【SS】ジュンウイ書いてく

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:32:04

    タイトルとスレ画の通りです
    まったり書いていくのでよければくつろいでいってください

    エ駄氏無し、恋愛感情、濃厚なイチャラブ無しの普遍的な、お友達との友情を築いてくストーリー・・・
    になりそうな気がしています。
    スレ主は原作の味が一番好きなので関係性を大きく壊したくないので、もしかしたらミニストーリーや幕間でそういうこともあるかも・・・ くらいの温度感にしたいと思ってます。

    まぁ、そんな感じです。よろしくお願いします。

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:33:40

    ここはトリニティの一角に佇む古書館。
    キヴォトスに誇る中央図書館とは打って変わって建物の規模は小さく、利用する人は少なく、少し埃っぽくて薄暗い。
    しかしその貯蔵品の総合的な価値はトリニティ中央図書館すべての本を合わせても引けを取らないだろう。
    そんな古書館の主、古関ウイは先ほどまでデスクで古書の復元作業をこなしていたが、今は少し休憩しようと思い、コーヒーを淹れたところだ。
    デスクの一角でコーヒーカップから湯気が立ち上り、古書館内に芳ばしい香りが満ちていく。
    作業用のチェアに深く腰かけて背もたれに体重を預けると、皮を張った椅子の背もたれが、ギュ、と音を立てる。

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:35:22

    >>2


    コーヒーに口をつけようとしたその時、入口のドアが軋んだ音を立てながら開く。図書委員のシミコさんでも来たかな? と思い、ドアの方を振り向くと、見慣れない客人がいた。

    「お邪魔しまーす。うーん、やっぱここって図書館ではない・・・・・・わよね?」

    小さな背丈、赤い髪のツインテール、そして、ツノ。

    制服の肩にはゲヘナが誇る(誇れない)テロリスト集団『美食研究会』のワッペンが付いている。彼女はそのメンバーのひとり、赤司ジュンコである。

    「ゲ、ゲヘナがどうしてここに!?」

    ウイは思わぬ来客に狼狽える。

    ゲヘナの生徒がなぜトリニティに? しかも中央図書館ではなくこの、古書館に?

    なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?

    疑問符が止まらない。

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:39:58

    >>3


    その疑問にはやってきたゲヘナ生の方が答えてくれた。

    「い、いや、どうしてって・・・・・・普通に読書だけど・・・・・・?」

    「ゲヘナの生徒が読書・・・・・・? あ、ありえません!!この子たちを誘拐(強盗ともいう)しに来たのでしょう!? そうに決まっています!!」

    「お、落ち着いてってば! 本当にただ読書が趣味なだけで・・・・・・!」

    「つくならもっとマシな嘘をついてください! ゲヘナ生が読書なんてするわけないじゃないですか!! 中央図書館ではなくこちらに来たのはこの子たちの価値を知っていてのことでしょう!?

    たとえゲヘナのバンディットが相手だろうと命に代えてもこの子たちは守り切って見せます!!」

    ウイは修復中であった本の前に立ちふさがる。

    その立ち居姿は覚悟のある騎士のようにも見えた。しかしその膝は少し震えている。

    (でっか・・・・・・)と、ジュンコは思った。それもそのはずで、ジュンコの身長149センチに対してウイの身長は165センチもある。

    (あと失礼なヤツ・・・・・・)とも、ジュンコは思った。ゲヘナの生徒でも読書が好きな者はいる。パッと思い浮かぶのは万魔殿の戦車長くらいであったが・・・・・・。

    「ほ、本当に本を読みに来ただけなんだってば~~! ここに入ってきたのはコーヒーの匂いがしたからっていうか・・・・・・!」

    ウイの動きがはたと止まる。

    「・・・・・・コーヒー・・・・・・?」

    「この建物の前を通り掛かったときにね、なんだか良い匂いがするなーと思ってここに入ったの!」

    ジュンコはパッと笑顔を咲かせる。ジュンコの良いところは飲食が絡むときは大体笑顔なことだ・・・・・・それを台無しにされるまでは。

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:47:21

    とりあえず保守
    本文は今から読んでくる

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:53:54

    >>4


    「はぁ・・・・・・もしや本当にそんなことで・・・・・・?」とウイは本を庇うために精一杯に広げた腕を下す。

    「そんなこととは何よ! 私は美食研究会の会員なの、美食の匂いには敏感なんだから! 野生のトリュフを見つけたことだってあるのよ!」

    ふふん、と得意げなジュンコに対してウイは、何とも言えない面持ちで(人間の嗅覚でトリュフを・・・・・・?)と、さらなる疑問符を増やしていた。

    「とにかく、美食研としては味わっておかないといけないって思ったの! この香り、今までに嗅いだことないし、貴重な豆か特別なブレンドなんじゃないの?」

    ウイの強張っていた肩の力が少しだけ抜ける。

    「確かに、これは私が行きつけのコーヒー店の店主にオーダーしてブレンドしてあるオリジナルですが・・・・・・。

    香りだけで分かるとは・・・・・・さすが豚並みの嗅覚を持っているだけはありますね。

    美食を探求しているというのも、お遊びというわけではないようです」

    「今豚扱いした・・・・・・?」

    「ヘァ!? い、いえそんなことは・・・・・・一杯くらいなら、淹れてもいいですけど・・・・・・」

    苦し紛れなウイの話題転換だったが、ジュンコの瞳は輝いた。

    「えっ、ホントにいいの!?」

    「・・・・・・飲んだら帰ってくださいね・・・・・・」

    お湯を沸かすために振り向いたウイの後ろでやったー、とガッツポーズするジュンコだった。

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 00:55:07

    一旦ここまでにしておいて、続きは校正しながらになるのでゆっくり投稿になります。

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 01:20:11

    >原作の味が一番好きなので関係性を大きく壊したくない


    でもこのカプ原作で関わりないですよね?妙だな…

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 01:35:00

    >>8

    うーーーーーーーん、確かに(敗北


    し、しかしナギハルやフウミカが存在している以上ジュンウイだって存在していいはずです。

    ジュンコとウイは編成上でも相性良いし・・・・・・!(精一杯の抵抗

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 01:44:04

    >>6


    「あ、そうだ」というジュンコの声にまだ何かあるのかと振り向く。

    「私、赤司ジュンコよ、よろしくね!」

    弾けるような笑顔につい顔を背けてしまう。

    シミコもヒナタもよく笑顔を向けてくれる友人である、ジュンコはその二人とはまた少し違っているように感じられた。

    (あの二人はもっと、手元を優しく照らしてくれる暖かい照明のような人達、ですが・・・・・・この人の笑顔は・・・・・・まだ微睡んでいるときにカーテンを開けられた時の日光のような・・・・・・否応のない明るさ・・・・・・苦手です・・・・・・!)

    「古関・・・・・・古関ウイです・・・・・・どうせ今日限りの関係でしょうから、覚えていただかなくても結構ですが」

    そう言い捨ててウイは再びコーヒーを淹れる作業に取り掛かった。

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 01:45:56

    3時頃まで書く気だったけど>8に敗北して胃の具合が悪くなってきました・・・今日は寝ます・・・・・・・

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 08:54:01

    これはエデン条約スレ?

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 14:38:00

    >>12

    そういうこった!

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 14:47:14

    原作でまだ絡みないことの何が問題なのか…いつか絡むかもしれないじゃんね!
    続きを待機!

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 14:58:04

    気にするなスレ主!
    好きに書きたいものを書く、それが自由ってものよ

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 15:32:09

    >>14

    >>15

    ありがとうございます・・・・・・!

    とりあえず書きたいこと全部書くまでは頑張ります

  • 17二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 15:35:47

    >>10

    少し待つと、ジュンコの前にコーヒーが差し出され、淹れたてのホットコーヒーはまだ白い湯気を盛んに立てている。

    反対に、ウイのコーヒーはそうこうしている間にすこし冷めてしまったようだった。

    「いただきます」と言ってからジュンコは少し息で冷まし、そっとカップに口を付ける。

    「お、おいしい! こんなおいしいコーヒー初めて飲んだかも!」

    「そんな大袈裟な・・・・・・豆が良いだけですよ」

    「うーん、そうは思わないけど・・・・・・」

    ただ豆の良し悪しだけではない何かがあるように感じていたジュンコだったが、それはうまく言葉にできなかった。

    ここに黒館ハルナでも居てくれれば、この靄のかかった感情に適切な言葉を付けてくれるのだろう。


    ジュンコに続くようにウイもコーヒーを口に含む。やはり、彼女が言うほど特別おいしいとも感じなかった。

    「あっ!! ゴメン、私のせいでコーヒー冷めちゃったわね・・・・・・」

    「ふへ!? い、いえお構いなく・・・・・・」

    (なんだか、思ってたゲヘナの生徒のイメージとかなり違いますね・・・・・・?

    私の中のゲヘナ生はもっとガサツで自己中心的かつ欲望に忠実な乱暴者という感じだったのですが・・・・・・)

    そのイメージは全くの間違い、とも言えないのがゲヘナの良いところだ。・・・・・・良いところだろうか?

    それはそうとして、ジュンコの純真さに少し絆されたのか、ウイは最初よりかなり落ち着いた様子に変わっていて、それからはしばらく二人でコーヒーに舌鼓を打った。

  • 18二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 15:40:19

    凄く横道の話なんですけど、スレ主がこの二人のカップリングに行きついた経緯は
    2人とも趣味が読書だからです。

    ジュンコをホーム画面に置いていると趣味が読書だと教えてくれるんですよね。

    後は水着ウイでアイスコーヒー飲んでるので、うーんこれは・・・美食だね!(美食脳
    ってなってこのカップリングに・・・・・・

    決して無から繋がりを生み出したわけでも無いんです信じてください

  • 19二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:11:15

    >>17


    「あの・・・・・・そういえば、ジュ・・・・・・赤司さんはなんの本を借りるつもりだったのですか?」

    ぽそりとウイが呟く。

    純粋にこの少女が借りに来た本がどんなものか気になったのである。そのあたり、どんなに警戒していても本好きの性であろうか、あるいは、ゲヘナ生であるのに読書好きを自称する彼女が、本当に読書が好きなのかどうか、見極めたかったから・・・・・・かもしれなかった。


    「うーん、特にこれっていうのは無くて、適当に探してピンと来たやつを読んで帰ろうと思ってたの」

    「そ、それは・・・・・・あまりおすすめ出来ませんね・・・・・・中央図書館の書籍の数は膨大なので、ある程度ジャンルを絞っておかないと気になる子を見つけるまでに閉館時間になりかねません」

    「えぇっ そんなことある!?」

    「まぁ、図書館内で行方不明者が出るくらいなので・・・・・・あ、どうせ読むものが決まっていないなら、私の持っている子を貸しましょうか? 好きなジャンルがあれば、ですが」

    「え、でもコーヒー飲んだら帰れって言ってなかった?」

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そのまま図書館に行かれても余計な騒ぎになりそうなので、ここで読んで帰ってもらった方がいいと思いまして」

    「そういうことなら・・・・・・?」

    ウイが数秒間たっぷりと時間を使って完璧な答えを導き出したため、ジュンコは頷くしかできなかったようだ!

    (めっちゃ考えてたな、今・・・・・・そんなにゲヘナ生がトリニティに居るのまずいのかな・・・・・・)

    「読みたいジャンルとか、持っている本で好きなモノはあるんですか?」

    ジュンコは顎に指を当てて考える。

  • 20二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:21:28

    >>19


    うーん、と悩んだ後、ジュンコは記憶にある中からいくつかの本をピックアップしていく。

    「ジャンルは結構雑食というか、手あたり次第っていうか・・・・・・。

    えっと、最近読んだのは<ティファニーで朝食を>とか・・・・・・?

    <江戸川乱歩>とかも読むかな。好みとしては<ハリーポッター>よりも<ドラゴンライダー>シリーズの方が好きなんだけど・・・・・・」

    「・・・・・・<江戸川乱歩>がお好きなら、<シャーロック・ホームズ>などはどうですか?」

    ウイは本棚から一冊の本を抜き取り、顔の横に掲げて見せた。

    「あ、ホームズは読んだことあるかな、もちろん翻訳版だけどね?」

    得意そうな顔のジュンコにウイはまた、驚いた顔をする。

    「本当に雑食、といった感じですね・・・・・・ちょっと取っ掛かりが無さすぎて難しいですけど・・・・・・そういえば、ひとつ聞いても・・・・・・いいですか?」

    「ん?なあに?」

    ウイの方から人に対してわざわざ踏み込んで質問することは少ない。

    この光景をシミコや先生が見たら目をむいて驚くだろう。それにやかましいくらいの拍手も添えられて。

    「美食研究と読書、なんの脈絡もないように思うのですけど、どうして美食研究会に?」


    「これは持論なんだけど、読書って食事と似てると思うのよね。

    料理を作る人が居て、食べる人が居るみたいに、お話を書く人が居て、読む人が居る。

    食べ終わったり、読み終わったら、そこには料理や物語への余韻と感想だけが残って・・・・・・なんというか、満たされてる感じが似てるっていうか・・・・・・。

    私にとっては、文字を読むことも美食なのよ!

    まぁ、研究会の人たちに言っても誰も理解してくれなかったけどね・・・・・・読書好きにとって文字は『接種するもの』だと思うの!」

  • 21二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:27:54

    >>20


    ジュンコは力強く言い切った。それが彼女の持論だと、胸を張るように。

    ウイは静かに息を吸って、吐き出した。溜息ととられないように、少し慎重に。

    理由は、少し自分が混乱していたからだ。

    まさかゲヘナの生徒からこんな言葉を聞くとは思いもしなかったからだ。

    ゲヘナと仲良くするなんて、という気持ちもあった。

    相手がトリニティの生徒であれば、すぐさま手を取って「なんて理解のある人!」と褒め讃えていたに違いない。

    しかし、今まで積み上げてきた凝り固まった思想が、ゲヘナへのヘイトが、イメージが、周りの目が、ウイにそうさせなかった。

    「少し・・・・・・分かる気がします・・・・・・」と、ウイはそれだけ言うのがやっとだった。

  • 22二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:34:14

    保守

  • 23二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:51:40

    ジュンウイだと!?こんなの僕のデータにないぞ!!

