- 1二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:41:40
- 2二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:42:43
- 3二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:44:02
と言うか、1、2、3全部スレ主違う事になるのか。
前まで見てくれてた人、概念を出してくれてた人、皆戻って来てくれると良いなぁ。 - 4二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:45:08
俺は保守を行う!
- 5二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 19:50:56
モチベも何とか持ち直したら戻ってくるかもね
- 6マコトに関する経過報告書く人24/12/08(日) 19:57:01
前スレ65まで経過報告を書き続けていた者です。
気が付いたら落ちていました……
スレチかも知れませんが、もうこの際なので思い付く限り書いとこうと思います(最終的なオチは思い付いてません)。
マコトに関する経過報告:棗イロハの場合
ズカズカズカズカ、と過剰な足音。次いで、勢い良く開かれる扉。
「イロハ、イブキに見せられない品の無さだぞ」
そんな言葉は気にせず、ずけずけど執務机まで進み、両手を卓上に叩き付けた。
「……」
「どうした」
「すいません、何て切り出したら良いか思い付いてません」
「何しに来たんだよ」
「えーと……説教?」
「疑問符付けたまま説教されても響かんだろ」
衝動に導かれるままに突撃を敢行したのみで、目的意識すら定かでは無い。
「我々が愛するのは自由だ。それはただの無軌道じゃないか?」
「分かってますよ言われなくたって!」
困った様に頭を掻き毟り、もこもこの赤髪が更にもこもこになった。
「何について言いに来たかは分かりますね?」
「休憩時間の追加なら却下だ」
「ち、が、い、ま、す! すっとぼけないで下さい!」
「ふむ。一昨日のトリニティ外遊の事か?」
「それも違います! まあ退院初日から執務室に戻りもしないでいきなり外遊してるのには言いたい事ありますけど」
「為政者たる者、業務を疎かにして自分可愛さで動く訳には行かんからな」
普段から割と好き勝手にしてないか? とイロハは思ったが、今はそんな事はどうでも良い。
うだうだ考えても意味が無い、そう判断し、直接に切り出す事にした。
「遺産の話! 私達に相談してくれても良かったじゃないですか」 - 7マコトに関する経過報告書く人24/12/08(日) 19:57:24
あ、10まで埋めです。
- 8二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 20:08:20
やっほう、続きだ!ありがてぇ!
- 9二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 20:09:40
うめうめ
- 10二次元好きの匿名さん24/12/08(日) 20:10:52
保守し忘れてスレ落ちて悲しかったから立て直し嬉しい
- 11二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 00:12:02
マコト議長は可哀想は抜けるもイケるんやなって
- 12二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 06:22:59
保守
- 13二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 07:36:43
内面ズタズタなマコト議長かわいそかわいい
- 14二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 17:47:49
続き気になってたからありがたい…
- 15二次元好きの匿名さん24/12/09(月) 22:41:11
万魔殿メンバー編ありがてぇ
- 16二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 07:19:49
保守
- 17マコトに関する経過報告書く人24/12/10(火) 12:27:00
「相談? 遺産の破壊は既定路線だろう」
さも不思議そうに首を傾げる。その仕草がわざとらしさに満ちていて、イロハにはそれが堪らなく腹立たしく見えた。
「それだけじゃ無いでしょう! その、手段とか色々」
「イロハ。相談と言うのは、まだ手段を決めかねていて、且つ誰かの意見によって自分の判断が左右される可能性のある時に選ぶ行動だ」
「先日のはそれに当たらないと?」
「そうとも。この私の決定を覆せる者はこのキヴォトスに一人もおらんからな!」
高笑いするマコトは、為政者としては心許無いが指導者としては非常に心強い。卓上の出血抑止薬と抗生物質が無ければもっと心強い。
