- 1二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:54:32
- 2二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:56:24
ワクワクするな
- 3二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:58:16
こちらのスレの影響を受けて
[ss]ツムギのトリニティ見聞録|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3659938/ここで書いたssの完成版ですbbs.animanch.comこちらで書くと宣言したまま放置していたSSですね
天気雨[ss]|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3110113/随分と前に投稿した自作ssの続きです繋がりはありますが、読んでなくても大丈夫だと思いますbbs.animanch.comこの二つのスレは必見の価値ありなので、なんやこのスレ主の文章下手くそやなって思った人も、ぜひ上のSSだけは読んで帰ってください
- 4二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 22:58:55
「誰か助けて」
そんなセリフと共に現れるスーパースター。痛快に悪人どもをバッタバッタとなぎ倒す。
そんなのは漫画やアニメ、特撮の中だけの存在だって私ぐらいの年齢になれば、誰だって言うだろう。それでも私はスーパースターに憧れたのだ。
しかし現実は簡単ではない。助けを求める声を出せる人は多くないし、そもそもどうすれば問題が解決するかもわからない。そんな事件か、事件じゃないのかわからない案件がごまんとキヴォトスには溢れている。そして今、私、宇沢レイサはまたそのような一件に巻き込まれてしまったのである。 - 5二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:00:28
「なぁあんた。宇沢レイサちゃんだろ?私たち、あんたと友達になりたいんだよ」
「はぁ…友達、ですか」
「なぁいいだろ?友達になってくれるだけでいいんだよ。連絡先とか交換してさ、みんなでお出かけとかしようぜ~?」
人気のない裏通りをパトロールしている最中、レイサはガラの悪そうな生徒集団に取り囲まれてしまった。これがただのカツアゲならレイサも反撃すれば済むのだが、相手は友達になりたいだけだと主張している。レイサ自身新しい友達は歓迎であり、本当にそれだけならあまり拒否する理由もないのだが…
(うぅ!!流石に怪しいです!ですが、言ってる内容自体はそこまで悪い人には思えませんし…一体どうしたものでしょうか)
レイサが返事を迷っている間にも、どんどん生徒たちはにじり寄ってくる。気づけばレイサの逃げ道が完全に塞がれてしまった。そんな時であった。
「こっちですヴァルキューレのみなさん!!こっちにスケバンたちが!!」
腹に力の入った大声と、ドタドタと足音が路地裏に響き渡る。スケバンたちは互いに顔を合わせると、オロオロした様子で猫耳のリーダーらしき生徒の方に視線を集める。
「何チンタラしてやがる!サツが来たんだからさっさとずらかるに決まってるだろ!!」
猫耳の生徒が駆け出すと、ワンテンポ遅れて周囲のスケバンたちが走り出す。どうやら統率力はいまいちのようだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:02:22
「お怪我はないでしょうか?」
深緑色の髪を腰辺りまで伸ばした少女に手を差し出されたレイサは、自分がへたり込んでいることをその時やっと認識した。
「あなたは…たしかツムギさん、でしたよね?」
「おや、スケバンに囲まれていたのはレイサさんだったんですか」
以前のトリニティの謝肉祭。その際遊びに来たツムギの案内をしたのがレイサであり、レイサにとっては数少ない知り合いだった。
「ところで…ヴァルキューレの方々は?」
レイサはスカートについた汚れを払いながらツムギに尋ねた。
「え?嘘ですよ?」
けろりとした顔で言い放った彼女の言葉に、レイサはせっかく汚れを払ったばかりなのに地面にずっこけそうになってしまう。まるでリアクション芸人のような反応にツムギは口元に手を持っていき、上品にくすりと笑った。
「よくあるハッタリですよ。あなたも何かの作品で見たこととかありませんか?」
ツムギはその場で足音を鳴らして見せる。流れとしては、一人近場でドタドタと足音を鳴らしながら叫んで、スケバンが逃げた頃合いを見て姿を現したということになる。文字に起こして説明してしまうと随分と滑稽だが、実際に追い払えてしまったのだから、彼女の演出力の高さが窺える。 - 7二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:11:52
「音だけでも、どうとでも表現できるものなんですよ」
「そういえば『路上狼─喧嘩伝説』でも、動画でサイレンの音声を流して不良を追い払うシーンがありましたね」
そこまで話したところでレイサはハッとする。路上狼─喧嘩伝説はいわゆるバリバリの格闘漫画であり、同年代の女子相手に読んでいるなんて知られたら引かれるだろうと気づいたのである。こういうのがあるから口に出す前に少しは考えた方がいいのにと、何度反省しても悪癖が消えない自分自身が嫌になってしまう。
「ほう…あの作品を知っているのですか」
「え!?まさかツムギさんも読んだことがあるんですか!!?」
「もちろん、大分古い作品ですけれど不朽の名作ですからね」
「うわぁ…嬉しいです!!トリニティだと通じる人がいなかったので」
レイサは思わぬところで見つけた同士の手を取り、舞い上がってしまう。伝統と格式を重視するトリニティと、ありとあらゆる芸術を尊重するワイルドハントでは通じる話題も当然異なる。偶然レイサの悪癖が良い方向に転がったのは彼女の日ごろの行い故かもしれない。
- 8二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:22:08
とりあえずその場から離れて歩き始める二人。レイサは何度かツムギの顔色を窺った後、意を決して言いにくいことを言ってみることにした。
「その~1ついいですか?」
「どうしましたか?」
「あ、いえ。ヴァルキューレの人を呼ぶ振りをしてくださいましたけど、そこまでやる必要あったかな~って。本当に友達になりたかっただけという可能性もありますし。いえ、私も対応に困ってましたし、助かったのは事実なんですけれども」
ツムギはその言葉を聞いて、呆れたような、どこか嬉しそうな顔をしながら諭すような調子で言葉を返す。
「あの手の輩はレイサさんみたいな人の良心に付け込んで、食い物にしてくる無害を装った悪人なんですよ。そもそも、やましいことがなければ逃げる必要もないのが道理ではありませんか?」
きっぱりと言い切ったツムギの強さにレイサは感心する。人間関係になると随分と臆病で判断を迷いに迷ってしまう面も、レイサの悪癖の1つであった。
