- 1二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:07:52
花屋は表情豊かなお店だ。
店を営む人によって花の並べ方や種類も異なる。
季節や地域、大げさに言ってしまえば同じ店舗でも日によって表情が変わる。
だからこそ花屋は面白い……らしい。
……まあ、フラワーからの受け売りだけど。
私としては目を輝かせて喜ぶフラワーが見れたらそれで十分だし。
で、今日は行きつけの花屋じゃなくて学園の裏手側にある花屋へ。
さてさて、このお花屋さんはフラワーをどうやって喜ばせてくれるかな。
……おやぁ?なにやら見知った顔が……
「っ!?なんでアンタらが……!」
タイシン先輩だ。
エプロン着けて花の手入れをしている。
「その、どちらかといえば私たちのほうが聞きたいのですが……」
フラワーが疑問を代弁してくれた。
先輩曰く、母親の知り合いがこの花屋を経営しており、時々手伝っているのだそうだ。
他言無用を念押しされつつ店内へと案内された。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:08:07
店内はきれいに装飾されており、素人目にも華やかに見えた。
無論フラワーは興奮しきりだった。
「これタイシン先輩がやったんですか!?」
「……ちょっと手伝っただけだよ」
頬を掻きながらぶっきらぼうに答える先輩にフラワーが花を指さしながら話し続ける。
……おやぁ?おやおやおやぁ?
なんかフラワーが普段より積極的なような……?
っていうか、タイシン先輩まで表情柔らかくなってない!?
いやいやいや落ち着けセイちゃん。
こう、自然に二人の会話に入っていけば……。
ダメだ、花の話全然わかんない……。
……やっぱり花の話ができる人と話すほうが楽しいのかな。
そりゃそうだよね、私はフラワーの話を聞いてばっかりだったし……。
落ち込んでいると、タイシン先輩が店の奥に引っ込んだ。
慌ててフラワーの隣を確保する。
やっぱりフラワーはどことなく上機嫌に見えた。
話しかけようにも頭の中はぐちゃぐちゃで。
私は作り笑いを貼り付けることしかできなかった。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:08:35
しばらくして先輩が奥から花を携えて出てきた。
紫色の大きな花びら。
たしかパンジー……だったかな。
「お待たせ、この色でいいの?」
「はい!ありがとうございます!」
満面の笑みを咲かせるフラワー。
その花が向いているのは私じゃなくてタイシン先輩なんだけど。
財布を取り出そうとするフラワーを先輩が止める。
「いいよ。そのくらいはアタシがおごるから」
またフラワーがにこりと笑って花を受け取った。
二人の間の取引に笑顔がぺりぺりとはがれ始める。
そしてフラワーの手に収まった紫色の花は。
そのまま私に手渡された。
なんで?どういうこと?
きょとんとしている私にフラワーが微笑む。
「私からの気持ちです、受け取ってください」
急に顔が熱くなる。
さっきまで嬉しそうに話していたのは私へのプレゼントを選んでいたからだった。
そんなことも知らないでタイシン先輩に嫉妬していたなんて。
私の内心を知ってか知らずか先輩が手招きをする。
先輩のそばへ歩み寄って、少しかがむ。
そして先輩が小さく耳打ちをした。
「──────」
さらに私の頬が熱くなる。
にやりと笑った先輩に背中を叩かれた。 - 4二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:09:05
そのまま店の外まで見送られ、寮への帰路に就く。
寮につくまでお互いに顔を赤くしたまま黙って歩いた。
途中にある学園の門に差し掛かった。
フラワーが足を止める。
「スカイさん、その花の花言葉って知ってますか?」
「……うん、さっきタイシン先輩に聞いた」
フラワーが少しだけ身体を強張らせる。
「だったら、その……」
次の言葉が発される前に。
私はフラワーのおでこにキスをした。
目を丸くしているフラワーに微笑みかける。
「……いまはこれがセイちゃんの精一杯、かな」
タイシン先輩の耳打ちがもう一度聞こえた気がした。
「紫のパンジーの花言葉は“あなたのことで頭がいっぱい”、だから」 - 5二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:09:32
パンジーには「門の所でキスをして」という花言葉もあるそうです
お目汚し失礼しました - 6二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:11:18
命が救われた
- 7二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:14:40
文面からいい匂いがする
- 8二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:16:58
世界の水が綺麗になった
- 9二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:17:07
- 10二次元好きの匿名さん21/09/12(日) 23:22:04
スレ主は文章による浄化でこの世を救うつもりか?