陸八魔アルの朝は早い

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:43:01

    隣で寝息を立てているムツキを起こさないように、そっと起き上がる
    部屋の隅の方で愛銃を抱き枕代わりにして寝ているハルカの剥がれていた布団を掛けなおしてあげる
    寝室の扉を音を立てないように静かに閉めて、ノビをする
    「ん〜〜〜、今日も晴れそうね」
    ブラインドから射し込む薄紅の光がアルの身体を包み込む
    今日も今日とてアウトロー日和
    事務室に飾ってある『一日一悪』の掛け軸を見ながらそう思う
    「社長、おはよう」
    頭をタオルで拭きながら浴室から出てきたカヨコに声をかけられる
    ふわりとした甘い香りが漂ってくる
    便利屋皆で使っている共用シャンプーの香りだ
    「おはよう、カヨコ。早いのね」
    「うん、ちょっと早めに片付けておきたい報告書があったから」
    「いつも、ありがとう。カヨコはホントに頼りになるわ」
    「ん……社長もまたそんなこと言って……」
    「ホントのことよ」
    カヨコが机でキーボードを叩き出したので、アルも手早く朝の準備を始める
    手早く顔を洗い歯を磨く、最低限の髪のセットだけしたらキッチンへ

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:44:29

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  • 3二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:44:31

    「今日はみんなバラバラの依頼だから……」
    冷蔵庫の明かりを受けながらを開け考える
    ハルカは工事現場のバイト、カヨコは次回の依頼人との交渉、アルとムツキはトリニティ生徒からブラックマーケットでの失せ物探しの依頼
    今月は立て続けに依頼が入って羽振りがいいのだ
    普段はほとんど選択肢のない冷蔵庫にはたっぷりと食材が詰まっている
    「持ち運びしやすいし、サンドイッチにしましょうか」
    冷蔵庫からいくつかの食材を取り出す
    まずはベーコンから温めたフライパンに油を敷いてベーコンを投入
    パチパチと油の弾ける音とお肉の焼けるいい匂いがお腹の虫を擽るが、ここはグッと我慢
    他の料理も一緒にすることを考えて弱火にして時間をかけて熱を通す
    ついでに、ウィンナーも何本かフライパンに入れておく
    食パンを8枚取り出してトーストに焼けるそばから投下していく
    「じゃあ、次は豆腐を切ってと」
    鍋に水と粉末だしを入れて温めているうちに、手のひらの上に乗せて縦と横に切っていく
    アルはこの手のひらに豆腐を置く意味をよく分かっていないが、よくカヨコもやっているから意味があるのだろうと思っている
    「ちょっと不格好になっちゃんたけど」
    大きさはバラバラだが、味に変わりはない
    切った豆腐と乾燥わかめを沸いた鍋に入れてから味噌を投入
    便利屋は昔からちょっとお高い合わせ味噌
    毎日使うものだからこそ良い物にしていた方が生活が豊かになる
    味噌汁が一先ず出来上がったので、サンドイッチに取り掛かる
    熱が入ってきたベーコンに胡椒を振って取り出す
    空いたフライパンには卵を2つ投入して目玉焼きを作っているうちに、作り置きのゆで卵を刻んでからボウルに入れてマヨネーズと和える
    焼けたパンにバターを塗ってから、レタス、マヨタマゴ、ベーコンの順で乗せていく
    工事現場に行くハルカのぶんにはベーコンを一枚おまけして
    アルミホイルで包んで食べやすいように半分に切って完成だ
    「ふう、ちょっと時間かかっちゃったわね。ってあああ! 目玉焼きちょっと焦げちゃってるじゃない! 弱火にしていたのに!」
    少し焦げ始めていた目玉焼きを急いで救出する
    ちょっと、ちょーっとだけ端の方が黒くなってるけど許容範囲内だろう
    2人分の皿に目玉焼きとベーコンと一緒に焼いていたちょっと冷めたウィンナー余ったレタスを乗せて、味噌汁を注いで完成

