もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart15

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 00:34:54

    アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの15スレ目です。

    アークエンジェル問題を何とか穏便に解決しようとしたアスランやアグネス達の努力は実を結ぶことは無く、結局、彼の大天使は砲弾の嵐の中を駆け抜けることになったようです。

    その事態の仔細をアグネスは勿論、ミネルバのクルーも今は知りようがありません。

    そもそも無数の人間が同時に策謀を巡らし、偶発的な事象が日々無限に起こり続ける世界の中で、果たして誰がどこまで『本当のこと』を知っているのか。この世界線の人に容易に想像がつかないのは、本編の世界の住民がそうであったのと同じこと。

    人は所詮、己の知り得ることしか知り得ないのかもしれません。では、知り得る限りのことは知った上で、それが仮に完全でなかったとして、人は最善の道を模索することを投げ出して良いものか否か?

    そして―。降り掛かる雪つぶてを潜り抜け、ミネルバが進むべき進路は。

    おつきあいをいただければ。

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 00:40:50

    前スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart14|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの14スレ目です。激しい戦いの後、戦女神と大…bbs.animanch.com

    1スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たら|あにまん掲示板アグネスが士官学校卒業ザフトアカデミー、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSを書く予定です。お付き合い頂ければ。bbs.animanch.com

    2スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart2|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。はたして、アグネスは、ルナマ…bbs.animanch.com

    3スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。己を取り巻く不可解な状況に四…bbs.animanch.com

    4スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart4|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバとアグネスはその進撃…bbs.animanch.com
  • 3二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 00:42:54

    15スレ目かぁ…
    まさかこれほどの大作になろうとは、このリ…(略

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 00:44:34

    5スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart5|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの4スレ目です。ミネルバの活躍は起こるはずだ…bbs.animanch.com

    6スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart6|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの6スレ目です。自分の心境の変化や激動する世…bbs.animanch.com

    ※落としてしまった7スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。出世の点数稼ぎの場として『戦…bbs.animanch.com

    再建てされた7スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7(再立)|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。※不注意から一度スレを落とし…bbs.animanch.com

    8スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart8|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの8スレ目です。戦いに消耗したアグネスとミネ…bbs.animanch.com
  • 5二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 00:47:45

    9スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart9|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの9スレ目です。C.E.73年- C.E.7…bbs.animanch.com

    10スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart10|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの10スレ目です。遂に開始される『ロゴスとの…bbs.animanch.com

    11スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart11|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。『対ロゴス戦』は本編とはや…bbs.animanch.com

    12スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart12|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。対ロゴス戦争が変え行く世界…bbs.animanch.com

    13スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart13|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの13スレ目です。本編を上回るほどの規模とな…bbs.animanch.com
  • 6二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 01:07:48

    保守がてら
    スレ主さん、いつも楽しみに読ませていただいてます。
    ありがとう

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 02:36:05

    コックピット画面のメイリンが元気よく答え、忙しく他隊と交信を開始している。島の北、海上で敵を撃退したミネルバは、その場をシンとショーン、デイルに任せて艦首を南に向ける。アスランのダガーL隊も彼らに合流、万一の再侵攻に備える。

    こちらもミネルバに通信を入れなくてはならない。一息つく間も無いから困る。

    アグネス「グラディス提督、アグネスです。既にご存知かもしれませんが、ボーンホルム島の、特にレネの被害は深刻です。空港、港湾のみならず、市の中枢機能がほぼ完全に破壊されています。救援を急いで下さい。私もストライクダガー隊を率いてレネ中心地に向かいます」
    私の通信にグラディス提督は何処か安堵したような表情を浮かべられる。通信の内容を考えると場違いではあるけれど。どうやら私達の身の安全を心配してくれていたようだわ。

    タリア「了解。こちらもそのつもりよ。ただ、レネ港は破壊されていて使用できない。港の沖合に停泊してモビルスーツとグゥル、ヘリと上陸艇を使いながら進めていきましょう。それと…。貴女怪我は!何でモビルスーツに乗っているの!」
    アグネス「やむを得ず…」

    微妙なタイミングで指摘されてしまう。ただ、そうは言っても仕方が無かった。病院に戻ったら、先生カンカンだろうな。

    タリア「はぁー。無理せず下りなさい、と言ってあげたいけれど。まだ頑張れる?正直、手が足りない」
    アグネス「勿論そのつもりです。連隊本部にはメイリンがいます。現地部隊と共同で」
    タリア「よろしい。連隊長には私からも言っておきます」

    私と提督の交信中もミネルバは島上空を南に飛行、もう私達の頭の上まで迫っている。

    アグネス「ストライクダガー隊はレネ市市街地の救助に向かいます。機械化歩兵隊は?」
    機械化歩兵小隊長「私が先任の小隊長です。海岸部防衛のため、我々は残るようにとのこと」

    未だ森林公園で海を睨んでいる歩兵隊。機械化歩兵だったのに装甲車が撃破されたせいで実質、ただの歩兵になってしまった。それでも歩兵用多目的携帯ミサイルで持ち場を守ってくれるらしい。再上陸の可能性は少ないとはいえ、ありがたいわ。

    アグネス「分かりました。ストライクダガー隊、続け!」
    ストライクダガー隊一同「了解!」

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 02:42:12

    彼らを後に残して私達は地べたを駆けだす。上空ではシン達に守りを任せた援軍部隊がボーンホルム空港に向かって飛行していく。航空機なら今の空港は使えないが、彼らはモビルスーツだ。こういう時は本当に便が良い。

    南に向かって進むと、メインカメラとレーダーにレネの町から飛び立つストライク・ルージュとフリーダムが映る。東に向かっているということはアークエンジェルを助けに行くのか。

    国際救難チャンネルの放送を受信。

    カガリ「ボーンホルム島の皆さん、オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハです。申し訳ありませんが…。我々は緊急事態ゆえ、これ以上の救助活動の継続が困難になりました。この島の復興を祈る」

    短く報告と挨拶述べられる。

    アグネス「ストライクダガー隊、アスハ代表にコックピット内で、敬礼!」
    ストライクダガー隊一同「了解!」

    皆に命じながら自分も敬礼する。手を上げ下げする間に現状を再考する。

    地球連合がアークエンジェルを攻撃したのはそう不思議なことではない。元々、対立関係だったのだ。
    アークエンジェル(アスハ代表)はオーブに中立を維持させようと働きかけている。地球連合軍は、オーブは(仮に手続きに瑕疵があったにしても)正式な同盟条約締結国でプラントに共同参戦済みと言う立場。

    彼らから見れば国家元首が乗っていようが何だろうが、アークエンジェルはテロリストとまでは行かないにしろ交戦団体に近い存在だろう。

    アグネス「(だから、問うべきなのは『なぜ』ではなく、『どうして今なのか』)」

    それは、やはりあの艦にネオ・ロアノーク大佐とスウェン・カル・バヤン中尉が捕らえられているからとしか思えない。彼らはその存在自体が連合の暗部そのものだ。万一、彼らが洗いざらい知っていることを話せば、政府・軍上層部で首が飛ぶ人間が何人も出るだろう。

    首が締まると言った方が表現としては正しいか。

    コックピット通信をアスラン機に接続、彼のダガーL隊はインパルスとグフ2機の小隊と共に警戒飛行を継続中だわ。乱れなく海峡上空を監視しているけれど、多分、今頃、彼の頭はパンク寸前のはず。

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 02:54:21

    保守

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 02:54:56

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 03:04:25

    アグネス「アスラン先輩、ご無事ですか?」
    アスラン「ああ…。被弾はしていない」

    そんなことは知っている。問題なのは心だわ。ヘルメット越しでも彼の精神が錯乱しつつあるのが見て取れる。

    アグネス「機体のことではありません…。それはともあれ、アスハ代表とアークエンジェルのことについて。交渉決裂は残念でしたが、これからのことを考えなくては」
    アスラン「そうだ!一体、なぜ、アークエンジェルが攻撃を!」

    案の定、アスランはモニター越しに怒声を上げる。だが、私に言われても困る。この人、時代が時代ならコンプラ違反になりそうで冷や冷やするわ。まあ、彼が、このことを誰かに話すとしたら私かメイリンになるのだろうけど。

    アグネス「私が推測するに最大の狙いはロアノーク大佐とバヤン中尉。彼らの救出、と言うよりかは口封じが目的でしょう。今なら、アークエンジェルの後ろ盾となっているスカンジナビア王国は一時的に混乱、無力化しています。ザフト・西ユーラシア連邦はアークエンジェルの敵ではありませんが味方でもありません。このタイミングで出港し、こちらの勢力圏を出たことは結果として最悪であったでしょう。準備を具申した責任を痛感しています」

    私は、いざと言う時に備えろ、と言っただけで出港自体を進めたわけでは無い。ただ、心残りなことも事実。するとアスランが慌てて私を慰めだす。

    アスラン「いや、君を責めたいわけじゃない。そんな気は全くない!しかし、彼らはまさかこのために!?準敵対勢力を潰し、厄介者の口封じもできる、と」

    アスランも困ったものだわ。私は別にアスハ代表もオーブもキラ・ヤマトも無論、アークエンジェルも軽視しているつもりはない。しかし、主要交戦国の首脳陣が第一目標にするほどかと言えば否だ。
    オーブは精強な技術大国、味方に引き入れるなり中立を守るなりして欲しい。何にしろ主敵ではない。

    アグネス「流石にそれは飛躍があり過ぎるかと。地球連合軍の本命はヘブンズベースと大西洋連邦東海岸の防衛、そのためのノルウェー西海岸進駐。それ自体は疑う必要はないかと。アークエンジェル襲撃はそれを奇貨としてのもの。或いは-この島の攻撃も-ブルーコスモス派将兵・ファントムペインの独断なのかもしれません。いずれにしろ、外野から伺い知れるものではないかと」

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 03:29:59

    実際、この島に来た連中も結構、意味不明だったわ。そもそも、地球連合軍そのものが寄り合い所帯で、ファントムペインのような指揮系統外の軍もいて、どの程度かは知らないがロゴスも口を挟む。

    そんな組織が全て統一的な意志の下、機能していると仮定すること自体、間違いなのかもしれない。
    軍事組織として如何なもの、と思う。でも、近代以前の軍はそんなものであった。近代以降の軍にも近い事例はある。

    第一、それを言い出したらザフトも怪しいところは有るからね。『FAITH』までは良いとしてコンクルーダーズとか正気なのか?アッシュの暗殺隊と言い…。いや、今考えることではない。

    アグネス「いずれにしろ、事態は急を要します。ただ、私達はザフト軍として、同盟国の領土たるボーンホルム島と島民の安全に責任があります。足元の任務を遂行しつつ、次の命令を待ちましょう」
    アスラン「…」

    半分、心ここにあらずのアスランに敬礼して通信を切る。これは使い物にならないわ。

    レネの町に足を踏み入れ、早速、部下たちに指示を飛ばす。

    アグネス「先ずは公立図書館と刑務所。双方距離が近い。『本を焼くものはいずれ人をも焼く』文化的ジェノサイドから現在と未来の島民を守らなければならない。刑務所については、災害時は例え罪人と言えども生命を尊重されるのが鉄則。生き埋めにされている者がいるかも知れない。全力を!」
    ストライクダガー隊一同「了解!」

    指示を下し、機体を操縦しつつ、思案を巡らせる。
    もしカリーニングラードの戦力がアークエンジェルとの戦いで消耗するなら-。我らは漁夫の利を狙うべきではないのか?!フリーダムとストライク・ルージュも帰還、戦闘に加わる。総計すればウィンダム100機や大型モビルアーマー数機ぐらい撃破してくれているかもしれない!間接的に彼らを助けることにもなる。

    思い立つが早いか即実行、連隊本部、メイリンに回線を繋ぐ。

    アグネス「メイリン、今、大丈夫?」
    メイリン「はい。どうしました?」
    アグネス「国防委員会とラムシュタット空軍基地に繋いでほしい。状況次第ではカリーニングラードの敵軍を無力化できるかも。残念だけど、今はカリーニングラード軍管区とバルチック艦隊を叩かないと。『次』を防ぐため、この島の安全を強化するためにも。秘匿通信で直通させて!」
    メイリン「分かりました。直ぐに」
    アグネス「お願い」

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 10:42:18

    保守

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 13:24:50

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 20:25:53

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:04:22

    公立図書館と刑務所への経路を進む。その道中、攻撃を受けて全壊したボーンホルム美術館の前に差し掛かる。屋根が落ちた建屋から、運よく逃げ延び這い出した観光客と博物館員が私達を呼び止めるように手を振っている。

    アグネス「止まれ!2番隊小隊長。機体を下りて必要な支援を聴取せよ。聴取後、即時報告」
    ストライクダガー隊小隊長「了解!」
    アグネス「予定変更。図書館と刑務所の前に美術館を。下敷きになった人々と文化財を救出する」
    ストライクダガー隊「了解!」

    脳の半分で指示を送り救助活動を実行しつつ、脳の半分は先程のメイリンに伝えた命令について考える。しくじったわ!順序を間違えた。

    美術館の落ちた屋根を持ち上げ、中に埋もれた人々を掘り返しつつメイリンに回線を繋ぐ。
    瓦礫の下にいた3名はピクリともしない。もうおそらく…。

    アグネス「メイリン、カリーニングラードの件の前に、スカンジナビア王国国王とアスハ代表からお預かりしたプラントへの親書の存在を最高評議会にお伝えしたい。私の鞄を手元に。国防委員長は捕まえられた?」
    メイリン「まだです。副官が国防委員長を呼びに行ってくださいましたが…。国防委員会が開かれていてもう中には入れそうにないと…」
    アグネス「最高評議会の審議は?」
    メイリン「準備が終わり次第。事前の情報交換は終わって、もう間もなくです」
    アグネス「副官殿に掛け合って。親書の件を口にしても良い。国防委員長を30秒でも良いから部屋から引っ張り出して」
    メイリン「やってみます!」

    今のまま事態が推移するのはスカンジナビア王国にとってもアスハ代表にとっても、余りに不利だ。変に肩入れするのは良くないけれど、預かった物は意味があるうちに贈り先に届けるべき。それがだめなら、自分が受け取った事だけでも明示しないと。

    大きな瓦礫をもう一つ持ち上げつつ、アスランにも回線を繋ぐ。良かった。瓦礫の下、今度は2人中1人はまだ息があるみたい。その場に集まっていた人の中から看護師資格を持った人が名乗り出て応急処置に駆けつけてくれている。

    さわさりながら、親書に関しては、何とか最高評議会に事情をお伝えしなくては。まだ、国防委員会高級武官4人組で話している内なら修正が効くかもしれない。

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:11:24

    アグネス「『アスラン先輩、申し訳ありませんが、ダガーL隊の指揮は小隊長に任せて、先輩は此方に戻れませんか?スカンジナビア王国とアークエンジェルの立場を慮る必要があります。親書を預かっていること。それを受け取る際に伺ったアスハ代表のお言葉を最高評議会議員・国防委員会に証言したいと思います。今、私はボーンホルム美術館で救助活動中です。迎えに来て、必要なら共に証言を』」
    アスラン「!。分かった」

    レーダー上でアスランのダガーLの光点が向きを変えて此方に飛んでくる。そんな中、先に降りた少尉が奇跡的に脱出した美術館員から聞いた要望を私に上げてくる。

    ストライクダガー隊小隊長「隊長。『下敷きになっている人の救助と共に文化遺産である『鉄器時代の金細工』を紛失前に確保して欲しい』とのことです。攻撃前の博物館マップも添付します」
    アグネス「了解。連隊にも現状を報告します。『ストライクダガー隊、聞いた通りよ。細心の注意を持って。また、別件で私は一旦、連隊本部に出頭します。こちらもこの島と島民に深くかかわる事案。どっちつかずみたいで申し訳なく思うけれど。その後は先任の少尉が指揮を』
    ストライクダガー隊小隊長「了解!」

    コックピットデバイスを高速打ちして美術館の被害状況報告書を作成して、実質的な災害対策本部になっている連隊本部に送信する。
    見たところ、崩れ落ちた屋根の撤去は思っていた以上のスピードで進んでいる。モビルスーツパイロットの時点で彼らもナチュラルの上澄み、大したものだわ。

    アグネス「(美術館マップを見るに件の金細工はこの辺かしら…)」

    所蔵品と瓦礫を踏まないように建屋にストライクダガーの足を踏み入れ、しゃがんで探ってみる。有った!

    アグネス「情報共有!鉄器時代の金細工発見。学芸員にお知らせして確認・確保を!」
    ストライクダガー隊小隊長「了解!」

    そうこうしている内にアスランのダガーLが頭上に到着、私は一旦切り上げるしかない。今まで乗っていたストライクダガーを邪魔にならない場所に移動させ、皆に短い挨拶を送る。

    アグネス「皆、格上機に良く戦った。誇りに思う。暫しお暇を」
    ストライクダガー隊小隊長「はい!隊長」

    機体にロックを掛け、コックピットを開放、身を乗り出して皆に敬礼する。そして、ハッチを自動閉鎖に設定した後、アスランのダガーLから伸ばされた手に乗り移る。

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:19:59

    ダガーLの両掌に載せてもらってふわりと揺られつつ、町を見下ろす。港沖合に停泊したミネルバからは揚陸艇と白いグフが救援物資を運び込んでいる。レイがいない以上、あの機体に乗っているのはルナマリアかな。

    周辺海域を、ソナーを垂らしたAWACSディンが哨戒している。フォビドゥンヴォ―テクスも連合の潜水艦もこうなってしまうと手出し不可能だわ。

    援軍に駆けつけてくれたディン隊、彼らは本土からホスピタルザクを各2機がかりで3機、空路で島に輸送している。空港が使用不可で輸送機の発着が出来ない状況を鑑みればナイスな判断ね。

    ザク隊はグゥルを用いて地上に展開、緊急車両通行の邪魔になる道路上の瓦礫の撤去に当たっている。こじんまりとした街並みは穴だらけになりながらもまだ、健在だ。街路を様々な制服を来た者、制服など持たない人々がこの地と同胞を守るべく駆けまわっている。

    最善を尽くそうとしているのは、何も私だけではない。世界はラクスの歌のように優しくない代わりに、露悪的な拡大自殺志願者が思い描くほどには醜くもない。

    物思いに耽る間も無く、ダガーLは連隊本部の敷地に着陸する。アスランが私をまず地上に降ろしてくれる。

    その場の整備班が私とアスランに細やかな拍手を送ってくれる。この拍手をどう受け取るべきなのか、私はまだ分からない。彼らに敬礼を返すのみだわ。

    アスラン「メイリンによると、何とか国防委員長に都合が付けらそうだと。急ごう!」
    アグネス「はい!」

    頭上から響くアスランの声に返事をする。そして、飛び降りるように降りてきた彼と共に連隊本部内に駆け込む。

    中に入るや、皆の敬礼に返礼もそこそこ、メイリンの下へ。既に到着したミネルバのクルーが連絡要員として加わっている。メイリンの下には近衛騎兵連隊長と来島時に自己紹介し合った侍従武官殿が待機していらっしゃる。

    彼らと敬礼を交わし、連隊長殿にお詫びする。

    アグネス「戻りました。援軍に送って下さった中隊に多くの死傷者を出し、お詫びのしようもありません」
    近衛騎兵連隊長「いや!援軍に来ていただいたのはそもそもこちらの方。お二人、いやお三方ともよくぞ、島をお守りくださった」
    侍従武官殿「感謝します」
    アスラン「…」

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 23:23:02

    アスラン、メイリンと共に二人と目礼を交わす。この挨拶を持って一応、防衛戦の区切りと思って良いかな。


    (カウントMS784〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA21(共同2) 戦闘機46 対MSヘリ160 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉 リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲154〈+共同撃破多数〉 ブルドック174〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車5 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等261〈+共同撃破多数〉 対空砲7 空母11 イージス艦16 フレーザ級3 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)


    メイリンが開いているデバイスの画面の向こうにはシュライバー国防委員長の副官が、そわそわと気まずそうに立っている。


    メイリン「もうあと少しで会議が小休憩になると」

    アグネス「間に合って良かったわ」


    僅かの合間を縫い、4人に国防委員長にお伝えしたい事項を説明する。


    スカンジナビア王国国王陛下の親書とアスハ代表の親書を受け取った事。ご両名はプラントと西ユーラシアとの対立など毫も望んでおらず、戦災に対しての同情と支援こそが願いであったと報告すること。


    アグネス「併せてカリーニングラード軍管区とバルチック艦隊強襲も提案しようと思います。幸か不幸かラムシュタット基地に固まった予備兵力が存在します。あの軍管区と艦隊は我らのアキレス腱。これ以上放置すればいつまで経ってもバルト海の安全は確保できず、この島の危険度を下げることが出来ません」


    そう伝えると4名中3名は頷いてくれるが、アスランは逆にむっとしている。アークエンジェルを事実上の囮に使う案が気に入らないのかな。


    アグネス「…既にアークエンジェルと地球連合軍、分けてもカリーニングラード軍管区軍は砲火を交えている最中です。我等が地球連合軍を討てば間接的にしろ彼らの圧力が減るはずです」


    そう釈明するように話すと、彼もようやく硬い表情を解いてくれる。

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 08:17:01

    保守

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 15:43:35

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:57:20

    保守

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:19:02

    メイリン「カリーニングラード沖、アークエンジェルの画像出ます」
    アグネス「うん?」

    私の業務用デバイスの隣に置かれているコンピューターをメイリンは何時の間にやら操作し、私達に一方の現状を知らせてくれる。

    アグネス「アークエンジェルは今、クライペダ東方250㎞。スカンジナビア王国領エーランド島とポーランドの間ね。やはりアスハ代表達を迎えに来る途中を襲われたのか…」

    事前に聞いていた通り、225cm連装高エネルギー収束火線砲『ゴットフリートMk.71」』1番2番、副砲の110cm単装リニアカノン『バリアントMk.8』2番は大破。75mm対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』が幾つか潰されている。艦本体にも直撃弾もいくつか受けている。

    アークエンジェルより更に東方の海上にユークリッドとザムザザーの残骸らしき物体が波間に漂っている。第1波、第2波を撃退した後ね。

    アグネス「(陽電子破城砲『ローエングリン』は2門とも無事。幸いと言うべきかは分からないけれど)」

    大天使は艦首を北北東に向け、ハゲワシのように群がって来るウィンダム隊をフリーダムと共に迎撃している。アスハ代表はもう着艦された後のようね。

    侍従武官「ムラサメが展開していない?」
    メイリン「先程までは。しかしオーブ軍籍の者の出撃は抑制的です。どうやら本国を慮っているようです」
    侍従武官「マシマ宰相代行政権が行った配慮が裏目に出るとは…」

    そうね。まだオーブ軍籍を失っていないムラサメ隊が地球軍機を墜としまくれば、オーブ本国が責められかねない。デストロイの時はジェノサイドが目前で発生している渦中だった。その時と今では状況が異なる。通常の軍事行動として地球連合軍と戦闘している、と見なされかねない行動は極力避けざるを得ない。

    アグネス「(だから、母艦の生存に必要な最小限度しかムラサメを出撃させられなかったのか…。とは言え、それで沈んだら元も子もない)」

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:23:28

    アスラン「キラ!」

    固唾をのんで見つめるアスランが短く叫ぶ。傷ついた大天使にハゲワシどもの大軍が-2個中隊24機のウィンダムが-襲い掛かる。フルーダムは北東に進むアークエンジェルの右横腹を守り、敵の大編隊にハイマットフルバーストモードを討ち放つ!

    アグネス「(ほう!あれがアラスカの雄姿か!)」

    ルプス・ビームライフル、バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲2門、クスィフィアス・レール砲が唸り声をあげる。驚異的なことに1発で複数機の頭部や腕部、脚部等を吹き飛ばしている。降り注いできたミサイルを頭部のピクウス76mm近接防御機関砲が粉砕し続ける。あの武装本当に役に立つのよね。お利口さんだわ。

    一度の攻撃で10機のウィンダムを撃破した直後、フリーダムはビームライフル片手で突撃を敢行する。士気が砕けかけた編隊を切り刻み5機の『頭』が切り飛ばされたところでハゲワシどもは一旦撤退していく。

    アスラン「キラ…」

    今度は安堵したイントネーションで『キラ』と言い出したわ…。まあ、端的でいいわね。

    近衛騎兵連隊長「いやはや。大した手並みですな」
    アグネス「はい」

    しかし、この状況であれは不味くないかな。連合の整備班は怠け者ではない。手足、頭ぐらいなら予備パーツさえあれば最短1時間程度で修理可能なはず。補機や予備機が有れば、パイロットが帰還した瞬間、再出撃可能だ。

    何も『殺せ』と言うのじゃない。例えば-そうね。武装解除の証として不時着水なり機外への脱出を命じるとか、もっとやり方を考えないと。陸地も近いのだしパイロットスーツも着ているなら救助までは待てるはず。せめてカリーニングラードではなくスカンジナビア王国への進路指示をできなかったものか。

    アグネス「(なんて思うのは岡目八目というものね。あの鉄火場じゃ、そんなことまで考えている余裕はないか…)」

    そもそも戦場で『不殺』はありふれたこと。古今東西の戦場で兵士が個人的良心や騎士道精神に基づいて敵の死を厭う時、必ずしもベストの方法が取れるとは限らない。今回もそうだったというだけだ。

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:26:27

    皆の目が脇のコンピューター画面に向いているなか、本来の業務用デバイスから咳払いの音が聞こえる。

    副官「シュライバー国防委員長閣下がお見えです」
    アグネス「ご無理を言って申し訳ありません」
    副官「それは閣下におっしゃってください」

    副官殿はややご機嫌斜めのよう。秘書的ポジションの人は大変ね。

    アグネス「いえ。貴方にもご無理をしていただきました。ありがとうございます」
    副官「…さあ、時間がありません。どうぞ!」

    執務室の扉を勢い良く開けて、シュライバー国防委員長のお出ましだわ。彼の頬が紅潮しているのは私の不躾な呼び出しに怒っているのか、今までの議論が白熱していたのかどちらだろう。

    ともあれ、皆で敬礼する。私とアスラン、メイリンのみならず、デンマーク王室侍従武官、近衛騎兵連隊長も同時にだ。

    ご機嫌斜めな顔で私のデバイスを覗き込んだシュライバー国防委員長は外国の高位軍人が立ち会って礼を払っていることに気が付き、慌てて綺麗な敬礼を返して下さる。

    侍従武官「お忙しい所、大変失礼いたします。貴国の我が国に対する防衛協力に最上級の感謝を。今日、真っ先にボーンホルム島防衛に立ち上がって下さったアスラン・ザラ殿、アグネス・ギーベンラート女史、メイリン・ホーク女史、並びに続いて駆けつけて下さったザフト軍のご活躍。国王陛下にしかとお伝えいたします」

    先手を取って侍従武官殿がフォローして下さったので、シュライバー国防委員長もすっかり毒気が抜けてしまったわ。

    シュライバー「それは…。嬉しいご報告です。国王陛下にどうか良しなにお伝えください。3人とも本当にご苦労。アスラン君とギーベンラート女史はパイロットスーツを着替える間もなく駆けつけてくれたのだな」

    言われてみれば私もアスランも地球連合軍のパイロットスーツのままだわ。一応、マークは西ユーラシア連邦軍になっているけれど、パパやママが見たら卒倒するわね。

    近衛騎兵連隊長「はい。彼らの勇戦に心底よりの感謝を。私達は席を一旦外しますので、ごゆるりと」

    連隊長がこう言うと、その場の軍人が退出を開始、ミネルバクルー等ザフト軍人も気を効かせて部屋から出てくれる。

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:31:18

    ありがたい。この島も未だ戦場、長くは掛けられない。決戦よ!

    アグネス「シュライバー国防委員長閣下、大事な会議の途中、ご無礼します。本日、小官はボーンホルム島をアスハ代表と戦災被害地支援の在り方について意見交換のため訪問しました。その際、代表ご自身とスカンジナビア王国国王陛下の親書をお預かりしています。プラント当てと西ユーラシア当てに。お預かりした時刻はスカンジナビア王国が地球連合軍の進行を受ける前です」

    画面の向こうで何かしゅんとしているシュライバー国防委員長に一気に捲し立て、メイリンから受け取った鞄から、プラント当ての親書を2通取り出して国防委員長に差し出し示す。

    シュライバー「む…。なるほど。しかし、スカンジナビア王国は既に地球連合の国内進駐を許してしまった以上は…」
    アグネス「スカンジナビア王国国王陛下は今回の地球連合の暴挙に深く同情の念を御寄せになり、援助を惜しむつもりは無い、と。アスハ代表はご自身と御召艦アークエンジェルにプラントが示してきた好意を深く感謝し、西ユーラシア政変で亡くなった民衆と勇敢なザフト軍人に哀悼の意を表する、どうかそのことをプラント本国と各国・関係機関にお伝えして欲しいと仰せでした」
    シュライバー「…」

    国防委員長は私の話を聞きながら机の上にそっと置いた2通の親書をしげしげと見つめる。開封、スキャンして転送しようか余程迷った。ただ、流石に儀礼上問題がある。

    アグネス「アスハ代表は今後も被災者に寄り添い、支援を続ける意思と用意があるとも。オーブ連合首長国もスカンジナビア王国も我らの主敵ではありません。今回の進駐は地球連合軍の実質的な侵略行為、スカンジナビア王国はユーラシア連邦軍に備えていたため抵抗できる状態ではありませんでした。闇雲に敵対勢力を増やすべきではありません。グレーの勢力の色合いが黒に少し近づいたからと言って、やたらと戦線を増やせば敵の思う壺です」

    ふぅふぅ…。一気に話し切ったわ。吉と出るか凶と出るか?どうかな。

    シュライバー国防委員長はむむむッと口髭を上下させながら考え込み、ようやく答えを返してくる。

    シュライバー「君の言うことは良くわかる。お役目ご苦労。しかし、ノルウェー進駐は一大事。それにアークエンジェルには拿捕命令を検討中であるし…」
    アスラン「アークエンジェルに拿捕命令!?なぜです!」

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:38:03

    うわっ!アスランが隣で大声を上げてきたわ!地蔵になるのか話すのかはっきりしてよ。さっきまではむしろ話して欲しいところだったのに。

    シュライバー「特務隊アスラン・ザラ。君には辛いことかも知れないが、あの艦には重大な戦争犯罪・人道犯罪の容疑者が2人も乗艦している。今、あー。君らはそれどころでは無かったかも知れないが-。あの艦は地球連合軍から攻撃を受けていて。万一、あの艦が地球連合に拿捕されてしまえば戦犯どもが開放されてしまう。沈められれば犯罪の真相究明は不可能になる。もうここまで来たら、アークエンジェルには、自主的に我らの保護下に入ってもらうか、拿捕されるか選んでもらわねば。最悪沈むなら-」

    最悪沈むなら-。何か聞き捨てならないことを言いそうになったわね。

    アグネス「(口が滑っただけだと思っておこう。この人を責めてもどうしようもない。多分、これを言い出したのは-)」

    アスラン「そんなことを言い出したのは誰ですか?!」
    シュライバー「少し口を慎みたまえ!ゴホン!議長から本会議前に内々にな。ああ…。すまない。君らも激戦続きできっと疲れているのだろう」
    アグネス「はぁ…」

    はぁ、じゃないわ!変な気の使われ方をしている場合じゃない。やはり議長か。前々から何とはなしに気にはなっていた。何故、あの艦に拘る?アスハ政権のオーブはそんなに嫌なのか?セイラン政権や今の中途半端なマシマ宰相代行政権より、ずっとプラントにとってマシなはずだけど。

    アグネス「(不味いわね…。シュライバー国防委員長、案の定議長に言い包められてしまっている。この人、あんまり弁が立たなそうだから。空気に流されているわ)」

    冷静に考えたら、あの艦を無理やり拿捕したり-拿捕し損ねて沈めたり-することはメリットより遥かにデメリットの方が大きい。しっかりしてもらわないと!