この薬のセットを見れば分かる様に、マコトの体内は未だに全く治っておらず、ふとした拍子に傷口が開きかねない
服用している薬はこれだけでは無い。「心療内科に産婦人科に救急外科、スタンプラリーでもしてるんですか? でしたらラッキーですね、全身の負荷の検査と血栓対策の為に、次は循環器科に行って貰いますので。来月中にはコンプリート出来るかも知れませんね」とはセナの談だ。念の為にマコトの周りの者にも病状や薬の内容は共有されている為、イロハも知る所である。
「だとしても、万魔殿の者には話をして欲しかったです。ほら、先輩がいない間の事とかもありますし」
部屋にスマホのアラームが鳴り響く。マコトの胸ポケットから垂れ流されるそれは、不愉快な程に何かの時間が訪れた事実を押し付けている。
「もうそんな時間か」
「何かご予定が? 今日は公務は入ってなかった筈ですが……」
「私用だ。少し外す」
「では、要件はまた今度にした方が良いでしょうか?」
「いや……徒歩で十分ちょっとの所だ。歩きながらでも良ければ話せるが、どうする?」
「……そうですね、ご一緒しても良いですか?」
何も、今すぐ話さなければならない程切羽詰まった話題でも無い、既に終わった事だ。だが、後日に回したら、話を切り出す勇気を維持出来るかどうか、イロハには分からなかった。
- 18マコトに関する経過報告書く人24/12/10(火) 12:27:52
マコトに近い人間の扱い難しくてメッチャ探り探りやってます。
- 19マコトに関する経過報告書く人24/12/10(火) 19:10:57
迷い無く歩を進める議長と、ひたすらに迷っている表情で付いて行く戦車長。折角同行しているのに、何をどう言えば良いのか、そもそも何を言いたいのかが分からず、イロハはその胸の内に漂っている正体不明の靄を吐き出せずにいる。口をついて出たのは、どうでも良い雑談で。
「何か、先輩の像また増えました?」
「ん? ああ、やはりこのマコト様の偉大さは常に啓蒙せねばならんからな!」
「前みたく風紀委員会の予算でも横領したんですか?」
「横領などしておらん。あちこちの部活の予算を少々拝借したがな」
腰に手を当てふんぞり返っているマコトに、この上無く呆れた表情を向けるイロハ。
「あちこちって、問題でかくなってるじゃないですか」
「問題など無い。あれは間違い無く学園生活の為になるインフラだからな。環境整備費として公正に徴収している」
「議長像がインフラと言い張っても認めない層が多そうなんですが……それとも他に策でもあるんですか?」
「通信基地局を埋め込んである」
「うわぁ……邪魔でも壊せない奴じゃないですか」
「どうして壊す側に立ってるんだお前は」
額に手を当て首を横に振るイロハに、怪訝な目を向ける。
「でも、こんなに大量に立ってると全部が基地局って事は無いですよね。壊し難い様に一部に入れただけですか?」
「いや? 基地局が入っていない像は夜道の街灯や防犯用監視カメラを兼ねている」
どうしてこの人は、こう悪巧みの外堀固めが得意なのだろう。これでは、いつもの様に壊しに来た風紀委員会を器物損壊で摘発する未来が遠からず訪れるだろう。事後処理が面倒な……そこまで胸に浮かんだ所で、戦車長は考える事を止めた。
下らない話も区切りになり、また沈黙が訪れてしまう。本部棟から離れる様に歩く二人の足音。
そんな中、先に口火を切ったのはマコトだった。
「イロハ、率直に答えてくれ」
「え、はい」
「今回の一件を受けて、軽蔑したか? 私の事を」
「マコト様像の件ですか?」
「本気で言ってるのか?」
「すみません」
- 20マコトに関する経過報告書く人24/12/10(火) 20:45:05
前を歩くその顔は見えない。質問の意図を掴みかね、咄嗟に精一杯言葉を選ぶ。
「やはりゲヘナ全体の事を何よりも重んじておられる、流石はマコト議長だと」
「キキキッ、そんなのは当たり前だ! 真に万魔殿議長たるべき偉大なるマコト様だぞ? まあそんな分かり切った事は良い、私は率直に答えろと言った筈だ、イロハ」
前を歩いていたマコトは絶妙に速度を落とし、イロハの隣に並んだ。流し気味に向けられるその目はいつもの冷静な、イロハの知っている切れ長の目の様であったが、何かが違う気もした。
「回答の如何にどうこう言うつもりは無い。支持率調査の様な物とでも思ってくれ」
どう答えても間違い、そんな嫌な確信。無難な答えでも話を逸らすネタでも何でも良い、何かヒントは無いか……そう必死で視界を漁り、僥倖、明らかな異物が目に留まった。
「ん、マコト先輩、それって」
指摘された胸元の物を手に取るマコト。
「これか?」
それは、小さくてシンプルな銀色の十字架。ネックレスの様に首に掛けられているが、チェーンの所々に玉の様な意匠がある辺り、ロザリオなのだろう。
「悪魔が十字架だなんて、随分妙な組み合わせですね」
「ああ、一昨日トリニティでな。歌住サクラコから受け取ったんだ」
「へえ。でも律儀に身に着けるなんて、先輩らしく無いと言うか」
- 21二次元好きの匿名さん24/12/10(火) 20:59:11
続きが気になる…
- 22マコトに関する経過報告書く人24/12/10(火) 21:17:41
