『友情の必要十分条件』(SS、幻覚強め)

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:54:32

    どうも、新年あけましておめでとうございます。新年一発目というわけで、長い間出すと言ってたくせに、全然出せなかったSSを投稿したいと思います

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:56:24

    ワクワクするな

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:58:16

    こちらのスレの影響を受けて

    [ss]ツムギのトリニティ見聞録|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3659938/ここで書いたssの完成版ですbbs.animanch.com

    こちらで書くと宣言したまま放置していたSSですね

    天気雨[ss]|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3110113/随分と前に投稿した自作ssの続きです繋がりはありますが、読んでなくても大丈夫だと思いますbbs.animanch.com

    この二つのスレは必見の価値ありなので、なんやこのスレ主の文章下手くそやなって思った人も、ぜひ上のSSだけは読んで帰ってください

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:58:55

    「誰か助けて」
    そんなセリフと共に現れるスーパースター。痛快に悪人どもをバッタバッタとなぎ倒す。
    そんなのは漫画やアニメ、特撮の中だけの存在だって私ぐらいの年齢になれば、誰だって言うだろう。それでも私はスーパースターに憧れたのだ。
    しかし現実は簡単ではない。助けを求める声を出せる人は多くないし、そもそもどうすれば問題が解決するかもわからない。そんな事件か、事件じゃないのかわからない案件がごまんとキヴォトスには溢れている。そして今、私、宇沢レイサはまたそのような一件に巻き込まれてしまったのである。

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:00:28

    「なぁあんた。宇沢レイサちゃんだろ?私たち、あんたと友達になりたいんだよ」

    「はぁ…友達、ですか」

    「なぁいいだろ?友達になってくれるだけでいいんだよ。連絡先とか交換してさ、みんなでお出かけとかしようぜ~?」

    人気のない裏通りをパトロールしている最中、レイサはガラの悪そうな生徒集団に取り囲まれてしまった。これがただのカツアゲならレイサも反撃すれば済むのだが、相手は友達になりたいだけだと主張している。レイサ自身新しい友達は歓迎であり、本当にそれだけならあまり拒否する理由もないのだが…

    (うぅ!!流石に怪しいです!ですが、言ってる内容自体はそこまで悪い人には思えませんし…一体どうしたものでしょうか)

    レイサが返事を迷っている間にも、どんどん生徒たちはにじり寄ってくる。気づけばレイサの逃げ道が完全に塞がれてしまった。そんな時であった。

    「こっちですヴァルキューレのみなさん!!こっちにスケバンたちが!!」

    腹に力の入った大声と、ドタドタと足音が路地裏に響き渡る。スケバンたちは互いに顔を合わせると、オロオロした様子で猫耳のリーダーらしき生徒の方に視線を集める。

    「何チンタラしてやがる!サツが来たんだからさっさとずらかるに決まってるだろ!!」

    猫耳の生徒が駆け出すと、ワンテンポ遅れて周囲のスケバンたちが走り出す。どうやら統率力はいまいちのようだ。

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:02:22

    「お怪我はないでしょうか?」

    深緑色の髪を腰辺りまで伸ばした少女に手を差し出されたレイサは、自分がへたり込んでいることをその時やっと認識した。

    「あなたは…たしかツムギさん、でしたよね?」

    「おや、スケバンに囲まれていたのはレイサさんだったんですか」

    以前のトリニティの謝肉祭。その際遊びに来たツムギの案内をしたのがレイサであり、レイサにとっては数少ない知り合いだった。

    「ところで…ヴァルキューレの方々は?」

    レイサはスカートについた汚れを払いながらツムギに尋ねた。

    「え?嘘ですよ?」

    けろりとした顔で言い放った彼女の言葉に、レイサはせっかく汚れを払ったばかりなのに地面にずっこけそうになってしまう。まるでリアクション芸人のような反応にツムギは口元に手を持っていき、上品にくすりと笑った。

    「よくあるハッタリですよ。あなたも何かの作品で見たこととかありませんか?」

    ツムギはその場で足音を鳴らして見せる。流れとしては、一人近場でドタドタと足音を鳴らしながら叫んで、スケバンが逃げた頃合いを見て姿を現したということになる。文字に起こして説明してしまうと随分と滑稽だが、実際に追い払えてしまったのだから、彼女の演出力の高さが窺える。

