- 1二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:12:04ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 5|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/4352234/ただしその記憶を自覚したタイミングはフランス事変が起きた後とする現在、シエル√編(ノーマル√)のDAY13に進行中bbs.animanch.com
ただしその記憶を自覚したタイミングはフランス事変が起きた後とする
現在、シエル√編(ノーマル√)のLASTDAYに進行中
- 2スレ主25/01/19(日) 21:15:23
- 3スレ主25/01/19(日) 21:17:45
このスレのノエル先生
・フランス事変後に修道院に隔離されて間もなく『一周目の記憶』を自覚する
・隔離後すぐに代行者として就任。この時点でエレイシアに対する報復を決意し復讐者として生きる
・エレイシアが目覚めて代行者になるまでの六年半でひたすらに自己研鑽&限界を超えるための代償を払い続ける。その甲斐あって原作とは非にならない強さを得る
・人間以上の耐久を得るための一環で左足を聖別化した義足に改造してもらってる
・偶然にも手に入れた十四の石を用いて人外と化す。外見の変化は肌が白くなったくらい。完全に適応してからは恐らく瞳孔も十字になってると思われる
・幻想種の中で神獣に区分される『白鯨』モビーディックの遺骸を直接的な経口摂取で取り込み、更に肉体の存在規模を拡張させる事に成功している
・現時点での強さは少なくともシエルとの連携でなら後継者をも斃せるまでになっている
・というよりシエルとの連携の末に二十七祖のクロムクレイに引導を渡すという大快挙を成しえてしまった
・↑の功績もあって教会から『焔(ほむら)のノエル』という異名をつけられる
・着実に強くなっていってる事と『一周目の記憶』の自分を反面教師にしてる事もあって大分精神が安定している
・ただし完全な復讐者として生きているので高い身分だの裕福な生活だのと言った人並みの幸せには全く固執していない。もはや彼女が望んでいるのはロアやシエルに対する復讐のみとなっている
・そんなんだからマーリオゥからは『手を焼かせる制御不能の猪』と厄介に思われてる
・ここまで復讐鬼に振り切っているものの、無辜の人々が死徒に虐殺されるのを何よりも許せない代行者としての正義感もちゃんとあったりする - 4二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:19:24
続きありがとうございます!!!!!!
素敵な作品をどうもありがとう!!!! - 5二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:22:47
たておつです!続きが楽しみすぎる
- 6二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:26:23
どうかtrue的エンディングでは皆に救いがありますように…………
- 7二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 21:37:34
ノエル先生絶好調の絶好調すぎて最高だねニッコリ
- 8二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 22:01:04
最後の最後でアルクルートの心中エンドみたく最後は二人ともわかり合えずとも何か感じ取って欲しいなぁ…
ま、この復讐に復讐しかないノエルさんだと難しいだろうけどきっとこの感じじゃわかり合う所か殺し尽くすだろうしね………… - 9二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 22:05:44
保守
ノエルさんはこのルートだとあの弓のシエルを死徒にした上でいたぶり尽くした上で殺した伝説の存在になりそうだね - 10二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 22:09:13
保守
- 11二次元好きの匿名さん25/01/19(日) 23:55:41
「――――ぇ」
私がシエル―――エレイシアを吸血鬼にした最後の理由。それを聞いたコイツは小さく声を漏らした。
「うん?何か変なコト言った?アンタはここに集まって震えながらも明日を生きようとしていた50人以上の人々を殺して殺して殺し尽くして、あの床の下を肉のプールにしてたじゃない。
それならさ。こうして復讐される時が来たら同じように自分の肉や骨で埋め尽くされる事を受け入れるのが、然るべき因果応報ってモンだと思うのだけど。違う?」
「………………いい、え。違わなくない、です。甘んじて、この身に罰を受けます」
そうだ。私はあくまで同じやり方で報復すると言っているだけ。別に一生、永遠に殺し続けるだなんて惨い事は口にしていないわ。
「……は、そいつは殊勝なコトね。まあ安心しなさいよ。教会の審問とは違って終わらない殺戮を淡々と繰り返されるワケじゃないし、いつかは死という終わりをちゃんと与えるからね。私、そういうトコはほんの少しだけ慈悲深いから。
そうね。アンタが50人を使ってプールにすんのに大体3日くらい掛かってたから……穴の深さと一日に拷問する回数を仮に10回として考えると………みっちり埋まるまでおおよそ半年前後、になるのかしら?長くても年内には終わりそうね」
「………半年………」
うわ言のように、エレイシアはそう呟いた。ああ、そう言えばコイツが審問されてた期間も約半年だったっけ?
はは、奇妙な因果を感じるわねぇ。ロクでもなさすぎる縁だけど。 - 12二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 06:17:53
期間が期間ぎ長い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
- 13二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 08:18:10
因果は巡るのか
- 14二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 08:49:22
「とまあ、以上が第三にして最後の理由よ。まとめると、アンタの尊厳を徹底的に穢して壊し尽くすために、吸血鬼としてのアンタに復讐してこそ意味があると考え、その上でロアだったアンタの所業と同じやり方で因果応報の報復を与える。
これがアンタを吸血鬼にした動機。ここまでの説明で何か質問は?」
「………ひとつだけ。これから、半年以上の時間を掛けて貴女は正当な報いをわたしに与えるワケですが。
それだけの時間の中で、教会がわたしの失踪と貴女の動向に気づかない筈がありません。そこは、どう考えているんですか」
お?意外とまともなコト聞いてくるじゃない。そうよね。確かに組織における重大な戦力の一角が突如として長期間の音信不通となればそりゃ気づかないワケがないし、そうなるといつも一番傍にいたヤツの動きに疑惑と警戒の目を向けるのは当たり前だわ。
「そうね、私もそこは考えたわ。考えたから―――これから教会に、アンタを吸血鬼にした上で報復するから邪魔すんなって脅迫をかける事にしたの!」
「……え?」
「だぁって、どんなに秘密裏に動いたとしてもどうせ後々バレるに決まってるじゃない!だったらもうここは先手を取るつもりで自分から進んで、ありのままを伝えた上で『邪魔をすればエレイシアを野に解き放つ。それで多くの犠牲を出したくなければ干渉するな』っつって脅してやると考えたの。
――――――っていうかぁ、もう“実行済み”よ!あーはははははははっ!!」
「な―――」
死徒に堕ちれば、基本的にどんな善良な人間だろうと例外なく狂暴な殺人鬼として変貌する。一回経験してるからなのかコイツには今のところそんな兆候は全く見られないし発現もしていないけど、そんな事情は与り知らない教会にとっては『エレイシアはもうロアだった時とそう変わらない魔性に堕ちきっている』としか思えないでしょう。
そもそも、コイツは一つの肉体に祖の不浄―――原理血戒を複数宿している化け物。人間の時でさえそうだったんだから、こうして死徒になった以上は事実上の二十七祖と言って差し支えないわ。
そんな特級の生きている災害を野に解き放つなんて脅しを受けてしまえば、例え教会であっても大人しく黙るしかないわよねぇ? - 15二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 09:48:39
「いやぁ、通話越しのジャリガキ司祭代行の反応とかマージで面白かったわ!最初は驚愕の焦燥が混ざった感じで怒鳴ってたけど、事情を話したら憐れんでいるのか失望してるようなすっごい冷めた声で『テメェの好きにしやがれクソ猪』とか吐き捨てたの。はっはははは笑っちゃうわぁ!」
「……なん、て。愚かな」
ふふふふ、愚か上等よ。何せ失うものがないんだもの。狂ってるんだもの。後先考えるだけのブレーキとか、んなもんとうに外れちゃったわ。
「くっふふふふふふ。それはそうと、これで吸血鬼にできた理由と吸血鬼にした動機は全部話した。それはいいんだけどぉ……ふふふふふふふふふ」
「…………なん、ですか?」
エレイシアの頬に手を添える。うんうん、何度でも思うけど本当に素晴らしいわ。下卑た笑いを上げて、凶悪狂暴に三日月みたいな笑みを浮かべてたアレと同じ顔とはとても思えない。そんなのは最早見る影もなく、今はこうして絶望と諦観と懺悔に塗れた面をしている。
「暗がりでもわかる、血に染まった赤い赤い瞳。人間という無力なエサを貪る為の牙。壊死してるかのような真っ黒な首。同じく壊死してるみたいに真っ黒な手足の爪。扇情的な裸体に淫紋みたいな下腹部の刻印模様。
ああ、まさに。まさに!あの時の悪魔そのものじゃない!―――これで、性格もロアとしてのままだったら良かったのに」
「……悪かったですね。わたしのままで」
「いえ、口惜しくはあるけどそこは気にしなくていいわ。元々ロアだろうがアンタのままだろうがどの道こうして復讐するつもりだったのは変わらないし。
それより、半年間以上の想定となるとまた一つの問題が出てくるかしらねぇ」
「一つの、問題?それって……」
どうしよう。これはどうやって対応すんのか決めあぐねているからなぁ。ホントに死徒って面倒な生態してるわ。
「いえね。単純かつ難しいもんなんだけど―――それだけの長期間の中だと、どうしてもアンタの肉体を維持するための血液が必要になってくるワケじゃない?
無論、死徒なんだから人間の血肉が一番いいんだけど流石にそれはアウト。私は狂ってるけどそこまで倫理と道徳が終わってはいないから。だからどこで、そしてどうやって賄うべきかって思ってさ」
―――そう、コイツに飲ませる為の血液問題。さて、どうしよっかなぁ? - 16二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 12:28:23
そうか、吸血鬼になったからには血を吸い続けなきゃいけないもんね…まじで自然に死んでくのは許さないんだなノエルさん
半年もじっくりじっくりじわじわ殺すのはえぐいて
血を吸い続けなきゃ問題っていたぶってる時に出血するからそれを吸えばいいのではないかと今思ったんだけどどうなんだろう?? - 17二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 12:35:48
教会にもう伝えたのか
本当に全てを投げ捨てて復讐してる - 18二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 12:44:45
マーリォウ司祭代行もドン引きだけどもう好きにやれ!ってなるって事はもう教会としてもどうしようも出来ない状況だよねノエルさんシエル先輩二人とも……
- 19二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 14:33:10
「わたしに―――血を飲め、と」
「ええ、そうよ。まさか抵抗を示してるワケじゃないよね?どうせロアとして動いてる時、内側で何もできずに見てただろうアンタ自身もまた血を美味しいと思ってたんじゃないの?いいえ、それ以前にあれだけ血に溺れていながら今更一滴も飲めませんなんてほざける権利が、資格があると思う?
その行いに罪と責任を感じてんなら―――然るべき罰を受け続ける為に、身の程を弁えた上で血を飲めるわよね?肉を食えるわよね?」
「…………っ…………、っ"っ―――………!!
……………………それ、なら。せめて、わたし自身の体で……赦してくれない、でしょうか」
………へぇ。ちょっと葛藤が混じってるけど、まさか自分からそう提案してくるだなんて。なるほど、文字通りの自給自足ってコトね。
「ふーん。いいわ、それで赦してやろうじゃないの。それじゃあ、『死徒は自分自身の血肉摂取のみでどこまで維持できるか』という試験的な名目で、今しばらくは様子見といきましょう。
つってもそれで半年以上も持つとも思えない。だから、もし限界が見えてきたらその時はまた考えさせてもらうわ。
今はそれで文句ないわよね?」
「……はい。感謝します、ノエル」
「いいわよ感謝なんか。あくまでアンタっつー大罪人の細やかな妥協案を気分で聞き入れてやってるだけだしね」
よしよし、これで血液問題もひとまずは収まったわ。そうね、限界が近くなってきたら今度は動物の血でも与えてみようかしら。
例えば殺処分予定になってる家畜を何匹か引き取るとか、特定の区域において駆除すべき害獣認定された野生生物を秘密裏に仕留めて調達するとか、そんなもんでいいかな。
まあ、それはそれとしてよ。これで前もって話しておくべき事は全部語った。あとは、
「―――さぁ、それじゃ始めましょう。始めようじゃないの!血をぶちまけ、肉を千切り、骨を砕き、心を潰し、アンタの尊厳を完膚なきまでに殺してあげるっ!
いよいよもって楽しい愉しい復讐(ごうもん)の日々の始まりよ!!」 - 20二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 14:34:16
このレスは削除されています
- 21二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 14:34:53
「…………………!」
私のその宣言を聞いたエレイシアは腹を括った顔になり、抵抗の意思も言葉も出さずに裁かれる姿勢を見せる。ふふ、本っ当にイヤになるくらい殊勝な女ね。
ああ―――あぁん、もう待ちきれない!ここまでガマンにガマンにガマンを重ねまくったんだもの。話すべき事全部口にするまでよく耐え切ったわ私!てことでさあ、そんな辛抱強く耐えた自分への御褒美と行こうじゃない……!
痛覚付与の秘蹟は発動済み。この教会内にもコイツが目を覚ます前から既に対吸血鬼用の強力な視えない結界を張っている。
ええ、抜かりはない。存分に、存分にいたぶりましょう!
「じゃあ、さっそくアンタを目の前のこの講壇に寝かせるわね。それからアンタを潰したり切ったり捥いだり刺したり二つ折りにしたりとで心ゆくまで嬲り殺していくけど、その間に幾らでも懺悔する事を赦すわ。
本当に神さまがいて、アンタにそれだけの価値があるってんなら奇蹟が起きて生還できるよう、世界は作られてる筈だからさ。
というコトで―――せいぜいイイ顔でイイ声を無様に叫び散らしてちょうだい!
………と、その前にアンタに言わなくちゃいけないコトが最後にひとつだけあったわ」
「? ………なんです、か?」 - 22二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 15:00:42
「―――“ああ、なんて嘆かわしい。
戦友との誓いを守ってくれると心から期待していたのに。結局それを裏切り、主の御使いとしての責務より恋を選んだ果てがこのザマなんて。
この時代はアナタを含めて不信心者が多すぎる”」
「――――ぁ」
「“でも、だからこそ歓迎しましょう。
今ここにいるアナタこそ―――我が復讐の生け贄に相応しい、敬虔な吸血鬼ですから”
――――――ふふ。ふふふふふふ。あはははははははははははは!!あぁーはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
「ぁあ――――――が、あ"あああああぁぁあああああっ!!あ"あ"ああああ"ぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!」
――――――そうして、長く短い13年分の復讐の日々が始まった。贖罪に生きた少女にとっての、現世における最期の地獄が始まった。 - 23スレ主25/01/20(月) 15:41:01
(あ、このタイミングで言うのかって話ですが読む際の推奨BGMは『主は天にいませり(リプライズ)』『今はもう遠く』辺りです)
- 24二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 16:01:48
ノエルさんが楽しそうでなによりです
- 25二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 20:02:54
シエル先輩が不憫すぎる、辛すぎる、かわいそう
やっぱりそれもこれも何もかもロアのせいだぁっ!! - 26二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 20:44:56
「腕24本、足31本、手足合わせて指16本、臓器43個、眼球6個、その他肉片は……計132kg。
うん、今日はこれくらいか。じゃあ、このうち9割はいつものように……そいっと!」
あれから一ヶ月。本日も目の前にかき集めた『今日の成果』を計算し、穴の底へと投げ捨てる。下は最初の数日と比べれば随分とまあ溜ってきた。
「はい、今日も審問受刑お疲れエレイシア!いつもの“エサ”よ。たぁぁんと食べて飲んで肉体を維持しなさい!」
「……………」
大部分を投棄したのち、残した一割分の血肉を眼前の女に差し出す。女は、エレイシアはただそれを無言で受け取ってから静かに自分の腕やら足やらを黙々と口にし始めた。
「……、ぁむ……、はむっ…………。ん……んっ………」
ちまちまと食べていき、血が垂れればそれを飲む。まさに悪魔の食事、悍ましくグロテスクで醜悪極まる光景だ。
でも……常に裸体を晒して虚ろな目でそうしているせいなのか、最近はどことなく退廃的で背徳的な色気を感じられるようになった。どうやら私の頭はおかしくなってるらしい。いや、それは元からか。
「ふふふふふふ、どうかしら。そろそろ『自分の味』ってモノにも少しは慣れてきたんじゃない?」
「…………そんなコト、よく質問できますね。そもそもヒトの形をしているモノを、こうして無理矢理にでも食べざるを得ないなんて、ロア(わたし)はともかく、エレイシア(わたし)が慣れると思いますか?」
「あっはは、ごめんなさい愚問だったわね!でも、死徒の舌になってる以上はどうあれ不味くはないんでしょう?その新鮮な肉を、骨を、滴る血を無意識に好い味だと思っているんでしょう?」
「……………………」
答えるのがイヤなんでしょう。エレイシアは、だんまりと何も言わずに食事の続きを始めた。
けど、仮にも死徒の血肉だから実はコイツにとっても腐った死体を貪ってるような不快感があるのかしら?
「…………終わり、ましたよ。今日も、最悪の食事でした」
「指に付いた血も半ば無自覚に丁寧に舐め取っておきながらそれを言っちゃう?ま、口では何とでもほざけるしね。
―――フフ、徐々に心も吸血鬼に近づいてきているじゃないの。エレイシアぁ?」
「…………………」
とにかく、今はこれで順調だ。さて、プールが溜まり切る頃にはコイツはどこまで堕ちきっているのやら。あぁ、実に楽しみだわ! - 27二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 20:48:23
うわぁ……………………
えっっっぐぅ…………………
拷問だぁ…………………… - 28二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 20:49:27
もうシエル先輩のライフは0よ!!!!!!
