- 1二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:11:01ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 4|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/4318917/ただしその記憶を自覚したタイミングはフランス事変が起きた後とする現在、シエル√編に進行中bbs.animanch.com
ただしその記憶を自覚したタイミングはフランス事変が起きた後とする
現在、シエル√編(ノーマル√)のDAY13に進行中
- 2二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:14:50
前回のEDも最高でした
復讐も報われないエンドも全部好き文才凄すぎる - 3二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:17:05
一つの区切りお疲れ様でした。
だけどこっちはバッドエンド分岐であってこれからが本番だな... - 4二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:17:53
たておつ
まとめの人のもよかったわ
あれエドモンと誰だろうエデかな?ノエルさんの復讐の決意の硬さがよく分かる - 5スレ主25/01/13(月) 19:33:27
- 6スレ主25/01/13(月) 19:35:09
このスレのノエル先生
・フランス事変後に修道院に隔離されて間もなく『一周目の記憶』を自覚する
・隔離後すぐに代行者として就任。この時点でエレイシアに対する報復を決意し復讐者として生きる
・エレイシアが目覚めて代行者になるまでの六年半でひたすらに自己研鑽&限界を超えるための代償を払い続ける。その甲斐あって原作とは非にならない強さを得る
・人間以上の耐久を得るための一環で左足を聖別化した義足に改造してもらってる
・偶然にも手に入れた十四の石を用いて人外と化す。外見の変化は肌が白くなったくらい。完全に適応してからは恐らく瞳孔も十字になってると思われる
・幻想種の中で神獣に区分される『白鯨』モビーディックの遺骸を直接的な経口摂取で取り込み、更に肉体の存在規模を拡張させる事に成功している
・現時点での強さは少なくともシエルとの連携でなら後継者をも斃せるまでになっている
・というよりシエルとの連携の末に二十七祖のクロムクレイに引導を渡すという大快挙を成しえてしまった
・↑の功績もあって教会から『焔(ほむら)のノエル』という異名をつけられる
・着実に強くなっていってる事と『一周目の記憶』の自分を反面教師にしてる事もあって大分精神が安定している
・ただし完全な復讐者として生きているので高い身分だの裕福な生活だのと言った人並みの幸せには全く固執していない。もはや彼女が望んでいるのはロアやシエルに対する復讐のみとなっている
・そんなんだからマーリオゥからは『手を焼かせる制御不能の猪』と厄介に思われてる - 7二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:37:29
おつおつー
>>弱き人々の盾となって戦うのだ。
ここダイスの総括感あっていいよねえ
シエルの様子見に激怒したり被害者に花を手向けたりと
これまでもこれからもそういう人だと
- 8スレ主25/01/13(月) 19:40:21
有志の人がまとめてくださったチャート&END集
ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界線 | Writening「―――は?」 “ソレ”が私を襲ったのは、私が教会から生き残りの汚染物として身柄を抑えられてから間もなくだった。 何の前触れも予兆もなく、あまりにも唐突に、頭に知らない誰かの情報(きおく)が次々と流れ込…writening.netここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 END2 | Writening私は―――代行者として生きる。 けど、それがどれだけ重い選択なのかは理解してる。何しろあんな、あんな、口にしたくもない吐き気を催すくらいの未来を知ってしまったのだから。 あれが嫌なら、本当は断腸の…writening.netここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 復讐の焔へ至るまで | Writeningうん、今のところ順調ではあるけどもうあと三年と少しなのよね。あいつが蘇らなくていいのに死の淵から這い上がってくる時まで。 次はどうしようかしら――― 1.これからは本格的に階梯の高い吸血鬼を積極的…writening.net - 9125/01/13(月) 20:03:59
立て乙
前スレのラストに感動しました
ここまで虚しい終わり方があるかよ
こういうのが見たかった - 10二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 20:09:42
……5分くらい経っただろうか。シエルも私も何も口にせずにだんまりとしたまま、志貴クンが逃げ込んだ通路の方へと歩いて行く。
そろそろ突き当りかな?そう思っていると、奥の方に彼の姿が見えた。そこには、さっきの礼拝堂の天井みたいな感じで上から光が差し込んでいた。恐らくは、ここらは地上にへと繋がるもう一つの隠し通路なんだろう。
何処に繫がっているかは正確には分からないけど……歩いた距離との位置感覚を考えると、おおよそ北口の繁華街辺りになるかしらね?