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:11:52

    「音だけでも、どうとでも表現できるものなんですよ」


    「そういえば『路上狼─喧嘩伝説』でも、動画でサイレンの音声を流して不良を追い払うシーンがありましたね」


    そこまで話したところでレイサはハッとする。路上狼─喧嘩伝説はいわゆるバリバリの格闘漫画であり、同年代の女子相手に読んでいるなんて知られたら引かれるだろうと気づいたのである。こういうのがあるから口に出す前に少しは考えた方がいいのにと、何度反省しても悪癖が消えない自分自身が嫌になってしまう。


    「ほう…あの作品を知っているのですか」


    「え!?まさかツムギさんも読んだことがあるんですか!!?」


    「もちろん、大分古い作品ですけれど不朽の名作ですからね」


    「うわぁ…嬉しいです!!トリニティだと通じる人がいなかったので」


    レイサは思わぬところで見つけた同士の手を取り、舞い上がってしまう。伝統と格式を重視するトリニティと、ありとあらゆる芸術を尊重するワイルドハントでは通じる話題も当然異なる。偶然レイサの悪癖が良い方向に転がったのは彼女の日ごろの行い故かもしれない。


  • 8二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:22:08

    とりあえずその場から離れて歩き始める二人。レイサは何度かツムギの顔色を窺った後、意を決して言いにくいことを言ってみることにした。

    「その~1ついいですか?」

    「どうしましたか?」

    「あ、いえ。ヴァルキューレの人を呼ぶ振りをしてくださいましたけど、そこまでやる必要あったかな~って。本当に友達になりたかっただけという可能性もありますし。いえ、私も対応に困ってましたし、助かったのは事実なんですけれども」

    ツムギはその言葉を聞いて、呆れたような、どこか嬉しそうな顔をしながら諭すような調子で言葉を返す。

    「あの手の輩はレイサさんみたいな人の良心に付け込んで、食い物にしてくる無害を装った悪人なんですよ。そもそも、やましいことがなければ逃げる必要もないのが道理ではありませんか?」

    きっぱりと言い切ったツムギの強さにレイサは感心する。人間関係になると随分と臆病で判断を迷いに迷ってしまう面も、レイサの悪癖の1つであった。

    「自警団だというのに情けないところを見せてしまいましたね…あ、ツムギさん。たい焼き屋さんですよ。助けてもらったんですし、私が奢りましょうか?」

    「気にしないでください。自分の分ぐらいお金を出しますよ」

    そう言ってツムギはレイサの前に出て店員と対面する。

    「でも、トリニティのお店って他校の生徒さんには少しお高いらしいですけど大丈夫ですか?」

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:26:00

    値段を見たツムギは一つ二千円という桁を間違えているとしか思えない値段に、蛇に睨まれた蛙のように金縛りに見舞われる。普段から楽器やら音響機材やらで金銭に余裕がないツムギにはあまりにも痛すぎる出費である。しかし、ツムギとてバンドマン。現代を生きる傾奇者である彼女に、今更お金が足りないので買えませんなどという情けない言葉を言えるはずがなかった。


    「すみません、たい焼き10個ください。つぶあん4つ、こしあん4つ、カスタード2つで」


    後ろから出てきたレイサは、こともなげに二万円を店員に渡すと袋に詰められた焼きたてのたい焼きを受け取る。ツムギはレイサに手を引かれるまま、近くのベンチに隣り合って座るのであった。


    「アリガトウゴザイマス…」


    (ツムギさん…声は消え入りそうですし、耳が真っ赤になってます。ツムギさんには申し訳ないですけど、こんな珍しい一面が見られたのは何というか、その、嬉しいですね)


    レイサは少しよくない感情が沸き上がったが、自分とツムギの間に袋を置いて中のたい焼きにパクつけば、あまりの美味しさに感情は全て歓喜に塗り替えられた。お高いだけあって中々良い品である。


  • 10二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:27:59

    「それにしても、悪い人を見分けるというのは難しいものですね」

    レイサがため息まじりに溢した言葉に、ツムギも2,3度頷く。

    「その点には同意します。本当に厄介な奴ほど表面を擬態して、言葉の虚飾を身に纏う。触れただけでは本質を見極められず…いつの間にか触れ合った部分から悪意の針を忍ばせ寄生してくる」

