【SS】朝ごはんとトレーナーさんの香水

  • 1二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 12:41:21
    ちがいますぅーーー!!|あにまん掲示板セイちゃんはプラトニックなんですーー!!スペちゃんと違って!プラトニックなんです!ヘタレでトレーナーさんから逃げてるとかじゃないですから!!決して!!ほんとだよ!?ほんとだからね!!bbs.animanch.com

    このスレと同じ世界線で書いた続編のような何かです。


    手鏡を出して軽く髪を整える。

    ついでに制服のリボンも軽く整える。

    最後に薄くリップを塗って、手鏡をしまう。


    手鏡をしまったその手でスマホを出して、ロック解除。

    ロック画面の時計には「6:20」。

    顔認証は1発スルー。パスワードをいちいち打たなくて良いのはありがたいですなぁ。

    受話器のアイコンをタップして、履歴を開く。

    少しスクロールして見つけたトレーナーさんの名前をタップして電話をかける。


    『……はい、どうしたスカイ?』


    4つコールが鳴って、ようやく出た。

    声がちょっと眠たげだ。さっき起きたばっかなのかな?


    「おはようございま〜す!セイちゃんのモーニングコールでーす!」

    「いきなりだけど、玄関開けてくれませんか?」

  • 2二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 12:41:37

    少し間が空いて、目の前のドアが開く。
    ドアの向こうからはまだ眠たそうな目をしたパジャマ姿のトレーナーさん。通話中のスマホを持ったままだ。

    「えへへ、来ちゃいました♡」

    『……はぁ』

    目の前のトレーナーさんと私の手の中のスマホから同じため息が聞こえて、ちょっぴり可笑しい。
    私とトレーナーさん、2人ともおんなじタイミングで電話を切る。

    『おはよう、スカイ…学校はどうした?』

    「やだなぁトレーナーさん、授業開始まではまだ2時間ぐらいありますよ?それにこのトレーナー寮からは歩いて行ける距離ですし…」

    「朝ごはん、一緒に食べましょう?」

    『はぁ……』

    本日2度目のため息。

    『仕方ないなぁ…』

    「わーい!やったぁ!…お邪魔しま〜す!」

    作戦大成功。ウキウキとトレーナーさんの後ろについて、お部屋に上げてもらう。

  • 3二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 12:41:44

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  • 4二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 13:48:58

    ガスコンロにフライパンを乗せて火を付ける。
    フライパンを温めている間に袋から5枚切りの食パンを2つ取り出してオーブントースターに並べてセットする。
    ツマミをひねり、気持ち長めに焼き時間をとる。
    フライパンが十分温まった頃合いを見計らってパックからベーコンを4枚出してフライパンの上に乗せる。
    ベーコンの脂があるからサラダ油を引く必要はない。
    ベーコンが焼けてきたところで、あらかじめ冷蔵庫から出して室温に戻しておいた2つの卵を割ってベーコンの上に落とす…

    洗面所の方から静かに足音と気配が近づいてくる。
    足音の方に顔だけ向けると、歩いてくるトレーナーさんと目が合った。
    パジャマ姿のまま、肩に掛けたタオルで顔やあご周りを拭いている。
    顔を洗ってひげも剃ったトレーナーさんはすっかり目が覚めて、いつものトレーナーさんだった。

    『悪いなスカイ、料理任せちゃって』

    「いえいえ〜、セイちゃんこういうの好きですし〜?」

    何か幸せだなぁ、こういう風にトレーナーさんに料理を振る舞うのって。

    「もうちょっとですから、トレーナーさんは着替えるなりソファーに座ってニュースでも見るなりしててくださいな」

    そう言ってフライパンの方に向き直ると、2つの黄身と目が合った。焼き具合はいい感じだしコンロの火を止める。
    そしてなんとも言えない絶妙なタイミングでトースターが鳴る。
    焼き上がったトーストをパン皿に乗せて、左手に持つ。
    くっ付きそうでくっ付かない、なんとも微妙な距離感で並んでいるベーコンエッグを1枚ずつフライ返しですくってトーストの上に乗せて、軽く塩コショウを振る。
    今日の朝ごはん、ベーコンエッグトーストの完成だ。

