- 1主24/12/14(土) 19:16:19
- 2二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:18:23
実家に連れていく前にちゃんと話し合えよ
- 3二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:18:48
おう、続き書くんだあくしろよ(控え目に言って最高)
- 4二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:19:32
なるほど理解した
書け - 5主24/12/14(土) 19:19:57
- 6主24/12/14(土) 19:20:57
「もう一年も終わり、か~」
先生とシャーレで仕事をしていたある12月の夕暮れ、先生がふとそんなことを呟いて伸びをした。
「色々ありましたが、"もう"と言うほどですか? 今年は濃密な一年だったので、私はやっと……という感じですけど」
私はシャーレに置いているマイマグカップにコーヒーを淹れながら先生にそう告げると、先生は「んー」と声を漏らして机に突っ伏した。
「いやぁ、そうだよねぇ……私も学生の頃は一年が長く感じたよ、ああやだやだ。こういう些細なところで歳を重ねたって実感しちゃうんだよなぁ」
少し籠った先生の言葉を聞いてクスリと笑みが浮かぶ。
最近の先生は、少し先生っぽくないところがあるというか……自惚れかもしれないが、私の前では少し甘え気味で、幼さを垣間見せてくれる場面が増えたと思う。
実際他の生徒の前では、最初にキヴォトスで出会った時とは見違えてしまうくらいキチンと先生をしていて、こんな風にダランとした姿はあまり見せていない筈だ。
私への信頼の裏返しだと思うと、図らずも口角が上がってしまう。 - 7主24/12/14(土) 19:21:36
こんな感じで書いていこうと思うが、どうか。
書き溜めしてあるので、すぐ投稿していく予定 - 8主24/12/14(土) 19:23:43
「10年はデカいよ10年は……あ、ユウカ私にもコーヒー淹れてくれる?」
「はいはい」
私のマグカップとお揃いの先生用の物に手を伸ばし、コーヒーを淹れる。
「……そういえば、先生は年末年始はどう過ごされるのですか? ご家族とか――恋人さんとか」
最後の言葉は、少し言うか迷った。
先生にそういった特定の異性がいるという話は聞いたことが無いし、恐らく生徒の中で一番時間を共有している私もそういった素振りを見たことが無い。
でも、気になって言葉にせずにはいられなかった。
「クリスマスにシャーレでパーティーをした男だよ? 私。恋人なんているわけないじゃないか、あーでも、実家には顔を出しておかないとなぁ……」
先生はなんでもないといった風にそう告げる、私は恋人がいないという事実を再確認できたことが嬉しくて、内心でスキップをしながら淹れ終わったコーヒーを先生へ差し出す。
「ご実家……というとキヴォトスの外ですか」
「ん、そうそう」
上体を起こし、私が持ってきたコーヒーを啜りながら先生はそう言って窓の外へ視線を向けた。
「私の地元はこことは違って銃と無縁な社会でね、家の傍には田んぼが広がっていて、少し車を走らせると東京っていうD.U.みたいな場所に行けるんだけど、子どもの頃は中々行けなかったからその田んぼで泥まみれになりながら遊んだものだよ」
「そうなんですか……」 - 9主24/12/14(土) 19:25:02
泥だらけで遊ぶ子どもの頃の先生を想像すると、少し笑みが零れた。
(きっと可愛かったんだろなぁ……)
「そういうユウカは年末年始どうするの?」
窓の外を見ていた先生が椅子をくるりと半回転させ、私に向き直る。
「んー、そうですね。本当は先生と初詣に……って、違います! すみません!」
幼い先生のことを考えていたばかりに、正直な言葉が意図せず口から洩れる。
