出来ることは全てやって。その上でこの脚はひび割れてしまうのなら。私はこれ以上何を差し出せばいいんですかっ……

  • 1◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:49:14

    ※もしもアルダンがダービー後、アルトレが就いていても骨折が避けられなかったとしたらというif展開のお話です。

     こちらの作品は下記作品の続きとなっております。事前にそちらを読まれる事を強く推奨いたします。

     読んでいただいている方は少しでも楽しんでいただければ幸いです。


    これからも。よろしくお願いいたしますね、トレーナーさん|あにまん掲示板【割れたガラスは永遠を咲かせる】 5月29日。東京レース場。 ウマ娘であるならば、トレーナーであるならば。誰もが憧れる日本ダービーという特別なレース。 その最後の直線に差し掛かり、スタンドから伝わって…bbs.animanch.com
  • 2◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:49:30

    ~恋情のSprout~


    ~Trainer's View~


     6月に入り、ニュースではそろそろ梅雨入りするという知らせを目にするが、今日の天気は快晴。お出かけにはうってつけな気持ちの良い日和だ。

    「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
    「行って参ります。帰る際また連絡するわね」
    「トレーナーさん。お嬢様のこと、よろしくお願いします」
    「はい、もちろんです」

     そんなお出かけ日和の今日、ばあやさんのお車によって連れてこられたのはとある劇場の前。

    「では、参りましょうか」

     公演している舞台の主催者からペアチケットを戴いたらしく、アルダンの誘いを受け観劇をする事になった。彼女曰くとても評判のいい演目らしい。
     どんな内容なのか、胸を躍らせつつも。

    「そうだね」

     右脚から覗く包帯と、コッ、コッと地面に当たる松葉杖の音に。喉の奥、苦みがじわりと滲んだ。

  • 3◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:49:42

     時は少しだけ遡る。
     アルダンが入院して、検査も終えて。結果次第では入院が長引く事も予想されたが、幸いにも右脚の骨折以外に異常は見つからなかった。
     つまりは──早々に退院できた訳である。

    「退院おめでとう、アルダン」
    「ありがとうございます。出来るなら、もうその言葉を聞かないようにしなければいけませんね」
    「そう、だね……」
    「す、すみません……トレーナーさんを責めたい訳ではないのです。私にとっては、何回も聞いてきた言葉で……実は、その度に思っておりまして……」

     入院する機会が多かった、というのはよく知っている。
     それに初めてアルダンの事を目にしたのも俺が食あたりで病院に転がり込んで、家へと帰る時に、だ。
     そのお陰でこうして出会えている訳ではあるのだが……。

    「それに今回の入院は短かったですし。お母様も来てくれましたから。あっという間でしたよ?」
    「それに関しては本当に良かった……俺としても親御さんには会って話をするべきだと思ってたから……」

     入院期間中には病室に訪れたアルダンのお母さんとも話をした。
     ご両親はアルダンがトゥインクルシリーズで走る事に反対している立場なのは知っていたから、正直どんな罵声を浴びせられても仕方ないと思っていた。
     しかしそんな予想に反して俺に掛けられた言葉は労いと、アルダンを支えている事への感謝。
     本当に……ラモーヌが良いように伝えてくれていたのだろう。ただただ恐縮する他なかった。
     そして日本ダービーの様子もテレビで見ていたらしい。
     ダービーで走る姿を見られて良かったと。そう伝えられた時のアルダンの瞳は少し潤んでいた。
     お父さんの方は仕事で戻れなかったそうだが、二人の総意としては『これからも娘をよろしくお願いします』との事だ。
     ご両親の信頼、決して裏切りたくはない。次はないと、一層身が引き締まる。

  • 4◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:49:58

    「お母様ったら、機会があれば是非家に招きたい、と」
    「アルダンのお母さんっていつもあんな感じ?」
    「いえ、家ではもう少し落ち着いておりますよ? ただ……私は母に普通の母親がする経験というものをあまりさせてあげられなかったもので。なので一般的な家庭が経験する、子供が友達を家に連れてきた、という経験がしてみたいのだと思います」

     ああ、なるほど。俺に対してそわそわとした雰囲気を感じたのはそういった部分なのか。
     とはいえアルダンが経験させてあげられなくとも、アルダンには姉のラモーヌがいるじゃないか。

    「でも君には姉が──」
    「姉様はその……あまりお友達を家に招くのは好まないと言いますか……」
    「ああ……」

     しかしそんな疑問は呆気なく消えていった。ラモーヌの性格を考えると確かに自発的に呼びそうにもないし、ましてやあの雰囲気だ。
     相手からしても家に遊びに行きたいとは言い辛いだろう。
     お母さんのお人柄的にもアルダンに似て世話好きな雰囲気を感じたし、そういった経験をしてみたいというのは非常に納得出来る。
     そう思うと俺でよければ是非ともお呼ばれされたい。トレーナーという立場なので、家庭訪問みたいになりはしないかと少し心配だが。

