【⚓️&🎲】いつも、何度でも。─千と千尋の神隠し その後の物語─

  • 1湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 09:16:14

    一度頓挫したスレですが、どうにも諦めきれなかったため、前回の反省を踏まえてリベンジすることにいたしました。お笑いください。

    ・本編から約20年後、今度は令和を生きる10歳の少女が迷い込みます。
    ・がっつりオリキャラ主体なので注意。
    ・完走を目指しているので、改善点のご指摘や、感想を積極的にいただけると大変励みになります。

  • 2湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 09:21:05

    【主人公】白石環奈(しらいし かんな)

    令和に生きる10歳の小学生女子。
    両親との仲は希薄で、友達といえる友達もいない。
    性格は千尋よりも生意気で礼儀知らず、かつ苦労嫌い。
    また、普段からデジタルに頼りっぱなしなので、千尋以上に貧弱で世間知らず。

  • 3湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 09:26:39

    >>1 に♡5つ以上で開始します。

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 09:53:33

    期待してます

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:24:51

    10まで保守しないと落ちますよ

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:25:10

    千と

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:25:27

    千尋

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:25:39

    ぎ

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:25:56

    神

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:26:10

    隠し

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 10:26:10

    このレスは削除されています

  • 12湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 10:27:09

    保守ありがとうございます…!お手数をおかけしてすみません。

  • 13湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:27:41

    ——

    呼んでいる 胸のどこか奥で
    いつも心踊る 夢を見たい
    かなしみは 数えきれないけれど
    その向こうできっと あなたに会える

    ——

  • 14湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:28:04

    ——

     風が生温く肌を撫でる。セミの声が耳の奥でじりじりと響き、強い日差しがアスファルトを白く照り返していた。

     白石環奈は、ラベンダー色のランドセルを肩から外し、片手でぶら下げながら歩いていた。学校から家までの道のりは、ただでさえ退屈なのに、今日の空気はやけにまとわりつくようで、ますます気が滅入る。

     まっすぐ帰る気にはなれなかった。別にどこへ行きたいわけでもない。ただ、家に帰っても母親は自分の友達と出かけているか、電話に夢中で、ろくに話すこともない。父親に至っては、何ヶ月も帰ってきていなかった。

     「(どうせ、どこにいてもつまんない)」

     環奈は、気まぐれに道をそれて、近くの森林に足を踏み入れた。

  • 15湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:28:39

     日陰に入ると、少しだけ風が涼しく感じた。獣道に沿って歩いていくと、鳥の鳴き声や葉擦れの音がして、さっきまでの町の騒がしさが遠ざかっていく。

     ふと、足を止めた。

     目の前に、崖に面した古びたトンネルが口を開けている。
     赤いモルタルの壁。上の方には、まるで何かの建物の一部のようなものが見えた。古い、でもどこか異様な存在感を放っている。

     「(なんだろう、これ)」

     環奈はじっとトンネルを見つめた。胸の奥で何かがざわめく。

     学校でも家でも、自分の居場所なんてどこにもない気がしていた。けれど、このトンネルの向こう側には——何かがあるような気がした。

     無意識に、環奈の足は前へ進んでいた。

  • 16湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:29:39

     トンネルの中は、思ったよりも暗かった。

     環奈はゆっくりと歩を進める。足元はざらついていて、踏みしめるたびに細かな砂粒が擦れる音が響いた。自分の足音以外、何の音もしない。外のセミの声も、風の気配も、ここには届かない。

     先へ進むほどに、奥へ奥へと誘い込まれるようで、胸の奥にわずかな不安がよぎる。でも、それ以上に——確かめてみたいという気持ちの方が強かった。

     やがて、前方にぼんやりとした光が見えた。出口だ。

     環奈は少し足を速めた。

  • 17湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:30:07

     トンネルを抜けた先は、がらんとした広い室内だった。
     まるで、放棄され忘れられた駅舎のような場所。
     床には乾いた木の葉が散らばり、長い間人の出入りがなかったことを物語っている。

     見上げると、分厚い壁には色ガラスの窓がはめ込まれていて、そこから差し込む光が床にぼんやりとした模様を描いていた。
     鋳物製の水飲み場が壁際にひとつ。チロチロと細い水が湧き出し、床へと滴り落ちている。

     環奈は、ゆっくりと辺りを見渡した。

     「(……誰もいない)」

     当たり前のようでいて、どこか異様な静けさだった。

     ここはどこなのか。なぜ、こんな場所に繋がっていたのか。

     胸の奥にかすかなざわめきを感じながら、環奈は視線を奥の出口へと向けた。
     外は明るい。 出口の向こうに、夏の日差しが降り注いでいる。

     環奈は、ためらうことなくその先へと足を運んだ。

  • 18湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:30:46

     環奈は、一歩、また一歩と出口へ近づいた。

     足元の木の葉を踏みしめる音が微かに響く。
     そして、光の中へ——

     目の前に広がっていたのは、輝く青空と、ゆっくりと流れる白い雲だった。

     強い日差しを受けて、原っぱの草は濃い緑色に輝いている。夏草が風に揺れ、さわさわと囁くように音を立てていた。

     環奈はまぶしさに目を細めながら、ゆっくりと視線を巡らせる。

     そこかしこに、奇妙な石像が転がっていた。

     苔むした石人たち——表と裏に顔を持つ、不気味な表情の像が、ぽつん、ぽつんと点在している。まるで長い間、誰かを待ち続けているかのように。
     近くにあった一体を指でそっとなぞると、湿った苔がぽろりと剥がれ落ちた。

     「(……なに、これ)」

  • 19湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:31:09

     周囲には、朽ち果てた小さな建物がいくつかあった。

     壁の板はひび割れ、屋根の瓦は崩れ落ち、扉も半ば外れかけている。昔は誰かが住んでいたのか、それとも店のようなものだったのか……。

     けれど、今はただ、打ち捨てられたまま、風と時に晒されている。

     環奈は、不思議な心地に囚われた。

     ここは、どこだろう。

     駅舎のような建物を抜けた先に、こんな場所が広がっているなんて——まるで夢の中に入り込んでしまったような気がする。

     ふと、遠くの方に視線をやると、低い丘の向こうに、町のようなものが見えた。
     建物が並び、色鮮やかな屋根と壁が、ぼんやりと夏の陽炎に揺れている。

     人がいるのだろうか?

     環奈は、小さく息を飲んだ。
     そして、ゆっくりと、町の方へ向かって歩き出した。

  • 20湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:32:29

     草の茂る斜面を登るたびに、夏草の匂いが濃くなった。
     環奈は額の汗をぬぐいながら、足元を慎重に確かめつつ進む。

     「(こんなに歩いたの、久しぶりかも……)」

     普段は学校と家を往復するだけで、わざわざ外を歩くことなんてほとんどなかった。学校の授業でも、運動は得意じゃない——というより、そもそも好きじゃなかった。

     やがて、視界が開けた。
     環奈は目の前の風景に、思わず足を止めた。

     そこには、干上がった河原が広がっていた。
     元々は大きな流れなのだろう。けれど今は、石と砂利がむき出しになり、ところどころに浅い水溜まりが残っているだけ。かろうじてチョロチョロと細い水が流れているが、それもまるで息絶え絶えのようだった。
     対岸は石段になっていて、古びた灯籠が立っている。
     
     環奈は河原へと足を踏み入れた。
     水を避けながら、大きな石から石へと慎重に移動していく。

     ——ぴょんっ。ぐらっ。

     バランスを崩しそうになり、慌てて手を広げる。

     「うわっ……!」

     なんとか踏みとどまり、浅い水たまりに足をつっこむのは免れた。

     環奈は小さく息を整えると、石から石へと渡り続け、そして、ようやく対岸の石段へとたどり着いた。

  • 21湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:32:50

     上へ登ると、環奈の目の前には——奇妙な町が広がっていた。

     雲ひとつない、ギラつく青空。その下に並ぶのは、どこか異国のような町並みだった。

     派手な色をした飲食店がずらりと並び、それぞれカウンター式の造りになっている。

     看板には、意味不明な文字が書かれていた。

     『め』
     『唇』
     『生あります』

     けれど、この町には—— 人の気配がまったくなかった。

  • 22湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 11:33:59

    (お待たせしました。安価のターンです。

    次の環奈の行動を >>23 から >>25 でダイス)

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 12:03:33

    とりあえず探索

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 12:28:45

    誰かいないか声を出す

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 12:29:53

    どこかの建物を覗く

  • 26湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 12:32:28

    1. >>23

    2. >>24

    3. >>25

    dice1d3=3 (3)

  • 27湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 13:11:22

     ふと、通り沿いの店のひとつが目に留まった。
     カウンターには、さまざまな料理がずらりと並んでいる。

     環奈はそこへゆっくりと足を運ぶと、無意識に喉を鳴らした。

     照り焼きにされた、丸ごとの鶏。
     パリパリとした質感の、山盛りの春巻き。
     それに、ゼラチン質の何かが、大皿の上に盛り上がっていて、脂の染み出したソースがゆっくりと流れている。

     それらがどんな味なのか、何となく想像できる気がする。
     甘くて、香ばしくて、とろけるように柔らかい——そんな風に。

  • 28湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 13:11:53

     環奈は、ふとカウンター越しに身を乗り出した。

     「すみませーん……」

     声をかける。だが、返事はない。

     中を覗き込むと、薄暗い台所が奥に広がっていた。
     壁際には大きなカマドがあり、小さな火がチロチロと燃えている。
     鍋やせいろからは、かすかに湯気が立ちのぼっている。
     それでも——誰の気配も感じられなかった。

     環奈は、少し眉をひそめた。

     「(……誰もいないのかな?)」

  • 29湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 13:12:22

     改めて、店の外の通りに視線をやる。
     やはり、人影はない。

     環奈は、カウンターの上の料理へと視線を戻した。
     さっきよりも、食欲をそそる香りが強くなった気がする。

     「(……店員さん、いないけど)」

     環奈は、カウンターにそっと手を置いた。
     少しだけ食べてみたいかも……

     普段なら、こんな状況で勝手に食べようなんて思わない。
     けれど、今は——なぜか、そうしてもいいような気がする。

     環奈は、しばらく考え込んだ。

  • 30湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 13:13:28

    (環奈「 dice1d3=2 (2) 」)


    1.ううん、やめとこう

    2.財布も持ってるし……お金さえ置いてけば……

    3.(安価&ダイス)

  • 31湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 13:17:26

    あかーん!!

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 13:41:53

    ヤバいぜ

  • 33湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 14:10:08

     「(財布も持ってるし……お金さえ置いてけば……)」

     環奈はふと、そんなことを考えた。
     まるで何かに導かれるように、カウンターから割り箸と小皿を取り、パキリと割る。

     視線は、さっきから気になっていたゼラチン質の料理へ。
     それは、ぷるぷると揺れ、艶やかな肉汁が滲み出ている。

     そっとひとつ小皿に取ると、手に伝わる温もりと重みに、喉が鳴った。

     「(1個でだいたい200円か300円ぐらいかな。食べたらお金、置いておこう)」

     環奈は、箸を使ってゆっくりと持ち上げる。
     口元へと運び——そして、齧りつこうとした、その瞬間——

  • 34湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 14:10:52

    (環奈を止める一声。この声の主は dice1d2=2 (2) )


    1,オリキャラ

    2.原作キャラ

  • 35湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 14:11:28

    ( >>34 は誰? >>36 から >>38 でダイス)

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 14:44:42

    ハク

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 14:45:04

    銭婆

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 14:45:28

    カオナシ

  • 39湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 14:49:09

    1. >>36

    2. >>37

    3. >>38

    dice1d3=2 (2)

  • 40湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:16:41

     「おやめ!」

     突然の大声に、環奈の手がびくりと震えた。
     箸が滑り、料理が小皿の上に落ちる。さらに勢い余ってカウンターへ転がり、そこから地面へ——ぷるんっと跳ねるように落ちた。

     「あぁ〜っ!」

     環奈は思わず叫ぶ。
     楽しみにしていた一口を台無しにされたことに腹が立ち、声の主を睨みつけようと顔を上げ——そして、息を呑んだ。

     そこに立っていたのは、人間とは思えない不思議な老婆だった。

     巨大な頭部に、2頭身の異様な体格。厚く化粧を施した大きな眼と、突き出た鷲鼻。
     深く刻まれた皺が、その顔に不気味な迫力を与えている。
     身にまとったのは青いドレス——とにかく、その威圧感はただ者ではない。

  • 41湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:17:04

     老婆は、鋭い目で環奈を見据え、低く言い放った。

     「それを食べると、お前は二度と人間の姿には戻れないよ」

     環奈は、料理が落ちた地面と老婆の顔を交互に見つめる。
     信じられない——そんなはずない。だって、ただの料理じゃないの。

     けれど、言葉が出なかった。

  • 42湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:18:51

     ——その時だった。

     空が、急に翳る。

     さっきまでのギラついた日差しが消え、町全体が幕を引くように薄暗くなっていく。
     影がみるみる伸び、長く、長く、地面を這うように広がっていく。
     商店の提灯や灯籠に、ぽつぽつと橙色の灯りがともり始めた。

     「えっ……?」

     環奈は、戸惑いながら辺りを見回す。

     老婆もまた、表情を険しくし、静かに町の変化を見つめていた。
     まるで、これから何かが起こるのを知っているかのように——

  • 43湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:20:12

    (銭婆の環奈に対する言葉または行動 >>44 から >>46 でダイス)

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:37:16

    空を飛んで自分の家までつれていく

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:40:49

    「やれやれ、どうやら時間切れみたいだねぇ」
    急いでここから離れるように告げるが間に合わず草原は海になっていた

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:44:33

    「あいつも立ち入り禁止の看板でも立てとけばいいのにねぇ……?」
    そう言いながらかつてハクが千尋に渡したものと似たような物を渡される
    「取りあえず妹と話をつけてくる。お前もこい」

  • 47湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:47:30

    1. >>44

    2. >>45

    3. >>46

    dice1d3=1 (1)

  • 48湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 15:47:54

    む……油屋で働かせたいのに()

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:49:12

    あ。ごめん

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:50:02

    あ、連れてく途中に追いかけてきたとかは?

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 15:54:05

    家にいるときに湯婆婆かその使いが来たとかでも良さそう

  • 52湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:00:51

    何とかなりそうですね。

  • 53湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:11:25

     老婆は環奈をじろりと見据え、低く言った。

     「お前、ここにいたら碌な目に遭わないよ。あたしが匿ってあげるから、ついておいで。」

     環奈は呆気に取られたまま、老婆の動きを見つめるしかなかった。

     老婆はどこからともなく黒いショールを取り出すと、背中へと纏った。
     すると、その体がみるみる変化していき—— 丸々とした大コウモリのような異形へと姿を変える。

     ——バッサ、バッサ!

     老婆が羽ばたくたび、強い風が巻き起こる。
     環奈の髪が乱れ、足元の砂埃が渦を巻いた。

  • 54湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:11:53

     「えっ、ちょっ……!」

     戸惑う暇もなく、老婆の鉤爪が環奈の肩をがっしりと掴む。

     次の瞬間——

     ふわりと足元の感覚が消えた。

     「うわあああっ!!!」

     環奈は悲鳴を上げ、ジタバタと暴れる。
     けれど、老婆は意に介さず、そのまま空へと舞い上がった。

     闇に染まりつつある空の中、環奈の叫び声だけが、風にかき消されていった。

  • 55湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:35:26

     空はすっかり夜に染まっていた。

     老婆に掴まれたまま、環奈はどこまでも広がる大海原の上を飛んでいた。
     風は冷たく、潮の香りが鼻をかすめる。

     けれど、環奈は目をぎゅっと閉じ、両手で顔を覆ったまま、ただ震えていた。

     「いつまで震えてるんだい。目を開けな。」

     老婆の声が、風の中に響く。

     「ご覧よ、綺麗な景色じゃないか。」

     環奈は恐る恐る指の間から目を開けた。

     目の前には、雲がぐんぐんと流れる夜空。
     その中央に、ぽつんと浮かぶ満月が、静かに光を放っている。

  • 56湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:35:43

     ふと、下からザザーッという音が聞こえた。
     怖々と視線を落とすと——

     漆黒の水面を、2両編成の電車が走っていた。
     車輪が水をかき分けるたび、さざ波が月明かりを揺らしていく。

     それだけではない。水上には、小さな浮島が点々と並び、一軒家が孤独に立っている。
     それに、どこへ続くのかもわからない、小さく静かな駅。

     環奈は、しばらく言葉を失った。

     怖い気持ちはまだ残っている。けれど、それ以上に——この景色に、魅入られていた。

  • 57湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:36:43

    この後 dice1d3=2 (2)


    1.湯屋の追っ手がやってくる

    2.無事に沼の底の家に到着

    3.安価&ダイス

  • 58湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 16:43:56

    原作だと終盤で行く銭婆の家に、初っ端から行くの、面白いなぁって思います。

  • 59湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:20:18

     やがて老婆はゆっくりと高度を下げ、一軒の家の前へと降り立った。
     環奈の足は地面についた途端、ぐらりと力が抜けそうになる。

     そこに建っていたのは、大きくも小さくもない、漆喰の白壁と茅葺き屋根の家だった。
     分厚い壁にぽっかりと開けられた入り口には、赤い花の絵が描かれている。

     老婆は背中のショールをするりと脱ぐと、元の姿へと戻った。
     環奈を振り返り、にっと笑う。

     「あたしの家だよ。お入り」

     環奈はまだ半信半疑だったが、ここまで来た以上、従うしかない気がした。
     ためらいながら、老婆の後を追う。

     老婆が一歩、玄関へ近づく。
     ——すると、木の扉が、勝手に開いた。

     「わっ……!」

     環奈は思わず飛びのいた。老婆はクスクスと笑う。

     「いちいち驚きなさんな」

     環奈はむっとして、口を尖らせた。

  • 60湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:20:52

     家の中は、外観からは想像できないほど温かい雰囲気だった。
     ほのかに灯る明かり、木目を生かしたカントリー調の家具。どこか懐かしさを感じる、落ち着いた空間。

     老婆は奥へと進みながら、誰かに声をかけた。

     「帰ったよ」

     すると、奥の暗がりから、白い仮面をつけた、背の高いカゲのような存在が、静かに現れた。

     「ア……ア……」

     か細い声で、老婆を迎えるように囁く。

     環奈は息を呑んだ。
     その不気味で、けれどどこか寂しげな存在を、じっと見つめることしかできなかった。

  • 61湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:24:52

     老婆は白い仮面のカゲに向かって言った。

     「お客さんだよ。お茶を淹れてあげとくれ。」

     カゲは「ア……」と短く応え、ゆっくりと台所へ向かう。

     老婆は環奈に目を向け、顎をしゃくる。

     「さあ、座りな。」

     環奈は半信半疑のまま、テーブルについた。

  • 62湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:43:15

     やがて、カゲがトレイを持って戻ってきた。
     繊細な模様の描かれたティーセットを慎重に運び、慣れた手つきで紅茶を淹れる。
     紅い液体が、カップの中に満ちていく。

     環奈は差し出されたティーカップを、じっと見つめた。
     飲んでいいのかな——さっきの料理のことが頭をよぎる。

     老婆はそんな環奈の様子を見て、静かに微笑んだ。

     「そいつは、あの町のものと違って、口にしても構わないんだよ」

     環奈は、少しだけ迷ったあと、恐る恐るカップを持ち上げ、そっと口をつけた。

     ——やわらかな香りと、ほのかな甘み、そして渋みが広がる。

     喉を通ると、不思議と体の力が抜けた。
     ずっと張り詰めていた心が、少しだけ落ち着くのを感じた。

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 17:49:41

    原作の映画見てた時みたいに情景が浮かんでくる

  • 64湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:50:45

     老婆は湯気の立つ紅茶をひと口飲むと、環奈を見てゆっくりと口を開いた。

     「あたしは銭婆。この辺りの魔女さ」

     環奈は思わず目を瞬かせた。

     「魔女……?」

     銭婆は頷くと、隣に立つカゲの方へ視線を向けた。

     「こいつはカオナシ。あたしを色々と手伝ってくれてる」

     カオナシは表情こそ変わらないが、どこか照れくさそうに身じろぎした。

     環奈はカオナシをちらりと見たあと、銭婆に向き直った。

     「……環奈です」

     それだけ言うと、銭婆は満足そうに頷く。

     「ほう、環奈かい。いい名前だね」

     そう言ってカップを置き、少し重々しく息をついた。

  • 65湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:51:00

     「ここはね、本当なら、あんたのような人間が来る場所じゃないんだよ」

     環奈は思わず緊張する。

     「……どういうこと?」

     銭婆は静かに続けた。

     「ここはね、人ならざる者たちの世界なんだよ」

  • 66湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:52:53

    (次の展開 dice1d3=2 (2) )


    1. 湯屋の手の者がやってくる

    2. 銭婆、さらに語りかけて

    3.安価&ダイス

  • 67湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 17:54:42

    >>66

    (銭婆「助けてあげたいけど、私にはどうすることもできないよ。この世界の決まりだからね。( >>68 から >>70 でダイス)」)

  • 68二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 18:28:41

    あんたあそこの食堂で粗相しただろ?
    その償いってやつをしないわけにはいかないんだ

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 18:29:59

    湯婆婆が幻影の姿でやってきた

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 18:30:43

    ひとまず向こうの食堂の店主に詫びに行く様に伝える

  • 71湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 18:33:08

    1. >>68

    2. >>69

    3. >>70

    dice1d3=2 (2)


    (またついSSパートを長く書きすぎてしまったので反省)

  • 72湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 18:42:18

     すると銭婆は突然、ふっと口を閉じ、鋭い目つきで周囲を見回した。

     「どうしたの?」

     環奈は異変を感じ取り、小声で尋ねる。

     「……何か、家に入り込んでるよ」

     環奈の背筋に冷たいものが走った。
     カオナシも落ち着かない様子で、周囲をキョロキョロと見渡している。

     銭婆は慎重に席を立ち、ゆっくりと部屋の中を警戒しながら歩く。

     ——そして、銭婆の目がある一点を捉えた。

     「そこだ!」

  • 73湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 18:42:54

    (銭婆が使った魔法と湯婆婆の反応 >>74 )

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 18:58:24

    湯婆婆が昔カオナシに放ったような火の玉を放つ銭婆とそれを打ち消す湯婆婆

  • 75二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 18:59:56

    ヒト型の札を投げる銭婆
    そしてそれを手で受け止めた湯婆婆

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 19:01:13

    魔法を解く魔法で透明に変化した湯婆婆を元に戻した

  • 77湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:23:08

     銭婆は両手をかざし、掌の上に赤い火の玉を生み出した。
     次の瞬間——それは勢いよく放たれる。

     火の玉は部屋の一角へと飛び、何もないはずの空間にぶつかると、目に見えない壁のようなものに弾かれて四散した。

     「えっ……!」

     環奈は息をのむ。
     カオナシもびくりと肩を震わせた。

     銭婆は目を細め、ゆっくりと言う。

     「さあ、姿を見せな」

     すると——

     「フン、まだ耄碌しちゃいないようだね」

     銭婆とそっくりな声が響き、何もなかった空間から、ぬうっと人の姿が浮かび上がった。

  • 78湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:23:28

     それは——顔も、体型も、ドレスさえも、銭婆と瓜二つの老婆だった。

     環奈は混乱し、目をぱちくりとさせる。

     銭婆はそんな環奈に向かって言った。

     「環奈、私の妹の湯婆婆だよ。あんたが迷い込んだ町で、八百万の神さま方を相手にアコギな商売をしているのさ」

     環奈は呆然としながら、目の前の湯婆婆を見つめる。

     湯婆婆は、姉からの言葉に鼻を鳴らしていた。

  • 79湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:35:26

     銭婆は余裕のある笑みを浮かべ、静かに口を開く。

     「あんたの目的はわかってるよ。この子を連れ去りに来たんだろう」

     「ああ、そうさ」

     湯婆婆は不愉快そうに言った。

     「あたしの町に汚い足で入り込んで、神さま方の料理に手をつけようとした小娘を放っておけるかい」

     環奈はびくりと肩を震わせた。
     カオナシも落ち着かない様子で、銭婆と湯婆婆を交互に見つめる。

     しかし、銭婆は肩をすくめて、軽く言い放った。

     「この子は一口も齧っちゃいないよ。第一、たかだかシーラカンスの胃袋ひとつじゃないか。」

     すると、湯婆婆の顔がさらに険しくなる。

     「たとえひとつだろうと、食おうと思ったことが罪なのさ」

     環奈はごくりと息をのむ。
     あんなことのせいで——こんな恐ろしいことになるなんて。

  • 80湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:35:46

     湯婆婆は、指輪がジャラジャラと付いた手を手繰り寄せ、不気味に微笑んだ。

     「その娘をさっさと寄越せばよし。さもなくば……」

     銭婆は少しも動じず、むしろ妹を試すように目を細める。

     「さもなくば、どうするんだい?」

  • 81湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:36:19

    (湯婆婆の脅し >>82 から >>84 でダイス)