割とマジでシエル先輩が一番しんどくてきつすぎる… - 29二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 21:13:39
シエル先輩地獄すぎるよ…………
ノエルさんノッリノリだけどさぁ、大丈夫?
全部終わったあと空虚にならない?? - 30二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 21:17:55
うわあ……という気持ちともっとやれ!!!!いけー!!!っていう気持ちどっちもある
- 31二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 21:27:24
まだシエル先輩が抵抗する気持ちと力があるからいいけどそれが無くなったら…先輩死んじゃう…
上で先輩自身の血を飲めなくなったら別の動物の血を飲ませば良いって書いてあるけどそれやったらほんとに死んじゃう気がする
動物の血を飲んだらどうなっちゃうんだろう………… - 32二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 21:46:44
シエル先輩の姿見て退廃的で背徳的な色気感じてるのはシエル好きぃになりかねない
- 33二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 21:56:07
ここまでやったらシエルいなくなったノエルどうするんだろう
それにしてもシエル先輩ここまでやってもマジで壊れないの凄いな…一周回って壊れてるのかもだけど
まあそれはこの場合どっちもそうか
シエル先輩は恋を見つける前になんとか隣を理解してやれればよかったのかな - 34二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 22:02:29
もうすでにヤバイけどシエル先輩死んだら幻覚見てそうまだ拷問してまだ殺して殺して殺して殺して…………ってなってそう
それか、シエル、シエル、シエル、シエル、シエル!!って泣き崩れてそう - 35二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 23:04:05
そういや志貴くん死んじゃったけど秋葉さまにバレてるよなぁ確か命繋がってるらしいから…………
ノエルさん殺されるんじゃね?あーでも復讐者だから返り討ちしそう
でもほんと遠野メンツにどう思われてるんだろ志貴くん死んじゃった事………… - 36二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 23:18:33
それから更に月日が流れていくと共に穴の中のプールも、エレイシアの血肉で段々と着実に埋まっていった。
「今日で二か月だけどさ、エレイシア。いつも自分の肉ばかりじゃ飽きてきただろうし、何よりそろそろ肉体維持の限界が近くなってきた頃合いでしょう?
だからね、今日から動物の血肉で凌いでもらう事にしたわ!まずは差し当たって、アンタのだぁい好きだったカレーにしてみたの。これでも真心込めて作ったから食べてくれると嬉しいな!」
「………死徒は、血液以外の味覚が無いのは知ってるでしょう。こんな、ルーとか白米とか、意味はないですよ。そう、意味が……ないん、です」
「あのさ、折角私がわざわざアンタの為に作ってやったっつーのにそんな言い方はないでしょ?つべこべ言わずにとっとと食いなさい」
「………そこまで、言うのなら。…………じゃあ、いただきます――――――ぅぶっ!?ぁ、が、あ"ぁっ……!!」
「あ―――ごめん。そう言えば隠し味に聖水をまぶしてたわ。今度から気を付けるね!」
「もう三ヶ月。プールもあとちょっとで半分に到達するわね。この分だとこのままスムーズに行けばあと四ヶ月程度かしら。やったわね、エレイシア!もう少しの辛抱よ!」
「………………………………………」
「あらあら、何を呆けているのかしら?ねぇ、アンタ最初に『甘んじてこの身に罰を受ける』って宣言したじゃない。ちゃんと受け答えできる程度にはしっかりしなさいよ。
教会の半年に渡る異端審問を耐え切ったクセにどうしてもう音を上げそうな面してんの?自分がどういう生き物で、どんな咎人なのかを今一度自覚しなさい」
「…………。すみま、せん。わたしは、最期まで、あなたの然るべき復讐を受け続けます。それが、今のわたしにできる、最期の贖罪、ですから」
「よろしい。それでこそよ。ところで、そろそろまた別の血肉に変えようかなぁって思ってるの」
「………今度は、なんです」
「いや、この数ヶ月で大分頭回したんだけどね。―――他の死徒の肉をアンタに与えてやろうと考え付いた。
人間の血を直接差し出すのは無理でも、その人間の血をたくさん吸って蓄えてるだろう死徒のならアンタの維持にかなり貢献してくれそうと思わない?」
「ぁ――――――ぁ――――――」 - 37二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 23:56:18
―――更に四ヶ月。この間は任務とかで忙しい時期が多かったから、肉のプールはそこまで溜まらなかった。残念ね。
「でも、いい収穫が手に入ったわ。ねえ聞いてエレイシア!昨日ね、任務先でジェスター・カルトゥーレとかいう上級クラスの死徒と遭遇したから今日はこうして箱詰めにして持ってきちゃった!
無論いつものように食べやすいサイズに切り分けてるからすぐに口に入るわよ。ほら、どうぞ!」
「…………………」
エレイシアは相も変わらず無言で手に取り、その血肉を咀嚼し飲み下す。心なしかその所作は、以前よりも抵抗が微かに少ないように見えた。
その後も淡々と食事を続けて、箱の中にあったモノすべてを綺麗に食い尽くした。うわあ、中に残ってる僅かな血液を啜ってるよ。怖いわねぇ、悍ましいわねぇ。
「…………………終わりました。これで、いいのでしょう?」
虚ろな目と顔で箱を私に返す。私はそれを手に取り、ちゃんと中身が空になってるのを確認してから適当に炎で燃やした。上級死徒の血で汚染されてるからもう使えないしね。
「ええ、問題ないわ。いやあそれにしてもさ、聞いてちょうだいよエレイシア!この間の任務先で、たまたま時間に余裕があったからホラー小説でも買って読んだんだけどさぁ―――」
「……………………」
私はそう言ってコイツの隣に座って、自分のここ最近の出来事を適当に語っていく。この日々が始まって二ヶ月が経った辺りからだろうか。こうして度々側によって話すことが多くなった。
「で、読み終えてまあまあ怖かったっちゃあ怖かったか?なんて思ってたら背後から気配を感じてさぁ、振り返ったらⅣ階梯の夜属がいたの!その時雰囲気を味わう為に人気のない路地裏で読んでたのよ。もう本っ当にビックリしたわ!
ま、もちろんそう思ったと同時に殺してやったけどね」
「………そうですか。それは……大変、でしたね。…………次から は、素直に室内で読んだ方が、いいですよ」
「ははっ癪だけどご忠告痛み入るわぁ」 - 38二次元好きの匿名さん25/01/20(月) 23:59:14
なんか大丈夫?無意識にノイズ入って来てないノエル先輩?
- 39二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 00:14:23
でもこうして他愛のない会話をちょくちょく挟む事でシエル先輩の精神を狂わせずにギリギリ繋ぎ止めれているだろうからノエル先輩的には結果オーライだと思う
- 40二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 00:47:10
隠し味に聖水…めちゃくちゃ人の心無くて草、、、、草、、、、、、、、、、、、
- 41二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 00:49:32
もうジェスタークラスをポンポン狩れるレベルになったのか、、、、埋葬機関行けそうだな、、、、今ならヴローヴにもタイマンで勝てるのでは?
- 42二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 09:04:41
保守しまーす
- 43二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 09:40:10
―――更に5ヵ月が経った。この頃はエサの工夫をしようと思って、死徒や動物の血肉をエレイシアの血肉と混ぜてスムージーにして飲ませたり、ハンバーグにしてパンに挟んで食わせたりしたなぁ。
依然としてコイツは無言で食べて飲んでるけど、味の感想とかは何れも一切口にしなかった。まあ、お父さんを肉塊(ダンゴ)にしやがって一口齧った上で“不味い”なんて吐き捨てるような悪魔の感想とかこっちから願い下げだけど。
「腕20本……足……指……臓器……眼球……骨……肉片108kg。うん、今日も大量ね!じゃあいつもみたいに分けてから、下のプールへぽーい!」
今日も今日とて審問の成果の計算をして穴に放り込む。この分だともうニ~三ヶ月くらいかしら。
そして、手元に残した肉の山をエレイシアの前に差し出した上で、数日前から考えてたコトを実践する事にした。
「ねえ、エレイシア。今日はまた趣向を凝らして一風変わったとあるドレッシングを持ってきたの!」
「……?」
微かに疑問符を浮かべるエレイシアを他所に、私はさっそく用意していたモノを包みから取り出す。それは白い液体で満たされている、25cmほどの大きなウイスキー瓶だ。
「………それは、何ですか?」
「ええ、これはアンタの為に私が三日前から拵えていたとっておきのモノでねぇ。
何なのかって言うと、人間の女の母乳――――――と、男の下半身の体液。つまりアレよアレ。
これはそれらを混ぜた特製の白濁調味料なの!」
「―――は?」
「いやぁ、なんで混ぜたのかっていうとね。母乳って調べたところ糖分が物凄く高いらしいから、ある程度成熟した年齢で飲んじゃうと腹を下してしまうらしいの。だから男のアレでその糖分を程よい感じに薄めようかなって。
あ、鮮度に関しては秘蹟でバッチリ維持してるから搾りたてホヤホヤも同然よ。だから安心して味わうといいわ!」
そして私はさっそく蓋を開けて、目の前の肉の山へ満遍なく注ぐ。粘り気のある白い液体は、例えるのならマヨネーズに近いだろうか。いえ、それはマヨネーズに失礼すぎるわね。反省しなさいノエル。
「…………。……っ………ん、む………ぁむ………」
エレイシアはほんのしばらく躊躇っている様子を見せたけど、ものすっごいイヤそうな顔で白濁した液体の混じった血肉をちまちま貪り出した。人間の体液なのになんでそんなイヤそうなのかしら? - 44二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 10:05:27
>>41 総耶にくる前でⅧ階梯の後継者をシエルと協力して狩れるレベルだったから、完全に「火の王」となってその上白鯨の遺骸との完全適合した今、祖相手にタイマンできそうなレベルに強くなったからジェスター狩れたのなんも疑いがないよね
- 45二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 10:22:22
そこから更に一ヶ月経つのだけど―――この一ヶ月間だけは一日もエレイシアに責め苦を与える暇がなかった。
理由は、私が任務をこなす中でとある二十七祖の情報を掴んだからだ。だから時間をかけてソイツの尻尾を掴み、城に潜入し、あわよくば抹殺を試みた。
そしてその二十七祖は、私にとっても因縁があるヤツだった。だから私にとってもやりがいのある作業だったし、故にこそ慎重に慎重を重ねて事にあたった。
そして―――
「――――――ただいまエレイシア!しばらくバッタリと会えなくてごめんねぇぇぇ?ちょっとばかりとあるお土産物を持ってくるのに一ヶ月も時間がかかってさぁ。でも、やぁぁぁっと終わったわ!」
「………………おみ、やげ………?」
「ええ、それも本当に貴重な代物でね。加えてそれこそアンタにしか扱えないだろう特級の危険物なんだけど……」
私は懐から厳重に封印してある結界型の箱を取り出し、封印を解除してから箱の中のソレをエレイシアに見せた。
「――――――はい、じゃじゃーん!死徒二十七祖の一角、リタ・ロズィーアンの『薔薇』の原理血戒でーす!んぅふふふふふふふふっははははははははははははっ!!」 - 46二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 10:44:57
なんかもう化学反応で最強の吸血鬼生まれそうこれ
そして地球人類は滅んだ朱い月大勝利みたいな
ノエルはもう無敵の人だな… - 47二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 11:34:05
なんかこれもう狂気の復讐の果てに一周回ってシエルと過ごすの楽しくなってない?
- 48二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 11:38:23
サラッと祖を狩ってる…
ロズィーアンの本家の魔眼でシエルですらやられる可能性高いのに復讐心で突破して殺せるってやばいぞ - 49二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 12:30:40
薔薇って本編でノエル先生がなってた死徒と同じ…?
- 50二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 12:33:03
一人で死徒倒せるようになって本当にに強くなったね
でもそれはそれとして狂喜でシエル先輩大好きだしシエル先輩殺すしハチャメチャおかしくなっちゃったな… - 51二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 12:44:33
1人で二十七祖を狩ってやがる!?
原理血戒をお土産にするとかもうこれ祖側から見ても怖い狂人だよ… - 52二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 17:04:24
「は―――、え―――?
………斃した、んですか?二十七祖の一角を―――あなた、一人で……?」
私の言葉と差し出された原理血戒を見て、エレイシアは驚愕の一色に染まる。そうそう、そういう反応を期待してたの!
「ええ、そうよ。エレイシア、いつかの夜にアンタと志貴クンを追憶の劇場に捉えた時に私はこう語ってたわよね?
『茨に食われて幸せそうに死んでいる肉塊(ひと)たち』って。そう、私の故郷をめちゃくちゃに滅ぼしてくれやがった悪魔共の一匹がそのロズィーアンなんだろうって前々から確信していたわ。
だから、だから偶然にも尻尾を掴んでからはこの一ヶ月の間全力であの薔薇の悪魔を殺しにかかった!アンタをいたぶりたい衝動と復讐心を、全部全部ソイツをぶち殺す事に注力してね!
なんで殺せるに至ったか?まずはソイツが一匹で行動するタイミングを辛抱強く待った。次にそのタイミングを計るまでの間、ソイツへの血液供給を減らす為にじっくりと時間をかけて配下のゾンビや下級死徒共を殺していった。魚の群れを徐々に追い詰める鯨のようにね。
下っ端を始めに一匹ずつ確実に殺し、かつ一匹も逃さずにじわりじわりとその数を減らしてやった。当然そんな事すれば向こうもすぐに気づくけど、肝心の暗殺者の姿が全く見えない。ロズィーアンからすれば気配のようなモノは感じ取れるけど、一瞬現れては消えるから特定も容易ではなかったでしょう。
ふふふふふ―――それもその筈よ。だって!下っ端を消す作業を終えればその度にすぐさま付近の下水道に飛び込んで身を潜めるを繰り返してたんだから!もう本っ当に不快感が振り切れ過ぎて狂うかと思ったわ!!でも、既に狂ってるからこそそんな方法も取れたのよ。
で、そんなイカれたやり方でじわじわと追い詰めてから約三週間。とうとう痺れを切らしたか、或いは挑発して私を誘い出そうとしたか、ロズィーアンが側近も連れずに一匹で堂々と姿を晒してきたの。普通、あからさまな罠だと思うでしょ?
だから私は警戒して――――――その上で敢えて突っ込んだ!ソイツへの不意打ちを皮切りにサシで殺り合ったの。
だぁって今その機会を見逃せばもうやってこないかもしれないでしょ?だったら攻めるのは当たり前よね!」
私はロズィーアン討伐の経緯を嬉々としてエレイシアに語っていく。エレイシアは動揺しつつもただ黙ってその話に耳を傾けている。 - 53二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 17:05:08
「そして、ロズィーアンは私との戦闘の中で原理血戒の力―――この世に存在する魔眼でもっとも美しく、もっとも醜悪と言われた『薔薇の魔眼』を行使した。一度その幻術に魅入られてしまえば、成す術もなくいたぶられた果てに心も魂も破壊されてしまう快楽と背徳の園。無論、私なんかが囚われてしまえばその時点でゲームセットよ」
そう、一度でも決まってしまったら決着がついてしまう。私は魂を凌辱されて肉体も食い物にされる。けど、そうはならなかった。
「―――だから、ソイツが魔眼を発動した瞬間に私も白鯨の力を使った。魔力はより強い魔力に洗い流される、かつてアンタから襲わった事よ。
ま、流石に祖のロズィーアンの魔力量を優に凌ぐ……なんてほどじゃなかったけど、それでも魔眼に正面から抗うには十分だった。
あとは、半日程度の根気比べの末に私の炎で周囲の薔薇も茨もソイツも全てを燃やし尽くしてやったわ。コレを除いてね?」
そう言って改めて原理血戒の呪いの果実を見せつける。所有者が完全に滅びても、その呪いの根源は煮凝りの果実となってこの地上に遺(のこ)る。
ヴローヴやクロムクレイの時もそうだったわね。ホント、存在そのものが生き汚いにも程があるっての。
「………ロズィーアンは、死徒社会における本物の貴族階級で……他にもロズィーアン一族の面々が近くにいた筈です。それらは、どうしたんですか」
「勿論、その城にいた一族どもは皆殺しにしてやったわよ。残っていた魔力を全て開放し、周辺地域を浄化の炎と流動する津波で覆って、白鯨の力をフルに使って文字通り海の藻屑にしてやった!誰一人生かさずして殺し尽くしてやった!
