【再再建】【オリキャラ】これ、私の…?

  • 12回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 17:37:59
  • 22回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 17:39:00

    ステータスについて


    使用武器

    dice1d7=1 (1)

    1.SMG 2.AR 3.MG 4.GL 5.SG 6.HG 7.T.S


    【ステータス】

    戦闘 dice1d100=19 (19) +40

    事務 dice1d100=66 (66)

    医療 dice1d100=69 (69)

    知性 dice1d100=72 (72)

    運動 dice1d100=62 (62) +30

    技術 dice1d100=25 (25)

    政治 dice1d100=5 (5)

    交渉 dice1d100=57 (57)

    創作 dice1d100=31 (31)

    倫理 dice1d100=90 (90)

    慈悲 dice1d100=14 (14)

    神秘 dice1d100=50 (50)


    身長 140+dice1d50=29 (29) cm

    胸 dice1d5=3 (3) 1.絶壁 2.小盛 3.並盛 4.大盛 5.メガ盛

    腹 dice1d5=5 (5) 1.ガリガリ 2.細 3.中 4.中太 5.もっちり

    尻 dice1d5=5 (5) 1.キュッ 2.小さめ 3.やわらか 4.もちっ 5.ドーン


    髪色 dice1d8=5 (5)

    1.黒 2.茶 3.金 4.銀 5.青 6.水色 7.紫 8.薄紫

    長さ dice1d100=86 (86) 1で肩につかないくらい100で足元

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 17:39:30

    立て乙規制はこわいね

  • 42回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 17:41:30

    名前 落名ユルギ

    ヴァルキューレ公安局所属


    ヴァルキューレでの関係性(左が私から、左が対象から)

    カンナdice2d100=40 94 (134)

    コノカdice2d100=74 29 (103)

    キリノdice2d100=12 16 (28)

    フブキdice2d100=23 1 (24)


    FOX小隊の好感度(対象から)

    ユキノdice1d100=76 (76) +30

    ニコ dice1d100=64 (64) +30

    クルミdice1d100=73 (73) +30

    オトギdice1d100=41 (41) +30


    RABBIT小隊の好感度

    ミヤコdice1d100=2 (2) +20

    サキ dice1d100=8 (8) +20

    モエ dice1d100=43 (43) +20

    ミユ dice1d100=85 (85) +20


    >>3ほんと怖い、朝投稿しようとしたら全然だめだった

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 17:41:31

    立て乙

  • 62回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 17:45:57

    前回までのあらすじ
    なんか武装組織が悪さしてるっぽいから掃討じゃー

    なんか知ってる人(FOX小隊)と会敵

    子ウサギ公園で問題発生、鎮圧

    なんかその人達も私の事を知ってるっぽい

    先生から救援要請、内容は盗み()

    今ここ

  • 72回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 17:48:27

    続きです。詳しい内容は前スレからどうぞ。

    「ぐあっ!」
    「なんだコイツ、速―」
    わらわらと集まる警備兵を、身体能力にものをいわせて蹂躙していきます。
    「進路確保、回収地点まであと3分。モエさん、回収お願いします」
    『もう待ってるよ、早く』
    「ごめんなさい…私のせいで…」
    「いいんですよ。さ、急ぎましょう」
    その後も迫る敵を一掃し、ヘリまで到達。先生とモエさんがヘリで待っていました。
    「殿は私が。乗ってください!」
    「ミヤコ、サキ、乗って!」
    ミヤコさんとサキさんが搭乗完了。次いでミユさんが搭乗しました。
    “ユルギも、早く!”
    「はい!」
    私もヘリに搭乗。ギリッギリ、なんとかなりました。
    …明日は自分で自分の事件を調査する羽目になりそうですね…
    「…衰えてないね、ユルギ先輩」
    コクピットのモエさんが、そう言ってきました。

  • 82回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 18:13:35

    「懐かしいな、この感じ」
    「懐かしいって…何がですか?」
    「ユルギ先輩のこと」
    私が懐かしい。ミユさんも似たようなことを言っていましたね。
    「…あのさ、たとえばの話だけどさ」
    「ユルギ先輩は、何物にも代え難い人が居て、その人を助けに行って…その人がそこに居なかったとしたら、どんな気分になる?」
    「…はっきり言って、最悪ですね」
    「だよね」
    モエさんの質問の意図がわからず、戸惑いつつも答えます。
    「…昔、超精鋭の小隊に所属してた人がさ、行方知らずになったんだ。その事件を起こしたのは傭兵集団。どこに雇われてたかはまだ分かんない」
    「その時の救出作戦で、その人はその場所に居なかった。最悪だったよ」
    「モエ、もういいでしょう…!」
    ミヤコさんが遮りました。声に少し怒気が混ざっています。
    「…ユルギ先輩、この続きはまた今度、かな」

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:16:39

    好感度が高い2人とは話せてる感じだね、よきよき

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 18:19:34

    スレ立てありがとうございます
    保守できなくて申し訳ない

  • 112回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 18:25:26

    >>10

    むしろ自分の過失ですから気にしないでください!


    その後、RABBIT小隊が風呂に入れてご満悦だったり、自分の痕跡を死ぬ気で揉み消したりしながら、数日が過ぎました。

    「カンナさーん、顔色悪いですよー」

    「…ユルギか。すまん。いろいろあってな…」

    「局長ともなれば心労も多いですよね」

    最近、カンナさんの調子がやけに悪そうです。大丈夫だと良いんですがね…

    「そういやカンナさん。最近私らの装備、豊富ですよね」

    「…っ」

    「カンナさん掛け持ってくれたんですか?」

    「…まあ、そんなところだ」

    さらに顔色が悪くなった気がしましたが、気の所為ですかね。

    「ありがとうございます。じゃあ、今日も夜勤頑張りますか。今日も徹夜かなぁ」

    「…そうならないといいがな」


    「…いっそのこと、気づいてくれ…ユルギ…」

    「弱い私を…許してくれ…」

  • 122回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 18:44:41

    「…んー、何もないなー」
    今私は資料室に居ます。理由は、私が救出された時の事件資料が残っていないか確認するためです。自身の記憶がないらしいのは、やっぱり気持ち悪いので。
    「…収穫なし、か。仕方ないですね…ん?」
    戻そうとした資料の束から、何かが落ちました。半年ほど前の資料のようですね。所々検閲されていますが。
    「どれどれ…」

    事件ファイルNo.▓▓▓▓
    当該ファイルは、先週発生したSRT特殊学園の▓▓▓▓▓救出の事件ファイルです。
    当該作戦の目標は、SRT特殊学園▓▓▓小隊所属▓▓▓▓▓救出を目標とし、公安局尾刃カンナ、コノカ両名が指揮し、実施されました。
    また、本作戦において、当該建築物より防衛室と▓▓▓▓▓▓▓、▓▓▓▓▓▓▓両組織の汚職の証拠となる資料が発見され、当該救出目標は汚職の証拠を掴んだものと――

  • 132回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 19:15:42

    このファイルの下には、不許可の判子が押されています。つまり、これは正式な資料として認められていないということです。
    「…なんだ、これ…気味悪いなぁ…」
    「何してるんですか、ユルギ先輩」
    声をかけられた方を向くと、生活安全局のフブキさんがいました。
    「いやー、ちょっと資料の探し物があって…」
    「…そうなんですか…っ!」
    フブキさんは私の持つ資料を見ると、あからさまに表情を硬くしました。
    「…ユルギ先輩。悪く言いませんから、それに関わるのは辞めませんか」
    「…え、な、なんで?」
    「…ユルギ先輩の立場が、危なくなるからです」
    それは、どういう――
    その時、局内の警報装置が鳴り始めました。侵入者のようですね。
    「…ごめんなさい、また後で話しましょう、フブキさん」
    「…ええ」
    とにかく武装して、相手を迎え撃たないと。

  • 142回もスレを落とした情けない奴25/01/14(火) 20:55:57

    「侵入したのは?」
    「1個小隊、重武装です。すでに一階の警備は全滅したものと…」
    「了解、カンナさんは?」
    「もう前に出てます」
    それを聞き、私はすぐに前へ出ます。カンナさんを援護しなければ。
    しかし、また重武装の相手ですか。
    …また、あの狐耳の人ですかね。
    「この…!ぐあぁっ!!」
    前からカンナさんの声。どうやら、一歩遅かったようです。
    「また来るぞ!」
    「交戦準備、サキは前へ!」
    …違うみたいですが、これまた厄介ですね。
    「…ユルギ先輩」
    「ミユさん。こんな形で会いたくはなかったですね」
    4人の兎、そしてシャーレの先生が、そこには居ました。
    「…ユルギ…っ」
    「カンナさん、任せてください」
    「――ここは誰も通しませんよ」

  • 15落名ユルギ25/01/14(火) 22:10:48

    「喰らえ…!」
    「…この間合いならサイドアームより――」
    ―銃のストックの方が速い。
    「ごふっ…!」
    「サキ!」
    前衛のサキさんを下して、ミヤコさんへ。ミユさんと十字砲火の体勢を組んでるようですが…
    「喰らいませんよ」
    「!?」
    SMGを腰だめで射撃し、ミヤコさんにぶち込みます。9mmだと威力に欠けますが、問題ありません。
    「こっち」で仕留めるので。
    「ミヤコちゃん…!」
    ミヤコさんを盾にし、ミユさんの射線へ。
    しかし。誤算だったのはミユさんの射撃精度でした。
    「…ぐ!」
    正確無比な一撃。ミユさんを撃とうと突き出した腕に命中し、メインアームを落としました。
    “…今!”
    ミヤコさんが拘束を解き、私の銃を拾って発砲。
    “撃て!RABBIT2!”
    「ラジャー指揮官…!」
    サキさんが背中から私を蜂の巣にし、私は力なく壁に寄りかかる形で倒れました。
    「…手強かった。流石、元FOX小隊員といったところですね」
    胸ぐらを掴みながら、ミヤコさんが言いました。
    サキさんが私の手に結束バンドを巻き付け、拘束しました。
    …やられましたね。流石に先生の指揮ありきでは不利すぎました。
    「…目的は?」
    「ヴァルキューレの資料室。そこに用があります。暗証番号を教えてください」

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 22:12:09

    頑張ったよ

  • 17落名ユルギ25/01/15(水) 07:54:35

    おはようございます。

    「さて、質問します。資料室の暗証番号を言ってください」
    「…誰が言うと思ってるんです…?」
    言うはず無い。なぜならあそこには、ヴァルキューレの機密が沢山眠っているからです。一般人には公開できない情報があるからです。
    「…なら、やるしか無いですね」
    そう言うと、ミヤコさんは私の事を思い切り殴りました。
    「番号を吐くまで殴ります。たとえ死んだとしてもです」
    そう言うと、ミヤコさんは何発も私を殴り始めました。
    痛い。痛い。痛い。
    『おい、さっさと話したらどうだ』
    『お前らに話すことなんか無い…!』
    『なら死ぬだけだな!!』
    これ、誰…?何の記憶…?
    『やめろ…その子は関係ない…』
    『お前が話せば助かるだろうよ』
    『…ぐ』
    『話さないんだな。なら…』
    『やめろ!!』
    なに、これ…?わたし…?
    『おい、返事しないぞ、こいつ』
    『気絶してる…起こせ、続けろ。こいつには全部話してもらわなきゃいかん』
    『…うぁぁ、あ、あああ…』
    暗い。こわい。痛い。痛い。いたい。

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 18:43:11

    フラッシュバックか

  • 19落名ユルギ25/01/15(水) 19:37:28

    「あ、あ、ああぁぁぁあぁあ!?」
    突然、ユルギ先輩が叫び始めました。
    ユルギ先輩はSRTの、しかも精鋭のFOX小隊の出身です。この程度で弱音を吐くことはないはずですが…
    「…泣いても、暗証番号を吐くまでやめませんよ」
    「ミヤコちゃんやめて!!」
    「やめて、ミヤコ!」
    “ミヤコ!!”
    静止を無視して拳を振り上げたときでした。
    「あ、あ、いたい、やだ、やだっ!!ごめっ、ごめんなさい!ごめんなさい!いたいのやだ、やめて!たすけてだれか、いたい、こわいっ」
    尋常じゃない叫び。いつもと違う、昔とも違う、何かの叫び。
    ばきっ。
    サキが横から、ユルギ先輩を殴りました。
    「今更泣いたって許されるか…この裏切り者が!」

  • 20落名ユルギ25/01/15(水) 20:55:52

    「あぁぁあ”あ”う”ぁぁあ”あ”ぁぁあ”!なんでなんでなんで!!やだやだやだ!!ゆるして、ゆるしてっ!!」
    「にこ、くるみっ、たすけて、おとぎ、ゆきの、だれか、だれかぁ、たすけて」
    「やめろ…ユルギに手を出すな!!」
    横から傷だらけの尾刃さんが、見たこともない形相で走ってきます。武器を構えた私達にかまわず、ユルギ先輩へ駆け寄りました。
    「だれ、くるな、こないで、やめて、おねがい」
    「私だ、カンナだ!しっかりしろ!」
    「あ、あ、かんな、さ、かんなさんたすけて」
    「…『もう大丈夫だ。安心しろ』」
    「あ、かんなさん、かんなさん――」
    ユルギ先輩は気を失ったようでした。
    「…すまない…私が弱いばっかりに…お前にばかりこんな…」
    尾刃さんはそう言いながら、ユルギ先輩を抱きしめました。
    「…ミヤコ、裏切り者には当然の報いだ。気にしなくていい」
    「…ならさ、なんでユルギ先輩はヴァルキューレにいるの?」
    サキの言葉に、モエが問いかけます。
    いつもと違う声色で、いつもと違う表情で言いました。
    「あれは傭兵集団が起こした、いわばヴァルキューレは関係ないことだよ。それに靡いたんだったら、ここに居るのはおかしい」
    「…もしかしたら、私たちのユルギ先輩への認識が、何か間違ってるんじゃないの?」

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 20:57:20

    そんな凄惨な尋問だったのね…

  • 22落名ユルギ25/01/15(水) 21:31:12

    >>21仕事人間故、口を割ることはない。

    だけど、割るまで尋問が続くとなると…?