「時にマコト議長」
現ホスト代行であるナギサが席を立ち、茶会の席にはマコトとサクラコだけが残されている。
「何だ」
「もし、勘違いであったり、余計なお世話であったりしたら申し訳無いのですが」
そう言いながら、持参していたポーチから何かを取り出す。
「何があったかは存じ上げませんが……もし、もしも何かを悼むお気持ちがあり、その気持ちの向け方に困っていらっしゃるのでしたら、これを」
差し出したのは、小さくシンプルな意匠、それでいて作りの良さを感じさせる小さな十字架だった。
「ゲヘナの方が、こう言った、物を余り使われないのは分かります。ですが、今の私に出来るのは、こんな事位ですので」
サクラコはロザリオを大事そうに両手で支えると、目を閉じ慈しむ様な微笑を湛える。
「十字架だからと言って、必ずしも我らが主に祈る必要はありません。これはあくまで目印。手に持ち、掲げ、或いは胸元に寄せ、気持ちを向けたい誰かを思い浮かべる。どこへやれば良いか分からない感情の整理を手伝い、相手へ送り届けてくれるお守りなのです」
「……どうして、私が何かを悼んでいると?」
「長らく懺悔室のシスター、人の悩みや罪を聞く者として活動して来た経験から来る勘、とでも申しましょうか。こんな事を言って、的外れでしたらとても恥ずかしいのですが」
暫し逡巡し、マコトは手を差し出した。
「いや、間違ってはいない。心遣い、痛み入る。受け取っておこう」
「成程、そんな事が」
「ああ。トリニティにも、中々察しの良い奴のいたものだ。あの者との交渉、注意が必要だな」
仮想敵扱いしている様な物言いだが、マコトの虹彩は決して害意を示しておらず。これが彼女なりの敬意の表し方なのだと、イロハは解釈した。
- 23二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 06:11:58
奪った命への祈りか…
- 24マコトに関する経過報告書く人24/12/11(水) 10:56:44
大きな施設からは離れ、これから林間地帯に入ろうかと言う境界線。ゲヘナの歴代の偉人を称える像や石碑が立っている表彰区画だ。この道を更に進むと、廃棄物区画及び危険物処理区画がある。表彰区画の片隅、誰の目にも止まらない様な所にそれはあった。
膝丈程度まで積まれた数個の石。それはまるで塚か何かの様で。
「――先輩。これは?」
万魔殿議長は、まるで子供の悪戯の様な積み石の前に立ち止まると、地面に膝を突いた。イロハも倣い、その場にしゃがむ。
「まだ、まともに生き物と呼べるまで育っていなかった」
ゆっくりと話し始める。何と無く結末を理解し、イロハは身構えてしまった。
「破損した内臓の組織と一緒にいずれ排出されると説明されたが、無理を言ってセナに取り上げて貰ったんだ。付き合わせてしまった事に詫びを入れたが、これも一種の死体だから興味深いので大丈夫だと言われた。あいつは強いな」
かなり最近の話の筈なのに、遠い昔を振り返る様に述べる。
「まだ骨など無く、何より遺産の影響を調査する為にすぐに検体に回した。最初に『壊した』のもあって、焼却した後に残る物は灰しか無かった。そもそも遺産関連の危険廃棄物として適切に処理せねばならんから、墓になど入れられんしな」
淡々と話す中、「『壊した』」や「墓に入れられない」と言う所で、含まれる悲しみの色が僅かに濃くなっている事を、本人は自覚していない。
「だが、危険物処理の為の納入直前でうっかり『取り落とし』、『灰が土に混ざって回収出来なくなってしまった』! 誰も近寄らない様な場所であれば様子見でも良いかも知れないが、まさか表彰区画にギリギリ入ってしまうとは! これでは誰かが近付いてしまうかも知れない! ならば分かり易く劣化し難い、例えば積み石の様な『目印』が必要だ、そうだろう?」
急に大仰になった身振り手振りと声色に若干驚いたが、慌ててこくこくと頷く。そう、『アレ』は雷帝の遺産に汚染された可能性のある危険廃棄物、こんな所に墓があってはいけない。だから、これは断じて墓では無い。
「これは、雷帝の遺産の破壊に重大な功績を示した『モノ』がいた事、そして雷帝の遺産の被害を広げてはいけないと言う事を表す祈念碑だ」
「物は言い様ですね。先程の建前の言い換えとしては一応間違っていないですが」
- 25二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:48:27
保守
- 26マコトに関する経過報告書く人24/12/12(木) 03:32:26
マコトの方を見遣る。この話をしている間、マコトの左手はずっとロザリオを固く握り締めたままだ。
空いている方の右手で懐中をまさぐったかと思うと、小さな何かを取り出して積み石の目の前に置く。プリンだった。
「お供えですか。……イブキの分じゃ無いですよね」
「イロハの分だが?」
「あ?」
「冗談だ、私の分に決まっているだろう」
完全に真顔、地の話し方のままで冗談を入れ込むのは止めて欲しい。そう強く感じたが、言葉には出来なかった。何とか冗談を口にする、それが今のマコトの精一杯かも知れないと思ったから。
「マコト先輩」
「何だ?」
「後悔はありますか?」