    ツムギはたい焼きを一つ持ち上げると、クルリと回転させる。型通り綺麗に焼かれた小麦粉に包まれた中身はつぶあんか、こしあんか、はたまたカスタードか。実際に食べなければわからないのである。

    ツムギはレイサの顔をじっと見つめると、木漏れ日のような微笑みと共に言葉を続ける。

    「悪人を見極める方法の一つ。フード理論、という言葉をご存じでしょうか?」

    「はぁ…一応言葉として聞いたことはある程度ですかね」

    「物語の中において悪人は食べ物を粗末に扱う、逆に善人は美味しそうにご飯を食べるという言い換えれば──────『お約束』、というものでしょうね」

    そこまで説明されて、レイサも思い出した話がいくつかあった。確かに、悪人が食事時に襲ってくるという展開は珍しくないし、逆にお菓子を踏み潰した味方キャラが読者から批判の的となった話も聞いたことがある。

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:37:53

    このレスは削除されています

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:39:01

    「つまり、食べ物を粗末にしている人は悪人だと判別できるってことですか?」


    「必ずとは言えませんが。ただ、レイサさんはあまりにも美味しそうに食べるので、その姿を見ただけで悪い人では無いとわかるなと思いまして」


    ツムギは人差し指で自身の右頬をちょんちょんとつつく。レイサは3秒ほど遅れてその動作の意味を理解すると大慌てで頬を拭う。案の定レイサのもちもちのほっぺたにはカスタードクリームがデコレーションされていた。


    「あうう…恥ずかしいです」


    「もう少し黙っていてもよかったのですが、私はもう十分愛くるしいレイサさんを堪能できたので」


    膨れるレイサを見て、ツムギはスイーツ部の話題を振って露骨に話題を逸らす。どうやらレイサはアイリやナツ、ヨシミと友達になれたおかげで、最近は5人でスイーツ巡りに行くこともあると嬉しそうに語った。

    その日ツムギとレイサはお気に入りの作品の話題に華を咲かせたり、スイーツ部の近況の話をするなどで話題は尽きず、もう辺りが暗くなり始めた頃になってようやく帰路に着いたのであった。


  • 13二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:43:16

    レイサと再会してから数日後の学校からの帰り道、ツムギはレイサがまた怪しい奴らに狙われていないか心配になっていた。

    (あのヒロインは無事でしょうか。騙されやすいですからキヴォトスの治安ではいつ標的にされてもおかしくありませんし)

    ツムギは自分を探してくれたファンのために、アドバイスをして見守り、曲を作ってあげるほどの世話焼きの一面も持ち合わせている生徒である。レイサのような無防備な生徒のことが心配になるのは、当然の帰結だった。

    「…一つ連絡でも入れてみますか」

    ツムギ本人さえ余計なお世話だとは思うが、どうにも原因不明の胸騒ぎが止まらない。ツムギはスマホをポケットから取り出すと、レイサに連絡を入れる。
    テロリロン、テロリロンとスマホから聞こえてくる音に夢中になっていたツムギは、後ろから歩いてきた生徒に気づけずぶつかってしまう。

    「あ、すみません」

    「いえいえ、こちらからぶつかったので気にしないでください」

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:53:20

    謝った生徒の顔を見て、ツムギは驚愕のあまり言葉を失う。そこにいたのは数日前にレイサを囲んでいた猫耳が特徴的なスケバンのリーダーであった。
    ツムギが状況を理解するよりも先に、鳩尾目掛けた膝蹴りが深々と突き刺さる。ツムギは肺の中の酸素が全て押し出されると、糸の切れたマリオネットのようにうずくまってしまう。続く銃のグリップによる一撃は右手首を精密に狙われ、スマホを地面に落としてしまった。どこに隠れていたのか、取り巻きたちがゾロゾロを出てきて側近と思しき生徒がスマホを蹴り飛ばしてしまい、唯一の連絡手段は茂みの中に消えてしまった。

