- 1二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:06:22
「やっぱりトレーナーさんも、おっぱい大きい子が好きなんですか~?」
突然の爆弾発言に、飲んでいたものを吹き出しそうになった。
何とか堪えて、その爆心地の方へと視線を向ける。
トレーナー室に設置してあるソファーの上、そこにはうつ伏せで雑誌を読んでいるウマ娘が一人。
芦毛のミディアムヘア、両耳には白地に青輪の耳カバー、右耳には黄色い耳飾り。
担当ウマ娘のヒシミラクルは、こちらを見ないまま、何の気なしにそう問いかけていた。
「……突然、どうしたの? というかやっぱりって何?」
「ん? ああ、フツーの男の人はおっぱい好きかなと思って、トレーナーさんをおっぱい星人と思ってるわけじゃないですよー?」
「うん、とりあえず、連呼するのはやめようね」
振り向いたヒシミラクルは、真っすぐな視線をこちらに向けてくる。
どうやら、揶揄っているとか、冗談を飛ばしているわけではなさそうだ。その方が良かったけども。
俺は頬を掻きながら、頭の中でいくつかの選択肢を網羅させて、その中から無難な言葉を口に出す。 - 2二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:06:51
「……女性の魅力というのは、外見よりも内面的な」
「あっ、そういうのは良いでーす、やっぱりダンツちゃんみたいなボインボインなのがお好きなんですよね?」
「同室の後輩をこういう例に出さない……っ!」
俺の思案はあっさりと無に返される。
さすがにヒシミラクルも思うところがあったのか、少しバツの悪そうな表情を浮かべた。
やがて、うつ伏せになったまま上体を捻り、読んでいた雑誌のページをこちらへと向けてくる。
そこには、とてもスタイルの良い女性の水着姿の写真がでかでかと掲載されていた。
「でも一般論として、やっぱわたしとかよりも、こういうぼんきゅっぼーんな感じの方が良いですよね?」
「────俺は断然ヒシミラクル派だけど」
「はへっ?」
「腰やら手足がいくらなんでも細すぎるでしょ、これは長距離どころかスプリントも怪しいというか」
「……ああ、そういう基準なんですねー、デスヨネー、びっくりしたなもー」
「それに、あんま言うべきじゃないかもだけど、キミのスタイルだって負けないくらい魅力的だと思うよ」
「っ!? そっ、そういうこと言うかあ?」
「……ごめん、やっぱり言うべきじゃなかったな、忘れて」
「……別に気にしてませんし、忘れてもあげませーん、ふふっ」
ヒシミラクルは尻尾をぱたぱたと左右に振りながら、ニヤついた笑みを浮かべる。
これは失言だったな、と俺は心の底から後悔するのであった。 - 3二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:07:24
「……それで、トレーナーさんは女性のどういうところに魅力を感じるんですか?」
「えっ、この話ってまだ続くの?」
後悔しているところに追い打ちをかけるように、ヒシミラクルの質問が襲い掛かってくる。
真顔に戻っている彼女を見るに、一応、真面目に聞いているみたいだけれど。
一旦頭を整理するため、大きく深呼吸を一つ。
俺は少し背筋を正してから、出来るだけ柔らかい口調で彼女へと問いかけた。
「どうして、そんなことを知りたいんだ?」
「……ほら、トレーナーさんって、なんか欠点がない感じがするじゃないですか?」
「えっ?」
生まれてこの方、始めて聞くような評価が、他でもないヒシミラクルの口から聞こえた。
ぽかんとする俺に対して、彼女は少し慌てたような様子で、言葉を付け足す。 - 4二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:07:54
「えっと、まあ、癒されるのが苦手だったり、ちょーっと厳しかったりするところはありますけど」
「もっとあると思うけどなあ」
「わたしから見たトレーナーさんは、何の取り柄もないわたしを見出してくれた人」
「俺がいなくたって、他の誰かがきっとキミを見つけていたよ」
「わたしを、ずうっと信じて、支えて、応援してくれて、ミラクル起こしてくれた、すごい人です」
「……それは買いかぶりすぎ」
あまりのベタ褒めに恥ずかしくなってきて、俺は思わず視線を逸らしてしまう。
そんな俺を見て、ヒシミラクルはくすりと笑みを零してから、言葉を続けた。
「ただ、そんなすごい人だとフツーのわたしは気後れしちゃうので」
「そんなことはないって」
「────実は異性の身体に興味津々とかで、何とか中和出来ないかなと」
「そんなことってある?」
あんな良い感じの話の流れからの着地地点が、あまりにもあんまりだ。