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:45:05

    「カヨコ、朝ごはんできたから一緒に食べましょう」
    事務机で朝から黙々と仕事をしていたカヨコに声をかける
    「別に気にしなくて良かったのに」
    「いいの、いいの、私も食べたかったし」
    カヨコと向かい合って座る
    「「いただきます」」
    やっぱり懐に余裕があると朝ごはんも豪華でいい
    1切れの食パンを4人で分けているのとは物が違う
    まずは味噌汁から、ズズッと
    口の中に広がる優しい塩味と甘み、合わせ味噌の優しい味が忙しい朝に必要な温もりを伝えてくれるようだ
    「やっぱり社長の作ってくれるお味噌汁は美味しい……」
    「ちょっと奮発したお味噌使ってるから」
    「ううん、そうじゃなくて何か安心する味というか」
    「んー。いつも作ってるからかしらね」
    次は目玉焼き
    「社長、醤油取ってくれない?」
    アルは使っていた醤油差しをカヨコに渡す
    普段、アルは塩コショウで目玉焼きを食べる派だがは黄身が半熟のときは別だ
    ちょっと下が焦げてるから心配していたが、サニーサイドアップで焼いたからか、カヨコが好きな半熟に仕上がっている
    ちょっとお行儀が悪いけれど、半熟卵に醤油を絡めてご飯とかき込む
    これに勝る目玉焼きの食べ方ないと思う
    「はむ……はふ、ズズズッ……」
    と、暫く二人の箸使いの音と味噌汁を飲む音が響いた
    半分眠っている頭を起こすには、やっぱりちゃんとした朝食を取るのが一番だ
    懐に余裕がある限りはだが

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:46:16

    「ごちそうさま、食器は流しに持っていっておくね」
    「お粗末様、ありがとう。水に浸けておいて、ムツキたちの分と一緒に洗うから」
    カヨコが食器を持って台所に行く
    「お腹が膨れたら、ちょっと眠くなってきたわね……って、いやいや、駄目駄目! 今起きたばっかりなのに、何言ってるのよ!」
    お腹が満たされる事に替わる幸福はない、よく言ったものだと思う
    朝からお弁当の準備や朝食の準備してバタバタしていてちょっと疲れたのもあるけれど、心地よい幸福感と血糖値の上昇で少し気が緩むのも確か
    「社長、コーヒー入れるけど飲む?」
    「あ、うん。頂こうかしら」
    「分かった、じゃあ二人分淹れるね」
    コーヒーの軽やかな薫りとカヨコの鼻唄が台所から聞こえる
    「はい、どうぞ。今日はちょっと甘めのが飲みたかったから、砂糖入れてるけどいい?」
    「と、当然よ! ありがとう、カヨコ」
    正直助かった
    カヨコは濃い目のブラックが好きだけど、アルはちょっと甘いくらいが良い
    勿論、アウトローはブラックを飲むものだから我慢して飲むけれど、やっぱり舌の好みは変えられない
    「あ、美味しい……」
    「ふふ、インスタントだから誰が淹れても同じ」
    「そんなことないわ、カヨコが淹れてくれたのならなんだって美味しいわよ」
    「もう、また、そんなこと言って……」
    本当に丁度いいのだ。
    アルの好みに合わせた甘さで飲みやすい
    ちょっと眠気が差し込んできた頭にコーヒーが染み渡る
    「じゃあ、私は報告書の作成に戻るから」
    「ん、よろしくお願いするわ。何か困ったことがあったらすぐに言ってちょうだいね」
    カヨコがコーヒーを持って席を立つ
    心なしか顔が紅いような気がするが、元が色白だからだろうか

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:46:34

    「ふーっ、今日も頑張らないと!」
    一息ついて頬を張る
    今日もやる事はいっぱいだ
    「アルちゃん、おはよー」
    「アル様おはようごさいます」
    ムツキとハルカが眠気眼を抱えて起きてきた
    「おはよう、お味噌汁作ってるから顔洗ったら朝ごはん食べちゃいなさい。今日は天気も良いし依頼日和よ!」
    こうして、今日も慌ただしい便利屋の一日が始まるのだ