ああ、いま思い返しても歓喜と嘲笑に震えちゃうわ!津波のミキサーに吞まれゆく中で人間みたいな悲鳴を上げながらグチャグチャに千切れて潰れて無様に散っていくアイツらの絶望と屈辱に塗れた顔っ!人間たちを散々食い物にしてきたおまえたちが一丁前にそんな反応すんなって話よね、あははははははははは!!」
そうだ。それまで人間たちにイヤってほど絶望に陥れて殺してきた死徒共に、人間みたいに絶叫する権利も資格もない。クソ以下の腐った畜生共にそんなものある筈がない。
けれど唯一、その資格がある例外をあげるなら―――それこそ代行者シエルとして、人間として贖罪に生きたアンタだけよねぇ。エレイシア? - 54二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 18:42:10
「まあ、ホントは念には念を入れてあのジャリガキの協力も申請したかったけど……そんなコトすれば回収した原理血戒を戦利品として差し出さなきゃいけなくなるでしょ?アンタと違って私は埋葬機関に属してなんかない、ただの使い捨て一般代行者だしね。制御不能の猪だのと言われてるけど、結局のところ権力には敵わないわ」
「……わたしをダシにして、正面から教会に脅しをかけられるような人が、それを言います?」
「それはそれ、これはこれよ。で、だからこそ秘密裏に一人で動いてコトを終わらせるしかなかった。いやぁ……代行者時代のアンタの大変さが少しは理解できたわ、エレイシア」
恐らく、ロズィーアン一族の全滅に教会も今頃気づいた辺りじゃないかなぁ。ま、だとしてももう遅いけどね。
本題はここからなんだし。
「それでね、エレイシア。とりあえずロズィーアン討伐の経緯は説明したけど、私がアンタに伝えたいのはそんな事じゃないの。
本題はここからなんだけど―――この『薔薇』の原理血戒を、アンタの肉体に封印してもらいたいなって思ったの」
「え………それを、わたしに……?」
「? 別に疑問符をあげる程でもないでしょ。アンタ自身がこれまでそうしてきたように、コレをその体に取り込めば良いだけのコトよ。
そうした方が―――アンタを殺す時に、他の原理血戒と共にこの地上から完全に消滅させられるでしょう?」
まあ結局今までのように残っちゃう可能性も十分にあるけど、その時は教会に献上するなりして適当に貢献すればいい。そんだけ存在を維持する力が強かったなら、どうせ私一人じゃ消せないだろうしね。
「完全に、消えてくれるかは分かりませんけど………わかりました。これも、受けるべき罰として……やります」
「うんうん、素直に頷いてくれてありがとう!でも、いいの?取り込んでくれる分には感謝するけど、本来なら痛覚のない死徒にとって原理の書き換えは魂に響く死の痛みそのものと言えるわ。
アンタならそれを回避できる術を持ってるんでしょうけど、死徒の身に堕ちている今だとそのリスクを回避しきれるか怪しいところじゃない?取り込むように勧めてる私が言うのも何だけど、大丈夫なの?」 - 55二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 18:44:20
「……それでも、ソレをそのまま放置する訳にもいきません。出来うる限り対処の準備をしてから、やってみます」
「そう。なら、せいぜいアンタが壊れないように信じて託してやるとするわ。目の前に置いとくから、準備と覚悟ができ次第それを口にしなさい」
その後、エレイシアは色々と魔術やら何やらを施してから、意を決してロズィーアンの原理血戒を食べて取り込んだ。
「………だいじょうぶ、みたいです。原理血戒はちゃんと、わたしの中で暴走する事なく安定しています。
ただ―――この身体が死徒となっている以上、この安定を維持する為にも、より多くの……血、が……必要に、なってくるでしょうけど」
「なーんだ、それなら問題ないわね!アンタ自身の血肉から食事用に差し引きする量を増やせばいいワケだし。まあその分あそこのプールが溜まり切るのがより遅くになっちゃうけど、そういう事情なら仕方ないわよねっ!」
「…………………………」
よし、一時はどうなるかと懸念に思ったけど、ただの杞憂に終わってくれて良かったわぁ!
でも後から本人が言ってたけど……曰く、原理血戒を取り込めば相応の強大な力が身につくけど代償として人間性の喪失を伴うのだとか。つまり今回でまた一歩二歩と怪物の心に近づいてしまったんです、とアイツは嘆くようなか細い声色で言っていた。
ふふふ、まあ私からすれば精神性が化け物に近づくのは寧ろありがたいんだけどね。その方が、“吸血鬼としての”アンタに復讐できるワケだし。
ああ。ホント、ホントに楽しみで仕方ないわ!うふふふふふふうぅふふふふふふふふふふ! - 56二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 20:49:02
なんか1周か2周回って仲良さげに見えてきた
- 57二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 20:59:57
しっかりいたせー!!!!!!!!!!!!!!!
- 58二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:22:05
このレスは削除されています
- 59二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:23:06
―――そして、更に一月。この楽しい復讐の日々から当初の想定時期だった半年が経ったけど、色々あったもんだからまだ8割近くしか溜まってない。終わりが近くなってはきたものの、まだもうしばらくはこの怨みをぶつけられそうで何よりだ。
「エレイシア。今日はね、いよいよアンタが一番待ち望んでただろうモノが手に入ったの!」
「…………一番、わたしが、待ち望んでいたモノ?」
「ええ。何かって言うとね―――コレよコレ」
そう言って私がエレイシアに差し出したのは、ある血肉が詰められてる箱だ。ふふ、驚くだろうなぁ。絶望してくれるといいなぁ。
「見ての通り、アンタの肉体を維持する為の箱詰めされたエサなんだけど……何の肉だと思う?」
「何の肉、って…………え?
――――――う、そ。そん、な。なんで?どうして?いや……………これ、冗談―――です よね?」
お、流石吸血鬼。匂いだけでわかっちゃうか。ふふふふふ、これまで口にしてきた粗雑なモンとは比べようもないほどに豊潤で心地よい香りに感じてるに違いない。
「冗談なんかじゃないわよ。これは―――正真正銘の『人肉』よ。吸血鬼のアンタからすれば、文字通り喉から手が出るほど欲していた大好物よねぇ?」
そう、今日持ってきたのは他ならない人間の血と肉だ。ははは、ロアとしてのコイツなら嬉々として貪ってたでしょうが、今のコイツにとってはこれまでで一番の拷問でしょうね?
「なんで―――なん、で?ノエル、あなたは……人間の血は、流石に、無理だと 言って」
「ええ、言ったわ。確かに言ったわ。―――何でもない日常を生きている、罪なき無辜の人々たちのモノはね?
今アンタに渡したその箱に詰められてんのは、魔術師の血肉よ。
ソイツは魔術的な儀式の為に幼い子供を何人も生贄にして消費していたという畜生にも劣る悪事を働いていたわ。実際、私も偶々それを見かけたからブチのめしてやったの。
あ、勿論子供の前では殺してないわよ?まずは子供を安全なところまで避難させて、その後で主犯のソイツを軽く拷問して色々と吐かせてからそうしたワケ。これも異端審問という意味では、ちゃんとした代行者としての務めでしょう?」
そう、聖堂教会と魔術協会を始めとした魔術師たちは表面上じゃあ笑顔で手を握ってるけど、水面下では普通に殺し合っている。なら、私のこの行いも教会的には何も間違ってはいないわ。 - 60二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:47:47
やっぱり楽しかったんだこの復讐
- 61二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:53:20
だんだんと倫理の枷を解こうとする試し行動なのか何なのか。まあ、できる限りあの時の吸血鬼の状態に、表向きだけでも近づけたい涙ぐましい努力だろうけど。
- 62二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 21:57:05
なんかフランス事変起きた当時のロアに戻したいみたいだけど余計トラウマになりそうなんだけど…
それだけ『あの時のロア』を殺したいんだな… - 63二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 22:04:40
マジでシエル先輩が耐えられてるの、強いなぁ
ノエル先生はもうすでに暴走して狂っちゃってるけどなんだかんだシエル先輩大好きだし嫌いだけど好きだよね - 64二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 22:26:57
理屈はなんも間違ってないし正しい行いだよな、ノエルは復讐に命かけてブレーキぶっ壊れてるけど、根底にあるのは理不尽に幸せをぶっ壊されたことへの怒りだから、そりゃ罪ある奴はしめて材料にするわな
- 65二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 23:50:03
「ふん、自分の目的の為だけに外道を働いてきたんだ。だったら私の目的の為に消費してもいいし、されても仕方わいわよね。そう思ったからこうして肉片にして箱に詰めてアンタのエサにしてやろうと思ったの」
というより、まず私は魔術師という人種が嫌いだ。そういう目的の為とあらば手段を選ばずに外道に走る性根もそうだけど、一番の理由はコイツと私の人生をめちゃくちゃにしてくれやがったロアのせいだ。あのクソ蛇もまた、必要ならどんな惨たらしい事でも平気で行なう典型的な魔術師だった。
だから嫌いだ。無論この世全ての魔術師がそういう畜生以下の悪じゃないんだろうけど、そもそも魔術師なんてもんをやってる時点で少なくとも常人とはかけ離れた価値観を―――その気になれば簡単に人を殺せるだけの精神構造をしているに違いないわ。
「これで分かったよね?ソイツは外道を働く魔術師で、ヒト以下のクズだってさ。それなら躊躇いなく食えるでしょう?飲み干せるでしょう?
目的の為に罪なき子供を食い物にしてきたカスなんだもの、こうして食い物にされたって誰も責めようがないし寧ろ自業自得よ!
だからね、ほら―――さっさとそれを口に入れなさい。できる筈よね?」
「―――、―――、―――」
息を荒げながら、私と目の前の血肉を交互に見ている。一目でわかるほど葛藤しているわね。かつてはあれだけ躊躇う事なく嬉々として血の快楽に耽ってたのに。なんで今更そんな風に怯えて食べようとしないんだろう。
「なに?今ので躊躇する理由があるの?いいえ、ないわよね。だってアンタはもう自分自身の血も動物の血も他の死徒の血も貪れるじゃん。
ああ、それともそんなコトはなくて、そのまま箱詰めで差し出されたのがお気に召さなかったの?だったらごめんなさいね、今すぐハンバーグとかにし」
「―――イヤ、です」
「………………は?」
「―――お願い、します。おねがい、ですから……コレは―――コレだけは、ほんとうに………ほんとうに、やめてくださいっ……!!!」 - 66二次元好きの匿名さん25/01/21(火) 23:52:54
いくら外道といえど人間の血肉はアウトだったか
- 67二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 05:57:33
保守
- 68二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 09:03:19
いくらシエル先輩でも無理なものがあるんよ………
- 69二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 12:37:19
「はは、なによそれ。13年前はあれだけ人間を貪ってたクセに、どうしてこの期に及んでそんなコトいうの?」
「分かっています!分かっているんです。わたしはもう、身も心も人間のフリをする資格さえない化け物なんだって!
けれど―――それでも、コレは―――人間の血を再び口にするのは、もう、もう……イヤなんですっ……!!」
地に頭を着けて、箱を私の前に突き出しながらそれだけは受け入れられないと懇願してくる。今までずっとたどたどしかったのが嘘みたいに張り詰めた声で叫んでいる辺り、本気の本気でイヤがってるんだろう。
「ノエル―――どうか、どうかお願いします。慈悲をください。卑しいのも、図々しいのも厚かましいのも虫が良すぎるのも痛いほど自覚していますっ!でも、でも………コレを口にしてしまったら、もう、ほんとうに戻れないところまで堕ちてしまう!本物の吸血鬼になってしまう!
わたしが―――わたしで、なくなってしまうんです……!!」
「…………………」
「もう、イヤそうな顔して食べたりしませんから。どんなに責め苦を受けても呆けたり、音を上げそうになったりしないよう、自らの罪と罰に向き合って頑張りますから。どんなにわたし自身の肉や動物や死徒の血を差し出されても抵抗なく啜って貪りますから。
頑張って、がんばって……あなたの望むように悍ましい吸血鬼らしく振る舞いながら、喜んで口に入れますから!
だから、だから―――どうか、人肉(これ)を食べさせようとするのだけは、やめてください!ほんとうに、やめてっ……!!!」
血の色をした悪魔の瞳。その目元に涙を溜めながらこれ以上はないくらいの勢いで、エレイシアは私の赦しと情けを貰おうと懸命にお願いしてくる。
………ああ、似ているわ。本当に、似ているわ。
「………ねぇ、エレイシア。一つ、聞いてもいい?」
「! ………は、ぃ。なんでしょう、か」
「そうやってさ。今のアンタみたいに床に顔を着けて必死にご機嫌を伺いながら震えていた私たちを、アンタは―――ロア(おまえ)は、どうしたっけ?
ほんの僅かでも、その命乞いに耳を傾けてくれた?慈悲と情けと容赦を、与えてくれたかしら?」 - 70二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 13:04:53
この復讐が終わったあとの揺れ戻し半端なさそう
- 71二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 13:26:05
「―――それ、は。それは……それは……」
「私、その中でヤケになってアンタに敢えて逆らったわよね。『殺すならさっさとわたしを殺せ。殺して』って。
んで?それを聞いたおまえは?愉快そうに笑って、私ではなくお父さんを一番ヒドい方法で虐殺したでしょう?潰して丸めて折って切って削って血と肉をぶち撒けながら、手のひらサイズの肉ダンゴに変えてさ。そしてその上で不味いと吐き捨てて、不快そうにその穢れた足で踏み潰したじゃない。
そんなコトをしてくれやがったおまえのそのお願いを、なんで私が聞き入れなくちゃいけないの?慈悲を与えてやらなきゃいけないの?」
「ぁ、あ………ああ、ぁあ、あ……」
そうだ。これはそんな風に一切の赦しも慈悲も与えずに、私から全てを奪い尽くしたこの女への復讐だ。なのにどうしてその女からの懇願に耳を傾けてやる意味が、道理があるというのか。そんなもの、最初からある筈がないってのに。
「ほら、分かったら早く食べてよ。啜ってよ。吸血鬼らしく、かつてのおまえみたいに躊躇いなく口に入れなさいよ。この場においてアンタが私に対して言い返せる余地なんてないんだからさ。況してやそんなお願い、論外に決まってるでしょう?」
「……い、イヤ……わたしは、もう、人間の血なんて………飲みたくなんか、ない。飲みたく、ない……」
「……ふふふふふふ、だからね―――そんなもん赦されるワケがないって言ってんだよ!!都合のいいコトばかり宣いやがって!!
オラ、さっさと貪れ。貪りなさいっ!それか私が無理矢理その減らず口にブチ込んでやりましょうか?
どの道、今ここで食わないっつー選択肢なんかありっこないんだよ。赦されないんだよ!わかる!?」
「―――、―――」
卑しい、図々しい、厚かましい、虫が良すぎる。そしてそれらを自覚している。
だから何だっていうのか。だからそんなお願いをするってのか。本気でそれに希望を見出して口にしてるのか。
馬鹿馬鹿しい。本当に本当にアホらしさしかない。そんなもんであっさり聞き入れるくらい私がまともだったなら―――そもそも“死徒化させて拷問(こんなやりかた)”での狂った復讐なんかやっていないのよ。 - 72二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 14:02:37
「そら、とっとと選びなさい。自分から食うのか、それとも私に強引に食わされるかっ!!
さもなくば―――あそこの血と肉と骨のプールをすべて焼き尽くして、また“最初から”始めるわよ?」
「ぁ……う、ぅ………ぐぅ―――!」
エレイシアは見苦しく葛藤に葛藤を重ねる。どうあってもこれを回避できる術はない。自分はどうあれ、最後の一線を越えるしかない。
そんな絶望の末に、この女が取った選択は――――。
「―――ぁ、む………むぐっ、ん……ん………ぐ……う"、うぅぅぅ………っっ!!!!」
「はは、はははは、あははははははっ!!そう、それでいいの。つべこべほざいて無駄な抵抗なんかしなくていいし、さっさとそうすりゃよかったのよ!!
ああ、これでもう――――――アンタは立派な吸血鬼に逆戻りできたわね。エレイシア?」 - 73二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 14:45:10
人の心、、、、があるからこんな事できるんだろうなぁ、、、、基本こういうの無理な人なんだけど、スレ主が文豪すぎて中毒性がハンパない…夜中に怪談読んでる気分になる…スレ主小説家…???
- 74二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 15:49:44
保守
なんかもう堕ちるとこまで墜ちたというか…
ほんとうにもうノエルって人は復讐をして復讐をする事でしか生きられないんだな…と思ってしまう
ここまで来たらもう一切の救いなんかありはしない
復讐鬼になった少女はあらゆる血に汚れ
才能があったゆえに吸血鬼になってしまった少女は
復讐鬼の責め苦に耐え忍ぶしか道はない
辛すぎるなぁ…お互いに… - 75二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 16:10:18
このレスは削除されています
- 76スレ主25/01/22(水) 16:43:13
- 77二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 16:48:59
それがどうかはともかく、見かけたスレにとりあえず保守とだけ打つ保守荒らしってやつがいる
まだ時間が近いでもなくただ上げ目的かスレの消費目的で保守とだけ打ってるパターン
反応しても意味ないしスルーするか消す。ただ一見するとどっちかも分からないのが厄介な手合 - 78二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 16:57:42
返り討ちにされて復讐失敗ルートも見たい
- 79二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 17:00:49
原理4つに天性の才能にロアの知識+魔術有るから多分今のノエルでも危なそうよね
シエル自身が自罰的な思考だから返り討ちは無さそうだけどその思考が無くなったらヤバそう - 80二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 17:00:56
いまのシエル先輩に返り討ちできるかな…?
- 81二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 17:24:24
「はむ………、ぅぐ、んっ…………っはぁ、あ……ぁ………。
……う、うぅ、あ、あああ……あぁぁぁ……!!うぁああぁぁぁぁん………!!!」
心ここに在らずといった感じで箱の中のモノを全て食らい尽くしたエレイシアは、抑えていたものが溢れ出したように泣き喚きだした。血の涙を流しながら力なく項垂れている。苦労してやっと本物の吸血鬼に戻せたってのに、これでは露ほどの罪悪感が沸いてしまうわ。
でも、それと同時に―――やっとコイツを人食いの吸血鬼に逆戻りさせれたという達成感が、凄まじい快楽として私の心身を支配している!
「あは、あっはははは!食べた。食べた食べた!食べて啜って飲んじゃったわね!
そして、とうとう越えちゃならなかった一線を、ヒトとして残った最後の矜持さえ失っちゃったわね!
しかも今度はロアの支配なんかまったく関係ない、他ならぬアンタ自身の手(いし)で!ははははは傑作ここに極まれりじゃない!ああ久しぶり、13年越しの再会ね。死徒エレイシア!!」
「ぅ―――っっ"………、………!!」
エレイシアはただ啜り泣く事しかできないでいる。ふふふふふふ、どんな気持ちなんだろうか。結局一線を越えてしまった自分の意識の弱さを嘆いているのか、これほどの絶望に陥れられても狂えない自分の心か。
ああ、或いは―――今はもういない、愛しの彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだったりするのかしら?