俺の嘆きを他所に、ヒシミラクルは瞳をきらきらと、期待に満ち溢れた様子で輝かせている。 - 5二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:08:18
「さあ、トレーナーさん! しょーじきに、女性の身体のどこが好きかを、告白しちゃってくださーいっ!」
「うん、そんなの学生に告白したら、俺は学園にいられなくなるからね?」
「えー、長い付き合いじゃないですか、今更ちょっと特殊な性癖くらいでどうこうしませんよー?」
「勝手に特殊性癖持ち認定しない」
ヒシミラクルは、楽しそうな表情を浮かべたまま、視線を外そうとはしなかった。
これは、説得には骨が折れそうである。
よしんばここで切り抜けたとしても、しばらくしたらまた蒸し返される感じのやつだった。
……まあ、彼女の言う通り、俺達は契約してから幾多の月日を越えてきている。
二人三脚でトゥインクルシリーズを駆けてきた信頼は、この程度のことで揺るがない、とは思う。
この場には俺達二人だけ、正直に伝えて、この話をおしまいにしてしまった方が良い気はした。
しばらくの間、思考を巡らせて、俺は静かに質問への答えを口にする。 - 6二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:08:46
「────膕、かな」
「へえ~まさかトレーナーさんがそんな……えっ、ひか、はい? 今、なんて言いましたか?」
「ひかがみ、だよ」
「はいはい、なるほど~、ひかがみひかがみ………………あの、すいません、それどこなんですか?」
「あれ、知らない? 膝の裏のくぼみのことなんだけど?」
「知らないです…………トレーナーさん、そんなところ好きなんですかー?」
「まあ、それなりに、でも男だったら大体の人は好きだと思うよ」
「ええ、聞いたことないですよう、何が良いんです、それ?」
「うーん、俺も感覚的に思っているだけだけで、上手く言語化出来ないかもしれないけど」
「はい、それでも構いません、ちょっと気になるので」
こくりと頷くヒシミラクルを前に、俺は少し考えてから、言葉を紡ぎ始めた。
「膕って複数の筋から構成される部位でさ、肉体的な美しさの中に優しい温もりを感じられると思うんだ。それと人によってそれぞれ違いがあるし、同じ人ですらその時の膝の曲げ具合なんかで変化が見た目が変わっていく、そんな常に味わえる新鮮さみたいなところも魅力だよね。それに爪とかと違ってほとんどの人があまり気にしていないところでさ、その人の素が見えるというか、膕が綺麗な人は心まできれいにみえるというか」
「……………………わたしのは、どうなんですか?」
「ヒシミラクルのはとてもふっくらししていて柔らかそうな、健康的な美しさがあって、良く目で追っちゃ────」 - 7二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:09:22
…………待て。
今、俺は、誰に、何を、話しているのだろうか。
無駄に饒舌だった口は一瞬にして凍り付き、反射的に両手で覆ってしまう。
そして恐る恐る、ソファーにいるヒシミラクルの様子を、ちらりと伺った。
────彼女は、ソファーで寛ぐ時には、だいたい靴下を脱いでしまっている。
楽だから、という単純な理由。
そして今、彼女はソファーの上で、うつ伏せになって寝転がっていた。
すると必然的に、彼女の吸い寄せられるように綺麗な膕は、惜しげもなく晒されているわけで。
「…………っ!」
刹那、ヒシミラクルの顔が赤く染まり、耳と尻尾がピンと立ち上がる。
慌てた様子で起き上がり、丸まるようにソファーの上で体育座りになってしまった。
いうなれば、膕をがっちりとガードする体勢。
彼女は膝で口元を隠しながら、ジトっとした目つきで俺のことを睨みつけてくる。
「…………トレーナーさんの、えっち」
「…………違うんだ」
ぽそりと呟かれる、ヒシミラクルの言葉。
俺は絞り出すような声で、あまりに頼りない弁明を口にする他なかった。 - 8二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:09:56
結局、俺がお好み焼きを御馳走することによって、先の失言は許してもらえた。
ただし、言葉というのは一度発してしまえば、決して消すことが出来ないもの。
その影響は、後日、しっかりと出てしまっていたわけで。
「うう~、さっ、寒すぎますよ~っ! 今日はやめときませんか~!?」
「走れば暖かくなるから……それともプールにする? あっちは温水だけども」
「…………頑張りまぁす」
一瞬にして目の光を失ったヒシミラクルは、渋々といった様子で準備運動を始める。
「……ところでさ」
「はい? どーしました?」
俺が声をかけると、ヒシミラクルはきょとんとした表情で首を傾げる。
