ここだけ病弱コハルその6

  • 1124/12/15(日) 11:41:26

    興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ

    体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。

    現在ついに水着パーティー突入……?

  • 2124/12/15(日) 11:41:54
    初代スレ
    ここだけ病弱コハル|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す季節の変わり目でも風邪で熱を出す筋肉つかないし体力もほとんどないので前線張るのはムリ日焼けで黒くなるんじゃなくて赤くなるくらい肌も弱いそれでも憧れは止められないので正実には入るし…bbs.animanch.com

    その2

    ここだけ病弱コハルその2|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す季節の変わり目でも風邪で熱を出す筋肉つかないし体力もほとんどないので前線張るのはムリ日焼けで黒くなるんじゃなくて赤くなるくらい肌も弱いそれでも憧れは止められないので正実には入るし…bbs.animanch.com

    その3

    ここだけ病弱コハルその3|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。えっちなことにも興味あ…bbs.animanch.com

    その4

    ここだけ病弱コハルその4|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。えっちなことにも興味あ…bbs.animanch.com

    その5

    ここだけ病弱コハルその5|あにまん掲示板興奮するとすぐ熱を出す……どころか心臓発作を起こすくらい虚弱で病弱なコハルが主人公のエデン条約編再構成小説スレ体は弱くて脆いけど、原作同様正義感は強いし代わりに学力が上がってる。現在ミカと先生の秘密の…bbs.animanch.com

    詳しいことは上記参照

  • 3124/12/15(日) 11:43:09

    【注意事項】

    ・原作批判、またはそれに繋がりかねないレスはお控えください。原作シナリオに言いたいことがある場合は別スレたててね!

    ・所詮二次創作であり落書きです。内容を間に受けないでください。展開に多少の粗があっても大目に見てね!

  • 4124/12/15(日) 11:44:50

    大変お待たせして申し訳ない……突貫で続きを書き上げたので投稿するよー誤字脱字があると思うけど大目に見てねー


    初見の人は何がなんやらだと思うから>>2の過去スレ参照してね


    では行くよー!

  • 5124/12/15(日) 11:46:23

    ドドドドドドドドッ!

    激しい雨音が合宿所の窓を打ちつける。昨日の快晴から打って変わり、4日目は朝から天候が悪かった。
    それを見ながら、溜息を1つ。今日は外に出られなさそうだ。まあ合宿所を出る用事もないのだが。

    「あうぅ……結構降ってますね」

    「そうですねぇ……」

    私の独り言に、パタパタと部屋を動き回っていたハナエちゃんが反応してくれた。お忙しいところにすみません……。
    現在、起きているのは私とハナエちゃんだけだ。他の皆は……

    「アズサちゃんもハナコちゃんも、まだ起きられそうにないですね……」

    私の視線の先には、「ん……んん……」と身動ぎするアズサちゃんと、いまだ夢の中にいるハナコちゃんの姿が。ハナコちゃんは昨夜の事で色々張り詰めていたものが切れたか、安心したように眠っているし、アズサちゃんは昨夜も何処かに行っていたようだ。今までほとんど寝ていないようだし……どちらにせよ、もう少し寝かせてあげたい。
    まあこの2人は大丈夫だろう。その内起きる。問題なのは……

    「……」

    「……コハルちゃんは、大丈夫ですか?」

    コハルちゃんの頭に氷嚢を乗せるハナエちゃんを見ながら、私はつい問いかけた。

  • 6124/12/15(日) 11:47:04

    今までの無理が響いたか、コハルちゃんは朝から熱を出した。今朝一度起きたのだが……明らかに顔が赤く、ハナエちゃんが熱を測れば、体温計は37.0を記録していた。コハルちゃんの平均体温は低いらしく、一般人には微熱でも彼女にとっては普通に高い温度とのことで。……ハナエちゃんがいてくれて本当に良かった。テキパキとスムーズに対処する姿は流石救護騎士団と言ったところか。

    「今のところは熱だけですから、ゆっくりお休みさせれば何とか、と言ったところですね。今までのあれやこれやで疲れも溜まってたんでしょう。……本当のところ、一度連れ帰ってちゃんと診てあげたいところなんですが……」