    「取り敢えず、その件は前向きに考えておくよ。流石に最初の3年間が終わってからとかになると思うけど」
    「ふふっ、はい。母も喜ばれるかと」

     話しているうちにトレーナー宿舎の前に到着したようだ。ここ最近、俺の方までばあやさんのお世話になってしまっている気がする。

  • 5◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:50:13

    「じゃあアルダン。また週明けに」

     車から降りて、そのまま宿舎に入ろうとするとアルダンに呼び止められた。

    「トレーナーさん、その。明日、ご予定などあるでしょうか?」
    「いや、ないよ? ああ、そうだ。退院祝いとかしようか?」

     確かに折角退院したのに何もなし、というのは味気ないかもしれない。
     ここ数日は優しい味付けの病院食だったのだから、濃い味付けの食べ物でも食べに行こうか。
     そう思いながら聞き返すもどうやら別の要件だったらしく。

    「いえ、そういうつもりではなかったのですけれど……こちらです」

     カバンから取り出したであろうチケットを車のドア越しに受け取る。演劇の鑑賞チケットのようだが、その日時が明日のお昼だ。

    「主催者様から姉様が戴いたそうなのです。退院が間に合うかどうか定かではありませんでしたので、ギリギリのお誘いになって申し訳ないのですが……よろしければご一緒していただけませんか?」

     検査の結果次第では入院が長引いた可能性もあるわけで、ギリギリまで誘わなかったのは俺を気遣っての事だろう。
     もしも間に合わなかったのなら、ラモーヌからチケットを貰っていた事を伏せておけばいいのだから。
     ただそれが間に合った。それならば誘いに乗らないのは失礼と言うものだろう。

    「もちろん、喜んで」
    「ふふっ、ありがとうございます。では明日の11時頃、迎えに上がりますね」

     退院して嬉しいのはアルダンも同じなようで。
     別れ際に見せてくれた笑顔は普段覗かせる春の木漏れ日のようなものよりも、夏の日差しみたいに眩しかった。

  • 6◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:50:44

    〜Ardan's view〜

     観劇を終えて、劇場を後にする頃には夕方と言うべき時間帯。
     夏と言うにはまだ早いこの季節、日が傾いてくると空気も涼し気なものに変わる。
     肌を柔い風が撫で、思わず散歩をしたくなるような心地よさ。
     先程の演目をトレーナーさんと語らいながら歩けたら、どれ程楽しいことでしょう。

    「そこのカフェで待とうか」
    「そうですね、ばあやにも連絡をいれませんと」

     だけどガラスの脚はひび割れていて。それをするのは叶わない。入院や骨折には慣れたものと思っていたけれど。
     錆のようにじわりと日常を侵食されていく度に、思い違いだったと自覚する。

    「アルダンは何を頼む?」
    「では、こちらのカフェ ラテを」
    「はーい。じゃあ俺はウインナーコーヒーで」

     トレーナーさんが呼び鈴を鳴らして注文を伝え、お互いアイスのドリンクだった事もありそれほど待たずに到着する。

    「幼稚園だったか小学生だったかは覚えてないんだけどさ。本格的な演劇を見るのって多分それ以来で。凄い楽しかったよ」
    「楽しんでいただけたなら何よりです」
    「幽霊退治に来てるのに幽霊に怯える様が面白おかしくて」

     そうですね、と同意しようとして。先程見たはずの演目なのに、私の中で非常に希薄になっていて。
     散歩をしながら語らえたらとさえ思っていたのに、話すべき内容が思い出せない。まるでひび割れたグラスから、水が零れていくように。

  • 7◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:51:01

    「アルダンだったらどうする? 結局あの後2人は諦めて帰っちゃったけど」

     けれどトレーナーさんの方から話題を振ってくれたので、事なきを得る。

    「私なら……諦めきれないと思います。多少無茶をしてでも、何も得られずは帰りたくないですね」
    「確かにね。英雄と呼ばれる栄誉も持ち帰れず、逆に落とし物までしてしまっているんだから」
    「はい。せめてそれに見合ったものくらいは、と」
    「まあでも。逃げ帰ったことで結果的に彼らは恥も最小限に済んでた訳だから」
    「親しい間柄だとしても、情けない姿を見せるのは少々恥ずかしいでしょうけれど」
    「でも見せることで深まる友情だってあるだろうし、あの後2人はもっと仲が良くなってるかもよ。お互い似たところがあるんだな、って」