    「…そうだな。話しておいたほうがいいか…」

    不意に、尾刃さんがそう言いました。

    「実はな、ユルギは今記憶喪失の状態にある」

    耳を疑いました。ユルギ先輩が、記憶喪失。

    「…お前たちも知ってるだろう。半年前の事件を。ユルギはSRT入隊からそこまでの記憶が一切無い」

    半年前の事件。所属不明の傭兵集団が一斉蜂起し、FOX小隊含め複数の部隊が鎮圧に向かった事件。たしかあの時、小隊が包囲されて、突破口を作るために1人行方不明になってそのまま…

    「…私達が、SRTが来るより先に救出した。防衛室からはストップが掛かっていたが、見過ごせなかったんだ…」

    ヴァルキューレに、救出された。

    ―ああ、そういうことですか。

    つまりユルギ先輩は、裏切り者でも何でもなく―

    「…わ、私は、…」

    「…ミヤコ?」

    私は、そのユルギ先輩を―

    「―私は、取り返しのつかない…取り返しのつかないことを…」

    「わたし、は…なんて、ことを…」

  • 23落名ユルギ25/01/15(水) 22:23:17

    …ユルギの病室は、ここか。
    「…入るぞ」
    ドアを開けると、外を眺めているユルギが居た。
    「…来たぞ、ユルギ」
    「…カンナさん。来てくれたんですね」
    「…同僚をほっとくやつがいるかよ…」
    振り向いたユルギは何処か生気の抜けた目をしていて、今にも消えてしまいそうである。
    「…あのあと、いろいろあったぞ」
    そう。本当に、いろいろあった。
    あのあと、セキュリティを突破したRABBIT小隊は、ヴァルキューレの汚職…私の関わっていた事を、世間に公表した。
    連日マスコミがヴァルキューレに押しかけてくるし、ヴァルキューレという組織の信用は地に落ちた。
    「カンナさん、お疲れみたいですね。やっぱりあんなののあとだと、メンタル来ちゃいますよね」
    「…そうだな」
    思わず、ユルギから目を逸らす。
    …この汚職は、もっと早く公表されるべきだったんだ。だってあの時お前は――
    「…カンナさん、泣いてるんですか…?」
    「ユルギ…わ、私はな…」
    「もうお前のような…立派な人間には、なれなくなってしまった…お前のように、信念を…正義を貫けなくなってしまった…」
    私でもわからないくらい、止めどなく気持ちが溢れてしまう。ああ、なんて情けない…
    「ごめん、ごめんな…私のせいで…お前ばっかりこんな思い…」

    あまねく奇跡の始発点編へ続く。

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 07:29:59

    ユルギの記憶って戻るのだろうか

  • 25落名ユルギ25/01/16(木) 07:56:02

    >>24

    さあどうでしょうか。キーマンはFOX小隊と…?


    「ユルギさん、復帰おめでとーっ!」」

    公安局の部下たちが、ユルギの復帰を祝っている。あれから数週間、ユルギはリハビリを終えて復職した。

    「ありがとうございます。遅れた分バリバリ頑張りますよ」

    …正直無理して欲しくは無いが、まあ、復帰は喜ばしいことだ。

    「姐御、ユルギの奴、元気無いっすね」

    「…そうだな…まだ本調子じゃないんだろ…」

    ユルギはあの日、自身がトラウマを思い出したのを忘れてしまっていた。RABBIT小隊との交戦から、病院で目を覚ますまでの記憶が全て無かった。自然とユルギの脳が、自身の過去に関連する記憶を全て消してしまっているようだ。

    「…しっかし、なんか今日はやけに戦車の往来が多いっすね」

    「…もはや大隊規模だな。どうなってるんだ…?」

    さっきから、外からのキャタピラの音が絶えない。何処かへ大挙して向かっているようだが…

    「あの、カンナさん宛に電話です」

    「誰からだ」

    「連邦生徒会、七神行政官からです。先生の行方について何か知らないかと…」

    要請のあったやつか。…妙だな。それなら今ごろシャーレビルに迎えが到着している頃だが…

    「1号機より伝令!シャーレビルはもぬけの殻、先生を発見できず!」

    「…どうなってる?」

    「どうしたも何も、D.Uが私達の管理下に置かれる準備が整っただけのことだよ、公安局長」

    機械音声のような声。

    カイザーPMCのジェネラルと呼ばれる人物がそこには居た。

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 18:43:05

    大部隊はカイザーの部隊か

  • 27落名ユルギ25/01/16(木) 21:42:40

    「…何の用です」
    私は思わず聞き返しました。語気が強くなってしまったのは、なぜかその人物に嫌悪感を抱いたからです。
    「おや、君は確か狐の…こんな所に居たのか」
    意外そうな目でこちらを見たジェネラルという人物は、カンナさんの方へ向き直りました。
    「これから、シャーレやサンクトゥムタワーを含むD.Uの主要行政機関は、我々カイザーコーポレーションが全権を担う。先生の身柄もこちらで拘束した」
    「…誰の許可を得てこんなこと…いち民間企業が公的機関を攻撃するなど、クーデターみたいなものじゃないっすか」
    「これは攻撃ではない。進駐だよ、副局長。許可ならまぁ…後になれば分かるだろうな」
    気分が良さそうに話すジェネラル。
    「ちなみにだが、現時刻をもってヴァルキューレは治安維持機関の権限を全て失うこととなった」
    「…なんですって…?」
    「聞こえたはずだろう、落名ユルギ。…つまりだな、君たちはもう警察では無い」
    …なんでこいつは、私の名前を知ってるんです?
    「…まあ、また後でお目にかかるよ、諸君」
    そう言うと、ジェネラルは部屋から出ていった。

  • 28落名ユルギ25/01/17(金) 07:59:17

    「…クソッ!」
    コノカさんがデスクを蹴り上げました。金属製の派手な音が、静まり返った局内に響きます。
    「姐御、これはれっきとした反逆行為っすよ!今すぐ先生を奪回して、D.Uを元に戻さないと!」
    「…しかし、あの機甲戦力を見ただろ。あれに手を出すのは自殺行為だ」
    「でも、こんなのあんまりっすよ!なんでいちPMCごときに好き勝手やられなきゃいけないんすか!」
    コノカさんの気持ちもわかります。が、カンナさんの言う通り、あの量の戦車部隊を相手するのは無理です。
    私達に今必要なものは3つ。
    1つ、反撃の正当性。
    2つ、バックアップ及び指揮官。この2つは先生を奪回すれば解決します。しかし、依然先生の行方が掴めていません。
    3つ目は、シャーレまたはサンクトゥムタワーへ突破するだけの戦力。私には、このアテがありません。唯一当たれるとしたらRABBIT小隊ですが、私の要請に応じてくれるかどうか…
    「1号機より伝令、帰投中に偽装した輸送ヘリを発見、現在ヴァルキューレ本署3番ヘリポートへ着陸したと…」
    1号機。先生を迎えに行った、ヴァルキューレのヘリです。
    「1号機から映像送信です!モニター、接続します!」
    モニターに映し出された映像には、何やらPMCの兵士に連行されるスーツ姿の人が映っています。
    「…これ、先生、ですかね?」
    …まだ神は私たちを見捨てていないのかもしれません。

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 18:29:55

    更新ありがたい

  • 30落名ユルギ25/01/17(金) 20:42:28

    >>29

    こちらこそありがとうございます


    「ヘイローが無い…ほぼ決まりでいいか…?」

    「このスーツ、着るの先生くらいっすよ。…こっちに運ばれたのか…!」

    途端に、局内でざわめきが生まれました。八方塞がりだった状況が打破できるチャンスが降りてきたのです。

    「…だが、先生を確保したとて、戦力が揃わなきゃ意味がないぞ…」

    そう。正当性と指揮官の問題は解決できますが、現有戦力ではシャーレまでの突破は不可能です。今必要なのは、機甲戦力を撃破できる地上部隊もしくは航空支援、そしてPMCと真正面からやりあえる兵力です。

    「…SRTさえ生きててくれたらどんなによかったか…っ」

    横でコノカさんがそう言って、奥歯を噛み締めました。

    「…ともかく、先生は私が救出する。他の者は警備局への協力要請を急げ」

    「…1人では無茶っすよ。今この局内にも、カイザーPMCの兵士が多く居るっすから」

    「…あの、私も行きます」

    思わず、口をついた言葉。

    「私は元SRT、なんですよね?なら、少しでも力になりたい…!」

    私が、もしSRTだったなら。こんな時、どうするか。その結論がこれでした。

    「…だがな、いくらお前でも――」

    「私も、SRT出身です!」

  • 31落名ユルギ25/01/17(金) 21:24:42

    唐突に、座っていた局員が立ち上がって言いました。
    「ユルギちゃんだけじゃなくて、ここには沢山SRT上がりの人が居ます!」
    「私だって元SRTだ、PMCごときに好き勝手やらせるかよ!」
    「…やっと、正義に殉じて戦えるんですね」
    「うちは元SRTじゃないけど、気持ちは一緒だよ」
    「元小隊の奴に掛け合ってみる。きっとあいつらも、死に場所を探してる」
    「お前ら…」
    カンナさんは感極まった声でそうつぶやくと、涙をぐっとこらえて言います。
    「…ありがとう。…やるぞ」
    「私たちはここで屈するほど、志は低くない。たとえ不可能なことだとしても、あえて挑むんだ。信じた正義を貫くんだ」
    「いいか!私たちはD.U最後の砦、ヴァルキューレ警察学校とSRT特殊学園だ!!」
    「死ぬ覚悟のある者だけついてこい!いいな!!」
    何時もは怖いカンナさんの叫び声が、今日はなんだか頼もしい。
    「頼りにしてるぞ、ユルギ」
    「お願いします、カンナさん」
    そうだ。私たちは、まだ終わっちゃいない。

  • 32落名ユルギ25/01/17(金) 22:21:06

    「完全武装か、新鮮だな」
    「カンナさんはそのままで良いんですか?」
    「こっちの方が慣れてる。何とかなるさ」
    今、エレベーターで地下の留置所へ向かっています。先生が囚われているなら、そこしかありません。
    「気をつけろ。今地上でコノカたちが大暴れしてるからな。もう伝わってるはずだ」
    「全滅しなきゃいいですが…」
    「やわな鍛え方はしてない。大丈夫だ」
    チン、と音がして、エレベーターが目的の階に到達しました。
    「…行くぞ」
    「先導します」
    がーっ、と、エレベーターのドアが開きました。目の前には、カイザーPMCの兵士が防衛線を敷いていました。それに向かって、準備しておいた爆薬を投げつけて――
    「「…ヴァルキューレ公安局だ!!」」
    発破しました。

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 09:49:33

    徹底抗戦か

  • 34落名ユルギ25/01/18(土) 18:33:03

    …なんだろう、爆発…?”
    地下牢の中。急にカイザーPMCの動きが慌ただしくなったと思ったら、銃声や爆発音、怒号が響き始めた。
    何が起こっているのか…そう思っていると、銃声と二人分の足音がこちらに近づいているのがわかった。
    「なんだこいつら、いくら撃っても止まらないぞ!?」
    「何でもいい、先生に近づけるな!…うわっ!?」
    「…そこを、どけ!!」
    1人を銃撃が、もう1人は横から飛んできた人影の蹴りが入り、銃撃でトドメを差された。
    「オールクリア!目標確認!!」
    「…よかった、無事だった」
    “…ユルギ、カンナ”
    そこには、銃創でボロボロになっているカンナとユルギがいた。2人とも、頭から血が出ている。
    「…先生、今日は味方ですね」
    「…さあ、手を」
    二人の英雄が来た。身を挺して、私を助けてくれたのだ。
    「…これは、先生のもの、ですよね。どうぞ…」
    それはシッテムの箱だった。没収されたのを取り戻してくれたのだ。受け取ると、カンナはぐらりとユルギの方へ倒れた。
    「カンナさん…!」
    「…私が償えるのは…ユルギ。やっぱり、私は…弱い、な…」

  • 35落名ユルギ25/01/18(土) 20:01:08

    「カンナ局長、ユルギ先輩、大丈夫ですか!?」
    「取り敢えず要請に応じて来たけど…不味そうだね、これ」
    キリノさんとフブキさんが来ました。どうやら生活安全局にも応援要請が行っていたようです。
    「傷だらけじゃないですか!大丈夫ですか!?」
    「私は平気ですが…カンナさんが」
    二人はカンナさんに駆け寄りました。キリノさんが応急処置をします。
    「フブキさん。ここから脱出してシャーレ奪還を目指したい。外には出られそうですか」
    「…今、外でコノカ副局長がチームを率いて戦ってるから、出るのは簡単だけど…向こうは戦車部隊だよ、本当に突破できると思ってるの?」
    「できるかどうかじゃなくて、やらなきゃならないんです」
    戦力差は絶望的。しかし、コノカさんたちがやり合ってる以上、行かないわけにはいかない。
    “…大丈夫だよ、ユルギ。今増援を呼んだから。地上戦闘のプロ、航空支援付きのね”
    「…そんなのが、どこに――」
    ――居る。少し前、一戦交えた部隊が。
    “…もう外に居るみたいだ。私達も行こう”

  • 36落名ユルギ25/01/18(土) 21:38:36

    外へ出ました。そこには物凄い光景が広がっていました。
    「ひゅーっ、いいっすよ!」
    「手加減するな!!そのままやっちまえ!」
    撃破された多数の戦車。前進するヴァルキューレの部隊。その先頭にいたのは。
    「小隊前進!サキ、前へ!モエは後方の装甲戦力を攻撃!!」
    『くひっ、りょーかーい!』
    「RABBIT小隊を舐めるなよ!」
    兎達が、ヴァルキューレを率いて前線を食い破っていた。
    …これなら、やれる。
    「ミヤコさん!状況!」
    「…ユルギ先輩。前の戦力は粗方片付きましたが、後方にまだ機関銃とスナイパーが残ってます。歩兵は別働隊のミユが包囲作戦を決行中」
    「よし、グレネードランチャーとミユさんの狙撃で機関銃を潰す。その後第一小隊を真っ直ぐ突っ込ませます。他は私についてきてください」
    「了解。全員聞きましたね!行動に移してください!!」
    前線指揮をRABBIT小隊が受け持ったようですね。この分なら問題ないでしょう。
    「ユルギ先輩…」
    「…何ですか?」
    「…許されないとは思いますが…あのときは、すみませんでした」
    あの時とは、何時でしたっけ。まあ、細かいことは気にしないでおきましょう。
    「…気にしてないですよ。行きましょう」
    「…はい!」
    「…パセリ、もしくはシャーレ奪還作戦、開始です!!」

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 21:44:46

    寝て起きたら規制で保守できなくて泣いた

  • 38落名ユルギ25/01/18(土) 22:57:19

    >>37

    ほんと規制は怖いですね…


    「右側面クリア!進路確保、シャーレビル到達まであと1キロ!」

    「各位散開、シャーレへ接近を!」

    シャーレは目と鼻の先です。しかし、正面広場には強固な防衛線が敷かれており、装甲車やパワーローダーが居るのが確認できます。

    「歩兵戦力じゃ無理ですね…航空支援でいきますか」

    「対空装備も確認されています、今ここでヘリを持ってきたら落とされますよ!」

    「だからミユさんを使うんですよ。ミユさん!」

    『は、はい…あの対空装備を潰せば良いんですよね…?』

    「そうです、やってください!」

    『…RABBIT4、了解』

    ミユさんは通信を切った後、どん、どん、と四発の射撃音。ほぼまもなく撃破報告を入れてきました。

    『対空装備の沈黙を確認…』

    「助かった!モエさん!!」

    『…撃ちきっちゃっても良いよね?』

    「ド派手にぶっ飛ばしてください!!」

    “…建物は残してね…?”