    ティーパーティーが……と、苦い顔をするハナエちゃんから、思わず目をそらす。一度発作も起こしているし、ここでコハルちゃんが離脱すればしばらく帰ってこないだろう。試験に間に合わせるのは絶望的と言ってもいい。そうなると、ティーパーティーの目的が私たちの退学である以上、「全員合格ではない以上、残念ですが皆さん退学ですね……」と言われかねないのは私でも予想できる。コハルちゃんの体調をわかっている上で補習授業部に入れているのだ、それが条件緩和の理由になるとはとても思えない。
    ……ナギサ様、どうして……何故こんな真似を……

    「はぁ……こんな時、ミネ団長がいてくれたら話は早いんですが……今の惨状を見たら、間違いなくティーパーティーも救護されるでしょうし」

    「『いてくれたら』って……いないんですか?」

    救護騎士団のミネ団長と言ったら、あの人しかいない。蒼森ミネ。【救護騎士団】の団長を務めるトリニティ総合学園3年生。……なんといったらいいのか、ものすごくアグレッシブでフットワークの軽い人だ。私は会ったことはないが、話は聞いたことがある。『ミネが壊して団員が治す』という言葉は、このトリニティにおいてあまりにも有名だ。
    そんな彼女が、いない? 

  • 7124/12/15(日) 11:47:43

    「……はい。あまり表沙汰にしてはいけない話なんですが……ミネ団長は現在、行方不明なんです。どこをほっつき歩いているのか……連絡もなく、突然ぱったりと……こんな時、団長がいてくだされば、政治的にもティーパーティーを牽制できるのですが……」

    ティーパーティーを牽制……? 救護騎士団は確かに大きく歴史も長い部活だが、そこまでの影響力があっただろうか?
    一瞬疑問符が浮かぶが、朧気に聞きかじった記憶が浮かび上がる。確かミネ団長って……

    「……? ――ああ、団長はヨハネ分派の首長でもありますので。政治的な影響力も強いんですよ。団長自身は救護活動を優先されて政治的に動かれることはほとんどないんですけどね」

    こちらの疑問に応えて、ハナエちゃんが解説してくれた。なるほど、確かに聞いたことがある。というか「あれでもう少し大人しくしてくれれば……」と、ナギサ様が嘆息をつかれていたことまで覚えている。……ナギサ様……。
    にしても、ミネ団長は一体どこへ行ったというのか。あれだけ救護活動に情熱を注いでいた人が、それを放り出して失踪するなどとは考えられないが……。

    「んん……」

    考えていると、アズサちゃんがまた寝返りを打った。寝苦しいのだろうか。

    「……アズサちゃん。今までの早起きは、無理をしていたんでしょうか……」

    「枕が変わるだけで眠れなくなる人もいますからね……どんなに小さいことでも、環境の変化は侮れませんよ? 睡眠は大事です! というわけで、もう少し寝かせてあげましょう。どのみち皆さんこの有様ですから、午前中は何もできませんし。外もすごい天気ですからね!」

    ピカッ!

    ハナエちゃんの発言とともに、窓から一瞬強烈な光が差し込んだ。少し遅れて、けたたましい音が響く。

  • 8124/12/15(日) 11:48:30

    「あうぅ……なんだか雷まで……」

    「んん……?」

    「あ、ハナコさん。おはようございます!」

    強い光にさらされたせいか、ハナコちゃんが目を開いた。ハナエちゃんの挨拶に「おはよう……ございます……」と、目をしょぼしょぼさせながら応えている。……こんなにぼーっとしているハナコちゃんは珍しい。それだけ良く眠れたのだろうか。

    「……今の光は……?」

    「ああ、雷です。今日は朝から天気が悪くて……うひゃあっ!」

    話している最中に再び雷鳴が轟き、思わず身を竦める。「今のは近かったですねぇ」じゃないんですよハナエちゃん! 今かなり大きい音でしたよ!? なんでそんなのほほんとしてられるんですか!? ううぅ……私が怖がり過ぎなんでしょうか……