     そうでしょうか。いらぬ心配をかけるくらいなら、気丈に振る舞いたいものだと思うのだけれど。
     グラスの氷がカラカラと音を響かせ始めた頃、見計らったかのようにばあやから電話が掛かってきた。

    「もしもしばあや? ううん、ちょうどお店を出る頃合いよ」

     トレーナーさんともう少しゆっくりお茶をしててもいいと言われたけど。あまり待たせるのも忍びないのでお店を出る。

    「今日は楽しかったよ。誘ってくれてありがとう、アルダン」
    「いえ、こちらこそ。急なお誘いだったにも関わらずありがとうございました」

     トレーナーさんとはトレーナー宿舎の前で別れ、ばあやに送り届けられ私もそのまま美浦寮へ。
     楽しい時間も終わり、夢から現に覚めるように。寮の中へと向かう途中、松葉杖が地面を突く音が虚しく響いた。

  • 8◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:51:18

     宝塚記念も終わり、梅雨も明けていよいよ夏休みが近付いてきた。
     トレセン学園の夏休みといえば夏合宿でトレーニングを集中的に行ったり。
     サマーウォークで普段は出来ない体験をして、友人たちと交流を深めたり。学生生活の鮮やかな思い出となる事でしょう。

    「ごめんアルダン、遅れたね」
    「いえ、私も先程授業が終わったばかりなので」

     期末試験の終わった学園では授業の流れも緩やかなもので。
     単元の終わりが見えているからか、授業の合間に挟まる先生方の雑談も些か増えている気がする。

    「期末テストの結果は……聞くまでもないか」
    「はい。トレーニングに差し障るような成績は取れませんので。今日返ってきた科目以外も大丈夫かと」

     今後進学するとなればいい点数を取っておくに越したことはないけれど。
     トレーニングの時間が取れなくなる、という部分に関しては……今の私には関係ない。

    「さて、と……夏の予定なんだけど」

     つまりは。

    「当然だけど、夏合宿には参加出来ない。まずはその脚を治す事が最優先だ」

     夏合宿も、私には関係ないということだ。

  • 9◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:51:33

    「サマーウォークは……出来ることなら君の意思を尊重したい。もしも参加したいものがあるなら、出来る範囲で俺もサポートするよ」
    「いえ。私だけならともかく、他の方のご迷惑になってしまいますので。参加するのは来年以降にいたします」

     そちらに関しても、松葉杖の必要なこの脚では文字通り足手まといになってしまう。参加しない方がお互いの為でしょう。

    「……ごめん」
    「どうしてトレーナーさんが謝られるのですか?」
    「いや、クラシックレースへの復帰が絶望的なのも勿論だけど。それ以上に君たちは学生だから。学生の時にしか味わえない青春を不意にさせてしまうのは……やっぱり心苦しいよ」

     数年ある内の一年。クラシックレースはともかく、友人たちとの日々は来年もまだ続いていくものだから。
     そこまで気に病まれる必要はないのに。

    「でしたら、トレーナーさんの学生時代の思い出、聞かせていただけますか?」
    「もちろん。あまり変わった話はないけど、それくらいお安い御用だよ」

     今の現状は、きっと避けられなかった未来。そう分かってるはずなのに。

    (今年も、ですね……)

     いつも通りを迎えそうな夏に、心は冷えていくばかりだった。

  • 10◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:51:48

    「アルダンさんも一緒に行けたら良かったんですけど……」

     夏休みを迎え、同室のチヨノオーさんは大きめなカバンに荷物を積め、まもなく夏合宿へと出発する。

    「こればかりは仕方ないですから。代わりに土産話、期待していますね」
    「はい! 任せておいてください!」

     脚が未だ完治していない私は当然留守番。ベッドに座りながらチヨノオーさんを見送る。

    「では、行ってきますね!」
    「はい、いってらっしゃい」

     元気良く、右手とその動きに釣られて揺れる尻尾を振りながら出発していった。

    「行ってしまいましたね……」

     長らく相部屋なものだから、まとまった期間を一人で寝る事になるのは珍しい。
     遠征でも基本的には数日だけだから、もしかしたら初めてかもしれない。

    「ああ、でも……チヨノオーさんは何度か経験しているのよね……」

     ただし私に関しては入退院を繰り返していた事もあり、寮にいない期間がそれなりに存在していた。
     出発前に綺麗にベッドメイキングされたベッドを見ながら、夏合宿が終わるまではこの部屋で一人寝るのだと実感する。