どうしてこんな事を訊いたのか、イロハは分からなかった。今日は分からない事だらけだ、だから彼女は自身の直感だけを信じようと決めた。
「後悔、か。私は為すべき事をした。方法も最善策だったと確信している。後悔など」
ふと口を止め、斜めの方を見上げ、首を振る。
「――違うな。出来る事なら、今度はゲヘナの誰もが、いや、キヴォトスの誰もが祝福出来る形で、もう一度この胎に『あの子』を迎えてやりたかった」
まあ、こんな人間の所に戻って来たくなど無いかも知れんがな、と自嘲気味に笑った。
「……迎えてやりたかった?」
「ああ」
「どうして過去形なんですか?」
「もう叶わんからさ」
この体でもう一度『あの子』を迎える事は出来ない。始めその言葉を理解出来なかったイロハ。
「雷帝の遺産を処理したんだ。反撃を上手く一箇所に集めて、私だけ無傷で済む。そんな都合の良い話、ある訳が無いだろう?」
その意味する所に思い当たった瞬間、全身の毛が逆立つ様な感覚に襲われた。イロハは将来の事など分からない、自分や周りの人間がどう言う人生を歩むのか想像も付かない。だが、『それ』がマコトの生涯にとって恐ろしく大きな影響を及ぼすと言う事だけは知っている。
我に返り、自分の顔に手を遣る。どんな顔をしていただろうか、それをマコトに見られてはいないか。マコトがじっと積み石を見詰めていたのを確認し、その心配が杞憂だった事に安堵した。
- 27二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 06:25:40
オ゛オ゛オ゛……
- 28二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:45:19
ギュッとして背中をさすってあげたい……
- 29二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 20:33:34
マコトちゃんシリアス化したら重たいな…
いやスレのテーマからして重いわけだが - 30マコトに関する経過報告書く人24/12/12(木) 21:41:59
- 31マコトに関する経過報告書く人24/12/12(木) 21:42:56
- 32二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 07:35:06
- 33マコトに関する経過報告書く人24/12/13(金) 19:31:55
保守! もうちょっと待ってくれ……
- 34マコトに関する経過報告書く人24/12/13(金) 19:47:48
マコトに関する経過報告:元宮チアキの場合
気象観測機能を搭載した新たなマコト像の建立予定地を視察するマコト、を激写しまくるチアキ。
「良いですねー、良いですよー! そう、図面を見ながら予定個所を指差して……そうですそうです! 威厳たっぷり!」
今撮っているのは、次の万魔殿新聞に載せる報道用の写真。ゲヘナ生の福利厚生の為に積極的なインフラ整備を進める議長、と言う体裁を整えようとしている。ここ最近は以前にも増し、万魔殿、特にマコト議長の動静を伝える紙面が多く扱われる様になった。
「こんな所で大丈夫か?」
「はい! 今回も支持率アップ間違い無いでしょう! じゃあ次のとこ向かいますか」
マコトはマントを脱いで厚手のダウンコートを羽織り歩き始める。横をトコトコとマントを抱えたチアキが付いて行く。
「いや~、ご足労頂けて助かります! 多少マッチポンプ気味ですが、これで紙面も埋まり読者も喜びます!」
「有権者に自らの活躍をしっかりと伝える事も当選者の務めだからな!」
そのまま歩く事数分、チアキがマコトの耳に口を寄せた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「ああ……頼む」
「了解です」
チアキは自分の側頭部に手を伸ばし、髪に隠し耳に装着していた小型ヘッドセットのマイクスイッチを入れる。
「親衛隊、次は……そうですね……四丁目七番地の路地で良いでしょう。ええ、画材屋の横の路地です。はい、お願いします。マコト先輩、こちらに」
先導するチアキに続き、更に歩を進める事数分、一つの裏路地に入って行った。
「水です」
「ああ」
マコトは、僅かに震える手で懐から小さな封筒を取り出す。手の上で引っ繰り返すと、中からは数粒の錠剤。チアキから渡されたミネラルウォーターで喉奥に流し込んだ。
「しかし、さっきはよく分かったな」
「先輩、コートのポケットの中で、手握ったじゃないですか」
「ほう……大した物だ」
「伊達に記者名乗ってませんから。観察眼には自信あります!」
マコトは内心非常に感心していた。チアキが気付いたのは、マコトの痛み止めが切れた事。下腹部を中心に鈍く殴り付けて来る鈍痛に、一瞬だけ拳を握り締めた。それを見逃さず目聡く感知したと言うのだ。
- 35二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 00:15:59
保守
- 36二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 07:32:31