    「雨……確かに、すごい音が……」

    ぼーっとした表情で窓を……正確にはそこから見える外を見つめるハナコちゃん。顔立ちが整ってるせいかとても絵になる光景だ。……しかし、次第に目を見開いていき……突然ガバっと立ち上がった。

    「……! いけない!」

    「ハナコちゃん!? どうしたんです突然「洗濯物がまだ外に!」え? ……あ゛!?」

    「……あちゃー。すっかり忘れてましたね……」

    そうだ、そう言えば昨日洗濯をして……その後外に干して、そのままだ。いかんせん昨夜の出来事が濃すぎてすっかり忘れていた。
    弾かれたように部屋を飛び出していったハナコちゃんを追いかけて、私も部屋から転がり出る。窓に打ち付けられる雨音は強烈で、やむ気配などない。私達はそんな荒れた天候の中、外へと飛び出すのだった。

  • 9124/12/15(日) 11:48:52

    「んんっ……ダメ……可愛いものが……ふわふわで……それは、よくない……ん?」

    慌ただしく2人が出ていったあと、可愛らしい寝言を口走っていたアズサさんが起きた。まだ眠いのか、目をパチパチさせている。

    「おはようございます! アズサさん」

    「おはよう……? あの2人は?」

    「あー……それが……」

    外の荒天の騒々しさとは対照的に、部屋の中では私とアズサさんの会話、そして静かに寝息を立てるコハルさんの呼吸音だけが響いていた。

  • 10124/12/15(日) 11:49:40

    「えー、それでは……」

    真っ暗な部屋の中。中央に置かれた小さな石油ストーブの明かりに照らし出された、ヒフミ先輩が口火を切った。心なしか目が死んでいるように見える。

    「『第一回補習授業部仮装パーティー』を始めます……どうして、こんなことに……」

    巨大ペロロ着ぐるみに収まったヒフミ先輩が、そう言ってさめざめと嘆いていた。嘴から顔を覗かせる構造になっていて、部屋が暗いのも相まってなんか食べられてるみたいになってて怖い。その横で、頭からシーツをかぶってまるで古典的な幽霊スタイルになったハナコがパチパチと拍手している。それにあわせて、良くわからないままとりあえず拍手する体操着姿のアズサと、拍手しておいてあげようと優しい顔のハナちゃんが続く。……え、なにこれは。
    起きたばかりの私は、意味不明な状況に思わず思考が止まってしまった。



    時は遡ること40分ほど前。

    「――こ、これで全部、ですね……」

    「これは……見事に全滅ですね。泥もはねちゃってますし、洗い直しが必要そうです」

    「あうぅ……いま着てる体操服も、中までびちゃびちゃです……」

    「途中で転んでましたからね、ヒフミちゃん……」

    荒天の中、どうにか洗濯物を回収してきた私とハナコちゃんは、ハナエちゃん、起きていたアズサちゃんと一緒に被害状況を確認していた。
    案の定、干してあった洗濯物はぐしょぐしょに濡れていた。はねた泥が付着しているものもあり、とてもじゃないが着れたものじゃない。寝間着がわりに着ていた体操服も、途中すっ転んだせいでだいぶ酷い有様になっている。最悪だ。

  • 11124/12/15(日) 11:50:29

    「……ごめんなさい、つい失念してしまって……私が纏めて洗おうなどと言い出さなければ、こんなことには……むぐっ!?」

    「んもうハナコちゃん! 後悔ばっかりしないって昨日話したじゃないですか! 未来予知できるわけではないんですから、こんな豪雨が降るなんて誰もわかりません!」

    「ヒフミの言う通りだ。洗濯はもう一度すればいいし、服は着替えてしまえばいい。そんなに気に病むことじゃない」

    「そうですよ! 濡れた服のままだと風邪を引いてしまいますし、そうなるとハナエちゃんの負担が尋常じゃなくなるので、まずは早く着替えちゃいましょう」

    またも後ろ向きにこじらせだしたハナコちゃんの口を塞いで、フォローをねじ込む。アズサちゃんも続いて援護射撃してくれた。もーほんとにハナコちゃんは、手がかかりますね……。