「自警団だというのに情けないところを見せてしまいましたね…あ、ツムギさん。たい焼き屋さんですよ。助けてもらったんですし、私が奢りましょうか?」
「気にしないでください。自分の分ぐらいお金を出しますよ」
そう言ってツムギはレイサの前に出て店員と対面する。
「でも、トリニティのお店って他校の生徒さんには少しお高いらしいですけど大丈夫ですか?」 - 9二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:26:00
値段を見たツムギは一つ二千円という桁を間違えているとしか思えない値段に、蛇に睨まれた蛙のように金縛りに見舞われる。普段から楽器やら音響機材やらで金銭に余裕がないツムギにはあまりにも痛すぎる出費である。しかし、ツムギとてバンドマン。現代を生きる傾奇者である彼女に、今更お金が足りないので買えませんなどという情けない言葉を言えるはずがなかった。
「すみません、たい焼き10個ください。つぶあん4つ、こしあん4つ、カスタード2つで」
後ろから出てきたレイサは、こともなげに二万円を店員に渡すと袋に詰められた焼きたてのたい焼きを受け取る。ツムギはレイサに手を引かれるまま、近くのベンチに隣り合って座るのであった。
「アリガトウゴザイマス…」
(ツムギさん…声は消え入りそうですし、耳が真っ赤になってます。ツムギさんには申し訳ないですけど、こんな珍しい一面が見られたのは何というか、その、嬉しいですね)
レイサは少しよくない感情が沸き上がったが、自分とツムギの間に袋を置いて中のたい焼きにパクつけば、あまりの美味しさに感情は全て歓喜に塗り替えられた。お高いだけあって中々良い品である。
- 10二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:27:59
「それにしても、悪い人を見分けるというのは難しいものですね」
レイサがため息まじりに溢した言葉に、ツムギも2,3度頷く。
「その点には同意します。本当に厄介な奴ほど表面を擬態して、言葉の虚飾を身に纏う。触れただけでは本質を見極められず…いつの間にか触れ合った部分から悪意の針を忍ばせ寄生してくる」
ツムギはたい焼きを一つ持ち上げると、クルリと回転させる。型通り綺麗に焼かれた小麦粉に包まれた中身はつぶあんか、こしあんか、はたまたカスタードか。実際に食べなければわからないのである。
ツムギはレイサの顔をじっと見つめると、木漏れ日のような微笑みと共に言葉を続ける。
「悪人を見極める方法の一つ。フード理論、という言葉をご存じでしょうか?」
「はぁ…一応言葉として聞いたことはある程度ですかね」
「物語の中において悪人は食べ物を粗末に扱う、逆に善人は美味しそうにご飯を食べるという言い換えれば──────『お約束』、というものでしょうね」
そこまで説明されて、レイサも思い出した話がいくつかあった。確かに、悪人が食事時に襲ってくるという展開は珍しくないし、逆にお菓子を踏み潰した味方キャラが読者から批判の的となった話も聞いたことがある。 - 11二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:37:53
このレスは削除されています
- 12二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:39:01
「つまり、食べ物を粗末にしている人は悪人だと判別できるってことですか?」
「必ずとは言えませんが。ただ、レイサさんはあまりにも美味しそうに食べるので、その姿を見ただけで悪い人では無いとわかるなと思いまして」
ツムギは人差し指で自身の右頬をちょんちょんとつつく。レイサは3秒ほど遅れてその動作の意味を理解すると大慌てで頬を拭う。案の定レイサのもちもちのほっぺたにはカスタードクリームがデコレーションされていた。
「あうう…恥ずかしいです」
「もう少し黙っていてもよかったのですが、私はもう十分愛くるしいレイサさんを堪能できたので」
膨れるレイサを見て、ツムギはスイーツ部の話題を振って露骨に話題を逸らす。どうやらレイサはアイリやナツ、ヨシミと友達になれたおかげで、最近は5人でスイーツ巡りに行くこともあると嬉しそうに語った。
その日ツムギとレイサはお気に入りの作品の話題に華を咲かせたり、スイーツ部の近況の話をするなどで話題は尽きず、もう辺りが暗くなり始めた頃になってようやく帰路に着いたのであった。
- 13二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:43:16
レイサと再会してから数日後の学校からの帰り道、ツムギはレイサがまた怪しい奴らに狙われていないか心配になっていた。
(あのヒロインは無事でしょうか。騙されやすいですからキヴォトスの治安ではいつ標的にされてもおかしくありませんし)
ツムギは自分を探してくれたファンのために、アドバイスをして見守り、曲を作ってあげるほどの世話焼きの一面も持ち合わせている生徒である。レイサのような無防備な生徒のことが心配になるのは、当然の帰結だった。
「…一つ連絡でも入れてみますか」
ツムギ本人さえ余計なお世話だとは思うが、どうにも原因不明の胸騒ぎが止まらない。ツムギはスマホをポケットから取り出すと、レイサに連絡を入れる。
テロリロン、テロリロンとスマホから聞こえてくる音に夢中になっていたツムギは、後ろから歩いてきた生徒に気づけずぶつかってしまう。
「あ、すみません」
「いえいえ、こちらからぶつかったので気にしないでください」 - 14二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:53:20
謝った生徒の顔を見て、ツムギは驚愕のあまり言葉を失う。そこにいたのは数日前にレイサを囲んでいた猫耳が特徴的なスケバンのリーダーであった。
ツムギが状況を理解するよりも先に、鳩尾目掛けた膝蹴りが深々と突き刺さる。ツムギは肺の中の酸素が全て押し出されると、糸の切れたマリオネットのようにうずくまってしまう。続く銃のグリップによる一撃は右手首を精密に狙われ、スマホを地面に落としてしまった。どこに隠れていたのか、取り巻きたちがゾロゾロを出てきて側近と思しき生徒がスマホを蹴り飛ばしてしまい、唯一の連絡手段は茂みの中に消えてしまった。
「ゲホッ!!カハッ!!ハーー!!ハーー!!」
「よぉ、随分と苦しそうだな?早速で悪いが私たちに着いてきてもらうぞ」
「お、お断りですと言ったら?」
リーダーは下卑た笑みを浮かべた後ボソリ、とツムギの右耳で何かを呟く。瞬く間にツムギの表情が強張っていき、反抗の意思は目から消えていった。
「そうそう、物わかりの良い奴は好きだよ」
「ブブッ…ツーツー、もしもーし?ツムギさん?どうしました?ツムギさーん??」
友の声は誰にも届かない茂みの中で虚しく響き渡るだけであった。 - 15二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 23:54:45
とりあえず、本日はここまでです。新年一発目なので最推しのSSを書きましたが、ここまでが本日の限界でした。続きはなるべくすぐ上げますのでお待ちください!!