    「少しばかり、寂しいかもしれないわね……」

     とにかく今の私に出来るのは脚に負担を掛けないよう、安静にしておくこと。ただ、読書に勤しむばかりなのも退屈するのは事実で。

    「トレーナーさん、もう仕事に来られているかしら……」

  • 11◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:52:12

     一人だけの部屋よりも、誰かがいる空間に居たくて。
     ふらりふらりと、用も、トレーニングもないのにトレーナー室へと足を運ぶ。
     すっかり慣れた松葉杖での移動も来月には終わりを迎えそうで、早くこの夏が終わってほしいと思う。
     夏合宿初日な事もあり、敷地内にいる生徒はまだ本格化を迎えていない子たちが殆ど。
     朝練中の掛け声も、いつもと違って蝉の声が勝っているように感じる。
     けれどトレーナー室は、いつも通りに扉が開いた。

    「ああ、アルダン。おはよう」
    「おはようございます」

     私の骨折後、当然これからのトレーニングプランは白紙になった。
     それなのに今出来ること、VRウマレーターを使ってのシミュレート。
     治った後のプランを日々主治医と調整してくださっている。

    「ウマレーターの使用申請は今日はしてないよ? あまり使い過ぎても治った後に身体能力との齟齬が出て大変だからね」
    「はい、重々承知しております。その……今日は朝から、友人たちが皆出発したもので。ここで読書をしようかと」
    「……ああ、そっか。今日から夏合宿だもんね」

     チヨノオーさんが部屋にいないから、というのはここで読書をする理由にはなっていないけれど。
     特に言及されなかったのはトレーナーさんの気遣いなのでしょう。寂しがり、という程ではないと思うけれど。
     外で過ごすには暑く、中で過ごすには人恋しくなる温度だから。
     それ以降は特にお互い話すこともなく。私は読書に、トレーナーさんは仕事に勤しんでいたかと思うと。
     お昼時になるより少し早い時間に、キーボードを叩く音が止まり、静寂に終わりを告げた。

    「ねぇアルダン。ものは相談なんだけど……」

     仕事に区切りがついたのか、PCに顔を向けたまま、左手を顎に添えながら話し掛けてきた。
     その様子からなんとなくトレーニングに関係したことかしら、と思っていると。こちらを向きつつ、予想外の言葉が飛び出してきた。

    「夏合宿やサマーウォークに行けない分さ。二人だけで、ちょっとした気分転換にでもいかない?」

  • 12◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:52:29

     数日後。

    「それでは、ごゆるりとお過ごしください」
    「はい。ありがとうございます」

     トレーナーさんの誘いを承諾した後、トントン拍子に話が進んでいった。
     気付けば目の前にあるのは趣のある和室に、広縁から覗かせる見事な日本庭園。
     寝室は洋室で、私の脚にも考慮された一室には個室露天風呂まで付いており、まさに至れり尽くせりだ。
     合宿やサマーウォークに参加出来ない分、自分たちも泊まり掛けでどこかに出掛けよう。
     それがトレーナーさんの提案だった。
     ここ数日の出来事を振り返りつつひと息付いていると、隣に部屋が割り当てられているトレーナーさんがこちらの部屋へと入ってくる。

    「長旅お疲れ様」
    「トレーナーさんこそ。長時間の運転、ありがとうございました」
    「俺が言い出した事だし、これくらいはね」

     手際良く、トレーナーさんがお茶を準備しつつテーブル越しに腰を落ち着かせる。

    「……しかしいいのでしょうか。皆さん夏合宿に行っているというのに、私だけ旅館で英気を養うなど」
    「英気を養うのは立派な理由になると思うけどね。むしろ学園にいるよりも、休むという事に関していえば集中出来るとも言えるよ」
    「ものは言いよう、ですね」
    「まあね。それにそれでも後ろめたさを感じるのなら俺のせいにしたらいい。無理やり連れてこられた、ってね」
    「ですが、誘いを受けたのは私ですから」
    「どうだろう。君の事だから誘いを断り辛い、って部分もあったんじゃないのかな」

     同期の方々は合宿に励んでいる中、私だけは旅館でリフレッシュする後ろめたさ。折角の提案を無碍には出来ないという申し訳なさ。
     ……トレーナーさんの予想は全て当たっている。

  • 13◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:52:40

    「まあ俺の目的は君が休む事に専念出来る環境を作りたかっただけだから。学園にいたら他の子が練習してるところが目に入ったり、部屋にいないチヨノオーの事とか。どうしても気になるでしょ?」
    「……トレーナーさんの目は誤魔化せませんね」