    とりあえずいつまでも濡れ鼠ではいたくないので、着替えることを提案すると、同じくびしょ濡れのハナコちゃんは小さく笑って同意した。

    「……ありがとうございます。そのとおりですね、髪も乾かさないと……」

    ハナコちゃんも前向きになったので、さあ早く着替えようと自身の荷物に手を伸ばす……あれ? あれ、あれ? え。嘘。

    「……? ヒフミ、どうかしたのか?」

    「き……着替えが、もうありません……」

    しまった、今日乾くだろうと思って本当に全部洗濯に出してしまっていた。今着ている体操着が最後の砦だったのだ。

  • 12124/12/15(日) 11:51:10

    「……あ、私ももうないですね」

    「私も今着てるのが最後だ。予備はない。あったとしても、2人にはサイズが合わないだろう」

    「私は予備がありますけど、コハルちゃん用のしか……皆さんとはサイズが合いませんね」

    ハナコちゃんも予備がなく、他2人は私やハナコちゃんより小さいので服を貸してもらうこともできない。……終わった。

    「こ……こうなったら、もう下着姿でやるしか……?」

    「早まらないでくださいヒフミさん! ほぼ全裸だとどのみち風邪を引きますよ! とりあえず暖房効いてるこっちに来て!」

    あとタオルです、それは脱いで、これで水気を拭いてください。

    そう言って差し出されたタオルを受け取る。ありがとうございますハナエちゃん……!

    「……とにかく、まずは洗濯しなおして、終わったらドライヤーで乾かしましょう。しばらくは下着姿でいるしかないですが、バスタオルでも巻いておけば多少マシになるはずです」

    濡れた服を脱ぎながら、ハナコちゃんが方針を纏めた。特に異論もないので、それに従って行動する。……うう、早く乾くといいんですが……。

    洗濯機に洗濯物を突っ込んでしばし。下着姿でうろつくわけにもいかず、私たちは部屋でおとなしくしていた。

    「……酷い雨だな。まったく止みそうにない」

    窓辺から外の様子を見ていたアズサちゃんがポツリと呟く。雨音は相変わらず激しいままで、合宿所の窓を打ち付けている。コハルちゃんの寝息くらいしか音のしない部屋の中とは対照的だ。天気予報では大雨だなんて言ってなかったのにぃ……。

  • 13124/12/15(日) 11:52:17

    再び光が走り、遅れて炸裂音。ま、また雷が……変なところに落ちないといいんですが……。

    それがフラグにでもなったのか。――突然辺りが真っ暗になった。へ? な、何事ですか!?

    「……停電、のようですね。落雷によるものでしょうか」

    ハナコちゃんの冷静な声に合わせるように、何か大きな音がする。確認してくる、とアズサちゃんが止める間もなく部屋を出ていった。この真っ暗な中よく動けるものだ。

    「……問題が発生した。洗濯機が止まってる。そのうえ蓋も開かない。困った」

    「うえぇ!?」

    戻ってきたアズサちゃんが報告してきたのは、しばらく下着姿でいなければならないという最悪の状況だった。ほ、本当にどうしてこんなことに……踏んだり蹴ったりです……。

    「うぅ……しばらく服が着れないと思うとなんだか寒く感じてきました……」

    「……寒く? ……まっずい」

    「……ハナエちゃん?」

    ハナエちゃんの様子がおかしい。声のトーンが深刻だ。一体どうしたというのか。ハッとした様子のハナエちゃんは焦った声で指示を出した。

  • 14124/12/15(日) 11:52:55

    「――今すぐ毛布を集めてください!」

    「へ? ど、どうしたんです?」

    「停電ということは、暖房も止まったということです! 外はあんな状態ですし、これからどんどん冷え込みますよ! 私たちはともかく、コハルさんが……!」

    「!」

    「集めてくる。ここから動かないで」

    「服がどうこう言っている場合ではありませんね。私は先生に連絡を」

    一気に状況が逼迫した。ハナコちゃんは携帯を掴み、アズサちゃんは再び部屋を出ていこうと扉に向かう。と、とりあえず私は部屋の毛布を全部コハルちゃんに被せておきましょうか。