    ...もっとデータが欲しいので続きを楽しみに待ちます

  • 24二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:53:28

    >>23

    スレ主が一番待ってたコメントしてくれてありがとうw

    これで心置きなく逝けます

  • 25二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 23:24:47

    >>21


    そんな時、ある本が目に留まった。

    「あ、それならこんな本はどうですか」

    そう言って差し出した本の表紙には<シャーロック・ホームズとお食事を>と書かれている。

    「これもシャーロック・ホームズなの?」とジュンコが首を傾げる。

    「作者は違いますけどね。内容はホームズゆかりの地の家庭料理や有名な料理などのグルメについて作中のキャラクター達が語っている本でして、レシピも載っていますよ」

    「あはは! 美食研の私にぴったりかもね、じゃあコレにしてもいい?」

    「ええ、どうぞ」

    ウイは丁寧に本を手渡す。

    「えへへ、読む本も見つかったし美味しいコーヒーも飲めるなんて今日はついてるわね」

    弾む声色で言うジュンコはご機嫌だ。

    そうして2人は読書と古書の修繕作業に没頭していった・・・・・・。


    2人の空間には大きな振り子時計からのカチコチという音と、本のページを捲る音、それからコーヒーをソーサーに戻す音が時折聞こえるだけだった。

  • 26二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 23:27:15

    >>25


    ・・・・・・・・・・・・。

    外から鐘の音が聞こえる。下校時刻の鐘を聞いて、本校舎や中央図書館から生徒たちが仲の良いグループごとの集団になって出て来る。

    しばらくの間、ページを捲る音と作業のために道具を取ったり戻したりする物音以外は、静寂に包まれた古書館の中にも鐘の音は聞こえてくる。

    どちらかともなく、椅子の背もたれに体重を預ければ、ギシ、と椅子の脚が軋みをあげた。

    「うーん・・・・・・っ」ジュンコはひとつ、大きく伸びをして脱力する。

    「はーーー、久しぶりにこんなにゆっくり読んだ〜〜」

    「そうですか・・・・・・それは上々ですね」

    窓の外は空が赤く染まっている。

    「うわ、もうこんな時間なの!?」

    ジュンコは足元に置いていた鞄を慌ただしく片付けて肩紐を引っ掴む。

    「ウイ、私そろそろ行くね!」

    「ええ、そうしてください」

    「じゃあまたね!」

    ジュンコは出口に向かおうとしながら別れの挨拶を告げる。

    ウイにはその挨拶が引っ掛かった。

    「・・・・・・え? 『また』とは・・・・・・?」

    「だってまだ読み終えてないんだもの、もう一回来ないと、でしょ?」

    そう言われてはノーを突きつけるなどできないウイであった。

    「・・・・・・授業中以外はほとんどここにいますから、まぁ、適当に来てください。」

    「分かった、そうする〜。じゃね!!」

    背中越しに手をふりながらジュンコはあっという間にドアの向こうに消えていった。

  • 27二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 23:29:34

    >>26


    「はぁ・・・・・・慌ただしい人ですね・・・・・・」

    でも意外と礼儀や挨拶はちゃんとしていたように思う。

    だがそれはそれとして、自分のかわいいコレクション(家族と言い換えてもいい)の一冊に傷汚れがないかはチェックしておく。ドッグイヤーでもあろうものなら、次に会ったときに『お礼』をしなくてはいけない。

    「あら? これは・・・・・・?」

    ジュンコが座っていた椅子の足元、一冊の手帳が落ちていた。

    「忘れ物・・・・・・」

    自分の足で今から追い掛けて追いつくわけもない、今度来るまで預かっておこう。

    (もし途中で気付いて引き返して来るにしても私はもうしばらく作業を続けるつもりですし、大丈夫でしょう)

    「それはそれとして、中身は確認させていただきましょうか。定期券やらが挟まっていると話が変わってきますし・・・・・・」

    (もし自作小説か何かだったら気まずいですが・・・・・・)

    手帳を閉じているベルトのボタンを外して中を開いてみる。

    「これは・・・・・・」

    どうやら自作小説では無いようで一安心。

    中は沢山の切り抜きと可愛らしい字体のメモ書きでスクラップブックのようになっていた。

    『外観が可愛い喫茶店』『絶品!スフレパンケーキのお店』『柴関ラーメンの屋台 ※砂漠が近いから風が強い日は注意!』

    などなど。

    本人の足跡が窺える内容だった。

    「どうやら大切な物みたいですね・・・・・・」

    ウイは愛おしそうに、その手帳の表紙を撫でる。

    皮の装丁は何度も開閉を繰り返して皺が深くなり、角は擦れて、潰れている。

    「世話のやけるご主人様でアナタも大変ですねぇ」

    優しく語りかけるような声は他に誰もいない古書館の中に溶けていった。

  • 28二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 23:30:55

    一旦書き溜め分の消化が終わりました。

    書くのはすぐですが校正にやたら時間をかけるので気長に待っていただけると嬉しいです

  • 29二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 23:32:01

    投稿かんしゃ〜

  • 30二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 01:52:54

    絡みは気にしなくても良いと思います

    私もウミカ×ネルやイチカ×イロハの絡みといった他学園同士のカップリング書いてますが、書く際の抵抗はそんなになかったです

  • 31二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 12:07:30

    保守。続き期待してます

  • 32二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 15:38:13

    書きあがるまでもちょっとかかりそうなので自分でほしゅ

  • 33二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 22:41:14

    読書好きな2人がコーヒーと本で関係が作られていくのいいね…

  • 34二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 01:53:31

    >>27

    手帳に優しく話しかけるウイ好き

  • 35二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 03:15:27

    文章量ある程度確保したくて時間かかってしまった・・・
    23日10時頃にまとめて投下しようと思います。

    一応3時に自己保守しに来ますが保守があると助かります・・・

  • 36二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 07:19:18

    楽しみ

  • 37二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 17:10:31

  • 38二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:26:56

    >>27


    翌日、ジュンコが古書館を訊ねてきたのは午後3時ごろ。

    通常の授業が終了するよりかなり早い時間だが、そこはかの悪名高きゲヘナ学園、通常のカリキュラムが残っている時間だろうと生徒が抜けだすのはどうやら造作もないらしい。

    今日も、ギィッ、と軋みながらドアが開く。

    赤いツインテールが見えて、小柄な生徒がコソコソとなるべく音をたてないように入ってくる。

    パタンと静かにドアを閉めるジュンコの後ろに、ぬらりと忍び寄る影がひとつ。

    「・・・・・・普通であれば不法侵入ですよ」

    「うわぁあああぁ!? び、びっくりした、驚かさないでよ!」

    「何してるんですか、まだ15時ですが?」

    「えへへ、手帳忘れてるって思ったら居ても立っても居られなくなっちゃって」

    「そんなに大事なら最初から忘れないでください!! この子がどれだけ寂しい思いを舌と思うんですか!?」

    「ヒィ! ご、ごめん・・・・・・って、この子・・・・・・?」

    「あ、い、いえこの子というのは言葉のあやと言いますか・・・・・・」

    「いや、気持ちは分かるわよ。ウチの学園にもパンケーキに『パンちゃん』って名前つけてかわいがってる子が居るし」

    「一緒にしないで欲しいのですが!? 何ですか、パンケーキに名前をつけてかわいがるって・・・・・・」


    あまりに奇怪なその状況を想像しようとしても出力するのを脳が拒んでしまった。

    まぁいい。ひとまずそのパンケーキ愛の強い人の情報は今のところ必要ない。

    深くため息をつきながらも、ウイはジュンコの胸元にグルメ手帳をぐいと押し付けて、古書館の作業机に戻った。

  • 39二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:29:27

    >>38


    「そういえばウイはなんでこんな時間なのにここにいるの」

    「修繕作業の依頼が入っているときは授業が免除されるので、今日は授業には出ていません」

    「ええ、なにそれ! 授業に出なくても良いってこと!? いいなー」

    「そんなに良いものでもないですよ、授業免除ではあっても試験は免除されないので・・・・・・今日しなかった分の勉強はどこかで埋め合わせないといけませんから」

    もう一度深いため息。

    椅子に深く座り直しながら、気だるげな声で「昨日の続きなら、適当な場所に掛けて読んでください」と言い捨てると、また修繕作業と向かい合うために凝り固まってしまっている肩をさする。

    「肩、痛いの?」とジュンコが気にかけるが、ただの肩こりです、お構いなく。とあしらう。


    「・・・・・・なぜ、背後に立つんですか・・・・・・赤司さん」

    「揉んであげようと思って」

    「結構です。離れてください。人に触られるの、というか・・・・・・近づかれるのも好きではないので・・・・・・」

    「酷い!?」

    「勘違いしてほしくないのですが、これはあなただからとか、ゲヘナ生だからとかではなく、誰に対しても同じなので、まぁ、放っておいてください。その方があなたも楽でしょう」

    「・・・・・・うーん、わかったわ。気が変わったらいつでも言ってよね!」

    そういうとジュンコはそばにあった適当な椅子に座る。なんとも軽やかに、ポンと。

    ウイの錆付いたカラクリ人形のような・・・・・・とは少々表現を盛りすぎだが、緩慢な動きとは大違いだ。

    まるで小動物だな、とウイは思った。

    ジュンコはどこかの小説で出てきた気難しい老人の事を思い出していた。

  • 40二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:37:19

    >>39


    今日も昨日と同じように2人の間には長閑な時間が流れ・・・・・・ては、いなかった。

    ウイは依頼されていた修繕の作業をしながらも、先ほどのやり取りを反芻して、こめかみに少し汗を滲ませている。

    ────少しきつく言い過ぎただろうか?

    ────折角の好意だったのに無下にするのはやはり可哀そうなのでは?

    ────実際、肩が軋みを上げているのは事実なわけで・・・・・・。

    そんな思考がグルグルと巡る。

    (ええい、私はあの遺跡調査で何を学んだのですか、それを活かす時のはずです・・・・・・!)

    「あ、あの!」

    「ん? どうしたの?」

    「・・・・・・コーヒー、飲みますか?」

    「え! いいの!? 飲む飲む」


    日和った。


    それはもう、盛大に。これでもかというくらい危険のない安全圏に吸い込まれるかのように着地していった。


    ウイはこの日一番のため息をつきながら、コーヒーミルをカリカリカリと回し挽いて、お湯を沸かす。

    そう待たずに電気ケトルが湯の沸騰を伝えるアラームを鳴らす。

    最近の電気ケトルの良いところは沸かす温度を設定できることだ。100度近くまで沸かしてしまうとコーヒーの苦みが出過ぎる。

    ゆっくりと、コーヒーの粉に湯を回しかければあたりに芳ばしい香りが充満していく。

  • 41二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:41:31

    >>40


    コーヒーの香りにはリラックス効果があるらしい。

    それと同時にコーヒーに含まれるカフェインは、よく知られているように神経を興奮させる効果を持つ。

    まったく相反する2つの効果がこの一杯に含まれているのは何とも奇妙なことだ。

    人は、落ち着きたいときにコーヒーを飲み。

    また、奮起したいときにコーヒーを飲む。

    まったく相反する2つの効能の欲しいほうだけを求めて、人はこの一杯を飲むのだ。


    (まるで、美味しい部分だけ誰かに利用されたエデン条約のよう、というのは、皮肉が効き過ぎますかね?)


    少なくとも今この瞬間だけは、このコーヒーの持つ作用の両方に需要がある。


    「うん! やっぱおいしい」

    「そうですか・・・・・・」

    ウイの表情はまだ渋い。

    「えへへ、今日はウイのコーヒーも冷めてなくて良かったわね!」

    「うっ・・・・・・」

    豆も淹れ方も同じはずなのに、今日のコーヒーはなぜこうも苦いのか・・・・・・。

    あの時私が受け入れていれば・・・・・・。

    このコーヒーはもう少し美味しかったのだろうか。

    今日見た彼女の笑顔の回数は1回分多かったのだろうか・・・・・・?


    結局ウイは軋む肩をさすりながら、苦いコーヒーを啜りつつちまちまと作業をした。

  • 42二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:46:35

    今日投下するのはここまで
    続きは二日以内には投下したいところ・・・

  • 43二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:50:17

    なんかこう...言葉選びとか言い回しが凄く凄い(語彙力)
    ジュンウイを見つけたり素晴らしいSSを書けたり...才能が羨ましいな

  • 44二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 22:58:31

    >>43

    そのお言葉と今自分の手元にあるブレンディスティックがあれば筆を走らせ続けられます。

    今日もスレ主に燃料を入れてくれてありがとう

  • 45二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 23:42:39

    ウイはジュンコと会うのはまだ2回目だからどう接したらいいかまだまだ模索中だね

  • 46二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 08:27:56

    2人ともおいしいと感じるコーヒーになるのはまだ先かな

  • 47二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 12:28:16

    ほしゅ

  • 48二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 21:10:07

    明日に備えて保守

  • 49二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 07:34:09

    肩がこってるウイ相手にマッサージしようとしたけど、ジュンコは割と肩もみうまいのかな?

  • 50二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 12:10:44

    >>49

    アカリはでけえお餅着いてる上にクルマ運転するから結構こってそう

    揉んでるとしたらアカリだな

  • 51二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 18:38:20

    拙者、こういったお話大好き侍
    見つけられた幸運に感謝

  • 52二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 22:43:02

    早めの保守

  • 53二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 22:45:02

    応援してる
    がんばれ

  • 54二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 01:24:51

    >>50

    可愛い後輩に肩を揉まれて内心ウキウキのアカリ

  • 55二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:04:23

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:06:09

    このレスは削除されています

  • 57二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:10:02

    このレスは削除されています

  • 58二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:15:28

    スレ主です。
    一回投稿してアンカーつけ忘れてるのに気づいて消しました。
    荒れた訳ではないので気にしないでください・・・ごめんよお~~

  • 59二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:16:04

    >>41


    ジュンコは残り少なくなった本のページの厚さを確かめるように、人差し指と親指でさすりながら、ウイの方をちらりと確認する。

    (ウイ、やっぱ肩痛いのかな? でも、これ以上言うのは迷惑かもだし・・・・・・今日でこの本も読み終わっちゃうだろうなぁ・・・・・・)

    この本が読み終われば2人の関係は終わりになるのだろうか。

    まだ見ぬ本を探したいだけならばトリニティ中央図書館に行けばいい。それこそ、一生を使っても読み切れないほどの本がある。

    ウイが迷惑だというなら、ジュンコはおとなしくそれに従うつもりだった。本を借り、机と椅子を借り、コーヒーまでご馳走になっておいてそこまで厚かましくなることもできない。

    (でも・・・・・・)


    (このコーヒーの味、好きなんだけどなぁ・・・・・・)


    本から一度手を離し、携帯端末に持ち替える。

    迷ったときや困ったときはとりあえず先輩たちに聞いてみるのも良いだろう。

    あれで意外と頼りになる・・・・・・ことがないわけでも無い、そんな先輩たちだ。

    モモトークの美食研究会グループにポチポチと文字を打ち込んでいく。

    『今読んでる本が読み終わるまでっていう約束でトリニティの子の所に遊びに来てるんだけど、このままさよならはちょっと嫌っていうか、勿体ないって思っちゃうの。何かいい方法はないかな?』

  • 60二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:16:50

    >>59


    一番最初に返信が届いたのはハルナだった。几帳面な彼女の返信が最初というのは予想通り。

    『一緒にいたいのであれば連れ出してしまえばよいのではないでしょうか』

    なるほど、と納得しかけて・・・・・・ん? と疑問符をうかべる。

    すぐにアカリから返信が来た。適当なように見えてこの手の連絡は早いしマメだ。

    『拉致してしまえば良いじゃないですか☆』

    半数の意見が誘拐または拉致になっちゃった・・・・・・。

    『イズミならどうする?』

    最後のひとり、イズミの回答を待ってみる。

    『私ならハルナかアカリに聞く!』

    ああ、過半数が誘拐、拉致になってしまった。

    『ここトリニティだよ、そんな事したら大変なことになるでしょ!?』

    一応言っておくが、ゲヘナでも別に誘拐が許されているわけではない。


    あの3人にまともな意見を期待した私がバカだったかも。

    ジュンコはため息をついて、この3人からアイデアを引き出すことを諦めた。


    ジュンコは一旦スマホを置く。

    その裏でメンバーのやり取りは続いていたが、どうやら話題は逸れていたようなので気にしないことにした。

    また、コーヒーをひと口啜る。

  • 61二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:17:44

    >>60


    なにか、なにか無いものだろうか。

    ウイから借りた『シャーロック・ホームズとお食事を』の残りページも少ないというのに、肝心のシャーロック・ホームズは答えを教えてはくれない。

    結局考えを巡らせるも虚しく、本は最後の1ページを迎えてしまった。


    試してみたい(フウカに試させたい)レシピ結構あったな・・・・・・挿絵の一つでもあればもっと没入できたのに、そこはちょっと残念・・・・・・。

    と感想を噛みしめつつ、窓の外を見る。

    昨日よりは少し早い時間。

    「ふぅ」と小さく息を吐いてから、作業机に向かっているはずのウイの方を見る。

    「ねぇ、ウイ。読み終わっちゃったけど、どうすればいい?」

    「そのまま机に置いといていいですよ。後で片付けますから」

    どちらからともなく、背もたれに身体を預けて小休憩の姿勢を取る。

    しばしの沈黙。

    先ほどまでの間もずっと静かだったが、お互い作業もしていないのに静かだとなんとなく気まずい。

    「あ、そうだ」と口火を切ったのはジュンコの方。

    「伸びとかした方がいいよ、定期的に。立ち上がってぐ~~~って背伸びするの」

    お手本と言わんばかりにジュンコが立ち上がって伸びをする。伸びても小さかった。


    そのままスルーされるかもと思っていたが、ウイはのそりと立ち上がり、同じように両手の指を組んで、背伸びをする。

    ウイの背中が「パキ」「ボキ」「ゴキゴキ」と楽器か? というくらい様々な音を出す。

    「アハハ、やばいね・・・・・・」

    「ええ・・・・・・やばい、ですね・・・・・・」

    「アハハッ!」「フフ・・・・・・」

    なんとなく可笑しくて2人してしばらくの間笑いあう。

  • 62二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 02:20:09

    >>61


    肩や肩甲骨のストレッチの話をしていると、いつの間にかまた、いい時間になっていた。

    もうすぐ下校のチャイムが鳴り始める。

    「あぁ~~、もうこんな時間か、相変わらず本を読むとあっという間ね」

    「ええ・・・・・・そうですよね」

    「じゃあ、ウイ・・・・・・えっと、バイバイ」

    ジュンコはカバンを肩に掛け、胸の前で小さく手を振る。

    ドアノブを回して、外に半歩出たあたりで、ウイが声をかけた。

    「あ、あの、あか、赤司・・・・・・さん」

    「ん、どうしたの? 今日は忘れ物してないよ」

    「やっぱり、ストレッチではどうも、コリが残っているので・・・・・・また今度、マッサージでもしに来てくれませんか・・・・・・? コーヒーも、淹れるので・・・・・・」