    『…くひひっ、了解。全弾発射!!』

    モエさんのヘリの武装が火を吹きました。

    機関砲がコンクリートを抉り、ロケット誘導弾が戦車をなぎ倒し、パワーローダーを木っ端微塵にし、防衛陣地を吹っ飛ばしていきます。

    実に機関砲7000発余り、ヘルファイアロケット4発の猛攻。航空支援が終わる頃には、広場前にあった防衛線が跡形もなく吹き飛んでいました。

    「小隊前進!シャーレビルを確保する!」

  • 39落名ユルギ25/01/19(日) 07:24:14

    『おい、どうしたSOF!状況を報告しろ!』
    「状況もクソもあるか!早く増援をよこせ、でなきゃシャーレが堕ちるぞ!!」
    『鐘崎港から第二中隊が向かってる!持ちこたえろ!』
    「間に合うかよ、航空支援だ、早くしろ!!」
    ちくしょう、なんでこんな事になってんだ…!
    ヴァルキューレの奴らが一斉攻撃してきたかと思ったら戦車部隊が消し飛んで、パワーローダーも一瞬で持っていかれた…!
    「入ってくるぞ!迎撃!」
    「前の青髪撃て!!早く!!」
    前から大挙して部隊が押し寄せてくる。どう考えても、俺たちじゃ抑えきれない。
    そう思った瞬間。青髪の足が俺の顔面目掛けて飛んできた。
    「ぐぼあ…!」
    「ロビーを抑えます、各自突入し殲滅を!!」
    その後ろから、兎耳の奴らやヴァルキューレの奴らが津波のように押し寄せて、味方が次々なぎ倒される。
    「クソ、お前…」
    最後の力で、青髪を撃とうとした。
    しかし奴が振り返った時、俺は気づいてしまった。
    「お前、まさか、狐の…」
    あいつだ。あいつが、俺たちに復讐に来たんだ。
    その瞬間、銃声が響いた。
    「オールクリア!オフィスの確保を急げ!第二小隊は地下をクリアリングしてください!」
    最後に聞いた声は、そんな声だった。

  • 40落名ユルギ25/01/19(日) 17:49:02

    「来るな!これ以上近づいてみろ、この建物を爆破――」
    「RABBIT4」
    その瞬間、ジェネラルの腕がふっ飛ばされた。
    『うん。もう撃っちゃった』
    私はジェネラルに接近して、右ストレートをお見舞いし、顔面と胸に一発ずつ銃弾を撃ち込みました。
    「…オールクリア。シャーレ、奪還しました」
    目標達成。まさか、力押しでここまでやれてしまうとは。
    『第二小隊より第一小隊指揮官、七神行政官の身柄を保護しました。これよりサンクトゥムタワー管理権限の復旧を行います』
    「第一小隊了解。手の空いている者で外に防衛線を敷いてください。各小隊指揮官はオフィスに集合」
    『了解』
    なんとか一息つけそうですね、と思ったのも束の間のことでした。窓の外から見える景色が、だんだんおかしくなっているのに気づきました。
    『…あのさ、空って、赤かったっけ…?』
    上空を旋回中のモエ機から、そんな通信が入ります。
    「…何か、おかしいですね。これは、一体…?」
    キヴォトス標準時11時47分。青かった空が、真っ赤に染め上げられました。

  • 41落名ユルギ25/01/19(日) 21:41:42

    “…シャーレの周囲に反応が出てる。敵…みたいだね”
    「先生、時間稼ぎは私たちでやります。救援要請を各学園に」
    “お願い。…あ、ユルギ。1人君を待ってる人が居るんだ。北口にいるから、そこを守ってあげて”
    「…待ってる人…了解、取り掛かります」
    私はエレベーターで一階まで降り、北口へ出ました。そこには大量の敵と、もう1人。
    「お久しぶり…いえ、この場合は初めまして、で良いですかね?」
    赤と黒の髪。狐耳。袴のような服装。
    …会ったことある。あったこと無いはずなのに、会ったことがある。
    「あのお方の頼みとはいえ、まさか貴方に背中を預けることになるとは…何とも奇怪なことですね」
    「…狐坂、ワカモさん」
    思考より先に、言葉が出た。何で私、この人と会ったことある気がしてるんだっけ…?
    「落名ユルギさん。会うのはあの日以来でしょうか」
    何でこの人を見ると、背筋が凍るんですか…?

    “…ごめんね、ユルギ。余計なお世話かもしれないけど、君が過去を知りたがってたから”
    “荒療治かもしれないけど…お願い、ワカモ”

  • 42落名ユルギ25/01/20(月) 08:04:40

    「…何処かで、お会いしましたっけ」
    「…どうやら、記憶喪失というのは本当のようですね」
    ワカモさんはそういいました。狐の面で隠れていますが、不敵な笑みを浮かべている様が分かります。
    「本当はご命令通り『手』を打ちたいところですが…その前に」
    ワカモさんはそう言うと、迫りくる敵の大群に向き直りました。
    「こちらから片付けましょうか。ねぇ、ユルギさん?」
    「…了解」

    やりにくい。強いが、やりにくい…!
    ワカモさん、動きがピーキーすぎてついていくので手一杯…!
    「今度は…そちらですね!!」
    「くっそ、カッ飛びすぎ…」
    勢いよく切り込んだワカモさんを援護するために私もSMGを大群に撃ち込みます。群れの中央で敵が吹き飛んで、ワカモさんがそれを追って飛び出しました。
    「今度は、右!」
    「く、おおおお!!」
    ワカモさんの動きに無理やり合わせて、SMGで攻撃。
    「進路確保!!」
    「…流石、慣れてきましたね」
    …しかし、防衛戦闘のはずなのに、何処へ向かっているんでしょうか。まさか、ここら一帯を全部片付ける気で…?
    「…粗方、片付きましたか」
    「…そうみたい、ですね…っ」
    息も絶え絶え、必死です。ワカモさん速すぎ。
    「…舞台は整いました。あなた様、このワカモが必ず吉報を持ち帰ってみせます…」
    舞台?吉報?何を言ってるんだ、この人――
    その時。ワカモさんの銃剣が、私の鼻先に突きつけられました。
    「…『あの時』の再現と行きましょうか。ユルギさん、いえ――」
    「FOX5、でしたか?」

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 08:04:52

    カイザー部隊にあの傭兵集団に関わってたやついたんだな
    にしても空が赤く染まる…あれが来たか

  • 44落名ユルギ25/01/20(月) 18:23:50

    あの時の、再現…?いったい何の話を…
    「…この場所、見覚えがありませんか?」
    場所。ただの一般的な道だとしか思えませんが――
    『▓▓▓▓より作戦本部、目標確認。機動兵器に搭乗してる』
    『間違いないですね?』
    『あんなデカブツに特徴的な服装!間違えるわけ無いでしょ!!』
    ――雪が、降ってる。黄色、桃色、赤。
    「まあいいでしょう。覚えがないなら、思い出すまで存分に…!」
    「…く!!」
    ワカモさんの攻撃で、思考の海から引きずり上げられました。銃剣を躱して、一度距離を取りました。同時に煙幕弾を投下。
    「…そんなもので!」
    「そこですか!!」
    向かってくるのをSMGで薙ぎましたが、食らった様子はなく。ワカモさんの銃のストックが腹に直撃し、ガラスを突き破りながら建物内にふっ飛ばされました。
    「痛ぁ…!」
    ガラス片が所々に刺さって、ものすごく痛いです。
    『まだやれるな!?』
    『まだまだ行けるよ、▓▓▓!』
    誰かが、走っていく。あの青髪、誰――
    「…っ!!」
    ワカモさんがこちらに向かってきました。その攻撃を身を捩って躱して、ワカモさんを掴んで一本背負い投げ。ショーケースにワカモさんが突っ込んで、派手な音を立てました。
    「ぐ…」
    「…流石に一筋縄ではいきませんか」

    雪はFOX小隊のスチルからです

  • 45落名ユルギ25/01/21(火) 00:34:55

    酷い頭痛に、吐き気。連戦の影響でしょうか。
    SMGを拾い直して、素早く装填。これがラストマグです。
    「…仕掛けてきたのはそっちでしょう…来い」
    「…勿論。目的が達成されるまで、止めるつもりはありませんよ」
    瞬間。双方の銃が火を吹いて、互いに被弾し合いました。9mmの雨がワカモさんを、7.7mmの精密射撃が私を襲います。
    迷わず撃ちきった銃を手放して、ワカモさんに右ストレート。顔面に一発入りましたが、その腕を掴まれて地面に叩き伏せられ、こちらの顔にも一発入りました。
    「…思い出せ、FOX5!!」
    「ぐああ、あ!!」
    無理やり動かした左手でワカモさんの右手を抑え、その流れでワカモさんにアイアンクロー。私をロックしていた力が緩んだ隙に足を抜き、ワカモさんの腹に蹴りを入れました。
    「ごふっ…!」
    その衝撃で、銃撃を食らって割れかけていたお面が、地面へ落ちました。
    中から姿を現したのは、美しいワカモさんの素顔。大和撫子と呼ぶにふさわしい、綺麗な顔。
    『狐坂ワカモ。やっと捕まえたぞ…!』
    『作戦本部、目標確保。移送のため回収機を要請』
    「――っ!!」
    この、顔、場所――
    『よくやったな、ユルギ』
    『…ん、そっちこそ。…お疲れ』
    『…ユキノ』
    雪が、雪が降っている。私達も真っ白になって――

  • 46落名ユルギ25/01/21(火) 08:02:07

    「…ぐ!?ぐぅぅ、あああぁぁぁ…!?」
    目の前で、突然ユルギさんが崩れ落ちました。頭を抱え、苦しそうに。
    「…何とか、思い出したみたいですね…」
    「あ、あ、あ?っぐ、う、ああ、あ」
    ぼろぼろと涙を零して、嗚咽しながら地面に這いつくばっています。
    「ゆ、ゆきの、なの?みんな、なの?わ、わたし、はだれ、ゆるぎ、?」
    「みやこ、かんなさ、このか、さん、きつねさか、わかも?」
    …かつての敵とは言え、これをただ見ているだけというわけにはいかないようですね。
    そう思ったので、私は彼女を抱きしめる事にしました。彼女もまた傷だらけです。
    「…わたくしがついていますから。ゆっくり、思い出してください」
    「あ、あぁ、…ぁ、あったかい…」
    その時。彼女の肩口から、不思議なものを見ました。
    今は空が赤くなって居るはずなのに、道には一面の銀世界が広がっていました。瞬きをしたら消えてしまいましたが。
    「…決着は、また然るべき時につけましょう」
    かつての宿敵だとしても、今はこうして昔の思い出に2人で浸っていたいと、そう思いました。

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 18:53:04

    荒治療だったみたいだが思い出せそう
    事が終わったあとはメンタル治療も必要になりそうだけど

  • 48落名ユルギ25/01/21(火) 23:30:39

    目を覚ます。
    暗い天井。ここは、どこだろう。
    体を起こす。なんだかとても長い眠りから覚めたような感覚に襲われた。
    「…シャーレの、地下室」
    「よく寝られたか、ユルギ」
    すぐそばにカンナさんが居ました。至る所に治療の跡があり、痛々しいです。
    「…起きないかと思ったぞ」
    「起きますよ。この程度で起きられなきゃFOX小隊の名が廃る」
    「…!お前、まさか…!」
    「…おはようございます。そして改めて――」
    「――初めまして、尾刃カンナさん」
    そうか。
    私、全部思い出したんだ。仲間も、所属も、辛いことも全部。大切な思い出も、後輩も、私を突き動かす正義の理念も。
    「そうか…なあ」
    「なんですか?」
    「…今、辛くないか?苦しくないか?…大丈夫、なんだよな…?」
    「…これが終わったら、泣かせてください」
    …全部話さなきゃいけないな。私が、どうしてこんな事になっちゃったかを。
    カンナさん、ちゃんと受け止めてくれるかな。私がこれから相手取る組織を聞いても。
    「…何があっても、私はお前の味方だ」
    「頼りにしてますよ、局長」

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 23:44:57

    FOX5の帰還だ

  • 50落名ユルギ25/01/22(水) 07:42:54

    「そうだ、忘れるところだった。記憶を取り戻したお前に贈り物だ」
    そう言うとカンナさんは、私に何かを差し出してきました。
    「あ、これ…!」
    「…お前のだろ。持ってけ」
    赤いヘッドセット。耳元に狐のマーク。『FOX5』の印字。間違いない、私のヘッドセットです。
    「…霞沢ミユが、わざわざ私に預けてくれたんだよ。…後輩を待たせるな、早く行ってこい」
    …RABBIT小隊の皆も、私を待っていてくれたんですね。
    …行こう。待たせすぎると失礼ですから。
    ヘッドセットを付ける。ものすごく落ち着く。ようやく、私を見つけられた。
    「…がんばれ、ユルギ。…絶対帰ってこい。お前の話を聞かせてくれ」
    「帰ってきますよ。今度こそ、必ず」
    オフィスへ向かいましょう。きっと、まだ人が詰めてるはずです。

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:12:24

    作戦会議とかかな?