    「ゲホッ!!カハッ!!ハーー!!ハーー!!」

    「よぉ、随分と苦しそうだな?早速で悪いが私たちに着いてきてもらうぞ」

    「お、お断りですと言ったら?」

    リーダーは下卑た笑みを浮かべた後ボソリ、とツムギの右耳で何かを呟く。瞬く間にツムギの表情が強張っていき、反抗の意思は目から消えていった。

    「そうそう、物わかりの良い奴は好きだよ」

    「ブブッ…ツーツー、もしもーし?ツムギさん?どうしました?ツムギさーん??」

    友の声は誰にも届かない茂みの中で虚しく響き渡るだけであった。

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:54:45

    とりあえず、本日はここまでです。新年一発目なので最推しのSSを書きましたが、ここまでが本日の限界でした。続きはなるべくすぐ上げますのでお待ちください!!

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:10:30

    新年一発目からツムレイとは・・・覚悟決まってるな

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:18:17

    >>3

    執筆宣言4ヶ月以上前で草

    有言実行して偉い


    いや〜、2人でスイーツを食べてるシーンが可愛らしいですね(白目)

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:35:01

    新作嬉しいレイサかわいいツムギピンチ
    続きが楽しみ

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 01:21:45

    >>9

    赤面するよわツムギだと!?こんなの僕のデータに無いぞ!!


    >>12

    ほっぺたにクリームをつけるレイサだと!?そんなの僕のデータにあるぞ!!

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 04:46:16

    好きな漫画で話題を膨らませるレイサは健康にいい。確かにトリニティだとジャンプ系は肩身狭そう

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 11:13:00

    >>3

    ガチの文豪先生の作品じゃん

    こうやってSS書きの意思が受け継がれてくの面白いな

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 12:05:26

    >>15

    乙、続き待ってます

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 19:29:08

    >>21

    スレ主です

    ホント、最高のSSなんで絶対に読んでください


    ちなみに、私のSSにおいてツムギとレイサが謝肉祭を経て知り合いになっていますが、特に上記のツムギSSスレから時系列が繋がってる訳ではありません。

    あくまで、勝手にリスペクトさせていただいただけですので、お気をつけください。

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:23:10

    どうも、今日も続きを投稿していきたいと思います


    トリニティの自治区内に一応所属しているだけの廃ビル群、そびえ立つ廃ビルのうち一つの屋上。無法者たちの住処にツムギが連行されてから既に1時間は経っただろうか。既に日は落ちて、辺りには肉と肉がぶつかる鈍い音だけがこだまする。

    「こいつ顔面殴ってもビビらねぇ…そんなら、どれだけ悲鳴を耐えられるか我慢比べするか?」

    そうツムギを脅した彼女はツムギの両足を掴むと、柵の外で逆さにして宙ぶらりんの体勢で揺する。地上約20m、この高さから落ちれば生徒の頑丈さでも無事ではすまない。当たりどころが悪ければ、頭蓋骨は金槌で叩かれた豚の貯金箱と同じ末路を辿るだろう。それでもなお表情を崩さないツムギを見て、彼女はツムギを床に投げ飛ばし、半ば呆れたようにリーダーに苦言を呈する。

    「リーダー、これもう無理っすよ。ネジ無しイカレポンチですこいつ。何やっても怖がらねぇんだもん」

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:24:16

    リーダーは椅子に座ってふんぞり返りながら、ホットドッグ片手に語り始める。

    「お前が先に弱音吐いてどうする。いいか?私たちの世界で大事なのはメンツだ。以前私たちをコケにしてくれたこいつを、ボコボコにして友達になるから許してくださいって言わせることでメンツが保てるんだ。わかったか?わかったな?わかったなら、もう10人ぐらいでボコっちまえ。フクロにしちまえば、さすがに諦めるだろ」