お辛い
でもお辛さがクセになる - 37二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 12:50:59
ギャグオチ?時空マコトちゃん
マコト「やめろこの強.姦魔が!」
「ぐへっへっへ!やめるわけねぇだr…ひでぶっ!」
イロハ「見つけましたよマコト先輩」
マコト「主砲でぶち抜きとは豪快だな」
その後の虎丸車内
イロハ「はいではマコト先輩ぶちマワしパーティ開始です」
マコト「助けてくれーーーーーー!」 - 38二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 23:34:05
保守
- 39マコトに関する経過報告書く人24/12/14(土) 23:47:46
本人の精神衛生が影響しているのか、はたまた遺産の置き土産か、マコトの治癒は遅々として進んでいなかった。その為、今でも痛み止めと止血薬、更には血栓対策や胃腸への影響を抑える物等、複数の薬剤を摂取している。四六時中強力な薬を飲み続けていては幾ら胃腸薬があっても内臓がボロボロになってしまう為、強力且つ即効性の物は明確な自覚症状が出た時に絞り使う様にと、セナから指示を受けていた。
しかし、この頃はマコトが怪我を押して積極的に動いている事もあり、当初の想定よりも服用頻度が増している。
同伴しているチアキは報道用の写真撮影のみならず、マコトが急な体調不良に陥った際の休憩場所確保と人払いを担う。常にマコトの側におり、その機微を見逃さず、必要に応じ先回りして部下に指示を飛ばす。当初はチアキ自身も任務を全う出来るか不安に感じていたが、やってみたら存外に器用に立ち回れていた。ただそれも、マコト本人や他の万魔殿所属議員の多大なる助けがあっての事だと本人は自覚している。だが、本人の普段の快活な性格・受け答えもあり、気遣われている事にチアキ自身が気付いている、と気付いている者は他にいなかった。
先程ヘッドセットで連絡を取っていたのは、この任に当たり万魔殿直下に臨時に編成された、親衛隊と呼ばれる部活である。
何故、薬休憩一つでわざわざ人払いを行うのか。十全に動けないマコトの安全確保や、人目の無い落ち着ける休憩時間の確保と言った目的も勿論あるが、主たる狙いはマコト健在アピールの為である。一番最初の『事件』以降、議長の休憩時間が極端に増えた、頻繁に救急医学部に出入りしている、等々、どれだけ隠したつもりでもどこかから情報が洩れ、ある事無い事噂話として広がって行く。それに対処する為には、それよりも強く公式情報を押し付けてやるのが一番だ。
そこでチアキは当人であるマコトや情報部のサツキと相談し、これまで以上に議長の活躍に焦点を合わせた特集を組み続ける事にした。彼女に出来るのはそれだけであるから。他の誰かの様に、力で守る事も、治す事も、寄り添う事も出来ない。だからチアキは万魔殿新聞の製作、それに関わる全ての事柄に並々ならぬ情熱を燃やすに至った。
- 40二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 23:48:39
このレスは削除されています
- 41マコトに関する経過報告書く人24/12/14(土) 23:58:11
何も知らない一般ゲヘナ生には、次の選挙に向けて万魔殿がマコト支持率アッププロパガンダを打っている様にしか見えないだろう。それはそれで構わなかった。
重要なのは何らかの情報を仕入れているゲヘナ生、及び他校の上層部だ。最大の仮想敵校であったトリニティとの関係が安定しているとは言え、キヴォトスに於ける学園間の関係は常に流動的で、放っておけば勝手に悪化する事も珍しく無い。その様な中、指導者が重傷で動くのもままならないとなれば、どう言った悪影響があるか知れない。最高権力者が重病の状態で同学校を守り抜くのか、山海経の諜報で得られた情報から学ぶ事も多いかと思ったが、情勢が違い過ぎて余り参考にならなかった、とはマコト本人の談である。
「チアキ、替えを頼む」
「あ、はい!」
返されたペットボトルの蓋を閉め、ポケットに滑り込ませる。カメラバッグのポケットに入れていた小さな包みを引き換えに手渡し、マコトから目を逸らした。
背後でマコトの動く音がする。スカートをたくし上げタイツと下着を引き下げる音。ベリベリと何かを貼り替える音。肌着を再び見に纏う音。
最後にビニール袋に何かを放り込み口を縛る音がした後「終わったぞ」との呼び掛け。
「昨日よりもペース早くないですか?」
「かもな。本来半日保つ多い日の夜用が二時間足らずだ。ナプキン代が嵩んで構わん」
止血薬を使っている事からも分かる様に、マコトの内臓は傷が塞がり切っていない。動き回れば当然、閉じ掛けの傷も開き直す。その垂れ流しになった血と膿とを抑える必要があった。会談の様な長時間身動きが取れない時には介護用オムツや経血カップを利用するが、平常時は動きの自然さを重視しナプキンを好んで着用している。
今日の様に積極的に動けば当然出血量も増え、チアキら万魔殿の議員が不安になる程の頻度で交換を余儀無くされていた。