  • 82二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 19:43:07

    子ブタにしてやろう

  • 83二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 19:43:44

    銭婆に料理代全額割り増しで立て替えてもらう。(法外な値段)

  • 84二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 19:45:04

    さっきの事でひどく神様の不興を買ったんだよ

  • 85湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:46:01

    1. >>82

    2. >>83

    3. >>84

    dice1d3=1 (1)

  • 86湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:57:09

     湯婆婆は不気味に笑い、環奈を指差した。

     「そいつを子豚に変えてやろう」

     環奈の顔がサッと青ざめる。

     「ひっ……!」

     恐怖に駆られ、思わずカオナシの背後へと身を隠す。
     カオナシは無言のまま、環奈を庇うようにそっと片腕を広げた。

     しかし、銭婆は高らかに笑い飛ばした。

     「アッハッハッハ……私の前でそんなことできるもんか」

     湯婆婆はギョロリと目を光らせ、唇を歪める。

     「できるさ。本当だよ。豚小屋でうんと太らせた後、丸焼きにしてしまうからね」

     環奈は怯えたまま、湯婆婆の鬼のような形相を見つめる。
     今にも何か恐ろしい魔法を放たれそうな気がして、息を詰めた。

     けれど、銭婆はまだ余裕の表情を崩さない。
     やがて、しばらく考え込んだ後、静かに口を開いた。

  • 87湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 19:57:43

    (銭婆「よろしい。( >>88 から >>90 でダイス)」)

  • 88二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 19:59:30

    後で改めて詫びに行こう

  • 89二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 20:02:47

    魔女なら魔女らしく、姉妹どうし魔法で白黒つけようかね

  • 90二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 20:04:22

    こっちは素直にすいませんでしたで済ませておこうと思ったんだがね
    そこまで横暴な手に出るならまあ仕方ない

  • 91湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 20:15:18

    1. >>88

    2. >>89

    3. >>90

    dice1d3=1 (1)


    (あんたの要求を飲もう、とはなりませんでしたね)

  • 92二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 20:16:11

    銭婆が子供を見捨てるなんてしないって総意やな

  • 93湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 20:37:39

     「よろしい。明日、改めて店に詫びに行こう」

     その言葉に、湯婆婆の目が細まる。
     そして、何かを思いついたように、不敵に笑った。

     「それで結構。……ただし、その娘ひとりで町まで来るんだよ。電車に乗ってね」

     環奈の肩がぴくりと震える。

     「いいかい、カオナシにも供をさせるんじゃないよ。そいつが湯屋に近づいたら碌なことにならないんだからね」

     銭婆は小さく頷いた。
     カオナシは何かを思い出したのか、少し気まずそうにうつむく。

     「(……なんの話だろう?)」

     環奈は、銭婆と湯婆婆のやり取りを、無言のまま見つめていた。

     明日ひとりであの町へ行け——?あの異様な場所に、自分だけで?
     怖い。けれど、それ以上に、何も知らないままこの場の空気に流されていくことが不安だった。

  • 94湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 20:38:14

     「それじゃあ、用は済んだ。こんな所に長居してたまるもんかね」

     湯婆婆は忌々しげに吐き捨てると、環奈に鋭い目を向ける。

     「必ず一人で来るんだよ。さもなきゃ、鶏にしちまうからね」

     環奈はごくりと息を呑んだ。

     湯婆婆はにやりと笑うと、両腕を大きく広げた。
     ——その瞬間、空間が歪み、湯婆婆の体が輪郭を失っていく。そして、あっという間に——湯婆婆の姿は消えた。

     環奈は呆然とその場に立ち尽くす。
     恐ろしい魔女の脅しと、明日自分がやらなければならないことを、頭の中で必死に整理しようとしていた——

  • 95湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 20:38:58

    (呆然と立ち尽くす環奈に、銭婆が軽く話しかける >>96 から >>98 でダイス )

  • 96二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 20:46:18

    さてと、あんたは明日またあの怖い魔女にあわなくちゃならないからね。
    今から身を守るおまじないの準備をしようかね。
    カオナシはあたしのお手伝いをしてもらおうか。もちろん環奈にも手伝ってもらうよ。

  • 97二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 20:53:00

    恐らく妹は嵩にかかってあんたを脅しにかかるだろうが、このあたしがついてるんだから何も心配はいらないさ
    ただし何か契約を持ち掛けられたら気を付けな
    それと自分の名前が書いてある物は失くしてはいけないよ

  • 98二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 21:02:37

    妹は昔あんたの前にもこっちに来た人間に煮え湯を飲まされた事があってね
    あん時は一年分くらい笑わせて貰ったよ

  • 99湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:04:03

    1. >>96

    2. >>97

    3. >>98

    dice1d3=2 (2)

  • 100湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:06:12
  • 101湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:22:39

     そんな環奈の様子を見て、銭婆はクスッと笑い、軽く話しかけた。

     「恐らく、妹は嵩にかかってあんたを脅しにかかるだろうさ。けど、このあたしがついてるんだから、何も心配はいらないよ」

     環奈は顔を上げる。その言葉に、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。

     しかし、銭婆は少しだけ真剣な表情を浮かべ、指を一本立てる。

     「ただし——何か契約を持ち掛けられたら、気をつけな」

     「契約……?」

     環奈は不安げに呟く。

     「そうさ。妹は強引で、そのうえ抜け目のない女だからね。うっかり変な書類にサインなんかしたら、それこそ元の世界には帰れなくなるかもしれないよ」

     環奈はごくりと唾を飲み込んだ。

  • 102湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:25:15

     「もしそうなったら、自分の名前が書いてある物は、決して失くしちゃいけない」

     「名前?」

     「そう。あんたが担いでたカバンにいっぱい入ってるだろう?絶対に失くしちゃダメだよ」

     銭婆はゆっくりと言い含めるように告げる。
     そう言われて、環奈はテーブルの下に置いたランドセルに目を向けると、その中に入れている筆記用具や教科書、ノートを思い浮かべた。

     その意味を完全には理解できないが、銭婆の言葉の重みをなんとなく感じて、小さく頷いた。

  • 103湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:28:49

     銭婆は満足そうに微笑むと、手をぱんっと叩く。

     「さぁて。明日はあんたにとっちゃ大変な一日だ。ぐっすり寝て、しっかり力を蓄えな。」

     「……はい」

     環奈が返事をすると、銭婆は大きく頷きながら、部屋を見回す。

     「さて、あんたの寝床を作らなくちゃね。替えの布団に、適当な家具を組み合わせれば、立派なベッドになるよ」

     「えっ……?」

     環奈はきょとんとする。

     「カオナシ、手伝っておくれ」

     銭婆が呼びかけると、カオナシは「ア……」と小さく頷いた。

     「環奈、あんたもだよ」

     「えっ、私も?」

     「そりゃそうさ。自分の寝床なんだから、自分でも作るもんだよ」

     銭婆はおかしそうに笑いながら、カオナシを連れて部屋の奥へと歩き出した。

     環奈は少し戸惑ったが、仕方なく銭婆とカオナシの後に続いた。

  • 104湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:45:42

     夜は更け、家の中はしんと静まり返っていた。
     銭婆はすでに寝室で眠りについている。

     環奈はリビングに造られたあり合わせのベッドの上に横たわっていた。
     布団、椅子、チェスト——あちこちの家具を組み合わせて作られた、ちぐはぐな寝床。
     けれど、意外にも寝心地は悪くない。

     ——それでも、眠れなかった。

     母親は今ごろ、どうしているだろう。
     深夜になっても帰らない私を、心配してるのだろうか。
     それとも、気にせずに友達と電話でも——?

     明日の学校はどうすればいい?
     欠席したら、先生に怒られる?
     それとも、そこまで気にされないのだろうか——?

     家に戻ったとき、母親になんて叱られるだろう。
     ——いや、本当に帰れるの? それに、帰ったとしても、また居場所のない日々に戻るだけなんじゃ?

     考えれば考えるほど、不安が尽きない。

     環奈は、布団を頭までかぶり、縮こまる。
     胸の奥に広がるモヤモヤは、どこにも行き場がなかった。

  • 105湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:49:28

     しばらくそうしていたが、やがて、ふっと布団を押しのけた。

     環奈はベッドからそっと降りる。
     薄暗い部屋の中、冷たい床の感触が素足に伝わった。

     着ているのは、銭婆が今夜しのぎで縫ってくれた、ごく簡素な白い綿のネグリジェ。
     着心地は不思議と悪くなかった。

     どうしようか——

     環奈は腕を抱きながら、ぼんやりと立ち尽くす。

  • 106湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 21:51:31

    (次の展開 >>107 から >>109 でダイス)


    Q.まだ環奈のキャラや言動の傾向が掴めてないんだけど


    A.環奈は今のところ、千尋以上に臆病で世間知らず、貧弱な子です。また、千尋に比べるとやや生意気で癇癪持ちだったりします。

  • 107二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 21:56:44

    電話がないか探す

  • 108二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 21:59:06

    たまたま起きていたカオナシと筆談
    すると自分以前にもこの世界に来た者がいる事を知った

  • 109二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 22:00:44

    母親に起こしてもらって朝ごはんを食べたら『神様の食事を食べてしまったね』と湯婆婆の声がし、
    巨大な湯婆婆に掴み上げられてそのまま飲み込まれる。
    というタイミングで『お止めなさい!』と銭婆の声が響き悪夢から目が覚める。

  • 110湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:02:08

    1. >>107

    2. >>108

    3. >>109

    dice1d3=3 (3)

  • 111湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:02:32

    おお、これは書き甲斐が……

  • 112湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:17:27

     「環奈ー、起きなー。朝ごはん冷めるわよー」

     暗闇の中から、母親の声が響いた。

     ——えっ?
     環奈は、はっとして目を開けた。

     自分の部屋だ。
     いつもの天井、いつもの壁、いつもの家具。
     確かに、自分のベッドの上にいる。

     今までのことは、全部夢だったの——?

     環奈は大きく息を吐き、心の底から安堵した。
     そうだ。あんなおかしな世界、本当にあるはずがない。

     布団を蹴飛ばし、部屋を出る。

     リビングでは、母が朝食を並べていた。
     エッグトースト——環奈の大好物だ。

     「環奈、早く食べて」

     母がいつもの素っ気ない口調で促す。

     「うん!」

     環奈は椅子に座り、トーストに齧り付いた。

     ——その瞬間。

  • 113湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:24:06

     「神様の食事を食べてしまったね!!」

     頭上から、湯婆婆の声が響き渡る。
     環奈は息が止まりそうになった。

     恐る恐る、ゆっくりと顔を上げて振り向く。
     ——そこには、巨大な湯婆婆がいた。

     背筋が凍るほどの大きな顔が、真上からこちらを見下ろしている。
     環奈の身体は、氷のように冷たくなった。

     「罰として、お前を食ってやる!!」

     湯婆婆の巨大な手が伸びてくる。

     「いや……っ!!」

     環奈は椅子を蹴り、逃げ出そうとする——が、間に合わなかった。
     巨大な指が、環奈の身体を摘み上げる。

     「やめて!……お母さん!助けて!お母さぁん!!」

     環奈は必死に叫び、暴れるが、ぐんぐんと持ち上げられ、湯婆婆の巨大な口の上まで運ばれていく。
     口を開いた湯婆婆の舌が、ぬらりと動き、環奈の足元にじわじわと迫ってくる。

     「いやあああっ!!」

     環奈は悲鳴を上げ、ぎゅっと目を固く瞑った——。

     その瞬間——

  • 114湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:24:34

     「おやめ!!」

     銭婆の鋭い声が響く。

     「銭婆っ!!」

     環奈は、涙声でベッドから飛び起きた。
     ——そこは、銭婆の家のリビングだった。

     息が荒い。汗びっしょり。心臓がバクバクと鳴っている。

  • 115湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:25:24

    ( >>116 から >>118 でダイス)

  • 116二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 22:29:40

    近くのテーブルで銭婆がカップに紅茶を注いでおり、
    「愚妹のせいで嫌な夢を見せちゃったようだね。これでも飲んでリラックスしなさい」と言いながらカップを渡してくれる。

  • 117二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 22:41:38

    銭婆に夢の事を話すとどうやら夢の中身を知っていたらしく銭婆が静かに怒りの顔を見せる
    「これであんたの粗相と妹の脅迫で五分ーーどっちもどっちで済ませる訳にはいかなくなったねぇ?」

  • 118二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 22:51:38

    慰めと励ましの言葉をかけつつ不興の相を見せる銭婆
    「何の反論もせずに謝ろうって娘にあんな事をするとはね。まあいいさ、あたしもあれを冗談で府に落とす気はないさ」

  • 119湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 22:52:59

    1. >>116

    2. >>117

    3. >>118

    dice1d3=2 (2)

  • 120湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:03:59

     その時、カチャカチャと食器の音がした。環奈は振り返る。

     近くの台所で、銭婆とカオナシが朝食の準備をしていた。

     銭婆はフライパンを火にかけながら、ちらりと環奈を見やる。
     そして、気遣うような声をかけた。

     「……どうしたい? えらく魘されてたね」

     環奈は、ぎゅっと布団を握りしめる。

     「なんでもない……」

     そう答えたものの、自分でも声が震えているのが分かった。

     すると、銭婆はクスッと笑う。

     「ふふん。怖い夢を見たんだろう?」

     環奈はドキリとした。

     「わ、分かるの……?」

     「ああ、分かるよ」

     銭婆はフライパンを器用にあおりながら、少し意味深な口調で続ける。

     「あんたの夢の中身は私に筒抜けさ」

     環奈は一気に言葉を失った。

  • 121湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:09:00

     銭婆の目が、どこか静かに光っている。

     「これであんたの粗相と妹の脅迫で五分。」

     銭婆は、ゆっくりと呟いた。
     調理の手を止め、少し目を細める。

     「——どっちもどっちで済ませるわけにはいかなくなったねぇ?」

     その声は静かだったが、確かな怒りが込められていた。
     環奈は思わずごくりと喉を鳴らした。

     不安そうな環奈を見て、銭婆はふっと表情を和らげる。

     「まぁ、そんな顔しなさんな。」

     そう言って、再び笑みを浮かべた。

  • 122湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:10:21

    (次の展開 >>123 から >>125 でダイス)


    不思議の町の飲食店が開くのは夕方からなので、まだ時間に余裕はありますが、早めに駅に向かうのもアリです。

  • 123二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 23:16:59

    銭婆からヒト型の御札を貰ったが何に使うのかは教えてくれなかった
    「なあに、悪いもんじゃないさ、ちょっとした御守りみたいなもんだよ」

  • 124二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 23:17:00

    朝食を食べながら今の状況を教えてあげて、お守り(髪紐じゃなくてもなんでも)と式神みたいな例の紙を持たせる。
    (本編でハク吹き飛ばしてたやつ)
    状況は大まかに2つ
    ・弱み 神様へお出しする食事をダメにしたこと
    ・強み 後日面会する旨を『約束』したのに『悪夢を見せてきた』こと

  • 125二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 23:32:09

    「あんな事をされたんだし、あたしももう勿体ぶったり妹に遠慮する気はないよ。全部教えて上げる」
    朝食後に湯婆婆の相手の名前を奪う能力のことを教えて、かつ湯婆婆が仕事の頼みをされたら断れないことやかつてここに来た千尋という少女がどうやって帰ったのか包み隠さず教える
    ついでに何か怪しげな御札も貰った

  • 126湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:34:08

    1. >>123

    2. >>124

    3. >>125

    dice1d3=3 (3)

  • 127湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:55:16

     銭婆はテーブルの上に食事を並べながら、ゆっくりと言った。

     「だけどね、あんたにあんな事をしたんだし、あたしももう勿体ぶったり、妹に遠慮する気はないよ」

     環奈はじっと銭婆を見つめる。

     「ご飯を食べたら、あの人のことを全部教えてあげる」

     そうして朝食を済ませた後、銭婆はテーブルの向かいに座り、淡々と語り始めた。

     湯婆婆は、相手の「名前」を奪い、それによって支配する力を持っている。
     また、相手が「働かせてください」と頼んだ場合、どんな相手であろうと断れない。
     それこそが、湯婆婆の持つ強力な契約魔法だった。

     そして、かつてこの世界に迷い込み、湯婆婆の元で働かされた人間の少女がいた。

     千尋——

     たった一人で湯屋に入り、湯婆婆に名を奪われながらも、自分の本当の名前を忘れず、ついには元の世界へ帰った少女。

  • 128湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:55:30

     環奈は、その話に強く惹きつけられた。

     「……でも」

     環奈は少し考え込み、口を開いた。

     「千尋を助けてくれたハクって人は、もういないんでしょ?」

     銭婆は、何も言わずに環奈を見つめる。

     環奈は自分の膝の上で拳をぎゅっと握った。

     「じゃあ、もし私がお湯屋で働かされることになっても、千尋みたいになれる?」

     不安と期待が入り混じった表情で、環奈はそう尋ねた。

  • 129湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/21(灍) 23:56:34

    (銭婆の返答 >>130 から >>132 でダイス)


    その後に御札を渡します。

  • 130二次元好きの匿名さん25/01/21(灍) 23:58:18

    このレスは削除されています

  • 131二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 00:01:51

    言っては悪いんだけどその千尋って娘はあんまり要領のいい方じゃなくてね
    そんなんでも無事に家に帰れたんだ
    あんたなら尚更大丈夫さ

  • 132二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 00:23:28

    なれるさ
    だうしてもダメって時はあたしがドーラおばさんになってやるよ

  • 133二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 00:25:22

    成れるどころか追い越せるさ。それにあんたは一人じゃないよ?
    あたしが付いているさ(無言のカオナシ).........もちろんこの子もね。

  • 134二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 00:25:52

    >>132

    だうしてもは「どうしても」の誤字でした

    すみません

  • 135湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 08:42:27

    1. >>131

    2. >>132

    3. >>133

    dice1d3=3 (3)

  • 136湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 09:17:28

     銭婆は、環奈の顔を見つめ、穏やかに微笑んだ。

     「なれるどころか、追い越せるさ」

     環奈は驚いたように目を瞬かせる。

     「それに、あんたは一人じゃないよ。昨日も言ったじゃないか。私がついてるとね」

     銭婆は軽く肩をすくめて言った。
     その言葉に、環奈の胸の奥がじんわりと温かくなる。

     すると、台所でその会話を聞いていたカオナシが、何か言いたげに、ちらちらと振り返ってきた。

     それに気づいた銭婆は、クスッと笑った。

     「もちろん──この子もね」

     カオナシは一瞬、びくりと動きを止める。
     そして、どこか気恥ずかしそうに、再び皿をこすり始めた。

     環奈は、思わず小さく笑った。

     この世界に来てから、ずっと不安だった。
     でも、今はほんの少しだけ、心強さを感じている。
     ——それでも、本当に大丈夫だろうか。

  • 137湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 09:18:21

     そんな迷いを見透かしたように、銭婆はゆっくりと言った。

     「それでも心配だと言うなら、いいものを一つ渡しておこうかね」

     そう言うと、銭婆は椅子から立ち上がり、壁際の棚へと向かった。
     そこには、いくつかの小さな箱が並べられている。

     銭婆はそのうちのひとつを開け、中から一枚の御札を取り出した。
     環奈は、目を凝らしてそれを見つめる。
     細長い紙には、見たこともない文字が刻まれていた。

     銭婆は環奈の前に戻ると、御札を差し出した。

     「これを私とカオナシだと思って持っていきな」

     環奈はそっと手を伸ばし、御札を受け取る。
     指先にひんやりとした紙の感触が伝わった。

     「どうしても、という時、あんたの力になってくれるよ。ただし、いいかい。効き目は一度だけだからね」

     銭婆は念を押すように言う。
     環奈は、じっと御札を見つめながら、小さく頷いた。

  • 138二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 09:51:28

    心強い

  • 139湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:06:59

     環奈は身支度を整え、深く息を吸った。
     ラベンダー色のランドセルのポケットに、御札を大事にしまう。

     玄関の外に出ると、青空に大きな雲がぐんぐんと流れていた。
     どこまでも広がる空は、これから環奈が向かう道を映しているようだった

     すぐ後ろから、カオナシと銭婆も続く。
     銭婆はカオナシをちらりと見て、ゆっくりと言った。

     「カオナシ、環奈を駅まで付き添っておくれ」

     カオナシは「ア……」と小さく応え、環奈の隣に立つ。

     そして、銭婆は環奈に向き直る。

     「最後に、もう一度言っておくよ」

     環奈は真剣な面持ちで、銭婆を見つめる。

     「自分の名前を忘れないこと。それから、あんたは決して一人じゃない」

     銭婆は静かに微笑んだ。

     「それさえわかっていれば、あんたはきっと大丈夫さ」

     環奈は、しっかりと頷いた。

  • 140湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:07:28

     すると、銭婆はふっと腕を広げ、環奈をそっと抱きしめた。

     環奈は驚きながらも、その温かさに思わず目を閉じる。
     この世界に来てから、こんな風に誰かに抱きしめられるのは初めてだった。

     「さぁ、行きな」

     銭婆が環奈の肩を軽く叩く。

     環奈とカオナシは、3本の細い木を組み合わせて作った門へと向かった。
     門をくぐる直前、環奈はふと振り返った。
     銭婆が、変わらぬ優しい微笑みで手を振っていた。

     それだけではなかった。
     門の上に引っかかっているカンテラまでが、環奈を見下ろして手を振っていた。
     環奈は目を瞬かせた後、小さくお辞儀をした。

     そして、カオナシとともに門をくぐり、駅へと歩き出した。

  • 141湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:32:26

     カオナシの先導のもと、環奈は静かに歩き続けた。

     沼沿いの並木道を抜け、薄暗い木々の間を進み、やがて足元は、沼の中を通る一本道へと変わった。
     水面は静かで、風が吹くたびにさざ波が立つ。

     どれほど歩いただろう。

     やがて、時計柱が一本だけ立つプラットホームにたどり着いた。
     ベンチもなければ、駅名標すらない。
     ただ、古びた時計が静かに時を刻むだけの、寂しげな場所。

     「(……本当に電車なんて来るの?)」

     環奈は少し不安を覚えながら、カオナシの隣に立った。

     ——その時。

  • 142湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:33:30

     ゴトン……ゴトン……ゴトン……

     遠くから、低い振動音が響いてくる。
     やがて、赤茶色にクリーム色の電車がゆっくりと姿を現した。

     シュー……キィー……!