  • 52落名ユルギ25/01/22(水) 21:44:42

    「…の戦力配置は…」
    “ケセドにはC&Cもぶつける。けどそうなるとスランピアに配置する人員が…”
    「いくらゲヘナの風紀委員長とはいえ、民間人を抱えながら1人で露払いは不安が残ります」
    向こうから話し声が聞こえます。各学園の各代表が詰めているようで、作戦会議をする声が聞こえます。
    …行きますか。
    “となると露払いにもう1人…”
    「私が受け持ちます」
    ドアを開け、中に入りました。そこには、ミレニアムの生徒会役員、ゲヘナの行政官などの各学園の中核をなす人物たちが集まっていました。
    “ユルギ、起きたんだ”
    「ええ。…おかげさまで、全部思い出せましたよ」
    “そっか。手荒でごめんね”
    「良いんですよ。…ようやく、私の中のズレてたものが収まりましたから」
    “…そっか。…よかった”
    「先生、その方は…?」
    黒髪赤眼鏡の人が先生に問いました。
    “…頼りになる切り込み隊長だよ”

  • 53落名ユルギ25/01/22(水) 22:08:08

    「状況は?」
    「現在、『虚妄のサンクトゥム』と呼ばれるものが六本、キヴォトスに出現しました」
    七神リン行政官が、眼鏡を指で押し上げながら答えました。
    虚妄のサンクトゥム。落下地点はアビドスに一本、ミレニアムに三本、トリニティに一本、D.Uに一本。
    「これらを300時間後の臨界点到達までに攻略、破壊しなければいけません」
    「…なるほど。つまり、ここに各学園の代表が来ているということは…」
    「総力を挙げて、これを叩くということです」
    全キヴォトスが団結する。今まで見たことが無かったことが起ころうとしている。
    「大体把握できました。部隊配置は?」
    「アビドスのサンクトゥムは私たちが受け持ちます」
    赤縁眼鏡の人…アビドスの奥空アヤネさんが言いました。それに、ゲヘナの鬼方カヨコさんが同意します。
    「トリニティも、こちらで迎え撃ちますよ」
    ピンクのロングヘア、浦和ハナコさんが答えます。
    「D.Uは現在、ヴァルキューレのコノカさんが指揮を執って、攻撃ヘリ部隊を編成中です。しかしこれだけでは心許無いため、先生がこの戦線を指揮します」
    「ミレニアムは今戦力を集めていますけど、数が多いこともあってこちらの人手が足りなくて…ケセドとホドには戦力が揃ってますけど、スランピアには…」
    「風紀委員会とトリニティの一部の部隊が展開していますが、それでもなんですよね…」
    早瀬ユウカさんと天雨アコさんが言いました。ミレニアム方面の戦力が手薄なようです。
    “…そこで、だ。RABBIT小隊と共に、ユルギが増援として行ってほしいんだ”
    大方、私のやるべきことがまとまりました。
    「…敵さんの配置とかは?」
    “まだわからない。現地に行ってみないことには詳細な情報が掴めないんだ”
    …良く言えば切り込み、悪く言えば死地への突撃。こんなの――
    ――私にしか務まらない。
    「…行きます。行かせてください」
    “…ありがとう。…落名ユルギ、貴官をスランピア攻略の部隊に配属します。奮闘を願う、以上”
    「任務了解。FOX5、着任します」
    “頼んだよ”

  • 54落名ユルギ25/01/23(木) 08:07:42

    子ウサギ公園の前に、1台の車が止まりました。
    その車はゲヘナ風紀委員会のもののようで、中から今回共闘する風紀委員長がでてきました。
    「こんにちは、空崎ヒナさん。今回はよろしくお願いします」
    「よろしく。貴方が?」
    「はい、そうです。RABBIT小隊指揮官、月雪ミヤコです」
    「頼りにさせてもらうわね。…後の人達は?」
    今回、私達の担当であるスランピア攻略に参加するのはヒナさん含めて10名。今ここに居るのはその半分です。
    「もう1個の部隊はミレニアムから出撃します。それと、あと一人は――」
    「ミヤコ、来たぞ!」
    サキがそう言うと、シャーレ保有のヘリが降りてくるの見えました。
    その中から1人、フル装備のユルギ先輩が降りてきて、私の前に駆け寄って敬礼しました。
    「現在時刻1820、落名ユルギ、今作戦に着任します。コールサインはFOX5」
    「…FOX5…?」
    まさか、記憶が戻って…?
    「…半年前の任務から、只今帰還しました。今作戦よりSRTに復帰します」
    …ついに戻ってきたんですね。私達が救出できなかった、落名ユルギという人間が。
    「…待って、いました。ずっと…」
    「お待たせ。私、頑張るよ」
    そう言うと、落名先輩はにっこりと笑いました。懐かしい、暖かな先輩の笑顔です。
    「…ヒナさん。よろしくお願いします」
    「先生から話は聞いてる。頼りになる人だ、って」
    「こちらこそ、ゲヘナ最強の話は常々。…あてにさせてもらいます」
    「…ふふ、よろしく」

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:44:40

    各生徒が集まり戦力が整ってきてるな

  • 56落名ユルギ25/01/23(木) 22:21:39

    「…すまなかった、先輩」
    ヘリで現地へ移動する途中、サキさんが突然謝ってきました。
    「何が?」
    「ヴァルキューレの一件だ。…私は、先輩の事を知らずに、酷いことを…裏切り者だと、言ってしまった」
    「…あー、あれね。正直あれは私が半分悪いみたいなとこがあるし、気にしないでよ」
    そう。あの時私が失敗しなければ起こらなかったことですから。
    「…でも、私は…やっぱり…」
    「…じゃあ、サキがどれだけ強くなったのか見せてほしいな」
    「…そんな、ことで…?」
    「後輩の成長を感じられるのが先輩の喜びなんだよ。ね、ヒナさん?」
    突然声をかけられたヒナさんは少し驚いたような素振りを見せましたが、冷静に答えました。
    「…そうね。後輩には逞しくあってほしい」
    「…てことで、お願いね、サキ」
    「…っ、ああ!任せろ!!」
    威勢良く答えるサキさん。その横で、ミユさんが微笑みながら言ってきました。
    「…やっと、揃いましたね。…おかえりなさい」
    「ミユ、寂しくさせてごめんね。…もう1人でどっか行ったりしないよ」
    今度こそ、この暖かさを離さない。絶対に。

  • 57落名ユルギ25/01/24(金) 07:34:40

    『信号キャッチ、感4。間違いないね』
    スランピアに降下した後、モエさんのヘリが信号を傍受しました。ミレニアムからのもう1個の部隊でしょう。
    「…あれか」
    「あ、きたきた!こっちこっち〜っ!」
    「ちょっと、お姉ちゃん…相手年上の人も居るんだよ…?」
    桃色と緑色のヘッドホンを付けた2人が、私たちを出迎えてくれました。
    「あなたたちが、ゲーム開発部の…」
    「そうだよ、私はモモイ!!」
    「妹の才羽ミドリです。よろしくお願いします」
    「で、こっちが…」
    「私はアリス!クラスは勇者です!」
    勇者とは大きく出ましたね。しかし、それに見合う大剣を携えています。あれレールガンでしょ重量やべーでしょどうやって持ってんだ。
    「…これで全員?」
    ヒナさんの質問に、ミドリさんが答えます。
    「あと一人来ます。準備がいるので少し遅れていますが…」
    そう言うと、遠くからキャタピラの音が聞こえてきました。
    「…戦車、ですかね?」
    『ちょっと、アレ何!?火力やばそー、何積んでるの!?』
    モエさんが興奮気味に伝えてきました。何が来るのやら…
    『…お、お待たせ、しました…!花岡ユズです…!』
    「…あれ、なんですか?」
    「…アバンギャルド君Mk-III、だそうです…」
    大きな機体、高火力な武装。そこまでは良いんです。むしろ、人数不足を補うにはもってこいでしょう。しかし…
    「「だっさいですね…」」
    顔が、えげつないくらい、ダサい。ミヤコさんと声が被ってしまいました。
    「ま、まあ、それはさておいてさ。早く始めようよ!!」
    「あ、そ、そうですね。では――」
    「――スランピア攻略作戦、開始です!!」
    「そっちに合わせる。好きに動いて」
    「了解、作戦開始。背中は任せます」

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 18:40:06

    ゲーム部も参戦か
    そしてアヴァンギャルドくん、FOX5さんからもやはりアヴァンギャルドすぎたか

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 19:53:46

    >>56

    あったかくて泣いてまうよこんなの……

  • 60落名ユルギ25/01/25(土) 01:47:30

    「そこら中に…!」
    「そっちね」
    反応が確認されているエリアへ、私とヒナさんで道を切り開いていきます。それの援護にRABBIT小隊が、後続にゲーム開発部が続きます。
    「RABBIT2、前に大型、吹っ飛ばしてください!!」
    「了解!バズーカを使う!!」
    サキさんがバズーカを構えました。
    「後方よし、ファイア!!」
    バズーカが命中し、大型の敵が吹っ飛びました。
    「行きます!!」
    「援護する」
    開いた進路にヒナさんと私が突貫、敵を薙いで行きます。ヒナさんの方は私より数倍の数が殺到していましたが、飄々と壊滅させてしまいました。
    「…側面排除。オールクリア、です」
    「ミユさん、腕いいな…」
    「私達も負けないよー!!」
    ゲーム開発部の面々も負けじと前へ。モモイさんの前進に合わせ、ミドリさんの援護。撃ち漏らしはユズさんのアバンギャルド君が薙ぎ倒しました。
    しかし、これだけの攻撃をもってしても、敵はわんさか湧いてきます。
    「また出た!!こんなのキリないよ~!!」
    「RABBIT3、航空支援を要請!アリスさんはレールガン射撃準備!!目標、前方敵!」
    「わかりました!!」
    『くひっ、デンジャークロース!!』
    モエさんのヘリが前へ出て攻撃開始。バルカン砲の雨と誘導弾が降り注ぎ、敵を蜂の巣にしていきます。
    「…エネルギー充填率100%。撃ちます!!」
    「耐衝撃姿勢!!」
    勇者の剣が、青く光る。
    「…光よ!!」
    瞬間、地面が揺れるほどの衝撃が私達を襲いました。
    前を見ると、レーザーが通った場所は抉れていて、敵は全て消し飛んでいました。
    『すっご〜…あ、反応感知。ここだね』
    ついにたどり着きました。この虚妄のサンクトゥムを守る者の場所まで。
    『本部からの情報通り。「シロ」と「クロ」だね』

  • 61落名ユルギ25/01/25(土) 07:05:00

    「まずは白い方から。準備はいい?」
    「ラジャー、スタンバイ」
    すると突然、シロが大道芸で使うような大きな玉をぶん投げてきました。
    「離れろ!!」
    サキさんのバズーカ。命中したものの、まだ破壊には至っていません。
    『…そこ!』
    ユズさんの援護射撃。圧倒的な火力で玉を粉砕し、射線が確保されました。そこにすかさずミユさんの射撃。
    「前へ!!モモイさん、ミドリさん、死にたくなかったら背中についてきてください!!」
    「わ、わかりました!」
    「行っくよ!」
    敵が敷いたであろうトラップを避けながら前進。
    私の射撃に続いて、モモイさんの射撃。ぎゃりぎゃりと音を立てて放たれた桃色の曳光弾が、敵に吸い込まれて行きます。
    「ドットを打つように、緻密に…!」
    次いでミドリさんの銃が火を吹いて、緑色の曳光弾が降り注ぎました。シロは手数の多い攻撃に手も足も出ないまま、地面に倒れ伏しました。
    しかし。敵はまだもう1体。上空から羽をはためかせ、クロが降りてきました。
    が。そのさらに上に、ヒナさんの影。地上ではアリスさんのレールガンが待ち構えます。
    「…悪いけど、地面には降りさせない」
    「レベルカンストのガチ勢がいれば、怖いものなしです!!」
    「…決まった」
    レールガンが青く光り、ヒナさんの銃口が紫に輝きました。
    「逃さない」
    「光よ!!」
    上下方向から、二本のレーザーの同時攻撃。これに耐えられる生物など居ないでしょう。
    クロは地面に足をつけることなく、バラバラに粉砕されました。

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 18:26:24

    凄まじい威力だ

  • 63落名ユルギ25/01/25(土) 20:43:20

    >>62

    アビドス3章を見たら盛りたくなる


    「爆薬セット、起爆準備よし!…下がってろよ」

    『とんでもない爆発が見られるんだ〜…ぐへへ』

    「瓦礫に注意してください。ユルギ先輩、お願いします」

    「了解。…起爆」

    スイッチを押す。すると、タワーの根元にセットされた爆薬が派手に爆発し、タワーを破壊しました。

    『うわぁぁぁぁ!!やっばぁ!!』

    「アリス知ってます!爆発は芸術、ですね!!」

    「はしゃぐなぁ…司令部、こちら第三サンクトゥム。タワーの無力化を確認」

    通信機越しに、アコさんの声が聞こえる。

    『了解しました。一度シャーレまで戻って次の指令を待ってください』

    「了解。…アコさん」

    『なんですか?』

    「…ヒナさん、強いですね」

    私にもあれぐらい強かったら、あの時切り抜けられたのかな。

    『当然でしょう。私達の自慢の委員長なんですから』

    「…オープン回線だってこと、忘れてるのかな…」

    横でヒナさんが、恥ずかしそうに言いました。

  • 64落名ユルギ25/01/25(土) 21:34:37

    「…まだ終わりじゃない、と?」
    “うん。見立てだと、またアレは出現する。相手の本拠地を叩かないと終わらないんだ”
    帰還したシャーレの作戦室で、先生から聞かされたことでした。
    まだ終わっていない。空はすでにいつもの青い空になったはずですが…
    「本拠地というのはどこに?」
    “ここから上空約7万5000m…そこで、強いエネルギー反応があった。多分そこだね”
    7万5000m。私達の手の届かない、遥か空の彼方です。
    「誘導ミサイルや、航空攻撃は?」
    “全部試した。でも、攻撃を防ぐどころか、当たりすらしなかった”
    「当たらないって…すり抜けるってことですか?そんなこと可能なんですか?」
    そう聞くと、先生は小さくうなづきました。
    “…できるらしい。多次元解釈システムっていうオーパーツが、それを可能にしてる。破壊するなら、私達が直接乗り込んで叩くしか無い”
    「…そのための足は?そんな高高度まで上がれるもの、そうそう――」
    “これだよ”
    先生は1枚の写真を見せてきました。
    “――ウトナピシュティムの本船。神話ではノアの方舟とも言う。これを使って、本拠点に殴り込みだ”
    なるほど。出力はどれほどのものか分かりませんが、これなら上がれるでしょう。
    “そこで、ユルギには攻略戦中、地上防衛の指揮を執ってほしいんだ”
    「…陸上戦も覚悟の上、ですか」
    “うん。多分、私達が戦ってる間に、またタワーが復活しちゃうからね”
    多数の主力を引き抜いて地上戦となると、かなりの犠牲が出るでしょう。ただでさえ戦力が足りていなかったんですから尚更です。
    ですが、目指すのはベスト。誰一人犠牲にならない作戦などありませんが、それでも犠牲ゼロを目指さねばなりません。
    「…やりましょう。上は頼みますよ」
    “任せて。絶対、いい知らせを持って帰ってくる”

  • 65落名ユルギ25/01/26(日) 09:29:14

    「…暇だなぁ…」
    空が赤くなってからというもの。D.Uは閑散としていて、もともと少ないお客さんも、今日は誰一人来ません。
    “やあ、ソラ”
    「…あ、いつから、来てました?」
    “ついさっきだよ。ちょっとお話を、と思って”
    先生がやってきました。このコンビニ唯一と言っていいお客さんです。それにしてもお話とはいったい何でしょうか。
    “…星ってさ、こんなに綺麗だったんだね”
    「…ちょっと前まで赤かったですもんね、空」
    “そうだね。失って初めて気づくこともあるもんだなぁ”
    まるで自分の最期が近いかのように、先生はしみじみと語ります。
    “…ソラ。今から地上で総力戦が始まる。今度は抑えきれないかもしれない”
    暗に避難しろと言いたいのが伝わってきます。
    「…先生がいれば大丈夫なんじゃないですか」
    “私は空の向こうへ行くよ。この一連の騒動に決着をつけに行くんだ”
    「空、ですか…?」
    “そう。空だ。…ここの無事も保証できない。早く避難したほうがいいよ”
    「嫌です」
    自分でも驚くほど早く言葉が出ました。そうです。私はここを離れられません。
    「…私は、ほんの少ししか居ないお客さんの為にここにいます。その僅かなお客さんは、ここに足繁く通ってくれるんです」
    例えば、公園に住む兎耳の人。例えば、群れからはぐれた狐の人。例えば、いつもエナドリを買いに来るあなた。
    「このお店がそのお客さんの帰る場所になれたら、素敵だと思いませんか」
    “…ありがとう、ソラ。…シャーレをお願いね”
    「…ええ。無事戻ったら、エナドリで乾杯ですね」
    『先生、そろそろ出発の時間です』
    “わかったよ。…行ってきます”
    そう言って、先生は行ってしまいました。
    「…エナドリ、補充しとかないと。あと、公園に差し入れかなぁ」
    エンジェル24、あなたの為に24時間営業中です。必ず、またご利用下さいね。