    しっかりしてもらうためには大きな花火を、号砲を打ち上げなきゃね!

    アグネス「失礼ながら、小官はこの情勢、またとない好機と思います。カリーニングラードとバルチック艦隊をまとめて無力化するための」
    シュライバー「うん?君、アークエンジェルの話をしているのではないのかね?」

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:42:07

    今その話をしている!

    アグネス「アークエンジェルとカリーニングラード軍管区の軍は互いに潰し合って消耗しています。ラムシュタット空軍基地には訓練のために集結させた兵力が100機。これを持って今、彼の地を強襲すれば完全な無力化とは行かぬまでも相当な損害を強いることができるはず!カリーニングラードとバルチック艦隊さえすり減って、叶うことなら無力化出来ればバルト海の情勢は一服し、スカンジナビアが増した黒色を灰色寄りに戻せるでしょう」

    今、国防委員長は完全に守りに入っている。それはそうだわ。ノルウェー進駐もボーンホルム島強襲も、ついでに言えばアークエンジェルの問題だってこの人の失態と言えば失態だ。

    頭の中がパニック状態なのは私達だけではない。だからこそ、国防委員長閣下には攻めの姿勢に転じてもらわねば。

    シュライバー「しかし…。議長は…」
    アグネス「大不敬を承知で申し上げます。たった1隻の-それも中立勢力寄りの-軍艦などよりザフト軍は大局を見てことに当たるべき。デュランダル議長は遺伝子学者、軍事に関しては専門家の-我等の言い分にも耳を貸すべき、そうはお思いになりませんか?」

    秘匿通信だからこそ言えること、これ結構ギリギリよ。案の定、国防委員長は顔を真っ青にさせたり、真っ赤にさせたりしている。

    シュライバー「やれるかね?君、負傷は?!そう言えば!」

    今、そこなの?

    アグネス「コルセットとバンドと鎮痛剤と抗炎症剤が良く効いています。ベラルーシはもっと大変でした。補給をしっかりしていただけさえすれば。物資のポーランドとリトアニア内の移送、場合によっては大気圏投下も含めて。それと医療スタッフを。私のみならず参加将兵のため」

    この時になってようやくシュライバー国防委員長は私と目を合わせてくれる。互いの眼を見つめ合うこと10秒、流石に彼の方が先に根負けしたわ。

    シュライバー「ザラ君。君もその攻撃に参加するかね。やはり彼女の怪我が気にかかる。君が共同指揮を執るというなら私から議長に進言しよう」
    アスラン「え…。はぁ…。え…」

    そこで迷う?普通…。

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 01:51:13

    アスランの煮え切らない態度に国防委員長閣下が口をへの字に曲げかけたところで、部屋の無線に朗報が入る。

    ハイネ「こちらハイネ隊。アビスとアッシュ3機でフォビドゥンヴォ―テクスを撃沈。こちらの損害は無し。アグネス、ありがとうな」
    シュライバー「おお…。流石は『緋蝶』ハイネ・ヴェステンフルス。ついに-」

    おお。ついにやったのね。良かったわ。やはり強い機体もちゃんとしたサポートが無ければあっけないわね。

    アグネス「(フォビドゥンヴォ―テクスの襲撃があともう少し遅ければ、スカンジナビア王国のバルト海沿岸に寄港することも出来たかもしれない。王国の態度が流動的で、ザフトにも空爆の余力が残っているため、彼ないし彼女の選択肢は極度に限られていた)」

    他山の石にしよう。

    ただ、画面の向こうの御仁はそうは思っていないらしい。大喜びだわ、この人。

    シュライバー「特務隊アスラン・ザラ、アグネス・ギーベンラート。ラムシュタット基地の部隊を母体にして強襲隊を編成。カリーニングラード軍管区を攻撃せよ。バルチック艦隊と海軍基地は補給を済ませ次第、ハイネ・ヴェステンフルス隊に攻勢を任せる」
    アグネス、アスラン「はい!」

    アスラン、メイリンと並んでビシッと敬礼する。さり気なくメイリンもいたのね。うん、当然の権利ね。

    アグネス「親書は如何しますか?」
    シュライバー「親書は-。困ったな。厳重に保管しておいてくれたまえ。作戦終了後、西ユーラシア連邦首脳に遅滞なく届けれれるよう手配する。プラント宛のものは急を要するから、一度ブリュッセルの駐西ユーラシア連邦プラント大使館に提出に行ってくれ。現地にはカザエフスキー評議員もいるから。では頼む」

    慌てた副官にせっつかれ国防委員長は敬礼したかと思えばササっとリモートを切ってしまう。会議が始まる時間だったのね。

    無理を言っていたのはこちらだから仕方ないけど。最後の指示が意味不明だわ。混乱していたのかしら。

    アスラン「アグネス、急いでブリュッセルに行くぞ!」

    そう思っていると傍らのアスランが真顔でなんか言い出す。大使館は郵便ポストじゃないんだぞ!いや、ポストにしろと言う命令だったわね。まあ、出すだけなら。シホ先輩にも連絡を取らないと…。

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 09:15:14

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 12:25:17

    状況が急変&同時進行し過ぎて誰もが付いて行けなくなってるな。そんな時に状況を引っかき回す、あの怪人ワカメ男さぁ…

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 19:46:49

    新兵や候補生混じりの部隊をアグネスとアスランの共同指揮か
    議長が人間性を捨てたら二人とも排除できるな

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 20:56:37

    実戦で実地指導すれば訓練する手間省けますね(白目)

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 23:36:54

    引っ掻き回す事だけは立派

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 02:03:48

    シュライバー国防委員長の無茶な命を受け、私とアスラン、メイリンは近衛騎兵連隊で預かってもらっていた着替えと自分の手荷物を受け取るやダガーLに飛び乗る。

    まさかの3人乗りだが、流石にこのままブリュッセルに飛ぶわけでは無い。先ずは港湾外に停泊しているミネルバを目指す。

    私達の慌ただしい出立を聞いた侍従武官殿、連隊長殿他その場の西ユーラシア連邦デンマーク軍人の敬礼を受けつつ連隊本部の敷地を飛び立つ。コックピットでぎょうぎゅう詰めになりながら私達3人も敬礼を返す。

    入れ違いにルナマリアの白いグフが連隊本部に着陸、コックピットの中にはアビーが乗っていてメイリンと交代してこの島でのオペレーターを務めることになっている。

    アグネス「(ちゃんとしたご挨拶をする暇も無かった。柄にもなく心苦しい)」

    意味のない罪悪感がずっと心を苛んでいる。心の中でそうであってほしくないと思わずにいられない仮定。もし、この島が今日攻撃を受けた理由がその地理的重要性のみならず、私達の会談にあったのだとしたら?

    もしそうなら、私はどれ程の埋め合わせを島民と近衛騎兵連隊にすれば償いになるのだろう?カリーニングラード強襲は以前から考えていたことで、アークエンジェル問題が無くても私は上申したかもしれない。でも、『今日、このタイミングで』行ったことに個人的な感情が全くなかったとは言えない。

    アグネス「(必ずカリーニングラード攻撃を成功させ地球連合軍に大打撃を与えて見せる。ザフトと西ユーラシアがバルト海の制海権、制空権を握ることが出来れば、ボーンホルム島にかかる地球連合軍の軍事的圧力を大幅に減退させることにもなる。疎開が必要となれば島民にかかる負担は計り知れない)」

    今の状況を放置すればデンマークは東西の海、両方に備えなければいけない。コペンハーゲンはシェラン島に在る。もし橋を落とされてしまえば首都ごと孤立しかねない。お骨折りをしていただいた王室にも申し訳が立たない。

    ただ、それはそれ、ダガーLに乗った瞬間からミネルバブリッジのグラディス提督のお小言が私とアスランに見りかかって来る。メイリンも居心地悪そうだわ。

    タリア「全く、どうして私に何の断りもなく、そんな大作戦を上申しているの!私は月軌道艦隊としては貴女達の上官で、特務隊としても首席なのよ。それを-」

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 02:12:09

    彼女に取り急ぎ事情を説明した時からこの調子、怒髪天を衝くとまでは言わないまでも、軍帽を鬼の角で突き破らんばかりだわ。状況的に仕方なかったことは彼女も分かってくれているけれど、やはり腹に据えかねるらしい。

    しかし、もしアークエンジェル拿捕作戦-状況次第では撃沈作戦-が決行された場合、主力を押し付けられるのは間違いなくミネルバになる。提督ご自身もそんなことはお望みではないだろう。心理的にも、何より戦術的な難易度でも。聡い彼女はそのことも十分承知している。このお怒りは多分に儀式的なものだ。

    だからこそ、私も話すべきことは話しておかないと。

    アグネス「ともかく、最高評議会にはクールダウンの時間が必要です。仮にそれが数時間で在ったとしても。天秤の重さを取り違えそうになっています。国内を睨みながら敵に当たるのが良い心がけとは言えないことは分かっています。ただ、スカンジナビアとオーブ、アークエンジェルに関しては冷却期間が必要なのです。今がカリーニングラード攻めの絶好の好機なのは間違いありません」

    グラディス提督を宥めている間にミネルバのカタパルトにダガーLは着艦、まさか連合のモビルスーツがこうしてこの艦に降り立つ日が来ようとはね。

    無事、着艦が終わるやヴィーノやヨウラン達は心底嬉しそうに私達に手を振って合図を送ってくれる。何かこういうのを目にすると頑張った甲斐が有ったと思うわね。3人乗りで、はち切れそうに、アスランに飛んでもらったこと、感謝しないとね。

    私達が降りる間際、提督は思い切った決断をお伝えくださる。

    タリア「分かりました。本艦はこれより一時、大気圏を離脱。貴女達をブリュッセル上空まで送ります。その後、直ぐにこの位置に戻り救援の続きを。ブリュッセル国際空港にはスペースシャトルを用意させます。カリーニングラードなりラムシュタット基地なりに向かうのに使いなさい」

    さらりととんでもないことを。やはり、今は戦時、あらゆる無茶が通るわね。

    アグネス「ありがとうございます。大使館に親書を提出したら、即、私達は次の作戦に。今度こそ、事前にご連絡します」
    タリア「そうあって欲しいものね。でも、アークエンジェル拿捕なんて本気なのかしら?」

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 02:17:36

    ダガーLのコックピットモニターの向こう側から怪訝な顔をしたグラディス提督の顔が覗く。しかし、そんなことを私やアスラン、メイリンに言われても困る。あの議長の腹は今一つ読めない。

    ダガーLのコックピットモニターの向こう側から怪訝な顔をしたグラディス提督の顔が覗く。しかし、そんなことを私やアスラン、メイリンに言われても困る。あの議長の腹は今一つ読めない。

    そんな私達の表情を垣間見みて、彼女はやれやれといった表情と僅かな笑みを浮かべて通信を終了する。今の笑みは『あなた達を許す』の意ね。タイミング遅れで消えた画面に向かって3人で敬礼する。

    ダガーLから降りるとメイリンはここで別れてブリッジへ。提督や副長に何時までもオペレーターをさせるわけにもいかない。

    メイリン「行ってきます!」
    アグネス「行ってらっしゃい。逆なんだけどね」
    メイリン「両方です」

    うん。そうね。頷き彼女と別れるとアスランと私はそれぞれセイバーとカオスに乗り込む。今回は制服と手荷物も一緒だ。パイロットスーツは既にザフトの赤いものに着替えてきている。やっぱりこっちの方がしっくりくるわね。

    ヨウラン「無茶するな、って。言う訳にもいかないんだな」
    アグネス「そうね。もう今朝とは状況が違う。すんなり停戦とはいかないわね」

    心配顔のヨウランが閉じる前のコックピットを覗き込んで来る。彼なりに戦場の風を感じているのだろう。顔の筋肉が張り詰め、普段の気のいい少年の面影を消し去っている。

    私達は人としての大切なものを取りこぼし続けているのだと実感する。もうこの艦に乗る前には戻れない。奪ってしまったものが多すぎるから。

    ミネルバにしたところで…、このままボーンホルム島支援を続けられるのかまだ何も分からない。海の向こうと空の果ての人間達が私達の命運を握って離してはくれない。

    ヨウラン「気をつけて」
    アグネス「貴方も」

    短く返事をしてコックピットを閉じる。

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 02:21:27

    コックピット回線からはミネルバの大気圏離脱シークエンスが耳に飛び込む。

    マリク「各部チャック終了。メインエンジン出力上昇中。定格まで30秒。出港準備終了」
    アーサー「良し。グラディス提督、準備整いました」

    副長が振り向いて艦長席のグラディス提督に指示を仰ぐと、彼女も頷いて下命する。

    タリア「本艦はボーンホルム島救援活動を一時中断。ただし、既に出撃中、上陸中の者は任務続行、セイバーとカオスを宇宙空間からブリュッセルに送り届けます。マリク」
    マリク「はい!水流ジェット、接続!」

    ブリッジ組が頑張ってくれている中、私は私で為すべきを為す。

    まず、ブリュッセルの大使館に連絡、既に本国から一方は届いているはずだけど。念のため。
    そう思って大使あてに通信を繋ぐと、驚くべきことにコックピットモニターにカザエフスキー最高評議会議員のお顔がバーンと映り込む。

    勢い良く敬礼すると彼女も胸に手を当てて返礼して下さる。

    特務隊とは言え、一パイロットの通信に最高評議会議員自ら出た理由は彼女の顔を一目見ただけで理解できる。不安と焦りですっかり憔悴している。少しでも自分のよって立つべき場所の手がかりが欲しいのだろう。ここの所、彼女はそんな目にばかり合っている。

    カザエフスキー「特務隊ギーベンラート。ご苦労様。ボーンホルム島防衛戦の活躍を聞き嬉しく思っています」
    アグネス「ありがとうございます。今からブリュッセルに親書を提出しに向かいます」

    話している最中、ミネルバは飛行を開始、どんどん速度と高度を上げていく。

    カザエフスキー「シュライバー国防委員長からそのことは聞いています。本来、外交委員の頭越しに軍が先行するのは望ましいことではありません」
    アグネス「申し訳ありません。正規ルートでは不都合がありました。なので準正規ルートという形をやむを得ず」
    そうお詫びすると彼女の顔の曇りも少しは晴れる。立場上、一言釘を刺しておきたかったのだろう。

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 02:30:59

    カザエフスキー「理解しています。パイプは太く幾つもあるに越したことは有りません。プラント当ての親書の提出を受け付けます。大使館に。私も今日は詰めます。それと、西ユーラシア宛ての親書は手元にありますか?」
    アグネス「はい。業務鞄ごと持って来ましたので」

    ミネルバの振動が徐々に大きくなり、やがて静まる。大気圏を離脱したのだ。

    カザエフスキー「スケジュールの仮押さえをしておきました。共にユーラシア連邦理事会本部に来てもらいます。その親書は今日届けなければ意味がありません」

    確かに。特にスカンジナビア王国との関係は今伸るか反るか、最悪、このまま一戦交えることになるかも知れない。

    アグネス「承知しました。ただ、カリーニングラード攻撃も控えています」
    カザエフスキー「長くはかかりません」
    アグネス「了解」

    もう発艦のタイミングだ。敬礼して、通信を終えようとするとカザエフスキー評議員も空気を読んで返礼して下さる。

    カザエフスキー「モビルスーツで大気圏を突破するのは大変ですか?怪我の具合に障りませんか?」

    通信終了間際、面白い質問と嬉しい問いかけをして下さる。勲章授与式で私が車椅子に座っていたことを覚えていてくださった。というか、それ、昨夜のことね。人生が盛りだくさん過ぎて困る。

    アグネス「多くの人が大変と感じるでしょう。怪我に障らぬと言えば嘘になります。ただ、もし祖国と友邦のために身を投げ打たねばならない時が有るのだとすれば、それは今だと理解しています」

    そうお答えすると評議員は目を一度伏せた後、真直ぐ私に眼差しを向けられる。
    カザエフスキー「地上で待ちます。気をつけて」
    アグネス「はい」

    今度こそ通信を終了する。カタパルトからはアスランが青い星に向けて飛び降りていく。次は私の番だ。

    メイリン「カタパルト推力正常、進路クリアー。カオス、発進どうぞ!」
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」
    青い光が灼熱の赤に変わるのをシールドの後ろから睨みながら、西ユーラシア連邦ブリュッセルに降下を続けていく。

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 07:39:11

    議長は次は何を仕込んでいるのやら

  • 41二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 16:02:19

    戦後のアグネスが心配だ世界中の自軍や民間人の犠牲の何割かは議長の陰謀のせいと知ったら血管がキレてしまいそう

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 23:32:49

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:01:47

    地空の大気を赤く突き抜けながら、着陸予定地点を地上にシグナルで送り、次いでアスランにコックピット回線で話しかける。

    アグネス「アスラン先輩、大使館に到着後、私はカザエフスキー最高評議会議員と恐らく駐西ユーラシア連邦プラント大使に面会することになると思います」

    アスラン「そうだな…」

    アスランは大気圏突入の最中だけあって正気を取り戻している。私にしても、ながら運転も良くないが仕方なし。話すなら今しかないだろう。

    アグネス「ロアノークの正体、彼とバヤン中尉に特別な配慮が必要な理由。それを先輩の口からお話してはいかがでしょうか?手札を切るならこの瞬間しかないように思います。あの時、『プライベート』で『立ち話』なさった先輩しか話せる者は居ません。公人としてアスハ代表とお会いしたことになる私では直接過ぎて、話題として切り出せないことです」

    そろそろ高度は10000m、エベレストの高さがだんだん近づいて来たわ。

    アスラン「俺の口から、彼らの個人情報や不利益情報を話して善いものだろうか?」

    私の発言にやや動揺したようにアスランは聞き返してくる。やはり、何時ものコミュニケーション不能状態よりテンポが良い。

    アグネス「善い悪いで言えば善くは無いでしょう。しかし、この状況では次善の策のはず。アークエンジェルは今、彼ら自身から事情を説明できない状態に追い込まれています。これを座視して良い結果は訪れないでしょう」

    アスランは戸惑いの表情を浮かべながら、私に再度尋ねてくる。

    アスラン「確かに良い結果は難しいかもしれないが…。信用してもらえるだろうか?それにそれを知ってもらったところで…」

    ブリュッセルの町がどんどん大きくなってくる。西暦時代のベルギーの首都にして、かつてのEUの首都でありNATO本部も置かれていた。少し前まではユーラシア連邦の首都であり、彼らがモスクワに逃げ出した後、現在は西ユーラシア連邦の首都となっている。

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:10:13

    実はあの都について私も詳しくはない。『学校の勉強と本に書いてあったこと』、それが知識の全てだ。そもそもプラントの大使館も少し前に開いたばかり。プラントで生まれ育った者は、交渉で出向いたことがある少数の者は別にして、欧州情勢に精通している者など限られていることだろう。地上と宇宙の境界線を越えるのはかくも難しい。

    同じことは逆もしかり。無知が産む相互不信がどれ程、度し難いものか私達は身に染みているはず。

    勿論、『知り過ぎてしまう』ことによって生まれる争いもあるけど。私もアスランもカザエフスキー評議員もエリートだ。無知蒙昧な輩とは違う。何より-。

    アグネス「二人のお話に関しては話しては、どの勢力にとってもマイナスに働く要素はありません。ブルーコスモスとファントムペインを除けば。個人情報の取り扱いがデリケートなのは理解しています。ただ、アークエンジェルクルー全員の命と引き換えには出来ません」

    つまるところ、『言うだけならただ』の一言に尽きる。ロアノーク大佐とバヤン中尉の情報に関しても何時かは明かさなければいけなかった。どうせ明かさざるを得ないなら、今日こそ、アークエンジェルが浮いている内に伝えておくべきだわ。

    着陸操作を続けながら、私の話に耳を傾けていたアスランは迷った表情のまま私の瞳を見返す。この人の慎重さは正邪善悪を重視するが故だと最近になって理解し始めている。

    無論、アスラン・ザラという男は『正と善』を選ばんと志す者。損得ではなく道徳を大事にしているはず。

    ロアノーク大佐とバヤン中尉の事情は私達にとって『言うだけならただ』だが、彼らにとっては裁判や命にもかかわる秘密情報。平時なら安易に漏らすこと等、あってはならない。

    アグネス「(でも、今は戦時。その中でもかなり極まった情勢、選択の余地はない。出せるカードを苦しくても切り続けるしかない)」

    こちらも着陸操作をしながら、アスランに目で訴えかける。伏し目がちになったアスランの視線がふと、私の左肩を見た瞬間-

    アスラン「ああ!そうだな。お伝えしよう」
    アグネス「はい!?ええ。アスラン先輩が口火を切った後なら、私もお手伝いできるかもしれません」

    突然、思い切ったように言うから、心臓が飛び出そうになるわ!ともあれ決断できたなら良し!

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:16:33

    アグネス「(ラクスのことも話すべきとよっぽど進言しようか迷った。でもこちらはリスクが高すぎる。もし、議長が本物の独裁者なら打ち明けられたカザエフスキー評議員ごと抹殺に動きかねない。今、話せる限度はこれが最大…)」

    それからプラント大使館敷地内のヘリポートに向かってセイバーとカオスをゆっくり降下させる。お出迎えは駐在武官と公使、書記官数名。何か自分が随分偉くなったかのような錯覚を覚えてしまう。

    アグネス「(そんな錯覚は命取りに成るだけ。戒めなければ)」

    カオスの足が地面に着く直前、アスランのやや哀愁を帯びた声が耳に伝わる。

    アスラン「すまない。本当に迷惑をかけてばかりだ」
    アグネス「…これに関しては先輩の掛けた迷惑ではありません」

    そう返事をして一緒に着陸、電源を繋いでもらい機体から素早く下りる。

    公使と駐在武官に伴われ大使館に入館、速攻で更衣室に行きパイロットスーツから軍服姿に着替える。略綬も全部バッチリ。ハッタリを効かせて行こう。

    更衣室から出るとアスランもちょうど着替え終わったところだったわ。タイミングがあって何よりね。

    アグネス「(プラント当ての親書2通もある。良し!)」

    公使「こちらです」
    アグネス「ありがとうございます」

    前を進む公使と駐在武官の後ろをアスランと付いて回る。この建物は、元はロゴスメンバーの邸宅だったらしい。西ユーラシア連邦に接収後、今は我等が大使館として有効活用中という訳ね。

    アグネス「(私から見ても豪奢な造りだけれど。栄枯盛衰とはよく言ったものね)」

    いや違う。本来は栄枯盛衰しなければならないのに、ロゴスが何時までもその経済支配体制を独占的に支配していることが問題なんだ。戦争云々は誇張が有ったとしても、こちらの問題は深刻なもの。彼らが、ようやく身に纏った贅肉を切り売りすることになったと考えれば、これはこれで良いことかも知れない。

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:22:44

    前を行く二人が情報を求めうずうずしているのは空気でわかる。しかし、知らぬふりをする。ここでペラペラ話すわけにもいかない。

    大使執務室まで着くと、公使が一旦扉の中に入る。私達に声が掛かるのはその後になる。

    駐在武官「カリーニングラード攻めの指揮を二人で取るというのは本当か?」

    ついに我慢できなくなったという風に傍に立つ駐在武官が私達に質問する。

    アグネス「最高評議会と国防委員会の結論次第です。特務隊ハイネ・ヴェステンフルスが率いる隊が海中から艦隊と港を強襲するので正確には3名で、と言うことになろうかと」

    駐在武官「ノルウェー進駐にアークエンジェル、いやはや…」

    彼はまだ話したがっていたが、入室の合図を公使がなされたのでそこまでとなる。敬礼を交わして、私とアスランは重たい扉を潜って執務室の中に進む。

    意外とこじんまりとした書斎風の執務室、中にはカザエフスキー最高評議会議員と駐西ユーラシア連邦プラント大使が静かな威厳を纏って直立している。

    アスランと共に敬礼、返礼を受け姿勢を正すと準備していた親書を取り出す。どちらに持って行くか一瞬迷うと大使が目で合図してくる。自分ではなくカザエフスキー最高評議会議員にお届けせよ、と。

    その通りに彼女の前に進む。目前のカザエフスキー最高評議会議員は何時もの頼りない雰囲気を払拭して堂々とした態度を崩さない。

    アグネス「ノイ・カザエフスキー最高評議会議員に特務隊アグネス・ギーベンラートがオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ閣下からお預かりした親書を2通お届けします。
    親書の内1通はアスハ代表ご自身の、もう1通はスカンジナビア王国国王陛下のものです。アスハ代表からはプラントがこれまで重ねて示した代表ご自身と御召艦アークエンジェルに対する好意を深く感謝すると共に、西ユーラシア政変で亡くなった民衆と勇敢なザフト軍人に哀悼の意を表する旨、本国と各国・関係機関にと承っております。
    また、スカンジナビア王国国王陛下は今回の地球連合の暴挙に深く同情の念を御寄せになり、援助を惜しむつもりは無いと仰せになった、と承っております」

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:26:41

    短く説明した後、それぞれの親書を彼女にお渡しする。微動だにせずこちらの口上を聞く最高評議会議員に何とも言えない迫力を今更ながら感じる。

    親書を受け取った彼女は私にねぎらいの言葉を掛けてくれる。

    カザエフスキー「特務隊アグネス・ギーベンラート。真にご苦労さまでした。高度なバランス感覚が問われる会談を成し遂げ、現地ボーンホルム島が地球連合軍の攻撃を突如として受ける中、真の勇敢さと高い能力を遺憾なく発揮して、プラントを代表する者に相応しい振る舞いを示したこと。喜ばしく思います。親書はしかと受け取りました」
    アグネス「はい」

    敬礼して身を引き、元の位置に戻ろうとすると大使が私とアスランに席を勧めて下さる。ここは遠慮する場面ではないだろう。カザエフスキー評議員と大使が着席するのを待って私達も腰を下ろす。

    タイミングを見計らっていた大使館職員がお茶と茶菓子を持ってくる。アスランはクッキー、私は高級そうなゼリー!クリームがいっぱい乗っているわ。

    アグネス「(内臓を痛めたこと、気にかけて下さって嬉しいけど、もうゼリーばかりの生活はうんざりね)」

    とは言え、やっと一息つける。4層に重ねられた違う種類のゼリーにふんだんに盛られた生クリームをフォークで慎重に切り口に入れる。凄く甘くて美味しい。生きていて良かったわ!

    アスラン「カザエフスキー最高評議会議員、大使。大事な話があります。どうか聞いてください!」

    アスランは出された菓子にも紅茶にも手を付けず勢い良く話を切り出す。お二人は大いに驚いた顔をなされるが、私は敢えてスルーして紅茶を飲み、ザリーの二口目を食べる。

    マナーはオーブ近海に捨ててきた!数時間後にはカリーニングラードで散華しているのかも知れないのだから、ここで食べなきゃ損だわ。

    カザエフスキー「それは…。分かりました。話してください。大使?」
    駐西ユーラシア連邦プラント大使「異存はございません。ザラ殿、どうぞ」
    アスラン「ありがとうございます。アークエンジェルが現在拘束している2人のファントムペイン構成員について。そのうちの一人、ネオ・ロアノーク大佐なる人物を私は知っています。彼の正体は元地球連合軍人にしてプラントを核攻撃から守ってくれた3隻同盟の幹部、ムウ・ラ・フラガ少佐です。ポーランドで直に目撃したので間違いありません」

  • 48二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:33:04

    藪から棒に飛び出した新情報にお二人はすっかり面食らう。

    カザエフスキー「え…。どういうことですか?大使?」
    大使「いや…。私も。ええ…。どういうことですか?」

    どういうことですか、で何故かアスランではなく私に視線を寄こす。頼むからアスランの話に耳を傾けて欲しい。私の翻訳ではなく彼の言葉を聞いてあげるべき時だ。

    アスラン「加えて、アークエンジェルに残されていたフラガ少佐の生体データと彼のものは完全に一致したそうです。船医の診察によると彼は記憶の植え付けを受け、自身を別人であると思い込まされている、と。ヤキンドゥーエ攻防戦のあと、ブルーコスモスの捕虜となり非人道的処理を受けたと推測されます。人道犯罪・戦争犯罪を問うには精神と脳の鑑定が不可欠です。アークエンジェルは目下の状況で冷静で正確な鑑定がなされるか、身柄を引き渡して彼が虐待や拷問に合わないかを恐れています!」

    おお…。アスランがこんなに長く話すのを聞くのは、私は初めてかもしれない。でも、ちゃんと言えた。偉い!10000000アグネスポイント!

    カザエフスキー「…」
    大使「…」

    一方、お偉いさん二人組は彼の話に戸惑い視線を交わし合ったかと思えば私にアイコンタクトを取って来る。

    『本当か?』
    『はい』

    そう目でお答えする。嘘を言っても仕方ない。正直が一番強い。アスランの言葉はまだ続く。

    アスラン「そして、もう一人のパイロット、地球連合軍第81独立機動群、ホアキン中佐の指揮下、特殊戦MS小隊に所属していたスウェン・カル・バヤン中尉。彼はホアキン中佐の命令によるコーディネイター難民キャンプ無差別攻撃の実行を自供したそうですが-。
    彼は孤児となった後、ブルーコスモスによる非人道的な洗脳教育を受けて、薬剤投与を強制されたと。深い反省の念を口にしており、酌むべき情もある。アークエンジェルは彼を引き渡したとして、彼の身柄の安全が保障され、人道的で公正公平な裁判が行われるか懸念している、と」

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 03:42:27

    アスランは一気に話し終え、一息つこうとするが、まだだ!もうちょと頑張って欲しい。そう目線で訴えかける。

    『彼らの言い分を伝えて貴方はどうしたいのか?どうして欲しいのか?お伝えしなくては片手落ちです』

    アスランが顔に『?』を浮かべそうになるので終いには唇まで動かして、そう伝える。

    ようやく、意図を読んだアスランが最後に付け加える。

    アスラン「ですから、どうかアークエンジェルに強硬策を用いるのではなく、対話の機会を。二人の引き渡し後の安全と正確な脳・精神の検査・鑑定。公平で公正かつ迅速な裁判を彼らも納得のできる形で提示してください」

    ちょっと!そのメッセージは肩入れし過ぎよ。アスラン、今はザフトの人間なんだから…。アスハ代表の特使でもあるけれど、この問題に関してはデリケートな対応が求められる。

    案の定、大使は気分を損ねたように詰問してくる。

    大使「話は分かりました。しかし、貴方は誰の立場でその発言をしているのか、本職は戸惑いを覚えます」

    大使はカザエフスキー評議員にも同意を求めるように視線を遣ると彼女も頷く。やはり、彼の言い分が余りにもアークエンジェル視点に偏っていると思われたのだろう。訂正しておかなくては!