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:46:43

    そんなモーニングルーティンを夢見る陸八魔アル

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:47:59

    アルちゃんは料理ができても、できなくても美味しいキャラなのはズルいよね
    けど、料理ができて家庭的な方がもっと素敵だねというスレです

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:48:13

    >>7

    テントの中でかな…

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:48:46

    >>8

    良い…

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 18:56:23

    便利屋のオカンやってるアルちゃんからしか得られない栄養はある

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:00:00

    便利屋漫画だとスキルに差はあれ全員料理はできてた
    しぐれ煮作ってるアルちゃんが一番手間かけてそう

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:27:35

    朝のクソ忙しい中、ちゃんとお弁当と朝食作るのは尊敬する

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:31:33

    ママ・・・?

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:31:34

    陸八魔ママは容易に想像できて良い

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:36:26

    陸八魔アルの朝は時々遅い、たまに布団で寝ると気持ちよくて寝過ごす

  • 17二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:43:32

    半熟目玉焼きとウィンナーをご飯に乗せて醤油回しかけて食べるのは実際美味い

  • 18二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:51:37

    素晴らしい
    SS読んでたらお腹空いた

  • 19二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:52:11
  • 20二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:53:37

    陸八ママ…

  • 21二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:54:44

    ちゃんと皆の好み把握してるの尊い……

  • 22二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 19:55:57
  • 23二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:51:18

    >>12

    しぐれ煮って醤油とみりんと砂糖のバランス難しいから、料理上手じゃないと作れないよな

  • 24二次元好きの匿名さん24/12/11(水) 20:53:37

    >>17

    デブの発想だが、バターかマヨネーズがあるともっといい…


    まずいな夕飯食ったばっかなのに腹減ってきた

  • 25二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 06:33:57

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:13:41

    陸八魔アルの昼は遅い
    ハルカと一緒に便利屋で書類処理をしていた
    気がつくと時計は13時を回っている
    どうやら、書類に集中していてついついお昼時間を過ぎてしまったようだ
    折角、カヨコやムツキが気を利かせて二人で居させてくれていたのに申し訳がない
    「ハルカ、そろそろ一旦休憩にしない?今日はハルカの食べたいものをなんでも作ってあげるわ」
    できるだけ気楽に感じにハルカに聞いてみる
    変に真面目に聞くと、真剣に考えちゃって答えが出てこないから
    「あ、アル様が作ってくれたものなら、な、何でも食べます……」
    「んー、ちょっと今日は何も思い浮かばなくて。二人だけだし、ハルカが好きなもの作るわよ、冷蔵庫にあるもので良ければ」
    少しと戸惑っようにハルカが逡巡する
    何か考えて、言おうか言うまいか悩んでいるみたいだ
    しばし、沈黙の後
    「じゃ、じゃあ、照り焼きパスタが食べたいです……」
    少し俯きながら、ハルカは恥ずかしそうに
    言葉尻が小さくなりながら、アルだけに聞こえるような声でそう言った

  • 27二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:14:10

    「アルちゃん、アルちゃん、最近さー。ハルカちゃんあんまり食べてなくなーい?」
    ソファーに座ったアルの膝の上で転がるムツキがなんでもないように、そんなことを言ってきた
    「えぇ? そうかしら?」
    そんなことはあるのだろうか?
    いつも前線に出たり、肉体労働をしているハルカのお弁当とかは他のみんなより少し多くしているつもりだったのに
    「ん、私もそんな気がする……なんというか、遠慮している感じ」
    「そうだよー、ごはんも一番少なく注いでるし、大皿の唐揚げとかもあんまり取らないしさー」
    ダイエットしている、というわけではないだろう
    いつも動いているから身体も筋肉質でガッチリしているし、体重を気にするようなタイプでもない
    お弁当なんかは綺麗に全部食べてくれるし、なんでも好き嫌いせずに食べている
    「やっぱり皆で食べると遠慮しちゃうのかしら……」
    「まあ、ハルカちゃんだしねー。それに、ご飯のリクエストとかもしたことないじゃん」
    そういえば、そうだった気もする
    夕食の献立に迷ったら、社員の福利厚生を込めて食べたいものを聞くようにしている
    リクエストが多いのはぶっちぎりでムツキでたまにカヨコ
    正直、食べたいものを言ってくれる方が色々と作りやすいからよくリクエストを求めているけど、ハルカから行ってくることはなかったような気もする……
    「今度、私たち二人で依頼受けるから、ハルカにも遠慮しないように言ったげてよ」
    「私達が言うより、アルちゃんが言う方が絶対にハルカちゃんの方が聞いてくれるからねー、任せたよ」
    「任せたって……まあ、いいわ、じゃあカワイイハルカのためだもの。社員の要望を聞くのも社長の役目よね」
    こうして、アルとハルカ二人で事務所に残って書類仕事をするこになったのだ
    報告書の期限も迫っていたし、ちょうど良かったのもあるけれど

