- 1風吹けば恋24/12/17(火) 17:22:48
最近、なんだか変だ。なんか、こう胸のあたりがガーッとする時がある。
例えば、トレーナーさんがわたしの事を褒めてくれてる時。勉強を教えてくれてる時。真面目な顔してトレーニングの相談をしている時。まあつまりはトレーナーさん関連の事柄で発生しているようで。
友人に聞いてもニヤニヤ顔で、はぐらかされたし。同室の後輩ちゃんに聞いても「応援してますね!」って変な事を言われたし。普通にダラダラ過ごしたい日々に、ちょっとした危機が迫っているのかも。ヤダなぁ、普通なのがウリですよわたし?
とはいえ原因は分かっているのでとにかく解決方法を探さなきゃ。タイミングよく明日はトレーナーさんとお出かけの日。もしかしたらそこで理由はわかるかも。
明日の準備をちょっとくらいはして、いざいざベットの中で。
朝。わたしにしては珍しくちゃんと起きれてしまったのでお出かけの準備。服よし、髪よし、持ち物よし。同じくオフなのでお休み中の同室ちゃんを起こさないように部屋を出る。
…トレーナーさん。可愛いって言ってくれないかな。 - 2風吹けば恋24/12/17(火) 17:23:15
待ち合わせの駅前に行くと既にトレーナーさんがいて驚き。まだ約束の時間じゃないのになぁ。とりあえず声をかけると少し驚いた顔をしてる。大方、わたしがちょっと遅れるとか思ってたんだろう。わざとらしく、むくれたフリをすると慌てていつもみたいにおだててくる。それがなんだかおかしくて。少しも怒ってないのに「許してあげます」なんて言ってみる。
今日の予定は映画にご飯にカラオケ。つまりはいつも通りのお出かけプラン。
何を観るかなんて決めてないけど、面白いのがあればいいなぁなんて思いながら映画館に向かう。
なんとなくで選んでみた映画は、俗に言うラブコメ。主人公とヒロインの距離が徐々に縮まっていく展開に胸がキュンとする。けれど、ヒロインの何気ない動きに既視感を感じる。主人公に会う前に髪型を気にしたり。お出かけで着ていく服にずーっと悩んだり。
なんだか、ここ最近のわたしみたいだけど。
……いやいやいやいやいや。
一度頭の中に生まれた謎はなかなか離れないもので。お昼ご飯のお好み焼きを作りながら頭の中でグルグルする疑問。
『わたしって、トレーナーさんに恋してるの?』
まあ、こんなわたしを見つけてくれて応援してくれる人だ。事実この人がいない日々は想像できない。けれど、それって『スキ』ってヤツになるのかな?憧れとか、尊敬って方なんじゃ?応援してくれる人に、あんまり格好悪いところみせたくないだけじゃ?
らしくもなくそんなことを考えているのです。 - 3風吹けば恋24/12/17(火) 17:23:49
「…ラクル。ミラクル!」
「…んぁい?どうしました?」
「どうしたって、お好み焼き。焦げそうだけど大丈夫か?」
「ん?んぇえ!うわ、ヤバい!」
そんな風に珍しく頭を使ったせいか、目の前の事をすっかり忘れてました。
ギリギリ焦げる前にひっくり返せて良かったけど。
美味しいの、ちゃんと食べてもらいたかったなぁ。
ご飯を食べてもなお浮かんだ疑問は脳内コースを周回中。これじゃあせっかくのお出掛けも集中できないからしばらくは何も考えないことに。
そう思って周りを見ると、目につくイルミネーションの飾りに聞こえる冬曲のジングル。
そういや世間はすっかりクリスマス気分。目の前に迫ってきているイベントにちょっと浮かれ気味。そっか、もうそんな時期なんだ。今年は何しようかなぁなんてことを考えて。
ふと思ってしまう。トレーナーさんはどうするんだろう。もしかして誰か過ごす相手とかいるのかも。
『ズキッ』と、不意に胸の奥に一撃。なんだろう、急に変な感じがする。なんというか、胸の奥を掴まれてる嫌な感じ。
「トレーナーさんって、クリスマスは何か予定とかあるんですか?」 - 4風吹けば恋24/12/17(火) 17:24:10
思わず口からこぼれてしまった言葉。あ、変な事言ったかも。慌ててあの人の顔を見ると、
