ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 5

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:11:01
  • 2二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:14:50

    前回のEDも最高でした
    復讐も報われないエンドも全部好き文才凄すぎる

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:17:05

    一つの区切りお疲れ様でした。
    だけどこっちはバッドエンド分岐であってこれからが本番だな...

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:17:53

    たておつ
    まとめの人のもよかったわ
    あれエドモンと誰だろうエデかな?ノエルさんの復讐の決意の硬さがよく分かる

  • 5スレ主25/01/13(月) 19:33:27
  • 6スレ主25/01/13(月) 19:35:09

    このスレのノエル先生
    ・フランス事変後に修道院に隔離されて間もなく『一周目の記憶』を自覚する
    ・隔離後すぐに代行者として就任。この時点でエレイシアに対する報復を決意し復讐者として生きる
    ・エレイシアが目覚めて代行者になるまでの六年半でひたすらに自己研鑽&限界を超えるための代償を払い続ける。その甲斐あって原作とは非にならない強さを得る
    ・人間以上の耐久を得るための一環で左足を聖別化した義足に改造してもらってる
    ・偶然にも手に入れた十四の石を用いて人外と化す。外見の変化は肌が白くなったくらい。完全に適応してからは恐らく瞳孔も十字になってると思われる
    ・幻想種の中で神獣に区分される『白鯨』モビーディックの遺骸を直接的な経口摂取で取り込み、更に肉体の存在規模を拡張させる事に成功している
    ・現時点での強さは少なくともシエルとの連携でなら後継者をも斃せるまでになっている
    ・というよりシエルとの連携の末に二十七祖のクロムクレイに引導を渡すという大快挙を成しえてしまった
    ・↑の功績もあって教会から『焔(ほむら)のノエル』という異名をつけられる
    ・着実に強くなっていってる事と『一周目の記憶』の自分を反面教師にしてる事もあって大分精神が安定している
    ・ただし完全な復讐者として生きているので高い身分だの裕福な生活だのと言った人並みの幸せには全く固執していない。もはや彼女が望んでいるのはロアやシエルに対する復讐のみとなっている
    ・そんなんだからマーリオゥからは『手を焼かせる制御不能の猪』と厄介に思われてる

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 19:37:29

    おつおつー


    >>弱き人々の盾となって戦うのだ。

    ここダイスの総括感あっていいよねえ

    シエルの様子見に激怒したり被害者に花を手向けたりと

    これまでもこれからもそういう人だと

  • 8スレ主25/01/13(月) 19:40:21
  • 9125/01/13(月) 20:03:59

    立て乙
    前スレのラストに感動しました
    ここまで虚しい終わり方があるかよ

    こういうのが見たかった

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 20:09:42

    ……5分くらい経っただろうか。シエルも私も何も口にせずにだんまりとしたまま、志貴クンが逃げ込んだ通路の方へと歩いて行く。
    そろそろ突き当りかな?そう思っていると、奥の方に彼の姿が見えた。そこには、さっきの礼拝堂の天井みたいな感じで上から光が差し込んでいた。恐らくは、ここらは地上にへと繋がるもう一つの隠し通路なんだろう。
    何処に繫がっているかは正確には分からないけど……歩いた距離との位置感覚を考えると、おおよそ北口の繁華街辺りになるかしらね?
    まあ、そんなのはどうでもいい。あとはこのまま事の次第を見定めるだけよ。


    そうして志貴クンに改めて目線を向けると―――記憶の中のように、力なく壁に背を預けていた。

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 23:27:24

    「――――――」

    シエルは黙ったまま、杭打機の先端を志貴クンの胸にゆっくりと当てる。あとはそのまま引き金を引けば全てが終わる。
    ……筈なんだけど、すぐにはそうせずに彼と見つめ合う。最後にもう一度自分を騙して感情を殺す事の心の整理と、この期に及んでまだ抵抗の意思も恨む素振りも見せない彼に怒りが沸いてるんでしょうね。

    「―――一つ、訊きますけど。どうして眼鏡を外さなかったんです。どうして―――ただの一度も、わたしと戦おうとしなかったんです」
    「……どうしてって、不思議でも何でもない。そんな酷いこと、先輩にはできないだろ」
    「………愚かにも、ほどがある。わたしは貴方を殺すんですよ。わたしは貴方の先輩なんかじゃない。ここにはいないノエルだってそうです。
    すべて嘘をだったって、あれだけ言ってまだ分からないんですか、貴方は……!」

    ここにはいない、ねぇ。9日目に私が公園に向かう彼を尾行してた時はあっさり気づいてたってのに、今はこんな近くにいても本気で察知できていないとか。
    わざとそう言ってんのか、或いはそれだけ内心は切羽詰まってるのか。ま、考える間でもなく後者でしょうね。

    「……知ってる。先輩は、ずっと俺を騙してきた。シエル先輩も、ノエルさんも、そんな人たちは初めからいやしなかったんだって、分かってる」
    「なら、どうして……!」
    「……いいんだ。先輩が嘘でも、関係ない。俺は、すごく楽しかった。先輩やノエルさんと過ごした時間は、二人にとってはどうでもいい時間だったかもしれないけど、俺にとっては大切だった」

    …………ふん。そうね、あの仮初めの日々は本当にロクでもない時間だった。
    朝に元気よく挨拶を交わして、昼食時には三人で馬鹿みたいに他愛ない話で盛り上がったりして。結局短い間だったけど、本当の学生同士の交流みたいな感じでさ。
    復讐に生きると決めて、もう普通の日常なんて何も望んじゃいなかった私からすれば……本当、嫌気が差すくらいの……時間、だった。

    「―――だから、いいんだ」
    「―――そんなコト。そんなコトのために、命を投げ捨てるんですか。望みは。貴方の望みというのは、その程度のものなんですか」
    「……そっか。やっぱり小さい、かな」

    ………………………………。

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 07:45:02

    保守

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 09:44:35

    「―――わたし、色々な人を見てきましたけど。貴方ほど馬鹿な人は、初めてでした」

    シエルは引き金の指に力を入れる。今度こそそのまま引導を渡す……と思ったけど、そうだったわ。記憶の通りならここで懺悔の機会を与えてやるんだったわね。
    そのまま撃てばいいのに、そんなもん聞こうとするから記憶の中のアンタは決意がぐらついたのよ。

    「……そうですか。懺悔なんてないけど、一つだけ、聞いていいかな」
    「―――はい。手短にお願いします」
    「……うん、すぐ済む。どうして先輩は、そんなに泣きそうな顔をしてるのかなって、思って」
    「―――――――」

    ほら、こんなコトを言われる。恨みつらみなんかじゃなくて、憂いの言葉を投げかけられる。彼はどこまでも底抜けのイカれた善人だって、思い知らされる。

    「―――わたしは、泣いてなんて、いません」
    「……泣きそうな顔に、見える。どうしてか、わからないけど」
    「それは貴方の錯覚です。わたしは何も感じていませんから。わたしにある感情は、人間として死にたいというものだけです。それ以外の感情なんて、ない」

    何よそれ、ツッコミ待ち?本当にそれしかなかったらそもそも懺悔とか聞かずにさっさと殺すでしょ。どこまでも嘘が下手くそね、この女は。
    ………大丈夫かな。今のところほとんど記憶の通りに流れていってるけど、まさかこのシエルも……人間に戻ったりはしないわよね?

    「……ひどいな。最後まで、先輩は俺に嘘をつくのか」
    「―――――――」

    ふふふ、志貴クンにまでバレバレじゃない。吸血鬼を殺すのは誰よりも巧いのに、嘘をつくのは溜息を吐くほど下手くそで分かりやすい。きっと、今まで数え切れないほど罰してきた連中たちの一部にも、こういう嘘をついてたんだろうなぁ。
    ………もっとも、嘘をついてるのはコイツだけじゃないけど。

    「貴方こそ、嘘をついてる。ここでわたしに殺されることが望みなんて、思ってはいないでしょう」
    「……当然だろ、そんなの。死んだら何もないじゃないか。一応経験があるから、それぐらいは分かってる。
    ……本音を言えば生きていたい。けど、ただ生きているのは、もうダメらしくて」

    ええ、そうよ。仮にここでシエルが見逃しても、その次は私がこうして待ち構えている。キミには本当に気の毒ではあるけど、私はキミ自身の尊厳を守る為にも―――キミを、容赦なく殺すわ。

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 10:14:59

    「……今まで、すごく楽しかったんだ、先輩。有彦と俺と先輩でバカな話をしている時は、悪くなかった。ただの休み時間でも、先輩やノエルさんと何気ない会話を挟みながら一緒に過ごすのは、夢みたいに楽しかった。
    ……うん。俺はずっと、あのままの時間が続いてほしかった」

    それは、思い出のページを一枚一枚と丁寧にめくって懐かしんでいる、どこにでもいる普通の学生の顔だった。
    ………シエルも今言ったけど、なんて愚かしいの。これから理不尽に殺されようとしてるってのに、口にするのがそんな―――そんな、なんでもない過去の日常を振り返る事とか。

    もはやかける言葉もないと割り切ったのか、シエルは杭の先端を微かに食い込ませる。志貴クンもそれで終わりを察して目を瞑る。
    あとはこのまま撃てばおしまい。ほら、さっさと楽にしてあげなさいよ。彼、手が震えてるじゃない。汗を流しているじゃない。
    彼が覚悟を決めてくれている内に早く、早く引導を渡せ。殺してあげなさい―――殺せ。

    「―――――どうして――――――――どうして、そんな。わたしを、恨まないでいられるんですか。
    わたし、わたしは、貴方をこうして理不尽に殺そうとしているんですよ……!?騙して、裏切って、悪戯に恐怖を煽って、ひたすらに突き放して、こうして残酷に追い詰めているのに、なんでそんなに穏やかな顔をしているんですか、貴方は……!」

    ………ああ、なんで。なんでそんなコト言うのかな。なんでこうなんのかな。

    「答えなさい……!わたしは貴方を殺すんです。貴方の都合なんて関係なく、ただ一方的に殺そうとしているんです……!
    ならせめて、わたしを恨まないと貴方は報われないじゃないですか……!」

    そんな理由なんて求めるな。そのまま殺せ。楽にしてやれ。恨む恨まないを気にするとか、戦闘マシーンにそんな余分はない筈でしょう。
    ねぇなんで?なんで聞こうとするんだ。このままじゃ、アンタは、アンタも、結局――――――。

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 10:41:26

    「それとも本当に馬鹿なんですか貴方は……!わたしは、貴方を汚らわしい吸血鬼として処理するんです!なのに、どうして―――」
    「―――だって、それは、先輩のせいじゃないだろ」
    「っ……!」

    その言葉が刺さったんだろう、シエルは杭を少しだけ彼の胸に刺し込む。死徒化している彼の肉体にとって聖典の杭は毒そのもの。凄まじい激痛が襲っているに違いない。

    「あ―――ぁ、あ………っ!」
    「痛いでしょう。本来なら無痛で消してあげられるのに、こうしてわざと貴方を苦しめているんです。
    ………今まで貴方に付き合わされた分、こうでもして楽しまないと帳尻が合いませんから」

    「………チッ」

    あ、やば。不快感が振り切れて思わず舌打ちしてしまったけど……気づかれてはいないみたいね、よかった。
    ―――じゃないわよ。よかったじゃねぇっつの。楽しまないと?楽しまないとっつったかこの女?
    ふざけるな。おまえにとっての“楽しむ”は足先からブチブチと丸めて潰したり薄皮にまでノしたり小さな肉塊(だんご)にするまで摺り潰したりする事だろうが。その言葉を使うんならせめて四肢を潰して達磨にしてから目ん玉抉り取るくらいはしろよ。
    いえ、ていうかまだ殺さないの?どうしてここまで来て自分からあれこれと御託並べて執行を引き延ばしてんの?
    彼をそんな悪戯に苦しめてまで殺そうとしないの?引き金を引かないの?

    「ひ――――――アっ!」
    「ほら、わたしが憎いでしょう……!だから、だから早く恨んでください!わたしに裏切られたって、わたしなんか信用しなければよかったって言ってください。
    そうでないとわたし―――貴方を殺す事が、できないじゃないですか……!」



    …………………………………は?

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:16:25

    この女、いま何て言った?いや、記憶を見ているから何を言ってるのかはわかる。わかるけど、なんで同じことほざいてんの?

    「……まさか。先輩を恨むことなんて、できない」
    「や―――――やめてください……!なんで最期までそんなコト言うんですか……!悪いのはわたしで、貴方は被害者だっていうのに……!」
    「………」

    なんで?なんで躊躇してんの?あの代行者シエルが、吸血鬼なら誰だろうと冷徹に冷酷に始末してきた埋葬機関の戦闘マシーンが、なんであんな、死にかけの標的一人相手にああも狼狽えているの?

    「……いいんだ。先輩は悪くないよ。それよりごめん。こんな役目を、先輩に押し付けて」
    「や―――――め」

    やめてじゃないわよ。早く撃て!! 志貴クンもそんなコト言わないで、嘘でも恨み節の一つ二つ吐いたらどう!?
    そうじゃないと、コイツ、コイツも、本当に―――!

    「だめ―――わたしは、わたしは―――ロアを、見逃すコトなんて、できない。ノエルを、裏切れない。
    そんなコト―――許されないんです、遠野くん」

    そうだ。その通りだ。ここで彼を見逃しても余計に苦しめてしまうだけ。どの道ロアの浸食は止めようがない。ならせめて、今ここで慈悲の手向けを送るべきなのよ。
    ああ、よかった!最終的には私との誓いを優先してくれて。このシエルは記憶の中と違って戦闘マシーンのままで

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:18:39

    「ありがとう。たとえ嘘でも―――先輩が、先輩でいてくれて、良かった」



















    「………う、う。うあ………あ、ああ、あ。うぁ……あ……あ、あ………う………うあ、あ、あっ……!」
    「…………先、輩」
    「……ずるい……遠野くんは、ずる、い……!
    ……あんな……あんなコト言うなんて、ずるい、です……!なんで、わたし、なんか、を……!」

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 11:28:46

    「……できない……わたし、自分だっていつでも殺せるのに、あんなコト言われたら、できない……!

    ありがとう、なんて―――そんな幸せな人を、死なせるなんて、ヤだ―――」

    「……先輩。そんなに泣かれると、困る」

    「うっ……うう、うあぁぁぁぁぁぁぁん……!」









    「…………………………」

    あっはは。んふ、ふっふふふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。

    ああ、なーんだ。なーーーんだ。

    やっぱり、結局、案の定、何も変わることなく。こうなっちゃうんだね。




    ――――――――裏切り者め。

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 17:48:36

    「……ごめん、なさい……!ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
    「……謝らなくていいんだ、先輩」
    「あ―――――」

    アイツは、何度も何度もか細く謝った。懺悔するかのように繰り返した。私にはただの一言も言ってくれなかったその言葉を、こんなにもアッサリと、何度も。

    「……先輩。先輩の体、あったかい」
    「……違います。あったかいのは遠野くんのほうで、わたしは、イヤになるぐらい、冷たい人間です。
    こんなに―――優しい人に、酷いことを、しました」
    「……いいです。俺はまだ生きている。だから、もうそれでいいんです。もう……こうしていられるなら、それでいいんだ。
    そして―――先輩。俺、先輩がすごく大切だ」
    「……遠野くん?」

    「俺はやっぱり死にたくない。ぎりぎりまで生きて、こうして先輩と一緒にいたい。いたいから、俺はもう逃げない。自分から死のうなんて考えない。
    だから―――お願いします、先輩。どうか、俺がロアに勝てる手助けをしてください」
    「……フフ。大きくでましたね。ロアを倒すのではなく勝利する、ですか。それは、今まで誰にもできなかったコトですよ?」
    「……勝算なしで大口を叩いているのも承知の上です。でもそうしないともう先輩といられないんだから、やるしかないです」
    「―――どんな無茶でも、ですか?」
    「はい。俺が死ぬ以外の手段があるのなら、今はそれに懸けてみたい。……あ、いえ、そもそも選択肢があるのかどうかもわかりませんけど……」
    「……いいえ、ありますよ。わたしにも分からないけど、きっと―――その手段はあります。
    貴方がロアと戦うというのなら、わたしも諦めません。大丈夫、聖堂教会だって無駄に二千年も続いていません!隅々まで探し回ればきっと他の手段が見つかる筈です。
    ―――まあ、遠野くんがわたしの言うコトを何でもきいてくれるなら、という条件は付きますが」
    「なんですかそれ。そんなに無茶なコトばっかりなんですか、教会って。……まあ、ノエルさんみたいな超人もいるって考えたらわからなくもないですけど」
    「あー……それは、あまり本人の前では言わないでおいた方がいいと思いますよ。彼女、故あって教会も教会の人たちにも良い印象は向けてないんです。特にわたしには。
    ですので下手にそういうと、内心で同じものとして扱われたと思わせてしまうでしょう。気を付けておくように!」

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:10:37

    シ…シエル先輩ェ……

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:16:37

    「そ、そうですか……。わかりました、ちゃんと気を付けておきます」
    「よろしい。あと、今の遠野くんは言うまでもなくタイヘンな難病患者ですので、お医者さんの判断を信じてくれないと話になりません」
    「そういうコトなら問題ないですね。何があっても先輩が好きですから、俺」
    「そ、そうですか。奇遇ですが、わ、わたしも同じですので、信頼関係はバッチリですね!」
    「……………」
    「え……っと?あ、あの、遠野くん?」
    「………ごめん、先輩。もう我慢の限界だ」
    「え、はいっ……!?」

    「―――――――」
    「ぁ……ん………。
    ………もう。こんな時なのに、男の子なんですね」
    「本能に忠実だと言ってください。目の前にこんな可愛い人がいたら、誰だってこうします」
    「~~~~……!」
    「ん"んっ……………と、とにかく。先輩が手助けしてくれるなら百人力です。まずは教会に行けばいいんですね?」
    「―――ええ。本国は無理でも、この国にはいくつかの支部がありますから。……でも。その前に、もっと大きな問題がありました。ロアなんかよりも、もっと大きな問題が」
    「? ロアより大きな問題、ですか……?」
    「……いえ、少々口が滑りましたね。今はここから出ましょう。わたしのアパートなら、少しは遠野くんを楽にしてあげられると思います」

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:22:34

    「あ、はい。……そういえば、ノエルさんにはこの事はどうするんですか?あの人もロアへの復讐の為に動いてたけど、事情を伝えて納得するでしょうか?」
    「そこは……大丈夫、上手く言い合わせます。彼女は今、マーリオゥと一緒にアルクェイドの監視に務めているようなので、わたしたちの状況は知りません。
    遠野くんが想定以上に強靭な精神を持っているので、完全にロアに変性するまではまだ数日ほど時間を要する。そのように言えばノエルも渋々ではあるでしょうけど納得してくれる筈。
    下水道の時だって納得さえしてくれれば素直に退いてくれましたし、今回も彼女を信じましょう」
    「そう、ですか。……なんだか、あの人を騙しているようで良い気はしませんね。彼女だって、ロアを殺す為に今日まで前を向いて進んできたんだろうし」
    「………ええ。そうですね。でも、遠野くんからロアを引き剥がす手段さえ見つけられれば、彼女も理解を示してくれる筈です。
    彼女も何だかんだで、自分の感情で動くよりも状況を冷静に見極める事を優先できる臨機応変の判断力を備えていますので!」


















    「ええ、その通りよ。それならさ―――――ここでロアを始末する事もまた、臨機応変の判断よね?」

    「えっ……!?」
    「――――!」

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:45:19

    凄いゾクゾクする…
    ノエルさんの口撃がクリティカルヒットしまくって精神がズタボロにされるシエルさんが見える見える

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:52:41

    大好きな人を自分を頃してくる敵だと思い込まなければたとえ人生を掛けて倒そうとした相手であっても頃せないシエル先輩と互いに命を預けあった一番の相棒を冷酷な戦闘マシーンと思い込まなれば生きる意味である復讐もできないノエル先生はどこか似ている二人なのかもしれない…

    というか前エンドでシエル先輩の事が好きなことバレバレなんだよね

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:01:31

    「ロアに乗り移られた者同士、殺し合うのではなく手を手を取り合って生きていこうとする、か。うんうん、実に尊くて泣かせるじゃない!素晴らしいと心から思うわ!

