【ウマ娘ss】シリウスシンボリと泰然自若のトレーナー(スレ立て初心者スマン)

  • 1二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:03:22

    スレ立て初心者なんだが、ssの供養をさせてくれ。

  • 2二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:06:41

    どうぞ。なんでタキオン…?

  • 3二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:08:05

    スレ画のそいつはシリウスではないんだが

  • 4二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:10:31

    供養と言いながら何故ssをあげないんだい?

  • 5二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:12:04

    …専属契約を、解除して欲しい。」

    その声は、凛としていた。

    誰よりも誇り高く、誰よりも強い……そして、誰よりも聞き慣れた、その声。

    遠くから、がむしゃらに走る少女達の声が聞こえる。季節外れの蝉達が、気力を尽くして歌っている。

    「……ああ」

     俺は、誰よりも小さな音を絞りだした。
    彼女の碧い耳飾りがピクリと揺れた。

    どうやら、俺の音は放課後の交響曲にかき消されることなく彼女に届いたらしい。

    胸ポケットから黒いボールペンを取り出し、目の前のテーブルに差し出された契約解除書に、必要事項を書き込んでいく。

     彼女も俺も、何も言わなかった。
    使い古したボールペンの、掠れた音が室内に響き渡った。

    「……これは、私が出しに行くよ」
    「いや、流石に俺が行く。……担当としての、最後の責務だよ」

    書類をまとめ、小脇に抱える。
    ……思ったよりも軽い。ただの紙だから、当然なのだが。

  • 6二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:13:20

    「…………」
    「…………」

     沈黙だけが、その場を支配した。
    蝉の音も、ターフの声も、いつのまにか消え去っていた。

     インクを切らしたボールペンを芥箱に投げ込み、俺はトレーナー室を後にする。
    終に、俺は彼女の顔を見ることはなかった。

     高度を落とし始めた太陽が、天を紅く染め上げていた。



    その日、俺は元・シンボリルドルフのトレーナーとなった。

  • 7二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:13:51

     「どうした?シケたツラしやがって」

    ……契約解除、翌日。
    なんともなしに展望台からターフを眺めていたら、面倒なヤツに絡まれた。

    「……今は、授業中のハズだが? シリウス」
    「バックレてきた」
    「だろうな」

     ……シリウスシンボリ。
    そのカリスマ性を以て、多くの人バを魅了する実力者。
    一方で、ターフの占拠を初めとする突飛な行動の数々から、生徒会と対立を繰り返している学園有数の問題児だ。

    「アンタがサボりなんて珍しいな。何かあったか?」
    「ルドルフと契約解除した」
    「悪い、知ってる」
    「じゃあ聞くな」

     同世代の友人かのように話しかけてくるシリウス。
    彼女はそのまま、俺の隣に寄り添うように立った。

  • 8二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:14:29

    「……教室へ帰れ」
    「やなこった。こんな面白いコト、そうそう無いんだぜ?」
    「人の不幸を喜ぶな」
    「でもアンタ、不幸って顔してないぜ?」

     横を向くと、すぐソコにシリウスがいた。
    彼女の紅い目が、俺の瞳と交錯した。

    「……予感があった」
    「だろうな。端から見てても奇妙だったよ、アンタらの関係は」

    風が、落ち初めた木葉をさらってきた。
    夏場は程よく冷たいアルミフェンスが、今日はやけに冷たく感じた。

    「……理想論者についていくのは難しい。その理想がデカけりゃデカいほどな」
    「言うな、シリウス」
    「でも、キツくなったんだろ?」
    「元々、俺は場当たり人間だ」

    シリウスの方に体を向き直す。
    俺の方が少しばかり身長が高いので、見下ろす形になる。

    「……お前らと俺は、違う」

     チャイムが鳴った。
    校舎から、生徒達の騒がしい声が聞こえ始めた。
    俺は、何も言わずにターフへ向かった。
    シリウスも、何も言わずに着いてきた。

  • 9二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:15:02

    いつの間にか、彼女は俺を追い越していた。
    俺達は、何をするでもなくターフに沿って歩き続けた。
    しばらくすると、俺の背中は湿りはじめ、額から顎へと雫が伝っていった。

    「……悪かったよ」

    不意に、シリウスが口を開いた。

    「何が?」
    「アンタは、こっち側だと思ってた……覚えてるか?ココで初めてあった日」
    「……ああ、懐かしいな。エアグルーヴのあんな顔、もう見ることはないだろうよ」

    しっかりと整備された蒼い芝と、青い空のコントラスト。確か、あの日もこんな天気だった。

    「……どうして、助けてくれたんだ?」

    彼女の歩は止まっていた。
    俺達は、友人とも他人ともつかない程度の距離感で、再び向き合った。

    「……また、面倒なヤツが来たと思った。何て言ったって、アンタは皇帝サマのトレーナーとして有名だったからな」
    「不要な勘繰りだったな」

  • 10二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:15:28

    俺の言葉に、シリウスは軽く耳を絞る。
    「悪かったよ」
    「だったら黙って最後まで聞け……兎に角、アンタも他のトレーナーと一緒、ご丁寧に御教誨くださりに来やがった。って思ってた。……暫くしたら、エアグルーヴのヤツも来たからな。尚更ってヤツだ。」