こういう時に話しかけるべきではないのだが、どうしても気になることがあったのだ。 - 9二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:10:19
「えー、だってー、ねー?」
思わせぶりな言葉を呟きながら、ヒシミラクルは突然くるりと背中を向けた。
そして俺の方へと向けられる────触り心地の良さそうな、彼女の膕。
準備運動の動きに合わせて、伸び縮みしていくそこに対して、思わず見惚れてしまいそうになる。
「…………ウォーミングアップは入念にね」
「えへへ、はぁい」
我に返って目を逸らした俺に対して、ヒシミラクルは得意げな笑みを浮かべる。
あの日以来────彼女は自らの膕を、見せびらかしにくるのであった。 - 10二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:10:47
「あっ、奇遇ですねトレーナーさん、上に用事ですか?」
「ああ、ちょっと運ばないといけないものがあってね」
「それじゃあわたしと一緒に行きましょう、わたしも先生から頼まれちゃって」
トレセン学園の廊下を歩いていた時、たまたまヒシミラクルと遭遇した。
特に断る理由もなく、俺はその提案に頷いて、並んで歩き始める。
そして階段を上ろうとした、その瞬間であった。
「……ふふん♪」
ヒシミラクルは突然、鼻歌混じりで駆け出して、俺の前を歩き始めた。
目の前には、ふりふりと動く尻尾に、ひらひらと揺れるスカート、それを押さえる両手。
スカートから伸びているむっちりとした太腿、そして、常に形を変え続けている裸の膕。
以前までの彼女であれば、サイハイソックスを愛用していたため、制服でその部分が見えることはなかった。
けれど最近は、ハイソックスを着用しているため、階段で前を歩かれると眼前に膕が来てしまう。
スカートがめくれてしまうのを隠そうとする、女の子らしい仕草。
それに対して、膕は無防備に晒されていて────その奇妙な格差が、“来る”のだ。 - 11二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:11:07
「……っ!」
ハッとして、慌てて目を逸らした。
すると、ヒシミラクルの足取りがぴたりと止まってしまう。
顔を突っ込みそうになるのを何とか堪えて、どうしたものかと、俺は顔を上げた。
そこには、妖艶な微笑みを浮かべて、熱っぽい視線を向けている彼女の姿。
「……ふふっ、トレーナーさんのえっち♪」
どきりと、心臓が固まる。
……どうやらヒシミラクルは、奇妙な性癖に目覚めてしまったようであった。 - 12二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 03:11:26
お わ り
癖しかない - 13二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 13:04:16
よきお手前でござんした……気安い関係をしっかりと感じる良い会話、お見事です
- 14二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 23:15:27
ヒトミミの速度は脚の裏側で作るから、このトレーナーは趣味と実益を兼ねているのか
妙なリアリティを感じた - 15二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 23:19:55
素晴らしい、すごいフェチズムを感じる…
- 16二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 23:26:04
これは…責任取らないとですよぉ…ミラトレさんよぉ…
- 17二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 23:31:29
膝裏のことか……向こうにはそのフェチのヒト耳多そうだな
- 18二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 08:16:57
ダークサイド(当社比)ミラクルだと…!?
ボクのデータにはないから助かる! - 19二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 11:40:12
膕て初めて知った
- 20124/12/12(木) 23:06:53
- 21二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 23:08:49
ウマ娘世界って足フェチの人口多くなってるだろうからこういうのもありか……