    ――――――やっぱり、やっぱり恋を優先するのね。シスター・シエル?」

    「―――ノエ、ル?」

    「な、なんで貴女がここに……!?」

    あら、志貴クンったら動揺してる。そういうところも本当に可愛らしいわね。で、コイツは………ま、そんな顔するのも無理ないか。どうでもいいけど。

    「なんでって、そりゃあ今言ったでしょ?ロアを殺す為に来たの。いつからいたのかって言われると、さっきの礼拝堂で『やっぱり貴方がロアだったんですね、遠野くん』ってその女が言ってた時からよ。
    ま、つまり最初っから今の今まで陰で見ていたってワケね!」
    「――――――じゃあ、通話で、言ってた事は」
    「そ、ただの真っ赤な嘘よ。第一、私もあのジャリガキが今ドコで何をしてんのかわかんないし。
    まあ、そんなコトはどうでもいいとしてさ。アンタ――――――なんで殺すのやめるどころか寧ろ生かそうとしてんの?」
    「―――ぁ」
    「アンタさ、これまで私が口酸っぱく確認をする度に言ってたわよね?ロアは何があっても殺す。例え転生体の意識が残っていても、完全に消滅させられる段階にまで浮上しきればその時点で引導を渡すって。
    そして、今夜アンタは機が熟したと判断して今の今まで本気で殺しにかかっていた。かかっていたのに、なんで『ありがとう』って感謝されただけであっさりと絆されてんの?貫き通すべき殺意と復讐の誓いを鈍らせてんの?」
    「――――そ、れは。ロア、から……彼を、助ける、方法、を……………」

    ふふ、下水道の時でもおーんなじコト言ってたわよね。ロアが浮上しきってない内は、ともすれば助かる方法があるのかもしれないってさ。
    ああ、滑稽滑稽。実に滑稽極まる。下らない三文芝居の方がまだマシよ。

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:05:26

    「あっはは、確かに前にもそんなコトほざいてたわね。愛しの彼氏を助ける為に、私との誓いよりもロアから志貴クンを救う為に、ロアに打ち克つ都合のいい手段を探し出すと。ふむふむ、なるほどねぇ。

    ――――――あるワケねぇだろンな方法っ!!!!転生体に選ばれてしまった時点でもう終わりって結論になってんでしょうが!!にも関わらずこの期に及んで救(たす)ける!?楽にしてやるんじゃなくて救ける!?
    何言ってんのアンタ!?のぼせ上がるのも大概にしさないよっ!!ねぇ、おまえは誰?恋に目覚めて彼氏を救うために動く、普通の人間の少女なの?
    違うだろうがっ!!!おまえは!吸血鬼なら誰だろうと一切の躊躇も容赦なく徹底的に殺し尽くす!そんな埋葬機関の戦闘マシーンでしょう!?主の名の下にあらゆる魔を殲滅する、聖堂教会の代行者だろ!!!!」

    くだらない。くだらない。憎んでくれないと殺せないとか、幸せな人を死なせるのはイヤとか。なんだそれは。なんなんだその人間みたいな考えは。想いは。

    全部、全部全部全部全部全部全部全部くだらない……………っ!!!!

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:11:02

    本編と違って修道院に篭って何もせずに意識だけが肥大化して死徒になったノエルじゃなくて
    13年間の全てを血反吐を吐く様な努力に費やした上に人である事をやめて復讐の炎を燃やし続けたノエルさんだからなぁ…
    おそらく正面からの圧力が本編とは尋常じゃない程のモノになってる

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:53:41

    なんでシエル先輩はノエルさんが説明したら理解してくれる冷静な判断力を持った人だと勘違いしてたのかな……
    彼女なら最終的には自分の言うことに頷いてくれるっていう信頼と甘さと傲慢があったのかな……
    シエルの無意識の寄りかかりのようにも見えて、だからこそ悲しい……

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 19:59:15

    何だろう。今のノエルを見てるとどこからともなくジョ○ズのBGM(幻聴)が聞こえてくる…
    サメじゃなくて内に宿してるのは白鯨の方だけども

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:28:06

    このスレのノエルさんは本当にロウワー(ボカロ)が似合う御方

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:33:18

    >>29

    この地雷の踏みっぷりでサメの話されたから

    現状こんな感じだろうかなって

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:33:58

    「あ―――あ、ぅあ、ああ……」
    「………それとも、何?惚れた相手は別ってワケ?はは、愛らしすぎて本当に泣けてくるじゃない。
    ねぇ、もしかしてアンタも私もバカなんじゃないの?いいえ、この場においてバカなのは他ならないアンタよね。だって私のような事情を知る者が傍から見れば、元転生体が現在の転生体を庇ってるようにしか見えないんだし。
    どう見てもクロなのよ?わかる?このままじゃ志貴クンどころかアンタも吸血鬼に協力している教会の裏切り者になるわ。いえ、もうなってるも同然かしら」

    私の怒りと失意の訴えを前に、戦闘マシーンもどきの人間はただ何も言い返せずにいる。これが魔人どもの巣窟において尚も特例扱いされた弓のシエル?本当、片腹痛いわ。

    「―――おい、ちょっと待て」

    と、ここで志貴クンが割り込んできた。悪いけど今はキミと話しているワケじゃないんだけどなぁ。

    「なぁに志貴クン?見ての通り、今はコイツと話してるから黙っていてほしいんだけど?」
    「もう十分黙ったさ。大人しく聞いてればやれ戦闘マシーンだの裏切り者のバカだと言いやがって。ノエルさん、アンタが先輩の事をよく思ってなかったのは知ってたけど、そこまで詰るように捲し立てるほど嫌っているとは予想外だったよ。
    それ以上先輩を悪く言うなら俺も黙ってはやらない。だいたい、先輩をそうして責める暇があるんなら、さっさと俺を殺しに掛かったらどうだ?」
    「そうは言うけどね志貴クン。私は個人的な感情だけで責めてるんじゃなくて、コイツの代行者としての中途半端ぶりが酷すぎるから同業者兼相棒として厳しく指摘してるの。確立した手段なしに世のため人のための果たすべき使命を放棄して、ありもしない可能性に懸けようとしてやがるんだもの。それを前にして、何もせずに何も言わずに見逃す方が人として誤っているとは思わない?」
    「………否定はしない。でも、それは一般的な道徳的物事の基準だろ。先輩は俺を信じてくれて、俺も先輩を信じている。もしダメだったら、その時は俺が決着を付ければいい。だからこれは裏切りなんかじゃない。
    そもそも、先輩がどんな覚悟と決意でこの選択を選んでくれているのかなんてアンタはわからないだろ。そんなアンタに、上から先輩の事を責める資格はない」

    ……ふふ、随分とああだのこうだの言ってくれるじゃない。記憶の中の私も、似たような事を言われてたわねぇ。

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:42:04

    やめとけ志貴
    ノエルさんにはまだ出してすらないシエルの心を完全に破壊し切る切り札があるから下手に出ると本編みたいに復活出来することが出来なくなるぞ

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 20:45:06

    そういう志貴はノエルの過去を知らないっていうね…
    才能でなんとかできるシエルと違ってノエルは今のシエルみたいに恋っていう余裕すら全て捨ててる
    名家の子息である志貴が言っても地雷踏んでるだけだ

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:15:23

    言うだけならタダだけど、このノエルの場合言うだけタダな自分から脱却しようとして人間辞めるまでいってるから、そういう人間に限ってより許せないんじゃないかって思っちゃうわ

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:17:20

    >>そもそも、先輩がどんな覚悟と決意でこの選択を選んでくれているのかなんてアンタはわからないだろ。そんなアンタに、上から先輩の事を責める資格はない


    志貴クン、"先輩"の部分を"ノエル"に変えてみな…?

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:35:44

    このノエルってアルク√の追悼の花束みたいに復讐者ではあるけど罪もない無辜の人々が死徒によって簡単に蹂躙されてゴミの様に捨てられる事が何より許せない人でもあるからね
    そういう意味でもシエルが無辜の人々への被害を未然に防ぐって事よりも自分の恋心という私情を優先してロアである志貴を生かそうとしてるのって許せねぇわ

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:36:46
  • 39二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 21:42:18

    ノエルの志貴に対してなら本編のシエルの天秤の発言をそっくりそのまま返せるな
    どっちも平行線ならその正しさは力よって決めるしかない
    今回のシエルの場合はその天秤の土俵に上がる資格すら無いが

  • 40スレ主25/01/14(火) 22:32:59

    (こういうクッソシリアスな流れで言いたくないけどこのスレを見てくれてる皆が♡推したり感想レス書き込んだりして評価してくれてるからこそSS中の誤字脱字を見つけると凄く惜しい気持ちになるし、完走し終わったら真面目にそれらを修正した上で一つの作品として整理した方がいいかなって思いつつある)

  • 41二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 22:50:39

    読ませてくれるだけでありがたすぎるから無理とかはしないでほしい素晴らしい故に書くのもパワー要りそうだし

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:06:16

    「………ふふふ。ふっふふふふふふふ。資格はない。そう。私にソイツを責める資格はない、ねぇ?」
    「――――――」

    私がそういうと、志貴クンは狂人でも見たかのような恐々とした顔で強張る。ま、実際私はそうなんだけど。

    「……なにが、おかしいんだ」
    「ふふふふ、ひ、ひひ。ああいやいや。ちょっとね、一つ思い出した事があってね。
    そう言えば―――――志貴クンには、私がどんな過去を歩んできたのかを一度も話してなかったなぁって。その女が、私に何をしてきたのかを口にしてなかったなぁってさ」

    ああ、この瞬間に関してだけは記憶の中の死徒である私に共感できるわ。だって、これを口にする事で私の正当性がこの場における揺らがない立場として、完全に成立するんだもの。
    これ以上ないほど、完璧に、私がマウントを取れる状況になるからねぇ?

    「ノ―――――」
    「なに、やめてほしいって?ねえ、アンタどの面下げてお願いしてんの。そこの彼が好きなんでしょ?だったら文字通りアンタの全てを曝け出して、その上で彼の中にあるアンタへの愛が揺らがないかを確かめるべきでしょう?分かったら語り終えるまでその口を閉じてろ」
    「――――、―――――」

    シエルはそれっきり、死刑執行を前に震える罪人のような面持ちで苦しそうに黙った。ふふ、まあ実際にコイツにとってはどんな拷問よりも残酷か。知るかって話だけど。

    「先輩………! ノエルさん、アンタ……これから何を、話す気なんだ」


    「別にぃ?今言ったように、何てことはないただの昔話よ。

    13年前。何も知らずに呑気な日々を過ごしていて、聖なる夜に全てを失い、たった一人無様に生き延びた。

    ―――――――そんな、哀れで惨めで愚かなとある村娘の話(きおく)よ」

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:07:44

    ちなみにスレ主…SS書きとして一つ、誤字脱字に困ってるならチャットGPT噛ませると良いぞよ。
    アレ誤字脱字見つけるの上手いから…
    いつも素晴らしいヤツありがとうございます…

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:07:58

    この為の暗示や幻覚の魔術の鍛錬か…

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:08:26

    >>44

    そゆこと!?!?!?

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:10:30

    いやーこれノエルが死徒化しる状態であの破壊力だったから
    このノエルさんの場合志貴ですらショックがすごい事になるぞ

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:14:41

    なるほど
    シエル√だと魔眼でやってみせた過去の追体験を、こっちでは暗示と幻覚の魔術で疑似再現させるわけか

    …もしかして第四の選択肢の正体って

    「自分が過去に想い人にされた事(=土壇場での裏切り)を志貴に再現させる」

    って事!?

  • 48スレ主25/01/14(火) 23:27:35

    >>43

    なるほど……なら試しにちょっとだけ使ってみようかな

    こちらこそ教えてくれてありがとうございます


    >>47

    確かにそっちもそっちでえぐいですけど答えを言っちゃうと全然違います

    まあでも???の内容がノエル先生自身でもドン引きしちゃうくらいにロクでもないのは確かです

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 23:55:24

    その言葉を皮切りに、私は暗示と認識操作、そして幻覚の魔術を発動し―――急造で修得した過去の追憶映像を二人に強制的に“観せた”。

    「うあっ……!?」
    「………………」

    『―――ようこそお客様。今から公開するのは、とある一人の少女と、その少女を地獄に追いやった悪魔のお話です』

    『時は2001年12月24日のクリスマスイヴ。舞台はフランスの小さな田舎町。暖かな人々の最期の記憶。悪魔たちの侵食と蹂躙。血の臓物と骨と呪いに満ちた、この世で最も悍ましい儀式の悪夢』

    『終わらぬ夢ほど毒になるものはありません。運命の気まぐれほど残酷なものはありません。全てを奪った者は悦楽と愉悦に耽り、全てを奪われた者は抗う事も死ぬ事さえもできずに虚しく生かされる』

    『語り口は私ですが……そうですね。取り敢えず“薔薇の声”とでも名乗っておきましょう。意味はありませんが、雰囲気を飾り立てる為の配慮と思って、ご容赦とご理解のほどを』

    『それでは、映像を回します。暫しの間、されど心ゆくまでご堪能されてくださいませ――――――――』

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:11:26

    薔薇の声……多分番組とかでよくある天の声をもじったんだろうけど記憶の中の自分が薔薇の魔眼を使って幻覚に陥らせてるのを見てそこから適当に取ったんだろうな

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:24:59

    志貴どうすんだろうな
    大口叩いたのはいいが復讐鬼で炎の王一歩手前のノエル相手でシエル抜きだと瞬殺されると思うけど…
    なんなら今回のシエルの行動で復讐の炎の激しさが増してさらに強化されてそうだし

  • 52二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:33:46

    志貴は吸血鬼となった自分に対して危害が加わるのは問題的な発言をこの前にノエルに対してしてたけど
    シエルという消せない罪から向き合わずに逃れようとしている大切な恋人が出来た状態でもそれを貫き通す事ができるのかな?

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 01:41:06

    内容的にはフランス事変の記憶+それ以降の人を辞めるまでに至った自身の軌跡やその修練・怨讐か
    薔薇の魔銀ほどの精度が無くなった代わりに精神攻撃の効果が跳ね上がってるな…

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 03:56:01

    そこから私は、絵本を読む感覚で二人にその少女の過去(はなし)を語っていった。

    『少女はパン屋の娘に苦手意識を持っていました。よく会いに来てくれていた恋人とも楽しそうに言葉を交わしているのが、なんとなく気に食わなかったのです。小さくて淡い嫉妬心、というヤツですね』

    『少女はその夜、二階の自室でだらしなく寝ていました。そこから起きて間もなく、下の階が酷く静かだった事に違和感を覚えました。
    不思議に思った彼女は眠気に苛まれつつ、無防備に様子を確かめに降りていきました』

    『視界に広がったのは血の海でした。壁、床、天井。色んなところに千切れて潰れた臓物と骨が飾り付けられていて、下は一面に真っ赤でぐちゅぐちゅした気持ちの悪いカーペットが敷かれていました。
    いち、にの、さんで胃の中のものを吐き出します。眠気は正気と一緒に消えてくれました』

    『外に出ると家や人が燃えていて、お化けたちが逃げ惑う人たちを襲って食べています。少女はすぐに町の外に出ようとしましたが、見たこともない大きな大きな壁が町全体を囲っていました。
    その下で多くの人たちが揉め合いながらも上に上に登ろうと懸命に頑張っています。でも結局、後ろから現れたもう一枚の薄い透明の壁によって丁寧に丁寧に全員が潰されました。肉も骨も血も命も、等しく壁に食べられたのです。
    少女を心から愛して育んでいた母親も、少女に気づいて助けを求めながら潰れました』

    『悍ましい見所は他にも沢山ありました。茨に食われて幸せそうに死んでいる肉塊(ひと)たち、体の至る所から昆虫の部位が生えてカサカサモゾモゾと這い回っている蟲(ひと)たち。生きる意思を亡くして、すべてを諦めたヒトたちだけを襲う慈悲の白い鳩。地面に空いたいくつもの大きな穴に、凍り付いた銀世界。
    安直な表現ではありますが、まさに地獄でした。もはや少女は気が触れて何も言えなくなっていました。滑稽ですね』

    『ですが、幸か不幸か彼女には渦中の際に偶々遭遇した恋人がついていました。彼のおかげもあって、何とか教会の方まで逃げ込む事に成功します。礼拝堂には50人以上の人たちが身を寄せ合って、息を潜めていました。
    このまま夜明けを待っていれば、この悪夢もその内消えてくれる筈。そう誰もが信じて祈りを捧げていました』

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 09:18:34

    『でも、現実は厳しいものです。運の巡り合わせは際限のないほどに残酷です。やがて礼拝堂の奥から、パン屋の娘が出てきました。
    ――――血のように真っ赤な瞳を、爛々と輝かせながら。悪魔のように獰猛な笑みを浮かべながら、礼拝堂の生き残り全員をオモチャにし始めたのです』