  • 28二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:16:20

    閑話休題
    「さて、照り焼きパスタね……」
    冷蔵庫を眺め、アルは思う
    パスタには無限の可能性が詰まっている
    ありとあらゆる調味料や肉、野菜、魚介とマッチするのだ
    「それにしても、照り焼きパスタなんて……中々渋いところをついてくるじゃないの」
    アルは冷蔵庫から鶏もも肉と太葱を取り出した
    照り焼きと言ったら鶏肉、これは絶対に譲れない
    それももも肉のジューシーさと、照り焼きの甘辛いタレが最高に食欲をそそるのだ
    「昨日買ってきておいて良かったわ。一緒に買った牛肉は……夜は牛丼でも作ろうかしら」
    ハルカが何をリクエストするか分からなかったから、一通りの材料は買い揃えてあるのだ
    「じゃあ、まずは下ごしらえからね」
    鶏もも肉にフォークで穴を丁寧に開けてから、小麦粉をまぶして馴染ませるように揉み込む
    太葱は食感を損なわないように太めに斜め切りにする
    フライパンに油を敷いて、よく熱してから鶏肉を皮目から投入する
    鶏肉は中まで火が通るの待つ必要があるので、中火で蓋を締めて蒸し焼きにする
    小麦粉がだまにならないように定期的に裏返しにする必要はあるが、これが一番手早く終わるのだ
    「鶏肉はこれでよし、次はパスタね」
    パスタを2人分……いや、ここはハルカがたくさん食べれるように3人分より少し多めに取り出してタッパーに入れて水を少々入れて電子レンジに放り込む
    「これ便利よね、電子レンジでパスタができるなんて。買ってよかったわ。あっ、お肉も良い感じ」
    鶏肉の表面の小麦粉がいい感じに焼き目が付いてきたら、ボウルに醤油、みりん、チューブしょうが、砂糖の順に入れて混ぜ合わせ、照り焼きのタレを作って回しかける。
    小麦粉を鶏肉にまぶして置くことで、タレが馴染みやすく味しみがいいのだ
    また、蓋を閉じて蒸し焼きにして定期的に裏返しつつ、よく染み込んだ頃合いに取り出して食べやすいように包丁で切り分けて照焼チキンは適度に冷やして味を馴染まける
    あとは照り焼きチキンを作っていたフライパンに電子レンジから取り出したパスタと予め切っておいた葱を入れて、余っていた照り焼きのタレを入れて強火でサッと炒める
    太葱の食感を損なわせないために、あまり炒めすぎないことも重要だ
    あくまで火を通して絡める程度でいい
    焦がし醤油の香りがしてきたら、切った照焼チキンを混ぜたら完成だ
    甘辛いニオイが鼻孔を擽って、否応なしにお腹の虫が鳴いている