     事実チヨノオーさんたちが合宿に行ってからというもの、今日までの数日ですら今頃どうしてるんだろう、と。
     無意識に考えが向いてしまっていた。

    「そういうことだから。ここにいる間は思う存分休もう」
    「……そうですね、そうさせていただきます」

     トレーナーさんの言う通り、効率的に休むという視点で見るとこの小旅行は真っ当かもしれない。
     寮にいたとして、きっと取り残されたやるせなさに気が沈むだけだ。少なくとも後ろめたさは少しだけ和らいだ。

    「取り敢えず俺は周りを少し散策してみるけど、どうする?」
    「あまり脚に負担を掛ける訳にもいきませんので。夕食まで身体を休めようかと」

     トレーナーさんが誘って来られたという事は、許容出来る範囲なのかもしれないけれど。
     不必要に脚へ負担を掛ける理由もない。……あくまで休息が目的。あまり浮いた気持ちにはなれなかった。

    「……そっか。分かった。夕食は俺の部屋に運んでもらう予定だから、それまでにはちゃんと戻ってくるよ」
    「はい」

     部屋を出るトレーナーさんを見送ってから、なんとなくひんやりとしたテーブルに頰を預ける。
     すると思いの外疲れが溜まっていたのか、急速に睡魔が襲ってきた。

    (眠ってしまいそう……)

     あまり行儀が良いとは思えないけれど。心地良い微睡みに抗う気は到底起きず、意識はふわりと沈んでいった。

  • 14◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:52:54

     二泊三日となる今回の小旅行。一日目は殆ど移動で費やされ、うたた寝をして起きた頃には既に夕食の時間帯となっていた。
     肩に掛かっていた身に覚えのないブランケットを畳み、寝起きでぼんやりとした思考のまま部屋を眺めているとノックの音がした。

    「はい」
    「入るよ?」
    「はい、どうぞ」

     周辺の散策に行ったのち一度温泉に浸かったのか、浴衣姿のトレーナーさんが夕食に呼びに来られた。

    「夕食が運ばれてきてるから呼びに来たんだけど良かった、起きてたね」
    「つい先程、ですけれど」
    「そっか。移動続きだったし疲れてたのかもね」

     テーブルに手をつき立ち上がろうとしたところ、それよりも早く手が差し伸べられたのでそちらを手に取り立ち上がる。

    「寝起きだけど大丈夫? 食べられそう?」
    「ええ、あまり問題ないかと。昼食は少なめでしたので」
    「なら安心だ。それじゃあ行こっか。料理が冷めちゃう」

     その後夕食を堪能して、少しお腹を休めてから個室露天で身体を流す。
     湯船に浸かり湯気で曇る夜空を見ながら考えるのは、夏合宿でトレーニングに励んでいるであろう友人たちと、未だ治らぬ脚のこと。
     環境が変わったからと言って思考までも完全に変えることは出来ず、結局は囚われたままだった。
     お風呂から上がった後、慣れた手つきで右脚に包帯を軽く巻いていく。
     ……夕食も終え、お風呂にも浸かり。残すは就寝するのみだけれど。
     寮で寝る時間よりも随分早く、その上夕食前に少し寝ていたものだからすぐに寝る気も起きない。
     トレーナーさんはどうしているのでしょうか、と。
     隣の部屋に少し様子を見に行こうとすると、ちょうどトレーナーさんも部屋を出るところだった。

  • 15◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:53:08

    「ああ、ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ。アルダン、少し外に行かない? 中庭のライトアップが綺麗だそうだから。さっき見てきたけど座れるところもあるから安心して」
    「まあ、そうなのですか? では、ご一緒させていただきます」

     特に断る理由もなく、トレーナーさんの後ろをついていき、中庭を眺める為に用意された椅子へと腰掛ける。
     けれど席に座っても、トレーナーさんの視線はいつまでも私に向いたまま。
     ……私も視線は中庭へと向いているはずなのに、見ていないようなものだけれど。

    「アルダンも、自分で気づいているとは思うけど」

     ああ、やはりその話でしょうね。ここを訪れることになった理由でもあり、そして晴れる様子もない心の靄。

    「浮かない顔。ここ最近、ずっとしてるから」

     いつも通りの私なら、きっと表情を作ってなんとか出来ていたでしょう。心配をかけるくらいなら、そうさせないように振る舞えばいいのだから。

    「あれほど気をつけていたのに骨折をして。恐らく、この一年は不意にすることは確定してしまって。悩んだり、落ち込んだりしない訳がないのは当然だよ」

     だけどそれが出来ていないということは、それ程までに私に余裕がないのか。それとも、トレーナーさんが鋭いのか。

    「……ねぇアルダン。心の内を吐き出して楽になれるのなら、そうしてしまってもいいと思う」
    「それをトレーナーさんに言ったとして、どうなるのでしょう。貴方を不快にさせて、それだけではありませんか?」