    『どの方法が一番鮮度を保てるのか試すと、パン屋の娘だった悪魔は言いました。
    まず最初に選ばれたのは少女の通っていた学校の知り合いでした。足先から丁寧に、ゆっくりと逆向きに丸められて二つ折りにされていきます。
    約一時間程度の間隔。そんな調子で一人、また一人と悪魔の手によって凄惨に殺されていきました。血と肉のカーペットになったり、箱詰めにされたり。とにかく色んなやり方で死んでいきました』

    『気が狂った末に、少女はヤケになって反抗しました。さっさと死んで楽になりたかったのです。
    ああ、なんて愚かで浅はかなんでしょう。少女がそうして悪魔の嗜虐心を反って刺激させてしまったせいで、ずっと傍にいてくれた少女の父親は一番惨たらしい方法で殺されてしまいます。そしてリンゴほどの大きさになった父親だった肉塊(だんご)は、悪魔に軽く一口齧られるだけで不味いと吐き捨てられて踏み潰されてしまいました。
    少女はただただ絶望に泣き喚くだけです。それしかできず、けれどそんな余裕も気力もすぐに消え去りました。哀れで無力という他ありませんね』

    わたしは、どこまでも弱かった。有無を言わさず搾取される側だった。だから―――何も、何も守れなかった。

    『3日ほど経った頃。悪魔の気配が消えている事を恋人が悟り、彼の機転でプールに満ちている死体の一部を積み上げる事で何とか脱出できました。そんなことができてしまうくらいには、たくさんの死体があったのです。
    でも、外には大勢のお化けが。彼は少女を突き飛ばし、囮にしようとしてわざとらしく声を上げましたが、勿論そんなのは逆効果。貪られたのは彼のほうで、少女(わたし)は声も上げれずに彼が骨まで食べられていくのを見続けるしかありませんでした』

    正直、彼のことはもうどんな顔だったのかも思い出せない。それでも、今も恨んではいない。だって、一夜であんな地獄になるなんて誰がわかる。わかりっこない。
    彼の行動は決して褒められたものじゃないけど、あの状況を考えると一概に否定できるモノではなかった。

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 10:23:24

    『少女はふと、上に目をやります。その時に理解させられました。上空の空模様が異様な朱に包まれている様を見て、世界が物凄い変革を起こしている事を誰に言われずとも悟りました。自分の故郷はこの儀式の為に使われたのだ、と』

    あの光景は今でも鮮明に覚えている。一秒でも記憶から消し去りたいのに脳が、魂がそれを許してくれない。まあでも、この時の為にその記憶がこうして役立っていると考えれば少しは気が楽にはなるかも。

    『しかし、儀式は成立まであと一歩というところで失敗に終わりました。顕れた白い化身が、首謀者である悪魔の心臓を貫いて斃したのです。悪魔は地に投げ捨てられ、丁度狙ったかのように少女の目の前に転がりました。
    少女は、悪魔の瞳に写る死体同然の無力な自分自身を見つめながら、深い深い闇に意識を落としていきました』

    無様すぎて我ながら泣けてくる。イライラする。仕方のないコトだったってわかるけど、その上で言い様のない苛立ちが募ってくる。
    なぜそのまま死んでくれなかったのか。しね、死になさいよ。なんで生き延びてしまったんだ、おまえは。

    『こうして、少女が愛していた故郷は聖夜の日と共に死にました。家族も、恋人も、友人も、知り合いも、全てが殺されました。全てが奪われました。全てを、失いました。

    ―――何も知らずに普通の日々を過ごしていたパン屋の娘も、カフェ店でせっせと働いていた少女(わたし)も、あの夜に死んだのです』

    ……そして、普通だった少女は教会に汚染物として確保され、そこで突如として知らない誰かの記憶を自覚した。

    『これにてこの話はおしまいです。如何だったでしょうか?運命というのは時として本当に理不尽ですよね。何の罪も犯していなかった普通の少女を、暖かな笑顔を見せていた穏やかな人たちを、こうも凄絶で凄惨な地獄に合わせるのだから。
    さて、以上で閉幕です。ご鑑賞、誠にありがとうございました――――と、言いたいところではございますが』

    『実のところまだ閉幕までに多少ながら時間が残っているので、蛇足ながら後日譚となる映像の一部を続けて公開致します。そのままごゆるりとご鑑賞くださいませ』

    そう、ここまでは13年前の惨劇の中で死んだ無力な少女(わたし)の話。

    ここからは―――復讐鬼(わたし)の話だ。

  • 57二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 11:30:36

    実際元じゃそこまで強くない扱いだったノエル先生が祖に届くようになるまで、ここまではダイスで選択して数か月後~みたいにやって来たけど、どう考えたって血反吐と苦痛に塗れる過程だろうしなぁ
    ロアに復讐するためだけに生きて来たと言えるだけの努力をガンガン開示して欲しい所

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 12:11:52

    後日譚に限ればノエル基準で温室でぬくぬく育ってきた志貴がどうこう言える人じゃないんだよな

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 12:30:17

    >>58

    いやリメイク志貴さんも相当大変な人生を送ってきた方だと思うよ。廃病院での事件はだいぶヤバそうな感じもしているし、ここのノエルは共感こそしなくてもその真っ直ぐなあり方は苛つけど自身への怒りのようなものでもあるんじゃないかなあ

  • 60二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 12:46:45

    >>59

    ノエルのフランス事変後と志貴の七夜全滅とか廃病院の件が全部終わってからの後日譚の比較よ

    志貴は外観上は名家のご子息で一般人として生きてる上に先生に魔眼殺しももらってそのまま平穏に暮らせてるけど

  • 61二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 14:47:54

    『少女はその後、教会の人間に汚染物として身柄を抑えられて修道院に隔離されました。
    酷い話ですよね?折角、一生分の幸運を消費して奇跡的に生存できたというのに、そこから非人間の汚染物として扱われるだなんて。いえ、それとも一生分の幸運を消費してしまったからこそ、後に残った悪運に晒される事になったのでしょうか』

    『そして間もなく。“ある体験”を経たことをキッカケに少女はかつての名前を捨てて、代行者として生きる事を決意しました。
    同時に―――自分の人生の全てを奪った悪魔たちに復讐をもたらすべく、憎悪の炎を燻ぶらせて立ち上がったのです』

    『しかしそこからは、本当にタイヘンでした。代行者として、復讐者として立ち上がったはいいものの、あの惨劇の悪夢を毎日毎日見続けるようになったのです。その度に少女は苦しみ、悶えて、絶叫を上げながら眠れぬ夜に恐怖しました。
    当然ながら不眠症に陥り、食べ物もまともに受け付けなくなって、いつもいつも即効性の睡眠薬と栄養剤のお世話になっていました。普通ならもうこの時点で廃人になっていても不思議ではありませんね』

    『無論、そんなボロボロのメンタルをケアしてくれるような都合のいい場所も教会にはありません。というより、それにおおよそ該当するのが修道院です。
    だから少女は地獄のような苦しみの日々を味わいながらも、何とかして自力でその苦しみとの折り合いを付けて慣れるしかありませんでした。それがどれほどの艱難辛苦だったのか、それは少女にしか知りえないでしょう』

    『もちろん、そんな日々にも容赦なく任務はやってきます。半ば狂乱しながら死人たちを殺して殺して殺し尽くす事も一度や二度ではなかったです。偶に死人の群れに混じって強力な悪魔とも遭遇し、増援が来るのを祈りながら一人で挑み、無様に死にかける事もありました』

    『………それでも、それでも生きているのなら、どこまでも復讐に突き進んでやる。突き進まなくちゃいけない。そんな怨嗟の思いだけは揺らがず、魂に刻んだその怨念を支えにして少女は徐々に成長していきます』

    『手足の肉を抉られる事もありました。全身に打撲痕ができた事もありました。実戦や特訓の中で筋肉が断裂した事も骨が折れた事も血を吐いた事も何度だってありました。走馬灯を見る事だってどれほどあったのか、少女はもう把握しきれていません』

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 15:09:29

    『そんな目にイヤというほど晒されても、少女の復讐の誓いだけは消えませんでした。死ぬのは怖い。だけどそれを恐れたままで、ただ生き延びたいという思いだけで動いていても何も変わらない。
    そんなのは、何も努力していないのも同じ。ただ人形のように生きているだけ。死んでいるのと大差がありません』

    『少女が立っている代行者という世界は、少女が掲げている目標への道のりは、そういうものなのです。強くなりたければ死を恐れてはいけない。退く事をしてはいけない。逃げる事をしてはいけない。諦める事をしてはいけない。
    道半ばで斃れたとしても、自分はその程度の軟弱者だと受け入れるしかない』

    『それを理解した少女は狂いました。いつまでも普通の人間の範疇に拘ってはイケナイのだと。弱い弱い自分が超人の復讐者に至るには、もう人間を超えるしかないのだと。
    だから少女は捜しました。悪魔を殺す為に悪魔になる方法を。化け物への復讐を与える為に、怪物に身を堕とす術を』

    『そしてその術を見つけることができた少女は歓喜しながら、それまでのヒトとしての自分に別れを告げ、復讐の炎を纏う火の王に生まれ変わりました。
    この時、この瞬間から、少女は復讐に身を焦がす狂った怪物になったのです』

    『怪物になった後からも、少女だった復讐鬼は傷付いて血を流しながら努力を続けていきました。その炎で以て悪魔たちを次から次へと灰にしていき、とうとうその炎は故郷を滅ぼした『壁の悪魔』の命すらも焼き尽くしたのです』

    『復讐鬼は笑いました。それはもう嗤いました。壊れたように哂いました。いいえ。ような、ではなく実際に壊れています。
    だってその怪物は、もう悪魔たちに対する報復だけが目標であり、そしてそれのみが唯一意味を見出せる生き甲斐だったのですから』

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 15:18:14

    この世界で十四の石が巌窟王の手から離れた後にノエルの手に渡ったのはある意味運命だったのかもね…

  • 64二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 15:46:04

    『復讐鬼の中には普通の日常に対しての羨望はもう何処にもありません。ヒトから怪物になったその時点で、そのような想いは余分なものとして焼却してしまったからです』

    『復讐鬼はずっとずっと、パン屋の娘だった悪魔を憎んでいました。殺せる機会が来るのなら、その瞬間に苦しめて苦しめてから燃やしてやりたいと。
    でも、後から本当に蘇ったその悪魔は何故か人間の肉体に戻っていた上で不死身となっていたのです。その原因である転生する悪魔の魂を滅ぼさないと永遠に殺せない。そうと分かった復讐鬼は、苦渋と断腸の思いでパン屋の娘だった悪魔と手を組んで斃す事を誓ったのです』

    『それからも復讐鬼は悪魔と共に多くの悪魔を殲滅していきました。悪魔を殺す為に悪魔に教えを乞う事もありました。稽古という名の試合を挑んで、その度に一歩届かずに負ける事もありました。
    しかし皮肉にも、そうした日々を送る内に復讐鬼は一人で四苦八苦していた頃よりも更に強くなっていったのです』

    『何度折れそうになったかわかりません。何度負けたかわかりません。何度正気を失ったかわかりません。何度挫けたかわかりません。何度―――何度、隣にいる悪魔を恐れ、殺してやると思ったかわかりません』

    『司祭様は「常軌を逸している」と言いました。当たり前ですね。
    司祭代行は「豚は家畜だからこそ管理できて飼育できる。だがテメェは手の付けられねえ猪だ、管理も飼育もできねえよ」と口汚く吐き捨てましたっけ。知るかジャリガキめって話ですけど』

    『とにかく、復讐鬼にはかつての少女の面影はどこにもありません。普通なんて目もくれず、ただ復讐に狂いながら突き進む。もう、そういう在り方しかできなくなっていたのです。
    少女の幸せは普通で平和な日常の享受。復讐鬼の幸せは傍らにいる悪魔への復讐。とうに、変わり果てているのです』

  • 65二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 15:55:22

    こうして行動を改めて見直すとおいたわしさMAXだな…

  • 66二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 15:55:50

    シエル先輩は志貴に出会ってある意味人間である自分を取り戻したけどノエルにはそんな人はいなかったしいても手を振り払うし道が別れてるにも程があるな
    ていうか才能でなんだかんだやれてたシエルからしたらこんなに努力してたのかって驚いたりしない?

  • 67二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 16:02:03

    『もはや復讐鬼(かいぶつ)があの頃の少女(にんげん)に戻る事は永遠にありません。復讐鬼は、積年の恨みと妄執を晴らすその時まで止まらないし止まれません。
    復讐の成就に至ったその瞬間にこそ、復讐鬼は少女として両親の下へ帰れるのです』

    ………ま、こんなもんでいいでしょ。急造で拵えたモンだから魔力の消費も少なくないし、再現の精度も低いしね。

    『以上で、後日譚の物語もこれでおしまいです。何ともまあ、滑稽で虚しいですよね。さっさと全てを諦めて、修道院に籠って人形のように生きればいいものを、いつまでも過去に囚われて復讐に心血を捧げるだなんて。
    過去しか見えないからこそ、と言えなくもないですがそれならそれでヒトとして強くなるべきです。復讐に狂ってヒトを捨ててしまった時点で見苦しい怪物以外の何があるのか。きっと、この怪物は復讐を成そうが成せまいが救われないでしょう』


    さて――――これでもまだ、大口叩いて啖呵を切れるかしら。遠野志貴クン?


    『それではお客様、長々とつまらないお話ではございましたが、最後までご鑑賞いただき誠にありがとうございました。

    では、夢から醒める時です。よろしければ、ご感想のほどをよろしくお願い致しますね――――――』

  • 68二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 17:46:10

    「――――ぁ、はっ……!?」

    劇場を構成していた魔術を解いて、志貴クンとシエルを解放する。志貴クンはちょっと過呼吸気味になってるけど、これは不意に現実に戻された事の反動なだけだからすぐに安定するでしょう。
    で、となりの半端な裏切り者は――――記憶の中の私の魔眼を食らった時みたいに茫然自失としている。うん、これであとは志貴クンとの一対一ね。

    「は――――は――――っ――――

    …………今の、が。あなたの、過去……なのか……?」

    ふふ、さっきまでアンタ呼ばわりだったクセに急にまた態度を変えるじゃない。そこは一貫してほしかったかなぁ。

    「ええ、そうよ。これでよーくわかったでしょ?この場において正しいのは私の方であり、間違っているのはソイツの方だって。
    私にあれだけの事をしておきながら、“ロアの転生体”がどんな災厄を齎すかを文字通り身をもって体験しておきながら、ロアを殺すという使命よりもキミへの恋を優先した。ったく、夢見るネンネも大概にしろっての。
    ―――で。この期に及んでもまだキミは、ソイツの傍に立つの?正しいか間違いかは置いとくとして、私に本気の殺意を向けられるの?」
    「………っ……………前に、言いましたよね。貴女が、先輩や町の人たちに手を出す怪物だったなら、俺は容赦できないって」

    あ、ちゃんと覚えてたんだ。てことはやっぱりアレはその場凌ぎの言い訳なんかじゃなくて本音ってワケかしらね。

    「そうだったわね。もっとも私はこれでも町の人々を守る為に動いてるから、間違ってもその人たちを手にかけるコトはないわ。
    でも……そうね。その女に関しては、キミを殺したあとに事が全て終わってから復讐するつもりよ。できるだけ、惨たらしく。容赦なく。慈悲もなく。考えつく限りのあらゆる方法で以て殺すわ」

    「………そうですか。まあ、たったいま貴女の過去を見たうえでなら、その復讐も納得はできなくもないです。語る資格はない、なんて軽はずみな発言は撤回します。

    けど、俺を殺したあとで先輩も殺すというのなら。――――――それでも俺は、このナイフを貴女に向けます」

    ………はぁ。結局、こうなるのか。ホント、どこまでも底抜けの善人ねキミは。献身もここまで来ると狂気の域よ。

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 18:17:17

    「……ふん。まあいいわ。どうせどれだけ言葉を交わそうと互いに譲れないものがあるんなら、後は力で示すしかないからねぇ。
    ロアの転生を止める為にキミを殺すという私の使命感は正しくあり、そしてシエルへの常軌を逸した復讐は間違いでもある。対して、キミのシエルと一緒にいたいという意思は正しくあり、そしてその為に私という障害を排除しようとする姿勢は間違いでもある。
    ―――うん。今、私とキミは同じ境界に立っているわ。もっともそこで再起不能になっている女は、この境界に立つ資格すらないけどね」

    そう言って、死人みたいな顔で人形のように突っ立っている“元”戦闘マシーンを見やる。既に魔術からは解放しているけど、依然としてだんまりとしたままだ。
    記憶の中の私も言ってたけど、本当に卑怯ね。そうやって何も言わずに黙ってれば、目の前の現実から目を背けられるとでも思っているんでしょ?これから愛しの彼氏が殺されるってのに、それさえも見て見ぬふりをしてさ。

    「そんなコトは、ない。先輩は必ず戻ってくる。貴女が悪夢の日々に対してそうしたように、自分の感情との折り合いをつけて目を覚ます。俺はそれを信じて、貴女と戦う」
    「そう、ならせいぜい恋人の復活を願いながら私に抗えるだけ抗ってみなさい。ここじゃ狭いし、さっきの礼拝堂のところまで場所を移しましょう?」

    そういうコトで礼拝堂まで移動するコトにした。その間際、志貴クンは「貴女が再び立ち上がってくれる事を信じています」とシエルに一声かけた。

    ……………はは、これじゃまるで私が悪役ね。でも、悪役だから正しいコトをしてはいけないってのも間違いよね。

    だから私は、私の正義に従って――――ロアを、志貴クンを殺すわ。

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 20:44:34

    「………ノエルさん。今のうちに一つ、聞いてもいいですか」
    「んん……?」

    礼拝堂に向けて歩を進めていると、不意に志貴クンから質問された。何かしら?

    「別にいいけど、どうしたの?」
    「いえ、大したことじゃないんですけど。仮にあなたが俺を殺して、先輩にも復讐を果たせたとして……その後は、どうするんですか?」
    「……………」

    何でもない、本当に他愛のない質問だった。なんでここにきてそんなコトを聞くんだろう?