  • 5二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 14:15:15

    なんか、デジタン化しそう…

  • 6二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 14:20:01

    なんだこれは
    いいぞいいぞ

  • 7二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 14:44:01

    「いただきまーす」
    『いただきます』

    パジャマから着替えたトレーナーさんの横に座ってトーストを食べる。
    目の前のテレビに映る朝の情報番組では、よく分からない政治についての街頭インタビューにおじさんが興奮気味に答えていた。
    何言ってるかわかんないけど、このおじさんには大事なことなんだろうな。

    『美味しい…スカイ、やっぱり料理上手だなぁ」

    「にゃはは〜、そう言ってもらえると嬉しいですな〜」

    「トレーナーさんさえ良かったら、毎日でも作りに来ちゃいますよ〜?」

    『いや、流石にそれは悪いよ』

    『スカイだって朝はゆっくり寝てたいだろ?』

    ちぇー、だめかぁ。
    トレーナーさんも一筋縄じゃいかないかぁ。
    でもそっちの方が釣り上げた時の喜びは大きいし、それでもいいかなぁ。

    覚悟しててよね、トレーナーさん。
    こんなのまだまだ序の口だからさ。
    ギブアップして恋だって認めるまで容赦してあげないんだから。

    『ごちそうさまでした』
    「ごちそうさま〜」

    わーお、あっという間に食べ終わっちゃった。

  • 8二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:10:49

    2人して歯を磨いたあと、私はソファーの上で膝を抱えて座っている。
    視線の先には姿見の前でネクタイを締めるトレーナーさん。
    邪魔だったからうるさいテレビは消しちゃった。
    なんでだろう、ただネクタイを締めてるってだけなのにずっと見入っちゃう。
    普段見れないからかな?
    トレーナーさんの指先や喉仏から目が離せない。
    やっぱり恋してるよ、私。トレーナーさんにさ。

    『よし』と一言、グリーンのネクタイを綺麗な逆三角形に結んだトレーナーさんがワイシャツの袖をまくる。
    姿見の隣の背の低い棚の上には赤いスマートな紙の箱。
    それを手に取って、香水のボトルを取り出す。
    赤いキャップに四角いシンプルなボトル。ボトルの真ん中には小さな赤いラベル。
    右手に持ったボトルのキャップを外して、そのまま左の手首にワンプッシュして吹き付ける。
    香水が乾かないうちに左手首と右手首を優しく擦り合わせて右手首にも香水を付ける。
    香水をつけている。それだけの行為なのに変な色気を感じちゃうのは何故だろうか。

    思わずトレーナーさんに近づいてみると、シトラスのような、石鹸のような香りがした。
    私の大好きな、バニラの香りではなく。

  • 9二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:24:55

    もっとちょうだい

  • 10二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:26:17

    「あれ?トレーナーさん、香水変えました?」

    『え?香水はずっとこれ使ってるけど…?』

    「うっそだぁ、トレーナーさんの香水の香りはもっとこう…バニラみたいな感じで…」

    どうして変えちゃったんだろう。
    大好きな香りだったのに。

    『……ああ、そうか』

    『スカイ、香水っていうのは付けてから時間が経つと肌に馴染んで香りが変わるんだ』

    「えっ?」

    『これは付けたてとドライダウンで香りが全然違うからなぁ…2、3時間ぐらいしたらバニラが出てくるよ』

    「ほんとぉ〜?」

    だっておかしいもん。
    こんなシトラス石鹸の香りが時間が経ったらバニラになるなんておかしいもん。

  • 11二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:26:53

    「ねぇ、トレーナーさん」

    『ん?』

    「ずっと使ってるって言ってたけど、どうしてこの香水にしたの?」

    『ん〜…なんでかっていうと、一番の理由は「カッコつけ」かなぁ』

    「カッコつけ?」

    『これ最初に付けたの成人したばっかの頃でさ、それまでは別のやつ使ってたんだよ』

    『成人したしちょっと大人っぽい香水使ってみるかって思っててこれにしたんだけど、今思うとかなり背伸びしてたなぁ』

    トレーナーさんも背伸びして大人ぶろうとしてた頃があったんだ。
    よくわかんないけど、なんだかホッとしたというか嬉しい気持ちというか…今、そんな感じの気持ちだ。
    どんな気持ちかって言われたらよくわかんないけど。