    【停電が起きたみたいだけど、みんな大丈夫……何があったの?】

    その時、部屋の扉が向こうから開き、懐中電灯の光が差し込む。先生がほぼ全裸の私とハナコちゃんを見て酷く困惑していた。



    「――それでまあ、先生にも手伝っていただいて色々やって、落ち着いたのですがやることがなく、そのうちハナコさんが「パジャマパーティーしましょう!」とか言い出しまして……今に至ります」

    「私が寝てる間にそんなことになってたの……」

    訳がわからない私に、ハナちゃんが説明してくれた。熱で浮かされてる間に、随分と色んな事が起きたみたいだ。私の体で気を使わせちゃったみたいだし、ちょっと申し訳ない。良く見たらいくつもの……というか大量の毛布が私の体に被せられている。なんか重いなと思ったのはこのせいか。これ合宿所中の毛布をかき集めてきたのでは?

  • 15124/12/15(日) 11:53:56

    「ありがとう、皆。おかげさまでだいぶあったかいよ」

    「い、いえいえ! とりあえず停電が収まるまではその状態でいてくださいね」

    「……意識もはっきりしてますし、今朝よりは大丈夫そうですね。薬も効いてきましたかね? 一旦お熱測りましょうか」

    ハナちゃんから手渡された体温計を脇に差し込む。しばらくして表示された温度を見ると、36.7と表示されていた。うん、まだ高めだけど、朝よりはマシだ。

    「それにしても、気になってたんだけど……ヒフミ先輩のそれは、どっから取り出してきたの?」

    「これはですね!」

    「うわテンションの差が凄い」

    私が問いかけると、ヒフミ先輩の声のトーンが急に上がった。最初からわかったけど、長くなるなこれは……

    「だいぶ前に、イベント限定品として作られたものでして! あまりの大きさに採算性がなく、ゆえに作られたのもごく少数! かなりの貴重品なんですよこのペロロ様着ぐるみは!」

    「ああうん……知りたいのはそこじゃなくて、どうやって持ってきたのかなんだけど……」

    「? 普通にリュックに入れて持ってきてましたけど?」

    「入ったの!? その大きさが!?」

    どう見てもリュックに入り切る大きさじゃないんだけど!? え、ヒフミ先輩の言うリュックっていつも持ってるペロロ様リュックよね。あの白いの。あれに入ってたの……!?

  • 16124/12/15(日) 11:54:41

    「流石にそのままだと入りませんよ? 圧縮してビニールに入ってたんです。お布団みたいに。……うう、貴重な品だったので着たくなかったんですが、流石に下着一枚だと寒くて……」

    「ああなるほど……」

    真空パックされてぺちゃんこになったペロロ様を想像する……ちょっとだけ、見た目が可哀想に思えた。それにしても、そんなものまで入ってるとは。いったい他には何が収められているというのだろうか、ヒフミ先輩のリュックは。何が出てきても不思議じゃないよねここまでくると。
    というかついさっき死んだ目してたのは貴重品を着ざるを得なかったことに対してだったのね……。

    「ところで、パジャマパーティーって言ってたけど……」

    「ええ。正確には『仮想パーティー』になりましたが。服もなければ、停電も起きて、もうやることがろくにないので……こうなっては、パジャマパーティーならぬ仮装パーティーでもするしかないですよね♡」

    「あうぅ……な、何か他にもありそうな気はしますが……」

    シーツのお化け……発起人のハナコが楽しそうに話す横で、ペロロヒフミ先輩が消極的に突っ込みを入れる。なんてカオスな光景なの……ここだけゲヘナにでも鞍替えした?