まあ、そんなのはどうでもいい。あとはこのまま事の次第を見定めるだけよ。
そうして志貴クンに改めて目線を向けると―――記憶の中のように、力なく壁に背を預けていた。 - 11二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 23:27:24
「――――――」
シエルは黙ったまま、杭打機の先端を志貴クンの胸にゆっくりと当てる。あとはそのまま引き金を引けば全てが終わる。
……筈なんだけど、すぐにはそうせずに彼と見つめ合う。最後にもう一度自分を騙して感情を殺す事の心の整理と、この期に及んでまだ抵抗の意思も恨む素振りも見せない彼に怒りが沸いてるんでしょうね。
「―――一つ、訊きますけど。どうして眼鏡を外さなかったんです。どうして―――ただの一度も、わたしと戦おうとしなかったんです」
「……どうしてって、不思議でも何でもない。そんな酷いこと、先輩にはできないだろ」
「………愚かにも、ほどがある。わたしは貴方を殺すんですよ。わたしは貴方の先輩なんかじゃない。ここにはいないノエルだってそうです。
すべて嘘をだったって、あれだけ言ってまだ分からないんですか、貴方は……!」
ここにはいない、ねぇ。9日目に私が公園に向かう彼を尾行してた時はあっさり気づいてたってのに、今はこんな近くにいても本気で察知できていないとか。
わざとそう言ってんのか、或いはそれだけ内心は切羽詰まってるのか。ま、考える間でもなく後者でしょうね。
「……知ってる。先輩は、ずっと俺を騙してきた。シエル先輩も、ノエルさんも、そんな人たちは初めからいやしなかったんだって、分かってる」
「なら、どうして……!」
「……いいんだ。先輩が嘘でも、関係ない。俺は、すごく楽しかった。先輩やノエルさんと過ごした時間は、二人にとってはどうでもいい時間だったかもしれないけど、俺にとっては大切だった」
…………ふん。そうね、あの仮初めの日々は本当にロクでもない時間だった。
朝に元気よく挨拶を交わして、昼食時には三人で馬鹿みたいに他愛ない話で盛り上がったりして。結局短い間だったけど、本当の学生同士の交流みたいな感じでさ。
復讐に生きると決めて、もう普通の日常なんて何も望んじゃいなかった私からすれば……本当、嫌気が差すくらいの……時間、だった。
「―――だから、いいんだ」
「―――そんなコト。そんなコトのために、命を投げ捨てるんですか。望みは。貴方の望みというのは、その程度のものなんですか」
「……そっか。やっぱり小さい、かな」
………………………………。 - 12二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 07:45:02
保守
- 13二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 09:44:35
「―――わたし、色々な人を見てきましたけど。貴方ほど馬鹿な人は、初めてでした」
シエルは引き金の指に力を入れる。今度こそそのまま引導を渡す……と思ったけど、そうだったわ。記憶の通りならここで懺悔の機会を与えてやるんだったわね。
そのまま撃てばいいのに、そんなもん聞こうとするから記憶の中のアンタは決意がぐらついたのよ。
「……そうですか。懺悔なんてないけど、一つだけ、聞いていいかな」
「―――はい。手短にお願いします」
「……うん、すぐ済む。どうして先輩は、そんなに泣きそうな顔をしてるのかなって、思って」
「―――――――」
ほら、こんなコトを言われる。恨みつらみなんかじゃなくて、憂いの言葉を投げかけられる。彼はどこまでも底抜けのイカれた善人だって、思い知らされる。
「―――わたしは、泣いてなんて、いません」
「……泣きそうな顔に、見える。どうしてか、わからないけど」
「それは貴方の錯覚です。わたしは何も感じていませんから。わたしにある感情は、人間として死にたいというものだけです。それ以外の感情なんて、ない」
何よそれ、ツッコミ待ち?本当にそれしかなかったらそもそも懺悔とか聞かずにさっさと殺すでしょ。どこまでも嘘が下手くそね、この女は。
………大丈夫かな。今のところほとんど記憶の通りに流れていってるけど、まさかこのシエルも……人間に戻ったりはしないわよね?
「……ひどいな。最後まで、先輩は俺に嘘をつくのか」
「―――――――」
ふふふ、志貴クンにまでバレバレじゃない。吸血鬼を殺すのは誰よりも巧いのに、嘘をつくのは溜息を吐くほど下手くそで分かりやすい。きっと、今まで数え切れないほど罰してきた連中たちの一部にも、こういう嘘をついてたんだろうなぁ。
………もっとも、嘘をついてるのはコイツだけじゃないけど。
「貴方こそ、嘘をついてる。ここでわたしに殺されることが望みなんて、思ってはいないでしょう」
「……当然だろ、そんなの。死んだら何もないじゃないか。一応経験があるから、それぐらいは分かってる。
……本音を言えば生きていたい。けど、ただ生きているのは、もうダメらしくて」
ええ、そうよ。仮にここでシエルが見逃しても、その次は私がこうして待ち構えている。キミには本当に気の毒ではあるけど、私はキミ自身の尊厳を守る為にも―――キミを、容赦なく殺すわ。 - 14二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 10:14:59
「……今まで、すごく楽しかったんだ、先輩。有彦と俺と先輩でバカな話をしている時は、悪くなかった。ただの休み時間でも、先輩やノエルさんと何気ない会話を挟みながら一緒に過ごすのは、夢みたいに楽しかった。
……うん。俺はずっと、あのままの時間が続いてほしかった」
それは、思い出のページを一枚一枚と丁寧にめくって懐かしんでいる、どこにでもいる普通の学生の顔だった。
………シエルも今言ったけど、なんて愚かしいの。これから理不尽に殺されようとしてるってのに、口にするのがそんな―――そんな、なんでもない過去の日常を振り返る事とか。
もはやかける言葉もないと割り切ったのか、シエルは杭の先端を微かに食い込ませる。志貴クンもそれで終わりを察して目を瞑る。
あとはこのまま撃てばおしまい。ほら、さっさと楽にしてあげなさいよ。彼、手が震えてるじゃない。汗を流しているじゃない。
彼が覚悟を決めてくれている内に早く、早く引導を渡せ。殺してあげなさい―――殺せ。
「―――――どうして――――――――どうして、そんな。わたしを、恨まないでいられるんですか。
わたし、わたしは、貴方をこうして理不尽に殺そうとしているんですよ……!?騙して、裏切って、悪戯に恐怖を煽って、ひたすらに突き放して、こうして残酷に追い詰めているのに、なんでそんなに穏やかな顔をしているんですか、貴方は……!」
………ああ、なんで。なんでそんなコト言うのかな。なんでこうなんのかな。
「答えなさい……!わたしは貴方を殺すんです。貴方の都合なんて関係なく、ただ一方的に殺そうとしているんです……!