顔の温度が上がったのを感じ、少しブカッとしたジャケットの袖で顔を隠した。
「はは、そっかユウカと初詣かぁ……帰省とかはしないの?」
先生は私の羞恥心など知りもしないのか、少しだけ笑みを浮かべてそう問いかけてきた。
私はそっと腕を降ろし、顔を隠すのを止めてプイとそっぽを向く、今は先生の姿を直視出来る気がしなかった。
「私は、そうですね……セミナーの仕事でもしておくことにします」
ビルの隙間に映る夕陽を眺めながら、ポツリと呟く。
本当は先生と過ごすために年末年始は休む予定だったが、あいにく今年は帰省の予定は無い。
かといってすることも特にないし、休み明けに膨大な業務をしてしまうくらいならば年末年始休まずに仕事を片していた方が良いだろう。
少し、がっかりとした気持ちが胸の中から込み上げてくる。 - 10主24/12/14(土) 19:25:50
「ユウカ、セミナーの仕事で忙しい中、ただでさえ積極的にシャーレの仕事を手伝っているのに……私が言えたことじゃないかもしれないけれど、少し休んだ方がいいんじゃない?」
チラリと横目で先生を見てみれば、本当に心配してくれているようで、それがたまらなく嬉しかった。
我ながら、簡単な女だと思う。先生の一言一言にこんなに心を揺れ動かされて、ちょっと嬉しい言葉をかけられれば、舞い上がってしまいそうになってしまうのだから。
「ありがとうございます。でも先生だって普段から凄い量のお仕事をされているんですから、私たちと先生ではそもそも肉体の強度が違うんですから、私がセミナーで処理している業務量レベルの仕事をこなしているのがそもそもおかしいんですよ?」
私はそう言ってマグカップに口を付ける。
ただ一言、ありがとうございます。とだけ伝えられればいいのに、余計な小言を挟んでしまうのは本当に悪い癖だ。
何故か先生が相手だと、妙に照れてしまって余計な事を言ってしまう。
そんな子供っぽい癖が、私は嫌いだった。
「ははは、まぁ。それはそうかもだけど……」
先生がいつものように、少し困ったような顔で笑う。
私はその表情が好きで、嫌いだ。
大人だから、先生だからと、まるで本心を覆い隠すような困った笑み。
その顔で何かを言われてしまえば、断れないし、怒れないし、甘えてしまいそうになる。
すごく、卑怯だと思う。 - 11主24/12/14(土) 19:26:42
「……まったく」
私たちの間に、静寂が流れる。
窓の外から聞こえてくるのはヘリのローター音や、銃声。
キヴォトスでは日常のことだ。
心地の良い沈黙を先に破ったのは先生だった。
「もし、さ。ユウカ、本当に何の予定もないなら、私と一緒にキヴォトスの外にいってみる?」
「……ぇ?」
全く予想していなかった言葉に、私は弾かれたように先生の方へ顔を向けた。
先生はいつもと同じ、にこやかな笑みを浮かべて私を見ている。
いつもと同じ、そのはずなのに段々と顔が熱くなって、自分自身きっと今とんでもなくだらしない表情をしているのだろうと、何となく分かる。
「どう、かな? いっいずれにせよ! キヴォトスから一人生徒を連れて行く予定だったんだ――というか連邦生徒会から念押しされていてね、キヴォトスの代表兼私の護衛だってさ。もしユウカが良いなら、それをお願いしたいんだけど……」
少し上ずった先生の言い方が気になったが、つまりプライベートなお誘いでは無く、あくまで仕事ということ。
普段の私であればその事実に少し肩を落とし、拗ねたい気持ちになるところだが、キヴォトスで一人の生徒に私を選んでくれた。
先生の実家に、私だけが付いていける。
それがあまりにも現実感が無さ過ぎて、まるで夢心地のように私の脳が麻痺してしまう。
一瞬呆けてしまったが、私は直ぐにハッとして頭を振った。
「も、勿論同行します!」 - 12二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:27:55
圧倒的感謝...!!
