【クロス注意】幼馴染inNRC Part9

  • 1125/01/19(日) 20:39:52

    ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界


    【以下前提条件】

    >トリップ地点は入学式の棺桶の中

    >トリップしたのは最終決戦後の二人

    >個性はかっちゃんだけ使える(反動で心臓ダメージあり)

    >監督生はデク


    ※前スレ含めてこのスレの内容とSSは無断転載禁止です!

    スレ内でSSとかWriteningに書いてくれるのは歓迎です

  • 2125/01/19(日) 20:40:06

    前スレ

    【クロス注意】ここだけ|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>個性は dice1d3=@2 (2)@1. 二人とも使えない2. かっち…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染みinNRC|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染inNRC Part2|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染inNRC Part3|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染inNRC Part4|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    幼馴染inNRC Part5|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染みinNRC Part6|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染inNRC Part7|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
    【クロス注意】幼馴染inNRC Part8|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
  • 3125/01/19(日) 20:40:43
  • 4125/01/19(日) 20:40:55

    素敵な支援SS様

    ……ノーコメントで | Writeningパソスト風じゃなく普通のSSです。お目汚し失礼。 登場人物:出久+勝己+グリム+エース+デュース+ジャック+エペル+セベク ふわっと頭に浮かんだワンシーンを書きたいなと思ったらなんか長くなってしまいました…writening.net
    なんてことない普通の日 | WriteningパソストではなくSSです、ご注意を。 登場人物 トレイ・クローバー 尾白猿夫 砂藤力道(名前のみ) 個人的に尾白くんとトレイ先輩は仲良しであってほしいなぁと思う今日この頃。 アリアーブ・ナーリヤとかいっ…writening.net
    マスターシェフ〜地獄のニラ〜 | Writening登場人物:轟、リリア、砂藤、トレイ、エペル、デュース、エース、麗日、峰田、青山、学園長 ちょっと体調不良表現あるので苦手な方要注意、なんでも許せる人向け 「食」それは生命の礎。 清き海。強き山。優…writening.net
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    ドキッ!漢だらけの新メニュー決定戦〜飯テロもあるよ〜 | Writening登場人物:アズール、ジェイド、フロイド、ラギー、青山、飯田、上鳴、切島、瀬呂、砂藤(回想のみ) キャラエミュ間違いあったらスマソ、後半キャラ崩壊あるかも 何でも許せる人向け 「……皆さんが集まっていた…writening.net

    素敵な支援イラスト様は各スレにて!

  • 5125/01/19(日) 20:41:11

    現在好感度まとめ
    【出久→相手/相手→出久、 爆豪→相手/相手→爆豪】
    *グリム 91/97、 58/47 
    *エース 74/100、 32/88
    *デュース 100/100、 84/93
    *リドル 61/70、 57/94
    *ケイト 99/100、 85/87
    *トレイ 30/27、 60/40
    *レオナ 2/65、 36/16
    *ラギー 14/59、 72/21
    *ジャック 83/100、 52/91
    *アズール 72/93、 73/21
    *ジェイド 26/65、 21/43
    *フロイド 8/33、 28/69
    *カリム 50/79、 28/81
    *ジャミル 84/66、 47/62
    *マレウス 75/30、 -/-
    *クルーウェル 56/-、 13/-
    *トレイン 78/-、 36/-
    *バルガス 16/-、 6/

  • 6125/01/19(日) 20:42:23

    前回までのざっくりあらすじ

    ひょんなことからスカラビア寮で起きている寮長の乱心問題に巻き込まれた出久たち。
    快適なリゾートのようなスカラビア寮だが、空気はなんだかドロドロしていて大変な感じなのだった。

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:35:17

    たておつ〜

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:50:40

    おつ

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:51:07

    *

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:53:06

    10まで

  • 11125/01/19(日) 22:25:42

    「……みんな、集まってるか?」

    一日の特訓を全て終えたスカラビアの談話室にて、寮長のカリムを除いた全てのスカラビア生が一堂に会していた。出久たちオンボロ寮のメンメンもジャミルに呼ばれて参加している。

    ここにいないカリムはというと、ジャミルが安眠効果のあるハーブティーを飲ませた上で寝かしつけてきたらしい。

    皆の注目を浴びる中、談話室のラグに腰を下ろしたジャミルが口を開いた。


    「お前たちがカリムのやり方に不満があるのはわかってる。冬休みに寮生たちを寮に縛り付け、朝から晩まで過酷な特訓。不満をもたないヤツはいないだろう。俺もカリムのやり方が正しいとは思ってない」

    ジャミルの言葉に「それなら何故止めないです」と寮生が声を荒げた。それに対して、ジャミルは何度もカリムを止めたが聞く耳をもたなかったと弁明をした。


    「オマエら、そんなにブーブー言うなら、ジャミルじゃなくてカリムに直接文句言ってやればいいんだゾ」

    「それは……その……」

    眠くて不機嫌になり面倒くさくなっているグリムの正論に、寮生たちが言いよどむ。

    「なんだ、オマエら。ジャミルには言えてカリムには言えねぇのか?いくじがねぇヤツらなんだゾ」

    「ち、違う。俺たちだって言おうとしたさ、何度も」

    スカラビア寮長は口を揃えて語った。こんなことになる前は、カリムのことを寮長して本当に尊敬していたのだという。カリムは寮生たちの悩みに親身になって聞いてくれる、他のどの寮よりも素晴らしい寮長だと思っていた、と。


    「そう、カリムは本当にいい寮長だ。誰とでも分け隔てなく接し、偉ぶることもない。ああ、なんでこんなことになってしまったんだ……」

    ジャミルが嘆くように呟く。


    「カリムくんを慕う気持ちがあるからこそ、踏ん切りがつかないってことか……」

    「チッ……」


    *口を挟むのは dice1d2=2 (2)

    1. 出久

    2. 爆豪

  • 12125/01/19(日) 23:05:01

    「あのよー。カリムのヤツ、医者にでも見てもらったほうがいいんじゃねーか?言ってることがコロコロ変わるし、性格がまるで別人みてーになっちまうなんて、ちょっと変だろ?なんか悪いモンでも食っちまったんじゃねーのか?」
    「それはないだろう。あいつが口にするものは全て俺が毒見してる。もし毒の作用なら、俺も同じ状態になってるはずだ」
    グリムの疑問にジャミルが答える。医者にかからせる件については、アジーム家お抱えの医師がいる実家に連れ戻すのも今の状態では難しいだろう、とジャミルが付け足した。「そんなぁ」とスカラビア寮生が悲鳴のような声を上げる。

    「今のスカラビアが抱えている問題は、つい先日までハーツラビュルが抱えていたものと似ている。ハーツラビュルも、寮長の圧政に寮生たちが苦しめられていたとか……。そこで、ハーツラビュルの問題解決に活躍した君たちにアドバイスをもらいたい」
    俺たちはどうしたらいいと思う?とたずねて来るジャミルに、勝己の眉間の皺が深くなった。

    「言っておくが、他人任せの腰抜けども。あそこの問題を本当に解決したのは俺たちじゃねェぞ」
    勝己は額に青筋を浮かべながら口を開いた。

  • 13125/01/19(日) 23:07:31

    「ハイヒール野郎の圧政を終わらせたのはあそこの寮生どもだ。アイツに正面切って決闘挑んで、自分の感情全部言葉にして全部ぶつけた奴らがいたから、アイツは自分と向き合って変わろうって気になったんだ」

    エースとデュースは無謀だったが、誰もが恐れて抵抗できなかったリドルの理不尽に自論でもって真っ向から抵抗した。一線を超えた発言をしたリドルをエースは憎まれ口紛れだったが真っすぐな言葉で叱りつけた。トレイは自分の甘さと向き合った上でリドルを諭した。ケイトも逃げずにリドルと向き合って、和解の場を見守っていた。
    ハーツラビュルの問題を真に解決したのは彼らの努力だ。隣の出久も勝己の言葉に頷く。

    「確かに僕たちはリドル君がオーバーブロットした時に最前線で戦ったし、言葉もかけたけど、それだけだよ。もちろん僕は君たちの力になりたいと思うけど、戦ってどうにかできる問題じゃないし、同じ寮生である君たちの協力は不可欠だと思うんだ」
    「テメェらは誰か一人でもターバン野郎に向きあおうとしたンかよ。アイツに決闘でも挑んで、本気で状況変えようとしたンか?」
    「そういや、ハーツラビュルのときは決闘騒ぎだったな。カリムはリドルと違ってユニーク魔法も大したことねーし、楽勝な気がするんだゾ!」

    決闘によって、ジャミルが寮長の座に取って代わる。勝己の言葉に、寮生たちが期待の眼差しをジャミルに向けた。ジャミルは首を横に振り拒絶の意を示す。その表情は固く険しい。

    「――それだけは、絶対に出来ない」

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 09:50:11

    さてどうなることやら

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 19:00:21

    ほしゅ

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 00:03:17

    雄英とNRC合同で飛行術やってほしいなって思って描きました

    ・曲がれない男と起きられない男

    ・ズルはダメ

    ・過去とタコは韻を踏める

    ・思春期リドル

    の4本です

    画像シェア画像がシェアされましたf.yourl.jp

    一部模写あり、アナログなので見づらいかも

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 06:35:36

    >>16

    タコダンス草

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 17:16:03

  • 19125/01/21(火) 19:24:59

    >>16

    めっちゃ愉快な飛行術ですね!

    一枚目が特に好きです口田くんの表情がとにかくキャワイイ

    あとジェイド情けなくて草

  • 20125/01/21(火) 20:23:01

    「アァ?」

    「アドバイス求めといて、即却下するんじゃねーんだゾ!」

    「えっと……、理由を聞いてもいいかな、ジャミルくん」

    気まずく固まった空気の中で出久が問いかけると、ジャミルはなんども読み上げた原稿を諳んじるかのように淀みなく答えた。


    「俺の一族・バイパー家は先祖代々アジーム家に仕えている。家臣が主人に刃を向けるなんて許されるわけないだろう?それに、俺がそんなことをしたとカリムの父親が知れば、バイパー家の処分は免れない」


    悪いが俺の身勝手で家族全員を路頭に迷わせるわけにはいかないんだ、とジャミルは締めくくった。

    一般家庭育ちの出久と勝己には想像しがたいほど、ジャミルとカリムの間にはしがらみが多いようだ。


    *アイデアロール

    出久(65以下で成功) dice1d100=25 (25)

    爆豪(38以下で成功) dice1d100=80 (80)

  • 21125/01/21(火) 20:42:51

    「アジーム家の人がいないこの学園でも、ジャミルくんがそこまでの責任を負わないといけないの……?僕はアジーム家の人たちのことは何も知らないけど、少なくともカリムくんは話せば分かってくれるんじゃないかな」

    様子がおかしいときのカリムはともかく、朗らかないつも通りのカリムはとにかくジャミルに全幅の信頼と好意を寄せているのは明らかだった。
    出久から見て、カリムからジャミルへの感情は、いち従者に向けるものとは違う気がした。「従えている」というよりも、ただ「頼りにしている」ように見えるのだ。例えるなら、大好きな親友や、気の置けない兄貴分のように。
    そもそもカリムの人柄は厳格とは程遠く、むしろ大雑把だ。ジャミルが決闘を仕掛けたところで、大事にするとは思えなかった。

    出久の問いかけに、しかしジャミルは首を横に振った。
    「……どこからアジーム家に情報が漏れるか分からない。俺はそんなリスクを冒せないよ」

    そして、話は振り出しに戻る。
    カリムを尊敬していたが、今の支離滅裂なカリムには従えない。強制的にカリムを退けるための決闘という手段は取れない。どんづまりの空気のなか、スカラビア生たちの議論が紛糾する。

    「今のカリム寮長は、寮長の条件を満たしてない!スカラビアの精神に反しています!」
    誰かの声がひと際大きく談話室に響いた。
    スカラビア寮の掲げる精神は“熟慮”。論理的な根拠のない朝令暮改を繰り返し、寮生を振り回すばかりの今のカリムでは、到底その精神を満たさない。

    スカラビア生の間で飛び交う会話を拾った限り、カリムがスカラビアの寮長に就任したのは前寮長の指名であったらしい。
    「――それも、ジャミル先輩の助力あってのものじゃないですか!寮生はみんな知ってますよ!」
    「なんで前寮長はジャミル先輩を選ばなかったんだ!?」
    「前寮長を責めるな。アジーム家の親戚筋の人間が本家の跡取りを差し置いて俺を選べるわけが…………あっ!」

    ヒートアップする議論の中、寮生に詰め寄られたジャミルが口を滑らせた。
    しん、と空気が静まりかえり、その一瞬の後に怒りの空気が膨れ上がる。「またアジーム家か」と呟いたのは、一人や二人ではなかった。

  • 22125/01/21(火) 20:59:02

    「ナイトレイブンカレッジは、実力主義だからこそ名門と呼ばれているはず。親の威光で評価されていいわけがない!」

    「スカラビアは砂漠の魔術師の熟慮の精神をモットーとした寮。俺は昔から、アジームよりもバイパーのような思慮深いヤツが寮長になるべきだと思っていたんだ」

    「待ってくれ。俺だって特別優秀なわけじゃない。成績だって、いつも10段階でオール5の平凡さだ。寮長にはふさわしくないよ」


    ジャミルが謙遜するが、ヒートアップしたスカラビア生たちは止まらない。

    「ジャミルの方が寮長に相応しいに決まっている!」「そうだ!」「身分ある家の生まれだからって、無能が寮長でいいわけがない」「そうだそうだ!スカラビアに無能な寮長はいらない!」


    ジャミルを取り巻くスカラビア生たちの熱意が、異様な雰囲気を帯びて談話室に渦をまく。


    「これは……あまりいい流れじゃなさそうだ」

    「チッ。陰口ばっか達者な野郎どもだ」


    ただジャミルが寮長であれば、という願いは、やがてカリムに対する憎悪や排斥の言葉に代わる。抑圧され冷静さを失ったとき、人は被害者から加害者に成り代わる。

    障子と口田がセントラル病院で相対した暴徒たちの大半は、ただ己の正義を貫こうとした善良な市民であったと聞く。

    人によって正義が異なることは決して否定できない。しかし、やり方を考えなければ悲しい結果を招いてしまう。


    「待って、みんな一旦落ち着いて――」

    「ミドリヤ」

    「!!」


    出久が立ち上がろうとしたとき、ジャミルに名前を呼ばれた。フードの影から、ジャミルの瞳が覗く。切れ長の目の中の、白目と黒目のコントラストがやけに鮮明だった。


    *ジャミルの魔法の対象 dice1d2=2 (2)

    1.出久のみ

    2.出久と爆豪

  • 23125/01/21(火) 21:00:41

    *対抗ロール

    出久 dice1d100=56 (56)

    爆豪 dice1d100=4 (4)

    ジャミル dice1d100=39 (39)


    勝っても負けてもデクはジャミルの魔法にかかります。かっちゃんは勝てば魔法を回避することができます。

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:05:10

    うーんかっちゃん出目ひっくい

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:06:47

    衝撃の一桁
    味方ポジションだと思って油断してたのか?