    「ふと、思ったんですよ。復讐を唯一の支えとして生きてきたあなたにとって、その復讐の思いや大義が果たされてしまったら、そのまま死んでしまうんじゃないかって」

    ……何を言っているのやら。私が死ぬ?馬鹿言わないで。確かに私は救われない狂った怪物ではあるけど、あの夜を生き延びてしまった以上は殺された人たちの分まで生きるつもりだっての。

    「なワケないでしょ。復讐を果たして一人になった後でも生きていくわよ。私は死を恐れないってだけで、アイツみたいな死にたがりじゃないんだし」
    「そうですか?……でも、あなたは復讐という目的そのものが生きる理由だと言っていた。けど、このまま本当に復讐を果たしてその理由を失ってしまったら、あなたは何を生きる理由にできるんです?
    そもそも、見つけられるんですか?」

    ……………なによ。腹が立つ。なに、そんな風に言うってコトは心配でもしてくれてんの?私を?これから殺し合う相手を?
    いや、思い返せばシエルに対しても同じだったわね。本当にお人好しというか馬鹿というか。

    「……何が言いたいのキミ?なんで私のことを気にかけるワケ?」
    「いや、だからです。シエル先輩がそうだったように、あなたと過ごした日々も俺にとっては悪くなかった。
    だから―――あなたが先輩を殺すのも、あなたがその後に死ぬのも、イヤなんです」
    「―――――――」

    ああ、なんでこの期に及んでまだそんなコト言うのかな。
    私は―――そうして死に体になってるキミに心配されるほど死にたがりじゃないし、弱くもない。
    そんな人間的な脆さは、もう捨て去ったっつの。

  • 71二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 21:13:11

    高度なノエ虐なんだけど濃厚なシエリョナでもあるな

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 21:47:22

    志貴とは殆ど交流してない上に原作のシエル程度の交流じゃノエルを絆すのは無理よ
    このノエルさん言っちゃえばHFの鉄心√並みに覚悟が定まっちゃってるし

  • 73スレ主25/01/15(水) 22:04:17

    >>72

    ダイスが意思持ってんのかって思うくらいフラグとなる選択肢を徹底して避けまくっていましたからね……

    少なくとも今回の√じゃ流石にノエル√には派生しません

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:31:20

    ノエルさんはシエルとロアへの復讐を成し遂げたとしても故郷を惨事で染め上げた他の祖を自らの手で滅し切ら無い限り復讐の焔を絶やすことないだろうしね
    後ノエルの中には復讐以外にも罪もない人々が無惨に殺戮されることが許せない事が根底にある限り彼女はその歩みを止める事はないと信じたい

  • 75二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:31:45

    むしろノエルルートあったんですね…

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:32:54

    実質ノエルルート系じゃなかったんだ

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:39:02

    鬼の末裔に飽き足らず殺人鬼に吸血鬼、復讐鬼と令和になっても物騒な

  • 78スレ主25/01/15(水) 22:39:15

    ちょっと言い方に誤りがあったかな
    ノエル主観で物語が進む事に変わりはないけどノエルと志貴がくっつく可能性は絶たれたので今回は彼女との√派生はないってコトです
    (まあぶっちゃけると元々この復讐譚自体見切り発車で始めたんでノエル√なんて書く目処も立ってないんですけど)

  • 79二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:41:14

    ノエル√もいいけどマリノエ、幸せな日常ルート待ってます…

  • 80二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 22:56:54

    いやはや見切り発車のダイススレでここまでクオリティ高く仕上げてるのすげーよ

  • 81二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 23:07:54

    見切り発車にしては運転がダイス的な意味でもストーリーの辻褄合わせ的な意味でもうますぎるんだよな

  • 82二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 09:09:24

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 12:44:57

    「―――それじゃ私からも質問するけどさ、志貴クン。キミにとってシエルはどういうヤツなの?」
    「……何よりも大切で、自分の命よりも大事な愛しい人ですが」
    「よね?なら、アイツを守り、共に支え合う事を放棄するってコトは?」
    「は?……馬鹿にしているんですか。そんなの、死んでもするワケないでしょう」
    「でしょう?つまるところそれと同じなのよ、志貴クン。キミが間違ってもシエルを放棄したりしないのと同じくらい、いえそれ以上に私にとって復讐を止めるのは言語道断なの。
    私にとって復讐は代行者になってからの人生そのもの。復讐を止める事はそれまでの人生を否定するに等しいわ。
    もっとわかりやすく伝えると、私に復讐を止めろって言うのは死徒に対して人間を襲うなって言ってんのと同じコトよ」

    復讐は何も生まない、なんて事を言いやがるヤツはこの世にごまんといる。けどそんなヤツは復讐を決意したくなるような惨たらしい経験をしていないだけだ。していたとしても、それは果たすべき報復もできない自分の無力さを誤魔化して目を背ける為にそう口にしているに過ぎない。
    それは、そんなのは、私のようなどうしようもない怨念を抱えて突き進んでる復讐者に対しての、これ以上ない冒涜と言っていいわ。

    「復讐を止めてほしい、だなんて言ってるけどさ。あんなちょっとしたダイジェスト映像を見た程度で私の全部を理解しきったような感じでほざかないでくれる?
    私にとって復讐は何があっても絶対に揺らがない魂に刻んだ果たすべき宿命であって、これを否定するのは自殺も同然なの。これだけ言えばうんざりするくらいお人好しの志貴クンでも多少は理解が及ぶわよね?
    私にそんなアホらしい説得をしたところで、無意味なんだって。結局このまま殺し合うしか道はないんだってさ」
    「……………」

    志貴クンは何も言わない。彼が今どんな気持ちで私の言葉を聞いてんのかはわからないけど、私に復讐止めろとか言っても無駄だって諦めてさえくれてたら別に気にしなくていっか。
    うーん、でもこのお人好しの事だからなぁ。こうして黙ってても内心は多分、いいえ絶対に納得してないでしょうね。
    だったら、これ以上バカなコトを偉そうにほざかれる前にさっさと礼拝堂に行って殺してあげないと。

    どうせ彼をロアから解放する手段なんてあるワケないし、加えてアイツが記憶通りに立ち直ることもないだろうし。

  • 84二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 12:47:22

    本編でもロアを消せたのって完全に奇跡に近い偶然だったからなぁ…
    その手段も結局ロアの気まぐれであってシエルや志貴が見つけた手段でもないし

  • 85二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 13:32:08

    これで記憶通りにシエル先輩が立ち直ってきたらどうなっちまうんだノエル先生

  • 86二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 13:41:35

    シエル先輩がもしも復活したとしても死徒化しないで代行者の責務にも忠実なノエルに対して本編通りの事を言ったら代行者としての責務もノエルとの誓いも破ってる以上面の皮が厚すぎるからないし…
    この場合だと志貴を生かした上で志貴意思関係なく自分は復讐の相手としてノエルに殺されるぐらいじゃないと納得出来ないんじゃないかなぁ

  • 87二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 14:08:15

    >>86

    志貴を生かしたらロアの転生体を逃した代行者の最悪の異端者じゃねえかな…?

  • 88二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 15:38:39

    「………着いたわね。それじゃ、始めるとしましょう?」


    そこからは特に何も言葉を交わさず、礼拝堂まで到着した。


    「それにしても意外だったわ。私はキミの前を歩いていたワケだし、てっきりそのままナイフで突いてくるかと思ったんだけど」

    「………そんな易い手が通用するほどヤワな手合いでもないでしょう、あなたは。もしそれをやっていたら、俺は一歩踏み出した瞬間に確実に燃やされていた」


    へぇ、わかってるじゃない。どうやら私が隙だらけの女だとは向こうも思ってはいないようね。でも、さっきまでは割と本当に無防備だったのよ?


    「そうね。流石にそのまま殺せると確信できるほどおバカさんじゃないみたいで何よりよ。けどそれがわかってるんなら、こうして正面から仕掛けてもどの道変わらないと思わない?」

    「……ええ、そうでしょうね。それでも俺は先輩を守る為に、先輩と楽しく一緒に過ごす為に、ここであなたに立ち向かわないといかない」


    そう言って志貴クンはナイフを構えて、私という恋の障害を退けるべく戦闘の姿勢に入る。

    ふん、本当に一途な男ね。愛は理屈を無視して人を狂わせる、みたいな言葉があった気がするけど彼はまさにその通りじゃない。

    狂っているという意味でも同じ境界に立っているとも取れなくもないし、そうとなれば尚更に油断はできないわよね。

    ……うんうん。ならここは―――

    dice1d2=1 (1)

    1.その愛にあの女が応えられるかを試す

    2.彼のその想いを尊重し、こちらも得物一本で対等にする

  • 89二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:12:12

    このレスは削除されています

  • 90二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:21:59

    「ふぅん。それじゃあさ、志貴クン。キミのその底無しの愛に果たして本当にアイツが応える事ができるのか。それを試すとしようじゃないの」

    記憶の中の通りに事が進むってんなら、このあとにあの女も立ち直ってくるとは思うけど……あの茫然自失ぶりから戻ってこれるもんならせいぜい期待してみようかしらね。

    「試すって……つまり?」
    「―――10分。今から10分間、私は敢えて手加減してキミを殺しにかかる。その間にアイツが復活してここまでキミを助けに来るかどうかを懸けてやるってコト」

    言いながら右腕を払って炎を振り撒き、礼拝堂の周囲を囲う。これで逃げ場のない燃え盛る檻の完成だ。
    記憶の私も鐘(チャペル)の槍で同じ事やってた上で死者どもを人海戦術でけしかけてたけど、私はそんな舐め腐ったマネはしない。
    私はこの子の脅威性を識(し)っている。だからこそ殺せる瞬間を見逃さずに動き、向こうの一挙手一投足に注視する。

    「……先輩が来てくれたら、殺すのを止めてくれたりしますか?」
    「あのさ、何度も同じ事言わせないでよ。アイツが来ようが来なかろうが関係なく処断続行するに決まってんでしょ。
    手加減はするとは言ったけど、あくまで本気を出さないってだけで油断も遊びもせずに普通に殺るからね?そこを勘違いしないよう心掛けなさい」

    まったく、ここまで来てまだ私が矛を納めてくれる可能性に縋ろうとしているだなんて、覚悟と意識が足りてないんじゃないの?
    まあいいや。これ以上長引かせる理由もないし、とっとと処断執行と行きましょう。

    「それじゃ、もういいわよね?前もって最後に言っておくけど―――さよなら、遠野志貴クン。
    くだらない芝居の日々だったけど、まあそこそこ楽しくはあったわ」

  • 91二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:34:29

    どう決着つけるのか全然検討つかん、原作だと死徒になってたからこそ斃せたけど、こっちは人外なれど『ヒト』で、殺すなんてできりゃしないしね

  • 92二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:40:47

    志貴からしたら自分が死ぬのはいいが先輩が殺されるのはアウト
    シエルからしたら自分がノエルに殺されるのはいいがそれは志貴からロアを消して生き延びさせてから
    ノエルからしたらシエルを殺すのは自分でありロアの意識だけを消すなんて手段は存在しないから志貴ごと殺す他ない
    プラスして同じぐらい本来の使命や自分の誓いを破ったシエルへの批難かな?

  • 93二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 17:50:27

    今のノエルって代行者の中でも埋葬機関みたいな特殊枠を除けばトップクラスだろうから教会側も埋葬機関が死徒を庇って二十七祖を討伐した焔のノエルを殺したとかになったらかなり面倒くさい事になるぞ…

  • 94二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 19:20:51

    もう何でもいいからノエルに勝ってほしい
    数多のバッドエンドと賽子の上で高らかに哄笑をあげてくれ

  • 95二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 21:48:28

    全方位お労しい
    今のノエルには誰の声も届かないんだな

  • 96二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 22:05:22

    誰もノエルに声をかけようとしなかったし、ノエルもまた誰にも声をかけようとしなかったからね、多分

  • 97二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 22:33:29

    別れの言葉を告げる。同時に、ハルバードに炎を纏わせてから一蹴りで彼の懐に滑り込む。
    10m弱の距離からその位置まで一秒未満。そのまま彼の胸に目掛けて刺突するも寸でのところで反応され、ナイフで受け流される。
    瞬間、刃の向きを変えて横なぎに払う。彼はまたもナイフで受け止めて吹き飛ばされるも、炎の檻に届く寸前で踏みとどまる。うん、今ので終わりにしたかったんだけどなぁ。

    「―――ぐ、ぅう……!!」

    でも、生き延びた代償は決して小さくない。防いだとはいえ、ハルバードの重みによる衝撃と浄化の炎をほぼゼロ距離で食らったせいで彼の腕は多少ながらも焼けていた。恐らく、衝撃によって筋繊維も何本かオシャカになってるでしょう。

    「は―――は、ぁ―――なん、だよ、これ……!」
    「気になる?この炎はね、死徒のような魔性の存在を焼き滅ぼす事に特化しているの。今の死徒化しているキミにとっては痛いでしょう?志貴クン」

    というより、私がわざわざこうして説明しなくてもキミの魂を侵食してるクソ蛇が教えてくれてるんじゃないかしら。
    あのクズは無駄に800年以上生きてるだけあって知識も豊富でしょうし。

    「つまり……先輩の聖典(あれ)、みたいに……俺をロアごと、消せる……っ!?」
    「そ。よく理解できました。頭の回転が早い子は好き、よ―――!」

    褒めると同時に今度は蛇腹剣で肉を削ぎ落としにかかる。鞭のように高速でしなる鉄の蛇は、彼の全身を挽肉にせんと四方から縦横無尽に襲う。
    彼は抵抗するものの、ただでさえ負傷してパフォーマンスが落ちている腕で全部を捌ききれる筈もない。十合ほど重ねる内に、彼は全身を切り刻まれていく。

    「っ……この、剣には―――炎は、纏わせない、のか……!」
    「はいそこ、敬語がまた崩れているわよ。あと炎を纏わせていないのは当たり前よ。だってこの10分間は本気は出さないって宣言だし」
    「じゃあ、さっきのハルバードは、なんで……!?」
    「そりゃあ、キミの眼を通してのナイフは脅威的の一言だからね。だからまずはナイフを振るうための腕をまともに使えなくさせたワケ。
    万が一にも油断して殺される可能性を排除する為にはと考えれば、いの一番にそうするのが合理的でしょ?」

    蛇腹剣を振るいながら私は淡々と志貴クンに説明する。実際、今のところはまだ本気とは程遠いのよね。もっとも、殺意は全力だけど。

  • 98二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 22:43:01

    >>96

    おそらくコレ 志貴からは物騒な復讐者 シエルからは後輩でありある意味加害者である自分にすら教えをこう神の僕であり立派な先輩である焔の代行者

    普通の少女ノエルを知ってるのは資料越しだろうけど代行位じゃないのか?

  • 99二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 22:54:18

    死徒ノエル戦とは違って遊びなしで志貴の体力と精神を確実に削ぎながら捻り潰してるな

  • 100二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:05:22

    手加減してるけどこれって別に志貴に対する何かでもなくてシエルがどう決着をつけるのかを見極めるだけだからなぁ…
    復活したとしてもノエルとどう折り合いつけるのか分からんし
    復活しなかったとしてもノエルから軽蔑されるだけというある意味詰みだが

  • 101二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:10:33

    体感約1分。一旦、蛇腹剣を振るう手を止める。彼の肉体はもう刻まれていないところが見当たらないくらいにボロボロになっている。
    死徒化の恩恵でその傷もすぐに回復の兆しを見せ始めるものの、再生の際に生じる痛みで彼は苦しそうに喘ぐ。自前の血液だけでああして何とか再生に回している以上、もう殆ど残っていないだろう。焼けた腕は未だに遅れているし。
    でも、だからと言って当然ながらそれを黙って見ているほど私はバカじゃない。

    「は、っあ……ふぅ―――ふぅ―――」
    「辛そうね。まだギリギリ2分も経ってないわよ?じゃあ、次はキミに寄生してるクソ蛇の十八番を軽くブッ放すわね。当たれば丸焼きになるから気をつけなさい。
    ―――――X(デケム)」
    「っ……!」

    数秘門の雷霆魔術を展開し、100万ボルト程度に調整して撃ち飛ばす。絶縁体を破壊しきるには至らないでしょうけど、生物一匹の命を焼き焦がすには十分な火力だ。
    況してやその相手は死に体。彼はとにかく動き回り、それでも躱せない瞬間はナイフで迎撃し、足を全力で駆動させてバッタのように跳び回る。
    炎の檻との距離感にも気をつけながら、柱も利用して必死に駆けながら――――一瞬の機を突いて私に急接近してきた。

    「ッッ―――――!!」
    「おっと?」

    触手のように追い回す雷霆の尾を潜り抜けつつ、20mあった距離を即座に詰めてくる。

    「―――ふーん、」

    彼はそのままナイフを私に目掛けて突いてくる。私は咄嗟ことで反応が僅かに遅れ、手持ちの武器で反撃する事も防ぐ暇もない。
    ナイフは私の首元に近づいていく。ああ、これは間に合わない、かな。

    ( 殺(と)った―――! )

    「結構やるじゃない。やっぱり油断ならないね、キミは」
    「――――!?」


    ――――うん。だからもう、刃先を指でつまんで止めるしかないわよね。

  • 102二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:27:30

    蛇腹剣やら弓やらハルバードなんかを極限まで極めた上にヒトの原型を保った化け物に変わってるなら志貴の動きとか遅すぎて欠伸が出るよな

  • 103二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:41:45

    このノエルが復讐を遂げられたとしてハッピーになれるかはさておいて、ノエルのクライマックスとも呼べるところまで来たので普通にノエル応援しちゃってるわ

  • 104二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 23:55:18

    「な、ぁ―――――ぐほっ!?」
    「隙だらけよ、おバカさん」

    渾身の一撃をあっさり止められた事への動揺を突き、彼の腹部を蹴飛ばす。そのまま進行上にあった柱に衝突し、力なく床に落ちた。

    「あ―――ァが、っが――――うぶ、っ………!」
    「あ、言っておくけどキミが復帰するまで待ったりはしないから。これは試合でも稽古でもなく純然たる殺し合いだからさ。隙があれば容赦なく攻めて殺す。当たり前よね?」

    言いながらハルバードに持ち替えて突撃する。一応本気は出さないので今度は炎を纏わせていないけど、彼があのまま動かなかったらこのまま殺すだけだ。

    「っあああ!!」
    「!」

    目の前まで迫った瞬間、彼がナイフを振り上げる。ほぼ同時に持ち手を変えて防御の姿勢に入り、これを防ぐ。
    ほんの一瞬鍔迫り合いの態勢になったので、カウンターの要領で膝蹴りをかます。

    「うぉあっ!?」
    「ちっ―――!」

    しかしそれにもギリギリ反応した志貴クンは咄嗟に体を捻らせて半ば強引に脱出した。その際に軽く吹っ飛んで転がるものの、すぐにナイフを構える。

    「は……は……ぅぐ……!」

    けど、息は絶え絶えで回復も間に合っていない。唯一戦意と殺意、そして微かな恐怖を瞳に混めながら私を見据えている。どうすればそのナイフを当てられるかを全力で探っている。

    「……そろそろ3分経つ頃かしら。もう諦めたら?キミはどうあっても助からない。私まだ全然本気出していないし、半分も見せていないわよ?対してキミは死にかけ。仮に今ここでシエルが来ても結果はほとんど変わらないと思うのだけど」
    「……だから、なんだっていうんです。あなたこそ、何度も、言わせないでください。
    俺は、先輩と一緒に楽しく生きていたい。あの人は必ずここへやって来る。だから――――俺は、先輩を信じて最期まで抗うだけだ」

    ………ま、そう言うでしょうね。正直、キミが諦めるところなんて全く想像できないし。

  • 105二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 00:25:47

    あ、あの……志貴クンこれ10分どころか5分持ちますか……?
    こうして細かく描写されるとこのノエルさんのイカれた強さが伝わってくるなぁ
    ボロボロの死に体とはいえなんで死徒化した志貴の渾身の一撃を指でつまんで止められるんだよ……

  • 106二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 00:34:32

    >>105

    仮にも祖を消してるんです

    白鯨宿してアルク倒して埋葬機関に属してないだけで

  • 107二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 02:07:21

    そして志貴クンは果敢に私に立ち向かってくる。私はそれを軽くいなし、あしらい、反撃(かえ)しながらその悉くを打ち砕く。
    それでも彼は立ち上がり、ボロボロの肉体を根性で動かしながら私に迫る。でも彼の決死の攻撃は私には届かず、逆に私の攻撃は彼の身体を少しずつ確実に削っていく。

    「あ、がふ―――アァ、あ―――ぎ、ぃ……!!