  • 12二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:41:05

    「ねぇねぇ、トレーナーさん」

    『ん?』

    「その香水、セイちゃんも付けてみたいな〜…なんて」

    『別にいいけど、これ中等部が付けるには結構大人っぽい香りだぞ?それに男モノだし…」

    またそうやって子ども扱いする。
    ちょっと失礼しちゃうなぁ。

    「いいから、別に気にしませんし」

    思わず口調が強くなってしまう。

  • 13二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:41:17

    「ね、いいでしょ?」

    『仕方ないなぁ…あんまり付けすぎちゃダメだぞ?周りの迷惑になるからな』

    そうやってトレーナーさんがボトルを差し出す。
    だけど私は受け取らない。

    「ねぇ、トレーナーさんに付けて欲しいな」

    そのかわりにそう言って左の手首を差し出す。

    『どうして?』

    「ダメ?」

    精一杯あざとく、上目遣いでダメ押ししてみる。

    『…わかったよ』

    勝った。まさに「してやったり」だ。
    差し出した左手首に香水をワンプッシュしてもらう。
    冷たい感触。瞬間、周りにシトラス石鹸の甘い香りが広がる。
    乾かないうちにトレーナーさんの見よう見まねで右手首に香水を擦り合わせる。
    手首からトレーナーさんとおんなじ香りがする。
    それがなんだか嬉しくって、何度も嗅ぎ直してしまう。

    ああ、今トレーナーさんとおんなじ香りなんだ…

  • 14二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 15:49:36

    いいね,こういうの。
    好きな人と同じものをつけて喜ぶのは性別がどちらでも美しい。

  • 15二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 16:16:21

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 16:22:26

    下手したら担当トレーナーさんと同じ匂いつけて登校したって話題になるよねこれ

  • 17二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 20:53:36

    良さみしかない…ありがとう

  • 18二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 21:56:50

    やっぱりセイちゃんにはこういう爽やかな純愛が一番似合うよ

  • 19二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 22:15:51

    トレーナーと同じ匂いは周りのウマ娘に気付かれたら気ぶられるのでは...?

  • 20二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 22:17:10

    ご飯のくだりで身構えた僕がいました。
    疲れてると思われるので横になって休みます

  • 21二次元好きの匿名さん22/03/09(水) 22:50:14

    いいスレを見つけた
    保守させてもらうぞ

  • 22二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 07:09:38

    素晴らしい保守

  • 23二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 07:15:54

    こんな爽やかさを堪能した後で前スレ?覗いてみたらなんだコレ………ってなったよね

  • 24二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 07:25:37

    ありがとう…それしか言う言葉が見つからない…

  • 25二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 13:18:53

    例のスレの続きか!期待してる

  • 26二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 19:33:36

  • 27二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 20:10:26

    スマホのロック画面の時計を見れば、もういい時間。

    『そろそろトレセン生は始業時間だな』

    「ねぇトレーナーさん、校門まで一緒に行きません?」

    『えっ?…でも、一緒に行ったら何か勘違いとかされるんじゃ…?』

    別にいいんだけどな、勘違いされても。
    トレーナーさんとなら勘違いされてもいいんだけどな。
    むしろ勘違いされちゃえばいいのに。
    そしたらセイちゃんの一歩リード、なのに。

    「作戦会議してたって言えば大丈夫ですよ〜…ダメ?」

    「そ・れ・と・も…トレーナーさんは朝からセイちゃんと一緒にトレセン学園行くのがやましい事って、心のどこかで思っちゃってるんですかぁ〜?」

    勘違いされそうで心配なのはそういう事でしょ、トレーナーさん?
    だって「そんな想い」感じてなきゃただのトレーナーとウマ娘だしそんな事思わなくっていいもん。

  • 28二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 20:12:43

    上目遣いでトレーナーさんの眼を覗き込むと、ふいっと逸らされちゃった。

    『…仕方ないなぁ』

    にしし、ちょっと食いついてくれたかな?

