- 1二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:45:03
やぁ諸君、厳冬の候ご機嫌いかがかな? 今日も今日とてウマ娘の挑む限界の果てへの探求で大忙しのアグネスタキオンだ。
さて、諸君も知っての通り季節はすっかり冬だ。右を見れば有馬記念、左を見ればクリスマスと、世間は随分と賑わっている。無論、私が注目しているのはクリスマスよりも有馬記念、東京大賞典、そしてホープフルステークスの方だが。
大勢のファンの夢と希望を背負ってトゥインクル・シリーズの頂点を決める舞台ともなれば、出走するウマ娘達の実力は推して知るべし。大井の冷たい風の中、砂の勇士達が大歓声を背に受けて白熱する姿を見れば、二度と砂は芝の後塵を拝する等とは言えないだろう。
いずれにせよ、彼女たちがこの一年歩んできた蹄跡、本能が纏う情熱が最終直線に刻まれる瞬間は、何物にも代えがたい。私の求める未来の欠片が確かにそこに見えるんだ。と言っても、今はまだ朧気だがね。
そして、次代のスターは中山レース場芝2000mに集い、我こそがという想いをターフにぶつける。かつてポッケ君がそうであったようにね。そうして才能の開花を垣間見る瞬間、僅かなデータから小さな蕾の中に宿した可能性を見出す瞬間、そして、それらが更に躍進し更なる可能性を見せてくれる瞬間!!
いやはや、堪らないねぇ! 今から次のクラシック戦線が楽しみで仕方がないよ!
早速カフェやポッケ君に止められたりせず、本人にも怪しまれないよう、ダンツ君のように非常に協力的かつ才能溢れるウマ娘に声をかけていきたい所なのだが、残念ながら今はそうもいかない。なにせ学園は絶賛冬休み中だからね。
有馬記念や東京大賞典に出走した子はもう皆帰省したりトレーナーと何処かへ出掛けたりでいないし、ホープフルステークスに出走した子達は今頃URAのイベントにお呼ばれして美味しい食事を摂っていることだろう。そのまま帰省する子もいるだろうし、いずれにせよ私の始動は来年にお預けとなるだろうねぇ。
しかし、相変わらず学園のトレーナー不足は深刻だと言うが、この分では解決には程遠いだろうね。有馬記念の優勝インタビューなんて見たかい? ずっとトレーナーと腕組みしながらインタビューを受けていて、思わずカフェも苦笑いだよ。デジタル君はありがたがって拝んでいたけどね。
激走故にトレーナーに支えて貰っていたと言うが、果たしてどこまで本当なのやら。 - 2二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:46:52
まあそういう訳なので、私はこうして一人研究室に残ってレースの映像からあれこれデータを集め精査しまた集めといった作業をやっているという訳だ。この手のデータ解析は一人で集中していた方がずっと効率的だからね。
無論、お供の紅茶と砂糖にお茶菓子も忘れずに。本当ならカフェの淹れたコーヒーもと言いたい所だが、そうなると意識がカフェに向いて手が止まってしまうので、こちらは我慢している。
しかし、こうまで環境を整えたというのに、残念ながら今年の映像研究及び解析の進捗率は前年度に比べて大幅に遅れていることは否めないだろう。以前までなら年を越す前に大まかなレポートの輪郭を整えるくらいまでできたのだが、今年はそれすら危ういかもしれない。
どうしてかって? 素晴らしい、実に良い質問だ。まあ答えを言う前にちょっと後ろに聞き耳を立ててみたまえ。
「……んっ。もう、ポッケちゃん!」
「んー? どうしたダンツ」
「どうしたじゃないよ! そういうの、くすぐったいっていうか、もうちょっとドキっとしちゃうっていうか……と、とにかくダメ!」
「……イヤか?」
「っ……ポッケちゃんのいじわる」
「悪い悪い。ほら、こっち来いよ。一緒に暖まろうぜ」
「うん……向かい合わせもいいけど、やっぱりこっちの方が好きだなあ」
「だな。俺もこっちの方が好きだ。ダンツが近い方がいい」
「そ、そう? えへへ……ねえ、ポッケちゃん。ぎゅっ、ってしてくれる……?」
「……ん」
「んっ……あったかいね、ポッケちゃん」
「……ああ」
ハイハイ、いつも通りだね。ご馳走様。
見えてないので推測だが、ポッケ君が向かい合わせで炬燵に入っていたダンツ君の脚を炬燵の中で突っついたのだろう。ポッケ君は十中八九自分の側にダンツ君を呼びたかったに違いない。ダンツ君もまあ始めはイタズラだと思ったのかもしれないが、そこまでされてポッケ君の考えがわからない程鈍くもない。 - 3二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:47:42