  • 66二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:49:44

    戦いが終わったら乾杯…ロマンがある

  • 67落名ユルギ25/01/27(月) 00:07:28

    「…これは非常時っすよ。志願させるっすか?」
    コノカが言う。どうやら防衛線を守る人員を選んでいるようだ。
    「…いえ。ローテで行きます。皆警備局に入ったときから、覚悟はできています」
    警備局の現場指揮官は、そう言った。
    …ここまで頼もしくなってくれるとはな。
    「…わかったっす。2班に分けて、それぞれシャーレ前面とラミニタウンに配置するっす。…貴隊の健闘を期待する。以上っす」
    「…気をつけ!!敬礼!!」
    そう言って、警備局の人員は準備に取り掛かった。
    「…頼もしくなったものだな」
    「みんな、ユルギに感化されてるっす。ここでの働きとか、SRTでの活躍とかを知ってれば尚更っすね」
    「…感謝してもしきれんな」
    ユルギ。今日は交戦規定は無しだ。好き勝手暴れてこい。始末書なら、私が何枚だって書いてやるさ。

  • 68落名ユルギ25/01/27(月) 08:05:52

    「第四業務地区の部隊配置終了!」
    「サンクトゥムタワー方面の人員が足りません!」
    「鐘崎港の部隊から幾らか引き抜いてそっちに回してください。沿岸よりも中央に寄せて守ります」
    現在、D.Uに集結している人員を総動員して防衛線を構築中です。ヴァルキューレは勿論のこと、増援として駆けつけたゲヘナの戦車部隊や、トリニティの砲兵隊なども協力体制を取っています。
    「落名さん、戦車部隊の配置は大体完了しましたよ」
    「了解です、棗さん。いつでも機動防御できるよう準備していてください」
    「わかりました」
    「…しかし、百鬼夜行の雪原からトンボ帰りとは。わざわざ遠路はるばるありがとうございます」
    「マコ…うちの議長の気まぐれですよ。できれば出番が無い方がよかった」
    「私もそう思います。私達治安維持部隊は、出番が無い方が平和ですからね」
    そういうわけじゃないんだけど、見たいな顔をしながら棗さんはうなづきました。
    「…あの、こんな時に聞くのもあれだと思うんですが…」
    「なんですか?」
    棗さんは少し躊躇ってから言いました。
    「…この作戦、損耗率はどれくらいですか」
    「…良くて2割か3割。失敗したら、キヴォトスごと全滅です」

  • 69落名ユルギ25/01/27(月) 18:33:28

    「…あ、ユルギさん、お疲れ様です」
    ヴァルキューレ本署の格納庫に寄ってみたら、整備士の方たちが作業をしていました。
    「お疲れ様です。攻撃ヘリの整備ですか?」
    「はい。さっき全機点検が終わった所です。いつでも出せますよ」
    「…パイロットたちは?」
    「士気充分、気合入ってますよ」
    …それなら、よかった。
    「…もう一度、点検をお願いします」
    「え、もう1回ですか?さっき言いましたけど、今全機終わったところですが…」
    …念には念を。さっき自分で損耗率の話をしておきながら何様だと、自分でも思います。しかし、目指すのはベストです。
    「…全機帰還するんです。お願いします、もう一度点検を…!」

  • 70落名ユルギ25/01/28(火) 00:15:56

    「…カウントお願いします」
    「30秒前…」
    先生が空へ上がって数時間。連邦生徒会が打ち出した試算では、もう一度赤いタワーが復活するのは30秒後。今はかき集めた戦力をもって防衛線で待機しています。
    「10秒前」
    「安全装置解除。ウェポンズフリー」
    それぞれの銃からカチリと音がして、臨戦態勢に入りました。
    「5秒。…3、2、1、0」
    瞬間。空がまたしてもいっぺんに赤く染まって、タワーが形成されました。これから私たちは、先生が色彩の根幹を破壊するまで、終わりのない持久戦を行う事になります。
    「撃て!!」
    銃口から放たれる色とりどりの曳光弾が、沸いて出た敵に吸い込まれて行きます。機関銃が絶え間なく弾幕を張り、戦車が榴弾を放ち、地雷が起爆します。
    キヴォトスの存亡を掛けた、地獄の戦いが始まりました。

  • 71落名ユルギ25/01/28(火) 08:01:27

    「3班と連絡が取れません!!」
    『トライスクエアで防衛線が崩壊、戦線の維持は不可能!!』
    「第2小隊を海岸通りまで下げてトリニティの砲兵隊に砲撃させてください!」
    危機が迫っています。人手不足が祟って、とうとう防衛線を破られる箇所がでてきました。
    「ユルギさん!ここももう限界です!早く下がってください!!」
    「ここで前線を下げたら、ゲヘナ戦車部隊が側面攻撃を受けます!!彼女らがやられればシャーレまで抜かれます、耐えて!!」
    「ですが、このままだとユルギさんも危ないですよ!?」
    「彼女らが下がるまで耐えてください!!前大型、射撃集中!!」
    大型の敵に対して攻撃を集中。機関銃、バズーカ、手榴弾に小銃。ありったけの火力を叩き込んで抑えます。
    『ゲヘナ戦車部隊の後退確認、FOX5、そっちも下がらないと…!』
    「やっと下がったんですね…FOX5了解。後退命令受信、各隊はシャーレ前の大通りまで後退し、防衛線を張り直せ!!殿は私がやります!!」
    そう叫ぶと、私と一緒に防衛線を守っていた部隊が少しずつ後退を始めました。
    迫る敵にSMGを掃射。最後まで残ってくれているヴァルキューレ警備局員の援護射撃を受けつつ、敵を捌いていきます。
    「ユルギさん!次は私たちです!!後退を!」
    「了解。私たちは子ウサギ公園まで後退、少しでもシャーレ到達までの時間を――」
    その時でした。敵の放ったレーザー攻撃がビルの根元に直撃、後退方向の進路を崩壊したビルがふさいでしまいました。
    「進路が!!」
    「路地に入ってください!!急いで!!」
    『司令部からFOX5、何があった!?』
    「後退方向の進路が塞がりました。路地に入りましたが…後退は不可能と判断します」

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:39:41

    バリケードで塞がれてしまったか
    迂回先に敵がいないことを祈る

  • 73落名ユルギ25/01/28(火) 21:54:02

    地名は任務とかスケジュールから引っ張ってきました

    「…どうします?」
    「どうにかするしか無いです。迂回ルートをたどって、本隊と合流します」
    今取り残されたのは、私とヴァルキューレ警備局員の4名の計5名。強行突破となれば、この戦力ではどうしようもありません。なるべく細い道をたどるために、地図を用いてルートを確認します。
    「…商店街を突っ切って、春葉原へ抜けます。その後大通りを横断してアオバ区へ。D.Uウエストパークまで行けたら、トリニティの砲兵隊と合流できます」
    「でも、途中の春葉原はもう陥落したって作戦本部が…」
    「え?第7小隊からはまだ交戦中って…」
    「戦車乗りの奴らからは分断されかかってるって聞いたけどな…」
    …情報が錯綜していますね。当然です。アオバ区方面は通信線が遮断されて、状況がいまひとつ掴めていません。今回突破ルートに選んだのも、我が方の部隊が生きていることを願っての選択ですから。
    「…百聞は一見にしかず。行ってみれば分かりますよ。行きましょう」
    「…了解。ついていきます、ユルギさん」
    僅かに希望があるなら、包囲下でもベストを尽くさねば。

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 07:49:42

    保守を今までより短期間でしなきゃいけないのやめて……寝る前に確認してから寝ると落ちる寸前やん

  • 75落名ユルギ25/01/29(水) 11:44:53

    >>74

    ほんと申し訳ないです…気をつけます


    「だから、早く落名先輩を救出しなきゃ…!」

    「落ち着いてください、ミユ…今の状況では、余分に戦力を割けないんですよ…」

    「…また、あの時みたいになったら…っ」

    「わかってます!!わかってますよそんなこと!!でもシャーレが落とされたらD.Uは終わりなんです!!わかりますか!?」

    シャーレから前線へ8キロ地点。前線指揮所には動揺が広がっていました。作戦の中心を担っていた落名先輩との連絡が不通になったのです。

    「…ミヤコ。第2小隊、現着した」

    「…サキ。ご苦労様です。…損害は?」

    「半壊状態だ。小隊だけでの作戦行動は無理だと思ったから、警備局の生き残りを集めて再編させた」

    被害状況も深刻です。すでに各小隊で多大な犠牲がでています。ゲヘナ戦車部隊も戦力の三分の一を喪失し、トリニティ砲兵隊もほぼ撃ち尽くした状態です。

    「…そうですか。第2小隊は北側へ展開して、防衛線を維持してください。これは死守命令です」

    「了解…落名先輩、まだ帰ってないのか?」

    「…まだです。それどころか、近くにいたはずの第1小隊とも連絡が取れなくて…」

    …落名先輩。貴方は今どこに居るんですか。貴方なら、この状況をどう打開しますか。

    「…教えてください。私には、もう分からない…」

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 11:46:41

    >>75

    大丈夫だよ。これ管理人に言ってるから

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 11:47:28

    >>75

    たぶんアレじゃない?落ちるまでの時間短縮に言ってるんじゃない?管理人に対する苦情を開いてたスレにふと書き込んでしまったのだと思われる

  • 78落名ユルギ25/01/29(水) 12:39:52

    >>76

    >>77

    そういうことだったかぁ…確かになんか短くなってますね

  • 79二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 12:59:13

    >>67

    ここのコノカのセリフ、シンゴジラの木更津駐屯地のセリフだ。

    クールな引用だ…

  • 80落名ユルギ25/01/29(水) 20:10:13

    「…誰だよ、交戦中だなんて言ったのは」
    私達の賭けは失敗しました。春葉原まで何とか突破できたのは良かったのですが、そこはもうすでに敵の手に落ちていました。
    「…まさか、全滅して…?」
    隣の局員が、がっくりと膝から崩れ落ちました。
    「…なんで…?私たち、何か悪いことしたの…?こんな、こんな酷い仕打ちを受けるぐらい、悪いことしてないよ…?」
    「しっかりしろ、まだこっからだろ…!」
    「…あ、ああ、なんで…どうして…?」
    目の前の通りを、たくさんの敵が徘徊しています。到底5人では突破できそうにもありません。
    …それでも。そうだとしても。
    「…4人はここに。私が道を作ります」
    「1人でやるって言うんですか!?無茶ですよ!」
    「あなたたちを逃がすくらいの時間なら稼ぐ自信があります」
    「…でも、ユルギさんが」
    「…いいですか、ここは戦場なんです。書類に記載する犠牲が一つ増えるだけで4人救えるなら、それは戦術的には勝ちなんですよ」
    「…っ!」
    「…大丈夫です。私はSRTの人間です。しっかりやりますよ」
    ええ。しっかりやってみせますよ。私は――
    『…この無線が聞こえる者へ…こちらは…』
    行こうとしたタイミングで、無線が何かを拾いました。

  • 81二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 20:12:04

    >>78

    あ、すみません

    常時開いてたこのスレにイラつきのまま書き込んでしまいました……

  • 82落名ユルギ25/01/29(水) 21:55:49

    >>81

    全然大丈夫ですよ。しかし10時間は短いな…


    「…救援?」

    「応じよう。こちらは第1小隊、ユルギ小隊長の指揮する部隊です!!聞こえますか!」

    『…ユルギ!?……現在…西から近づく…こちらは…』

    「…誰です?」

    「この声…公安局長だ…!」

    その時、装甲車が敵の群れに突っ込んで停止しました。見ると、コノカさんが機関銃で敵を薙ぎ払っています。

    「乗れ!!早く!!」

    またとない好機です。足があれば脱出は可能です。

    「…感謝します、カンナさん!全員乗ってください!!」

    他局員の撤退援護をしつつ、私も乗り込みます。

    「全員乗ったな!?」

    「乗りました、出してください!!」

    そう言って、カンナさんが車を出した時でした。空の色が不意に暗くなってきたのです。

    「…戻った…?」

    思わず窓から空を見上げます。そこには満天の星空に、一筋の流れ星が輝いていました。先生がやり遂げたのです。

    「…終わったみたいだな…良く頑張った」

    「…ええ。どうも…」

    東の空からは、夜明けの太陽が顔を出していました。

  • 83落名ユルギ25/01/30(木) 00:13:15

    ここからカルバノグ2章です

    『…現在、D.Uでは連邦生徒会主導で復旧作業が行われており、今週中には主要な行政機能が全て復旧する見通しです。次のニュースです…』
    「一件落着だな」
    「今日も出勤…いつになったら休めるんです?」
    「そう言うな。こういう時こそ私達が働かなきゃならん」
    「私結構前線で頑張ったんですよー…」
    空が赤くなった日からしばらくして。キヴォトスは日常を取り戻しました。今は公安局総出で莫大な量の報告書を捌いています。
    「さて、次は…D.Uでシャーレの先生らしき人が全裸で走り回ってた?…」
    うん。これは見なかったことにしてシュレッダーに放り込んでおきましょう。
    「次…ん?」
    流れ作業で上がっている報告書を読んでいると、少し気になる事案が出てきました。
    「…シャーレの監視カメラに、フル装備の部隊が映り込んでる…?」
    当該時刻は、私達がシャーレを制圧する前の時間でした。なら、カイザーPMCでしょうか。
    「…確認しよう。映像は…これか」
    デスクのパソコンに送られていた映像を再生しました。
    「んー…見えにくいけど、確かに…ちょっと待て」
    映像を巻き戻して、拡大。感じた違和感は当たっていました。
    「…これ、ユキノ…?いやでも、ユキノはそんなことする性格じゃないし…何だ、これ…」
    …何故か、悪寒がします。何か良くないことが起ころうとしているような…

  • 84落名ユルギ25/01/30(木) 07:58:59

    「前のファイルは…あった」
    見付けたのは、以前見た所々検閲されている事件ファイルです。
    「…今なら、黒塗り部分も読めちゃうな…」
    黒塗り部分を脳内補完しながら、書類を読んでいきます。