    そう言ってホットドッグを齧ったリーダーは口内からホットドッグだったものを噴出して、近くにいた生徒をマシンガンで連射する。

    「バカ野郎!!マスタードは必ず抜きにして買ってこいって言っただろ!!こんな犬の餌を私に食わせるつもりか!!?テメェ!!」

    怒り狂った彼女は手に持ったマスタード入りホットドッグを先ほど撃った生徒に叩きつけると、ホットドッグごとワンマガジン撃ち尽くす。

    「あぁ腹が立つ…ん?おい、何見てんだテメェら。聞こえなかったのか?さっさとそいつを袋にしちまえ」

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:26:32

    リーダーの言葉を受け、側近らしき生徒が他の生徒たちに声をかける。

    「リーダーの命令だ。お前たち、もう屋上にいる全員でボコるぞ」

    しかし、他の生徒たちの反応はよろしくない。みな目を逸らしたり、指と指を合わせてこね回したり、わざとらしく咳をしたりととても乗り気とは思えない返しばかりである。

    「え…いや、その。さすがに10人がかりはやりすぎだと思いますけれど…」

    「そうですよ。せめて3人ぐらいで…」

    「まさか、嫌だって言うのか?お前ら、私たちの友達なのか、あそこの緑のボロ雑巾の仲間なのか、どっちなんだ?」

    リーダーの言葉一つで場が凍り付く。ここで拒否をすれば先ほどの生徒と同じ末路を辿ることは、チンパンジーでもわかる。しばらくの沈黙。その静寂を破ったのは、ツムギの珍しく怒りの滲んだ言葉であった。

    「なるほど、何も知らない相手の時は強引に関係を迫り、邪魔や拒否をされれば脅しと暴力で言うことを聞かせる。そして仲間にした後は犯罪の片棒を担がせ、逃げられないようにする、と。大した脚本ですね。今どき、映画開始10分で壊滅する三流悪の組織でももっと魅力的な組織として描かれますよ」

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:28:11

    ツムギの言葉に一般メンバーたちの顔がまるで曇天のように暗く沈んでいく。犯罪の片棒を担いでいる、目を逸らしていた現実を目の前に叩きつけられてしまったからだ。何も言い返せない自身への情けなさ故か、何人か泣き出してしまう生徒もいた。

    「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。私たちはと・も・だ・ち、なんだぜ?」

    リーダーは泣き出したメンバーたちの肩に手を回し笑いかける。無理やりにでも笑うよう躾けられているのだろう。涙と鼻水でぐちゃぐちゃのまま営業スマイルのように張り付いた笑顔をした彼女たちはどんなホラー映画のエネミーよりも不気味で、この組織の歪さがそのまま映し出されていた。

    「いいか?私は献金や貢献度次第では、一般の友人から親友、そして魂の友(ソウルフレンド)まで上がることができる。もちろん友人になった時点で無理に搾取なんてしないし、こいつらは他の不良から狙われなくなる。魂の友にもなれば発言権だって認められる。私たちはwin-winの関係性なんだ」

    ツムギは真っ直ぐとリーダーを睨み続ける。口を交わしたのは今日が初めてだが、貴様こそ不俱戴天の敵だとでも言わんばかりに、ひたすらに怒りを湛えた視線を崩さない。

    「気に食わない目だ」

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:30:52

    リーダーはマシンガンを構えると、座っているツムギの顔面に向けて連射する。ツムギが耐え切れず右半身を上にするように倒れると、今度は狙いやすい右腕に狙いをつける。
    ──────瞬間ツムギは鬼気迫る表情で背中を盾にして右腕を庇う。

    「なんだ?急に随分と必死そうじゃないか」

    リーダーは何が理由なのか考えを巡らせた後、核心に至った事実に喜び膝を叩く。

    「そういえば、身の上調べてみたがバンドマンだったな。ベース?ギター?とにかくああいう楽器使うらしい。作曲担当でもあるみたいだな」

    「…よく調べたものですね。その熱量を芸術に昇華できれば、ワイルドハントでも三流芸術家程度としてならやっていけたでしょうに」

    「よーし、作戦変更だ。お前が次断ったら、指を十本全てへし折ることにした。お前にとっては、命みたいなもんだろ?ワイルドハント生は自分の存在意義も魂も芸術に注ぐ酔狂なあたおか(頭がおかしい)集団らしいからな」

    リーダーはツムギの頭頂部を乱雑に掴むと、ブチリブチリという音を伴いながらツムギの体が起こされる。

    やっと苦悶の表情を浮かべるツムギに興が乗ったのか、リーダーは愉悦半分満足半分の表情でグヒヒと下種笑いを漏らしながらツムギに最後のチャンスを与える。

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:35:06

    「おい、今からでも友達になりますって言えば、助けてやるよ。もちろん、私たちに反抗したからって友達になった後は差別したりしないさ。貢献次第では魂の友にだってなれる。友達だから、平等にチャンスは与えないといけないだろ?」