     ブレーキを軋ませながら、ホームの前でぴたりと停車する。
     ドアが、静かに開いた。
     環奈は開いたドアをじっと見つめていたが——

     「ア……」

     「え……?」

     ふと、カオナシがそっと両手を差し出してくるのに気づいて、振り向いた。
     その掌には、一枚の切符が載せられていた。

     『海原電鉄』『のりきり』

     環奈は思わず、カオナシの顔を見上げる。

     「……これで乗れるの?」

     カオナシは無言のまま、こくりと頷いた。
     環奈はそっと切符を受け取り、しっかりと握りしめる。

     「……ありがとう」

     カオナシは何も言わずに、ただ静かに佇んでいた。

  • 143湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:34:28

     環奈は、電車のステップを踏み、車内へと足を踏み入れた。

     ——その瞬間、目の前にヌッと、顔の見えない大柄の車掌が現れた。
     手袋をはめた手が無言で差し出される。

     環奈は少し怯えながらも、意を決して尋ねた。

     「……お湯屋のある町まで、乗れます?」

     車掌は、何も言わずに切符を受け取ると、手持ち型のシュレッダーを取り出し——

     キリキリキリ……

     小さな音を立てながら、切符を処理した。

     環奈は少し緊張しながらも、座席へ腰を下ろした。
     中はがらんとしていて、環奈の他には誰も乗っていない。

  • 144湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 10:35:34

     電車がゆっくりと動き出す。

     環奈は窓の外を見た。

     プラットホームには、カオナシが立っていた。
     そして、小さく片手を振っている。

     「あっ……」

     環奈は小さく声を漏らし、迷わず手を振り返した。

     電車が加速し、カオナシの姿がどんどん小さくなっていく。

     ——やがて、完全に見えなくなるまで、環奈は窓の外を見続けていた。

  • 145湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 11:42:57

     電車は静かに走り続けた。
     水の上を滑るように進み、車輪が水をかき分ける音が響く。

     最初は誰もいなかった車内だったが、駅に止まるごとに、乗客が少しずつ乗り降りするようになった。
     乗り込んでくるのは、みんな目も鼻も口もないカゲの姿をした者たちだった。
     長いコートを羽織っている者、ぼろぼろの風呂敷包みを抱えている者——
     中には、やたらと大きな荷物を担いで乗り込んでくる者もいた。
     彼らは無言のまま、それぞれの席に腰を下ろしている。

     環奈はそんな乗客たちをじっと観察しながら、窓の外へと目を向けた。

     窓の向こうには、延々と続く水平線。
     ときどき、水面には小さな浮島がぽつんと現れる。

  • 146湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 11:44:04

     どこまで行けば、あの町に着くのだろう?

     ふと、視界の端に何かが映った。
     環奈はそちらに目を向ける。

     ——崖だ。遠くに、切り立った陸地が見えてくる。

     そして、その手前に——巨大な建物が、そびえ立っていた。

     「……あれは……?」

     環奈は思わず窓に顔を寄せる。

     電車が進むにつれ、その建物の全貌がだんだんと鮮明になってくる。

     真っ赤な外壁。何層にも重なる屋根。
     その傍には、巨大な長い煙突が立っていて、 黒い煙をもくもくと吐き出している。

     環奈は息を呑んだ。

     ——あれが、湯婆婆のお湯屋……?

     電車は、その建物へと向かうように進み続けていた。

  • 147湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 12:18:41

    (読んでくださっている皆様、参加してくださっている皆様に質問です。
    環奈以外のオリキャラが出てくるのはどう思いますか?必要ないと思いますか?)

  • 148二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 12:22:29

    スレ主さん次第だけど千と千尋の神隠しの世界観に合わないわけではないなら出してもいいと思います

  • 149湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 12:30:05

    >>148

    (オリキャラの容姿、性格は複数の安価で決めたいと、現時点では思っています。)

  • 150二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 13:36:19

    どっちにしろ出してもいいんじゃないかな

  • 151湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:07:11

    (ご意見ありがとうございます!再開しますね。)

  • 152湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:09:07

     電車は湯屋の建物から少し離れたプラットホームに近づくと、キィー……!と車輪を軋ませて停車した。

     すると、さっきの顔の見えない車掌がのっし、のっしと歩いてくる。環奈は思わず身を固くした。

     車掌は無言のまま、座席に座る環奈の前に立ち、白い手袋の手を静かに差し出した。

     ——目的地に着いた。降りろ、ということなのだろう。

     環奈は素早く立ち上がり、電車のステップを降りた。そして、濡れたプラットホームに、ぴちゃっと音を立てて降り立つ。

     その瞬間、背後でドアが閉まり、電車がゆっくりと動き出した。

     環奈が振り返ると、電車はそのまま線路を進み、崖の下に空けられたトンネルの中へと消えていった。

  • 153湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:09:53

     環奈はプラットホームにぽつんと立ち、辺りを見回す。

     崖の上には、町が広がっているはず。
     けれど、ここからどうやって行けばいいのか、まったく分からない。

     「(……もしかして、もう1つ後の駅で降りるべきだった……?)」

     環奈は眉を寄せる。

     湯屋の建物は確かに見える。
     崖の手前にそびえ立つその姿は、さっき電車の中から見た時よりも、はるかに圧倒的だった。

     湯屋と陸地を繋ぐ、一本の橋が見える。あの橋から町へ行けそうだ。
     でも、どうやったらあの橋まで行けるのか?
     あそこまで行くには必然的に湯屋の中を通らなければいけない。どうやって中に入ろうか?そもそも、入れてくれるのか?

     環奈はひとり、立ち尽くしたまま、唇を噛んだ。

  • 154湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:11:10

    (次の展開 dice1d3=2 (2) )


    1.湯婆婆の手のものが環奈を捕らえに来る

    2.誰かが環奈に気がつき、声をかける

    3.安価&ダイス

  • 155湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:12:56

    >>154

    (たらい舟に乗って近づいてきたのは dice1d2=2 (2) )


    1. オリキャラ

    2. 原作キャラ

  • 156湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:13:41

    >>155

    (原作キャラのうちの誰? >>157 から >>159 でダイス)

  • 157二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 14:16:28
  • 158二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 14:17:48

    ハエドリ

  • 159二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 14:19:16

    リン

  • 160湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:20:20

    1. >>157

    2. >>158

    3. >>159

    dice1d3=3 (3)


    (ダイス神が「オリキャラは安易に作るな」と言っているようですね。)

  • 161湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:49:20

     ——ちゃぷ、ちゃぷ……

     静まり返ったプラットホームに、水の波打つ音が響いた。

     続いて、ぎぃ……ぎぃ……と、何かを漕ぐ音がする。
     環奈ははっとして、音のする方を振り向いた。

     ——誰かが、湯屋の方から、たらい舟に乗って近づいてくる。
     水面をゆっくりと滑る小さな舟。
     近づくにつれ、舟の上にいる人物の姿がはっきりと見えてきた。

     黒い長髪に、キツネのような顔立ち。
     年の頃は、高校生くらい。
     ピンク色の水干に袴を身につけ、細身の体で櫓を器用に操っていた。

     環奈は、思わず目を見開いた。

     ——誰?

  • 162湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 14:49:41

     舟がプラットホームに寄せられると、少女は櫓を止め、ぶっきらぼうに言った。

     「そこの子、乗りな。迎えに来たよ」

     環奈は戸惑いながら、一歩後ずさる。

     「……私を?」

     少女は少し苛立ったように、環奈を見据えた。

     「そうだよ、さっさと乗りな」

     環奈はまだ警戒を解けずにいたが、このままここに残っていても、どうにもならない。

     意を決して、慎重に舟へと足を踏み入れた。
     舟はぐらりと揺れる。

     「うわ……!」

     環奈は驚いてたらいの縁を掴んだが、少女は特に気にする様子もなく、淡々と櫓を握り直すと、再び漕ぎ始めた。

     たらい舟は静かに進み、環奈は不安を抱えたまま、見知らぬ少女とともに湯屋の方へ向かっていく。

  • 163湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 15:18:46

     舟が静かに進む中、環奈は思い切って尋ねた。

     「……どうして私を知ってるの?」

     少女は櫓を漕ぎながら、ちらりと環奈を見やる。

     「上役から聞いた」

     あくまで素っ気ない調子で続ける。

     「あんたが電車でここまでやってくるから、迎えに行けってさ」

     環奈は少し驚いた。
     ——上役って誰のこと?

     考え込んでいると、少女がふと口を開いた。

     「オレはリン。あんたはなんてぇの?」

     環奈は、少し戸惑いながらも答える。

     「……環奈」

     リンは、ふーん、と鼻を鳴らした。

     「……環奈、ねぇ……」

     その言い方に、環奈はなんとなく気恥ずかしさを覚える。

  • 164湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 15:19:34

     そのうち、たらい舟は湯屋の巨大な基礎のあたりに増設された、木製の桟橋へとたどり着いた。

     リンは手際よく舟を桟橋に寄せると、環奈に振り返る。

     「降りな」

     そう言って、ひょいっと先に桟橋へと飛び降りた。

     環奈も続こうとするが、舟はぐらりと揺れる。
     必死にバランスを取りながら、ようやく桟橋に降り立つ。

     目の前には、巨大な構造物がそびえ立っていた。
     煙突の根元に繋がる、巨大な煙管の基盤近く。
     その脇には、いくつもの高い段差やハシゴ、階段が張り巡らされている。
     リンは何の躊躇もなく、それをひょいひょいと軽やかに登っていった。

     「早く来いよ」

     上からそう急かされる。

     環奈も慌てて後に続くが——

     「(……た、高い……!)」

     リンのように身軽に動けず、段差を上るのに手こずる。
     足が滑り、何度もずり落ちそうになった。

     上からそれを見ていたリンが、ふと動きを止める。
     環奈を見下ろしながら、ぼんやりと、誰かを思い出しているような顔をしていた。

  • 165湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 15:41:35

     建物の中はひんやりと薄暗かった。
     リンが先頭を歩き、環奈はその後をついていく。
     静かな通路には、古びた木の匂いが漂っていた。

     環奈は少し躊躇しながら、口を開いた。

     「……私、上の方にある橋を渡りたいの」

     リンはちらっと振り返る。

     「冗談じゃねえ。お前、湯婆婆に会うんだろ」

     「え……?」

     環奈は一瞬、きょとんとした。

     「ううん、私、町の方にあるお店に行くつもりなの」

     その言葉に、リンは「はあ?」と素っ頓狂な声を上げ、ぴたりと足を止めた。
     環奈も立ち止まり、戸惑いながらリンを見上げる。

     どうやら、二人の間で認識のズレがあるらしい。

  • 166湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 15:42:08

     リンは眉をひそめると、手を腰に当て、環奈を睨むように見つめた。

     「店なんかで何するんだよ?」

     「……謝りに行くの」

     「謝りにって……お前、何したのさ?」

     環奈は少し気まずそうに、視線を落とした。

     「……神様のご飯、つい食べそうになったの……」

     リンは、一瞬沈黙した。
     そして、呆れたように眉を寄せ、額を押さえる。

     「……お前なぁ……なんてことしてんだよ……」

     リンは、ただ「人間の娘を主のところへ連れてこい」と言われていた。
     けれど、当の本人はそのつもりがないらしい。

     「さて、どうしたもんかね……」

     リンは深いため息をつき、少し考え込んだ。

  • 167湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 15:42:48

    (さて、どうしましょう >>168 から >170 でダイス)

  • 168二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 16:09:50

    自分も行くと言うリン
    どうやら彼女がかつて友人だった千尋と重なってしまったようだ

  • 169二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 16:14:11

    一体何があったのかもっと詳しい話を聞いてみる

  • 170二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 16:22:48

    まぁいいか、寄り道させるなとは言われてないし

  • 171湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 16:23:42

    1. >>168

    2. >>169

    3. >>170

    dice1d3=2 (2)

  • 172湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 16:42:38

     「なぁ、何があったのか、もっと詳しく聞かせてくれよ。」

     環奈は一瞬、ためらった。
     けれど、ここで黙っていても仕方がない。

     環奈は、小さく息をついて、口を開いた。

     「……うん。昨日、学校から帰ってる途中、森の中に寄ったの。そしたら……」

     環奈は、好奇心のままに、トンネルを抜けてしまったこと。
     気がつけば見知らぬ町にたどり着いていたこと。
     店に並ぶ料理に何気なく手を伸ばし、銭婆に止められたこと。
     それから、銭婆の家へ連れて行かれたこと。
     湯婆婆が自分を追って、直接銭婆の元へ乗り込んできたこと。
     結果として、ひとりで町に来ることを条件に、店の人に謝りに行く約束をさせられたこと——

     できる限り包み隠さず、すべてを話した。

     話し終えると、ふぅ、と息をつく。

     リンは、それまで何も言わずに環奈の話を聞いていた。
     壁にもたれ、腕を組んだまま、じっと考え込んでいる。

     環奈は、その表情を探るようにリンの顔を見上げた。

  • 173湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 16:44:05

    (リンにすべてを、銭婆から千尋のことを聞いたことも話した上で、もう一度安価&ダイスです。 >>174 から >>176 )

  • 174二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 17:07:41

    よく湯婆婆にころされなかったなと驚き感心し、環奈を手助けしてみたくなった

  • 175二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 17:09:02

    このレスは削除されています

  • 176二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 17:18:07

    自分も千尋と知り合いだったことを話して、困ったことがあったら何でも言うように励ます

  • 177二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 17:18:37

    お店のオーナー的な存在が湯婆婆ということを説明する

  • 178湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 17:28:23

    >>174

    >>176

    dice1d2=2 (2)

  • 179湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 17:35:39

     沈黙が続いた後、リンはふっと口角を上げた。

     「オレも千尋とは知り合いだったんだ」

     「えっ?」

     環奈は驚いてリンを見上げる。

     「あいつ、一見ドンくさいけど、なかなか根性あってさ。今ごろ元気にしてっかな……」

     どこか懐かしそうな口調で言うリンの表情は、少し柔らかかった。

     「お前のおかげで、あいつのこと思い出せたよ」

     そう言うと、リンはニッと笑い、環奈の肩をぽんっと叩く。

     「困ったら何でも言いな。手貸すから」

     その言葉に、環奈の胸が少しだけ軽くなった。

     「……ありがとう。」

     環奈は小さく微笑んだ。

  • 180湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 17:36:01

     すると、リンは腕を組み、軽く肩をすくめる。

     「さてと。そういうことなら橋まで連れてってやるよ」

     環奈の目がぱちっと見開く。

     「いいの?」

     「おう、別に寄り道させるとは言われてねーし」

     リンが得意げに笑うと、環奈も思わず、ふっと小さく笑った。

     張り詰めていた空気が、少しだけ和らいだ気がした。

  • 181湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 17:38:04

    (もう少し環奈に試練を与えたいですね… dice1d4=2 (2) )


    1. 湯婆婆の魔法が環奈とリンを捕らえる

    2. 青蛙「人間だ!!人間がいる!」

    3. 湯婆婆の手の者(オリキャラ)が現れる

    4. 安価&ダイス

  • 182湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:02:48

     「人間だ!!」

     突然の叫び声が、通路に響き渡った。
     環奈はビクッとして振り向く。

     青い着物を着た緑色のカエルが、環奈を指さしてポカンと口を開けている。

     「人間がいる!人間がいるぞ!」

     カエルは叫びながら、ぴょんぴょん跳ね、曲がり角へと消えていく。

     「やべぇ……!」

     リンが舌打ちし、カエルを追いかけようと駆け出す。

     「おい!待て、カエル!!」

     だが、すぐに足を止め、拳をぎゅっと握りしめる。

     「……あいつのこった、すぐ湯屋中に広まるぞ」

     険しい表情で振り向き、環奈を真剣な目で見つめる。

     「環奈、急ぐぞ!」

     環奈は緊張しながらも、大きく頷いた。

     「う、うん!」

     リンが走り出し、環奈もその後に続く。

  • 183湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:03:35

     通路を駆け抜け、潜り戸をくぐると——そこはボイラー室だった。
     熱気が充満し、機械の作動音が響いている。
     番台の上では、やたらと腕の多い男が忙しそうに作業をしていた。

     環奈は思わず息を呑む。

     「(な、何あの人……!?)」

     立ち止まりそうになったが——

     「こっちだ!早く!!」

     リンが小声で急かす。
     環奈は慌てて足を動かし、大急ぎで奥の通路へと駆け込んだ。

     その気配に気がついた腕の多い男は、ゆっくりと振り向く。
     男は、慌ただしく駆けていく環奈の背中を見つめると、禿頭を掻いた。

  • 184湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:21:25

     リンは通路奥の扉を勢いよく開ける。
     リンが先に外へ飛び出し、環奈もすぐに後を追った。

     環奈の目に飛び込んできたのは——湯屋の外壁沿いに伸びる長い長い、急な階段。

     環奈は呆然とした。
     高い。あまりに高すぎる。

     リンは階段を見上げて、指し示す。

     「これを登ったら庭に出る!そこの勝手口を抜ければ、橋だぞ!」

     環奈はぽかんと口を開いて、果てしなく続く階段を見つめていた。

     「……こんなの、登れるの……?」

  • 185湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:21:59

     脚がすくむ。
     そんな環奈の背中を、バン!とリンが叩いた。

     「わあっ!?」

     「しっかりしろ!ぐずぐずしてる暇なんかねぇぞ!」

     リンが強引に手を引き、環奈は半ば引っ張られるようにして階段を登り始めた。

     ギシギシ、ギシギシ——

     木製の踏板が軋む。

     環奈は必死に足を動かしながら、どんどん高くなる視界に恐怖を覚える。

     「(やばいやばいやばい……!)」

     息がどんどん荒くなる。
     脚が震え、汗が背中に滲む。

     ——それでも、リンに引かれながら、なんとか頂上へたどり着いた。

  • 186湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:30:28

     二人は壁に埋め込まれた扉をくぐり、湯屋の庭の植え込みの背後を、身をかがめながら駆け抜けた。
     奥の塀に小さな木戸が見える。

     ——あそこを潜れば、橋に出られる!

     環奈は荒い息をつきながら、必死に走った。

     木戸の手前で、リンが立ち止まり、環奈を振り返る。

     「後は行けるな?」

     環奈は肩で息をしながらも、しっかりと頷いた。

     リンは満足げにニッと笑い、環奈の肩をポンッと叩く。

     「じゃ、頑張れよ!」

     「うんっ!」

     環奈は一瞬、リンの顔を見つめた後、木戸を押し開け、くぐり抜けた。

  • 187湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:32:09

     そこは——湯屋の玄関前だった。

     左手には、紫色の暖簾を掲げた入口。そして、右手には——朱塗りの橋。

     環奈は一心不乱に走り出した。
     橋の上を駆け抜けるたびに、足音が響く。
     向こう側の陸地がすぐそこに迫る。

     ——あと少し。あと少しで、この湯屋から逃げられる——!

     環奈が橋の終わりに手を伸ばし、陸地へ足を踏み入れようとした、その直前——

  • 188湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 18:32:59

    (スレ主はね、環奈ちゃんを湯屋の荒波に揉まれさせたいんですよ(黒い笑み) >>189 から >>191 でダイス)

  • 189二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 18:36:29

    踏み出した瞬間風景が一瞬で室内(湯婆婆の私室)に代わる。
    「いらっしゃい。ようこそ、あたしの湯屋へ」と、意地悪な笑みを浮かべた湯婆婆がそこに立っていた。

  • 190二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:17:29

    坊が手を貸してくれた

  • 191二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:22:12

    このレスは削除されています

  • 192湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 19:23:10

    1. >>189

    2. >>190

    3. >>191

    dice1d3=3 (3)

  • 193二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:23:57

    湯婆婆の部屋の前まで見えない力でひっぱられる
    「ノックはいらないよ」

  • 194湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 19:24:09

    (再安価 >>189 から >>196 でダイス)

  • 195二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:24:45
  • 196二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:26:55

    へたりこんでいると坊が来て手を貸してくれた
    「また迷子か?」

  • 197湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 19:27:33

    1. >>189

    2. >>190

    3. >>193

    4. >>195

    5. >>196

    dice1d5=2 (2)

  • 198湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 19:29:16

    (坊は具体的に、どんな風に手を貸しますか? >>199 から >>201 でダイス)

  • 199二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:45:01

    疲れきって倒れた環奈を心配して自分の部屋まで連れていこうとする

  • 200二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:49:15

    何故か急に橋が崩れだし落ちそうになるところを坊が引き上げてくれた

  • 201二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 19:59:21

    >>189のような展開になって約束を反故にしたと詰め寄る湯婆婆をまた意地悪して怖がらせるようなことをしたんじゃないのかと環奈の肩を持つ

  • 202湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 20:00:01

    1. >>199

    2. >>200

    3. >>201

    dice1d3=2 (2)

  • 203湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 20:39:10

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23868938

    Pixivに一部、編集したものを載せました。

    ちゃんとスレ主本人ですよ?

  • 204湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 20:42:03

     突然、環奈の足がふっと滑った。

     「わっ——!」

     次の瞬間、環奈の体は橋の上に倒れ込んでいた。

     「ぶへっ!!………いったぁ〜……」

     それだけではない。——何かが、自分の脚を引っ張っているような力を感じる。

     環奈はうつ伏せのまま、恐る恐る振り向いた。そして——青ざめる。

     橋が、真ん中で折れていた。
     自分のいる側は、ゆっくりと傾き始めている。

     「えっ……嘘……!」

     ずるずると滑っていく環奈。止まらない——!

     「いやっ!いやぁぁぁ!!」

     パニックになって、必死に橋の床を掴もうとするが、手は空を切る。
     足も宙を蹴るばかりで、どんどん下へ引きずられていく。

     そして——折れた橋の先端まで滑り落ちた。

     もうダメ——!

     環奈は最後の瞬間、目をぎゅっと固く瞑った。
     ——その時。

  • 205湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 20:42:48

     「ほいっ」

     突然、首根っこを掴まれる。ふわりと宙に浮く感覚。

     「(えっ……?)」

     環奈は恐る恐る目を開けた。

     目の前に現れたのは——赤い腹掛けだけを身につけた、巨大な赤ん坊の顔だった。
     片手で軽々と環奈を持ち上げ、じっと見つめている。

     「お前、迷子か?」

     環奈は答えることができない。驚きと恐怖、そして極度の疲労が一気に押し寄せ——

     意識が、すとんと途切れた。

  • 206二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 20:43:12

    このレスは削除されています

  • 207湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 20:44:52
  • 208二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 21:06:20

    おつです

  • 209湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:24:10

     まぶたの裏に柔らかな光が差し込む。
     頬に触れるのは、柔らかい枕の感触。

     環奈は、ゆっくりと意識を取り戻した。

     「……え?」

     ゆっくりと目を開けると、そこは、見たこともない豪華なベッドの中だった。

     カーテンが付いた天蓋付きのベッド。
     ふかふかの枕に、温かい掛け布団。
     周りには、大きなぬいぐるみがいくつも置かれている。

     環奈は困惑しながら、カーテンの開いている部分から部屋の全体像を見渡した。

     ——まるで、絵本の中の世界のようだった。
     壁一面には、雄大な山と草原、果てしない青空が描かれている。

     床は、硬い板ではなく、一面が柔らかなクッションで舗装されていた。

     さらに、ぬいぐるみや菓子の箱、カラフルなプレゼントがあちこちに山積みになっている。

     「(ここ……どこ?)」

     環奈は戸惑いながら、ゆっくりと掛け布団を剥がした。

     すると——

  • 210湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:25:35

     「お前、起きたか」

     ぶっきらぼうな声が響いた。

     環奈がはっとすると——さっきの巨大な赤ん坊が、ベッドをぬうっと覗き込んできた。

     「ひっ……!」

     環奈は思わず身構えた。

     「あなた……誰? ここはどこ……?」

     恐る恐る尋ねると、赤ん坊はむっつりとした表情を崩さずに答える。

     「坊のお部屋だぞ」

  • 211湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:46:35

     環奈は、目の前の巨大な赤ん坊——坊を見上げたまま、呆気にとられていた。

     すると、坊はふいに言った。

     「お前、バーバに殺されるとこだったんだぞ」

     環奈は、はっと息をのむ。

     「(……バーバ? 湯婆婆のこと?)」

     ——つまり、この子が私を助けてくれた?
     じわじわと実感が湧いてきて、環奈は少しだけ視線を落とし、小さく呟いた。

     「……ありがとう」

     とはいえ、それで坊を完全に信用したわけではなかった。

     ——その時だった。

  • 212湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:46:50

     フワッ……

     部屋の奥にかかった赤いカーテンが、突然開かれた。

     そこに現れたのは——湯婆婆。

     「ひっ!!」

     環奈は反射的に、身を縮こまらせた。

     しかし、湯婆婆は環奈には目もくれず、坊の方へと歩み寄ると、まるで別人のような猫撫で声を出した。

     「坊〜、人間の小娘で遊んでるのかい?ええ?」

     環奈は呆然とした。

     「(……え? 何、このギャップ……?)」

     最初に会った時は、あんなに恐ろしく威圧的だったのに——
     今はまるで、孫に甘々な祖母のような態度だった。
     湯婆婆は坊の巨体をペタペタと撫で、愛おしそうに可愛がる。

     「よちよち、可愛い坊〜」

     「キャッキャッ!」

     坊は機嫌よく笑っている。

     環奈は、なんとも言えない表情でその様子を見つめた。

  • 213湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:48:03

     しかし次の瞬間、湯婆婆の視線が環奈へと向けられた。
     ——ギロリ。

     環奈はビクリと肩をすくめ、思わず掛け布団を引き寄せる。

     「坊や、ちょーっとだけこの子を借りるよ?」

     湯婆婆は坊に優しく微笑みかける。坊はむっつりと頷いた。

     その瞬間——

     ふわっ……!