    事件ファイルNo.▓▓▓▓
    当該ファイルは、先週発生したSRT特殊学園の落名ユルギ救出の事件ファイルです。
    当該作戦の目標は、SRT特殊学園FOX小隊所属落名ユルギ救出を目標とし、公安局尾刃カンナ、コノカ両名が指揮し、実施されました。
    また、本作戦において、当該建築物より防衛室とヴァルキューレ、カイザーPMC両組織の汚職の証拠となる資料が発見され、当該救出目標は汚職の証拠を掴んだものと――

    「…汚職」
    そうです。私はあの時、ヴァルキューレとカイザーPMC、そして防衛室の汚職の証拠を掴んでいました。記憶喪失になってすっかり忘れていましたが。
    「…カンナさんと2人で話そう。なんか、嫌な予感がする」

  • 85二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:17:06

    >>79

    マジか、ありがたい

  • 86落名ユルギ25/01/30(木) 23:13:49

    >>79

    >>85

    合うと思ったので雰囲気を壊さない程度に入れました。この台詞アツくて好きです。


    「カンナさん、ちょっといいですか」

    「何だ?」

    「2人で話したいことがあって…いいですか」

    「…私の部屋に来い。行くぞ」

    さっき資料室からこっそり持ち出した書類を持って、カンナさんと局長室に入りました。

    「…さて。話って何だ」

    「半年前の私の事件のことです。なんか、話しておかないといけない気がして」

    「あれか。どうかしたのか」

    さっき感じた嫌な予感。それは防衛室に対する『不信感』です。

    あの日、私が掴んだ汚職の証拠。

    資料室の奥にしまってあった、検閲された報告書。

    私はその全てをカンナさんに話しました。

    「…成る程。防衛室が…」

    「ええ。私はあの日、確かに証拠を掴みました。…彼女らが決起しなければ持ち帰れたのですが」

    「うーむ…ちょっと待て。決起ってなんだ」

  • 87落名ユルギ25/01/31(金) 07:59:08

    カンナさんが驚いた表情で聞き返しました。
    「あれ、聞いてなかったんですか?一部のSRT所属の部隊が裏切ったんです。確かどっかの会社の傭兵と繋がってたって…」
    そこまで言った時でした。私の中で、バラバラのパズルのピースがはまっていくのを感じました。
    決起した部隊。企業とのつながり。報告書。
    『何でこっちを撃ってくるの!?』
    『応戦しろ!もうあいつらは味方じゃない!!』
    『この…っ!』
    『ユルギ!!』
    彼女らは、私達を脅威とみなしていた。そしてあの日からの尋問は…
    『…の場所は?』
    『だれが…言うか…』
    あの傭兵たちは――
    『…おや、君は確か狐の…』
    ――ジェネラル。あいつか…!!ということは…!!
    そこまで気付いた時、私はオフィスへ走り出していました。
    「おい、ユルギ!!どうした!!」
    「このままじゃまずい…すぐ各局に装備を持たせて配置につかせないと…!」
    「何を焦って――」
    カンナさんの声は、公安局のオフィスに入った時に聞こえた喧騒に打ち消されました。
    「東署から緊急、所属不明の武装勢力に攻撃を受けている、と!」
    「戒厳令ってなんすか、何でそんなもんがでてんすか!!」
    「防衛室と連絡が取れません!!」
    …やられた。一歩遅かった…!

    「全部隊が作戦を開始した。これで良いんだな?…不知火カヤ防衛室長」
    「ええ。多大なご配慮感謝します」
    「…ヴァルキューレにいる狐の生き残りはどうする」
    「1人ではどうにもならないでしょうし、放っておいて大丈夫ですよ。それに――」
    「―こちらも、4人ほど狐を飼っていますから」

  • 88二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 16:49:39

    ギリギリだったかぁ

  • 89落名ユルギ25/01/31(金) 23:14:19

    「…なんだ、まだいたのか」
    「カンナさんこそ。働きすぎですよ」
    「働いて無い。暇なんだ…」
    …結局、空が赤くなった日と同様に、ヴァルキューレは権力を失ってしまいました。私の見立て通り、奴らはまだ諦めていなかったみたいです。
    「お前は先生の所へ行かなくて良いのか?多分、戦力かき集めてる最中だぞ?」
    「どうせ後からコンタクト取りに来ますから大丈夫ですよ」
    先生は必要となれば話を持ち掛けてくるはずです。間に合わなかった以上、反抗のタイミングは合わせるべきです。
    「なら暇ついでに…ちょっと付き合ってくれ」
    「…何にです?」
    「コーヒーでも飲みながら、お前の話を聞かせてくれ」

  • 90落名ユルギ25/02/01(土) 07:09:57

    「…お、局長だ、それに…ユルギ先輩も」
    「おはようございます!カンナ局長!ユルギ先輩!」
    喫茶店へ向かう途中、キリノさんとフブキさんと会いました。
    「何してるの?まさかデート?」
    「…まあ、そんなところだな。お前たちも来るか?」
    「え、良いんですか?お邪魔なんじゃ…」
    「別にいい。ドーナツでも奢ろう。ユルギがな」
    「…ん!?」
    「おー、ユルギ先輩太っ腹」
    「ありがとうございます!」
    …私の話を聞いてくれるって話じゃなかったんですか?まあ奢りますけど…
    「…悪いな。あいつら一緒でも大丈夫か?」
    「…貸し一つでお願いします」

    「…ユルギ先輩、雰囲気変わった?」
    「…そうかも知れないですね」

  • 91二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 15:26:19

    束の間のほのぼのだ

  • 92落名ユルギ25/02/01(土) 22:32:10

    出かけっぱなしだったので短め…

    「…さて。そろそろ話してくれるか?」
    喫茶店に入ってしばらくして。カンナさんが話しかけて来ました。
    「話って何のことですか?」
    「ユルギの出自についてだ。興味深い話が聞けるぞ」
    カンナさんがそう言うと、キリノさんは好奇心の目、フブキさんはつまらなさそうな目でこちらを見てきました。
    「…大して面白い話じゃないですよ」
    「私は聞きたいです!」
    「…私も聞こうかな。…流し聞きだけど」
    「…じゃあ、ちょっとずつ」

  • 93二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 22:38:11

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 07:44:23

  • 95落名ユルギ25/02/02(日) 12:47:38

    「私は元々、SRT特殊学園のFOX小隊所属でした」
    コーヒーを一口啜ってから、少しずつ話し始めました。
    「FOX小隊って、あの?」
    キリノさんが少し驚いたような感じで聞いてきました。
    「…まあ、あの仕事っぷりを見たら納得だね」
    「…FOX小隊は、他のSRTの生徒たちと比べても熟練の部隊だったと自負しています」
    実際、あの時はSRTの代名詞のようなものでしたからね。
    「私はその中で、一番槍…いわゆる斥候の役割でした」
    私は元来、身体能力が高かったですから。走り回るのは私の得意分野です。
    「…そうか。だからあの日、お前は捕まったのか」
    「…そうです。先頭を行く人には、そういう危険も伴いますから」
    「あー…あの資料って、そういうことだったんだ」
    私の言葉で、フブキさんも気づいたようです。対照的に、キリノさんはきょとんとした顔でこちらを見ました。
    「あの、本官にはなんのことかさっぱり…」
    「聞いてりゃわかるさ」
    「続けますね」

  • 96落名ユルギ25/02/02(日) 18:46:16

    「…ある日、所属不明の部隊が連邦生徒会に対してクーデターを起こしました。まさしく今みたいな状況になったんです」
    「それで鎮圧に向かった」
    カンナさんの言葉に頷きながら、続けます。
    「すぐにFOX小隊といくつかの部隊に出動命令が下されました」
    いつの間にか、気怠そうにしていたフブキさんも、真剣に話を聞いていました。
    「…単なるテロリストの鎮圧作戦だ、って高をくくっていたんだと思います。私たちはすぐに敵本拠地を攻略しましたが…」
    「…そこにあったんだ、あの資料」
    「…そうです。そこには、カイザーPMCと防衛室が繋がっている証拠がありました。連中はカイザーPMCの部隊だったんです」
    すると、カンナさんが驚いた顔で言いました。
    「ちょっと待て。あれの所属はまだ分かってなかったんじゃ…」
    「ええそうですよ。なんせ全部知ってた人が記憶喪失になってなんですから」
    カンナさんは少し考えた後、合点がいったようです。
    「…まさか、お前…防衛室に…?」
    「捕まってましたね。不知火カヤと密約を交わしていた他の小隊に攻撃されましたから」

  • 97落名ユルギ25/02/03(月) 01:21:02

    4人の間に、沈黙が流れます。無理もありません。自分たちの組織を管轄する上司が、実は同僚を攻撃していたのですから。
    「…FOX小隊員の4人は逃がせましたが、私は捕まって尋問を受けました。内容は防衛部隊の配置について。奴らはもう一度クーデターを起こそうとしていたんです」
    「…で、その尋問で記憶を…?」
    「そうです。まあ尋問というより拷問でしたが」
    あれは地獄でした。来る日も来る日も痛みを味わって、一緒に捕まった仲間もヘイローを破壊され、尊厳と自由を奪われました。あの時、FOX小隊の落名ユルギは殺されたんです。
    「…奴らは計画の妨げになるものは排除しておきたかった。だから、私が救出されたとしても、記憶を失っているなら好都合だった」
    「真相を知ってるのは1人だけ、それも記憶喪失で防衛室直轄の組織の手中にあるとすれば…そうなるよね」
    ほか4人がどうしているかは分かりませんが、ちょっと前に地下で会敵したのを考えるに、向こうも防衛室の手の中にあるとみていいでしょう。
    とその時、キリノさんが横から会話に入ってきました。
    「あのー…良くわからないのですが、つまり…」
    「この騒動の黒幕は防衛室、ってことですか…?」
    「…ユルギ先輩、まさか」
    「…そうですね。私の敵は防衛室とカイザーPMCです」

  • 98二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 01:25:39

    頑張れ

  • 99落名ユルギ25/02/03(月) 08:02:40

    「…本当に、防衛室と戦うの?」
    「本気です。どっちにしろ、私は生きていたら防衛室から追われっぱなしですから」
    ユルギの口から、そんな言葉が出る。
    ユルギは一度言ったことは取り消さない。きっとあいつしかいなかったとしても、必ず防衛室に攻撃を仕掛けるだろう。
    「…ユルギ」
    「なんですか、カンナさん」
    「…お前のその選択に、後悔は無いな…?」
    そう聞くと、ユルギの目に迷いが浮かんだ。
    「…正直、かつての仲間を撃ちたくありません」
    当然だ。敵同士とはいえ、かつての仲間を撃つのはかなり心を痛めることだ。できなくて当たり前なんだ…
    「…カンナさん。…怖いです」
    「…っ」
    「やらなきゃいけないのはわかります。でも、怖いです…」
    ふと、あの日の記憶が思い出される。ユルギを救出したあの日を。
    部屋の中に椅子に縛られたユルギがいた。全身傷だらけで、火傷、痣、切り傷…見てられないほどの傷がついていた。
    『あ、あ、…あぁぁ』
    救出した時、お前は震えていた。暗い闇の中でただ1人、拷問を耐えられてしまったからだ。辛かったろう、苦しかっただろう。本当なら忘れたままでいたかっただろうに…
    そう思った時には、私はユルギのことを抱きしめていた。
    「ちょ、カンナさん、人目が…」
    人目なんか気にしない。今はお前の方が大事だ。
    「…怖いなら、私もお前についていく。お前の傍にいる」
    汚職によって、私は三流悪党になってしまった。だけど――
    せめてお前にとっては、正義の味方でありたいんだ。

  • 100二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 10:45:01
  • 101二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 19:31:56

    カンナ局長…

  • 102落名ユルギ25/02/03(月) 22:02:00

    うへぇ、カンナさんあったかい…じゃねえや。キリノさんたち見てるよ…

    「…私は賭けたんだ。お前の、揺るぎない意志に。自分の過去を知って尚、それに向き合おうとするお前の心に」

    カンナさんの鼓動が、こちらに伝わってきます。規則正しく、メトロノームのように刻む鼓動は、私の心に勇気をくれるような、そんな気がしました。

    「…カンナさん。私には夢があります」

    「…何だ」

    「SRTから、正式に退役することです」

    …私はまだ、あの日から時計が止まったまま。皆が出席したはずの解散式も、退役を証明するものも何ももらっていません。

    「…私は、あの日の自分にお疲れ様って言ってあげたいんです。頑張ったねって言いたいんです。皆と一緒に出席できなかった解散式に、私を出席させてあげたいんです」

    「…そうか。そうだな…お前はまだ、あそこに居るんだな」

    「…ええ。そして、ちゃんと仲間に顔を合わせたいんです。ちゃんと帰ってきたよって言いたいんです」

    …たとえ、ユキノたちが私を忘れていたとしても、私はみんなに会いたい。みんなと顔を合わせて、ちゃんとしたお別れをしたい。

    「…私、頑張ります。だから…ちゃんと最後まで、一緒に居てください」

    「…最後までな。約束だ」


    >>101局長は好感度高いですから。激重です。

  • 103落名ユルギ25/02/03(月) 23:01:45

    『…ねえ、ユキノ。何で助けてくれなかったの?』
    「…」
    『私はさ、ずーっと待ってたんだよ。でもユキノが来なかったから、私、壊れちゃった』
    「…っ」
    『ねえ、私が頑張ってたのにさ――』
    『――何で、あいつの言いなりになったの?何で道を踏み外しちゃったの?』
    「…ぅぁ…ごめんなさい…ごめんなさい…っ」
    『あーあ。…仲間だと思ってたのに』
    『…もう終わりだね。私達さ』

    「ユルギっ…!」
    夢を見た。あの日からずっと続く悪い夢を。どれだけいい夢を見ようとも、最後にはこの結末にたどり着く。
    「…だって…私…っ」
    視界が歪む。涙がぼろぼろと零れる。
    ユルギがそんな事を言うはずがない。そう言い聞かせても、涙は止まってくれない。
    だって事実じゃないか。私はユルギを助けられなかった上に、不知火カヤに手を貸したんだ。ユルギが一番嫌いなことをしたんだ。
    …私は正義に背いた。待ち続けてるユルギを裏切ったんだ。
    「…ユキノちゃん?起きてる?」
    「……ニコ…」
    ドアの向こうで、ニコが声を掛けてきた。
    止めなきゃ、止めなきゃ…泣いちゃだめだ…
    「…取り込み中みたいだし、もうここから言っちゃうね」
    …察してくれたようだ。情けないな、私は…
    「…防衛室長から起爆命令が出たよ。6時間後に発破するって」