    アグネス「私が思うに、特務隊アスラン・ザラは誤解を招きかねないアークエンジェルの振る舞いの意図を訴えたかったのみかと。その上で最高評議会の決定を尊重したいと考えているのです。アークエンジェルは人道上の懸念から、容疑者の身柄引き渡しを憂慮しているに過ぎない、その点を考慮して強硬な対応策は思いとどまって欲しい、そのような意図です」

    結局翻訳する羽目になるとは。そんな私にカザエフスキー評議員は問いを投げ掛ける。

    カザエフスキー「貴女はどうお考えですか?」

    傍観者になることは許さない、と言うことね。ではお答えしよう。

    アグネス「今、あの艦を拿捕することは軍事的に至難です。陽電子砲2門とムラサメ10機、ストライク・ルージュ、何よりフリーダムは強力な戦力です。それに現時点の拿捕作戦は百害あって一利なしと言わざるを得ません。カリーニングラードとバルト海の方が遥かに重要です。アークエンジェルが地球連合軍を誘引して撃破してくれているのなら、それに越したことは無いかと」

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 11:30:37

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 12:13:22

    アグネスが前々から考えてた事を、やっと言える時が来たな。遅すぎた感はあるが、議長の動きに加えて入院だしがなあ。

  • 52二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 21:06:33

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 02:20:57

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 02:44:48

    そうお伝えするとカザエフスキー評議員も大使もようやく納得して下さる。軍事的に無理、と言った方がこの人達には納得しやすいのかもしれない。カリーニングラードとバルト海の方が重要、は大使も同意見のようだわ。

    カザエフスキー「話は分かりました。本国に伝達しておきます。時間がありません。次は西ユーラシア連邦に親書をお渡しに行きましょう」
    アスラン「…はい」
    アグネス「誠に失礼ながら、本国のどちらにお伝えくださるのでしょうか?」

    『本国』では分からない。『本国の誰か?』まで聞いておかなければ。彼女が嘘をつこうとしているとは思えない。でも、現在進行形の緊急事態の中、棚上げされてしまうかもしれない。

    カザエフスキー「クリスタ!クリスタ・オーベルク最高評議会議員に。会議中の小休憩に何としても。合わせて電子書面を開会中の最高評議会宛てに送信します。大使館内で少し待っていなさい」
    アグネス「ありがとうございます」

    図々しいお願いを真剣に取り合って下さり、内心、安堵と感謝でいっぱいになる。隣の大使が何か言いたげにしているが、それは私達が部屋を出た後に打ち合わせてもらえばいいこと。

    図々しいついでに残った茶菓子を頬張り、紅茶でいつもよりゆっくり流し込む。消化器官をびっくりさせるわけにはいかない。無礼は承知、これから挺身する身だ、大目に見て欲しい。

    ふと、そんな私を見つめるカザエフスキー評議員の表情に柔らかいものを感じる。彼女のお顔、何と無く角度によっては、お姉さんっぽく見えないことも無い。
    所謂、女傑とか『戦う平和主義者』といったタイプではない。真面目で常識的な若手政治家、頼りないが信頼できるという微妙な塩梅のお人ね。

    アスランも私を見て、全く手を付けないのは不味いと出された茶菓子と紅茶に手を付け、大使も雰囲気を読んで食べきれないでいた菓子をモグモグと頬張る。

    そうして数十秒の間、何とも言えない長閑な時間が流れる。戦乱の時代が極まった局面とは思えないほど。そして束の間の安息が過ぎた後、私とアスランは起立して敬礼、二人の返礼を受けた後、部屋を後にする。

    執務室の向こう側には書記官が待機していて、アスランと私を要人用の待合室に案内して下さる。

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 02:52:11

    彼にお礼を述べた後、豪華な椅子に座り、高級そうな机に業務用デバイスを広げる。アスランは盗聴器の有無を調べているけど、この局面、その行動にどこまで意味が有るかは分からない。

    それはさておき、私はリモートでアークエンジェルの現在の状況を確認する。海上を飛行する艦の現状は偵察機を通してリアルタイムで確認できている。少なくとも現時点では。

    アスラン「キラ…。カガリ…」

    一緒にアスランも確認する。彼の艦は現在スカンジナビア王国エーランド島とゴッドランド島間の海峡を真北に飛行中、カリーニングラードからのしつこい追撃は続いており、今はダガーL隊25機が大天使を守護するフリーダムに迫る。

    アグネス「(そう言えばキラ・ヤマトの戦闘をリアルタイムでじっくり見るのは初めてかも。後学のためにもしっかり見ておこう)」

    まず、ダガーL2機がフリーダムに突き進み、M703kビームカービンを発射、続いてジェットストライカーの3連装ヴュルガー空対空ミサイルポッドからミサイルを全弾発射する。

    フリーダムはビームの内1発は避け、一発はラミネートアンチビームシールド防ぎ、ミサイル6発の空対空ミサイルを軽々と除ける。彼が避けたミサイルはアークエンジェルに向かうが、キラ・ヤマトは振り返りざまにルプス・ビームライフルを2発撃ち過たず命中させ、2基のミサイルを撃墜する。残りのミサイルもその爆発に巻き込まれて空中で爆散する。

    アグネス「(中々の高等テクニックね…)」

    キラ・ヤマトはそのまま機体を回転させ、飛び交うビームを交わしながら、ビームサーベルを抜き放つと、先程の2機の間を通過しつつ両機の頭部を切り飛ばす。

    23機のダガーL隊は一瞬、気圧されながらも連射性に優れたビームカービンの特性を生かし、ビーム弾幕を張りながらフリーダムに接近を図る。
    フリーダムは彼らに向かって突き進む。キラ・ヤマトは決して単調に飛ぶことなくフェイントを織り交ぜ、ビームの嵐を抜ける。気づいたら目前、といった状況に陥っていたダガーL1機は右腕を切り飛ばされる。

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 03:00:14

    そのまま敵編隊に突っ込むと右手のビームライフルでダガーL1機の頭部を撃ち抜き、同時に左手に持ち替えたビームサーベルで別のダガー1機の右腕を切断、更に迫る2機はそれぞれ頭部と脚部を破壊される。

    手近な敵を片付けると背部のウイングバインダーを開き、マルチロックシステムを使用(推定)し、残る18機の敵編隊にハイマットフルバーストを決め、各機体の頭部、右腕ないしは両方を吹き飛ばしその戦闘能力を激減させる。

    デバイスの端で時間を確認、1.5戦級の機体とは言え25機の飛行中隊を無力化するのに掛かった時間はわずか2分に満たない。手心を加えなければさらに短縮できただろう。

    アグネス「(凄いわね。私も飛行隊は幾つも潰して来たけれど、ミネルバの援護があるか、僚機がいるか、単機でも奇襲を仕掛けてのことだった。単独で更に母艦を守りながらの戦闘は未知の領域よ)」

    アスラン「キラ…」

    感心していると横ではアスランがしきりに幼馴染の声を呟く。気持ちは分かるけれど、ホモだと誤解されても知らないわよ。

    不殺撃破された18機の編隊は武装だけでなく士気まで折れてカリーニングラードへ撤退していく。アークエンジェルはフリーダムに守られながら北進を継続する。

    アスラン「しかし…。どこに向かっているのだろう?」

    心配顔のアスランがもっともな疑問を口にするので、自分の見解を述べる。

    アグネス「恐らく『最北の不凍港』旧ノルウェーのホニングスヴォーグないしハンメルフェストではないかと。そこから先はノルウェー海ないしバレンツ海に」
    アスラン「そうだな…。それしかない」
    アグネス「はい」

    スカンジナビア王国が地球連合軍の進駐をしぶしぶであれ受け入れたなら、もう彼らはその領土・領海・領空に留まることは叶わない。ユーラシア連邦領内の打通などもっての外。

    となると、このままスカンディナビア半島とフィンランド間に広がるボスニア湾を北上、そこから旧フィンランド-旧ノルウェー間を最短で縦断し海に抜ける。

    アグネス「地球連合軍の進駐先はベルゲン・トロンヘイム・ナルヴィク。ナルヴィクの北はまだ空いています。『戦いを望まないない』ならこのルートしか考えられません」
    アスラン「ああ。うん?」

  • 57二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 03:12:28

    アスランの目線の先、デバイス画面の向こうカリーニングラードに落ち延びる半壊したダガーL飛行隊18機。その内2機が真下の海中から発射されたビームを受け爆散する。あれは…バラエーナ改2連装ビーム砲か!

    瞬きする間もなくバルト海からアビスが飛び出しモビルアーマー形態からモビルスーツ形態に変形、武器を一斉射撃する。持ち上がった両肩部シールド、MA-X223E 3連装ビーム砲が6機のダガーLを撃ち抜き、胸部のカリドゥス複相ビーム砲が更に2個小隊6機を焼き尽くす。

    流れるようにアビスは再変形して海中に沈み、向きを変えるやバラエーナ改2連装ビーム砲を再発射、2機のダガーLが仲間の葬列を追う。

    たった1回息をする間も無く16機のダガーLが空から不自然に消えてしまう。バラバラになった破片が海上を漂うのみ。生き残りの2機は必死に生き残りの道を探そうとするが、先程の戦闘で1機は頭部メインカメラを失い、もう1機は右腕とビームライフルを失っている。

    次の瞬間、海から飛びあがったアビスの両肩シールドが持ち上がり、MA-X223E 3連装ビーム砲が火を噴く。アビスは直後に海に潜り彼らの生命を永遠に深海に引き摺り込んでいく。

    アスラン「ハイネ!」

    幼馴染の好意が無に帰すのを目の当たりにしたアスランは怒気をはらんだ声を漏らす。まあ、見ていて気持ちのいいものでは無かったが仕方ない。わだかまりを残さないようにしよう。

    アグネス「ハイネ先輩は正しい軍事行動をとっています。彼らは武装解除しておらず、降伏も表明していませんでした。各機体は飛行能力と火器を猶も保持していたのです」

    振り向いてアスランの目を見つめつつ、彼に諭す。斜め上の立場の人に『諭す』は恐れ多いけど。ハイネ先輩は卑劣な人間ではない。己の役割をしっかり果たして、作戦に貢献しているだけだ。

    すると彼は目を逸らし、やり切れない感情を漏らす。

    アスラン「理解は出来ても、納得出来ないこともある。俺にだって…」

    というか、アスランそればかりじゃない?とは言わないでおく。拗れてもめんどくさい。

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 03:27:38

    このレスは削除されています

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 03:43:26

    アグネス「はい。確かに…。特に先輩は極端な選択ばかり強いられていますから」

    代わりにそう言って彼に理解を示す。まあ、トロッコ問題を突き付けられ続けているのはこの動乱の時代の人間、特に軍人なら誰しもそうだわ。気持ちが全く分からないわけじゃない。

    おまけに彼は出自からして波乱万丈な人生を歩んでいる。弱音も吐きたくなるというものだろう。

    私の返事を聞いて、やっとアスランの表情がやっと少しマシになる。大規模作戦を前に戦友間の亀裂を生じさせるわけにもいかない。

    そして、私はアークエンジェルとアスランのお守りが本分ではない。話しながらも命令書を書き上げ、ラムシュタット基地のシホ先輩に送信する。

    先ず、情報を。ボーンホルム島での出来事、アークエンジェルを含むバルト海の情勢、現在、私がブリュッセルで遂行している任務。そして最高評議会の決定次第でカリーニングラード攻撃が決行されること。

    アグネス「(もう彼女に伝えられているだろうけど。改めてね。それから講義を一時取りやめ、訓練生に作戦準備を始めさせること。部隊の編成は教育隊を基本にして出撃準備を整えて待機。前線基地と武器・弾薬についての調整も命じる。特にグフの対ビームシールドは1機に付き2枚以上準備。M68 キャットゥス500mm無反動砲も揃える。そこに無いなら、今の内にラムシュタット基地から空輸を、と)」

    この攻撃、敢えて志願制は取らない。そもそもザフトは志願制の軍隊だ。何度も何度も『死んでも良いか?』と尋ねるのは酷だろう。私が死なすのだ。彼らが自分で選んだわけでは無い。

    アグネス「(死なせないけどね)」
    『僚機を失った者は戦術的に負けている』『死体になっても戦友を見捨てるな。皆で帰るか、皆で死ぬか二つに一つ』何度も己に言い聞かす。ボーンホルム島では目の前で戦友を死なせてしまった。正直もうたくさんだわ。

    最後に書き添える。訓練生に戦争法の遵守を改めて強く命じておくこと。世論が高ぶっている今こそね。良し、送信。

  • 60二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 11:28:47

  • 61二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 19:24:45

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 19:33:58

    アスランは頭パンク状態なのは分かっちゃいるが…
    頑張れアグネス、アスランのお守りとツッコミを!

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 00:28:18

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 02:36:24

    命令書送信後、改めてアークエンジェルの戦闘データを調べてみる。バルト海はザフトの偵察機、哨戒機はブンブン飛んでいたからバッチリ記録が残っている。タイムラグはあるものの何が起こったか調べやすい。

    まず、アークエンジェルはボーンホルム島攻撃の一報を受け、直ちにリトアニア、クライペダを出港した。その後、沖に出たところで艦を飛行モードに切り替えてトラブルなく、西ユーラシア連邦領海・領空から離脱、可能な限りカリーニングラードを避けるべく北西方向に舵を切った。

    地球連合軍の攻撃第1波を受けたのはその直後だ。地球連合軍にしてみればこの1回目の攻撃が本命、最大戦力のフリーダムがいないのだから。

    今知ったことだが、彼らは戦力の逐次投入の愚を避け、オーブ近海会戦と同規模の大戦力をその時に投入していた。具体的にはウィンダム・ダガーL混成隊100機とザムザザー1機、更にユークリッド3機と随伴専門のダガーL隊12機まで。せっかく、温存していたのにアホか!

    アグネス「(いや、カリーニングラードで現地生産・現地徴兵もしているだろうから『温存』ではないのかも…。質は下がるだろうけれど)」

    ただ、やはりここで投入された部隊は軍管区本来の兵力と急な東欧とドイツの離反で取り残され落ち延びてきたユーラシア連邦軍を主体とした『まともな』部隊が殆んどだろう。一部にファントムペインも混じっているかもしれないが、何にしろ精兵と言って良い。

    アークエンジェル撃沈を本気で狙った初期の精鋭強襲部隊、だが知っての通り彼らはあの艦に手傷を負わせはしたものの撃退されてしまった。アークエンジェルはローエングリン発射を自制してもやはり強い。そして、やはりムラサメも想定通り強い。あれが量産機でオーブにゴロゴロあるとは!

    アグネス「(主砲の自制はオーブ本国を慮ってのもの。そのせいもあって、アークエンジェルはゴットフリート1番2番を喪失…)」

    地球軍第1波攻撃隊はその戦果の代償としてモビルスーツ隊の4割とユークリッド2機をバルト海の女神ユラテに差し出した。ザムザザーはこの時点では温存に成功しているけど、攻めているのに守りに入ってどうするんだか。他山の石にしよう。

  • 65二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 02:43:58

    そうして止む無く、第1波を担ったモビルスーツ隊は一時、撤退。

    合間を埋めるべく旧式のスピアヘッド、スカイグラスパー隊が作戦に投入された。ラミアス艦長はムラサメ隊をこれ以上戦闘に関わらせるのを躊躇していた風であるが…。しかし、スカイグラスパーがランチャーパックとソードパックを装備していた為、止む無く発艦を許可、と。

    2個飛行隊48機の戦闘機は死力を尽くした。スピアヘッドはアークエンジェルのイーゲルシュテルンを複数門撃破、しかしその引き換えに彼らはCIWSでハチの巣にされて爆散して果てる。小回りの利かないスカイグラスパーはアークエンジェルを捉える前にムラサメの餌食となって1機として帰還することは無かった。

    彼らのあの勇敢な死に意味が付与される日は来るのだろうか?敵味方を超えた軍人同士、『戦友』として、できれば無駄死にという言葉は使いたくない。でも、これがそうでなくて何だと言うのか!?

    敵対する意思のない艦を無暗に追い回して自分から死地に向かって、その結果があれだ!

    これがせめて領土や賠償金と言った『国益』のためならまだ理解できる。和平交渉で有利な条件を引き出すためや本土防衛の時間稼ぎ等の理由でも吞み込める。

    しかし、これ等の戦闘が政財界の一部、ほとんど個人と言っても良いごく一部の人間の保身や野心が理由であった場合はどうだろう。遺族はどうやって心を慰めることが出来るのか。

    アグネス「(もしザフト側で拿捕作戦が決行されて…。それに無様に苦戦すれば傍目からはこう見られるのね)」

    アホらしい。アホらしいとしか言いようがない。戦犯の扱い?ラクスの行方?何とでもなるでしょう!それがあそこで命を投げ出している若者達の人生に勝るとは思えない。

    アグネス「(そして、もう一つ明らかになった事。彼らの戦闘を見るにやはり、キラ・ヤマトの不殺は彼個人の良心によるもの。部隊の方針として共有されてはいない)」

    データを見るに連合機はバンバン墜とされている。対アークエンジェル戦で『でも、いざとなっても不殺してくれるから』と言った甘い見込みは排除しなければいけない。

    その後、再編したモビルスーツ隊が仕掛けた第2波が1波同様粉砕され、ザムザザーとユークリッドが屑鉄となって波間に漂い出す。直後、アスハ代表とフリーダムが帰還する。

  • 66二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 11:28:17

  • 67二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 14:51:29

    陽電子砲封じて、フリーダムいないのにMAの減り方ヤバい
    これが前大戦の「最強」を背負った戦艦か

  • 68二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 16:26:31

    >>67

    これ見てどこかの某腹黒ワカメが「今こそ好機!アークエンジェルを拿捕、もしくは撃沈するのだ!!」とか言い出したら、

    最高評議会で袋叩きにされるだろうな。下手をすれば物理的に。軍部の本音は「じょうだんじゃねえ! ただでさえノルウェー

    がヤバいのに、こんな化け物まで相手にしていられるか!」ってところだろうからねぇ。エンジェルダウンの前にZAFT側の

    戦力がノックダウンされちまうよ。相手は手加減して、手負いですらアレだぞ?本気でなりふりかまわなくなったら……。

    あーこわいこわい。とじまりすとこ。

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 00:45:46

    保守

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 04:00:21

    しかし、第1波の時と同様にアークエンジェル側にも損害が発生している。具体的には副砲110cm単装リニアカノン『バリアントMk.8』2番。これは致命弾を受けたウィンダムが体当たり攻撃を敢行して破壊した。対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』は3回の猛攻で16門中8門が使用不能になっている。

    そして、遂にアークエンジェルの船体にもダメージが発生した。ザムザザーのGAU111 単装砲が4発もろに左舷に命中したのだ。彼の機体が飛行中でムラサメに切り刻まれ、撃ち抜かれ、海面に落下していくさなかに撃ち放たれたものだ。

    アグネス「(敵ながら見事!ノイマン氏が舵を誤ったのではない。先だった戦友のためにもせめて一撃、そう粘っていただろうザムザザーパイロット3人の執念が瞬間的に勝った、と言うこと)」

    大勢の仲間が目の前で撃ち落とされて行くのを目にして『せめて最後に一撃くれてやる』その気持ちは軍人としてよく分かる。理屈じゃない。昔の戦争でも沈みゆく戦艦は最後まで艦砲を撃ち続け、浮上能力を失った潜水艦の乗組員は死ぬまで持ち場を離れなかったもの。

    よくやった!敵味方を忘れて喜んでしまう私は不謹慎だろうか?

    そして結局、失敗に終わった第2波攻撃隊はカリーニングラードに引き上げる。あの大部隊はモビルアーマー全機を失い、ウィンダム・ダガーL隊も僅か2個中隊に数を減じている。

    眼も当てられぬ惨状の渦中、カリーニングラードから駆けつけた増援のウィンダム隊24機が入れ替わりに攻撃を開始し、あっという間にフリーダムに全機撃破される。これはメイリンと一緒に近衛騎兵連隊本部で見たわね。

    偵察機からの追加情報は更に陰惨なものだ。フリーダムに撃破された24機はボーンホルム島東方沖からカリーニングラード帰還を目指した。しかし、彼らをポーランド・グディニャ基地から発進したザフト・西ユーラシア連邦合同隊が強襲し、全機を撃墜済みとなっている。

    大人しく武装解除、降伏をすれば助かったかも知れないのに!

    アグネス「(…良いことだわ。彼らが帰還後、直ぐに戦場復帰するのでは、と私は恐れていた。結構なこと)」

    もう、彼らの状況確認は切り上げていいだろう。そう考えるが頭の中で何かが引っ掛かる。

    さっきのダガーL隊、最初の方に撃破された7機はどうなった?

  • 71二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 04:11:34

    疑問に思って視点を幾つか切り換え、ようやく彼らの行方を知る。あの7機、無事だったわ!

    スカンジナビア王国ゴットランド島の浜辺で王国軍に拿捕されたダガーLを7機が整列している。機体の足元から少し離れた場所に広げられた王国の救護テントの中、パイロット達静かに身を休めているわ。

    ザフト軍は今のところスカンジナビア王国の領海・領空内に足を踏み入れていない。現場はちゃんと自制してくれていた…。

    アグネス「アスラン先輩、キラ・ヤマトに助けられた者の内、7名は生存。ゴットランド島でスカンジナビア王国軍に保護されています」
    アスラン「なに?!」

    アスランは私の顔を押しのけんばかりに覗き込んで来る。やはり『戦いの在り方』をこの人は気にしてしまうタイプなのね。

    アグネス「撤退方向がスカンジナビア王国領空であった幸いしたのでしょう。同じ同盟条約締結国とは言え、既にスカンジナビア王国とユーラシア連邦は半敵対国。大西洋連邦もユーラシア連邦軍のスカンジナビア越境は認めない。しかし、それでも建前上、同盟国ですから」

    だから、彼らは王国の領空に逃げ込んでも撃墜されたり、捕虜にされることは無い。押さえられた機体共々、然るべきルートで後日、祖国に帰還する筈だわ。

    そう話すとアスランの表情が大分、平常時に戻る。おそらく彼から見た私も同じ表情をしていることだろう。世界が仮に残酷だとしても僅かな救いが有ったって良いはず。

    アスランと見つめ合って、何やらほっこりしていると、こちらに近づく足音が聴こえる。カザエフスキー評議員と大使のものだわ。

    アスランと私、揃って起立し敬礼する。それを見た二人も神妙な顔で返礼してくれる。

    カザエフスキー「2通の親書とあなた達が届けてくれたロアノーク大佐・バヤン中尉両名の新情報を本国のクリスタ・オーベルク最高評議会議員に伝達しました。彼女から口から最高評議会に。勿論、アークエンジェルについては強硬策を控えて交渉を図るべきと言い添えています。これは私と彼女が連名で提案することになりました」

    そう言う彼女の表情は少し誇らしげに見える。この方はママより私に年が近いことに思い至る。グラディス提督と同じ位かな。

    アグネス「(最高評議会議員1期目の若い女性政治家。彼女から見て評議会は年上ばかり、おまけに男性が多数派。今の時代、男女は関係ないことになっているけれど…)」

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 04:17:08

    それでも。既に提起された議題ではなく、自分から何かを切り出すことは勇気が必要だったはず。政治的なリスクも背負う。それが彼女の仕事とは言え、相当なご無理を頼んでいたことになる。

    アグネス「本当にありがとうございます。ご無理を言いました」
    アスラン「ありがとうございます」

    返事を聞いて彼女は心なしか胸を張り、傍の大使はやれやれといった風を漂わせる。

    カザエフスキー「しかし―。その先はアプリリウスの会議しだいです。私はこの地で名代としての務めを。それと二人にとって重要なこと、カリーニングラード攻撃は決定しました」
    アグネス「はい!」、アスラン「はい」

    もうここまで来たらやるっきゃない、というやつね。そう言う決め方が良いとは言わないけれど、地球連合軍の対アークエンジェル戦での損耗具合は思った以上に深刻。仕掛けるなら今しかない。

    カザエフスキー「時間がありません。特務隊アグネス・ギーベンラートは親書を持って私と一緒に西ユーラシア連邦理事会本部に向かいます。連邦大統領、首相にお渡ししなさい。
    特務隊アスラン・ザラも同行を。親書をお渡しした後、西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣と会合しなければいけません。これはシュライバー国防委員長とリモート会議になります。私も評議会の名代として出席します。二人も特務隊・現場指揮官代表として参加を命じます」

    アグネス「はい!」、アスラン「はい?!」

    何だか大ごとになっているわね。親書をお届けするということは、考えてみればそう言うことではあるけれど。シュライバー国防委員長、今の会議大丈夫かな?議長に上手いこと丸め込まれていないと良いけれど。

    大使館を出立する前にパイロットスーツを回収、駐西ユーラシア連邦プラント大使と改めて名刺交換をする。カオスとセイバーは-ヘリポートに置かせてもらって…。

    そう思っていると業務鞄を手に持ったカザエフスキー評議員と彼女の秘書官が、てくてく大使館の玄関から歩み出て2機のモビルスーツまで歩いていく。

    アグネス「?」、アスラン「?」

    アスランと私、思いっきり顔を見合わせてしまう。
    カザエフスキー「では、お願いします。私はギーベンラート女史の方。秘書はザラ殿の方で。西ユーラシア連邦理事会本部のヘリポートまで飛行してください。マスコミの取材を受けている時間は有りません!」

  • 73二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 04:30:34

    お偉いさんというのは案外アクティブなものらしい。法的な問題は『戦時+外交官特権』で何とでもなるのだろう。彼女達がその気なら望むところよ。

    アグネス「はい。安全に最大限配慮します」、アスラン「分かりました…」

    敢えて四の五の言わず一つ返事で引き受ける。いろいろあり過ぎて吹っ切れてきたわ。評議員の方も同じなのでしょう。

    近距離なこともあって制服のままカオスに乗り込み、空きスペースに青服姿のノイ・カザエフスキー最高評議会議員にご搭乗いただく。

    初めてのモビルスーツ経験なのか、自分で言い出しておきながら彼女の顔に軽い緊張が見受けられる。この距離なら言ってヘリコプターの移動と変わらない。

    アグネス「カザエフスキー最高評議員閣下、ご準備ください。シートベルトは有りませんがご安心を。私は乗機をまだ3機しか失っておりません」

    そう言って場を和ませようとすると、彼女は私の後頭部に向け大まじめに語り掛ける。

    カザエフスキー「人命優先です。機体はまた造れます」
    アグネス「…ありがとうございます。兵達にもそのように申し伝えます」

    コックピットモニター越しに秘書官を乗せたアスランのセイバーが空に上がり、私の下にもヘリポートからの発進許可が伝えられる。

    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」

    大空に舞い上がって改めてブリュッセルの町を見下ろす。目指す先はヨーロピアン・クオーター。西暦時代のEU諸機関が集中していた地区でユーラシア連邦もそれに倣い国会と官庁街を整備した。彼らがモスクワに遷都して町を投げ出した後、この地は再び欧州の首都となろうとしている。

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 12:36:27

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 20:42:08

    保守

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 01:00:10

    アグネス「美しい街なのですね。小パリと称されていると本で読みました。何でもパリに喩える癖はいかがなものかとも思いますが…」

    カザエフスキー評議員も狭いコックピット内、パイロット座席の斜め後ろで頷き同意して下さる。ただ、その上で一つ付け加えられる。

    カザエフスキー「先日、お会いしたブリュッセル首都圏地域政府首相から『この町にもユニウス・セブンは落ちた』と。赤道付近と比べれば一つ一つは小さな破片でも、あの事件で傷ついた人々がいることを忘れないで欲しいと伝えられました」

    ブリュッセル首都圏地域政府首相とはいわばこの町の市長に当たる存在ね。『ベルギー』は西暦時代からいろいろ複雑な国だから。ベルギー王室がモスクワ遷都に同行せず、『国民の下に』留まって下さったから最悪の事態だけは避けられた。

    しかし、彼女の悲しげな呟きにどう応えればいいのだろう?無視するわけにもいかない。

    アグネス「残念ながら…首相のおっしゃる通りでしょう。破片が小さいとは言っても、謂わば、上空からライフル弾や砲弾が落ちてくるようなもの。大きさによっては車を砕き、頭を貫く威力が有ったことでしょう」

    話をしている間にもカオスはヨーロピアン・クオーター地区上空に到着している。眼下にはルクセンブルク広場と西ユーラシア連邦議会議事堂が見える。議事堂が建つ敷地は、西暦時代は欧州議会が置かれ、後にはユーラシア連邦議会議事堂が建った。更にそれが転用されて今日に至る。

    改めて歴史の転変の激しさを思い知らされる。だからこそ、ブリュッセル首相は、忘れて欲しくなかったということだろう。

    そして、もう一つ。私達にとっては不利なことに-ブレイク・ザ・ワールドの悲劇を地上国家と諸国民は体験として共有している。それはプラント国民が永遠に共有できないものだ。今、味方になってくれている諸国・諸勢力も様々な憤りや悲しみを吞み込んだ上で傍に立っていてくれている。我等が信頼を反故にした場合、燻り続けた炎が燃え上がらないとも限らない。

    それを思えば『人々の心の傷は癒えていない』などと簡単に口に出せるものではない。相手は『お前が言うな!』の一言を必死に口に出すまいとしてくれているかもしれないのだから。

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 01:05:45

    戦線を重ねているのが結果プラントやファウンデーションによるDPを用いた世界征服の布石という爆弾が爆発したら…

  • 78二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 01:14:43

    カザエフスキー「この都市の街角には、まだ故人を悼むポスターや写真が張られています。犠牲者が出た地点を示すように花束や祭壇が設けられている場所も。私は穏健派気取りで、いざ地上に降りたら自分が何も知らなかったのだと思い知らされることばかりです」
    アグネス「はい...」

    憂愁の色を帯びた彼女の瞳が私の横顔に向けられるのを感じる。そうね。私もミネルバに乗って戦火の真っ只中に放り込まれるまで、気づかないことがいっぱいあった。気づけて良かったことも少しは有ったけれど、知らなくて良かったことも多い。

    アグネス「(戻ることができない、という意味では変わらないわね)」
    そして、時代の濁流は人々から悲しみの感情さえも奪い取ってしまう。

    アグネス「今となっては-。戦禍がそのポスターの色さえ奪っていきます。人の死が日常になってしまうと、悼むことさえ人は慣れて、やがて心自体が鈍ってしまいます。それを承知の上でも実行せざるを得ない作戦も存在しますが...」
    カザエフスキー「ええ。分かっています」

    彼女の返事を聞くと会話を切り上げ、西ユーラシア連邦理事会本部の屋上へリポートにカオスを着陸させる。
    脇には先に着陸したセイバーと先に降りたアスランと秘書官、それと出迎えの人達も。西ユーラシア連邦の高官たち。代表は多分、官房長官ね。

    カザエフスキー「ありがとう。さあ行きましょう」
    アグネス「はい。お疲れ様です。足元にお気をつけて下さい」

    シートベルトを外して座席から立ち上がり、彼女に簡易昇降機の使い方を軽くレクチャー。自力で降りてもらう。彼女が今日はスカートでなくて幸いだった。下にはアスランと秘書官が駆けつけてくれている。

    カオスのコックピットから下を見て、カザエフスキー評議員は少し怖がった表情を浮かべられる。意地悪かも知れないが、少し怖がってもらう。皆もっと怖い思いをしているのだから、最高評議会議員にも僅かな欠片だけでも身を持って体験してもらわなくちゃね。

    アグネス「(前線に出ない政治家を臆病者扱いしたいわけじゃない。でも、少しぐらいはその風を知ってもらって悪いことは無いはず)」
    彼女を勇気づけるべく微笑むと少し引きつりながらも好意の籠った笑顔を返して下さる。