     環奈の体が、魔法の力で宙に浮いた。

     「えっ、ちょっ……!」

     環奈は慌てて手足をバタつかせるが、抵抗する間もなく、湯婆婆の方へと手繰り寄せられる。

     「いやっ!降ろして……!」

     必死にもがく環奈を意に介さず、湯婆婆はそのまま部屋の外へ連れて行こうとする——

  • 214湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 21:48:38

     その時、坊が突然、湯婆婆を呼び止めた。

     「バーバ」

     湯婆婆の動きがぴたりと止まる。

     坊は、じっと湯婆婆を見つめながら、はっきりと言った。

     「そいついじめたら、坊、バーバのこと嫌いになっちゃうからね」

     湯婆婆の顔がギョッと引きつる。そして、すぐに取り繕うように笑った。

     「そんなことするもんか。さあ、いい子だから少しお休み〜」

     そう言いながら、なおも浮かせた環奈を引き連れ、部屋の外へと向かう。

     環奈は、坊をちらりと振り返った。

     「(……この子、一体何者なの?)」

     環奈の疑問は膨らむばかりだった。

  • 215湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:07:03

     カーテンの向こうは、湯婆婆の私室だった。
     部屋の奥では暖炉の火が赤々と燃え、その揺らめく炎が、豪華絢爛な家具や絨毯を不気味に照らし出していた。

     湯婆婆はゆっくりとデスクの椅子に腰を下ろし、環奈を部屋の中央までスゥーッと移動させると、その手をひと振りする。

     その瞬間——宙に浮いていた環奈の体が、絨毯の上にべしゃっと落とされた。

     「うわっ……!」

     尻もちをつき、思わず顔をしかめる。
     物のように扱われたことに、環奈は不愉快そうに立ち上がった。
     ——その時。

  • 216湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:07:16

     「オイ、オイ、オイ」
     
     どこからともなく、謎の生き物が跳ねたり転がったりしながら近づいてきた。

     環奈は息を呑む。
     緑色の肌、大きく見開いた眼、髭を生やした頭部だけの生き物——それが三体。

     「オイ、オイ、オイ」

     単調に繰り返される鳴き声が、余計に不気味さを際立たせる。

     「こ、来ないで……!」

     環奈は思わず後ずさる。

     しかし、湯婆婆が舌打ち混じりに言い放った。

     「うるさいねぇ、静かにしておくれ」

     その声に、頭たちはピタッと動きを止める。そして、大人しく湯婆婆の足元へ転がっていった。

     環奈は、背筋をぞくりとさせながら、それを見つめる。

     ——なんなの、この部屋……

  • 217湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:18:32

     ふと視線を戻すと、湯婆婆は指を一本立てていた。
     指先から、ぽっ……と蝋燭のような火が灯る。その火を、タバコの先へと近づけて移すと、湯婆婆はそれを深く吸い込んだ。
     そして、鼻から煙を吐き出しながら——じっと、環奈を見つめた。

     「初めは盗み食い、お次は無断侵入ときたもんだ」

     ゆっくりと、含み笑いを浮かべながら語り出す。

     「人間が入り込んだと騒ぎになって、お客様からひどく不興を買ったんだよ?こちとら八百万の神様たちのために商売をしてるんだ。そこにお前みたいな小娘が入り込んでは、あれこれ粗相をする。一体どう責任を取ってくれるんだい?」

     環奈は、じっと黙って聞いていた。
     だが——その小さな肩が、ふるふると震えだす。

     湯婆婆は一瞬、環奈が怯えているのかと思った。
     ——しかし、それは違った。

     環奈は、怒りを抑えきれず震えていたのだ。
     拳をぎゅっと握りしめ、湯婆婆を睨みつけると——

     「……嘘つき」

     震えた声で、はっきりとそう言い放った。

  • 218湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:27:07

     湯婆婆の顔がピクリとこわばる。目の奥に鋭い光が宿り、環奈をじろりと睨んだ。

     しかし、環奈はもう怯えなかった。堰を切ったようにまくしたて始める。

     「嘘つき! 嘘つき!!私、ちゃんとお店に謝りに行こうとした!一人で電車に乗って、ここまで来た!!なのに、なんでこんなことするの!?」

     環奈の声は震えていた。それでも止まらない。

     「この嘘つき!ずるっこ!卑怯もん!!」

     目には、悔しさの涙がうっすらと滲んでいた。

     その瞬間——
     湯婆婆は、タバコを持つ手を宙に滑らせる。

     ——ビィィッ!!

     環奈の口が、まるでジッパーのように端から閉じた。

     「……っ!?~~~~!!」

     環奈はくぐもった声を漏らしながら、慌てて頬をグニグニと動かす。しかし、何をしても口は開かない。

     ——フワァッ……!

     突然、湯婆婆の体が浮き上がる。そのまま空中を勢いよく移動し——環奈の正面で、バサッとドレスをなびかせながら着地した。

     ほとんどくっつきそうな距離で、湯婆婆の大きな目が環奈をギョロギョロと睨みつける。
     環奈は思わず息を止めた。

  • 219湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:27:55

    (環奈にこう言わせてみたかった。

    湯婆婆の次の言動 >>220 から >>222 でダイス)

  • 220二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 22:40:07

    お前には二つの道がある
    ひとつは店での無銭飲食と不法侵入の償いをすること
    もうひとつは昨日言った通り子ブタになることだ

  • 221二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 22:45:03

    「誰が嘘つきだって?」と環奈を片手で持ち上げながら怒鳴る。
    「盗み食い・無断侵入・騒ぎを起こして迷惑を掛ける、何処に嘘があるんだい!!
     お店に謝罪だか何だか、先ずはあたしの所に来るよう昨日言ったじゃないかい!
     約束を違えているのはお前だろうが!ええ!!」
    とまくし立てる。

  • 222二次元好きの匿名さん25/01/22(ć°´) 22:49:52

    姉のアズカリだろうが坊のお気に入りだろうがもうどうでもいい
    お前を鶏に変えるだけだ!

  • 223湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 22:50:34

    1. >>220

    2. >>221

    3. >>222

    dice1d3=3 (3)

  • 224湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:05:02

     「まったく、どこまでも生意気な小娘だよ!!お前みたいな人間がいるだけで、こっちは迷惑してるんだ!!」

     湯婆婆は鬼の形相で叫んだ。

     「お前みたいな、見るからにグズで、弱虫で、世間知らずの、頭が悪い娘なんかとの約束を守る義理なんて、あたしにはないさね!!」
     
     環奈の顔から、じわじわと血の気が引いていく。

     湯婆婆はぜいぜいと息を吐きながら、最後に吐き捨てるように言った。

     「姉のアズカリだろうが、坊のお気に入りだろうが、もうどうだっていい!お前を鶏に変えるだけだよ!!」

     ——鶏!?

     環奈の心臓が跳ね上がった。

     湯婆婆は鋭い笑みを浮かべる。

     「鶏になったら、死ぬまで卵を産み続けるんだよ! ハッハッハ……!!」

     湯婆婆の笑い声が部屋に響く。
     環奈は全身がこわばり、呼吸すら浅くなる。

     「(やばい……!)」

  • 225湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:05:20

     湯婆婆は、ふと笑いを収めると、ニヤリと唇を歪めた。

     「せめてもの情けだ。最後に何か言い残すことはないかい?」

     そう言うと、片手を宙に滑らせる。

     ——ビィィッ!

     環奈の口の封印が解けた。

     「っ——!はぁっ……!はぁっ……!」

     自由になった瞬間、環奈は肩で息をしながら、思考をぐるぐると巡らせる。

     ——どうすれば助かる?この状況をひっくり返す方法は——?
     
     いやだ。怖い。誰か。助けて。

     頭が真っ白になりつつある中——環奈の脳裏に、銭婆の言葉がよみがえった。

     『湯婆婆は、相手が「働かせてほしい」と頼んだ場合、どんな相手であろうと断れない——』

     「…………!!」

     環奈は意を決して、声を張り上げた。

     「ここで働かせて!!」

  • 226湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:44:08

     部屋の空気が、ピタリと静まった。

     「……はぁ?」

     環奈の意外な返答に、湯婆婆は一瞬、呆気にとられたように目を見開く。
     しかし、すぐにハッと我に返ると、険しい顔で吐き捨てた。

     「お断りだね!!お前なんかに何ができるっていうんだい!?これ以上この店に穀潰しを増やしてなるものか!!」

     環奈は、怯まなかった。
     ——すでに覚悟は決まっていた。

     「ここで働かせて!!それで埋め合わせをする!!」

     「お黙りぃ!!」

     湯婆婆の声が部屋中に響き渡る。

     「そんなに働きたいのなら、一番つらーい、きつーい仕事を死ぬまでやらせてやるよ!?それでもいいのかい!!」

     「いい!!ここで働かせて!!お願い!!」

     環奈は前のめりになり、必死に叫ぶ。
     湯婆婆と額がつきそうなほどに——真っ直ぐな視線をぶつけながら、強く訴えた。

  • 227湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:44:22

     「だァ~~まァ~~れェ~~!!!」

     ——ゴオォォッ!!

     湯婆婆の怒声が、部屋の空気を震わせる。
     その瞬間、周囲に風が巻き起こった。デスクの上の書類が一斉に宙を舞う。

     環奈の髪が、強風にあおられ、舞い上がった。

     それでも——環奈はぐっと足を踏ん張り、必死に耐える。

  • 228湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:45:05

    (この場を収めるのは dice1d2=1 (1) )


    1. 坊

    2. ハクポジションのオリキャラ

  • 229湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:45:40

    (オリキャラ、全然出ないなぁ……w)

  • 230湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/22(ć°´) 23:58:58

     「バーバ!」

     突然、坊の大きな声が響いた。

     湯婆婆はハッとして魔力を引っ込め、振り返った。吹き荒れていた風が、ピタリと鎮まる。
     環奈も、その声に気づいて視線を向ける。

     坊が、のしのしと歩いてくる。
     巨大な体を揺らしながら湯婆婆のそばに立ち、二人を見下ろした。
     そして、むっつりした表情のまま、静かに言う。

     「そいつのこと、いじめてたでしょ?ダメだよ」

     湯婆婆の顔がピクリと引きつる。

     「な、なに言ってるんだい、坊!そんなことするもんかい!」

     オロオロと手を振りながら、坊の機嫌を取るように笑う。

     「バーバは、この子にと~~っても優しいんだよ?だから、バーバのこと、嫌いにならないでおくれ……」

     湯婆婆は坊の腕を撫でながら、必死に媚びるような声を出す。

     その様子を見て、環奈は若干呆れたようにため息をついた。

     「(……さっきまであんなに怖かったのに)」

  • 231湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:04:38

     しばらく坊に夢中になっていた湯婆婆だったが、ふと環奈の存在を思い出したように振り返る。
     そして、鼻を鳴らした。

     「フン……千の時といい、つまらない誓いを立てちまったもんだよ」

     そう言いながら、床に散らばっていた書類のうちの一枚を、指先の魔法でスゥーッと宙に浮かせる。
     さらに、一緒にペンも宙へ浮かび、環奈の前へと滑るように飛んできた。

     環奈は驚きながらも、それらを受け取る。

     「契約書だよ」

     湯婆婆は、環奈を睨みながら言った。

     「そこに名前を書きな。働かせてやる。その代わり、うんとこき使ってやるからね」

     環奈は無言で頷いた。
     ゆっくりと視線を落とし、書く場所を探す。デスクは湯婆婆の目の前にあり、ここで書くのは気が引けた。

     「(……どこか落ち着いて書ける場所……)」

     そう考え、環奈は暖炉の方へと歩いていく。
     赤々と燃える炎の前でしゃがみ込み、契約書をそっと石床の上に広げた。

     環奈は、少しだけ息を整え、ペンを握る。

     そして——ゆっくりと、自分の名前を書き始めた。

  • 232湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:06:25

     最後の一画を引いた、その瞬間——

     ヒュッ……!

     「えっ——?」

     突然、環奈の手と床の間から、契約書が勝手に抜け出した。まるで風に吹かれたように、ひとりでに宙を舞う。

     環奈は驚いて手を伸ばそうとしたが、契約書はそのまま一直線に湯婆婆の手元へと飛んでいった。
     湯婆婆は、それをひったくるように掴み、目を細めながら書かれた名前を確認する。

  • 233湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:10:13

     「フン、汚い字だね。環奈というのかい」

     湯婆婆は鼻を鳴らしながら呟くと、環奈の署名の上に片手をかざした。
     そのまま、指を軽く動かすと——

     ペリ……ペリリ……

     『白』『石』『奈』の三文字が、まるで剥がれるようにふわりと浮き上がる。
     それらは湯婆婆の手のひらへと吸い込まれ、ギュッ! と握りつぶされた。

     「えっ……?」

     環奈は目を見開く。

     「(今……何が……?)」

  • 234湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:10:24

     湯婆婆は顔を上げ、環奈をギョロリと見据えながら告げた。

     「今からお前の名は——環(たまき)だ」

     「……え?」

     環奈は、当惑して湯婆婆を見つめる。

     環? 私の名前は環奈なのに——

     「いいかい、環だよ。わかったら返事をしな!環!」

     強い口調で命じられ、環奈は思わず背筋を伸ばした。

     「ハ……ハイ」

     それを聞いた湯婆婆は、満足そうに頷いた。

     環奈は、自分の名前が変えられたという現実を、まだうまく飲み込めずにいた——

  • 235湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:12:35

    (湯婆婆「さて……お前をカエルとナメクジに引き合わせないとね。 dice1d3=1 (1) にやらせよう」)


    1.ハクっぽいオリキャラ

    2.爜彚

    3.安価

  • 236湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:13:54

    (やっと出ましたオリキャラ……←

    安価 >>237 から >>240 を組み合わせて、容姿や第一印象を決めます。)

  • 237湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:16:31

    (一旦ストップ。性別は dice1d2=2 (2) )


    1.少年

    2.少女

  • 238湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 00:17:35

    (湯婆婆から与えられている名前、容姿、服装、第一印象など、 >>239 から >>242 で募ります。)

  • 239二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 00:22:38

    アン
    環奈と同じくらいの年齢で、白いセミショートヘアをした碧眼の少女
    薄い赤色の作業着を着ている
    快活で人懐っこい感じ

  • 240二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 00:22:55

    名前 紅(こう)
    容姿 腰まで延びた美しい黒髪が印象的な美少女
    服装 ハクの服をベースに、血で染めたような赤黒い色合いの花吹雪がデザインされている。
       だが違和感も不潔感も感じ無いない。
    第一印象 怖そうだけど美人だなぁ

  • 241二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 00:42:23

    名前 クロ
    容姿 浅黒い肌の少女で眼と髪は茶色がかった黒色、犬耳
    服装 薄茶色の作務衣
    第一印象 やたら元気いっぱいだ

  • 242二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 01:00:22

    名前 ミドリ
    容姿 金髪を三つ編みにしている西洋人形の様な風貌の美少女。眼は緑色
    外見年齢は環よりも少し上な感じ
    服装 白いメイド服
    第一印象 礼儀正しいけど堅苦しい

  • 243湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 03:45:22

    (むむむ……どれも素晴らしい設定なので、全採用したいのはやまやまですが……

    とりあえずベースとなるキャラデザはダイス神に……)


    1. >>239

    2. >>240

    3. >>241

    4. >>242

    dice1d4=1 (1)

  • 244二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 04:14:15

    このレスは削除されています

  • 245湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 04:16:24

    アン


    髪型・眼の色・外見年齢 >>239

    第一印象 >>240

    髪色 >>241

    服装 >>242

  • 246二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 08:51:29

    いい感じにまとまった感じ

  • 247湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 09:44:40

     湯婆婆は、部屋の隅に吊るされた呼び鈴の紐を引いた。

     チリリーン……

     透き通るような鈴の音が響く。その直後——

     奥にある両扉が、ひとりでにゆっくりと開いた。
     開いた扉の向こうから、一人の少女が静かに歩み出る。

     茶色がかった黒色の短い髪、澄んだ青い目。
     服装は、まるでメイドが着るような白い服。
     歳の頃は、環奈と同じくらいに見えた。

     少女は、無表情のまま湯婆婆の前に立つと、静かに一礼する。

     「ご主人様、ご用件をどうぞ」

  • 248湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 09:45:14

     湯婆婆は散らばった書類を魔法で拾い集めながら、少女に命じる。

     「アン、今日からその子が働くよ。環だ。カエルとナメクジたちのところに連れておいき」

     「承知しました」

     アンと呼ばれた少女は、深く頭を下げると、環奈に視線を向ける。

     「ついてきなさい」

     環奈は少し緊張しながら、小さく頷いた。

     扉へと向かおうとした時——

     「(あっ……!)」

     ふと、ランドセルのことを思い出す。
     銭婆からもらった御札も、自分の名前が書かれたものも、全部あの中に入っているのに——

  • 249湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 09:45:30

     「待って……! 私の荷物……」

     環奈が不安げに言うと、アンは振り返り、淡々と答えた。

     「後で届けに行くわ。それよりも早く」

     荷物のことなど気にするな、と言わんばかりの冷静な口調。
     環奈は一瞬ためらったが、それ以上言っても無駄そうだと悟る。

     仕方なく、アンの後を追い、扉へ向かおうとした——その時。
     アンが足を止め、環奈をじっと見つめる。

     「お二人にご挨拶は?」

     環奈はハッとした。
     急いで湯婆婆と坊の方を振り返り、深く会釈する。

     湯婆婆が、つまらなさそうに鼻を鳴らす一方、坊は小さく微笑んで、片手をひらひらと振った。

     環奈はアンに振り返ると、後に続き、扉の向こうへと足を踏み出した。

  • 250湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 10:23:30

     二人は、薄暗い豪華な通路を進んでいった。
     壁には緻密な装飾が施され、床には厚みのある絨毯が敷かれている。
     両側には、金箔の台座に載せられた巨大な焼物がいくつも飾られていた。
     まるで王宮のような空間だった。

     通路には一定の間隔で、大きな扉が何重にも設けられている。
     ——だが、それらは、アンが近づくたびに、ひとりでに開いた。

     ギィィ……

     重厚な扉が、まるで生きているかのようにゆっくりと開き、二人が通ると、また静かに閉じる。

     環奈は圧倒されながらも、無言でアンの後をついていった。

     ——そして、最後の扉にたどり着く。

     その扉は、他のものとは違い、まるで自動ドアのように左右へスッと開いた。

     「エレベーターよ。乗って」

     アンがそう言うと、環奈は少し戸惑いながらも、その後に続いて乗り込んだ。

     アンは隅にあるレバーを下に引く。

     ガコンッ!

     エレベーターの扉が滑らかに閉じ、ゆっくりと下降を始めた。

  • 251湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 10:23:57

     ゴウン……ゴウン……

     狭い個室の中、機械の駆動音だけが響く。

     沈黙が続いた後——アンがふと口を開いた。

     「今夜はもう消灯時間が近いから、あなたの仕事は明日からよ。まずは、従業員の居住区に慣れなさい」

     環奈は、その言葉に小さく頷いた。

     ——それでも、湯屋のこと、坊のこと、この少女のこと……
     聞きたいことは、山ほどあった。

     環奈は、少し躊躇しながらも、口を開こうとする——

  • 252湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 10:24:22

    (環奈の質問 >>253 から >>255 でダイス)

  • 253二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 11:00:29

    いつからここにいるのか

  • 254二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 11:01:16

    あなたも名前を取られたの?

  • 255二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 11:26:50

    アンがなぜここに来たのか

  • 256湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 11:34:00

    1. >>253

    2. >>254

    3. >>255

    dice1d3=2 (2)

  • 257湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:03:56

     「……あなたも、湯婆婆に名前を取られたの?」

     アンは、環奈の方を見ずにじっと前を向いたまま、しばらく沈黙した。
     やがて、静かに答える。

     「ここにいる者はみんなそうよ。初めから名前を持たない者も多いけど、そういうのは湯婆婆さまが名前をつけているわ」

     その言葉は、淡々とした響きだった。
     環奈は、その意味を考えようとしたが——

     ——ゴトン……

     エレベーターが止まり、扉が開いた。

     環奈は目を見開く。

     そこは——豪華な旅館のような空間だった。
     
     壁や襖、欄間、天井にいたるまで、さまざまな意匠が施されている。
     足元には、磨き上げられた木の床が広がり、まだほのかに湿り気を帯びていた。
     まるで、さっきまで大勢の客がいたような雰囲気だった。どこかに、宴の名残のような空気が漂っている。

     環奈は、アンに先導されるがまま、歩を進めた。

  • 258湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:05:16

     大浴場の巨大な空間。
     そこには、浴場の上をぐるりと囲むように回廊が架かっていた。

     環奈は、アンの後を追い、朱塗りの橋を渡る。
     橋の下には、もうもうと湯気が立ち込めていた。
     白くゆらめく湯気の中、温かな光を放つ照明がぼんやりと輝いている。
     その光が湯気に乱反射し、幻想的を光景を作り出していた。

     環奈は思わず立ち止まり、橋の欄干にそっと手を添え、下を見下ろす。

     いくつもの仕切りで区切られた浴場が広がっていた。
     それぞれの場所に大きな風呂釜が置かれ、まだ湯を湛えている。

     環奈は、温かな湯気に包まれながら、その異世界の景色に見入った。

  • 259湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:10:36

     「止まらないで」

     少し先を歩いていたアンが、静かに注意する。

     環奈はハッとして、急いでアンに駆け寄った。
     再び、二人で並んで歩き出す。

     いくつものエレベーターを乗り継いでいくと——
     周囲の景色が、次第にみすぼらしい空間へと変わっていった。

     華やかだった廊下はくすみ、装飾は少なくなり、やがて壁の塗装もひび割れたまま放置されるようになる。

     まるで、旅館の舞台裏——そこは、従業員の居住区だった。

  • 260湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:15:41

     湯屋の外壁に貼り付くように建て増しされた、バラックのような場所。

     床材は古く、環奈が足を踏み入れると、ギシギシと不安定な音を立てる。
     狭い廊下を抜け、内部中央の階段を下りていく。

     環奈は、下の空間を見て息を呑んだ。

     そこには——異形の男や女たちが集まっていた。

     太ったカエルのような男たち。
     ナメクジのように面長な女たち。
     彼らは、それぞれ洗濯物を干したり、物を運んだり、談笑したりしている。

     しかし——

     環奈とアンが階段を降りてきたことに気づくと、場の空気が、一瞬で凍りついた。

  • 261湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:15:59

     手を止め、口を閉ざし、環奈の方を見る異形たち。
     どこからともなく、ひそひそとした声が聞こえ始める。

     「……人間?……」

     「……青蛙が見たってやつか……?」

     その視線が、環奈の背中にじわりと重くのしかかる。

     「(息が詰まりそう……)」

     環奈は、ごくりと唾を飲み込んだ。

     そんな中、アンは階段を降り切ると、無表情のまま、その場にいる全員へ告げた。

     「みんな、よく聞きなさい。今日からここで働くことになった、環よ」

  • 262湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:16:49

    (父役/兄役をはじめとする、従業員たちの反応 >>263 から >>265 でダイス)

  • 263二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 12:25:16

    人間だと気付くと千尋の事を思い出し驚き興味を持つ

  • 264二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 12:27:34

    前にも人間が来たことがあったのでもう慣れた感じ

  • 265二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 12:47:04

    暖かく迎えてくれた

  • 266湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:50:50

    1. >>263

    2. >>264

    3. >>265

    dice1d3=3 (3)

  • 267湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 12:51:47

    (アンは、父役/兄役より立場が dice1d2=1 (1) )


    1.上

    2.下

  • 268湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:13:46

     アンの言葉が静かに響いた後、沈黙が続いた。
     誰もが環奈を見つめたまま、何も言わない。

     ——その沈黙を破ったのは、二人の男だった。
     彼らは、他のカエル男たちとは違い、どこか立派な身なりをしていた。

     先に口を開いたのは、ふくよかな体格の男だった。

     「かしこまりました、アン様。お引き受けいたしましょう」

     もう一人の男も、静かに続く。

     「リンに面倒を見させます。彼奴は小湯女たちの纏め役ですから」

     その言葉を聞いたリンは、少し離れたところで腕を組んでいたが、「はいよ」と、ぶっきらぼうに返事をした。

     環奈は、二人の男たちの話し方を聞きながら、ふと気づく。

     「(アンって、この店じゃ結構上の立場なの……?)」

     二人のカエル男は、彼女に対して明らかに敬意を払っているようだった。

  • 269湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:14:08

     すると、その場にいた他の従業員たちも、少しずつ空気を和らげていく。

     「よろしくねぇ」

     「頑張れよ、新入り!」

     ぽつぽつと、笑顔で声をかけ始める者たち。
     環奈は、一瞬驚いた表情を浮かべた。

     「(……思ったより、怖い人たちばかりじゃないのかも?)」

     異形たちの意外な反応に、ほんの少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。

  • 270湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:45:24

     「以上よ。おのおの部屋へ戻りなさい」

     アンが淡々と告げると、従業員たちは次々に解散していった。

     環奈は、その様子をぼんやりと見つめながら、ふとアンの方に目を向ける。
     彼女はすでに、階段を静かに登っていた。

     「(待って……!)」

     環奈は咄嗟に呼び止めようとした——その途端。

     「ようこそ!」

     突然、リンと同じピンク色の水干と袴を着た少女たちが3人、環奈の周りに集まってきた。
     一人が、にこにこと笑いながら言う。

     「来てくれて助かるよ。もう猫の手も借りたいくらいでさ!」

     もう一人が、環奈の肩を軽く叩いて自己紹介する。

     「あたい、クロってんだ」

     「あたしはミドリ。あんた、どこから来たの?」

     矢継ぎ早に話しかけられ、環奈はたじろぐ。

     「(えっ、ちょっと待って……!)」

     この世界に来てから、こんなに気さくに話しかけられたのは初めてかもしれない。
     どう返事をしたらいいのかわからず、戸惑っていると——

  • 271湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:45:47

     「はいはい、ストーップ!」

     リンが勢いよく手を叩きながら、やってきた。

     「お前ら、新入りにあんま押しかけんなって!びっくりしてんだろ?」

     そうたしなめると、少女たちは「はーい」と軽く答え、笑いながら退散していった。

     環奈は、やっと少し落ち着いて息をつく。

     リンはそんな環奈を見ると、軽く顎をしゃくった。

     「ついてきな。部屋まで連れてってやるよ」

  • 272湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:47:05

    (リンの次の言動 dice1d3=3 (3) )


    1. お前の名前、カンナじゃなかったっけ?