まあ、どの道私にとってはこれでいい。ここに来て人肉を、人の血の味を再び覚えたんだ。これを機にコイツの精神は更に更に吸血鬼のそれに近づいていくだろう。
それが意味する処は即ち―――あの時の悪魔に限りなく近くなった状態で殺せるというコトだからねぇ。
「プールが溜まり切るのにはあともう1~2ヶ月くらいかかるでしょう。それまでの間にアンタがどれだけ醜く変わり果てていくのか、じっくりと観察させてもらうわ。
ふふふふふ、愉しみねぇェぇエレイシアぁ?」
「っ……、………う"ぅ………っ!ぁぁぁ……!!」 - 82二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:02:58
そしてそこから一週間、二週間、一ヶ月と過ぎていった。
「朗報よ、エレイシア。今日の分で大体9割以上に達したわ。あそこが満杯になるまであともう少しよ!」
「……へぇ、それは喜ばしいコトですね。それで、今日のディナーはまだですか?」
「ああ、ごめんなさいね。ほら、これが今日のエサよ。いつものように貪りなさい」
そうしてエレイシアはゆっくりと、しかし躊躇いなく目の前に置かれた肉を手に取り、味わうように咀嚼し飲み干す。食事をしている間、この女は常に笑みを浮かべて愉しそうに肉を食べ、血を啜っていた。
「―――ふぅ。ごちそうさまでした。やはり自分の身体を食しても不味いですね。他の動物も死徒もほとんど変わらない。あの時に食べた人間の魔術師の血肉の方がずっと上等な味わいと香りでしたよ」
このように、ほとんど完全に吸血鬼に堕ちきっている。一ヶ月前に一線を越えてしまった事でタガが外れたんだろう。いまやあれだけ抵抗を示していた食事も当たり前のようにスムーズに済ませている。
「ふぅん。それじゃ、また外道を働いてる魔術師を適当に殺して持ってきましょうか?上等だってんなら、また味わいたいでしょう?」
「………………いいえ。今はこの、粗雑な味で満足しているので結構です。不味いだけでなく肉体を維持する上においても効率が良くありませんが、これはこれでクセになる味ですので。
ですから―――些末な人間の血肉は、いりません」
指に付いた血と僅かな肉片を舐め取りながら、エレイシアはそう言って遠慮する。吸血鬼の味覚なんて知ったこっちゃないし知りたくもないけど、コイツがそういうんならそれでいいか。
「そう、わかったわ。……あと、今日はアンタの傍で寝ていい?ここ最近は任務やら自主練やらでずーっと気を張っててすっごい眠いの。一睡もしてないからアンタの膝を枕にするわ」
「別に構いませんが……フフ、今のわたしを前にそんなコトをする度胸がよくありますね?眠っている間に血を吸われて食べられるかもしれませんよ?」
「へぇ、じゃあなに?贖罪の意思なんてとうの昔に忘れてしまったのかしら?ただ目の前に血肉だけあればいいと?」
「…………流石にそこまで獣には堕ちていませんよ。ええ、ならいいでしょう。勝手に膝枕にして勝手に眠りなさい」 - 83二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:03:30
悪魔だ悪魔がおる…………
いくら復讐と言えどここまで来るとやりすぎな気がする
シエル先輩とノエル先生に幸せはないのか!?
なんか見ててお互いに悲劇のヒロインすぎて悲しい…
うん月姫はそうゆう作品なの理解してるけどやっぱり悲しい… - 84二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:07:45
ノエルさんエゲツナイひどい結構ひどいと思ったけど「あんたの膝で寝る良いよね?」してくるのはシエル先輩好きじゃん!で嫌とは言わないシエル先輩も優しさ!
なんだろう好きとこの人怖い復讐鬼だぁ!の感情がずっとぐるぐるしてしまうくらい続きが気になって仕方ない - 85二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:21:15
- 86二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 18:23:35
なんか申し訳ないんだけどこのインモラルというか退廃的な雰囲気に興奮してる…スレ主の文章好き…
- 87二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 19:37:45
>>86 裸マントの吸血鬼を膝枕に人外シスターが寝るってさ、淫靡でいいよね
- 88二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 19:50:00
どうしようもなく救いのないノエル先生が大好きだから、スレ主には感謝しかない
- 89二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 19:55:12
こう、IFものとかをやるときに大切なのはしっかり文章量を積み重ねる事なんだなと思わされたな
説明の量としても、単純な文字の量の積み重ねとしても、 - 90二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 20:36:12
「―――んじゃ、おやすみ~……」
「………ええ、おやすみなさい」
そうして彼女は本当にわたしの膝に頭を置いて、間もなく眠りについた。あまりにもその姿が、襟から見える首筋が無防備すぎて口の中を唾液が走る。けれど、それが何より悍ましいコトと理解しているので、グッと堪えながら寝顔を静かにじっと見る。
……ゾッとするほどに白くて、それでいて人形のように整った綺麗な顔だ。普通の少女の寝顔が、そこにあった。
「………でも、この少女を復讐に狂わせて、悲劇の怪物に堕としてしまったのはわたし。わたしが生まれてさえこなければ、わたしとこの少女が地獄を見続けることもなかった」
わたしは彼女から全てを奪い、彼女と一緒に戦い、彼女を裏切り、そして―――彼女にこうして貶められて、因果応報のツケを払わされている。
「わたしは、結局あなたに何も返してあげられなかった。あなたにごめんなさいと謝ることができなかった。あなたの事を、何も理解していなかった。
あなたに……地獄を歩ませてしまった。もう、戻れないところまで狂わせてしまった」
普通の幸せを教授する筈だった、どこにでもいる普通の少女として生きる筈だった彼女の額に手を添える。割れ物を扱うみたいに丁寧に、大切に、優しく、愛おしく。
けど、わたしが彼女を愛おしく思う資格はない。わたしもまた、再び戻れないところまで堕ちてしまった。もっとも、13年前の時点でヒトとしてとっくに終わっていたのだけれど。
「本当に、本当に……バカ、ですよね。あなたの全てを踏みにじり、その贖罪の誓いを契りながら裏切って、結局こうして因果応報を受けているわたしも……復讐の果てに代行者(わたし)を死徒に堕とす禁忌を犯してしまった、あなたも。
……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
……我ながら、どこまでも卑怯な女だ。こんな時でしかこの子に謝れない。この子の怨念(おもい)と正面から向き合えと遺してくれた彼にも合わせる顔がない。
「ごめんな、さい―――ごめん、なさいっ………!!」
今はもう、朱く穢れてしまった涙を流して彼女に懺悔する。
でも、こうして謝ったところでこの子はわたしを決して赦さない。わたしもそれを受け入れた上で、この子が憎む邪悪で穢れた悪魔として最期まで振る舞い続けるのだろう。
だって、わたしたちはもう――――――とっくに、 狂(おわ)っているのだから。 - 91二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 21:46:25
なんていうんだろう、こう…安全なところから椅子に座って、テレビでデーモンコア近寄せたり離したりしてる実験を見てるみたいな背徳感と後半を感じる物語だ、、、スレ主の文才が恐ろしい…他に作品有ったら教えてください…
- 92二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 22:21:00
このレスは削除されています
- 93二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 22:23:28
このレスは削除されています
- 94二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 22:24:17
- 95二次元好きの匿名さん25/01/22(水) 23:49:39
「………んんっ……あれ、わたし……いつの間に寝、」
「―――目覚めましたか。おはようございます、ノエル」
「――――――――ひ」
………………びっっっっっっくりした。まじでしんぞうが止まったかと思った。いや止まったなコレ。
そうだ、そうだったわ。確かクッソ眠かったからコイツの膝を枕にして寝たんだったわ。
「フフ、悪魔でも見たかのような面白い顔になってますよ。まあ、実際その通りですが」
「ざけんじゃねえわよ。最っ悪の目覚めだわ。………ところで、どれくらい寝てた?」
「そうですね、丸一日は眠っていましたよ。今は夜です」
マジか。そんなに……まあ数日くらいぶっ通しで神経張り巡らせて動いてたら、反動でそこまで寝るのも無理からぬ事かしらね。
「いやぁ、それにしてもあなたの寝顔をずっと見ていましたが、あんまりにも無防備なモノですからついつい吸い殺してしまおうかという衝動をガマンするのに必死でしたよ。ふふふ………」
「あっそ。なら、こうして早く起きれた自分の幸運に感謝する他ないわね。おおコワイコワイ」
冗談なのか本気なのか分からないエレイシアの物騒な発言を適当にあしらう。まったく、コイツの膝の上でこうして頭を預けて寝ようとした一日前の私バカでしょ。
いつ襲われるかわから、ない―――の、に………………。
「…………?どうしました、急に瞼をパチパチさせて。わたしの顔に血とか肉片でもついてます?」
「………いや、こうしてこの角度で見ると―――本当に12歳とは思えないほど胸が出てんなぁって。格好が格好だからエッチよね」
「―――は? なっ……えぇっ!?き、急になな何を言い出すんですかシスター・ノエルっ!!?」
あ、待って。そんなに一瞬で頬赤くして動揺されると笑う。待て、こらえろ私。今はそうじゃないでしょ。
「スゥー……ん"んっ。別にそんな慌てるほどでもなくない?あー、ロアの電波に汚染された人間ってさ。思考構造こそロアそのものにエミュレートされるけど、一方で趣味趣向はその人間の価値観のイドが諸に反映されるんでしょ?
てことはさ、こうして嫉妬するくらいのスタイル抜群なエロいボディを惜しげもなく晒すっつー露出願望がアンタのイドってコトよねぇ?ふふふふ」
「は―――はぁぁ!?ち、違うに決まってるでしょうそんなコトっ!ばば、バカなコト言わないでください!」 - 96二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:02:11
ノエシエ尊い……
っていうかやっぱノエルさんシエル先輩の事すきでしょ
ここにきて何イチャつきだしてんだよ - 97二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 07:03:36
しっかりいた、、、、うーん、うーん、これはこれで廃退的な雰囲気があってアリかも…
- 98二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 07:59:44
もう外側さえ見なきゃだいぶカップルめいてきた感ある
これは…これで…!!! - 99二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 08:09:16
ここまでお互い壊れて壊されて狂って狂わされておかしな事してる状況になって、初めてこんなきゃぴきゃぴした表向きの関係になるのがなんかノエル先輩お労しいな...
- 100二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 08:40:18
あーやっば。コイツの反応露骨すぎて可愛いとすら思えるわ。そっか、こういう系の話題には弱いのね。
「志貴クンとイチャついてた時から薄々思ってたけど、やっぱりウブの気があるじゃないの。まあいいわ、それよりも……」
「な……なんですか?―――ひゃ!?」
私はゆっくりと手をエレイシアの方へと伸ばして、コイツの見事に出っ張ってる脂肪の塊に触れた。
「ちょ、ん―――なにしてるん、ですかっ……!」
「なにって見ての通り触ってんのよ。私より歳が低いのに私よりこんなにも生意気に立派に育ちやがってさ」
「す、好きでこうなったワケじゃありませんから!早熟なの気にしてるんですから言わないでくださいっ」
死徒だから触られてる感覚はあっても性的快感とかは本来ないけど、痛覚の秘蹟をかけてるからそれなりの刺激を感じているのでしょう。
………ふーん、ちょっとイイコト思いついた。丁度夜だし、“そういう拷問”を審問と称して行うのもいいかもね。
「決めた。エレイシア、今からアンタに審問を行うわ。―――このままここで私に抱かれなさい」
「は?抱くって―――えっ!?そ、それって………正気ですかノエル!?」
「はは、そりゃ驚くわよね。でも、残念ながら正気じゃないんで抱くっつったら抱くわ。勿論、審問なのでアンタに拒否権はない。どうせヒトとしての尊厳なんか全部失ったんだ、今更カラダを好き勝手に弄ばれるくらいじゃ何も問題ないでしょ?」
死徒はその人間の理想の全盛期にバージョンアップされる以上、肉体の方も名器になるらしい。だからと言ってヤる気になんか到底ならないし、どれだけ名器になってようが死徒と致すってコト自体が実質的な死姦も同然だ。
教会の連中にはそういうコトもしたような狂ったヘンタイも一部いるんだろうけど、少なくとも代行者以前に死徒への復讐に生きる私にとっては一生縁のない事と思ってた。思ってたけど―――どうやら私もこの女に対してだけは、その狂ったヘンタイ共と同類に堕ちてしまったらしい。
「それに―――今ここでアンタを犯 す事で、アンタの処女としての尊厳も汚せるからねぇ。キモいと思う?まあ確かにそれはごもっともだけど、血の快楽に溺れてるアンタがそんな私を非難する権利も資格も筋合いもないわよね?」
「っ………、んっ………それは、そうですけど。揉みながら言うの、やめなさいっ!」 - 101二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 08:40:53
ふふ、本当に反応が可愛らしいわね。志貴クンもこういう気持ちに近かったのかしら。まったく、今になって私があの子をちょっとだけ羨むだなんてなぁ。こんな人間的な感情、もう死ぬまで沸く事はないと思ってた。
「いやよ。なんで目の前にこんな出っ張りがあって揉むのをやめないといけないの……と言いたいけど、寝起きで口の中気持ち悪いから洗うついでに身も清めてくるわ。ほんのしばらく待ってなさい」
「…………………わたしは血生臭いですけど、いいんですか」
「ん?でも表面上は血で汚れてはいないでしょ?なら多少臭いがキツくても問題ないわ。っていうか秘蹟かければ済む事だしね」
―――そして、軽く洗浄して法衣を着なおしたあとに私はエレイシアのもとに行った。なお風呂なんてモノは当然こんなゴーストタウンじゃ一つも機能していないので、秘蹟と白鯨の力で出した水を即席のシャワー代わりにした。
「お待たせ。じゃあ夜のイケナイ審問と行きましょうか。と言っても私は当たり前だけど誰かと致した事なんてないから、多少下手くそな上に乱暴になっちゃうでしょうけど……ま、あくまで審問なんだからそんなのは些事よね」
そう言いつつ私はいつものようにエレイシアを講壇に乗せて、その上から押し倒すように覆い被さる。
「……これも審問であるのなら潔く受け入れますが。乱暴なヒトは、いつか運命の人が出来た時にその人から嫌われちゃいますよ?」
「あははは、こんな狂いに狂った人外の化け物女に恋人なんてできると思う?第一、私はそんなものよりも復讐を求めるわ。そしてこれもまた、その復讐の一環にすぎないのよ。じゃあ、性的快感を付与する秘蹟を今から掛けるわね」
そう。これに、この行為に復讐心と嗜虐心はあっても愛なんてない。コイツが苦しみ、喘ぐのを嗤って愉しむ為にこうしているだけ。
愛とか、そんなモノ……コイツに対してあるワケがない。どんなに狂っても、それだけは絶対にない。ない、筈よ。 - 102二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 08:42:35
「……よし、これで終わったわ。それじゃあ、せいぜい望まぬ快楽に晒されながらみっともなく懺悔してちょうだい。私にとって復讐を成した時に勝る快感とかないけど、これはこれでどこまで愉しめるのか期待だわ」
「………お手柔らかに、とは言いませんし言えませんけど。あなたもわたしと変わらないくらいのヘンタイですね。なんて、哀れな」
「ヘンタイ上等、哀れ結構。露出狂の気がある淫猥吸血鬼に言われても何も堪えないし、従ってこの行為を止める理由にもならないわ。
では、今度こそ始めましょう―――」
「……露出狂は、あくまであの時のロアのせいですよ。………んっ――――」
そうして私はエレイシアに唇を重ねる。コイツにとっては二度目で、私にとっては初めてのキス。
ファーストキスは、柔らかな皮膚の甘い味と微かに染みついた血の匂いがするな。そんなくだらないコトを思いながら、私たちは愛のない一夜を過ごした――――――。 - 103二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 09:20:17
「………ん……ふわあ……おはよう。エレイシア」
「ええ、おはようございます。ノエル」
―――目覚めの朝を迎える。昨夜の行為の影響か、心なしか倦怠感が拭えない。
できればまだもう少し寝ていたいところではあるけど、いつまでも教会を留守にしてるワケにもいかない。何より、今日もコイツをいたぶり、プールをコイツの肉で埋めなきゃいけない。
「まだ眠そうですね。もう少し横になりますか?まあ、わたしがその間にあなたの血を吸うかもしれませんが」
「なら遠慮しとく。ていうかそれ以前にそろそろ教会の方にいかなきゃだし。これでも弱き人々を護る代行者だからねえ」
そうして私は軽く準備をしたのち、出入り口の方へと急ぐ。そのまま出ていく間際、私はエレイシアにひと声かけた。
「じゃ、行ってくるわ。帰ってきたらまたいつものように審問していたぶり尽くしてやるから、せいぜい震えながら懺悔しておきなさい」
「ええ、おとなしく待っていますよ。もっともわたしは邪悪な吸血鬼ですから、震えて待つよりも今日の食事を愉しみにしておく、と言っておきましょう」
「は、確かに今のアンタはそういうヤツだったわね。なら、邪悪な吸血鬼らしく待ってなさい―――エレイシア」 - 104二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 09:23:35
朝から色々狂うんだが!!ありがとうございます!!!!