    ――――――――っああああああああ!!!」

    心身共に追い詰められ、もう意識を保つのにも精一杯でしょうにまだ戦意の意思を燃やして立ち向かう。
    シエルが好き。シエルをもっと愛したい。シエルと楽しく過ごしたい。シエルを死なせたくない。シエルと、共に生きたい。
    そういう一途すぎる想いを魂の燃料にしているんだろうな。私がシエルを、エレイシアを殺したいという怨念を復讐の薪にしているのと同じように。

    「―――4分経過。いやいや、大したものね。そのしぶとさもシエルへの信頼と愛の力が生せる根性故かしら?」
    「ああ、そうだ!先輩は……こんな、どうしようもない俺を信じて救ってくれた。だから今度は、俺があの人を信じて救(たす)ける番だ――――――!」
    「はっ!いいわね、泣かせるじゃない。それじゃ私は狂った復讐鬼として、正義の代行者として、その恋路を断ち切ってやるわ!」

    そら。来るなら来なさい、来れるもんなら来てみなさい、シエル。
    こんなにも愚直にアンタの事を信じて戦ってくれる人がいるってのに、アンタはそうやって殻に籠って見て見ぬふりをし続けるの?
    ああ、だとしたら笑ってあげるわ。ええ、とことん笑ってあげるわ!13年前の時も、この瞬間も、結局アンタは自分可愛さで大切な人を見殺しにしたクソッタレ以下の悪魔なんだって!

    そうじゃないってんなら――――――さっさと目を覚まして彼を守って私を裏切るか、それとも彼をロアの侵食から楽にしてやるかを選びなさい。

  • 108二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 10:02:01

    日々が終わる地獄を見た。

    “やめて”

    親が子供を殺す地獄を見た。

    “やめてください”

    子供が親を殺す地獄を見た。

    “お願い”

    誰も彼もを分け隔てなく殺す地獄を見た。

    “やめて、やめてやめてやめてやめて……!”

    ただの一度も制止できず。それらすべて、わたしが引き起こした地獄を見た。

    手を止めたくても止められなかった。
    目を塞ぎたくても塞げなかった。
    口を閉じたくても閉じられなかった。

    殺したくても。
    自分を殺したくても、殺せなかった。

  • 109二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 10:02:31

    わたしは悪趣味な機械だった。血を集められればそれでいい圧搾機だった。
    いや、機械に申し訳がない。機械にはあんな余分はない。悲鳴を聞きたいからとか反応がみたいからとか、そんな目的で作業工程を増やしたりなんかしない。

    わたしはとっくに人間じゃなかった。人間のフリすらしてはならない生き物だった。
    罪があろうがなかろうが、生まれてはいけない素材だった。誰もがそう口にしたし、誰の言葉も正しかった。
    彼女の言う通り、わたしは悍ましい悪魔だった。そんなわたしなんかが、生きていていい理由はなかった。

    せめて一日で終わってほしかった。でも夜は明けなかった。
    彼女が言っていたように、あの儀式はほとんどが成功していた。アルクェイドはわたしの手に落ち、あと少しで彼女を丸吞みにできるところだった。
    なのに、呼ばれもしないのに現れた七人目が、あっさり天秤をひっくり返した。

    そうして、わたしは殺された。
    やっとやっと殺された。
    どうせならもっと早く殺してほしかった。
    わたしだった物体(もの)はわたしが殺してきた人々と同じように、無造作に道に捨てられた。

    その後に何があったのかは、目を閉じたわたしには知り得ない結末だった。わたしはようやく暗い暗い死に埋没した。

    ……そうだ、これでいい。もう目を覚ます事はないし、毎晩繰り返し思い出す事もない。
    わたしはずっと、こうして死んだままでいればいい。

  • 110二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 10:29:59

    ……でも、眠っていても忘れられない。あの時の記憶を忘れて“無かった事”になんかしていい筈がない。
    だから戦った。少しでも人々の役に立てればと願った。生きているのなら休めない。
    こんなわたしでも、何かが出来るのだと信じてしまった。共に歩んでいく内に、彼女と少しづつ分かり合えていると思い込んでしまった。

    なんて浅はかな願いだったんだろう。なんて傲慢な思い上がりだったんだろう。
    わたしは周りを傷付けただけで、彼女の事を何も理解できていなかった。
    彼女がどんな気持ちであの日から今に至るまでを生き続けてきたのか。
    彼女が強くなる中でどんな辛い道のりを歩んできたか。
    彼女がどれだけわたしを恨んでいるのか。
    彼女が―――どれだけ苦心して、どれだけの代償を払って、どれだけの努力を重ねてきたのか。
    なにも、なんにも、わかってなかった。上っ面でしか理解していなかった。

    ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
    思い上がってごめんなさい。しねなくてごめんなさい。もう、戦えなくてごめんなさい。

    この6年間は無駄だったのです。彼女の言うようにわたしは13年前のあの日から既にわたしではなくなっていて。ただ惨めに虚しく生きているだけの死に損ないの肉にすぎなくなっていて。
    このまま自分を殺し続けてただの肉塊に成り下がるのが、一番良いんだと理解しました。
    本当に、ごめんなさい。こんなわたしが、何かを救えるだなんて思ってさえいけなかった。

    況してや彼女の言う通り、わたしは彼女と同じ境界に立つ資格なんて最初からなかった。無意識にそう思い込む事すらしてはいけなかった。
    わたしが彼女と並べているところなんて、どこにもなかった。何一つとして、彼女には及んでいなかったのです。

  • 111二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 11:03:06

    “ぁ――――――”

    なのに、どうして。
    わたしの頭を、温かな手で撫でてくれる人がいるんだろう?

    ……そうか。外ではまだ誰かが戦っている。わたしなんかを背負っている。
    見捨てずにシエルという名前を呼びかけ続けている。密着した胸に、冷たく変わりきった体温が伝わってくる。
    わたしを守る為に、彼女を相手に命を懸けて戦っている。

    ……やめてほしい。こんな余分なモノはここで捨てていってほしい。
    こんな風に自分を必要としてくれる人もいる。たぶん、今まで他にもそういう人はいてくれたと思う。

    けれど、それでも戦えない。もう耐えられない。もう思い出したくない。
    辛い。ずっと辛かった。ずっと楽になりたかった。
    わたしは全く強くなんかなくて、立ち止まるのが堪らなく怖かっただけで、いつ壊れてもおかしくなかった。

    でも彼女のこれまでを思い知らされた以上、そんな弱音すら言えない。わたしなんかよりずっと辛い思いを味わって、それでも決して立ち止まらずに突き進んできた彼女を前に、今までどうしてそんな身のほど知らずな思いを抱えてこれたのだろう。

    けど、それを分からせられた上で尚も戦えない。戦えないんです。
    だってどんなに吸血鬼を倒しても、
    どんなに誰かを助けても、
    いつか報われるだろう彼女と違って、わたしが許される時はこないのだから。

  • 112二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 12:40:52

    どうあってもシエルは死にそうなのがなぁ…
    それを志貴は受け入れられるのだろうか

  • 113二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 15:39:08

    『自分は許されないだって……?そんなの当たり前だ。あなたは絶対に許されない。
    何よりあなた本人が、自分を許すことを認めない』

    “え……?”

    その声はすぐ近くから。
    ここにはもういない誰かが、全霊をこめて、わたしに残した言葉だった。

    でも彼の言う通りだ。一生赦しはない。一生贖えない。わたしは過去を精算できない。
    だから、このまま―――

    『違いますよ。あなたが許さないと誓ったのは過去じゃなくて、この先の行いでしょう?
    何をしても結果は同じなら。何をしても失われたものは戻らないのなら。
    せめて、一つでも多くの『善いこと』をやり遂げて死なないと』

    “ぁ……あ、あ……あぁ、あ―――”

    みっともなくぐずぐずと泣いている。誰かの厳しい叱責があまりにも的を射ていて、自分の愚かさに胸が裂ける。

    ……それは分かってる。分かっているのです。その為に今まで生きてきたのです。けれど、それすら許されるのでしょうか。
    多くの命を奪った悪魔(わたし)は、彼女を復讐の狂気に奔らせた愚か者(わたし)は、善き人々の生活に触れる事さえ、

    “許されないの、では―――”

    嗚咽が止まらない。自らの醜さと弱さを思い知る。わたしは地上でもっとも汚れた生き物で、誰であろうと、わたしを弾劾する資格がある。
    それこそ彼女に至っては、考えつくかぎりのあらゆる責め苦を与えてわたしを殺し尽しても許される。何をどれほどされても、わたしには黙って抗わずに復讐を受け入れる以外の権利はない。

    なのに。そんなわたしを、力強く抱きとめる腕があった。

  • 114二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 15:39:36

    『あなたは言った。死なない体だから、体が強いから罪に耐えられた。自分と同じなら誰でも耐えられたと。
    でも、それは違う。ぜったいに違うんです。
    体が強いからじゃなく、あなたは始まりから心が強かった。そういう善(つよ)い心があったから、罪を背負い続けられた。
    それは―――それは、俺には無いものです。彼女にだって持ち合わせていなかった、あなただけの強さなんです』

    そう、彼は語った。万人に誇れる、あなたの光そのものだと。どれほどの罪を背負うとも、善良な心を持ち、育み、これを捨てる事をしなかったのなら。
    あなたの贖罪は、決して無意味などではなかったと。

    ……どうしようもないほどの悲しみを隠して、彼は自分がほしくてほしくてたまらなかったものを、諦めるようにそう言った。

    『俺はどうしようもない人間で、実のところ、感謝する事はたくさんあっても、楽しいと思える時はなかったんです。
    でも、あなたがいてくれた。あなたがいてくれると嬉しい。あなたが笑ってくれると嬉しい。俺は先輩のために、生きていきたいと思ったんです。
    あなたの道に付き添っていく。あなたが許される日は来ないと分かっていても。あなたが自らを許せる日が来ることを願って、ずっと一緒に歩いていく。
    だから―――厳しいけど、力尽きるまで戦うのを止めないで。彼女の怨念(おもい)を、正面から受け止めた上で戦うのを放棄しないで』

    抱きとめられていた感触が失われる。やわらかく離れていく。
    今も自分が失われていく中、彼は照れくさそうに笑って、わたしを信じて戦場に駆けていった。

  • 115二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 16:46:22

    「“なんて見当違いの信頼でしょう。私が始まりから善(つよ)かった?まったくバカらしい。
    あなたは自分を殺さなかった。自分の命可愛さにみんなを見殺しにした。この世でもっともありきたりな利己主義という悪心。
    ―――それが私たちの正体でしょう?”」

    嗚咽を止める。鉛まで落ちていた鈍(おも)い体に血を巡らせる。

    “あ―――、ぐっ―――!”

    痛い。すごく痛い。数えきれないぐらい生き返ってきたけど、この痛みだけは何度味わってもガマンできない。
    でも、いつも隣で戦ってくれていた彼女は、こんなのよりもっと痛くて苦しい思いを幾度となく味わいながら進み続けている。
    だったら、わたしもこの程度の痛みは乗り越えないと。わたしに向けられるべき彼女の焔(にくしみ)から、彼を護らないと。

    本当に―――わたしは、謝ってばかりだ。ごめんなさい、わたしの体。こんなコトでまたダメにしてしまったし、これからもダメにし続けるだろうけど、どうか懲りずに魂(わたし)に付き合ってほしい。

    「“私たちは元からそういう生き物だった。ロアという吸血鬼は契機にすぎない。
    私は優れた肉体を持って生まれてしまった。いずれ周囲との軋轢は起こっていた。それがあのようなカタチになっただけだ。
    私はどうあれ、きっと、多くの罪を犯していた。多くの人間に石を投げられる運命だったのよ。
    現に、私たちのせいで彼女は人間をやめてしまった。人間だった自分を忘れて、人並みの幸せを望む事よりも復讐の道を突き進む事に固執するようになってしまった。
    私という最悪の悪魔が、彼女を悲劇の怪物に変えてしまった”」

    “こ、の―――!”

    力ずくで、バリバリと背中の皮を剥がす。暗闇に癒着してしまった背中だ、これぐらいはしようがない。
    でも、だって、ほら。今も、遠くから音が聞こえる。今もひとりでわたしを信じて、彼女に抗っている音が確かに聞こえる。
    あの信頼に応える為なら、皮はおろか骨まで剥がされてしまってもいい。

  • 116二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 17:59:00

    「“―――どうして。
    まだ希望を見るの?この期に及んでまだ罪を認めないの?
    私は絶対に救われない。代行者としてのあなたはただの犠牲者にすぎない。
    私たちには救われる奇跡も、生きている理由も、愛される価値も、ましてや彼女を置いて人間に戻る資格なんてない。
    私たちはただの一度も本気で彼女と向き合って来なかった。向き合わなかったからこそ見当違いで筋違いの勘違いを、愚かにも彼女に向けていた。
    そうでしょう、エレイシア?”」

    ……そう、確かにわたしには愛される価値はない。加えて彼女の事を何一つとして分かっていなかった。バディとしてあまりにも失格だ。
    でも奇跡を見た。たった今、なにより尊いものを見た。
    彼には何もない。幼い頃から奪われるだけの人生だった。彼本人、奪われすぎて何があったのか、それがどういう事なのかを気づく余地すら奪われている。
    だから、何よりもまずは人生を、自分の幸せを取り返さないといけない人だったのに。

    そんな人が、自分(わたし)の為に願うと言ってくれた。それだけの強さを持った人が、わたしなんかを選んでくれた。
    なら―――わたしも、その価値を示さないと。それだけが、自分に残された意義だと思い出した。

    「“………………そう”」

    “ぁ―――、く、あ―――………!”

    暗闇から手を伸ばす。体に力は戻らない。心は今も弱いままだ。わたしを一心に信じてくれる彼や、わたしへの復讐にどこまでも真っ直ぐに進み続ける彼女と違って、わたしはずっとこんな迷いを抱き続けるだろう。

    うん、それでも立たないと。彼女と同じ境界に立てなくても、彼女を裏切ることになろうとも、彼女の言うように一生間違ったままでも。
    この命は過去を嘆く為ではなく、もう一度―――

    “ああ、あ、あぁぁぁぁ―――――!!”

    いや、幾たび倒れようと、祈りあるかぎり、戦う為に与えられたんだから―――!


    「“………………この、半端な偽善者め”」

  • 117二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 18:31:39

    それでノエルさんとはどうケリをつけるのかな?
    本編みたいに死徒化してないから志貴を殺そうとする彼女を退ける正当な理由なんてないぞ

  • 118二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:10:17

    彼氏っていう新しい生き甲斐見つけたシエルとそんな生き甲斐なんぞいらんわってダイス神と手を取って復讐に邁進していくノエルって対称的だけどこれ少しでも関係改善する目とかあるんだろうか

  • 119二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:18:41

    頑張れシエル先輩!頑張れノエル先生!頑張れ志貴くん!

  • 120二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:20:11

    どうかノエルさんに良い結果を…………!

  • 121二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:23:32

    ノエル先生の勝利の美酒が欲しいですね(愉悦部)

  • 122二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 22:46:44

    どんどん画面の下に行ってるので保守します!!!!!

  • 123二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 23:20:03

    >>122

    レス消費になっちゃうからカテゴリ開いて一覧の上の方に出てこないぐらいでは保守するのやめといた方がええで

  • 124二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 00:07:33

    「…………ん……」


    眠りから目を覚ます。ようやく見て見ぬ振りをやめて、目の前の現実を視る。

    そうだ。これからわたしは、わたしの存在価値を、意味を示す為に動く。


    「彼を―――遠野くんを、救(たす)けなくちゃ。目を覚ました以上は行かなくちゃ」


    わたしは床に落としていた聖典を手に取ってその場を駆け抜ける。微かだけどハッキリと感じる。ロアの……彼の、魂を。

    彼は今も必死に抗っている。わたしを信じて待ってくれている。

    なら、こちらも急がなくてはいけない。わたしは全速力で礼拝堂の方へと奔る。


    「もっと、もっと速く!お願い、間に合って……!」


    1分と経たない内に遠くに燃え盛る蒼黒い炎が見えた。アレはノエルの浄炎だ。

    という事はあの中で彼は彼女と―――!


    「今そこに行きます、遠野くん!」


    炎の中に飛び込み、ほんの一瞬全身を焼かれる。問題ない。すぐに潜り抜ける。今度は、わたしが彼を守る番だ。


    そして、炎を抜けた先に見えたのは―――


    dice1d2=2 (2)

    1.涼しい顔で圧倒しているノエルと、それに立ち向かう彼の姿だった。

    2.―――ノエルが、誰かをハルバードで貫いていた。

  • 125二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 00:29:01

    間に合わなかったか...
    まあ4分でさえアレが生き残れるのは奇跡的な運でもなきゃ厳しい

  • 126二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 00:36:31

    ノエルに侮蔑され嘲笑されるシエルが見える見える

  • 127二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 00:47:47

    今度も起きるのが遅かったねエレイシア

  • 128二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 03:52:44

    ダイス神無情過ぎねえか? ここは間に合って、お互い死力を尽くして精魂尽きるまでやりあって、内にあるモノぶちまけきって、お互いの妥協点を見つける少年漫画的展開では!? だが、こっちのがそそるなあ!