    そこで、シリウスは言葉を切った。俺は黙ったまま、彼女の次の言葉を待つ。
    白い雲が太陽を隠し、大きな陰が俺達を覆った。
    体を伝った汗は冷やされて、全身の熱を取り去っていった。

    「だからこそ、分からないんだ。噓を吐いてまで、どうしてオレ達にターフを使わせてくれたんだ? 何が目的だ? ……教えてくれよ、トレーナー」

    風が吹いた。
    冷たく、強い風だった。しっかり大地を踏みしめないと、何処かへ攫われてしまう——そんな、風だった。

  • 11二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:15:49

    「―――、―――――――――、だ。……俺の論理は、常にこれだけだ」
    「――ッ!? 今なんて言った!?」

    どうやら俺達の代わりに、俺の言葉は風に攫われてしまったようだ。

    「話は終わっただろ。もうすぐチャイムが鳴る。……帰るぞ」
    「おい!? まだ答えが聞けてねぇぞ!?」
    「聞き取れなかっただけだろ。二度も同じことは言わない」
    「オイ! って、置いてくな!」

    気付けば、丁度ターフを一周したところだった。
    俺はシリウスを無視し、階段を登り始める。
    後ろから音が聞こえた。それが舌打ちだと気づいた時には、既にシリウスは俺を追い抜き、最上段で仁王立ちをしていた。

  • 12二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:16:17

    「……一つ、提案してやるよ」
    「なんだ」

    少し暗い天蓋の中、見下ろしてくるシリウスの紅が、爛々と輝いた気がした。

    「アンタ、俺のトレーナーに「いいよ、組もうか」……即答かよ……」

    あからさまに語気がすぼみ、耳を前に倒すシリウス。

    「もう少し悩んだりしろよ……」
    「別に悩む必要がない。今の俺が選べるのは二択。辞めるか、新しいパートナーを探すか、だ」
    「……ルドルフのことは良いのか?」
    「未練が無い。と言ったらウソになる」

  • 13二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:16:48

    張った足を前後に動かし、シリウスと近づいていく。
    ……その距離、段差三つ分。

    「だが……両人同意ゆえの解除だ。それに、彼女は強く、賢く、それでいて人望に厚い」
    「……否定できねぇな。それがまさしく、皇帝だ」
    「元担当だ。当然、彼女と共に歩めたことは一生の誇りだよ」
    「……ヘンなヤツだな、アンタ」
    「よく言われる。……それで、どうする?」

    一段、 二段と距離を詰める。
    ……残り、一段。

  • 14二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:17:18

    視線が絡み合う。お互いの眼球は動きを止めた。
    逸らさないのか、逸らしたくないのか、逸らせないのか……そこに、俺達の意志はいなかった。
    その代わりに、三次元と四次元が…いや、もっと多くの何かがそこにはあった。
    その間に永遠のような須臾が産まれた。

     最高のタイミングで、シリウスが口を開くのが分かった。
    俺は、既に返答を思いついていた。

    「……頂点を、見せてやるよ」
    「もう十分に見させてもらったが……」
    「誤解すんな、もっと上に決まってんだろ」
    「……面白そうだな」
    「ああ……取るんだよ、二人で」

    そうして、俺達は同じ位置に並び立った。

  • 15二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:17:58

     「はい、これで登録完了ですね」
    「ありがとうございます。たづなさん……昨日今日と、すいませんね」
    「いえいえ、お気になさらず。コレも仕事ですから……」

    シリウスシンボリとの契約書は、何とか受領された。
    ……が、人の耳とは早いモノで、既にあちらこちらで様々な噂が立っているらしい。

    「……大丈夫ですか?」
    「大丈夫ですよ。ルドルフの時からですし……正直、翌日にすら何を言われたか覚えてないですし」
    「……お強いんですね」
    「考えなしなだけですよ……それでは」

    身を翻し、理事長室の分厚いフレンチドアの前に立つ。

    「……一つ、聞かせてください。トレーナーさん」

    不意に、後ろから声がやって来た。
    俺は返事をせずに、ただ背中を向けて立ち続けた。

    「……トレーナーさんにとって、ルドルフさんとの三年間とシリウスさんとの三年間は、どのようなモノですか?」
    「……えらく抽象的な質問ですね」

    両方のドアノブに手を掛け、開く。模様付きの赤い絨毯が幾つかの照明と共に通路を彩っていた。

    「これは僕の論理ですが、――」
                         【終わり】

  • 16二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:19:34

    すまん!グダッた。サムネはちょうど手持ちがタキオンしかいなかったので使いました。
    今度はもっと準備してから来ます!
    ありがとうございました!

  • 17二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:25:42

    >>2すまん、手持ちの画像にタキオンしかおらんかったんです……

  • 18二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:26:04

    >>3本当に申し訳ない

  • 19二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 01:26:42

    >>4原稿の処理に手間取りまして…申し訳ない

  • 20二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 09:06:39

    空気感の描写が丁寧で良いと思う。
    宣伝用のスレに他薦しとくね。

  • 21二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 13:44:52

    >>20読んでくれてありがとうございます!

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