    「授業をするにしても、こんな状況じゃやりづらいことこの上ない。……こんな落雷程度で全部の建物が機能不全だなんて、ひどいセキュリティだ」

    「ま、まあ古い建物ですから……」

    「……予備電源の一つくらいあると思っていたんですけどね。患者を突っ込むならそれくらい頭回してほしかったですが。業者いれてるんですし」

    「ハナエちゃん……!?」

    予想打にしないところから毒を吐かれて、ヒフミ先輩が驚いていた。あーうん、救護騎士団にとってはそうなるよね……私も予備電源はあると思っていたから、聞いたときちょっと驚いたのだ。まあヒフミ先輩の言う通り、古い建物だから仕方ないのかもしれない。

  • 17124/12/15(日) 11:55:28

    「建物のことはともかく、こんな風にみんなで集まって、話を咲かせる時間こそ、合宿の花だと想いませんか? みんな寄り添って、お互いの深い部分をさらけ出し合う……雨も降っている上に停電で何も見えませんし、雰囲気は最高です!」

    明らかにテンションの上がった様子で喋るハナコ。……うん。そうだね。
    昨夜のハナコの話を思い返す限り、こういうことも初めてなんだろう。ペロロ様にシーツに体操服と、仮装パーティーというには少々適当だけれど、きっとジャック・オ・ランタンも苦笑いで見てくれるはずだ。……何故シーツを被っているのか、その下には何を着ているのかについては、聞かないほうがいいんだろうね。予想が正しいなら、私に気を使った結果だろうし。

    「あ、あはは……確かに、合宿の定番という感じはしますね」

    「なるほど、それがこの仮装パーティーと」

    「……アズサ。言っておくけど、合宿で仮装パーティーはかなり珍しい例だからね? これが基本じゃないからね?」

    「まあパーティーといってもただのおしゃべりですし、話題も何でもありということで♡ ふふ♡ 私、こういうことすっごくしてみたかったんですよね。なのでちょっとテンションが上がってると言いますか……」

    ちょっとどころじゃなく上がってると思うよ? そう思ったけど口には出さない。水を差したくないしね。

    【ハナコ、本当に楽しそうだね】

    先生が穏やかな声で呟いた。うん、昨日みたいな暗い顔されるよりはよっぽどマシかなと思う。昨夜体力を使った甲斐もあったというものだ。

    「気持ちは分かる。私もなんなら、補習授業部に入って以来ずっとそういう気持ちだ」

    「あら、そうなんですか?」

    「うん。――何かを学ぶということも、みんなでご飯を食べることも、洗濯も掃除も……その一つ一つが楽しい」

    「あら……♡」

    ……アズサ。やっぱり、アリウスの環境は私が思うとおりなのか。それとも、もっと酷いのか……。トリニティ育ちの私には、想像することもできない。

  • 18124/12/15(日) 11:56:07

    「水着は泳ぐときに着るものだと、ここに来てから学んだが、こんな活用方法があるなんてこと初めて知った。知らなかったことを知れるということは、楽しいことだ」

    「み、水着の件はちょっと違うといいますか……」

    「でも、動きやすいし通気性も良い。ハナコがこれを着て歩いてたというのも納得がいく」

    「あ、アズサちゃん、ちょっとこっちへ……」

    ……ああ、やっぱり。ヒフミ先輩に引っ張られるアズサを横目に入れつつ、思わずハナコの方を見る。今この場に、水着を着ているだけの人物はいない。……ハナコ、その下、やっぱり水着なのね。シーツを被ってるのは、以前の件が尾を引いているのだろう。もう気にしなくていいのに、というのは、あまりにも自分本位の考え方だろうか。……ハナコの方から気を使ってくれてるんだし、今この場では何も言わないでおこう。

    「……失礼した。あとはコハルと勉強するのも楽しい」

    「……? 私?」

    少しして戻ってきたアズサが、話を変えるように私について言及した。楽しいって、いろいろ迷惑かけてた覚えしかないんだけど……

    「うん。ハナコもそうだが、コハルも色々と知っていて、教科書に載っていないやり方も教えてくれる。点数が上がったら褒めてくれるし……」

    「発作とかで迷惑かけた覚えが強いんだけど……そう言ってくれるなら、嬉しいな。役には立てた?」

    「うん。本当にそうだ」

    そう言ってにこりと、アズサは輝くような笑みを浮かべた。……やっぱりアズサは天使の生まれ変わりかもしれない。マリーさんに言ってみようかな?