  • 26125/01/21(火) 22:12:24

    「君たちがさっき言ったんだ、スカラビアが変わるためには俺たちが行動しなければならないと。これが俺たちの民意だ…………『分かってくれるよな』?」

    「―――――――!!」


    ジャミルの言葉を聞いた瞬間、強い眩暈が出久を襲い、視界が暗くなった。


    (違う、ここは継承者の部屋……?)


    どこまでも暗闇が続くだけの空間は、かつて出久が歴代のOFA継承者と言葉を交わした精神世界だった場所だ。OFAは完全に譲渡され、出久の中の残り火も失せた今、そこはがらんどうで何も残っていなかった。


    ぱちり。


    瞬きをすると、目の前はスカラビアの談話室だった。どうやら一瞬だけ白昼夢を見ていたらしい。

    「スカラビアに無能な寮長はいらない!!!」

    スカラビア生たちが団結し、声を揃えて叫んでいる。


    (スカラビアの人たちが自分で決めたことだから、僕たちは見守るしかない……)


    出久は何か言いたいことがあったはずだが、なぜか自分が声を出してはいけないような気がして口をつぐんだ。隣に座る勝己も何も言葉を発さない。

    そのとき、出久は言いようのない違和感を感じた。勝己の目は赤色だが、スカラビアの照明のせいか、いつもと少し色が違うような気がした。


    *かっちゃんの表情 dice1d2=2 (2)

    1.無表情

    2.マジギレ寸前顔

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 22:15:21

    ほんとに一瞬油断してただけでバリバリ意識ありそうで草

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 22:17:22

    やりたくもないことをやらされるのを自覚してる?

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 22:47:57

    >>28

    アニオリでゾンビ化してもなおあれだった男だ、面構えが凶悪

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 07:41:59

    ユニ魔解けたらバチギレしそう

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 11:34:54

    これジャミルの方もちょっと困惑するだろ
    ちゃんとかかったよな?ってなる

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 12:44:37

    なんで継承者部屋飛んだん?何も残ってないのに

  • 33125/01/22(水) 22:31:24

    勝己は眼輪筋が引き攣って目が80度近くまで吊り上がり、食いしばった口は歯茎が剥き出しになり、白目はまるで赤い根が這っているかのように充血した常軌を逸した表情を浮かべていた。

    ジャミルは気持ち悪い虫を見つけたかのような表情でドン引きしたが、出久の中では勝己のデフォルトの表情の一つという判断になったのでスルーした。



    「――お前たち、こんな時間に集まってなにをしている?」

    「「「!!!」」」

    そのとき、ここで聞こえるはずのない声がスカラビアの熱気に水を差した。

    寝ているはずのカリムがいつの間にか談話室にいる。


    「カ、カリム……!」

    「どうやらお前たちには昼間の訓練では物足りなかったようだな。体力が有り余っているらしい。ジャミル!今すぐ寮生を庭に出せ!」

    限界まで魔法の特訓をする、とカリムが言う。スカラビア寮生たちから恨みにも似たストレスの気配が立ち上った。


    *行動ロール dice1d2=1 (1)

    1.カリムを諫める

    2.頭がぼんやりして声が出せない

  • 34125/01/22(水) 22:44:10

    カリムと寮生が完全に敵対しかねない気配を感じ取り、出久はハッと我に返った。このままではカリムが孤立してしまう。


    「カリムくん、ダメだ!もう皆限界でクタクタなんだ。これ以上特訓したって身にならないし、疲労の蓄積で本当に大怪我する人が出るかもしれない!」


    どうかもとの朗らかなカリムに戻ってほしいと願いながら、出久はカリムの両肩を掴んで語り掛けた。


    「スカラビア寮の成績を良くして、寮生のために寮の評判を立て直したいって君の方針は素晴らしいと思う。でも、今のやり方だと皆成績が伸びる前に潰れちゃう。急がば回れって言うでしょ、焦らなくたって良いんだ。悩みがあるなら、僕でよければいくらでも聞くから」


    カリムは赤い目を光らせて、氷のような表情で出久の言葉をじっと聞いていた。


    *対抗ロール

    出久 dice1d100=16 (16)

    カリム dice1d100=16 (16)

  • 35125/01/22(水) 22:46:48

    同値の場合は考えてなかったな……
    でも振り直すのもなんだしそれっぽく処理する方針でいきます

  • 36125/01/22(水) 23:01:56

    「…………」

    険しい表情を浮かべたままのカリムが、大きな赤い目を一度ぱちりとまばたきさせた。出久の言葉に怒る気配はないが、元の様子に戻った気配もない。


    (説得できなかったか……?)


    張りつめた空気の中、出久の背を一筋の冷や汗が滴りおちた。それと同時にカリムが大きなため息をついた。


    「……オンボロ寮の監督生の諫言を今回限り受け入れよう。お前たち、オンボロ寮からの賓客に感謝しろ」

    とても尊大で傲岸な物言いだったが、一応出久の言葉で思いとどまってくれたらしい。


    「カリムくん、ありがとう」

    「勘違いするなよ。昨日も言ったが、今のお前たちはスカラビア預かりの身だ。明日は今回の分まで容赦なく鍛えてやるから覚悟をしておけ」

    不穏な言葉を吐くと、カリムは踵を返して自室へと戻っていった。


    後には、死灰のような冷えた空気だけが残された。


    「……お前たち、明日も過酷な特訓になるだろうから、早く寝床につけ。夜遅くに時間を取らせて悪かったな」

    ジャミルの号令でその場はお開きとなった。


    寮生の動きを見る限り、自室に戻る者と、今夜の見張り当番となっている者がいるらしい。

    今夜も大食堂に薪をくべるためには隠密を行動をとる必要がありそうだった。


    *二人の勘

    出久 dice1d30=2 (2) +65

    爆豪 dice1d30=22 (22) +38

  • 37125/01/22(水) 23:06:57

    「「…………」」

    「オマエらどうしたんだゾ?怖い顔して」


    宛がわれている部屋に戻ってくると、出久も勝己も頭にかかっていたモヤが晴れたように思考がハッキリしてきた。


    *アイデアロール

    出久(67以下で成功) dice1d100=71 (71) +20(補正値)

    爆豪(60以下で成功) dice1d100=51 (51)

  • 38125/01/22(水) 23:33:50

    部屋に戻る前から勝己はいつになくイライラしているようだった。出久の予想が正しければ、勝己の不機嫌の原因は――。


    「……かっちゃん、さっきの話し合いのときなんだけどね。僕、一瞬だけ継承者たちがいた精神世界に飛んだんだ。もうそこには何も残ってなかったけど」

    先ほどの話し合いの最中、一瞬感じた自分の心が体の内側に閉じ込めれらるような感覚に出久は覚えがあった。


    「………?」

    「僕が初めてあの空間に入ったのは、体育祭で心操くんと戦ったときだ」

    「!!……そんで、お前が初めて継承者に会って『黒鞭』発現させたときは」

    「うん。クラス対抗戦で心操くんの『洗脳』にかかったときだった」

    少ない言葉でも察しの良い勝己は全て言いたいことを理解してくれるから話が早い。


    「オマエらだけ分かる話するんじゃねー!!オレ様にも分かるように話すんだゾ!!」

    「要するに、この寮に『洗脳』の魔法を使えるヤツがいるってことだ」

    足元で拗ねるグリムに、勝己が二人が出した結論を端的に聞かせた。


    「それならさっきのかっちゃんの態度にも合点がいくんだ。だって君、やりたくないことはオールマイトとか相澤先生に言われたって絶対やらないくらい頑固なのに、雰囲気に押されて黙っちゃうはずないもん」

    「チッ!!道理で気色悪ィ感覚がしたわけだ!!」


    出久の経験上、マジギレ顔の勝己は基本的に言いたいことを全部言う状態にある。勝己は秘めたものを外に漏らさない慎重さも持ち合わせているが、あの場ならド正論を暴言に乗せて吐き出していた方が自然だっただろう。

    それを無意識下で封じられたストレスが苛立ちに変換されていたのだろう。


    「でも、そういう魔法ってすごく難しいんだろ?スカラビアってあんま大したヤツはいねぇみたいだし、誰がそんな魔法を使えるんだ?」

    「それは……」


    *アイデアロール

    出久(67以下で決め打ち) dice1d100=44 (44)

    爆豪(60以下で決め打ち) dice1d100=51 (51)

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 23:39:38

    さすが幼馴染
    偏差値79突破は伊達じゃない

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 06:21:19

    じわじわと勘の値が伸びてた出久
    ここに来て急に勘が伸びたかっちゃん
    どっちもすげえ

  • 41125/01/23(木) 06:27:52

    >>37

    寝ておきたらここのロールの処理変なことになってることに気づきました


    正しくはデクの補正値はマイナスで二人とも成功なのですが、間違ってデクの補正値プラスでデクだけ成功でかっちゃんが失敗の内容になってます


    眠くてボケてたみたいですが、申し分ないけど書いちゃったんでこのまま続行しますね

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 16:45:04

    ほっしゅ
    ダイスミス気づかんかった
    いよいよ感出てきてわくわくするぜ

  • 43125/01/23(木) 22:31:53

    「三つ編み野郎だ」
    「ジャミルくんだと思う」
    二人の回答が揃う。

    「僕たちが把握してる限りでは、カリムが豹変する直前は必ずジャミルくんと二人きりになるタイミングがあるんだ。今日のオアシスなんかまさにそうだった。魔法の難しさの話は僕たちには分からないけど、状況的に他の人が犯人だとは考えられない」
    「ふなっ!?言われてみれば……確かにそうだったな。でも、何のためにそんなことしてるんだ?」
    「ハッキリした目的は断定できねェが、動機は十分にあンだろ。……そこに正当性なんざなくとも、クソ野郎は自己を正当化して行動を起こせるモンだからな」

    ただ近所同士というだけの対等な幼馴染関係であった勝己と出久があそこまで拗れたのだ。
    生まれながらに上下関係が設定されたカリムとジャミルとなれば、どれ程の歪みが生じるのかなど分かったものではない。特に、カリムの下であると明確にされているジャミルの方は。

    「やっぱり面倒ごとに巻き込まれてるんだゾ!美味いメシをいっぱい食わせてくれる良いところだと思ってたのに、とんでもねーんだゾ」
    「タダより高いものはないっていうけど……。でも、気付いちゃった以上、ますますここで放り出すわけにはいかなくなったね」
    「ああ。それによォ、あの三つ編み、どうせ自分ンとこの寮生焚きつけンのに俺たちを利用しようって腹だったんだろ。飯と宿の分も合わせて、礼もしてやんねェとなァ?」

    俺たちはどうすればいい?と問いかけてきたジャミルの声が勝己の頭の中で再生される。おそらく彼はあのとき、勝己たちがカリム打倒に賛成されることを期待していた。勝己はバッサリとそれを切り捨ててしまったけれど。

    「なぁイズク。バクゴーの顔って、他の人間となんか違くねーか?」
    「そうかな?見慣れちゃってるから何も違和感湧かないや」
    「オレ様、他の人間があんな顔してるとこ見た事ねーんだゾ」

    一瞬でも洗脳されたのみならず、ジャミルが自分達をスカラビアに招き入れた真意に気づいた勝己は、怒りで顔面が引き攣りまくって般若のような形相になっていた。
    グリムは半目になってドン引きしたが、出久はやはり見慣れた表情だという判定でスルーした。

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:33:55

    続き楽しみ

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:52:28

    このレスは削除されています

  • 46125/01/23(木) 23:02:14

    スカラビア騒動の黒幕に目星はついたが、まだジャミルが犯人だという確固たる証拠はない。マジフト大会のサバナクローのときと同じく現行犯を狙うしかない、という結論で一旦の方針は定まった。

    「しかし、あの野郎が洗脳もちとなると厄介だな。アイツの魔法の発動条件が割れてねーし……」
    「僕たち魔法耐性ないから、魔法かけられたらそこで終わりだもんね……」
    「魔力が無いって不便そうなんだゾ」

    カチャカチャ。出久と会話をしながら、勝己は器用に鍵をピッキングした。昨日で要領を掴んだのか、今日は30分程で鍵が開く音がした。時計を確認すると、まだ日付は回っていない。学園長の任務はなんとか果たせそうだった。
    そろそろと足音と気配を殺して二人と一匹は廊下に出た。そのとき。

    ぐ~~~~ぎゅるるるる~~~~!

    「今の……グリムのお腹の音……!?」
    「テメー晩飯あんだけ食っといてもう腹減ったンかよ!」

    グリムのお腹の音は、まるで地響きのようにスカラビアの廊下に反響した。異音を聞きつけ、「何だこの音は!?」「オンボロ寮生たちの部屋のほうだ!」という声を上げてスカラビア寮生の見張りたちが集まってきてしまった。

    「お前たち、そこで何をしている!?」
    「脱走者だ追え~~!!!」

    「チッ、こっからじゃ鏡まで距離がある!とにかく追っ手を撒くぞ!!」
    「オマエなら見張りくらい倒せねーのか!?」
    「緊急事態でもないのにそんなことできないよ!」
    「十分緊急事態なんだゾ~~~!」

    バタバタと追いかけて来る見張りたちを撒くべく出久たちは駆け回ったが、相手は数が多い上に寮内各所の待機ポイントから合流してくるのでなかなか撒くことができない。

    「クソッ、埒が明かねェ!一旦隠れてやり過ごすぞ!」
    「オッケー!」

    手頃な位置にあった適当な部屋の扉に体を滑り込ませ、二人と一匹は息を潜めた。幸い、すぐに追っ手には見つからず、足音が遠ざかっていった。

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 06:23:22

    廊下に響き渡るような音ってかなり大爆音では?
    グリムの腹は止まる事を知らないな

  • 48二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:39:54

  • 49125/01/24(金) 22:00:47

    「どうしよう、このままじゃ今日中に薪をもっていけないよ……!」


    武力行使を辞さないのであればこの場を押し通るのは容易だが、二人のヒーローとしての倫理感がそれを許さない。


    「にしても、ここはなんの部屋だ?真っ暗でなにも見えねぇんだゾ」

    確実に見張りに捕まらずに行けるように部屋を出るタイミングを伺う二人の脚元で、グリムが何やらガサガサと部屋を物色している。

    「ン?なんかフサフサしたもんが顔に……ふひゃひゃ!くすぐってぇ!イズク、“すまほ”で照らしてくれ」

    「おい、後にしろやクソ狸!すぐに出られるように準備しとけ」

    「でも、気になるしくすぐってぇんだゾ!ふひゃひゃ、やめろ!」

    「分かった、今照らすから待っててグリム」


    パッ。出久がスマホのライトを点けると、魔法の絨毯が視界いっぱいに写り込んできた。


    「~~~~~~!!びっくりした……」

    「ア?ここ宝物庫なンかよ。鍵ひとつかけてねぇってアイツマジでどんな頭しとンだ」


    魔法の絨毯は人懐こい犬のように二人と一匹の周りをくるりと回った。


    「……そうだ!オマエがいれば、見張りを振り切って外に出られるかも!やい、絨毯。オマエをここから出してやる。だからオレ様たちを寮の外まで連れていくんだゾ」

    「ダメだよグリム、勝手にそんなことしたら僕たち泥棒になっちゃう!」


    絨毯と話を進めているグリムを出久が制止したが、当の絨毯は楽しそうに体をひらめかせるとその背中(?)にグリムを乗せた。犬は飼い主に似るというが、どうやら絨毯も持ち主のカリムに似ているようだ。