「え、ミラクルのトレーニングだぞ?気合入れて頑張ってよ?」
なんて言ってくる。クリスマスにトレーニング⁉なんとまあ非道いヒトなのか。なんて思っていると態度にでてたのか、
「え、トレーニング後に遊ぶんじゃないのか?こっちである程度プランを立てていたけど…?」
って言ってくる。
なんだ、ちゃんと考えてくれていたんだ。流石トレーナーさん。よくわかってるじゃないですか。
というか。わたしと過ごす予定だったんだ。よかったー、そうならそうと言ってくださいよ。
不思議とさっきまで感じてた胸の痛みは、いつの間にかいなくなってた。 - 5風吹けば恋24/12/17(火) 17:24:22
ちょっとお店をぶらぶらと散策しながらカラオケへ。
カラオケのいかにもって感じの食事メニューに目を惹かれつつも隣の鬼軍曹が明日からの練習をいじってきそうなので、しぶしぶ我慢。
SNSで流行ってる曲だったり、何かのタイアップ曲とか色々なジャンルをお互い歌って、ちょっと休憩。次はなに歌おっかなーって探していると、今日見た映画の主題歌があった。
曲自体は何回か聞いたこともあったし映画にぴったりの、爽快感あるラブソング。
いいじゃん、これ歌おうっと。
いつものように歌うだけ。そう思ってたのに、なんでだろ。すんごい隣の人が気になってしまう。心臓もなんかバクバクしてるし、謎に顔も熱い気がする。
そんな調子なもんで音ははずすし、テンポも乗れないし。最後の方とかほとんどヤケになって歌っちゃった。やっちゃったなあ。
それでもトレーナーさんは楽しそうにしてくれて「今日の映画の歌かぁ」なんてしみじみと言う。そのちょっとした笑顔がなんだか眩しくて。歌ってよかったなあ、なんて思ってしまう。
…うん。やっぱり「そう」なのかも。
あー、でも、いやいやいやいや、まだわかんないじゃん? - 6風吹けば恋24/12/17(火) 17:24:51
「いやー、遊んだ遊んだ!楽しかったですねー」
「だな。これで明日からのトレーニングもまた頑張れるよなぁ?」
「あー、いや、どうでしょう…。明日は明日にならないと分からないというか…。」
なんて会話というか半分脅迫じみたこと言われながらの帰り道。
楽しかった時間にも限りがあるもので、そろそろ解散の頃合い。
あーだーこーだと今日の思い出を振り返りながら駅前に着いてしまう。
明日も会えるはずなのに、なぜかちょっと寂しいなぁ。
「じゃあ、ありがとうございました。また明日、トレセンで」
「ああ、気をつけて帰りなよ」
さようならをして、解散しようとすると。
「あ、待ってミラクル!」って呼び止められた。
「ん?どうかしましたか?」
「あー、いや、そのな…」
なんか珍しく歯切れの悪そうな感じ。どうしたんだろ。
「本当は朝会った時言えばよかったんだけど、タイミングなくて。その、な。
…今日のミラクルも可愛かったぞ」 - 7風吹けば恋24/12/17(火) 17:25:03
突然の爆弾。
何を。何を言っているんだこの人。普段のおだてる時には恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなく言うクセに。何ちょっと照れてる感じで言ってくるんだ、こっちも恥ずかしくなる!
なんて頭の中で叫んでみても、実際のところのわたしは。顔がカァーって熱くなって。
胸がガーっと暴れまわっちゃって。
「あ、ありがとう、ございましゅ…」
なんてふにゃふにゃした声しか出なかった。 - 8風吹けば恋24/12/17(火) 17:25:13
最後の最後で変な感じになりながらバイバイして、電車に揺られながら。頭の中じゃずーっとずっと、さっきの言葉が躍ってる。
確かに可愛いって言って欲しいなぁなんて思ったけど、いざ実際に言葉にされただけでこの始末。身体がふわふわ浮ついた感じがする。今すぐなんでか全力で走り回りたい。後先考えず、はじめからスパート切って。今なら好タイムだせるかもですよトレーナーさん?