- 105二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 10:04:24
なんだろう
直接的な表現はほとんど描写されてないのに下手な閲覧注意系のSSより官能的に感じるんだが?? - 106二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 10:26:43
シエノエに最近目覚めた自分とってはありがてぇ…
まさかヤッちゃうとは思わんかったがこれはこれで
続き楽しみ - 107二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 10:47:18
結果だけ見たら強大な吸血鬼を一箇所に留めておいて被害ゼロにしてるのは偉い
まあ教会的にははよ殺せなんだろうけど - 108二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 14:53:15
>>107 そもそも事の始まりが代行者自ら吸血鬼を生み出すトチ狂った案件で頭抱えてる。
んでこっちからで向こうにも相手はシエルだし、死徒化させたノエルは気付いたら単独で死徒二十七祖の一族を壊滅させた怪物になってるから、好きにさせてるんだろうね
- 109二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:24:55
そこから更に日が経ち進んでいった。エレイシアを審問していたぶって悲鳴を上げさせて、その日の成果を肉のプールにブチ込んで、残った血と肉を貪らせて、またいたぶる。
そのサイクルを繰り返していく内に―――とうとう、プールが満たされる寸前まで埋まった。
「ああ、見なさいエレイシア!その講壇の位置からでもわかるでしょう?噎せ返るほどの悍ましく夥しい血と肉と骨の臭いがっ!!
多分、あと三日。そう、あと三日以内にアンタの血肉で満ちたこのプールは穴いっぱいに埋め尽くされるでしょう!ああ、長かったようで短かったようにも感じられるわ。ようやく、ようやくその時が目と鼻の先まで来たんだから……!」
そう、ここまで本当に―――本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に、本当に長かった。既に何十回も何百回も、或いは千すら超えてるんじゃないかってほどコイツを痛めつけて苦しめてきたけど、私にとってはそれじゃあまだ中途半端な報復だ。
この朱い朱い肉の海が満杯になり、そして最後にこの悪魔を焼き殺して地上から消滅させてこそ!私のこの女に対する復讐は真に完遂するんだから!!
「フフ……良かったですね、ノエル。そして、それはわたしとしても喜ばしい事ですよ。わたしの贖罪と懺悔の日々も間もなく終わる。罪は永遠に消えなくとも、あなたに断罪される事でようやく死という救済(ゆるし)が与えられる。
ここであなたの復讐を受け続けるべきわたしに唯一赦されたその時が、ついに迎えようとしているのですね」
「ええ、その通りよ。今日を含めてあと三日!いえ、場合によってはあと二日かしら?何にせよ私のアンタへの復讐の終わりは近い。今のうちに辞世の句でも考えておくことね。元バディとしてそれくらいの情けはくれてやるわ」
「それは感謝しないとですね。………ああでも、邪悪で穢れた死徒の身としては、血と肉に溢れたディナーをそれ以上愉しめなくなるのかと思うと残念です。ええ、本当に」
「はは、そんなコトを惜しむ辺り完全に堕ちきってるわね。もはやあの時のロアそのものじゃないの。なら、最期にまたヒトの肉でもたんと食わせてやりましょうか?」
「………いえ、それは結構です。わたしは吸血鬼に堕ちても、上等な食事よりも質素な食事を好みますので。ヒトの血肉は確かに病みつきになりそうなほど魅力的ではありましたが、だからこそあの一回で十分なんですよ」 - 110二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:31:05
ふーん。ロアに近くなってるクセに、こういう変な拘りは最後まで変わらないなんてね。嬉々として人間の血を貪ってもらった方が理想だったんだけど……まあいいか。どうせもうすぐ殺すんだし。
「そう。私には理解できないししたくもない価値観だけど、アンタがそう言うんなら別にいっか。
それよりも…………ねぇエレイシア。思えばさ、私たちって随分と数奇な関係を築いてきたわよね」
「何ですか唐突に………と言いたいですが―――はい。確かに思い返せばそうでしたね」
ロアによって故郷を吸血鬼共に滅ぼされ、アンタは望んでもないのに不死身のカラダを持ってしまい、私は復讐の奴隷となって狂った末に人間をやめてしまい、お互いに凄絶で凄惨な人生(じごく)を歩んできた。歩まざるを得なかった。
そんな中でコンビを組んで、何だかんだで一緒にやっていけて、一人の人間を巡って一度は対立したものの、それでもその後に息を合わせて共に強大な化け物をブッ斃して。
そしてそこから今度は私がアンタを裏切り、アンタを死徒に堕とし、狂いながら尊厳も肉体も心も魂も何もかもを穢し尽くして。それでもアンタは私をただの一度も糾弾する事も怨みもせずに、それら全てを自らの罪のツケとして受け入れた。
こんなにも愉しくて、でもクソみたいな復讐の日々の中でいつの間にか審問以外で触れ合う時間が多くなって、そしてあの夜にアンタと一線を越えるまでしてしまった。
「ねえ、エレイシア。こんなコト、他の誰よりも私自身が一番口にしたくなかったんだけどさ。どうしても、どうあってもそれだけは絶対にないと言い切りたかったんだけどね。認めたくなかったんだけどね。
私、どうやら―――おまえが、アンタが―――アナタの事が、気がつけば好きになってしまってたみたいなの」
「――――――ノエル」
ほんの僅かに、目を丸くしてエレイシアがそう零す。ああ、うん。そうよ。認めたくなかった、こんな感情はただの錯覚にすぎないと思いたかった。消し去れるものなら一瞬でも早くそうしたかった。
でも、どうやらこれは消えてくれないらしい。愛が憎しみに変わる事は掃いて捨てるくらいあるけど、憎しみから愛が生まれるなんてある筈がないと思ってた。けれど私の中のコイツに対する憎悪は、そんな固定観念をものの見事にブチ壊してくれやがった。 - 111二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:51:48
「好きだけど嫌い。憎いけど愛らしい。好きなのに殺したい。好きだから殺したい。死んでほしいのに殺したくない。殺したいから、苦しめたいから、好きだから死んでほしくない。殺したいけど、生かしたい。
―――こんな愛憎入り混じった想いを抱えてる私の苦しみが、痛みがわかる?私はもう、アンタのせいで復讐鬼としてさえ揺らぎ始めてしまってたようなの。エレイシア」
「………ノエ、ル…………」
この14年以上に渡る復讐の中で、色々なものを気に入らないと思ったし憎いと感じた事も沢山あった。
でもまさか―――ここに来て自分自身の中に燻るこの怨嗟の炎に対してすら、憎しみ(それ)を向ける事になろうだなんて夢にも思わなかった。
文字通り全てにおいて憎んでいるなって、皮肉にも笑いそうになる。自分は狂っているとこれまで散々言い訳にしてきたものの、こうまで救いようがないと来ればその言い訳すら意味がない。
「でも、けれど、だからこそ。このタイミングでそれを自覚してよかったと思う。アンタを殺すまであと数日。それまでならまだ殺意と憎悪を固められる余裕があるわ。まだ私は純粋な復讐鬼でいられる。
もしこれで、結局殺せなかったとしたら―――それこそ手前勝手に殺そうとしておきながら、恋という名の愛に負けてしまったアンタと同類の半端者になってしまうからねえぇぇぇぇぇ?」
そうだ。これがもう少し早く気づいてしまっていたら本当に危なかった。私はこの女みたいな鉄の精神力は持ち合わせていない。でも、その鉄の心を持つコイツでさえ恋には執行者としての在り方を貫き通せなかった。
ああ、他人を好きになるってのは、本当に猛毒よ。鉄の意思をドロドロに溶かしてしまう、最強であり最悪の強酸そのものだ。 - 112二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:53:23
「…………そう、ですね。ノエル、あなたは―――どうか、シエル(わたし)みたいにはならないでください。
あなたは、あなたの復讐(おもい)を貫いてください。例えそれが、間違っているやり方だとしても」
「ええ、ええ!アンタに言われるまでもないけど、念の入った忠告ありがとう!それじゃ、今日も午後の任務に備えて行ってくるから、帰ったらまた可愛が(いたぶ)ってあげるわね!
もうすぐ、もうすぐで―――全てが終わるからね、シエル!!」
そして私は名残惜しそうにエレイシアを見つめながら、血で錆びついた出入口の扉を閉めた。
……っていうか、いま勢いでシエルって言っちゃったわよね。はは、もうアイツは代行者でもバディでもないってのに、まだどっかで無自覚に意識してんのか。私も私で本当に面倒くさい女だわぁ。
でも、そんな事さえも今は愛おしい。代行者(シエル)も、吸血鬼(エレイシア)も、想いの方向は違えど大嫌いで大好きだ!私は一生、死んでもあの女の事を忘れられないし忘れないのでしょう!
「ああ!もっと、もっとこれからもアイツと――――――あの子と色々話したかったし、一緒に過ごしたかったわ!!!」 - 113二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 19:40:44
「………いってらっしゃい、ノエル」
わたしは、そうポツリと言って任務に向かっていく彼女を見送る。ようやくこの地獄が終わってくれる。ようやく、この贖罪の日々が終わる。
ようやく、ようやく……彼女を、わたしへの憎悪と妄執と狂気から解放してあげられる。
無論、それでも彼女の復讐の焔(ほのお)は故郷を滅ばした吸血鬼たちを燃やし尽くすまで鎮まらないのだろう。生きているかぎり、彼女は代行者として弱き人々を護っていくのだろう。
「……でも、それはそれとして驚かされたのは………」
彼女が、ノエルがわたしに愛憎入り混じった感情を向けていた事。憎しみと嫌悪と憤怒のみを向けられていると思ってただけに、その本音は衝撃だった。
わたしに愛される価値なんてない。それはわたし自身そうだと自覚しているし、そしてわたし以上に彼女もそう思っていた筈だ。
けれど、その上で彼女はわたしを好きになってしまったと言った。尽きる事のない怨念はそのままに、同時に好きだから生きていてほしいと思うようになってしまったのだと。
「けど、彼女はそれでももうすぐわたしを殺してくれるでしょう。復讐鬼としての覚悟と殺意が、鈍ってしまわないうちに」
そう、彼女はわたしと違って迷いはない。あっても、振り払えなくなる前にその刃と共に断ち切るだろう。
わたしは間もなくやってくるその時を、この穢れきった身に然るべき処断を受けるのを、ただ祈りながら待つだけだ。
「ああ、でも―――彼女が、わたしにそういう想いも向けている事にもっと早く気づけていれば……それだけ彼女と多くの言葉を交わす事ができたかもしれなかったのに」
わたしは本当に、気づくのが遅すぎる。彼女の言うようにどこまでも鈍い女だ。きっとこれも、わたしが人間の心を持たない、理解できない怪物だからに違いない。
「けれど、それでも今更悔んだところで後の祭り。それもまた、わたしという心のない化け物への罰なのでしょうね」
なら、今はこうして贖罪の名の下に、決別の断罪の時を座して待つとしましょう―――。 - 114二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:00:18
そして、わたしは何もせず、ただ静かに彼女が帰ってくるのを待った。彼女の憎む化け物として殺される為に、最期まで贖罪の意思を忘れずに貫き通す為に。
一時間、一分、一秒さえ長く感じられた。この瞬間の一つ一つが、終わりに近づいているのかと思うと、本当に長く感じた。
「あと三日、二日……か。フフ、今のうちにノエルの言っていた事に従って、辞世の句でも考えておきましょうかね」
本当ならわたしは、それすらも赦されずに断罪されるべき生き物だ。でも彼女は、誰よりもそれができる権利を持ちながら、最期の遺言を遺す慈悲を与えてやると言ってくれた。
「………早く、戻ってこないかな。あの子には、まだまだ言いたいコトがたくさんあったけど、もうそれは叶わない。
だから、できるだけ短い言葉にわたしの想いの全てを乗せて伝えないと」
これでは本当に恋人の帰りを待っているみたいだな。なんて他愛のない事を思いつつ、ゆっくりと時を過ごした。
――――――けれど、一日待っても、二日待っても、一週間待っても、一ヶ月待っても。
彼女が帰ってくる事は、なかった。 - 115二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:01:36
捻れ狂った感情の関係性で複雑すぎて簡単に言葉には出来ない関係なのにずっと見てたからこの二人が大好きになっている…いいよもっとこの二人の感情を揺さぶってめちゃくちゃな気持ちなのに大好き同士を見たい
どうかこの二人に救済を - 116二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:04:25
ノエルさん、大好きと大嫌いのぐちゃぐちゃでやっぱりシエル大好きだから殺すなんて…………ってなっちゃったのかな…………??????
- 117二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:04:59
あまりにも良すぎる……!!!!ようやく終われるあと一歩というところでまさかノエル先生に何かが……いい展開すぎて大好きすぎる……
- 118二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:09:37
ノエルさんどこ行っちゃったんだろうな(゜Д゜≡゜Д゜)?
- 119二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:16:32
- 120二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:20:43
- 121二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:22:40
もうノエルさん戻ってくる気無いんじゃないの?
1ヶ月帰ってこないのは
やっぱりシエルのこと…………って………… - 122二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:25:24
- 123二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:33:25
ノエル先輩帰ってこないとシエル先輩が発狂しちゃう!
助けて!ドラえもん的な存在!!!
シエル先輩とノエル先輩を誰か救って!!!
二人が笑ってる文章ないとわしは辛いです
誰かおーたーすーけー
救いを…救いを下され
お慈悲を… - 124二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:34:31
- 125二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 20:42:48
復讐をする側と受ける側、拷問する側とされる側って仲になって、半年以上共に過ごす内に狂った爛れたに仲なって、距離が縮まってそれでも互いに決めた終わりに向かってたはずのとこのトラブル、一体何だ?
- 126二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:38:05
監禁してる側がストックホルムってるの好き
こう、本人達以外には被害出てないどころか総合的には善行に属しそうなのに報われなさそうのが、なんかこう、凄く辛いけど良いなって思いました
死徒は人じゃないから被害に入れないってことで…シエル先輩も今は死徒だったわ - 127二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:38:16
「―――なんで?どうして?」
最初は、また唐突に降って沸いた案件に捕まって長期間の任務に晒されたのかと思った。
でも、わたしが知る限りノエルが一ヶ月過ぎても戻ってこなかった事は一度もない。二十七祖の単独での潜入討伐でさえここまでは掛からなかった。
「………まさ、か」
ふと、最悪の可能性が過った。けど、頭に浮かんだそれを必死に振り払う。彼女はわたしのように不死身じゃないから命の危険を重視するし、実力の程度もしっかり把握しているから戦闘や任務において油断は一切しない。
生存能力、という意味では不死身だった故に必ず生還できていたわたし以上と言っていい。その彼女にかぎって、そんなコトなんか。
けど、だとしたらどうして一切音沙汰もなく未だに帰ってきてないの?戻ってこないの?
「いや、違う。違う。彼女は……ノエルは、必ず、絶対にまたここへ来てくれる。わたしに然るべき罰を与えに、帰ってきてくれる」
でも、一旦その可能性を考えてしまった瞬間に不安と懸念はどんどん募ってくる。彼女の安否もそうだが、それと同じくらいに怖いのが、わたし自身のカラダだった。
もう、一ヶ月以上も血肉を摂取していない。まだわたしとしての自我も肉体そのものも何とか維持できている。
けれどわたしの中にある複数の呪い―――原理血戒の安定が、微かに揺らぎつつあるのが感じ取れてしまっている。
「このままじゃ、わたしは……いずれ原理血戒を制御できなくなって、確実に呪いに潰される。そうなったら、この街は今度こそ、跡形もなく呪いの奔流に吞まれて消えてしまう」
鎖を壊して、目の前にある肉のプールを貪るという選択も浮かんだ。けど、わたしがわたしでいられるのはこうして鎖に手足を繋がれて拘束されているのも一つの要因と思った。
これを壊して、ある程度の自由が利く状態になってしまったら、行動制限の枷もそのまま外れてしまいそうな気がして怖い。だから、できない。 - 128二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:48:58
ヤバイな…シエル先輩の方が限界来そう…
そりゃ飲まず食わずみたいな状態ならいつ暴走してもおかしくないよね…むしろ今までノエル先輩いてなんだかんだでどうにかなってたのがもはや奇跡みたいな…
いやなんか暴走しまくって原理血戒が何個もあるのがヤバイと言うか…
今の今までシエル先輩が姿はロアだけど中身までロアになってないのか救いなのかな… - 129二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:50:19
マジのマジでマーリォウ司祭代行しかどうにか出来そうな人が居ない…助けて司祭代行!!!!!!!
- 130二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:08:17
シエル先輩も心配だけどノエル先輩も心配だし
いまだに何の言及もないマーリォウ司祭代行もどうしてるか分からないから心配だし
主人公死んじゃったし姫も死んじゃったし皆居ないし…不安だらけすぎる - 131二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:09:27
なんか不穏だなぁ……
- 132二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:24:15
「イヤ……イヤだ。おねがい、帰ってきて。戻ってきてください。わたしが、わたしでいられている内に、戻ってきて。殺して。ノエルっ………!!」
このままじゃ、わたしは―――また、取り返しのつかない罪を犯してしまう。14年前の時点で既に殺戮と汚染の限りを尽くして死都に堕としてしまったというのに、今度は、この故郷そのものを周辺の地域ごと物理的に地上から消してしまう。
イヤだ。そんなコト、絶対にイヤだ。その贖罪の為に、この命と心血を文字通り捧げてきたのに……それが全部無意味なモノとして散るのだけは、絶対にイヤだ。
「ノエル、ノエル………ノエル―――ノエ、ルっっ………!!!」
たす、け――――――?
「…………!?」
突然、正面奥にある扉をが開く音がした。顔を上げると、扉の隙間から外の光が漏れ出している。
というコトは、アレは―――かえってきてくれた。やっと、かえってきてくれたんだ!