    「ひゃっほう!これでスカラビアとはおさらばだ!!」


    *絨毯が次に乗せる相手 dice1d2=2 (2)

    1.出久

    2.爆豪

  • 50125/01/24(金) 22:17:30

    「だから俺たちはまだしばらくこの寮に……って聞けやコラァ!!!」

    敵や戦闘ロボを想定した戦闘訓練は幾度となく積んできたが、さずがに平面の絨毯相手を想定した訓練など行ったことがない。
    絨毯は巧みな動きで勝己に膝カックンして体制を崩させると、すかさず包み込むように受け止めた。勝己は体の右側から倒れこんだため、すぐに身を起こすことができなかった。

    「かっちゃん!!うわぁっ!?」

    とりあえず勝己を絨毯から下ろそうと左手を掴んだ出久だったが、一緒に乗りたいのだと勘違いした絨毯が出久の体ごと巻き取った。逃げようとするにも、この絨毯は大富豪のアジーム家の家宝ということだから、万が一傷つけようものなら恐ろしいことになるので下手に抵抗できない。
    絨毯の頭(?)側に陣取るグリムの後ろで、出久と勝己は二人で春巻き状態になって身動きがとれなくなってしまった。

    「それじゃあ、鏡に向けてレッツゴー!なんだゾ!」
    「♪♪♪♪」

    「待ってグリム、いや絨毯くん!!洒落にならないから本当に!!!」
    「テメー忠犬なら勝手に家を抜け出そうとすンじゃねぇわ!!!マジでやめろ!!!飛ぼうとすンな!!!!」
    「忠犬ではないんじゃない?……忠絨毯?」
    「やかましいわボケカス!!!!」

    二人の制止の叫びは虚しく宝物庫に反響した。当の絨毯は気合十分、といった様子で助走をつけると、ものすごいスピードで月夜の空に向かって飛び出していった。

  • 51125/01/24(金) 22:47:15

    「「ああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」」

    「ヒャッホーウ!!!やったーーーーー!!脱出成功なんだゾ!オレ様たちは自由なんだゾ~~~~~!!」


    絨毯が飛び出す際にド派手な音を立てたことで、スカラビアの見張りが中庭に集まってきた。「泥棒!!」という怒号が下から聞こえてくる。


    「へへーん!悔しかったらここまでおいでってんだゾ!」

    「戻ろうグリム、このままじゃ本当に窃盗……誘拐?になっちゃう!!」

    「こンのバカ畜生が!!!ちったァ後先考えて行動しやがれ!!!」

    「やーなこった!オレ様あんな生活もう耐えられないんだゾ!」


    ――ところでこの絨毯、どうやって操縦するんだゾ?

    恐ろしい音声が簀巻き状態の二人の頭上から聞こえてくる。グリムがカリムの見よう見まねで絨毯の端についている房を掴むと、絨毯が驚いて急旋回を始めた。


    「「ぎゃあああああぁあああアアア!!!」」

    「ぎゃーーー!目が回る~~~~!!!!止まれ、止まるんだゾ~~~~!!」


    シートベルトもなく布に巻かれただけの心もとない状態で、視界も満足に確保できず、飛行の主導権もないという状況で、流石の二人も命の危険を感じて絶叫した。

    勝己は焦りによる手汗で爆破が暴発しそうだったが、絨毯が壊れたときの損害賠償額を思って死ぬ気でこらえた。爆発的みみっちさのなせる業である。


    「うわあああああ~~~~鏡にぶつかる~~~~!!」


    クラスターを放つ勝己のように回転しながら突き進む絨毯は、スカラビア寮と校舎をつなぐ鏡を突っ切り、抜けた先の鏡舎で急カーブして別の鏡に突っ込んだ。


    そのまま絨毯は暗い空間を突き進んだかと思うと、何かの建物に突っ込んでいった。


    *着地 dice1d2=2 (2)

    1.絨毯が頑張って止まった

    2.爆豪が爆破の反動をブレーキ代わりに使った(損害ダイス+ dice1d50=)


    *損害ダイス dice1d100=60 (60) (原作の監督生が30くらい)

  • 52125/01/24(金) 22:48:14

    >>51

    ダイスミス


    *爆破の反動による損害ダイス+ dice1d50=38 (38)

    *心臓の反動ダメージ dice1d10=3 (3)

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:51:54

    損害レベルやばいことになってて草
    オンボロ寮でひもじい思いしてる二人に弁償金払えるわけないので、学園長に払わせよう!

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:05:10

    学園長が払っても事ある毎にこの出来事盾にされそうだな…

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 06:25:38

    有事の連絡をバカンスでスルーした自覚があるなら逆に進んで払うかも
    「私、優しいので!!」とか言って
    どのみちかっちゃんはキレる

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:32:42

    損害ひっでぇwwww

  • 57二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:52:29

    これもうモストロ吹っ飛んでるだろこれ!

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 19:40:04

    雑巾呼ばわりすらも生易しい

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 02:37:08

    >>33

    >ジャミルは気持ち悪い虫を見つけたかのような表情でドン引きしたが


    めっちゃ草生える かっちゃんの表情筋はデズニーのイケメンには許されない動きなんだろうな

  • 60二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:16:10

    アズールがぶっ倒れそうな勢いだ

  • 61二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 18:30:06

    モストロ無事??

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:04:42

    もはや敵襲では?

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 08:02:43

  • 64二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 16:19:09

    絨毯くんも心配になる被害規模

  • 65125/01/27(月) 21:59:06

    BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!

    派手な爆音を立てて、暴走した絨毯に乗った二人と一匹はなんとか着地した。

    「テメーら無事か?」
    「おかげでなんとか、ありがとう。ここは……?」

    カチッ。身を起こした出久が周囲を見渡すのと同時に照明が点いた。
    クラゲのような照明の光が水槽に反射して、全体的に仄蒼い空間。そこはオクタヴィネル寮の『モストロ・ラウンジ』だった。

    「…………おや。こんな深夜にどんなお客様がいらっしゃったのかと思えば」
    「やべー音したからオレらを逆恨みしてる強盗かと思って絞めにきたのに……モズクちゃんとシャチちゃんとアザラシちゃんかぁ。なーんだ、つまんねーの」

    上から二人と一匹を見下ろすのは、リーチ兄弟だ。
    今はウィンターホリデー中だが、話を聞くところによると、二人の故郷は冬季は流氷で閉ざされて帰ることが難しいため、帰省せずに同郷のアズールも含めた三人で寮に残っているのだという。

    「や、やった~~~~!!オレ様たち、ついに牢獄から脱出に成功したんだゾ!」
    「♪♪♪」
    きつい特訓を課せられるスカラビアから出られたグリムが絨毯と手を取り合って喜んで跳ねまわっている。

    「牢獄とは……?」
    「つーか、その四角いヒラメみたいなの何?」
    「カリムさん所有の魔法の絨毯によく似ていますが……」
    「そ、それは違くて……いや違くないんだけど……!」

    絨毯を盗もうとしたわけではなくて、とテンパって弁明しようとする出久だったが、言い切る前に執念深く追いかけてきたスカラビア生の怒鳴り声で会話は中断となった。

    「ふな”っ!こんなところまで追っかけてくるなんて、なんてしつけーヤツらなんだゾ!」
    「警備ならこんくらい仕事のうちだろ。もの盗られてる時点で失態だがな」
    「まあその絨毯くんを連れてきちゃったのは僕たちだから何も言えたものじゃないけど……」

  • 66125/01/27(月) 22:00:02

    「君たち、こんな深夜に一体なんの騒ぎです?」

    『モストロ・ラウンジ』の支配人ことアズールも騒ぎを聞きつけてやってきた。


    「っていうか、なんだこの店内は!?間接照明が割れて……ソファの革も避けている!?ああ、巨大水槽のガラスにも大きな傷が!!?……これは一体、どういう状況なんですか?」

    ぐるん!と擬音がする勢いでアズールが騒ぎ立てるスカラビア生たちに詰め寄った。


    「オクタヴィネルには関係ないことだ!大人しくそこの3人を引き渡してもらおうか」


    *アズールの精神 dice1d100=55 (55)

    1:店が壊れたショックで泣きそう、100:ブチギレ

  • 67二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:11:46

    かわいそ……

  • 68125/01/27(月) 22:12:07

    「よく見れば、そこにいるのはミドリヤさんにバクゴーさん、それからグリムさんじゃありませんか。あまりにも小汚いので、煙突掃除ブラシかと思いましたよ」

    出久とグリムは爆破の影響で毛がチリチリになっているので、ブラシというのは決して的外れな表現ではない。勝己の毛はなぜか無事だが、固く尖った毛質はもとよりナイロンブラシのようなものである。

    「引き渡さないのであれば、お前たちもただでは済まさないぞ!」
    スカラビア生たちがマジカルペンを構えた。

    「………はァ?誰に向かって言ってんの?」
    「モストロ・ラウンジではいかなる揉め事も認めません。ここは紳士の社交場ですから」
    店内の空気がスッと冷え込む。優雅な姿勢は崩さないままに、アズールが好戦的な表情を浮かべた。

    「品のないお客様にはお引き取り願いましょう」
    カツ、とアズールのステッキが床を鳴らす。

    「ジェイド、フロイド。彼らをつまみ出しておしまいなさい」
    「「はい/はぁ~い」」

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 23:08:13

    こうなったら原因となったアジーム家に支払ってもらおう

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 01:56:27

    助さん格さん懲らしめてやりなさい
    みたいに言うじゃん

  • 71二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 09:51:55

    >>70

    何が面白いってこれ本編と同じセリフなんだよね

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 13:20:35

    保守

  • 73二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 19:45:03

    >>71

    配信当時に邪悪な水戸黄門とか悪徳水戸黄門とか言われてて爆笑した覚えがあるよ

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 23:15:01

    邪悪な水戸黄門だの作画が美麗な両津勘吉だのネタ系のあだ名に事欠かないアズールェ…
    おもしれー男だから仕方ないね

  • 75二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 00:00:49

    幼馴染IN NRC上映会をヒロアカキャラでやったらアズールが出てくる度にAFOがニヤニヤしながら眺めてそう

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 00:58:31

    >>75

    何故だろう

    フロイドがAFOに絡みに行く図が思い浮かんだ

    あと幼馴染除いて相澤先生やオールマイトを含めたA組総勢21人が初期のオンボロ寮を見て悲鳴を上げてそう

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 08:14:55

    保守の時間10時間に変わってるから注意なー、ほしゅ

  • 78二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 12:51:00

    >>76

    相澤先生たちに詰め寄られる学園長が見える…

  • 79125/01/29(水) 13:07:58

    ナイトレイブンカレッジの学生は基本的に血の気が多いが、その中でもリーチ兄弟は暴力行為に全く躊躇いがなく荒事に馴染んだ気配がする。

    魔法の攻撃はフロイドが『巻きつく尾』で弾き、物理攻撃はもとより長身で手足の長いリーチ兄弟に分がある。二人は息の合ったコンビネーションで瞬く間にスカラビア生をつまみ出してしまった。


    「く、くそっ!いったん退却だ!」

    「オラ、散れよ小魚ども!アハハッ!」

    「みなさまのまたのご来店、お待ちしております」

    「にゃっはー!!やったんだゾ!見たかコンニャロ~!」

    虎の威を借りる猫ならぬグリムが去っていくスカラビア生たちを見てぴょんと跳ねたが、店の空気は冷え切っている。


    「良い気分になっているところ恐縮ですが……オンボロ寮のお三方には、傷ついた什器や水槽の修繕費、破損して廃棄品になった紅茶缶やドリンクの瓶の弁償代……および巻き込まれた僕らの労働費を支払っていただきたいのですが?」


    アズールは上品な顔立ちを鬼のように歪めた。若干潤んでいる目はマジギレ状態の勝己に引けをとらないほど充血しているし、額に青い血管が何本も浮いている。


    「そうですね……請求額はざっと概算で dice1d1000=888 (888) 万マドルといったところでしょうか」

    「え~っ!?金取るんだゾ!?」

    「あなたこの店の惨状が分かってます?器物損害で警察を呼んでも僕は構わないんですけどね」


    アズールが指さした『モストロ・ラウンジ』は惨憺たる有様だった。紳士の社交場というコンセプトでアズールが配置したのであろう什器は吹き飛び、バーカウンターの棚の中身は容器から中身が垂れ流しになっている。


    *出久の反応 dice1d3=2 (2)

    1.ジャパニーズ土下座

    2.フリーズする

    3.開き直っている(お目目ぐるぐる)


    *爆豪の反応 dice1d3=2 (2)

    1.流石に謝罪する

    2.言葉が無い

    3.開き直っている

  • 80125/01/29(水) 13:26:24

    (Mt.レディって出動の度に色々壊してたけど、どうやって補償金を捻出してたんだろう……?)
    (マドルって円換算だと為替レートどんくらいだ?)