  • 19124/12/15(日) 11:56:37

    「アズサちゃん……最初はあまり表情の変化も読み取れなくて心配でしたが、よかったです」

    ヒフミ先輩がホッとしたように息を吐いた。

    「――勿論ヒフミもだ。本当にいつも世話になってる。ありがとう」

    「……! あ、アズサちゃん! うわーん!」

    「むぎゅっ。……ひ、ヒフミ。少し息苦しい」

    感極まったヒフミ先輩……巨大ペロロ様がアズサに抱きついた。はたからみるといたいけな少女を襲う化け物の絵面だ。B級映画にありそう。……もう少ししたら止めようかな。あ、ハナちゃんが写真撮ってる。

  • 20124/12/15(日) 11:57:07

    その後も、補習授業部一同は話に花を咲かせた。

    「――そう言えば、今トリニティのアクアリウムで、『ゴールドマグロ』という希少なお魚が展示されているらしいですね」

    「あ、それ私もパンフレットで見ました! 『幻の魚』と呼ばれているんですよね?」

    ハナコがそんな話題を提供して、ヒフミ先輩がそれに食いついた。ヒフミ先輩も意外と色々詳しいよね、ペロロ以外にも。
    それにしてもゴールドマグロかあ……確か、突然変異で体色が黄金色になったマグロだっけ。ホワイトタイガーと同じく、いやそれよりもそうそう誕生しない希少種だとか。人生で一度は食べてみたいって"あの子"が騒いでたっけ。希少種だって言ってんのに、ほんとに食欲に忠実というか……。所属してるらしい部活が部活なので仕方ないか。あの子以上に食い意地張ってるというか、食に情熱注いでる子はそういないし。
    ……部活で思い出したけど、まさかこっちに来ないわよね? 今条約前でピリピリしてるから下手なことするとえらい騒ぎになるんだけど。よりによってゲヘナの部活だし……でも前科あるからなぁ……。

    「はい。トリニティ近海で発見されたらしく。一度見に行きたいのですが、入場料も安くなくて……」

    「海、か。……そういえば、一度も行ったことないな」

    「そ、そうなんですか? 一回も……?」

    アズサの発言に、ヒフミ先輩が驚いていた。そういえば、私も行ったことがない。……この体で行っても仕方ないしね。来世に期待しよう。

  • 21124/12/15(日) 11:57:55

    「――それで、とっくに壊れたアミューズメントパークなのにも関わらず、夜な夜な騒がしい音が聞こえてきて……」

    「……雰囲気ぶっ壊して悪いけど、不良が騒いでるとかじゃない?」

    「丑三つ時にですか? ……まあ、私もそういう噂として聞いただけですが……」

    「……気になるな。今度偵察にでも行ってこようか」

    「あ、あはは……アズサちゃん、あまり無茶しないでくださいね」

    「善処しよう」

    「アズサちゃん!?」



    「……そういえば、又聞きした話だが、キヴォトスの何処かに水着姿で覆面を被っている犯罪集団がいるらしい。合理的な服装だ」

    「いやただの変態の集いなんじゃ? というか、水着に覆面の時点で既に犯罪者集団だし……あれ? ヒフミ先輩どうしたの?」

    「……………………うえっ!? な、なんでもないですよ!」

    話題が水着になった時点で黙り込んだハナコはともかく、なぜかヒフミ先輩まで喋らなくなった。え? なんで? 先生も目を逸らしてる気がするし……。

  • 22124/12/15(日) 11:58:47

    「アズサちゃんはもっと、きちんと夜眠ったほうがいいと思いますよ」

    「……うん。今朝は寝坊して迷惑かけてしまった。慣れない場所で寝坊なんて、これまでほとんどなかったのに……。――もうここは、『慣れない場所』じゃないからかもしれないな」

    ……まあ、早起きしていたら洗濯物の回収を手伝って二次被害が広がってたかもしれないし、結果オーライということで。

    「……とにかく、もっとしっかり寝たほうがいいです。深夜の見張りは減らしていただいて」

    「……? 見張り?」

    「ああ、毎晩夜中にちょっと見張りを……」

    そう言って目をそらすアズサ。……見張り、ね。いったい何をそんなに警戒しているというのか。……警戒すべき理由がある? それとも、単なる方便?