「あ……あぁ!おかえり、ノエルっ!やっと、やっと、帰ってきて」
「―――う"げっ!?くっっっせえ!!はっ!?んだコレ!?この肉の床………はぁ?オイまさかコレ全部アイツがやったっつーのか?いや、イカれてるたぁわかってたがここまで酷えとは思わなかったぜ!マジで狂ってんなあのクソ猪っ!!」
「―――ぇ?」
え、なんで。どうして―――この人、が?
「あ?おうなんだそこにいんのかシ――――――、
………………………マジ、か。………いや、そうだよな。アイツがもっとも復讐を望んでたのは、その姿のテメェだったもんな」
「マーリオゥ―――司祭、代行?」 - 133二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:31:59
ジャリガキー!!!!!
- 134二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:42:16
これは救いなのかそれともここから落とされるのか…
マーリォウ司祭代行が来たから安心ではあるけど処分されそうでもある…うーん不安 - 135二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:45:02
今更になって絆されフラグなんか建てるから…
ノエル…
やはり調子に乗ってしまった時が彼女にとっての死亡フラグそのものなのだろうか
教会側の反応を考えるとむしろ今までよく生き延びれたとも言えなくもないが - 136二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 22:55:02
目の前に現れたのは、ここに来る筈のない―――来るワケがない筈の人物だった。
「おう、テメェのよく知る恐怖の司祭代行サマだ。死徒に堕ちてもちゃんと覚えてるようで何よりだぜ。にしても……すっかり落ちぶれやがったなシエル。いや、実際はあの猪に堕とされたっていうのが正しいか?」
「なん、で。なんで、あなたが、ここに………!?」
確か、ノエルは教会を脅す際に彼にも伝えていたと言っていた。だからわたしがどこに監禁されているのかというのも分かってはいたんだろう。
でも―――なんで、いま、このタイミングでやってきたの?
「なんでって……チッ事情も伝えてなかったのかよアイツ。ま、そりゃそうか。
あー、オレがここに来たのはな。大分前にあの猪が教会やオレに脅しかけやがったっつーのは当人から聞いてるよな?
そん時にな、“自分に何かあったらシエルを頼む”ってアイツからついでに頼まれてたんだよ。だから来てやったんだ、感謝しやがれ」
「なにか、って………あの子に、ノエル―――なにが、あったんですかっ!!?」
「………………ああ。アイツはな―――」
「一週間前に死んだよ。二十七祖の一角―――第12位の『ルルリリィ・A・パラノダリア』と、相討ちで刺し違えてな」 - 137二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:01:57
博士かぁ……
- 138二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:05:07
因果は巡る糸車だなあ…
- 139二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:12:09
最悪の結末だ、自分が考えてたのは「上の判断で下手にシエルを封印するより運営するってことになって、それの擦り合わせでノエルが不在だった」てのだったが、現実は非情だ
- 140二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:15:09
1人でも多く仇をうって死んだのか…
シエル先輩が置いてく側からみんなから置いてかれる側になっちゃったな - 141二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:23:48
あの場にいた一人であるのと同時に博士は現代でノエルが吸血鬼化する原因だから当然狙う相手ではあるんだな
まあ裏まだ出てないしここで詳細を書くには描写が少な過ぎるし、書ける範囲ではギリギリの落としどころか…
しかしこれはある意味では最も派手な復讐になったな。あと一息というところに来て双方にとっての残りの望みが絶たれてしまった - 142二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:29:12
うーん辛いな…ノエル先輩にとっては自分の故郷壊した死徒を一匹でも多く仕留めたってのは良い結果ではあるけれども
- 143二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:42:20
『シエルを頼む』ってのは、どういう頼むなんだろうね。
ちゃんと殺してくれ、なのか。
救ってくれ、なのか、
私の分まで復讐してくれ、なのか、 - 144二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:52:30
日干しルートかと思ってたけどノエルさん……
下手に悪辣陰湿な手を使うより心に傷をつけていく
本人の計画のうちなのか不慮の死なのかはまだわからないけど シエルにとっては自分が死ぬより辛いし折れるよね - 145二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 02:02:04
「あ――――ぇ……?」
しんだ。シンダ?だれが、ダレがシンダっていったの?
「テメェと離れてここを後にしてから間もなく、アイツは運が良いのか悪いのかパラノダリアの情報を掴んでロズィーアンの時のように付け回してやがってたらしい。
んで相討ちの結果、パラノダリアは原理血戒を遺して消滅。猪―――代行者ノエルはそのすぐ近くで遺体で発見された。遺体の損壊は激しく、特に右腕の欠損と胸部……心臓の辺りが大きく抉られているのが目立っていた。
極めつけは右足だな。太股、膝、脹脛……至る所から“蜘蛛の脚のようなモノ”が生えていた。だが全て右足ごと真っ黒に焼け焦げていた。恐らく戦闘の中で右足に呪いの侵食を受け、それを炎で止めようとしたんだろう。
遺体はその後、付近に転がってた原理血戒と共に回収。原理血戒は教会が厳重に封印し、遺体の方は綺麗に繕った上でオレが責任もって保管している。
………あんな狂ったアマでも、最期まで隣人のために粉骨砕身の信念で務めていた事に変わりねーからな。丁重に扱ってやるのが最低限の礼儀ってモンだ」
マーリオゥがさっきからやたらと細かく何かを話しているがよくわからない。
嘘だ、嘘に決まっている。だって彼女は、復讐鬼で……わたしを絶対に殺してくれるって、言ってた。だから、死ぬ筈が、なくて。
「ち、違いますよね?先ほどから、さも事実みたいに言ってますけど、ノエルが……し、んだ……なんて、ウソ、ですよね?ウソだと、言ってくださいよ。言いなさい……っ!」
「あぁ?なんでこの期に及んでこんな時にオレがテメェにしょーもねえウソをつかなきゃいけねえんだよ。いくら辛かろうとな、現実から目ぇ背けんじゃねえぞガキが。
―――代行者ノエルは、テメェへの復讐に生きながらも、最期は弱き人々を守護する異端狩りとしての責務を全うして散ったんだ。それを嘘などとほざいて見て見ぬ振りをしやがるって事は、アイツの覚悟に汚ぇ土を塗りたくるのと同じなんだよ。
分かるだろ?ここらで目ぇ覚まして受け入れろ。テメェを断罪するノエルは、もういねぇんだよっ!!」
「――――――」
それは、あまりにも正論をついている、反論のしようがない叱責だった。それが、その事実が受け入れきれないわたしには、あまりにも、あまりにも痛すぎる言葉だった。 - 146二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 09:34:23
「ぁ―――ああぁ、ぁ―――ああああぁぁ……!!!」
受け入れたくない、認めたくなんかなかったのに、彼の叱責が鈍器のように耐えがたい現実を叩き付けてくる。
やめてほしい。それ以上言わないでほしい。こんなの、こんなのってない。あんまりだ。
「う、ぁ……う"ぅぅぅ……っ……!」
「……ま、基本的に代行者は1年持たねえし5年以上も生きてりゃ立派な異常者扱いされるが、あの猪は14年。その14年以上もの間でテメェとの共同で二体、自力での単独で更に二体、計四体もの祖を討伐したんだ。しかもだ、そこに+αでテメェとの連携で真祖の姫君すら瀕死にした上で封印にまで追いやったときた。
ハッキリ言ってこりゃもう“伝説”だ。現代に生まれた英雄の一人、そう評価するしかねえ。なんでこれまで埋葬機関にスカウトされてなかったのかが不思議でならねえよ。
いや、それともオレやテメェが知らねえだけで実は何回か受けていたのかもな。その上で突っぱねてたって可能性もありえるぞ」
淡々と話を続けるマーリオゥを余所に、そんなの聞いてるどころじゃないわたしはただ咽び泣くしかできない。いっそ壊れたい。けど、こんな時でも正気を保って早々に現実を受け入れてしまってる自分がいる。だから狂えない。逃げる事が、できない。
「………おう。気持ちは分かるが、オレとしてはテメェの涙が引っ込むまで待ってやるワケにもいかねえんだよ。テメェに伝えなきゃいけねえコトはまだあるんだからな。
つーかだ、むしろ今から話すのが本題と言っていい」
「っ……、ぇ………?」
本題だと、彼はいった。なにを、伝えるつもりなんだろう。
「これもまた、アイツから頼まれた事なんでな。いいか、よく聞けよ死徒シエル。
単刀直入に問うが――――――ここでオレに引導を渡されるか、それとも『再び代行者として生きる』か。ここで選べ」
―――その選択は、わたしにとっての救いであり、同時に残酷なモノだった。 - 147二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 15:14:24
「………は、ははは。なんですか。それ。前者はともかく……死徒に堕落したわたしに、まだ代行者として生きる余地なんかが、あるっていうんですか」
今度こそ意味が分からない。前者は普通に理解できる。聖職者が異端を殺すのは当たり前なんだから。
けれど代行者として再び生きるか、ってなんだ。わたしに、堕ちるところまで堕ちきった悪魔(わたし)に、彼はどうしてそんな選択肢を与えるんだろう?
「テメェの選択次第、と付け加えておくがな。確かに死徒はどんな理由があれど皆殺しがウチのスタンスだ。そんなもん生かしたところで害悪にしかならねえからな。それはテメェだって例外じゃねえ」
「なら、どうしてそんな余地を……っ!」
「それがアイツの、ノエルの頼みだからだよ。おうシエル、テメェは埋葬機関に所属していたから他のメンバーがどんな怪物共なのかってのも当然把握してんだろ?」
「………いきなり、なんですか。確かに知っていますけど、それとこの話が―――ぁ」
思い返した途端、“心当たり”と言えるモノが頭に浮かんだ。それに気づいたマーリオゥがわたしの心中を察したように笑みを見せる。
「そう。いるよなぁ?忌まわしい事に、信じ難え事に、そのメンバーの中に本来なら撃滅すべき死徒がいるよな?しかもソイツは、寄りによって死徒社会における頂点―――Ⅸ階梯、即ち二十七祖の一角ときたモンだ」
そういえば、確かにいた。立場的にも在り方においても本来なら教会とは真っ向から対立していなくてはいけないのに、何故か敵対どころかそこの埋葬機関に所属している変わり者の祖。教会においては表向きは存在を秘されている、死徒たちにとっての裏切り者。
「……だから……事実上の二十七祖のわたしでも、そうして選択を与えるだけの余地がある、と?」
「ああ。そもそも埋葬機関っつー組織自体、構成理念が『異端を強制殲滅できるヤツなら例えソイツが異端でも構わない』、並びに『教会に対処可能な範疇を超えてる異常者を隔離・管理する為の組織』だからな。
こう言っちゃ司祭代行としてアレだが、今更吸血鬼の代行者が一人増えたところでそう変わんねえよ。そもそもテメェは前々からバケモンだったろシエル。
……んでだ。オレは最初にノエルからの頼みでっつったよな?―――あの猪、生意気にも察してやがってたんだよ。『恐らくほぼ確実に埋葬機関には吸血鬼がいる』ってさ」 - 148二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 16:35:40
これメレム死ぬんじゃ…?
- 149二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 18:07:30
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- 150二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 18:10:23
これシエル先輩も『シエルはもういないじゃないend』のノエルみたく錯乱するかと思ったけど、やっぱり芯が強すぎるなこの人……
イマジナリーノエルちゃんはでてこなさそうね - 151二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 20:04:04
ここからもう一度代行者になるって選択肢あるのかぁ
つまりシエル先輩がロアな状態から戻せる方法があるって事ですか!?
ノエル先輩はシエル先輩の身を案じてくれたんだね
いやまぁ大好きだから当然なのかもしれないけど
『埋葬機関に吸血鬼いる』ってなかなかヤバイのでは?
過去ロアになったシエル先輩もアレだけどね - 152二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:00:43
ノエル先生とシエル先輩⋯⋯お互いに共依存するほどまでなってたんだなぁ⋯⋯
ノエル先生が無事に帰ってきた世界線の想像が膨らむだけにここで退場しちゃうのは予想外だった⋯⋯ - 153二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:23:23
「え……彼女は、そこにも勘付いていたんですか?」
「ああそうさ。オレも通話越しで向こうがそう言いやがった瞬間は動揺したぞ。知っての通りあの女はテメェと違って埋葬機関じゃねえから第5位の詳細は一切把握してねえ。
じゃなんでそう考えてたのかっつーとだな、アイツ曰く―――」
『元ロアで吸血種の“弓のシエル”を含めて他のメンバーもある程度は公開されているというのに、唯一第5位だけが名前さえも秘匿されているのはおかしい。そこまで徹底するという事は、つまりそれだけ公表すれば教会側にとっても物凄く都合が悪くなってしまうほどの厄のある存在と見ていい。
なら、そんな存在はそれこそ死徒二十七祖の一角くらいのものだ―――違うかしら。マーリオゥ司祭代行?』
「と、ゾッとするほど正確に言い当ててきやがったんだ。しかもそこでつい動揺してなんで分かるんだよと返しちまったせいで『ええ~!?ただの凡人の安い発想だったんですけど本当だったんだぁー!答え合わせ感謝します司祭代行♪』などとほざきやがった。猪相手にあれだけ殺意沸かせた事は後にも先にもこん時だけだろうな、クソッタレが」
「っ……そう、だったんですか。心中お察しします、司祭代行」
「あ?おい今一瞬吹き出したろ。テメェも聖水浸けにしてやろうかアバズレ」
そうか。彼女はもうとっくにそこに気づいていて、その上でもしも自分がいなくなった時を想定してこうしてわたしに選択を委ねさせるところまで考えていたんだ。
聖堂教会は吸血鬼という異端さえも利用している、という本来なら唾棄すべきその事実を逆手に取って、わたしに一抹のチャンスをやる為にマーリオゥをこうして差し向けさせるというところまで。
「いえ。吹き出してなどいませんよ、司祭代行。彼女のあまりのマイペースぶりに呆れただけです」
「チッ、はぐらかしやがって………まあいい。で、どうすんだシエル。これで分かったろ?
なぜオレがここに来たのか、なぜノエルは死んだのか、アイツがオレに託した頼みとは何なのか。これで一通り説明したが、この上で改めてテメェに選ばせてやるよ。
今ここで死徒として死ぬか、代行者として再起するか。慎重に、よく考えて選べよ」
「………………………」
………マーリオゥは本気だった。それもそうだ。彼がふざけているところなんて想像すらつかない。
…………わたしは、どうすればいいんだろう。 - 154二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:42:14
最後の最後までシエル先輩の身を案じて
敵の所在地を探しだして調べて調べまくって
教会のこと調べて…………ほんとに復讐のためとは言えよく頑張ったなぁノエル先輩 - 155二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:45:51
まさか今のロアの状態から代行者になる道があるなんて驚いたそれってつまりシエル先輩の状況をもとに戻せるって訳で良いんだよね!?