それだけの出血を強いられれば当然、無事で済む訳も無く。マコトは懐から輸血パックを取り出すと、針のカバーを取り去り、自分の左腕に突き刺した。
- 42二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 07:43:53
保守
- 43二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 16:45:03
輸血かぁ……
- 44二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 22:39:31
万魔殿に保護の名目で閉じ込められるマコトちゃん概念もあったな
- 45マコトに関する経過報告書く人24/12/15(日) 22:39:49
「すまん、もう少し掛かる」
「だいじょーぶです、ゆっくり安全にどうぞ!」
チアキがちらりと目を向けると、輸血パックを握り締めるマコトの横顔はただ静かで、そのやや白けた肌の色も合わさり、まるで白磁の人形の様にも見えた。
「すまない、迷惑を掛ける」
「迷惑だなんて! 新聞に必要な物は全て通常業務の範囲内です!」
「しかし、私の介護など、本来は必要の無い仕事だろう」
「え、前から先輩がバカやる度にずっと介護のつもりでしたが」
「は?」
「寧ろ通常運行が災害に近いと言うか」
「待て待て待て、どこまで本気だ?」
「どこまでだと思います?」
「これまた難問な……」
雑談をしている間に、輸血パックが空になった。心無しかマコトの血色も良くなった様に見える。
チアキがゴミを受け取って片付け、振り返り見上げた時には、傲慢で不遜な普段の万魔殿議長が立っていた。
「行くか。次はどこだったか?」
「倉庫区画の防火用立像ですね」
不敵な笑みを浮かべ、大股で歩き出す。だがチアキは、その両足の踏ん張り方がこれまでとは僅かに違う事に気付いてしまう。蹴り足の尻周りの筋肉を強張らせ脚を安定させ、ダウンコートに隠れた腰を左右に動かして強引に地面を蹴り出す、無理のある歩き方。これは歩行に問題を生じる程度に負傷した者がそれを強引に誤魔化して健常者を演じる、儀礼や演劇で用いられる方法だ。
元宮チアキは感じ取った。恐らくこれは一般ゲヘナ生だけに向けたアピールでは無い、チアキ自身を含む、マコトの周りの者全員に対する「痛み止めさえ飲めば普通に歩ける、問題は無い」と言う欺瞞だと。恐らくこの歩き方に気付けるのは、チアキを除けば肉体の動きについて知り尽くしているセナやヒナ、そして人体工学や演劇を専攻とする極一部の生徒のみだろう。それ程、マコトの歩き方は巧妙であり、確固たる強さを感じさせた。
本来議長を支えなければならない書記たる自分が、その議長に気を遣われていると言う事実。それは自分が不甲斐無いからなのか。そう勘ぐらずにはいられなかった。もしもここにいるのがサツキ先輩であれば、ヒナ委員長であれば。マコト先輩は強がる事無く、痛みが治まるまで休憩を取ったのかも知れない。
議長、まだ一人で背負い込むのですか。その言葉を口に出来れば、どれだけ気が楽だったろう。
- 46二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 07:56:31
保守
- 47マコトに関する経過報告書く人24/12/16(月) 09:44:43
マコトに関する経過報告:京極サツキの場合
「マコトちゃん⁉ マコトちゃん大丈夫⁉」
「どうします、どうしましょうこれ?」
万魔殿の談話室で、サツキとチアキが困り果てていた。きっかけは数分前まで遡る。
マコトがマグカップを取り落とした。幸い中身は空で、落とした所も絨毯の上だったので被害も負傷も生じなかったが。
恐らく以前であればしなかったであろう些細なミスに、その場にいた側近二人はどうしても気になってしまった。
「マコトちゃん。確認なんだけど、正直な所、最近寝れてないわよね?」
「そう思うか?」
「ええ。とっても」
「そうか。周りからもそう見えているならそうなんだろう」
一見やけに聞き分けが良い様でもあるが、自分の意志で認めるつもりが無い様にも見える。
……と言うのは見掛けの上だけで、マコトには本当に判断が付いていなかった。だから、これはマコトの心からの言葉だ。
「それなら、新しい技法を開発したの、付き合ってくれないかしら?」
「それなら、の意味が分からんぞ」
「サツキ先輩、今度は人を眠らせる、文字通りの催眠術を練習したいそうですよ」
「……危険は?」
「失礼過ぎない?」
「自業自得ですよ」
サツキは不服な表情を浮かべながら、どこからかラミネートされたB4サイズの紙を取り出して来た。
「さ、協力してくれる?」
「分かった分かった。ここに座ったままで良いのか?」
「ええ! 寝転がってやったら、催眠で眠ったのかただ寝落ちしたのか分らないもの」
「寝転がっただけで寝落ちする程疲れてる様に見えてるって事か?」
「マコト先輩、上手い事誤魔化してますけど、身近な人には多分バレバレですよ」
「……心配を掛けてすまんな」
サツキは、サイケデリックな色彩のフラクタル系の模様が印刷された紙をマコトの前に掲げ、ゆらゆらと振り始めた。次第にマコトの姿勢が揺れ始め……