- 13主24/12/14(土) 19:28:34
「良かった、最初からユウカに来て欲しかったから助かるよ」
その言葉が、私の脳天からつま先までをまるで落雷のように貫く。
嗚呼――。
改めて気付いてしまう、私たちは先生と生徒、だから自然とどこかで蓋をしていた自分の感情。
気付いていたのに、意識しないように努めていた感情が、強引に引っ張り出される。
嗚呼、本当にどうしようもなく。
――私は彼に恋をしているのだ。
―――――
――――
―――
――
― - 14主24/12/14(土) 19:29:28
感想助かる……
- 15主24/12/14(土) 19:29:38
先生の帰省当日、D.U.の駅で待っていると背後から先生の声がした。
「やぁユウカ」
振り返ってみれば、普段のシャーレの正装とは異なり、黒いトレンチコートを風に揺らす先生がこちらへ駆け寄ってくる。
片手にはお土産屋さんの紙袋を持っていた。
「ごめんごめん、待ったかい? ちょっとレジが混んでてね」
「いえ、私も先ほど来たところなので、大丈夫です」
嘘だ。
もうここで1時間は待っている。
でも、何かの漫画で読んだお決まりのセリフが言って見たくて、そんな言葉が口から出た。
「そっか、じゃあ行こうか」
先生はそう言って私の隣を歩き出す。
私の心臓はもうバクバクだった、微かに雪が降る駅のホームで、隣には先生が並んで歩いている。
そして私は今日先生と一緒に、先生が生まれ育った場所に行こうとしているのだ。
他の生徒に見られたら何と言おう、終ぞノアにすら先生と帰省することは話していない。
見られたら面倒だなという気持ちと、誰かに見られて欲しいという願望が内心でせめぎ合う。 - 16主24/12/14(土) 19:30:46
やがて、私たちの乗る電車がホームに停まる。
先生と一緒に電車に乗り込み、素早く移り変わっていく車窓を眺めたり、先生の為に作ってきたお弁当を一緒に食べたり、今年あった出来事を話しながら、私たちは心地よい電車の揺れに身を任せた。
「あ~~~、つっかれたぁ……なんで移動ってだけでこんなに疲れるんだろうね?」
「姿勢を長時間維持することによる血流の悪化や筋肉の拘縮のせいですよ、トレーニング部の部長が以前教えてくれました」
先生が言っていた東京という街の駅に着く。
キヴォトスでは見慣れない様々なものが直ぐに視界に飛び込んできて少し面食らってしまうが、先生の呟いたささやかな疑問に対する答えを直ぐに出せるくらいには落ち着いているようで安心した。
「へー、スミレが? じゃあそうなんだろうね」
チクリと小さな針が心臓を差すような感覚。
間違いなくここに先生といるのは私なのに、先生の口から別の女性の名前が出るだけでこれだ。 - 17主24/12/14(土) 19:31:46
「じゃ、ここからは私に付いてきてね」
そんな事を考えていれば、先生がそう言って私に手を差し出す。
「せんせい?」
その手の意味が分からず、先生の顔を見上げると、先生がまたしても困ったような笑みを浮かべた。
「あー、人が多いし知らない土地だろうから手を繋いだ方が良いかなと思ったんだけど……ごめん、嫌だったかな」
その言葉に、私は一気に体温が上がるのを感じた。
キヴォトスよりも寒いはずなのに、まるでポケットの中のカイロの温もりがじんわりと広がっていくときのように、先ほどまで考えていた嫉妬が絆されていく。
「いえ……その、はぐれたら大変ですから」
そう言って私は先生の手を取る。
もう冬の気温など消えてしまったかのようで、私はまるで春の最中にいるようだった。 - 18主24/12/14(土) 19:32:39
「ただいま~~」
D.U.を彷彿とさせる大都会から先生の運転で車を走らせ約2時間。
私は目の前で戸を開ける先生の背を眺めながら、まるで自分のモノではないかのように大きな音で鳴り続ける心臓の音を感じながら、大きく深呼吸をした。
(ここが、先生のご実家……)
あまりキヴォトスで見かけることの無い造りの一軒家、いつか行った百鬼夜行自治区で似たような構造を見たことがあるかもしれない。
そんなことを考えていれば、パタパタとスリッパが地面を蹴る音が聞こえて来た。
「あらあらあら、思ったよりも早かったのね! おかえりなさい」
にこやかな笑みを浮かべながらそう告げるのは、おそらく先生のお母さまだろう。
先生越しに私を見つけたのか、目が合った。
「あ~らまぁまぁまぁ! キヴォトス? から生徒さんを連れてくるとは聞いていたけれど、まさかこんなに可愛らしい子だなんて! 貴女、お名前は?」
玄関でサンダルに履き替えた先生のお母さんは、自分の息子などお構いなしに私の元へと駆け寄って手を握る。
「あ、は……早瀬ユウカと申します。初めまして」
「あ~らあらあら! まぁまぁ、可愛らしいわねぇ。本当にお人形さんみたい!」
「母さん、ここじゃなんだろ……早く入れてあげなよ」
お母さまの後ろで先生が苦笑いを浮かべる。
「あら、全く私ったら! そうね! ささっユウカちゃん早く入って入って!」 - 19二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:32:48
ユウカが可愛くて良い…!