- 16二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:10:30
新年一発目からツムレイとは・・・覚悟決まってるな
- 17二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:18:17
- 18二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 00:35:01
新作嬉しいレイサかわいいツムギピンチ
続きが楽しみ - 19二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 01:21:45
- 20二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 04:46:16
好きな漫画で話題を膨らませるレイサは健康にいい。確かにトリニティだとジャンプ系は肩身狭そう
- 21二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 11:13:00
- 22二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 12:05:26
乙、続き待ってます
- 23二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 19:29:08
スレ主です
ホント、最高のSSなんで絶対に読んでください
ちなみに、私のSSにおいてツムギとレイサが謝肉祭を経て知り合いになっていますが、特に上記のツムギSSスレから時系列が繋がってる訳ではありません。
あくまで、勝手にリスペクトさせていただいただけですので、お気をつけください。
- 24二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:23:10
どうも、今日も続きを投稿していきたいと思います
トリニティの自治区内に一応所属しているだけの廃ビル群、そびえ立つ廃ビルのうち一つの屋上。無法者たちの住処にツムギが連行されてから既に1時間は経っただろうか。既に日は落ちて、辺りには肉と肉がぶつかる鈍い音だけがこだまする。
「こいつ顔面殴ってもビビらねぇ…そんなら、どれだけ悲鳴を耐えられるか我慢比べするか?」
そうツムギを脅した彼女はツムギの両足を掴むと、柵の外で逆さにして宙ぶらりんの体勢で揺する。地上約20m、この高さから落ちれば生徒の頑丈さでも無事ではすまない。当たりどころが悪ければ、頭蓋骨は金槌で叩かれた豚の貯金箱と同じ末路を辿るだろう。それでもなお表情を崩さないツムギを見て、彼女はツムギを床に投げ飛ばし、半ば呆れたようにリーダーに苦言を呈する。
「リーダー、これもう無理っすよ。ネジ無しイカレポンチですこいつ。何やっても怖がらねぇんだもん」 - 25二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:24:16
リーダーは椅子に座ってふんぞり返りながら、ホットドッグ片手に語り始める。
「お前が先に弱音吐いてどうする。いいか?私たちの世界で大事なのはメンツだ。以前私たちをコケにしてくれたこいつを、ボコボコにして友達になるから許してくださいって言わせることでメンツが保てるんだ。わかったか?わかったな?わかったなら、もう10人ぐらいでボコっちまえ。フクロにしちまえば、さすがに諦めるだろ」
そう言ってホットドッグを齧ったリーダーは口内からホットドッグだったものを噴出して、近くにいた生徒をマシンガンで連射する。
「バカ野郎!!マスタードは必ず抜きにして買ってこいって言っただろ!!こんな犬の餌を私に食わせるつもりか!!?テメェ!!」
怒り狂った彼女は手に持ったマスタード入りホットドッグを先ほど撃った生徒に叩きつけると、ホットドッグごとワンマガジン撃ち尽くす。
「あぁ腹が立つ…ん?おい、何見てんだテメェら。聞こえなかったのか?さっさとそいつを袋にしちまえ」 - 26二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:26:32
リーダーの言葉を受け、側近らしき生徒が他の生徒たちに声をかける。
「リーダーの命令だ。お前たち、もう屋上にいる全員でボコるぞ」
しかし、他の生徒たちの反応はよろしくない。みな目を逸らしたり、指と指を合わせてこね回したり、わざとらしく咳をしたりととても乗り気とは思えない返しばかりである。
「え…いや、その。さすがに10人がかりはやりすぎだと思いますけれど…」
「そうですよ。せめて3人ぐらいで…」
「まさか、嫌だって言うのか?お前ら、私たちの友達なのか、あそこの緑のボロ雑巾の仲間なのか、どっちなんだ?」
リーダーの言葉一つで場が凍り付く。ここで拒否をすれば先ほどの生徒と同じ末路を辿ることは、チンパンジーでもわかる。しばらくの沈黙。その静寂を破ったのは、ツムギの珍しく怒りの滲んだ言葉であった。
「なるほど、何も知らない相手の時は強引に関係を迫り、邪魔や拒否をされれば脅しと暴力で言うことを聞かせる。そして仲間にした後は犯罪の片棒を担がせ、逃げられないようにする、と。大した脚本ですね。今どき、映画開始10分で壊滅する三流悪の組織でももっと魅力的な組織として描かれますよ」 - 27二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:28:11
ツムギの言葉に一般メンバーたちの顔がまるで曇天のように暗く沈んでいく。犯罪の片棒を担いでいる、目を逸らしていた現実を目の前に叩きつけられてしまったからだ。何も言い返せない自身への情けなさ故か、何人か泣き出してしまう生徒もいた。
「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。私たちはと・も・だ・ち、なんだぜ?」
リーダーは泣き出したメンバーたちの肩に手を回し笑いかける。無理やりにでも笑うよう躾けられているのだろう。涙と鼻水でぐちゃぐちゃのまま営業スマイルのように張り付いた笑顔をした彼女たちはどんなホラー映画のエネミーよりも不気味で、この組織の歪さがそのまま映し出されていた。
「いいか?私は献金や貢献度次第では、一般の友人から親友、そして魂の友(ソウルフレンド)まで上がることができる。もちろん友人になった時点で無理に搾取なんてしないし、こいつらは他の不良から狙われなくなる。魂の友にもなれば発言権だって認められる。私たちはwin-winの関係性なんだ」
ツムギは真っ直ぐとリーダーを睨み続ける。口を交わしたのは今日が初めてだが、貴様こそ不俱戴天の敵だとでも言わんばかりに、ひたすらに怒りを湛えた視線を崩さない。
「気に食わない目だ」 - 28二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:30:52
リーダーはマシンガンを構えると、座っているツムギの顔面に向けて連射する。ツムギが耐え切れず右半身を上にするように倒れると、今度は狙いやすい右腕に狙いをつける。