  • 79二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 02:01:54

    互いに微笑み合う中、不思議な感覚に襲われる。心が通い合って嬉しい気持ち。

    アグネス「(ザラ派としては彼女は政敵のはずなのに…。私も存外、ちょろい人間なのか)」

    いや、実は人間そんなものかも知れない。裸の付き合い、同じ釜の飯、同じコックピット空間、近い距離で話すと私達は案外ちょろいものなのかも。無論、私と彼女は、大枠で見れば同じ陣営の人間で、かつ同じ社会階層同士だからこそ成り立つ面も大きいだろうけど。

    さて、カザエフスキー評議員も下りた、私も下りよう。

    ヘリポートで出迎えて下さった西ユーラシア連邦高官たちに敬礼し、彼らの返礼を受ける。互いに長い挨拶は省略し、西ユーラシア連邦大統領公式謁見室に案内していただく。

    カザエフスキー評議員は早速、高官たちと歩きながらヒソヒソ話タイムに突入する。彼ら彼女が通る廊下は動く会議室だ。その場で私も折衝に加わる。

    西ユーラシアにもカリーニングラード攻撃の連絡は内々に伝わっている。高官、官僚は情報を入手して対策を練らなければいけない。私の一歩後ろに付けているカザエフスキー評議員の秘書官もその位置から器用にボスと私にアドバイスを続けてくれている。

    特に西ユーラシア連邦の外交と安全保障を担当する西ユーラシア連邦対外行動局の事務総長と事務次官はしつこく食い下がって来る。

    攻撃はザフト軍単独なのか、合同軍として実行するのか?初期攻勢がザフト単独で在ったとして、西ユーラシア連邦軍も呼応する必要があるのか否か。どちらのケースでも陸上部隊参加の有無が大きな問題になる云々。

    カザエフスキー「現段階ではまだ…。この後、国防委員長とそちらの外務・安全保障政策大臣も参加しての会議が…」
    対外行動局次官「バルト三国とポーランドから、地上作戦を行うならこちらも参加するべきとの意見も出ている。その場合、前線を4㎞から15㎞押し込み保障占領し、講和条約締結後、非武装地帯とする約束を取り付けたい、と」

    非武装地帯か悪くはない。4㎞ならかつての朝鮮半島にあった非武装地帯(休戦時のラインから互いに2㎞後退)、15㎞なら昔のイラクとクウェート間の非武装地帯と同じ幅ね。

    『相互に』は嫌だから相手領土内に非武装地帯を設けたい、と。流石に少し気が早すぎるわ。

  • 80二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 02:10:42

    妙な流れになる前に釘を刺しておきたい。

    アグネス「今回の攻撃はあくまでウィンダム・ダガーLを中心としたカリーニングラード航空隊撃破が主目的。それとバルチック艦隊です。陸上部隊に関しては…」
    対外行動局次官「お言葉を返すよう申し訳ないが、陸上部隊こそ本当の脅威です。カリーニングラードの機甲部隊とストライクダガー部隊を何とかしないとポーランドとリトアニア間の連絡が何時まで経っても不安定なまま。ベラルーシのユーラシア連邦軍が回復してくれば挟み撃ちになる、とこちらの軍でも危機感が高まっていますぞ!」

    地上攻勢は主眼ではない!ないが…、リニアガン・タンク部隊とストライクダガー部隊への空襲もしないと流石に収まらないかな。

    カザエフスキー「それも含めてですね。これから協議を!」

    だんだんヒソヒソどころでは無くなって先頭を行く官房長官の顔から冷汗が出てきている。

    微妙に蚊帳の外に置かれたアスランはお気楽モードで後ろから付いてくる。お気楽というか、親書の件に関して彼は公式にはノータッチだから仕方ない。むしろメイリンが着いて来てくれるのが筋道としては正しいのだけれど、非常時なのでやむなし。

    カリーニングラード攻撃については、彼も共同指揮官なのだからもっと積極性を持って欲しいけれど。参加部隊の大部分が名目上、私の訓練生。自分は助っ人と割り切っているのか余裕がないのか。変なことに巻き込んでしまったかも。

    アグネス「(何より、アスランは楽な顔などしていない。いつも以上に苦しそうな表情だわ。アスハ代表の護衛官をしていた時の雰囲気に近いかも)」

    ただ、ここで無力感に囚われてもどうしようもない。この後にこそ彼の本分がある。奮起して欲しい。鬱陶しいバルト海の地球連合軍を粉砕すれば、アークエンジェルにとっても彼らの後ろ盾だったはずのスカンジナビア王国にしても助かるはず。

    公式謁見室前の控えの間で、出迎えて下さった西ユーラシア連邦官房長官から指示が出される。アスランとカザエフスキー評議員の秘書官、西ユーラシア連邦の他の高官はここで待機し、私とカザエフスキー評議員は中に入るようにとのことだ。

    アグネス「(ところで西ユーラシア連邦では大統領と首相、どっちに実権がありますか?)」
    今更ながらな質問をカザエフスキー評議員にこそっと質問する。

  • 81二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 02:19:00

    今更な質問を受けたカザエフスキー評議員は目を丸くして私を見返すが...。今日までこっちも大変だったんだ!

    カザエフスキー「(今も体制は模索中です。現状、権威は大統領、実権は首相です。ただ、今回の場合、西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣がプラントにとっては重要です。さあ、覚悟を!)」
    アグネス「(はい)」

    そう言うとカザエフスキー評議員は一足早く中に入って行ってしまう。てっきり私が従で彼女が主となってお渡しするとばかり思っていた!

    アグネス「(親書はカザエフスキー評議員がお渡しして私は脇で解説する係かと…。そう言えば、『お渡ししなさい 』と仰っていたわね…)」

    柄にもなく緊張して困ってしまう。当たり前か。ぶっつけ本番で国家元首と首相、外相と会見しようなどと正気の沙汰ではない!

    アグネス「(でも…。よくよく考えれば別の国の国家元首とその弟君と会談したばかり。何よりさっき生死の境を潜り抜けたばかりだわ!ビームの雨に立ち向かえたのだからドンとこいだわ)」

    今更、物怖じしてなるものか!

    公式謁見室の扉が内側からもう一度開かれる。

    西ユーラシア連邦官房長官「どうぞ」
    アグネス「ありがとうございます」

    親書をこの時ばかりは自分の心臓より大事に携え、一歩を踏み出す。

    部屋の中にいたのは予想通り、西ユーラシア連邦大統領、首相、外務・安全保障政策大臣。それプラス、大統領補佐官と首相を補佐する官房副長官が2人ずつ計4名。その他、所属が良く分からない官僚が4名。
    軍人としては西ユーラシア・ザフト合同軍から、それぞれの軍出身者1名ずつ。

    入室直後、大統領に敬礼し、彼の返礼を持って姿勢を正すと自分の身体をメトロノームにして出来るだけ堂々と、かつ謙虚に彼の前に進み出る。初めてお会いする西ユーラシア連邦大統領は温厚そうな初老の紳士だ。如何にも『無難な妥協』で選ばれそうな顔立ちをしている。

  • 82二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 02:30:13

    アグネス「西ユーラシア連邦大統領閣下、ご機嫌麗しく。謁見の機会をいただき誠に光栄に存じます。本日、私、ザフト軍特務隊アグネス・ギーベンラートはオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ閣下からお預かりした親書を2通、閣下にお届けします。
    親書の内1通はアスハ代表閣下ご自身の、もう1通はスカンジナビア王国国王陛下のものです。
    アスハ代表閣下は小官が親書をお預かりする際、先日の西ユーラシア政変で故なく殺戮された無辜の民に対し深い哀悼の意をお示しになり、今後も戦災被害者に寄り添い、支援を続ける意思と用意がある旨、ご表明されました。
    また、スカンジナビア王国国王陛下のお言葉もアスハ代表閣下から言付かっております。国王陛下も事態に深く同情の念を御寄せになり、援助を惜しむつもりは無いと仰せになった、と承っております」

    同じ説明をするのは、もう何度目か分からない。でも今回が一番気を使うわね。人の好さそうな大統領は私が話す間、何度か優しそうに頷いてくださった。

    アグネス「(うーん。戦時下の大統領と言うより立憲君主国の君主か聖職者って感じね。大丈夫かな。この人選で…)」

    とは言え、この場に限ってはありがたい話だわ。それぞれの親書を丁寧に大統領閣下にお渡しする。

    親書を受け取って下さった閣下は私にねぎらいの言葉を掛けてくださる。

    西ユーラシア大統領「プラント、ザフト軍特務隊アグネス・ギーベンラート女史。誠にご苦労さまでした。オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ閣下との会談と親書お預かりの場となったボーンホルム島が戦火の荒波に襲われる中、その卓越したリーダーシップと専門能力、顕著な勇敢さを持って事態を乗り越え、こうして私達の下に時流によって一時的に引き裂かれた二つの友邦の情をお届けしてくれました。その功労に深い感謝の意をお伝えします」
    アグネス「ありがとうございます」

    パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。

    その場の方達からやや緊張感の強い拍手を送られる。この緊張感は幸いなことに私への敵意ではなく、急転する事態への恐れに由来するもの。自分も気を抜いている状況ではない。

    状況ではないが-。

    アグネス「(疲れたわ。やっと一つ肩の荷が下りた感じ。任務が一つ完了したわね)」

  • 83二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 08:23:29

    アグネス(ついでにアスランも?)の顔と名前が要職者に広まっていく…これで戦後の出世街道間違い無しですね(良いことかはさておき)

  • 84二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 16:59:14

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 23:38:47

    >>83

    「出世」と書いて「面倒事と苦労が増える」と読む。

  • 86二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 01:31:43

    西ユーラシア連邦大統領閣下に威儀を正して敬礼し、彼からの返礼を受けた後、静かに控室に戻る。私の出来ることは取り合えずここまでだわ。後はそっちの部屋で話し合ってもらうしかない。

    ただ、余り長く時間をかけてもらっては困る。

    アグネス「(次はプラント国防委員長と西ユーラシア外務・安全保障政策大臣、カザエフスキー評議員を交えた会議が開かれる。アスランと私も出ないといけない。待ち時間の間も時計の針は動いていく)」

    カザエフスキー評議員は『時間は取らせない』と仰っていた。どうかその約束が守られますように。

    公式謁見室を退出するとお待ちになっていた高官達が次々、私に中での話を確認してくるが、ありのままをお伝えするしかない。無事お渡しできたこと、申し伝えた言葉、お褒めの言葉を頂戴したこと等。

    彼らへの説明を一段落させ、よろよろとアスランの隣に立って休む。カザエフスキー評議員の秘書官も立っているから3人一緒ね。

    アスラン「お疲れ。身体は大丈夫か?」

    少し疲労の色が滲んで見えたのだろう。アスランが珍しく気を使って私に声を掛けてくれる。出来ればもう少し普段から周囲に気を使って欲しい。

    アグネス「ありがとうございます。乗り切るのみです」

    『大丈夫か?』と聞かれれば、大丈夫ではない。昨日までは車椅子だったのだ。左鎖骨と肋骨の不全骨折は治療途中でコルセットとバンドなしではここまで来られなかった。気だるさと熱っぽさを感じる。間違いなく発熱しているがこれから寒冷地での軍事作戦となる。解熱剤を飲むべきか否か迷う。

    親書をお渡しできたことで張り詰めていたものが切れて疲労感が一気に噴き出している。さっきの考えは訂正する。少なくとも特務隊として直接の上官となる国防委員長と共同指揮官のアスランには自分の体調悪化を報告する義務がある。

    隣に立つアスランにもう半歩近づき耳元に唇を寄せる。彼は驚いたように身を引きかけるが、私の顔を見て身を戻す。変な誤解は無し、仕事モードと察したのだろう。そもそも、私達に誤解の余地はない。

  • 87二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 01:37:26

    アグネス「(報告。気だるさと発熱在り。ただ、指揮と戦闘は可能かと)」
    コソコソ囁く。何事かと聞き耳を立てようとした秘書官を目線で押さえて半歩遠ざける。

    アスラン「(なに!?そうか…。すまない。補おう)」

    心配そうな表情が彼の顔を一瞬駆け抜けるが、衆目がある。直ぐに何時もの仏頂面に戻って嬉しい申し出をしてくれる。フォローしてくれるらしい。共同作戦中は何時もしてもらっているから、何時も通りね。

    コソコソ話を長時間するわけにもいかない。『ありがとうございます』を精一杯、視線に込めてアイサインを送ると、やや優しい表情になったアスランが『分かった』の視線を返してくれる。

    一安心だわ。後、やっぱり今の内に解熱剤を飲むことにする。アスランの影に入ってさり気なく業務用鞄から錠剤を取り出し、高級栄養ドリンクと共に胃袋に流し込む。

    アグネス「(病院の先生に知られたら張り倒されるかも。でも戦時故に止む無し)」

    そんなことをしていると公式謁見室の扉が開き、大統領と首相、外務・安全保障政策大臣そしてカザエフスキー最高評議会議員が姿を現す。

    控室の空気が一瞬で張り詰め、皆は姿勢を正し、私達は敬礼する。大統領の目礼を受け姿勢を正し次の指示を待つ。

    西ユーラシア大統領「親書を受け、改めて実りの多い話し合いが出来ました。カザエフスキー最高評議会議員に感謝します。届けて下さった特務隊ギーベンラート女史にも。これより実務者協議とのこと。よろしく頼みます」

    肝心な話し合いの中身はどうなのだろう?あんまり時間は立っていないから『詳しくは実務者同士で!』と言った決定なのだろうか。

    首相「官房長官はカザエフスキー最高評議会議員と特務隊ザラ殿、ギーベンラート女史を会議室まで。外務・安全保障政策大臣も同行しなさい」
    官房長官「はい」
    外務・安全保障政策大臣「はい」

    首相の指示を受けて、官房長官がカザエフスキー評議員と外務・安全保障政策大臣と共に歩みだす。アスランと私、秘書官もそれに続く。

    大統領と首相は私達を見送ると自分達の執務室に向かい、高官たちは大統領と首相の下に協議に向かう者と私達について大名行列を再スタートさせるものとに分かれる。

    何にしろ、どちらでも会議と協議と折衝が始まるのだ。現実は何とも緩慢で散文的ね。

  • 88二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 01:46:22

    対外行動局次官「会議ではどのように?地上作戦をギーベンラート女史はご提案されますか?」

    そこに関しては私の権限を越えた話だわ。そして自分の答えはさっきも言った通りだ。

    アグネス「小官の権限の範疇を超えたお話です。ただ、提案時の目標はウィンダム・ダガーLを中心とした航空隊とバルチック艦隊でした。無論、プラント国防委員長が機甲部隊とストライクダガー部隊に攻撃をお命じになれば、完遂するのみです」

    その場合は新たに攻撃目標が3つ増える

    1つ目はリトアニアとの国境、ネマン川南岸の都市ソヴィェツク。機甲師団(ブルドック中隊を含む)とストライクダガー連隊が駐屯している。

    2つ目はリトアニア・ポーランド国境に近くカリーニングラードから東に124㎞の都市グセフ。機械化歩兵師団(自走リニア榴弾砲大隊を含む)とストライクダガー連隊が駐屯中だ。

    3つ目はポーランド国境のバルト海沿いの都市マモノヴォ。機械化歩兵師団(ブルドック中隊を含む)とストライクダガー連隊が配置されている。

    場合によってはカリーニングラード東方89㎞の都市チェルニアホフスクに配置されている装甲師団・機械化歩兵師団・ストライクダガー連隊・対空連隊の相手もしなければいけない。

    チェルニアホフスク飛行場にはダガーLが連隊規模で駐屯している。だから、ここについては仕掛けるつもりではいた。しかし、地上部隊まで、となると難易度が一気に上がってしまう。

    アグネス「(私が当初考えていたのはカリーニングラード州の中でもバルチ―スク、フラブロヴォ空軍基地とカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地、チェルニアホフスク飛行場の4箇所を強襲するもの。正直あまり手を広げたくない)」

    バルチ―スクはバルチック艦隊の主要基地が存在する。今のバルチック艦隊の陣容は戦闘艦34隻、掃海艇や揚陸艦、その他艦艇59隻。
    基地は多数のトーチカで要塞化、機械化歩兵師団とストライクダガー連隊、中隊規模以下の対MSヘリコプター部隊で守られている。

    アグネス「(フラブロヴォ空軍基地とカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地、この2箇所には、偵察機の情報によるとそれぞれ連隊規模のウィンダム・ダガーL隊が駐屯している)」

  • 89二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 02:07:14

    因みにカリーニングラード市にはユーラシア連邦軍カリーニングラード軍管区司令部が所在する。無線傍受搭も存在し、輸送連隊2個も配備されている。対空師団1個と防空連隊1個、機械化歩兵1個師団、対MSヘリコプター連隊、ストライクダガー連隊が駐屯している。

    ここを無力化出来れば大金星だが、どうかな。本命はカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地、欲張りすぎてもいけない。

    アグネス「(ドンスコエについては-。対MSヘリコプター2個連隊が配備され、対空連隊とストライクダガー中隊が守備に就いている。出来れば叩きたいと思っているけど、優先順位は高くないわ)」

    対外行動局次官「お話を聞く限り、敵の守りは固い。セカンドステージシリーズと1個航空団をもってしても厳しいのでは?」
    アグネス「はい。しかし、小官なりに勝算があって提案しました。あくまで当初の案については、ですが」

    そう、私にはそれなりの勝算がある。まず、カリーニングラード州の空を守る航空隊は馬鹿な指導者達の都合で擦り減り続けている。せっかく倉庫から引き出した旧式機さえも。

    アグネス「(そして擦り減っているのは機体だけではない。アークエンジェル戦で墜とされたパイロット達はこの軍管区の精鋭たち。機体以上に優秀な人材を超短期間で浪費してしまった。深すぎる痛手のはず)」

    そして同時に、残され生き残った2級、3級パイロットの士気もすり潰されている。上層部の意味不明な采配で昨日までの仲間や先輩、上官が死んでいったのだ。メンタルを安定させて飛べる筈が無い。

    一方、こちらは士気旺盛、何しろデストロイと戦う覚悟で集った訓練性だ。火にも水にもビームの雨にも飛び込む覚悟でラムシュタット基地に足を踏み入れた者達だ。アスランと私、シホ先輩が彼らを率いれば、フラブロヴォ空軍基地とカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地、チェルニアホフスク飛行場の奇襲攻撃は成功させる自信がある。

    バルチック艦隊に関しては、一番の脅威だった潜水艦部隊6隻をハイネ先輩達が全滅させてくれている。ずっと心配だったフォビドゥンヴォーテクスも今日沈めた。

    アグネス「(少なくても今日だけはバルト海にフォビドゥンヴォーテクスは居ない。あの機体の生産数を私は知らない。増産中かもしれない。でも、もし、もう1機いたなら是が非でも沈められた機体の救援に来たはず)」

  • 90二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 02:21:34

    それが来なかったのはこの海には配備されていなかったから。だから、今日に限りバルト海は『我等の湖』になっている。今のバルチック艦隊は逃げるに逃げられずバルチ―スクに閉じ込められているだけ。

    しかも、フォビドゥンが沈むまでバルチック艦隊の方が中途半端に優勢だったから、港湾の機雷敷設も間に合っていない。
    艦隊に攻撃を仕掛けるなら今しかない。

    そうお伝えすると次官殿も感心したように同意して下さる。さはさりながら、地上部隊への空襲もして欲しそうになされているのは困ったものだわ。

    官房長官「こちらです。カザエフスキー・プラント最高評議会議員閣下、外務・安全保障政策大臣、特務隊アスラン・ザラ殿、アグネス・ギーベンラート女史、会議室の中にどうぞ」

    ザ・会議室と言った部屋に案内される。普通の会議室との違いを敢えて挙げるなら、絨毯や椅子や机が高級なくらいね。

    カザエフスキー、アスラン、アグネス「ありがとうございます」

    皆で官房長官にお礼を言い、次官殿達と廊下でお別れする。秘書官殿はまた外で待つ。部屋に入る際、アスランは一瞬彼女に向け共感とも同情ともつかぬ表情を浮かべた。オーブでのことがやはり彼の心残りとなっている。

    中に入るとプラント国防委員長の席にはリモート用の画面が広げられている。暗い画面を見た瞬間、心配が噴出する。

    アグネス「(アプリリウスはどうなったのかしら?問題が増えていませんように!)」

    皆が席につき、暫くたつと画面が明るく点灯、口髭の紳士(と言うには血の気が多い)タカオ・シュライバー国防委員長が宙の向こうから顔を覗かせる。

    アスランと一緒に敬礼し、返礼を受けていよいよ協議開始ね。

  • 91二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 09:23:53

    この攻撃成功させると対ロゴス同盟への参加を打診した東アジアがジブラルタルに向かい易くなってヘブンズベース攻略の血路が開ける
    そしてAAはネオとスウェンと言う爆弾抱え込んでて消耗してるから今なら武力行使しなくても政治的にどうとでもできて動きを封じられる
    どう転んでも議長が得するやん!

  • 92二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 12:07:15

    >>(アプリリウスはどうなったのかしら?問題が増えていませんように!)

    フラグ「ピコーン!」

  • 93二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:15:13

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:07:59

    嫌なことに

  • 95二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 02:32:46

    シュライバー「お集まりいただき感謝いたします。西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣閣下、カザエフスキー最高評議会議員。貴重なお時間を、感謝いたします」

    シュライバー国防委員長が事実上の初めの言葉を述べ、それにご両人がお答えする。

    外務・安全保障政策大臣「こちらこそ。お時間をいただき感謝します。タカオ・シュライバー国防委員長閣下。ノイ・カザエフスキー最高評議会議員閣下も」
    カザエフスキー「外務・安全保障政策大臣閣下、ありがとうございます。シュライバー国防委員長、お疲れの所、ご苦労様です」

    挨拶は大事ね。アスランと私もそれぞれの席から会議の流れを見守る。

    するとシュライバー国防委員長の視線が私に向き、お声を掛けて下さる。

    シュライバー「特務隊ギーベンラートも親書の件、よく頑張ってくれた。体調はどうかな?」
    アグネス「ありがとうございます。体調に関してこの場を借りてご報告を。倦怠感があり、発熱しています。幸い戦闘と指揮に差し支えるほどではありません。解熱剤を飲んで対処しました」

    そう告げるとその場の視線がぎょっと集まるが隠しても仕方ないことよ。むしろ、報告する義務がある。

    シュライバー「そ…そうか!怪我を押しての祖国への貢献、誇らしく思う。差し支えないなら大丈夫だな?」

    シュライバー国防委員長はアスランに質問を投げかける。それに彼は端的に返答をする。

    アスラン「彼女に関して心配はありません。もし不調に気が付いたら私がカバーします」

    アスランの返事を聞き、国防委員長の不安そうな表情が晴れる。やはり戦士としてのアスラン・ザラは大いに頼りにされているらしい。

    シュライバー「よろしい。では-。外務・安全保障政策大臣閣下、ザフト軍はギーベンラート教導航空団とハイネ・ヴェステンフルス率いるミネルバ、アビス・アッシュ隊を主力としたカリーニングラード強襲作戦を本日決行いたします。月軌道艦隊からはアッシュ隊の他、ガイア・バクゥハウンド隊も参加予定です。ガイアには特務隊ルナマリア・ホークが搭乗します」

    ほう!ルナマリアはグフだけでなくガイアの訓練もやっていたのね。私が入院している間も当然ながらみんな頑張っていてくれたんだ。

    アグネス「(嬉しい誤算ね。バクゥハウンド小隊も頼りになる。でも、飛べないから投入するタイミングを誤れば死なせてしまう。気をつけないと)」

  • 96二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 02:43:24

    ルナマリアに何かあればメイリンに合わせる顔が無いし…。何より私は後悔の念に囚われたまま生涯を過ごすことになる。そんなのは御免よ。

    シュライバー「他の月軌道艦隊は大気圏外から補給物資の投下等で支援を。旗艦ミネルバはボーンホルム島支援を一旦切り上げて、ゴットランド島沖まで東進し、ストックホルム・スカンジナビア情勢とサンクトペテルブルク・レニングラード軍管区双方を牽制します。そのため、攻撃に直接参加は出来ません。しかし、情勢次第では武器弾薬電力の補充、デュートリオンビーム送電システムを用いた支援を実行できるよう備えを命じます」

    少し怪しい発言が飛び出したところでカザエフスキー評議員が質問を投げ掛ける。

    カザエフスキー「スカンジナビア王国への牽制とは?最高評議会に親書は電子送信したはずです。王国への直接武力行使には反対します」
    シュライバー「カザエフスキー評議員、誤解しないでください。最高評議会と国防委員会は現段階でスカンディナビア半島への侵攻を予定していません。ここで言う牽制とは、地球連合軍ノルウェー進駐部隊のスカンディナビア半島上空通過をプラントは許すことはできない、と王国にメッセージを送ると言う意味です。会議の結果、それがレッドラインと言うことになりました」

    国防委委員長はカザエフスキー評議員にアプリリウスでも決定を少し詳しくお伝えしている。

    カザエフスキー「最高評議会の決定とあらば、異論はありません」

    まあまあ妥当な結論と思ったのか彼女もそれ以上は喰い下がらない。私もここらが落としどころというのには同意だ。

    アグネス「(要は『親書は確かにお受け取りしました。スカンジナビア王国がプラントに友好感情を維持していること、ノルウェー進駐受諾は強制された止むを得ない決定であったと理解します。しかし、もしノルウェーの地球連合軍が半島上空を飛行してバルト海まで攻撃の手を伸ばすことがあれば、容認できない。それだけは絶対に阻止してください。このラインを越えればプラントはスカンジナビア王国侵攻に踏み切ります』と言うことね)」

    そしてミネルバはゴッドランド島沖まで東進、ストックホルムとヘルシンキを睨みその存在感でこちらのメッセージを伝達する。ゴッドランド島沖まで来ればサンクトペテルブルクに圧もかけられる、と。

  • 97二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 02:53:45

    問題はその後、シュライバー国防委員長の口からやや高慢ともとれる言葉が西ユーラシアの代表に投げかけられる。

    シュライバー「外務・安全保障政策大臣閣下、プラントはボーンホルム島支援を打ち切ろうと言うのではありません。救援は現地部隊が継続します。誤解なきよう。そしてスカンジナビア王国に対する貴国の外交・戦争方針をプラントと共有いただきたい」

    アグネス「(ちょっと!国防委員長、高圧的に話したらダメよ!属国視していると思われたらどうするの!?)」

    どうもさっきから国防委員長の口調、というかイントネーションが気にかかる。武官特有の軍隊っぽい口調が抜けていない。わざとではないのだろうけれど、誤解を招きかねない。

    それに対し、外務・安全保障政策大臣は表向き穏やかに快諾して下さる。

    外務・安全保障政策大臣「プラント、ザフト軍の姿勢は承知しました。協力を惜しみません。ただ、『共有の度合い』については閣議で図る必要があります」
    シュライバー「了解しています」

    満額回答に近い。しかし…。同じことを心配したらしいカザエフスキー評議員が慌ててフォローに入る。

    カザエフスキー「閣下、今回の事態、私達も大変困惑しております。国防委員長がお伝えした本国の結論はあくまで現時点のもの。以降、仔細を詰めていきましょう。私も評議会の名代として暫くブリュッセルに滞在しますので」
    外務・安全保障政策大臣「ご配慮、感謝します。両国の国益にかなうよう協力関係を発展させましょう」

    私の慌てぶりとカザエフスキー評議員のフォローを聞いて国防委員長もようやく自分の失敗に気づく。一瞬ばつの悪そうな顔をした後、表情と声を整え彼なりの誠意を込めて話す。

    シュライバー「ありがとうございます。カザエフスキー評議員、デュランダル議長が地球に降りるまでどうかよろしくお願いします」

    外務・安全保障政策大臣「なんと!?」
    カザエフスキー「え?議長が地球に…。なぜ?」
    アスラン「なぜ!?」、アグネス「(本当に何で?)」

    さり気なく爆弾発言を投下したシュライバー国防委員長は私達の怪訝な反応を受けて慌てて訂正にかかる。

  • 98二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:02:08

    シュライバー「いえ…。今日明日のことではありません。ただ、そのようなニュアンスのことを口にされたので。カザエフスキー評議員、そう言う話が有ったと言うだけです。オーベルク最高評議会議員は反対しているから。直ぐにという訳ではないでしょう」
    カザエフスキー「はあ…。分かりました」

    セーフか、いやアウトだ!私の中ではね!
    どの面下げて地球に来る気なんだ!あの腹黒議長は。

    アグネス「(世界の混乱の全てを彼に帰すのは公平ではないかも知れない。陰謀の有無や程度も今の私は知りようがない。ただ、対ロゴス戦宣言に誘発された出来事の何分の一かは彼が責めを負うべきなのに)」

    あの男は英雄気分でシャトルから降りる気か。王の帰還みたいな顔をして。そうして偉大な為政者として世界に改めて自分の存在感を示した上で…。

    アグネス「(落ち着け。明後日のことは後で考えよう。今日を生き残ること、皆を生き残らせることに集中しないと!)」

    ともあれ、対スカンジナビア王国外交の方針については理解した。今のところは王国相手に戦争を仕掛けるつもりはない、と。形式的には今も交戦中なんだけどね。

    シュライバー「ザフト軍はカリーニングラード攻撃に関して、西ユーラシア連邦軍に基地の使用と補給・整備等、後方支援を要請します」
    外務・安全保障政策大臣「それについてですが。バルト諸国とポーランドはカリーニングラード国境線に緩衝地帯設置を望んでいます。無論、こちらの領土として併合する意志はありません。新しい講和条約後、主権はユーラシア連邦に返還した上で非武装地帯にしたいと。ユーラシア連邦に残留したカリーニングラードとベラルーシ間のスワウキ回廊は西ユーラシアのアキレス腱。現時点でベラルーシのグロドノとリダは合同軍が保障占領中なので幾分、回廊の厚みが増してこそいますが…。非常に危ういことに変わりは有りません」

    やっぱりその話が出るか…。嫌だな。地上作戦を大規模に行うだけの余裕は西ユーラシアにもないはず。この前の戦いはこちらにとって祖国防衛戦だった。もしカリーニングラードに攻め込めば住民が一致団結して彼らの祖国防衛戦争を戦いかねない。

    アグネス「(泥沼の地上戦やめんどくさい都市攻防戦は避けたい)」

    シュライバー国防委員長は私とアスランに目線を投げ掛けるが、断固反対だわ。反対ではあるが、友邦の危機感はもっともな面もある。

  • 99二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:22:48

    それでも伝えなければならないこともある。

    アグネス「地上部隊を含む全面侵攻に小官は断固反対です。地球連合軍とロゴス、ブルーコスモスを団結させるだけかと。ロゴスの悪事は条約締結国間でも広まり共通認識となりつつあります。ならばこそ奴等に『英雄都市』を与えてはなりません。ただ、ご懸念はごもっとも。ユーラシア連邦軍の野戦軍にも一定の打撃は与えたいと思います」

    私の隣のアスランも頷く。カザエフスキー評議員も私の言に相槌を打ち、大規模な地上侵攻作戦に反対の意を暗に示す。

    ここまで来るとシュライバー国防委員長も外務・安全保障政策大臣も異論は挟み辛い。

    シュライバー「機甲師団や機械化歩兵、ストライクダガー隊にも攻撃は決行されるとのこと。この攻勢はそれで収めてください。基地の利用と後方支援、万が一の逆侵攻への備えを改めて要請いたします」
    外務・安全保障政策大臣「分かりました。地上部隊に十分な打撃が加えられるという認識の下、要請に応じます」
    シュライバー「感謝します」

    話がやっとまとまったわ。速くシホ先輩と連絡を取らなくては!