「え、先輩泣いちゃいました⁉ 何で⁉」
- 48二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 18:59:12
oh……泣いちゃった
- 49マコトに関する経過報告書く人24/12/16(月) 19:10:32
最初のシーンに戻る。
「掛ける催眠術間違えちゃった……」
「そんな事ありますか?」
マコトは椅子に座り真っ直ぐ前を見据えたまま、両の目から静かに雫を零し続けている。
「チアキちゃん、誰も入って来ない様に表で見張ってて頂戴」
「え、でも」
「良いから」
振り向いたサツキは、滅多に見せる事の無い有無を言わさぬ強い視線を投げて来た。今すぐここから出て行けと言う意思を感じさせる。察したチアキは何も言わずに部屋を後にした。
足音が遠ざかるのを確認した後、サツキはマコトに近付きながら確認する。これまで複数の催眠術を実験し、その度にマコトを実験台にして遊……観察して来たが、こんなマコトは見た事が無い。失敗だらけになりながらも積んで来た経験から、恐らく素直になる催眠を掛けてしまったのだと目星を付けた。
「ねえ、マコトちゃん?」
「何だ?」
「最近、よく眠れてる?」
「……分からん」
マコトは力無く首を横に振った。
「どうして」
「睡眠時間は最低でも七時間、確保している筈だ」
「時間は十分ね。でもそれなら、そんなにクマは出来ない筈だけど。よく眠れないの?」
「目を瞑れば眠りには落ちる。だが、すぐに目が覚める」
言葉を切り一息付くが、言い淀んでいる様子は無い。やはり自白系の催眠だと確信した。
チアキを退出させて良かったと自分の判断を褒める。マコトは万魔殿の議員達にある程度自分の状況を知らせている様でいて、それでも不調を隠している様な節がある。それがマコトの意志ならば、自己とは言えサツキがそれを勝手に暴露して(させて)良い筈が無い。
「寝る度、夢を見るんだ」
- 50マコトに関する経過報告書く人24/12/17(火) 06:31:37
「夢?」
「私を襲った下奴共が私を取り囲んでいるんだ。殴られ、蹴られ、撃たれ、犯される。まあこれは前からあった事だ、今更どうでも良い」
傷口を抉り返す様な悪夢が続いていると言うのもサツキにとっては十分に衝撃的だったが、マコトは心底下らなそうに流した。
「奴らの外側から、私を見ている者がある。周りは血に塗れた部屋だ、見付けられない、だがそこに『あの子』がいるんだ。私を見ていて。奴らの声しか聞こえないのに、頭に確かに『あの子』の言葉が聞こえるんだ」
マコトの瞳から零れる物が大粒になり、声に嗚咽が混じり始める。
「何故、防がなかったのかと。何故、自分をこの、この世に現れさせたのかと」
サツキは夢の内容を訊いてしまった事を後悔し始めたが、同時に、ここで止めてはいけないと言う奇妙な確信があった。ここで自分が耳を塞いでしまえば、誰もマコトに寄り添える者がいないままになってしまうと。それが彼女自身の望む事なのかどうかは分からないが。
涙に、言葉も途切れ途切れになり始めた。
「どうして、生ま、れっ、させて、くれなかったのか、『居なくした』、のかっ……あんな風っ、に、『使った』のかって」
鼻をすするマコトが座る椅子の傍らまで歩み寄り、両肩に手を置く。
「声が……こえ、がっ、聞こえる、んだ……も、藻掻いても、足掻いっ、ても、奴らは止ま、らない。なっ泣き、喚いても、声が消え、ない……消えないんだよ。頭に、直接入っ、て、来て。声が消えないんだ」
- 51二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:29:34
保守
- 52二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 22:46:01
ほ
- 53マコトに関する経過報告書く人24/12/18(水) 02:31:18
一度調子を整える様に、深く呼吸する。
「――いつも、そこで目が覚める。起きるとあいつらはいない。一人だ。でも、声は聞こえる、まだ聞こえる。眠らなければならない事は分かっている。だから目を閉じる。声が聞こえるまま耳を塞いで、目を塞いで、眠る。その繰り返しだ」
「時間は確保してる、って、そう言う事ね」
「ああ」
どれだけ酷い夢見でも、目を閉じれば眠りに落ちる。それはきっと、彼女が全く休めておらず、もう機能出来ない程に脳が疲弊しているから。どれだけ眠っても少しも安らげないから、次こそは休もうと意識して、何度も無意識に自らを痛め付けてしまっているから。
であれば、催眠で強引に眠らせた所で意味は無い。サツキは自らの浅慮な行いを恥じた。
「起きてからも聞こえ続けるって言ってたわね」
「ああ」
「それは、普段も聞こえるの」
「聞こえる。執務室でも、外を歩いていても、お前達と話していても、不意に声がする。意識していない時に、話し掛けて来る」
先程、マグカップを落とした時。サツキとチアキには、何かに驚く様に肩を揺らした直後、マグカップを取り落とした様に見えた。あれはきっと、声が聞こえたのだと合点が行く。
- 54二次元好きの匿名さん24/12/18(水) 10:02:29