  • 129二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 06:39:15

    今回のダイス神はノエルの復讐に付き合ってくれるようだ
    シエルさん時間をかけていいのはカレーを煮る時だけですよ

  • 130二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 08:23:25

    「あ――――――ぁ?」

    貫いてる。胸を貫いてる。ノエルが、炎に揺らめいているハルバードで、誰かを、ダレかを、ころしてる。

    「……ん?ああ、起きたのね。いや、まさか本当に自力で立ち直ってくるなんて凄いじゃない。改めておはよう、シエル!

    ――――――ほんと、遅かったじゃん。そら、最期の逢瀬でも交わすといいわ」

    そう言って、彼女はダレかを無造作に投げてくる。咄嗟に掴んで抱きかかえたダレかの体は、胸を中心に、燃え広がって、いって。

    「―――とおの、くん?」
    「あ、はは……すみま せん。先ぱ、ぃ。やっと、来て……くれたって のに、しくじ っちゃいまし た」

    ダレかは、彼は、微かに笑ってそう言った。炎はわたしの腕を巻き込みながら、彼の体を、は、灰に、灰にして―――。

    「まって。まって、待って待って!ダメ、ダメです。貴方の残してくれた言葉でようやく立ち直れたのに、ここまで来たのにっ!!い、今たすけます。助けますから、消えないでっ………!!」
    「あ、ぁ………やっぱり、先輩は、やさしい な。あなたのような、ひとに出逢 えて……俺は、ほんとに……果報 もの、だぜ」
    「なにバカなコト言ってるんですかっ!わたしと一緒に生きたいんでしょう!?わたしなんかを選んでくれて、その上で幸せを与えてくれるんでしょう!?
    死なせない。死なせません!ここまで来て、ここまで来てこんなのって……!!」

    言いながら蘇生魔術を施す。でも、ちゃんとした手間もかけずにその場の勢いで発動させた程度じゃ、たかが知れていて。
    肉片一つ再生せずに、どんどん炭化して消えていく。炎と共に―――ロアの魂も、彼の命も、消えていく。

    「だめ、ダメです!!イヤだ、イヤ。お願い止まって、止まってよ!治ってよ!まだ、貴方と何にも話していないのに。何も与えてあげられていないのに!!」
    「……ありが とう、先輩。でも、わかるんだ。もう……無理なんだ って」
    「無理、無理なんかじゃ、ない!生きなさい、生きて!あ、貴方は、ここで死んじゃ、ダメ―――」
    「は、は。せんぱいも、わ かってる クセ、に。ああ、のえ、ルさんも……最期に……先輩と、はなさせて、ありがと う」
    「はいはい、どういたしまして。まったく、ちょっと慈悲を与えただけで今の今まで殺し合ってた相手にも感謝するとか。最期の最期まで国宝級のお人好しだったね、志貴クン」

  • 131二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 08:26:42

    「いやだ―――いや、だ。遠野、くん。死んじゃイヤ、ヤだ―――」

    なぜ、どうしてもっと早く目覚めなかった。どうしてもっと早く駆け付けられなかった。
    いや、そもそも―――どうして彼が戦ってたのに、自分はまたも自分勝手に現実から逃げ出した?

    「……ああ。もう、手足の感覚もない。まるで、くびか ら下が、無くなっているみたいだ。ごめんなさい。おれは、もう、ここまでみたい です」
    「あ―――あ、ぁあ、あ」

    彼はもう、肩の辺りまで消えている。最後に残った頭も、徐々に燃えて灰と化していく。

    「おれ、は……あの雨の日 から。ずっと……ずっと、あなたに 何かを 返さないとって、思ってた。でも、おれは、不器用だから、どうしても、思いつか なくて。
    だから、今 あなたに恩を返すぞって……今度は おれが、あなたを まもるんだって。がんばって、がんばって、いきようと して。けっきょく、こんな風に、終わっちゃって」

    もう、顔しか残ってない。こんな時なのに、なにも言えない。なによりも大切で、愛しい彼に、手向けの言葉を、言えない。

    「もっと、いうべき言葉が、あったん だろうけ ど………ごめんなさい。ほんとうに、ごめんなさ い。
    ――――――あなたを、しあわ せに できな か――――――――」
    「―――あ」

    きえた。最期に、そうあやまって、くやんで、彼はきえた。きえ、ちゃった。

    「―――あ。あ、あああ。ああ」
    「……じゃあね、志貴クン。キミは最期までお人好しだったけど、その一途な心は、どこまでも真っすぐで美しいと思えたわ」

    わたしの、大切な人を、わたしのせいで、死なせてしまった。
    わたしが―――殺して、しまった。

    「対してさ。アンタは―――“また”、自分の都合を優先して見殺しにしたわね。どこまでも醜い利己主義のクソッタレ悪魔?」

    「あ―――ぁあああああああああああああああぁぁぁあぁああああああああああああ!!!!!!!」

  • 132二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 08:30:18

    美しい……これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう……

  • 133二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 09:31:21

    「…………………」

    灰となって消え去った志貴クン。そんな彼の最期を文字通り目の前で見せつけられたシエルはまたも呆然としていた。

    「……で。どう思った?代行者としての使命も私との誓いも無視して彼を生かそうとした果てに、彼を苦しめてから死なせてしまったこの結果にさ。
    ―――わかったでしょう?アンタがいま打ちひしがれてるだろうそれが、目の前で大切な人を惨たらしく殺された時の気持ちなんだよ」

    そう嫌味たらしく吐き捨てる。だけど、アンタはこうして今わの際の会話さえ許してくれずに文字通り踏みにじったわよね。
    何より、こんなんじゃ一度は裏切られた私の虫の居所は収まったもんじゃない。

    「アンタは果たすべき責務より恋を優先した。私にあれだけのコトをして、私の人生をめちゃくちゃに壊してくれたにも関わらず、私をまたも裏切って失望させた。
    その結果がコレよ。ねぇ、馬鹿にしてんの?私のことを無自覚に馬鹿にしてんの?いいえしているのよね。事情さえ話せば最終的には自分の都合通りに動いてくれる筈だって、自分の言う事に従ってくれる筈だっつって軽視しているのよ。アンタはさ」
    「ぅ……ぁう……ぅ、うぅ、ぁ……!」

    この女は私の事を何も理解していなかった。『代行者ノエルは自分の感情よりも状況を冷静に見て動く。だから自分の言うことも信用してくれるだろう』って。
    馬鹿でしょ。自分の感情で動いてたのはそっちだろうが。長らく治外法権の立場にいたせいで“使命より恋を取っても大丈夫だろう”って思い上がるくらい頭も緩んじゃってたのかな。

    「そして、いざこうして責めればそうやって泣き呻くだけ。まともに答えようとしない。彼との最期の会話だってそうよ。仮にも恋人なら手向けの言葉の一つでも送ってやるべきでしょうに、アンタはそれさえできなかった。
    本当におかしいわ。そんな状況にしたのも、巡り巡って全部アンタが招いた事なのにさ」

    あの懺悔も涙も悔恨も、みーんな噓っぱち。もっとも、それはコイツと組むずっと前から既にわかってたコトだけど。
    こうなって欲しくはなかったけど、結局コイツは恋を優先した。そのクセ、自分の過去とまともに向き合わずに立ち直るまでちんたら時間を掛けたせいでその恋すら失った。

    「……ああ。もう、本当に……本っ当にさ。アンタってヤツは。

    ―――笑っちゃうくらい!滑稽で惨めで半端で自分勝手な女ねっ!!」

  • 134二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 10:15:36

    ここから諦めて首を差し出すのかそれとも立ち向かうのか。ノエル先輩はどっちがいいんだろう。このままうなだれたままの相手を殺しても張り合いは無さそうだけど

  • 135二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 10:22:48

    「――――――」
    「あは、あははははははっはははははははははははは!!こんなん笑わずにいられるかっての!憎んでくれないと殺せない?幸せな人を死なせるのはヤだ?彼をロアから解放する手段が他にあるかもしれない?
    はっはははは!なぁぁに人間ぶったコトほざいてんのよ!アホらしすぎてこっちが泣きたくなってくるわ!」

    記憶の中の私はいつもいつも中途半端で、何者にも成り切れていなかった。人間としても、代行者としても、怪物としても、その悉くが見るに堪えない無様で間抜けな有様だった。
    でも―――今は、この状況はどうだ。私は主の執行人として、復讐鬼としての責務を果たした。対してコイツは戦闘マシーンとしても執行人としても失格で、人間としてすら自分の我儘な行いで唯一手に入れた恋を一瞬で永遠に失った利己主義の薄情者に堕ちた。
    まるで、まるで逆転しているじゃないの!

    「ああ、本っ当にどこまでも救いようがない愚か者ねアンタは!下水道の時には、私情で庇うつもりなのかって私の言葉に『わたしの個人的感情は一切関係ありません』とか返して冷徹な執行者ぶってたけどさ。結局、結局感情で動いてんじゃない!
    まさに嘘!そう、アンタは嘘しか吐けない女だったのよ。でもそれも当たり前よね、だってアンタは始まりから人間という嘘(ガワ)を被って産まれ落ちてきやがった化け物だったんだからっ!!」

    ふふ、ふふふふふふふ。いけない、いけないわ。想像以上にこの女が無様すぎて、私もついつい口が回ってしまう!
    でもそうなるのもしょうがないわよね。夢にまで見た完全な逆転構図になったんですもの。この女はもう、私には逆らえない。そうしようものならロアに絆されて主の代理人に反抗した異端者として、今度こそこの地上から完膚なきまでに消されてしまう。
    それが分かってるからこそコイツはこうして何も言わず、何も言えずに黙ってる。壊れたくても頭がそうして冷静に考えてしまう。
    ああ、だったらもう―――今ここで調子に乗って言いたい放題したくなるのは当然よねぇ!!

    「なんて、なんて素晴らしい日なのかしら!13年間に渡る因縁の一つに決着が付いただけじゃなく、こうして一番気に食わないヤツにあの時の無力な私の気持ちの一端を思い知らせてやれたなんて!
    やっぱり。やっぱり!やっぱり神様はいるんだわ!ぅふふふっふふふふはははははははハハハハハハハハハハハ!!!」

  • 136二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 12:37:52

    傍から見るとどうしようもなく哀しい話なんだけどここまでずっとノエルを見てきたからなんか…よかったね…みたいな気持ちが生まれてしまう

  • 137二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 12:39:41

    なんかこのままノエルさんが調子乗ってるとシエル先輩が反発起こしそうな気がするし、でもこのままノエルさんが復讐をまっとうする感じもあるし……どうなるかな

  • 138二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 12:42:34

    前にあったエンディングで心中エンドあったけどそうじゃないの見たいな…………

  • 139二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 12:45:44

    でもノエルは志貴の事は今まで一回も下に見ずに自分と対等な扱いで接して来たから
    シエルがどうこう言う事は出来ないんだよな

  • 140二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 13:35:02

    遠野君に関しては人としてはそれなりに真摯に付き合った上で復讐の説明をして言い訳するでもなく、真っ当に代行者かつ復讐者として殺してるしな。
    道徳的な優位性はともかく心折れて立ち止まっちゃったから遠野君を失ったのはシエル先輩には悪いけど仕方ない。
    それはそれとして調子乗って詰めを甘くしてると最後の最後で後悔するぞノエル先輩

  • 141二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 13:46:25

    ノエルはこの後のアルクの事も考えて色々細工してるけどおそらくシエルがいないと上手く対処できないだろうからそこで志貴を失ったとしても人々を守るという本来の償いを出来るかどうかだな

  • 142二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 14:01:40

    笑う。一頻り笑う。いま正に幸福と狂喜の絶頂にある私だけど、そろそろコイツの嘲笑うのは一旦ここまでとしておきましょう。これからの予定に備えないといけないからねぇ。

    「んっふふうふふ、ふふひひひひ、くふふ、くく……ふぅぅぅ。あー、今年一番笑った気がするわぁ。じゃあ話を変えるけど、」
    「―――て」
    「ん?」

    「―――おねがい、します。どうか、殺してください」
    「――――――」

    そう言ってシエルは床に手と頭を付けて私に懇願してきだした。へぇ、マジで卑怯な女ね。怒りも失望も通り越して、反って頭が冷えてきたわ。

    「イヤに決まってるじゃない。何でアンタのお願いで殺さなくちゃいけないの?そんなのは私が望む復讐じゃないのよ。
    ていうか、今アンタを殺すだなんてコトは出来ないわ。だってアンタにはこの後の大仕事に付き合ってもらわないといけないんだし」
    「……おお、しごと?」

    あー……腹立つわね。わかんないの?アンタ自身さっき志貴クンに対してポロっと零して憂いていたじゃない。

    「察しなさいよ、代行者シエル。真祖の姫サマの撃退に決まってんでしょうが。こうして志貴クンを殺した事で、あの化け物は間もなく本格的にキレて私たちをぶっ潰しに襲い来るわ。
    だから私はそうなる事を前もって予測して、事前に学校を迎撃拠点として改造しといたの。あそこなら人が寄り付かないし、秘密裏にドンパチやる分には最適でしょう?」
    「……………」
    「ほら、立ちなさい。言うまでもないけど真祖の撃退は私だけじゃどう考えても無理がある。公園の時のアレは偶然に偶然が積み重なった事でようやく一時的に無力化に至れただけだしね。
    やっぱりこういう時はアンタの力が必要になってくるわ。もう一度言うけど、わかったらとっとと立ちやがれ」

    それに、『例の実験』もあるから尚更ここで殺す理由がない。第一ここで殺しちゃうと今度は私が後から真祖に確殺されてしまうしね。
    で、一応バディとして手を差し伸べてはみたものの……反応がない。ああ、やっぱり人間に堕ちた元戦闘マシーンには無理な事なのかし、ら―――?

    「…………………わかり、ました。それじゃあ、一緒に協力して、アルクェイドを退けましょう」
    「……へぇ、ちょっと驚いたわ。まさか、本当に立ち上がってくれるなんてね」

  • 143二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 14:39:20

    シエルは意外にもすぐに私の手をとって再起の姿勢を見せる。流石は鉄の女、と言いたいけどどういう風の吹き回しかしら?

    「一応聞くけど、何でそんなにあっさりと立ち上がったの?立ち上がらせようとした私が言うのも何だけど、アンタそのままずっと惨めに情けなく折れてそうな感じだったじゃん」
    「―――彼が。彼がわたしに遺してくれたモノが……こうして立ち上がらせてくれたからです」

    彼って……志貴クンが?遺してくれたモノって何よ?

    「つまり……どういうコト?それは一体何なの?」
    「……………いえ、それは秘密です。そんなコトを気にするより、今はアルクェイドの撃退でしょう?
    ―――行きましょう、代行者ノエル。弱き人々を、護る為に」

    あ、コイツ生意気にも露骨に話題を逸らしやがった。ふん、愛しの彼氏を殺した私へのせめてもの細やかな抵抗ってか?

    「……まあいいわ。ええ、確かにアンタの言う通り今はそんなのどうでも良かったわね。じゃ、さっさと行動に移るわよ。既に志貴クンが消滅してから10分くらい経ってるし、いつあの化け物がやって来るかわかったものじゃないからね」
    「はい。急ぎましょう」

    そして、話を終えた私とシエルは真祖撃退の為に礼拝堂及び地下空洞を後にする。随分と長いこと居た気がするけど、恐らく実際は一時間も経っていなかったでしょう。

    ―――よし。それじゃ、この街における最後の大仕事と行きますか!化け物上等、やってやらぁ!!

  • 144二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 15:43:35

    それから私たちは真っ直ぐに学校へと向かい、そこで真祖が来るのを待ち構えた。

    途中で絶対にどこからか真祖が襲ってくるかと思いきや、意外にもそんなコトは全然なかった。どっかで道草食ってるのか、或いは何者かの妨害でも受けてんのか。

    とにもかくにもシエルと作戦を立てつつ周囲を警戒していると、やがてその気配がやって来たのを感知した。

    瞬時に私たちは迎撃の姿勢に入り、そして―――金髪の物騒なお姫様と対峙した。


    「馬鹿な代行者たち。あそこでロアを、志貴を殺しさえしなかったら、もう一日二日くらいは寿命が伸びていたってのに。

    ―――もう、まともに死 ねるとは思わない事ね」

    「そっちこそ、たかだ取るに足らない人間二匹如きと見下して返り討ちに合わないよう気をつけなさい。あと、志貴クンが最期まで心から信じて愛していたのはおまえなんかじゃないから。見苦しいのよ、怪物め」

    「ええ、その通りです。ロアは消滅し、もう貴女という歩く災害がこの街にいるのをわたしたちが見過ごす理由はなくなりました。

    ……こう言うのはどの口が言っている、と我ながら思いますが。恋の競争に敗れた脱落者には、ここらで退場していただきましょう」


    シエルdice1d1000=497 (497)

    ノエルdice1d1000=958 (958)

    vs

    アルクdice1d1000=170 (170) (本来なら上限がないが、白鯨の力を諸に受けた事が響いて損傷が悪化し弱体化)


    【ノエル・シエル側の数値がアルクェイドを上回っていれば撃退成功。1000以上上回っていれば完全な鎮圧に成功/アルクェイドが上回っていれば二人とも死ぬ】

  • 145二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 15:46:18

    つっよ!?
    ノエルさん覚醒してる…

  • 146二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 15:57:22

    人生絶頂状態だな
    ここから揺り戻しがこなければいいが

  • 147二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 16:08:41

    なんか覚醒してそう

  • 148スレ主25/01/18(土) 16:09:03

    本当は>>143の時点で次レスはダイス振って、後は適当に地の文でさっさと終わらせようかなと思いましたが想像以上にノエル先輩が絶好調になっちゃったのでこのまま“もしも遠野志貴が途中退場してたら”のラストENDを続けて書こうと思います

    結末がどうあれ志貴クンを助けられなかった時点でシエル先輩への救いがない?それはそう

  • 149二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 16:36:12

    >>146

    もう揺り戻しが来てもこなくてもノエルのメンタルにはあまり変化ないでしょ

    散々どん底は見てきてるわけだし

    いつ落下してもここまでかーまあこんなもんよねで終わりそう

    最後の力はシエル殺すのに使うとして

  • 150二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 18:05:10

    >>148このエンドで「実験」の成果見せて、次から通常シエルルートってことですか?