    シュライバー「ああ。それとアークエンジェルについてですな。強硬策は一旦取り下げと決まりました。こちらの保護下に入るよう勧告をまず彼らに通知することに。アスハ代表閣下は国賓として手厚くお迎えする、オーブ軍籍者も捕虜とは扱わず賓客として遇し、アークエンジェル・クルーやパイロットも同様とする、と。戦犯は虐待防止に努めるとプラントが確約を。オーブ問題に関してはその後、アスハ代表閣下達と協議すれば良いと話がまとまりました」

    何でもないように国防委員長はとんでもないことを言い出す。この人が言い出したわけでは無いかもしれないが…。

    アグネス「(しかし…。うん?うーん…。拿捕から保護になったのか…。具体的にどう変わるんだ?)」

    アスラン「それは…!?どうして!」

    地蔵と化していたアスランが変なリアクションを取り出したわ。自分が驚く暇が無くなって、冷静になれる。ありがたいのか、ありがたくないのか…。

    外務・安全保障政策大臣「戦犯の身柄はこちらに引き渡していただきたい!」

    やはり西ユーラシア連邦はアークエンジェルよりも憎きファントムペイン構成員の方が重要なようだわ。ロアノーク大佐は東欧の虐殺の現場指揮官だからね。

  • 100二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:43:59

    アグネス「(これは…。責任能力の話なんてしようものなら、世論は大荒れね)」

    通常の犯罪でもしばしば紛糾する問題なのに!
    バヤン中尉も程度は下がるが憎しみの対象なのは間違いない。果たして国際法廷は、どこまで彼の情状を酌んでくれるだろうか。少なくとも両名とも西ユーラシア連邦単独の留置施設には送るべきでは無い。

    アグネス「(というかまず国際法廷の準備から始めないといけない。容疑者の収容施設の運用もプラントと同盟諸国で国際組織を作ってそこに任せないといけない。検察も裁判官も国際組織で-。凄い手間だけど仕方ない。彼らだけの問題じゃない)」

    ロゴスメンバーにファントムペイン構成員、ブルーコスモス派地球連合軍人で戦争犯罪や人道犯罪に関与した者達の逮捕、取り調べ、裁判。裁判の後、処刑される者はまだ良い。いや、良くはないが...。

    アグネス「(懲役刑、終身刑になった者にも人権がある。一定の制約の下だけどね。彼らを虐待から守りつつ更生させ再教育を受けさせないといけない。社会復帰の訓練も。しかも、それを多国間で調整しながら。頭が痛くなるわ)」

    いけない。明後日のことは後回しだわ。西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣の剣幕にシュライバー国防委員長はすっかり押されている。

    シュライバー「いや…。人道犯罪者・戦犯の身柄は今後の協議で…」
    カザエフスキー「しかし、拿捕と保護ではどう違うのです!」

    カザエフスキー評議員がズバリ、アークエンジェルについて質問して下さったわ。返答をお待ちしよう。

    シュライバー「違いは…。事前交渉の有無ですな。カリーニングラード戦に一段落着いた時点でゴットランド島沖のミネルバにアークエンジェルの後を追ってもらいます。ミネルバとアークエンジェルで直接、回線を繋いで、グラディス提督に呼び掛けてもらおうと議長がご提案にされたので、一応、ウィラード隊も援護に向かわせようと」

    ウィラード隊いるならカリーニングラード戦に投入してよ!無理か、貴重な予備兵力だし。

    アスラン「そんな…。キラ…」

    隣でアスランが深刻な顔で呟く。気持ちはわかるけど、他国の大臣の前で止めて欲しい。本当に頼むわ。

  • 101二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:59:44

    そもそも、最高評議会は知りようがない情報ではあるけれど、交渉は一旦決裂してしまっている。あの時より切迫したこの局面、果たしてうまくいくだろうか。追い詰められているからこそ乗ってくれるかもしれないが…。

    アグネス「(それに亀の甲より年の功。二十歳に満たない私達より、グラディス提督とラミアス艦長の大人組の方が話が纏まるかも知れない。20代の女性に『年』は失礼かもしれないけれど、私達はきっとまだ幼い。彼女達だからこそ導ける結論もあると思う)」

    それに、この際、本質的な解決は先送りでも構わない。今日、強硬策を避けられるかどうかが重要なのだから。時間稼ぎが出来ればまた、良策も浮かぶはず。

    アグネス「(ただ、ラクス暗殺未遂のことがあるから…。落ち着け、最高評議会で話した上での結論ならもう動かせない。それに考え方しだいでは、国が公に決めたことで議長の好き勝手が出来る余地をなくすことが出来たともいえる)」

    アスラン「…」

    アスランの顔がヤバい。ヤバいが私と目が合うと必死に取り繕ったような表情を浮かべてくれる。そう、それでいい。アークエンジェルのことは次の次のこと。私達は次のことに文字通り命をかけるべきだ。

    最後の最後でひと悶着を起こしてしまったシュライバー国防委員長は、ひとしきり外務・安全保障政策大臣とカザエフスキー評議員に釈明する。アークエンジェルを保護した後の『オーブ亡命政権』の国際的地位に関して激論が始まりそうになるが、カリーニングラード戦も迫っているので一旦、会議は打ち切られる。

    シュライバー「えー…。大変有意義な時間を過ごすことができてうれしく思います。西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣閣下、プラントは貴国との協力関係がより堅固なものになると確信しています。カザエフスキー最高評議会議員、現地でのご奮闘、国防委員長として感謝申し上げる。特務隊アスラン・ザラ、アグネス・ギーベンラート、プラントは君達が義務を尽くすことを期待する。健闘を祈る」

    外務・安全保障政策大臣「ありがとうございます。貴国と我が国との関係強化を本職も心底より願います」

    カザエフスキー「この地で今しばらく本分を尽くします」
    アグネス「はい!義務を果たします」、アスラン「はい…」

    画面の向こうの国防委員長に敬礼すると彼も返礼し、会議はお開きになる。頭がパンクしそうだわ。

  • 102二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 10:04:30

  • 103二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 18:05:49

    保守

  • 104二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 19:33:33

    原作のエンジェルダウン作戦でも、ミネルバは事前に投降要請してなかったっけ?Gジェネだけ?
    でもプラントの誰を信用していいか判らないAA組にとっては、投降にしろ保護にしろ、言われても応じられないよな…

  • 105二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 19:39:21

    >>104

    原作だとグラディス艦長が独断で投降呼びかけはしてた。

  • 106二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:45:31

    会議室から退出し、私とアスランはそこでカザエフスキー評議員と秘書官、西ユーラシア連邦外務・安全保障政策大臣と高官達に暇乞いをする。

    彼女達には別の大臣級会合が残っている。幸い大使館から迎えの車は着いているから、彼女達の帰りの足を心配する必要はない。

    今の世界の在り方、アークエンジェルのこと、議長の思惑、ロゴスの動向etc。それらについて思うこともある。考えなければいけないこともある。しかし、刻々と移ろい変動する情勢は私達に『最善の一手』を繰り出す時間を与えてなどくれない。

    アグネス「(その時その場の次善を己の最善とするべく努めるだけよ。多分、『敵』にとってもそれは同じ。次善と次善のぶつかり合いなら、最後まで諦めず思考を手放さなかった方が勝つ!)」

    無論、元から『力』がある者同士の話だけど。この場合、私はどちらかと言えば力がある方の人間だと思う。『力のある者同士』の中でどうなのかは分からないけれど。

    西ユーラシア外務・安全保障政策大臣「ザフト・特務隊が果たさんとする西ユーラシアの安全と平和への貢献に感謝します。どうか、ご武運を」

    アグネス「ありがとうございます。祖国と友邦の自由と平和と繁栄のため挺身する覚悟です」
    アスラン「…はい」

    大臣閣下の激励に力強くお答えし、西ユーラシアの皆さんに敬礼をする。やや、間を置いてその場の全員が返礼して下さったので姿勢を戻して次は自国の最高評議会議員にご挨拶ね。

    アグネス「カザエフスキー最高評議会議員閣下、特務隊アスラン・ザラ、アグネス・ギーベンラート、行ってまいります」

    本当は年長者かつ先任のアスランが言うべきところなのだけれど…。彼の頭は今、軽く錯乱状態になっている。それは表情を見ただけで明らかなので、止む無く私が2人分のご挨拶をする。

    カザエフスキー「ザフト軍と特務隊の貢献に感謝を。吉報を待ちます」
    アグネス「はい!」、アスラン「はい…」

    そう言って二人で敬礼すると、彼女は右手を差し出して下さる。チラッとアスランに視線を投げ掛け、先ず彼に握手を促す。

  • 107二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 02:54:23

    カザエフスキー「特務隊アスラン・ザラ、どうもありがとうございます」
    アスラン「はい。分かりました」

    何がどう分かったんだろう?まあ、決意表明ね。彼女は次に私に手を差し伸べて下さるので、その柔らかい掌を握り返す。

    カザエフスキー「ご武運を。これを…」
    アグネス「?」

    身体が近づき、周囲から死角になる瞬間に、カザエフスキー評議員は私の左ポケットに名刺のようなものをそっと差し込む。気が付かないふりをして、互いにそっと手を離し、アスランと二人で屋上へリポートに向かう。

    ヘリポートには出迎えの時よりワンランク下の官僚たちが見送りに来てくれていた。次官補に当たる人達ね。まあ、悪い気はしない。

    カオスに乗り込みコックピットモニターを起動、パイロットスーツに着替えつつ、通信回線をラムシュタイン空軍基地の教官室に繋ぐ。コールしつつ、脱いだ制服のポケットを確認する。やはり名刺だった。『必要とあらばご連絡を』と。素直な好意と取るべきね。

    シホ「ギーベンラート教官!?いえ、ギーベンラート隊長!会議の結果はいかがですか?」

    ビックリしつつ回線に出てくれたシホ先輩、直ぐに几帳面な彼女らしい挙措で敬礼してくれるので素早く敬礼する。一発で彼女が出てくれるとは幸先が良い。

    アグネス「(特別強化訓練課程、改め『ギーベンラート教導航空団』が実戦投入されるから-。私の名乗りがまた『隊長』に戻ったわけね)」

    モニターの向こうの教官室はさながら戦場だ。学校の職員室が突如、航空団司令部となってしまったみたいな感じね。本物の司令部は別にあるけれど、分室でもこの修羅場とは!

    情報共有のためセイバー、アスランとも回線を固定する。一瞬、彼は驚くが状況を察知し、戦士の顔に戻る。良し、1000000アグネスポイントね。

    アグネス「ハーネンフース副隊長、端的にお伝えします。カリーニングラード攻撃は決行されます。最高評議会で決定済みです。特務隊アスラン・ザラは私と共同指揮を…」
    アスラン「建前上、そうなっているが混乱させたくない。指揮はアグネスが、俺はそのフォローだ!」

    アスランが早速、フォローしてくれる。ありがたい、この問題は揉めるとややこしいから。

    アグネス「副隊長、航空団の大まかな状況を確認したい。皆の士気は?心身に不調が見られるものは参加させられない。国際法・戦争法の遵守を誓えない者は論外で」

  • 108二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 03:04:13

    意地悪で言うわけでは無い。皆を生かして返さなければいけないから、最初から不調な者は残ってもらう。法律守れないやつはアカデミーからやり直せ!

    シホ「驚いている者もいました。ただ、士気は旺盛です。心身故障者なし。100名と私を含む5名の副教官と補助教官、皆戦えます。国際法・戦争法の遵守を呼びかけ、訓練生たちもそれに応じてくれました」

    良し!まあ、朝会った時、皆、元気そうだったから、これは確認だわ。

    アグネス「ありがとう。安心しました。物資の手配は済んでいますか?」
    シホ「はい。ポーランド北部マルボルク市所在の第22空軍基地、リトアニア北部シャウレイ市シャウレイ空軍基地に物資を集積してあります。また、バクゥハウンドも参加とのこと、ポーランド国境に近いブラニェヴォ市の基地でウィザード換装可能なように取り計らっております」

    パーフェクト!流石、シホ先輩、この手際、凄いわ。

    アグネス「本当にありがとうございます。もう、ご存知のように、ハイネ隊、潜水部隊アビスとアッシュとルナマリア隊、ガイアとバクゥハウンドも共に戦います。そちらの状況は?」

    ハイネ先輩はともかくルナマリア達のその後の動きまでは把握していない。ボーンホルム島の救援どころでは無くなってしまった。

    シホ「ルナマリア隊の現在地はポーランド・グダニスク市です。ミネルバの輸送力も用いて空路と陸路を進み既に到着。ハイネ隊の正確な所在は伏せられていますが、グダニスク湾を中心に活動中。ただ、カリーニングラードとポーランドに跨るヴィスワ潟で機雷敷設を図った敵中小艦艇、3隻の撃沈が報告されています。少なくともアッシュ1機はヴィスワ潟の中に」

    きびきび、お答えくださるシホ先輩を本当に頼もしく感じる。もしかしたら私はこの人の下で戦う未来も有ったのかもしれない。若しくはイザーク先輩の元で轡を並べて-。

    アグネス「(怖いからそれは勘弁だわ。イザーク先輩は悪い人ではないんだけどなぁ)」

    それにしても、ヴィスワ潟はバルチック艦隊を怖れてポーランド(西ユーラシア)側が防御的機雷封鎖をしていた。機を見るや逆に打って出るとは、ザブマリナーの決断力は凄い。

  • 109二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 03:18:46

    ただ、感心してばかりはいられない。見送りの人を機外で待たせては居られないから。

    アグネス「教導航空団は、先に伝えたように教育班を転用した4個中隊で編制します。編成の微調整は現地で。中隊長は補助教官に任せます。アカデミー繰り上げ卒業組が多数所属する第4中隊には副隊長が付き添って下さい。その編成で、まずはポーランド・マルボルク市の第22空軍基地に向け移動を開始せよ」
    シホ「はい!」

    私達の通信を駆け付けた補助教官-ギーベンラート飛行隊からの仲間-が画面の前に集合する。

    アグネス「皆、突然のこと驚いたと思うが、バルト海の安寧は我等の肩にかかっている。戦時下の移動、訓練生には戦闘は既に始まっている旨、強く伝達しなさい。皆も気をつけて下さい。アスラン先輩と私もシャトルで向かいます。1時間20分後、現地で合流せよ」
    一同「はい!」

    アスランに視線を投げるが彼は特に付け加える言葉はないらしい。彼らと敬礼を交わして通信を終え、今度は私達が発進する番ね。

    アグネス「アスラン先輩、お見送りの皆さんにご挨拶をしましょう」
    アスラン「ああ…」
    そう答えてアスランはコックピットを開き、綺麗な敬礼を皆さんに送り出す!私も慌ててコックピットを開き敬礼する。これが挨拶?アスランがコックピットを閉じてしまうので、私はヘルメットを脱ぎ皆さんに呼び掛ける。

    アグネス「特務隊アスラン・ザラ、アグネス・ギーベンラートは西ユーラシア連邦とその諸国民の弥栄を切に祈念します。そしてこれより決行される作戦の協力に感謝申し上げます!」
    官僚「ありがとうございます。共に未来を!」

    音楽の授業で鍛えた声をあげると向こうも訓練された発声法で答えて下さる。嬉しいが、実は肋骨がかなり痛い。鎮痛剤で痛くはないんだけど、多分悲鳴を上げたはず。

    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」

    赤く染まった機体が直後、合図と共に飛び立つ。それを見上げる官僚たちの顔は頼もしげだ。もし、馬鹿みたいに発進させたら、強風で見送り人に嫌な思いをさせてしまう所だった。そう言う気遣いはちゃんとできるのにどうしてかな。

    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」

    ただ、良いところは見習うべきだわ。私も見送りに来た人たちに気を配りつつヘリポートを飛び立ち、巨大なハブ空港に向けて町を跳び越える。

  • 110二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 09:52:54

  • 111二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 12:09:10

    何がアカンて、大多数の議員やザフト上層部がラクスの件とかフレアモーターの件把握してないのがヤバい
    自分達が正義と信じていられる状況では、どんだけ頭まともでもAAに対して正しい手を打ちようがないぞ

  • 112二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 12:44:03

    アスランがAA関係でポンコツ状態(いつもの事とも言う)なのが痛いな。説明不足だから周りとろくに意思疎通できない
    し、それで自分の判断(だけ)で行動するからもう周囲は訳ワカメ状態。カリーニングラードを片付けても、すぐ次の厄介事
    が来そうだというのに……。

  • 113二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 15:48:56

    今更で申し訳ない疑問なんだがなんでこのアグネスの立場ってこんなに高いの?
    政治レベルの話に突っ込んできたりするし
    種世界のザフトエースパイロットってこんなだったっけ
    ギーベンラート隊でも作ったほうがいいんじゃね?ってレベルなんだが

  • 114二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:55:47

    >>112

    この後が大変なのは目に見えてるけどまず間違いなくアグネスは再入院待ったなしだろう

    その間に議長が状況を悪化させる

  • 115二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:23:36

    >>113

    FAITHの権限をフル活用するとこれぐらいまで出来るのかもしれん。一人で下手な戦艦より撃墜数多いし。

    他のFAITHの面々は、グラディス艦長以外は指揮艦向きな人が登場しなかった(又は戦死)し、実際どれぐらいの権限があったのかハッキリしないね。

  • 116二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 01:02:20

    ユウキ隊長が色々情報を仕入れてアスランに伝えてましたね前の大戦で

  • 117二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 04:22:48

    アスランと一緒に軽く街を跨いでブリュッセル国際空港に到着し、グラディス提督が手配して下さっていたシャトルに機体ごと搭乗する。シャトルの中にカオス、セイバーその中に私とアスラン、マトリョーシカ状態だわ。

    搭乗後の待機時間にアスランに連絡を入れる。

    アグネス「アスラン先輩、遠距離通信の中継をミネルバに依頼しましょう。後方支援に参加すると聞いています」

    流石にこの広域の作戦をカオスの通信能力だけでカバーするのは危うい。その点、ミネルバの後方支援能力はずば抜けている。『浮かび町』と称される空母に類似した存在だ。

    アスラン「そうだな。そうしてくれ」

    彼の短い返事を聞き、回線をミネルバブリッジに合わせて呼び出してみる。

    アグネス「こちらアグネス、ミネルバブリッジ応答を願います。現在地はブリュッセル国際空港、スペースシャトル内。ミネルバブリッジ応答してください」

    コックピットモニターにミネルバブリッジの映像が灯る。私の顔を見て敬礼して下さるグラディス提督に応じつつ、艦橋の様子を確認する。

    アグネス「(装甲区画には遷移していない。ビーコンを見るに艦はスカンジナビア王国エーランド島南方沖か)」

    タリア「ご苦労だったわね、アグネス。上手くいったのかしら?」

    難しい顔をしたグラディス提督の視線が私の目線とぶつかる。ただ、ニュアンス的に私を責めている風ではない。このこんがらがった状況を憂いているのだろう。

    アグネス「おおよそは。提督にはご迷惑をおかけします。ルナマリア隊の派遣は提督のご判断ですか?」
    タリア「ルナマリアとバクゥ隊が自ら。彼女、自分のFAITH権限で国防委員会に上申しようとしたけれど、一旦、記録して預かり、私から特務隊長として国防委員長に進言しました」

    なるほど、いざという時のためにルナマリアを庇ったのね。私も知らないところで恐らく彼女に庇ってもらっている。

    アグネス「ありがとうございます」

    お礼を伝えると提督は難しい顔を少し崩し、やれやれと言ったジェスチャーをなさる。

  • 118二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 04:28:52

    タリア「お礼を言うならルナマリアに。それで、話は?」
    アグネス「無線の中継と参加部隊の補給の協力をお願いいたします。おそらく、セカンドステージシリーズは作戦中にデュートリオンビームを受ける必要も生じるでしょう。その際は原則、カリーニングラード沖のミネルバにこちらから向かう方法を考えています」

    ミネルバはノルウェーの地球連合軍、スカンジナビアとレニングラード軍管区、そしてカリーニングラード、更にはアークエンジェルの五者を睨まなければいけない。この艦が中間ポイントで圧を掛けてくれるなら、そこには自力で向かうべきだろう。

    タリア「分かりました。危なくなったらこちらも動きます。回線を繋ぐ先は?」
    アグネス「セイバー、カオス、ガイア、アビス、グフ・ハーネンフース副隊長機、教導航空団各中隊長4機、そしてミネルバ。当面この10者で」

    話を聞きながら彼女が視線を振ると、その先のメイリンが頷き答える。

    メイリン「了解です。連絡先が増えたら仰って下さい。もし、戦闘中で、追いつかないなら私の判断で対象機体を判断して繋げます。その許可もいただけますか?」

    賢そうな、いや賢い瞳が私を見上げてくる。ルナマリアは自分に相応しい妹が持てて幸せね。

    アグネス「(ありがたい!彼女なら失敗することは無いでしょうし、もし失敗しても私が死ぬ分には…。いや!何を言って、思っているんだ私は!しっかりしろ)」

    気を取り直してメイリンに返事をする。

    アグネス「メイリン、ありがとう。許可します。私達の口と耳を預けるわ」
    メイリン「はい!」

    無線中継の依頼が済んだところ、トライン副長が私達に尋ねる。

    アーサー「二人とも健康状態は大丈夫か?」
    アスラン「ええ…。まあ」
    アグネス「未完治の負傷に加えて、発熱と倦怠感が生じました。解熱剤で対処済みなので当面の戦闘と指揮に差し障りありません」

    そうお答えしたところ、トライン副長は私とアスラン両者の顔を見比べ、少し困惑した表情を浮かべる。

  • 119二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 04:34:22

    アーサー「提督…」

    何か再考を促すように彼はグラディス提督にお声を掛ける。トライン副長は常識をしっかりお持ちの人、心配なのだろう。

    アグネス「(普通に考えたら今の私とアスランは万全な状態とは程遠く、まともな上官なら止めるべきところ。平時なら、普通の戦域なら…)」
    しかし、今は非常時の中の非常時、それなら、そのように対処するしかない。無論、ミネルバでその状況判断を下すべきなのは-。

    タリア「よろしい。健闘を祈る!皆も」
    貫禄がある強い声でグラディス提督がこの場の皆を励ましてくれる。

    アスラン「はい」、アグネス「はい!」、ブリッジ一同「はい!」

    アグネス「(やっぱり実家のような安心感がある。凄くホッとしたわ。私もまだまだね…)」

    シホ先輩達はどれ程不安だろう。私も振り回されているが、周囲もまた私に振り回されている。その重責を負えるほどに心は追いついているのだろうか。まるで『わらしべ長者』のように航空団を指揮する立場になってしまったけれど。

    アグネス「(走りながら考えるだけ。皆そうしている中、立ち止まったら負ける。自分だけならともかく-)」

    為すべきを為すだけだわ。

    アグネス「メイリン、早速で悪いけど、ルナマリアに繋いで!」
    メイリン「分かりました!」

    ミネルバの中継を受け、グダニスク市のルナマリアの顔がコックピットモニターに映る。

    ルナマリア「アグネス、あんた大丈夫?」
    アグネス「倦怠感と発熱あり。戦闘と指揮に障りなし。作戦参加ありがとう」
    ルナマリア「え…。ああ。どうも」

    彼女は、ちょっと戸惑ったような表情を浮かべた後、労わるような眼差しをこちらに向けてくる。何時までも委員長気質が抜けない友人、ルナマリアをこの上なく頼もしく、鬱陶しく、嬉しく思う。何か余計なことも思ったわね…。

  • 120二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 04:44:56

    さて、感動の再開はここまで。

    アグネス「ルナマリア、バクゥハウンド隊のウィザードはケルベロス?」
    ルナマリア「そうよ。換えた方が良い?」
    アグネス「いえ。そのままで。一応、ブラニェヴォ市で換装可能だけど、あなた達にお願いしたいのはマモノヴォ攻撃じゃない。ヴィスワ潟とグダニスク湾を隔てバルチースク海峡に至るヴィスワ砂州を踏破し、バルチ―スク空軍基地を襲撃する構えを取って欲しい」

    一気に話す私に彼女は少し気押された後、少し難しい顔になって指摘する。

    ルナマリア「サラッと難しいこと言うわね。多分、地雷原が敷かれているわよ」
    アグネス「ええ。そうね。分かっている」

    ヴィスワ砂州は、グダニスク湾に位置する狭く長い岬のことだ。平均幅数百メートル、グダニスク湾の西部から北東に全長70㎞伸びていて、バルチ―スク海峡に至る。

    今回の攻撃目標の一つ、バルチ―スク市は砂州を別つ、幅400m深さ12mのバルチ―スク海峡、北岸で発展してきた。この都市にはバルチック艦隊の重要拠点が存在する。

    アグネス「(西暦2000年代まで、バルチ―スク海峡を通過しなければヴィスワ潟内の海岸都市はバルト海と接続できなかった。その地政学的な不利を克服するためポーランド側にヴィスワ砂州運河が2022年に開通し、C.E.の今に至る)」

    ただ、今日、この海の勢力図が変わるまで、西ユーラシア側はブルチック艦隊を怖れヴィスワ砂州運河を封鎖(自軍側の出入り時のみ封鎖解除)、ヴィスワ潟の国境線上にも機雷を敷いた。

    アグネス「(それを思うと、アッシュが機を見て、カリーニングラード側に討って出ているのは驚くばかりだわ)」

    そして、バルチ―スク市中心部から見て海峡対岸(南側)のヴィスワ砂州にはバルチ―スク空軍基地が存在する。比較的小規模な軍用空港で西暦時代一時は閉鎖されたが、再び戦乱の世となり、対MSヘリコプター中隊の基地として再使用されている。

    アグネス「大丈夫、あなた達を特攻させたりしない。安心して。まず、ヴィスワ砂州の西ユーラシア・ポーランド領国境の町クリニツァ・モルスカに向かってほしい。ポーランド州道501号線が砂州を横断しているわ。道の先は国境警備隊と西ユーラシア連邦陸軍が守備しているから先ずはそこまでバクゥハウンド小隊と共に疾走して欲しい」

  • 121二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 04:58:18

    クリニツァ・モルスカは小さな国境の町だが港を持ち、ヴィスワ潟南岸のポーランド海岸とも船で接続できる。孤立無援の状況に放り込む気なんてない。

    ルナマリア「それは分かっているけれど。ただ、ユーラシア軍も自国上空に偵察機を飛ばしているわ。501号線を進むと間違いなく勘づかれるわ。アッシュも危ない」
    アグネス「逆よ。ヴィスワ潟の中のアッシュは今も危ない。敵のヘリ部隊が動いたら、その瞬間に潟の水中と空中、それに砂州の上は殺戮の巷となる。なら気勢を制するべき」

    アッシュのパイロットの腕を信用していないわけじゃない。だが、勢力の均衡が崩壊しつつある中、彼のみならず、もしヴィスワ砂州に展開している軍も巻き込む戦闘に発展したら?

    それが心配でさっきから胃が痛い。手術でくっ付いているから大丈夫なはずだけど。ともかく先手、先手と繰り出し続けるしかない。

    ルナマリア「国境警備隊と友軍に辿り着くまでの援護は?」
    アグネス「私とアスラン先輩のシャトルがもうすぐ出発するわ。降下しながら援護する。私達はあなた達が国境の町に到着次第、マルボルク市の第22空軍基地へ。そこから先は合図するから。それで、作戦時の地雷原の突破は申し訳ないけれど…」

    申し訳ないけれど、地雷原はルナマリアに単機駆けしてもらうしかない。ガイアはヴァリアブルフェイズシフト装甲を備えている。更にモビルアーマー形態に変形した際、機動防盾が腹部の追加装甲となりコックピットをガードしてくれる。

    ルナマリア「はぁー。分かったわ。こういう戦闘のための機体だものね。国境から突っ込むときはちゃんと援護はしてよ。作戦開始時刻は?」
    アグネス「クリニツァ・モルスカへの前進は直ちに。501号線をひたすら全速で東進して!あなた達がヴィスワ砂州運河にかかる橋を渡る直前にシャトルを打ち上げてもらう。そのまま降下して援護を。アスラン先輩、よろしいですか?」

    さっきから一言も発しないアスランに確認を求める。コックピットモニターの向こうの彼はどこか虚ろで見ているこちらを不安にさせる。

    アスラン「…ああ」
    アグネス「じゃあ。ルナマリア隊長、お願いします」

  • 122二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 05:06:49

    改めて彼女にお願いをする。さっきから私なりに気を使っているのよ!『あんた達』と言わないのはバクゥ隊の人達への心配りでもあるけれど、彼女への私なりの敬意でもある。

    二人の時は『あんた』呼びにするからね。というか、プライベートの時は基本これからもそうする。

    ルナマリア「うん。分かったわ!グダニスクを出でます」
    アグネス「ありがとう」

    そう返事をして敬礼すると、やや意外そうな顔をしたルナマリアも敬礼を返してくれる。何だか事務的なやり取りばかり、少し物足りない。仕事中に考えることじゃないかも知れないけれど、少し胸がチクチクする。

    ルナマリア「あんた、本当に大丈夫よね、身体は。仲間が病院送りになるのを見送るのも、しんどいのよ」

    ちょっとドキリとしたことを言ってくるから、驚いてしまう。

    アグネス「気を付けるわよ」
    ルナマリア「よろしい」

    そう言って一度、会話を終える。何だか指示を出すたび疲れてしまう。まだまだ疲れることをしないといけない。

    アグネス「メイリン、国際救難チャンネルの放送準備を。カリーニングラード州政府と軍管区司令部に軍事施設、軍部隊周辺の文民を避難させるよう勧告します」
    メイリン「分かりました!」

    この辺りの諸々を『艦長』、『副長』が担ってくれていたのね。そう思うと頭が下がるわ。一パイロットでいられたころが懐かしい。少し前なのに-。

    アグネス「(この任務終わったら少しは力を抜きたい。ちょっとの間で良い。気持ち云々の前に身体が悲鳴を上げていると自分でも分かっている…)」

    ただ、『この任務』とはどこまでなのだろう?
    私はカリーニングラード攻撃をゴルディアスの結び目を解くための最善手と見込んでいる。それで間違いないはずなのだけど、いや、もう迷うな。走りながら考えると決めたばかりではないか!