──────瞬間ツムギは鬼気迫る表情で背中を盾にして右腕を庇う。
「なんだ?急に随分と必死そうじゃないか」
リーダーは何が理由なのか考えを巡らせた後、核心に至った事実に喜び膝を叩く。
「そういえば、身の上調べてみたがバンドマンだったな。ベース?ギター?とにかくああいう楽器使うらしい。作曲担当でもあるみたいだな」
「…よく調べたものですね。その熱量を芸術に昇華できれば、ワイルドハントでも三流芸術家程度としてならやっていけたでしょうに」
「よーし、作戦変更だ。お前が次断ったら、指を十本全てへし折ることにした。お前にとっては、命みたいなもんだろ?ワイルドハント生は自分の存在意義も魂も芸術に注ぐ酔狂なあたおか(頭がおかしい)集団らしいからな」
リーダーはツムギの頭頂部を乱雑に掴むと、ブチリブチリという音を伴いながらツムギの体が起こされる。
やっと苦悶の表情を浮かべるツムギに興が乗ったのか、リーダーは愉悦半分満足半分の表情でグヒヒと下種笑いを漏らしながらツムギに最後のチャンスを与える。 - 29二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:35:06
「おい、今からでも友達になりますって言えば、助けてやるよ。もちろん、私たちに反抗したからって友達になった後は差別したりしないさ。貢献次第では魂の友にだってなれる。友達だから、平等にチャンスは与えないといけないだろ?」
リーダーは少し前かがみの体勢になると、地面にへたり込むツムギに手を伸ばす。
(ここで了承すれば、この場は私の指は助かる。断れば恐らく指だけでは済まない。反抗しようにも既に両手以外ジンジンと熱いほど負傷しており、血の流しすぎで意識は朦朧。今は…前者を選ぶしかないようですね)
状況を客観的に見る能力に長けたツムギの判断は早かった。朦朧とした意識の中震える手を、伸ばし、伸ばし、伸ばし──────リーダーの顔の前まで伸ばすと中指以外の指を折り曲げる。
「 Kiss-My-Ass(消え失せろ)」
ツムギは暗赤色の唾をクソ生意気な豚野郎の顔面に吐き出し、どこまでも反抗してみせた。確かに芸術活動に使う指はツムギの命だが、デスメタルで培った魂は命の最後まで反抗しろと叫んでいた。ならば、それに従うのみ。理性が、知性が、生存本能が全て止めたところで、魂の叫びを聞き逃せばそれはアーティストではないのだから。 - 30二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:36:51
以上です。レイサが出て来なくてすみません…
口の悪い女の子っていいですよね - 31二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:56:00
スーパースターの登場にはカタルシスが必要だからよぉ・・・待ってるぜ宇沢
- 32二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 22:57:56
ツムギ先輩ロックですわね(それどころではない
明確な悪が絞り込めたんだあとはみんなのアイドルトリニティの守護騎士が突撃するだけなんだ
レイサ早くきてくれ - 33二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 23:45:39
- 34二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 07:31:23
- 35二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 18:39:52
ロックは折れない
- 36二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:55:19
さぁツムギはどうなってしまうのか。続きです!!!
ドムォンと鈍い音が響く。ゴム鞠みたいに蹴っ飛ばされたツムギは2mほど吹き飛び、全身を壁に強かに打ち付けた。
「この万年蝉並の騒音を出すことぐらいしか能の無いクソアマがぁぁぁ!!!私に逆らうとかどーいう神経しちゃってるわけ!!?やっぱりはしご状神経系なのかテメーはよぉ!!?」
リーダーは気が済むまでひたすらに緑のゴム鞠を踏みつけると、息を整え『友達』の方へと振り返る。
「よし、まずは右手の親指からいくぞ。お前ら、しっかり抑えとけよ?」
怒りのあまりわなないた両の手でツムギの右手首を掴むと、ミシミシと音が鳴るほどに握り締めながらツムギを引きずって移動する。
(…誰か助けて)
痛くない訳ではない。こんなやつに屈するぐらいなら痛いのも我慢するというだけだ。辛いし、苦しいし、痛い。いかに強い心の持ち主であろうとも、心の中で助けを願うぐらい許されるはずだ。
(なんて…都合のいいヒーローが現れるほど、世の中は劇的ではないことぐらい、他人の物語を覗いてきたのだからわかっているはずなのに)
「ちょーと待ったぁ!!!」
そして、救いの手が伸ばされることだって、神様がいるなら許してくれるはずだ。削岩機をも超える騒音が耳をつんざく。db(デシベル)表記ならば120db超えは確実か。 - 37二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:58:06
「トリニティのスーパースター!!宇沢レイサ!!見参です!!私の友達を傷つける人は許しませんよ!!」
堂々と扉を蹴破って現れたボロボロのヒーローに驚き、呆れ、困惑、様々な感情が渦巻く屋上で、レイサはまるでディズニーアニメの王子様のようにツムギの手を取る。
「遅れてしまいすみません。返しの電話をしても出てくれなかったんで、きっとこの私に救難信号を送ったんだろうって気づけたところまではよかったんですが。ツムギさんの目撃情報が中々手に入らず…遅くなってしまいました」
「おい、このビルの中、なんなら下にもけっこうな数の友達がいたはずだが?」
「ここに来る途中で見つかった相手は、全員大人しくなってもらいました!さぁツムギさん。一緒に帰りま…しょ…」
「………不格好なところを見せてしまいましたね」
レイサの目に映ったのは、全身あざだらけで出血が止まらない傷口は2桁を超えるような、念入りに痛めつけられたツムギの体であった。
「おい、ツムギちゃんは私たちの邪魔をしたから、お詫びとして友達になるところなんだよ。えーと、確かレイサちゃんだったよね?君に邪魔する資格あるわけ?」
「もちろんです。友達ですから」
ツムギのチューニングなどで鍛えられた耳は瞬時にレイサの異変に気付いた。明らかに普段の声よりもワントーン低い。先ほどまでの自身を鼓舞するかのようなハイテンションと比べればもちろん、普段レイサがプリプリ怒っている時とも違う。本気の敵意。 - 38二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:00:19
「友達だからか~。レイサちゃんがツムギちゃんと一緒にいる理由は?」
「理由が必要ですか?」