    2. お前、結局捕まっちまったんだな……

    3. 安価&ダイス

  • 273湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 13:47:40

    ( >>274 から >>276 でダイス)

  • 274二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 14:51:46
  • 275二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 14:54:11

    しっかりしろ
    お前はそんな名前じゃないだろ

  • 276二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 14:56:52

    環奈だろお前の名前は

  • 277湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 14:59:28

    1. >>274

    2. >>275

    3. >>276

    dice1d3=2 (2)

  • 278湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 15:50:37

     リンに案内されて着いたのは、畳敷きの大部屋だった。
     障子と畳の簡素な造りで、外の景色はガラス戸で仕切られている。
     しかし、外を見ると、月は雲に隠れ、辺りは真っ暗だった。

     リンが部屋の電灯の紐を引くと、ぽっと暖かな光が灯る。
     環奈は、その光をぼんやりと見つめた。

     「(……疲れた……)」

     湯婆婆とのやり取り、従業員たちの視線、リンたちとの会話——

     すべてが怒涛のように押し寄せ、気が抜けたようにぼうっとしてしまう。

     すると、いつの間にか正面にいたリンが、肩をポンっと叩いた。

     「しっかりしろよ」

     環奈は、はっとして顔を上げる。

     「(……何か、気に障ることしちゃった……?)」

  • 279湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 15:50:55

     当惑した表情を浮かべると、リンは小さくため息をつき、真剣な目で言った。

     「なんだよ、さっきの。お前、タマキなんて名前じゃなかったろ?」

     「えっ……?」

     環奈の眉がぴくりと動く。
     リンは腰に手を当て、少し呆れたように続けた。

     「カンナって、昼間自分で言ってたじゃねえか」

     ——その瞬間。
     環奈の中で、何かが引っかかった。

     「カンナ……?」

     そう口にした時、微かに違和感を覚える。

     「(……あれ?)」

     たしかに自分の名前は『白石環奈』だったはずなのに——

     今の今まで、自分の名前が環(タマキ)だと、疑いもなく思い込んでいた。

     「(どうして……?)」

     環奈は、背筋がひやりと冷えるのを感じた。

     相手の名前を奪って支配する——湯婆婆の力の恐ろしさを、改めて思い知る。

  • 280湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 15:51:56

     環奈は、ゆっくりとリンを見上げた。

     「……ありがとう、リン。私、環になりかけてた」

     「ああ。忘れねえようにカンナって呼んでやるからさ。湯婆婆なんかに、いいようにされんじゃねえぞ。」

     リンはニッと笑い、肩を軽くすくめた。

  • 281湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 15:52:45

    (その夜、環奈が見た夢 dice1d3=2 (2) が現れる )


    1.銭婆

    2.アン

    3.安価&ダイス

  • 282湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:39:12

     ——朝霧が、湯屋の建物を静かに包み込む早朝。
     空はまだ鈍く青白い。

     環奈が眠る大部屋には、他の湯女たちの布団が隙間なく敷き詰められていた。
     あちこちから、規則正しい寝息が聞こえる。
     明けきらぬ光が、ぼんやりと障子越しに差し込んでいた。

     環奈は、少しずつ意識が浮上していくのを感じた。

     「(……ここは……)」

     寝ぼけた頭で、ゴワゴワの布団の感触を確かめる。

     「(そうだ……私……)」

     硬い枕が首元にあたり、昨日の出来事をひとつひとつ思い出す。

     その時——掛け布団の端に、そっと誰かの手が触れる気配がした。

     「(……?)」

     まどろみの中、環奈は目を閉じたまま耳をすませる。

     すると——

  • 283湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:39:26

     「ボイラー室にいらっしゃい。待ってるわ」

     静かに響く、アンの声。
     環奈は、ぱちっと目を開いた。

     「……!」

     慌てて起き上がる。しかし——
     辺りを見回しても、アンの姿はどこにもなかった。

     「(……夢?)」

     環奈は、寝ぼけた頭を軽く振る。
     ひんやりとした朝の空気が肌に触れ、現実に引き戻されるようだった。

     「(……とにかく、支度しなきゃ)」

     環奈は、枕元に畳んで置かれていたピンクの水干と袴を手に取る。
     寝る前にリンが、明日からの仕事に備えて用意してくれたものだった。

     環奈は、小さく息を整え、ゆっくりと衣を身に纏い始めた。

  • 284湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:39:50

     吹き抜けの空間には、まだ誰の気配もなかった。
     白々とした朝の光が差し込み、ぼんやりと床を照らしている。

     その光の中——水干をまとった環奈が、ゆっくりと階段を降りていく。
     木の段差を踏むたび、足音が静かに響く。

     ——ボイラー室は、昨日リンと一緒に逃げる時に通り過ぎたのを覚えている。
     環奈は、その時の景色を思い出しながら、広い廊下をウロウロと進んだ。

     「(たしか、このあたりに……)」

     やがて——見覚えのある潜り戸を見つける。

     環奈は、小さく息を整え、その戸をそっと開けた。

  • 285湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:40:05

     ガラッ……

     そこは、やっぱりボイラー室だった。
     昨日燃えていた火は、すっかり落ちている。
     部屋には、もう熱気は感じられず、静かな空気が漂っていた。

     目を凝らすと、板間と土間の段差に腰をかけるアンの背中が見える。

     環奈が戸を閉めると、それに気づいたアンがゆっくりと振り向いた。

     「おはよう」

     そう言って、小さく微笑む。

     環奈は、少し戸惑いながらも、そっと言葉を返した。

     「……おはよう」

  • 286湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:40:36

     そして、アンの隣には——

     環奈のランドセルと、昨日坊の部屋で脱がされていた靴が置かれていた。

     アンは、そっとランドセルに手をかける。

     「約束のものよ」

     環奈は、思わず取りに行こうとする。
     ——しかし、その前に、アンが静かに口を開いた。

     「湯女の部屋には置かない方がいいわ。ここで預かってもらう方が、安全よ。あなたが着ていた服もね。後で持ってらっしゃい」

     環奈は、ぴたりと止まると、その言葉の意味を考えながら、そっとアンの顔を見つめた。

  • 287湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:41:29

    (次は…… dice1d3=1 (1) )


    1. 釜爺起床&対面

    2. ススワタリと対面

    3. 安価&ダイス

  • 288湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 16:42:53

    (ついでにアンの設定をもう少し決めておきましょう)


    アンは魔法が dice1d2=2 (2)

    1.使える

    2.使えない


    アンは環奈の本当の名前を dice1d2=2 (2)

    1.知っている

    2.今はまだ知らない

  • 289湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 17:02:03

     モゾ……モゾ……

     突然、番台の上で寝ていた人物が動き出した。
     環奈は、その気配に気づいて、ぎょっとする。
     その人物は、布団を押しのけ、上半身をゆっくり起こした。

     すると——
     6本の長い腕をぴんと伸ばし、ポキ、ポキ、と骨を鳴らす。

     それから、背を伸ばしながら、豪快にあくびをした。

     「んあぁぁ~~!!」

     「っ——!!」

     環奈は、思わず後ずさる。
     しかし、すぐ隣で、アンが静かに言った。

     「大丈夫。怖い人じゃないわ」

     環奈は、ちらりとアンの横顔を見た。

     「(本当に、大丈夫……?)」

     そんな疑念を抱きながらも、男の様子をじっと観察する。

  • 290湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 17:03:35

     男は、まだ寝ぼけた様子のまま、ヤカンを手に取ると、口を直につけてグビグビと水を飲んだ。
     そして、ようやく環奈とアンに気づくと——
     長い首をぐいっと突き出し、まじまじと環奈を見つめた。

     「……?」

     環奈は、緊張で身を固くする。

     すると、アンが静かに紹介するように言った。

     「おじいさん、新しく入った子よ。人間なの」

     それから、環奈を見て続ける。

     「環、この人は釜爺。あなたをここに呼んだのは、この人に会わせたかったからでもあるの」

     環奈は、釜爺の長い腕と険しい顔を見上げながら、ごくりと唾を飲み込んだ。
     そして、緊張しつつも——

     「たっ……環です。本当の名前は環奈っていいます」

     そう、しっかりと名乗った。

     その言葉を聞いたアンは、少し驚いたように環奈を見つめる。

     「カンナ……」

     小さく、その名前を繰り返し、そして、静かに微笑んだ。

  • 291湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 17:04:11

    (釜爺「( >>292 から >>294 でダイス)」)

  • 292二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 17:41:18

    ゆっくりしていけ

  • 293二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 17:54:31

    お茶持ってきてくれんかな?

  • 294二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 18:53:56

    グッドラック

  • 295湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 18:56:31

    1. >>292

    2. >>293

    3. >>294

    dice1d3=3 (3)

  • 296湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 19:37:07

     環奈が自己紹介を終えると、釜爺は黙って彼女を見つめたまま、6本の腕のうちの1つの親指を立てた。そして、ひとこと。

     「グッドラック」

     環奈は、一瞬きょとんとしたが、とりあえず頭を下げる。

     その瞬間——

     サワ……サワサワ……

     土間の壁際に空いているいくつもの穴から、小さな黒いものがゾロゾロと出てきた。

     環奈は目を凝らす。
     それは、丸くて黒い、毛玉のような生き物たちだった。
     真ん中に二つの目がついていて、環奈の姿をじっと見つめている。

     「(……何、これ……?)」

     興味津々の様子でカサカサと這い出てくると、上がり框の下にひしめき合った。

     「キィ、キィ、キィ……!」

     甲高い声で、細かく鳴いている。
     環奈が思わず息を呑んでいると、隣でアンが静かに言った。

     「ススワタリよ。釜爺の優秀な下働き」

     「なにが優秀だ。グズグスしてばかりで困るわい」

     釜爺は、鼻を鳴らしながら頭を掻いていた。

  • 297湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 19:37:30

     環奈は、ススワタリたちをじっと見つめた後、恐る恐る手を伸ばしてみる。
     すると——くすぐったい感触が指先に。
     ススワタリたちは、キィキィと鳴きながら、環奈の指にじゃれついてきた。

     「……っ!」

     環奈は、思わず小さく笑ってしまう。

     しかし——手を引き上げた時、指は真っ黒になっていた。

     「わっ!!」

     思わず声を上げる。

     アンは、それを見てクスッと笑った。
     釜爺は肩をすくめて、ぼやくように言う。

     「ススに触りゃあ、汚れるのは当たり前だ」

  • 298湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 19:37:59

     環奈が決まり悪そうに、袴の裾で手を拭っていると、アンが静かに口を開いた。

     「環奈、名前のことだけど——」

     環奈は、ふっとアンを見上げる。

     「仕事の時は、環でいた方がいいわ」

     その言葉に、環奈の表情がこわばる。

     「……どうして?」

     アンは少し視線を落としながら、静かに続けた。

     「それで湯婆婆さまのご機嫌を悪くしたら、あなたにとって、後が怖いもの」

     その声は、どこか諦めにも似た冷静さを帯びていた。
     環奈は、唇をぎゅっと噛む。

     「(……やっぱり、この名前を取り戻すのは簡単じゃないんだ)」

     アンは環奈の様子を見つめながら、言葉を続けた。

     「だから、私も仕事中は環と呼ぶようにするわね。おじいさんも、よろしく」

     アンが釜爺を見やると、釜爺は長い腕を組み、ふんっと鼻を鳴らした。

     「わかった、わかった。タマキ、タマキっと」

     口調こそ軽かったが、その言葉にはどこか含みがあるようにも感じた。

  • 299湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 19:39:28

    (次の展開 dice1d3=2 (2) )


    1. アンの過去に少しだけ触れる

    2. アン「ねえ、環奈。外で朝ごはんを食べない?」

    3, 安価&ダイス

  • 300湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 19:49:29
  • 301湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:06:16

     アンが、ふと思いついたように環奈を見つめる。

     「ねえ、環奈。外で朝ごはんを食べない?私、作ってきているの」

     そう言って、土間に置いていた手提げの布バッグを両手で持ち上げて見せた。

     環奈は、一瞬驚いたが——

     「……うんっ!」

     ぱっと顔を輝かせ、嬉しそうに頷く。
     アンはふっと微笑み、次に釜爺へと視線を向けた。

     「おじいさんは? ご一緒にどう?」

     釜爺は何かの本を読んでいて、視線を動かさずに答える。

     「わしゃあ、結構。二人で楽しんできな」

     環奈とアンは互いに目を合わせると、小さく笑い合った。

     「じゃあ、行きましょう」

     アンが立ち上がり、環奈もその後に続く。

  • 302湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:06:42

     ——ボイラー室を出て、蒸気パイプやタンクが両側に並ぶ暗い通路を抜ける。
     ドアの手前で、環奈が振り返ると——

     ススワタリたちが、ピョンピョンと跳ねながら見送ってくれていた。

     「キィ、キィ……!」

     環奈は思わず笑顔になり、そっと手を振った。

  • 303湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:07:04

     ——外は、すっかり朝日が昇り、透き通るような青空が広がっていた。
     環奈は、思わず目を細める。

     湯屋の外壁沿いに続く長い階段を登っていくアンと環奈。
     環奈は、ふと足元を見て、ぞくりとする。

     「(やっぱり高い……!)」

     登るのは二度目だが、やはり、見下ろせば足がすくみそうだった。
     環奈は、思わずアンにぴったりとくっつく。

     アンは驚いたように振り返るが、環奈の顔を見てすぐに察したのか、そっと歩調を緩めた。

     「ゆっくり行きましょう。焦らなくていいわ」

     「ん……」

     環奈は、ドキドキしながらも、小さく頷いた。

  • 304湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:08:45

    (この後 dice1d2=2 (2) )


    1. 普通に花壇へ到着

    2. 橋の上で妙な妖怪と鉢合わせる(後に、カオナシのように湯屋を混乱に陥れるポジション)

    3. 安価

  • 305湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:09:05

    (振り直しです。 dice1d3=2 (2) )

  • 306湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 20:27:32

    (カオナシポジションの妖怪の、名称、姿形、色、大きさなど >>307 から >>310 で全採用)

  • 307二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:06:12

    名称 泥(でい)
    姿形 スライムのような不定形
    色 茶
    大きさ 犬とおなじくらい

  • 308二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:07:20

    大きさ30センチぐらいの黒い触手の集まり

    全採用ってアンみたいにそれぞれの特徴を少しずつ拾ってくれるってことだよね?

  • 309二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:26:54

    薄い緑色のスーツに黒いネクタイ、臙脂色のマフラーを首に巻いた少女
    スーツの上に薄い褐色のトレンチコートを羽織っている
    髪型は黒いセミショートで目が金色

  • 310二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 21:29:41

    名称 アシナシ
    青い外套をすっぽりと被った何か
    外套の中の目だけが赤く光っている
    大きさは成人男性くらい

  • 311湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 21:32:28

    (名称は dice1d2=2 (2) )


    1.泥(でい)

    2.アシナシ

  • 312湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 21:36:10

    (変化自在のアシナシ。その基本の姿は dice1d4=1 (1) )


    1. >>307

    2. >>308

    3. >>309

    4. >>310

  • 313湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 22:45:03

    (更新、少しお待ちください)

  • 314湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:06:01

     庭の塀の木戸をくぐり、玄関前へと出る。
     朝日が照らす湯屋の前。環奈は、何気なく橋の方へ目を向けた。
     その瞬間——

     「えっ……?」

     思わず驚きの声を漏らす。

     ——湯婆婆の魔法で真っ二つに折れたはずの橋が、何事もなかったかのように直っている。
     あの時、環奈が滑り落ちかけた場所——その床や欄干には継ぎ目すらない。
     まるで、最初から壊れてなどいなかったかのように、つるりと続いていた。

     「……どうして?」

     環奈は呆然として橋を見つめる。

  • 315湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:06:14

     ——そして、もうひとつ。
     橋の欄干に手をかけ、静かに景色を見ている『何か』がいた。

     全身を青い外套で覆い、顔も体もすっぽりと隠している。
     大きさは、大人の男性くらいか。

     環奈は、言葉にならない違和感を覚え、無意識に隣のアンの腕を掴んでしまった。
     アンは驚いて、環奈の顔を覗き込む。

     「どうしたの?」

     環奈は、震える指先で橋の方を指す。
     アンも、その存在に気づいた。

     アンは目を細めると、小さく息を吸い込み——

     「慎重に行きましょう」

     そう言って、環奈を自分の身体で庇うようにしながら、橋へと足を踏み出した。

  • 316湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:07:18

     環奈は、ごくりと唾を飲む。

     二人が橋を渡り始めると——
     青い外套の『何か』の中で、赤い目が、スッ……と振り向く。
     その目が、じっと環奈たちを見つめる。

     「……っ!」

     環奈は、思わず体を強張らせた。
     しかし、アンはその視線に怯むことなく、相手を睨みつけながら、通り過ぎる。

     ゆっくり、慎重に、足を進め——そして、無事、橋を渡り切った。

     「……はぁーっ……!!」

     二人とも、一気に息を吐く。
     張り詰めた空気から解放され、ひとまず安心する。

     アンは、環奈の肩にそっと手を置き、「大丈夫?」と声をかけた。
     環奈は、まだ緊張で喉が詰まっていたが、コクリと頷いた。

     そして、二人は、竹の塀の扉を開け、花畑の方へと入っていった——

  • 317湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:09:05

     ——しかし、その背後では。
     橋の欄干にいた青い外套の存在が、二人をじっと見送っていた。

     そして次の瞬間——

     どろぉっ……

     それは、音もなく崩れた。
     ねっとりと粘り気のある、墨のように真っ黒な泥。

     それは形を保てなくなったかのように、べちゃあっ……!と橋の上に落ち、うずたかく積もる。

     環奈も、アンも、その異変に気づくことはなかった。

  • 318湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:18:15

     二人は、色とりどりの花々が咲き乱れる木々の間を歩いていった。

     ツツジ、アジサイ、キンモクセイ、ツバキ——
     どの花も瑞々しく、力強く咲いている。
     何より、それらは季節の区別なく、一斉に咲き誇っていた。

     「(……すごい……!)」

     環奈は思わず足を止め、目を見張る。

     「綺麗でしょ?」

     アンが微笑みながら振り返る。
     環奈は、小さく頷いた。

     「うん……すごく」

  • 319湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:18:25

     やがて——二人は、家畜小屋や畑を見下ろす崖の上へと出た。

     環奈は、眼下の風景を見下ろす。
     畑には、野菜が青々と茂り、その先には、大きな家畜小屋が並んでいる。
     どこからか、家畜たちの鳴き声が風に乗って聞こえてきた。

     「ここ、私のお気に入りなの」

     そう言って、アンは手ごろな大きさの平たい石に、腰を下ろす。
     そして、環奈に向かって、そっと手を動かした。

     「座って」

     環奈は、ニコリと微笑んで、アンの隣に静かに腰を下ろした。

     ぽかぽかと温かい朝の日差しが、二人を優しく包み込んでいた。

  • 320湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/23(木) 23:19:11

    (ジブリ飯の時間です。

    アンが用意してた朝食は? >>321 から >>323 でダイス)

  • 321二次元好きの匿名さん25/01/23(木) 23:22:50

    ゲド戦記に出てくるような、オニオンとチーズのオープンサンド

  • 322二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:00:29

    ニシンとカボチャのパイ……と思ったらイワシとジャガイモのパイであった

  • 323二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:01:56

    厚切りベーコンと目玉焼き

  • 324二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:14:27

    全採用なら>>308や>>309の姿もどこかで見られるかな?

  • 325湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 02:24:49

    1. >>321

    2. >>322

    3. >>323

    dice1d3=3 (3)

  • 326湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 10:28:58

    (お待たせしました。更新です。)

  • 327湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 10:29:10

     アンは、布バッグの中からランチョンマットを取り出した。
     まず自分の膝の上に広げ、次に環奈にも同じように膝の上へとそっと置く。

     「ありがと」

     環奈がそう言うと、アンは軽く頷きながら、二つの楕円形の弁当箱を取り出した。

     「はい」

     一つを環奈に手渡す。

     環奈は、少しワクワクしながら蓋を開けた。
     すると——

     目玉焼き、厚切りのベーコン、青えんどう豆。
     すべてが、白いご飯の上に載せられていた。

     「(わぁ……!)」

     シンプルだけれど、どれも温かみを感じる、美味しそうな朝ごはんだった。

  • 328湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 10:32:10

     アンから箸も受けると——

     「いただきます」

     アンがそう言うのに続いて、環奈も小さく声を合わせる。

     「いただきます」

     ——そして、一口。

     口の中に広がる、目玉焼きのまろやかさ。
     ふっくらとした白いご飯が、塩気を優しく包み込む。

     「美味しい……!」

     環奈は思わず、幸せそうな表情を浮かべる。
     ふと視線を上げると、アンも環奈を見つめていて——
     互いに顔を見合わせると、自然と微笑み合った。

     ——二人の間には、初対面の時とは明らかに違うものが生まれていた。
     それは、まだ確かな形にはなっていないけれど——言葉にしなくても伝わる、ささやかな信頼だった。

  • 329湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 10:33:31

    (不意に dice1d2=2 (2) が口を開く。)


    1.環奈

    2.アン


    (内容は >>330 から >>332 でダイス)

  • 330二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 11:06:08

    どうしてここに来たのか聞いてくるアン

  • 331二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 11:07:27

    何だか懐かしい

  • 332二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 11:58:51

    家族は心配してない?