    ちゃんと私が登校するのについてきてくれる、優しいトレーナーさん。
    そんなんだから恋しちゃうんですよ?

    わざとトレーナーさんと距離感近めにして歩くと、ふわりと香る香水の香り。
    シトラス石鹸の香り。
    この香りはトレーナーさんと私のどっちから香っているんだろう。

    ああ、ダメだ。
    トレーナーさんとおんなじ香りなのが嬉しくって、思わず頬が緩んじゃう。
    緩む口元を手で隠そうとすれば、手首からトレーナーさんとおんなじ香り。
    ああ、幸せ。

  • 29二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 20:50:01

    あらあら(にっこり)

  • 30二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 04:09:40

    セイちゃんのモノローグが甘々すぎて砂糖吐きそう…しゅき…

  • 31二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 12:06:29

    乙女なセイちゃんは健康にいい

  • 32二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 18:06:54

    一から読んできたわ
    ああ、幸せ。

  • 33二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 21:59:56

    トレーナーさんとたわいもない事をお喋りしながら歩いていたら、もう校門前に着いちゃった。
    早いなぁ、楽しい時間って。
    2人並んで校門をくぐる。

    『じゃあ俺はトレーナー室に用があるから』

    「はいは〜い、じゃあまた〜」
    向こうに去っていくトレーナーさんの背中を、立ち止まってただ見つめる。
    ここで別れるのが名残惜しい。
    でも「嫌だ〜!」なんて駄々はこねません。そんな子どもじゃないもん。

    トレーナーさんの背中が見えなくなって、やっと校舎に向かって足を進める。

    「あっ、セイちゃんおはよう〜!」

    この元気な声はスペちゃんだね。
    スペちゃんにしては早いなぁ。
    いつもはもうちょっと遅く来るんだけど。

    「やほー、スペちゃん。今日は早いけど…どしたの?」

    「スズカさんといっしょにジョギングしてて、それで…」

    なるほどなるほど、それは納得の理由ですな。

  • 34二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 22:09:10

    「あれ?セイちゃん、なんだか今日はちょっと違うね…?」

    おや、感づかれちゃったかな?

    「ええ〜?そんな、いつも通りだよ〜?」

    いつも通りじゃないんだけどね。ちょっとからかってシラを切っちゃう。
    なんだろう、よくわかんないけどすっごくウキウキしてる。
    今にも笑っちゃいそう。

    「ええ〜?絶対いつもと違うよぉ」

    「なんだか匂いも……くんくん……」

    んふふ、スペちゃんはセイちゃんの謎を解き明かすことができるかな?

    「なんだろう、この匂い…何だかどこかで……?」

    スペちゃんは結局、この謎を解き明かす事はできませんでしたとさ。にゃはは。

    後から来たキング、グラスちゃん、エルちゃんにも何だか雰囲気が違うって言われちゃった。
    にゃはは、嬉しいなぁ。
    大好きなトレーナーさんとおんなじ香りを付けてるってこと、みんな知らないけれど私は知っている。
    トレーナーさんと、セイちゃんの間のヒミツ。
    気づかれるか、気づかれないかのスリル。
    「匂わせ」ってこういうことなんだなぁ。

  • 35二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 22:38:06

    それから時間が経って、午前の授業が終わって昼休憩。
    両手首に香っていたシトラス石鹸の香りは、お香のような香りに変わっていた。
    香水はつけてから時間が経つと香りが変わるって、本当だったんだ。
    香りは変わったけれど、雰囲気はガラッと変わったわけじゃない。
    大人な落ち着く香り。この香りも嗅いだことがある。
    休日にお出かけした時のトレーナーさんの香りだ。
    この香りも好きだなぁ。
    手首から香りを吸い込んで、思わず「にへへ…」と笑顔が溢れちゃう。