とまあ、そういう流れで同じスペースに入り込んだダンツ君は実に嬉しそうな顔でポッケ君の両腕に抱かれているという訳だ。
と言うか、二人とも最初からそのつもりでお互い向かい合わせに炬燵に入ったのではないだろうか? 向かい合わせで炬燵に入ってそれからわざわざこの一幕を経て一緒の側に入るというのはお決まりのパターンになりつつあることだし……ふむ、これは一考の余地がありそうだ。今日と次に炬燵に入った時のパターンをさりげなく覚えておくとしよう。
先日突然ポッケ君とダンツ君がこの研究室に(勝手に)作ったスペースとソファを片付け始めたときは驚いたが、ちょっと目を離した隙に炬燵が陣取ってたのを見て更に驚いた。ここ以外に二人で過ごす場所を見つけたのかと思ったら単に冬支度を済ませただけだったとは流石の私も予想外だよ。
そうして何をするかと言えばこうして炬燵で相も変わらずイチャイチャしているのだから、幸せそうで何よりだ。あとはもうちょっとパソコンに向かって集中している私のことを気に掛けてくれたら嬉しかったのだが、この二人にとってはそれもまた今更だ。正直私も慣れたよ。未だ集中力は多少削がれるがね。
とは言え、普段よりもイチャイチャの濃度が遥かに高いことを考えると、今度から寮の自室で出来ることはそちらでやるべきかとも思える。
が、それが難しいことだというのも、私はよく分かっていた。
「……今日も賑やかですね」
「やあカフェ、今日は随分早いじゃないか」
「冬休みで、委員の仕事もありませんから……作業も止まっているようですし、一服、いかがですか?」
「ああ、そうしよう。ほらポッケ君、ダンツ君、ティータイムの時間だよ。準備したまえー」
そうして私が手を打ち鳴らすと、ポッケ君とダンツ君はまるで芋虫のようにのそのそ炬燵から出てくる。どうやら揃って入眠一歩前だったようだが、カフェの姿を視界に映した瞬間目をぱっちり開いてティータイムの準備を始めた。
恐らくは冷蔵庫に入れてあるトレセン学園特製・スペシャルクリスマスパフェ(※後夜祭ver)を思い出したのだろう。 - 4二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:48:23
そう、カフェがここに来たら持ち寄ったスイーツを並べてティータイム、という習慣が私達にはすっかり根付いてしまったのだよ。
ポッケ君もダンツ君も部屋で一人過ごしている時、不意にこの時間が恋しくなると言うからから困ったものだ。まあ、私が言えたことではないがね。
「何ニヤニヤしてんだタキオン。手ぇ空いてんなら手伝えよ」
「いやなに、パフェを前に楽しそうにしてるポッケ君が随分可愛らしくてねえ」
「ポッケちゃんがスイーツのこと考えてたらすぐ分かるよ」
「なんだよ。ダンツまで……お前だってカフェが来た途端ご機嫌じゃねぇか」
「それは当然だろう、私にとってのカフェは君にとってのダンツ君のようなものだよ。とっくに知ってるだろう?」
「……よくもまあ、恥ずかしげもなく」
「そうでもないよ? ちょっとほっぺが赤くむむむむむ!」
「はいダンツ君そこまでだ」
「お前も大概じゃねぇか」
こうしてティータイムになるとあっという間に賑やかになるのも、まあいつも通りと言ったところか。四人分のカップとスイーツが並ぶティータイム、何となくだが、学園での付き合いが続く限りはこうして卓を囲んでいるような気がする。あるいは、卒業しても誰かの家に適当に集まってはこういうことをしているような気さえしてくる。それも悪くはないが、その場合今度は私の家を根城にされるのだけは阻止せねばなるまい。
そうして四人揃って炬燵に潜り込んで、私とカフェは何の迷いもなく同じ場所に隣り合って潜り込んだポッケ君達を見つめる。
「……それにしても、随分自然と同じ側に入ったねぇ」
「えっ?」
「まあ、お二人ならそうするとは思いましたが……」
「あっ……! こ、これはさっきまでポッケちゃんと同じとこに入ってたから、つい……」
どうやら、二人とも無意識だったらしい。あっという間にほっぺが赤くなるダンツ君を見ていると、ポッケ君が夢中になるのも分かるような気がするよ。
無論、こういう一面だけがそうさせたのではないことくらいはお見通しだがね。ダービーではいいものを見せてもらったよ。 - 5二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:49:10
「んだよ、別に良いだろ。今更不思議がるもんでもなし」
「君ならそう言うと思ったよ……うん?」