  • 29二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:17:45

    「ハルカできたわよ、照焼チキンパスタ。たくさん作ったからいっぱい食べなさい」
    「えっ、えへへへ、ホントに私なんかが戴いていいんでしょうか……?」
    「貴女のために作ったんだから当然よ! ハルカは便利屋の一員なんだから、遠慮なんてしなくていいんだから」
    「あっ、あの、じゃあいただきます……」
    ハルカが恐る恐るといった感じにパスタにフォークを伸ばした
    あまりパスタを食べ慣れてないせいか、不器用な感じに巻いているが、ここはお洒落なレストランじゃない
    食べやすいように食べるのが一番だ
    なんならお箸で食べたって誰も文句は言わない
    「ズッ……うんぐ……もぐ……アル様、これとっても……いえ、今まで食べた中で一番美味しいです!」
    「ハルカは大袈裟ね、こんなのだったらいつでも作ってあげるのに」
    お金に余裕がある時はね、そう言おうと思ってやめた
    アウトローらしくないし、言ってしまえば金運が逃げて行きそうな気がしたから
    「あ、あの、アル様は食べないんですか……?」
    じっとハルカが食べるのを見ていたせいだろうか、自分が食べるのを忘れてしまっていた
    幸せそうに食事を頬張るハルカは何時間でも見ていられる気はするが、ハルカが食べ辛いくなるといけないから
    アルもパスタにフォークを延ばした
    甘辛い照り焼きダレがツルツルとしたパスタと見事に調和している
    フライパンで炒めたこともあって、香ばしい焦がし醤油風味になっているのも、良い香りのアクセントになっていて食欲を唆る
    そして、この照焼チキン!
    噛めば脂とともにジワリと染み込んだ甘辛い味が口内に広がる
    (ムネ肉も美味しいけど、やっぱりもも肉が一番ね……脂と醤油の組み合わせが最高に美味しい)
    パスタ、鶏肉、パスタ、鶏肉、鶏肉、パスタ、気がつけばあっという間に皿の中がなくなっていた
    「あの、アル様……」
    「なに、ハルカ? おかわり?」
    「よ、よろしいですか?」
    「いいのよ! まだまだあるんだから」
    「でも、ムツキ室長やカヨコ課長の分も……」
    「二人は外食してるんだから、気にしないでいいのよ、ほらもっと食べなさい!」
    ハルカの皿に更にパスタを盛る
    もちろん、自信作の照焼チキンもたっぷり乗せて

  • 30二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:18:12

    「うっぐ、えぐ、私、こんなに幸せでいいんでしょうか?」
    何故かハルカが泣き出した
    いや、いつもの事ではあるんだけど、今日はちょっと情緒不安定すぎるような
    「もう、何泣いてるのよ、大袈裟ね。ハルカが食べたいもの作ってあげただけじゃないの」
    「でも、だって、このパスタはアル様が始めて私に作ってくれたものでしたし……ホントに美味しくて……」
    「え、そうだったかしら?」
    「お、覚えてないんですか? やっぱり私との記憶なんて……」
    「あああ! 違う違うハルカ、そうだった気がしてきたわ。いや、そうだったわ。大丈夫ちゃんと覚えているから」
    ハルカに食べたいものを聞いたとき、照焼パスタが食べたいと言ったのはそういうことだったのか
    あまり覚えていないけれど、確かに便利屋を開いて間もない頃にハルカに作ってあげたような気がする
    でも、それは便利屋を始めたばかりでお金がなくて『素パスタの照り焼き炒め』だったような気もするが、ハルカが喜んでくれたなら、ヨシ
    今でもお金がなくて調味料だけの素パスタになることもあるけれど
    ハルカじゃないけど、鶏肉を食べれる今を噛み締めることにする
    「ハルカはこの後コンビニでのバイトでしょ、もりもり食べて頑張らないとね。私達に遠慮することはないのよ、貴女のお陰でみんなちゃんとご飯食べれてるんだから」
    「えへ、エヘヘ……そうでしょうか……」
    そして、美味しそうに食べるハルカや皆と一緒にご飯を食べる
    これに変わる幸せはないと思う

  • 31二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:23:07

    良い…
    皆との時間を史上の幸せとしているの本当にみんなのことを大切に思っているんだなって思ってじんわりきた…
    素晴らしい…
    …お昼時に見たせいでお腹空いてきたな

