- 1二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:22:51
https://bbs.animanch.com/board/4157716/?res=117
『破滅のクリスマスケーキ(後編)』
あの後、板山社長からクリスマスイベント参加してくれるアイドルが見つかったという知らせを受けて、山岡さんと様子を見に行くことにしました。
ことね「改めて、藤田ことねです! よろしくお願いしまぁす!」
佑芽「花海佑芽って言います!!! 精一杯お仕事頑張ります!!!」
リーリヤ「葛城リーリヤです。よ、よろしくお願いします」
近元「はい、僕はこの出店の店長をさせてもらっている近元修二と言います。こちらこそよろしく。
じゃあ、まずはこの店のケーキの作り方を覚えてもらうよ」
山岡「やあ、やってるかい?」
栗田「こんにちは、近元さん」
近元「山岡さんに栗田さん! 先日はありがとうございました。今は、材料の管理をしているところでして……調理場では初星学園の生徒さんたちがケーキを作ってくれています」
山岡「そうか、ちゃんとできているようで安心したよ。俺たちは、ついでに板山社長にも挨拶をしておこう」
栗田「そうですね」
近元「僕も一緒に行きます。進捗を報告しなければならないので」
- 2二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:23:41
栗田「あら? 板山社長は誰かと話しているわ? ケーキコーナーの人かしら」
近元「あ、あれは……!」
山岡「ん? どうしたんだい?」
パシティエ「ん? あっ! お前、修二じゃないか!?」
???「なに?」
近元「に、兄さん……!!!」
栗田「ええ!? 近元さんのお兄さん!?」
近元(兄)「……修二。辞表を出して飛び出したかと思えば、板山社長のところで働いていたとは」
近元「どうして、兄さんがここにいるんだ!」
近元(兄)「ああ、ゲランの森もこのニューギンザデパートに出店を出してクリスマスケーキを売ろうと思っていてね。それよりも、まだ、あの破滅のケーキにこだわっているのか?」
栗田「破滅のケーキ……?」 - 3二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:24:50
近元「なにを言っているんだ! あれは父さんから受け継いだケーキの味じゃないか! それで、何人も何百人も笑顔にしたじゃないか!!」
近元(兄)「黙れ!! だから何だってんだ!! あれは人を殺す悪魔のケーキだ!!!」
近元「!」
パティシエ「それよりも聞いたぞ。お前、なにやらアイドルが作るケーキを売るんだってな。パティシエを兼ねたアイドルとは聞いたことがないが……」
近元「いや、彼女たちは初心者だよ」
パティシエ「初心者? ハハハハハハハハ!! アイドルだかなんだか知らないが、素人が作ったケーキなんか売れるわけないだろう!!」
山岡「まったく、パティシエのくせになにもわかっていないんだな」
パティシエ「なんだと!? どういう意味だ!!」
山岡「先ほど、言った通りさ。あんたらの作ったケーキでは、初心者が作ったケーキに美味さで勝てないって言ってるのさ」
パティシエ「貴様! 言わせておけば……!!」
近元(兄)「待て! ここの名前は?」
山岡「東西新聞の山岡です」
近元(兄)「では、勝負をしようじゃないか? 私たちのケーキとアイドルが作るケーキ。どちらの方が美味いのかを売り上げでね。
客というのは馬鹿じゃない。アイドルなどという卑しいコンセプトに騙されたりしないさ」
近元「わかった。もしも僕が負けたら、兄さんのところで一生タダ働きをするよ」
栗田「修二さん!」
近元(兄)「そうかそうか、今夜が楽しみだな!」 - 4二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:25:54
栗田「大変なことになってしまいましたね……」
近元「ええ、ですが後悔はしていません。今のゲランの森のケーキには負けないと思っていますから」
山岡「よく言った! その通りだよ」
リーリヤ「あっ……店長さん。その……」
ことね「実は言うと、休憩してたらさっきの話を聞いちゃって……っていうか、そっちにいるのは山岡さんと栗田さんじゃないですか!」
山岡「どうも〜」
栗田「お久しぶりです、藤田さん、葛城さん」
リーリヤ「お、お久しぶりです」
佑芽「え!?ここのみんなお互いに知り合いなの!? さっきの話ってなに!? 私だけ仲間はずれみたいになってるよ!!」
近元「こういうことなんだ」
佑芽「大変じゃないですか!!!」
山岡「そうだね。だけど、だからと言って初心者が凝ったものを作ろうとしたところで上手くいくわけがない」
近元「だから、気にしないでそのままのやり方でケーキを作って欲しいんだ」
ことね「いや、無理ですって!!!」