ならせめて、わたしを恨まないと貴方は報われないじゃないですか……!」
そんな理由なんて求めるな。そのまま殺せ。楽にしてやれ。恨む恨まないを気にするとか、戦闘マシーンにそんな余分はない筈でしょう。
ねぇなんで?なんで聞こうとするんだ。このままじゃ、アンタは、アンタも、結局――――――。 - 15二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 10:41:26
「それとも本当に馬鹿なんですか貴方は……!わたしは、貴方を汚らわしい吸血鬼として処理するんです!なのに、どうして―――」
「―――だって、それは、先輩のせいじゃないだろ」
「っ……!」
その言葉が刺さったんだろう、シエルは杭を少しだけ彼の胸に刺し込む。死徒化している彼の肉体にとって聖典の杭は毒そのもの。凄まじい激痛が襲っているに違いない。
「あ―――ぁ、あ………っ!」
「痛いでしょう。本来なら無痛で消してあげられるのに、こうしてわざと貴方を苦しめているんです。
………今まで貴方に付き合わされた分、こうでもして楽しまないと帳尻が合いませんから」
「………チッ」
あ、やば。不快感が振り切れて思わず舌打ちしてしまったけど……気づかれてはいないみたいね、よかった。
―――じゃないわよ。よかったじゃねぇっつの。楽しまないと?楽しまないとっつったかこの女?
ふざけるな。おまえにとっての“楽しむ”は足先からブチブチと丸めて潰したり薄皮にまでノしたり小さな肉塊(だんご)にするまで摺り潰したりする事だろうが。その言葉を使うんならせめて四肢を潰して達磨にしてから目ん玉抉り取るくらいはしろよ。
いえ、ていうかまだ殺さないの?どうしてここまで来て自分からあれこれと御託並べて執行を引き延ばしてんの?
彼をそんな悪戯に苦しめてまで殺そうとしないの?引き金を引かないの?
「ひ――――――アっ!」
「ほら、わたしが憎いでしょう……!だから、だから早く恨んでください!わたしに裏切られたって、わたしなんか信用しなければよかったって言ってください。
そうでないとわたし―――貴方を殺す事が、できないじゃないですか……!」
…………………………………は? - 16二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:16:25
この女、いま何て言った?いや、記憶を見ているから何を言ってるのかはわかる。わかるけど、なんで同じことほざいてんの?
「……まさか。先輩を恨むことなんて、できない」
「や―――――やめてください……!なんで最期までそんなコト言うんですか……!悪いのはわたしで、貴方は被害者だっていうのに……!」
「………」
なんで?なんで躊躇してんの?あの代行者シエルが、吸血鬼なら誰だろうと冷徹に冷酷に始末してきた埋葬機関の戦闘マシーンが、なんであんな、死にかけの標的一人相手にああも狼狽えているの?
「……いいんだ。先輩は悪くないよ。それよりごめん。こんな役目を、先輩に押し付けて」
「や―――――め」
やめてじゃないわよ。早く撃て!! 志貴クンもそんなコト言わないで、嘘でも恨み節の一つ二つ吐いたらどう!?
そうじゃないと、コイツ、コイツも、本当に―――!
「だめ―――わたしは、わたしは―――ロアを、見逃すコトなんて、できない。ノエルを、裏切れない。
そんなコト―――許されないんです、遠野くん」
そうだ。その通りだ。ここで彼を見逃しても余計に苦しめてしまうだけ。どの道ロアの浸食は止めようがない。ならせめて、今ここで慈悲の手向けを送るべきなのよ。
ああ、よかった!最終的には私との誓いを優先してくれて。このシエルは記憶の中と違って戦闘マシーンのままで - 17二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:18:39
「ありがとう。たとえ嘘でも―――先輩が、先輩でいてくれて、良かった」
「………う、う。うあ………あ、ああ、あ。うぁ……あ……あ、あ………う………うあ、あ、あっ……!」
「…………先、輩」
「……ずるい……遠野くんは、ずる、い……!
……あんな……あんなコト言うなんて、ずるい、です……!なんで、わたし、なんか、を……!」 - 18二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:28:46
「……できない……わたし、自分だっていつでも殺せるのに、あんなコト言われたら、できない……!
