【SS注意】卒業間際、溢れる思い

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:13:11

    トレセン学園を卒業する。
    それはトゥインクルシリーズを走り抜けたということ。
    主役になりたいって私の祈りを、願いを、夢を、トレーナーさんは叶えるために手を引いて、傍で支え続けてくれた。
    皐月賞や日本ダービーで勝ちきれなくて、シルバーコレクターなんて言われそうになっても、私の夢をかなえるために一緒に頑張り続けてきた。
    そのおかげかGⅠ、それも宝塚記念で1着になった時なんて嬉しさのあまり大泣きしてトレーナーさんを困らせてしまったこともあった。
    トレーナーさんは私が頑張ったからだよ、なんて言ってくれるが、間違いなくトレーナーさんの───ううん、私とトレーナーさんだったから勝てたのだと信じている。

    そんなトゥインクルシリーズも引退し、卒業までの日々を過ごすうちに目をそらし続けていた事実には嫌でも向き合わなくちゃならない。
    卒業するということはトレーナーさんと別れるということ。流れ星に願ってしますような私の祈りを引き上げて主役にしてくれた人と別れなきゃいけない。
    ……嫌だなぁ。今まで転校のたびに友達と別れることはいっぱいあったのに、トレーナーさんとだけは別れたくない、なんて思ってしまう。
    ふと気が付くと、私はトレーナー室の前にいた。トレーナーさんのことを考えていたからか、無意識に足が向かっていたらしい。
    用事は特にないけれど、せっかく来たのだから今日はトレーナーさんと過ごそうとドアを開ける。

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:13:27

    「失礼しまーす!……お休み中でしたか、ごめんなさい」

    いつもなら仕事をしてても必ず出迎えてくれるトレーナーさんがソファで眠っていた。
    起こさないように慎重にドアを閉め、対面のソファに座り寝顔を見つめる。
    かわいい、なんて思っているとトレーナーさんからくしゅん、とくしゃみをした。
    くしゃみもかわいい……じゃなくて、暖房が付いているとはいえまだ3月、ブランケットも何もなしに寝ているから冷えているのだろうか。
    あたりを見回してもブランケットどころか毛布もない。このままでは風邪をひいてしまう───その時、閃いてしまった。
    ウマ娘はヒトよりも体温が高い。だから私が温めてしまってもいいんじゃないかなって。それに人肌は温まるって聞くし。
    頭の中でトレーナーさんを温める口実が急速に組みあがっていく。私はそっとトレーナー室の鍵を閉め、トレーナーさんを起こさないよう、横にそっと寝転がる。
    我ながら勢い任せにすごいことしちゃったな、なんて思いつつ頭の中でトレーナーさんを温めるためという言い訳をしていると、トレーナーが寝返りを打って私と向かい合う形になる。
    目と鼻の先にはトレーナーさんがいて、少し呼吸をするだけでトレーナーさんの匂いで満たされる。
    軽く抱き着いてみる。それだけでより強くトレーナーさんを感じてしまい、もっと、もっと欲しくなってしまう。
    これ以上はダメだ。そう思い起き上がろうとした時、それを聞いてしまった。

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:13:40

    「ダンツ……」

    トレーナーさんが寝言で私の名前を呼ぶ。気が付けば、私はトレーナーさんを押し倒していた。横向きに寝ているところから急に仰向けになった上に誰かに押し倒されているとなれば流石にトレーナーさんも起きてしまう。

    「……ダンツ?どうしたの?」

    状況を理解できないトレーナーさんがそう私に問いかける。その問いかけで熱で浮かされていた思考が急速に冷えていく。
    私は今、何をしているのか、何をしようとしていたのかということが頭を駆け巡り、後悔と羞恥心が心を満たしていく。

    「トレー…ナーさん……ごめっ…んなさ、い……」

    体から力が抜けそうになるのを耐えてトレーナーさんに謝る。

    「私、トレー、ナーさんと…別れ、たくない…」
    「ずっと…一緒に、いた、い、です」

    詰まらせながらも言葉が出てきてしまう。すぐにでもトレーナーさんから離れるために体に力を入れる。

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:13:56

    「ダンツ、待って」

    聞きなれた、そしてどこまでも優しい声が離れようとした私の体を止め、彼の両手がそっと私を抱きしめる。
    離れるために入れた力は抜け、頭を彼の胸に埋める。ポンポン、と彼の手が背中を優しくさする。

    「ダンツ、逃げなくてもいいんだよ」
    「…で、も」
    「もう一度、ちゃんと教えてほしいな。ダンツの気持ち」
    「……すき、です。トレーナーさん。ずっと、一緒にいたいんです……」
    「…ありがとう、ダンツ。……俺もダンツと一緒にいたい。添い遂げたい」

    ありえないと思っていた言葉に胸がいっぱいになる。
    行き場をなくしていた手をもう一度彼の背中に回し、抱きしめる。

    「気持ちに気が付いてあげられなくてごめんね。これから…これからもよろしくお願いします。」
    「よろしく…お願い、します……」

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:14:20

    「落ち着いた?」
    「はい……ご迷惑をおかけしました……」

    思いを通じ合わせた後、気持ちも落ち着いてきたころ、私は自分の醜態にしばらく悶絶していた。
    告白とは違って私個人の問題なのでトレーナーさんも下手に慰められず苦笑い。うう……恥ずかしい。

    「ダンツ、これからのことなんだけどさ」
    「?はい」
    「恋人らしいことは卒業してからね」
    「……え?」

    世間的にはまだ学生なのだから、というのはわかる。
    でも、思いを通じ合わせた直後だというのにこれはあんまりではないだろうか。
    なので、ちょっとしたいたずらをすることにした。

    「……わかりました」
    「ありがとうね。ちょっと心苦しいけどお願──」

    まだ話している最中のトレーナーさんに抱き着く。今度は軽くではなく思いっきり。
    トレーナーさんは動揺して声が詰まっている。ふふっ、大成功。

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:14:31

    「いいですもん。私からしちゃいま──」

    そう話してる最中、し返しとばかりにトレーナーから頬にキスをされる。

    「……あまり大人をからかわないの」
    「…ひゃい」

    …トレーナーさんに勝てるのはだいぶ先になりそうだ……

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:15:00

    どういうことだってばよ…

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:15:26
  • 9二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:16:46

    画面の向こうにこれを真面目に書いてる成人男性がいる事実

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:36:25

    ええやないですか。恋心に揺れるダンツの一人称も良きかな良きかな

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 01:40:14

    冒頭に書かれてたけど宝塚記念勝って大泣きしてるダンツフレームは容易に想像できる

スレッドは12/19 13:40頃に落ちます

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