    突如降りかかってきた巨額の負債に、二人の優秀な頭脳は回転を止めて現実逃避を始めた。
    しばし硬直した後、二人はどちらともなく互いと目を見合わせ、頷きあった。性格が根本から異なる二人だが、不思議なことに絶体絶命のときは言葉がなくとも通じあえる以心伝心の仲となる。

    「「学園長に請求して/クソ烏に請求しろ」」
    「……まあ、そうなりますよね。888万マドル、学園長からキッチリ取り立てさせていただきます」

    オンボロ寮の財布はウィンターホリデー前の食材一気買いによりスッカラカンである。アズールもオンボロ寮のひもじい事情に察しがついているのか、早々に二人と一匹の保護責任がある学園長にターゲットを変えたようだった。

    「オレ様たち、スカラビアの揉め事に巻き込まれてひでぇ目にあったばっかりだってのに……やっぱりこの学園にはロクなヤツが、もごご!」
    「グリム!!しっ!!!!」
    『モストロ・ラウンジ』の惨状は完全に出久たちに過失があるため、出久は憎まれ口を叩こうとしたグリムの口を素早く塞いだ。これ以上金額を上乗せされるようなことがあっては堪らない。
    ヒヤヒヤとアズールの様子を伺うと、意外にもアズールは眼鏡に指を当てて興味深そうな顔をしていた。

    「スカラビアの揉め事、とは?」

    どのみち店に絨毯ごと突っ込んでこの事態を招いた説明責任は果たさなくてはならない。出久はスカラビアに招かれてからの出来事を、順を追って説明した。
    カリムの名誉のために寮長の乱心騒ぎの部分についてはぼかそうとしたのだが、鋭いアズールの質問に詰まってしまい、結局グリムが話してしまった。

  • 81二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 13:30:16

    >>80

    バカンス帰り早々に888万マドルの請求書とご対面なんて刺激的な年明けだな

  • 82125/01/29(水) 13:55:27

    「――そう!寮生たちが毎日カリムに大変な目に遭わされてるんだゾ」
    「あのカリムさんが、そんなことを?」
    「えっ。ラッコちゃんってそういうことするタイプなんだ?」
    「あまりイメージにありませんね」 
    グリムが赤裸々に語ってしまった話にオクタヴィネル三人組が目を丸くした。やはりカリムは陽気な人物であるのが共通認識で、今の陰湿なやり方をするカリムを信じられないようだ。
    ちなみに「ラッコちゃん」というのはカリムのあだ名らしい。フロイド曰く、いつもニコニコ太鼓を叩いているのがラッコに似ているから、とのことだ。

    「副寮長のジャミルってヤツがめちゃくちゃ困っててよ。この学園にしては珍しくいいヤツで……あれ?でもオマエらはジャミルが何とかって言ってたよな?」
    「……あれは憶測の話だからね、今話すことじゃないよ」
    推定無罪の原則というものがあるので、証拠もない状態でジャミルをスカラビア騒動の黒幕であると第三者に告げる訳にはいかない。出久はジャミルが無為な疑いを被らないようにやんわりとグリムの話を遮った。

    「…………」
    「アズールはジャミルさんと同じクラスでしたよね」
    「ええ。選択授業も同じことが多いので、よくご一緒しています」

    クラスメイトとしてのアズールからジャミルへの評価は「大人しくて地味」とのことだった。ジャミルと同じバスケ部に所属しているフロイドからは「イイコちゃんなプレイするヤツ」という評価だった。概して、この学園では珍しい「主張がなく我を出さない人物」という印象であるらしい。

    「寮長の圧政に、副寮長である彼が困っている…………ふむ」
    「……何企んでやがんだ詐欺眼鏡」
    「いやですねぇバクゴーさん、人聞きの悪い……。ただ僕は、彼の力になってさしあげなくては、と思っているだけですよ」
    「テメェ、慈悲の精神とか言っておいて、絶対ェ無償のボランティアとかしねェタイプだろ」
    「失敬な。僕は前回の一件で自分の欲深さを反省し、心を入れ替えたんです。これからは海の魔女のように、慈悲の心で学園に貢献しようと決めています」

    勝己の嫌味をいけしゃあしゃあと受け流し、アズールは商人然とした胡散臭い満面の笑みを浮かべた。

  • 83125/01/29(水) 14:10:10

    「今、スカラビアが危機に瀕し、クラスメイトが助けを求めている……そんな一大事、無視することは出来ません」

    まるでビジネスチャンスを見出したかのように意気揚々と語るアズールに、ジェイドとフロイドが興味深そうな視線を向ける。


    「毎年同じ顔に囲まれてターキーをつつくのにも飽きてきたところです。僕たちも明日からスカラビアへお邪魔しようじゃありませんか」

    「えぇっ!?せっかく逃げ出したのに、また監獄に戻るのか?オレ様、嫌なんだゾ」

    「まーまー、アザラシちゃん。そう言うなって」

    「アズールに任せておけば、きっと楽しいホリデーになりますよ」

    嫌がるグリムの頭にジェイドとフロイドが両側から手を乗せた。愉快な感情を隠しきれずに持ち上がった二人の口角から人間離れした尖った歯が覗く。


    「お邪魔するのに手ぶらも失礼です。ジェイド、フロイド、手土産の準備を忘れずに」

    「「はい/はぁ~い。……フフ」」


    悪友と楽しい悪戯を思いついたように、三人は互いに目配せしてクスクスと笑い声をもらした。


    「……あの三人って本当に仲が良いよね」

    「そォだな」

    「オマエらは仲良くねぇのか?さっきとか息ピッタリだったんだゾ」

    「…………言うな」

    「…………なんか遅れて罪悪感が……」


    二人そろって学園長に支払いを押し付けた件については、史上最低のシンクロだったといえるだろう。真面目な二人はグチャグチャになった『モストロ・ラウンジ』を改めて見渡して頭が痛くなった。


    *罪悪感

    出久 dice1d50=1 (1) +50

    爆豪 dice1d50=50 (50) +50

  • 84125/01/29(水) 14:13:55

    スカラビアに行く前にダイス


    *日付跨ぐ前に大食堂の暖炉に行けた? dice1d2=1 (1)

    1.行けた

    2.行けなかった



    アズール「お金は学園長に請求しますけど、片付けと掃除くらいは当然してくれるんですよね?」


    *片付けにかかった工数(三人分) dice1d24=23 (23) 時間

    (6時間/人 以上で徹夜)

  • 85二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 14:16:07

    罪悪感の振れ幅エグwwwまぁ出久は全く悪くないし惨状の直接的な原因はかっちゃんだし…
    片付けにかかった時間ほぼ最大値で草

  • 86二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 14:25:14

    まあ学園長に関しては最初に幼馴染が連絡を取った時点である程度の対応をしておけばここまでの惨状になるような脱出はなかったかもしれないし甘んじて888万マドルは払ってもろて

  • 87125/01/29(水) 14:26:41

    この辺からスーパーオクタヴィネルタイムに入って監督生ができることがあんまりなくなるので、カット多めで巻いていきます
    888万マドルを盾にされた幼馴染には振り回されてもらいますぞ

  • 88二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 14:40:09

    バカンスから帰ってきたら888万払わされる学園鳥も4時間弱も片付けさせられる幼馴染も草

  • 89125/01/29(水) 14:47:56

    >>88

    オンボロ寮三人分の工数なので、掃除時間は8時間弱ですね

    オクタヴィネル三人組は多分その間に手土産の焼き菓子とか作ってる

  • 901 25/01/29(水) 16:27:34

    「「「やっと終わった……」」」

    オクタヴィネルの夜明けは浅瀬の海にキラキラと光の網がかかって幻想的で美しかったが、徹夜で掃除をし終えたばかりの二人と一匹の顔色は最悪なことになっていた。対照的にアズールたちは顔色も良いし表情もニッコニコだった。

    「やっと終わりましたか、さあ行きますよお前たち!」
    「「はい/はぁ~い!」」
    元気よく返事をしたリーチ兄弟に対して、出久とグリムは死にかけの声で「うぅん……」と唸ることしかできなかった。勝己に至っては舌打ち一つ返しただけだ。

    何はともあれ、現在オンボロ寮はオクタヴィネル寮に対して負い目がある状態なので、悪事の片鱗が見えない限りは強く出ない方が得策なのだった。



    「こんにちは。お邪魔します」
    「!!??昨日俺たちをボコボコにしたオクタヴィネルの奴ら!」

    翌日、掃除をさせられるうちにオクタヴィネルで夜を明かしてしまった出久たちは、アズールたちに同伴する形でスカラビアに戻った。

    「ああ、みなさん。昨晩は失礼しました。みなさんがか弱い動物を一方的に苛めているように見えたものですから、心優しい僕は咄嗟に庇ってしまったのですが……」
    胡散臭い笑顔を顔に貼り付けたアズールがスカラビア生たちに話す隙を与えずに一方的に話をまくし立てている。

    「――そこで僕は、責任をもって哀れな迷子を保護して、彼らが誤って起こしてしまった魔法の絨毯をお届けにあがったというわけです」
    「うぬぅ……不本意なんだゾ……」
    「クッソぶっとばしてェ……」
    「二人とも我慢して……」
    アズールによって「哀れな迷子」にされてしまった三人が微妙な表情を浮かべる傍ら、スカラビア生たちは返還された絨毯をみて救世主を見たように目を輝かせた。

    「おい、お前たち。そろそろ朝の特訓の時間だぞ。集合に遅れるとまたカリムに……!!!???」
    行進に集合しなかった寮生を呼びに来たジャミルは、ここにいるはずのないオクタヴィネル三人組の姿を見た瞬間にぎょっと目を剥いた。

  • 911 25/01/29(水) 17:29:21

    驚きたじろくジャミル相手にアズールは八枚舌であれよあれよと話を進め、魔法の絨毯をカリムに直接返却する流れへと持っていった。

    「とにかく、絶対にカリムさんに直接会ってお渡ししたいのです。彼はもう起きていらっしゃいますか?」
    「だから、今日は都合が悪いと……勝手に入っていくな!アズール!」
    「さ、ミドリヤさんたちも参りましょう」
    「遅れないで付いてきてねぇ」

    オクタヴィネル三人組が強引にスカラビア寮へと押し入った。やはりやり口がどこか詐欺めいている。

    「あれ、アズール?なんでウチの寮にいるんだ?」
    「こんにりは。ご機嫌いかがですか、カリムさん」

    果たして、カリムは談話室にいた。今は昨晩までの高圧的な雰囲気は消えて、陽気なカリムに戻っている。
    アズールは流れるように通り一遍の挨拶とスカラビア寮への賛辞を口にした後、スカラビア生たちがホリデー中も帰省せずに特訓していることに言及した。「奇遇ですねぇ、実は僕たちもホリデー中に残っているんです」と次の話に繋げるためも布石を打つのも忘れない。

    「そこで、これを機にオクタヴィネルとスカラビアで親睦を深める合宿を致しませんか?」
    「そりゃいい!オクタヴィネルの寮長がウチの寮に滞在してくれるなんて、願ってもない」
    「……カリム、俺は反対だ」

    トントン拍子で進もうとする話にジャミルがストップをかけた。他の寮を追い越すための特訓なのに敵を招き入れてどうする、というのがジャミルの論だが、そもそもカリムは他寮を敵だとは思っていないのでイマイチ響かず、「そもそもオンボロ寮の3人はお前が連れてきたんじゃないか」と言われて言葉に詰まった。

  • 921 25/01/29(水) 17:43:44

    「それは……っ、そうだが。俺はお前たちのためにも言ってるんだぞ。アズール……!」

    「ジャミルさんのご意見はごもっとも。他の寮は常に成績を競い合うライバルですから。残念ですが、僕らはこれでお暇しましょう。カリムさん、ジャミルさん、特訓頑張ってくださいね」

    ジャミルの言葉を受け入れて、アズールは大人しく踵を返す……はずがなかった。


    「はぁ……極寒の中、今年も3人ぼっちのホリデーですか……。まぁ仕方ないですけど……」

    「頑張って魔法の絨毯を捕らえたんですがねぇ……」

    「モストロ・ラウンジもめちゃくちゃになったのになぁ……」

    「「「はぁ~~~~~~~~ションボリ」」」


    「……ンだこのクソ茶番」

    「あからさまに“引き止めてほしい”って感じだね」


    三人揃って噓泣きを繰り広げるオクタヴィネル三人組に出久と勝己とグリムが白々しい視線を送る。だが、この場には棒演技にも騙されてしまうようなお人好しが一人いる。


    「――ちょっと待った!」

    「………………はぁ~~」

    案の定待ったをかけたカリムに、ジャミルが特大のため息を吐いた。


    「アズールはこの学校でもトップレベルの魔法士だ。スカラビアの成長のためにも滞在してもらった方がいい!それに、せっかく訪ねてきてくれたヤツらを無下に追い返すなんで、アジーム家の名折れだ」

    「あぁ……カリムさん!なんて懐が深くお優しい方なんでしょう!」

    器が大きいところを見せたカリムにアズールが大仰な仕草で感謝する。その直後に特訓のノウハウ伝授ばかりでなく掃除や炊事にも貢献できる、とすかさず自分達のことを売り込むあたり抜かりない。


    「そいつは助かる!ジャミルの負担も減るだろう」

    「俺のことはいいから……!ああもう!全然聞いてないな」

    暴君モードでなくとも、カリムの舵取りはやや強引である。彼の中ですでにオクタヴィネルとの合同合宿は始まっているらしく、カリムはアズールたちを特訓が始まる中庭へと連れていった。


    *ちなみに、二人の客観的な意見

    出久 dice1d100=73 (73) 、爆豪 dice1d100=76 (76)

    1:明らかにあくどいオクタヴィネルを身内の特訓に入れるのは、ノウハウを盗まれかねずに悪手なのでは?

    100:寮の壁にこだわらず、優れた魔導士であるアズールを特訓に引き入れたのは慧眼かもしれない

  • 93二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 17:48:33

    二人とも、オクタの性格とか3章のアレとかはともかく魔導士としての能力は一応認めてるのかな

  • 94125/01/29(水) 17:55:37

    次に進む前にダイスタイム

    オンボロ寮組とオクタ組が一緒に泊るスカラビア寮の空き部屋、おそらく一年生用の四人部屋なんですよね

    原作だとオクタ3人+監督生の四人なのでグリムが監督生と一緒に寝れば丸く収まるのですが、ここだと一人多いのですが果たして……


    *ベッドを巡る戦いの脱落者 dice1d5=2 (2)

    1.出久

    2.爆豪(心臓のことがあるので出久が代わる)

    3.アズール

    4.ジェイド

    5.フロイド


    *ベッドの敗北者 dice1d2=1 (1)

    1.床でふて寝

    2.別の人のベッドで無理やり寝る


    グリムは出久と同じ場所で寝ます。

  • 95125/01/29(水) 18:08:38

    一日の特訓を終え、戻ってきた客室代わりのスカラビアの空き部屋にて。


    「「「「「ジャンケンポン!!」」」」」

    「クソがァァァァ”ァ”ア”!!!!!」

    スカラビア寮の空き部屋は一年生用の部屋で、ベッドが4台しかなかったため、5人は寝床を巡った仁義なき戦いを繰り広げた。


    「かっちゃん、具合悪くなったら大変だし、僕が床で寝るよ」

    「ハァ?平気だわ。テメェこそ……」

    「おっ、イズクが床で寝るのか?しょうがねーな、子分が寒い思いしたら大変だから、オレ様が一緒に寝てやるんだゾ」

    「ありがとう。グリムが横にいてくれたら温かくていいね。ふわふわだ~」

    「へへ~ん。存分にありがたがるんだゾ」

    「…………」


    タオルを床に敷いた上に寝転がる出久の横でグリムが丸くなる。ひそかにグリムに胸キュンしている出久はふわふわの毛皮が可愛いので床の固さが気にならなくなった。口元が緩んだ表情を見て勝己は言いかけた言葉を止めた。


    それぞれの寝床も決まったところで、スカラビアに対する意見交換が始まった。


    *二人は洗脳魔法について dice1d2=2 (2)

    1.言及する

    2.言及しない

  • 96二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 19:16:04

    まぁさっき不確定なことは言えないからみたいなことになってたし話さないか
    それはそうとして後輩床に寝せて自分はベットってどーなんですかオクタの先輩方

  • 97二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 20:39:04

    ナイトレイブンカレッジだからな
    下っ端の後輩が先輩に譲って床で寝るのが当たり前だぞ

  • 98二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 21:00:50

    >>95

    グリムって確か身長80cmくらいだから、猫というより大型犬のサイズなんだよな

    抱き枕になってくれたら凄くあったかそうだし、もふもふと一緒に寝る出久は可愛い

  • 99二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 21:02:56

    そういや寮のベッドってサイズどうなってるんだろうな
    高身長の生徒も使えるように大きめ共通サイズとかだろうか、そうじゃないとウツボ達がはみ出しそう

  • 100二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:01:56

    >>99

    ウツボ・ジャック・マレウスが安眠できるサイズがあるなら、幼馴染の体格なら二人寝ても狭めのセミダブルくらいの感覚で寝られそうではある

    流石に二人だと寝苦しくはなるだろうから出久が譲っちゃうのも分かるけど

  • 101二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 00:14:55

    >>96

    言えば手配してくれるとは思う

    タダで貸してくれるとは考えられない

  • 102二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 06:29:35

  • 103二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 12:55:14

    念のため保守

  • 104二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 21:04:09

    そういえばこのスレのデクとグリムは相思相愛だったな可愛い

  • 105125/01/30(木) 22:18:31

    「今日はずっとご機嫌カリムだったんだゾ」
    「ええ。僕が知る“いつもの”カリムさんでしたね」
    「機嫌が悪い時のカリムは、もっとメモ吊り上がって怖い感じで喋ってるんだゾ」