  • 123二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 08:10:14

    本当ならまだベッドの中だよな
    交戦しなくてもMSの移動だけでもGがかかるし
    後方に陣取って指揮に専念って訳にはいかんかなあ

  • 124二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 16:11:33

    保守

  • 125二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 00:29:15

    アグネスが休めないフラグ

  • 126二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 01:28:54

    アグネス「メイリン、良い?」
    メイリン「はい!」

    国際救難チャンネルの放送をここで入れておく。流れで始まった作戦、誰が避難勧告を通知する権限があるのか少しあやふやだ。ただ、お見合いをしていても仕方ない。

    アグネス「『国際救難チャンネルの放送を開始します。こちらはギーベンラート教導航空団隊長アグネス・ギーベンラートです。
    ユーラシア連邦政府及びカリーニングラード州政府、地球連合軍、ユーラシア連邦軍カリーニングラード軍管区司令部に通告する。
    ザフト軍は60分後、カリーニングラード州バルチ―スク市、カリーニングラード市、チェルニアホフスク市、ドンスコエ市、ソヴィェツク市、グセフ市、マモノヴォ市内に存在する軍事目標を対象とした攻撃作戦を開始する。
    勧告する。貴国行政機関、軍司令部は、軍事施設、軍部隊周辺の文民を避難させよ!なお現に戦闘が発生しているバルト海、グダニスク湾、ヴィスワ潟及びその上空の周辺住民も一刻も早く避難させよ。なお既に戦闘が開始されている地域は事前勧告の対象とはされない』」

    そこまで述べて、少し考え言葉を続ける。巻き沿いを少しでも減らしたい。

    アグネス「『勧告を放送でお聞きのカリーニングラード州市民の皆さん、ザフト軍は州内の地球連合軍及びロゴス傘下の『第81独立機動群・ファントムペイン』を始めとした過激派ブルーコスモス武装組織と戦っているのであって無辜の民を傷つける意図は全くありません。
    攻撃開始時刻前に軍事施設、軍部隊の周辺から避難してください。避難が間に合わない場合は近くの頑丈な建物、地下施設に入って下さい。それらの施設が無い場合でも近くの建物内に避難してください。建物が無い場合は物陰に隠れ、または地面に伏せ、頭を守って下さい。そして、ガラスの破片から身を守るため、窓から離れ、あるいは窓のない部屋に入って下さい。このことを知らない周囲の人々にも伝えて下さい。プラントは文民保護に努めています』」

    勧告とアドバイスを読み上げて、やれやれと一息つく。これで少しは『マシ』な結果になると良いのだけれど。

  • 127二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 01:34:34

    コックピットモニター越しにグラディス提督が何とも言えない表情を浮かべて私に視線を投げ掛ける。気を使ってくれているのだろう。戦闘中に私がPTSDを発症し、自分の制御が出来なくなることをご心配されているのかもしれない。

    PTSDについては分からないが、今は十分戦える。その思いを込めて彼女に私もアイサインを送る。

    私の意を察して彼女も励ますような微笑みを返してくれる。それを目にしただけで随分心が軽くなるわ。

    アグネス「(ルナマリア隊がヴィスワ砂州運河手前に到着するまで少しだけ時間がある。頭の中でシミュレーション訓練、イメージトレーニングをしておこう)」

    後学のためと思って観戦したフリーダムの戦いは素晴らしいものだったわ。直ぐに真似できるものではない。ただ、フェイントを掛けながらの機動戦闘、特に多数のビームを避けながらの敵との距離を詰める動きは大いに参考になったわ。

    アグネス「(同じような操縦を経験は私にもある。それをもう少し上手く、何時でもできるようにするだけのこと)」

    ロックを掛けた操縦席をシミュレーターとして画面は脳内の映像を網膜に投影する。操縦桿とスイッチを流れるように操作しながら-操作できるよう練習しながら-コックピットモニターに自分で投影した敵中隊を何度も撃ち落とし、何回も斬り込みをかける。

    即席シミュレーション訓練と交互に、ルナマリア隊と教導航空団の状況も確認する。秘密厳守の潜水部隊とも密な連携を求められる。でも、長々とは通信するべきじゃない。現状を極短くまとめ、アビスに電子文章で伝達してもらう。

    それらをこなしている内にコックピット回線にルナマリアの声が木霊する。

    ルナマリア「ヴィスワ砂州運河の橋まで後、10㎞!」

    もうここからはノンストップだろう。主よ!私に勇気と忍耐と分別を!

    アグネス「分かったわ!機長、出してください。アスラン先輩、よろしいですね?」
    アスラン「ああ。機長、お願いします」
    シャトル機長「了解!」

    管制搭とのごく短いやり取りの後、シャトルは空港を離陸する。大気圏を2往復目、本当に今日は忙しい日だわ。

  • 128二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 09:35:38

    保守

  • 129二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 18:35:01

    保守

  • 130二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 18:43:54

    アグネス、この作戦が終わったら臓器移植とか受けないとアカンと違う?

  • 131二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 21:25:32

    臓器移植で済むかな…?

  • 132二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 00:11:31

    シャトルの窓の外側を真っ赤の染めていた大気が急速に薄くなっていく。シャトル発艦直前まで状況確認に務める。

    アグネス「(アークエンジェルはボスニア湾を北上し続け、現在地はフィンランドの都市バーサの南西145㎞。良くここまでたどり着けたわね)」

    前回に確認した後もアークエンジェルは攻撃にさらされ続けた。カリーニングラードからは第4波攻撃隊スピアヘッド・スカイグラスパー計44機が襲来、おそらく軍管区内の最後の戦闘機部隊だろう。これはムラサメとアークエンジェルが殲滅した。

    その間、フリーダムはレニングラード軍管区から飛来したダガーL中隊12機を不殺で撃退している。今回の敵は帰路につく際、フィンランド湾のスカンジナビア王国領海ギリギリを飛行することでこちらの攻撃を回避したようだわ。

    ハイネ先輩の短い返信が私の下に文章形式で送られてきている。『アッシュ小隊、運河より既に潟に。アビスは外、そちらに合わせる』と。

    アグネス「(アッシュ小隊3機が既にヴィスワ潟に?展開が早い!)」

    自分が立てていた計画よりも早く事態が進んで心配になる。そして、それは次の瞬間に的中する。コックピットモニターにルナマリアの顔が映り、彼女が警告を発する。

    ルナマリア「アグネス!ヴィスワ潟上空に対MDヘリコプター2個中隊がカリーニングラードから!フレーザ級5隻もこっちにカスピ-スクの軍港から出てきたわ。多分、標的は…私達じゃなくてアッシュ隊よ」
    アグネス「了解。ルナマリア隊はそのまま進んで」

    先陣はやはり私達になるのね。ある意味想定通りだわ。『よーい、スタート!』で戦闘が始ますわけでは無い。マルボルクに主力航空部隊が集結する前にフライングで事態は進みつつある。

    それなら、それで修正していくしかない。

    アグネス「アスラン先輩、大気圏降下を開始しましょう。私が先に降りて対MSヘリコプター中隊を蹴散らします。続くセイバーは敵の援軍の相手をお願いします」
    アスラン「分かった。頼む。機長、そのようにお願いします」
    シャトル機長「ご武運を!」

    浮かない顔をしていたアスランも事ここに到り覚悟を決めている。その調子よ。

  • 133二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 00:52:35

    シャトルの扉が開くと同時に宙の大海に向け名乗りを上げる。
    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」

    発艦と同時にカオスをモビルアーマー形態に変形、盾を前に構えて、青い星に向け高速で降下を開始する。

    アスラン「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」

    アスランのセイバーはモビルスーツ形態のまま盾を構えて降下を開始する。

    私たち二人は凍り付きつつあるバルト海に向け、灼熱の炎に包まれながら、計算された落下を開始する。

    空を切り裂きながら、北ヨーロッパに抱かれたスエビの海へ。ボスニア湾とフィンランド湾は既に相当な範囲、氷結している。バルト海と言えば琥珀の産地ではあるが、残念ながら、私がその光沢を楽しめるようになるのは少し先のことになりそうだ。

    カオスの降下と共に湖のように見えていたバルト海がだんだん大きくなり、グダニスク湾が眼下に広がり、やがてヴィスワ潟の真上に到着、急制動を開始する。
    偶然にもそのタイミングで不運なフレーザ級小型水上駆逐艦3隻が水面下、斜め下からアッシュの2連装フォノンメーザー砲で貫かれ誘爆、轟沈する。

    ヴィスワ潟上空に展開中の対MS戦闘ヘリコプター24機は仲間の死を無駄にすまいとフォノンメーザー砲の射線からアッシュ小隊3機を見つけ出そうとする。

    アグネス「させない!」

    生き残りのフレーザ級は遅まきながら、舞い降りるカオスとセイバーに気が付き、胴体中央と両舷のミサイル発射口からミサイルを発射し始める。それをピクウス 76mm近接防御機関砲で撃墜しつつ最短距離で対MS戦闘ヘリコプター中隊の上を取る。

    彼らが姿勢を変えバルカン砲をこちらに向ける前に機動兵装ポッドを開き、ファイヤーフライ誘導ミサイル24発を全弾発射して、中隊を一瞬で殲滅する。

    そのまま水面すれすれまで更に降下、突き進みつつ、カリドゥス改・複相ビーム砲でフレーザ級1隻を撃ち抜き、高エネルギービームライフルとビーム突撃砲で最後の1隻に止めを刺す。

    その間、上空はモビルアーマー形態に変形したセイバーが哨戒飛行を続けてくれている。レーダーを確認すると、ルナマリア隊はクリニツァ・モルスカの町境の西の町境を踏破したわ。それなりの出だしと言えるかもしれない。

  • 134二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 07:30:51

    「戦場で真っ先に戦死するのは『事前の予定』である」とはいうけど、さっそく予定殿が戦死しておられるぞ……。
    っていうかハイネ先輩、仕掛けるの早すぎ問題。浅くて囲まれた水域に先んじて突入って、そりゃ無茶ってもんよ。

  • 135二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 11:39:27

    ザフト水泳部が唯一連合水泳部に勝てるのが火力を活かした先制攻撃ですからね
    殴って、向こうが迎撃に出る前に逃げる。これができなきゃザフト側はエース・ベテランでも向こうの一般兵にタイマンで落とされるのが海の戦いだし

  • 136二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 12:02:44

    青フォビドゥンがいつ出てくるかわからんからな⋯

  • 137二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 19:17:42

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:32:08

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 23:46:06

    アグネス「アスラン先輩、私は一旦、マルボルクの第22空軍基地に向かい、弾薬の補給と航空団との合流を済ませます。その間、クリニツァ・モルスカのエアカバーをお願いします」
    アスラン「了解」

    めっきり口数が少なくなったアスランだけど、見た感じちゃんと飛べている。上手くやってくれるはずだけれど。

    ヴィスワ潟上空から第22空軍基地までを4分30秒で駆け抜ける。潟上空の戦闘はその間も止まることは無い。

    カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地からは事態に即応したウィンダム中隊12機がスクランブルを開始し、対MS戦闘ヘリコプター部隊は追加で更に2個中隊発進を開始している。先にヴィスワ潟上空に到着したウィンダム隊とエアカバーをかけているセイバーの間に一瞬の攻防が繰り広げられる。

    アスランはセイバーをモビルスーツ形態で操り、飛来する敵飛行隊の後方に大旋回して回り込む。ウィンダム隊もジェットストライカーを装備しているのだが及ばない様だ。

    捻り込むような軌道を取りながら、アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を照射、薙ぎ払われた火線の先で敵8機が焼き切られ、燃え上がりながら水面に叩きつけられる。残る4機もスーパーフォルティスビーム砲で撃ち抜かれて、水面に落ちる前に爆散して果てる。

    あまりの戦況に恐れをなした対MS戦闘ヘリコプター部隊は発進を取りやめ、海軍航空基地に再着陸する。

    アグネス「(恐ろしい手並みね。畏怖のあまり敵の戦意が一時的にしろ挫けたわ。この隙が勝負ね)」

    第22空軍基地に着陸するや、いの一番に弾薬補充をお願いする。それと電源!

    アグネス「お願いします!」
    基地整備班「了解!」

    基地にはギーベンラート教導航空団が集結、105機が空港に勢ぞろいしている。シホ先輩他教官陣は全員グフに乗っている。

    コックピットモニターに映るシホ先輩と補助教官改め中隊長たちと敬礼を交わす。

  • 140二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 23:51:56

    シホ「ご指示通りAWACSディンとディン全機、武装をビーム突撃銃と76mm重突撃機銃に換装済み。6連装多目的ランチャーにはチャフとフレアを装填。バビも航空ガンランチャーを76mm重突撃機銃に換装。グフイグナイテッドは片手にM68 キャットゥス500mm無反動砲を持たせています」

    良し。この武装で正解のはずだけど…。戦場の霧の中、何が起こるかは誰にも分からない。

    アグネス「ありがとうございます。早速、AWACSディンは全中隊4機、空港から発進させなさい」
    シホ「了解。『AWACSディンは全機発進せよ』」
    AWACSディンパイロット達「了解!」

    慌ただしく、飛び立つ『我等の目』を見送り、サッと敬礼すると即座に次の指示に移る。そのタイミングで秘匿行動に努めて居たハイネ先輩から攻撃計画がコックピットデバイスに通達される。内容は大体予想通りだわ。

    アグネス「(急がなければならない。ハイネ先輩の狙いはバルチ―スクの海軍基地をバルチ―スク海峡の両側から挟み撃ちにして襲撃すること。グダニスク湾のアビスとヴィスワ潟のアッシュ小隊で同時に、おそらく14分後に!)」

    ガイアのルナマリアに回線で呼びかける。

    アグネス「ルナマリア、頼んだ通りに単機駆けして。地雷原は踏み抜きながら走って、全力でバルチ―スク空軍基地を襲撃して。こちらも援護に駆けつける」
    ルナマリア「分かったわ!それとバクゥハウンド小隊から上申が。私の足跡を辿ることで地雷原を突破する用意があると」
    アグネス「心強い!お願いするわ!」

    それからエアカバーをかけてくれているアスランにも連絡を入れる。この連絡はオープン回線で皆に聞こえるように話す。

    アグネス「アスラン先輩、先程はありがとうございます。先程と同様作戦中、僚機を守って下さい。『僚機を失った者は戦術的に負けている』、『皆で帰るか皆で死ぬか二つに一つ、死体になっても戦友を見捨てない』この二つが私の方針です。どうか同意していただけないでしょうか?」

    そう打ち明けられたアスランの顔に一瞬、喜色が走った気がした。

    アスラン「分かった。その方針に同意する。味方機支援のタイミングと方法は俺の任意で良いのか?」
    アグネス「はい。お任せします」

  • 141二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:04:22

    タイマーのカウントは0.1秒刻みで進んでいく。グフのパイロット達にも重要な使命を伝達しておく。

    アグネス「グフは対ビームシールドを最大限有効活用し、己と戦友を守れ。
    敵はモビルスーツ部隊だけではない。敵防空隊、ブルドックや自走リニア榴弾砲、バルチ―スクには地対空75mmバルカン砲塔システム、ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー、50mmガトリング砲、全て脅威だわ。
    全方位に気を配り、航空団の盾となるように。飛行モビルスーツは接近戦に弱い。ウィンダム・ダガーLの急接近時は、M68 キャットゥス500mm無反動砲は迷わず捨てて、近接戦に集中し返り討ちにしなさい。地上のストライクダガー隊への斬り込みも諸君の力が頼りだ。奮起を期待する!」
    グフパイロット一同「はい!」

    ここで通信をシホ先輩と4人の補助教官に限定して通達。

    アグネス「戦闘時は基本、私が先頭に立って攻撃、敵編隊等を四散させ、あるいは隙を作る。その後に中隊は突撃せよ。殿も私が担当する。皆は中隊の指揮に全力を出して欲しい。2機編隊ないし3、4機の小隊で良く連携させなさい。どの中隊がどこを攻撃するかの指令は戦闘中も私が出す」
    シホ、補助教官「了解…」

    私の負傷を知っているシホ先輩と補助教官は凄く心配そうな顔をなされるが、現状、これが味方の犠牲を最小限にする方法であることも理解してくれる。彼らに私から敬礼して、彼らの返礼を受け一旦指示を終える。

    そうこうしている内にカオスの弾薬補充が終了する。いよいよか!

    アグネス「ギーベンラート教導航空団、全機発進せよ。『アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!』最初に第4中隊から、そこからは番号順に、続け!」
    一同「了解!」

    真っ先にカオスで離陸、第4中隊の最後の1機が空に飛び立つのを確認して先頭を飛び続ける。

    アグネス「副隊長、中隊長。この中隊でポーランド国境のマモノヴォを襲撃します。陸上戦はこの攻撃の主目的ではありません。しかし、あの都市にはブルドックの中隊が配備されていて、放置すればヴィスワ潟上空の戦闘に差し支えます。ストライクダガー隊と機械化歩兵の妨害があるでしょうが、時間がありません。一撃で決めます」
    シホ・中隊長「了解!」

  • 142二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:12:44

    実はこの攻撃にはもう一つ理由がある。第4中隊に所属するグフ隊20名はアカデミー繰り上げ卒業組だ。もし深入りした後、機体に損傷が生じた場合、帰還できないかも知れない。それなら近い場所で戦わせ、早めに篩にかけ、未熟なものは下がらせるべきだ。

    今なら私のもシホ先輩にも命だけは庇える程度の余裕がある。そんなこと本人達には決して口に出来ないけれど。

    アグネス「AWACSディン、マモノヴォの状況を報告せよ」
    AWACSディン「海岸にブルドック2個中隊24両。ストライクダガー2個中隊24機。残りは機械化歩兵師団本体と共に駐屯地を離れていません」
    アグネス「ありがとう。副隊長、カオスで強行突撃します。後続してドラウプニル4連装ビームガンでミサイル迎撃に協力を。『中隊長、接近戦になる。ディンとバビは上空からカバーさせグフを前に。右手でドラウプニル4連装ビームガンを発射しながら、スレイヤーウィップを鞭にして地上の敵を打ち払いなさい』」
    シホ、中隊長「了解!」

    モビルアーマー形態のまま、左手に巡航機動防盾を構えて、ヴィスワ潟の機雷が区切る国境線を跳び越える。国境の町マモノヴォの海岸線を目視、マルボルクの第22空軍基地を発進して4分40秒経っていない。

    レーダー車がカオスを捕らえ、ブルドックの4連装×2基のミサイルランチャーが私目がけて一斉に火を噴く。ストライクダガー中隊はブルドックを庇うように横列を組んで盾を構えている。

    アグネス「(良し!私に撃って来たわ!)」

    というかカオスを何とかしないとかの部隊は壊滅するのだから当たり前か。しかし、192本のミサイルが自機目がけて飛来するさまは圧巻としか言えない。

    正面から突っ込むわけにも行かないので飛行高度を一気に急降下させ、大部分は避ける。タイミングの都合で避けきれないミサイルはピクウス 76mm近接防御機関砲と-。

    シホ「援護します!」

    斜め後ろに後続してくれているグフ副隊長機のドラウプニル4連装ビームガンの連射が炸裂する。カオスの目前でミサイルは爆散、無論破片は飛んでくるが装甲が全て弾く。

    アグネス「ありがとう。ストライクダガーのビームライフルに注意せよ。私はフェイントを掛けながら行くから」
    シホ「了解!」

    急降下、突撃するカオスに向け、ストライクダガー中隊の構える24門のビームライフルから次々とビームが発射される。

  • 143二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:24:52

    避けながら前進し、避けきれないものは巡航機動防盾で受けるが…。相手はそこまでの練度じゃないな。

    高エネルギービームライフルとビーム突撃砲を発射し、1機を撃破、4機に損害を与える。盾から出た右半身ないし右腕を撃ち抜いておいた。今がチャンスだわ。

    アグネス「中隊長!敵は完全にカオスに気を取られているわ」
    中隊長「りょ…了解、グフ隊20機急降下せよ。キャットゥス500mm無反動砲を各自1発撃ったらストライクダガーに…」
    アグネス「一発目の無反動砲はブルドックを狙え」
    中隊長「了解!」

    そう強く命じて斬り込みをかけ、ビームクローでさっき損傷を与えた機体の内2機に止めを刺し、同時に後背に陣取っていたブルドック隊に高エネルギービームライフルとビーム突撃砲を発射、レーダー車とブルドック2両を撃破する。

    後続するシホ先輩は私が横列に空けた穴から両腕のドラウプニル4連装ビームガンを発射し4機のストライクダガーを仕留めた後、スレイヤーウィップを振り回して更に2機の首を飛ばす。

    ストライクダガー隊の横列を突破後はブルドック1両にキャットゥス500mm無反動砲を命中させ、ドラウプニル4連装で4両を炎上させる。

    一撃を与えたカオスとグフ副隊長機は急上昇しながら旋回し、上空を守る。眼下では入れ違いに降下したグフ隊20機が、残弾を失くしたブルドック18両と陣形をかき乱され傷ついたストライクダガー中隊の残り17機を掃討している。

    この状態ではもう彼らに勝ち目はない。10秒と持たず全機殲滅される。ディンとバビと共に空を守りながら一息つく。戦闘開始から、ここまで20秒の出来事だわ。

    アグネス「(篩にかける云々は要らぬお世話だったかな。皆よく鍛えられている。イザーク先輩のお陰だわ)」

    一方、コックピット画面の向こう側ではルナマリア隊が激闘を重ねている。彼女はこちらの頼みを聞いてガイアを操り先んじて国境の地雷原を突破している。

    アグネス「(ルナマリア、少しタイミングが早いわ。連携を図るのはこんなに難しいのか)」

    四足獣形態のガイアの足元で複数回の爆発が生じ、その度に砂塵が巻き上がる。しかし、彼女は動揺することなく、その度にバランスを立て直し、次の一歩を踏み出していく。

  • 144二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:33:22

    彼女の足跡を辿って3機のバクゥハウンドも後続する。ヴィスワ砂州のユーラシア連邦側を守備していたストライクダガー2個中隊は、まるで第一次大戦の兵士のように1個中隊ずつ2列の塹壕を掘ってこちらに備えていた。

    上層部がアークエンジェルに無用の攻撃を仕掛け、戦力を空費しなければ、その備えが生きることもあっただろう。

    アグネス「(でも、そうはならなかったわね)」

    ガイアは、後続するバクゥハウンド小隊のウィザード頭部リトラクタブルセレクション内ビーム砲計6門の支援砲火を受けつつ、自機も高エネルギービームライフル、ビーム突撃砲を発射し、突撃を敢行する。無論、地雷を踏み抜きながらだ!

    一つ目の塹壕を跳び越える際、素早くモビルスーツ形態に変形しビームサーベルを引き抜くと塹壕内のストライクダガー2機を撃破し、そのまま飛び上がって高エネルギービームライフルを発射してもう1機を仕留め、1列目の塹壕に大穴を開ける。

    高エネルギービームライフル発射直後に機体を四足獣形態に変形、ガイアの隙を狙っていた後列のストライクダガー中隊の内、2機を逆にビーム突撃砲で撃ち抜き、撃破と同時に着地を果たす。

    ルナマリアに続いて第1列に突進したバクゥハウンド小隊、彼らは塹壕に接近するや覗き込むようにウィザード頭部リトラクタブルセレクション内ビーム砲を発射し、塹壕内を鉄片と肉片の溜まり場に変えていく。

    その間もルナマリアは2機の撃破によって穴が開いた2列目の塹壕に突進して、下り立つやビームサーベルと高エネルギービームライフルで立て続けに3機ストライクダガーを仕留める。

    一応、塹壕はジグザグ上に掘られていたのだが、ガイアの機動力の前では有効に機能しなかったようで中隊が全滅するまで20秒とかからなかった。

    ガイアが2列目の中隊を殲滅した頃、バクゥハウンド小隊による1列目の殲滅も終わりを告げている。バルチ―スク飛行場からはストライクダガー隊の援護のため、対MS戦闘ヘリコプター中隊24機が発進していた。

    しかし、彼らはセイバーが全機撃墜してしまっている。これを持ってバルチ―スク飛行場の航空戦力は潰えた。ルナマリア隊に誘き出され、飛び立ってしまった段階で彼らの負けだ。

    ヴィスワ砂州上の敵防衛線を突破したルナマリア隊はバルチ―スク飛行場まで後、4㎞まで迫っている。

  • 145二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:42:32

    アグネス「(こちらの支援なしにバルチ―スク飛行場まで辿り着けそうね。嬉しい誤算だわ)」

    しかし、どうしたことだろう?ヴィスワ砂州とマモノヴォの海岸で味方が殲滅されているのに、カリーニングラードの空は妙に静かだ。アスランが守っているから、というだけではないだろう。

    AWACSディン「カリーニングラード・フラブロヴォ空軍基地からウィンダム2個連隊175機発進中!ルナマリア隊の目標地点バルチ―スク飛行場まで3分30秒!ドンスコエの対MS戦闘ヘリコプター2個連隊2個中隊236機もタイミングを合わせて飛行中。また、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地からも対MS戦闘ヘリコプター連隊108機、ウィンダム・ダガーL混成隊2個連隊163機が発進準備中です」
    アグネス「了解」
    シホ「…合わせて、モビルスーツ238機、対MS戦闘ヘリコプター344機ですね」

    流石にシホ先輩も顔色を変えている。なかなか厳しい局面ね。おそらく出だしの動きが遅かったのは兵力の集中を計っていた為、ここまでの部隊は足止め隊と言ったところだろう。

    落ち着け。慌てた方が負ける。向こうはこちらの士気を圧し折るために持ち駒を全て投入してきたのだから。冷静に捌けば勝てる局面だわ。

    アグネス「(作戦序盤から地球連合軍は『負け』が続いている。仮に司令部にとっては『想定の範囲内』であったとしても、前線の兵士にとっては違う)」

    折れかかっているのは彼らだ!私達ではない!

    アグネス「ヴィスワ砂州北端に向かう。その付近が決戦地となるだろう。教導航空団、全機続け!」
    シホ、一同「了解!」

    機首を北北西に向けて全速力でヴィスワ砂州北端を目指して飛行を開始する。この規模のモビルスーツ群だ。地球連合軍側でも発見されていない筈はない。それなら早く手を繰り出した方が勝つ。ハイネ先輩に伝達する。

    アグネス「ハイネ先輩、1分後、教導航空団はバルチ―スク海峡南端に達します。そろそろ頃合いでは?」
    ハイネ「そうだな。そのタイミングで仕掛けよう」
    アグネス「ありがとうございます!」

    ルナマリアの猛進が上手く作用し、私達は敵航空隊主力が到達前にバルチ―スク海軍基地に攻勢をかけられる。偶然の重なりでこうなろうとは!

  • 146二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 00:52:51

    ただ、調子に乗っては足元を掬われる。偵察機から入電!

    AWACSディン「進行方向のすぐ南の海岸に大隊規模の自走リニア榴弾砲が到着、展開中です」
    アグネス「了解!ハーネンフース副隊長、先導をお願いします。第4中隊、私に続け。グフ隊はカオスと共に南岸の自走リニア榴弾砲大隊を叩きます。射線に注意して対ビームシールドを構え、接近するように。ディンとバビは上空援護!」
    シホ、第4中隊「了解!」

    教導団に先行して第4中隊を飛行させ、その先頭に立つ。流石に過保護かな。自分が全部把握しないと我慢ならない人間ような人間ではないつもりだったけれど。

    アグネス「(少し違う。自分の指揮下で部下を死なせるのが恐いんだ。だから先頭に立ちたがる)」

    ただ、それを自覚できたところでどうにかなるものでもない。カウセリングも指揮官講習も今を乗り切ってから受けるべきだろう。今はこのまま頑張るしかない。

    マモノヴォ北東に突き出た半島部、AWACSディンの知らせ通りそこには自走リニア榴弾砲50両とその護衛であるストライクダガー中隊12機が展開を始めていた。

    カオスとグフ20機の接近を関知したリニア榴弾砲が一斉に火を噴く。私は砲門の向きを読みつつ機体を上下に動かして砲弾を避けるが、経験値が乏しい新米たちは思いっきり砲火の洗礼を受ける。

    ただ、それでも優秀な赤服繰り上げ組、指示通り構えた対ビームシールドで榴弾砲を弾き飛ばし、全機無傷だ。
    アグネス「(ハイネ先輩にもう連絡してしまったわ。手早く終わらせよう)」

    まず、カリドゥス改・複相ビーム砲を横薙ぎに照射して自走リニア榴弾砲10両を猛火に包む。同時に高エネルギービームライフルとビーム突撃砲でストライクダガー中隊の内3機の頭を貫く。

    残る9機のビームを、フェイントを掛けて躱しながら浜辺に接近し、至近距離からビームサーベルを抜いて2機の頭を斬り墜とし、盾の裏側に高エネルギービームライフルとビーム突撃砲で3機を撃破する。

    私に続いて飛来したグフ隊がドラウプニル4連装ビームガンで残りの自走リニア榴弾砲30両を吹き飛ばし、ストライクダガー中破5機と4機に向けキャットゥス500mm無反動砲を発射する。1機につき2発以上の攻撃を受け防ぐ間も無くストライクダガー中隊は浜辺で散る。

    ここまでほぼノンストップで済ますことが出来た。そのまま突き進むのみ。

  • 147二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 10:57:07

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 11:45:41

    クレタ島から激戦激戦また激戦……戦死以前に過労死しかねんわこんなん。おまけに肋骨複数個所骨折&内臓損傷。
    戦後にこの時期のアグネスの体調が公表されたら、「なぜこんな無茶させたんだ!」と非難轟々だろうな……。

  • 149二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 12:27:08

    >>148

    骨折が悪化、内臓の傷が開いて再入院コースだよね

    そもそも最初から怪我人に教官させようとするなって話だが。

  • 150二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 13:53:57

    見ててヒヤヒヤするなあ

  • 151二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 22:56:46

    なんかの拍子にぽっきり壊れそうで怖いな

  • 152二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 23:37:52

    コーディネイターと言っても限度があるただでさえ女子なのに

  • 153二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 02:00:00

    AWACSディン「報告!隊長機から見て2時の方向16㎞、ラードゥシキン村郊外の軍事基地に敵防空連隊あり。自走リニア榴弾砲連隊100両、ブルドック24両、ストライクダガー2個中隊24機!」

    最悪!対岸のルナマリア隊まで20㎞じゃない!

    アグネス「ルナマリア隊、引き返して!」
    ルナマリア「分かったわ!」

    AWACSディン「報告!バルチ―スク海軍基地より2時の方向に18,5㎞に敵防空連隊発見!自走リニア榴弾砲100、ブルドック24、ストライクダガー24!」

    ヴィスワ潟に十字砲火を浴びせられるような配置ね。

    アグネス「第1から第4中隊、ディン全機チャフをばら撒け。1~3中隊は回避行動をとりつつ飛行高度を急上昇せよ。第4は私に続きラードゥシキン村郊外の敵防空連隊を叩く!」
    ギーベンラート教導航空団一同「了解!」

    コックピット回線にルナマリアの声が響く。

    ルナマリア「深入りし過ぎたわ!バクゥハウンド小隊と一緒にバルチ―スク飛行場手前のゼリョンナヤ・アメリカ野生動物公園に身を潜めるわ!バクゥハウンドはガイアで極力庇う!」
    アグネス「分かったわ。撤退のタイミングはそちらで!」

    私はカオスの機首をラードゥシキン村郊外の軍事基地に向け向け、ディンが撒いてくれたチャフを突き破って突進する。直ぐ斜め後ろにシホ先輩のグフが続く。

    戦闘指揮は機体を操作しながらだわ。脳を分割して必死に状況に対応する。
    周囲の背景は後ろに吹き飛んでいくが、自分の中の体内時計は一気にスローモーションになっていく。

    アグネス「第4中隊のディン・バビは高度を上げよ。グフ隊は盾を構えて中高度で私に続け!第1から第3中隊はそのままバルチ―スク海峡に接近、回避飛行を忘れるな。着いたら、港湾内のバルチック艦隊と岬のトーチカ群の有効射程距離の鼻先すれすれを飛行し注意を逸らせ!ルナマリア隊を守り、ハイネ隊に攻撃チャンスを作ること」
    第1、第2、第3中隊長「了解!」

    アグネス「よろしいですね。ハイネ先輩」
    ハイネ「ああ。良し!ありがとな。アスランも頼む」
    アスラン「了解」

  • 154二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 02:11:40

    通信回線が忙しい。いろんなことが同時進行で進む。でも、気を抜いた瞬間自分が死ぬ。

    カオスの眼下には敵防空陣地、そこから、第4中隊より突出して進んできたカオスとハーネンフース機に榴弾100発と対空ミサイルの雨が下から降り注ぐ!