    「いいの!?」

    「ええ。赤司さんさえ、良ければ」

    「うん、来るよ! 絶対来る!!」

    「じゃあ・・・・・・ハイ」ジュンコは外に出ようとしていた足を引っ込めて、ウイの方に近寄ると、スマホの画面を上向きにして差し出した。

    ウイが頭上にクエスチョンマークを浮かべていると「モモトークの連絡先、無いと不便でしょ?」とジュンコに言われて「ああ、なるほど」と思い至る。

    なんとなく、向こうが勝手にやってきて、毎回都合よく自分がここにいる事を想像していたが、勿論そんなことにはならない時もあるだろう。

    そうしてあっという間に、モモトークの連絡先がお互いの携帯端末の中に増える。

    ジュンコの連絡先、数十件に対し、ウイの片手の指で足りそうな連絡先の数が物悲しい。

    「えへへ、連絡先また増えた」と嬉しそうなジュンコを「そんなに良いものかな?」と不思議そうに眺めるウイだった。


    「じゃあ、ウイ、また連絡するね。バイバイ!」

    「ええ、また・・・・・・」

    ドアの向こうに消える背中を見送ってから、どっかりと椅子に落ちるように座り込む。

    胸に触れると、心臓がバクバクと音を立てていた。

    「人付き合いって・・・・・・修繕作業より緊張、します・・・・・・」


    一度息を入れて、ジュンコの読んだ本を本棚に戻すと、もう一度コーヒーを淹れなおす。まだまだ彼女の作業は続くのだ。

    どうやら2杯目のコーヒーは、いくらかマシな味になっていたようだ。

  • 63二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 10:57:45

    一緒にいたいなら誘拐するという美食研究会の無法ぶりよ

  • 64二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 11:26:16

    比較的常識人なジュンコ好き

  • 65二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 12:12:56

    トリニティで捕まらずに古書館まできただけの常識的なゲヘナ生だもんねジュンコ

  • 66二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 12:32:25

    ボイスドラマを聞く限りジュンコはハルナを頼りにしてるしハルナもジュンコのことを大切にしてるのが分かるんだ
    ただ今回の相談内容へのアンサーが自分達がいつもやってることに行き着いただけなんだ

  • 67二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 21:19:21

    ウイ……!自分から誘えるようになって……!!

  • 68二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 21:28:58

    お互いに歩み寄れて良かった

  • 69二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 00:49:37

    ジュンコ誕生日おめでとう🎊

  • 70二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 04:32:19

    スレ主だよ、まとまった文章量をなるべく誤字なく(すでにいくつか誤字してるけど)
    提供するってなると最低2日くらいかけないと厳しいね

    もうすぐ仕事納めだからもう少しサクサク書けるように・・・なる気がしてるんだ。
    気長に待って欲しい

    コメント・保守いつも助かってる、ありがとうね

  • 71二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 08:28:52

    >>70

    気持ちはめちゃくちゃ分かる

    構想を練ってもそれを文章にまとめるの大変だよね

    そこから修正を加えていくとなると時間がそれなりの時間も掛かる

    いつまでも待ってるから焦らずゆっくりと書いてくれ

  • 72二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 15:12:09

    スレ主だよ。
    今日は残業確定なので一応自分で保守しておく

  • 73二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 19:16:10

    >>70

    一時期SSを書いていた身からすると、十分早いと思うぞ


    それとこちらこそ素敵なお話をありがとうだぞ

  • 74二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 23:20:21

    >>72

    お疲れ様です、体調に気を付けて


    続きを楽しみに待ってます!

  • 75二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 10:27:30

    ほ!

  • 76二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 20:04:00

    しゅ!

  • 77二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 00:49:02

    スレ主だよ。
    着地地点が見えないので難航しているよ。
    まぁ時間がかかってるほど文章量は増えそうってことで許してほしいかな・・・・・・

  • 78二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 07:34:48

    許す!

  • 79二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 18:53:01

    >>62


    週末も迫る日の午後、トリニティの校門付近に美食研究会の車、もとい給食部の車が停車し、美食研究会のひとり、赤司ジュンコが車から降りて荷台に乗せてあった荷物を引き下ろした。

    大きめのボストンバッグ、今回はどうやら随分荷物があるようだ。

    「ありがと、アカリ。迎えはまた連絡すればいいの? 電車使おうか」

    「うーん、そうですねぇ、できるだけ迎えにあがるようにはしますが・・・・・・都合がつかなさそうなら、こちらから連絡を入れますね☆」

    そうしてアカリは「ごゆっくり〜」と言うと車を出した。

    こんなやりとりをしているとまるでアカリが年の離れたお姉さんか何かに見えることがある。

    2歳しか違わないとはいえ、高校1年生から見れば3年生はかなりお姉さんなのかもしれない。

    さて、では早速古書館に向かうとしよう。

    そうして歩き始めたジュンコの表情には何やら決意のようなものが感じられる。


    車を降りた校門から噴水の広場までまっすぐ歩いて左折すればトリニティの中央図書館が見えてくる。

    その中央図書館の近く、少し奥まったところに並ぶように古書館が鎮座しているのだが、見た目は中央図書館よりかなり古く、中央図書館とは別の施設であることは一目瞭然である。

  • 80二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 18:55:32

    >>79


    その古びた建物の小さな木戸を叩く。「どうぞ」というくぐもった声は、もしかすると耳を澄ましていないと聞こえないかもしれない。

    ジュンコはその小さな声をしっかり聞き逃さず、ドアを開ける。

    「やっほ~ウイ、来たよ」

    ウイは「どうも・・・・・・」と歓迎とも敬遠とも取れない曖昧な返事で迎え入れた。

    「随分、荷物が多いですね」

    「やるからにはきっちりやってやろうかと思って」

    荷物をどっかりと床に置くと、カバンの中から何やらガチャガチャと音が聞こえる。

    「拷問器具・・・・・・とかではないですよね」

    「まさか、エリザベート・バートリじゃあるまいし・・・・・・」

    「良かったです。その手の物はシスターフッドだけで足りていますからね」

    「・・・・・・え?」

    「いえ、聞かなかったことにしておいてください、最悪の場合、ふたりとも消されるかもしれません」

    「来て早々になんでそんな話聞かされなきゃならないの!?」

    「まぁ、冗談ですよ」

    「まったく」と一呼吸置いてから、ジュンコはボストンバッグの口を開ける。

    中にはタオルやマッサージ器がごちゃごちゃと詰め込まれている。

    「さぁ、始めるわよ、ウイ」

    「本当にやるんですか・・・・・・?」

    「やるよ、覚悟してよね、これはただのマッサージじゃないんだから!」

    ジュンコは鼻息荒くまくし立てる。

    ウイはいつかジュンコが話していた、豚並みの嗅覚うんぬんの話をぼんやりと思い出しかけて、首を振って邪念を消した。

  • 81二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 18:58:18

    >>80


    ──────事は数日前にさかのぼる。

    一度、ジュンコはウイとの約束を果たすため、古書館を訪れていたのだ。

    そこで、思わぬ問題が起こった。

    「えぇ・・・・・・何これ、かっっった・・・・・・」

    ジュンコは引いた。

    あまりのウイの肩コリにドン引きした。

    「そ、そんなにですか? 自分ではよく分からないのですが・・・・・・」

    「ひどいよこれ・・・・・・ま、まぁできるだけやってみるわね」

    そんなこんなで、なんとかマッサージしようとしたものの、結果的に素手で解すには限界があるという結論に達し、その日は早々に撤退。

    後日こうして装備を整えて戦場に舞い戻ったというわけだ──────




    「大丈夫なのですか? マッサージって素人がやっても問題ないんでしょうか・・・・・・?」

    「安心して! ちゃんと勉強してきたから、アカリやハルナでも実験したし、先生でも大丈夫だったし」

    「あ・・・・・・そうなんですか・・・・・・」

    なんだろう「先生でも大丈夫だった」というひと言の異常なまでの安心感は。

    先生が大丈夫なら、大丈夫なんだろうと思わせてくれる。

    「まずはマッサージオイルを温めておいて・・・・・・」

    「そ、そんな本格的に・・・・・・」

    「とーぜんよ! 中途半端なんて、美食だろうと読書だろうと、一番よくないもの、ウイの作業だってそうでしょ!」

    「ええ、まったく反論の余地はありませんね・・・・・・」

    そうこう言っているうちに、温まったマッサージオイルの甘い香りが漂ってくる。

  • 82二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 19:00:10

    一旦ここまでで。
    まだ確認終わってないのがもう少しあるから、後からまた投下しに来るよ。

  • 83二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:03:36

    >>81


    「さ、始めるよ」というジュンコの掛け声とともに仮眠用の簡素なベッドに腰を掛ける。

    「えっと、私はどうすれば・・・・・・?」

    「うつ伏せになって寝てて。あ、肩は出しといてね」

    「あう、あう」とウイは今更になって戸惑う。

    「そ、その、少し恥ずかしいと言いますか、なんというか」

    「恥ずかしいもなにも、これは施術なんだから仕方ないでしょ。遊びじゃないんだよ!」

    「なんでそんなに本気なんですか・・・・・・」

    気迫に圧されて仕方なく、ベッドにうつ伏せになる。

    そういえばこうしてちゃんとベッドに寝転ぶのはいつぶりだろうか、普段はソファを使うせいで、すっかりベッドで休む習慣がなくなってしまった。

    ジュンコの小さな手が、そっと肩に触れてくる。

    体温より少し温かいオイルが心地よい。

    なんなら、ジュンコの手の温度自体が高いのだろう。

    オリーブのような香りが鼻腔をくすぐって、自然と呼吸が深く、ゆったりとしてくる。

    急に眠たくなってきたな、と思っていると、だんだんとジュンコの指圧が強くなってきた。

  • 84二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:05:06

    >>83


    「う、うぅ・・・・・・うぐっ」とくぐもった声が漏れる。これは、心地よさとかコリが解きほぐされるのを感じるとか、そういう段階になっていない。

    シンプルに肩からダメージを感じる。

    「ふぐっ・・・・・・もう少し・・・・・・軽めに・・・・・・うぎっ・・・・・・」

    「これ以上は・・・・・・無理、よくこんなゴリゴリの肩で作業できたわね、痛かったんじゃないの」

    「最近はこれが当たり前になってしまって・・・・・・よくわかりませんね・・・・・・」

    「今日でおさらばするわよ!! このコリと!!!」

    どうやら、一度諦めて撤退したことでジュンコの対抗心に火がついているらしい。晄輪大祭の時と言い、火が付くと意外とこだわるタイプである。

    ウイは、止めても無駄だろうか。無駄だろうな。と思い、枕に顔を埋めて、事が済むのをじっと待つ覚悟をした。

    揉みほぐしはともかく、指圧ともなると悲鳴が上がりそうなくらい痛かったが、足裏のツボ押しはもはや声になどならなかった。

    意識がなくなるかと思うくらいの鋭い痛みに声は出ないし、記憶も所々曖昧で、多分だが、ヘイローもガタガタ揺れてチカチカと点滅していたに違いない。きっとそう。

    数十分もすると、さすがにジュンコの方がへばってきたらしかった。マッサージというのは意外と重労働だ。

    さすがに握力がなくなってきたジュンコが回復するまで、電気マッサージ器で茶を濁したり、またオイルを塗り直したり・・・・・・。

    長い事格闘していたが、だんだんと激しい痛みから心地よい感覚に変わってきたように思う。

    (私が何かに目覚めたとか、変な扉が開いたとかじゃ、ないですよね・・・・・・?)

    さすがにそんなことはないはずだと信じたい。


    あぁ、かなり気持ちよくなってきた・・・・・・気がしますね、これは・・・・・・これは・・・・・・寝てしまいそう。

    私の意識はついに睡魔に敗北して微睡みへと落ちていった。

    今思うと、ジュンコさんに散々しんどい思いをさせて、ひとり夢心地だったのは申し訳ないことをしてしまったとは思う。

  • 85二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:07:17

    >>84


    「う、うぅ・・・・・・うぐっ」とくぐもった声が漏れる。これは、心地よさとかコリが解きほぐされるのを感じるとか、そういう段階になっていない。

    シンプルに肩からダメージを感じる。

    「ふぐっ・・・・・・もう少し・・・・・・軽めに・・・・・・うぎっ・・・・・・」

    「これ以上は・・・・・・無理、よくこんなゴリゴリの肩で作業できたわね、痛かったんじゃないの」

    「最近はこれが当たり前になってしまって・・・・・・よくわかりませんね・・・・・・」

    「今日でおさらばするわよ!! このコリと!!!」

    どうやら、一度諦めて撤退したことでジュンコの対抗心に火がついているらしい。晄輪大祭の時と言い、火が付くと意外とこだわるタイプである。

    ウイは、止めても無駄だろうか。無駄だろうな。と思い、枕に顔を埋めて、事が済むのをじっと待つ覚悟をした。

    揉みほぐしはともかく、指圧ともなると悲鳴が上がりそうなくらい痛かったが、足裏のツボ押しはもはや声になどならなかった。

    意識がなくなるかと思うくらいの鋭い痛みに声は出ないし、記憶も所々曖昧で、多分だが、ヘイローもガタガタ揺れてチカチカと点滅していたに違いない。きっとそう。

    数十分もすると、さすがにジュンコの方がへばってきたらしかった。マッサージというのは意外と重労働だ。

    さすがに握力がなくなってきたジュンコが回復するまで、電気マッサージ器で茶を濁したり、またオイルを塗り直したり・・・・・・。

    長い事格闘していたが、だんだんと激しい痛みから心地よい感覚に変わってきたように思う。

    (私が何かに目覚めたとか、変な扉が開いたとかじゃ、ないですよね・・・・・・?)