     自ら口に出して少し驚く、棘のある言い方。割れたガラスのように、触れるべきではないと分からせる為の歪な破片。

  • 16◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:53:22

    「不快になんてならないよ。君に頼られて、そんな事を思うわけがない」
    「トレーナーさんを頼りたくない訳ではありません。ただ、これ以上貴方に負担を押し付けたくなくて……」

     それなのに、傷つく事すら厭わず、欠片をひとつひとつ集めるように。私の心を掬い上げようとするその言葉を。

    「君の事を負担に思ったことなんてないよ。それに、これ以上って言うけど、アルダンが増やした負担なんて何一つとしてない。今回の骨折だって、俺に責任が──」
    「出来るわけないじゃないですか」

     たまらず、遮ってしまった。

    「出来ません、あんなに尽くしてくださったのに。それを貴方のせいにだなんて、ひと欠片も」

     ひと息に言い放って。突き放すような物言いをしてしまった自分に、酷く、嫌気が差す。
     嫌だった。無用な心配をかけるという事が、ずっと。迷惑をかけるから、だなんて。
     そんな立派な理由じゃない。だって、心配をかけないように振る舞わなければ。私が、私自身が誤解されてしまうから。

    「……ああ、そうだね。俺だってそう思ってたんだから」

     だけど今の私に対しては、何も間違ってなどいない。はじめは取るに足らない、小さなヒビ。
     しかしそのヒビは、次第に大きく亀裂を走らせてしまった。今にも割れてしまいそうな程に。
     割れないように必死になって、何も見えなくなる程に。

    「アルダン。君は俺の担当ウマ娘で、俺は君の担当トレーナーだ。だから君が背負うのは、半分でいい」

     誤解なんてされていない。間違っていたのは、私の認識。幼い頃より刷り込まれてきた、癖とすら呼んでいい、己の立ち振舞。
     そんなものに縋らなくても、正しく私を見てくれる人が、こんなに近くにいるのに。

    「もう半分は、俺に預けてもいいんだよ」

     トレーナーさんの言葉が、すっと心に溶け込んだ。

  • 17◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:53:38

    「骨折が分かった直後は、まだ大丈夫だったんです」

     ……ああ、しゃんとしてるつもりだったのに。本当はずっと出来ていなかった。
     今だって背中を丸めて、精いっぱい表情を隠そうとして。

    「これまでにも何度かした事がある、軽度のものでしたから」

     怖いから。弱い部分を見せてしまえば、割れ物のように扱われてしまわないかと。

    「だから治すのにどれくらいの時間が掛かるのか、分かっていたはずなんです」

     全て吐き出してしまって、以前と同じように私を扱ってくれるかと。

    「なんだか私だけ、置いていかれているみたいで」

     けれどそんな事を気に留める余裕すら既になく、堰を切ったように言葉は次々と溢れてくる。

    「焦って……いるんだと思います。このままではいけない。なのにどうする事も出来ないのが、酷くもどかしくて」

     きっとトレーナーさんと出会わなければ、感じることのなかった焦燥感。

    「夏合宿、参加したかったです」
    「ああ……」
    「サマーウォークも。チヨノオーさんやヤエノさんをお誘いして」

  • 18◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:53:52

     確かに私の歴史が動き出したと、そう感じた時に抱いた。

    「……少し、楽しみにしてたんです。今年は違う、って。今までの私じゃないから、きっと色んなことが出来ると思っていました」

     期待。

    「だけど……何も変わっていませんでした」

     そして。

    「ダービーを勝てなかったのに。それなのにこの脚はひび割れてしまって。私の輝きも、トレーナーさんの栄誉も。何一つ手に入れられなかったのに失っただけで」

     抱いてしまったからこそ出来てしまった、叶わぬ望み。

    「昔と同じように、思ってしまうんです。どうして私だけ、って。出来ることは全てやって。その上でこの脚はひび割れてしまうのなら。私はこれ以上何を差し出せばいいんですかっ……」

     最後に絞り出した言葉は、嗚咽混じりで。それに対してトレーナーさんは何も答えない。
     ……私が、答えを求めている訳ではないと、そう分かっているかのように。ただ、寄り添ってくれるだけ。
     どれくらいそうしていたか分からない。トレーナーさんの言う通り、吐き出すだけ吐き出して。
     心の内が少し軽くなったからなのか、随分と楽になったような気がする。