    六人の話題の中心はカリムのことだ。
    カリムと同級生であり出久たちよりも面識の深いオクタヴィネル三人組からみても、大らかなカリムが成績のことで豹変するとは思えない、とのことだった。

    「――やはり、原因は別にある可能性が高そうですね。問題解決のためにも、カリムさんのことをもっと知る必要がありそうだ。ジェイド。少し――彼と“お話し”してきてもらえませんか?」
    「かしこまりました。ジャミルさんは難しいかもしれませんが、カリムさんなら素直に僕と“お話し”してくれるかもしれません」
    「じゃあ、そのあいだオレはウミヘビくんに遊んでもらおっかなぁ」
    「それはいい。僕も一緒にお相手していただくとしましょうか」
    「「「フフフ…………」」」

    どこか含みのある会話を繰り広げ、人魚たちがあくどい笑みを浮かべて笑う。

    「コイツら、ずっと目が笑ってねぇんだゾ……」
    「かっちゃん、僕たちも着いていこう。どうやら彼らはカリムくんを中心に調査するみたいだから、僕たちはジャミルくんの動向を見守ろう」ヒソヒソ
    「ああ。詐欺眼鏡たちが何しでかすかも分かんねーしな」ヒソヒソ

    異様なフットワークの軽さで部屋を出ていくアズールたちに、出久たちも同伴する。
    先頭を行くアズールが向かった先は、大胆にもジャミルの部屋だった。

  • 106二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 06:17:20

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 12:32:02

    念の為保守

  • 108二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:12:34

    ☆ュ

  • 109二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:15:41

    >>101

    こうだな


    「ところでバクゴーさん、お身体に不調があるようで…。何かお手伝い出来る事はありませんか?」

    「企む?いえいえそんな、ただ何かお力になれる事があるのではと思いまして!」

    「…そうですか。ですが何かありましたら是非頼ってください。慈悲の精神をもってお力添えいたしますよ!」

  • 110二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:20:16

    >>109

    アズールの後ろでフロイドとジェイドがニヤニヤ笑ってるのが見える見える

  • 111二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 06:26:35

  • 112二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 15:25:09

    ほしゅしゅ

  • 113二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 21:08:04

    このレスは削除されています

  • 114125/02/01(土) 21:34:17

    「こんばんは、ジャミルさん」

    「!!……なんの用だ?」


    夜遅くに押しかけて来た来客たちにジャミルが不審そうな目を向ける。アズールはジャミルの表情など意に介さず、窪みのある木の板と宝石のようなビーズを取り出した。

    「カリムに案内してもらった宝物庫で見たことがないボードゲームを見つけたから遊び方を教えてほしい」というのがアズールの口実だ。


    「ああ、『マンカラ』か……熱砂の国ではポピュラーなゲームだよ」

    「ボードゲーム部の僕としては、ぜひ遊んでみたくて。一局手合わせ願えませんか?」


    *二人はマンカラを…… dice1d2=2 (2)

    1.知っている

    2.知らない


    「……カリムも寝たし、まあいいか。わかったよ。この人数じゃ俺の部屋は狭い。談話室に行こう」


    はぁ、とため息をついてジャミルが部屋から出てきた。なんだかんだ面倒見の良い性分であるらしい。子どもらしいところのあるカリムがジャミルを慕う理由が垣間見えるようだった。

  • 115125/02/01(土) 21:47:45

    「やった~~~今回はオレの勝ち!これで3勝!」

    「集中力が高い時のフロイドは、やっぱり勝負強いな」


    ジャミルにマンカラの基本的なルールを教えてもらってプレイしていた。マンカラは非常にシンプルなゲームだが、その分先読みや駆け引きが重要になり奥が深い。


    「ふぎゃー!また負けた!アズール、容赦ねぇんだゾ!」

    「これで僕は5勝0敗。まあボードゲーム部として当然の結果です」

    「ぐぬぬ……。そういや、イズクとバクゴーはどうなったんだ?」


    *マンカラ5番勝負 dice5d2=1 2 2 1 2 (8)

    (1で出久の勝ち、2で勝己の勝ち)

  • 116二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 21:49:14

    マンカラ面白いよね

  • 117二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 22:06:50

    勝敗数解釈一致すぎる

  • 118125/02/01(土) 23:22:52

    「俺ン勝ち、ザマァ」

    「くぅ、あと一勝だったのに……!」

    勝己が勝ち誇って煽る表情をするので、出久は悔しくて項垂れた。どんな風に表情筋を使えばそんなに腹立たしい表情が作れるのか出久には皆目見当もつかない。


    「ジャミルさんは2勝3敗、ですか」

    「ん?……ああ、久しぶりだから腕が鈍ったかな。昔はよくカリムに『勝つまでやる』って毎日何時間も付きあわされたっけ……」


    こういうの弱いくせにな。ぽつりと呟いたジャミルの声は意外にも柔らかで、昔を懐かしむような響きだった。


    *二人の勘

    出久 dice1d20=9 (9) +67

    爆豪 dice1d20=10 (10) +60


    「なるほど。ふむ、それでですか」ボソッ

    「なにが『なるほど』なんだ?変なヤツだな」

    「いえ、こちらの話です。カリムさんとは幼いことから一緒に育ったのですね」

    「それこそ物心つく前からだな……そういえば、君たちオクタヴィネルの3人も幼なじみだったか?」

    「そうらしいね~」

     

    二人の会話を聞いていたフロイドが間延びした声で全く他人事のような返事をした。どうやら、リーチ兄弟とアズールはエレメンタリースクールに入ってからずっと同じクラスだったらしいが、フロイドはミドルスクールに入る直前までアズールを認識していなかったらしい。


    「だからあんま幼なじみっぽい思い出とかないっていうか」

    「興味のムラがありすぎなんだゾ!」

  • 119125/02/01(土) 23:33:53

    「それなのに、今は君が寮長?随分と不思議な関係だな」

    「そお?今はアズールの言うこと聞いているのが面白いからそうしてるだけ」

    「ジェイドもフロイドも、僕に服従している気はないんでしょう。彼らにとっては、そういう“ごっこ遊び”なんですよ」

    「主従ごっこ、ということか?ますますよく分からない関係だ」

    今のアズールたちの関係は、双子がそれで面白いと思っているから成立しているもの。自分たちの関係を形容するアズールの言葉に、ジャミルが不可解そうに眉根を寄せた。


    「僕がリーダーとして間違った……あるいは、つまらない選択をした時――2人はあっさり僕から離れ、寮長の座を奪うはずです。まあ、挑まれても負ける気はしませんが」

    「オレらも挑む予定はないけどねー、今んとこは。あはっ」

    「……あくまで君たちは対等な関係、なんだな」

    「今は面白いから一緒にいるし、つまんなくなったら一緒にいなくなるってだけ」


    *アズールとフロイドの話

    出久 dice1d100=29 (29)

    爆豪 dice1d100=61 (61)

    (1.ピンとこない 100.共感できる)

  • 120125/02/01(土) 23:50:40

    (別に普通だろそんなん)


    面白いから一緒にいて、つまらなくなれば離れていく。それは友人関係を形成する上でありふれた出来事だ。

    小さい頃、出久と仲良くしていた近所の子は、いつしか「無個性だから一緒に遊んでもつまんねー」と口を揃えて誰も出久とは遊ばなくなった。そうした雰囲気を先導していたのは勝己だが、流石に出久の人間関係まで介入していたわけではない。強制せずともそうなったのだ。

    雄英では素晴らしい友人に恵まれたと思うが、世間での一般的な友情なんてそんなものだろう、と勝己はどこか冷めた頭で聞いていた。


    (そんなドライな関係には見えなかったけどな……?)


    アズールは自分たちの関係をビジネスライクかのように語ったが、出久はどうにもしっくりこないように感じた。

    オーバーブロットが解けたアズールを抱きとめる際、血相を変えて駆け寄ってきたリーチ兄弟を間近で見た出久には、どうしても三人の仲がそれだけのものだとは思えないのだった。


    「つーか、副寮長は寮長の家来じゃないし。フツーじゃん」

    「………普通、ね。生まれた時からアジーム家の従者の俺には、やっぱりよく分からない。主人は主人。従者は従者だ。おそらく、一生な」


    *二人の勘

    出久 dice1d10=3 (3) +76

    爆豪 dice1d10=1 (1) +70

  • 121125/02/02(日) 00:12:00

    「おっ、なんだお前ら。まだ遊んでるのか?」

    そのとき、談話室に明るい声が響いた。ジャミルの目が驚きで見開かれる。


    「どうして……1人でフラフラ出歩くなといつも言っているだろ。もしもまた誘拐されでもしたら……」

    「心配性だなジャミルは。大丈夫だよ。ジェイドも一緒だったし」

    「――は?ジェイド?」

    「はい。ずっとカリムさんのそばにいましたよ」


    ジャミルの動向を探るというのはあくまで出久と勝己の目的で、オクタヴィネル三人組の目的はあくまでカリムの調査をすること。マンカラを口実にジャミルを呼び出したのはただのカモフラージュだ。


    「カリムさんは本当に親切な方ですね。色々と丁寧に教えてくださって……」

    「………お前、カリムになにをした?」

    飄々と話すジェイド言葉を聞いた瞬間、ジャミルの目が鋭利なナイフのように冷たく鋭くなった。ただ楽しくお話していただけですよ、と笑うジェイドの口元から捕食者めいた尖った歯が覗く。

    ヒリつく雰囲気の中で、カリムだけが能天気に話続けている。


    「戻ろう、カリム」

    「え?なんだよ、急に」

    「いいから、部屋に戻るぞ!」

    「うわっ!?わかった、わかったから引っ張るなって!」


    ジャミルはカリムの腕を掴み、強引に連れていってしまった。話を中断されたジェイドにカリムが首だけ振り返って謝罪をする。ジェイドは愉しそうに微笑みを返した。


    *二人の勘

    出久 dice1d10=6 (6) +79

    爆豪 dice1d10=9 (9) +71

  • 122二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 07:18:53

    ごんごん勘が積み重なっていく

  • 123二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 14:03:44

  • 124125/02/02(日) 21:59:24

    マンカラ勝負がお開きになった後、6人は部屋に戻ってきた。


    「お疲れさまでした、ジェイド。カリムさんとは“お話し”できましたか?」

    「はい。やはり、アズールの予想通りでした。おそらく――カリムさんは誰かに魔法で洗脳され、操られています」

    「!!やっぱり……!」

    「おや。ミドリヤさんたちはすでに勘づいていたんですね。まだ魔法を学び始めて間もないというのに」

    「……実際に僕が何度か洗脳を受けた経験と、この寮に来てからの体験が似ていたから気づいた」


    カリムに洗脳の力が働いているのは状況からほぼ確実だとして、問題なのは誰がそれを行っているのかということだ。

    あくまで身体能力の延長である『洗脳』の個性とは異なり、洗脳魔法というのは極めて難易度が高くアズールほど優れた魔法士でも人間のように自我が確立した生き物を操るのは難しいらしい。


    「できるかできないかは置いといてー、誰がなんのためにラッコちゃんを洗脳してんの?」

    「残念ながら、それについては聞き出すことができませんでした」

    「ジェイドのユニーク魔法でもわかんなかったってこと?」

    「ジェイドくんのユニーク魔法?そういえば、僕たちジェイドくんのユニーク魔法は見たことないや。どんな魔法なの?」

    ユニーク魔法の話題に食いついた出久に返事をする前に、ジェイドがじとりとフロイドを睨んだ。どうやらあまり種を明かしたくない類の魔法であるらしい。


    「……ま、ミドリヤさんたちには種明かしをしてもいいんじゃありませんか?魔法耐性がない人間は、たとえ真実を知っていても防げるものではありませんから」

    「なんか若干バカにされてる気がするんだゾ……」

    「ハァ~~~~?防ぐわナメんな。気合で防ぎまくるわ」

    「アハハハッ、シャチちゃん必死じゃんウケる」


    *オマケのダイス

    かっちゃん 心操の『洗脳』を気合で防げたことが……

    dice1d2=1 (1)

    1.ある

    2.ない

  • 125二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:02:30

    かっちゃん凄え

  • 126二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:13:33

    タフネスって精神にも作用すんだなー

  • 127125/02/02(日) 22:18:57

    「……はぁ。仕方ありませんね」

    アズールに促され、ジェイドが自身のユニーク魔法について解説を始めた。


    ジェイドのユニーク魔法『かじりとる歯(ショック・ザ・ハート)』は、一度だけ対象に真実をしゃべらせることが出来るというものらしい。

    かなり効果範囲が限定されており、同じ相手に使えるのは一回だけである上、魔法耐性が強い相手や警戒心が強い相手には効果がほとんど出ないとのことだ。


    「たとえ効果範囲が限定的でもすごい魔法だ……!真実だと保証された情報が握れるだけで調査がかなり有利に進むし、死穢八斎會とかAFOみたいな潜伏するタイプの居場所を掴めるだけでヒーロー側のブツブツブツブツ」

    「…………」

    「うわっ、バクゴーの鳥肌がヤベーんだゾ!?」


    *困惑度

    アズール dice1d100=18 (18)

    ジェイド dice1d100=41 (41)

    フロイド dice1d100=54 (54)


    「何だ、急にミドリヤさんが早口に……!?」

    「新しい商材見つけたときのアズールもこんな感じじゃね?」


    「……ともかく、カリムさんはもともと他人との距離感が近いタイプだったので、あっさり僕の魔法にかかってくれました。しかし――……」


    ジェイドの魔法により、カリムは「催眠魔法を使える生徒を知っている」と答えたが、それが誰かと聞くと「言えない」と答えたという。


    ――絶対に他人に教えちゃいけないんだ。昔、約束したんだ。だから言えない。


    それきりカリムは口を閉ざし、それ以上を聞き出すことはできなかったのだという。

  • 128125/02/02(日) 22:20:51

    「はははっ!実に面白い。カリムさんの人情に、ジェイドのユニーク魔法が敗北したわけですね」

    「非常に悔しいですが、そういうことですね」

    ジェイドが全く感情のこもっていない平坦な声でアズールに相槌を打った。面白いどころかつまらなさそうな声色である。


    「カリムくんにとってそれだけ大切な約束ってことは、やっぱり……」

    ジェイドが語った内容は、残酷な真実を示唆していた。「ジャミルは凄い奴なんだ」と無邪気に語るカリムの笑顔が浮かび、出久の胸がズキリと痛んだ。


    「ええ。その意志の固さこそが、今回のスカラビア騒動の真実を白状したようなもの。あとは仕上げです。砂に潜った犯人の尻尾を捕まえるとしましょう」


    *アズール オンボロ寮組に作戦を……

    dice1d2=2 (2)

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  • 129125/02/02(日) 22:31:12

    「さて、明日は忙しくなりますから早いうちに寝るとしましょう」
    「「はい/は~い」」

    「待ってアズールくん、何か策があるなら話してくれたら僕たちも協力するよ」
    「フフフ……。僕を買い被りすぎですよ、ミドリヤさん。今の今で策なんて大したもの思いつきませんよ」
    「でも……」
    「あなたたちも疲れているでしょう?作戦は明日のうちに立てますから、そのときに協力していただくとしましょう。それでは、おやすみなさい」
    「イズク、オレ様もうヘトヘトだから寝たいんだゾ~」
    「……そうだねグリム。アズールくん、おやすみなさい」

    なんだかはぐらかされたような気もするが、アズールは眼鏡を外してさっさと眠る耐性に入ってしまったし、一枚のタオルに一緒に入っているグリムが目をしぱしぱさせ始めたので出久も寝ることにした。

    「出久。明日こそ三つ編みの現行犯狙うぞ」
    「うん、怪しまれないように気を付けないとね。……今日はおやすみ」
    「……すみ」

    勝己とも就寝の挨拶を交わし、出久のすぐ傍で丸くなったグリムに体を寄せた。
    床は固いが、グリムの毛皮が柔らかく暖かかったので、案外心地よく眠りに落ちることができた。

  • 130二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:34:04

    グリムがうっかり話しそうだから共有しないのか、はたまた敵を欺くにはまず味方からというやつなのか…

  • 131二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 23:32:08

    続き楽しみ!