    私とシホ先輩は、前進、降下しながら機体を縦ロールして捻りつつ、宙返りと逆宙返りを連続して行い榴弾砲を躱し、ミサイルも大半を避ける。先頭に立っていた私の対ビームシールドには、それでも避けきれなかった榴弾が2,3発命中する。なかなかの衝撃がカオスの左腕に伝わる。

    ブルドックの4連装×2基ミサイルランチャーは唸りを上げ続け、遂に私達2機を捉え始める。

    それらをカオスのピクウス 76mm近接防御機関砲とグフ・副隊長機のドラウプニル4連装ビームガンで撃墜する。そこまで進むと、ストライクダガー中隊は自分達の番と盾の後ろでビームライフルの照準を合わせ始める。

    その一瞬を狙ってカオスを地面すれすれに急降下させる。そして、地面と平行に飛行しつつ、カリドゥス改・複相ビーム砲を薙ぎ払うように照射し、10機のストライクダガーに赤い閃光を用いた足払いを仕掛ける。

    10機のストライクダガーは両足を失い、彼らが守っていた背後の自走リニア榴弾砲は10両も大破炎上する。その直後に発射した高エネルギービームライフル3連射で自走リニア榴弾砲1両とブルドック2両を撃破、その奥の指揮車とレーダー車にビーム突撃砲を撃ち込み爆散させる。

    上空からは、シホ先輩が撃ち下ろしたキャットゥス500mm無反動砲でストライクダガー隊長機を爆散させている。
    彼女も私に続いて機体を降下させ、右手ではスレイヤーウィップを打ち払い、ストライクダガーの頭や腕を両断し、自走リニア榴弾砲の砲身を横薙ぎに焼き切り、発射した瞬間のミサイルを破壊することでブルドックに致命傷を負わせていく。

    私は自らが空けた隊列の穴に突進し、両足のビームクローを出力し地面に転がるストライクダガー2機に止めを刺す。同時にビームサーベルを左手に抜き放ち、隊列の立て直そうとするストライクダガーを斬り、右手は近距離から別の1機を撃ち抜く。

    敵陣の真っ只中に突っ込むと低空で機体を横に一回転させながら、カリドゥス改・複相ビーム砲の猛火で周囲360度を焼き尽くす。ブルドック12両、自走リニア榴弾砲10両が大炎上を始めるのを確認しする。

  • 155二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 02:24:29

    ギーベンラート飛行隊で一緒に戦った中隊長が命令の声を通信機越しに響かせている。

    第4中隊長「隊長と副隊長に続け!バビ3個小隊9機はこの好機を無にするな!飛行形態のままアルドール複相ビーム砲を陣地に照射しつつ旋回せよ!ディンも一緒に飛び、ビーム突撃銃と76mm重突撃機銃でミサイルからバビを守れ!グフ隊は斬り込め」
    第4中隊一同「了解!」

    見る見るうちに、敵防空連隊は蹂躙されて行く。少し安心したわ。そんな状況でないことは分かっているけれど、皆は能なしでは決してない。

    カオスの電力の残りも確認する。後は48%ね。

    こちらが防空陣地を攻略するなか、バルチ―スクでも激しい戦闘が交わされている。

    バルチ―スク飛行場手前のゼリョンナヤ・アメリカ野生動物公園に身を潜めたルナマリア隊。バルチ―スク飛行場は言うまでもなくバルチ―スク海軍基地の対岸、特に東側の港からは丸見えだ。

    これまで縮こまっていたブルチック艦隊も航空団の動きを見て強気になり、デモイン級2隻、
    アーカンソー級2隻、フレーザ級26隻は港の中でミサイル発射シークエンスを開始する。

    ただ、私の指示を守る第1から第3飛行中隊が接近しては離れてを繰り返しているため、上手く攻撃のタイミングを掴み切れない。艦隊の対空ミサイルランチャーから教導航空団に向け、対空ミサイルも発射しているが、彼らの回避運動に除けられ、ビーム突撃銃、76mm重突撃機銃の弾幕に阻まれている。

    アグネス「(回避運動の方は不安でしょうがなかったけれど、まずまずね)」

    ほぼ同じタイミングでバルチ―スク海峡グダニスク湾からアビスの突入が図られる。

    バルチ―スク海峡北岸は多数のトーチカで要塞化され、岬にはヘルダートタイプ・ミサイルランチャーが26門、50mmガトリング砲35門、地対空75mmバルカン砲塔システム50門が配備されている。

    ただ、海峡に面した箇所に建つこの州の史跡、星形要塞のピラウ城塞は手つかずで保存してある。星形要塞と言うとシン達日系人には五稜郭が想起されるのではないだろうか。

    アグネス「(あの文化財、私達も破壊するべきじゃない。そもそも文化財への攻撃は違法だからね)」

  • 156二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 02:36:00

    そしてー。

    敵の注意がギーベンラート航空団の動向とバルチック艦隊の命運に向き、グダニスク湾からの脅威から気がそれる瞬間が来る。本来、彼らにとってあってはならないこと。しかし、彼らの神経も昼から-それ以前からの-神経戦で限界が来ている。

    海峡やや北寄りの浅水域から、アビスのバラエーナ改2連装ビーム砲のビームが飛び出し、50mmガトリング砲2門を爆散させる。そのまま岸に向かいつつ、もう1斉射し、50mmガトリング砲35門を追加で2門破壊する。

    そのままアビスを敵の射線に作った隙間に滑り込ませ、即座に宙に飛びあがり、両肩シールドを開けMA-X223E・3連装ビーム砲を発射、胸のカリドゥス複相ビーム砲も同時に薙ぎ払い、ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー16門を爆散させる。

    そこでアスランの声が響く。

    アスラン「ハイネ!残りは俺が…。西の港、奥のスペングラー級2隻を先に!」
    ハイネ「ありがとうな!」

    真上から逆さまに降下するセイバーが放つアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲が己に向かうミサイルごとヘルダートタイプ・ミサイルランチャーを複数門焼き払い、スーパーフォルティスビーム砲の連射が地対空75mmバルカン砲塔システムを破壊していく。

    ここが決め時だろう。

    アグネス「第1から第3中隊、対ビームシールドを構えたグフ隊を下にして、トーチカ群に攻撃を仕掛けよ!その次はフレーザ級に!飛行形態のままのバビ隊の爆撃を先行させて。ただし、カリーニングラードの敵防空連隊はまだ健在。全機、全力で攻撃した後、一撃離脱しなさい。ただし、ミサイルと機関砲弾は可能な範囲で温存すよ。アスラン先輩、後は彼らに。ハイネ先輩の援護を!」
    第1、第2、第3中隊長「了解!」
    アスラン「了解」

    このやり取りの真っ最中にアビスのフルバーストが西の港に続く水路に出炸裂し、停泊中だったデモイン級1隻とアーカンソー級1隻、フレーザ級6隻が大爆発を起こして大破着底に追い込まれる。

    爆発の閃光と轟音は対岸の私達の下にも轟き、旋風が吹き付ける。

    アグネス「(え…。何が起こった?!私は要塞をどうのこうの話していたのじゃなかったか?)」

    バルチ―スク海軍基地と市街地に爆風が吹き荒れる。8隻分の軍艦が武器弾薬を満載したまま爆発したのだ。あまつさえ、ミサイルは発射準備完了していた。

  • 157二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 02:49:15

    ハイネ先輩の攻撃を合図としたようにヴィスワ潟側の港ではアッシュ隊が攻撃を開始している。

    まず、彼らの2連装フォノンメーザー砲に貫かれたデモイン級1隻とアーカンソー級1隻が大爆発し着底する。続いて浅水域から試製推進器複合型多目的ミサイルランチャーを用いて対艦ミサイルを8発発射、フレーザ級4隻を大破させ一撃離脱していく。
    アグネス「(賢い立ち回りだわ。フェイズシフト装甲を備えていない機体はより工夫が必要とされる)」

    しかし、戦力のバランスが崩れる瞬間というのは、端から見るとこうもあっけないものとは!何度も立ち会っているはずなのに、指揮官として見ると驚いてしまうわ。

    それは艦隊だけの話ではない。バルチ―スク海峡を睨んでいた多数のトーチカは既にアルドール複相ビーム砲24本が引き起こした業火の中に沈んでいる。

    健気に空を撃ち続けていた地対空75mmバルカン砲塔システムはキャットゥス500mm無反動砲とドラウプニル4連装ビームガンが沈黙させる。おそらく、命令通り複数隻のフレーザ級も仕留めていることだろう。

    自分が命じたものとは言え、状況の変化に頭が付いて行けていない。いや、それは敵も同じ、それ以上にひどいはず。追いつけていない自分を自覚して次の行動をするべきだ。

    中破したストライクダガーの手柄は部下に譲り、自分はビームサーベルで自走リニア榴弾砲5両を斬り捨ている。本当に通常兵器にこそ手こずらされる。

    戦闘中もお構いなく通信は入って来る。一パイロットなら切るところだわ。

    バート「アグネス…隊長、航空団は要塞破壊を完了後、ヴィスワ潟を5時の方向に向け急速離脱中です。損害無し」
    アグネス「バートさん、ありがとうございます」

    作戦を支援してくれているミネルバから嬉しい知らせを受け取る。中継映像を更に確認、さっきから雑音と乱れが生じ始めていたから助かるわ。

    私が見るに今日はバルチ―スク市最大の厄日と言えるだろう。
    アビスは高速で水路にそって進み、飛び上がり、また前進する。無論、夥しい死を振りまきながらだ。そして、彼と息を合わせて支援砲火をするアスラン、セイバーによって西の港はあっという間に火の海となった。

    相次ぐ大爆発に町がどの程度の被害を受けたのかは知る由もない。残念ながら手足を必死でバタつかせながら海を舐める炎で焼き尽くされる命にも構ってあげられる余裕はない。

  • 158二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 07:38:19

    えげつないことになってるけど要塞攻撃せずに済むかな

  • 159二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 08:11:01

    アビスがここまで輝く二次創作も珍しい

  • 160二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 18:47:40

    というかセカンドステージ全機が活躍する二次創作がそうそうない

  • 161二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 00:15:36

    瞬く間に西港内のバルチック艦隊は戦闘艦のみならず支援艦、輸送艦も大破炎上している。

    東港内にはアッシュ小隊と教導航空団の攻撃を生き延びた艦船が数隻残っていたが、これも今、モニターの向こうでアスランに沈められている。
    戦闘艦34隻、支援艦や輸送艦を含めれば攻撃開始時点で90隻以上を誇っていた艦隊が今日、その最後を迎えたのだ。

    コックピットモニターの向こうではピラウ半島の浜辺から、ストライクダガーが大隊50機駆けつけてきている。当然、間に合う訳もない。セイバーは飛び去り、アビスは水路を逆にたどって海に戻った後だわ。

    彼らの名誉のために言うなら、この大隊はサボタージュをしていたわけでは無い。ストライクダガー隊の一部は、グダニスク湾上空からの攻撃に備え、バルチ―スク海峡北岸から北東延びるにピラウ半島沿岸に配備されていた。おっとり刀で駆けつけてきた、というには酷だろう。

    アグネス「(守りに入った軍隊はこういう時、弱い。攻撃側が兵力を集中できるのに対し、守る側は軍をのっぺり全体に配置しないといけないから。無理をこらえて攻勢をかけるメリットがここにある)」

    だからと言っていつも攻勢をかけるのが正解という訳でもないけれどね。

    シホ「隊長、敵防空隊の殲滅を確認しました」

    背後の副隊長機からシホ先輩の通信を受ける。向こうと同時にこちらの防空陣の敵も殲滅されている。喜ぶべきだろう。

    アグネス「了解。味方と合流を。9時の方向に飛行開始せよ」
    シホ、第4中隊長「了解」

    まず、味方の戦力を集め、2分後の決戦に備えるべき-。
    そう思いスラスターを吹かしたところに次の急報が入る。

    AWACSディン「報告!バルチ―スクに向かって3時の方向からダガーL2個連隊175機、飛行してきます。このままだとヴィスワ潟上空で6分30秒後に接敵します!」
    アグネス「チェルニアホフスク飛行場から出撃した部隊ね…。結構!」

    敢えて強気で言い放つ。いつも攻勢をかけるのが正解とは限らない。電力も消耗している。多分、セイバーが一番危ない。難しい局面だわ。

  • 162二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 00:23:49

    なら、無茶させるべきは消去法で一人しかいない。本当にごめん。私が人に謝る日が来ようとは。

    アグネス「ルナマリア!バクゥハウンド小隊を率いて、ゼリョンナヤ・アメリカ野生動物公園の小道を駆け抜けバルチ―スク海峡を突破して!海峡は幅400m、深さ12m、機雷封鎖はされていない。
    ガイアとバクゥハウンドは一時的に水が機体の数十㎝上に行くけれど、渡れるはず。渡ったら、まだ心理的ショックが抜けていないストライクダガー大隊を斬り伏せ、対岸のピラウ半島を北上、サンビア半島西部の海浜もそのまま北上してドンスコエ市の基地を襲撃して!ハイネ先輩は彼女の援護をお願いします。アスラン先輩、ドンスコエの対MS戦闘ヘリコプター2個連隊には他部隊と間隙があります。皆で敵航空部隊の右翼を西側から押さえて下さい」

    斜め上の立場の人にまで何てことを、と自分でも思う。でも、この状況では止む負えない。

    ルナマリア「分かったわ!」
    アスラン「…分かった」
    ハイネ「了解!」
    アグネス「ありがとうございます」

    私の無茶ぶりに快く…かどうかは分からないが応じてくれる皆に感謝する。ルナマリアは伏せていたガイアを起こすと早速、森の小道を四足獣形態で駆け始める。バクゥハウンド小隊がそれに続く。

    彼らにリスクを取らせたのだから、私も思いっきりリスクを取らないわけにはいかない。

    アグネス「第1中隊から第3中隊、進路修正、相互の中間線で合流。各隊バビとディンは飛行高度を上げよ。グフは対ビームシールドを構えて中高度を。下から自走リニア榴弾砲とブルドックの攻撃があるかも知れない。忘れるな、あなた達は戦友の盾よ。戦闘では、私と副隊長機が斬り込み敵を四散させる。続く中隊は各中隊長の指示の下、2機編隊ないし小隊で連携をとれ!万一のことがあれば、第1中隊長が隊長、第2中隊長が副隊長と繰り上げること」

    ギーベンラート航空団一同「了解!」

    立ち向かうべきはヴィスワ潟上空を覆わんとするモビルスーツ238機、対MS戦闘ヘリコプター344機、更にバルチ―スク海峡の向こうにはまずストライクダガー大隊50機。

    この知恵の輪を解いていかなければいけない。命を賭して、ね。

  • 163二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 00:32:53

    私達の内、最初に仕掛けたのはハイネ先輩だった。

    目標は港の変事を聞きつけ駆けつけたストライクダガー大隊、ルナマリアの援護を早速してくれるとは!
    ストライクダガー大隊50機はバルチ―スク海峡沿いの海岸道をひた走っていた。彼らとて馬鹿ではない。左手の対ビームシールドを海側に突き出しているのみならず、隊列正面の機体は対ビームシールドを前に構え、最後尾の機体は2機で交互に後ろ向きに対ビームシールドを掲げて進む。

    燃え上がる軍港と消えゆく仲間の命を前に敵兵達も必死だ。ただ、この局面では固まって動くよりは散兵で行動するべきだったかもしれない。

    ストライクダガーの隊列が史跡ピラウ要塞前の海岸道を抜けようとする頃、ハイネ先輩は攻撃を決行する。
    アビスはモビルスーツ形態のまま、勢いよく海峡から飛び出し、ビームランスを縦列になっているストライクダガー1機に彼が持つ盾を避けて、斜めに突き出す。

    ビームの穂先でコックピットを貫かれたストライクダガーはパイロットの絶命と共に機能を停止する。そのままアビスは、まるで三国志の武将のようにビームランスを大きく回転させ、前を走っていストライクダガーを両断し、後ろを走っていた機体の胴体部にランスの実体剣の『戈』のピッケル部を突き刺し、動きを止める。ハイネ先輩はそのままアビスをストライクダガーの隊列に割り込ませる形で上陸させる。

    ビームランスの実体剣に突き刺さったストライクダガーを背後の盾とし、まず前列を真後ろからカリドゥス複相ビーム砲で撃ち抜く。逃げ場のない道、一度に20機の敵機がコックピット部付近を焼き抜かれ、爆散していく。

    流れるように機体を、360度回転しつつ、両肩部シールドを開き、ギリギリまでランスで突き刺したストライクダガーを障壁にした後、飛び上がり3連装ビーム砲を発射する。シールドの開き具合を工夫して6機を撃ち抜き爆散させる。

    着地と同時にモビルアーマー形態に変形しながら再度海中に飛び込む。その際、M68連装砲を発射して敵を2機撃破することを忘れない。

    幸先の良いスタートとなったわ。生き残りの22機は軍港救助を一旦諦め、ピラウ半島西側の海浜に撤退していく。これでルナマリア隊の上陸は楽になる。

    次はセイバー、アスランの番だ。

  • 164二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 00:39:58

    アグネス「(ドンスコエの対MS戦闘ヘリコプター2個連隊236機はこの上空戦の要。ただ、飛行場の位置関係の都合上、モビルスーツ部隊との合流に僅かなタイムラグがあるわ)」

    そのタイムラグに付け込み敵の漸減を図るべき。

    そして、言ったあと気が付いたのだけれど、アスランはバルチ―スク海軍基地の襲撃直後から、ピラウ半島東側のブ二タ・プリモルスカヤ湾上空を北上していた。

    おそらく私がお願いしなくともヘリコプター部隊を攻撃するつもりだったのだ。余計なことを言ったかもしれない…。

    彼の機体は、対MS戦闘ヘリコプター部隊と会敵を目指す道中、あの防空陣地の上空を掠める。陣地には自走リニア榴弾砲100両とブルドック12両、ストライクダガー12機が空を睨む。

    アスランは怯むことなくセイバーの機動力を活かして、アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲の火柱を下して自走リニア榴弾砲20両を焼き払い、スーパーフォルティスビーム砲の連射で更に8両を撃ち抜く。直後に一撃離脱、タイミング遅れの榴弾とミサイルがセイバーの影を射抜くが、何の意味も無い

    セイバーはそのまま、本来の目標たる対MS戦闘ヘリコプター2個連隊に接敵する。連合の対MS戦闘ヘリコプターの武装は20mmバルカン砲、8連装ミサイルポッド×2、3機小隊ごとにフォーメーションを組んで飛行している。

    アグネス「(凄く単純な計算だけれど、236機なら3776本のミサイル弾幕を叩きつけることが出来るわけね。フレンドリーファイアを避けるため、編隊のフォーメーションの都合等で実際は無理だけれど)」

    そして彼ら彼女らが不運なことは、よりにもよって相対したモビルスーツが空戦能力特化型であったと言うこと。ウィンダムの援護が有ったならともかく-。

    セイバーは正面から撃ちだされたミサイル群をその高速と機動力を武器に軽々と躱していく。向こうも馬鹿じゃないから見越し射撃で避けた先にもミサイルを大量に撃って来る。

    勿論、アスランが全て避けてしまうことは言うまでもない。機体をロールし、宙返りし、逆宙返りしながら、アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を発射する。普段より高密度で飛行していたヘリコプター連隊の内20機が撃墜される。中に乗っていた者は地面に叩きつけられる前に燃え切ってしまう。

  • 165二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 00:49:10

    彼は主砲の発射と同時にスーパーフォルティスビーム砲を連射して、左右で合計10機を撃ち落とす。直後にヘリコプター群のど真ん中に突進、モビルスーツ形態になるや両手に引き抜いたビームサーベルを四閃して敵機8機の翼を捥ぐ。

    セイバーはビームサーベルを縦横無尽に振りまわしながら、頭部の20mmCIWSも回転させ、自身に飛んでくるミサイルだけでなく16機の対MS戦闘ヘリコプターを撃ち抜く。敵コックピット内のパイロットは肉体がバラバラになっただろう。

    そうして敵機の群れを突き抜ける直前に高エネルギービームライフルを三連射して6機を撃ち落とす。角度を調整して1発につき2機を吹き飛ばしている。

    突き抜けたらモビルアーマー形態に変形して同じことを繰り返し、合計120機の敵機をヴィスワ潟手前で漸減することに成功する。

    しかし、セイバーの神通力もここまでだわ。何故なら…。

    アスラン「すまない。電力の消耗が激しい。後、24%を切っている」
    アグネス「ありがとうございます。ただ、セイバーはその存在自体が大きな牽制になっています。沖のミネルバへの補給は少し待って下さい」
    アスラン「分かった」

    因みにミネルバはスカンジナビア王国ゴットランド島と西ユーラシア連邦エストニアのサーレマー島の中間地点を飛行中だ。
    シンとショーン、デイルはボーンホルム島からフィンランド湾入り口に転戦し、フリーダムに不殺撃破され、サンクトペテルブルクを目指して落ち延びるウィンダム・ダガーLを武装解除・降伏させている。
    そして全武装を投棄させた敵機のうち小隊長以上の者はミネルバ付近まで飛行させ、パイロットは収容し、機体は爆破している。その他はエストニア・ヒーウマー島の現地の西ユーラシア軍に引き渡している。武装放棄に応じない機体は無論、その場で撃墜している。

    奮戦しているのは私だけじゃない!

    そして、私とシホ先輩の眼前にはモビルスーツ214機と対MS戦闘ヘリコプター244機の大編隊が迫る。24機はアスランに蹂躙されたヘリコプター部隊の応援に行ったようだ。

    レーダーが敵の光点でいっぱいになる感覚は久しぶり…でもないのよね。乗り切るわ、今回も!

  • 166二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 09:13:35

    保守

  • 167二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 11:24:41

    控え目にって、魔女の婆さんの大釜の中なのかなここは?

  • 168二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:16:04

    連合視点だと月光のワルキューレ含めてミネルバ隊の戦果は化け物としか言いようがない…
    一般ザフト兵視点でもそうだろうけど

  • 169二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 00:27:59

    >>168

    某議長「これもデスティニープランによる人材抜擢のおかげさ。余計な物も混ざったが最終的には結果オーライと言うやつでね

  • 170二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:32:21

    私達と敵部隊、互いに突進する。地球連合の編隊は低空を対MS戦闘ヘリコプター244機に任せ、中高度をダガーL150機、高高度にウィンダム188機と言った割り振りになっている。

    アグネス「(つまり地球連合軍は『3階建て』。そして各航空団を巨大な雁行陣になって進んできていると)」

    しかし―、このやり方は敵失と言える。せっかくのジェットストライカーパックなのに。足が遅い対MS戦闘ヘリコプターに合わせて飛行するとは!

    無論、これには敵なりの訳がある。
    思うに、低高度の対MS戦闘ヘリコプター、中高度のダガーLがザフトの攻撃を凌いでいる間に高高度のウィンダムは同じ高さの敵を排除する。その後、一気に降下して、上と下で挟み撃ちを仕掛け、私達を殲滅させるのが狙いなのだ。

    対して、ザフト軍ギーベンラート教導航空団は高高度にディンとバビ、中高度はグフ、低高度には機体を配置していない。

    中隊単位を思い切って割り、小隊ごとの連携を任せることになった。当然、中隊長の調整も入るけれど。どんな結果になるか。

    そして、私とシホ先輩のカオスとグフ副隊長機は、味方の教導航空団から大きく突出して進む。カオスはずっとモビルアーマー形態のままだわ。

    敵のミサイルが私達をロックオンする直前、ハイネ先輩の声がコックピットに轟く。

    ハイネ「アグネス、シホ!敵の右翼下に!『伏せカード』をひっくり返す!」
    アグネス「はい!?」

    何だか分からないままカオスの機首を敵、右翼下の対MS戦闘ヘリコプター部隊に向け、ハーネンフース機と共に急降下していく。

    ただ、実は私もこの方向の攻撃を考えていた。

    アグネス「(右翼のヘリコプター部隊はアスランの攻撃から逃げ延びた生き残り達。本来なら再編するべきなのだけれど、状況的に敗軍をそのまま組み込んでしまっている。だから、敵右翼の1段目の士気は圧し折れ、弾薬も乏しい)」

    だから、敵軍の鼻先で左斜めに急降下し、一瞬、水面すれすれまで高度を落とした後、急上昇しながら中段のダガーLと3段目のウィンダム隊を叩くと言う腹積もりは立てていたのだけれど…。

  • 171二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:47:09

    つまり同じことだわ!そう思い直し操縦桿を握りしめる。行くわよ!

    カオスを10時の方向に向けて急降下させる。シホ先輩も斜め後ろに着いて来てくれている。一瞬前まで私達がいた空間は、たちまち数十発の無誘導ロケット弾でハチの巣になる。

    斜め下に向かう私達にもヴュルガー空対空ミサイルが100発以上発射され、追いかけてくる。機体を必死にバレルロールさせ、左右、上下に細かく機体を振って懸命に避ける。

    救いは降下先の対MS戦闘ヘリコプター部隊からほとんどミサイルが飛んでこないこと。私のカオスとシホ先輩のグフが、敵前斜め横断をやり遂げ、目線がちょうど敵1段目右翼の対MS戦闘ヘリコプター部隊の下になった瞬間から弾幕が一気に薄くなる。やはりセイバー戦での弾薬消費が激しかったみたい…、なんだ!?

    突然、眼下の海面からフォノンメーザー砲が6本飛び出し、同数の対MS戦闘ヘリコプターを撃ち落とす。

    目の前の光景がスローモーションになる。実はさっきからそうなっていたのだけれど、度合いが違う。撃ち抜かれた対MS戦闘ヘリコプターがバランスを崩し、木の葉のように舞いながら水面に向かって落ちていく。機内で驚愕し、叫ぶ地球連合軍パイロットの顔まで見える。

    ほぼ同時に試製推進器複合型多目的ミサイルランチャーから発射された31発のミサイルが私達の進行方向で炸裂し、バラバラになり焼け焦げた金属片と赤黒いぶよぶよした肉の塊が雨のように水面に叩きつけられる。

    水面から緑色の腕が6本出たかと思えば23mm2連装機関砲が炸裂し、6機の敵機が撃墜される。アッシュ小隊だわ!ポーランド側に戻ったかと思っていたのに伏せていたのね!

    彼らは高エネルギービーム砲を各機4門ずつ、時間差をつけて発射するとまた海中に潜って見えなくなってしまう。彼らが3つの波紋が静かに広がる前に炎上しながら、叩きつけられる12機の水飛沫がヴィスワ潟の水面をかき乱す。

    刹那の間とはこのことを言うのだろうか?では、彼らが稼いでくれたその間を使ってなすことは…決まっている!

    カオスの機首を一気に上げ、機体を急上昇させる。アッシュ小隊3機が抉り取ってくれた対MS戦闘ヘリコプター部隊の右翼から中央部に向け、私とシホ先輩は突入する!

  • 172二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:50:34

    『1階』を通り抜ける際、同時に胸部の20mmCIWSを回転させ、6機の対MS戦闘ヘリコプターを撃ち落とす。シホ先輩は両手のドラウプニル4連装ビームガンで8機撃墜、スレイヤーウィップで更に6機を溶断している。

    そうして、『1階』から『2階』は抉られ穿たれる。ダガーL部隊に足下にカオスの鼻先が付きつけられる。即時に攻撃を開始し、カリドゥス改・複相ビーム砲より噴き出る猛火で敵編隊ど真ん中を掻き回す。

    完全に不意を突かれた12機のダガーLは焼き落とされ、私が同時に3連射した高エネルギービームライフルと2連射したビーム突撃砲の前に続いて5機が撃ち落とされた。

    このまま暴れればダガーL部隊に致命打を与えられるが-。

    アグネス「(『2階』に長居は出来ないわ。敵主力はその先よ」)」

    左手に引き抜いたビーフサーベルを三閃し、ビームクローで開脚蹴りを3連発、9機のダガーLを斬り伏せながら止まることなく急上昇を続ける。

    アグネス「ハーネンフース副隊長!この部隊をお願いします。グフ隊のフォローも」
    シホ「了解!」

    敵ダガーL部隊は、カオスに後続したグフ・ハーネンフース機が『2階』に到着する段になってやっと状況を察知する。勿論、既に手遅れだわ。最初に反応できた3機はグフのスレイヤーウィップで溶断されている。

    シホ先輩はキャットゥス500mm無反動砲を1発だけ撃って命中させると潔く捨て、左手にはテンペスト・ビームソード右手にはスレイヤーウィップを構える。
    彼女が構え直し間も、両腕のドラウプニル4連装ビームガンは唸りを上げ続け、8機のダガーLを撃ち落としている。

    ここから彼女の独壇場だわ。グフは近接戦の乱戦にこそ力を発揮する機体。

    カオスが『2階』に空けた大穴の向こうにはこの航空部隊の主力であるウィンダム隊188機が飛行中だ。迷わず機動兵装ポッドからファイヤーフライ・誘導ミサイルを撃ち放つ。

    奇襲を決められたウィンダム隊はミサイルの弾幕の前に24機が爆散し、爆散した金属片と肉片が黒い雨になってヴィスワ潟に降り注ぐ。

    さらにチャージが終わったビーム兵器をフル稼働させる。高エネルギービームライフルとビーム突撃砲を連射して5機を撃ち、直後に機体を水平方向に駒みたいに回転させながら、カリドゥス改・複相ビーム砲を照射して自機の周囲360度の敵機21機を焼き払う。

  • 173二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:59:24

    敵ウィンダム部隊は味方が焼き落とされて行く様を半ば呆然自失の体で見つめている。

    この鈍さは何と言うことだろう。士気と練度、そして経験、全てが低いとこうもなるのか。練度と経験は如何ともしがたくても、せめて士気さえ残っていたらもっとまともな戦いが出来たはずなのに。

    大義のない戦いの果て、大敵アークエンジェルへの無理な攻撃命令で1級戦力を消耗し、残された者のメンタルはボロボロ。自分で分析していたことだけれど、いざその有様を見ると驚愕してしまう。

    そして―、それでも味方機へのフレンドリーファイアを恐れてミサイルとビームライフルの発射を自重してしまう所に彼らの善性も感じてしまう。それを狙ってど真ん中に突っ込んできたのは私だけれど、彼らも心がある。己が危地に陥った瞬間でさえも。

    それを焼き落とすのが今日の私がなすべきことだ!甘えたことを言うな!

