【SS ウマウマ】怒ったチヨノオーには勝てない

  • 1◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:01:46

     私の名前はシリウスシンボリ、今は訳あってフローリングの上で正座している。いやなに……コレも自分がまいた種だ、別にこの待遇に文句がある訳じゃない。ただその、なんというか……

    「シリウスシンボリさん」
    「はい……」

     〝彼女の目〟をまっすぐ見えない自分が情けない。

  • 2◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:02:57

    「シリウスシンボリさん、お付き合いをする際……私は言いましたよね」
    「はい…」
    「シリウスシンボリさんは、とても素敵な方です。ですので、貴方に見初められたいと思う方が出てくる事は責めません……嫌ですけど」
    「はい……」
    「けれど、そういった場合は必ず〝ハッキリと〟否定をして欲しいと言いましたよね」
    「はい………」

     それは私がサクラチヨノオーと恋仲になる際、交わした約束事だ。私自身、自分の見た目が周りより秀でているという自覚がある、自負もある。それが分かってるからこそ、彼女の〝他の人に言い寄られるのは分かっているけと、行かないでね。行くとしても、しっかり私を振ってね〟というお願いを聞き入れたのだ。

  • 3◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:03:26

    「さて……昼に連れていた茶髪の女性は、一体どなたでしょうか」
    「し、仕事仲間です」
    「シリウスさんが好きなら私、全然茶髪に染めるし伸ばすって言ってるじゃないですか」
    「いやっチヨは今の姿が1番だ! 」
    「本当ですか? 」
    「あ、あぁ本当だ」

     サクラチヨノオー笑顔となり、私は少し気を抜いた。そのまま顔の近くで手を合わせ、そのまま口を開く。

    「茶髪の長髪が好きなの否定してくれたらもっと安心出来ました」
    「──」

     今度は私が口を開き、何も言い返せず言葉を失ったまま舌が乾く。

  • 4◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:04:20

    「……まぁ、私も今回は一方的に難癖を付けすぎましたね」
    「ほっ……」
    「一旦頭を冷やすため、3日ほど帰ってきません。申し訳ありませんが、お家の方お任せしてもよろしいでしょうか」
    「おっおう、こっちこそすまなかった」
    「いえ、すみません……」

     そうしてチヨは恐らく事前に用意していたキャリーケースを持ち、外へ出てってしまった。

  • 5◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:04:57



    「で、キミは私の所に来たわけか」
    「……おう」

     私は放心のまま日を超え、気がつけばルドルフと共にカフェでコーヒーを飲んでいた。

    「シリウス、君は控えめに言って……実は物凄い阿呆なのか? 」
    「うるさい」
    「いやそうだろ、冷静に考えて今の状況を見てみろ」
    「はぁ? 」

     バカやって、恋人を怒らせて、信頼出来る友人に相談している。

    「コレの何が阿呆な状況なんだよ、いや確かに阿呆な事した自覚はあるが今は別に……」

  • 6◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:05:26

    「私は君が持つ交友関係の中で、〝一際特別な長髪の茶髪なウマ娘〟であると思ってるが? 」
    「スーッ…………」
    「今マルゼンを呼ぶ、とりあえず今回はそっちを頼るといい」
    「………すまねぇ」

     私は机に突っ伏したまま、ルドルフに謝辞を述べる。

    「もしもしマルゼンか? あぁそうだ、詳しいな……え? あ〜う〜ん……いや、今回は理由が理由だから私は相談相手に不適切かと思ってだな………そうか、了解した。忙しい所すまない」
    「ん? マルゼンがどうかしたのか? 」
    「どうやら所用で手が離せないらしい、仕方ないからラモーヌやエースにでも頼るとするんだな」
    「………エースはともかく、ラモーヌは呆れた顔でからかうだけだろ」
    「君には良い薬だ」

     そう軽口を立てながらルドルフは席を立った。

  • 7◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:05:58



    「よしっと、全く……あの娘もどうしてこう不器用というか、あんぽんたんというか」
    「えっと、マルゼンさん? お電話の方は大丈夫なんですか? 」
    「んっ? うん、もう大丈夫ヨん! ごめんねチヨちゃん、せっかく相談してきてくれたのに」
    「いえ……私こそこんな自分勝手な相談を受けて下さり、ありがとうございます。」

     昨晩私は、シリウスさんと別れた後ビジネスホテルに行き、そのまま電話でマルゼンさんに泣きついてしまった。
     夜、ソレも急の電話だったのに対応してくれ、〝明日私の家でゆっくりお話しないか〟と誘ってくれた。

