【SS】カフェとトレーナーが誕生日に告白しちゃう話

  • 1スレ主22/03/07(月) 20:48:37

    2日遅れですがカフェの誕生日記念です

    「じゃあ改めて、カフェ、お誕生日おめでとう」
    「ふふ、ありがとうございます、トレーナーさん……」
    トレーナー室に置かれた小さな机の上に、これまた小さなケーキが2つ並べられている。そしてその隣には、もちろん2杯のコーヒー。
    「今ある豆はちょっと酸味のあるスイーツに合うらしいから、フルーツがいっぱい乗ってるのにしてきたんだ」
    「そうですね……煎り方もそれに合わせて、ちょっと浅めにしておきました」
    長いようで短かったトゥインクル・シリーズでの最初の3年間が終わり、少し気持ちにも余裕ができた頃。今日はカフェの誕生日で、俺たちはささやかながらそのお祝いをしていた。コーヒーから漂う穏やかな香りが心地いい。2人は思い出話に会話を弾ませながら、トレーニング後のひと時を楽しんでいた。
    「最初の頃は霊障も重かったけど、今じゃ大分落ち着いたな」
    「ええ。普通に過ごしていれば、ほとんどの子は大人しくしてくれるようになりました……どうしてなんでしょう?」
    「やっぱり、カフェの意志の力じゃないか?色んな経験を乗り越えて、しっかりした心を身につけたからここまで来れたんだ。本当にすごいと思うよ」
    「いえ、私は大したことはしていません……トレーナーさんの支えがなければ、私はとっくに自分を見失っていました……自分のことも、もっと褒めてあげてください」
    「それもそうだな。どうもありがとう。」
    「ふふっ……」
    カフェがやわらかく微笑む。3年という時を経て、彼女も随分と明るくなった。いや、こっちの姿の方が本来の彼女なのだろう。心の内を自分に向けて開いてくれている、その事実だけでどこか暖かい気持ちになれる。
    「俺はこれからも君のことを支えていきたいし、そうするつもりでいる。カフェが幸せでいれたら、俺も幸せなんだ」
    ずっと抱いていた感情が、自然と口から流れ出た。しかし、来るはずのカフェからの返答はない。少しばかりの沈黙の間、今口にした言葉をもう一度反芻する。

  • 2スレ主22/03/07(月) 20:49:09

    そっとカフェの方を向くと、彼女は手元のコーヒーカップに目線を向け、水面を黙って見つめている。何も言わない代わりに、その耳はプルプルと震えている。顔もこころなしか紅潮しているようだ。ちょっと言い過ぎたかもしれない、と思い、慌てて口を開いた。
    「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだ……あはは、これじゃあまるで告白みたいだな……」
    笑って誤魔化そうとするが、彼女はこっちを向こうともしない。しばしの間、気まずい沈黙が流れる。
    何分ぐらい経っただろうか。カフェはおもむろにコーヒーカップを机に置き、意を決したようにこちらを振り向いた。そして、途切れ途切れの声で話しかける。
    「……それが……アナタの……気持ちなんですね……?」
    「えっ?あぁ、うん……!」
    突然来た質問に曖昧な返事しか返せずにいると、カフェはそれに覆い被せるように二言目を発する。
    「……さっき言ったことは……本当に、本心から言ったことなんですね……?」
    その質問は、さっきよりも明快だった。俺は自信を持ってこう答える。
    「……ああ、それは間違いない。君のことを大切に思う気持ちに嘘はない」
    「……では……私も同じです」
    カフェはその金色の瞳でこちらをじっと見つめながら、そう続ける。青鹿毛の長い髪が、磨かれた宝石のように綺麗だ。
    「私も、アナタのことを愛しています。これが私の気持ちです」
    言い終わらないうちに、彼女は両手を広げ、倒れるようにこちらにもたれかかってきた。その体重をしっかりと受け止め、抱き抱える。

  • 3スレ主22/03/07(月) 20:49:36

    その瞬間、部屋全体がガタッと揺れ、蛍光灯が激しく点滅を始めた。慌てて辺りを見渡し、胸の中にいるカフェを守るように抱きしめる。数秒の後揺れは収まり、トレーナー室には再び元の静寂が訪れた。ひとつ違うことといえば、蛍光灯の明かりが1つ残らず消えていることである。
    「……"お友だち"の仕業?」
    「……はい……そうみたいです」
    「……えっと、電気……つける?」
    「……いえ、もう少し……このままで……」
    彼女はそう言いながら、さらに体を密着させた。心臓がどく、どくと鳴る音が伝わってくる。こっちの少し速まった鼓動も、きっとカフェに伝わっているのだろう。窓から差し込む夕明かりが部屋全体を包んでいる。日が沈みかける頃、まだ少し肌寒い季節に、伝わる体温が心地いい。そうしているうちに、次第に鼓動の高鳴りは収まり、2人の心臓はいつも通りのリズムを刻み始めた。
    「……ありがとう。俺も、君のことを愛してるよ」
    そう言いながら、右手で彼女の黒髪に触れる。小さな子供をなだめるかのように頭を撫でると、ふふっ、と、甘い笑い声が聞こえてきた。
    ふとちょっとした悪戯心が生まれる。カフェに気付かれないように右手の位置を少しずつ上にずらし、ふわふわとした耳の中にそっと触れてみる。
    「んっ……!?」
    体がビクッと震え、いつもより少し甲高い声が漏れる。
    「……んんっ、なにしてるんですか……」
    カフェは咳払いをし、ちょっと不満げに呟く。だが声のトーンからして、本気で嫌がっている感じではない。ブラッシングをするようにして、そのまま触れ続ける。
    とうとう我慢ならなくなったのか、カフェはくっついていた体を両手で押しのけた。最初と同じ、見つめ合うような位置関係に戻る。互いに目線を逸らそうとはしない。彼女は少しトロンとした表情になっている。2呼吸の後、2人は再び近づき、鼻先と唇を重ねた。彼女の白い肌は更に赤みがかり、薄紅色に染まっている。呼吸の音が伝わってくる。細かいザラメのような感触。エナメル質の硬さ。果物とコーヒーの味。

    ――幸せってこういうことなんだな、と思いながら、夜は少しずつ、更けていくのであった。

  • 4スレ主22/03/07(月) 20:50:04

    ありがとうございました。初投稿です

  • 5二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 20:51:24

    期待の新人だ!囲め!
    あと凄く良かったありがとう!

  • 6二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 20:52:11

    良質なトレカフェはいい…体が軽くなるようだ…

  • 7二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 20:57:33

    良い

  • 8お友達22/03/07(月) 21:03:57

    イッショウ・・・シアワセニナ・・・オフタリサン・・・

  • 9二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 23:00:21

    すき

  • 10二次元好きの匿名さん22/03/07(月) 23:01:34

    GOOD!

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