  • 132二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 06:26:40

    このレスは削除されています

  • 133125/02/03(月) 11:55:05

    カラリとした涼しい空気とグリムの温かさを感じて眠ったその夜、出久はまた夢をみた。


    淀んだ空気が王宮を包んでいる。

    黒いターバンをした大臣が、何でも三つの願いを叶える魔人の入った魔法のランプを手にして高笑いをしている。

    大臣は魔人に「魔法の力」を願い、それを手にした。


    ――世界最強の魔法使いジャファーに拍手を!

    ――屈辱を味わうがいい。


    赤いオウムが邪悪な魔法使いの誕生を告げる。大臣は魔法の力を振るい、王と王女を跪かせた。


    ――面白い男を紹介しよう。嘘つきのペテン師め。


    王女を助けようとした絨毯に乗って駆け付けた青年は魔法の力によって王子のメッキをはがされ、みすぼらしい姿を晒した。果敢に彼を助けようと駆けつけた象も、魔法の力が解けて小さな猿の姿へと戻ってしまう。

    本当の姿になっても手を取り合おうとする青年と王女を嘲笑って引き離し、大臣はコブラの形をした長杖を振り上げた。


    ――永遠の追放、あの世の果てまで行ってしまえ!


    青年は魔法の力に抗えず、王宮から遠く飛ばされてしまう。悪しき心の持ち主が強大な力を手にしてしまった絶望が王宮に満ちていく。

    大臣だけが、未来に心を躍らせて声高に笑っていた。


    *出久 夢への違和感 dice1d10=6 (6) +65

  • 134125/02/03(月) 12:21:01

    「……おい、そろそろ起きろや。アラームもう切れてンぞ」
    「う~ん……。僕、また寝言言ってた?」
    「クソでけぇ寝言言ってたぞ。『やめろ!!』っつってな」
    「あー……。あんまり良い内容の夢じゃなかったから、それでかな」
    翌朝、勝己に声を掛けられてようやく出久は目を覚ました。

    「ふにゃ……オアシスまで行進かぁ?」
    「……まだ行進まで時間はあるが、少し前から外が騒がしい。あのクソ人魚どもが何かやらかしてるかもしれねぇ。見に行くぞ」
    「本当だ、まだ早いのに三人とももういないね」
    「寮に化粧品を忘れただとか抜かしてたが、嘘くさくなってきたな」
    時計を見れば、まだ行進には余裕がある時間だった。勝己のベッドの上には栞が挟まれた魔導書が置いてある。朝の文献調査を行っていたようだが、異変を感じて一時中断したようだ。

    「クンクン。なんかスゲーイイ匂いがするんだゾ!スカラビアの飯はピリッとしたスパイスの匂いが最高だったけど、今日のはオリーブとかレモンの香りでちょっと違う感じなんだゾ!腹減ってきた、早く行こう!」

    洗顔も着替えも必要ないグリムが出久を急かす。勝己もすでに朝の支度を終えて出久を待っている。出久は大慌てで顔を洗い、爆発した髪を整え、制服に着替えて支度をしたのだった。



    「ちょ、朝食の準備が済んでいる、だと……!?これは、君がやったのか、フロイド」

    談話室につくと、ずらりと並んだ料理にジャミルが目を丸くしているところだった。どうやら今朝の朝食はジャミルが手掛けたものでないようだ。

    「ウミヘビくん、おはよ~。あっ、モズクちゃんたちもようやく起きてきたの?そ、オレとスカラビアの小魚ちゃんたちが作ったんだ。アズールがさあ、ウミヘビくんを助けてあげたいって言うから」
    「そんっ……、そんな、客人を働かせるわけには」
    「別にオレら客ってわけでもなくね?合宿相手じゃん」
    毒見が必要になるカリムの食事は取り分けてあるから毒見をしておいて、と添えられて、ジャミルが反論に詰まった。そのまま寮生たちが次々に料理を運んできてジャミルに出来栄えを聞くので、ジャミルは渋々でも味見をかねて毒見をせざるを得ない流れになった。

    「……これは一体どういうこと?」
    「絶対ェ裏があンだろ。怪し過ぎるわ」
    「裏があってもなんでも良いんだゾ!オレ様早く食べたい!」

  • 135125/02/03(月) 12:38:31

    「そういえば、今日の朝のオアシスへの行進の準備は出来ているか?いつも朝食は行進の後なのに……」
    「その件のついてですが、オクタヴィネルの寮長たる僕から、スカラビア寮長たるカリムさんへ改善案を提案しまして」
    「わっ、何だ急に!?」

    後ろから突然現れたアズールにジャミルの肩がビクッと跳ねた。胡散臭さMAXの満面の笑みを張り付けているので妙な圧がある。
    どうやら、アズールはカリムに科学的な根拠をもって長距離歩行よりも軽度な筋トレをした方が良いと勧めてきたようだ。トレーニング前に朝食を摂るべきだとも。過酷な行進から解放されたスカラビア寮生たちが喜びの声を上げる。
    ちなみに、朝食前に行進することに対して出久と勝己も何度か意見を申し入れていたが、検討すると言われたきり放置されていた。それがたった一日で変わってしまうとは。
    「俺らが口出したときはなんやかんや理由つけて行進止めンかったクセに……」
    「ものすごく強引だけど、これくらいやらないとダメだったのかなぁ。やっぱり経営者なだけあって行動力がすごいね!」

    「おはよう。お、もうメシの準備が出来てるのか」
    傍にジェイドを伴わせてカリムも談話室へとやってきた。様子から察するに、今朝の衣装の身支度などはジャミルではなくジェイドにやってもらったようだ。

    「ラッコちゃん用はウミヘビくんの毒見も済んでまーす。どうぞ召し上がれー」
    「「いただきまーす!」」

    一昨日までの殺伐とした雰囲気が嘘のように和やかな朝食が始まった。

    「このスープ美味しいね!」
    「ミドリヤもそう思うか?熱砂の国のスープとは違うけど、爽やかな味でなんか良いよな!」
    「でしょー。シーフードたっぷりの珊瑚の海風スープだよ」
    エスニックな味付けだった熱砂の国の料理もおいしかったが、フロイドが手掛けた珊瑚の海風の料理はイタリアンのような味付けで馴染みがあって食べやすい。
    最も、辛党の勝己は熱砂の国の料理の方が好みだったが。

    「…………」
    ジャミルは無言のまま、フロイドの料理を食べるカリムにじっと視線を向けていた。

  • 136125/02/03(月) 13:12:47

    「……塾の学習サポートってこんな感じなのかな。塾行ったことないから完全に想像だけど」
    「いや、どっちかっつーとこれはコンサル入れてノウハウ丸ごと入れ替えになっとる感じじゃねーか?コンサルの仕事リアルタイムで見たことねーから知ンねーけど」

    その後もオクタヴィネルの勢いは留まることを知らなかった。アズールの計画力と行動力をリーチ兄弟がそれぞれの得意分野からガッチリ補強して、阿吽のスリーマンセルで多少無茶なやり方を可能としている。一日足らずにスカラビアの特訓は原型を留めずにガラリと内容を変えていた。

    アズールが提唱した特訓法や勉強法はどれも理に適ったものばかりで、できる生徒をさらに伸ばすのもそうだが、できない生徒ができるように後押しすることに特に長けていた。
    すぐに効果を実感したスカラビア寮生たちの間から「悪い夢を見ていたみたいだ」「こんなに有意義なら学校に残ったのも悪くないな」と合宿に好意的な意見すら聞こえはじめる。

    「アズールは本当になんでも知ってるんだな。すごいぜ。オレ、よくわからないままがむしゃらに頑張ろうとして……寮生たちに無理させちまってたのかもな。同じ2年生寮長だってのに、オレは未熟者だ」
    「間違いは誰にでもあります。バケーションはまだ半分を過ぎたばかり。これから取り戻していけばいいじゃありませんか」
    優しく諭すアズールにカリムがキラキラとした目を向ける。
    それを少し離れたところから見守るジャミルは、対照的に能面のような顔をしていた。

    「そういえばコンサルティングってすごく高いんだっけ?」
    「ああ。昔ヒーロー事務所向けのコンサルを調べてみたことがあっけど、クソ高かったわ」
    「そっかぁ。どれくらいだった?」
    「年間契約で888万くらい」
    「「…………」」
    「オメーら、課題がもう終わってるからって余裕出し過ぎなんだゾ!オレ様の分もやってくれ」
    「ダメだよグリム、それだと君の力にならないんだから。手助けはするけど、ちゃんと自分でやらないと」
    「ふなぁ~~」

  • 137二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 15:08:45

    他の章は寮内でイザコザが起きてるけど、オクタだけは身内争いしないんだよな
    元ネタ的にもウツボはデスニーの手下には珍しい忠実で有能なタイプ
    さすがのチームワークやで

  • 138二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 15:54:33

    >>137

    あの二人が反旗翻す展開って、もうアズールを完全に見限ってる状態だからね…

  • 139二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 16:25:07

    >>138

    オバブロ寸前アズールにダサいってばっさり言ってたのを思い返すと、展開次第じゃ見限ってたかもね

  • 140二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 20:06:33

    オクタの関係性も一言じゃ言い表せないよね
    幼馴染や友人というには淡白な感じだし
    面白いからとか利害一致の共犯者かと思えばオバブロ時や7章の様子をみてるとそこまでそっけない感じでもない

  • 141125/02/03(月) 21:27:59

    「……おや、もうすぐ3時だ。もう少し勉強したら休憩をとりましょう」

    「お茶を準備してきましょうか?」

    「いえ、僕が準備しましょう。一番課題が進んでいますので」

    時計を確認したアズールが席を立つ。ジャミルがティーブレイクの支度の手伝いを申し入れ、二人でキッチンの方へと連れ立っていった。


    「「…………!!」」

    「動きがあった、なにか仕掛ける気かもしれない……!」ヒソヒソ

    「三つ編みも詐欺眼鏡も油断ならねぇ。尾けんぞ」ヒソヒソ

    ジャミルが黒幕ならば、彼が離れている間はカリムの異変も起きないだろう。むしろ厄介なのはアズールの方であり、彼に魔法を行使されると何か悪いことが起きても止めるのが難しい。二人は目だけで会話をすると、二人がかりで尾行することに決めた。


    「ちょっと便所行ってくるわ」

    「あっ、僕も行く!」

    課題なんてとっくに終えて文献調査に入っていた二人は、魔導書に栞を挟んで机に置いた。


    「グリム、カリムくんの様子がおかしくならないか見守っててくれる?」ヒソヒソ

    「しょうがねーな、任せるんだゾ!」ヒソヒソ

    頼もしい返事をしたグリムの頭をひと撫でして席を立つ。行き先はもちろんお手洗いではなくキッチンだ。



    そろりと息を殺して廊下を歩き、キッチンへと忍び寄る。

    そのとき。


    「お二人とも、少しお時間よろしいでしょうか?」

    「今から面白いとこだからさぁ、邪魔されちゃ困るんだよねー」

    足音もなく、二人の背後にリーチ兄弟が立っていた。


    *対抗ロール

    出久&勝己 dice2d500=379 278 (657) (不意打ちデバフあり)

    リーチ兄弟 dice2d500=123 156 (279) +300 (魔法補正)

  • 142125/02/03(月) 21:30:48

    ここから暫く幼馴染不在で話を進めます

    二人がいないシーンですが、カットすると話が分けわからなくなっちゃうので



    >>141

    ダイスの結果を受けて先にロールしときます

    *ダメージロール

    出久 dice1d10=1 (1)

    爆豪 dice1d10=8 (8)

    ジェイド dice1d30=8 (8)

    フロイド dice1d30=5 (5)

  • 143二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:32:11

    補正あっても勝ってる…こわ…
    不意打ちに慣れてるもんな…

  • 144二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:32:44

    対抗成功したからダメージロール少なめになったってことでいいのかな

  • 145125/02/03(月) 21:46:08

    「現時点で寮生の課題の達成度は前日比15%アップ。なかなかの成果です。グリムさんからカリムさんが情緒不安定にあると聞いていたのですが……僕らが来てからは、彼の心も落ち着いている様子。カリムさんも寮生からの信頼を取り戻せそうで良かったですね」
    「…………それじゃあ、困るんだよ」ボソッ
    低く唸るように、恨みさえこもった声色でジャミルが呟いた。

    「え?」
    「悪いが、これ以上君らをスカラビアには置いておけない。海の底へ帰ってもらおう」
    「ジャミルさん、急にどうしたんです。僕、なにか気に障ることでも……」
    「本当にわからないのか?この俺の、悲しい顔を見ても?」
    フードの影の下から、ジャミルの切れ長の目がアズールを睨めつける。

    「え…………?」
    「……俺の目を見たな。馬鹿め」
    その瞬間、ジャミルが魔法の詠唱に入る。『蛇のいざない(スネーク・ウィスパー)』。魔法を受けた途端、急激に襲い来る抗いがたい頭痛にアズールが苦悶で呻いた。

    「抗えば苦痛が長引く。さっさと諦めて従うんだ。――さあ!」
    「うう、う………………」
    アズールは少しの間呻いていたが、やがて声が止んだ。

    「……アズール、お前の主人の名は?」
    「僕の主人は――……。あなたさまです、ジャミル様」
    次にアズールが目を開けたとき、空色だったはずの瞳が赤々と不気味に光っていた。

    「なんなりと、ご命令を。……ご主人様」
    「……フ、ハハ。ハハハハハ!」

    アズールの意識をその手に収めたジャミルが愉快極まれりと高笑いを上げる。そこに「地味で大人しい」と称される彼の姿はなかった。

  • 146125/02/03(月) 22:03:10

    「俺を“平凡な魔法士”と思って油断していたな。オクタヴィネルの寮長ともあろう者が、ザマァない。まったく……お前らのせいでコツコツ進めてきた計画がパァだ!あともう少しで寮生の奴らが反旗を翻してカリムを追い出してくれそうだったのに。オンボロ寮の奴らは思っていたよりも使い物にならなかったし、外の奴らもロクなものじゃない」

