フラッシュと

  • 1カメノテ22/03/11(金) 23:17:09

    スポーツ用品を見に行った帰り、時刻は6時半を回った頃。
    ちょうど平日の帰宅ラッシュの時間と重なってしまい、電車の中はかなり混んでいた。
    「…予想はしてたが、すごい人だな…」
    「はい……」
    車内でなんとかスペースを見つけて立っていたが、この様子だと降りてもまだ人がたくさんいるかもしれない。
    「とりあえず降りる駅まで我慢するしかないか」
    「そうですね」
    そんな会話を交わし、ふと周りを見渡すと、ちらちらとフラッシュに視線が集まっていることに気づく。
    「・・・・」
    無理もない話ではあった。数々の格式高いレースで勝利をおさめ、今やフラッシュはG1ウマ娘の仲間入り。
    その容姿も相まって注目度は非常に高い。
    そんな有名人がいるのだから、視線が集まるのは自然なことではある…のだが。
    なんというか、嫌な感じがする。この閉じ切った空間の中で、彼女が男の視線に晒されているというのが少し気に食わない。
    …それに、先ほどから、大学生と思しき男たちの『よくない』会話も聞こえる。
    トレセンの最寄り駅までしばらく電車に揺られることを考えると、あまりいいとは言えない。
    「…フラッシュ、ちょっと…」
    「…え、あの、トレーナーさん?」
    戸惑う彼女の手を引き、無理のない範囲で位置を移動させる。

  • 2カメノテ22/03/11(金) 23:17:28

    「…………」
    フラッシュがあごのすぐ下で耳をたたんでうつむいている。
    あの後、フラッシュに電車のドアに背をつけさせ、その正面から俺が立つような体勢になった。
    これなら視線からシャットアウトできるし、これから人が乗ってきてさらに混んできてもフラッシュを安全な状態にできる。
    …しかし、予想以上の混雑具合を見せた車内では、これが限界で、後ろから押された結果壁ドンのような体勢から完全に密着した状態になっている。
    「…フラッシュ、きつくないか?」
    「いえ、大丈夫です……」
    とは言うものの、お互いの顔が至近距離にあるため、フラッシュは顔を赤くしている。
    「すみません……こんな状態で迷惑をかけてしまって……」
    「いや、いいんだ。俺がやりたくてやってることだから。」
    「……ありがとうございます……」
    恥ずかしさを押し殺しながらお礼を言うフラッシュだが、それでもやっぱり顔は赤いままだ。
    「…あの、あとどれぐらいでしょうか?」
    「あと7駅だな…しばらくこの体勢のままになると思うけど、もう少しだけ辛抱してくれよ。」
    「はい……。でも、本当にありがたいです。おかげで窮屈ではありませんし、何より、その、安心します……」
    「…そっか」
    ぎゅっと俺の腕を掴むフラッシュの手に力が込められる。
    そのまま、お互いに言葉を交わすことなく、ただ時間が流れる。
    「……あと7駅、かぁ…」
    そう呟いた彼女の意図には気づかないふりをして。少しだけ彼女を支える腕に力を入れて、夜空を横切る光の軌跡を見つめ続けた。

  • 3二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:18:16

    海鮮助かる
    カメノテって美味いんか?

  • 4カメノテ22/03/11(金) 23:20:29

    >>3

    出汁と身がうまいぞ

  • 5二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:21:08

    カメノテになってる…
    今日も素晴らしいSSだったぞ!!

  • 6二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:21:16

    >>3

    甲殻類みたいな味がするよ

  • 7二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:21:37

    >>4

    そうなのか

    海が無い故実物すら見た事無いのでな…

  • 8二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:22:20

    >>6

    だって甲殻類だもの…

  • 9二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:22:41

    空前の海産物トレフラSSブームいいぞ

  • 10カメノテ22/03/11(金) 23:23:52
  • 11二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:24:49

    蟹!海老!カメノテ!ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!

  • 12二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:25:13

    トレフラss書くと海産物になる謎のブーム

    お前も良いダシ出さないか?

  • 13二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:25:47

    >>11

    蛤もいるんだよなぁ

  • 14二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:26:57

    何故フラッシュなのにお菓子とかではなく海産物なのか

    そして一番縁がありそうなキャビアはいないのか

  • 15二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:27:52

    >>14

    最初が蟹だったからかな…

  • 16二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:28:05

    >>14

    お前がキャビアになるんだよ!

  • 17二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:28:27

    全部蟹のせいなんだ
    甲殻類だと海産物縛りになっていったから…

  • 18カメノテ22/03/11(金) 23:33:11
  • 19二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:35:41

    今日も甲殻類スープが美味しい

  • 20二次元好きの匿名さん22/03/11(金) 23:36:36

    >>18

    お前がカメノテだったのか

    毎秒投稿しろ

  • 21二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:38:30

    海鮮類は有能が多いなぁ

  • 22二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:40:05

    今明かされるカメノテの正体
    マジかよ!アンタ海産物だったのか…

  • 23二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:51:50

    ケチケチシゲコがよく島で食ってるな
    カニみたいな味で出汁もよく取れるとか

  • 24二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 00:53:05

    深夜だからの人だったのかカメノテ

  • 25海老22/03/12(土) 01:02:00

    ──間もなく、○○、○○です。 お出口は……右側です。

    右側。進んでいる方向を考えると……俺達が立っているのも、右側。
    なるほど、トチってしまったみたいだ。
    「トレーナーさん?」
    クスリと頭一つ下で柔らかく笑う彼女を見て、どうも気恥ずかしかったが……

    その直後、流れ込んだ人の波に。身体も気持ちも流されてしまった。
    ─────────────────────
    いくらラッシュの時間帯だとはいえ、まるで通勤ラッシュの様相を車内は呈していた。
    背中には、硬い壁の感覚がある。すっかり反対側まで流されてしまったようだ。
    ……フラッシュ、フラッシュはどこだろう……

    「とれーなー、さん……」
    なんて、いつものフラッシュの──冷静さだけを削ぎ落とした──声が聞こえてくる。変わらず、頭一つ下から。
    違うのは、彼女もまた……強く俺に押し付けられている、ということであった。
    くしゃり、と…彼女の緑髪が胸元でたわんでいた。その撓みが羨ましくなるほど、俺の精神は張り詰めてしまっていた。
    …………いけない、いけない。少し、楽しんでしまっていた。
    ウマ娘としてもそうだし、一学生として、そして、一指導者として……これでは、いけない。

    引き剥がそうと思った。その上で、また彼女の身を守るために包み込もうと、そう思った。
    しかし、彼女は離れなかった。ずっと、ずっと。
    ぴとりと、当てられた耳が…きっとこの痛いくらいに跳ねる心臓の音を聞いていることだろう。

    君の思う通りだよ、フラッシュ。 俺には君を拒む道理がないし、無理がそうさせるならまた無理を通して、君を受け入れてしまいたくなるんだ───
    そんな思いが心臓の鼓動によって、伝わっていった気がした。


    ……この電車の行く時も……存外早く過ぎるのかもしれない。
    数々の頭が浮かぶその下で、幸せそうに寄りかかる君の顔を見ていれば。

  • 26二次元好きの匿名さん22/03/12(土) 01:07:53

    寝る前に良いものを見れた…

オススメ

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