ありがとう、なんて―――そんな幸せな人を、死なせるなんて、ヤだ―――」
「……先輩。そんなに泣かれると、困る」
「うっ……うう、うあぁぁぁぁぁぁぁん……!」
「…………………………」
あっはは。んふ、ふっふふふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
ああ、なーんだ。なーーーんだ。
やっぱり、結局、案の定、何も変わることなく。こうなっちゃうんだね。
――――――――裏切り者め。 - 19二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 17:48:36
「……ごめん、なさい……!ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
「……謝らなくていいんだ、先輩」
「あ―――――」
アイツは、何度も何度もか細く謝った。懺悔するかのように繰り返した。私にはただの一言も言ってくれなかったその言葉を、こんなにもアッサリと、何度も。
「……先輩。先輩の体、あったかい」
「……違います。あったかいのは遠野くんのほうで、わたしは、イヤになるぐらい、冷たい人間です。
こんなに―――優しい人に、酷いことを、しました」
「……いいです。俺はまだ生きている。だから、もうそれでいいんです。もう……こうしていられるなら、それでいいんだ。
そして―――先輩。俺、先輩がすごく大切だ」
「……遠野くん?」
「俺はやっぱり死にたくない。ぎりぎりまで生きて、こうして先輩と一緒にいたい。いたいから、俺はもう逃げない。自分から死のうなんて考えない。
だから―――お願いします、先輩。どうか、俺がロアに勝てる手助けをしてください」
「……フフ。大きくでましたね。ロアを倒すのではなく勝利する、ですか。それは、今まで誰にもできなかったコトですよ?」
「……勝算なしで大口を叩いているのも承知の上です。でもそうしないともう先輩といられないんだから、やるしかないです」
「―――どんな無茶でも、ですか?」
「はい。俺が死ぬ以外の手段があるのなら、今はそれに懸けてみたい。……あ、いえ、そもそも選択肢があるのかどうかもわかりませんけど……」
「……いいえ、ありますよ。わたしにも分からないけど、きっと―――その手段はあります。
貴方がロアと戦うというのなら、わたしも諦めません。大丈夫、聖堂教会だって無駄に二千年も続いていません!隅々まで探し回ればきっと他の手段が見つかる筈です。
―――まあ、遠野くんがわたしの言うコトを何でもきいてくれるなら、という条件は付きますが」
「なんですかそれ。そんなに無茶なコトばっかりなんですか、教会って。……まあ、ノエルさんみたいな超人もいるって考えたらわからなくもないですけど」
「あー……それは、あまり本人の前では言わないでおいた方がいいと思いますよ。彼女、故あって教会も教会の人たちにも良い印象は向けてないんです。特にわたしには。
ですので下手にそういうと、内心で同じものとして扱われたと思わせてしまうでしょう。気を付けておくように!」 - 20二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:10:37
シ…シエル先輩ェ……
- 21二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:16:37
「そ、そうですか……。わかりました、ちゃんと気を付けておきます」
「よろしい。あと、今の遠野くんは言うまでもなくタイヘンな難病患者ですので、お医者さんの判断を信じてくれないと話になりません」
「そういうコトなら問題ないですね。何があっても先輩が好きですから、俺」
「そ、そうですか。奇遇ですが、わ、わたしも同じですので、信頼関係はバッチリですね!」
「……………」
「え……っと?あ、あの、遠野くん?」
「………ごめん、先輩。もう我慢の限界だ」
「え、はいっ……!?」
「―――――――」
「ぁ……ん………。
………もう。こんな時なのに、男の子なんですね」
「本能に忠実だと言ってください。目の前にこんな可愛い人がいたら、誰だってこうします」
「~~~~……!」
「ん"んっ……………と、とにかく。先輩が手助けしてくれるなら百人力です。まずは教会に行けばいいんですね?」
「―――ええ。本国は無理でも、この国にはいくつかの支部がありますから。……でも。その前に、もっと大きな問題がありました。ロアなんかよりも、もっと大きな問題が」
「? ロアより大きな問題、ですか……?」
「……いえ、少々口が滑りましたね。今はここから出ましょう。わたしのアパートなら、少しは遠野くんを楽にしてあげられると思います」 - 22二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:22:34
「あ、はい。……そういえば、ノエルさんにはこの事はどうするんですか?あの人もロアへの復讐の為に動いてたけど、事情を伝えて納得するでしょうか?」
「そこは……大丈夫、上手く言い合わせます。彼女は今、マーリオゥと一緒にアルクェイドの監視に務めているようなので、わたしたちの状況は知りません。
遠野くんが想定以上に強靭な精神を持っているので、完全にロアに変性するまではまだ数日ほど時間を要する。そのように言えばノエルも渋々ではあるでしょうけど納得してくれる筈。
下水道の時だって納得さえしてくれれば素直に退いてくれましたし、今回も彼女を信じましょう」
「そう、ですか。……なんだか、あの人を騙しているようで良い気はしませんね。彼女だって、ロアを殺す為に今日まで前を向いて進んできたんだろうし」
「………ええ。そうですね。でも、遠野くんからロアを引き剥がす手段さえ見つけられれば、彼女も理解を示してくれる筈です。
彼女も何だかんだで、自分の感情で動くよりも状況を冷静に見極める事を優先できる臨機応変の判断力を備えていますので!」
「ええ、その通りよ。それならさ―――――ここでロアを始末する事もまた、臨機応変の判断よね?」
「えっ……!?」
「――――!」 - 23二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:45:19
凄いゾクゾクする…
ノエルさんの口撃がクリティカルヒットしまくって精神がズタボロにされるシエルさんが見える見える - 24二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:52:41
大好きな人を自分を頃してくる敵だと思い込まなければたとえ人生を掛けて倒そうとした相手であっても頃せないシエル先輩と互いに命を預けあった一番の相棒を冷酷な戦闘マシーンと思い込まなれば生きる意味である復讐もできないノエル先生はどこか似ている二人なのかもしれない…
というか前エンドでシエル先輩の事が好きなことバレバレなんだよね - 25二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:01:31
「ロアに乗り移られた者同士、殺し合うのではなく手を手を取り合って生きていこうとする、か。うんうん、実に尊くて泣かせるじゃない!素晴らしいと心から思うわ!