    アグネス「高高度を接近中のバビ、ディン隊に通達!バビ33機、AWACSディンの射線誘導を受けつつアルドール複相ビーム砲を発射せよ!攻撃は私に当たっても構わない!ディン隊は弾幕で敵ミサイルから味方を守れ!」
    バビ、ディンパイロット一同「りょ…了解!」

    その前に固まったようになっているウィンダム小隊3機を高エネルギービームライフルとビーム突撃砲で撃ち抜く。ようやく目が覚めたようにビームサーベルを抜いて迫って来た3機は、左手のビームサーベルと両足のビームクローで順繰りに捌いていく。

    彼らは混乱し、頭の中はカオスのことばかりになっている。或いは『逃げたい』『死にたくない』という思いか。

    そして、私が操縦桿を握り直そうとした刹那、目の前が真っ赤になる。夜の帳が降りつつあるバルト海の夕暮れを33本の真っ赤な太い火柱が突き抜けていく。

    当たったのではないかと確認するが生きている。バビに命じたのが自分だと言うのに情けない。彼らが当てないように撃ってくれているから当然のこと。『私ごと撃て!』で本当に味方に当てたい者などいない。当たっても恨む気はないけれどね。

    彼らの配慮の帰結として、カオスの周囲にはまだウィンダムが残っている。高エネルギービームライフルとビーム突撃砲で次の3機小隊を撃ち抜く。敵も、もう構っていられなくなったのかミサイルを撃ちだすけれど、ピクウス 76mm近接防御機関砲で焦らず、迎撃する。

  • 174二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 02:09:52

    アグネス「(『3階』のウィンダム部隊は今の一斉射で組織的な戦闘能力を喪失したわ。後は掃討戦ね)」

    アグネス「バビはアルドール複相ビーム砲チャージ中は12連装航空ミサイルランチャーとビームライフルを撃ち込め。小隊長の指示のもと攻勢を続行せよ。各機、22.5mm4銃身機関砲、ビーム突撃銃で時機を守れ。ディンはフレアを全弾撃って良い!味方を守れ。まだ、対岸の防空陣地は生きている。忘れるな!」
    バビ、ディンパイロット一同「了解!」

    手元のメーターに目を落とすと電力の残量が37%に。もう、私もさほど余裕がない。

    訓練生、副・中隊長合わせて53機のグフ隊は、『2階』ダガーL部隊、『1階』対MS戦闘ヘリコプター部隊と戦闘を開始している。ダガーL部隊はまだ良い。ただ、下からくる対MS戦闘ヘリコプター部隊が脅威だわ。私達がしたのと同じことをされかねない。

    散り散りになった50機程度のウィンダムはディン、バビ隊に任せ、私は逆向きに敵を貫き降下を開始する。奮戦するシホ先輩と合流を開始したグフ隊、彼女達に狙いを付けようとする後尾のダガーL隊たち。

    そのうち真ん中の中隊を斜め上からカリドゥス改・複相ビーム砲で薙ぎ払い9機を焼き尽くす。同時に高エネルギービームライフルとビーム突撃砲で3機墜として、この世界から彼らの存在を消し飛ばす。

    アグネス「(中段も押しているわ。良かった。やっぱりグフは接近できれば強い)」

    シホ先輩と二人で必死に敵を四散させ、注意を引き付けた甲斐が有ったというもの。

    中隊が消し飛んでできた穴にカオスを飛びこませ、水面に鼻先を突っ込む直前で逆宙返りして、ダガーLを高エネルギービームライフルで2連射し、まだ頼りない訓練生の横腹をビームカービンで狙っていたダガーL2機を爆散させる。

    直ぐに『1階』の後尾に到着、まだ多数の生き残りっている対MS戦闘ヘリコプター群を再度奇襲しする。ピクウス 76mm近接防御機関砲を水平方向に弾切れになるまで撃ち尽くし20機撃ち落とす。次は胸部の20mmCIWSを弾切れになるまで撃って30機を爆散させる。

  • 175二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 02:25:52

    アグネス「(敵の生き残りが少ない…。もしや!)」

    急いで戦闘データを再確認する。やはり、アッシュ隊だわ。彼らはあの後もポーランド側に撤退したと見せかけて、2度の奇襲に成功し、計36機の対MS戦闘ヘリコプターを撃墜してくれていた。

    アグネス「(流石に23mm2連装機関砲も弾切れになっただろうから撤退したはずだけれど、本当にありがとうございます)」

    そして、アッシュを怖がって中途半端な高度に上がった対MS戦闘ヘリコプターの目の前には、盾を片手にダガーL隊に突進してきたグフ隊が迫っていた。彼らは結局、M68 キャットゥス500mm無反動砲で鴨撃ちにされ爆散する羽目になる。

    私の強襲が決まった瞬間に遂に耐えられなくなった両翼末尾の対MS戦闘ヘリコプター2個中隊が逃走を開始する。それを追うように左翼後方の18機も撤退を開始する。

    彼らを33門のアルドール複相ビーム砲から噴き出る真っ赤な滝が真上から流し去る。後には1機も生き残っていない。

    高高度のウィンダム隊はあの後、30秒ほどしか持ちこたえられなかった。勢いに飲まれ背を向けた瞬間、彼らはビームに撃ち抜かれてしまう。ビーム突撃銃に装備を換装したおかげでミサイルを温存することができ、何よりだわ。

    意外なことにダガーL部隊はこの段階でも空域に踏みとどまっている。ストライクダガー時代からの持ち味である連携戦法を思い出したらしい。

    ただ、残念ながら次々と撃墜されている。スレイヤーウィップは乱戦の時本当に便利だわ。皆、未来のエースの卵たちだから、『鞭と鞭が絡まりました』何てことも無い。

    とは言え、そろそろ死傷者が出てもおかしくない。集中力が危ぶまれる頃合いだわ。一気に決めてしまおう。

    アグネス「上空のバビ隊、アルドール複相ビーム砲を敵ダガーL部隊の各小隊に発射せよ!同士討ちにならないよう各小隊の最後尾に!」
    バビパイロット一同「了解!」

    指示の直後、真っ赤な火柱に最後尾の33機が消し炭にされる。

  • 176二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 02:36:28

    これが止めとなり、ダガーL隊は櫛の歯が欠けたように1機、1機と逃げ出していく。


    アグネス「(人間は自分の後ろに味方がいなくなった瞬間に心が折れてしまう生き物。特に苦しい時ほどね。赤い滝が雪崩下るまで頑強な粘りを見せていた闘志もここまでだわ)」


    それにしても-。一斉に逃げれば良いものを…。そんな中途半端な逃げ方をしたので、結局、誰も生き残れない。近距離からのグフの猛撃を前に、連携を崩してしまえば、旧式機に勝ち目はない。


    アグネス「(初めて見る機体でも分かるだろうに…。いや、案外自分も判断できないかも。他山の石にしよう)」


    ダガーL隊殲滅後、コックピット回線にシホ先輩の声が届く。


    シホ「隊長、敵航空部隊の殲滅を完了しました。ただ、各機、補充の必要があります」

    アグネス「確認しました。ありがとうございます。おかげで戦い抜けました。『全機に通達、敵防空陣地への警戒、怠るな!そして―、よくやったわ』」

    ギーベンラート航空団一同「はい!!」


    (カウントMS893〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA21(共同2) 戦闘機46 対MSヘリ245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉 リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲190〈+共同撃破多数〉 ブルドック190〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車7 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等262〈+共同撃破多数〉 対空砲7 空母11 イージス艦16 フレーザ級5 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)

  • 177二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 10:31:49

    個人での武勇どころか指揮官としての名声まで高まりそうな大暴れだなアグネス……。でも本人はもう全身ボロボロ。
    腹黒議長~。これで本当にエンジェルダウンやるの~?アグネスに何かあったら、ZAFT全軍士気駄々下がりだよ~?

  • 178二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 17:45:16

    MSの撃墜スコアがもう4桁間近に⋯

  • 179二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 17:53:49

    敵が密集して襲ってくる状況を逆手に取れるのはいいね
    ビームやミサイルなら1発で複数機巻き込めるし向こうは同士討ちのリスクがあるから迂闊に攻撃しにくくなる

    ⋯つっても並のパイロットなら被弾の一発や二発はするだろうけどねぇ
    本当に相手が悪かった

  • 180二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 19:45:55

    >>178

    コレだけ落とされても次から次へとMSが出てくる連合の国力どうなってんの…

  • 181二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:21:50

    MAは出てこなかったあたり流石に相手の戦力も底が見えてきたのかな?
    単にAA側に集中したか損切りしただけかもしれないけど

  • 182二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:08:03

    ヴィスワ潟の上空で繰り広げられた戦闘はアスランが実行した防空陣地の攻撃からカウントしても2分で終了している。たった2分で数百、数千の命が燃え尽きてしまった…。

    その圧倒的事実に押しつぶされそうになる。

    アグネス「(時間間隔、空間認識、人としての価値観が麻痺してしまいそう。これをどう受け入れればいい?)」

    激烈な戦闘が続いていたのは何も空中だけではない。コックピットモニターの片半分では陸上の地獄が映し出されていた。戦闘に集中している時は気にしていなかったその光景が今になって脳内を掻き回す。

    まず、私の依頼を受けたルナマリアはガイアを操り、バルチ―スク飛行場に周囲に広がるゼリョンナヤ・アメリカ野生動物公園の小道を駆け抜けていた。先導されたケルベロスバクゥハウンド小隊3機も続く。

    彼女達の目標はバルチ―スク海峡の突破にある。海峡対岸を防衛しようとしたストライクダガー大隊は大幅に数を減じられ、西の海岸線に向け後退中であった。味方の残骸をその場に残して-。

    ただ、敵前上陸、敵前渡河は困難を極めるもの。ハイネ先輩の助けが作戦の成否を分ける。

    ストライクダガーが撤退したといって、ルナマリア隊が海峡を無抵抗で渡れるわけでは無い。

    彼らに代わって海峡を守るべく、機械化歩兵部隊の装甲車が市内を進んできていたのだ。彼らはバルチ―スク市を貫くプロスペクト・レニナ道を縦列で強行する。しかし、港町にありがちなことだが、バルチ―スクの道路事情は決して快適なものではない。

    広いとは言えない一本道を無理して通ろうとした敵機械化歩兵部隊は、たちまち渋滞を作ってしまう。

    機械化歩兵の車列がのろのろ進むプロスペクト・レニナ道は、バルチ―スク市内では鉄道と並行して敷かれており、終点駅のバルチースク駅の前を通って西南西に屈曲する。この駅はピラウ要塞の東北東370m、バルチ―スクの軍港に面していて-、当然、軍事利用されている。無論、軍事物資も駅施設と敷地内倉庫に集積してある。軍事目標だ。

    今回の目的からは外れるが、敵部隊攻撃に副次的に発生する戦果なら問題ない。

    そう判断したのだろう。バルチ―スク駅の右手を通って軍港内部に続く水路から、アビスのバラエーナ改2連装ビーム砲のビームが発射され、施設を貫き機械化歩兵の装甲戦闘車車列を攻撃する。

  • 183二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:15:24

    放たれたビームは駅周辺の倉庫を撃ち抜き、その先に停車する複数の貨物列車を貫通し、幾つものレールを跨いだ先の駅舎を貫く。そこで止まることなく、攻撃目標である前の道を通行中の装甲戦闘車列、先頭の2両を撃破する。

    1拍後に火が回った倉庫が大爆発を起こす。相当な爆発だった!海沿いに並んだ倉庫群にも火の手は回り始め、白と黒の煙、真っ赤な炎と大小の爆発がその前から炎上している港の水面と大破した艦船群に混ざり、地獄の業火を地上に再現させる。

    アグネス「(ベラルーシを思い出す。弾薬庫だったのか…)」

    その業火の中をアビスは飛び出し、後続の車両に容赦なく3連装ビーム砲を突き立てる。着地と同時に横腹を晒している装甲戦闘車縦隊を胸部のカリドゥス複相ビーム砲一薙ぎして14両を焼き払う。

    溶断させ、炎上する装甲戦闘車から死に切れなかった歩兵たちが燃えながら、這い出して来る。しかし、ハイネ先輩はそれを一顧だにしない。3連装ビーム砲を数回発射した後、装甲戦闘車の機関砲を避けようともせず、対戦車ミサイルは20mmCIWS で撃墜し、降車して展開しようとする歩兵は12.5mmCIWSでバラバラにする。

    陸に上がるや駆け足で、直線となっているプロスペクト・レニナ道で仁王立ちし、やや屈んで高さを合わせた後、装甲戦闘車縦隊を真正面からカリドゥス複相ビーム砲で撃ち抜く。

    渋滞気味だった装甲戦闘車は半分以下の高さとなる。上の半分は溶けてしまったから。下半分も無事な訳はなく50両以上の車両が燃え上がり、中からは溶けた金属を浴び、破片にズタズタにされ、大やけどを負いながら即死できなかった歩兵が這い出し、飛び出し、転げまわる。

    残念ながら皆助からない。上空からバルチ―スク市に赤い線が一本引かれたようになっているだろう。内に抱く港も神々しいほど激しく光り輝いている。

    何より感心するべきは、ビームは車列の最後の一両で、つまり後方に立っている民間住宅に届く手前で消えたこと。ちゃんと『セーフ判定』が出る中で戦闘を終えている。

    無論、軍用倉庫攻撃に起因する諸現象や攻撃に端を発する延焼までは考慮しようのないこと。彼はそう割り切っているのだろう。

    機械化歩兵部隊に大打撃を与え、長居せず、アビスは水路に戻り、また身を潜める。この戦闘を行いながら、私にアドバイスもしていたのだから、その胆力、恐れ入るばかりだわ。

  • 184二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:24:15

    一方のルナマリア達は体高を数十㎝上回る海水をものともせず、バルチ―スク海峡を渡り終え史跡ピラウ要塞の前に駆け上がる。その時点で西の海岸に逃げ延びようとするストライクダガー22機の運命は決した。

    彼らの背中を2門のビーム突撃砲と高エネルギービームライフルが撃ち抜く。ほぼ同時にバクゥハウンド小隊からもウィザード頭部リトラクタブルセレクション内ビーム砲6門が火を噴く。射線が被らないように工夫して放たれた砲撃は6機のストライクダガーを爆散させる。

    ガイアが四足獣形態のまま、グリフォン2ビームブレイドを展開し、左右にステップを踏む様に突進しすると、慌てて振り向きビームライフルを構えようとした7機が連続して切り裂かれてしまう。最後の2機は勘が良くビームサーベルの方を手にするもほぼ効果なく前足に蹴とばされた後、後ろに回り込まれながら真っ二つになって果てる。

    敵航空部隊から別れた24機のダガーL2個中隊が援軍として駆けつけたのはそのタイミングだった。

    すでに助けれべき味方が殲滅された状況を目の当たりにして、彼らは撤退を図る。しかし、その背後にセイバーの赤い影が迫っている。

    アスランは私に電力残量の危機を伝えた後も、電力消費が少なく済む高エネルギービームライフルや20mmCIWSで防空陣地の攻撃を敢行してくれていた。その彼がルナマリア援護に駆けつけてくれていたのだ。

    アグネス「(私達の戦闘中に防空陣地の攻撃が不発だった理由の一端もそこにある。彼が気を引き、攻撃を続けたおかげで自走リニア榴弾砲は残り46両、ブルドックは10両、ストライクダガーは9両まで戦力を減じているわ)」

    そうして、一仕事を終えた彼は、ダガーL2個中隊の背後に音もなく接近するとモビルスーツ形態に変形し、編隊を貫きながらビームサーベルを左右で3閃し6機を斬り墜としてしまう。

    退路を失ったダガーL中隊は気圧されたように下がるが、下からはガイアのビーム突撃砲と高エネルギービームライフル、ケルベロスバクゥハウンドのウィザード頭部リトラクタブルセレクション内ビーム砲が襲い掛かり、斬られた味方6機が地上に落ちる前に9機が空中で爆散する。

    ここまでが教導航空団が戦っている最中、たった2分間に起こったことだ。

  • 185二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:35:25

    今、私のコックピットモニターには三つの敵が映っている。まだ油断ならない防空陣地とセイバーに殲滅されつつあるダガーL隊、そして後、4分30秒後でここに辿り着くチェルニアホフスク飛行場ダガーL2個連隊175機。AWACSディンが中継してくれている。

    モニターの向こうでは、アスランが下から空を駆け上がりビームサーベルでダガーLを6機、斬り墜としている。ピラウ半島の戦況は優勢だわ。私は次の指示を-

    ダガーLパイロット小隊長「降伏する!俺が最後の小隊長だ。この3機で降伏する。もう耐えられない!武装放棄する。亡命させてくれ!」

    国際救難チャンネルの放送がコックピット内の空気を震わせる。アスランに追い詰められたダガーL隊の最後の3機、その小隊長がオープン回線でそう宣言し、各機ビームカービンとシールドを投げ捨てて見せる。

    急いで国際救難チャンネルをオープンで返信する。
    アグネス「攻撃一時停止、ピラウ半島上空のダガーL小隊に限り!ダガーL小隊長、聞こえますか。亡命の申し出は保留。降伏には完全な武装解除を求めます。アスラン先輩、彼らを降伏阻止を図る勢力から護衛してください」

    アスラン「分かった」、ルナマリア「分かったわ」、ハイネ「了解!」、シホ「了解!」

    通信回線から、皆の何処か安堵したような声がする。無論、そんな感情を抱いてよい戦況ではない。口が塞がっているので手でデバイスを叩き、教導航空団への指示は続ける。

    アグネス「降伏を申し出たダガーL小隊長に次ぐ。セイバーの監督の下、グダニスク湾上空に飛行、ビームサーベル、スティレット投擲噴進対装甲貫入弾、空対地ミサイル・ドラッヘASMは投棄。無誘導ロケット弾ポッド、3連装ヴュルガー空対空ミサイルポッドについてはセイバーの指示の下、軍民がいない方向に全弾発射し、ポッドの中を空にせよ。トーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器も同じく、指示された方向に全弾撃ち尽くすこと。その他と武器を持っていた場合も投棄すること。これが済んでから正式に降伏を受諾します。こちらの勢力圏に移動後、機体の引き渡しも求めます。回答を求む」

  • 186二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:44:37

    やや強引の口調になってしまう。敗将を辱めたいわけでは無い。単に時間が押し迫っているだけだわ。
    それは相手も分かっていると思う。

    ダガーL小隊長「受諾する」
    アグネス「貴官の勇戦に敬意を表します。この勇気ある決断に対しても」
    ダガーL小隊長「ありがとう。勇気かは…、分からないが」

    モニターに自嘲するような笑みを浮かべる敵小隊長の顔が映る。そんな彼に敬礼して見せると、彼もまた表情を引き締めて礼を返し、アスランに連れられて西の海上に飛行していく。

    不思議なことに私が予想した防空陣地からの降伏妨害は発生しなかった。ヴィスワ潟周辺の干戈の音が急に止み、不思議な静寂がその場を包み込んでいる。

    ピラウ半島の海浜上空では、ダガーLがアスランの指示の下、捨てられる武装はすべて捨て、安全な方向にミサイルとロケット、機関砲を撃ち始める。その音のみが周囲に響く。

    きっと、皆もう疲れている。いろいろな意味でね。敵も味方も彼らの降伏を目の当たりにして、緊張の糸が切れてしまった。それでも4分30秒後に敵の増援が来る。私達は義務を果たさなければいけない。

    アグネス「(この隙を全力で利用するしかない。嫌な人間になってしまったわ)」

    回線で部下全員に呼び掛ける

    アグネス「警戒を解くな!『月軌道艦隊へ。無力化されているバルチ―スク飛行場に弾薬トレーラーと電源車を投下してください』、第1中隊から抽出したグフ3個小隊9機は飛行場につくまで降下ポットと中からパラシュートで飛び出す車両を護衛せよ。
    『ルナマリア、ドンスコエの攻撃は中止、ヴィスワ砂洲見戻って空港を押さえて』。
    残りの者で防空陣地を攻撃、その後、即時にバルチ―スク飛行場で弾薬を補充できるだけ補充して、敵援軍を叩く。寸刻を惜しむこと。奮戦を!」
    ルナマリア「…了解」
    シホ、ギーベンラート教導航空団一同「了解」

    残念ながら、現実は散文的なものだわ。このまま畳みかけるしかない。

  • 187二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 08:02:55

    保守

  • 188二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 08:12:59

    プラントの偉い人
    「圧倒的ではないか、我が軍は」

  • 189二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 10:20:02

    >>188

    現場「この戦争が始まってから、いつも綱渡りのギリギリ状態。楽て勝てた事なんてありません。偉い人には、それが分からんのです」

  • 190二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 18:10:37

    ほしゅ

  • 191二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:10:46

    月軌道艦隊オペレーター「了解。電源車と弾薬運搬トレーラーを降下ポッドでヴィスワ砂洲北端、バルチ―スク飛行場に投下します。投下!」

    仕事の早い艦隊の皆は即時に行動を開始くれる。大気圏の向こう側で彼らは補給の要請が来るのをずっと待っていてくれた。その貢献と期待に応えないといけない。

    アグネス「お願いします!第1中隊長!」
    第1中隊長「はい。グフ3個小隊、ポッドと中からパラシュートで投下される車両を守れ。空中のみならず、飛行場投下後も対ビームシールドで防御せよ」
    グフ3個小隊「了解!」

    グフ9機が指定された降下軌道に向け、全速で急上昇していく。それを見送る暇も与えず、次々と指示を飛ばす。

    アグネス「第4中隊のグフの内、2個小隊8機は同隊のバビ2個小隊6機と共にバルチ―スク飛行場の滑走路を占拠せよ。
    バビ6機はグフに護衛してもらい即席の対空砲台の役割を果たすように。各中隊のディンは飛行高度を上げて対空警戒を継続せよ。
    残りのバビ27機と29機で防空陣地に止めを刺す。グフはバビの下を飛び対ビームシールドで下からの攻撃から戦友を守れ。私と副隊長が先導する。続け!」
    シホ、ギーベンラート教導航空団一同「了解!」

    私の指示が終わったタイミングで、バルチ―スク西港の奥で2つの爆発が起こり、続いて6つの閃光が煌めき、6つの爆発音が続く。プロスペクト・レニナ道ではなく、湾岸道路で海峡を押さえに向かっていた機械化歩兵の装甲戦闘車がアビスのバラエーナ改2連装ビーム砲とMA-X223E・3連装ビーム砲で吹き飛ばされたのだ。

    その音が号令となって奇妙な戦場の静寂は破られる。

    8両の装甲戦闘車を血祭りに上げたアビス、ハイネ先輩は更にビームランスを大車輪のように振り回しつつ上陸、6両の装甲戦闘車の乗員を先に逝った戦友の後を追わせる。

    連合の装甲戦闘車に何人乗っているか私は把握していないが、仮に歩兵8人、乗員3人なら14両で1個中隊154名が落命したことになる。本当に今更の話ではあるけれど。

    ハイネ先輩はアビスを操縦して、西港から東港から真直ぐ斜めに続く道に立ちふさがる。装甲戦闘車も懸命にミサイルを撃ち、バルカン砲を撃っているが、縦列になっている都合上、前列しか撃てない。それに当たってもヴァリアブルフェイズシフト装甲は貫けない。

  • 192二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:19:22

    そもそもハイネ先輩の操縦の腕前なら、ヴァリアブルフェイズシフト装甲なしでも致命弾を与えるのは至難であろう。

    位置に着くとアビスは即時にカリドゥス複相ビーム砲を発射する。勿論、先程と同様に車列の真ん前から、違いを挙げるなら、今回は住宅が近くに無いため、ビームを多少、振りながら照射できること。

    真っ赤な大光線が西の港から東の港に続く道と隣接した駐車場を舐めた後、その上を進んでいた装甲戦闘車75両と降車して逃げ延びようとした数十の歩兵が炎で焼き尽くされる。

    新たな薪がくべられて赤々と燃え盛るバルチ―スク、焔の熱気がコックピットモニターの左側から私の顔を焼く。無論、錯覚だわ。

    その錯覚に心まで炙られながら、私も同時に防空陣地に急降下を開始する。生き残っていた自走リニア榴弾砲46両は榴弾で必死に弾幕を張る。その一方、10両のブルドックの乗員は車両を捨てて陣地から走って逃げだす。責めることはできないだろう。ブルドックのミサイルはセイバーとの戦いで撃ち尽くされて枯渇しているだろうから。

    ただ、ストライクダガー3個小隊9機はそんな味方を対ビームシールドで庇って、空から襲い来る我々にビームライフルの照準を合わせようとする。死なすには惜しい…、でも、そう言う相手を何人も屠って来た。止む負えないこと、お互いに。

    カリドゥス改・複相ビーム砲でストライクダガーが庇え切れていない自走リニア榴弾砲10両を薙ぎ払う。共に飛ぶシホ先輩が構えた対ビームシールドが彼らの弾幕を防いでくれる。

    そして、同時に高エネルギービームライフルを3連射、ビーム突撃砲も2連射し、ビームライフル発射のため、盾から出ていたストライクダガー5機の右腕を焼き切る。

    そのまま急降下を続け、シホ先輩はストライクダガー4機のビームを躱し、あるいは防ぎながらスレイヤーウィップで彼らの頭を飛ばし、私も地面すれすれに飛行しながら両足のビームクローと左手で抜いたビームサーベルで自走リニア榴弾砲を斜め上から20両切り裂く。翼に爆風の後押しも受けながら、2機で急上昇に転じて-。転じる瞬間に後続の者達に命じる。

    アグネス「今!」
    グフ隊「はい!」

    残りの軍用車両16、半壊したストライクダガー隊9機が次の瞬間、真っ赤な27本の炎に焼き払われる。助かったのは、上手く逃げ切れたグルドックの乗員だけ。最良の者から死んでいく。

  • 193二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:25:53

    アグネス「(降伏させる時間が無かった。敵の援軍が無ければ…。自分に言い訳してどうする!しっかりしろ!)」

    私のくだらない感傷などかき消すようにAWACSディンパイロットから電信が届く。

    AWACSディン「ピラウ半島、海岸付近の森林公園にストライクダガー2個中隊発見!木陰に隠れながらルナマリア隊に…」

    私が何かを言う前にルナマリアが即答する。

    ルナマリア「了解。確認したわ。アグネス、彼らを倒してから飛行場に行く」
    アグネス「分かったわ」

    ピラウ半島西海岸にそって生い茂る森林地帯にガイアが駆ける。四足獣形態のまま放たれる高エネルギービームライフルとビーム突撃砲が樹木ごとストライクダガーに突き刺さる。不意を衝くつもりが逆になった敵中隊は早速、3機を失う。

    ルナマリアはガイアの姿勢を更にぐっと低くして、グリフォン2ビームブレイドを展開し、森林公園の樹木ごとストライクダガーの無防備な膝下を切り裂いていく。チャージが終わり次第、高エネルギービームライフルとビーム突撃も至近距離から発射し続ける。

    たちまち12機が両膝ないし、片膝を失い、9機が撃破される。

    ストライクダガーパイロット達「投降する!もう戦えない!」
    ルナマリア「バクゥハウンド小隊!降伏を表明した機体…転倒中の機体には当てないで!『降伏の意志ある機体はビームライフルとビームサーベルを捨てよ』」
    バクゥハウンド小隊「了解!」

    倒れ込んだストライクダガー数機から必死の降伏宣言が国際救難チャンネルで伝えられ、ルナマリアもそれを考慮する。ただ、まだ立っていた5機にはガイアとケルベロスバクゥハウンドのビーム砲撃が集中し、瞬く間もなく融解していく。

    それを目にした転倒中の敵機は先程、降伏を口にしなかった者もビームライフルを手放している。もう、彼らの戦争は終わったのだ。

  • 194二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:43:40

    だが、私の戦争はまだ続く。バルト海とスカンディナビア半島、オーブとアークエンジェル…、は後回し、襲来する次の敵航空隊を打倒してから考える!

    アグネス「アスラン先輩、今、投降した12人のパイロットを降伏したダガーL2機の掌に載せさせて、ヴィスワ砂洲のポーランド国境側、クリニツァ・モルスカまで護送をお願いします。現地で国境警備中の西ユーラシア連邦軍に引き渡しを」
    アスラン「分かった」

    セイバーに監視の下、武装解除したダガーLの掌に降伏した12機のパイロットは順に搭乗していく。結構荒っぽい護送方だけど止むを得ない。

    戦闘でぐちゃぐちゃになった森林公園に転がるストライクダガーはアスランが1機ずつビームライフルで撃ち抜き処分している。

    アスランに後を託したルナマリア隊は、ようやくバルチ―スク海峡対岸での戦闘を切り上げ、肩上まで海水に浸かりながら海峡を渡り始める。

    驚愕することに、ダガーL投降直後から、これだけのことが1分30秒以内に発生している。頭がパンクしそうだが、そうはならないのは人類という生物の神秘と言うべきだろうか?

    指示を出しつつ、シホ先輩と一緒にバルチ―スク飛行場に着陸する。飛行場には既に降下してもらった弾薬車と電源車が盾を構えたグフ隊の後ろ側に到着している。

    アグネス「補給開始せよ。中隊長、順番を守らせ、最も効率的に。申し訳ないけど、真っ先に斬り込むカオスと副隊長機を優先させて。共に電源を。カオスにはファイヤーフライ・誘導ミサイルと機関砲弾も。ディンにはフレアとチャフを。僅かでも良いからバビにも電源を差して。後、3分が勝負。手が空いている者は中隊長の指示の下、上空警戒、グフは盾を構えて味方を守れ」
    ギーベンラート教導航空団一同「了解!」

    彼らの返事を聞きながら、ふと思う。男性なら捕虜なる決断も選択肢に上げられる。では、女の私は果たしてどうだろう?ルナマリアやシホ先輩はどう思っているのだろう?グラディ提督やメイリンは?

    敵手に我が身を委ねられるのか―。それが何を意味するか分からないほど、私はもの知らずではない。

    アグネス「(そんなこと聞けるわけないわね…。私は―自決一択かな。仕方ないわ)」

    そうならないことを切に願う。

  • 195二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 11:02:38

  • 196二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:05:58

    保守

  • 197二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:42:33

    電源コードがカオスに刺さり、充電が開始される。今は、25%か…。心もとないが致し方ない。ガチャン、ガチャンとミサイルが背中の兵装ポッドに詰められていく。頭部と胸部のCIWSの弾薬補充は自分で行う。マニュピレーターの改良をC.E.72年まで弛まず進めてくれた先人に感謝する。

    アグネス「(本当は整備班の方が上手くやれるのだけれどね)」

    ここにいないはずの誰かの名誉のため、そんなことを心の中でそっと言い添える。グフもバビも蛸足配線上等で電源を繋ぎまくり、命令通りディンにはフレア弾とチャフが押し込まれている。ビーム突撃銃と76mm重突撃機銃の弾丸とマガジンの補充も終えた者から上空に舞い上がり、未補充の機体と入れ替わる。

    グフに乗る訓練生はM68キャットゥス500mm無反動砲の砲弾確保にも余念がない。対ビームシールドのスペアも届いている。今のところ盾を失った者はいないが…。

    AWACSディンパイロット「報告!チェルニアホフスク飛行場からバルチ―スクを目指して飛行していたダガーL175機はカリーニングラード市の南南東13㎞地点で進路を変更しました。新目的地はカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地です」
    アグネス「了解。確かに今、バルチ―スクに来たところでバルチック艦隊は殲滅されている。それなら、カリーニングラード州の最大の軍事空港であるカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地を守ろう、という訳ね」

    私とAWACSディンパイロットの会話をコックピット回線で聞いたシホ先輩から質問される。

    シホ「敵進路を妨害しますか?」

    質問ではない。これは確認ね。

    アグネス「いいえ。距離的に間に合いません。1分と経たず彼らは基地に辿り着きます。そこで空港を守る防空部隊とレーダー、対空砲等と連携して我等を向かい討つ算段でしょう。或いはそう示すことで我々を撤退させよう、と言ったところでしょうか」

    もう、ヴィスワ潟を囲む地で繰り広げられた戦いの勝敗は決している。彼らの負けだ。それは仮に奇跡が起きてこの場のザフト軍が全滅したとしても揺るがない。

    今頃、軍管区司令部は、航空部隊とザムザザー、ユークリッドをアークエンジェル戦に投入したことを悔やんでいるだろう。その決断が彼らのものであったかは私の知り得ないことだけれど。

  • 198二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:01:23

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています