- 1二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 17:51:18
「さっきの会議のことで少し話が……」
確認もせず扉を開ける。どうせ下らない書類の決裁で時間を潰しているのだろうから、少しくらい私に時間を割く余裕はあるだろうと考えていた。
最近は少々話す機会が少なくて、口寂しさに業務にも身が入らなくなっていたところだったから、ちょうどいい。
人には話していないけれど、そういう関係の相手に少しだけ甘えを見せてもいいだろうと、そんなことを思いながら。
「あ」
「あっ」
「……は?」
思ったより、低い声が出た。
マコトの傍には、今絶賛指名手配中の便利屋の一味、鬼方カヨコの姿があった。
彼女は一般的なゲヘナの制服に身を包み、マコトの体にその身を寄せて一緒にマコトのスマホを眺めていた。
「へぇ、そう」
「あ、ま、まてヒナ! 違う、違うのだ!」
「なにが?」
私というものがありながら、この面だけは良いバカ女は、よりにもよって部下の元恋人と通じているのか。
しかもその、距離感。私が顔を寄せた時は慌てて離れる癖に、その女には随分気安く許している。マコトに、そういうことをする度胸なんてないと思っていたのに。見くびっていた。
「なんで彼女がここにいるの? なんでそんな親しげなのかしら」
「い、いや、それは、だな? その、あのー……」
「言えないの? やっぱり……」
「いや違う! お前の想像していることは絶対に間違っているからな!?」
何が違うのか。頭の裏側の辺りから何かが湧きあがってくるような、腹の底が気持ち悪く蠢くような、そんな言いようのない感情が生まれてくる。
今まで、彼女には感じたことのない、強すぎる怒りが私の体を突き動かそうとして。
「ヒナ、マコトは誕生日プレゼントに何がいいのか私に相談してきたんだよ」
「わ、ばか! いうな!」
「……え?」
手元の銃を構えようとした動きが止まった。彼女は、わーわーとマコトが喚いているのを気にもせず、きょとんとした顔をしているであろう私に近づいて、
「愛されてるね、ヒナ」
あとはお若い二人でどうぞ、なんて微笑みながら、カヨコはするりと部屋を出ていく。
二人、私達だけがおかしな格好をしたままで取り残されて。
「……ごめんなさい」
「……い、いや。私も、勘違いさせるようなことをして、すまん」 - 2124/12/28(土) 17:51:57
一口ヒナマコでした。
カヨアコもお待ちしています。
私も、書いたんだからさ - 3二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 17:52:58
- 4二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 18:23:36
>>3一口ヒレカツみたいなもんだ。一口に切り分けられてたくさんあるんだ。そうに決まってる………!
- 5124/12/28(土) 18:32:48
「随分世話焼きなんですね」
「あ、ワンちゃん」
「誰が雌犬ですか!?」
「いや言ってないけど」
がるるる、と威嚇して見せるアコの傍に寄り、帽子を深く被る。
ゲヘナの生徒たちはそこまで仕事熱心ではないけれど、だからと言って無防備に顔を晒しているわけにもいかない。
アコはそれを察したのか、自分から通路の中央側に身を移し、私を壁と挟むようにして隠した。
「ありがと」
「は!? 別に何でもありませんが!?」
「うん、少し落ちつこっか」
相変わらずこの子はなんというか、二人きりの時は少しねじが外れて……いや、いつも外れてたか。
別れ話をしたとは言え、別に彼女が嫌いになったわけじゃない。
むしろ、そう。好意を抱いているから、彼女の立場を考えて身を引いたわけで。
そんな相手との予期せぬ時間に、心地よさを覚えている自分に少し驚いた。
「……納得していませんから」
「いや、そう言われても」
「してませんから! だから」
どん、と私を壁と挟むようにして、アコが私の顔の真横に手をついた。
頬が赤らんで、真面目ぶろうとしているけれど僅かばかりの興奮が隠せなくて。視線誘導かと思うほどにさらけ出した胸を押し付けながら迫る彼女が可愛らしくて。
「だから?」
「だ、だから……」
「うん」
「その……あの……」
あっちこっちへ視線を移しながら、ぐるぐると目を回し始める彼女の顎に指を添える。
目を細めて笑ってみせれば、いつものようにアコの口が塞がった。
「──今晩、宿を取ってないんだけど。部屋に行っていい?」
「…………っ」
ぐっと息を飲んだ彼女が、小さく頷くのを見て。
ああ、やっぱり私は彼女を手放せていなかったな、なんてことを思っていた。 - 6124/12/28(土) 18:33:57
二口目
皆の三口目を待ってます - 7二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 18:35:32
猫好きのカヨコと猫好きだけど猫アレルギーのマコト、相性がないはずがないんだよな……
- 8124/12/28(土) 18:56:04
