ハルナ「コロッケが食べたいですわ・・・・・・」

  • 1二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:14:20

    年の瀬迫る冬の日。
    黒舘ハルナはミレニアムの商店街を歩きながら目ぼしい飲食店を探していた。
    中に入れるような店でなくても、歩きながら食べられるようなもので良かった。
    例えばたい焼きのような温かい物であれば尚よい。

    ハルナ「あら、コロッケ・・・・・・」

    商店街の大通りから脇道に入り込んで細い路地をウネウネと適当に進んでいると、こんなところでは客なんて来ないだろうというような辺鄙な場所にぽつんと小さな店がある。

    お肉屋さんだろうか、店頭に揚げたてのコロッケが保温器に入れられてお行儀よく並んでいる。
    肉屋であれば、近隣の人だけ利用する穴場という事もあり得るだろうか。
    おいしそうですわね・・・・・・。

    思わずそんな感想が出るくらいには魅力的なきつね色だ。
    匂いもいい。

  • 2二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:17:03

    雑に書いていくよー

    満足したら落とします

  • 3二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:17:37

    しかし、どこを見ても店主の姿が無い。
    席を外していらっしゃるのか・・・・・・と思ってきょろきょろしていると張り紙が目に留まった。
    グリーンの画用紙をA5くらいに切って、黒いマジックで乱雑な字で『セルフサービス』と書かれており、『↓』と矢印が描かれているところにはお金を置いておくためだろうか、カルトン(コンビニなどにある小銭を置くトレイ)が所在なさげに佇んでいる。
    一応来客はあるのか、130円がカルトンの隅に転がっていた。

    ハルナ「なんというセキュリティなのでしょう・・・・・・ミレニアムの自治区、そんなに安全なのでしょうか? しかし一個130円・・・・・・ですか」

    あまり迷う必要性も感じなかった。
    たった130円、缶コーヒーやそれらとそう変わらない値段だ。試しに買ってみてもいいだろう。この程度の店舗でこじんまりと経営しているだけなら、もし不味かったとしても爆破も見逃そう。
    そう思って、ハルナも先に来たであろう来客に倣ってカルトンに小銭を転がし、保温器を開けた。

  • 4二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:18:03

    大通りに戻りながら、ハルナは保温器から出したばかりのコロッケに噛みついていた。
    ザク! と軽快な音が鳴り、パリパリの衣が弾けて踊るようだ。
    サックサクの衣、フカフカで熱々のお芋、噛み応えのためか、荒めに挽いたお肉の食感と肉汁が口の中で絶妙に溶け合う。
    ソースなどの類は置かれていないようだったが、塩が軽く振られていたようで、時折強くなる塩味がアクセントになっていて飽きさせない。

    ハルナ(くっ、美味しすぎますわね・・・・・・)

    コロッケの味を堪能しているうちにあっさりと完食してしまい、手元には包み紙だけが残された。

    しまった、と思った。
    こんなことなら、全員の分を買っておけば・・・・・・。

    ハルナは踵を返す。
    財布の中には相当余裕がある。
    あの保温器の中の物をすべて購入したとしてもお釣りがくるだろう。

  • 5二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:18:55

    ハルナ「確かこちらの角を入って・・・・・・」

    路地の奥へと進んで元の場所にたどり着いた。

    ハルナ「あれ・・・・・・無い・・・・・・?」

    コロッケ屋さんが、先ほど確かにここで購入したはずなのに、コロッケの店が跡形もなく消えている。
    そこには最初から何もなかったかのようにぽっかりと開いた小さな空き地に『売地』の看板が鎮座しているだけだ。

    ハルナ「道を間違えたのかしら・・・・・・?」

    来た道を戻り、商店街の大通りからもう一度記憶を辿って、道順を確認してみるも、無い。
    あたりのそれらしい路地という路地を見てみるが、勘違いなどではない。
    間違いなくあのコロッケ屋が無くなっているのだ。