    「……すみません、お見苦しいところを」
    「見苦しいところを見た覚えはないよ」
    「……幼い頃から、抵抗があったんです。人に弱みを見せることに。隅で縮こまっていると体調が悪いと。誤解される事もあったもので」
    「そっか」
    「ですので……その……トレーナーさんは、今まで通りにしていただければ」
    「……君のどんな部分を見ても、俺の認識は変わらないよ」

  • 19◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:54:04

     ふと顔を上げると、トレーナーさんと視線が交わった。
     思えば今日初めての事かもしれない。既に一日は終わろうとしているのに。

    「いつだって優しくて、思慮深くて。少しお茶目なところもあって、我慢強くて。だからせめて、俺といる時くらいは羽を休めてほしい。ずっと、そんな子だよ、君は」

     甘えたい時は甘えてもいい。以前言われたことがあり、きっとトレーナーさんの中では、今になるまでずっと変わっていなかった思い。
     あの時の私は、はぐらかしてしまったけれど。今の私にとっては、その言葉はとても魅力的で。

    「……では、そうさせていただきますね?」
    「ああ。とは言っても、羽休めと言ってサボりは勘弁してほしいかな? これから遅れを取り戻さなくちゃいけないんだから」

     それに、トレーナーさんの意識は既にこの脚が治った後の事に向いている。
     私の抱えていた不安が、杞憂だと証明するかのように。
     いつからか言われるようになった、メジロラモーヌの妹、という評価。
     姉というフィルター越しにしか見られず、いつだって私との間は曇りガラスで隔てられていた。

    「明日は特に予定はないけどどうしようか? どこか出掛けたいなら、近場で楽しめそうなところをリストアップしてあるよ」
    「その、お任せします」

  • 20◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:54:16

     そんな世界で現れた、メジロアルダンを見てくれる人。
     お父様やお母様、ばあやや主治医とも違う、私を私として扱ってくれる人。
     トレーナーさんがくれた、初めて知る感情。

    「そう? じゃあ少しだけ出掛けようか」
    「はい」
    「それじゃあお休み、アルダン」
    「はい、お休みなさい」

     部屋の前で別れ、ベッドへと向かい体重を預けるとほぅ、っと熱の籠もった息が溢れた。

    「私、トレーナーさんの事が……」

     高鳴るこの鼓動が、辿り着いた答えが真実だと伝えてくる。きっと今のままだと眠ることは出来ない。

    「眠る前にもう一度お風呂に入りましょうか」

     湯船に浸かり、リラックスしながら。抱いた感情に想いを巡らせたい。
     そう考えながら見る星空は、先程よりも澄んで見えた。

  • 21◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:54:29

    「ただいま戻りました!」
    「おかえりなさい、チヨノオーさん」

     トレーナーさんとの小旅行を終えて、数日経つと夏合宿に行っていた子達も戻ってきた。
     合宿の為に持っていった体操着やタオルなど。
     タンスやクローゼットにテキパキと片付けていくチヨノオーさんから合宿での土産話を聞いていると、ふと疑問を投げ掛けられた。

    「アルダンさん、私が合宿に行っている間に何かありましたか?」
    「何か? ですか?」
    「はい。合宿前と雰囲気が違うな〜、と思いまして。私の勘違いかもしれませんけど……」

     チヨノオーさんが合宿に行っている間に起きたことと言えば、トレーナーさんとの小旅行。
     あの時悩みを吐き出して、心が軽くなったのだからその影響は間違いなくある。

    「トレーナーさんと気分転換に旅行に行きまして」
    「なるほど! ……ん〜? でもリフレッシュ出来たというよりもちょっと違うような……」

     それかもしくは……。

    「アルダンさん。ひょっとしてひょっとするんですけど、その小旅行ってデートだったり……」
    「デートではありませんよ。少なくとも、トレーナーさんはその気ではなかったでしょうから。あくまで私のリフレッシュ目的かと」
    「や、やっぱりそうですよね。すみません、早とちりを……え、アルダンさんはその気だったんですか?」

     トレーナーさんへの、心境の変化。

  • 22◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:54:41

    「そのつもりは、なかったはずなのですけれど……」

     私の答えにチヨノオーさんは驚愕と好奇が入り混じったような表情を浮かべ、荷物を片付けるのも中断して詰め寄ってくる。

    「え、え!? 本当ですか!?」
    「私自身初めての経験ではありますが、恐らく……」
    「わ、わ〜……! ど、どういったところを……とか聞いてみたりしても……?」
    「あまり面白い話ではないかもしれませんよ?」

    (恋バナ、私がする日が来るだなんて……)