カヨアコ、ヒナマコについてなにかあればちょこっとSS書くかもしれません
ふるってネタ落としにご協力ください
確約はしません
エ駄死案件は不可です、御自重ください - 9二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 19:18:23
これはー…やっぱりアコに行政官に就いた時に拳銃を渡したのって…
- 10124/12/28(土) 19:36:53
嗅ぎ慣れた油の匂い。耳心地の良い、鉄のぶつかる小さな音。
お邪魔するのだからと、自分で作った簡単な夕食を二人で食べ終えると、彼女に促されて先にシャワーを浴びた。
湯気を立てながらリビングに戻ってきた私が見たのは、アコが慈しみに満ちた顔で銃の手入れをしている姿だった。
「…………」
「~♪ ~~♪」
機嫌よく鼻歌なんて歌っちゃって、手際よくパーツ一つ一つをばらしては、汚れを拭う。
新しい油を塗って、ゆっくりとそれを元の形へと戻していく。
そうして出来上がったのは、アコの銃。私が彼女のお祝いにと手渡して、それにあったオイルや手入れの仕方を一から教えた、あの銃だった。
「それ、まだ使ってたんだ」
「きゃっ!? か、カヨコさん!? 出たなら出たって言ってくれませんか!?」
「大事にしてくれてるんだね、ありがと」
「はあ!? 使えるんだから捨てたりしませんよ、もったいない!」
「ふーん」
あの聖母のような笑みはどこへ行ったのか、瞬く間にキャンキャンとチワワのように喚きたてるアコに思わず笑みがこぼれる。
自分の渡したものが大事にされているというのは、思いのほか気分が良かった。
これは、今日は熱を入れてサービスしないといけないかな。
「シャワー、浴びちゃえば」
「言われなくてもそうします!」
ふん、ふん、と鼻息荒く歩いて行ったアコを見送ってから、ソファーに座ろうとして、
「……カヨコさん」
「ん?」
振り返ろうとした私の頭を、アコの腕が阻んだ。前より、背が高くなってる。もう追い抜かれてしまったみたいだ。
手で遮らなかったのは、機械油で汚れているからだろう。そういうところ、彼女は気にするから。
頭に抱き着かれるような不格好な姿のまま、アコの声が耳元で小さく響く。
「前の私と同じだと思わないでください、先輩」
「……楽しみにしてる。入っておいで、アコ」
するりと腕がほどけて、そそくさとアコが浴室に消えていった。
明日は寝不足になるかもしれない。 - 11124/12/28(土) 19:38:32
アコとカヨコの年齢差をそのまま学年として考えているので、アコはカヨコの後輩ということにしています
- 12二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 19:52:33
いいよねマコトが誰かを意識して距離感保ってるっていう発想が無くて意識してない他の人と親密にしてるといつもの我慢癖から爆発しちゃう感じが出ちゃって真面目さと比例するようにめんどくさい女ムーブしちゃうヒナ委員長
- 13124/12/28(土) 20:27:17
「ヒナ」
「……」
「ヒナ、おい」
「…………」
夕食時。いつものようにインスタントとスーパーの安い総菜を適当に盛り付けただけの食卓で、私は茶碗と箸を手にしたまま黙りこくっていた。
対面ではマコトが困ったような顔で同じように食器を持っている。
分かっている。これが馬鹿な意地を張っているだけで、マコトは別に悪くないってことは。
ただ、謝りはしたけれど、やはり納得できなくて。だからこんな風に、子供みたいに意地を張っている。
「……一体何が気に入らないんだ? さっきのことは誤解だっただろう」
「……距離感」
「は?」
「いつも、私が隣に座ると、拳二つ分距離を離すのに。カヨコとはべったりだったでしょう」
ああ嫌だ、嫌だ。こんなこと言いたくないのに。あなたに面倒な女だと思われたくない。
嫌な奴、馬鹿な奴、口うるさい奴。どんな風に思われても良いけど、面倒だと思われるのは嫌なのに。
それでも口は動いてしまって、私の心はねじくれた言葉を吐き出してしまう。素直になれない、幼稚な私の本音。
「……それは、だな。その……」
「なによ」
「お、お前と密着すると、その、どうしても気にしてしまう、から……」
「何を、気にするの」
「……す、好きな女と密着して、顔が赤くならん奴がいると思うか!?」
「っ!?」
頬を朱に染めて叫ぶように言ったマコトの言葉に、私は一拍遅れて真っ赤になった。
自分ではわからないけれど、熱が顔に集まっているから、きっとそう。だるまのようにぼふん、と赤くなっているはず。
「そ、そ、そう……」
「そ、そうだ……うむ……」
気まずくなって、真っ赤になった私たちは、お互いの顔から目を背けて同時に同じおかずを摘まむ。まるで鏡写しのように、真っ赤な二人が同じ動作でおかずを食べて、お米を口に運んで。
「……マコト」
「な、なんだ」
「……今日は、泊まっていっても、いいわ」
そう口にした時のマコトの顔なんて、私が見られるはずもなかった。きっと、お互い耳まで真っ赤になっていたんでしょうけど。 - 14二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 20:28:55
ポカポカ殴り合ってそうな距離感好きだな
- 15124/12/28(土) 20:34:30
おかしいな
カヨアコだと四畳半湿気祭りになるのに、ヒナマコだとどれだけ頑張ってもフィルムノワールが限界なのは変じゃないか - 16二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 03:57:53
マコトに除湿効果があるとしか…
- 17二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 15:26:20
良いSSだ
- 18二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 22:57:05
クソボケマコトは健康に良いとされている
- 19二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 23:26:12
マコトは何も考えてないからな
こういう時はプラス(?)に働く - 20二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 09:56:09
マコトにここまでの除湿効果があったとは
- 21二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 20:53:43
美しい
- 22二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 20:57:53
ヒナの湿度も放出系じゃなく変化系のオーラを内側に溜め込むタイプだから消極的になってモノローグは無限に増えるけどマコトのカラッとした一挙一動に一喜一憂するのよね
- 23二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:23:13
『元』恋人かぁ…カヨアコは何があったんだ?
- 24二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 07:57:02
というか昔はカヨマコだったのか…
- 25二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 18:40:39
マコトが除湿剤すぎる
- 26124/12/31(火) 19:30:16
カヨアコは先輩後輩→恋人→アコ行政官就任→カヨコ便利屋になるため邪魔にならないよう別れる→納得してないんですけど!!
みたいな流れだと私が美味しいです
他の流れでも全然アリです
カヨマコは私も見たことないから誰か見せてください - 27二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 03:53:57
カヨマコは…マコトがアホすぎて呆れて別れたとかかな…()
- 28二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 12:44:52
それでアルちゃんの方に行くんだからなぁ…
- 29元カヨマコのカヨアル25/01/01(水) 22:53:32
- 30二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 09:34:58
...美しい
- 31二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 21:26:33
良い、素晴らしい
- 32二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 05:31:58
ゲヘナ生の年齢設定による無限に広がる関係性
すべてがありうる、そんだけだ - 33二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 15:13:36
昔は「マコト先輩」と呼んでいたヒナもありうる…
- 34二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 15:28:27
マコトがヒナと1歳違いなの絶対何かあると思うんだよなぁ…馬鹿だから留年したというにはゲヘナで他に留年疑惑があるのがカヨコしかいないのが気になるし
- 35二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 01:45:49
ここらへんはやはりロマンがあるな
- 36二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 01:51:52
昔この辺突っ込んだ時は怪我で入院して留年って展開にしたけど、本編だと深い理由があるかもね
- 37二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 13:04:48
だよね