  • 8◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:06:27

    「やっぱり、3日と言わず今日謝りに」
    「ダメよ、チヨちゃん」
    「ですが……」
    「さっきも言ったけど、パートナーを不安にさせないっていうのも恋人を持つ者として基本のきよ」
    「言いたい事は分かりますが、それでも今回は仕事仲間でしたし、私の勘違いだっただけで……」
    「だとしてもよ……シリウスってかなり執着あるでしょ? 知ってるから」
    「まぁ……否定はしません」

     シリウスさんは、昔から執着心が結構強い方だ。ソレは夢だったり、勝利にだったり、そして──

    「彼女にそういう所があるから、出来るだけ〝茶髪の長髪を持つ方〟に近寄らないで欲しいって思ったのでしょう」
    「ッ!? …………マルゼンさんには敵いませんね」

     人物にだって。

  • 9◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:06:46

    「他人様の関係性、交友関係なんて本来は口出ししちゃいけないんだろうけど……これだけは口を挟ませて」
    「はっはい! 」

     マルゼンさんは、私が脅えないように両手を掌で包みながら、凄く真剣な顔で視線を合わせる。

    「良いチヨちゃん、嫉妬するなとも執着するなとも言わないわ。私だって、〝あの人〟の事となったらそんな事無理だもの。でもね、その心に囚われ支配されちゃったら大事な物全部無くしてしまうわ」
    「………はい」
    「うん、良い子ねチヨちゃん」
    「今度はちゃんと、シリウスさんと冷静に相談できるよう頑張ってみます」
    「そうね、でもそれでもし纏まらなかったらまた相談して。チヨちゃんからの相談なら例え地球の裏側だって駆け付けるわ! 」
    「心強いです! 」

     私はそのまま約束の3日後まで、マルゼンさんにリフレッシュと称して沢山の所に連れてってもらいました。

  • 10◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:08:07



    「シリウスさん、ただいま……です」
    「チヨ、その……おかえり」

     暫しの静寂、両者が内に秘める気まずさがその僅かな時間を、何倍にも伸びてるかのように感じさせた。

    「あっあの! 」
    「あっはい! 」
    「……すみません、私シリウスさんに八つ当たりして」
    「いや、こっちこそすまなかった。恋人であるお前に、配慮が足らず不安にさせちまった」
    「シリウスさん……」

     謝罪を述べるチヨノオーに対し、自分が悪かったと返すシリウス。

    「お前が出てって、頭が冷えたよ。きっとお前は、何時も不安に思っててソレがこないだたまたま爆発したんだと思う」
    「ははは、はい。結構しんどかったです……シリウスさん、とっても綺麗なんで」
    「チヨ」
    「貴方の隣に適うように、貴方の想いに報えるようにと色々努力は重ねてきました。けど、誰とも知らない方が貴方と仲良くしてる。それだけで心が、ザワついてしまいます」
    「すまなかったチヨ、そこまで思い詰めてたなんて」

     シリウスはそう聞くやチヨノオーを抱擁し、再度謝罪する。

    「次からは、チヨにそう思わせない」
    「思わせて下さい、誰の目にも羨望として映る貴方は私の自慢なんです」
    「だが」
    「だから! 」

     チヨノオーはシリウスの腕をゆっくりと下ろし、視線を合わせる。

  • 11◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:08:18

    「周りなんか気にしないくらい、貴方に釘付けにさせてください」

  • 12◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:08:28

    終わり

  • 13◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:08:57
  • 14◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:09:20
  • 15二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 01:10:12

    とっても良かった……

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 01:11:51

    ありがとう

  • 17◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:12:11
  • 18◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:12:27

    >>15

    そう言って貰えて良かったです!

  • 19◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:12:38

    >>16

    こちらこそありがとう!

  • 20◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 01:13:37
  • 21二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 03:31:17

    好きだ
    ありがとう

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 03:49:16

    ありがとう生まれてきてくれて
    めっちゃ良かった

  • 23◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 03:53:04

    >>21

    感想ありがとう!その言葉に救われます!

  • 24◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 03:53:44

    >>22

    感想ありがとう!頑張った甲斐があります!

  • 25◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 11:10:12

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 20:17:04

    完全に尻に敷かれてて笑った
    お幸せに

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 20:20:37

    >>20

    あっ、あの時の人かぁ

    完成おめでとうございます!

  • 28◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 20:22:23

    >>26

    感想ありがとうございます!

    ふ、普段はカッコイイシリウスがイケイケな感じだからww

  • 29◆iGjCJthFblL725/01/05(日) 20:23:05

    >>27

    はい!あの時の人です!( •̀ω•́ゞ)✧ビシッ!!

    ありがとうございます!何とか頑張って仕上げてみました!

  • 30◆iGjCJthFblL725/01/06(月) 07:00:36

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 17:18:06

    保守

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