ソラ「12月26日の黒猫」【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 20:42:03

    12月26日
    連邦捜査部シャーレ同ビル内エンジェル24

    (クリスマス終わった直後くらいはお休み貰った方が良かったかなぁ…)

    月初に雇い主の大人から「ソラちゃん、今月は稼ぎ時だから給料弾むね」なんて言われて調子に乗ってフル出勤なんてするんじゃなかった、と今月も終盤に差し掛かって今更後悔する。
    昨日までのクリスマス商戦、非常に忙しかった。クリスマスケーキにクリスマスチキン、その他シャンメリー等のクリスマス特有の商品の売り時で、普段は暇してるこのコンビニでも一昨日・昨日は恐ろしいまでに人が来た。

    幸いなことは同ビル内に居を構えるシャーレの顧問である先生を訪ねてくる生徒がほぼいなかったことだ。
    いつもなら多い日で10人くらいは毎日生徒がシャーレに寄る前にこのコンビニに寄る。
    クリスマス及びイヴなんて特別な日にはいつもの5倍増しくらいで先生目当ての生徒が押し寄せてトラブルに…なんて絶望していたけど意外にもそうはならなかった。

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 20:46:21

    >>1

    とはいえいつにも増して多忙だったことには変わりない

    流石に疲れた。まぁ、クリスマスが終わっても売れ残ったクリスマス商品の割引品を狙ってかなりお客さんが来るのだから弱音は吐いてられないのだけど。


    シャーレの先生、よくわからない噂を聞く最近赴任してきた胡散臭い大人。

    この人は客観的に見て生徒から異常に人気がある。

    この前は私も手袋をプレゼントしてもらったし悪い人ではないと思う。

    だけど目測で私の手のサイズを正確に目算してたりとちょっと怖い。


    ♫〜


    コンビニの自動ドアの開閉音が鳴った。どうやら本日最初のお客様が来たようだ。

    「いらっしゃいませ!」の一言と共に入ってきたお客様を見やる。

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 20:50:06

    >>2

    猫耳に黒髪、ピンクのインナーカラー、トリニティ総合学園の校章が入った黒いパーカー。

    うわあよく来る人だ。よく来る生徒の中でもTOP3に入るほどの頻度だと思う。

    名前は知らないけど、シャーレに行く前に先生によく一緒に食べる用の差し入れを買っていく人だ。いつも数種類スイーツを買って行ってくれるけど一種類だけ2個購入するので非常にわかりやすい。

    そう言えばこの前クリスマスはシスターフッドの手伝いとか同じ部活のメンバーと過ごすからシャーレには来ないって言ってたっけ。

    ……翌日は普通に来るんだ。


    そうこう失礼なことを考えつつ猫耳少女をボケーっと見ているとなにやらキョロキョロしている。

    何か探してる…?いや、配置は変えてないしいつもスイーツと飲み物しか買って行かないので迷うこともないだろう。じゃあ一体どうして…

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 20:53:36

    >>3

    ふと先ほどまでキョロキョロしていた猫耳少女の動きが止まった。こちらを見ている。

    目が…合った…

    ずんずんずんとこちらにすごい勢いで向かってくる。

    え、なんで?私何もやってな…


    「あのさ」


    「ひゃいっ!?」


    かなりドスの効いた声で話しかけられて上擦った声が出る。


    「あ…ごめん。別に怒ってるとかそういうわけじゃなくて…あーもうなんで私はこう…」

    「ってそうじゃなくて」

    「その…一昨日と昨日、シャーレに来た生徒ってどれくらいいたのか知ってるかなって…」


    「はぁ…」


    なるほどそういうことか。前はメチャメチャ誤魔化してたり濁してたりしてたけど、この人はあれだけの頻度で来ている人だ。クリスマス及びイヴに先生と時間を共にした人がどれくらいいるのかは当然気になるのだろう。

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 20:57:10

    >>4

    しかし…


    「ど、どう?そりゃクリスマスだから忙しかっただろうけど…覚えてたりしない?」


    見るからにとても必死だ。ここで「はい、何人かいましたよ」なんて答えようものなら特徴とか根掘り葉掘り聞かれるに違いない。

    勘違いだったとは言えこの前のプレゼントの件は心労がすごかった。なるべく先生関連のトラブルには関わり合いになりたくない。


    「だっ…誰も来てなかった…ですよ?」


    「…ほんとに?」


    「すっ…少なくともここでは見てないです!」


    心の中で「ごめんなさい」と呟きつつ嘘をついた。本当はゲヘナ所属らしき人達がグループで来てた。でもトリニティとゲヘナは仲悪いって聞くし言わないのがベスト。うんきっとそう。