さりげない気遣いできるの流石先生ね - 20主24/12/14(土) 19:33:33
そこからはあれよあれよという間に家の中に通され、キヴォトスでの先生の事を色々と聞かれたり、こちらでは見かけないのだというヘイローの事など、色々なことを聞かれた。
そして帰ってきた先生のお父様にも挨拶をし、私が居ても良いのかという疑問すら抱くことなく、先生のご両親は私を歓迎してくれる。
一緒に夕飯を食べ、お風呂も借りた。
まるで先生と家族になったような、そんな気がする――。
お風呂上り、そんなことを考えていれば「ユウカちゃん」とお母さまがリビングからひょっこりと顔を出して私に手招きをする。
「どうかされましたか?」
「お茶、一緒に飲まない?」
「是非、ありがとうございます」
先生のお父様はリビングのソファで酔っぱらって寝てしまった、当の先生も大分酔っていたようだが今は私と入れ替わりでお風呂に入っている。
今このリビングは私とお母さまの二人っきりだ、思えばお母様と二人のタイミングは無かったな……と出されたお茶を飲みながら考えていると、どこかおずおずとした様子でお母さまが口を開いた。
「それで、ユウカちゃんはその――あの子と付き合ってるの?」
「ブフッ!?」
思いもよらなかった言葉に、淹れて貰ったお茶を吹き出す。 - 21二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:34:35
えっ 今日はあにまんで先ユウを読んでもいいのか!!
- 22主24/12/14(土) 19:34:45
「あっ、すみません! というか私と先生は付き合ってません! あくまで先生と生徒……そ、それに私は護衛ですから! ので!」
慌てて謝るが、お母さまはただフフッと笑って「いいのよ」と言うだけだった。
どこかその微笑みは、先生の面影を感じさせる。
「ち、因みに何故そのように……?」
私が少し咳き込みながらそう聞くと、お母さまはお茶を一口飲むと口を開いた。
「あの子が、家に女の子を連れてきたのは初めてなのよ……あの子ったら、今まで付き合ってた子だって連れて来たことないよの?」
そう言ってどこか懐かしそうな表情のままそう笑うお母さまを見て、また少し心がチクりと痛む。
(そりゃ、先生だもん。元カノの一人や二人――)
しかし、私の心の陰鬱は次のお母さまの言葉でまるで跡形も無くどこかへ吹き飛んでしまった。
「でもね、あの子今の職場に行ってから私に電話でこう言ってたのよ。次に家に連れて行く子は、大事な人だ……って。だから私てっきり……」
お母さまの言葉に混乱してしまう。
"大事な人"それは果たして生徒という意味なのか、それとも――。
思案を巡らせれば巡らせるほど、顔が紅潮していくのを感じた。 - 23主24/12/14(土) 19:35:08
距離感は頑張った……です!
- 24主24/12/14(土) 19:35:42
- 25主24/12/14(土) 19:36:07
「は~、いいお湯だった……って、何してんの?」
ふと背後から先生の声がする。
私は自分の肩が大きく跳ねるのを感じ、まるで油の差されていないブリキ人形のようにギギギと振り向いた。
「あ、せんせい……」
「今ユウカちゃんとガールズトークしてたのよ! ガールズトーク!」
私が口ごもっていれば、お母さまがアハハと笑いながらそう告げる。それを聞いた先生は溜息を零した。
「全く、あんまりユウカを困らせないでくれよ? 母さん。ユウカも、付き合う必要は無いからね? 私は先に休ませてもらうからユウカも早く寝るんだよ」
先生はそう言って欠伸をしながら階段を上っていく。
「ふふっ、そうね。ユウカちゃんも長旅で疲れたでしょうし、今日はもう寝ましょうか。部屋はあの子の隣を使ってね?」
「あっ、はい……」
本当は、もう少しさっきの話を聞いていたかったが、今の状態ではちゃんと話を聞く自信が無かった私は素直に頷く。
そして用意された部屋に向かい、布団にバタンと倒れ込んだ。
"大事な人"
お母さまが言ったあの言葉が、頭の中でグルグルと巡る。 - 26主24/12/14(土) 19:36:39
気分転換に夜風に当たろうとベランダに出れば、ビュウと駆ける夜風が頬を撫でた。
髪を抑え、ふと横を見る。
「あれ、ユウカ」
そこにはベランダでシーツを羽織り、煙草の煙くゆらせる先生が立っていた。
「え、なん……え、たば……え?」
突然の出来事に言葉が上手く出てこない。
「あちゃー、生徒には煙草秘密にしてたんだけどな」
先生はそう言って少し無邪気な、それでいて普段見せるような困った笑みを浮かべる。
ようやく少し落ち着きを取り戻し、やっと理解した。このベランダは先生の部屋と、私が使っている部屋で繋がっていたのだ。
(それにしても、先生……煙草吸うんだ)
ふと、煙草を消そうとする先生を制止する。