――――――やっぱり、やっぱり恋を優先するのね。シスター・シエル?」
「―――ノエ、ル?」
「な、なんで貴女がここに……!?」
あら、志貴クンったら動揺してる。そういうところも本当に可愛らしいわね。で、コイツは………ま、そんな顔するのも無理ないか。どうでもいいけど。
「なんでって、そりゃあ今言ったでしょ?ロアを殺す為に来たの。いつからいたのかって言われると、さっきの礼拝堂で『やっぱり貴方がロアだったんですね、遠野くん』ってその女が言ってた時からよ。
ま、つまり最初っから今の今まで陰で見ていたってワケね!」
「――――――じゃあ、通話で、言ってた事は」
「そ、ただの真っ赤な嘘よ。第一、私もあのジャリガキが今ドコで何をしてんのかわかんないし。
まあ、そんなコトはどうでもいいとしてさ。アンタ――――――なんで殺すのやめるどころか寧ろ生かそうとしてんの?」
「―――ぁ」
「アンタさ、これまで私が口酸っぱく確認をする度に言ってたわよね?ロアは何があっても殺す。例え転生体の意識が残っていても、完全に消滅させられる段階にまで浮上しきればその時点で引導を渡すって。
そして、今夜アンタは機が熟したと判断して今の今まで本気で殺しにかかっていた。かかっていたのに、なんで『ありがとう』って感謝されただけであっさりと絆されてんの?貫き通すべき殺意と復讐の誓いを鈍らせてんの?」
「――――そ、れは。ロア、から……彼を、助ける、方法、を……………」
ふふ、下水道の時でもおーんなじコト言ってたわよね。ロアが浮上しきってない内は、ともすれば助かる方法があるのかもしれないってさ。
ああ、滑稽滑稽。実に滑稽極まる。下らない三文芝居の方がまだマシよ。 - 26二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:05:26
「あっはは、確かに前にもそんなコトほざいてたわね。愛しの彼氏を助ける為に、私との誓いよりもロアから志貴クンを救う為に、ロアに打ち克つ都合のいい手段を探し出すと。ふむふむ、なるほどねぇ。
――――――あるワケねぇだろンな方法っ!!!!転生体に選ばれてしまった時点でもう終わりって結論になってんでしょうが!!にも関わらずこの期に及んで救(たす)ける!?楽にしてやるんじゃなくて救ける!?
何言ってんのアンタ!?のぼせ上がるのも大概にしさないよっ!!ねぇ、おまえは誰?恋に目覚めて彼氏を救うために動く、普通の人間の少女なの?
違うだろうがっ!!!おまえは!吸血鬼なら誰だろうと一切の躊躇も容赦なく徹底的に殺し尽くす!そんな埋葬機関の戦闘マシーンでしょう!?主の名の下にあらゆる魔を殲滅する、聖堂教会の代行者だろ!!!!」
くだらない。くだらない。憎んでくれないと殺せないとか、幸せな人を死なせるのはイヤとか。なんだそれは。なんなんだその人間みたいな考えは。想いは。
全部、全部全部全部全部全部全部全部くだらない……………っ!!!! - 27二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:11:02
本編と違って修道院に篭って何もせずに意識だけが肥大化して死徒になったノエルじゃなくて
13年間の全てを血反吐を吐く様な努力に費やした上に人である事をやめて復讐の炎を燃やし続けたノエルさんだからなぁ…
おそらく正面からの圧力が本編とは尋常じゃない程のモノになってる - 28二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:53:41
なんでシエル先輩はノエルさんが説明したら理解してくれる冷静な判断力を持った人だと勘違いしてたのかな……
彼女なら最終的には自分の言うことに頷いてくれるっていう信頼と甘さと傲慢があったのかな……
シエルの無意識の寄りかかりのようにも見えて、だからこそ悲しい…… - 29二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:59:15
何だろう。今のノエルを見てるとどこからともなくジョ○ズのBGM(幻聴)が聞こえてくる…
サメじゃなくて内に宿してるのは白鯨の方だけども - 30二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:28:06
このスレのノエルさんは本当にロウワー(ボカロ)が似合う御方
- 31二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:33:18
- 32二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:33:58
「あ―――あ、ぅあ、ああ……」
「………それとも、何?惚れた相手は別ってワケ?はは、愛らしすぎて本当に泣けてくるじゃない。
ねぇ、もしかしてアンタも私もバカなんじゃないの?いいえ、この場においてバカなのは他ならないアンタよね。だって私のような事情を知る者が傍から見れば、元転生体が現在の転生体を庇ってるようにしか見えないんだし。
どう見てもクロなのよ?わかる?このままじゃ志貴クンどころかアンタも吸血鬼に協力している教会の裏切り者になるわ。いえ、もうなってるも同然かしら」
私の怒りと失意の訴えを前に、戦闘マシーンもどきの人間はただ何も言い返せずにいる。これが魔人どもの巣窟において尚も特例扱いされた弓のシエル?本当、片腹痛いわ。
「―――おい、ちょっと待て」
と、ここで志貴クンが割り込んできた。悪いけど今はキミと話しているワケじゃないんだけどなぁ。