佑芽「そ、そうですよ! 一生タダ働きなんて!!!」
リーリヤ「諦めちゃったんですか?」
山岡「いや、逆だよ。勝つためにこの一番作り方が簡単なケーキを作るんだ」 - 5二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:26:45
その夜
ことね「よーし、まずは売り込みを頑張るぞ!!」
佑芽「そうだね、みなさーん!!! ケーキを買ってくださーい!!!」
ことね「声が大きい!! 風情がないだろ!」
リーリヤ「え、えっと、ケーキいかがですか……」
ことね「こっちは声が小さい! もっと自信持って!!」
老婆客「おや、まあ可愛いサンタさんだこと。ケーキ一つもらえるかしら?」
ことね「はい。ありがとうございます!」
老人客「あっちの方で食べよう」
老婆客「そうね、そうしましょう」
近元「………」
山岡「………」
栗田「………」 - 6二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:27:09
老人客「これは美味い!」
老婆客「まあ! 値段以上の美味しさだわ! せっかくだし孫たちの分も勝っていきましょう!」
近元「……ほっ」
栗田「山岡さん!」
山岡「ああ!」
客A「アイドルが作ったケーキだってよ!」
客B「見ろよ、SNSでうまいって評判らしいぜ!! 買って行こう!!」
ことね「お買い上げありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!!」
佑芽「お客さんがすごく多いよ」
リーリヤ「嬉しい……です」
咲季「佑芽、来たわよ! 頑張ってるじゃない」
佑芽「お姉ちゃん!! 私が作ったケーキ、買ってくれる?」
咲季「もちろんよ! 一つ貰うわ」 - 7二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:27:53
一方で
板山「やあ、ゲランの森の皆さん! 売り上げはどうですかな」
パティシエ「板山社長! ええ、順調ですとも!!」
板山「はて……そう言う割にはお客さんがあまりいないようですが……」
パティシエ「そ、それは……」
近元(兄)「………ふん」
板山「そうそう、修二さんの方ですが、もう少しで売り切れちゃうらしいですよ!」
パティシエ「な、なんだって!?」
近元(兄)「なに?」
清夏「やっほー、リーリヤ! 人多すぎてなかなかここまで辿り着けなかったわ」
リーリヤ「清夏ちゃん! これ、最後の一つだけど」
清夏「マジで!? 超ラッキーじゃん! じゃあ、貰うね」
ことね「こ、これで……無事完売!!」
佑芽「やったね、ことねちゃん! リーリヤちゃん!!」
リーリヤ「うん……!」 - 8二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:28:28
パティシエ「こ、これはどういうことだ!? 素人の作ったケーキが我々のケーキよりも美味いというのか……? あ、ありえん!!」
山岡「じゃあ、食べてみればいい。そうすればわかるさ」
中松「おう、山岡のダンナ! 買ってきたぜ!!」
栗田「中松警部!!」
山岡「じゃあ、このゲランの森のケーキと彼女たちが作ったケーキを比べてみよう。まずはゲランの森から」
栗田「……なんだか、そんなに美味しくないわ」
中松「こりゃダメだな。スポンジが生クリームの甘さに負けてやがる」
パティシエ「そ、そんな……!」
山岡「じゃあ、次は彼女たちが作ったケーキを食べてみてくれ」
栗田「……美味しいわ! ふわふわで程よい甘さで!」
中松「スポンジが生クリームの甘さが過剰にならねえように上手くおさえてやがるぜ。ン゛メ゛エ゛」
パティシエ「な、なんだって! そんなはずは……こ、これは!! なぜだ、なぜ!!」 - 9二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:29:39
山岡「スポンジ生地が工場で作られたものだからだよ」
パティシエ「な、なに!?」
近元(兄)「………」
山岡「工場で作られるケーキスポンジは手間や時間を省くために膨張剤を使っているところが多い。そして、卵や小麦粉も海外製の化学肥料や抗生物質を含んだ不健康なものばかりだ。スポンジは寿司でいうところのシャリの部分。ここがダメだと、ネタが一級品でも全体が不味くなるのさ。そして、それはアンタが一番わかっていたんじゃないか? 近元修一さん」
近元「え!?」
中松「なんだと!?」
栗田「どういうことなの!?」
山岡「ずっと気になっていたんだ。修一さんは修二さんのケーキ、ひいてはお父さんのケーキを『破滅の味』だと言っていた。不味いとは一言も言ってないんだよ」
栗田「確かに、そうですね。修一さん、一体なにがあったのか教えてくれませんか?」
近元(兄)「……このケーキ、スポンジの味は少し違うが丁寧に作られた手作りのものだ」