「友達っていうのは、そういうものなんだよ。レイサちゃんも、ガキの頃に比べて友達を作るのが難しいって思うようになったりしてないかい?それは、年齢が上がるごとに関係性は利益優先になるからさ。より社会的に有利な立場になるために、グループに入る。トリニティなんて、まさにそうだろう?」
リーダーはレイサを威圧するようにわざわざゼロ距離まで接近し、見下ろしながら話を続ける。
「私たちは強い繋がりで支え合ってるんだ。力が必要な時は、全員で敵を叩き潰す。だから、君よりもツムギちゃんの友達になるのに相応しい。そうは思わないかい?」
わざとらしく手を叩くと、リーダーはニッコリと青筋を浮かべながらレイサに迫る。
「あ、そうだ。レイサちゃん。君も強いみたいだし、私たちの友達になろうよ?悪くない話だと思うんだけどなぁ。もし断ったら、私たちの友達としての繋がり、見せることになっちゃうよ?」
「お断りします」
レイサの返答に、数日前のような迷いは一切見えなかった。 - 39二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:02:32
「私の思う友達っていうのはただの理想かもしれません!!私はまだ全然友達が多くないですし、ずっと友達と呼べる人もいない人生でした!!」
レイサはダンッと足を踏み鳴らし、デコとデコをぶつけ合いながら、真正面から反抗する。
「それでも!利益を求めあって笑顔を失う関係が友達というのはおかしいです!!無条件で助けたいって思いあえる関係こそが友達です!!」
「あっそ」
リーダーは不意打ち気味に右手を振りかぶると、拳を振り下ろす。しかし、レイサは半歩の軸移動だけで避ける。空を切った拳は最小限の動きで避けたレイサにとって、ノロノロ飛ぶ鴨そのもの。右肘と右膝で拳を挟むと、そのまま逃げられなくなった相手の鳩尾へと左の肘鉄が放たれる。
「カハッ!!」
よろめくリーダーは愛銃に指をかけながら、吠える。
「テメェ!!ふざけやがって!!私を誰だと思ってやがる!!私は!!」
遠吠えは銃声にかき消された。既にレイサの放ったショットガンが、1,2…3発。一身に受けたリーダーは空を飛び、『友達』の波の中に上半身を下にして呑まれていった。
「ハァ…ハァ…おい!!何してるお前たち!!私を手伝え!!ビルの中の奴らにも声をかけてもっと屋上に人を集めろ!!喧嘩だ!!」 - 40二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:04:07
以上です。さぁ、盛り上がってまいりました!!いつも感想ありがとうございます。感想とか貰える度に泣いて喜んでるので、気軽にください!!
- 41二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:10:01
これはヒーローですわ…
いつもは騒がしい子が、ガチギレした時ほど却って静かなの良いよね - 42二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 07:25:29
- 43二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 15:22:28
もしかして宇沢って、強くてカッコいい?
- 44二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 22:54:03
スレ主です。本日は更新出来なさそうです。申し訳ありませんが明日まで!明日までお待ちください!!
- 45二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 02:46:11
明日に期待して待機
- 46二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 12:10:39
レイサが友達について譲れない部分あるのいいな
スイーツ部や絆ストーリーの友達ができたもんね・・・ - 47二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:07:05
二人は窮地を脱することはできるのか!!続きです!!
「ツムギさん!!こっちです!!」
レイサに手を引かれてツムギは、降り注ぐ銃弾から身を守るために貯水タンクの裏に隠れる。金属と金属がぶつかる甲高い音と、火花がもうすっかり暗くなった屋上を彩る。
「全く、本当はレイサさんを巻き込みたくはなかったんですけれどね」
「え!?そうだったんですか!!?てっきりあの電話は私に助けを求めているものだとばかり…」
「危険ですから。しかし、レイサさんは私が思っているよりも、ずっと強かったようですね」
褒められたことが嬉しかったのか、こんな状況にも関わらずレイサは得意げに鼻を鳴らす。
「ま、まぁ!自警団のエースですから!!もちろん強いですよ!!」
「えぇ、本当に強い。腕っぷしだけでなく、ここも」
ツムギは自身の胸をトントンと軽く叩く。きょとんとした顔のレイサが真意に気づく前にツムギは言葉を続けた。
「レイサさんは、もし私が絶対に来るなと言ったら、どうしました?」
「…多分、いや必ず、助けに来たと思います。ツムギさんが危険な目にあっているのに、見捨てるような真似はできませんから」
まさにツムギが欲しかった回答。先ほどまで味合わされた表面だけにゴテゴテと調味料を振りかけた味とは素材から違う。口直しと言わんばかりに、心の中で赤ペン花丸をつけたその言葉を反芻し、100点満点の味を心に刻み込む。
(そう、友達の言うことだからといって、必ず聞く必要なんてない。友情の証明に大事な条件は、もっと別のこと──────『無条件』、それこそが友情の必要十分条件) - 48二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:08:25
「ツムギさん」
レイサはツムギの耳元でボソリ、と何かを呟くとツムギはニヤリと悪い笑みを浮かべ、レイサに肩を貸してもらいながらも立ち上がる。
「そのためには、一度この場から脱出する必要があります。ツムギさん、何か案はありますか?」
「私だって黙って殴られていただけではないんですよ?脱出に使えそうな物の目星ぐらいつけてあります」
銃声に混じって、怒鳴り声とドタドタと走ってくる増援の足音が耳に響く。状況は未だ絶望的だがレイサとツムギが恐れる必要など何もなかった。なにせ、互いに手を差し伸べあえる友人がいるのだから。
幕は上がり、サスは既にステージとキャストを照らしている。一度開演した即興劇(エチュード)はストーリーの行く末がわかるまで閉幕はできない。果たして今から紡がれるストーリーはハッピーエンドかバッドエンドか。運命の時がやってきた。
「レイサさん、敵を引き付けてください」
ツムギからの頼みでレイサは敵陣に突っ込む振りを繰り返しながら、いつの間にか2倍にも増えた不良生徒たちを相手取る。銃弾の雨あられがレイサの肌を削っていくが、すんでのところで致命傷は全てかわしてみせている。レイサの翻弄が上手く刺さっている証拠であろう。 - 49二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:10:17
(さてと、充分時間を稼いでくれましたね…今だ!!あそこに!!!)