  • 151スレ主25/01/18(土) 18:17:32

    >>150

    いえ、大分前にダイスが起点となる選択肢の4を選んでしまった時点で今回のENDも志貴クン生存の通常√でも実験自体は確定で容赦なく行ないます

    ただ今回と違って志貴クンが生存してる本来の√の場合は展開がそれなりに変わる予定っすね

  • 152二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 19:16:22

    「が、ぁ―――っ、あぁぁ、ぁ……!!」

    校舎のそこかしこが飴細工のように崩壊して吹き飛んでいくほどの凄絶な“戦争”は、間もなく決着を迎えようとしている。
    シエルの第七聖典に、私の炎と白鯨の力による暴力を前に真祖は徐々に力を消耗していく。
    特に白鯨の力による猛攻は私自身、信じられないほどにアイツを追い詰めていった。叩き付け、吹き飛ばし、反撃も回避も許さずに真祖に確実な損傷を加速度的に蓄積させている。

    「ぎ、ぁ―――っ!おの、れ、シエル……!」
    「―――今です、ノエル!!」
    「わかってる!!」

    その最中、真祖が一瞬の隙を見逃さずに真空の爪を飛ばす―――――前に、シエルの杭打機が火を吹いて真祖を床に磔にする。
    これ以上ない好機を捉えた私は上空へ跳び、今発揮できる白鯨の力を最大限に凝縮して真下の真祖にブッ放す!!

    「オラッぶっ倒れなさい化け物!―――これで!!どうだぁぁぁああっっ!!!!!」

    放たれた極点(それ)は、もはや衝撃波でもなく魔力のビームでもなく津波そのものだった。
    物理法則を無視してあらゆるものを貫き、有無を言わさず破壊し、跡形もなく潰す。そんな神の域にある白い巨鯨の一撃(ほうこう)は、白い真祖の矮小な肉体を丸吞みにし、そのまま津波にもまれる小船のように容赦なく破壊していった。

    「だい、こう、しゃ―――――――のえ、る。ノエル。ノエル、ノエルノエル!!ノエルゥゥゥぅぅぅぅぅ………ゥ……!!!!!!」

    最期に、アイツは私の名前を何度も何度も呼びながら激流のミキサーに呑まれていった。やがて津波が消えて周囲が静寂に包まれる頃には、あの化け物は半死半生で意識を失っていた。
    と言っても、もうほとんど死に体だった。手足はあらぬ方向に曲がり捻り、杭が刺さっている場所からは未だにとめどなく血が流れて白い服を赤く穢していく。
    ミキサーに呑まれている時に巻き込まれた瓦礫に当たったんだろう、全身にも大小様々な切り傷や痣を負っている。
    もはやどこにも、恐怖の象徴らしさは感じない。完膚なきまでに鎮圧された無様なお姫様の姿がそこにあった。

    「―――終わった、のよね?これ。とうとう、本当に、真祖の王族を……斃したのよ、ね?」
    「………ええ、そのようです。―――わたしたちの、勝ちですよ。ノエル」

    ………は、はははは、はは、ははは。いや、マジで……やり遂げちゃったのね。

  • 153二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 19:34:22

    マジでやりやがった…

  • 154二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 19:35:14

    これ完全にアルクからも名前覚えられたし目つけられたな…

  • 155二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:04:57

    志貴くん(ロアも)も消して、アルク姫も消した!
    シエル先輩もこれから消すのか…………?
    もうノエルさんにとってこれ以上にない展開じゃん!
    もう有頂天のうっはうは!では…………?
    もう、自分以外全部消すエンドにしか見えない…………
    どうなるんだ一体…………!?

  • 156二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:07:58

    このレスは削除されています

  • 157二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:13:55

    その後、瀕死……っかほぼ死んでるも同然の真祖をシエルがクロムクレイの大聖堂で隔離。外界と遮断する事で世界からのマナ供給による復活の可能性を断ちつつ、これをもって永遠に鎮めた。代償に戦いの中で九割ほど完全に吹っ飛んでしまった校舎の件については『地下の地盤沈下による連鎖的な崩落』というテイで真相を隠蔽して済ませた。

    「あはは。元々大分弱っていたから何とかなったと言えるけど、それでも本当にあの化け物を実質斃せちゃうだなんてね。代行者明利に尽きるってもんじゃない?」
    「全くもって当たり前です。正直、二人で挑んだところで勝率はかなり低かった筈でした。が、この結果に収まったのも偏に貴女のその身に宿る白鯨の力あってこそのものでしょう」

    うん、そこは同意せざるを得ないわ。いやぁ、流石人智の及ばない神獣に分類されてるだけあってとんでもない力だった……。
    真祖の姫にもああまで通じたんだし、使いどころを見極めた上で駆使していけば二十七祖だろうと普通に殺せるわよね。ま、頼もしい一方で恐ろしくもあるから乱用は避けるけど。

    「さて。転生無限者の蛇は今度こそ完全に消滅し、目下最大最悪の脅威だった真祖の姫も事実上死んだ。Ⅲ階梯以上の残党も全て処理し尽くしたから、この街でやるべき事は本当の意味で全部終える事ができた。
    あとは万一の生き残りがいないかの短期間調査くらいのものだけど―――これにて実質的に任務終了ね。シエルさん?」
    「……………ええ。そう、ですね。わたしたちは……いえ。貴女は、最後まで代行者としての活動に従事し、この街を吸血鬼の脅威から護り抜いた。任務、お疲れ様でした」
    「あら、ロアの一件以外はアンタも共同じゃない。特に真祖との決戦は助かったわ。アンタがいなかったら私は今頃とっくに殺されてたしね。
    ……アンタも任務、お疲れ様」
    「………ノエル………」

    実際、私が一方的にめんどくさい感情と恨みを向けてるだけでコイツ自体は代行者の責務と使命感に忠実だ。本当にあの夜の件が一生モノの汚点なだけで、何だかんだでコイツはこれからも世のため人のために動くだろう。
    これからも多くの人間に石を投げられると同時に、それと同じかそれ以上に多くの人間から感謝されていくんでしょうね。







    ――――――ま、そのあり得ただろう未来をこれから私が摘み取るんだけど。ようやく、ようやく手に入ったわ。

  • 158二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 20:16:18

    この上でさらに「実験」を隠し持ってるノエル先輩は復讐に狂ったバケモノの評価が相応しいよ...

  • 159二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 21:18:16

    何を手に入れたんだろう…??
    もしかしてずっと考えてた『実験』でシエル先輩を殺すのか…………!?

  • 160二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 22:41:34

    ―――それから更に一ヶ月後。総耶でのお忍び任務を終えた私たちは本国の教会に帰還し、そこからしばらくして別の任務を勝手に引き受けてから廃村調査に出動。
    そこを根城としていた死徒やゾンビたちをいつも通り一掃し、今に至る。

    「ふぅ、これで最後の一体ね。うーん、今回の任務は二週間も掛からなかったわねぇ」
    「そうですね。まぁ言ってしまうとそこまで広くもない廃村跡地ですし、寧ろ時間を些か要しすぎたと言ってもいいでしょう」
    「はは、まあね~」

    それにしてもここ……改めて周りをよく見ると廃村なだけあって随分と山奥にあるわ。場所が場所だから人目に付きにくい、というか地元の人間以外はまず付かないだろうし、従って本部は愚か支部教会の目も簡単には届きにくいでしょうね。

    「………………………………」
    「……? どうかしましたか、シスター・ノエル?」

    ………例のモノはそれがいつでも行えるように常備している。この一ヶ月の間で慎重に、慎重に『それ』の完成及び調整に手塩と手間をかけてきた。
    無論、用意してはいるもののまだ一度も試していない。というよりコイツに復讐する為に拵えたんだからコイツ以外で試すつもりなんてない。
    そもそも完全な私の考察による可能性にすぎないから成功する保証なんてどこにもない。普通に失敗する可能性の方が高いし、もしそうなれば私はコイツから本気で殺されるに違いないだろう。

    (でも……ロアは死に、真祖は鎮められ、そしてコイツは『転生体を一度は庇おうとした』って弱みを私に握られてるからおいそれと逆らえない。加えてここは人目に付くと不味いコトをするにはもってこいの閉鎖的な空間だ)

    「―――うん。なら、もうここでやっちゃいましょうか」

  • 161二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:36:56

    「ノエル……?やっちゃいましょうかって、何をやるんです?」
    「ああ、聞こえてた?いやなに、私ってこの二週間ずっと神経張り詰めてたじゃん。だから任務終わりのついでにここの自然の風景を一時楽しみながら、適当にお茶でも嗜もうかなって。この際だからアンタも一杯どう?」
    「ティータイム?こんな廃村で、ですか?」
    「こんな廃村だからこそ、よ。俗世と離れているが故に自然の壮大さと綺麗さが見えてくる。それに、敢えてこういう場所で嗜むのもオツなもんかなって思ったの。てコトで改めて聞くけど、どう?」
    「……わかりました。それなら、これもまた貴方を理解する為の交流と思って付き合いましょう。一緒に楽しみます!」

    よし、我ながらかなり無理のある言い訳かなと思ったけど何とか言い包めれたわ。にしても、こういう時は本当に都合よく言う事を聞いてくれるわね。それでいい、それでいいわシエル。

    「決まりね。それじゃさっそくあそこの居間が開けている民家を拝借しましょう。ティーセットとかあるかしらね~」

    私たちは近くの民家の開けた居間を借りて楽しむ事にした。勿論、ティーを用意するのは私だ。
    やがて準備を終えた私は、居間の方へと戻る。そして、シエルと一緒に束の間の時を嗜んだ。

    「……まさか、ティーはティーでもジャパンティー……日本のお茶を用意してくるだなんて。どういうコトか聞いても?」
    「いや、別に深い意味はないわよ?ただ、あの街―――総耶で学校生徒として潜入してた時にさ。アンタが煎れてくれたモンを飲んでから、何となくその味が気に入っちゃってね」

    嘘、ではない。実際、紅茶を差し置いてこうして用意するくらいには好きだったりする。
    そう思いつつ私は自分の煎れた“なんでもない普通のお茶”を口に含み、シエルも丁寧な所作で美味しそうに飲む。

    「ふぅ………こうして景色を観ながらお茶を嗜むなんて普通は、わたしには無縁のものだと思ってました。貴女としてはただ単に誘っただけでしょうけど、こんな機会を与えてくれて感謝します。ノエル」
    「あはは、いいってコトよ。今はただ、この時を甘んじて楽しみなさい。だって―――」

    シエルは一口一口を味わって飲み続ける。………ふふ、本当にこれがただの交流だと思ってるんでしょうね。

    「? だって、って―――――――――――ぇ?」
    「―――だって。これが最後のティータイム、だからね?」

  • 162二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:40:08

    毒…じゃないだろうな
    まさかだけど、どっかから真祖か死徒の血を持ってきて飲ませてるとか?シエルが死徒になっちゃったら正義も続けられない、夢をへし折れる復讐になる…とか…

  • 163二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:53:52

    がたん、と音を立ててシエルは床に倒れる。今、コイツの意識は朦朧としているだろう。
    それもその筈、だってコイツの飲んだお茶には―――無味無臭の強力な麻酔薬が仕込んであったんだから。しかも並みの人間なら大体10分で死に至る想定の高濃度に調整した、私特製の代物だ。

    「の、える……?こ、れは、どう いう」
    「いやぁ、別に大したモノは入ってないわ。ただの麻酔薬よ。でも、アンタに起きてもらってると今から行なう実験ができなかったから、仕方なく仕込んだだけ。
    しばらく、眠ってなさい。常人ならほっとけば死ぬけどアンタなら勝手に回復するでしょ」
    「え、ぁ………?な、んで―――――ぁ――――――」

    そうしてシエルはやがて意識を落とした。うん、完全に気を失っている。でもこの化け物のコトだし、こんな急造の麻酔薬なんざ数時間も掛からずに目を覚ますだろうし、例の場所まで移動すんのに定期的に同じ麻酔をブチ込まないとね。

    「そして。とうとう、とうとう―――『コレ』を、この実験を試す時が来た。

    ―――さようなら、代行者シエル。アンタの贖罪への奔走をずっと傍で見てたけど、そりゃあもう立派も立派だったわ。心から尊敬してたくらいには、ね」

  • 164二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 23:56:50

    そして、私は眠っているこの女にその実験をした。その結果は――――、

























    「あ――――あ、ああ!やった、やったやったっ!!!ホントに、ホントに成功しちゃった!!!
    あは!あはっはっはははははははは!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

  • 165二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 00:04:28

    まさか打ったのか?アレを

  • 166二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:04:09

    吸血鬼お注射...?

  • 167二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:39:37

    「―――――ん………ぁ、れ………」

    不意に、目が覚める。何だか深い眠りに落ちていたような、気がする。
    ゆっくりと瞼を開けてから、周囲の景色を確認する。ここは……ここは―――?

    「教会の、礼拝堂……?」

    わたしは訳が分からなくなる。どうしてこんなところにいるのか。そもそもここに来る前はどこにいたか。

    「あれ。という、か。ここって――――――ぁ?」

    なんだろう。何かに気づい、気づいてしまったけど、それを自覚してはいけない気がする。いや、違う。違う。これはただの勘違いだ。たまたま構造が似ているだけだ。そう、その筈だ。

    じゃあ、じゃあ、それなら―――さっきから鼻をつく、この微かな腐臭(におい)は、何?

    あの、あの、あの――――奥にある、床の―――底が深そうな凹みは、なに?

    「なん、で?どうして?どうして?」

    というより―――それもそうだけど、さっきからやけに身軽っぽさを感じる。視界を自分の身体に落とすと、確認できたのは黒い外套以外の服を着ていない全裸の状態だった。手足の方を見やると、鎖付きの錠で繋がれていて拘束されていた。
    その中で、見えてはいけないものが見えてしまった。下腹部の辺りに、酷く既視感のある、悍ましい模様があった。

    「―――は、は。はは」

    いや、人が眠っているのを言い事にこんなタチの悪いラクガキをしないでほしい。況してや服を脱がして申し訳程度にマントを羽織らせた上で拘束するとかどんな異常性癖のヘンタイなんだろう。
    冗談なら、いや冗談だ。こんなのはただの悪趣味なドッキリだ。そうに決まってる。わたしがこうしてこの状況に対してどう戸惑うのかを楽しむ、という彼女のちょっとしたイタズラにすぎないんだろう。ああ、或いはいつか見せられた魔術による劇場の再現なのかもしれない。
    だから、だから―――早く出てきて。冗談だと、言って。嘘、だよね?わたし、わたしは――――まだ

    「―――お!やっと起きたのね。おはよう“エレイシア”!よーく眠れたかしら?」
    「!?」

  • 168二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:40:09

    唐突に、凹みのところから誰かが出てくる。それは―――ノエル、だった。

    「ぁ………………は、はい。それは、もう……ぐっすりと。そ、それよりもですね。これって、これは、何の―――なんの、ドッキリでしょう、か?」

    たどたどしくなりながらも、なるべく、なるべく冷静になって問いかける。頼むから、そうだと言ってほしい。

    「? ドッキリって、何がよ?」
    「いや、なにがって。この、こんな格好で、こんな場所に、こうして軟禁しているのは、なんの冗談かなって。あ、は、はは………」
    「………ああ、なんだ。そんなコト」

    ! あ、こういうつまらなさそうな言い方をするってコトはやっぱりこれはタチの悪いだけの冗談だったんだ!

    「え、ええ。そうです。まあ、こういうドッキリを仕掛けるのは確かに驚かされま」
    「―――可愛いわね、エレイシア!まさかこの期に及んでまだ現実を直視できてないなんて!あっははは!」
    「―――え?」

    なにを、言ってるの?ノエル、貴女は、何を言っているんです?
    現実を直進できてないって、どういう、コト?何が、何が言いたいの?

    「さて、ここに取り出したるは『人ならざる怪物も』バッチリと綺麗に映し出す特別な鏡です!これで今のアンタを写してやるから目をかっぴらいてよぉぉく刮目しなさい!」

    わけもわからずに戸惑っているのを余所に、彼女はそう言ってやや大きな手鏡を取り出す。そしてその手鏡をわたしに近付けていく。
    そこに、写った、の は。

  • 169二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:40:50

    「――――ぁ」

    「うーん、いい顔するわね!そうそう、アンタのそういう顔が見たかったの。そして見ての通り!」

    そこに 写っている のは。

    「私は、あの時にアンタを麻酔薬で眠らせてから『コレ』をこっそり投与してぇ―――――」

    人間(わたし)、ではなく。
















    「――――――吸血鬼に変えてしまいましたー!というコトで今からよろしくね、“死徒エレイシア”!
    あっははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!!!!!」

    血に染まった瞳を爛々と光らせる、見覚えのある悪魔(わたし)だった。

  • 170二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:42:54

    贖罪の機会、、、、無くなっちゃったね、、、、

  • 171二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 01:43:19

    やりやがった……
    ノエルさんやりやがった……!