シエル先輩は殺されるのを望むのか代行者として生き抜くのか…きっとこの感じだと生きるために必死になれると思うし、そう信じてる - 156二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:59:19
マーリオゥもなんだかんだ良い上司だ
口が悪すぎるだけで - 157二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:02:44
わたしは、赦されるならもうここで終わりたいと思っている。
わたしにこういうチャンスを遺してくれたノエルには本当に申し訳ないが、もうこれ以上頑張っても罪の上塗りしかできないだろうし、身も心も死徒に堕ちているのならそれは尚更だ。
そもそも彼女がわたしを生かそうと思い始めていたのは本当に最後の最後だったのであって、その上で尚もわたしを殺そうとしていた。つまり彼女だってわたしには生きていてほしいと思っている以上に死んでほしいと思っていた筈だ。
わたしもそれには何の異論もないし、むしろ肯定したい。ただでさえこの地上でもっとも醜い生き物なのに、こうして再び死徒に堕ちたのだから生きていていいワケがない。マーリオゥの言う通り生きていても害悪にしかならないのだから。
(そうだ。何より―――ノエルがいなくなったこの世界で、生きようとする気力が沸いて来ない)
あの子は誰よりもわたしを憎み、僻み、詰り、恨んでいた復讐鬼だった。でも、同時に誰よりもわたしの事を見てくれていた理解者でもあった。だからこそわたしへの憎悪が反転して好意を抱く事にも至ったんだろう。
けれど、そんなあの子ももういない。二度とここへ帰ってくる事はない。あの子は果たす筈だった復讐を目前にして失い、わたしもあの子の復讐でもって終わる機会を永遠に失ってしまった。
どうやら主は、わたしがあの子の手で終わる事さえお赦しにならなかったらしい。きっとこのまま、あの子の故郷を滅ぼした悪魔としてですらない“ただの吸血鬼”として、無様に死にたまえとお告げになられているのかもしれない。
ならばそうしよう。そもそもこの身に堕ちた時点で生きようだなんて一度も思わなかった。彼女の復讐を受ける為だけに今日まで見苦しく活動してきたに過ぎなかったのだから。
もう、このまま………終わってしまおう。死んで、この地上での贖罪を終えよう。
『だから―――厳しいけど、力尽きるまで戦うのを止めないで。彼女の怨念(おもい)を、正面から受け止めた上で戦うのを放棄しないで』 - 158二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:54:39
「………この、穢れに穢れきった異端の身でも赦されるのならば。
―――わたしは、もう一度主の代行としての生を歩んでいきたいです」
そうだ。そうだった。ここで死を選べば彼の言葉を、彼の遺してくれた想いすらも裏切ってしまう。どんなに惨めでも、堕ちていっても、見苦しくても生き続けなくちゃ。
「そうか、よく言った。なら、本日からテメェは埋葬機関の代行者として復帰する事になる。今は早朝の時間だが、すぐにでも本部に移動して手続き等をするから心構えの準備をしておけ」
それが、彼を救(まも)れずに死なせてしまったわたしが果たすべき贖罪なんだから。そして、わたしを殺したいと同時に生きていてほしいとも言ってくれた彼女への、唯一返せるものだから。
「あとは、そうだな。テメェの血液(食いモン)に関してだが……オレがパック提供で請け負ってやるよ。これについてもあのクソ猪からお願いされてたモンでな。ったく最期の最期まで上司使いの荒い狂人だったぜ」
「え……っ!?そんな事まで、あの子は考えていたんですか?」
「おうよ。ホントにメンドくせえ女だよな。誰よりもテメェっつー存在を嫌悪しておきながら、そのクセ誰よりもテメェの身を案じて好いていやがったんだからさ」
………ああ。本当に、彼女には―――ノエルには、どこまでも敵わないなぁ。 - 159二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:17:38
ここで志貴のセリフに背中を押されるの良すぎる
- 160二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:14:37
「よし、んじゃとっとと行くぞ。テメェを拘束してるその鎖もとっくに秘蹟が切れてるだろうから自力で壊せんだろ」
「あー……その、ですね。できれば司祭代行にコレを解いてもらいたいな、と。自力で壊すより誰かに解かれた方が『ああ、この程度の自由は赦されたんだな』という気になれますので………」
「はぁ?んだよそれ意味わかん………いや、そうだな。そうして今まで破れる拘束を破ってこなかったのも、テメェにとっちゃ戒めの贖罪なんだろ?なら確かに、ソイツを自力でブチ壊してしまっちゃあ意味ねえよな。ったく、相も変わらず手間を掛けさせる女だぜ」
どうやら理解を示してくれたようだ。彼は口の悪さこそ褒められたものではないけど、何だかんだで他者の意を汲んでくれるところは枢機卿の秘蔵っ子として相応しいものがある。
「………終わったぞ。何ヶ月も座りっぱなしだったろうが心配なんかせずとも立てるよな?」
「ええ、問題ありません。………ところで、この格好のまま行くのでしょうか?」
「は、なワケねえだろ。仮にも代行者を再志望してる信徒を、そんなあられもない品のねえザマのまま連行しようもんなら司祭代行(オレ)の沽券にも関わる。てか普通にアウトだかんな。なんでちょっと待ってろ。
……………そら、着替えだ。テメェがこの選択をした時の為にわざわざ用意したんだ。有難く思いやがれ」
「ん、それはどう―――これ、は」
投げ渡された衣服を掴んで確認すると、それはかつての戦いの日々で世話になっていた青色の戦闘用のインナー一式だった。
見た感じ、恐らく新品ではない。あの時………ノエルに堕とされる直前の共同任務まで着用していた、あのタイプそのものだ。
「これは……どうやって、用意したのですか?」
「それはな。ノエルのヤツがテメェをここにブチ込んで教会(オレら)に脅しをかました次の日に送ってきたんだよ。ついでにテメェ御用達の聖典もな?
もし自分が死ぬか何かでテメェに会えなくなったら、その上でテメェが再び代行者として生きようってんなら、その時はソイツを渡してくれ―――なんて勝手に頼みやがったんだよ」 - 161二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 01:32:36
「――――――」
「あ、流石に聖典はここには持ってきてねえぞ?ってか軽々と持ち運べる代物じゃねえしな。そんなモンを当たり前のように送り付けてきた辺り、やっぱあの猪はイカれてやがるな………」
そんな、どうでもよかった筈だったろう配慮まで抜かりなく根回ししていたのか。わたしをここに監禁して間もない時点で。
ここに来てまた、自分の愚鈍さを思い知らされる。こんなにも彼女は、わたしの事を考えてくれていたのか。
「………ありがとう、ございます。マーリオゥ司祭代行。あの子の、ノエルの望みを承っていただいて。本当に、感謝致します」
「おう、間違ってんぞテメェ。その感謝はオレに向けるんじゃなくてノエルに捧げろ。アイツの頼みがあってこそ、テメェという死徒に堕ちた異端者相手にここまでしてやってんだからな?
―――部下がそう望んだのなら。その遺志をできる範囲で汲み取ってやんのが、上司としての果たすべき責務だ。違わねえよな?」
「フフ………ええ、確かにその通りでしたね。今はこの感謝の想いを、あの子への手向けとしましょう」
そうしてわたしは懐かしい青のインナーに着替えたあと、いつも拷問に使われていた講壇に向かって祈りを捧げた。
(―――行ってきます、ノエル。あなたが道半ばで果たせなかった復讐は、わたしが贖罪として継いでいきます。この命あるかぎり、最期の最期まで戦い続ける事を誓います)
それが、あなたと故郷の人たちへの鎮魂歌になると信じて。
どれだけ血に塗れようと、どんなに狂おうと、あなたのように決して止まる事なく。
「………終わりました。それじゃ行きましょうか―――と、言いたいところですが……そこの肉のプールはどうしましょうか?」
「なモン燃やすに決まってんだろ!今この瞬間も臭くて息苦しくて死んじまいそうだ!あとから処理班を要請すっからさっさとここ出るぞっ!」
「あ……そうでした。わたしは死徒ですが司祭代行は人間でしたね。鼻の違いに気づけず申し訳ございません」
「おうやめろマジで。テメェに気遣われるとゾッとしねえんだよ」 - 162二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 10:39:25
聖典とインナー処分しなかったのは、やっぱそこはかとなく罪悪感があったのだろう、だって死徒化させるの自分ですらドン引きするのだったからな
- 163二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:31:00
やっぱりノエルさん優しいね
復讐して復讐し終える所まで行ってたけどやっぱりシエルは代行者であるべきだって考えがあったのかな…
シエル先輩ここから這い上がれるから強いな… - 164二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 16:02:26
復讐すると決めてから寝ても醒めてもシエルシエルシエルだったことを考えると執着通り越して愛と言っても過言では⋯⋯
- 165二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 18:05:46
そしてわたしはマーリオゥに同伴する形で、自分の死に場所となる筈だった礼拝堂を後にした。
外に出ると、早朝の日の光がこの身に降りかかってくる。死徒化しているせいで小さくない倦怠感が襲うものの、不思議とイヤな感じはしなかった。
「……こんな時に詩人みてえなコトを口にすんのはオレの柄じゃねえが、差し詰めこの朝はテメェにとっての夜明けと言えるか。代行者として再スタートするのにあたって相応しいシチュエーションだな、シエル?」
「驚きました、司祭代行もそのようなコトを言うのですね。てっきり常に現実的な事しか言わない堅物な性格だと思っていましたよ」
「だから柄じゃねえっつってんだろ。二度も言わせんな。
………ああ、そうだ。もう一つテメェに渡さなきゃなんねえモンがあった。そら、受け取れ」
そういって彼はまた何かをわたしに投げ渡す。受け取って目にすると、それは十字架の首飾りだった。見たところ、これも新品の類ではなく何年も使い古されてるような感じだ。
「これは……?まさかこれも、わたしのだったりします?」
「そうだ、と言いてえが違う。その十字架はな、アイツの―――ノエルのモンだよ。遺体を綺麗に繕う際にオレ個人の判断で取り上げた。所々に小っせえ傷が入ってるが、テメェが元々着けてたのも似たようなモンだろ?」
「ノエルのモノって……いえ、オレ個人の判断という事はあの子の頼みとは関係がない、という事ですか?だとしたらどうして、そんなコトを?」
微かな憤りを乗せて問い質す。十字架は代行者に限らず、その者が主に祈りを捧げる教会の信徒である事を示す何よりの証。彼女は内心では教会を良く思っていなかったが、それでも主の代行として最期まで心血を注いで戦った。
その彼女から独断でその証を奪い取るとはどういう了見なのか。あの子を信徒として見做していなかったのか?
「答えなさい。なぜそんなコトをしたのですか、司祭代行。返答次第によっては、」
「殺すってか?まあ待てよ。別にあの猪を信徒として見ちゃいなかったとか、単純に気に入らねえからやっただとか、んな下らん理由じゃねえ。コイツはまあ、テメェへのオレなりの計らいってヤツだ。
―――そうして遺品の一つでも身に着けておいた方が、テメェがどんなにクソみてえな吸血鬼として堕ちそうになってもアイツの存在を思い出して踏み止まれるんじゃねえかって。そう思っただけだよ」 - 166二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 18:57:08
「―――それ、は」
彼がノエルの為だけでなく、わたしの為にも動いたという事だった。それも、誰に言われたワケでもなく自分の判断で、死徒なんかに堕ちて穢れたわたしの為に。
「テメェ、一見そうして何とか立ち直ってるように見えるがそれでもノエルの死が想像以上に響いてんだろ。加えて、恐らく今も心のどっかで死にたがってるし狂いたがってる。そんなザマじゃ幾ら聖人の成り損ないっつってもいつか遠くない内に一線を越えて壊れるのは目に見えてんだよ。
だからそうならねえように、テメェをテメェとして一線越えずに留めてられるような何かをしてやる必要があるとオレは考えた。結果、ノエルの十字架を形見としてくれてやるが地味ながらも最善だと判断した。納得したか?」
「…………」
……なんて、浅はかな憤りだったんだろう。ほんの数秒前の自分を恥じる。あの子だけでなく、彼もまた、わたしの事をここまで考えてくれていただなんて思いもしてなかった。
「―――重ねて、謝罪します。先ほどは、司祭代行の誠意を汲み取れずに食ってかかるような対応をしてしまった事をお許しください」
「いい。オレも言い方が紛らわしかった。ここはお互い様って事で水に流せ。んじゃ、今度こそさっさと行くぞ」
彼は少しだけばつが悪そうに言ってから前を歩き出す。わたしも十字架を大切に握ってから彼に続いた。
やがて街の外に出ると、すぐ側に黒の乗用車が待機していた。座席の前には安藤さんとカリウスさんが座っていて、マーリオゥとわたしは後部座席に着いた。
「あの……そういう訳ですので、しばらく車内を意図せず汚染してしまう事をどうか許してください。なるべく、呪いを抑え込むように努めます」
「いやぁ別にいいっスよ?最悪使えなくなってもどーせこの車は借りてるモンですし」
「ほう?じゃアンドー、もしホントに使い捨てになっちまったらテメェの口座名義で弁償だかんな。足りなきゃ借金なりして何とかしろよ?」
「え”っっ。ちょ、そりゃナイっスよ坊ちゃん!?」
「自業自得だ。貴様はもう少し言葉を選ぶ事を意識しろ、安藤」 - 167二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:45:34
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- 168二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:47:08
そんなやり取りを挟みつつ、わたしたちを乗せた乗用車は故郷の跡地を出発した。
「………おい。ところでだ、その首と爪はどうすんだ?後から戻すのか?」
「ええ。……ですが、この瞳はそのままにしておこうと思っています。死徒に堕ちた以上、自分が吸血鬼である事実から目を背けたくはありませんので」
なにより、わたしを吸血鬼として最期まで殺そうとしていた彼女の復讐心を忘れたくはない。けれど、ロアだった頃そのままの姿でいるのもこれから代行者として活動し、その過程で多くの人間と関わっていく上では都合が悪い。
だからせめて、この血に染まった瞳だけは誤魔化しも隠しもせずに堂々と晒していこう。その上で、弱き人々を護っていくんだ。あの子がそうしていたように。
「そうか。………オレの見立てじゃ、テメェのヒトとしての心が保(も)つのは長くて300から400年。どれだけ優れた精神でも、時間の経過には敵わずに摩耗していくからな。ヒトの精神なら尚更だし、むしろオレの目でもそこまで保つと判断させられるテメェの忍耐力はマジで異常だぞ」
「フフ、そこまでお褒めに預かるなんて光栄ですね。
………時につまらない事を訊ねますが司祭代行。ヒトの血を吸わない吸血鬼はいなくとも、ヒトを殺さずに守り抜く。そんな善い吸血鬼なんて、果たしているのでしょうか?」
「さあな。少なくともオレが知るかぎりじゃ、んなもんは存在しねえ。
どうしても確かめたいってんなら―――まずはテメェが、その“善い吸血鬼”とやらになってみろ」
それっきり、会話はなくなった。
わたしは、どんどん遠くなっていくかつての故郷の街を見えなくなるまで視界に収めながら、静かに―――けれど力強い決意と覚悟を灯して呟いた。
「………いってきます。お父さん、お母さん。町のみんな。そして―――ノエル」
………うん、頑張れわたし。頑張って、負けて、挫けて、屈して、それでもまた立って、抗って、頑張り続けた果てで―――今度こそあの子に、面と向かってごめんなさいと謝るんだ。 - 169二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:06:14
頑張れ、頑張れ、頑張れ、先輩!!!!!!
シエル先輩なら出来るよ!!!!!
先輩、代行者としておかえりなさい! - 170二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:12:34
ありきたりの言葉になっちゃうけど先輩の未来は輝いてるよ!きっと先輩は報われるよ!
- 171二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:05:29
マーリォウ司祭代行も独断で十字架持って帰ってきてくれるの優しいよね
なんだかんだで情がある人よな - 172二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:31:44
「――――――あ、れ」
ふと、鈍い痛みと共に目が覚める。
「ここ、は………どこ、なの?」
次に周りを見渡すも、ただひたすらにどこまでも暗闇が続いているだけに見える。ほんのしばらく動いてみたけど、なぜか自分自身の感覚が不明瞭すぎて歩いているのかすらわからない。
自分が今どこに、そしてどうしてこんなトコにいるのかが思い出せない。
私は………私は………どうしてたんだっけ。
というより、私は……どうなったんだっけ。
「わからない。思い出せない。なんで私は、ここに一人でいるの?」
考えれば考えるほどに言いようのない不安に苛まれていく。こういう時こそ反って冷静になるべきなのに、どうにも落ち着けない。それどころかそう意識するとますます焦燥が募っていく。
「ここは、どこなの?なんで、なんで誰もいないの?どうして、私はこんなところにいるの?」
わからない。わからない。わからないのが、思い出せないのが、堪らなく怖い。わたしは、本当にどうなっちゃったの?
「誰か、誰でもいい。誰でもいいから、誰か、だれかいるのなら―――わたしに、答えてっ………!!!」
「―――うん。なら遠慮なく後輩として答えるよ、ノエルさん」
誰かが、わたしに答えてくれた。酷く聞き覚えのある、もう耳に入れる事のない筈の声で。 - 173二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:34:00
嘘!!!!!!!!!!!!
- 174二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:35:11
生きてる!生きてる!生きてる!嘘だ死んじゃったと思ってたのに…嬉しすぎる嘘だ!?
- 175二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:36:08
まだ続きがあるのは嬉しすぎる…!
どうか最高の幸せを…
どうか全ての人に報いあれ - 176二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:46:40
え、まさか、ななやん……
- 177二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:41:38
「―――志貴、クン?」
「はい。お互いに譲れないモノの為にあなたと闘った、遠野志貴です」
なんで。いや、答えてくれるだけでも嬉しいけど。なんで?なんで、あの時に死んだ筈の彼が、こうして生きているの?
「あー……こう言いたくはないんですがね。俺はもう生きていません。あの時から既にちゃんと死んでいます」
「は?死んでいます、って―――じゃあ、ここは、まさか」
「そうですね、ここは現世ではありません。俺は死んでいるから此処にいるんです。そして、ここまで言えば……ご自身の状況も思い出してきたんじゃないですか、ノエルさん?」
いや、待って。そんな筈はない。だって私は、わたしはまだアイツを殺してあげれていない。そんな、わたしが―――わ、たしが――――――ぁ。
「………………そう、だった。わたしは、最期にあのクソ蜘蛛を………ブチ殺してやった、あとに」
そのまま、アイツが待ってる礼拝堂を目指そうと這いずって―――死んだ。
14年に渡る復讐を目前にして、目と鼻の先までその時が近づいてきておきながら―――死んでしまった。
ここにいるという事は、彼の言葉を信じるなら……そういうコト、なんだろう。
「―――ふ、ふは。あは、あははは、はっはははははははははは……!!!」
おかしい。くるしい。むなしい。ここまできて、ここまできて、死んだのか。あほくさすぎて乾いた笑いを上げてしまう。
何がいけなかったんだろう?何がダメだったんだろう?アイツを死徒に堕としてしまったコト?さっさと殺さずに拷問をあまりに長くやりすぎたコト?
ああ―――それとも、最後の最後でアイツが好きだと自覚してしまったコトだったんだろうか?
「いいえ、それは―――それだけは絶対に違いますよ、ノエルさん。先輩に対するその好意もまた、紛れもないあなたの本音でしょう?」 - 178二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:42:42
2週目?3週目?
- 179二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:44:44
ここからどうなるんだ一体…………
- 180二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:08:37
「ぇ……?」
「確かにあなたの復讐は間違ったものだった。その動機は正当なものだったけど、やり方は決して正しくはなかった。
先輩という一人の人間を死徒にするという禁忌、そして無抵抗をいい事に悦びのままに苛烈で凄惨な暴力を浴びせ続けた。
それは決して、決して正しいと言えない罪です」
……ああ、痛い。耳が痛い。痛すぎる。ええそうよ。そんな事は思いついた時点で間違った、狂った報復って理解してた。いいえ、そこまでくるともう報復とすら言えない一方的な暴力でしょうね。
でも、仕方ないじゃない。あれだけの、あれだけの事をされていて、狂わない筈がないでしょう。止まれる筈が、ないでしょう!?