  • 104落名ユルギ25/02/04(火) 08:00:57

    「…あ、電話…」
    机の上に置いてある私のスマホが振動しました。
    「…私が取るね」
    カンナさんに抱きしめられている都合で手が伸びないので、フブキさんに取ってもらいました。
    「はい、フブキだよ…ユルギ先輩?今ちょっと取り込み中だから…」
    フブキさんは横目でこちらを見ながら、電話口で誰かと話しています。
    「…うん、うん…りょーかい。今言うから待って」
    そう言うと、フブキさんは私たちの方に向き直りました。
    「誰からですか?」
    横からキリノさんが聞きます。
    「…出番だよ、ユルギ先輩。先生から、力を貸してほしいって」
    来ましたね。私を頼るということは、RABBIT小隊の面々もそこに居るのでしょう。
    「…行くか」
    「行きましょう、カンナさん」
    「…あの、私にも、できることはありますか!!」
    キリノさんが聞いてきました。
    「…でも」
    「今の話を聞かせといてお預けは酷いよ、先輩」
    フブキさんも、キリノさんに同調しました。
    「…ありがとうございます。…頼りにしてます」
    「はいっ!本官にお任せください!」
    「あんまり頼られると潰れちゃうけどね」
    …もらってばっかりだなぁ、私。居場所も、仲間も。この温かさは絶対、ユキノたちにも分けなきゃ。後でちゃんと返さなきゃ。
    店員さんにお勘定を頼んで、一万円のお札をカウンターに置きました。
    「ご馳走様でした。お釣りは結構です」
    そう言ってから、公安局の上着を羽織り、耳に赤いヘッドセットをつけて、店を後にしました。

  • 105二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 17:09:51

    公安局の上着、なかなかに似合ってそう

  • 106落名ユルギ25/02/04(火) 22:15:09

    “…お、来た”
    あの後、子ウサギ公園に急行し、先生たちと合流しました。RABBIT小隊以外にも、ヴァルキューレの警備局員が出張ってきています。
    「落名ユルギ現着しました。状況は?」
    「私から説明します」
    ミヤコさんが説明を始めました。
    「…1時間前、クロノススクールの局員から情報のリークがありました。内容は、子ウサギ駅においてサーモバリック爆薬を運用するとのことでした」
    サーモバリック爆薬。このキヴォトス全体で違法扱いされている、強力な爆薬です。量にもよりますが、街の一区画を吹っ飛ばせる威力を有しています。
    …まさか、以前FOX小隊が回収したやつでしょうか。
    「…起爆するのは約5時間後。子ウサギ駅の地下施設に爆薬はあります。それを解除しに向かうのが、私たちの任務です」
    「防衛部隊の数と配置はどんな感じかわかりますか?」
    そう聞いた瞬間、ミヤコさんの表情が硬化しました。
    「…どうしました?」
    “…言ったほうが良いんじゃないかな。ユルギにも、覚悟を持つ時間がいるだろうし”
    「…わかりました」
    そう言うと、ミヤコさんは意を決して、私に言いました。
    「…防衛部隊はカイザーPMCと…FOX小隊です」
    …覚悟はしていました。防衛室に与したということは、空が赤くなった日から何となく分かっていました。
    しかし、いざ事実として理解してしまうと、こうも辛いとは…
    「…そうですか。難敵ですね」
    「…辛ければ、今からでもこの作戦から降りていただいても――」
    「いえ、やります。これは私が関わらないといけないことですから」
    “…ありがとう、ユルギ”
    「ええ、お構いなく。そうだ、地下施設の図表とかあります?」

  • 107落名ユルギ25/02/05(水) 00:47:31

    「…検問だ」
    「立ち入り禁止区域になってるのは本当だったんですね…」
    現在、子ウサギ駅に向かって車で移動中です。戒厳令なんて知りません。
    「止まれ、ここは許可がなきゃ入れない。許可証はあるか?」
    検問を警備中のカイザーPMCの兵士に車が止められました。許可証がいるようですね。
    「…だってよ、ユルギ。見せてやってくれ」
    「…了解。皆さん、作戦通りに。第2小隊は先生の警護を」
    『了解ですっ!!』
    『りょーかい、ユルギ先輩』
    「…待て。ユルギってまさか、狐どもの…!」
    「ほら、許可証です」
    そう言って、ホルスターからハンドガンを取り出して、オートマタの頭部を撃ち抜きました。車を挟んで反対側にいた兵士はミユさんが排除。
    「ひゅーっ、かっこいい」
    「褒めても何も出ませんよ、モエさん。先を急ぎましょう。カンナさん、出してください」
    「ああ。行くぞ…!」
    待ってろユキノ。地下から引っ張り出してやる。

  • 108落名ユルギ25/02/05(水) 08:04:15

    「…敵さん、気づいたみたいだな…」
    「もう車は無理だね」
    前方から、ぞろぞろとカイザーPMCの兵士が出てきました。交戦開始ですね。
    「そこの車に乗ってる奴!!直ちに武装解除して投降しろ!!」
    「…カンナさん、頭下げて。ミユさん」
    「…RABBIT4了解」
    そう言うと、ミユさんは銃を構え、相手に向けて発砲しました。同時に全員が車から降車。
    「クソっ!あいつら本当に撃ってきやがった!」
    「反撃だ!各員反撃しろ!!」
    「させないぞ…!」
    サキさんがバズーカを射撃。敵の群れが一気に吹っ飛びました。外なら爆薬は関係ありませんから、好き放題撃てます。
    「クリア!」
    “サキはユルギに、ミヤコはカンナに着いて!一気に駅構内を制圧するよ!!”
    「RABBIT1了解」
    「2了解!!」
    カンナさんの制圧射撃に呼応し、ミヤコさんのドローン。敵防衛線のど真ん中で起爆して、前線に穴を開けました。そこに、サキさんと私の弾幕が敵を襲います。
    ロータリーを突っ切って、駅構内へ突入。別口から入ってきたヴァルキューレの生徒たちと連携し、十字砲火の形で敵を撃破。
    「クリアだ。…ユルギ、残弾は?」
    「ちょっと撃ちすぎました。あと50発少々、激ヤバです」
    敵の数も多かったものですから、少々撃ちすぎました。これからユキノたちと戦うには、少し足りません。
    「なら手土産だ。持ってけ」
    「…これは?」
    「ショットガン、副局長からだ。室内戦なら多大な効果を発揮する」
    コノカさんからの贈り物。ヴァルキューレで正式採用されているショットガンに、少し赤色が差し込まれています。
    「お前専用だとさ」
    私専用。じゃあこの赤色は、FOX小隊のテーマカラーでしょうか。
    「…大事にします。あとでお礼言わないと」
    「ほんとだな…お前は先生とSRTを率いて地下に行け。地上は私たちでやる」
    「…了解。お願いします」
    「ああ。グッドラック」

  • 109二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 14:37:50

    保守

  • 110落名ユルギ25/02/05(水) 19:43:31

    「…来たわよ。準備して」
    『こっちはもう準備できてるよ。いつでも撃てる』
    「…ユキノちゃん、大丈夫?」
    「…平気だ」

    「…まさか、地下にこんなものを作ってたなんてね…」
    図表で見たときから何となく察しはついていましたが、これは軍事施設のようですね。遥か下まで施設が続いています。
    “作戦通り、ここからは爆発物の使用は禁止。爆薬の場所を把握次第、回収して引き揚げだ”
    「…モエさん、露骨にふてくされないでくださいよ」
    「むぅーっ…」
    割とマジで誘爆とかしたらみんな終わりです。ほんと頼みますよ…
    「…ラペリングの用意を。降下します」
    「…行きましょう、落名先輩…」
    「はい。行きましょう、ミユさん」
    ラペリングロープを柱にくくりつけ、たるみや緩みがないか確認する。
    …今から、ユキノたちと戦うんだな…
    「…ロープよし。降下」
    地面から足を離すと、ロープはゆっくりと下へ降り始めました。このまま何事もなく降りれたら良いのですが…
    「皆が守りについてるなら…ここで来る」
    ずどん。
    嫌な予感がして身を捩った瞬間、さっきまで私がいた場所に風穴が空きました。12.7mm弾、対物ライフルの弾痕です。
    「オトギか…!」

  • 111落名ユルギ25/02/05(水) 23:30:45

    このままだと、私の後から降下を始めているRABBIT小隊もやられてしまう…!
    「各員、今一番近い階へ退避!!別ルートで下へ向かってください!!」
    そう叫ぶと、RABBIT小隊の全員が素早く退避しました。これで全滅は避けられる…!
    その時。もう一発銃声が響いて、私のロープに命中。
    「当てた…!?流石…!」
    もはやここまで来ると称賛のほうが先に来ます。
    私を支えていたものがなくなり、私の体は自由落下を始めました。
    「せめて足から…!」
    そんな事を考えた刹那、地面と私の足が激突しました。かろうじて五点着地ができましたが、落下の衝撃で激痛が走っています。
    「いっ……たぁああ……」
    足、折れてますかね。なんかちょっと感覚が飛んでます。足ついてますよね…?
    幸い、武器はなくしていません。残弾わずかのSMGと、コノカさんがくれたSG。一応、抵抗はできます。
    「…見つけた」
    その時。頭の上から、聞き慣れた声が聞こえました。
    黄色の髪。狐耳。盾とSMG、セーラー服。
    その後ろに、桃色。SG、大きな狐耳。
    「…クルミ。で、後ろが…ニコ」
    「待ってたわよ…本当に待ってた」
    「…できればこんな形で会いたくなかったね、ユルギちゃん」
    FOX2と3。ポイントマンとして共に戦った仲間が、敵として立ちはだかっていました。

  • 112二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 07:46:29

    負傷してしまったか
    そしてかつての戦友との対面か

  • 113落名ユルギ25/02/06(木) 08:01:32

    「…なんでこんなことしちゃうかな、ユキノは」
    目の前の青髪、かつての戦友であるユルギちゃんはそうぼやいた。
    「SRT再建の為だって言ってるけど…本音は分からない」
    「…そっか。なら、直接聞きに行くしかないね」
    「…ダメよ。ここは通さない」
    私達を通り過ぎようとしたユルギちゃんを、クルミちゃんが遮る。
    「…やっぱり、ダメ?」
    「…私達には任務があるの。そして、私たちは任された任務を放棄したりしないの」
    用意周到、動脈硬化。誰が言い出したか分からない、SRTを言い表した一言。今ならその意図が分かる気がする。
    ――ユルギちゃんの味方になれたら、どれだけ良かったか。
    「…そっか。なら――」
    赤いSGが、私たちの方を向く。
    「――勝負だ」

  • 114二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 17:10:59

    精鋭対精鋭どうなるか

  • 115落名ユルギ25/02/06(木) 21:58:31

    刹那。SGが火を吹いて、クルミちゃんに散弾の雨が降った。それを盾でガードして反撃。ユルギちゃんはさっとコンテナの影に入った。
    「FOX3は左から」
    「右行くね」
    両側から挟み込むように、制圧射撃をしつつ前進。
    が、しかし。制圧射撃の僅かな隙間を縫って、ユルギちゃんがクイックピーク。足に散弾が直撃し、体制を崩す。
    ユルギちゃんはこの機を逃すまいと、私の方へ飛び出してくる。そこへ、回り込んだクルミちゃんの射撃――
    「…やっぱり後ろだよね」
    ―を、ユルギちゃんは読んでいた。直後、SMGの雨がクルミちゃんを、散弾が私を襲った。これを予期してSMGを逆手持ちしていたのだ。
    「っく…!」
    堪らずクルミちゃんが後退。私も距離を取って、クルミちゃんと同じ遮蔽へ。
    「FOX4!」
    『見えてるよ』
    直後。ずどん、と大きな銃声が響いて、ユルギちゃんに直撃。頭から外れた赤いヘッドセットが、かーん、と音を立てて地面に落ちた。
    『頭に入ったでしょ、これは』
    「…いや、まだ立ってくる!」
    対物ライフルを食らって尚立ってくるなんて…!

  • 116落名ユルギ25/02/06(木) 21:58:52

    こちらに走り寄ってくる足音。ユルギちゃんならこの時――
    「…そこ!!」
    まるで空を飛ぶように飛び出してきたユルギちゃんにSGを射撃。全弾命中。ユルギちゃんは地面に叩きつけられた。
    「確殺する!」
    「まだ…!」
    ユルギちゃんがSGを乱射。とどめを差そうとしていたクルミちゃんは防御が一歩遅れ、蜂の巣にされた。そのユルギちゃんに、SGの弾が切れるまで撃ち続けた。それでも、彼女は向かってくる。
    「いい加減…倒れてよ!!」
    「まだまだ…私は…落名ユルギだ!!」
    右ストレートをもろに顔面で受けて、頭が揺れる。しかし私も負けじとこちらも応戦。
    『…位置替え終了。いつでもいいよ』
    ここでオトギちゃんから、援護射撃の打診。
    「私ごと撃って!!」
    『…FOX4了解』
    これなら、止められる。ユルギちゃんを抱きしめて、両腕でがっちりロックする。
    「…ごめんね。我慢して」
    「…そっちこそ、痛みに耐えなよ」
    …私が?確かに、巻き添えは喰らうけど――
    刹那。銃声が聞こえた。でもそれは私達の方へ飛んでこなかった。
    「…何が、起こったの…?」
    「…やり遂げたよ。後輩が」
    どん。もう一発、同じ銃声。瞬間、頭に衝撃が走った。ユルギちゃんの身体から手が離れた時、撃たれたのだと気づいた。
    『あ…落名先輩、命中です…』
    無線機から聞こえた声は、間違いなく後輩スナイパーの声だった。

  • 117二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 07:40:41

    ラビットの加勢か

  • 118二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 17:07:54

    これで数の不利は補えそう

  • 119落名ユルギ25/02/07(金) 20:38:52

    「FOX1から2へ、状況を報告しろ…1から2、どうなってる」
    …応答がない。まさか、全員ユルギにやられて…?
    「…ただいま」
    「FOX3…?通路の封鎖は…?」
    「…やられたよ。私としたことが、ユルギに夢中になっちゃうなんて」
    「ニコと、クルミは?」
    「非常用通路を通ってこっちに後退してる。隔壁も爆薬でもっていかれた」
    …ユルギの力を舐めていたわけじゃない。むしろ警戒していたからこそ、ニコとクルミを出して、オトギの援護まで付けた。それを食い破ってきたのか。
    「…戻ったよ」
    「痛ったぁ…元仲間にも容赦ないわね…」
    ニコとクルミも後退してきた。2人とも傷だらけだ。
    「…よく頑張ってくれた。ここからは私がやる」
    「ねぇ、ユキノちゃん。もうやめよう」
    突然、ニコがそんな事を言う。
    「…やめる?何を…?」
    「戦うことを。…こんなの、辛いよ」
    「…だとして、やめて何になるんだ。私達には何も残らないぞ」
    「ユキノちゃんだって、辛そうな顔してる」
    …そんなに表情に出てたか。私だって辛いさ。ユルギを救ってやれなかったどころか、彼女に銃を向けなければならないのだから。
    「…辛くてもやり遂げなきゃいけないんだ。私は…SRTを、再建、する為に…っ」
    そうだ。ここまでやっておいて、止まってはいけない。歩みを止めてはいけない。止まってしまったら私は…
    「こんなことしたってSRTは再建できないって、本当はユキノちゃんだってわかってるんでしょ!?」
    「――私だってこんなことしたくない!!」
    不意に、口を突いてしまった言葉。一度堰を切ってしまえば、その濁流は止まらない。
    「私だってこんなこと…こんなこと!!…でも、やらなきゃ…やらなきゃユルギが殺されるって、言われて…私は、私は…!!」
    「…ユキノ」
    扉の方から、私を呼ぶ声がした。ひどく優しくて、懐かしい声色。
    「…ゆる、ぎ…?」
    「…来たよ。…差し支えなかったら、今の話聞かせてほしいな」

