- 1二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:19:51
「はろん?ぼう?」
「ええ。ウララさんはゴールから200m毎に置かれた標識のことを知っているかしら?」
「うーん……。分かんない!」
「いい返事ね……。いい?ハロン棒は内ラチ……内側の柵沿いに立てられた標識のことよ。それぞれ数字が書かれていて、ゴールから数えて200m毎に1本ずつ立てられているの。ゴールから200mなら2、400mなら4、と書いてあるわ」
「そうなんだ!じゃあ、そのはろんぼう?を見ればあとどれくらいか分かるんだね!」
「そう。スパートをかけるタイミングの目安になるわね。もちろん、距離だけじゃなくてそのレースの展開次第でもあるのだけれど……。まあ、今はいいわ。とにかく、ウララさんも私と同じで差しが向いているようだから───」 - 2二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:20:20
ハルウララはそこでふっと我に返った。今はレース中、それも第4コーナーを抜けようかというタイミング。なんで今こんなことを思い出したんだろう、と一瞬思ったが、すぐにそのことも忘れた。こんなタイミングでレース以外を考える余裕があるはずも無かった。
最終直線に入るとみな一斉にスパートをかけ始め、ハルウララもまたそれに続く。後方に控えていたために体力は比較的残っていたようで、徐々に先頭との差は縮まっていた。しかし、このままではとても届きそうにない。
勝利を諦めるウマ娘も出始めるようなそのタイミングで、ハルウララはそれに目を吸い寄せられた。うんざりするほどいる前を走るウマ娘達でも、その先頭との絶望的ですらある距離でも無い。それは───。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:20:53
───最後のハロン棒がある地点からが勝負よ───
- 4二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:21:27
「───っ!」
瞬間、ハルウララは爆発的に加速し始めた。既にスパートがかかった状態からの更なる加速。文字通りの全身全霊。無意識の内にイメージしていたのは、幾度となく併走トレーニングを繰り返した友人の姿。
凄まじい速度で駆けるハルウララは先頭との距離をぐんぐん縮めていく。しかし、二重のスパートによる驚異的なスピードの代償としてハルウララの体力は急速に失われ、すぐ限界にほど近くなった。余裕を失ったハルウララは前を走るウマ娘の人数すらも把握出来なくなる。しかしそれでも彼女は足を止めなかった。首を下げなかった。
精神力だけで体を動かしていたような状態のハルウララだったが、遂にそれすらも限界を迎えてしまう。彼女は必死に意識を保とうとするが叶わず、次第に視界がホワイトアウトしていくような錯覚を覚えた。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:21:48
ハルウララの視界が戻った時に目に入ったのは、真っ青な空とそこに浮かぶいくらかの白い雲だった。彼女がダートの上に寝転んでいることを自覚するまでにはしばらく時間を要した。
そこに至るまでの経緯をなんとなくと言った具合で把握したハルウララは、今まで感じたことが無いほどの疲労感に驚きつつもゆっくりと体を起こした。未だに乱れたままだった呼吸を整えながら、ハルウララは掲示板を振り返る。そこに映った数字を持つ少女を称えるのが、レース直後の彼女の習慣だった。しかし、一番上の数字がどこにも見当たらない。困ったようにきょろきょろと周りを見回していたハルウララは、突然ハッとしたように自分のゼッケンを外した。そこにある数字と掲示板の数字とを何度も何度も見比べる。それは間違いなく、一番高いところにある数字と同じものだった。 - 6二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 10:24:26
- 7二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 11:15:49
キングも泣いて拍手してるんやろなぁ
- 8二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 11:26:01
ええもんみせてもろたわ
- 9二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 11:27:13
- 10二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 11:28:47
後方母親面で大泣きしてるキングが目に浮かぶ浮かぶ…
- 11二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 11:30:45
- 12二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 12:36:47
素晴らしいです!!
- 13二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 13:43:19
ふふふ、良かった優しい結末で…!