    さすがにそんなことはないはずだと信じたい。


    あぁ、かなり気持ちよくなってきた・・・・・・気がしますね、これは・・・・・・これは・・・・・・寝てしまいそう。

    私の意識はついに睡魔に敗北して微睡みへと落ちていった。

    今思うと、ジュンコさんに散々しんどい思いをさせて、ひとり夢心地だったのは申し訳ないことをしてしまったとは思う。

  • 86二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:19:29

    >>85


    夢を見ていたような気がする。

    そんなに長くはない、短い夢だった。

    あたたかな陽気に包まれて、柔らかい芝生の生えた牧草地のような斜面で少し日光を眩しく思いながら本を読んでいて。隣に寝転んで寝ていたのは、ヒナタさんだったか、あるいはシミコさんだったか、それとも・・・・・・。


    校内に響く鐘の音で、心地よい微睡みから引き戻される。

    意識が覚醒して、ヘイローがまた姿を現しても、体はまだこのベッドに体重を預けたいと言って聞かない。重力に逆らうのを嫌がっている。

    「んうぇ・・・・・・?」

    「あ、起きた。おはよ、ウイ。よく寝てたわね」

    「お、おはようございます・・・・・・」

    ジュンコはどこかの自販機で買ってきたのか、ココアの缶をゆらゆらと揺すりながらちびちびと飲んでいた。

    「調子はどう? どこか痛いとかない?」

    ジュンコにそう言われてウイはゆっくりと体を起こしてみる。

    驚くほど肩が軽い。肩を回しても関節がボキボキ鳴る感触が無い。

    「お、おお、こんなに変わるものなんですね。す、すごいです・・・・・・!」

    「大丈夫そうならよかった! でもまぁ、定期的にやらないと意味ないから、近いうちにまたやってあげるね」

    「ま、またやるんですか、これ・・・・・・」

    「ウイが嫌じゃなければね」

    「い、嫌では・・・・・・無いです。ですが・・・・・・」

    「どうしたの?」

    「えと、あ、赤司さんに申し訳ないというか・・・・・・」

    「じゃあさ、今度何か奢ってよ。そんなに高いものじゃなくていいから何か食べに行こうよ、ウイのおすすめとかで!」

    「え・・・・・・それは嫌です・・・・・・外出たくないので・・・・・・」

    ズコッ、とジュンコがこけそうになる。今のはそうですね、何か奢ります。ってなる流れでしょ! とでも言いたげな表情をしている。

    「外に出るのは勘弁してください・・・・・・」

    「うーん、しょうがないなぁ、じゃあいつもみたいにコーヒー淹れてくれる? お茶菓子もあると嬉しいな―」

    「まぁ、そのくらいなら・・・・・・準備しておきます」

    ジュンコはいつものようにニッと笑顔を向けて。「ありがと! 楽しみにしとくね!」と言った。

    そんな笑顔を向けられても、私はそれに見合うモノを返せないというのに。

  • 87二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:21:24

    >>86


    「その、すみません、寝てしまって・・・・・・起こしてくださっても良かったのに・・・・・・」

    「いや、無理よ! あんなに気持ちよさそうに寝てるのを起こすなんて・・・・・・あっ! 仕事の納期がヤバかったりする?」

    「いえ、そんなことは無いですが・・・・・・」

    「そう? それならよかった」

    そうは言うけれど、でも、寝ていたせいでコーヒーも淹れられていないし、お話もできていないし、彼女は本の一冊でも読めたのだろうか?

    やってしまったのでは? 自分だけ良い思いをしたのではないか?

    何も返せるものが無いのに、どうしたものか。

    お礼の茶菓子なんて、なにが流行りなのかなんて知らない、どうしようか・・・・・・。

    また思考がぐるぐる回る。

    「じゃあ私、今日は一旦帰るから、また今度コーヒーご馳走してね?」

    「え、あ・・・・・・はい。近いうちに」

    「うん! じゃあね」

    「はい、また」

    「それと・・・・・・」と、ジュンコは出口に向かいながら言う。

    「次来たときは下の名前で呼んでよ、いつまで苗字で呼ぶつもり? も、もう友達でしょ? 私たち」

    「うぇっ!? ・・・・・・・・・・・・えと・・・・・・検討しておきます」

    「検討って・・・・・・まぁいいや、そっちもコーヒーと同じくらい期待しておくからね! じゃあバイバイ!」

    ドアが閉ざされて、静寂が戻ってくる。

    下の名前で呼ぶ・・・・・・。ジュンコ? ジュンコさん? ジュンコさん、でしょうね多分。

    実際にそう呼ぶことを想像するだけで心臓がしんどい。

    「と、とりあえず作業の続きしないと、ですね・・・・・・」

    ウイは思考から逃げるように作業机に向かうことにした。

    その日、作業はとてもスムーズに進んだ。

    なんとなくだが、仕事の出来も少し良くなっているような気すらする。

    (中途半端は良くない、か。なるほど確かにその通りかもしれませんね・・・・・・)

  • 88二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:23:07

    >>87


    ジュンコはトリニティスクエアを抜けながらアカリに電話をかける。

    「どう、アカリ? 迎え来れそう?」

    「ええ、大丈夫ですよ☆ D.U地区に居るのでそう掛からずそちらに行けると思います。しばらく待っていてくださいね~」

    「うん、わかったわ」

    「あら~? なにか良い事でもありました?」

    「んー、まぁまぁ? 私はちょっと疲れたけど、友達は気持ちよさそうだったから、それでいいかなって」

    「うーん、友情ですね☆ おっと、ヴァルキューレに通話が見つかってしまいました。振り切るので電話は終わりますね~、ではでは~☆」

    「何やってんのよ・・・・・・」果たしてアカリは無事に迎えに来てくれるのだろうか?

    ともかく、今朝送ってもらったあたりで待つしかないだろう。

    思ったより疲れた一日だったが、美食研究会でも、一食の食事と、それに釣り合わない労力を払うのは珍しい事ではないし、今回は得たものの方が大きいから、何の問題もない。

    「さて、今日の晩御飯なにかなー」


    ウイの苦悩など露知らず、ジュンコは足取り軽くトリニティ総合学園を後にするのだった。

  • 89二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:28:29

    ひとまずこんなところで許してください、また書けた頃に来ます

    あと、保守感謝です♡

  • 90二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:38:43

    続きを投稿してくれて感謝!

    きちんと準備しないとマッサージできないほどにこっていたウイの肩やばいな…
    肩こりもそれが普通になると解消するのがむずかしくなるよね

  • 91二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:39:10

    乙です
    アカリが妹の送り迎えをするお姉ちゃんみたいで地味に好き

  • 92二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:44:09

    >>91

    運転スキル持ちがチームにいるとこういう動きができて便利ですね。

    ジュンコの妹属性も相まって、これは・・・姉妹。

  • 93二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 08:10:51

    当たり前のように美食研究会の車として使われる給食部の車くんに涙を禁じ得ない

  • 94二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 12:41:14

    ドライそうでドライじゃないちょっとだけドライな美食研究会の関係性 いいよね

  • 95二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 21:50:32

    美食研が山登りをするボイスドラマを聞くと4人には仲間、友達としての絆がしっかりあることが分かるんだ
    普段身代わりだったり見捨てたりするのは風紀委員などの治安維持組織なら捕まっても命までは取られないという安心感と信頼によるものだと思われる
    逆にそれらの保証がない自然界では普段のムーブとは一転してお互いを助け合うという行動に出てる

  • 96二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 05:13:33

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 14:37:47

    保守だ

  • 98二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 22:25:07

    ウイはジュンコのことを名前で呼べるようになるかな?

  • 99二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 07:24:07

    あけおめ保守

  • 100二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:25:40

    >>88


    朝、目が覚めると昼だった。

    そんな言い方は矛盾しているが、感覚としてはまさにそうだったのだから、この自分だけの感覚に文句を言われる筋合いはないのである。

    枕元のデジタル時計はもはやスヌーズとはなにかも忘れてしまったかのように静まり返ってしまっている。

    その時計は13時05分を表示して、今13時06分になった。

    ジュンコのマッサージを受けた翌日の話である。

    今日が休日でよかったと、心底思う。それでもやらなければならない仕事はあるため、悠長にはしていられないけれど、本当に良かった。

    半日無駄にはしたが・・・・・・。


    ・・・・・・快眠だった。


    こんなに深い眠りはいつ以来だったろうか。

    一度の目覚めも、夢らしい夢を見ることもなく、スゥッと深い眠りに落ちて気が付いたら今だった。

    目が覚めると同時に、自然と体をベッドから起こしていた。

    今まであんなにベッドと体を引き剥がすのに難儀していたのに。

  • 101二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:27:18

    >>100


    スマホを確認する。新着メッセージが一軒。

    (赤司さん・・・・・・いえ、ジュンコさん・・・・・・からですよね・・・・・・)

    モモトークの内容は直近のスケジュールについてだった。

    今日はバイトが入っていて、明後日は休み、その後は放課後から空きがあるという感じらしい。

    ジュンコはジュンコでウイとは違う方向性で忙しくしているようだ。

    それもそのはずで、美食研究会と活動しながらトリニティでバイトをし、時折放課後スイーツ部のヨシミと出かけたりしながらその合間にウイのいる古書館に遊びに来ているのだから、もうそろそろ一人が抱えられるキャパシティーの限界といえるだろう。

    ある意味ではアカリよりタフといえるかもしれない。


    昨日、ジュンコに言われた事を思い出す。

    コーヒーとお茶菓子。

    丁度コーヒーの残りが少なくなってきているので、いつものコーヒーショップに行くついでに、何かお茶菓子でも買って来るとしよう。

    肩が軽いおかげか、家から出る決意もすんなりと固まってしまった。

    私服に袖を通して、最低限の荷物を手にいざ外へ。

  • 102二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:28:45

    >>101


    コーヒーショップの用事はものの数分で終了してしまった。

    もうお互い慣れたものだから「いつものブレンドで」「少し待っててね」と、後は会計のやり取り程度のことで済む。

    非常に楽で良い。

    「そういえば・・・・・・コーヒーと一緒にお茶菓子も所望していましたね・・・・・・買っておかないといけませんが・・・・・・一体どういうのが好みなのでしょうか・・・・・・」

    まだ、彼女のことを何も知らない。

    今流行りのお菓子は何? 人気のお店はどこ? そんな類の本は読まない。興味もないし、私の生活には今まで必要なかった分野だ。


    「まぁ、こういう時は文明の利器に頼るとしましょう」

    トリニティ、お菓子、人気。これらのワードを検索欄に放り込み、その中から評価が高いものをピックアップして足を運ぶことにした。

    一軒目は幸いトリニティの校舎からそう遠くない場所にある。

    しばらく歩いて、たどり着いた店には『ルワゾー・ブッレ』と看板が出ている、ここで間違いなさそうだ。

    しかし、ウイの足はそこではたと止まる。

    「お、オシャレすぎます・・・・・・」

    かわいらしい外観、晴れているからか、テラス席にも生徒たちが大勢座って談笑している。

    店内は言わずもがな、レジにも列ができて大盛況、といったところだろうか。

    「わ、私にはハードルが高すぎる・・・・・・別のお店にしましょう」

    踵を返した瞬間「あれ? ウイ?」と声をかけられた。

    最近よく耳にしている声だった。

  • 103二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:31:05

    >>102


    「え・・・・・・?」

    「あ、やっぱりウイだ。こんなところで合うなんて、すっごい偶然ね!」

    「あ、赤司さん・・・・・・どうしてここに・・・・・・?」

    「赤司さん、じゃ~ないんじゃなかったっけ?」

    ジュンコはわざと意地悪そうな笑みを浮かべて見せる。

    腰に手を当てて少し前かがみになった姿は、そのツノと羽の存在が合わさってまさに「小悪魔」と呼ぶのに相応しい。

    「・・・・・・ジュ・・・・・・ジュン、コさん・・・・・・」

    「ん~? よく聞こえなかったなー」

    「い、いいじゃないですか・・・・・・少しくらい、意地悪しないでください」

    「あはは、ごめんごめん。えっと、何の話だっけ。ああ、そうだった、なんでここにって話だったわね。それはね、ここがバイト先だからよ」

    「えっ、ここで・・・・・・!?」

    つ、つまり私はジュンコさんへの茶菓子を用意するためにジュンコさんがバイトしてるお店に来てしまったと!? 阿保ですか、阿保だったようですね。などと後悔してももう遅いわけだが。

    よくよく考えてみれば、美食研究会のメンバーともあればそれなりのクラスの店を知っているのだから、そこでバイトするというのもごく自然な流れか。

  • 104二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:32:35

    >>103


    「そ、ここでバイトしてるの、どう?」

    ジュンコはその場でクルリとターンして見せた。

    この店の制服であるフリルの付いたエプロンがふわりと揺れる。

    「どう・・・・・・とは?」

    「制服が似合うかどうかって聞いたの! まったく・・・・・・」

    「えぁ!? に、似合う、と思います・・・・・・・」

    「ほんと、ファッションとかそういうのに頓着無いんだね・・・・・・その服は結構センスいいのに・・・・・・・」

    「シミコさんに選んでもらいました・・・・・・」

    「・・・・・・なんかそんな気はしてた」

    「って、こんなところで立ち話してちゃ勿体ないし、早く入りなよ」とジュンコに手を引かれて結局店に入ることになってしまった。

    「おすすめはプリンのア・ラ・モードだよ」なんて言いながら本人はバックヤードの方へ行ってしまうし。

    結局ウイは、ぽつんとカウンターの列の後尾に取り残されてしまった。

    (な、なんの罰ゲームですかこれは・・・・・・こんなに人が多いところでお茶なんて飲んでられませんよ・・・・・・)

    しかし並んでしまったものは仕方がないので、軽い昼食ということにでもして、菓子はまた別の店で買って帰ろう・・・・・・。

    と、あきらめの境地に至るウイなのだった。

  • 105二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:34:40

    >>104


    かくして、プリンのア・ラ・モード(オプションでクロワッサンも付けた)とカフェ・ラテがウイの目の前にサーブされたわけだが。

    「なぜ、ジュンコさんが目の前に・・・・・・? 今バイト中ですよね?」

    「うん、お昼休憩まだだったから、私も今からお昼なんだ~。友達が来てるって店長に言ったらさ「行っておいで」って」

    「なんて自由な・・・・・・」

    「ここの店長はいつもこんなだよ、ゲヘナ生でも普通に接してくれるし、賄いもくれるし、本当に良い人!」

    (ジュンコさんの人柄も半分くらいはあるのでは・・・・・・)

    「それで、どう? 美味しい? っていうか、美味しいよね!」

    「え、ええ・・・・・・美味しいです。本当に」

    「えへへ、良かった。でも以外だったわ、ウイってこういうお店にも普通にくるんだ」

    なんと答えるか一瞬迷うが、わざわざ何かごまかすようなこともない、か。

    「いえ、来ませんよ、普段は。今日は本当にたまたま、というか今度ジュンコさんが来るときの、お茶菓子を見繕いに来ただけといいますか・・・・・・」

    ジュンコの頭の上に『?』が浮かんでいるように見える。

    「私用のお茶菓子を買うために私のバイト先に・・・・・・? ん???」

    「し、知らなかったんですからしょうがないじゃないですか!」

    「あれ、言ってなかったっけ?」

    「言ってませんね」

    「あはは・・・・・・ごめんごめん、でもこうやってお茶できたんだし、良いじゃん」

    ジュンコは楽しそうにミルクティーを啜る。

    ウイはクロワッサンを齧りながら、この人は本当に、何をやっていても楽しそうだな。などと考えるのだった。

  • 106二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:37:54

    >>105


    こんなにも違う人種に思えるのに、なぜ彼女は私に構うのか・・・・・・。私もなぜ、彼女を拒絶することなく、されるがままなのか・・・・・・。

    ただの本好き同士なだけなのだろうか? シミコやヒナタさんとは何か違うのか? その手の知識は私には無い。興味もなかったし、今まで必要ともしていなかった分野だから。

    「どうかしたの、ウイ。なんか小難しい顔してるけど」

    「小難しい事を考えていました」

    「せっかく美味しい物食べてるんだから、もっといい顔してよ」

    「無理です」

    「無理でもやるの、食事は何を食べるかはもちろん大事だけど『どう食べるか』も同じくらい大事だって、うちの会長も言ってたもの」

    (意外と哲学的な部分にも足を踏み入れてるんですね、美食研究会・・・・・・私が思うよりまともな部活なのでしょうか・・・・・・)

    「はい」とジュンコが自分の食べていたミルフィーユをひと口分、フォークに刺してウイの口元に寄せる。

    「え、なんですか」

    「ひと口あげるから、いい顔して」

    無茶を言わないで欲しい。そういう性格でないのは彼女も何度か会って把握済みなはずなのに。

    「結構です」と言おうとしたら無理やり口に詰め込まれてしまった。

    「おいしい?」

    「・・・・・・ええと、はい・・・・・・オイシイデス」

    顔が熱すぎる。笑顔を、と言われていざやろうとしてもどうすればいいのか分からない、というか表情が動かせない。

    あの時マッサージしてもらうべきは肩ではなく、表情筋だったのかもしれない。


    「全然ダメじゃん・・・・・・じゃあ今回はウイの分まで私がいい顔しておくね!」

    そういって彼女は満面の笑みを見せる。

    ・・・・・・眩しい。

    やっぱり、彼女の笑顔は苦手だ。私にとってはフラッシュバンみたいなもので、目が眩みそうになる。

    眼球の奥が痛むような強いこの光に。

    ・・・・・・いつか慣れるのだろうか。

  • 107二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:46:33

    >>106


    それからはなんだかんだと少しの間おしゃべりをしながら過ごした。

    時間で言えば30分ちょっとだろうか、ジュンコはバイトの合間のお昼休憩なのだから、そんなものだろう。

    その中でジュンコにまだ行ったことのないお菓子屋さんを教えてもらったので、リサーチもかねてそこのお菓子を買って帰ることにした。

    次に彼女が古書館に来た時に2人で食べることにしよう。


    慌ただしい昼食を終えて、店を出る。

    店のドアの外から店内を振り返るとカウンターあたりでジュンコが手を振っていた。

    手を振り返そうかと思ったが気恥ずかしさが邪魔をして、中途半端に手を上げて挨拶するだけに留まった。

    「なんとも中途半端な・・・・・・良くないですよ、そういうのは」

    ジュンコさんもそう言っていたでしょうに、と。

    自分に言いつけて、ため息をひとつ。

    とぼとぼと歩いて件のお菓子屋さんを目指すウイの背中は丸まっている。また幾何〈いくばく〉もしないうちに肩も凝りそうだ。




    「あのお友達はどんな子なの」

    ふと店長に尋ねられた。客が一旦捌けて空いた時間のほんの雑談。

    「うーん、本が好きで、気難しくて、なんかいつもどよーんってしてて」

    「随分タイプ違うね・・・・・・」

    「そうかも? ああ、あとはね、すっごく美味しいコーヒー淹れるのよ」

    「さてはそれ目当てだな」

    「ぐ、偶然! 偶然だから!!」

    そんなことで騒いでいるうちにまたお客さんが来て、店は慌ただしくなり始める。

    今日もジュンコの一日は慌ただしく終わっていきそうだ。

  • 108二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 18:49:07

    あけおめでございます
    何とか元日のうちに投下できました
    保守助かります。

  • 109二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:53:24

    あけおめです
    続きの投稿来て嬉しい!