  • 333湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:01:01

    1. >>330

    2. >>331

    3. >>332

    dice1d3=1 (1)

  • 334湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:17:26

     ふと、アンが箸を止め、環奈をじっと見つめた。
     そして、不意に口を開く。

     「環奈——どうしてここに来たの?」

     環奈は、一瞬ためらった。
     けれど、アンの澄んだ青い目を見ていると、適当に誤魔化す気にはなれなかった。

     環奈は、小さく息を吸い込み、ぽつりと答える。

     「……学校からの帰り道、森に入ってみたくなったの」

  • 335湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:17:52

     好奇心のままにトンネルを抜けたら、この町に迷い込んでしまったこと。

     神様の料理に手をつけそうになり、銭婆に止められ、家へ連れていかれたこと。

     その後、湯婆婆が追ってきて、「ひとりで町に戻り、店に謝罪する」約束をさせられたこと。

     しかし、いざ町に戻ると、湯婆婆は自分を捕らえ、「鶏にしてやる」と脅してきたこと。

     どうしても助かりたい一心で、とっさに「ここで働かせて」と頼み、契約を結んでしまったこと——

     環奈は、それらを包み隠さず語った。

     アンは、箸を置き、静かに頷きながら最後まで話を聞いていた。

  • 336湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:19:24

    (アン「 dice1d3=2 (2) 」)


    1. 今度は自分がここに来た経緯を話してくれる

    2.「それじゃあ、お父さんやお母さんは、さぞ心配なさってるでしょうね」

    3. 安価&ダイス

  • 337湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:40:42

     そして、静かに環奈を見つめながら言った。

     「それじゃあ、お父さんやお母さんは、さぞ心配なさってるでしょうね」

     その言葉に、環奈の表情が曇る。

     「(……お父さん、お母さん……)」

     環奈は、膝の上の弁当箱をじっと見つめながら、ぽつりと答えた。

     「……わかんない。心配なんかしてないかもしれない』

     アンが少し驚いたように環奈を見つめる。

     「お父さんは、ほとんど家にいないし。お母さんは、私より自分の友達の方が好きみたいだから」

  • 338湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:41:01

     ——そこから、環奈の口は止まらなくなった。

     母親が家に友達を呼ぶと、自分の居場所がなくなること。

     「欲しいものがある」「行きたい場所がある」と頼んでも、いつも決まって、「お金の無駄」「疲れるだけ」と言われること。

     自分の気持ちは、いつも後回しにされてしまうこと——

     次から次へと、今まで胸に溜め込んでいたものがあふれ出し、止まらなくなってしまう。

     しかし——ふと、アンの顔を見ると。
     アンはとても哀しげな表情をしていた。

     環奈は、ハッとして言葉を止める。
     そして、申し訳なさそうに目を伏せると、小さく言った。

     「……ごめん」

  • 339湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 12:42:16

    (書いていて辛くなりました……←

    アンの言葉 >>340 から >>342 でダイス)

  • 340二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 12:55:39

    このレスは削除されています

  • 341二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 12:57:17

    こっちこそごめんね

  • 342二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:01:30

    仲直りは出来ないの?

  • 343湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 13:06:41

    1. >>341

    2. >>342

    3. >>344

    dice1d3=1 (1)

  • 344湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 13:17:42

     アンが、ゆっくり首を横に振る。

     「私こそ、ごめんなさい。嫌なことを思い出させてしまったのね」

     それ以上、どちらも言葉を続けられなかった。
     気まずい空気が、静かに流れる。

     環奈は、とりあえずもう一度箸を持ち、黙って食べ始めた。
     アンも、そっと視線を落とし、再び箸を動かした。

  • 345湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 13:18:48

    (ここからどうにか会話が持ち直すもよし。食べ終わって湯屋に戻るもよしです。

    >>346 から >>348 でダイス)

  • 346二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:41:09

    アンが自分の事を話し始めた

  • 347二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:42:34

    銭婆から貰った御札について話す

  • 348二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:45:34

    おもむろに青蛙がやって来た
    「人間の家族にも色々いるんですなぁ」

  • 349湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 13:48:31

    1. >>346

    2. >>347

    3. >>648

    dice1d3=2 (2)

  • 350湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 14:06:09

     食べ終わった二人は、そっと箸を置き、手を合わせた。

     「ごちそうさまでした」

     互いに静かに微笑み合い、環奈はアンに弁当箱とランチョンマットを返す。
     アンはそれを丁寧に布バッグへしまいながら、ふと口を開いた。

     「ねえ、環奈——銭婆さんから御札を頂いたって言ったわよね?」

     環奈は、一瞬驚いたようにアンを見たが、すぐに頷いた。

     「うん……一度だけ、私の力になってくれるって言われて」

     そう言って、ボイラー室に置いてきたランドセルの中に、大事にしまってある御札のことを思い出す。

     「でも、湯婆婆に捕まったときは何も起こらなかったから、イマイチよくわかんないんだよね……」

     環奈の言葉を聞いて、アンはしばらく考え込んだ。
     そして、ゆっくりとした口調で言った。

     「昔、湯婆婆さまが、こんなことを話していらしたの」

  • 351湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 14:08:18

    (御札の名称、秘密など 

    >>352 から >>354 の中から、少しずつ採用)

  • 352二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 14:58:34

    銭婆を呼べる
    ただし本人が直接来るわけではなく以前油屋に式神を介してやって来た分身のようなもの

  • 353二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 15:11:39

    くだんのお札
    お札に何か質問すると炙り出しの様にお札に文字が浮かび上がる形で答えてくれる
    答えてくれるのは一度だけ

  • 354二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 15:38:53

    アマビエのお札
    アマビコやアリエともいう妖怪の描かれたお札で念じるとアマビエの姿が現れる
    その姿を見た者のあらゆる病や怪我を治す能力を持ち、魔法や呪詛による病や体調の悪化も例外ではない

  • 355湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:03:32

    (うまく融合しきれなかったので、ダイスで決めます……)


    1. >>352

    2. >>353

    3. >>354

    dice1d3=1 (1)

  • 356湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:15:47

     環奈はアンを見つめる。

     「銭婆さんは、人形(ひとがた)や御札を介して、それらがある場所に分身のような形で現れることができるそうよ。一度だけ環奈の力になってくれる、というのは……たぶん、そういうことなんじゃないかしら」

     環奈は驚いたように、あの時もらった御札の、不思議な文字列を思い浮かべる。

     「……じゃあ、どうして私が湯婆婆と契約する時、来てくれなかったんだろう」

     環奈は、思わず不満げに呟いた。

     あの時、どれだけ助けを求めたかったか——
     けれど、御札は何もしてくれなかった。

  • 357湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:19:26

     アンは少しだけ目を伏せ、静かに答える。

     「まだ、その時じゃなかったのかもしれないわね」

     「その時……?」

     環奈は、言葉を失った。
     ふと、湯婆婆が自分を怒鳴りつけ、風を巻き起こしていた光景が脳裏をよぎる。

     「(あれよりもっと恐ろしいことが、この先にあるの……?)」

     考えただけで、背筋がぞくりとする。

     アンは環奈の表情を見つめながら、何か言いたげに口を開きかけたが——
     やがて、それを飲み込み、ただ穏やかに微笑んだだけだった。

  • 358湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:20:16

    (次の展開 dice1d2=1 (1) )


    1. そろそろ戻る

    2. 安価&ダイス

  • 359湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:35:49

     「そろそろ戻りましょうか」

     アンがそう言うと、環奈はこくりと頷いた。
     二人は、石の上から立ち上がり、来た道を辿りながら、湯屋へと戻っていった。

     橋の手前にたどり着くと、環奈はちらりと欄干を見た。
     今朝、橋の上にいた青い外套の存在——もうその姿はなかった。
     環奈は、小さく息をついて、そのままアンと並んで橋を渡る。

     木戸をくぐり、湯屋の玄関へ入っていった——その直後だった。

     ——じゅるっ……じゅるる……

     ねっとりとした、粘着質な音。
     橋の裏、欄干の下にへばりついていた黒い泥が、ゆっくりと這い上がってくる。

     でろり、どろりと、黒い泥は歪みながら形を作った。
     ——そして、その中に。
     赤く光る、二つの目が浮かび上がる。

     『それ』は、ぬちゅ……と蠢きながら、静かに湯屋の建物を見上げた——

  • 360湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 16:40:40

    【アシナシ】


    黒い泥のような姿をした妖怪。赤い二つの目だけが付いている。

    人の形から異形の化け物まで、何にでも姿を変えられる。しかし、それは己を持たないことと同じ。

    また、身体の柔らかさを、水のようにサラサラしたものから、ゴムのようにブヨブヨと硬いものまで変えられる。


    そんなアシナシの目的は、( >>361 から >>364 まで )

  • 361二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 17:06:53

    客の姿に化けて湯屋に入った後、湯婆婆に成り代わって湯屋の支配者になる

  • 362二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 17:21:09

    油屋を消し去ること

  • 363二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 17:26:28

    不思議の世界と現世をひとつにしてしまう

  • 364湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 19:58:20

    (そろそろ更新したいので締め切らせていただきます。

    >>361 から >>363 を纏めて、


    「湯婆婆の姿と魔力をコピーして、現世を不思議の世界に取り込むのが目的。それで油屋が潰れようと知ったことではない」


    としてみます。)

  • 365二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 20:07:26

    あ、すみません
    安価をよく見ずにいつものように3つまでと勘違いしてました

  • 366湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:31:57

     西陽が傾き出した頃、湯屋の準備が始まる。

     カエル男たちとナメクジ女たちが、それぞれの持ち場に向かうため、ゾロゾロと階段を登り、通路を進んでいく。

     壁に掛けられた出勤札を、それぞれの者が手に取り、ひとつひとつ裏返していた。

     その中に、リンと環奈の姿もあった。

  • 367湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:37:53

     「えぇ?環って呼ばれる方がいいのかよ?」

     リンが、札を裏返しながら、不満げに環奈を見下ろす。
     環奈は、ぎこちない手つきで自分の札を裏返しながら、小さく頷いた。

     「うん、仕事の時はね。それで湯婆婆に目つけられたら後が怖いって、アンに言われたの」

     「アンに?」

     リンは、思わず眉をひそめる。

     「あんな奴の言うこと、まともに取り合うなよ。あいつは湯婆婆と坊の腰巾着さ」

     環奈は、ピタリと動きを止める。
     そして、思わず——

     「そんなことない!」

     語気を強めて、勢いよく言い返していた。

  • 368湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:38:10

     リンが驚いたように環奈を振り返る。
     環奈も、自分の口から出た言葉にハッとしていた。

     「アンは私の……友達」

     その言葉を口にして——環奈は、自分で自分に驚いた。

     「(……私、今、アンのこと友達って言った?)」

     人間の世界では、「友達」といえる相手なんていなかった。
     けれど、今は違うんだ——

     リンは、しばらく環奈を見つめていたが——やがて、ニッと笑った。

     「そーゆーことなら、仕事中は環で通してやるよ」

     そう言って、環奈の肩をポンッと叩いた。

  • 369湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:57:36

     広間の雑巾掛け——

     環奈は、両手に雑巾を持ち、床を懸命に磨いていた。

     リンと3人の小湯女たちは、手際よく素早く動き、広間の奥から手前へと次々に駆け抜けていく。
     しかし——環奈は何周も遅れをとっていた。

     「(うぅ……みんな早すぎ……!)」

     元々、掃除が得意なわけではない環奈。
     雑巾を強く押しすぎてしまい、うまく前へ進めない。
     焦れば焦るほど、力加減がわからなくなってしまう。

     そんな中、先に終えたリンたちが、雑巾を絞りながら声をかけた。

     「先行くよー!」

     「あんまりのんびりしてっと、置いてくからねー!」

     環奈は、ハッとする。

     「(やばい……! 早くやらなきゃ……!)」

     焦るあまり、勢いよくダッと前進した、その瞬間——

  • 370湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:58:21

     ドンッ!!

     「うわっ!」

     雑巾と床ばかりに気を取られ、前方にいた誰かの脚に、思い切りぶつかってしまった。

     「これ! 気をつけぬか!」

     環奈は慌てて顔を上げる。
     それは、兄役だった。

     環奈は、青ざめて深々と頭を下げる。

     「ご、ごめんなさい!」

     兄役は、環奈をじっと見下ろしていたが、やがて肩を軽くすくめ、環奈に告げた。

     「まあよい。ちょうどそなたを探しておったのだ。環、そなたは大湯番だ。」

     「——えっ?」

     環奈は、ぽかんと口を開けたまま固まる。

  • 371湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 20:58:49

     それを聞いていたリンの声が、思いきり裏返った。

     「エーーッ!? ちょ、ちょっと待てよ! カン……環は今夜が初仕事なんだぜ!?」

     兄役は、バツが悪そうに唇を歪める。

     「湯婆婆さま直々のご命令だ。致し方あるまい。骨身を惜しむなよ」

     そう言い残すと、兄役はズンズンと広間を去っていった。

     リンは、しばらく口をパクパクさせていたが——やがて、思い切り舌打ちをする。

     「ケッ!湯婆婆のやつ、見え透いたイビリしやがって!……しゃーねー、ついてきな、環!」

     そう言って、環奈の腕を引っ張る。

     「え、えっと……?」

     環奈は、今ひとつ状況が理解できていなかった。

     「(大湯番って……何?)」

     不安を抱えたまま、環奈はリンに引っ張られていった。

  • 372湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:00:00

    (汚れたお客専用の湯場『大湯』の状態 dice1d2=1 (1) )


    1. ひどく汚れてる ( >>373)

    2. 普通

  • 373二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:11:24

    オクサレ様こと川の神が入ったときのような状態

  • 374二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 21:12:01

    このレスは削除されています

  • 375湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:25:05

     大湯は、大浴場の一番奥の区間にあった。
     環奈とリンは、その入り口に立ち、風呂釜の様子を眺めていた。

     大湯の風呂釜は、湯屋の中で一番大きい。しかし——

     その中も、外も、床も、茶色い固まりのようなもので分厚く覆われていた。
     まるで、風呂場全体が泥に吞み込まれて、干からびたように——

     環奈は、両手でブラシや雑巾の入った桶を抱えたまま、呆然とする。

     「これ……何?」

     リンは、片手に柄の長いブラシを二本持ち、無造作に言った。

     「ヘドロに決まってんだろ。ヘ、ド、ロ」

     「へ……どろ?」

     環奈は、その言葉を聞き慣れず、思わず聞き返す。

     「知らねーのかよ?」

     リンが呆れたように眉をひそめる。

     「ドブ川や海の底に溜まってる、ドロドロの、くっせーやつだよ」

     環奈は、改めて目の前の大湯を見つめた。
     茶色い泥の塊が、ところどころひび割れ、固まり、異様なオーラを放っている。

     「(こんなの、掃除しろって言われても……)」

  • 376湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:27:59

     さらに、リンはため息混じりに言葉を続けた。

     「こないだクサレ神が来た時の、誰も片づけてねーんだな。ったく……」

     「……クサレ神?」

     ヘドロのことすらよくわかっていない環奈の耳に、新たな単語が飛び込んでくる。

     「何それ?」

     「ああ? まさかそれも知らねーのか?」

     リンは環奈をまじまじと見たが、すぐにと肩をすくめる。

     「ま、いいや。人間だもんな。とにかく掃除すんぞ! ほら、これ持て!」

     そう言って、デッキブラシを環奈に投げ渡す。
     環奈は慌てて受け取り、少しよろけた。

     「いくぞ! せーの!」

     二人は、ガチガチに固まったヘドロを、ブラシの柄で突いて崩し始める。

     ——ガンッ! ガンッ!

     硬くこびりついたヘドロは、思った以上に手強い。
     少しずつ、ボロボロと崩れは崩れはするものの、それでも途方もない時間がかかりそうだった——

  • 377湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:39:31

     ——大浴場をぐるりと囲む回廊。
     そこを、湯婆婆がツカツカと歩いていく。

     ギョロギョロと目を動かしながら、浴場の様子を隅々まで見回していた。
     従業員たちが怠けていないか、不備はないか。
     すべて、湯婆婆の厳しい視線が監視している。

     父役が、湯婆婆の後ろをついて歩いていた。
     湯婆婆の機嫌を伺い、神経をすり減らしながら——

     湯婆婆は、浴場の上に架かる橋までくると、ふと立ち止まった。
     そこから身を乗り出し、下の様子を確認する。

     そして、大湯で一緒に働く環奈とリンの姿を見つけた瞬間、顔をしかめた。

     「どうしてリンが手伝ってるんだい!?」

     突然の怒声に、父役がビクッと肩を震わせる。

     「あたしは環にやらせるよう言ったはずだよ!!」

     父役は、縮み上がりながらオロオロと頭を下げる。

     「も、申し訳ございません、湯婆婆さま! すぐに——」

     「リーン!!!」

     湯婆婆は、橋の上から大声で怒鳴った。

  • 378湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:39:41

     「何やってるんだい!!持ち場に戻りな!!」

     その声に、リンがビクッと肩を跳ね上げる。
     環奈も驚いて手を止めた。

     リンは、湯婆婆を見上げると——

     「はーい! ただ今ー!」

     へらっと笑って深く頭を下げた。
     しかし、湯婆婆と父役が橋の上から去っていくと、途端に顔をしかめる。

     「チッ! これだもんなぁ!!」

     忌々しそうに舌打ちしながら、手に持っていたブラシを放り投げた。

  • 379湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 21:42:09

     リンは、まだ状況が飲み込めていない環奈の肩をポンと叩く。

     「環。番台行って、薬湯の札貰ってきな。それで洗い流せるから」

     環奈は顔を上げると、戸惑いながら聞き返す。

     「番台……?」

     「風呂場の入り口にある台だよ。偉そうなカッコのカエルが座ってる」

     「わ、わかった……」

     環奈が頷くと、リンはニッと歯を見せて笑う。

     「じゃ、オレは行くから、後は頑張れよな!」

     そう言って、手をヒラヒラ振りながら去っていった。

     環奈は、ひとり取り残された大湯を見渡した。
     大量のヘドロがこびりついた巨大な風呂釜——

     「(これを、一人で……)」

     ゴクリと息を呑むと、環奈はそっと番台の方へと歩き出した。

  • 380湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:05:36

     ——湯屋の最上層にある坊の部屋。

     そこでは、アンが坊の遊び相手をしていた。
     坊は、床の上に座り込み、テーブルの上に積み木を積み上げてお城を作っていた。

     「おっきいの、ここに乗せる!」

     「はい。では、ここを支えて——」

     ——そこへ、湯婆婆がイライラした様子で帰ってきた。
     カーテンをバッ!と開け、勢いよく入ってくる。

     だが、部屋の中央で積み木を積んでいる坊の姿を見た瞬間——湯婆婆の表情が一変する。

     「ただいま〜、坊! アンに遊んでもらってご機嫌だねぇ〜!」

     それまでの苛立ちはまるでなかったかのように、猫撫で声で坊に近寄る。

     「バーバ、おかえり!」

     坊が両手を広げると、湯婆婆はぎゅっと抱きしめた。

  • 381湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:05:53

     しかし、次の瞬間——

     湯婆婆はアンに向き直り、厳しい口調で言い放つ。

     「アン、仕事を手伝いな」

     「……かしこまりました」

     アンは静かに頭を下げる。

     「坊や~。バーバね、もう少しお仕事してくるからね、いい子にしてるんだよ〜」

     湯婆婆は再び坊に顔を向けると、そう言って坊の頬にキスをする。

     「バーバ、いってらっしゃい!」

     坊を優しく宥めると、湯婆婆はアンを連れて部屋を出た。

  • 382湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:07:15

     私室に入ると、湯婆婆は丸いテーブルの前にどかりと座り込んだ。

     「まったく……どいつもこいつも、人間の小娘なんぞに甘い顔をして、呆れたもんだよ!」

     そう吐き捨てるように言いながら、アンに視線を向ける。

     アンは黙って湯婆婆の言葉を聞きながら、小さな袋と宝石箱をテーブルの上に運んだ。
     湯婆婆は、それをひったくるように受け取ると、袋の口を大きく開け、中の宝石をザラザラとテーブルにぶちまけた。

     「それもこれも、千がなまじ手柄を立てたからだよ……!」

     湯婆婆は、テーブルに散らばった宝石のひとつを摘み、顕微鏡にかざす。

     その横で、アンは何も言わずに静かに立っていた。

  • 383湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:08:12

     ——すると、湯婆婆の表情がピクリと変わる。

     何かを察知したかのように、ギロッと窓の方を睨みつけた。
     アンも、それに気づく。

     「いかがなさいましたか?」

     だが、湯婆婆は返事をしない。

     素早く宝石を箱に戻し、立ち上がると——スゥーッと滑るように窓の方へ移動した。

     ガラリ、と窓を開け、湯婆婆は顔を出した。
     ——そして、闇夜の中をじっと見つめる。

     やがて、低く、呟いた。

     「……何か来てるね……」

  • 384湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:18:44

     番台の前——
     環奈は、困り果てた様子で立ち尽くしていた。

     番台の上には、父役と兄役同様、立派な身なりをした番台蛙が座り込んでいる。

     「いつまでいても同じだ。ダメなものはダメだ」

     番台蛙は、環奈を一瞥もせずに手を振った。

     「大湯のヘドロを洗い流したいから、薬湯が欲しい? バカを言え。そんなもの、手で除ければいいんだ。手を使え、手を」

     環奈は、ぎゅっと拳を握る。

     「(そんなの……手でどうにかできるレベルじゃないのに……)」

     しかし、番台蛙はまるで相手にする気がないようだった。

     その一方で、次々とやってくる他の従業員たちには、気前よく札を渡している。

     「——こんぴら様に」

     「ハイ!松湯の上! おぉ、そなたは柚子だな。ホレ」

     環奈はその様子を、じぃーっ……と、冷ややかな目で見上げていた。
     しかし、いくら睨んだところで、番台蛙は意に介さない。

     「(どうしよ……)」

     環奈は思案しながら、はあっ、と深いため息をついた。

  • 385湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:19:40

    (環奈を、誰がどんなふうに助けてくれるか >>386 から >>388 でダイス)

  • 386二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:34:27

    よく見ると美少女な環奈ちゃんにドキッとした番台が一転して情けで札を渡す

  • 387二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:38:49

    人間の姿になったアシナシが来てそっと渡してくれた
    なぜ持ってるかというと姿や声を番台に真似て貰った

  • 388二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 22:42:47

    大湯に大物が来ると聞かされて直ちに渡してしまった
    ちなみにこれは嘘であり声の主はアシナシ

  • 389湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 22:43:14

    1. >>386

    2. >>387

    3. >>388

    dice1d3=2 (2)

  • 390湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:03:49

     完全に行き詰まった環奈は、仕方なく大湯へ戻ることにした。

     大浴場の通路を歩きながら、先ほどの番台蛙の態度を思い出し、無意識に頬を膨らませる。

     「(ケチ……!手でやれって言うけど、あんなのどう考えても無理だよ……)」

     どんよりとした気持ちのまま、大湯の入口へ戻る。
     改めて風呂釜の惨状を目にすると、環奈は深いため息をついた。

  • 391湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:03:59

     ——そのとき。
     不意に、後ろから袖を引かれる感触。

     「えっ?」

     環奈は驚き、パッと振り返る。

     そこに立っていたのは——

     薄い褐色のトレンチコートを羽織り、臙脂色のマフラーを巻いた少女。
     黒髪に赤い目——環奈よりも幼い、見た目の少女だった。

     環奈は、戸惑いながら口を開く。

     「誰……? ここで何してるの……?」

     しかし、少女は何も答えない。

     ただ、環奈の手に、そっと何かを押しつける。
     環奈は、差し出された物を見つめた。

     ——それは、赤と黒の二色の板。

     環奈はハッとする。

     「これ……薬湯の!?」

     番台にたくさん並んでいた、それとまったく同じものだ。

     環奈は、目を見開いたまま、目の前の少女を見つめる。

  • 392湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:06:22

     「ありがとう……!」

     環奈は、差し出された薬湯の札を両手でしっかりと受け取り、素直に感謝を伝えた。
     ——だが、次の瞬間。

     「(……これ、どうやって使うんだろう?)」

     環奈は札をじっと見つめ、戸惑いの表情を浮かべた。
     番台で札を渡される場面は何度も見たが、実際に使われるところは見ていない。

     考え込んでいると、謎の少女がそっと環奈の手から札を取り上げた。

     「えっ……?」

     そして、環奈に何も言わぬまま、ゆっくりと大湯に足を踏み入れる。
     少女の小さな足が、固まったヘドロの上を静かに踏みしめ、壁際へと進んでいく。
     環奈は息を呑んで、その後に続いた。

     少女は、壁に内蔵された小さな扉を開いた。
     
     「……!!」

     環奈は驚いた。——そんなものがあるなんて、まるで気づかなかった。

     中には、赤いリボンが垂れ下がっている。
     少女は、その先端にある金具に札を引っかけ——グイッと下に引いた。

     ——シュンッ!