    ハルナ「・・・・・・どういうことですの? ものの十分かそこらで店舗がこんな跡形もなく、忽然と消えてしまうなんて・・・・・・」

    不可思議な出来事に、首を傾げるハルナだったが、やはり、諦めきれない。
    近所の人と思しき人に聞いてみよう。

    ハルナ「あの、もし? こちらの商店街の奥でコロッケを購入したのですが、見つからなくて・・・・・・なにか知りませんか?」

    「いやあ、知らないねー。あんなところにコロッケ屋なんかあったかな?」

    ハルナ「そうですか、お時間を取らせてしまって申し訳ありませんわ」

    「いいえー、見つかるといいねー」

    ペコリとお辞儀をして、次の人へ。

  • 6二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:22:37

    こんなことを何人か繰り返したころ、みすぼらしい格好の、おそらくホームレスだと思われるコーギーの男性に声をかけられた。

    「あんた、コロッケ買ったの?」

    ハルナ「ええ、そうです。あの路地の奥で」

    「場所はまぁどうでもいいけど。『フォーチュンコロッケ』って店だった?」

    ハルナ「店名なんてあったでしょうか・・・・・・確認しませんでしたわね・・・・・・」

    「まぁ、見てなくてもしょうがないか」

    ハルナ「なにかご存じなんですの?」

    「まぁね、でもタダでは教えらんないな。この情報はコロッケより高いよ」

    ハルナは黙って男に1万円を握らせた。
    男は緩慢な仕草で所々擦り切れたぼろいコートの内ポケットに紙幣を押し込みながら話し始めた。
    まるでコインを投入すると動くなんとかパークの遊具みたいだな、とハルナは思った。

  • 7二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:24:22

    「・・・・・・そいつはね、フォーチュンコロッケっつって、まぁ、都市伝説みたいなもんなんだけど、おひとり様につき一個までしか買えないの」

    ハルナ「そんな文言、どこにもありませんでしたが・・・・・・」

    「どうだろうと関係ない、たといコロッケが十個あろうと二十個あろうと、あの店では”絶対にひとつのコロッケしか買えない”の。そういうもんだと思っておいてくれ」

    ハルナ「次に買うなら明日以降、ということですのね?」

    「違う違う違う、”もう買えない”んだよ、お嬢ちゃんは・・・・・・もう一生あのコロッケを買えないの、おひとり様につき一生のうちで一個しか買えないコロッケなんだから」

    ハルナ「は、はい!?」

    そんな商売がまかり通るのですか?
    そんなことをして一体何の得になるというのです?
    理由は? 目的は? そんなことができる根拠は?
    そしてなにより問題なのは・・・・・・。

    ハルナ「一生に一度の美食を・・・・・・歩きながら、しかも一人で、誰とも共有することなく、この私が・・・・・・? あ、ありえません・・・・・・あのおいしいコロッケが、もう食せないなど言語道断です・・・・・・」

    「あとこれは多めに払ってくれたから、親切心で言うんだけどね、あの店のことは忘れた方がいいよ、おいしかっただろう? あのコロッケは? それでいいじゃないか。俺はタバコでも買ってくら。じゃあな、お金あんがとね、お嬢さん」

    男はそういうと商店街の人ごみの中に姿を消した。

    ハルナ「・・・・・・・・・・・・いいえ、諦めるわけにいきません、必ずもう一度手に入れてみせますわ・・・・・・」



    この日から、ハルナはおかしくなっていった。

  • 8二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:33:34

    近所のめちゃくちゃ美味い定食屋がつい最近閉店したワイにちょっとだけタイムリーなスレ

  • 9二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:33:50

    ハルナ「今日もミレニアム近郊の商店街にお邪魔して調査しているものの・・・・・・何一つ手掛かりがありませんわね・・・・・・分かったことといえば、あのコロッケ屋さんがフォーチュンコロッケという名前なことくらいでしょうか・・・・・・」

    聞き込みも甲斐なくすべて空振りに終わって、ネットの情報も見てみたが『どこにある?』と質問するような形の記事や掲示板ばかりが出てきて、具体的なことは何もわからなかった。
    掲示板はどうやら完全なオカルトとして扱っているようで、まともに取り合っている人の方が少ないようだった。

    ハルナ「ヴェリタスに頼み込んでこの近隣の飲食店の登録名簿をハッキングして貰いましたが・・・・・・フォーチュンコロッケなどという店は登録がありませんわね・・・・・・」

    こんな簡単なことで見つかるならば苦労は無いのだが・・・・・・。

    ハルナ「しかし、あのコロッケの味は本物、いえ、本物以上・・・・・・確かにわたくしはコロッケを購入したのですから、どこかにあるはず・・・・・・はぁ、コロッケが食べたいですわね・・・・・・」