お辛い……
- 55マコトに関する経過報告書く人24/12/18(水) 21:13:16
保守がてら予告しとくと、ちゃんとオチは決まっててエタる予定は無いのでご安心下さい。
- 56二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 06:30:46
お待ちしております
- 57二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 17:18:39
ほ
- 58二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 21:55:27
マコトが人〇しでトラウマを負うSSが読めるとはなぁ
- 59二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 08:37:02
保守
- 60マコトに関する経過報告書く人24/12/20(金) 12:48:00
「……マコトちゃん、声が聞こえない、少しでも休める時はあるの?」
「ある」
徐に首に掛かるチェーンに触れると、胸元から小さな銀細工を取り出した。
「トリニティで貰ったロザリオだ。感情の扱いを手助けしてくれるらしい」
それを両手で握り締め、胸に強く押し当てる。
「『あの子』の事を思っている間、『あの子』に謝っている間だけ、気が休まる。心から謝罪する事が出来る」
目を閉じる。
「すまなかった。私が悪かった。私が思っている言葉を、この十字架が『あの子』に届けてくれる。私はもう何もしてやれない、そんな資格も無い。謝る事だけが……」
その言葉の先は無かった。役割なのか、責務なのか、それが何なのかは彼女自身にもまだ分かっていないのだろう。ただ、その名前の無い感情だけが体内を埋め尽くしている。
「……すまない。すまない。私のせいなんだ、私が悪かったんだ」
誰に言うでも無く、溢れ出す謝罪と後悔の念。彼女がロザリオに祈っている時の胸中なのだろうとサツキは受け取った。
「痛かったな、怖かったな、辛かったな。すまない、全部、全部私のせいだ、すまない……!」
その震える両肩を、サツキは抱き締める。マコトの同級生としても、情報部長としても、彼女に出来る事は何も無い。ただ一人の友人として、側にいる事しか出来なかった。
- 61マコトに関する経過報告書く人24/12/20(金) 12:48:41
書き溜めのペースがちょっと落ちてしまってたので小出しで間を繋ぎます申し訳無い……!
- 62マコトに関する経過報告書く人24/12/20(金) 12:50:10
セナ「まだ生き物では無いから、議長が死体を作った訳では無い、とはっきり申し上げたのですが……やはり理解と納得は一致しない様です」
- 63二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:40:01
ほ
- 64マコトに関する経過報告書く人24/12/21(土) 02:09:43
十分、いや二十分が経ったか。マコトは力尽きた様に眠り、サツキは少しでもその夢見が安らかである様、抱き締めたままそっと頭を撫でていた。
カチッ、とスピーカーに電気が通る音が響く。
『サツキ』
「あら、風紀委員長。どうしたのかしら」
『白々しい。風紀委員会と万魔殿が盗聴合戦してる事なんて、貴方が知らない筈が無い。チアキを追い出したのにマイクを切らなかったのは、私に聞かせる為でしょう?』
「さあ、どうだったかしら?」
スピーカー越しでも分かる、酷く大きな溜息。
『……風紀の予算、増やす様に言い含めときなさい』
「あら、弱みを利用して脅すのかしら?」
『違うと分かってて茶化さないで。こっちに回せる仕事は回しなさい、治安維持は増額分で外注するわ。信頼出来る戦力を幾つか知ってるから』
パラパラと紙を捲る音が聞こえる。恐らく、既に外注用の書類を作成しているのだろう。情報部の知る範囲でヒナが外注しそう、且つ金額次第で動きそうな相手と言えば、便利屋やアビドスの長辺りだろうと想像する。
「自分から仕事を請け負うなんて、風紀委員らしく無いわね」
『部下って言うのは、上司の過剰な負荷を減らすのも仕事なのよ。普段の処遇とはまた別の話。貴方も、そうして欲しくて聞かせてたんでしょう』
「話が早くて助かるわ。因みに、貴方以外には」
『勿論聞かせてない。全く、こう言うのは事前に伝えて頂戴。私以外への傍受信号カット、間に合わない所だったじゃない』
「しょうがないでしょう、突発的だったんだし」
『まあ良いわ。そう言う訳で、宜しく』
音声が途絶える。
風紀委員会への増額、マコトが素直に受け入れてくれると良いのだが。もしいつも通りの態度を示す様であれば今度こそ服従の催眠を掛けてやろうか、そう思案するサツキだった。
- 65マコトに関する経過報告書く人24/12/21(土) 12:38:03
どこのとは言わないけど、事務局長のエミュ難しくない……?
- 66二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 19:04:23
確かに……一人称オイラってくらいしか……