     札は、一瞬で上へ吸い込まれていった。

  • 393湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:07:31

     数秒後——

     カタッ……

     壁の奥から、何かのロックが外れる音。

     続いて、壁の一部が静かに動き出し——内蔵されていた木樋が、ゆっくりと降りてきた。

     環奈は、何が起こるのか固唾を飲んで見守る。
     やがて木樋が完全に降りると、その先端は風呂釜の中へと向けられていた。

     少女は、風呂釜の縁にひょいひょいと登ると——
     木樋の先端から垂れ下がっている紐を、スッと掴んだ。
     そして、紐をグッと引く。

     ——ドオッ!! ザァァァァ……ッ!!!

     勢いよく、薬湯が風呂釜の中へと注がれ始めた。
     瞬く間に、真っ白な湯気がもうもうと立ち昇る。

     環奈は、圧倒されて呆然と見つめるしかなかった。

     やがて少女が、もう一度紐を引くと、湯の流れがピタリと止まる。
     そして、少女は環奈を無言で促した。

     「(こっちに来いってこと……?)」

     環奈は少女の示す通りに風呂釜を登り、中を覗き込んだ。

     そして——驚愕する。

  • 394湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:09:11

     「えっ……!?」

     風呂釜の底で、こびりついていたヘドロが、薬湯に浸かった部分からみるみる分解されていく。
     まるで溶けるように、ヘドロの塊が消えていく。

     環奈は、その光景に目を奪われたまま、隣にいる少女へと顔を向けた。

     「すごい……! ありがとう!」

     ——しかし、そこにはもう誰もいなかった。

     環奈はハッとして、辺りをキョロキョロと見回した。

     「えっ……? どこ……?」

     だが、少女の姿はどこにもない。

     その代わり——

     環奈の背後——気づかないところで、黒い水が風呂場の隅の排水溝にゆっくりと流れ込んでいた。

  • 395湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:10:28

    (アシナシは環奈に何枚札を渡していたか dice1d2=2 (2) )


    1. 1枚だけ(それも今ので使ってしまった)

    2. 数枚(残り2枚)

  • 396湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:12:03

    (環奈の初仕事。大湯でお世話する神様を >>397 から >>399 でダイス)

  • 397二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:18:37

    ヌルヌルの大蛸みたいな神

  • 398二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:19:16

    デブのタヌキみたいなの

  • 399二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:30:51

    化けがに

  • 400二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:31:10

    このレスは削除されています

  • 401湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:31:12

    1. >>397

    2. >>398

    3. >>399

    dice1d3=1 (1)

  • 402湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:32:02
  • 403湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:35:05

    (大ダコの神様の名前と、汚れ方 >>404 から >>406 でダイス)

  • 404二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:45:47

    やざいもん

  • 405二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:46:02

    名前:タコノヤマカミ
    非常に生臭く、年頃の娘なら触ったら鳥肌不可避な紫色の粘液に塗れている

  • 406二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 23:49:22

    くとうるう
    重油と思わしき黒い油にまみれている

  • 407湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:51:54

    1. >>404

    2. >>405

    3. >>406

    dice1d3=2 (2)

  • 408湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/24(金) 23:52:33

    (今日の更新はここまでとさせていただきます)

  • 409湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 08:53:33

     環奈は、風呂場の外に溢れている汚れにも、薬湯を数回に分けてかけていく。

     ヘドロの塊は溶けるように小さくなっていき——ついに、大湯は元の姿を取り戻した。

     環奈は、ほっと胸を撫で下ろす。

     「(やっと……綺麗になった……)」

     ——その時、仕切りの向こう側から、水の音が聞こえてきた。

     ——ザバァ……

     誰かが湯に浸かる音。
     ゴシゴシと身体を洗う音。
     すでに、お客が湯に入っているようだった。

     環奈は、仕切り越しにその気配を感じながら、ようやく一息つこうとした——
     しかし、その瞬間。

     「環、湯婆婆さまがお呼びだ。参れ」

     突然、背後からかけられた声に、環奈はビクッと肩を跳ね上げた。
     振り向くと、そこには兄役が立っていた。

     「は、はい!」

     環奈は、慌てて掃除道具を片付け、兄役の後を追う。

  • 410湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 08:54:03

     大浴場の通路を歩きながら、環奈はキョロキョロと周りを見回した。

     そこには、異形の神々が数多くいた。

     湯に浸かっていたり、従業員に身体を流してもらっていたり——
     それぞれが思い思いにくつろいでいる。

     環奈は、その奇妙な姿に思わず目を見張った。

     ——巨大なヒヨコのようなもの。

     ——福々しく肥え太った、大根のようなもの。

     ——顔の部分に、紙の面をつけているもの……

     「(……すご……)」

     人間の世界では絶対にあり得ない光景に、環奈は圧倒されながらも歩き続けた。

  • 411湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 08:54:20

     やがて、兄役に導かれて玄関へとたどり着く。
     ——そこには、湯婆婆と父役が待っていた。

     「連れて参りました」

     兄役がそう言って一礼する。

     湯婆婆は、環奈をギョロリと睨み、「フン」と鼻を鳴らした。
     一方の父役は、どこかソワソワと落ち着かない様子で、湯婆婆の後ろに控えている。

     環奈は、湯婆婆の前に立ち、緊張しながら身を正す。

  • 412湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:26:07

     湯婆婆は、環奈に向けて杖の先を突きつけた。

     「いいかい。お前の初仕事だよ。これから来るお客を、大湯で世話するんだ。**」

     環奈は、思わず息を呑む。

     「え……? あの……」

     何を言えばいいのかわからない。

     「シノゴの言うと、石炭にしちまうよ! わかったね?」

     湯婆婆の声が鋭く響く。

     環奈はビクッと肩を跳ね上げ、思わず「はい……!」と返事をしてしまった。

     「(どうしよう……何すればいいのか全然わからない……!)」

     環奈が混乱していると、父役が震える声で呟いた。

     「み、見えました……」

     その言葉に、全員が玄関の外へと視線を向ける。

  • 413湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:26:45

     ——ズル……ズル……

     何かが這い寄ってくる音。
     その音は、徐々に近づいてくる。

     環奈は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。

     暖簾の下、そこから見えたのは——
     太い、紫色の、吸盤のついた触手。
     何十本もの触手が、蠢きながら、こちらへと迫ってくる。

     環奈の胸が、ぎゅっと縮こまる。

     「(……なに、あれ……?)」

     説明のつかない、強烈な嫌悪感がこみ上げる。

     ——そして、それは触手の一本を使って、暖簾をくぐった。

     びちゃあ……

     暖簾が、粘液で濡れていく。
     そのまま、ぬるりと姿を現したのは——巨大な蛸の神。

     紫色の大きな頭部。
     土間を埋め尽くすほどの巨体。
     うねる無数の触手。
     そして——生臭い匂い。

     環奈は、喉の奥からこみ上げるものを必死に抑えながら、目の前の異形を見上げた。

  • 414湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:36:40

     湯婆婆は、作り物めいた笑顔を浮かべ、大蛸の神に向かって恭しく頭を下げた。

     「よくお越しくださいました、タコノヤマさまぁ」

     その瞬間——

     ズルゥ……

     タコノヤマカミの触手が一本、ぬるりと環奈の方へ伸びてきた。

     「ひっ……!?」

     環奈は思わず後ずさる。

     しかし、触手の先端にある吸盤に——黄金色に輝く小判がくっついているのが見えた。

     「湯代だよ……! 早くお受け取りな……!」

     湯婆婆が低い声で囁く。
     環奈はビクリとし、慌てて「はっ、はい!」と返事をした。

     そして、両手を差し出し、小判を掴む。
     しかし——

  • 415湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:37:09

     ネチョォ……

     「うっ……!」

     小判は、ネバネバとした紫色の粘液にまみれていた。
     しかも——吸盤にがっちりくっついている。

     環奈は力を込めて引っ張るが、まったく外れない。

     「んぐっ……うぅ……!」

     何度も引いているうちに——

     ——キュポンッ!!

     突然、吸盤から勢いよく小判が外れた。
     環奈は、よろめきながらも両手でそれを抱え込み、どうにか踏みとどまる。

     「ではごゆっくりぃ」

     湯婆婆は、にこりと笑顔を作ると、環奈に向かって鋭い視線を送った。

     「早くご案内しな!」

     「ど、どうぞ……?」

  • 416湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:37:28

     環奈は、小判を両手に持ったまま、大湯へ向かってゆっくりと歩き出す。

     その背後を、タコノヤマカミが、粘着質な音を響かせながら、這うようについてきた。

     ズルルル……ネトォ……ベチャ……

     床に、壁に、触手がまとわりつき、そこかしこに粘液が塗りつけられていく——

     「(あぁぁ……掃除が大変だ……)」

     環奈は顔を引きつらせながら、それでも足を止めずに進んでいく。

     一人と一柱が、通路の奥へと姿を消した、その瞬間。
     湯婆婆の表情が、一変する。

     「何してるんだい!! さっさと掃除させな!!」

     鋭い声が響き、父役と兄役が慌てて動き出す。
     湯婆婆は、彼らを一瞥した後、まるで風に流れるように浮遊して、その場を離れていった。

  • 417湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:53:08

     環奈とタコノヤマカミが、湯屋の広間の横を通り過ぎる。
     神々や従業員たちは、思わず動きを止めた。
     誰もが言葉を発することなく、その異様な光景を凝視する。

     「(……すごく見られてる……)」

     環奈は、突き刺さるような視線を感じながら、足早に通り過ぎようとするが——

     「タマキー!!」

     突然、聞き慣れた声が響いた。

     「リン!!」

     環奈は反射的に声の方を向く。
     広間の向こう側、雑巾を片手に持ったリンが、不安そうな顔でこちらを見ていた。

     しかし——

     「ギュウウウ……」

     背後から低く、湿った唸り声が響く。
     環奈の背筋がゾクリとした。

     「(や、やばい……!!)

     急いでまた歩き出し、タコノヤマカミを大湯へと案内する。
     リンは不安げに環奈の背中を見送りながら、小さく舌打ちをした。

     「クソ……!湯婆婆のヤロー……!大丈夫かよ、アレ……」

  • 418湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:54:01

     ようやく大湯に到着した環奈とタコノヤマカミ。

     タコノヤマカミは、ねばつく触手を器用に使いながら、風呂釜の縁へと這い上がると——

     ドボォッ!!

     頭から豪快に飛び込んだ。

     「(…….えっ!?そんな入り方するの!?)」

     環奈は目を見開く。

     ——その瞬間。
     なみなみに注がれていた薬湯が、一気に溢れる。

     ——ザッパァァァァ!!!!!

     まるで津波のように湯が押し寄せ、環奈は思わず後ろにのけぞった。

     「うわっ!!」

     なんとか踏ん張るものの、足の裏が滑りそうになり、必死で体勢を立て直す。

     「(あ、危なかった……!)」

  • 419湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:54:21

     タコノヤマカミは、水面から頭を出し、気持ちよさそうに目を細めている。

     「フウウゥ……」

     環奈は、ようやくひと息ついたが——

     タコノヤマカミの身体が、紫色からじわじわと赤く変わっていくのに気づき、青ざめる。

     「えっ……!?」

     まるで、茹で上がっているかのようだった。

     「だ、大丈夫ですか!?」

     環奈は慌てて声をかけるが、タコノヤマカミは何も気にする様子もなく、トロリと目を閉じていた。

     「(平気……なの?)」

     環奈は、困惑しながらも、ふと足元に目を落とす。
     そして、そっと片足を上げた瞬間——

  • 420湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:54:41

     ねちゃあ……

     足の裏から、粘つく糸が引かれるのを感じた。

     「……え?」

     環奈はじっと床を見つめる。

     溢れた湯が、タコノヤマカミの粘液と混ざり合い——湯場全体をベトベトにしてしまっていることに気づいたのだった。

     環奈は、唇を震わせながら思った。

     「(……また、私が掃除するの……!?)」

  • 421湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:55:21

    (次の展開 dice1d2=2 (2) )


    1. お湯を足そう

    2. 安価&ダイス

  • 422湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 09:55:47

    ( >>423 から >>425 でダイス)

  • 423二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 11:07:08
  • 424二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 11:09:56

    ひとまず様子を見る

  • 425二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 11:54:47

    足し湯がほしいか声をかけてみる

  • 426湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 11:58:25

    1. >>423

    2. >>424

    3. >>425

    dice1d3=1 (1)

  • 427湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:28:35

     上階の回廊には、物見高い神々や従業員たちが集まっていた。
     大湯を囲むようにして、手すり越しに下を覗き込んでいる。

     その中には、湯婆婆の姿もあった。
     手すりに両手をかけ、興味深げに身を乗り出す。

     「さて、あの子、どうするかね……」

     意地悪そうに目を細める湯婆婆。
     その背後で、父役がヒヤヒヤした表情を浮かべていた。

  • 428湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:32:12

     一方、環奈は、辺りを覆い尽くす粘液をどうにかしようと、頭を巡らせる。
     その時、ふと、先ほどの少女のことを思い出した。

     「(……あの子みたいに、お湯を出して洗い流せば……!)」

     環奈は、壁に隠されている木樋の扉を探した。
     しかし、扉はしっかりと閉じられている。
     環奈は、少女がそうしたように扉の隙間に指を引っかけ、引き開けようとする。

     「くっ……開かない……!」

     指に力を込め、ぐっと引く——

     ガタッ!

     ——その瞬間、勢い余って後ろによろめいた。

     「うわっ!?」

     危うく転びかけたが、なんとか踏みとどまる。

  • 429湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:32:31

     環奈は息を整えながら、袴のポケットを探る。
     ——あの少女からもらった薬湯の札。
     まだ、あと2枚残っている。

     環奈は、1枚を取り出し——
     おぼつかない手つきで、リボンに引っ掛ける。

     「よいしょ……!」

     そして——グイッ!

     リボンを力いっぱい下に引く。

     シュンッ!!

     札は勢いよく上へ吸い込まれていった。

  • 430湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:35:26

     ——その様子を、上階の湯婆婆がじっと見つめていた。

     「んん……?」

     湯婆婆は、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

     「番台め……環に札をやったのかい?」

     面白くなさそうに、ギロリと環奈を睨む。

     木樋がクゥ〜ッ……と音を立てながら降りてくる。
     環奈は、足元に気をつけながら、慎重に歩み寄ると、風呂釜を登り、縁に乗った。

     そこで、思わず息を呑む。

     「うっ……!」

  • 431湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:36:11

     湯船の中は、お湯がほとんど残っていなかった。
     タコノヤマさまが、みっちりと詰まるように入っている。
     まさに、巨大な蛸壺のような光景だった。
     そして、身体中触手が、じゅるじゅると音を立て蠢いている。

     環奈は、ぶるりと身震いした。

     「(……気持ち悪い……!)」

     しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。

     環奈は気を取り直し、湯を出すため、木樋の先端から垂れ下がる紐に手をかけた。

     ゆっくりと、紐を引こうとした——その時。

  • 432湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:37:23

    (ちょっとアクシデントのひとつやふたつ欲しいなぁ……などと

    >>433 から >>435 でダイス)

  • 433二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:41:23

    タコノヤマ様の触手が服の隙間から環奈の身体に纏わりつき何か確かめるように全身を這い回る

  • 434二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:44:08

    粘液で足を滑らせタコノヤマでみっちり詰まった湯船の中に落下、出る際触手に引っかかったりして袴やらが脱げてあられもない姿に

  • 435二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:53:06

    身体を洗って欲しがったタコノヤマ様が環奈の手を触手で掴んで自分の身体を触らせる

  • 436湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 12:55:45

    1. >>433

    2. >>434

    3. >>435

    dice1d3=3 (3)


    コレ、閲覧注意になっちゃいます?()

  • 437二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 12:57:46

    まあ美少女枠の環奈ちゃんとヌルヌル触手神様って絵面だけで十分いかがわしいし…

  • 438湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:27:03

     にゅるぅ……
     
     木樋の先端に集中していた環奈の視線。
     何かが、片脚に巻きついた。

     「ッ——!!」

     ブヨブヨした感触に、環奈の肩が跳ね上がる。
     次の瞬間——

     グンッ!!

     環奈の身体が、一気に風呂釜の中へと引き摺り込まれた。

     「やああぁぁっ!?」

     ばちゃあっ!!

  • 439湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:27:32

     中はまさに——触手の海。

     環奈の胴ほどもある太い触手が隙間なくひしめき合い、うごめいている。

     「う、わ、わわわっ!?」

     環奈は必死に風呂釜の外へ逃げ出そうとしたが、無駄だった。

     複数の触手が絡みつき、環奈の身体を持ち上げる。
     そして——タコノヤマさまの本体近くまで運ばれていく。

     「(や、やめてええええ!!)」

     心の中で叫ぶ間もなく——

     べちゃあっ……!!

     環奈の身体が、タコノヤマさまの広い額に密着した。

     「ぅ、うあああぁぁ……!!」

     気持ち悪さと混乱で、環奈は涙目になりながら必死にもがく。

  • 440湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:28:23

     その時。

     ギョロ……

     タコノヤマさまの巨大な目が、環奈の方へと向いた。

     「ギュウウウ……」

     どこか甘えるような、低い唸り声が響く。

     次の瞬間——環奈の手首を、一本の触手が掴んだ。

     「ひっ……!」

     驚く環奈の手を、タコノヤマさまの本体へと導く。

     ぬとぉ……

     手のひらに伝わる、ブヨブヨ、ベトベトした感触。

     「(な、なにこれ……!?)」

     環奈は抵抗しようとしたが、不思議と——
     相手の意図が伝わってきた。

     「(……洗ってほしいの……?)」

     冷静に考えると、タコノヤマさまの身体は風呂に入る前から粘液まみれ。
     環奈は、混乱しながらも、ようやく状況を理解する。

  • 441湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:28:36

     「そ、それじゃ、ブラシ取ってきますので……!」

     環奈は恐る恐る言いながら、相手の反応を待った。

  • 442湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:29:48

    (タコノヤマさまの返答 dice1d3=2 (2) )


    1.(取っておいでな)

    2.(そんなもん要らん、はよう洗え)

    3. 安価&ダイス

  • 443二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 13:31:01

    身体で洗って欲しい派だったかぁ…

  • 444湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:51:20

     「ン゛ン〜〜……」

     タコノヤマさまが低く唸る。
     環奈の手首を掴んだ触手は、まだ離してくれなかった。

     「(……えぇ……『早く洗え』ってこと……?)」

     環奈は深いため息をついた。

     「……はぁ……」

     手のひらでタコノヤマさまの肌を擦ってみる。
     ——しかし、粘液のせいで滑るだけ。
     素手では、絶対に落とせない。

     「(どうしよう……)」

     環奈はしばらく考え——あることを思いつく。

     「あのっ、一旦離してください!」

     タコノヤマさまの触手が、少しだけたじろぐ。
     環奈がもう一度、はっきりと伝えた。

     「ちゃんと洗うから、ちょっとだけ離してください!」

     タコノヤマさまは少し考えた後——

     「ギュウゥ……」
     しぶしぶといった様子で、環奈の手首を解放した。

  • 445湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:51:43

     環奈は、触手の上に座り込んだまま、襷を解く。

     「よいしょ……っと」

     次に、水干を脱いだ。
     上半身は紺色の腹掛けだけの姿に。

     上階から、どよめきが上がった。

     「おや……?」

     「おいおい……!」

     神々や従業員たちが、興味津々で見下ろしていた。
     湯婆婆も、手すりに手をかけて覗き込む。

  • 446湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:52:08

     環奈は水干を適当に丸め、襷でギュッと縛った。

     「……よし」

     それを両手で持つと——タコノヤマカミの額に押し当てる。

     「ふんっ……!」

     ズルルッ……!!

     そして、雑巾掛けの要領で、思いっきり擦った。

     「ギュウゥゥ……」

     タコノヤマカミは次第に目を細め、気持ちよさそうに唸り始める。

     「(……これ、いけるんじゃ!)」

     環奈はさらに力を込め、ゴシゴシと擦り続けた。

     上階の湯婆婆が、その様子を見ながら口元を歪める。

     「ホホホ……小娘が考えたもんだね。けれど、いつまで保つかねぇ……?」

     意地の悪い笑みを浮かべながら、環奈の様子をじっと見つめていた。

  • 447湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:53:33

    (環奈のアイデアで dice1d3=3 (3) )


    1.そこそこ粘液が取れてきた

    2.粘液は次から次へと滲み出てきてキリがない

    3.安価&ダイス

  • 448湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 13:53:55

    ( >>449 から >>451 でダイス)

  • 449二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 13:57:47

    少しは粘液が取れてきたが水干に粘液が染み込んでギトギトになって使い物にならなくなる

  • 450二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 14:04:24

    徐々に粘液が取れてきたが環奈の体力が尽きてきて攣ったのか触手の海に足を滑らせて揉みくちゃになりながらあられもない姿に

  • 451二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 14:12:51

    心地よさそうにするタコノヤマカミの感情に比例して粘液がどんどん湧き出てきて水干だけでは粘液が染みて拭いきれずに下のズボンも使う事に

  • 452湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 14:14:11

    1. >>449

    2. >>450

    3. >>451

    dice1d3=3 (3)

  • 453湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 14:14:31

    (あ、これ閲覧注意ですわ……)

  • 454二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 14:24:19

    感情で粘液分泌って事はタコノヤマさまもしかして凄いワクワクしながら湯屋に来てた…?