板山「そりゃ、当然だよ。うちの一流パティシエたちに作ってもらっているからね」 - 10二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:30:04
近元(兄)「修二、お前は確かフランスに修行しに行って、親父の死に目にはあっていないんだったな」
近元「兄さん……」
近元(兄)「親父はな、スポンジも生クリームも全て手作りにこだわっていた。日が昇らない時間にスポンジ生地を何百個も作り、営業が終わったら深夜まで、ケーキの材料を作っていた……そんな生活を何十年も続けた親父の身体は疲労と寝不足が蓄積し、過労と寝不足で死んじまったんだ!」
近元「そ、そうだったのか……」
近元(兄)「それだけじゃない……親父のケーキ作りの執念はお前にも遺伝していた……」
(回想)
近元(兄)「おい、修二。ちゃんと寝ているのか? 顔色が悪いぞ!」
近元「大丈夫だよ! 父さんを超えるパティシエになるんだったら、これくらい屁でもないさ!」
(回想終わり) - 11二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:30:36
近元(兄)「だから、あの日……修二があのケーキを作ったとき、恐ろしくなった! あの味が、また、俺の家族を殺してしまうと思ったんだ!」
栗田「そうだったのね……それで、破滅の味なんて言ったのね……」
ことね「……」
リーリヤ「……」
佑芽「……」
咲季「……」
清夏「……なにこれ?」
近元「兄さん……ごめんよ……兄さんが苦しんでいることも知らずに、僕は、僕は!」
近元(兄)「良いんだ、修二……お前が飛び出たとき、お前の腕ならどこでも雇ってもらえるだろうと思っていたからな」
山岡「! 修一さん、アンタまさか」
栗田「山岡さん?」
近元(兄)「もう、ゲランの森は終わりだ。畳むしかないのかもな……このままやっていても、売り上げは伸びないし、修二が帰ってきても負担をかけるだけだ」 - 12二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:31:24
近元「兄さん!」
パティシエ「そんな……」
栗田「山岡さん、なんとかならないんですか?」
中松「そうだぜ」
山岡「そんなこと言われてもな……」
板山「じゃあ、私がゲランの森を買い取るよ」
近元(兄)「え?」
板山「買い取ると言っても、そちらのやり方に口出しするつもりはないよ? どちらかというと融資に近いかな? 我がデパートで作っている最高級の手作りスポンジ生地をそちらに譲るよ。そうすれば、修二くんに負担なく、あのゲランの森の味を復活させられるだろう?」
近元「良いんですか!?」
板山「良いもなにも、こっちにとっては世界一と名高いケーキ屋が手に入るんだからね!! こちらこそ頭を下げたいものさ!!」
近元「兄さん!!」
近元(兄)「ああ!」
佑芽「よくわからないけど、一件落着ってこと?」
咲季「そういうことね! よくわからないけど!!」
ことね「そこに姉妹! 感動に水を差すな!!!」
一同「ハハハハハハハハハハハ!!」 - 13二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:32:16
近元「今日は、本当にありがとう。これ、お給金だよ」
ことね「ありがとうございまぁす! 店長さん!」
ことね「(どれどれ……)」
ことね「なんか多くないです!?」
近元「板山社長からのゲランの森を買い取れたお礼だよ。必ず受け取らせるようにって釘を刺されてしまってね……」
ことね「そういうことなら、お言葉に甘えて……あたしの大勝利!!」
佑芽「ことねちゃんがあんなに喜んでるとこ、初めてみた……」
リーリヤ「あはは…そうだね……」
※これはフィクションです。工場でのスポンジ生地の製造工程なんて知りません。手作りよりも美味しいのかどうかは無根拠ですし、個人によると思います。 - 14二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 18:47:19
待ってた
- 15二次元好きの匿名さん24/12/05(木) 23:11:15
このレスは削除されています
- 16二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 00:33:24
良い話
- 17二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 08:59:26
千奈と星南は美食倶楽部に入ってそう
- 18二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 20:03:52
落ちてたやつの続きか
- 19二次元好きの匿名さん24/12/06(金) 23:04:53
謎の良クロスだ!!