  • 32二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:23:41

    我はこういう平穏な日常的短編に弱い民、せめてもの感謝として♡は押させて頂いた

  • 33二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 12:56:26

    素晴らしいSS読ませてもらった…
    ありがとうという言葉しか出てこない
    ハルカの遠慮してる理由が気になる、続きあると嬉しいな

  • 34二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 13:31:47

    ハルカにご飯いっぱい食べさせたい…

  • 35二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 18:33:17

    パスタは適当な調味料だけでも美味しいのはマジ
    テリヤキソースも美味しいけど、醤油とマヨとシーチキンの組み合わせでも良い

  • 36二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 18:38:54

    アルちゃんの膝の上が定位置のムツキ可愛すぎる
    業務日誌思い出す

  • 37二次元好きの匿名さん24/12/12(木) 20:50:51

    >>32

    生徒達の日常にあり得そうな一幕、良いよね

  • 38二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 06:23:17

    良スレに出会った

  • 39二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 08:32:07

    保守

  • 40二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 08:38:07

    ムツキとの日常も見てェ〜!ってなってる

  • 41二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 12:45:53

    今書いてるとこです
    規制されて無ければ今晩か明日には上げると思います

  • 42二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 15:14:50

    楽しみ〜!

  • 43二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:09:36

    陸八魔アルの夜食は重い

    事の発端は、昨日の『チンピラに奪われたスポーツカーを取り返してほしい』依頼が失敗したことが原因だ
    いや、失敗したというには語弊がある
    依頼は無事に成功、スポーツカーも無事に取り返したにも関わらず、依頼人が逃走時に使ったガソリン代やらバッテリー維持費やら修理費を以て依頼料を減額、それと依頼料は相殺で支払わないことにすると宣言したことにある
    無論、契約書には取り戻す際の破損状況に関して確認はしていたがあまりにも横暴な言い分だった
    そこで、アルが抗議する前にハルカがキレたのだ
    「アル様を騙したんですね? 騙したんですよね、騙しましたよね。死んでください、死んでください、死んでください……」
    「お、俺達の後ろにはガチャガチャヘルメット団がいるんだぞ!? そんなことをすれば……グワーッ」
    という事があり、ガチャガチャヘルメット団なるヘルメット団の一派と抗争が発生、なんとか壊滅させて依頼料+迷惑料を奪い取って便利屋に帰ってくる頃には皆ヘトヘトの状況だった。
    「今日はちょっと夕食作る元気がないから、カップラーメンとオニギリでいいかしら……?」
    と、みんなもヘトヘトだったせいか誰も反対せずに簡単に夕食を済ませてお風呂に入ってて眠りについたのだった

  • 44二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:11:23

    「トイレ、トイレっと……」
    夜も老けてきたころ
    アルがトイレに行くと、キッチンの明かりが灯っていた
    ガサガサと物音がして、誰かがいるのが分かる
    「何してるのよ、ムツキ、こんな時間に」
    「ありゃ、アルちゃんも起きたんだ。んーとね、やっぱり夜ご飯少し足りなかったかなぁ、って」
    確かにカップラーメンとおにぎりだけでは少なかったアルも小腹の虫が鳴いている
    「でも、こんな時間に食べるなんて……」
    時計を見ると、午前1時25分
    流石にこの時間に食べると色々と不味い気がする
    「そうだよね……こんな時間に夜食を食べるなんて"悪いこと"したくないよね……」
    「えっ、ええ? そ、そんなことはないわよ。私達は最高のアウトローだもの、別にそんなの気にする必要はないわ」
    「くふふ、そうだよねぇ、アルちゃんならそう言ってくれると思ったよ。じゃあ、一緒に作ろっか?」
    「え、私も食べるの?」
    「もっちろん、アルちゃんならムツキちゃん一人を悪い子にしないよね」
    「はぁ、もう仕方ないわね」
    うまく乗せられてるような気がするけど、まあ、いいか
    アルだって1日動き続けて食べれたのがカップ麺とおにぎりだけだったのだ
    ちょっとくらい悪いことしてもいいだろう
    それに少し眠ったことで一食作るくらいの元気は出てきた
    「じゃあ、ムツキ作ってあげるけど明日の朝ごはんは抜きよ」
    「やったー! さっすがアルちゃん。じゃあ、私アレが食べたいなー。牛乳のお粥のやつ」
    「リゾットね、簡単にできるし良いわよ。変わりに手伝って頂戴」
    確か冷凍庫に冷凍ご飯があったはずだ
    冷蔵庫の中にもリゾットが作れるくらいの材料はあったはずだから大丈夫だろう
    「じゃあ、冷凍のご飯をチンしてもらえる? どうせ煮込むから、半解凍ぐらいでいいわ」
    そう言うと、アルは手慣れた手付きで玉ねぎをみじん切りにして、鍋に入れて火をかけた
    玉ねぎに熱が入っているうちに、ウィンナーを一口大にして輪切りに、しめじの石付きを落としてから手で食べやすいサイズに千切っていく
    その間にも炒めている玉ねぎの色合いを見ながら焦げ付かないように注意する