頃合いを見たツムギは息を殺し、蛇よりも静かに、兎よりも素早く一直線に駆け出した。既に戦闘不能寸前の怪我を負っていたツムギのことは完全に意識外だったのだろう。ツムギの動きにリーダーが気づいたのは、目的の場所に彼女が辿り着いた後であった。
「しまった!!あいつ!!緊急避難用の滑り台を使うつもりだ!!」
ツムギはフェンスに取り付けられた鉄製の白い箱を開ける。中身は火事などが起きた際に屋上から避難するために使う、布製の巨大滑り台。折りたたんであるそれを手早く広げて、ツムギは脱出の手筈を整えた。
「レイサさん!!早く!!」
「させるか!!テメェら爆弾だ!!」
リーダーの号令と共に一斉に手榴弾が投げられる。ツムギは辛うじて爆発の範囲外まで逃げるが、轟音と光に包まれた屋上の一部は無事では済まない。フェンスごと破壊され、脱出手段は地面へと落ちていった。 - 50二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:11:51
「へへへ…焦らせやがって。唯一の脱出手段は地面に落ちちまったな。残念だが、あれ意外に脱出手段なんてここには無いぞ。このビルを拠点として使ってる私が言ってるんだから、諦めな」
レイサはツムギを庇うように仁王立ちをして、リーダーを威嚇する。背後のフェンスは崩れており、これ以上後ろに下がれば地面へと真っ逆さま。20m下の地面へと落ちて、卵のようにくしゃりとその身が崩れてしまう。
…だというのに、下を見た後ツムギとレイサは不敵に笑う。
「何でだ!!?何でお前たちはこんな状況でも笑うことができる!!」
「友達がいるからです!!」
「それがどうした!!こっちにだって友達はこんなにもいる!!圧倒的な武力と共に!!」
「何もかも違いますよ。あなたたちと私たちではね」
ツムギはレイサの背中に全体重を預けるようにして、抱き着く。
「一つ、お約束を教えて差し上げましょう。高いところからの落下は得てして──────『生存フラグ』、ですよ」
ツムギとレイサはもう一度下を見た後、抱き合いながら決死の表情で跳び込む。まさかの行動に出た二人に啞然とした不良生徒たちであったが、ことの重大さに気づくと途端に全員の顔が青ざめていく。人を追い詰めて殺してしまった。その事実が見えない十字架として体を縛り上げ、罪の重さに動けなくなる。
- 51二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:16:36
「…おいお前、下を確認してみろ」
「え!!?私がですか!!?」
「お前以外誰がいるんだよ!!」
リーダーに怒鳴られてやっと一人の生徒が恐る恐る、足を踏み出す。一歩、また一歩と彼女が進むたびに、ゴクリと周囲の生徒たちは固唾を飲みこむ。リーダーでさえ、唾は出てくるがいくら飲み込んでも喉のひりつきと渇きがおさまらない恐怖感に感情を支配されていた。
更に一歩、踏み出した彼女が下を見ると──────!!!
「ッツ!!!!???ああ!!あいつら!!全然無事です!!」
「何だとぉ!!?」
リーダーは周囲を押しのけ、下を覗く。直下20m、そこには豆粒のようなツムギとレイサ、そして二人を受け止めた四人の姿があった。
「上から大きな布が降って来た時はまさかと思ったけど、本当にやるとはね~」
「あんたら馬鹿なんじゃない!!?」
「すみません。これ以上待ってたら、骨の一本や二本では済まなさそうだったので。ですが、滑り台を落とす前に、アイリさんにモモトーク送っておいたでしょう?」
「確かに、[今から大きな布を落とすから、私たちが飛び降りたらそれで受け止めてください]と連絡は入りましたけれど…」
「連絡入れれば何してもいいって訳じゃないんだけど?」
「こ、こわかったです~」
飛び降りたレイサとツムギは、四隅がピンと張られた白い布に受け止められていたのだ。
「あいつら!!滑り台の布を使って急ごしらえの救助用のマットを作りやがったのか!!というか、一体誰だあの四人は!!?」
二人を受け止めたのは、レイサからの連絡一つで集まってくれ、ツムギからの連絡一つで動いてくれた『友達』だった。
- 52二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:18:19
以上です!!次回最終回になると思います。1週間ほど付き合っていただきありがとうございます!!
- 53二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:23:14
やっぱり持つべきものは友達だね〜
- 54二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:36:15
- 55二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:01:02
そうですね。レイサはツムギが連絡に出なくなった時点でスイーツ部にも捜索を手伝ってもらっており、ビルに突入する前にビルの場所も連絡してから突入しています
レイサは耳打ちのシーンでそのことをツムギに教えていますね
レイサにとってスイーツ部は、無条件で頼れる相手になっているってことですね
- 56二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 08:26:50
ツムギの頭脳プレイ!!落とされるまで込み込みとは
- 57二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 19:47:44
友情の条件は「無条件」ってすごく収まりがよくて美しいな
- 58二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 19:47:49
友達っていいね
- 59二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:52:26
お待たせしました!!最終回です!!