    「スカイさん…貴女さっきから手首の匂いを嗅いで嬉しそうにしてるけど、一体どうしたの?」

    「や〜だぁ、キングったらそんな事聞いちゃう〜?ムッツリキング〜〜」

    「だぁれがムッツリよ誰が!?」

    にゃはは、やっぱりキングはいい反応するなぁ。

  • 36二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 22:59:54

    「この会話における主人公の「私」と踊り子の感情は……」

    午後の最後の授業は国語。
    先生の授業の声はいい睡眠導入のBGMだ。
    閉じっぱなしで机の隅に置いていた教科書をおもむろに開いて、机の前の方に衝立みたいにして立てる。
    そして机の上の空いたスペースに腕を組めばいい感じの枕になる。
    さあ、お昼寝タイム…

    …不意に、枕にした腕の手首の方からふわりとバニラの香りがした。
    大好きな、トレーナーさんの香りが。
    本当に不意打ちだった。胸がドキドキだ。
    ドキドキするのに、すごく心地良い。
    ずっと嗅いでいたいくらいだ。
    いい匂い、本当にいい匂い。私の恋した匂い。
    バニラならお風呂上がりのアイスとかで何度も嗅いでるはずなのに。
    このバニラは全然別物だ。
    何でこんなにいい匂いなんだろう。
    もしこの恋に匂いがあるのなら、それはきっとこのバニラの香りだ。
    あの香水、すごいなぁ。
    トレーナーさんのだからすごいのかな?
    何だか良い夢、見れそうだなぁ……

  • 37二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:15:13

    「起きなさい!スカイさん!」

    眠りから叩き起こされて、ふと見上げればキングの顔。
    それからスペちゃんと、グラスちゃんと、エルちゃん。

    「むにゃ…?あれ?授業は…?」

    「終わったわよ、とっくに」

    なんだ、そんなに寝てたのかぁ。
    トレーナーさんが夢に出てきたらいいなぁなんて思ってたけど、結局夢なんて見なかった。
    少しくらい夢に出てきてくれてもよかったのに。

    「ふぁ……それじゃ、帰りますか…!」

    机の上に出しっぱなしの教科書、ノート、筆記用具を手早く鞄にしまう。
    授業終わったって思うとやる気でてくるよね。

    「まったく…授業はちゃんと受けなきゃダメじゃない!」

    「そうですよ〜?それに題材の「伊豆の踊り子」、いいお話なのに寝てしまうなんてもったいないですよ〜?」

    お勉強出来る勢からのお小言が飛んでくる。

    「にゃはは、セイちゃんにはちょーっと難しいかな〜」

  • 38二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:42:05

    「あっ!!」

    さあみんなで帰ろう、というタイミングでスペちゃんの何かに気づいたような声が私たち5人しかいない教室に響いた。
    スペちゃん以外の3人、セイちゃんも含めると4人が一斉にスペちゃんの方を向く。