    ウイは相当疲労してたけど、普段行かないような場所に行くと疲れるよね…

  • 110二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 08:13:10

    優しくて鋭い店長に惚れそう

  • 111二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 19:14:28

    ジュンコを名前呼びできて何より

  • 112二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:31:50

    当たり前のように自分の食べてるミルフィーユをウイに一口あげるジュンコいいね

  • 113二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 09:26:13

    スレ主だよ、
    今日は予定があって投下できるか分からない。

  • 114二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 17:52:28

    OK
    無理せんでええよ

  • 115二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:39:25

    保守

  • 116二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 03:38:11

    寝る前保守

  • 117二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 12:13:50

    続き待ち保守

  • 118二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 20:38:35

    >>107


    さて、今日もジュンコはトリニティへと足を運んでいた。

    空はおぼろ雲に覆われてどことなく薄暗い感じがする。

    そういえば最近、周囲の様子がきな臭い。

    というのも、アカリやハルナがやたらと最近のトリニティの様子だとか、校内の警備がどんな感じかとかを聞いてくる。

    明らかに不自然だし、絶対に何か企んでいると思うけど、こちらに対して打ち明けるつもりはないらしい。何か不都合でもあるのか、それか、ただ単に最近私がウイと仲良くしてるのを知っていて、あえて邪魔にならないように計らってくれているのかもしれない。

    どちらにせよ、こうやって気に掛けていないといけないから、邪魔にはなっているのだけど。


    そんなことを考えながら歩いていくトリニティスクエアの一角で、妙な一団とすれ違った。

    3人のうち1人は銀のアタッシュケースを持っていて、残りの2人がやたらと慎重に周囲を伺っているのが明らかに不自然に見えて、思わず目で追ってしまっていたが、そのうちの1人に気付かれて、睨まれてしまった。

    「何見てんだよ」

    「え、ううん、別になんでもないけど。何が入ってるのかなーと思って」

    「関係ないだろ」

    「? まぁ、関係はないけど」

    「急いでんだよ」

    「???」

    と、まぁそんなことで、彼女らはさっさとジュンコの横を通り抜けて、さっさと歩き去って行った。

    まぁ、そういう挙動の人もいるか。なんて、失礼にもこれから会うであろう友人を思い浮かべながらトリニティの古書館に向かった──────

  • 119二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 20:40:52

    >>118


    ──────の、だが。

    古書館に付くや否や、物々しい雰囲気が漂っていた。

    黒ずくめの集団、トリニティの正義実現委員会が古書館を囲むように集まっていて、とても中に入らせてもらえるような状態ではない。

    それどころか、古書館の近くに着くや否や、正義実現委員会のメンバーに声を掛けられてしまった。

    「あなたは・・・・・・ゲヘナ生!? どうしてゲヘナがここに!?」

    (わぁ、なんだかデジャブを感じる)

    「えっと、友達に会いに・・・・・・?」

    「はぁ!? ゲヘナの生徒がトリニティの生徒とお友達なんですか!? そんなの信じられません!! どうせ古書を盗んだのもアナタなんでしょう!?」

    「い、意味が分からないんだけど!? なんでトリニティ生ってみんなこうなの!?」

    ジュンコと正義実現委員会が押し問答になる前に、2人の間に割り込むようにしてハスミが立った。割り込む、というよりも熱くなる正義実現委員会の子を後ろに引き下げたといった方がいいかもしれない。

    「お久しぶりですね、ジュンコさん。といっても晄輪大祭ではお話しする機会もなく、遠目に見る程度でしたが」

    「そういえば競技に出てたんだったわね。えっと・・・・・・久しぶり」

    ハスミは小さく頷いて、さっさと雑談を切り上げた。

    「先ほどは部下が失礼しました」

    「別にいいわよ、慣れてるもの」

    「そうですか・・・・・・では本題に入りましょう。先ほどウイさんから古書館の稀覯本が無くなっていると連絡を受けまして、捜査しているところです。そろそろ近辺の封鎖も行われているでしょうが・・・・・・」

    「わ、私じゃないよ!?」

    「ええ、そうでしょうね。ですが共謀犯ではないとは言い切れません、事情聴取は必要になりますので、ご同行願います」

    「えええ! そんな!? う、ウイは!?」

    「ウイさんも聴取中です。まぁ彼女の場合、犯人に心当たりがないかというのも勿論ですが、管理責任の追及の側面が強いでしょう」

    「は!? ウイが処罰されるってこと!?」

    ハスミは小さくかぶりを振る。「いえ、そういう可能性もある、というだけの話です」と付け加えたが、それでもジュンコはあまり得心がいかない顔をしている。

  • 120二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 20:46:36

    >>119


    「では、ジュンコさん。たとえ話をしましょう・・・・・・。一軒のスイーツショップがあるとします。そこでは質の低いスイーツがその品質に見合わない値段で売られている。これはパティシエのチーフが、オーナーに黙って行っていたものとしますね?

    この時、あなた方美食研究会はチーフは勿論ですが、監督責任を果たせていないオーナーも処罰するべき、と考えるのではないですか?」

    「うぐっ」とジュンコから小さく声が漏れた。それは、そうかもと思う。

    会長ならどうするか? 爆破するだろう。チーフもオーナーも諸共に。

    「つまりそういうことです・・・・・・。まぁ、そう身構えないでください。

    そのような大事〈だいじ〉になることはまずないでしょう。図書委員会としても、ティーパーティーとしても彼女の存在は大きなものですから、彼女にはあの席に居てもらわなければ困ります。それに・・・・・・」

    「・・・・・・?」

    「それに、古関ウイさんは事情を説明する際、真っ先にあなたのことを案じていましたから、あなたも事情聴取だけ受ければ、すぐに解放されるかと」

    「ウイが・・・・・・そうなんだ。あははっ、最初会ったときはゲヘナのバンディットが~とか言ってたのにね」

    (あの人らしいですね。というかゲヘナが概ねバンディットなのは間違っていないのでは・・・・・・?)

    など、考えかけてハスミは軽く咳ばらいをしてどうでもいい思考を掻き消した。

    「ともかく、お話は屯所で伺いますので、ご同行願います」

    「はーい・・・・・・」

    そうしてジュンコはハスミに着いて正義実現委員会の屯所まで移動した。


    移動の間にふと思う。

    もしかしてウイって思ってたよりすごい人なのかな? 

  • 121二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 20:51:51

    >>120


    「さて、ついでですからこのまま私が聴取までさせてもらいます。それではジュンコさん・・・・・・ここ最近の動向など、わかる範囲で教えていただいてもよろしいですか?」

    「うーんと・・・・・・」と、記憶をさかのぼりながら何をしていたか考えていると、ふとあることを思い出し「あ」と声を漏らす。

    「どうかしましたか?」

    「ここに来る途中で変な3人組見かけたかも・・・・・・カバン、じゃないな。アタッシュケース? みたいなのを持ってて」

    「な!? なぜもっと早くに言わないのですか!」

    ハスミが勢いよくデスクを叩きながら立ち上がる。

    「忘れてたというか、そんな重要なことだと思わなかったのよ! それに本当にそうかは分かんないじゃない!?」

    「いいえ、おそらく間違いないでしょう、3人だったのですね? なにか特徴は覚えていますか?」

    「えっと・・・・・・うーん、どんな顔だったっけ・・・・・・パッとしないというか印象に残らない顔だったからあんまり覚えてない・・・・・・」

    「ふむ、困りましたね・・・・・・ジュンコさん、この後お時間いただけますか?」

    「ま、まさか・・・・・・」

    「ええ、犯人判別のために我々正義実現委員会に同行していただければ、と思いまして」

    ジュンコは逡巡するも、答えはほぼ決まっている。

    「・・・・・・その稀覯本って、古書館から盗まれたのよね?」

    「はい、間違いありません」

    「なら、行くわ。どのみちこの件が片付かないと、ウイとはお茶もできないんでしょ」

    ジュンコの目つきが少し真面目なものになって、二丁持ちのアサルトライフルの弾倉や留め具の状態を確認していく。


    ジュンコの良いところは大体いつも笑顔で温和なところだ。

    食事や読書、友人とのひと時を邪魔されるまでは・・・・・・。

  • 122二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 23:40:22

    古書館での盗難事件によってウイとのお茶を邪魔されたジュンコは相当キレてそうだね

  • 123二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 11:44:59

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 16:14:06

    トリニティとの共闘は熱いね

  • 125二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 21:48:02

    犯人達に追いつけるかな?

  • 126二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 02:24:39

    寝る前にもう一回投稿できるかと思ったけど、
    思ったより執筆が難航しちゃいましたな・・・
    ここは自己保守に留めて今日明日にでも投下することにします

  • 127二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 12:14:38

    昼保守

  • 128二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:31:27

    もっと文章捏ねたい・・・もう少し、時間を下さい・・・
    ネタが無いとかではないので突然蒸発してエタったりは心配しないで

    慣れないアクション描写に苦戦してるだけだから・・・
    気長に待ってくれると嬉しいよ。

  • 129二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:36:09

    お疲れ様です、楽しみに待ってます

  • 130二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 08:23:34

    保守

  • 131二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:45:35

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 21:07:51

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 00:45:49

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 03:58:33

    >>121


    「あ、ジュンコさん」と、屯所の外に出るなりウイから声を掛けられた。向こうもたった今聴取が終わったらしい。

    まだ朝だというのに随分疲れた顔をしているのを見て彼女がどんな様子だったかは、なんとなく察せられた。

    「ウイ、もういいの?」

    「ええ、一通り終わりました。ただ、調査には協力しないといけないので、今日はその・・・・・・」

    「うん、分かってる。ていうか私も協力することになったから」

    「えぇ!? ど、どうして・・・・・・」

    「犯人の顔見てるかもしれなくて・・・・・・あんまり印象には無いんだけど、見たら思い出すかなって」

    「な、なるほど・・・・・・」

    その後、事の経緯やお互いの持っている情報を交換した。

    ハスミも交えて話し合った結果。ジュンコとウイは2人してハスミ達正義実現委員会の捜査線に協力することになりそうだ。

    委員会が用意したミニバンに乗り込み、検問が張ってある前線へと向かう。

    運転はハスミ、助手席には正義実現委員会の通信係。後部座席にジュンコとウイが乗り込み、ミニバンはトリニティの校門を抜けるのであった。


    「・・・・・・えぇ!? わたしも行くんですか!?」

    「ウイさん、何を今更。あなたが居ないと稀覯本を取り返しても真贋が分からないではないですか」

    「た、確かにそうですね!? ・・・・・・はぁ・・・・・・あの子に傷でも付かなければいいですが・・・・・・心配です。」

    「そんなに大事な本だったの?」とジュンコは訊ねてみた。

    ウイは静かに「私の古書館に大事じゃない子なんて居ませんよ」その面持ちは我が子を心配する母か祈りをささげる聖女のようでもある。

    「そっか」と淡白に返すジュンコの事をちらりと横目で見るウイの視線には、彼女は気付かなかったらしい。

  • 135二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 03:59:16

    >>134


    (ジュンコさん、今日はなんだか不機嫌なような・・・・・・? いや、そもそも今日はお茶するためにわざわざ休日に来てくださったのにこんなことになってしまっているのですから、無理からぬことですよね・・・・・・)

    「あの・・・・・・ジュンコさん」

    「なに?」

    「怒ってます? ・・・・・・よね? すみません・・・・・・こんなことに巻き込んでしまって」

    「まぁ、確かにムカつきはするけど、ウイのせいじゃないじゃん。私は先輩の教えを守るだけだよ」

    「先輩の教え、ですか?」

    「そ、ハルナとアカリが言ってた心得みたいな。ウイにも教えてあげるね。

    ひとつ、『受けた恩は必ず返すこと』

    ひとつ、『受けた仇も必ず返すこと』以上よ!」

    なんてシンプルな。

    そして、真理かもしれない。とウイは静かに納得しているのだった。



    2人がそんなやり取りをしている裏では、車を出してからというもの各方面からひっきりなしに連絡が入ってくる。

    何班から何班へ通信とか、何号道路で検問を開始したとか、張ってた場所で別の事件が発生しただとか・・・・・・。

    そんな中で、ようやく犯人と思われる情報が舞い込んできた。

    『通信、こちらD班。検問を避けた不審な車を追跡中っすー、車は旧8号線をまっすぐ東へ逃走、応援を求むーって感じっすね~』

    「こちらハスミです。丁度ここからなら旧8号線までそうかかりません、道路を封鎖し、挟み撃ちの形にできるかと」

    『お、ハスミ先輩〜。丁度良かったっす、ではその方向で行きましょうか。道路の封鎖の方、お任せしますね。あ、そうそう、追跡中の車はグレーのステーションワゴンっすよ~』

    「了解。配置に着きます」


    ミニバンは勢いよく方向を変え、件の旧8号線へと向かう。

    旧8号線は道路整備がされる前の道で、右左折するための道が極端に狭い。わざわざリスクは侵さないだろう。

    ということは、ここで挟み撃ちにできる概算が高い。

    「さて、うまくハマればいいですが・・・・・・2人とも、思ったより早い接触になるかもしれません、準備の方をよろしくお願いします」

    「うん、私はいつでも大丈夫よ」

    「はぁ・・・・・・私は戦闘とかは苦手なので後方から着いていきますね・・・・・・」

  • 136二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 04:02:14

    >>135


    旧8号線を疾走していく古風なステーションワゴン、車体はすでに塗装は落ち、傷へこみ錆だらけで酷い見た目だ。

    勿論、正義実現委員会の車ではない。

    社内にはジュンコが今朝すれ違った3人組とアタッシュケースが乗っている。

    「・・・・・・まだ追ってきてるか!?」

    ハンドルを握る1人が問うと、アタッシュケースを抱えた同乗者が後部座席から後方を確認して追手の数を数える。

    「来てる! 3、いや、4台か!!」

    「くそっ! Uターンしたのは失敗だったか・・・・・・?」

    「いや、さすがに検問を誤魔化せなかっただろ。このままプランBで行くとして、目的のビルまでまだあるよな?」

    「ああ、ビルまで行けりゃあ・・・・・・私たちは、やり直せるんだ」

    「・・・・・・・・・・・・」

    アタッシュケースを抱えていた1人が、蓋を開けて中に納まる一冊の本を確認する。あたしはこの本に何が書いてあるのかなんて知らない。興味もない。あたしらにとっちゃ、こいつはただの金の成る木だ。あるいは、金の延べ棒か、まぁなんだっていいけど。

    こいつ一冊で300万円も手に入るってのは、なんとも不思議な話だ。別にこいつに殺傷力があるわけでも無いし、ただのカビ臭い本にしか見えないが。

    「テメーはいいよな。テメーの価値は300万だってよ、あたしらは無価値な負け犬だってのに・・・・・・」

    「まーそう言うなって、そいつをバイヤーに渡せば300万、3人で分けても100万だろ? そしたら私たちの価値は100万円分ってことじゃん」

    「・・・・・・・・・・・・」

    先ほどから無言を守っている1人は「そんなことはないだろ」と思ったが口には出さなかった。

    ただ、うまい話があると馴染みの同期から誘われたから、ふたつ返事で乗っただけだ。

    その1人は助手席でただただ静かに、自身の相棒であるスナイパーライフルに弾を込めた。

  • 137二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 04:03:32

    >>136


    道路を封鎖し、ミニバンを道を塞ぐように停めて最悪犯人の車を物理的に止められるようにしておく。かなり強引なバリケードだが、多少の損害はこの際目を瞑ろう。

    そうして待つと、けたたましいエンジン音が聞こえてくる。相当アクセルを踏み込んでいることが分かるが、このまま突っ込んでくるのだろうか。

    「狙撃部隊、構え!」

    ハスミの号令に、数名の正義実現委員会が一斉にスナイパーライフルを構える。

    これでワゴンのタイヤをバーストさせ、停車させることができれば一番スムーズだが。

    「各員、私の発砲に続くように!」

    ハスミがスナイパーライフルを構える。


    やがて小高くなった坂の上に車体を捉えたが、近づいてきたステーションワゴンの助手席側の窓から生徒がすでに上半身を大きく外に出してスナイパーライフルを構えている。

    ハスミが車のタイヤに照準した瞬間、彼女の持つ銃が爆ぜるように弾け飛んだ。


    「な────ッ!?!?」

    ビタリとハスミのライフルの銃口を狙った一撃だった。


    「ハスミ先輩!?」

    「構わないで撃ちなさい!!!」

    彼女の判断は極めて冷静かつ迅速であったが、ハスミが初弾を撃てなかったことで正義実現委員会のすべての行動がワンテンポ遅れ、動揺が巻き起こる。

    気を持ち直した者から発砲し始めるが、このロスはあまりに大きかった。

  • 138二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 04:11:34

    >>137


    しかし、焦っていたのは犯人側も同じだが。

    「なんだありゃ!? バリケードに、正実共かよ! 待ち伏せなんて聞いてないぞ!!」

    「んなこと言っても行くしかないって!!」

    「・・・・・・・・・・・・」

    スナイパーはまた助手席に戻ると満足げに、ふぅ、と息をついていた。

    「そんでおめーは仕事終わったみたいな顔してるんじゃねーー!!」

    「言ってる場合か!? 避けねえとハチの巣だぞ!!」

    タイヤへの命中こそないが、正義実現委員会の弾幕が車のフロントガラスやサイドミラーを粉砕していく。

    「うわぁあああああああ!!!」

    「やばいって!!! やばいって!!!」

    助手席の無口なスナイパーは身を沈めるようにずるりと浅く座り、頭の位置を下げる。直後に丁度頭の上を弾丸が通過し座席を貫通して風穴を開けていった。

    さすがにライフル弾の直撃は御免被る。といったところか。

    ワゴンは右往左往しながらもギリギリのところで正義実現委員会の狙撃による致命傷は避け、そのままバリケード代わりのミニバンに突っ込むかに思われたが──────


    「おらぁあああああああぁ!!!!」と車の中から雄叫びが聞こえてきた気がした。あるいは同乗者の悲鳴だったのかもしれないが。

  • 139二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 04:12:22

    >>138


    気合でハンドルを右へ切るドライバーに対して車が応えるかのように車体が傾く。

    片輪状態になって、ミニバンと電柱の間ギリギリのスペースを通り抜けていく。

    「ウソでしょ!? アカリだってあんな運転できないわよ!? 

    ──────でも、顔は見れた! あいつらで間違いないわ!!」

    「今の一瞬で見えたんですか・・・・・・」

    「くっ。私としたことが、抜かりました」

    「今のは仕方ないわよ、あんな凄腕のスナイパーが居るなんて思わないし・・・・・・それよりも急いで追わなくちゃ!」


    バリケードが空振りに終わると同時に、後ろから追っていた正義実現委員会の車数台が急停車する。こうなってしまうとバリケード替わりのミニバンがかえって邪魔になってしまう。

    「そこのおふたり、あとハスミ先輩! 乗ってくださいっす」

    追いついてきたイチカが急停車し、セダンタイプのジャガーの窓からひらひらと手を振っている。

    古風なトリニティの街並みに、レトロタイプなセダンのカーキ色のボディが良く映えて・・・・・・などとじっくり見ている場合ではないのが非常に残念である。

    連絡係をしていた正義実現委員がミニバンを後退させ、進路を開放した。

    「じゃ、急ぐっすよ~」


    ジャガーは弾かれたように発進し、先を行くワゴンを追う。

  • 140二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 04:20:32

    一旦ここまで

    ルパン三世みたいなファンタジー的なアクション好きだけど文章でやろうとすると難しいね・・・。(カリオストロの城のカーチェイスみたいなやつ)
    も少しドタバタアクション続きます。が、多分次の投下も二日後とか三日後な気がします

    感想と保守ありがとうね

  • 141二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 10:57:31

    投稿ありがとうございます!

    ウイとジュンコも犯人追跡に同行することになったけど、犯人に翻弄されてますね

  • 142二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 11:28:30

    なんやかんやハルナとアカリを慕ってるジュンコ可愛い
    きっと2人も内心可愛がってると思う

  • 143二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 20:09:12

    保守

  • 144二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 23:52:12

    犯人に追いつけるかな?

  • 145二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 00:34:03

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 07:33:09

    自己保守

    うーん、スレ主も書くこと特になくて保守投げるしかないというw

  • 147二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 08:56:37

    >>146

    確かジュンコって晄輪大祭の小説で音速レベルで走ってる描写があったから全力疾走でワゴンに追いつく展開とかどう?

    あるいはお腹が空いた&ウイとの時間を邪魔されてイライラしたことで強化されたジュンコの連射能力で犯人達を圧倒するとか

  • 148二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 12:57:24

    アクション描くならジュンコの俊足と空腹時の謎バフは入れたいですよねぇ

  • 149二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 19:47:41

    異能持ちに加えて足の速さだけなら最強格に引けを取らないの何なの…?

  • 150二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 03:59:55

    >>147

    >>149

    保守ついでの語り。


    ・俊足

    ・謎異能

    ・不幸体質

    と結構属性多いのにあまり目立ってないのが不思議なんですよね。


    まぁ、ジュンコのSS書いてて思うのは性格が素直なので心理描写しようとすると淡白なことしか書けなくて難しいとは思います。

    味のある文章書くならウイみたいに内心で気持ちをこねくり回してそうな子の方が、書くことたくさんあって書きやすいですね。


    自分の手癖がそうってだけなのかもしれませんが

  • 151二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 13:36:09

    ジュンコ以外の美食研究会メンバーがかなりキャラが濃いから比較すると目立ちにくいのはあるかも?

  • 152二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 22:53:13

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 03:56:39

  • 154二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 04:49:32

    ちょっと前からスレタイは見てたけどここまで上質のSSだったとは……
    まだ途中だけど一気読みでとても満足感。ジュンコの言うように食事後の満腹感というか上品なケーキを食べたような

    ジュンコいい子だね本当。割と常識あって相手のことを考えてコミュニケーション取れるからウイとも少しづつ仲良くなれて

    ジュンコとウイがすきなんだなぁっていうのが伝わってきて
    原作のネタの拾い方も微細にいって
    実際にブルアカのゲーム画面でジュンコやウイが動いてリアクションしてっていうのが目に浮かぶ

    続きが楽しみです

  • 155二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 12:05:54

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 17:32:14

    >>154

    執筆に悪戦苦闘しているときにその濃厚な感想は救済の光とでもいいますか、背中を押されますね


    ご期待の、おいしくてボリューミーなSSになるようにがんばります

  • 157二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:44:49

    >>139


    やがてワゴンの姿を前方に捉えたが、また、先ほどのスナイパーが窓から身を乗り出してこちらを牽制している。

    「おっとぉ、おっかないっすね~」

    イチカは軽く唇を舐めて湿らすと、流麗な手さばきでシフトレバーを操作し、さらに加速していく。

    エンジンが唸りをあげてふたつの車両が徐々に近づき始めたころ、前方のスナイパーライフルから閃光が放たれて硝煙が舞う。

    ジャガーのフロントガラスに激しく鉛玉がぶつかる音がした。

    しかしガラスには小さく傷跡が残った程度だ。それを見止めたイチカは悪戯っぽく口角を上げる。

    「ひひ、特殊強化ガラスの防弾製っす。壊すならダイナマイトか攻撃ヘリでも持ってくるっすよー」

    「へー、さすがトリニティ。お金あるんだね」

    なんてジュンコが感心していると、前を行くワゴンの助手席からぬるーっと黒い棒が姿を表しはじめた。

    先ほど見えていたライフルとは桁違いに銃身のサイズが大きい。

    現代日本ではまず目にしないだろうが、ことキヴォトスにおいては治安維持組織、戦闘特化の組織で目にすることもあるだろう勿論、正義実現委員会にも使い手が居る。

    「じゃあ、アレも防げるの?」とジュンコが訊ねる。

    イチカは顔色を悪くしながら言葉を濁して呟いた。

    「いやぁ・・・・・・対物ライフルは・・・・・・ちょっと・・・・・・」


    直後、イチカがサイドブレーキを引きながら急ハンドルを切り、車をドリフトさせる。

    タイヤが空転し、けたたましく音を立てるのが泣き叫んでいるかのようにも聞こえた。

    車体に伝わる振動と、巨大な弾丸がぶち当たる音が車内に響くと、フロントガラスに巨大なヒビが入って視界を奪う。

    車体を傾けて弾丸を反らさなければどうなっていたことか・・・・・・。

    「自動車のフロントガラスでパリィするなんて・・・・・・」とアカリの運転に慣れたジュンコもさすがに面食らっているようだった。

  • 158二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:50:41

    >>157


    「さぁて、そろそろ反撃といかせてもらうっすよ」

    背中に重力を感じるほど急加速しながら、ジュンコの居る席の窓が解放されていき、車内に空気が流れ込んで強い風を巻き起こす。

    ジュンコの赤いツインテールが、風を受けて激しく乱れている。

    「オッケー! 任せて!!」

    ジュンコ持つ2丁のアサルトライフル、ダイナーズアウトローのセーフティーが解除され、照準を・・・・・・いや、アサルトライフルの2丁持ちで『照準』などあってないようなものだ。

    普通、銃は照準を合わせてから撃つものだが、連射力があるなら銃弾が当たった場所がレーザーポインター代わりだ。

    トリガーを引き絞り、弾丸の雨を降らせる。それだけでいい。

    最初はワゴンの後部ドアにいくつか穴が開いた。それを弾着観測のようにして位置を合わせていく・・・・・・車のボディを這う様に弾痕が次々と刻まれて素敵な文様が生まれた。次は窓を粉砕して風通しを良くしてやろう。


    「どわぁあああああ!?!?」


    破砕されたガラスが雹のように降り注いでくる。

    犯人達は頭を低くして弾丸を躱すがそう長くもつはずもない。

    じきに犯人たちの車は大破し、コントロールを失って路肩の電柱に突っ込んで停止した。

    車から転がり出るように飛び出した3人組のうち、運転していた生徒が「だがもう目的地だ! このビルだぞ、走れ!」と叫んで、アタッシュケースを抱えた生徒とビルの中に飛び込んでいく。

    スナイパーライフルを抱えたひとりは「行け」というように、無言で追い払うようなジェスチャーをした。

    どうやら彼女だけで足止めする気のようだ。


    スナイパーはひとり思う。────さぁ・・・・・・遊ぼうか。

  • 159二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:53:15

    >>158


    イチカ、ハスミ、ジュンコ、ウイの4人も車から降り、ジャガーを挟むようにしてスナイパーと対峙する。

    車の陰から出ようとすると、的確に弾丸が牽制してくる。彼女はどうやら本当に腕が良い、なぜあんな犯罪に手を貸しているのかは分からないが、あの時ハスミのライフルを打ち抜いたのはまぐれではないようだ。


    「うーん、あいつ邪魔だね、なんとか一瞬でも気を反らすことはできないかな」

    ジュンコの提案に、正義実現委員の2人が作戦を立てる。

    「ウイさん、銃をお借りしても?」

    「え、ええ。どうぞ」

    ウイは自身の愛銃をハスミに手渡す。

    ハスミの物や正義実現委員会の制式銃とは異なるものだが、一応スナイパーライフルの括りではあるため、問題なく扱えるだろう。

    「私とイチカで引き付けます、おふたりはアタッシュケースを奪取してください」

    「ダッシュで奪取してこいってことね」

    「ジュンコさん、今そんなことを言っている場合では・・・・・・」

    「あはは、いいっすね! こういう時にこそジョークを言えるのは良い事っす」

    「じゃあ、行くっすよ。準備はいいっすね?」とイチカは続ける。


    先陣を切ったのはイチカ。

    車のタイヤに足をかけ、そのまま跳躍して空中でくるりと宙返りしながら前面へと躍り出る。

    愛銃、レッドドラゴンのトリガーを引き、そのまま流れるように横にローリングするとコンマ数秒前までイチカが居た場所をライフル弾が撃ちぬいていく。

    イチカの動きはまるでブレイクダンスでも踊っているかのよう。

    車を飛び越えた時など、ジュンコは思わず(羽のある生徒ってやっぱ飛べるんだ)と考えていた。

    (へへ、今はハスミ先輩があのスナイパーに睨みを利かせてくれてるっすからね、こっちは自由に動けるってものっす)

    「さぁて、暴れさせてもらうっすよ~」


    スナイパーの目がイチカに向かった瞬間を見逃さず、ジュンコは飛び出す。

    (は、速っ!?)とウイは目を剥きながらも、慌ててその背中を追いかけた。

    物陰から飛び出したジュンコとウイにスナイパーも気付いただろうが、追うことはなく、目の前のイチカとハスミに集中することにしたらしい。

  • 160二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:54:11

    保守

  • 161二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:01:20

    >>159


    「ウイ! 早く!」

    「ま、まって・・・・・・くださ、というか・・・・・・先に行っててください・・・・・・」

    「わかった! 早く来てよね!!」

    そう言うとジュンコは平地でも走っているかのような勢いでビルの階段を駆け上っていく。

    階段を1段2段飛ばして行く姿はまるで飛んでいるようでもある。

    ウイは(やっぱり、羽があると飛べるんですかね・・・・・・)なんて、少し前のジュンコと同じようなことを考えていた。


    階段の一段、踊り場のひとつを上るたびにだんだんと息が上がってくる。

    ジュンコと犯人たちはどこまで登ったのだろう?

    途中、銃撃音が響いていた。あの連射音はジュンコさんのアサルトライフルだろう。

    喉がぜぃぜぃと音を立てて、だんだんと足がプルプルしてくるくらい階段を上っても彼女らの姿は見えず。

    しかし、銃撃音はどうやら上階ではなく、この階層のどこかの部屋から聞こえるようだった。

    「とにかく、行ってみましょうか・・・・・・」

    歩き始めて、廊下の角を曲がったところで何かに躓いた。

    「うへぁ!?!?」

    ドテ、と大した受け身も取らずに転倒したものの、痛みや外傷なく済んだ。

    一体何が?

    振り向くと気を失って伸びた犯人の一人が転がっていた。おそらくハンドルを握っていた人物であろう。

    ウイは逡巡して、傍らに転がっていたその生徒のハンドガンを拾い上げる。

    安価な部品で組まれた安っぽいグロックだが、丸腰よりはマシ、というわけで、ちゃっかり残弾を確認したのち、拝借。

    そうしてまたウイは歩き出すが、ジュンコと犯人が居る部屋まで案外近かった。

    銃撃音が止んでいるのはどうやら2人が会話をしているかららしかった。

    ウイは半開になったドアからこっそり中を伺いながら会話を聞く。

  • 162二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:09:39

    >>161


    「さぁ、追い詰めたわよ! どうしてその本を狙ってるのか知らないけど、返してもらうわよ」

    「それはできないね、あたしらはコイツでやり直すんだよ」

    「・・・・・・やり直す?」

    「珍しい本を収集してる物好きなおっさんが居るんだ、そいつにこれを売れば300万円手に入る。その金を使って、あたしらの負け犬人生をやり直す!」


    犯人は一度息を入れて、ジュンコに向き直った。


    「なぁ、あんたゲヘナの生徒だろ? 30万で手を打たないか? あんたに30万やるから見逃してくれよ」

    「はぁ? できるわけないでしょそんなこと!」

    「そのワッペン、美食研究会だろ? 知ってるぜ。うまい飯食うためには金が必要だよな。30万ありゃあ、トリニティの高級スイーツ店を梯子することだってできるぞ! な、悪い話じゃないだろ?」


    ────それを聞いたジュンコは、ハルナが言っていたあることを思い出した。

  • 163二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:10:18

    >>162


    「もっとお金があれば好きな物を好きなだけ食べられるのに」とか「貧乏は敵だ」とかそんな話からの流れで出た話題で・・・・・・。

    そう、たしかあれはゴールドマグロの一件の後だったか。


    「確かにお金は沢山あればいいですが・・・・・・汚いお金で食べる美食など、どんな不味い食事より劣ってしまいますわ」

    「それってどういう意味? 会長」

    「フフ、そういうお金で得た物は、それ相応の『味』がするのです。

    食事をするときも、その後も。己の信念に背いた後悔や罪悪感は、ゲヘナの独房で出される臭い飯よりも最低な『味』として残り続けます。

    それはどんな美味しい料理にもまとわりついて、決して消えることのない、最低最悪の隠し味・・・・・・それが、汚い金で望むものを得る。という行為なのです」

    「・・・・・・反論があるんだけど、いい?」

    「ええ、どうぞ?」

    「ゴールデンマグロとかフウカの拉致はさ、お金は絡んでないけど汚い手段で手に入れたもの、と言えなくもないんじゃないの?」

    「あら、手厳しいですわね?・・・・・・なるほど、『汚い金』と表現したのは確かに紛らわしかったでしょうか、ごめんなさい、訂正いたしますわ。ふむ、そうですわね・・・・・・ここは『自分の心に嘘をついて得た金』とでも言った方が、実態に沿いますわね」

    「うーん・・・・・・なるほどね、そういうことなら少し理解できるかも」


    あの時の、あの会長の目・・・・・・きっと会長は「知ってる」んだと思う。

    会長の言う、最低最悪な隠し味の、その味を・・・・・・。

  • 164二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:59:01

    >>163


    だから────


    「そんなお金いらないし、300万は手に入れられないし、あなたはやり直しもできない」

    「それに私思ったんだけど」とさらにジュンコが続ける。

    「さっきから何度も『やり直す』って言ってるけど、あなたの言うそれって別にやり直しではなくない?」

    「・・・・・・どういう意味だ」

    「だって、あなたが今持ってるものは何も無くなってないし、リセットされたわけでも無いよね? だからやり直しではないと思うの。あなたが言ってることって、自分の持ってる手札がブタ札だから他人の持ってる強い手札を奪って楽に戦いたいって言ってるだけよね?」


    し、辛辣・・・・・・!

    物陰から見ながらウイは思う。

    あまりの正論に犯人の顔色から一瞬血の気が引いて、今度は赤くなる様子を見ていた。

    「うるせえええ!! あたしがやり直しだと思うならそれはやり直しだろうが!!」

    彼女はアタッシュケースを乱暴に開けると、中身を取り出してケースを乱雑に放り捨てた。

    「あんた、あたしの仲間は撃ったが、こっちは撃って来なかったな? 撃てないんだろ、こいつが傷つくから」

    「────っ!?」

    犯人はさらに怒りのままに捲し立てる。


    「くそっ、ムカつくぜ! こんな紙の束だってお前らにそんな風に心配されてっ! 心配してくれる奴が居て! あたしはなんだ・・・・・・!! なんで邪魔されなきゃいけないんだよ!!」

    「そ、それ以上は本当に撃つよ!?」

    「撃ってみろよ撃てるんならさ、もしあんたが動いたら」


    彼女は、ハンドガンを胸元のホルスターに戻しポケットからライターを取り出した。


    「この本を燃やす」

  • 165二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 00:11:34

    >>164


    ウイは焦燥した。

    慌てて、犯人の足でも何でもいいから撃とうと引き金を引くが、ガチン、という音と共に沈黙してしまう。しかもその音で、犯人に気づかれた。

    (ジャ、ジャムった!? この整備不良のポンコツ!!)

    「なっ!? 誰か居るのか!!」


    もう考えている暇など、合理的な判断を下している時間などない。

    ウイはすぐにグロックを捨てて犯人に駆け寄っていく。

    犯人は銃をライターに持ち替えていたためにすぐさま対応ができない、ジュンコの驚いたような顔も尻目に、飛びつくように犯人のライターを抑え込む。

    「何をする!!」

    「それはこっちのセリフ・・・・・・です!!」

    (本も心配ですが、ライターは、ライターだけはダメ!!)

    揉み合った末にウイは彼女の持つライターを奪い取ったが、同時に、ウイの腹部に犯人の膝蹴りが深く入る。

    「うぐっ!?」

    濁った声と共に、ウイの身体が横に弾き飛ばされて倒れ込む。

    「ウイ!?」とジュンコの心配そうな声を聞いたような気がしたが、同時に「バン」と銃声が響き、ウイの意識を刈り取ってしまった。

    ウイの頭が力なく床に着く。

    おそらく軽い脳震盪くらいのものだろうが・・・・・・ジュンコの逆鱗に触れるには十分だった。


    ジュンコの中で『ブチッ』と何かが切れる音がした気がする。


    目の前が染まる。赤い────気がする。


    銃を構えて、引き金を引いた気がする。


    犯人の反撃の隙も無く、粉砕されるハンドガン、犯人の彼女が気を失おうが、銃弾の嵐は止まず、本は彼女の手から落ち、砕け、打ち抜かれ、壊れた。

    彼女の武器名はダイナーズアウトロー。食堂の無法者。

    よほどの強者でも無ければ、無法者を眠りから覚ますべきではない。

    尋常ではない連射速度であっという間に弾丸を吐き出し、ようやく嵐が静まったのは銃身が赤熱し、膨張による玉詰まりで銃が故障した時だった──────

  • 166二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 00:19:09

    スレ主です。
    今回はここまでで・・・最後の方文章量が中途半端になったので肉付けしてたらちょっと時間差出来ちゃいました・・・ごめん

    次の投下でこのエピソードの決着まで行けそうです。アクション描きたいと思って軽い気持ちで書き始めたらめっちゃ長くなっちゃった。
    最後まで付き合っていただけると嬉しいです・・・

  • 167二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 07:04:35

    ジュンコ素直ゆえに言葉が辛辣……グサっと

  • 168二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 13:11:06

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 13:56:40

    犯人はウイを気絶させたことでジュンコのリミッターを外しちゃったね

  • 170二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 21:44:26

    追いついた、、、
    ジュンウイとかいう初見cpをつまみ食いするつもりがアクションありの良質なssでびっくりしたぞ
    応援してます

  • 171二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 22:03:26

    >>167

    ここのジュンコさんはなんか原作よりレスバ強い気がしますね


    >>169

    あとはスナイパーの人を抑えるだけですね

    まぁ一番ガッツリ戦闘シーンなのですが


    >>170

    ありがとうございます

    自分でもこんなハズでは…となるくらい書いてますw

    まだもう少し終われそうにないですから、よければ見てやってください

  • 172二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 05:37:20

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 16:40:03

    自己保守です。
    今日中・・・はちょっと厳しいかもですね。
    運がよければ日付変わったくらいに投下してるかも・・・

  • 174二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 23:12:36

    保守

  • 175二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:21:34

    >>165


    場所は一旦移り、少し時間を遡る。

    ビルの前の通りでは正義実現委員会の2人とスナイパーが戦闘している。

    ひとまずウイとジュンコを先に行かせることはできたが、どうにも攻め手に欠ける。

    イチカが何とか距離を詰めて制圧しようと何度もアタックを試みるが、なかなか距離を詰めることができない。

    (経験値の差・・・・・・っすかね・・・・・・)

    相手はおそらく長距離よりも中距離くらいのレンジが得意な、いわゆる凸スナなのだろう。

    そう言った手合いとはやりあった経験が少ない。

    内心舌打ちする。

    (思う様に行かないっすね・・・・・・)

    遮蔽に身を隠したイチカが乱れた前髪を、首を振って払いのけると、玉のように額に浮いていた汗が散った。


    (イチカ・・・・・・かなり焦れていますね・・・・・・こちらももっと効果的にサポートできればいいのですが)

    おそらく彼女は戦場の地形を把握して俯瞰的に見るのが得意なタイプなのでしょう。先生の俯瞰力の足元にも及ばないにしろ、その能力は脅威に違いない・・・・・・。

    しかし私はこのウイさんのライフルの特性を生かすためにも、安易に撃つわけにはいかない。イチカの動きと合わせる方がより効果的なはず。


    スナイパーが遮蔽から遮蔽へと飛び移る。

    こうなるとイチカは動かざるを得なくなってくる。射程距離の差によってじり貧に追い込まれては苦しい。何とか頼りない物陰を辿ってまた最初の場所、ジャガーの影に隠れることになってしまった。

    (ネズミみたいにこそこそと。まるでFPSゲームっすね・・・・・・私の仕事は陣頭指揮なのに・・・・・・)

  • 176二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:24:27

    >>175


    また一発、ライフル弾がジャガーの車体を揺らす。

    (さっきからバンバンとノックがうるさいっすね~・・・・・・スナイパーがそんなに発砲しちゃっていいんすかね・・・・・・うん? あれ・・・・・・この臭いって・・・・・・)

    そう思った瞬間、地面に付いていた膝にベトリとした感触があり、思わず手で拭う。

    赤っぽい半透明の液体が付着していた。

    「イチカ! 車から離れなさい!!」ハスミの声が届いたときには気が付いていた。

    (しまった、ガソリンタンクっすか!!)

    慌て飛び退くが、次の一発はすでに着弾し、その火花は漏れ出したガソリンに引火する。

    爆発音と業火がイチカを巻く。

    「おわっ!?」

    爆風で吹き飛ばされて思い切り背中から地面に落ちる、羽が痛い。

    これは背中をがっつり擦り剝いていそうだ。

    チリチリと焼けつく制服に目もくれず、すぐに体を起こして目前にある障害物の影を目指して足を踏み出す。


    スナイパーのスコープがじっとイチカを見留めていた。

    彼女は思う。

    あの正義実現委員、派手な動きも裏方も出来るタイプだな。爆発に巻き込まれてなお銃を手放さないその姿勢を見るに、存外闘争心が強い。

    ────良い兵士だ。


    発砲音がビルの間に響き渡り、イチカの体制を崩した。

    ゆっくりと、イチカの身体が倒れ込んでいく。イチカの動きが止まり、アスファルトに横たわった。

  • 177二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:33:14

    >>176


    ────さぁ、次だ。

    スナイパーは呟く。「私は、ここにいるぞ・・・・・・」

    ボソボソと囁くように彼女は初めて声を出した。枯れたような低い声だ。

    移動しようとして動くと、身を潜めていたコンクリートブロックの角が銃弾によって爆ぜた。

    どこからだ? 分からない。発砲音はしなかった。

    なぜだ・・・・・・?

    確かめてみるか、と彼女は上着を素早く脱いで遮蔽から放り投げてハスミの視線を誘い、自らは逆側の向きへと躍り出る。当然のようにハスミ側も対応したが、銃弾はギリギリのところで外れ、アスファルトを穿っただけだった。

    やはり音が聞こえない・・・・・・なんだ?

    しばらく彼女は物陰で考え、答えにたどり着く・・・・・・ああ、そういうことか。デ・リーズルカービン・・・・・・たしかそういう銃があったな。銃身全体がサプレッサーの作りになっていて発砲音を殺すことができる。

    正義実現委員会の制式装備では無いはずだが・・・・・・まぁいいだろう。

    楽しもう、正義実現委員会。


    ハスミもまた、スコープで崩れ落ちていくイチカを見ていた。

    すぐさま犯人に向けて一発の弾丸を打ち込む。頭に血を上らせた見境のない一撃かと思えばそうでもない様子だ。ハスミは静かだった。

    「・・・・・・・・・・・・」

    その表情は努めて冷静。

    血が上った風もなく、スコープを犯人の方へと静かに向ける。

    また一発躱された。四方に目でも付いているのか? あるいは百合園セイアのような超直感でも備わっているのか。

    こちらの居場所もそろそろ見当がつき始めているだろう。

    本当に、なぜこれ程の才能を持ちながらこのような犯罪行為をしているのか。実に勿体ない話だ。これほどのスナイパーなら正義実現委員会にも欲しいくらいだというのに。

  • 178二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:34:31

    >>177


    スナイパーは陰から陰へ。スナイパーライフルという重たい獲物を持ちながらも軽やかに疾駆する。

    さて、どこにいる? 音というヒント無しに相手の位置を探るのは容易ではないが、周りの地形を見れば、スナイパーが陣取りたい場所はおのずと見えてくる。

    であれば、そこを狙い撃てる場所に移動したいが、相手はそれを簡単には許さないだろう。

    今までの銃弾が飛んできた方向を見るに、自分たちの乗ってきた車の近辺と思うが・・・・・・。

    シュン、と頭上ギリギリを弾丸が掠めていく。

    おおよそ見えたな、とスナイパーは再び移動を始める。

    (さぁ、チェックメイトだ。正義実現委員会────)

    陰から踏み出し、ハスミの初撃がどこを狙うか、弾道を完璧に予測して次弾が装填されるよりも早く移動して一発ぶち込む。そのビジョンは頭の中に描かれていた。

    反らせた上半身ギリギリをハスミの放った銃弾が掠めていく。

    悪いな、正義実現委員会、私の勝ちだ。

    そう思った瞬間だった。

    「・・・・・・残心を忘れたんじゃないっすか?」という声が聞こえた。


    背後から、ダダダダッ、というアサルトライフルによる銃声が聞こえたときには背中に走る痛みと衝撃を感じていた。

    なるほど・・・・・・まんまと誘導されたというわけか・・・・・・。そう言えばヘイローを確認していなかったな。と思いながらスナイパーは倒れ、沈黙する。

    イチカは腹這いになった状態から照準をターゲットに定めたまま立ち上がると、近づいてきたハスミを見て、またいたずらっぽく笑う。

    「ひひ、たまにはこういうトリックスター的な動きも悪くないっすね! ハスミ先輩、合わせてもらってありがとうっす」

    「ええ、あなたが倒れる瞬間のハンドサインが見えていましたから」

    「丁度、弾丸が脇のところ抜けていってくれたんで助かったっすよほんと。背中は痛いっすけど・・・・・・」

    そう、イチカは爆風で吹き飛ばされた後に受けた一撃を偶然回避していた。

    それを逆手にとって倒れたふりをした。

    そしてハスミは相手が残心でもう一撃入れたり、ヘイローが消えないことに気が付かないようにするためにあの時、咄嗟ともいえる判断速度であのスナイパーに威嚇射撃をしていたのだ。

    そう話しながら、ひとまず犯人を拘束し、2人の応援に向かう必要がある。

    もっとも、この時にはすでにウイとジュンコの方は決着していたのだが・・・・・・。

  • 179二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 03:40:51

    凄く変な時間ですが保守もかねて投下しちゃいます。
    書き込みすぎてまったく最後までたどり着けなかったので分割しました

    早く日常に戻らせてくれ。(お前が始めたんやろがい)

  • 180二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 08:23:15

    朝保守

  • 181二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 15:13:42

    自保守

    いつの間にかレス180超えてる
    このスレだけでまとめるつもりだったんだけどこれは無理そう…

  • 182二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:35:30

    スナイパーモブも相当な手練れだったけど、イチカとハスミの連携の方が上回ったね

  • 183二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 06:04:46

    機転を効かせるイチカとそれにすぐ気づいて合わせるハスミ
    正実のプロフェッショナル感かっこいい

  • 184二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 12:25:40

    >>182

    >>183


    イチカが話を回す上で便利すぎましたw

    ドライバーからやられ役まで何してても様になるというか違和感がないのはありがたい。


    せっかくアクションさせるならかっこよく書こうとはしてみましたが…少しは説得力のある描写ができていれば良いですが


    今晩にでも続き投下できるかな…

  • 185二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 23:04:42

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:07:36

    >>178

    弾詰まりを起こし、反応が無くなってしまったアサルトライフルを構えたまま、しばらくの間「ハァ、ハァ」と肩で息をしていたが、銃身の熱が収まって銃口から煙が立たなくなってくる頃、ようやくジュンコの頭も冷えて、状況が見えるようになってきた。

    やってしまった。という思いが間欠泉のように湧いてくる。

    「あ・・・・・・っ」

    銃をスルリと手から落とし、無残な形になって床に転がっている稀覯本だった物の傍らに両膝を突いて、それをゆっくりと拾い上げた。

    かろうじてまだ本の体裁は保っているが、もはや売値など付かないだろうし、歴史的資料としての価値も大きく失われてしまったに違いない。


    「や・・・・・・っちゃった・・・・・・」どうして。絶対に取り返さなきゃいけないものだったのに。ウイが大切に管理してた貴重な本だったのに。

    最後の最後に、自分で壊しちゃった・・・・・・。

    「最悪だ・・・・・・」

    心臓の鼓動が早くなっていく。

    収まったはずの荒い呼吸がまたぶり返して。

    口の中と喉が急速に乾いていく。

    冷や汗が全身に滲んで血の気が引く。

    怒りが冷めて、罪悪感が芽生え、罪悪感が膨らんで、恐怖に変わっていく。


    ────怖い。


    これをウイに見られるのが、怖い。

    怒られるのが怖い、失望されるのが怖い、嫌われるのが怖い。

    とにかく怖くて怖くて堪らなくなる。

    目頭が熱くなって、瞼が潤み、熱い涙が零れ落ちてくる。

    逃げてしまいたい、消えてしまいたい。どうしよう、どうすればいいのだろう。

    「どう・・・・・・しよ・・・・・・私・・・・・・・」

    ウイがあれだけ必死で庇った物を、自分の手で壊してしまった。

    本を胸の中に抱き込んで蹲る。

    「ごめっ、ごめんね・・・・・・ウイ・・・・・・」

    友達の大切なものを自分の手で、傷つけてしまった。

    「うっ、うぅ・・・・・・ごめん、なさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

    消え入るような声で呟き続けたが、それもだんだんと言葉にならなくなって、最後にはただの嗚咽になった。

  • 187二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:09:25

    >>186


    頭が痛い。

    いや、お腹も痛い・・・・・・。ライターを押さえた拍子に掌を火傷したらしい。

    私は、ずきずきと体のあちこちが痛むのを我慢しながら薄目を開ける。

    目に映るのは床、壁。倒れた犯人、その近くにぺたりと座り込んでいるジュンコさんが居る。

    部屋が静かだ・・・・・・。

    物音らしい音はひとつしか聞こえない。

    ジュンコさんの、何度もしゃくりあげる様な泣き声だけ。


    「ジュンコ・・・・・・さん?」


    彼女はこちらを向くこと無く、そのまま嗚咽を漏らし続ける。

    「ジュンコさん・・・・・・? 大丈、夫・・・・・・ですか?」

    もう一度、声を掛けてようやく、ジュンコさんは錆びついたカラクリのようにぎこちない動きでこちらを向いた。

    ・・・・・・酷い顔だった。

    涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、鼻を赤くしながら泣いている姿がなんとも痛ましい。

    「ウイ・・・・・・ご、ごべん・・・・・・っなさ、い」

    ずりずりと膝をすりながら近づいて、胸に抱えていたものを、恐る恐る私の前に置く。

    「あぁ・・・・・・これはまた・・・・・・」

    なんとも酷い有様ではないか。穴だらけだ。

    今までの私ならゲヘナ生にこんなことをされた時、なんと言っただろう。持ち得る限りの語彙を使って、思いつく限りの罵詈雑言を投げつけていたのではないか。

    だというのに、これだけ貴重な本を壊されても、悪態のひとつも出て来やしない。

    ・・・・・・だれが言えるというのですか。いつもあれほどピカピカと輝く笑顔をふりまく顔が、これほど曇って、眉間をくしゃくしゃにして、ごめんなさいごめんなさい、と繰り返してはしゃくり上げているというのに。

    言えませんよ・・・・・・友達に、そんなこと。

  • 188二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:12:44

    >>187


    「・・・・・・怪我は無いですか? ジュンコさん」

    「ない・・・・・・」

    「なら、良かったです」

    「ウイは、大丈夫・・・・・・?」

    「頭が、痛いです。お腹と、手も」

    「どうすればいい・・・・・・?」

    「誰か来るのを待ちましょう・・・・・・。ここの床、硬いので膝でも貸していただけると助かるのですが・・・・・・」

    「うん・・・・・・いいよ」


    この、相手に対して横向きに寝るのではなく、縦向きに寝て、膝に頭を乗せるのも膝枕というのだろうか? 膝枕と言えば横向きのイメージだったが、縦に寝かされた。頭のてっぺんがジュンコさんのお腹に丁度付いてしっくりくる気がした。初めてだが、これはこれで悪くないと思う。

    真上から彼女がこちらの表情を覗き込んだ拍子に、熱い雫が、ぽたぽたと頬に振ってきた。どうやらいつもの太陽は身を潜め、今日は豪雨らしい。

    まだまだ溢れてきそうな涙が溜まっている。指で拭ってやろうかとも思ったが、動けなかった。

    「ご、ごめん・・・・・・」といってジュンコは制服の袖口で乱暴に顔を拭った。

    それからしばらくウイは黙っていたが、ジュンコは時折思い出したかのように「ごめん」と呟いていた。

    「ジュンコさん」

    「なに・・・・・・?」

    「どうして、膝枕・・・・・・この向きなんですか?」

    「え?」

    ジュンコがぽかんとした顔をした。その後少しだけ表情を綻ばせて、鼻声で答える。

    「ゲヘナ生はツノがあるから、こっちの方が収まりがいい人が多いの」

    「なるほど、納得です」ウイはさらに言葉を続けた。

    「本のことは、大丈夫ですよ・・・・・・たぶん、何とかなります」

    「ほんとに・・・・・・?」

    「ええ、私がどうにかします。灰にさえなっていなければ、修復できると思います」

    「ふぐ、ぐす・・・・・・ありがと・・・・・・ウイ」

    「いえ・・・・・・まだ少しきついので、少し寝ますね」

    「うん、おやすみ・・・・・・」

    ウイは大丈夫と言ったけれど、ジュンコの胸には深く楔〈くさび〉が刺さったまま取れない魚の小骨のようにズキズキと、胸だか喉の奥なんだか分からないが、体の中の深いところで疼いているのだった。

  • 189二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:18:29

    >>188


    それからしばらくして、2人の居る部屋にハスミとイチカが到着、それから他の正義実現委員も加わって、犯人たちは確保され、それぞれが目を覚ました後に運び出されていった。

    目を覚ました3人組は車に詰め込まれながら「あたしの300万が・・・・・・」とか「お前の取り分は100だったろ」とか言っていた。

    「羽川ハスミ・・・・・・」と、スナイパーが枯れた声でハスミに声をかける。恨み言でも吐かれるのだろうか。と身構えながら「なにか?」とそっけなく応答する。

    彼女はしばらくの沈黙を保った後、静かに呟いた。


    「・・・・・・また遊ぼう」


    ニタ、とした笑顔を浮かべる彼女はそのままおとなしく車の後部座席に乗り込んでいった。

    「あぁ・・・・・・・・・・・・ツルギの同類でしたか・・・・・・」

    と、彼女の強さに妙に納得するハスミだった。


    ウイとジュンコは車に揺られて、トリニティまで送り届けられていた。

    イチカがゆったりとした運転でハンドルを握る。

    犯人たちを乗せた車が発った後、正義実現委員会総出で破れた本の断片のひと欠けも残さないほど虱潰しに現場を探して破片を回収し、それらは今、ウイの持っているジェラルミンケースの中に収まっている。

    車内の空気は重たい。

    イチカは時々ルームミラーを見たり、頬をぽりぽりと掻いて気まずさを紛らそうとしたりしてみたが無駄に終わった。

    「あー、えっと・・・・・・今回の被害についてっすけど・・・・・・」とイチカが切り出す。

    「多分、窃盗品奪取の際に正義実現委員会側に不手際があったため損壊が発生した・・・・・・ってシナリオで口裏を合わせる事になると思うっす」

    「そう、ですか」

    委員会側が気を使ってくれたようだ。

    あちらとしても犯人確保の為に協力を要請した手前、思うところがあったのかもしれない。

    また、沈黙が車内を包み込む。

    数分後。今度はウイがぽつりと呟く。

    「ジュンコさん・・・・・・帰ったら買っておいたお菓子でも・・・・・・食べます?」

    「・・・・・・うん」

    蚊の鳴くような声でジュンコが頷く。

    ここで拒否されなかったことにウイは少し安心した。食欲まで無くなっていたらいよいよ本気で心配しなければいけないところだった。

  • 190二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:30:36

    >>189

    古書館に着いた二人は、ひとまず荷物や銃を下ろして、テーブルに向き合う様に座る。

    なんだかドッと疲れが押し寄せてきたような気がする。

    既に時計の針は午後三時に差し掛かろうとしている。

    今朝トリニティを出てから昼食も取っていないというのに、そんなに空腹を感じないのはお互いに疲弊しすぎたせいだろうか、肉体的にも、精神的にも。

    ウイが静かにテーブルに買ってきてあったフィナンシェを置き、コーヒーを淹れに行く。

    ジュンコは椅子の背もたれに体重を預けたまま、喉の奥の方の痛みを感じながら、静かに溜め息をついた。

    何度目かのため息を吐いたころ、コーヒーの芳醇な薫りが漂ってくる。今日の盛大な失敗を慰める様な優しい香りだった。

    2人で温かいコーヒーを飲み、はぁ。と息をつく。

    「えっと、いただきましょうか」

    「・・・・・・そうね」

    「あ、あのジュンコさん」

    「ん、なに・・・・・・?」

    「・・・・・・美味しいものを食べるときは、良い顔で、って、言ってましたよね。ですから・・・・・・その。笑って、ください」

    ジュンコは無理やりに口角を上げる。ぎこちないがそれでも多分、ウイより上手い。

    そう高級な菓子でもないが、今日一日頑張ったご褒美として頂くとしよう。

    ふたりはフィナンシェを頬張る。


    「このフィナンシェ・・・・・・」ジュンコが呟く。それにウイが続く。「微妙・・・・・・ですね」


    「あは、ウイもそう思ったんだ・・・・・・よかった、私だけじゃなくて」

    「本当に、踏んだり蹴ったりな一日になってしまいましたね」

    私たちは今日、可もなく不可もない、何とも言えない微妙なフィナンシェと一杯のコーヒーの為に散々走り回って、あんな辛い思いをしたのだろうか。

    そう思って、テーブルの先を見ると、向こうもこちらを見て、同じ顔をしていた。

    「・・・・・・フッ・・・・・・フフッ」

    「・・・・・・ハハ・・・・・・アッハハハハハ!!」

    気持ちが一周したのだろうか、可笑しくて堪らなかった。2人してしばらくの間ケラケラと笑い合う。

    ひとりで食べていればただただ辛い追い打ちで、泣き面に蜂で終わっていただろう。

    ふたりで味わえばそれも笑い話になる。

    美味しいコーヒーとイマイチなフィナンシェを食べ終えるころには、ジュンコの喉のつっかえも、随分小さくなったようだった。

  • 191二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:35:48

    >>190


    「今日はごめんね・・・・・・銃の修理もあるから早めに帰るね。ウイ」

    「そうですね・・・・・・それが良いかと」

    「じゃ、またね」「ええ」とやり取りを交わして、ジュンコは古書館を後にする。

    これからウイは少し忙しくなるだろう。こうしてお茶をする時間もないかもしれない。

    「まぁ、なんとかすると言ってしまいましたしね・・・・・・」

    ウイはそう言いながら、火傷でピリピリする掌をさすりながら、作業の準備をするのだった。


    「ジュンコ、今日なんかあったのー?」

    ゲヘナ学園にある、部室代わりの空き教室に戻ると早々にそう聞いてきたのはイズミだった。抜けているようで意外と人の機微に敏感だ。「なんか元気なさそー」とも付け加えられていよいよ逃げ道もない。

    「うん・・・・・・ちょっと、友達の大切なモノ壊しちゃって・・・・・・喧嘩したとかじゃないけど、申し訳なくって・・・・・・」

    「あらあら、そのような事でお悩みでしたのね」

    ハルナとアカリもそれに気づいて、2人で戯れに遊んでいたビリヤード台から離れてこちらに近づいてきた。

    「うふふ、何があったかはお聞きしませんが、わたくしは今日駅前の立ち食い蕎麦を爆破してまいりました」

    あー、あのやけに出汁の味が薄くて麺がバサバサしてるあれね・・・・・・とジュンコは思った。

    「あらー、では私は給食部の車ですかね、不可抗力です☆」

    不可抗力ではないはず、絶対に。

    「んーと、えっと私はなにかあったかな・・・・・・。あ! ハルナのたい焼きのキーホルダー!」

    「・・・・・・イズミさん!? それは初耳ですが・・・・・・」

    「ごめぇん! でもあんなところに置いてるのがわるいよぉー!」

    よくわからないけど、なんか励ましてくれてるらしい。

    「あはは、ありがと。少し楽になったかも」

    「うふふ、それは何より。過ぎたことを考えても仕方ありませんわ、飲み込んだならばもう戻れはしません、次の美食を探すしかないのです」

    確かにそうかも。ウイは、ウイにできることをやってくれてる。だから私も、私にできる事やっていくしかないわよね。

  • 192二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:36:41

    >>191


    後日ウイがハスミから聞いた話だが、例の3人組の処遇は一旦シャーレ預かりとなり、その後矯正局へと送られたそうだ。

    先生からの申し出があったらしい。ハスミさん曰く。

    「先生から、教えたいことがあったんだと思います」

    「教えたいこと?」

    「ええ、想像ですが、正しくやり直す方法だとか、そういったことを話したのではないでしょうか。リベンジでもリセットでもなく・・・・・・リトライという道を選ばせるために」

    「復讐ややり直しではなく、再挑戦であるべき、と・・・・・・なるほど、あの人らしいというか、なんというか」

    (リトライ・・・・・・再挑戦、ですか・・・・・・)

    ウイはその言葉を噛みしめるように胸の中で何度も、何度も反芻した。

  • 193二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:41:50

    スレ主です。
    か、書き過ぎた・・・・・・!
    スレも残り少ないのに気づいたら5000字以上書いてた・・・

    このスレにSS投下するのはここまでにして、スレが落ちるか埋まるかしたら次立てることにします。

    んで、次のスレ立てる前にちょっと書き溜めしときたいのでスレが立つまでに少し間が空くかもです・・・ご容赦を

  • 194二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 03:35:35

    ジュンコがいい子過ぎて泣けてくる

  • 195二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 10:22:57

    大作だ……
    先生がちゃんと大人してるのいいよね。大事になっても最後は先生がなんとかしてくれる

    膝枕のくだりがなんか好き
    ゲヘナの角事情とか

  • 196二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 13:14:53

    地味に美食研の絆が好き
    ジュンコを大切にしてることが伝わってくる

  • 197二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 13:29:47

    のんびり楽しみに待っております!

  • 198二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 22:33:43

    やりすぎちゃって落ち込むジュンコを慰めるウイと美食研究会のメンバーの慰め方がいいね

    続きを楽しみに待ってます

  • 199二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:28:31

    最後にただ美味しいフィナンシェ食べて慰めを得る
    みたいな終りじゃないのが良い

  • 200二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 18:52:11

    次スレも楽しみ

オススメ

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