「なぁに志貴クン?見ての通り、今はコイツと話してるから黙っていてほしいんだけど?」
「もう十分黙ったさ。大人しく聞いてればやれ戦闘マシーンだの裏切り者のバカだと言いやがって。ノエルさん、アンタが先輩の事をよく思ってなかったのは知ってたけど、そこまで詰るように捲し立てるほど嫌っているとは予想外だったよ。
それ以上先輩を悪く言うなら俺も黙ってはやらない。だいたい、先輩をそうして責める暇があるんなら、さっさと俺を殺しに掛かったらどうだ?」
「そうは言うけどね志貴クン。私は個人的な感情だけで責めてるんじゃなくて、コイツの代行者としての中途半端ぶりが酷すぎるから同業者兼相棒として厳しく指摘してるの。確立した手段なしに世のため人のための果たすべき使命を放棄して、ありもしない可能性に懸けようとしてやがるんだもの。それを前にして、何もせずに何も言わずに見逃す方が人として誤っているとは思わない?」
「………否定はしない。でも、それは一般的な道徳的物事の基準だろ。先輩は俺を信じてくれて、俺も先輩を信じている。もしダメだったら、その時は俺が決着を付ければいい。だからこれは裏切りなんかじゃない。
そもそも、先輩がどんな覚悟と決意でこの選択を選んでくれているのかなんてアンタはわからないだろ。そんなアンタに、上から先輩の事を責める資格はない」
……ふふ、随分とああだのこうだの言ってくれるじゃない。記憶の中の私も、似たような事を言われてたわねぇ。 - 33二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:42:04
やめとけ志貴
ノエルさんにはまだ出してすらないシエルの心を完全に破壊し切る切り札があるから下手に出ると本編みたいに復活出来することが出来なくなるぞ - 34二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:45:06
そういう志貴はノエルの過去を知らないっていうね…
才能でなんとかできるシエルと違ってノエルは今のシエルみたいに恋っていう余裕すら全て捨ててる
名家の子息である志貴が言っても地雷踏んでるだけだ - 35二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:15:23
言うだけならタダだけど、このノエルの場合言うだけタダな自分から脱却しようとして人間辞めるまでいってるから、そういう人間に限ってより許せないんじゃないかって思っちゃうわ
- 36二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:17:20
>>そもそも、先輩がどんな覚悟と決意でこの選択を選んでくれているのかなんてアンタはわからないだろ。そんなアンタに、上から先輩の事を責める資格はない
志貴クン、"先輩"の部分を"ノエル"に変えてみな…?
- 37二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:35:44
このノエルってアルク√の追悼の花束みたいに復讐者ではあるけど罪もない無辜の人々が死徒によって簡単に蹂躙されてゴミの様に捨てられる事が何より許せない人でもあるからね
そういう意味でもシエルが無辜の人々への被害を未然に防ぐって事よりも自分の恋心という私情を優先してロアである志貴を生かそうとしてるのって許せねぇわ - 38二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:36:46
- 39二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:42:18
ノエルの志貴に対してなら本編のシエルの天秤の発言をそっくりそのまま返せるな
どっちも平行線ならその正しさは力よって決めるしかない
今回のシエルの場合はその天秤の土俵に上がる資格すら無いが - 40スレ主25/01/14(火) 22:32:59
(こういうクッソシリアスな流れで言いたくないけどこのスレを見てくれてる皆が♡推したり感想レス書き込んだりして評価してくれてるからこそSS中の誤字脱字を見つけると凄く惜しい気持ちになるし、完走し終わったら真面目にそれらを修正した上で一つの作品として整理した方がいいかなって思いつつある)
- 41二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 22:50:39
読ませてくれるだけでありがたすぎるから無理とかはしないでほしい素晴らしい故に書くのもパワー要りそうだし
- 42二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:06:16
「………ふふふ。ふっふふふふふふふ。資格はない。そう。私にソイツを責める資格はない、ねぇ?」
「――――――」
私がそういうと、志貴クンは狂人でも見たかのような恐々とした顔で強張る。ま、実際私はそうなんだけど。
「……なにが、おかしいんだ」
「ふふふふ、ひ、ひひ。ああいやいや。ちょっとね、一つ思い出した事があってね。
そう言えば―――――志貴クンには、私がどんな過去を歩んできたのかを一度も話してなかったなぁって。その女が、私に何をしてきたのかを口にしてなかったなぁってさ」
ああ、この瞬間に関してだけは記憶の中の死徒である私に共感できるわ。だって、これを口にする事で私の正当性がこの場における揺らがない立場として、完全に成立するんだもの。
これ以上ないほど、完璧に、私がマウントを取れる状況になるからねぇ?