「あ、吸ってて……大丈夫です。というか、吸っててください。その、煙草吸うとこ、見てたいので」
我ながら何を言っているのだろうと思うが、やはり喫煙している先生は新鮮で。
闇夜に溶け込むように煙を纏う先生はどこか蠱惑的に感じられた。
「え? ま、まぁユウカがそう言うなら――」
先生はそう言って、煙草に口を付けてフッと煙を吐き出した。 - 27主24/12/14(土) 19:37:36
「……眠れないの?」
優しくそう聞かれる。
「いえ……その、考えることがとても多くて」
「もしかして、母さんからなんか言われた?」
「いえ、大丈夫です。とてもやさしい方ですよね、お母さま」
「うん、まぁね……ユウカを紹介出来て良かったよ」
短い会話のキャッチボールの中、先生がそんなことを口走った。
きっと、ただ自分が面倒を見ている生徒を紹介できてうれしいだとか、そういう事の筈なのに、先ほどのお母さまの言葉のせいでどうしようもなく期待してしまう。
「それは、どういう……」
ふと、身体震えてくしゃみが零れる。
「あちゃー冷えちゃったね、部屋に戻ったら?」
先生が煙草の火を消して苦笑いを浮かべていた。
一瞬そうしようかとも思ったが、私は一歩踏み出してみる。
今までならきっと出来なかった選択、この選択で何かが変わるなんて期待はしていない。
それでも、恋心を見ないふりして、変に取り繕って、自分のことなのに、まるで観測者を気取っていた私ではできなかった選択。
不思議と心臓の鼓動は落ち着いていて、感情は凪のよう。 - 28主24/12/14(土) 19:37:57
「そっち、行ってもいいですか?」
「え?」
私は先生の答えを聞く前に、先生が羽織るシーツの中に身を包ませた。
先生の匂いがするシーツに覆われ、先生の身体に密着し、その体温を全身で感じる。
少し、煙草臭かった。でもそれも、私しか知らない新しい先生なのだと思うと、頬が綻ぶ。
「ちょ、ユウカ?」
困惑した声を上げる先生を無視して、私は自分の肩をピタリと先生に当て、頭をコツンともたれかかる。
「先生、お母さまが言ってました。次にここに連れてくる子は、大事な人だと、仰っていたそうですね」
「なっ」
私の言葉に、先生がうろたえる。
少し早かった先生の鼓動が、段々と速くなるのが伝わってきた。
「それは、大事な――生徒という意味ですか?」
私の問いかけに対して先生は短く息を吐くと、胸ポケットから新しい煙草を取り出して火を付けた。 - 29主24/12/14(土) 19:38:38
「ユウカが……卒業したら、教えてあげるよ」
そう告げる先生の横顔は、身長差と闇夜のせいでどんな表情を浮かべているのか私には見えなかった。
でも、耳たぶまで真っ赤な様子だけはしっかりと見て取れる。
「……はい」
夜風に吹かれ、闇に浮かぶ星々と月だけが私たちを見ている。
寒空の中、先生と身体を寄せ合って温め合う――そんな中で、私はまた想わずにはいられなかった。
嗚呼、本当にどうしようもなく。
――私は彼に恋をしているのだ。 - 30主24/12/14(土) 19:39:51
ここまで!
読んでくれてあざす、もしこんなシチュで後日談見たいとか、こういうシチュの書いてほしいとかあれば、後学のために教えて欲しいです!
ありがとうございました~~! - 31二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:41:25
良い…甘酸っぱくて良い…!
耳赤くしてる先生や嬉しそうにしてるお母さんも良いですね! - 32主24/12/14(土) 19:42:18
- 33二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 19:42:29
- 34二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 22:55:07
めちゃめちゃいい…それ以外言葉が見つからない…
- 35二次元好きの匿名さん24/12/14(土) 23:31:10
こんなに良いSSを読んだのは2年と4ヶ月ぶりだよ
- 36二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 11:15:52
SS乙でした!
よいぞ…よいぞ……! - 37二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 16:40:09
ラキスケが起きてお互いにずっと照れるやつか、ラキスケが起きてノアあたりに見られて誤解されるシチュを思いついたので書いて欲しいですお願いします!
- 38二次元好きの匿名さん24/12/16(月) 01:32:35
いちゃいちゃを! 一心不乱の大いちゃいちゃを……!!