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:01:29

    >>5

    「そっか…」


    よかった、納得してもらえたらしい。これで帰ってくれれば通常業務に戻れ…


    「じゃあもう一個質問していい?」


    急速に嫌な予感がした。


    「この前さ、プレゼントの落とし主探してたよね?見つかったの?」


    「な…なんでそれを知って…」


    「この前急に変な質問してたり『プレゼントは…他の方の…』なんて独り言呟いてたりしたから流石に私でもわかるよ。」

    「私が先生に向けて用意したプレゼント落としてないか確認してくれたんでしょ?」


    「あ…あはは…よく覚えておいでで…」


    最悪だ。嫌な予感が当たってしまった。先生から私への手袋のプレゼントだったということがバレたら面倒臭いことになりかねない。

    今後絶対何度も顔を合わせるハメになるのだ。気まずいことにはなりたくない。

    なんとか私へのプレゼントということはバレないようにしなければ…

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:05:26

    >>6

    「でさ、落とし主は見つかった?見つかってないなら私も探すの協力…」


    「みっ!見つかりました!あの後すぐに!」


    「そ、そう…」


    「えぇ、ええ!ご想像の通り生徒さんから"先生へ"のプレゼントでした!」


    「……へぇ?」


    目の前の少女の目の色が変わる。どうやら"先生へのプレゼント"というワードが引っかかったらしい。しまった、保身に全力を注ぎすぎたせいで余計なことまで口走った。


    「ねぇ、まだ他にお客さん来てないみたいだしもう一個聞いていい?」


    やらかした。このまま質問が続けば必ずボロが出る。こんな時に限って他のお客様は来ない。なんとか…なんとか話題を変えなければ…

    なんとか…なんとか別の話題を…

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:08:32

    >>7

    「そっ!そう言えば!」


    「うわっ!?急にどしたの?」


    大声で流れを断ち切ることに成功する。我ながら無理やりすぎるがこのまま話題の転換が出来れば私の勝ちだ。なりふりはかまってられない。


    「えっと、その、」

    「せ…先生って誰を1番信頼してるんでしょうね!?」


    「……」


    やらかした。完全に転換先の話題を間違った。

    いや確かに保身には成功したかもしれないがこんな見えてる地雷をテンパって踏み抜くなんて…


    「……少なくとも、私じゃないと思うよ。」


    あれ…?

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:11:49

    >>8

    「先生、あんまり私に頼ってくれないし。」

    「そりゃあ事務仕事は苦手だからあんまり手伝えないけどさ。」

    「でも私、結構強いんだよ?だから制圧任務とかそういう荒事関連なら役に立てるのに、先生はなんか私をそういう系のことから意図的に遠ざけようとしてるし…」


    な…なんかすごく湿っぽくなってきた。

    フォローとか、した方が良いのかな…


    「え…えと、それは先生から大事にされているとかそういうのでは…」


    「そ…そうかな?」


    「!」

    「そうです!きっとそうですよ!」


    よし!うまく食いついた。このまま気分良くして早いとこ帰ってもらおう。

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:15:08

    >>9

    「多分大事すぎて怪我とかして欲しくないんですよ!めちゃくちゃ特別扱いされてると思います!!」


    「そ…そうかなぁ〜?えへへ…」

    「で、でもさ。たまには私も先生に良いとこ見せたいっていうか…」

    「ほら、マンネリしてるのは良くないって言うじゃん?この前とかもさ…」


    うわぁ、惚気が始まった。と言うかこの人こんな喋る人だったんだ。

    ま…まぁ話が長くなっても平和的に帰っていただけるのであればこのまま適当に相槌打って…


    「そ、そうですよね?好きな人には良いところ見せたいですもんね?」


    「いや…その別に好きとかじゃなくて…」

    「確かに先生のことはその、嫌いじゃないけど」

    「ただ恋愛とかそう言うんじゃなくてただ単に」

    「…そう!『私の』ってだけだから」


    「…はい?」


    どうしようこの人とんでもないこと言い出してる気がする。

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:19:08

    >>10

    「あ!いやごめん!言葉が足りなかったね」

    「えーとその…『私の』っていうのは」


    あぁ良かった。言葉の綾だったみたいだ。流石に恋愛的な意味で好きでもないのに人を自分の所有物だなんて発言する訳がないよね…


    「『私の専属の人』って意味だから。」


    悪化した。余計意味がわからない。自分の所有物な上他人との共有も本来は許さないらしい。

    顔が引き攣りそうだ。いけない、機嫌を損ねたらコトだ。ポーカーフェイスポーカーフェイス。


    「ふぅ…ありがとソラ。話したらなんかスッキリしたよ。」


    「そっ、それはなによりです…」


    良かった。ようやく満足してくれたみたいだ。

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:23:32

    >>11

    「ごめんね長々付き合わせちゃって」

    「お礼…にはならないかもだけど紅茶とコーヒーと牛乳、2本ずつ買ってくから。」


    そう言って彼女は商品棚から置いてある商品でそれぞれ1番高いものを2本ずつ持ってきた。

    いつもと比べてもかなり高くつくのだけど躊躇いなく持って来れるあたりやっぱりトリニティ生はお金持ちばかりなのだろうか。


    「あれ?先生への差し入れ用のお菓子は良いんですか?」


    なんてことはない、ちょっとした質問。特に何か意図があったわけではない。ただいつもと違ってお菓子をレジに持って来なかったので気になって口に出しただけだった。


    「あぁそれは今日は大丈夫。昨日シスターフッドの手伝いでパネットーネ貰ったから今日はそれを一緒に…」

    「待った…なんでいつも先生への差し入れのお菓子買っていってるって知ってるの?」


    「え?あ、いや知ってるとかではなくてですね…ただいつも数種類お菓子買ってく中で毎回一種類だけ2個買っていくのでてっきり先生と一緒に食べる用なのかと…」

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:27:36

    >>12

    「い、いや毎回じゃないでしょ!?この前ミントチョコあんまんとか買って行った時は違ったじゃん!?」


    「え…あれシャーレから帰る時ですよね…?」


    「な……な……」


    目の前の猫耳少女はワナワナと震えている。やってしまった、勢いで思わず多分この人にとってはデリケートな部分を指摘してしまった。


    「いや…あ、あの…すみませんっ!」

    「そ、そうですよね?毎回じゃないですよね?」

    「あはは、本当にすみません。とんだ勘違いを…」


    「あのさ…」


    「は…はい…?」


    「私ってもしかしてめんどくさい…?」


    私のバカ!最後に油断して余計なこと言ったせいでめちゃくちゃ答えにくい質問が飛んできた。どう答えても地雷が爆発する未来しか見えない。

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:31:19

    >>13

    「あ、あー…」


    「ねぇお願い、正直に答えて。」

    「こういうの先生は受け入れちゃって指摘してくれないから…」


    そうは言われましても…

    なんて思いつつ、めちゃくちゃ真剣な眼差しでこちらを見てくる目の前の猫相手にもう選択肢は一つしかなかった。


    「お、怒らないでくださいね?」


    「絶対怒らないから」


    「や、約束ですよ?本当に怒らないでくださいね!?」


    「うん、約束する。」


    あぁ、これはもう逃げられない。覚悟を決めよう…


    「め、めんどくさいと思います…それも、かなり…」

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 21:31:38

    >>14

    「あぁ、うん。そっか、やっぱりそっか。」

    「あーもうちょっと早く他の人に確認しとけば良かった。」

    「先生、もしかしてずっと迷惑だったのかな…」


    そんなことをちょっとふらつきつつ虚な目になって彼女はぶつぶつ言っている。ごめんなさい。すみません。別に傷つけるつもりはなかったんです…ただめちゃめちゃ怖かったんです…


    「あーソラ?ありがとね…また、先生への差し入れとか…買いにくるから…」


    彼女は会計を終えてふらつきつつエンジェル24から退店した。

    そうか、先生はこういう人たちを毎日相手しているんだな…大変だな…多分これからさっきの人のケアめちゃくちゃするんだろうな…

    ごめんなさい先生。あとは…あとはよろしくお願いします。

    ……次から色々気をつけます。


    そんなことを思いつつ、さっきまで一切他の人が入って来なかったのと打って変わってごった返すコンビニで忙殺されるのだった。


    数時間後、シャーレの当番を経て完全回復したカズサの惚気話を聞かされる羽目になるのだが、それはまた別の話。



    おわり。

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:48:01

    SS乙!
    カズサの内面的な性格のエミュが上手かった印象でした。良き。

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 22:52:59

    よきSSであった…カズサは面倒くさい!でも可愛いね❤

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 23:17:16

    ええやん

オススメ

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