  • 172二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 02:04:47

    代行者が吸血鬼生み出すのは大丈夫なんすかね…

  • 173二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 03:32:06

    あぁ………

  • 174二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 04:32:46

    マジかよやりやがった

  • 175二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 04:56:43

    正解は死徒化させる薬ってことか、そりゃ自分ですらドン引きするほど悪辣な手段だな、そんでその元はアルクェイドから摂取したものという、なんて徹底的な尊厳破壊だ。


    それはそうと地の文だけど裸マントのエレイシアえっろいね!(思考放棄)

  • 176二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 07:38:35

    とんでもなくエゲツナイ復讐だ…………
    とゆーか自分の故郷も家族も滅ぼした相手にもう一回吸血鬼に仕立てあげるって憎くて憎くて仕方ないのに良くできるな…………いや復讐鬼だから出来るのかな………

  • 177二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 08:06:04

    この吸血鬼シエル先輩ってまだ不死身なんですか?
    …………でも志貴ロアくん倒したから無いのか…???
    どうなんだろう?それによってノエルさんがめちゃくそ暴走しまくるんですけど
    いやうん、すでに暴走してるけどこれ以上って意味で…

  • 178スレ主25/01/19(日) 09:04:38

    >>177

    ロアが既に消え去っている以上は完全な不死身ではありません

    ただまあ死徒だから月齢が満月の時にはほぼ不死身に近い生命力を得ますかね

    そうでなくても元々ロア関係なく死ににくい肉体だったのが死徒化の恩恵で更に再生・耐久力が上がってるだろうから満月じゃなくても基本的にはまず死なないでしょう

    加えてロア知識による蘇生魔術もありますし

    でも死徒である以上はどれだけ強力だろうが不死身に近かろうが血を摂取しなければ結局肉体を維持できずに魂ごと崩壊するから今の先輩にとっての救いはそこになりますかねぇ


    もっともそんな自然自壊による安楽死なんてノエル先輩が許す筈がないんですが

  • 17917725/01/19(日) 09:29:09

    177です


    >>178

    なるほど…つまり不死身に近いけど血が無ければ死んじゃうよーでもノエルさんは許さないよーって事ですかね

    TYPE MOON は面白いけど設定が難しいなぁ…

  • 180二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 13:23:19

    ふぅー……あれから数時間かけてアイツをここへ運んだけど、車とかの移動手段使うとヤバそうと思ったからあの村からここまで走って移動する羽目になっちゃった。
    はは、まさかこうして故郷までの里帰りノンストップダッシュをする事になっただなんて、13年前の私が聞いたら何言ってんだおまえって気持ちにしかならなかったでしょうね。

    「さて、それはそうと“ここ”の掃除も大分進んだわね。臭いキツすぎて死にそうだったけど少しは綺麗になったんじゃない?」

    言いながら目の前に転がってる“人骨”を燃やす。いま私がいるのはあの悪魔が当時の私と生き残ってた人々を『暇つぶしのエサ』として隔離していた床穴の底だ。
    あの時はこの世のものとは思えないほど悍ましい肉のプールが出来上がってたけど、13年間も経ってれば流石に風化した骨の山と一面に染みついた血痕の跡しか残っていない。ドぎつい腐臭も未だ漂ってるけど。
    なので、私は弔いついでに丁重に燃やして火葬する事にした。

    「ん、これで全部かな。あまりにも遅すぎた葬儀作業だったけど、これでほんの少しでもこの人たちの無念が晴れますように」

    そうして聖職者らしく祈りを捧げていると、上の方からジャラジャラと鎖のような音が微かに聞こえた。
    ああ、これは―――やっと目が覚めたのね。その時が、来たのね。

    「うんうん、丁度いいタイミングで起きてくれるじゃない。それじゃ、まずは元気よく挨拶をしないとね!」

    そうして私は壁を駆け上がり、実験によって再び“あの時の姿”に戻ったアイツを前にして一声かけた。
    そしてアイツが滑稽にもまだ現実を直視できてなかったようなので、自前で作った手鏡で今の自分がどうなってんのかを見せてやった。

    「ぁ―――ああ、ぁ―――あああ、あああああ、ああぁあああああぁぁ……!!!!」

    “自分の姿”を見せつけられた途端、この女は―――エレイシアはただただ絶望し慟哭した。あの日、何よりも守り抜きたかった彼が目の前で消えた時のように。
    うーん、本当にいい顔をするわね。でも、この程度で壊れる事は赦さないわ。
    何しろ―――『最高の復讐』は、ここからが本題なんだからねぇ?

  • 181二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 15:29:57

    「はい!絶望に泣いてるところ悪いけどさ。なんでアンタを吸血鬼にできたのか、なんで吸血鬼にしたのか?
    それを今から説明するのでしっかりと耳の穴かっぽじって聞いてくださぁい!」
    「――――――」

    手鏡を仕舞い、体育座りの姿勢でエレイシアと目線を合わせる。……こうして見ると本当にあの時そのまんまね。違うところっつったら、凄く怯えた表情(かお)になってるけど。

    「まずね、私がアンタをこうしようと思ったのは総耶の街にいた時なの。ほら、以前下水道でロアの遺体を処理したでしょ?あの日の時点でこれを画策しようと決めたのよ。
    で、それにあたってまずは人間を吸血鬼にする為の材料が必要になってくるワケじゃない?
    だから私が最初に手にしたのは―――あの柩に入ってたロアの死体の一部、もっと言うと血液なの」
    「え……?」

    おや、まだ気づいてなかったの?まあ、気づいてたらこうはなってないか。コイツって本当に変なところで勘が鈍いなぁ。

    「ま、血液っつってもあんな死体があんな状態だし、肉の一部をちぎって絞っても取れる量なんてたかが知れてたけどね。でも、仮に一滴だとしても『死徒ロアの血液』が手に入る事そのものが重要だったから問題なかったわ」
    「ま……待って。待って、ください。貴女は、あの時は確かにわたしと遠野くんの後で来て……それでわたしが、ロアの遺体を処理したのも傍で、見ていました。
    そもそも、あ、貴女もわたしたちを尾行するまであの柩の場所の事は知らなかった筈です。なんで、ロアの血液なんて、」
    「―――もし。その前提が違っていたら?私が、アンタと志貴クンが把握するよりずっと前からあの柩の場所を知っていたとしたら?」
    「ぇ……は………?」
    「第一、本当にそう言い切れるの?どこか違和感を感じるところがあったでしょ?
    例えば―――柩にあった死体が、不自然に手を組んでいたとか」
    「……………ぁ」

    ああ、こういう反応を示すって事は気にしてなかったってだけで確かな心当たり自体はあったというワケだ。でも、あの時のコイツはそう訝しんでるような気は感じられなかった。
    ってことは、大方志貴クンから聞いていたって考えるのが妥当かしら。あーあ、だとすると折角愛しの彼氏が得体の知れない危険信号を伝えてくれてたってのにコイツは然程気にも留めてなかった事になるわよね。

  • 182二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 15:33:09

    「じゃ―――じゃあ………わたしが、遠野くんと、行く前から………もう、貴女、は」
    「ぴんぽーん!そ、アンタら二人が下水道に入る少し前から既に一度忍び込んでたの!そしてロアの死体を弄って血液を搾り取れるだけ取ってから一旦退散。後からさも初めて来たかのように振る舞ってたってコト!
    私の行動にもっと注視していればこうはならなかったのにね。気づくの遅すぎるのよばぁぁぁか!」

    まあとはいえ、死体の手を組ませるっていう微かなコトにも鋭敏に違和感を覚えた志貴クンは流石ね。もしあの子が生きていたら、ロアとか関係なく私にとって相当な障害になってたかも。

    「な、んで?どうして……どうして、そんなコト」
    「あ、ロアの血液を手に入れた理由?それはね、単純にアンタの死徒化の成功率を高めるため。ほら、アンタって元々ロアとして生まれてきたじゃない?
    だから吸血鬼にする為の血液として都合がいいんじゃないかなって思ったのがその死体だった。だって魂の規模で文字通りの自分自身なワケじゃん?なら必然的に適合率もこれ以上ないってくらいありそうよね!って考えたの」
    「――――――」

    私の説明にシ……エレイシアは何も言えずに絶句してる。ってか今シエルって出しかけたわ。ああイケナイ、まだバディとしてのクセが抜けきってないわぁ。

    「ふふふふ、言葉を失うのはまだ早いわよ?そんなこんなでロアの血液を入手したけど、まあ察しの通りそれだけじゃ全然足りないのよね。だから次に私はもう一つの材料を手に入れようと考えたわ。
    それは、代行者シエル―――つまりアンタ自身の血だったのよ。エレイシア」
    「―――は?………わ、たし?」
    「ええそう!人間が死徒に襲われて吸血鬼になる時の条件は知ってるでしょ?単に血を吸われただけじゃ魂まで汚染はされない。吸われた後でもう一度血液を吸血鬼側から送られる事で親の血と呪いが混じり、初めて死徒化する。
    私はね、この条件を振り返って思ったわ。人間の血に死徒の血が混じる事で汚染・変質するのなら、ロアという死徒の血にアンタという人間の血を混ぜたら『死徒の汚染を受けたエレイシアの血』になるんじゃないかって!
    だから欲しがった!その機を伺った!幸か不幸かあの時あの街には真祖というアンタより格上の存在がいた。なので学校でアンタと真祖をぶつけてから、戦闘の中で飛び散った血液をどさくさ紛れに採取したのよ!」

  • 183二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 15:38:33

    そう、そして。それだけじゃない。今から明かす『これ』こそがもっとも決定打になったんだから。

    「勿論、それでも実際のところは上手く行くかは未知数だった。でも、その未知数をほぼ確実なものとして可能性を変えてくれたモノが意図せずして手に入った!」

    「?……………ぁ。待って、それって、まさか。
    ――――いや、言わないで。聞きたくない、聞きたくありません!やめてください!やめてっ……!!」

    「いいや言わせてもらうわ!だってこれが一番重要なコトなんですもの!その可能性を変えてくれたモノというのが!

    ―――――――真祖の血。そう、アルクェイド・ブリュンスタッドの血液よ!あっははははははは!!」

    私は容赦なくそれを口にした。エレイシアの顔がさらに絶望に歪む。ああ、ああ!実にイイわ。
    かつてアンタが私や街の人たちに好き放題そうしてくれやがったように、もっと、もっと―――アンタの尊厳を穢して破壊させてちょうだいっ!!!

  • 184二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 17:59:21

    「ふふふふふ、ぃひひひひひははははは――――――でよ。それらの血を配合して時間をかけてイイ感じに調整したのが、アンタに射ち込んだ『コレ』ってワケ。
    私が手塩をかけて慎重に慎重に繊細に繊細に造り上げた特製の劇薬。まあ、使うのは後にも先にもアンタだけだし特に意味はないけど―――『血の魔薬(ブラッドポイズン)』とでも名付けましょうかね」

    ……ちょっと我ながら痛々しかったかな?いや、記憶の中の白衣の女が持ってたアレはもっとダッサイセンスの名前に違いない。ええ、そうよ。
    とまあそれはどうでもいいとしてだ。

    「どう、事の経緯は理解できた?アンタをどうして吸血鬼にできたのか。極論を言えば真祖の血だけでも実験自体は十分成功できたとは思うのよ。でもそんな代物なんてまず手に入らなくて当たり前でしょ?だから最初は前者二つのサンプルでどうにかやってみるつもりだったの。そんなだから真祖の血は完全に棚から牡丹餅だったわ。
    ―――そして、次はアンタをどうして吸血鬼に堕としたのか。堕としてやろうという考えに至ったのかを語ってあげる。アンタが知りたいのはどちらかと言えばこっちの方でしょう?」
    「………!!」

    絶望に沈んでたエレイシアの顔がハッとする。うん、正直に言うと私としても寧ろこっちの方をアンタに話したかったわ。

    「アンタを吸血鬼に堕とした理由。細かく分けると幾つかに渡るけど、総じて挙げるならただ一つ―――最高の復讐、考えうる限りでの最も悪辣で、最も惨たらしい最低最悪の報復を与える為。
    ただ拷問にかけただけじゃ、アンタは甘んじてそれを受け入れるだけ。そもそもマグロになっちゃってるからほとんど意味ないし。
    ならばと精神的に追い詰めても志貴クンの存在が心に残ってる限り、折れる事も壊れることもない。心身共に強靭なアンタには、並みの責め苦は意味をなさない」

    そう。コイツは鉄の女と言われるだけあって、精神も肉体も常軌を逸している。何しろこの女は自分がロアとなって虐殺を繰り返している時も、審問室で何百回と殺され続けようと狂いきる事はなかった。正気を保ててしまった。
    多分、コイツが折れる事はあっても真の意味で狂う事はこの先何があってもないんだろう。

  • 185二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 18:04:26

    「…………体はともかく。心が強いなんて、見当違いですよ」
    「黙りなさい、今喋ってやってる途中でしょ?あとそんなコト思ってんのアンタだけだから。
    ………で、そんなアンタの心を壊れないギリギリのラインでポッキリとへし折って絶望させるのにはどうすればいいかなって。そんな時、天啓の如く浮かんだのが―――!」
    「……………………。わたしを、死徒にすればいい、と」

    お、ちゃんとフリに乗って答えてくれたわね。そうそう、不躾に口を挟むんじゃなくてそういう感じでいいのよ。
    もっとも、この方法でさえおまえが狂うとは思えないけど。まあこれで本当に狂ってもらわれても私にとっては解釈違いも甚だしいし、絶対にそうならないでほしくないわ。

    何より狂うという形で現実から逃げられようものなら、ここまでの私の復讐全てが一気に水泡と化してしまうからね。

    「その通りよエレイシア。これはもう、アンタを再び吸血鬼に仕立て上げ!そしてご丁寧にロアだった時と同じ装いにしてトラウマそのものに堕とすしかない!その尊厳を、魂を、凌辱して穢し尽くすしかない!……そう、思ったの。だから実行に移したってコト。

    ――――――これが、第一の理由よ」

  • 186二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 18:39:00

    流石にシエル先輩が可哀想になって来た
    でもこうしてやりすぎなくらい凌辱する姿が忌むべきバケモノとしての復讐者ノエルなら、行く末を見守る他ないですね

  • 187二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 19:01:38

    お互いにシエル先輩のロア姿トラウマなのにもう一度ロアにする事でよりトラウマがグサグサ刺さってそう
    完封なきまでに叩きのめす為にそこまでするの流石復讐者
    心も身体も完封なきまでに叩きのめして、もう立ち上がる気持ちもなくして、絶望に絶望重ねた上でシエル先輩を消すんだろうなぁノエルさんは…

  • 188二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 20:36:34

    ここまでダイス?ってやつのお陰でここまで来たけど本編のノエル先生が本当に不憫な役回りかつ『誰かが貧乏くじ引かなきゃいけないよね』って考えのもとあぁなったけどこのSSのように復讐者になるのもあり得たんじゃないかと思ってしまう…………
    いや本当にスレ主さんが素晴らしいからこういう展開なったんだけどもっと違う共存的な方向もありえたのかな何か違えば本編も…………?

  • 189二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 20:47:36

    「だい、いち……?」
    「そ、動機はまだあるわ。第二の理由だけど、これについては私自身の復讐鬼としての拘りが強いわね。
    どういう事かっていうと―――“吸血鬼としてのアンタ”に復讐したいってワケ」

    私は、これを思いついた時からずっと考えていた。ロアは悪性の情報体で、今代は遠野志貴という人間に寄生していた。でも志貴クンは罪を犯してしまう前にロアから解放された。
    だからロアに対する敵意と殺意はあれど怨みはそこまでない。ってか、ぶっちゃけるとロアに対しての復讐は二の次だった。転生という負の連鎖をここで終わらせないとっていう使命感が強かった。

    「ロアに対する殺意はあれど怨みはない。ではシエルに対してはどうか?答えはノー。だって代行者として贖罪の道を歩んでいた戦闘マシーンの聖人であって、況してやどれだけ化け物でも人間は人間。
    これに報復を与えるのも同じ代行者として相応しくないし、何より代行者シエルはロアとは同じであって全く異なる別人。復讐するには道理が今ひとつ足りないような気がしたの」
    「………それで………そう思った、から……」
    「ええ。ロアという概念でも、代行者シエルでもない。私が本当に復讐をしたかったのは、あの時にあの街に生きる人々を皆殺しにした悪魔としてのアンタなんだって気づけたの。でもロア自体は完全に消滅させる以上、そして消滅してしまった以上、あの時のロアとしてのアンタには永遠に報復を与えられない。まさに勝ち逃げ、腸が煮えそうよ。

    ―――だから。だからせめて、限りなくその時のアンタに近づけてから復讐する事にした。アンタを死徒に堕とし、ロアだった時の格好にし、この忌まわしい場所でいたぶり尽くした果てに殺す事にした。
    ほら、これならさ。『吸血鬼になったエレイシア』という意味で、あの時のアンタと同じでしょう?」
    「………………」

    エレイシアは黙ってそれを聞いている。ふふふ、悲しみと諦観の淵でこうして私と向き合ってるんだろうな。いいわね、もっと絶望してちょうだい。

    「ヒト、としてではなく……吸血鬼としてのわたしに、報復を与えたい。だから、こんな愚かなコトを、やってしまったんですね」
    「そう、そうよ。なんでかって?そんなもん―――狂ってるからに決まってんでしょう!復讐の為ならどれほど非人道的行為も躊躇なくやる。私はその覚悟でこの13年間を生きてきたんだから!」

  • 190二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 20:55:04

    なるほどなぁ
    人生最大のトラウマ(殺人狂)を殺すなら同じ状況下で同じ絶望で殺したいし殺し尽くすしかないよな…………

  • 191二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:03:18

    ノエルさんて復讐する理由が正統性がありすぎてそりゃ復讐者になるよねって納得できるけど復讐しかないのが辛すぎるな…………
    本編も本編で報われなさすぎるんだけどね…………
    代行者と修道院しか道がないのが辛すぎる…………

  • 192二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:05:21

    「以上が、第二の理由かな。人間として、代行者としてのアンタに報復しても意味はない。悍ましい怪物の吸血鬼としてのアンタでこそ復讐するに足る。だからこうした。アンタが代行者としての使命より恋を優先したのと同じように、私もまた代行者としての責務を放棄してアンタを吸血鬼にした。
    はは、良かったわね。アンタは今、私と同じ境界に立てているわよ?―――あくまでその点に関しては、だけど」
    「…………いいえ。それも……それさえも、違います。わたしは、何があっても揺らいではいけない復讐の誓いを貴女と契っておきながら、その誓いを放棄し、貴女を裏切った。
    でも……貴女は、確かにやり方こそ代行者として間違ってはいるけれど、復讐の誓いは決して揺らぐ事なく……正当な理由で、わたしをこうして陥れた。
    代行者としては胸を張って誇れない。その程度でしか、わたしは結局、貴女と対等になれなかった」

    ………は。あっそう。流石に恨み言の一つくらいは私にぶつけても許される事されてんのに、口から出るのはそんなコトなのね。
    まったく、私も自分に対してはあんま肯定的じゃないけど、どれだけ自分っつー存在を嫌悪してたらそう言えんのよ。

    「随分と自己に対して悲観的ね。でも、そんな風に過剰に卑下した言い方で宣われると、そんなアンタを何だかんだで心では尊敬してた私が馬鹿になるからあんまり言わないでほしいな」
    「え……?いま、」
    「おっと心にもない事すべらせてしまったかしら。まあそれよりも、これで第二の理由は説明した。

    じゃ、次が第三にして最後の理由。これは何かって言うと、まあ、単純なんだけど。アンタがかつて虐殺した際にそこの奥にある床の穴を使っていたじゃない?

    ――――――あそこをね。“アンタの血肉と骨で”満杯になるまで埋め尽くそうと思ってるの。埋め尽くしてからようやく殺してあげようって考えているのよ」

  • 193二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:07:54

    おあぁ、、、、

  • 194二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:08:52

    ギリギリのギリギリまで殺さない!えぐい!!!!

  • 195二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:12:27

    次回は次スレか

  • 196スレ主25/01/19(日) 21:14:32
  • 197二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:22:51

    ノエル先生は復讐を遂行するんだろうな…………
    復讐終わったらまじで志貴くんの言う通りからっぽになりそうで怖い…………いやまぁ生きてるかどうかも怪しいけどさ代行者が代行者に死徒にした上で殺した!ってとんでもなくヤバイことすぎるし……………………

  • 198二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:28:19

    えぐい!!だけど癖になる!!!

  • 199二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:34:34

    うめ

  • 200二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:35:11

    ある意味死徒にしないともう拷問とか出来ないやるとしてもアルク√心中しかないとも取れるのかな
    それで死徒にしてしまうところはノエルの言うとおり狂ってしまってるんだけど

オススメ

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