    深いため息を吐いたあと、ジャミルはできの悪い人形に愚痴をこぼすように心境をひとりごちた。
    全ては、自身の手を汚さずにカリムを寮長の座から引きずり下ろすため。そのためにジャミルは面倒な下準備を積んで、今回のスカラビア騒動を起こした。

    「まずはアズールに命令して双子と共にさ喃語の海へ帰省させて……いや、待てよ。アズール、君は先日契約で奪った能力を元の持ち主に返還したんだったな?」
    「はい……。チッ、ではランプの魔人のようにコイツを便利に使うことは無理か。アズールの『黄金の契約書』の利用価値は高いが、コイツを長時間洗脳し続けることは難しいし……」
    「……ですが、契約内容は覚えています」

    落胆する主に朗報を聞かせるようにアズールが告げる。自身と契約するに至った人物の悩みも、弱みも、欲望を、全て覚えているのだと。
    「その中に学園長、ディア・クロウリーの秘密はあるか?」というジャミルの問いにも、アズールは是を返した。その瞬間にジャミルの黒い瞳が仄暗い喜びで輝いた。

    「は、ははっ……やった。やったぞ!!これで全て上手くいく!やはりお前は俺のランプの魔人だ、アズール!学園長の弱みが握れればやっと俺は自由になれる……学園からカリムを追い出し、寮長になれるんだ!」

    天を仰いで開放の予感に酔いしれるジャミルに、しかし、水を差す言葉が廊下に響いた。

    「……話は聞かせていただきました」
    「!?」

    果たして、廊下に立っていたのはジェイドだった。
    普段は執事然として美しく整えられている身なりだが、今は生傷だらけで髪も乱れている。辛うじて服は伸ばして整えられているが、黒いシルクの襟に靴跡のような汚れが残っていた。

    「…………いや、お前なんでそんなにボロボロなんだ?」
    「フフ……獰猛な獣を二匹ほど相手してきまして。お恥ずかしい限りです。陸の獣は恐ろしいですね」

  • 147125/02/03(月) 22:11:37

    「……今はそんなことは良い。お前、どこから聞いて……!」

    「最初から全て、ですよ。談話室を出てからのお二人の会話は、ずっとアズールのスマートフォンから全世界にライブ配信されていたんです」

    「は…………?」

    ジェイドの言葉にジャミルが呆然と目を見開く。追い打ちをかけるようにジェイドが現在の視聴状況を告げた。現在視聴中のユーザーは5000人越え、『某有名魔法士養成学校の闇実況』として話騒然だと。


    「副寮長の晴れ舞台。もちろん寮生のみなさんも談話室に集まって視聴中です」

    ジェイドの言葉を裏付けるように荒い足跡が廊下に響く。


    「ジャミル副寮長、今の話は本当なんですか?」

    「今までずっと、寮長や僕たちを騙していたと……!?」

    寮生に取り囲まれたジャミルの表情は、愉悦から一転して絶望に染まる。寮生たちの圧に気圧されるように、足が一歩後ろに下がった。


    *寮生の中にグリムは…… dice1d2=1 (1)

    1.いる

    2.いない


    *今ごろの二人 dice1d3=1 (1)

    1.出久が頑張っている

    2.勝己が頑張っている

    3.グリムが駆け付けている(↑が1だった場合は再ダイス: dice1d2=1 (1)

  • 148125/02/03(月) 22:25:39

    「いい人ぶっておいて、ひでぇヤツ!とんだ嘘つき野郎なんだゾ!」

    「そ、それは……、違う、俺は……っ」

    「もう言い逃れは出来ませんよ。アズールに使った洗脳魔法が動かぬ証拠。貴方こそユニーク魔法でカリムさんを操り、スカラビアを混乱に招き入れた黒幕だ!」

    名探偵のようにジェイドが人差し指をつきつける、スカラビア寮生たちの視線がジャミルに突き刺さる。


    ジャミルはもはや焦ることすら無駄だと悟り、すわった目をスッと細めた。

    「事を荒立てるつもりはなかったが、こうなれば仕方ない。アズール!命令だ!コイツら全員ねじ伏せて、拘束しろ」

    「……はい、ご主人様」

    「くっ……、アズール!いけません。正気に戻りなさい!」

    杖を構えたアズールにジェイドが焦った表情でマジカルペンを握って対峙する。


    「呼びかけなど無駄だ!」

    「はい。僕は、ジャミル様の忠実な下僕…………――な、わけないじゃないですか」

    パチリ。アズールが一度瞬きをすると、瞳に宿っていた不気味な赤い光がすっかり消え失せた。


    「……なにっ!?」

    「ジャミルさん、さきほどのお言葉、そのままあなたにお返ししますよ。僕を“傲慢な魔法士”と思って油断していましたね。熟慮の精神をモットーとするスカラビアの副寮長ともあろう者が、ザマァない」

    「どういうことだっ?確実に目を見て、洗脳したはず……」

    「僕はいつでも万全の対策を練ってから行動を起こす堅実な魔法士ですから。ねえフロイド」

    アズールが廊下の向こうに呼びかけると、柱の陰からフロイドが現れた。


    *二人はフロイドと dice1d2=1 (1)

    1.一緒にいる

    2.一緒にいない

  • 149125/02/03(月) 22:28:37

    ちょっとダイス

    *フロイドの機嫌 dice1d2=2 (2)

    1.すこぶる良い

    2.すこぶる悪い

  • 150125/02/03(月) 22:50:10

    「あー、マジでサイアク。殴られまくって全身イテぇし。寮服ぐちゃぐちゃだし。革靴踏まれたし。縄で縛ったのにモズクちゃんが秒で抜け出してきてマジでキモかったし」
    現れたフロイドもジェイド同様にボロボロで、機嫌が地を這って目がかっぴらいていた。

    色々ツッコミどころはあるが、最たるものはその声だろう。フロイドの甘さを含んだハスキーな声が、今は渋くダンディなものに変わっている。

    「ふな”っ!?オメー、なんだその声!?」
    「あー、コレ?アズールと契約して、この低い声をもらったんだぁ。どお?渋くていいでしょ」
    今の渋い声を気に入っているのか、フロイドの機嫌が上向きになる。

    「かわりにぃ、オレの自慢のユニーク魔法『巻きつく尾』をアズールに差し出した」
    アズールはフロイドから担保として預かった『巻きつく尾』を使用してジャミルの『蛇のいざない』の矛先を逸らすことで洗脳を免れたと種を明かした。瞳の色は魔法で変えただけのパフォーマンスだとも。

    「そして、操られたフリで、油断したジャミルさんから真相を聞き出した……というわけです」
    「さすがアズール!めちゃくちゃ性格わりぃんだゾ!」
    「ま、カリムさんがジェイドのユニーク魔法にも屈さないほど強く想う相手など彼しかいないだろう……と予想がついてたからこそ立てられた作戦ですがね」

    「オイ、クソ狸!それはどうでもいいからちょっと手ェ貸せ!整復すンのに片手じゃキツイ」
    「かっちゃん、今は僕のことはいいから」
    「良かねぇわ!!大人しく整復されとけや!!応急処置は迅速にすンのが鉄則だろ!!」
    「ふな”っ!?イズク、その手首の肩どうしちまったんだゾ!?」
    出久の肩と手は現在関節から外れており、だらんと垂れ下がっている。

  • 151二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 23:06:05

    縛られてすぐ腕と手を脱臼させて縄抜けしたんか…
    OFA無いのに厄介さ変わらなくて笑う

  • 152二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 06:26:47

    雄英の授業にあったのかしら…
    デュースあたりは僕にも教えてくれって言いそう

  • 153二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 07:17:06

    やり合う前からボロボロの双子草だし
    縄抜けに間接外すの見たらそらキモイ言うわ

  • 154二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 12:30:35

    ア「不意打ちからの適切な護身術…的確で素早い縄抜け…もしコレを希望者にレクチャーするセミナーを開催したら……?」
    「ミドリヤさん!バクゴーさん!少々お時間をいただけませんか!?」

  • 155二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 14:54:47

    相澤先生直伝の可能性が

  • 156二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 15:17:07

    >>154

    いいのか?そこに頼むともれなく間接外すことが必須事項になるんじゃないか?

  • 157二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 15:26:40

    相澤先生はアングラなのもあってそういうの手慣れてそうだからな…ありえる
    なお教えるとは到底思えないので動き方から推測してなるほどこうかな?ってやった可能性

  • 158二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 20:46:26

    そういや相澤先生、荼毘(トゥワイス製)捕獲したとき、躊躇なく骨折ってたな…

  • 159125/02/04(火) 22:45:25

    数十分前。
    廊下で突如リーチ兄弟に襲われた二人だったが、命がけの戦いの中で培われた勘によってほとんど反射的に反撃に入ることができた。

    「おや、まさか防がれるとは……!」
    「なんのつもりだクソウツボ兄弟!!」
    「邪魔されると困るってことは……、僕たちが止めずにはいられないような策に出るってこと?」
    「すぐに分かりますよ」
    そこから二人はリーチ兄弟と殴り合いを繰り広げたが、途中でジェイドがどこからともなく取り出したロープを魔法でベストジーニストのように操って二人を縛り上げてしまった。それも、ご丁寧に腕を後ろ手に回し、背中合わせにした二人の手の平を互いにくっつけた状態で。勝己が下手に爆破を使うと出久ごと吹き飛ぶように、いやらしく計算された縛り方だった。

    「危なかったー。たまにはジェイドの意味わかんない趣味も役に立つじゃん」
    「険しい山登りにはロープワークの技術が欠かせませんからね。さて、折角のアズールのショーですから、彼らにも見せてあげましょう」
    ジェイドがスマホを操作して、件の配信動画を再生した状態で二人の眼前に魔法で固定する。アズールとジャミルの他愛ない会話は雲行きが怪しくなり――。

    ゴキ。ボキ。
    そのとき、およそ人体から軽々しく鳴るべきではない音が廊下に響き渡った。

    「――“セントルイススマッシュ”!!!」
    「ぐっ……!?」
    「!!……自力では解けないように結んだはず、一体なぜ……!まさか自分で関節を……?」
    肩から脱臼した腕をだらりとぶら下げたまま、出久はフロイドに強烈な腹蹴りを食らわせた。腕の損傷と隣り合わせの時期が長かった出久にとって、腕が使えない状態は致命的なハンデにはなり得ない。痛みも指を一本一本を粉砕していったときに比べれば遠く及ばなかった。

    「くっ!フロイド、この場は頼みます!僕はアズールの補佐に!」
    「えー……。しょうがねーなぁ」
    「どいてフロイドくん!こんな配信、すぐに止めなきゃ!」
    「ふざけた真似してくれたなァ、ヘラウツボ!」
    出久を巻き込む心配が無くなれば、爆破で縄を焼き切るなど勝己にとっては朝飯前だ。勝己も縄を抜けて左手をバチバチと弾けさせた。
    そうして三人がしばし戦ったところで配信動画が佳境に入り、フロイドがこれ以上二人を足止めする理由がなくなったところで、フロイドもアズールのもとに駆けつけて今に至る。

  • 160二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:16:20

    ・指残弾
    ・腕に爆弾(内側から爆竹が破裂)
    ・↑の状態でさらに腕グチャグチャ
    ・両腕欠損

    これまでを考えると間接外しの痛みはデクにとって何の躊躇にもならんね

  • 161二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:26:16

    腕の被害が毎度毎度ひどすぎる

  • 162二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 00:03:44

    腕、大事にしろよ……

  • 163二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 06:28:00

    そうだな間接外して抜ける程度躊躇わねえわな

  • 164二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 06:28:23

    >>160

    あらためて振り返ってみるとマジでイカれてる

    高校生が体験する内容じゃないんよ

  • 165二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 10:42:12

    エリちゃんコンボとかほんとなら発狂もんだろうに周囲の被害を気にしながらの全力戦闘だもんね

  • 166二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 11:05:46

    しょうがないっちゃあしょうがないけど、この2人とNRC…相性悪いなぁ(主に解決方法のスタンス)

  • 167二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 11:21:31

    メインで出てる生徒や先生のほとんどがヴィランモチーフなNRCだし…モブもヴィラン精神宿してる奴いっぱいだし…そりゃ相性は良くないよねって…

  • 168二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 19:36:53

    NRC生の精神性ヒロアカ終盤のヒーロー排斥市民と大差ない
    自分さえ良ければいい、自分の方が上手くやれるで行動した結果自分の首しめてる

  • 169二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:26:34

    でも友人知人がオバブロしたらどうにかしようとする気概はあるから…

  • 170二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 06:41:04

    スレ主さんの落とし込み(すり合わせ)がうまくてわくわくする 保守

  • 171二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 14:13:29

    まあ根がヴィランな奴らの中にTHE ヒーローって感じの精神構造なデクと感化され後のかっちゃんだからそりゃあ相性は良くない
    ただNRCのやつらは能力があるって見なしたら対等に扱うようにはなる(今までを顧みるとは言ってない)から本物のヴィランよりはかわいいし隙があるって感じ

  • 172二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 22:14:09

  • 173125/02/06(木) 22:15:30

    「しっかり掴んどけよクソ狸。……オラァッ!」

    ベキャ。ボキャ。

    「ア”ッ!いてて……」
    「それ、どう考えても『いてて』で済む音じゃないですよね」

    関節を嵌め直す嫌な音と出久の気の抜けた声があまりにも不釣り合いで、アズールがドン引きした。

    「アズールくん、今すぐ配信を切って!こんなやり方はダメだ!」
    「おや、何故です?この映像が、彼の犯行の動かぬ証拠として機能するんですよ」
    「だからって!こんな吊るし上げるみたいなやり方はやり過ぎだ!」
    「タチ悪い私刑みてェな真似しやがって。テメェのリテラシーは随分低いみてぇだな」
    勝己の煽りにアズールのこめかみがひくりと痙攣したが、余裕そうな態度は崩れない。

    「カリムくんだって、きっとこんなやり方望んでないはずだ」
    「ジャ……ミル?」
    噂をすれば、というけれど。出久がカリムの名前を出したのと、本人が渦中に現れたのほとんど同時だった。

  • 174125/02/06(木) 22:31:51

    「これは一体……どういうことだ?」
    「カ、カリム………」
    「お、お前がオレを操っていたなんて……嘘だよな?」
    カリムの大きな赤い瞳が揺れている。凛と張った声も、今は頼りなく震えていた。

    「最近たまに意識が遠のいて、いつの間にか時間が過ぎたりしたことがあったけど……でも、ただの貧血か居眠りだろう?オレ、どこでも寝ちまうからさ。お前にもよく怒られてたし。なあ、そうだろ?オレ、居眠りしてただけだよな?」
    楽観的な言葉も、水気を含んだ震える声で紡がれると痛々しい。
    ジャミルは、縋るような響きを孕んだカリムの言葉に、ただ無言だけを返した。