  • 10二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 00:41:58

    ハルナ「今日もちょっと、ミレニアムの方まで用事がありますので、わたくしは失礼しますわね」

    ジュンコ「最近そればっかりじゃない、なにかあるの?」

    アカリ「かれこれ三日ほどコロッケ屋さんを探しているらしいですよ?」

    ジュンコ「は? コロッケ?」

    アカリ「なんでも、すごくおいしかったのに見つからないんだとか・・・・・・」

    ジュンコ「なんなの、その異常なまでの執着は」

    イズミ「フウカに今日の晩御飯コロッケがいいって言っておこ~」



    ハルナ「はぁ、あのコロッケ、どこにあるのでしょうか・・・・・・」

  • 11二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:07:08

    ハルナ「どうです? ハレさん、見つかりそうでしょうか?」

    ハレ「うーん。その異常においしいコロッケ屋さんの情報が発信された場所をマッピングしてみたんだけど、よくわかんなくて・・・・・・」

    ハレはポリポリと頬を書く。
    タブレットの画面をPCのモニターに共有して、見やすく拡大する。
    画面にはミレニアムだけでなく、トリニティやゲヘナ、アビドスまで含めたキヴォトス全域のマップが映し出されており、その中に赤い丸が付けられている。
    おおむね各都市の商店街に集中しているようにも見えるが、ところどころで点の位置は郊外寄りになったり、人気の無さそうな場所に飛んだりしている。

    ハルナ「こ、こんなに各地に点在しているんですの・・・・・・?」

    ハレ「まぁ、そういう情報をSNSに発信した時点での位置情報だから、誤差はあると思うけどね、でもこれで分かるのは、そのコロッケ屋さんはミレニアムだけのものではなさそうってことかな。
    どうやってるかは分からないけど、キヴォトス各地を転々としているのかも」

    ハルナ「思ったより、再度遭遇するのは難しそうですわね・・・・・・」

    ハレ「うーん、こっちでももう少し調べてみるけど、結局都市伝説程度の情報しか出てこないし、あまり期待はしないでね」

    ハルナ「いえ、十分な情報でしたわ。報酬は後ほど口座に振り込んでおきますので受け取っておいてくださいませ」

    ハレ「別にいいのに・・・・・・まぁもしそのコロッケを見つけたら、私にも買ってきてくれるとうれしいなー」

    ハルナ「えぇ・・・・・・見つけますわ、必ず・・・・・・」

    ハレ(め、目が据わってる・・・・・・なんか怖・・・・・・)

  • 12二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:19:47

    ハルナ「はぁ、コロッケが食べたいですわ・・・・・・」

    フウカ「今あなたが食べてるものが何か言ってみなさいよ」

    ハルナはゆっくりと手元に視線を落として、また視線を上げ、フウカと視線を合わせた。

    ハルナ「コロッケですわね」

    フウカ「コロッケよ」

    ハルナ「でもこれじゃないんです・・・・・・このコロッケもおいしいとは思いますが、あのコロッケじゃないと・・・・・・」

    フウカ「はぁ~~、そんなにそのコロッケがいいなら自分で作りなさいよ」

    少しきつく言い過ぎたかな、とフウカは思ったが、ハルナは驚くほど静かに、スッと立ち上がって呟く。「そうですわよね、無いなら、作ってしまえばいいんですわ」

    ハルナ「フフ、フフフ、フフフフフフフフフ・・・・・・」

    フウカ「は、ハルナ・・・・・・?」


    ハルナ「違う、これじゃない。このジャガイモは少しねっとりしすぎですわね。肉はもう少し荒く・・・・・・衣の大きさはもう少し小さかったような気がしますね・・・・・・これじゃないですわ、違う、これじゃない、これじゃない、これじゃない・・・・・・」

    フウカ「お、落ち着いてハルナ!? そんなに試食したら体壊すわよ!?」

    ハルナ「コロッケが・・・・・・コロッケが食べたいんです・・・・・・!」

    フウカ「今!! 食べてる!! でしょうが!!!!」

  • 13二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:27:02

    🤖美食研の面々に探させれば良いのに…

  • 14二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:33:06

    シャブ漬けコロッケ?

  • 15二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:33:46

    くしゃがらみたいなものなのかね…

  • 16二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:36:02

    >>15

    なんかジョジョ味あると思ったが岸部露伴の方が近いな確かに

  • 17二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 01:37:38

    >>15あの名前忘れたけど稲穂?のやつにも近いかもしれんね

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