「ノ―――――」
「なに、やめてほしいって?ねえ、アンタどの面下げてお願いしてんの。そこの彼が好きなんでしょ?だったら文字通りアンタの全てを曝け出して、その上で彼の中にあるアンタへの愛が揺らがないかを確かめるべきでしょう?分かったら語り終えるまでその口を閉じてろ」
「――――、―――――」
シエルはそれっきり、死刑執行を前に震える罪人のような面持ちで苦しそうに黙った。ふふ、まあ実際にコイツにとってはどんな拷問よりも残酷か。知るかって話だけど。
「先輩………! ノエルさん、アンタ……これから何を、話す気なんだ」
「別にぃ?今言ったように、何てことはないただの昔話よ。
13年前。何も知らずに呑気な日々を過ごしていて、聖なる夜に全てを失い、たった一人無様に生き延びた。
―――――――そんな、哀れで惨めで愚かなとある村娘の話(きおく)よ」 - 43二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:07:44
ちなみにスレ主…SS書きとして一つ、誤字脱字に困ってるならチャットGPT噛ませると良いぞよ。
アレ誤字脱字見つけるの上手いから…
いつも素晴らしいヤツありがとうございます… - 44二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:07:58
この為の暗示や幻覚の魔術の鍛錬か…
- 45二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:08:26
そゆこと!?!?!?
- 46二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:10:30
いやーこれノエルが死徒化しる状態であの破壊力だったから
このノエルさんの場合志貴ですらショックがすごい事になるぞ - 47二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:14:41
なるほど
シエル√だと魔眼でやってみせた過去の追体験を、こっちでは暗示と幻覚の魔術で疑似再現させるわけか
…もしかして第四の選択肢の正体って
「自分が過去に想い人にされた事(=土壇場での裏切り)を志貴に再現させる」
って事!? - 48スレ主25/01/14(火) 23:27:35
- 49二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:55:24
その言葉を皮切りに、私は暗示と認識操作、そして幻覚の魔術を発動し―――急造で修得した過去の追憶映像を二人に強制的に“観せた”。
「うあっ……!?」
「………………」
『―――ようこそお客様。今から公開するのは、とある一人の少女と、その少女を地獄に追いやった悪魔のお話です』
『時は2001年12月24日のクリスマスイヴ。舞台はフランスの小さな田舎町。暖かな人々の最期の記憶。悪魔たちの侵食と蹂躙。血の臓物と骨と呪いに満ちた、この世で最も悍ましい儀式の悪夢』
『終わらぬ夢ほど毒になるものはありません。運命の気まぐれほど残酷なものはありません。全てを奪った者は悦楽と愉悦に耽り、全てを奪われた者は抗う事も死ぬ事さえもできずに虚しく生かされる』
『語り口は私ですが……そうですね。取り敢えず“薔薇の声”とでも名乗っておきましょう。意味はありませんが、雰囲気を飾り立てる為の配慮と思って、ご容赦とご理解のほどを』
『それでは、映像を回します。暫しの間、されど心ゆくまでご堪能されてくださいませ――――――――』 - 50二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:11:26
薔薇の声……多分番組とかでよくある天の声をもじったんだろうけど記憶の中の自分が薔薇の魔眼を使って幻覚に陥らせてるのを見てそこから適当に取ったんだろうな
- 51二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:24:59
志貴どうすんだろうな
大口叩いたのはいいが復讐鬼で炎の王一歩手前のノエル相手でシエル抜きだと瞬殺されると思うけど…
なんなら今回のシエルの行動で復讐の炎の激しさが増してさらに強化されてそうだし - 52二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:33:46
志貴は吸血鬼となった自分に対して危害が加わるのは問題的な発言をこの前にノエルに対してしてたけど
シエルという消せない罪から向き合わずに逃れようとしている大切な恋人が出来た状態でもそれを貫き通す事ができるのかな? - 53二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:41:06
内容的にはフランス事変の記憶+それ以降の人を辞めるまでに至った自身の軌跡やその修練・怨讐か
薔薇の魔銀ほどの精度が無くなった代わりに精神攻撃の効果が跳ね上がってるな… - 54二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:56:01
そこから私は、絵本を読む感覚で二人にその少女の過去(はなし)を語っていった。
『少女はパン屋の娘に苦手意識を持っていました。よく会いに来てくれていた恋人とも楽しそうに言葉を交わしているのが、なんとなく気に食わなかったのです。小さくて淡い嫉妬心、というヤツですね』
『少女はその夜、二階の自室でだらしなく寝ていました。そこから起きて間もなく、下の階が酷く静かだった事に違和感を覚えました。
不思議に思った彼女は眠気に苛まれつつ、無防備に様子を確かめに降りていきました』
『視界に広がったのは血の海でした。壁、床、天井。色んなところに千切れて潰れた臓物と骨が飾り付けられていて、下は一面に真っ赤でぐちゅぐちゅした気持ちの悪いカーペットが敷かれていました。
いち、にの、さんで胃の中のものを吐き出します。眠気は正気と一緒に消えてくれました』
