいだろうが。」

    「あっ、自分にメリットをもたらさない人間はいらないんだっけ?」

    「自分の勝利に貢献しない奴も要らないって言ってたぞ?」

    「助けてあげてもなぁー、足手纏いとか言われたら嫌だよなぁー。」

    「使えない仲間を率いるぐらいなら一人で戦った方が強いんだろう?」

    「困った時に助けてくれる人の多さも、社会では立派な強さなんだぞ。」

    自分が他の人達に向かって放ってきた言葉の数々が、一斉に自分に襲い掛かる。

    「私は………学園をより良くしようと……。」

    男子の集団に囲まれて徹底的に叩きのめされた日輪は、後に担任のおばあさんの先生に助けられ、しばらく保健室で過ごす羽目になった。

    勉学に真面目に励み、学園のために懸命に活動してきたはずの日輪は、どうして皆の反感を買ってしまったのだろうか。

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:09:58

    『自分が』思う理想を掲げてたからじゃない?

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:35:53

    桃太

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:38:04

    上から目線のスレタイで感じ悪いわー
    キャラクターが決論にたどり着いて完結させてから持って来い

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 17:40:25

    ただ空気読めてない正論厨が煙たがられているだけですね
    スカッと動画あと1000本見てから出直してください

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 19:07:01

    中途半端だからだろ。
    支配するならちゃんと支配しないと。
    弱味握るとかさぁ(ニチャア)

    あと、自分一人で生き抜くなら身体もちゃんと鍛えないとね

  • 17二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 21:44:41

    このスレは荒らしが立てたスレです
    反応せず通報してください

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