    「お前がオレを操るなんて、オレを追い出そうとするなんて、するわけないよな?」
    カリムの語気が荒くなる。丸い瞳は、涙をこらえるように下まぶたが歪んでいた。

    向き合った二人の幼馴染を見守る出久の胸が痛む。

    「ジャミル、お前だけは……お前だけは絶対にオレを裏切ったりしないよな?だってオレたち、親友だろ!?」
    ほとんど叫ぶようなカリムの声に、ジャミルの表情が歪む。

    「ははははははははは」
    「ジャミル……?」
    「あはははははははははははははははははははは!!」
    先に決壊したのは、ジャミルの方だった。壊れたような異様な笑い声が、スカラビアの廊下に響き渡る。

    「………………そういうところだよ。俺はな……物心がついた時から、お前のそういう能天気でお人好しで馬鹿なところが……大っっっっっ嫌いだったんだ!!!」
    長年溜め込んだ腹の中身をぶちまけるようにジャミルが叫んだ。

    二人を見守るのが苦しい。
    だって、カリムもジャミルも、互いに救けを求める顔をしているのに、二人の願いは相反するものなのだから。

  • 175125/02/06(木) 22:39:52

    「こっちの苦労も知らないでヘラヘラしやがって!!お前の笑顔を見るたび虫唾が走る。もううんざりだ!!」

    喉を割るようなジャミルの叫びは、彼の心の悲鳴だった。

    ジャミルの目が座り、すっと細められる。


    「もう取り繕っても意味がない。俺はな、お前さえいなければと毎日毎日願い続けてきた。だが、それも今日でおしまいだ!俺も、家族も……なにもかも、どうにでもなれ!!」

    追い詰められて全てを捨てた人間は、ときとして何をも恐れずに大胆な行動に出る。往々にして、その衝動は悪い方向へと突き進む。


    「瞳に映るはお前の主人……。尋ねれば答えよ、命じれば頭を垂れよ。『蛇のいざない』!」

    「待て、ジャミル!!」


    魔力の残量を度外視して、ジャミルがその場にいた者全員に無差別に洗脳魔法をかけはじめた。

    ジャミルの瞳を見たものを対象とするきわめて条件が軽いユニーク魔法が、彼に注目していたスカラビア寮生たちの自由を蛇のように絡めとっていく。


    *対抗回避ロール

    出久 dice1d100=45 (45)

    爆豪 dice1d100=89 (89)

    ジャミル dice1d100=5 (5)

  • 176二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 22:42:58

    不本意で洗脳されたから今度は食らわねえって精神のかっちゃんだ

  • 177125/02/06(木) 22:53:45

    ジェイドに配信を見せられていたことが幸いして、二人はジャミルの魔法の発動条件を踏まないように咄嗟に目をつぶることができた。


    「なっ……!まさか寮生全員を洗脳にかけただと!?信じられない。これほどの大人数を同時に、しかも個別に操れるなんて!平凡なんてとんでもない。彼の魔力はスカラビアどころか学園の中でも間違いなくトップクラスだ」

    二人とは異なり魔法耐性のあるアズールは目を開けていられるのか、周囲の状況に驚愕して独り言をもらした。


    「みんな、正気に戻って!傷つけたくない……!」

    「ひっつかむな!!ああっクソ!オネンネしてろや!!」

    ディクテイターの差し向けた市民に押しつぶされたときのように、出久と勝己は操られたスカラビア寮生に群がられた。

    振り払おうとしてもキリがない。


    遠くで人体を僕つ鈍い音がする。「こいつらゾンビかよ」というフロイドのうんざりしたような声が聞こえてきた。

    操られた寮生たちは、傷ついてもなお戦うように命じられているらしい。


    「ジャミル!もうやめろ、わかったから。お前が寮長になれ!オレは実家に戻るから……っ」

    「はぁ?なに言ってんだ。俺の呪縛は、そんなことで簡単に解けはしない……。カリム、お前がこの世に存在するかぎり!」

    悲鳴にも似た二人の叫び声が聞こえる。


    「ジャミルくん!これ以上はダメだ。こんなにすごい魔法を使い続けたら、ブロットが……」

    「うるさい!俺に命令するな。俺はもう、誰の命令も聞かない!!俺は、もう自由になるんだ―――!!」


    ジャミルの叫びとともに、禍々しい気配が膨れ上がるのを二人は肌で感じた。

    すでに何回か経験しているこれは―――。


    「オーバーブロット……!」


    *対抗回避ロール

    出久 dice1d100=19 (19)

    爆豪 dice1d100=78 (78)

    ジャミル dice1d100=78 (78)

  • 178125/02/06(木) 22:54:49

    同値は迷いますが、かかってるけど気合で耐える感じでいきます

  • 179125/02/06(木) 23:50:06

    「援軍の見込みがない冬休みだというのに、厄介なことになりましたね……ブロットの負のエネルギーが膨れ上がっていく、みなさん構えてください!」
    「俺の前にひれ伏すがいい!!」

    目を開けられない二人に向かって「そいつらの目をこじ開けろ」とジャミルが命じた。四方八方から顔に手を伸ばされ、誰かの指がまぶたを捲り上げる。
    その瞬間、罠にかかった獲物を捕らえる蛇のように、禍々しい姿に変貌したジャミルの瞳が二人の目を覗き込んだ。

    「「!!!」」

    くらり、と強い眩暈が出久を襲う。次の瞬間、出久はまた真っ暗な継承者の部屋に沈み込んでいた。
    心が体の内側に閉ざされ、手足を自由に動かすことができない。

    「クッソ……、誰がテメェの言うことなんか聞くかよバァーーーーカ!!」
    「なにっ!?魔法耐性がないくせに、俺の魔法に耐えただと!?」

    魔法の強さと効果に最も影響する要素は想像力、イマジネーションだ。
    従属というものを体の芯まで刷り込まれているジャミルだからこその洗脳のユニーク魔法だが、人類とそりが合わない男であり、常人には理解しがたい精神構造をもつ勝己を従わせるためのイメージは若干ディティールが足りず、十分な効果を発揮するに至らなかった。

    「……まぁ良い。お前にかからずとも、どうせ同士討ちで潰れる」
    「!!」
    その瞬間、一時的に支配権を奪われた出久の体が勝己に襲い掛かる。深緑の目は、今は赤い光を宿して不気味に輝いていた。

    「お前……。こンの……、目ェ覚ませや!!」
    「…………」
    「爆破されてェのか!!さっさと起きろ出久!!!」

    『ダメだ、止まって!おい僕、なんでかっちゃんに攻撃するんだ!止まれ!!』

    何もない空間で、出久の声が虚しく響く。
    精神世界にいながら、二重で肉眼からも視覚情報が入ってくる。自分の手が勝己の左手を固く握っており、勝己は爆破を出せずに膠着状態に陥っている。
    アズールたちは検討しているが、相手はカリムを除いたスカラビア寮生全員だ。魔力残量とブロットの許容量という制限がある中で、次第に追い詰められていく。

  • 180二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 23:54:51

    >>173

    まぁ、アズールの性格上、自身に不利益が被りそうな映像を全世界配信なんかしないけど…

    (学園、及びアジーム家の不祥事)

  • 181125/02/07(金) 00:02:42

    「離せ出久!!……チッ、ちょっと熱したくらいじゃビクともしねェ!」


    固く手を握られた状態で爆破を放てば、出久の手首から先が吹き飛んでしまう。反射によって手が引っ込むことを期待して掌の上で極小の爆破を起こして熱してみたが、ジュウと皮膚が焼ける音を立てても手の力が緩む気配がない。

    これ以上熱せば二人の掌の皮が癒着してしまうと判断し、勝己は爆破の力をひっこめた。


    『何やってんだよかっちゃん!爆破してでも僕のことどかしてよ!!かっちゃん!!』



    「無能な王も、ペテン師も……お前らに用はない!宇宙の果てまで飛んでいけ!そして、二度と戻るな!」


    ジャミルと繋がった赤い魔人のような姿のブロットの化身が、魔力でゴルフクラブのようなものを形成し、思い切り振り被った。


    「ドッカーーーーーーーーーーン!!!」


    ジャミルが子どものように叫んだ瞬間、その場にいたカリムとオンボロ寮とオクタヴィネル寮のメンバーをとてつもない衝撃が襲い、体が天高く吹き飛んでいた。


    「ナイスショーーーーーーット!フハハハ!あばよ、カリム!!ひゃーーーーーっはっはっはっはっは!」


    悲鳴と、狂ったようなジャミルの笑い声が、砂漠に響き渡った。


    *ダメージロール

    出久 dice1d100=42 (42)

    爆豪 dice1d100=37 (37)

    グリム dice1d100=12 (12)

    カリム dice1d100=71 (71)

    アズール dice1d100=60 (60)

    ジェイド dice1d100=35 (35)

    フロイド dice1d100=24 (24)

  • 182二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 00:06:47

    よりによってカリムが一番重症だ…!

  • 183二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 03:27:20

    >>179

    >人類とそりが合わない男であり、常人には理解しがたい精神構造をもつ

    散々な言われようで草

    丸くなったとはいえさすがベストジーニストの82にも抗うかっちゃん

  • 184二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 09:47:00

    ジャミルのユニーク魔法解釈めっちゃ好き…
    からのかっちゃんに草

  • 185二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 18:22:40

    かっちゃんに笑うしかねえwwww

  • 186二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 18:23:13

    >爆破してでも僕のことどかしてよ!!

    そういうとこだぞデク

  • 187125/02/07(金) 22:54:30

    「「「ああああああ~~~~~~~~~~~~っ!!!」」」

    六人はジャミルにかっ飛ばされ、雲の上まで投げされていた。あまりの衝撃で、出久にかけられた洗脳魔法の効果も一緒に吹き飛んでいた。


    「~~~~っ、落ちたら死ぬ!!かっちゃん!!」

    「わーーっとる!!テメェら俺に捕まれ!!」

    片腕が不自由ゆえに空中での姿勢制御が難しい勝己の体を、出久が背中側から固定する。


    「グリム、カリムくん、僕に捕まって!!」

    「ふなぁ、頼んだんだゾ!」

    「っ、わかったミドリヤ!」

    グリムが尻尾を伸ばして出久の腕に巻きつけ、カリムが空中でひらりと舞って出久に後ろからしがみついた。


    「フロイドくん!アズールくんとジェイドくんを回収して、こっちへ!!」

    「オッケー」

    空とは縁遠い種族である人魚にはショックが大きかったらしく、ジェイドは空中で石のように硬直し、アズールはプレゼントマイクばりの声量で金切声を上げていた。

    三人組の中で一番空中での姿勢制御が得意なフロイドが左手でアズールを、右手でジェイドを引っ掴み、両脚でカリムの胴にしがみつく。

    空中でバラバラにならないよう、六人は空中でトーテムポールのような塊になった。


    「人間の脚って短くて、巻きつくのに不便~~」

    「フロイドの脚は長いから自信もっていいと思うぜ!ダンスするときとかすごく映えると思う!」

    「え~本当~?」

    「テメェら、黙ァってろ舌噛むぞ!!!もうすぐ着地だ!!」

    マイペースなフロイドとカリムの口を閉じさせ、勝己は左腕を地面に向かってかざた。爆破の反動で体が回転しないよう出久が後ろから支える。


    「“爆風地雷”!!!」


    BOOOOOOM!!

    落下の衝撃を相殺すべく勝己の爆破が炸裂する。爆音とととに衝撃波が発生し、冷えた砂が宙を舞った。


    *爆豪 反動ダメージ dice1d10=1 (1)

  • 188二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 23:00:14

    さすかっちゃん!

  • 189二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 06:06:13

    雲の上から落ちたら普通死ぬので幼馴染の対応はまっとうになんだけど、ここ原作だと普通に「いてて…」で済むのが笑うんだよな

  • 190二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 14:14:50

    反動最小限、さすがかっちゃんだ

  • 191二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 22:24:14

    年のため保守

  • 192125/02/09(日) 00:01:53

    「テメェら全員無事か!?」
    「おかげさまで無事だよ!ありがとう」
    「イテテ…………なんか最近こんなのばっかりなんだゾ~~」
    六人が落ちた先は、昼間だというのに夜のように薄暗く、灼熱の砂漠とは打って変わって凍えるような寒さの場所だった。ジェイド曰く、ここはスカラビア寮の存在する時空の果てであるらしい。

    「グリムさんは毛むくじゃらですし、僕たち人魚はある程度寒さに強い身体ですが、ミドリヤさんとバクゴーさんとカリムさんは長時間ここにいるのは命の危険を伴いそうな寒さだ」
    「魔法で飛んで戻れないの?」
    「残念ながら、ここには箒も絨毯もありませんから、飛んでいくことはできません。どう致しましょうか」
    「だるいけど、歩いて帰るしかなくね?」
    「吹き飛ばされて着地するまでかなり滞空時間が長かった。徒歩で変えるには何十時間かかるか……それにしてもフロイドのその声、落ち着きませんね」
    ダンディな声は十代の少年の喉から出てくるには強烈な違和感がある。出久としても、なんとなくAFOっぽい声なのでソワソワしていたところだ。
    アズールは黄金の契約書を取り出すと、「契約を破棄しましょう」と言って破り捨ててしまった。途端、フロイドにかかった魔法が解けてもとの声に戻った。

    「アズールと契約してユニーク魔法を“貸す”だなんて、よくできますね。我が兄弟ながら感心します。なんだかんだ理由をつけて魔法を返してくれない気がするので。僕なら絶対にアズールと契約なんてしたくありませんよ」
    「確かにアズールならやりそうだからさ。オレ別に魔法が返ってこなくてもいーし。声に飽きたらまた別の契約すりゃいいじゃん」
    チームワーク抜群のリーチ兄弟だが、やはり意見の相違はあるらしい。「お前たち、聞こえてますよ」とアズールが二人をジトリと睨んだ。

  • 193125/02/09(日) 00:08:59

    「う、うぅ……っ。うう、ジャミル……信じてたのに……」

    ぽつり、と冷たい砂漠にカリムの小さな声が響いた。


    「カリムくん……」

    「あれ。ラッコちゃん泣いてんの?涙凍るよ」

    フロイドがヤンキー座りになってカリムの顔を下から覗きこんだと思うと、下まぶたに指を当てて涙を掬い取った。涙はすぐに真珠のような氷に代わり、コロリとフロイドの手袋から転がり落ちていった。


    「オレのせいだ……!知らないうちに、ジャミルのことを追い詰めちまってた。ジャミルは、本当はあんなことするようなヤツじゃない。いつもオレを助けてくれて、頼りになるいいヤツで……ッ」

    カリムの涙は止まらない。同時に、ジャミルへの幻想にも似た信頼を捨てることができないようだった。


    *アイデアロール

    出久(85以下で成功) dice1d100=54 (54)

    爆豪(80以下で成功) dice1d100=99 (99)

  • 194二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 00:12:27

    忠言するのはデクのほうかな?

  • 195二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 00:14:57

    ここでデクが成功するのなんか意外だな

  • 196125/02/09(日) 00:57:28
  • 197二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:06:21

    ありがとうございます!
    いつも楽しんでます!

  • 198二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:13:24

    うめ

  • 199二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:17:26

    たて乙埋め

  • 200二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 02:15:25

オススメ

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