    リーダーは少し前かがみの体勢になると、地面にへたり込むツムギに手を伸ばす。

    (ここで了承すれば、この場は私の指は助かる。断れば恐らく指だけでは済まない。反抗しようにも既に両手以外ジンジンと熱いほど負傷しており、血の流しすぎで意識は朦朧。今は…前者を選ぶしかないようですね)

    状況を客観的に見る能力に長けたツムギの判断は早かった。朦朧とした意識の中震える手を、伸ばし、伸ばし、伸ばし──────リーダーの顔の前まで伸ばすと中指以外の指を折り曲げる。

    「 Kiss-My-Ass(消え失せろ)」

    ツムギは暗赤色の唾をクソ生意気な豚野郎の顔面に吐き出し、どこまでも反抗してみせた。確かに芸術活動に使う指はツムギの命だが、デスメタルで培った魂は命の最後まで反抗しろと叫んでいた。ならば、それに従うのみ。理性が、知性が、生存本能が全て止めたところで、魂の叫びを聞き逃せばそれはアーティストではないのだから。

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:36:51

    以上です。レイサが出て来なくてすみません…
    口の悪い女の子っていいですよね

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:56:00

    >>30

    スーパースターの登場にはカタルシスが必要だからよぉ・・・待ってるぜ宇沢

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:57:56

    ツムギ先輩ロックですわね(それどころではない

    明確な悪が絞り込めたんだあとはみんなのアイドルトリニティの守護騎士が突撃するだけなんだ
    レイサ早くきてくれ

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 23:45:39

    >>25

    ここ

    >>10

    フード理論を回収してるのか

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 07:31:23

    >>32

    フランスとかいう革命頻発国モチーフにした学園でロックバンドやってる奴だ。生き様は最高にロックだぜ


    こんなところ助けられたら、レイサに脳みそ焼かれちまうよ

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 18:39:52

    ロックは折れない

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:55:19

    さぁツムギはどうなってしまうのか。続きです!!!


    ドムォンと鈍い音が響く。ゴム鞠みたいに蹴っ飛ばされたツムギは2mほど吹き飛び、全身を壁に強かに打ち付けた。

    「この万年蝉並の騒音を出すことぐらいしか能の無いクソアマがぁぁぁ!!!私に逆らうとかどーいう神経しちゃってるわけ!!?やっぱりはしご状神経系なのかテメーはよぉ!!?」

    リーダーは気が済むまでひたすらに緑のゴム鞠を踏みつけると、息を整え『友達』の方へと振り返る。

    「よし、まずは右手の親指からいくぞ。お前ら、しっかり抑えとけよ?」

    怒りのあまりわなないた両の手でツムギの右手首を掴むと、ミシミシと音が鳴るほどに握り締めながらツムギを引きずって移動する。

    (…誰か助けて)

    痛くない訳ではない。こんなやつに屈するぐらいなら痛いのも我慢するというだけだ。辛いし、苦しいし、痛い。いかに強い心の持ち主であろうとも、心の中で助けを願うぐらい許されるはずだ。

    (なんて…都合のいいヒーローが現れるほど、世の中は劇的ではないことぐらい、他人の物語を覗いてきたのだからわかっているはずなのに)

    「ちょーと待ったぁ!!!」

    そして、救いの手が伸ばされることだって、神様がいるなら許してくれるはずだ。削岩機をも超える騒音が耳をつんざく。db(デシベル)表記ならば120db超えは確実か。

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:58:06

    「トリニティのスーパースター!!宇沢レイサ!!見参です!!私の友達を傷つける人は許しませんよ!!」

    堂々と扉を蹴破って現れたボロボロのヒーローに驚き、呆れ、困惑、様々な感情が渦巻く屋上で、レイサはまるでディズニーアニメの王子様のようにツムギの手を取る。

    「遅れてしまいすみません。返しの電話をしても出てくれなかったんで、きっとこの私に救難信号を送ったんだろうって気づけたところまではよかったんですが。ツムギさんの目撃情報が中々手に入らず…遅くなってしまいました」