     聞く方ではなく語る方、という部分は予想だにしなかったけれど。皆がするような当たり前が、私にも出来る喜びを噛み締めながら。

    「今夜は寝かせませんよ〜!」
    「ふふ、ずっと起きていると寮長に怒られてしまいますよ」

     友人にだけ打ち明ける秘め事話は、きっとかけがえのない、今だけのものだ。

  • 23◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:54:58

     骨折が治った後は順調……とまでは行かなかったものの、大きな問題なく力を取り戻していった。
     衰えていた筋力と体力を戻しつつ、骨折前のトレーニング強度に戻れるように。
     そして復帰レースも5月に決まり、気づけばバレンタインの季節になっていた。

    「喜んでいただけるでしょうか?」

     表向きは日頃の感謝を。けれど隠し味には、あの夏で自覚した想いも込めて。
     チョコレートの入った手提げ袋を持ちながら、軽やかな足取りでトレーナー室に向かう。
     今日はトレセン学園全体が色めき立っており、思わず私もその雰囲気に当てられる。
     トレーナー室に辿り着き、軽く深呼吸してからノックをするも中からの返事はない。
     けれど扉は抵抗なく空き、部屋の主が不在ではない事を教えてくれる。
     中に入り、視界に入ってきたのは──机に突っ伏した、トレーナーさんの姿だった。

    「トレーナーさん? 寝ておられるのですか?」

     多忙を極める職業ゆえ、昼寝をしている光景は特段珍しいという訳でもない。実際以前にも同じような事が何度かあり、今回も同じでしょうとトレーナーさんに近づいた。
     けれど違った。同じではなかった。

    「トレーナーさん? ……トレーナーさん、トレーナーさん!」

     穏やかな寝息は聞こえてこず、代わりに聞こえてきたのは浅い呼吸。思わず触れた首筋から伝わるのは、尋常ではない熱さ。事態が深刻であると理解すると、全身から血の気が引いていく。



     ……ああ。どうしてこの運命は、私だけではなく彼も苦しめるのでしょう。

  • 24◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:55:14

    みたいな話が読みたいので誰か書いてください。

  • 25◆y6O8WzjYAE24/12/30(月) 22:56:39

    もうさァッ!無理だよ!この部分書き終わったの9月頃なんだからさァッ!(イベストとの迫真の展開被り)

  • 26二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:00:59

    乙 最後はちょっと笑ってしまった
    エースはああ言ってくれたが、エースは現役中ケガらしいケガはしていないからな
    ほんとのところはわからんのではないかと思う
    分からんことはわかった上で声をかけているとも思うが

  • 27二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 23:12:10

    乙でございます

    >>1を責める事は出来ない(某七英雄風に)

    ラモーヌと入れ替わる形でイベスト出演してアルダン個人の掘り下げが来るなど予想出来るものか


    そうだよね、メジロの中で年長と言ってもまだ子供なのだから我慢せずに嘆く事は嘆いても良いはずなんだ

  • 28◆y6O8WzjYAE24/12/31(火) 00:15:18

    という訳で上記作品の続きです。
    キャラストの時期が育成のどの辺りか問題があるのですが、アルダンの場合は画像の発言があるので多分7話がクラシック夏合宿かなぁ……と思ってこの話を書いています。
    全体的に6話7話意識な内容なのは育成とは明確に違う世界線の話だから、という部分を際立たせる為です。
    諸説あるとは思いますがアルダンが自分の感情に気付くタイミングはキャラストだと6話派です。

    続きは多分1/5になるかな?と思います。
    ひとまずここまで読んでいただきありがとうございました。
    次回で完結ですのでよろしければもう少しお付き合いください。

  • 29◆y6O8WzjYAE24/12/31(火) 00:21:26

    >>27

    アルダンがアプリに出て以降のシングレアルダンはなんだかんだ根っこの部分はアプリと一緒な感じがあるので、実際怪我して戦線離脱するとなると陰でひっそりと涙を流す子ではあると思ってます。

    病気や怪我をしやすい体質だからと言って、実際なった時に心の奥底まで割り切れるかは別なので……。

  • 30二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 06:02:14

    いつも美しい物語をありがとうございます。
    続きも楽しみにしてます。

  • 31◆y6O8WzjYAE24/12/31(火) 10:53:20

    あげあ~げでうぇうぇ〜い

  • 32二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 17:55:35

    アルダンの解像度高いトレウマなんてなんぼあってもええですからね
    いいものを読めたよありがとう

  • 33◆y6O8WzjYAE24/12/31(火) 21:30:51

    >>32

    ここからがマグマなんです。

    語りたい解釈部分が次のお話でまとまって出てくるので是非お待ちください。

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 06:37:58

    続きが既に待ち遠しい

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 17:57:01

    この引きはズルいよ~

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:41:41

    >>33

    楽しみにしてます

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