  • 45二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:12:47

    「アルちゃん、解凍できたよ〜」
    ご飯の準備もできたようだ
    玉ねぎが飴色になった頃合いに、ウィンナーとしめじを入れてさっと炒めたら、牛乳を入れるて煮立たせ、コンソメ、胡椒をチューブのニンニクを入れて味を整える
    本当はチューブニンニクはたくさん入れたほうが美味しいけど、明日のことを考えて少な目に
    あとは、ご飯がいい感じに牛乳を吸収するのを待つだけだ
    「あと、これも入れようよ。絶対美味しいから」
    冷蔵庫を漁っていたムツキが取り出したのは、スライスチーズだ
    「ちょ、ちょっと重くなりすぎることないかしら? 確かに入れたら美味しそうだけど……」
    「大丈夫だって。それに、夜中に美味しいものを欲望の赴くままに食べるのは背徳感があって最高だって、先生も言ってたよ」
    「先生ー! なんてことをムツキに教えてるのよー!」
    「はいどーん!」
    ムツキがスライスチーズを4枚ほど、鍋の中に放り込んだ
    「くふふ これで、かんぺき〜。入っちゃったものは仕方ないよね」
    「入れたの間違いでしょ、まあ、いいわ。じゃあ、ムツキちょっと鍋を見ておいてくれる? 寒くなってきたからコートを取ってくるわ。牛乳が焦げ付かないように時々混ぜてくれるだけでいいから」
    「りょうかーい」
    あとは混ぜるだけだからムツキに任せても大丈夫だろう、そうしてアルは事務室に愛用のコートを取りに行った

  • 46二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:14:07

    そうして今現在深夜2時37分、アルの前にはチーズと牛乳をたっぷりと使ったチーズリゾットが置かれていた
    ニンニクと胡椒の薫りが鼻孔をくすぐり、ゴクリと喉が鳴る
    「うわーすっごい美味しそう! さっすがアルちゃん!」
    前に座ったムツキが早速と食べ始める
    「んぐ、もぐ、チーズと牛乳って最高の組み合わせだね」
    真夜中にこんなにハイカロリーな物を本当に食べてもいいのか、そう逡巡するアルだが、目の前で美味しそうに頬張るムツキを見ていると口内に溢れ出す涎を止められない
    「ま、ままよ……いただきます」
    スプーンで少し粘り気のあるリゾットを掬う、まだ熱々だからチーズの糸がスプーンから伸び白い滝を作り出している
    「あっっ、あ、でも美味しい……」
    「くふふ、でしょう?」
    「まあ、作ったのは私だけど」
    「えー、ムツキちゃんも手伝ったじゃん」
    チーズと牛乳のほの甘さに胡椒のスパイスが効いていていくらでも食べれる
    深夜だからとの理性が最後の抵抗で、少しだけ、ほんの少しだけ入れたニンニクも入れた量の割に効いていて、食欲を唆る
    「あれ、でもこんなに分かるくらいニンニク入れたかしら?」
    「あーそれねぇ、味見したときに少し足りなかったから追加して入れておいたよ。アルちゃんの好みにバッチリでしょ?」
    目を離した隙にやられていたらしい
    けれど、アルも本当はこれくらいニンニクが効いている方が好きだから何も言い返せない
    「明日、匂わないといいけど……」
    「大丈夫、大丈夫、明日は依頼もないし、シャーレに行く用事もないでしょ?」
    「それは、そうだけど……。ニンニク臭のするアウトローなんてアウトローじゃないわよ」
    「まあまあ、いいじゃーん。美味しければ大丈夫。夜食の背徳感と一緒に噛みしめるのもまた、アウトローかもしれないじゃん!」
    「いや、意味がわからないから」
    そう言いつつ、アルもスプーンを止められない
    お腹が空いてるのは事実だし、悔しいけれど食欲という荒ぶる悪魔にはどうやっても勝てる気がしない
    気づけばあっという間に全部平らげてしまっていた