  • 120落名ユルギ25/02/08(土) 00:26:56

    …交戦も辞さない構えで来たのに、こんな様子じゃ戦う気にもなりませんね。ゆっくり腰を据えて、小隊長の話を聞きましょう。
    「…来たよ。…差し支えなかったら、今の話聞かせてほしいな」
    できるだけゆっくりと、優しく仲間へと問いかけます。
    「…話すことなんか、ない」
    「嘘だ。あれだけ、本音をぶちまけた後なのに」
    「話すことはないんだ…!」
    そう言うと、ユキノはハンドガンを構えて後退りし始めました。それを、ゆっくり歩いて追いかけます。
    「…ユキノ」
    「来るな…話すことなんか無いんだよ…!」
    「吐き出したほうが楽だよ。話してほしい」
    「来るなったら…!!」
    …多分、ユキノは私を撃たない。何故か、そう思えたんです。
    その時。ユキノは目から大粒の涙を零し始めました。
    …あと、一押し。
    「ユキノ。私は…」
    「来るな来るな来るな!!来ないでくれ!!」
    「嫌だ。ユキノ、1人になろうとしないでよ。私を頼ってよ」
    「…くるな…!そんな――」
    ユキノの背中が、壁にぶつかりました。
    「――そんなやさしい目で、私を、みるな…!!」
    その瞬間、私はユキノを抱きしめました。優しく、強く。胸元に抱きしめました。
    「…ぁ、ぁ」
    「ユキノ。私はユキノの仲間だよ。…帰ってこれたよ、私」

  • 121落名ユルギ25/02/08(土) 09:10:01

    「あぁ…ユルギ、ユルギ…!ごめん…助けられなくて…裏切ってごめんなさい…!!」
    ユキノの感情が決壊しました。ユキノの性格上、今まで誰にも言えずに溜め込んでいたのでしょう。
    「逆らえなかったんだ…言うこと聞かなきゃ、お前のヘイローを破壊するって…そんなの嫌で、私は、私は…!」
    …そんなに、私を大切にしてくれていたんですね。自分の尊厳と意志を投げうってでも、私を助けようとしてくれたんですね。
    「交換条件で、私は防衛室と…不知火カヤと交渉してしまった…カヤの下につく代わり、お前の場所を教えてくれるって…」
    涙ながらに、彼女は語ります。
    「場所を聞いて、すぐ助けに行った…でも、もうお前は居なくて…!もうどうしたらいいかわかんなくなって…っ!!」
    …不知火カヤの下につく。それはつまり、クーデターを実行するための道具になる、ということ。
    さぞ辛かったでしょう。葛藤したでしょう。それでも尚、あなたは私を選んでくれたんですね。誰よりも正義に殉じたあなたが、私を。
    「…私は悪党に成り下がったんだ。結成した時、お前たちと正義を貫くと約束したのに…」
    「それは違うよ、ユキノ」
    考えるよりも先に、言葉が飛び出しました。…そうです。ユキノは――
    「…ユキノは悪党なんかじゃない。無論、皆も悪党じゃない」
    「…でも、私は、守るべきものに銃を向けたんだ…」
    「…私を懸命に助けようとしてくれた人を、私は悪党だなんて言いたくない」
    …誰かのために自分を捨てられる人を、どうして悪だと切り捨てられようか。
    「…それでも、結果的に私は…お前を…」
    「…さっきも言ったでしょ。私は帰ってきたんだ」
    「…あ」
    帰ってこれたよ。私、ちゃんと。
    「…ユキノ。お願いがあるんだ」
    「…なんだ」
    「私は不知火政権を打倒しに行く。それに手を貸してほしい」
    ユキノが、私の胸から顔を離しました。涙でぐしゃぐしゃになった顔には、驚きの表情が浮かんでいます。
    「…本気か…?」
    「本気だよ。私や小隊…それにユキノまでこんな目に合わせといてお咎めなしってのは、後味悪いでしょ」

  • 122落名ユルギ25/02/08(土) 10:19:15

    「…できっこない。あれの戦力は多すぎるんだ。とてもわたしたちじゃ…」
    「…やってみても良いんじゃない?」
    不意に、オトギがそう言いました。
    「…私、嫌だよ。このまま終わるなんて。どうせ最後になるなら、私は正しいと思える方に進みたい」
    「…私も。こんなふうに飼い殺されて終わるなんて嫌」
    クルミも、オトギに同調しました。
    「ニコは、どうするの?」
    そう聞くと、ニコは柔らかく微笑んで言いました。
    「…私は、死ぬまでユキノちゃんについていくって決めたから。どんな選択をしようと、私はユキノちゃんの近くにいるよ」
    …もう、覚悟は決まっているようです。
    「…行こう。このまま、正義を諦めて終わりたくない」
    「…ありがとう。ユキノ」
    ユキノもついてきてくれるようです。これで、FOX小隊再結成ですね。
    「…ユルギ」
    「なに?」
    「…おかえり」
    「…うん。ただいま」
    さて。私たちを化かしたあの糸目を始末しに行きましょう。

    「…出てくる」
    「撃たないでください…」
    中から、5つの人影。
    「…ユルギ先輩」
    「…行きましょう。不知火政権を倒します。…先生も、ご協力お願いします」
    “…任せて。やり遂げよう”
    …久しぶりの、先輩方との共闘。やってやりましょうか。

  • 123二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 18:52:15

    FOX小隊の再結成からの先生との合流
    これほど頼もしいチームはそうそうないな

  • 124落名ユルギ25/02/08(土) 21:28:41

    『子ウサギ駅の防衛線が突破されました!』
    「たかだか2個小隊でしょう…?なぜそれすら止められないのですか!!」
    『それが、奴らRABBIT小隊とFOX小隊の合同部隊で…!』
    「…ま、まさか…落名ユルギが…?」
    しくじった…あの時、記憶喪失だからといってヴァルキューレで飼わずに、しっかり始末しておけば…!
    「…なんとしても止めるのです。止めなければ――」
    『…不知火カヤ代行』
    唐突に、ジェネラルが無線に割り込んでくる。この忙しい時に…!
    「なんです!?今攻撃を受けていて――」
    『残念だが、私たちはこの戦いから身を引かせてもらうよ』
    「…は?」
    カイザーPMCが、この戦いから身を引く。それはつまり、私の手持ちの戦力を全て失うことになる。そうすれば私は…終わりだ。
    「お金を払っているのですよ…?」
    契約に則って戦うのなら、払った金の分、最後まで戦えよ…!
    「そんな身勝手は――」
    その時。がちゃり、と執務室の扉が開いて誰かが入ってきた。
    「…誰です!?」
    「私ですよ、『防衛室長』」
    青い髪。公安局の上着。
    …本当に、あの時、始末しておけば…
    「…落名ユルギ」

  • 125落名ユルギ25/02/08(土) 21:28:59

    「喋るな。次何かしたら殺す」
    …まだ、私は…こんな所で終わるわけにはいかない。私は超人として、このキヴォトスを統べる義務がある。それを邪魔するなど――
    「…っ!」
    ハンドガンを抜く。それを落名ユルギに向けて発砲―
    ―できなかった。それよりも早く、彼女のハンドガンが火を吹いて、私の手に命中。銃を落としてしまい、床に倒れてしまった。
    「ぐ…!まだ…こんなところで…!」
    落とした銃に手を伸ばす。それを掴んだところで、足で銃ごと手を踏みつけられる。
    「…この…!この私に歯向かうのですか…!!誰のお陰でSRTが大きくなったと…!」
    「自分で蒔いた種でしょう。こんな事をしなければ、重役でいられたでしょうに」
    「たかが防衛室に飼われていただけの分際で…!」
    「その飼われていた者に手を噛まれるとは。どちらが飼い主か分かりませんね」
    「貴様…!後悔させてやる!!今度こそ、あの世送りに――」
    「今度なんかないです」
    右の拳が振り上げられ、私の顔面を穿った。
    ああ。ほんとうに、あの時始末しておけば…

  • 126落名ユルギ25/02/08(土) 23:27:18

    「…本当に、矯正局へ行くの?」
    「…ああ。いくらお前が許してくれても、世間様は許してくれないからな」
    …ほんと、真面目ですね。呆れるくらい真面目です。
    「…淋しくなるね」
    「じゃあ、毎日会いに来てよ。ユルギが」
    「毎日は無理だよオトギ。仕事あるし。…できればそうしたいけど」
    できることなら毎日会いたいです。毎日、話がしたい。
    「…そうだ、ユルギ。お前に渡さなきゃいけないものがあったんだ」
    ユキノから、私に?何でしょうか。
    「…あ、これ…!」
    「SRT学園の修了証書。解散式の時、お前の分も預かってたんだ」

  • 127落名ユルギ25/02/08(土) 23:27:48

    修了証書。私の出席できなかった、解散式でもらったもの。もうかなり時間が経っているはずなのに、まるで新品のような状態です。大切にしてくれてたんだ。
    「…落名ユルギ。貴官のSRT学園、全課程の修了を証明する。以降の貴官のさらなる活躍を期待する。以上。…ささやかだが、解散式の代わりだ。受け取ってくれ」
    …SRTとしての活動終了を告げる言葉。解散式で聞きたかった言葉。
    それでも。今、仲間に、後輩に囲まれて、証書を授与されている。やっと、私も皆と同じように、新しい人生を歩み始めるのでしょう。
    「…ありがとう、ユキノ。…またね」
    「…元気でやれよ」
    そう言って、皆は護送車に乗り込み、矯正局へ向かって出発しました。私はその護送車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けました。
    「…行ってしまったな」
    「…そうですね」
    カンナさんが、後ろから声をかけてきました。
    「…先生に頼めば、シャーレ預かりにしてもらえたんじゃないか?」
    「良いんですよ。ユキノが望んだことですから」
    「…そうか」
    ですが、少し寂しいですね。仲間との別れというものは、こうも辛いんですね。
    「…しばらくは私で我慢しろ」
    「…お気遣いどうも」
    「気にするな…帰るぞ。皆が待ってる」
    一連の騒動で、私は色んなものを失いました。ですが、それよりも多くのものをもらいました。後輩も、温かさも、帰る場所だって。私はこれから、このもらったものを返さなければなりません。
    このキヴォトスの秩序という形として、全ての市民の皆さんに分け与える。それが、これからの落名ユルギの仕事となるでしょう。

    終わりです。
    落としちゃったり長々続いてグダグダしましたが、保守していただきありがとうございました。

  • 128二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 00:55:44

    とても良かった。ユルギちゃんの仕事人間っぷりが素晴らしい。

    証書受け取れて良かったね……

  • 129落名ユルギ25/02/09(日) 01:26:20

    >>128

    ありがとうございます。

    仕事一筋、仲間思い。それが落名ユルギという女です。

  • 130二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:40:03

    大変良かった
    色々渋い引用があって見入っちゃったよ

  • 131二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 11:02:59

    素晴らしいSSだった
    ロマンある展開や引き込まれる描写など大好物の作品でした

  • 132二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 19:58:22

    お疲れさまでした。
    とても素晴らしい作品でした。

  • 133落名ユルギ25/02/09(日) 21:49:56

    >>130

    ありがとうございます!渋い台詞考えられる人って凄いですよね…!

    >>131

    気に入ってもらえて何よりです!

    >>132

    ありがとうございます!

  • 134二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 23:42:05

    お疲れ様~仕事の関係で深夜しか見れなくてごめんね

  • 135二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 01:27:46

    なんかこう、獄中(?)のFOX4人……というかユキノとユルギ、文通とかするんだろうね。電話はできないだろうし。
    本文中でも言ってたけど、やっぱり毎日は会えないからさ。

  • 136二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 09:53:24

    Rabbitによる尋問の時、胸がキュッとなったけど防衛反応の効果もあってか無事に仲直りできそうでよかった

  • 137二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 18:45:30

    このレスは削除されています

  • 138二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 18:50:47

    完結お疲れ様でした!!

  • 139落名ユルギ25/02/10(月) 21:22:07

    >>134

    ありがとうございます!お仕事お疲れ様です!

    >>135

    きっと頻繁にやり取りするでしょうね。手紙が届いて嬉しそうにする2人がありありと浮かんできます。

    >>136

    昔より仲良くなると思います。

    >>138

    ありがとうございます!

  • 140二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 06:21:21

    体調不良で読めてなかったけど回復して追いつくことができた
    作者様へ、SSありがとうございました
    ユルギ先輩、FOXのみんなと再会できて良かったぁ
    カンナ局長、コノカ副局長、ソラちゃんなど他のメンバーの覚悟や心意気も見ることでできて非常に素晴らしかったです
    そして救出されるまでSRT生としての意志を貫き通した落名ユルギ、殉職するまで意志を貫き通した仲間の方に敬礼!!!
    殉職なされてしまった仲間の方のお墓にユルギ先輩や元SRT生の皆がお墓参りしたり修了証書届けに行ったりしたのかな?
    作者様、ユルギ先輩達に幸多からんことを

  • 141二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 15:13:00

    確かに仲間の生徒さんヘイロー砕かれてしまっていたのか
    いつかFOX全員でお墓参りに行けることを祈る

  • 142落名ユルギ25/02/11(火) 18:51:43
  • 143二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 01:01:53

    キタ―――(゚∀゚)――――!!

  • 144二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 09:59:04

    >>142

    リンドウの花の花言葉は誠実、正義、寂しい愛情、あなたの悲しみに寄り添う

    最後までSRTとして貫いた彼女とユルギからの供える花として相応しい花だ

  • 145二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 18:31:11

    >>142

    仲間の子、小隊以外の子で初めての友だちだったんだ

    そして誰よりも健気な子だったんだな、いつかFOX達が出所して無事にお墓参りと修了証書を渡せますように

    彼女が安らかに眠れますように

  • 146落名ユルギ25/02/12(水) 21:28:49

    >>144

    お気づきになられましたか…!

    >>145

    きっとユルギのことを見守ってくれるでしょうね。

オススメ

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