『外に出ると家や人が燃えていて、お化けたちが逃げ惑う人たちを襲って食べています。少女はすぐに町の外に出ようとしましたが、見たこともない大きな大きな壁が町全体を囲っていました。
その下で多くの人たちが揉め合いながらも上に上に登ろうと懸命に頑張っています。でも結局、後ろから現れたもう一枚の薄い透明の壁によって丁寧に丁寧に全員が潰されました。肉も骨も血も命も、等しく壁に食べられたのです。
少女を心から愛して育んでいた母親も、少女に気づいて助けを求めながら潰れました』
『悍ましい見所は他にも沢山ありました。茨に食われて幸せそうに死んでいる肉塊(ひと)たち、体の至る所から昆虫の部位が生えてカサカサモゾモゾと這い回っている蟲(ひと)たち。生きる意思を亡くして、すべてを諦めたヒトたちだけを襲う慈悲の白い鳩。地面に空いたいくつもの大きな穴に、凍り付いた銀世界。
安直な表現ではありますが、まさに地獄でした。もはや少女は気が触れて何も言えなくなっていました。滑稽ですね』
『ですが、幸か不幸か彼女には渦中の際に偶々遭遇した恋人がついていました。彼のおかげもあって、何とか教会の方まで逃げ込む事に成功します。礼拝堂には50人以上の人たちが身を寄せ合って、息を潜めていました。
このまま夜明けを待っていれば、この悪夢もその内消えてくれる筈。そう誰もが信じて祈りを捧げていました』 - 55二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 09:18:34
『でも、現実は厳しいものです。運の巡り合わせは際限のないほどに残酷です。やがて礼拝堂の奥から、パン屋の娘が出てきました。
――――血のように真っ赤な瞳を、爛々と輝かせながら。悪魔のように獰猛な笑みを浮かべながら、礼拝堂の生き残り全員をオモチャにし始めたのです』
『どの方法が一番鮮度を保てるのか試すと、パン屋の娘だった悪魔は言いました。
まず最初に選ばれたのは少女の通っていた学校の知り合いでした。足先から丁寧に、ゆっくりと逆向きに丸められて二つ折りにされていきます。
約一時間程度の間隔。そんな調子で一人、また一人と悪魔の手によって凄惨に殺されていきました。血と肉のカーペットになったり、箱詰めにされたり。とにかく色んなやり方で死んでいきました』
『気が狂った末に、少女はヤケになって反抗しました。さっさと死んで楽になりたかったのです。
ああ、なんて愚かで浅はかなんでしょう。少女がそうして悪魔の嗜虐心を反って刺激させてしまったせいで、ずっと傍にいてくれた少女の父親は一番惨たらしい方法で殺されてしまいます。そしてリンゴほどの大きさになった父親だった肉塊(だんご)は、悪魔に軽く一口齧られるだけで不味いと吐き捨てられて踏み潰されてしまいました。
少女はただただ絶望に泣き喚くだけです。それしかできず、けれどそんな余裕も気力もすぐに消え去りました。哀れで無力という他ありませんね』
わたしは、どこまでも弱かった。有無を言わさず搾取される側だった。だから―――何も、何も守れなかった。
『3日ほど経った頃。悪魔の気配が消えている事を恋人が悟り、彼の機転でプールに満ちている死体の一部を積み上げる事で何とか脱出できました。そんなことができてしまうくらいには、たくさんの死体があったのです。
でも、外には大勢のお化けが。彼は少女を突き飛ばし、囮にしようとしてわざとらしく声を上げましたが、勿論そんなのは逆効果。貪られたのは彼のほうで、少女(わたし)は声も上げれずに彼が骨まで食べられていくのを見続けるしかありませんでした』
正直、彼のことはもうどんな顔だったのかも思い出せない。それでも、今も恨んではいない。だって、一夜であんな地獄になるなんて誰がわかる。わかりっこない。
彼の行動は決して褒められたものじゃないけど、あの状況を考えると一概に否定できるモノではなかった。 - 56二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 10:23:24
『少女はふと、上に目をやります。その時に理解させられました。上空の空模様が異様な朱に包まれている様を見て、世界が物凄い変革を起こしている事を誰に言われずとも悟りました。自分の故郷はこの儀式の為に使われたのだ、と』
あの光景は今でも鮮明に覚えている。一秒でも記憶から消し去りたいのに脳が、魂がそれを許してくれない。まあでも、この時の為にその記憶がこうして役立っていると考えれば少しは気が楽にはなるかも。
『しかし、儀式は成立まであと一歩というところで失敗に終わりました。顕れた白い化身が、首謀者である悪魔の心臓を貫いて斃したのです。悪魔は地に投げ捨てられ、丁度狙ったかのように少女の目の前に転がりました。
少女は、悪魔の瞳に写る死体同然の無力な自分自身を見つめながら、深い深い闇に意識を落としていきました』
無様すぎて我ながら泣けてくる。イライラする。仕方のないコトだったってわかるけど、その上で言い様のない苛立ちが募ってくる。
なぜそのまま死んでくれなかったのか。しね、死になさいよ。なんで生き延びてしまったんだ、おまえは。
『こうして、少女が愛していた故郷は聖夜の日と共に死にました。家族も、恋人も、友人も、知り合いも、全てが殺されました。全てが奪われました。全てを、失いました。
―――何も知らずに普通の日々を過ごしていたパン屋の娘も、カフェ店でせっせと働いていた少女(わたし)も、あの夜に死んだのです』
……そして、普通だった少女は教会に汚染物として確保され、そこで突如として知らない誰かの記憶を自覚した。
『これにてこの話はおしまいです。如何だったでしょうか?運命というのは時として本当に理不尽ですよね。何の罪も犯していなかった普通の少女を、暖かな笑顔を見せていた穏やかな人たちを、こうも凄絶で凄惨な地獄に合わせるのだから。
さて、以上で閉幕です。ご鑑賞、誠にありがとうございました――――と、言いたいところではございますが』
『実のところまだ閉幕までに多少ながら時間が残っているので、蛇足ながら後日譚となる映像の一部を続けて公開致します。そのままごゆるりとご鑑賞くださいませ』
そう、ここまでは13年前の惨劇の中で死んだ無力な少女(わたし)の話。
ここからは―――復讐鬼(わたし)の話だ。