    「おい、このビルの中、なんなら下にもけっこうな数の友達がいたはずだが?」

    「ここに来る途中で見つかった相手は、全員大人しくなってもらいました!さぁツムギさん。一緒に帰りま…しょ…」

    「………不格好なところを見せてしまいましたね」

    レイサの目に映ったのは、全身あざだらけで出血が止まらない傷口は2桁を超えるような、念入りに痛めつけられたツムギの体であった。

    「おい、ツムギちゃんは私たちの邪魔をしたから、お詫びとして友達になるところなんだよ。えーと、確かレイサちゃんだったよね?君に邪魔する資格あるわけ?」

    「もちろんです。友達ですから」

    ツムギのチューニングなどで鍛えられた耳は瞬時にレイサの異変に気付いた。明らかに普段の声よりもワントーン低い。先ほどまでの自身を鼓舞するかのようなハイテンションと比べればもちろん、普段レイサがプリプリ怒っている時とも違う。本気の敵意。

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:00:19

    「友達だからか~。レイサちゃんがツムギちゃんと一緒にいる理由は?」

    「理由が必要ですか?」

    「友達っていうのは、そういうものなんだよ。レイサちゃんも、ガキの頃に比べて友達を作るのが難しいって思うようになったりしてないかい?それは、年齢が上がるごとに関係性は利益優先になるからさ。より社会的に有利な立場になるために、グループに入る。トリニティなんて、まさにそうだろう?」

    リーダーはレイサを威圧するようにわざわざゼロ距離まで接近し、見下ろしながら話を続ける。

    「私たちは強い繋がりで支え合ってるんだ。力が必要な時は、全員で敵を叩き潰す。だから、君よりもツムギちゃんの友達になるのに相応しい。そうは思わないかい?」

    わざとらしく手を叩くと、リーダーはニッコリと青筋を浮かべながらレイサに迫る。

    「あ、そうだ。レイサちゃん。君も強いみたいだし、私たちの友達になろうよ?悪くない話だと思うんだけどなぁ。もし断ったら、私たちの友達としての繋がり、見せることになっちゃうよ?」

    「お断りします」

    レイサの返答に、数日前のような迷いは一切見えなかった。

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:02:32

    「私の思う友達っていうのはただの理想かもしれません!!私はまだ全然友達が多くないですし、ずっと友達と呼べる人もいない人生でした!!」

    レイサはダンッと足を踏み鳴らし、デコとデコをぶつけ合いながら、真正面から反抗する。

    「それでも!利益を求めあって笑顔を失う関係が友達というのはおかしいです!!無条件で助けたいって思いあえる関係こそが友達です!!」

    「あっそ」

    リーダーは不意打ち気味に右手を振りかぶると、拳を振り下ろす。しかし、レイサは半歩の軸移動だけで避ける。空を切った拳は最小限の動きで避けたレイサにとって、ノロノロ飛ぶ鴨そのもの。右肘と右膝で拳を挟むと、そのまま逃げられなくなった相手の鳩尾へと左の肘鉄が放たれる。

    「カハッ!!」

    よろめくリーダーは愛銃に指をかけながら、吠える。

    「テメェ!!ふざけやがって!!私を誰だと思ってやがる!!私は!!」

    遠吠えは銃声にかき消された。既にレイサの放ったショットガンが、1,2…3発。一身に受けたリーダーは空を飛び、『友達』の波の中に上半身を下にして呑まれていった。

    「ハァ…ハァ…おい!!何してるお前たち!!私を手伝え!!ビルの中の奴らにも声をかけてもっと屋上に人を集めろ!!喧嘩だ!!」

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:04:07

    以上です。さぁ、盛り上がってまいりました!!いつも感想ありがとうございます。感想とか貰える度に泣いて喜んでるので、気軽にください!!

  • 41二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:10:01

    これはヒーローですわ…
    いつもは騒がしい子が、ガチギレした時ほど却って静かなの良いよね

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 07:25:29

    >>41

    理論立ててるように見えて、ムチャクチャなことしか言ってないやつには静かな暴力がいいってヒナちゃんも言ってるしね


    でも宇沢がやるとホントかっこいいんだこれが・・・

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 15:22:28

    もしかして宇沢って、強くてカッコいい?

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 22:54:03

    スレ主です。本日は更新出来なさそうです。申し訳ありませんが明日まで!明日までお待ちください!!

スレッドは1/5 10:54頃に落ちます

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