    「セイちゃん、セイちゃんのトレーナーさんとおんなじ香りだ…」

    「「「えっ!?」」」

    わーお、気づかれちゃった。
    やっぱりスペちゃん、カンがいいなぁ。
    キング、グラスちゃん、エルちゃんが今度は一斉にこっちを向く。

    「あ、ああ貴女、トレーナーさんと同じ匂いって…!」

    「あら…あらあらあら〜…!」

    「のぼっちゃったんデスか!?大人の階段のぼっちゃったんデスかぁ!?」

    「ひゃあ〜…大人だべぇ〜…!」

    みんな思い思いの反応してる。
    スペちゃんはトレーナーさんに迫ってるんだから人のこと言えないと思うけどなぁ。

  • 39二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:42:23

    「スカイさん!ああ貴女まさか!?」

    キングに肩を掴まれる。キングもみんなも好奇心とかいろんなので目がギラギラしてる。
    これ滅茶苦茶詮索されるやつだ。
    ああ、すっごく楽しい。

    「あぁんっ♡そんな乱暴しないでぇ♡キングのへん・たい・さん♡」

    「ん゛な゛ぁ゛ッ!?」

    「今だ!」

    キングの一瞬の隙をついて逃げ出す。

    「ああっ!?セイちゃん逃げたぁ!?」

    「追うのよ!早く!」

    ああ、すっごく嬉しい。
    トレーナーさんとおんなじ香水つけてる、それだけなのに。それがバレちゃっただけなのに。

    「にゃはははは!捕まえてごらんなさーい!」

    すっごく、幸せ。

  • 40二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:05:22

    一旦ここでこの話は終わり。
    ちょっとエピローグ的なものを考えてきます

  • 41二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:11:33

    ええやん…
    ワンプッシュでも長続きするんだね(無知)

  • 42二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 09:39:05

    なにこの...ああ...春やなぁ...恋とか愛とかが芽吹く季節だわ...

    セイちゃんは体にいいね。そしてこの甘酸っぱいのがたまらん。

  • 43二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 12:22:37

    良きみ尊み…。
    甘酸っぱいなぁ

  • 44二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 22:36:50

    結局あの後捕まっちゃって、トレーナーさんのおうちで朝ごはん作って香水付けてもらった話を洗いざらい話すことになっちゃった。
    みんないい反応してたなぁ。

    みんなと別れた後、鼻歌混じりで廊下を歩く。
    行き先はトレーナー室。
    今頃トレーナーさんはそこで作業とかしてるはず。
    いつも通りのんびりと、しばらく歩くとトレーナー室の前に着く。
    グラウンドの方からは他のウマ娘たちがトレーニングしてる声が聞こえる。
    手鏡を出して前髪を軽く整える。
    ついでに制服のリボンも軽く整える。
    仕上げに薄くリップを塗って、手鏡をしまう。
    深呼吸ひとつ、トレーナー室のドアを開けて中に入る。

    「失礼しまーす」

    パソコンとにらめっこしていたトレーナーさんが顔をこっちに向ける。

    『スカイ、授業ご苦労様』

    トレーナーさんはパソコンを見る時メガネをかける。
    視力が悪いとかじゃないけど、画面を見てると目が疲れるから付けてるらしい。
    メガネをかけたトレーナーさんはいつもより「落ち着いた大人」って感じだ。もちろんこっちのトレーナーさんも大好きだ。

  • 45二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 22:51:06

    「ねぇねぇトレーナーさん」

    『ん?』

    「あの香水、バニラの香りになったね」

    『そうだろ?俺も初めて付けた時はびっくりしたよ…』

    『どうだった?香水つけてみて』

    「う〜ん…この香水、セイちゃんにはちょっと大人っぽすぎるかな…」

    この香水は自分でつけるよりトレーナーさんに付けてもらうほうがいいかな。
    だって自分でつけてるとドキドキしちゃうもん。

    『だろうな、ははは…』

    分かってた、とでも言うように笑われてちょっとむくれちゃう。
    いつまでセイちゃんを子ども扱いする気ですか、トレーナーさん?

  • 46二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 22:52:38

    「だ・か・ら…セイちゃんに似合う香水、トレーナーさんに選んでほしいな〜♡なんて…」

    『ははっ、中等部にはまだ早いよ』

    「むぅ……」

    まーた子ども扱い。
    そんな子ども扱いして後悔しても知りませんから。
    ドキドキさせられっぱなしじゃ終わりませんから。

    だけど、今日は。
    今日だけは、セイちゃんの負けかもね。
    トレーナーさんとおんなじ香りに、ずっとドキドキさせられっぱなしだったから。

    くやしいから言葉にはしないけど、そう思っちゃったセイちゃんなのでした。

  • 47二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 22:54:49

    エピローグ終わり。

    SSって難しいなあ

  • 48二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 23:25:45

    尊い…

  • 49二次元好きの匿名さん22/03/13(日) 00:27:22

    素晴らしい…素晴らしい…。
    あのスレからこのような名作が生まれてとても嬉しい

オススメ

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