「逃がすわけねーだろ!!おい!お前ら!!私が行くまでにそいつら片付けとけ!!」
スピーカーからリーダーの声が聞こえてくる。ここら一帯の拠点に指示を飛ばすためにわざわざ取り付けたであろうそれは、ブラブラと少し不安定な状態で既に役目を終えた街灯にぐるぐるに結びつけてある。
レイサたちを狙って、周囲の建物から銃弾や爆弾が飛び交う。ナツは盾を構えると、ジリジリと後ずさりをしながら構えを崩さないように移動する。
「みんな、私の盾の後ろに隠れて。建物の陰まで行こう」 - 60二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:53:48
「あいつら、さすがに今度こそくたばっただろ!!」
予定通りいかないことばかりだった本日の自分を落ち着かせるように、階段を下りながらわざと大きな声でリーダーは自己暗示をかける。而して、ビルを飛び出したリーダーの眼前に広がったのは期待したものとは真逆の惨状だった。
うめき声と共に地面に突っ伏す大量の生徒達。中心にはフードを深々と被った、たった一人の猫耳生徒。その立ち姿とプレッシャーから彼女がただものでないことは、よほどの喧嘩の素人でもなければ気づくだろう。
「…おい。こりゃ一体どういうことだ?いくら強いといえど、この数でたった一人すら倒せないのか?」
爆発寸前の怒りがにじみ出た声色。焦った生徒たちは慌ててカズサとその向こうに隠れている5人に降参を勧める。
「君たち!!早く投降しろ!!これ以上あの人の機嫌を損ねない方がいいぞ!!」
「ほんとに殺されちまう!!」
「…あんたら、あの程度のやつの何をそんなに恐れてるの?」
カズサの返答に元々限界寸前だった怒りは臨界点に達し、リーダーはマシンガンを構えてカズサの前に立つ。
「くっくっく、少しは腕に自信があるようだが、私の名前を聞けばすぐに土下座をして命乞いを始めるさ」
遠くから見ているツムギたちの耳にすら呼吸音が聞こえてくるほど大きく息を吸って、リーダーは高らかに宣言した言葉とは────── - 61二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:55:08
「私こそが、最強のスケバン。キャスパリーグ様なのだから!!」
「「「「「え?」」」」」
「え!?みなさんトリニティの生徒なのにキャスパリーグを知らないんですか?」
「知らないというか、なんというか…」
返答に困ったアイリがチラチラとカズサとツムギの顔を交互に見る。
「なんだ反応悪いなぁ~?まさか、別の自治区から来たのか?これだから田舎者は。元々トリニティの近くに住んでるなら、まさかこの名前を知らない訳はあるまい」
ツムギは珍しく冷や汗を垂らしている。様々な自治区を渡り歩いているアーティストである彼女は、キャスパリーグの恐ろしさも耳にしていたのだ。
「キャスパリーグ…主にトリニティ自治区を中心に縄張りを持つ伝説のスケバン。その最大の特徴は何と言っても圧倒的戦闘力。噂では20人を超えるヘルメット団の部隊をものの10分で壊滅させたとか。とにかくみなさん、真っ向から相手してはいけません」
「聞こえてるぞ!!よーく知ってるじゃねぇかツムギちゃん!!それじゃ、何も知らない憐れな君たちのためにキャスパリーグの伝説を教えてあげようじゃないか」
ツムギの言葉に気を良くしたのか、キャスパリーグと名乗るリーダーは聞いてもいないことを自慢げに語り始めた。
- 62二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:56:22
「キャスパリーグ伝説その1ぃ!!ボコられた相手は一生その顔を忘れられないほどの恐怖を刻み込まれ、見ただけで全身の震えが止まらない程のトラウマになる!!」
カズサはフードを下ろして髪の形を整えると、リーダーの肩を掴み無理やり語りを中断させる。
「キャスパリーグ伝説その2ぃ!!その腕力は鬼神の如し!!拳一つでスケバンの集団を壊滅させることも可能な…り?」
思考に数秒のローディング画面を挟み、目の前にいる存在が何者かを理解した偽物は、まるでキュウリを置かれた猫のように後ろ方向に飛び退いた──────その勢いは猫の付け耳が置き去りにされるほどだった。
「キャキャキャ!!?キャ!!?キャスパリーグぅぅ~~~!!?」
「あ、付け耳とれた」
「なるほど!これが猫を被るってことね!!」
「ヨ、ヨシミちゃん。少し意味が違うんじゃないかなそれは」
「な!なんでキャスパリーグがここに!!?最近めっきり噂を聞かなくなったから、別の自治区に行ったんじゃなかったのかよぉ!!」
「…あぁ、あんた。私が中学の時に有名人面しててムカツクとかで喧嘩売ってきたから、ボコボコにしてやったやつじゃん。似たような奴がごまんといたから、耳外れるまで気づかなかったや…ふーん、まだスケバンなんかしてたんだ」 - 63二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:57:36
「な、なぁ。今ボコボコにされたって」
「というか、なんでキャスパリーグが二人いるんだ?」
今まで絶対的な支配者だった存在(キャスパリーグ)が一般生徒(キャスパリーグ)に迫られているという状況。飲み込める生徒は少なく、池に漬物石を投げ込んだほどの波紋が周囲を伝播する。その波を見逃すナツではない。
「おうおう、貴様ら。遠からん者は音に聞け!!近くば寄って、目にも見よ!!こちらにおわすのは性は杏山、名はカズサ。生まれついての暴れん坊。齢14にして、キヴォトス全域を恐怖のどん底に叩き落した伝説のスケバン。怪猫キャスパリーグたぁ~~~~このお方のことよぉ!!」
「え!!?つまり…」
「本物のキャスパリーグ!?私たちは騙されてたってことかよ!!?」
レイサはなぜナツがわざわざ百鬼夜行風の紹介をしたのか聞きたかったが、話しかけようとした時にはカズサによって前が見えなくなるまでナツが殴られた後だったので、聞かないことにした。
「うわぁ…仲間も容赦なく殴ってる。キャスパリーグって本物もやっぱり凶暴なんだ」 - 64二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:58:50
リーダーは震えあがり、鼻水を垂らしながら必死に謝罪の言葉を繰り返す。
「すみません!許してください!出来心だったんです!!助けてください!」
「許しを請うなら、あんたの言う、『お友達』にまず謝ったら?そしたら、もしかして助けてくれるかもよ?」
リーダーだった生徒は、後ろを振り返り頭を地面に擦り付け頼み込む。
「今まで騙していてごめんなさい!!でも!でもさ!!そんなに悪くなかっただろ?みんなでいる時は、搾取する側になれたんだからさ!!これからは本当に対等な友達になろう?な?だからここは手を貸してくれよ~みんな♡」
沈黙。ひたすらに重く、冷たい沈黙。侮蔑、苛立ち、憐憫、憤怒、感情は一つに纏まらなかったが、それでも全員とった行動は一つ。もう二度と口も利きたくない。故の沈黙であった。
「残念、誰もあんたの友達なんかじゃないってさ」
カズサは拳を握りこみ、深々と腰を下ろして大きく右手を振りかぶる構えをとる。その構えこそ喧嘩の中で編み出した、最も効率よく相手を破壊できる殴り方だった。
「あ!許ぴげぇ!!!」
カズサは謝罪の言葉ごと偽物の顔面を殴り飛ばし、少しスッキリしたのかフンと鼻を鳴らした。
「思いっきり殴られて」
「地面と平行に飛んで」
「壁に突き刺さって」
「…何も言わなくなってしまいましたね」
「あまり驚かないんですね皆さん」
「「「「まぁ、もう慣れたなって」」」」 - 65二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 22:59:39