ふと目線を横に移すと、私から見て右側のスペースに居たハズのカフェがいつの間にかいなくなっている。一瞬不思議に思ったが、これにはすぐ合点がいった。何故ならば、このパターンはこれで二度目だからだ。前は後ろから首筋に冷たい手を当てられ、情けなくもデジタル君が不意打ちを食らったような声を出してしまい、ポッケ君にゲラゲラ笑われてしまった。しかし、そう何度も驚かされると思ったら大間違いだよ。
「……カ~フェ~?」
こうして訝しげに一声掛ければ、カフェはひょこりと後ろから顔を覗かせるだろう。不意打ちに失敗して多少不満げな顔をしながら、ね。どこから狙いを定められているか分かれば、何をされても驚くことはない。予測と実際の誤差を減らせば受ける感覚も変わるというものだよ。
と、私は得意げな顔をしてカフェを待ち構えていたのだが。
「あひっ!?」
「わっ!?」
「うわびっくりした。何だよタキオン」
両太腿の内側に突然奔った感触に驚いて慌てて炬燵から飛び出すと、どこぞの井戸幽霊の如くカフェが炬燵の布団からぬるりと這い出してきた。
手をわきわきと動かし、してやったりという得意げな顔と共に。
「……驚きましたか?」
「……参ったよ」
苦笑しつつ炬燵に戻ると、ポッケ君達と同じようにカフェも私の隣に陣取った。またやられたか、と笑うポッケ君とそれに合わせて苦笑するダンツ君。そして私とカフェで向かい合って炬燵に入る姿をデジタル君が見たら、お部屋ダブルデートとでも称するだろうか。
やはり、来年もどころか、ずっとその先までこうして何だかんだ言いながら過ごしているような気がするよ。
さて、ティータイム前のちょっとしたアレコレも済んだことだし、今日はこの辺で暇乞いとさせてくれたまえ。熱い珈琲と特製パフェがお待ちかねなのでね。あとは、折角同じスペースに並んで座ったのだから、カフェと隣り合って過ごす時間も楽しみたいからね。 - 6二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:50:06
ああ、そうそう。最後に一つ。私とカフェがこうして隣り合って座るとき、時々尻尾ハグをしているということは、デジタル君にはまだ内緒にしておいてくれたまえよ? また寮の部屋で自爆されては困るからね。
一応、誰に伝えるでもなく心の中でそう思ったつもりなのだが、この時デジタル君は東京ビッグサイトのサークルスペースで大きなくしゃみをして両隣のスペースから暖かい飲み物を貰っていたそうだ。然もありなん。 - 7二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:50:24
以上です、ありがとうございました。
新時代の扉でハマって始まったこのシリーズも7作目になりました。冬と言えば炬燵でイチャイチャですね。
前回、お話の内容に憂鬱感がなくなりつつあると言いましたが、カフェが研究室に来るまではずっとこんな感じなので大丈夫でしょう。
前回の憂鬱
アグネスタキオンの憂鬱(服選び編)【タキカフェ+ダンポケ・SS】|あにまん掲示板 やあ、諸君。今日もウマ娘が到達しうる最高到達点とその先の未来への研究で大忙しのアグネスタキオンだ。早速だが、君たちはウマ娘の勝負服について、どう思う? 知っての通り、現状トゥインクル・シリーズにおい…bbs.animanch.com - 8二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 10:53:47
久々のダンポケss助かる
- 9二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 11:05:21
糖度高いダンポケとタキカフェはいくらあっても良いですからね
さりげなく自爆の前科があるおデジで芝 - 10二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 11:25:12
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J( ˘ω˘)し - 11二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 11:28:12
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J( ˘ω˘)し - 12二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 18:43:25
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- 13124/12/30(月) 18:46:04