「アナタに、キミに、わたしの苦しみが理解できる?悪い事、イケナイ事とわかっててもそうするしかなかった。だってそうしないと、アイツに殺された街の人たちが、報われないでしょう!?」
「確かにあなたからすれば、そうとしか思えないでしょうね。けど―――あなたはそうでも、あなたの両親は、本当にそうしてあなたが復讐を成し遂げる事を願っていたんですか?」
「―――は?」
お父さんと、お母さんは………違うっての?そうは思ってなかっただろって、言いたいの?
「知ったような事をほざ……っ!!」
「ほら、あっちを見てください。―――いるでしょう。あなたにとって何よりも大切だった人たちが」
彼が不意に明後日の方へ指を差す。その方に顔を向けると、
「ノエル。彼の言う通りだ。もう―――もう、いいんだよ」
「ええ、そうよノエル。今まで、本当に……一人で頑張ってきたわね」
「―――ぁ」
誰よりも会いたかった人たちが、14年前に守れなかった人たちが、そこにいた。 - 181二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:42:06
「―――お、とうさん。おかあ、さん」
ずっと、ずっと会いたかった。けど決して会える筈のなかった二人が、わたしを優しい目で見ていた。
「おまえがあの日からずっと、消えることのない憎悪に支配されていたの見ていたんだ」
「最初は、その復讐を応援していた時もあったわ。でもその為に何度も何度も傷ついていって、心も歪んでいくあなたを見ていくのが堪らなく怖かった。堪らなく悲しかった。気がつけば私たちは復讐の応援なんかよりも、あなたが少しでもヒトとして健やかに生きていってほしいと願っていたの」
「――――――」
なんだそれは。なによそれは。じゃあ、わたしは、さいしょから―――復讐を決めた瞬間から、間違っていたの?
そんなものに奔走するより、殺された人たちの分まで人並みの幸せを享受する事を最初から目指すべきだったと?
「はは、ははははは、あははははははは、はは、は!
………………ああ。なんだかもう、なにも考えたくない。なにも言えない。なにもかもが空虚にしか思えなくなってきちゃった」
この14年間は、わたしの心血捧げてきた人生は、なんだったんだ。そんな、そんな残酷なコト言わないでよ。少しくらい肯定してよ。
本当に、なにもかもがくだらない茶番じゃない。復讐も、人間をやめた事も、死徒を憎悪のままに殺してきた事も、アイツを―――好きになった事も。
「……ああ、もう。だから―――それは違うって、言ってるだろう!」
「!?」
唐突な怒鳴り声に驚く。振り向くと、志貴クンが憤怒の目を向けていた。
「例えそれまでの過程がどれだけ間違っていても、狂っていたとしても、独善的だとしても!ノエルさんがシエル先輩を―――シエルを好きになった事に変わりないだろう!
それまで自分から無いモノとして否定してしまったら、何が残るんです?何も残らなくなるでしょう!?
っていうか、その復讐の為の過程で俺を殺したんだから責任を取れ!シエルへの好意を否定するってコトは、そのシエルの為に命を張ってあなたに挑んで殺された俺の死も否定する事になるんですよ?
あなたはあの時に言った。自分と俺は同じ境界に立っていると。なら、その対等な立場で闘った者の死を否定する事を、あなたは良しとするのか?」 - 182二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 01:07:49
「―――あ、ぁ――――あああ、ぁあぁぁ……!」
物凄い後悔が襲う。あんなコト、言うんじゃなかった。でも、でも、時間は巻き戻らない。そんな後悔なんて、クソの役にも立たない。
立たないのがわかってるからこそ、彼の叱責に何も言えずにいる。何も言えずにいるから、今の今まで自暴自棄になって全部を否定しようとしていた自分の愚かさをイヤでも自覚させられてしまう。
「………ノエル。さっきはああ言ったが、別におまえの全てを否定してるワケなんかじゃない。教会の代行者として血の滲む努力を重ねていたのを見ていたし、復讐に囚われながらも人々を護ろうとしていたのもちゃんと分かっている」
「………おとう、さん」
「それに、心の底では『私たちの街を滅ぼした悪魔とエレイシアは違う。あの子もまた吸血鬼の被害者なんだ』って、分かっていたのでしょう?だからこそ何だかんだで上手くやっていけていたし、だからこそ嫌いであると同時に好きになったんでしょう?
だからこそ―――あの子ともっと生きていきたい、もっと一緒に過ごしていきたいと思っていたんでしょう?」
「………あ、ぁあ、ぁ……」
その、優しくも的確に核心を突いてくる言葉も痛い。泣きたい。そんなコトを言われると、もう、もう、耐えられない。
「………いいんですよ、思い切り泣いても。もう、あなたはこれ以上、恨みつらみの復讐に苦しむ必要はないんだから」
「あ……ぁぁああ、あああああああぁぁぁああっ………うぁああああああぁぁぁん………!!」
彼の言葉が皮切りとなり、わたしはみっともなく喚き散らす。情けない、情けない。本当に……自分は、何も見えていなかった。
「ごめん、なさい。復讐の事しか考えられなくて、ごめんなさい。幸せに生きようとしないで、ごめんなさい。死んでしまって、ごめんなさい。
―――今までの人生を勝手に否定しようとして、本当に、ごめんなさいっ………!!!」 - 183二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 01:10:50
むり、泣きそう、ノエル、、、、
- 184二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 01:52:42
「…………落ち着いたか、ノエル?」
「っ………うん…………」
しばらく、ただただ謝罪していた。思いのタケを全部ぶちまけたおかげか、ほんの少しは楽になった気がする。
「志貴クンも……復讐という身勝手な大義名分を免罪符なんかにして、殺してしまって、ごめんなさい。謝っても許される事なんかじゃないし、あまりにも遅すぎるけど、本当にごめ」
「いや、もういいですって!責任取れとは言いましたけど、それは俺の死を絶対に否定しないでほしいのであって、何もそう何度も謝ってほしいワケじゃないんですよ」
「でも、でも、わたしがシエルの想いをもう少しだけでも信用してたら……キミは、死なずに済んだかもしれないのに……っ!」
「それこそ、気にしなくていいです。どの道、あのままロアを引き剥がす方法が見つからなかったら、その時は俺が全てを自分の手で終わらせるつもりでしたし。
それに………あなたの過去を知った後だと、あなたがあの時にシエル先輩を裏切り者と糾弾する気持ちも理解できますから」
「………志貴、クン……」
こんな、こんな一方的に立場の正当性を利用して殺したクソ女を、キミは、アナタは、赦すっていうの?
「はい、赦します。あなたが自分の人生を、シエルを好きになった事を、俺を殺した事を否定しない限り、俺はあなたを赦します。
……まあ、あの時に容赦なく殺しにかかってきたのは、正直怖くて泣きそうでしたけど」
―――は。はははは。いや、もう、国宝級のお人好しとかそんな安い言葉で表せるものなんかじゃない。
なるほど。今なら理解できる。うん、こんなに底抜けの善人ならそりゃシエルも恋するし殺せない筈よね。 - 185二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 02:25:04
「―――それじゃあ、あなたをちゃんと赦したところでそろそろ行きましょうか。ノエルさん」
「……?」
行きましょうかって、どこに行くんだろう?
「―――地獄、ですよ。とはいえここも実質そうではありますけど。罪を犯した以上は、ちゃんと裁かれないといけないでしょう?」
………ああ、そういうコト。そうね、考えてみれば当たり前の事だったわ。これからわたしは、エレイシアを……シエルや志貴クンを苦しめた分以上に地獄での責め苦を受けるのよね。
「あ、俺も行きますんで心配する必要はないですよ。俺だってアルクェイドを一度は一方的に殺して、ロアのせいで錯乱していたとはいえ琥珀さんを手にかけようとしたし、加えて譲れない闘いだったとはいえあなたを本気で殺そうとした。
地獄で一緒に裁かれるには、十分ですよ」
「ばーか、どう考えてもわたしの方が酷いわよ。………ところで、お父さんとお母さんは?」
「ご両親はここで過ごすみたいですよ。一方的な被害者とはいえ、あなたという一人娘を家に置き去りにして逃げ出したって罪があるようですので」
は?なによソレ。いや、裁く側からすればそうなんでしょうけど……あんな地獄に合ったら、そりゃ我先に逃げ出してもしょうがねえっつの。
「まあ、そうですよね。………今わの際の挨拶でも、交わしておきます?」
「ええ、そうさせてもらうわ。すぐに済ませるから」
そうしてわたしは、お父さんとお母さんに今一度向き合った。最期の家族の会話をする為に。
「お父さん、お母さん。まず、最初にわたしを生んでくれてありがとう。そして、二人の幸せに生きてほしいという願いを汲み取れずに早死にしてごめんなさい。もっと早くからそうしておけばよかったのに、エレイシアとも仲直りできたかもしれなかったのに、最期まで復讐にしか走る事ができずに本当にごめんなさい」
ああ、こうして口に出すとほとんど謝罪しか出てこない。これでは記憶の中の私と同じくらい、いえそれ以上に愚かしいじゃないの。もっと色んな事に目を向けれるチャンスが山ほどあったってのに、ぜーんぶ見て見ぬ振りしてさ。 - 186二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 02:57:41
「いや、いいんだノエル。謝罪ならさっきの時点でもう十分すぎるくらいしてもらった」
「それに彼が今言ってくれたけど……私たちも親としてあなたと一緒に逃げないといけなかったのに、気が動転していたとはいえあなたを見捨ててしまった。私たちが死んだのも、きっとそのツケなんでしょう。
現に、それが罪となってこの暗闇の地獄にいるんだから」
―――は?わたしを見捨てたツケが、あんな惨たらしい死に方だって?
「………違う。違うっ!!そんなの断じて違うっ!!例え神さま閻魔さまが罪だと見做そうが!わたしを見捨てたくらいであんな風に殺されるのがツケな訳がない。あっていい筈がない!!
だからこそわたしは復讐を志した!あの死を、あの地獄を忘れない為に!それだけ、お父さんとお母さんと街の人たちが好きだったの!」
「………ノエル……」
そうだ。わたしがこうまで復讐に執着したのも、元を辿れば大好きだった両親や故郷の人たちを理不尽に奪い尽くされた事が原点だ。あの惨劇を、絶対に忘れない為に。
「そう、仕方がなかったんだ。あんな状況になったら誰だって錯乱するし、自分の事しか考えられなくなって当然よ。誰が責められるのか?誰も責めようがないわよ、あんなの。
だから、わたしから言わせればお父さんもお母さんも悪くない。悪くなんか、これっぽっちもないのよ」
「………はぁ、娘の前だからって自罰的になってしまってたか。確かに、おまえにとってはそうだよな」
「ええ、そうだったわね。ごめんなさい、ノエル。最後の会話になるというのに、暗い話にしてしまったわ」
いえ、いいのよ。もう、分かってもらえれば、それでいいのよ。
「………………ねえ、お父さん。お母さん。あまり志貴クンを待たせてもいけないし、短かったけどそろそろ行かないといけないから。
―――最後に、わたしの本当の名前で呼んでほしいな。ノエルとして生きる前の、普通の日常を生きていた頃の少女の名前でさ」
わたしのそのお願いに、二人は顔を見合わせる。そして笑顔で、声を合わせてその名前を言ってくれた。
『………いってらっしゃい。また、いつか会おうね。
“――――”。』 - 187二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 07:53:49
ノエルさんってやっとここで贖罪と報いと少しばかりの親との幸福を得られたんだな…………
もしかして、ノエルって本名じゃないのか?
最後のセリフ的に『ーーーーー』ってなってるから… - 188二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 08:19:16
月姫リメイクの設定だとシエル=エレイシアでノエル先生は特に言及ないよね確か
これでノエル=○○で洗礼名だったらシエル先輩と同じなんだなぁってなるけど - 189二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 08:25:04
ノエルの名前についてはそんなのこの小説だけの設定ってことにすればいいと思う
- 190二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 08:28:19
スレ主さんはスレ読む時に月姫リメイクBGM勧めてるけど個人的にはFate/staynight/Heaven's Feelの挿入歌の花の唄、I beg you、春はゆくの三曲がシエル先輩とノエル先生たちにも似合うと思う
なんかもう、間桐桜の歌なのは解ってるけどこの愛憎入れ混じったぐちゃぐちゃで簡単には相容れない二人に合いすぎると思うんだ…
(個人の意見なので自分は無理お前なにいってんのって人は申し訳ない) - 191二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 08:29:21
- 192二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 08:40:54
「―――はい、いってきます。お父さん、お母さん」
わたしはそう告げたあと、お父さんとお母さんから志貴クンの方へと向かう。もう、振り返る事はしない。
「いいんですか?もう少し待ってあげてもよかったんですよ?」
「結構よ。わたしにとっては、もうアレで十分だから」
そうしてわたしたちはゆっくりと歩を進める。この暗闇の先に地獄が待ってるんだろうけど、彼となら怖くはないし怯える事もない。
まあ、とはいえ、わたしの方がずっと罪が重いし、彼よりももっとキツい方の地獄に連れていかれるだろうけど……それならそれで、アイツも―――あの子も何れそこにやってくるのかもしれない。
あくまで淡い希望的観測にすぎないけど、もしそうなったら……その時は、叶うなら責め苦を受け続けながらも一緒にいたいな。
それに、わたしの方だって復讐を免罪符にあの子に散々酷い事をしてしまった。再会できたら、ちゃんと“ごめんなさい”って謝らないとね。
「じゃあ、一足先に行っておくから。せいぜい、そこでアナタを待ってるわ。シエル――――――」 - 193二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:03:20
かくして―――吸血鬼に堕ちた少女は再び贖罪の道を歩み出し、復讐鬼は殺人鬼と共に地獄への道に進み始める。
復讐鬼は既に終着点に着いたが、彼女が最も憎みながらも最も愛した吸血鬼の少女は、これからも命尽きるまで弱き人々を護っていく。
無論、その過程で更なる艱難辛苦が少女を絶え間なく襲い来るのは避けられない。代行者として生きるというのは、吸血鬼の性を抑えて生きるというのはそういう事なのだから。
だがそれでも、自らを罰しようとしながら生きていてほしいとも願った復讐鬼の怨念(あい)と、己を愛してくれながらもそれ故に厳しい発破をかけた殺人鬼の言葉(こい)を忘れない限り、例え百年経とうが千年経とうが少女はヒトとしての精神(こころ)を決して失わずに進み続けるだろう。
―――それが、自分の事を誰よりも見てくれていた彼女と彼への、唯一できる精一杯の恩返しと信じて。 - 194二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:17:32
別れエンドは悲しいけどお互いに納得できてお互いに解り合えて良かった、良かった、本当に良かった…………
- 195二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:19:23
これってシエル先輩も死んだら地獄行くのかな?
同じ所行ったら会えるけど…どうなんだろう…
シエル先輩300年くらい生きるからすごい先だな
でも地獄でも何でももし逢えたら『おかえりなさい』ってお互いに言うんだろうなぁ - 196二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:49:20
『―――ねえ、エレイシア。アナタの将来の夢って何?』
『―――そりゃあもちろん、お父さんのパン屋を継ぐ事です!といっても、今はまだ見習いの手伝いだけどね。あはは……』
『ふーん。まあ、誰だって最初はそうなんだし、別にこれから頑張っていけばいい事よ。……わたしもまだまだ道半ばだしねぇ』
『そうだね。お互いに頑張っていきましょう。ところで、―――の将来の夢って何なの?やっぱりわたしと同じように、お店を継ぐ事だったりする?』
『そうね………まあ、今のところそうだけど。それとは別にもうひとつあるかしらね』
『もうひとつ……?それって何?』
『こうやって毎日お店の手伝いをするだけじゃなくて、好きな人と結婚して、子供にも恵まれて、街の人たちと助け合いながら切磋琢磨して、笑って生きていく。
そういう、普通の幸せをこれから手に入れたいなって。だからこそ今を頑張らなきゃなって、そう思ってるの』
『―――……うん、できるよ。―――なら、きっとその夢も現実にできるよ!わたし、陰ながらその夢を応援します!』
『そ、そう?……なら、わたしもあなたの夢を応援するわ。お父さんのパン屋を継げるように、頑張って成長してみせなさい』
『うん。頑張る、頑張りますよ。だから―――も、そういう人並みの幸せを手にできるように頑張って!』
『ふふふ、そうね。ありがとう、エレイシア。夢に向かって、お互いに頑張りましょう』
『はい!―――もわたしも、それぞれの夢を現実にする為に頑張ろうね!
誰かと楽しく笑いあって生きる。そんな未来は、きっと幸せでいっぱいでしょうから』
『うん、きっとそうだわ。そういう未来こそが、わたしにとっても一番の望みよ。
だから―――これからもよろしくね、エレイシア。一緒に、その幸せな未来を手にする為に』
『はい。きっと、きっと手にできます!』
END8/未来へ進むジュブナイル - 197スレ主25/01/26(日) 10:00:32ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 7|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/4413487/ただしその記憶を自覚したタイミングはフランス事変が起きた後とする現在、シエル√編のノーマルかつ遠野志貴死亡分岐クリア。及び…bbs.animanch.com
はい、そういうわけで長らく続いたシエル√ノーマル&志貴クン死亡IFのENDはこれで終わりです
いやあマージでこんなにも長ったらしく続くとは思わんかったし、結局完走できずに次スレ行くかと焦ったけど何とか終わらせる事ができてホントよかったっす
朝からバチクソ疲れたんで良ければ↑の次スレで感想でもどうぞ(レス乞食)
- 198二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:16:34
建て乙
スレ主の文才に殴り続けられる日々だったけどやっぱ最後ちょっと泣いたわ本当にありがとうございます - 199二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:16:54
建て乙埋め
- 200二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:17:55
うめた