    【ハナコ、アズサのこと凄く心配していたよ】

    「そうなのか……? ごめん。実は見張りは言い訳で、ブービートラップとかを設置していたんだ」

    「ブービートラップ……? どうしてそんなことを?」

    「心配しないで。ここに悪意を持って侵入しようとするルートにだけ設置してるから。普通の生活をする上では、安全面に問題はない」

    ハナコの疑問に、アズサは答えになってない応答をする。ハナコが聞きたかったのは、単なる合宿所にそれほどの警戒網を敷くのは何故かってことだったんだけど……アズサは天然さんだから、煙に巻きたいのか素で応えてるのかイマイチ判断がつかない。
    あと昨日のマリーさんの一件からすると安全とは言い難い気もする……

  • 23124/12/15(日) 11:59:48

    「……。なるほど……ですが、それならそれで教えてくれると嬉しいです。どうしても、心配しちゃいますから」

    「そうか。うん。これからは気をつける。私のせいで、先生や皆が被害を受けるのは望むところじゃないから」

    応えてくれないと判断したか、穏やかに話を打ち切りに入ったハナコに対して、アズサも穏便に収めた。……あとでどこに何を仕掛けたのか聞いておこう。昨日のマリーさんみたいなことに私がなったら普通に死んでしまうと思う。

    【アズサは優しいね】

    先生の感想に、アズサは顔を赤くした。

    「なっ……こ、子供扱いしないで、先生。私は別に、そんなのじゃない。――それに」

    私はいつか、裏切ってしまうかもしれない。皆のことを、その信頼を。……心を。

    「……」

    「アズサちゃん……?」

    アズサ……。

    心のなかで、私は呟く。……状況証拠は揃ってる。ナギサ様が睨んでるように、この中に本当に裏切り者がいるとしたら……それは、アズサの可能性が最も高い。
    だけど、あくまで状況証拠でしかない。まだ確定には至っていない。……私には、今までのアズサの笑顔が、こちらを欺くためのものだとは思えない。私は、アズサを信じたい。

    その時、天井から唐突に光が差し込んだ。部屋の混沌とした状況が分かりやすくなる。改めて見ると相当カオスよね……。

  • 24124/12/15(日) 12:00:17

    「あ、電気が……」

    「直ったみたいですね」

    「暖房も、バッチリ動いてますよ! いやーよかったです本当に……」

    ホッとした様子で、ハナちゃんが息をついた。今まで私の体調を気にかけてほとんど喋らなかったもんね。ごめんね本当。

    「あ……雨も止んでる」

    ふと窓を見ると、降り続いていた豪雨は収まり、太陽の光が外を照らしていた。ヒフミ先輩が窓を開けてみると、チチチと鳥が鳴く声が聞こえる。

    「では、もう一度改めて洗濯しましょうか」

    「うん、じゃあ第一回補習授業仮装パーティーはここで閉幕か。2回目も楽しみにしてる」

    「あはは……ペロロ様が傷んじゃうので、2回目はちょっと……」

    ヒフミ先輩が困ったようにそう呟いた。うーんコレクターの鑑。

    そんなこんなで洗濯し直して、時は過ぎ、穏やかに一日を終えた。

    ……かに見えた。

    結論から言うと、私の熱がぶり返した。

  • 25124/12/15(日) 12:02:19

    今日はここまで! 投稿詐欺みたいになって本当に申し訳ありませんでした……仕事納めしたら落ち着くと思うので、それまでは今回みたく投稿すると言ったのにできない時もあると思います。
    ご迷惑をおかけしますが、必ず完結させますので(少なくとも2章までは)気長にお待ち下さい……ひぃんほんとにごめんよー

  • 26二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 12:15:32

    年の瀬はどうしても忙しいから仕方ないね
    過去スレ読み返したりしてお待ちしてますー

  • 27二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 12:27:10

    投稿お疲れ様です

    それはそうとやっぱりこの世界線でもファウストフラグが立っていたか。

  • 28二次元好きの匿名さん24/12/15(日) 22:27:35

スレッドは12/16 10:27頃に落ちます

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