なんて独りごちてみて。…うん。まあ、分かりました。
わたし、トレーナーさんのことが好きなんです。恋してます。
窓に映る自分の顔をふと見やる。『いつも通りのわたし』が見える。
けれど本当は違くって。新しい『恋するわたし』もここにいる。
はじめまして、恋心。
この恋はまだ、走り始めたばかり。
けれど心配はない。いつも通り走るだけ、でしょ? - 9二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:26:35
ヒシミラクル可愛いなあと思っても、ウチにはいないので書きました。
サンタさん、今年までにヒシミラクルを引かせてください。 - 10二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:30:30
ゆーっくり、ゆうっくりその想いを大事に温めて、気付きを得て出てくるのが「はじめまして」なのがとても良いですねええ
ひしみーの独白で進行してて、それでいてこう思うんだろうか、こういう例えをするんだろうかという練り上げがちゃんとしててするする読めました
これからも頑張ってほしい
俺もひしみーめっっっっちゃ好きです超可愛いですよね - 11二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:34:32
軽やかだけど薄っぺらくはない
ハデハデじゃないけど、無色じゃない
穏やかにさせるミラクルだけが持つ特別な何かがよく描かれて素敵でした
久々に怪文書書こうかしら - 12二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 17:35:56
デートから帰って来たと思ったら虚無顔で
まさか失敗したのか!?と思って声かけたら途端に表情ふにゃふにゃになってそこから5時間くらい惚気だすミラ子先輩と聞かされてわーきゃーと盛り上がる後輩のSSありませんか? - 13粗はゆるして24/12/17(火) 18:50:51
トレーニングから帰ってきて部屋に入ると、電気がついていなかった。
ってことはまだミラ子先輩、トレーナーさんとのお出かけから帰ってきてないんだ。
楽しんでるといいなーって思いながら。部屋の電気をつける。
「ただいまーぁぁああああ!?」
なんだっけ、なんか歴史で見た気がする、能?の仮面みたいな顔した先輩がベットに座ってた。なんなら私の叫びにも無反応だ。なんでそんな表情すらない顔で…?
いや待て。まさか、そうなのか。いやこんな顔になるなんて原因は一つしか考えられない。つまり…。
思わず涙が出そうになるが、泣けない。泣けるはずがない。何せ、一番泣きたいのはきっと先輩なんだ。
なら、後輩として出来ることは。
「…お帰りなさい、先輩。」
そっとしておくこと。そして傷が癒えるようにそばにいてあげること。
そう思いながら声をかけると、ゆっくりとこっちを向くミラ子先輩。油の切れたロボットみたいでちょっと怖い。
- 14粗はゆるして24/12/17(火) 18:51:14
「…ねぇ、ダンツちゃん」
ふいに、口を開く先輩。
「どうしましたか、ミラ子先輩?」
自分のできうる限り最大の微笑を浮かべる。いいんですよ、先輩。生きていく中でたまには休むことも必要です。
そっとそばに近づく。
そして、口を開く先輩。
「わたし、トレーナーさんが好きみたい」
「…はい?」
顔が急にゆるゆるになっていく先輩。いつも以上のダラダラ顔になっていく。
…思ってた答えとは違っててびっくりしたけれど。なんだかもっと面白い事になっていそう。
大急ぎでお風呂にご飯。一大イベント『ミラ子先輩とトレーナーさんのお出かけ』のお話聞かなきゃですから。
ささっとお部屋に戻って、そこからはもう恋バナ。
今日のことを聞かせてもらう。映画にご飯とか、あと色々。
「それでね、今度のクリスマスもお出かけするって!」
「えぇーっ!先輩いいなー!」
クリスマスにお出かけとか、ほぼデートでは?
そう口にしかけてふと思い出す。先輩、ようやく気持ちを自覚したのかな?
「そういや、先輩。トレーナーさんのこと好きなんですか?」 - 15粗はゆるして24/12/17(火) 18:51:24
そう言った途端に固まっちゃってるミラ子先輩。と思ったらちょっと照れたように、けどどこか嬉しそうな顔で、
「…うん。好き。」
この間まで聞いても「えー?どうなんだろ?」って答えてたのに。目の前には恋するオトメの顔する先輩。
「あの、ミラ子先輩!私、全力で応援しますから!」
思わずそう叫ぶ。するとキラキラした顔でこっちを向いて、
「…‼ありがと、ダンツちゃん!」
任せてください、友情サポート発生です。
そうと決まれば作戦会議。まずは目下に迫ったクリスマスデート。
トレーナーさんを落とせるように会議は白熱する一方。
…次の日、すんごい大遅刻。先輩、プールに連れてかれてました。
わ、私!応援してますから!
恋も!今日のトレーニングも! - 161224/12/17(火) 18:57:24
- 17二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 19:03:53
本当に普通なメンタルしてるミラ子だからこそ、いい
- 18二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 22:01:18
- 19二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 22:16:55
映画でカフェに気づいたときみたいなギャグポーズダンツが見える見える
- 20二次元好きの匿名さん24/12/17(火) 22:44:46
こういう〝ふつー〟の恋をするウマ娘っていいもんだね。いやまあ最初からつよつよで外堀埋めるタイプの駆け引きもそれはそれで好きだけど。