カズサがリーダーを失い立ち尽くす生徒たちを一睨みすれば、空間そのものが凍り付き全員が背筋を伸ばしてカズサの方を向く。一連の流れで完全にキャスパリーグ時代に戻ったカズサはドスの効いた声で話を始めた。
「あんたら、さっき二人が飛び降りたの見た時、本気で殺しちゃったんじゃないかって、怖くなったでしょ?裏の世界で生きるってことは、こういうこともあり得るの。嫌だったら、もう二度とこんな奴とつるまないように。それでも、二度目があったなら…」
カズサはその言葉と舌なめずり一つで場を恐怖に支配すると、蜘蛛の子を散らすように不良生徒たちは逃げ出していく。余計な暴力などなくとも、頂点に立つ。まさに伝説のスケバン、キャスパリーグここにあり。
「すみませんでしたー!!」
「もう二度とこんなことしません!!」
「お世話になりましたーーー!!!」 - 66二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:00:53
カズサは深くため息を吐いた後、背後からの視線に気づく。それは唯一この場でカズサの正体を知らなかったツムギのものであった。
「あ~いや。その~これはね。えっと…うん見てもらった通りかな。あのさ、アイリや宇沢は全く関係ないから。私が中学時代やんちゃしてただけ。だから…」
「カズサさん」
「これからも宇沢たちとは仲良くしてあげて欲しいな~って…」
「カズサさん!!」
「はい!?」
急に詰め寄ってきたツムギの圧に驚いてカズサは条件反射的に背筋を伸ばして返事してしまう。
「よろしければキャスパリーグ時代のお話、聞かせていただけないでしょうか!!?」
「HA?」
「作曲の参考にしたいんです!!ぜひ!!ぜひ!!!」
「え…嫌だけども」
しゅんとしてうな垂れるツムギを見て、少し可哀想に思ったのかここでレイサがある提案をする。
「あ、それなら代わりに私が話しましょうかツムギさん?」
「は?宇沢あんた何を言って!!」 - 67二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:03:33
「いいわね!それならお腹も空いたし、近くのファミレスで晩御飯でも食べながら話しましょう!!私も興味あるし!二人とも怪我とか…」
「「賛成です!」」
「心配する必要はないみたいね」
先ほどまで二人とも酷い怪我だった気がするのだが、そこは流石キヴォトスの生徒。ミサイルとの正面衝突ぐらいなら一日寝ていれば治るのがデフォルトの彼女たちの体からは、綺麗さっぱりとまではいかないが怪我のほとんどが消えていた。ヨシミの提案により、一同は怒ったカズサから逃げるように走りながら、ファミレスに向かうのであった。
既に辺りは暗くなっており、町はずれのこの辺りは街灯も無いが怖いものなど何もない。輝くスーパースターたちが、友情の光で道を照らしてくれるのだから。
~Fin~
- 68二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:05:15
以上で完結です!!
感想とか気になる点とかあったら気軽に送ってください!!SS書きは反応があると泣いて喜びますんで!! - 69二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:28:00
- 70二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:55:23
- 71二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 06:35:38
互いに手を差し伸べ合う関係性の友人いいな
スイーツ部周りは純粋に青春してて尊い気持ちになれる - 72二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 10:32:20
綺麗に落ちた
ッぱ、キャスパリーグさんだよな
流石っすキャスパリーグさん
友情のキーワードをツムギ、レイサ、不良、スイーツ部それぞれで丁寧に描いていて読んでてとても楽しい作品だった
素晴らしいSSにかんしゃあ - 73二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 18:58:17
- 74二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 22:49:19
ありがとうございます!!
実は裏話として、リーダーちゃんは昔カズサに喧嘩を売った時、仲間たちに自分を置いて逃げられた過去があります
それが原因で、絶対に言うことを聞いてくれる強いつながりが欲しくて、友情という都合のいい言葉と恐怖で部下たちを縛り上げるようになりました。
ちなみに最初誘拐する前にツムギに耳打ちした内容は「私はキャスパリーグだ。もし断ったらお前のお友達のレイサちゃんの方を狙う」であり、ツムギはだからレイサを巻き込みたくなかったんですよね
- 75二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 07:27:41
- 76二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 09:50:00
- 77二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 11:50:47
- 78二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 22:18:31
- 79二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 07:27:06
次回作も楽しみにしてます
- 80二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 08:45:07
結果からいうと最初ツムギに助けられたのはスケバンの方になるんだな
- 81二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 18:40:28
- 82二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:57:42
これで後ほど、ツムギがめちゃくちゃ強いとか公式からお出しされたら面白いな
- 83二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 07:28:31
未実装生徒の宿命だからな・・・齟齬を恐れていては二次創作できない
- 84二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 18:26:06
ツムギとレイサでレイサ側がお嬢様なの脳がバグる
- 85二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 22:54:07
- 86二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 07:29:48
スレ主の中のバンドマンのイメージ、草食って生きてそう
- 87二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 18:34:07
周囲がお嬢様ばかりだから自分が異常者扱いされて納得のいかないツムギ・・・
- 88二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 22:45:14
- 89二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 23:13:07
リーダーさえ戦闘不能にできれば残りは逃げそうじゃない?