  • 47二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:14:31

    「「ごちそうさまでした」」
    「美味しかったよ、ありがとうアルちゃん」
    「まったく……太っても知らないわよ」
    「でも、楽しいでしょ、アルちゃん。こうやって自由な時間にご飯を作って食べて、話して笑って。学校に居たら中々味わえないもんね〜」
    朗らかに笑うムツキ
    確かにそうかもしれない
    学園ではどうしても校則に縛られるし、こんなに自由にキッチンを使えることもない
    そういう意味では、こうやって夜食を食べるのはどの学生でも味わえない本当のアウトローなのかも?
    「いやいや、そんな訳ないでしょ!」
    少しはそうかも知れないけれど、やっぱりこれはアルの思うアウトローとは違う気がする
    いや、絶対違う
    「もう、真面目だなぁアルちゃんは。ま、だから私も一緒にいるんだけどね、くふふ」
    「変なこと言ってないで、ほら、寝るわよ。ちゃんと歯をもう一回磨くことを忘れずにね」
    「はーい」
    ムツキがアクビをしながら洗面台に向かった
    お腹が膨れたら眠くなってきたようだい
    「さて、私も後片付けして寝ましょうか。あ、カヨコとハルカにメモを残しとかないとね」
    『チーズリゾットを作ってます、温めて朝ごはんにしてください 陸八魔アル』
    「じゃあ、アルちゃん先に寝るねーおやすみ」
    歯磨きを終えたムツキが声をかけてくる
    「おやすみなさい、じゃあ、また明日」
    「うん、また明日」

  • 48二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 19:43:56

    素晴らしい…
    ムツキのいたずら心とアルちゃんの真面目さがよくわかる

  • 49二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 20:00:04

    最後にメモ残しておくのがいかにもアルちゃんって感じ

  • 50二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 20:02:20

    今日は業務日誌とこのSSで幸せ便利屋成分が摂取できて大変満足
    スレ主文章うまいなあ

  • 51二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 20:17:23

    >>12

    めっちゃ仲良さそうでほっこりする

  • 52二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 21:10:20

    家庭料理をサッと作れるの凄いよね
    贅沢言わないから、俺の母になって欲しい

  • 53二次元好きの匿名さん24/12/13(金) 21:40:57

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 05:53:55

    出生月的にハルカとそう変わらないのに便利屋のお母さんが似合うアルちゃん

  • 55二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 06:08:22

    今回のSSで社員一順したけど日常風景も少し見たい…
    スレ主、飯テロの柱になれ

  • 56二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 12:52:33

    続きを願って保守

  • 57二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 22:22:16

    寒いしみんなでお鍋とかつついてるのが見たいねェ〜
    書けないけど〜

  • 58二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 10:19:40

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 13:16:19

    良いスレだ……とても良いスレだ

  • 60二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 23:29:10

    漫画でもそうだけど、なぜアルちゃんは料理が上手いという共通認識があるのか

  • 61二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 04:16:43

    アルちゃんは母ちゃんみたいなイメージあるからそこからかな
    でも実際はトラブルメーカー的立ち位置だから何故そんな印象受けるのか不思議

  • 62二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 11:09:12

    アルちゃんには包容力や器のデカさがあるからな

  • 63二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 21:43:11

    陸八ママ…

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