  • 455二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 14:32:21

    >>454

    急に可愛く見えてきたな

  • 456二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 14:55:26

    このレスは削除されています

  • 457湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 15:32:50

     「ン゛ン゛……ギュウゥ……」

     タコノヤマさまが気持ちよさそうに唸る。

     しかし——環奈は、内心で焦り始めていた。

     「(……何これ、全然終わらないじゃん……!)」

     拭っても、拭っても、ヌメリが取れない。
     むしろ、粘液の量が増えている気がする。

     環奈は必死に水干で拭き続けた。
     しかし——限界がきた。

     水干が粘液を限界まで吸収し、ベトベトに膨れ上がる。

     「うっ……」

     粘り気のせいで、もう、使い物にならない。

     その時——

  • 458湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 15:34:07

     ヌルル……

     環奈の背中に、粘つく感触が走った。

     「ひっ……!」

     環奈はビクッと背筋を震わせる。
     タコノヤマさまの触手が、彼女の素の背中をゆっくりと撫でていた。

     「ギュウゥ……」

     タコノヤマさまの視線が、じっと環奈に向けられる。

     触手がさらに絡みつき、もっと、もっと……と環奈を促してくるように。

     環奈の額にじっとりと汗が滲んだ。

     「(どうしよう……このままじゃ……)」

     環奈は必死に考えを巡らせた。

     やがて——ある策にたどり着く。

     「(……でも、そんなの……)」

     できればやりたくなかった。
     けれど——タコノヤマさまの唸り声と視線が、環奈に決断を迫る。

     環奈は大きく息を吸い込んだ。
     そして——

  • 459湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 15:34:39

     「あーっ!!もう!!」

     環奈は叫ぶと、自分の袴に手をかけ、ズルッ!と、勢いよくずり下ろした。

     回廊が一気にざわつく。

     「うわっ!?」

     「おい、マジかよ……!」

     「ヒューッ、儲け儲け!」

     周囲の神々と従業員は、口々に驚きの声を上げ、湯婆婆は、ゲラゲラと笑いだす。

     環奈は袴を丸めると、先ほどの水干のように使い、タコノヤマさまの身体を擦り始めた。

  • 460二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:35:30

    このレスは削除されています

  • 461湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 15:36:01

    (次は >>462 から >>464 でダイス

    ついでに環奈のパンツの雰囲気も(殴

  • 462二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:40:18

    袴もグジュグジュの使い物にならなくなったがそれでもある程度タコノヤマさまを満足させられた
    ヒヨコがプリントされた女児用パンツが粘液や湯等で濡れて張り付き完全に透けていた

  • 463二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:46:08

    さっきより何故か嬉しそうに環奈の下半身に触手を纏わせる神様だったがそれでも懸命に粘液を落とし続ける環奈
    濡れる作業だからとパンツは事前に脱いで穿いてなかった

  • 464二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:55:31

    自分の格好に羞恥で顔を真っ赤にしつつヤケになってさっきよりペースを挙げて綺麗にしていった
    タコノヤマさまはヨシヨシするように剥き出しになった背中や内腿、尻などを撫でたりしてる
    支給された褌を着用、粘液が染みたり触手に揉みくちゃにされたせいで脱げかかってる

  • 465湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 15:57:33

    1. >>462

    2, >>463

    3. >>464

    dice1d3=2 (2)


    (皆さん……w)

  • 466二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:58:57

    現代っ子の感性が裏目に出たか…

  • 467二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 16:06:28

    そりゃ美少女が自分を綺麗にする為にヌルヌルになりながらどんどん脱いでいったら神様も盛り上がるわ

  • 468スレ主25/01/25(土) 17:45:22

    (更新少々お待ちください。)

  • 469二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 18:21:00

    今更だが環奈ちゃんって千尋と比べて発育良かったり身長とか高かったりするんかな令和っ子だし

  • 470二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 19:52:34

    タコ神様今のとこ満足してるっぽいけどこっからどうなるんだろうか
    オクサレ様みたいにゴミ纏ってる訳じゃないし

  • 471湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 20:07:09

     水干も袴も脱いでしまい——環奈は紺色の腹掛けひとつだけの姿になっていた。

     肝心のパンツは、事前に「濡れる仕事だから」と聞かされていたせいで、穿かずに来てしまっていた。
     一番恥ずかしい箇所が、むき出しになっている恥ずかしさに、顔から火が出そうだ。

     「(もう……どうにでもなれ……!)」

     環奈はヤケになりながら、タコノヤマさまの身体を必死に擦る。

     ヌルヌルとした感触。
     生臭い臭い。

     そして——何より不快なのは、上から大勢に見られていることだった。
     神々や従業員の下品な含み笑い、舐めるような視線を、意識せずにはいられない。

     「(頼むから、どっか行ってよぉ……!!)」

     環奈は、心の中で叫んだ。

  • 472湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 20:08:05

     「ギュウウウ……」

     タコノヤマさまが、何やら先ほどよりも嬉しそうに唸る。
     
     ぬるぅ……ネチョォ……

     何を思ってか、何本かの触手を、環奈の細い脚に絡みつかせた。

     「ううっ……!?……くぅぅ……!」

     肌に直接感じる、ヌルヌル、ブヨブヨとした気持ち悪さに、環奈は歯を食いしばる。

     「(このスケベ……!)」

     神様の客だから、仕方がない。
     自分の仕事だから、仕方がない。

     そう言い聞かせながら、懸命に粘液を落とし続ける。

     ——だが、環奈には、知る由もなかった。
     タコノヤマさまは、感情が高揚するほど粘液の分泌が活発になることを——

  • 473湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 20:08:56

    (紳士の皆様、更新が遅くなり申し訳ありません。

    次の展開は >>474 から >>476 のダイスで)

  • 474二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:17:53

    環奈ちゃんの痴態と洗われる気持ちよさを一通り堪能したタコノヤマ様が更にヌルヌルになった触手に環奈ちゃんを馬乗りにさせ紐のとこまで連れていきそのままお湯で流してもらおうとする
    尚触手に馬乗りさせられた環奈ちゃんは股間に伝わるおぞましい感覚でそれどころではない

  • 475二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:24:24

    内腿や尻に恥部をヌルヌルさせられ強烈な不快感と相反する謎の感覚を覚えさせられつつ疲労と筋肉痛でいっぱいいっぱいになりながらどうにか神様を満足させられたが腹掛けも最早機能していない

  • 476二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:29:12

    腹掛けを捲ってみたり触手で一番恥ずかしい部分を這わしまくったりしてホクホクした様子のタコノヤマカミ
    環奈ちゃんはようやく洗っても意味がない事に気づくが袴も使い物にならなくなったので羞恥やら怒りやらを込めて紐を思い切り引っ張りお湯で流す

  • 477湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 20:31:22

    1. >>474

    2. >>475

    3. >>476

    dice1d3=1 (1)


    ( 1レスの♡が急激に増えていて笑いました……

    恐るべし、エロパワー……)

  • 478二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 20:36:43

    上でこの痴態見てる男衆達役得過ぎん?

  • 479湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:28:25

    (Hパート書くの難しい……!!)

  • 480湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:34:49

     タコノヤマさまは、満足げに喉を鳴らすと、環奈の足元にある触手の一本をゆっくりと持ち上げた。
     それは環奈の股の下に入り込み——

     ——ねちょぉ……!

     10年間の人生の中で、誰にも触らせたことがない部位に、触手が触れる。

     「ッ——!?」

     驚きに息を飲む間もなく、環奈は身体が宙に浮いた。

     まるで馬にまたがるような体勢。
     タコノヤマさまの、ブヨブヨと柔らかい触手は、今まで以上にぬるりとした粘液に覆われていて——

     ぞわぁっ……!

     環奈は思わず肩を震わせた。

     「(気持ち悪いぃ……!!)」

  • 481湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:36:10

     けれど、タコノヤマさまに悪意がないことは、なんとなく伝わってくる。
     見上げると、木樋の紐がすぐ手の届く位置にあった。

     「(お湯かけてほしいの……?)」

     環奈はそっと手を伸ばそうとした。
     しかし——

     「っ……」

     触手の感触があまりに独特で、手を伸ばす前に身がすくむ。
     いやらしく、まとわりつくような粘液が、じわりと股間に染み込む感覚。

     その不快さに、小刻みに震えてしまう。

     「ギュウウ……?」

     タコノヤマさまが、環奈の反応を不思議そうに見つめていた。

     環奈は、奥歯をぎゅっと噛みしめる——

  • 482湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:37:16

    (環奈は dice1d2=2 (2) )


    1. 気持ち悪さを耐え抜いて、紐を引く!

    2. どうしても身体が動かない……!

  • 483湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:37:56

    (誰か環奈ちゃんを助けてやってください……

    >>484 から >>486 でダイス)

  • 484二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:42:04

    環のすぐに隣にカオナシが現れた

  • 485二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:42:19

    上から身を乗り出したリンの激励で勇気が出て下半身の感覚を我慢し紐をどうにか引っ張れた
    その際溢れた湯の勢いで傾いた触手の上を滑って謎の気持ちよさで情けない声を上げながら湯船に突入

  • 486二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:44:29

    同室の女子達のエールでどうにか気合いを入れて湯を出せた環奈だが触手から滑り落ちて腹掛けも思い切り捲れた姿を晒してしまう

  • 487湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:45:05

    1. >>484

    2. >>485

    3. >>486

    dice1d3=1 (1)

  • 488湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:45:24

    (一番難しいの来たな……w)

  • 489二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:48:27

    カオナシ!?カオナシなんで!?

  • 490湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:53:27

     環奈が紐を引こうとする手を伸ばせずにいた、その時だった。

     「ア……」

     小さな声が、すぐ隣から聞こえた。
     環奈は、ハッとして振り向く。

     ——カオナシ。

     いつの間にか、カオナシが風呂釜の縁に立っていた。
     カゲのような黒い姿、白い仮面の下から、じっとこちらを見つめている。

     回廊の神々や従業員たちも、突然現れた存在に気づき、ざわめき始めた。

     「なんだ、アレ……?」

     「見たことあるぞ……!」

     「いつ現れた……?」

  • 491湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:53:38

     その声が湯婆婆の耳にも届く。

     「んんっ……!?」

     湯婆婆は回廊の手すりに手をかけ、ギョロリと目を見開いた。

     「ありゃあ、カオナシじゃないか! 今すぐ追い出しな!」

     湯婆婆の怒鳴り声が響く。
     父役が、ビクリと肩を震わせた。

     「は、はい!!」

     慌てて応えると、すぐに近くのカエル男たちを指さす。

     「そなたたち、ついてまいれ!」

     カエル男たちは一瞬戸惑いながらも、父役の命令に従い、足早に階下へ向かって駆け出していった。

     環奈は——じっと、カオナシを見つめていた。

     「(……なんで、カオナシがここに……?)」

  • 492湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 21:54:10

    (カオナシが dice1d2=1 (1) )


    1. 紐を引いてくれる

    2. 安価&ダイス

  • 493二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 21:54:34

    これアシナシの存在を湯婆婆が気づけなくなるやつ…

  • 494湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 22:02:21

     環奈の身体は、まだ震えていた。
     お湯を出さなくちゃいけないのに、動くと気持ち悪いのがお股に伝わってきて、動けない。
     ねちっこく纏わりついてくる粘液のせいで——どうしても、手が伸ばせなかった。

     その時だった。

     すっ……

     カオナシが、ゆっくりと片腕を伸ばす。

     環奈の目の前を、黒く細長い指が横切る。

     「(——カオナシ?)」

     カオナシの手が、環奈の代わりに紐を掴んだ。

     「あっ……!」

     思わず、環奈の口から声が漏れる。

     カオナシは、何も言わず——ただ、静かに紐を握り締めると、

     グッ……!!

     力強く、それを引いた。

  • 495湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 22:04:27

     ドオオォォッ!!

     木樋の先端から、熱い薬湯が一気に噴き出す。

     タコノヤマさまは、頭からお湯を浴び、そのまま湯気の中に包まれていった。
     巨大な体積があるせいで、お湯は風呂釜からあふれ出し、床へと流れていく。

     ベトベトしていた床が洗い流され——どんどん綺麗になっていく。

     回廊の上で見ていた湯婆婆が、眉を跳ね上げた。

     「ああ、ああ! バカだねえ! 高価な薬湯を!」

     環奈は、ただ呆然とその光景を見つめていた。

     ——カオナシが助けてくれた?
     でも、どうして?

     環奈が何か言おうと口を開いた、その瞬間——

     カオナシの姿が、すぅ……っと消えた。
     まるで最初から、そこにはいなかったかのように。

  • 496湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 22:05:11

    (次の安価&ダイスです >>497 から >>499 )

  • 497二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:06:56

    しばし呆然としてた環奈だったが格好はそのままだったので駆けつけた父役達に腹掛けも張り付いて股間丸見えで触手に跨った姿を見られる

  • 498二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:09:23

    湯の気持ち良さに緩んだのか急に傾いた触手の上を滑って謎の気持ちよさで情けない声を上げながら湯船に突入
    腹掛けも外れてしまう中ヌルヌルが取れたタコノヤマさまの満面の笑みを見る

  • 499二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:10:19

    >>497

    の後に

    >>498

  • 500湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 22:16:59

    1. >>497

    2. >>498

    3. >>499

    dice1d3=2 (2)

  • 501二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:17:11

    今更だけど釜でタコ茹でてるみたいな絵面だな…

  • 502二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:21:29

    このタコ滅茶苦茶良い空気吸ってやがる

  • 503湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 22:28:50
  • 504二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 22:32:09

    >>503

    この短時間でここまで簡潔かつわかりやすく纏まったあらすじを…!?

  • 505湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:03:44

     大湯の入口の方から、バシャバシャと、荒々しい水音が響く。
     父役とカエル男たちが大慌てで駆け込んできた。

     しかし、そこにカオナシの姿はない。

     「カオナシは……どこだ……?」

     父役がぜいぜいと息を切らせながら環奈を見やる。
     環奈も、カオナシのいたはずの場所に目を向けるが、そこにはもう誰の姿もなかった。

     「いません……」

     環奈が呟いた、その瞬間——

  • 506湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:05:02

     ——ぐらり。

     環奈を載せていたタコノヤマさまの触手が、不意に傾き始めた。

     「えっ——」

     環奈の体が、つるりと滑り始める。
     徐々に勢いがつき——触手の表面が環奈の股間を擦り上げた。

     「んぃ~~~~ッ!?」

     環奈は声にならない、情けない悲鳴をあげる。
     身体に電流が走るような感覚。
     それは、あまりにも強烈で——そして甘美だった。

     しかし、それに浸る間も与えられず——

     ドボォンッ!!

     環奈は、薬湯の渦を巻く風呂釜の中へ、落下した。

     「……ごぼぼっ!がぼぼぼっ!!」
     
     環奈は必死にもがく。
     薬湯と触手の中で揉みくちゃにされて、環奈の身体は動かすこともままならない。

     「(た……助けて……!)」

  • 507湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:05:38

     そう心の中で叫んだ途端——身体が、ぐいっと持ち上げられる。
     タコノヤマさまの触手が、すかさず環奈を拾い上げたのだ。

     「ッ……ぷはぁ!!」

     環奈は咳き込みながら、身体を震わせた。

     すとん、と触手が優しく床に寝かせてくれる。環奈はぼうっと天井を見上げたまま、ゆっくりと呼吸を整える。

     しかし——その身体には、一枚の布も巻かれてはいなかった。
     薬湯の渦と触手が、最後の衣類である腹掛けを、剥ぎ取ってしまったのだ。

     環奈は、一糸まとわぬ裸身を父役やカエル男たちの前に晒している。
     彼らは、互いに顔を見合わせ、ごくりと唾を呑み込んでいた。

  • 508湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:06:09

     やがて、流れ続けていた薬湯の勢いが少しずつ弱まり——とうとう止まった。

     タコノヤマさまの巨体が、静かに湯気の中から現れる。

     その体は、つるりと輝くように綺麗になっていた。
     紫がかったヌメリは完全に消え去り、赤みを帯びた肌から、ゆらゆらと湯気が立ち昇っていた。

     タコノヤマさまは、満足そうに「ギュウゥゥ……」と低く唸ると、ゆっくりと大湯を後にした。
     あられもない姿の環奈を残して——

  • 509湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:07:03

    (その夜 dice1d2=1 (1) )


    1. 異形の男どもにハダカを見られたショックから立ち直れない環奈

    2. 安価&ダイス

  • 510二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:08:16

    かわいそ…

  • 511二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:13:03

    タコノヤマさまご褒美か何かこう…無いんですか!?

  • 512湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:20:08

     夜の帳が、営業を終えて静まり返った湯屋を、静かに包み込む。

     環奈は、宿舎のベランダに座り込んでいた。
     木製の手すりに額をもたれさせ、夜風に吹かれながら、じっと下を見つめる。

     干された水干と袴、腹掛けが、隣でゆらゆらと揺れていた。
     今、環奈が着ているのは、最初にここへ来たときの私服——

     「……はぁ……」

     ため息をついた、そのとき——

     「おーい、環奈!」

     背後から陽気な声がかかる。

     振り向くと、片手に皿を持ったリンがやってきた。
     皿の上には、ふっくらとした餡饅が二つ。

     「ほら、差し入れだ。食えよ」

     そう言いながら、環奈の隣に腰を下ろす。

     「……リン」

     環奈はかすれた声を出したが、すぐにまた視線を落としてしまう。

  • 513湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:24:00

     そんな彼女の様子を見て、リンは少しだけ表情を曇らせた。

     「なーんだよ、そんな暗い顔して。元気出せってば! お前、あのベトベトの気持ちわりぃ客相手に、よくやったじゃねーか」

     リンはそう励ますが、環奈は手すりに額を押しつけたまま呟く。

     「無理だよ……」

     「無理ィ?」

     リンが呆れたように聞き返す。

     「みんなの前で……あんな姿、見られちゃって……」

     そう言って、環奈はギュッと拳を握る。

     「すっごく、恥ずかしかった……」

     その声は、悔しさと情けなさが入り混じっていた。

     リンは何も言わずに、皿の餡饅を一つ取ると、大きくかぶりついた。
     もぐもぐと口を動かす。

     環奈のぼやきに、どう返せばいいか考えていたのだ。

     やがて飲み込み、口を拭うと、ぽつりと口を開く——

  • 514湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:24:41

    (リン「( >>515 から >>517 でダイス)」)

  • 515二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:28:01

    湯婆婆の無茶振りにあんだけ身体張ってやり遂げたの素直にすげえと思うぜ、正直見直した

  • 516二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:31:31

    あん時の環奈は間違いなく湯婆婆の想像すら超える活躍ぶりだったぜ?
    客の為にあそこまで覚悟決めた姿に上役達も皆一目置くようになってたよ、だから自信持ちな!

  • 517二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:34:11

    …環奈はその恥ずかしい事を客の為に我慢してやり遂げたんだ、あそこで見てた連中全員アンタを馬鹿になんてしやしないさ

  • 518湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/25(土) 23:36:38

    1.>>515

    2. >>516

    3. >>517

    dice1d3=1 (1)


    (環奈、リンの言葉に dice1d3=3 (3) )

    1. 小さく「……ありがとう」と

    2. 色んな感情がこみあげてきて泣き出す

    3. >>519

  • 519二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:40:00

    混じり気一切無しの称賛に恥ずかしくなってタコノヤマさまの話に話題を滑らせて誤魔化してしまう

  • 520湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:10:22

     「オレはさ」

     リンが、もう一つの餡饅を皿ごと環奈に差し出しながら言った。

     「湯婆婆の無茶振りに、あんだけ身体張ってやり遂げたの、素直にすげえと思うぜ」

     環奈は目を瞬かせる。

     「正直、見直したよ」

     まっすぐな言葉だった。混じり気のない、心からの称賛。

     環奈は思わず口を開きかけたが——すぐに視線をそらし、餡饅を受け取る。

     「……でもさ、タコノヤマさま、すごかったよね」

     環奈は餡饅をかじりながら、わざと話題をずらすように続ける。

     「脚がブヨブヨで、もうヌルヌルで……それに、お風呂浸かったら真っ赤になっちゃうんだもん」

     「ハハッ、そうだな」

     リンが思い出し笑いをしながら、肩をすくめる。

     湯屋の夜は更けていく。
     ベランダに座る二人の背後では、疲れた従業員たちの寝息が微かに聞こえていた。
     夜風が吹き抜ける中、環奈とリンの笑い声が、しばし静かな湯屋の闇に溶けていった——

  • 521湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:12:08

    (次の展開を決めて、終了します。 dice1d4=3 (3) )


    1. その夜、アシナシの動向

    2. その夜、環奈が見た夢

    3. 次の日、別の神の相手をすることに

    4. 安価&ダイス

  • 522二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:14:36

    一部始終見てたスケベな神様達に指名されたか…

  • 523湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:15:56

    (どんな神様にしましょうか。 >>524 から >>526 で)

  • 524二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:17:38

    丸々とだらしない腹をした大きなおじさんじみた狸

  • 525二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:18:02

    金山神社のかなまら様

  • 526二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:21:44

    タコノヤマさまの親戚の海の神様
    タコノヤマさまより身体は小さいが非常にスケベ

  • 527湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:27:03

    (かなまら様……検索してひっくり返りましたよwww
    下2つがダイスで選ばれたら、もうジブリじゃ作れない作風になってしまう……)

  • 528湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:29:33

    1. >>524

    2. >>525

    3. >>526

    dice1d3=3 (3)

  • 529湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 00:30:38

    (では、タコノヤマさまの親戚の方のデザインを >>530 から >>532 で募ります)

  • 530二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:38:02

    タコノヤマさまを二回りぐらい小さくした感じでタコノヤマさまより体色が黒ずんでいる
    触手も環奈の腕ぐらいの細さになっているが長さと量は上

  • 531二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:40:00

    大体呪術廻戦のダゴン(進化後)みたいな外見
    足部分が大量の触手になっている

  • 532二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:43:51

    湯婆婆ぐらいの大きさのクラゲ
    傘部分が頭と胴体を兼任しており八本の主腕に無数の触手がある

  • 533二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:58:27

    スケベな海の神様から逃げられない環奈ちゃん

  • 534湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 04:22:51

    1. >>530

    2. >>531

    3. >>532

    dice1d3=1 (1)

  • 535湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 09:27:54

    (湯屋=遊郭説を採用して、環奈ちゃんが異形の神様への接待♀にズブズブ嵌っていくIFルートも、需要あるかもしれませんねぇ……
    こっちが完結してからですが。)

  • 536二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:35:32

    変態タコ神様達の気持ち悪ささえ目を瞑ればリピーターになったらある意味滅茶苦茶頼れる後ろ盾になりそうなんだよな…
    なんだかんだ海の神様だから力強そうだし

  • 537二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 11:32:12

    カオナシ登場で湯婆婆の感じた違和感が上書きされて警戒薄れたアシナシがどう暗躍するかが怖い

  • 538湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 11:51:42

     ——次の日も、湯屋は開店準備で慌ただしく活気づいていた。

     カエル男とナメクジ女たちは、それぞれの持ち場につき、手際よく働いている。
     番台では、薬湯の札が次々と交換され、湯屋の一日がまた新しく動き始めていた。



     ——そんな中、大湯では、環奈が風呂釜の掃除を終えたところだった。

     自分の背丈ほども深い風呂釜から、両手を使って必死に這い上がる。

     「ふっ……!くっ……!……ふぅ……」

     縁の上にようやく顔を出し、腕を突いて息をついた瞬間——

     「こんちには、環」

     優しく微笑みかける声に、環奈は思わず顔を上げた。

     そこにいたのは、アンだった。

  • 539湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 11:53:00

     「あっ……こんにちは……」

     環奈は驚いた表情を見せながらも、返事を返す。

     アンは環奈の手を引いて、風呂釜の外へと引き上げてくれる。

     「よい、しょっ……と。……昨日は大変だったそうね」

     心配そうに声をかけるアンに、環奈は決まり悪そうに唸る。

     「うーん……まあ、なんとか……」

     アンも、クスッと微笑む。

     「でもね、お客様はみんな、それぞれの形で『満足』を求めていらっしゃるのよ」

     環奈は、その言葉の意味をゆっくりとかみしめながら頷いた。

     するとアンは、小さく息をつきながら、何かを取り出した。

     「今日もきっと大変だと思うから……これ、持っていてちょうだい」

  • 540湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 11:53:30

    (アンがお守り代わりにくれたもの >>541 から >>543 でダイス)

  • 541二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:08:37

    磨かれた純白の丸い石
    ほのかな温かみがある

  • 542二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:10:39

    中央に目がある星の印

  • 543二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:12:08

    小さい古びた巾着袋
    中には何か小さい物がジャラジャラ入ってる

  • 544湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 12:14:06

    1. >>541

    2. >>542

    3. >>543

    dice1d3=1 (1)

  • 545二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:17:23

    温かみのある石

  • 546湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 12:48:20

     差し出されたのは、純白の丸い石だった。

     環奈は不思議そうに見つめながら、それを受け取る。
     手のひらにのせると、ほのかに温かみがあり、どこか安心感を覚える不思議な感触だった。

     「これは……?」

     環奈が不思議そうに見つめると、アンは優しく微笑みながら言った。

     「私がここに来たばかりの頃、ある人がお守りとしてくれたものなの」

     アンの青い瞳が、どこか遠くを見ているように揺れる。

     「今はあなたが持っていて」

     環奈は驚きながらも、大事そうに石を両手で包んだ。

     「……いいの?」

     アンは静かに頷いた。

  • 547湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 12:48:41

     ——その時。

     「環!」

     突然、兄役の声が響いた。
     環奈がハッとして顔を上げると、兄役がこっちに向かって歩いてくる。

     「一番客が来たぞ!」

     環奈は、すぐに背筋を伸ばし、「はい!」と元気よく返事をする。

     「アン!ありがとね!」

     環奈は、心からの気持ちを伝えると、石を大切に懐へしまい、玄関へ向かって駆け出していった。

     アンは、そんな環奈の背中を静かに見送った——

  • 548二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:58:49

    ある人…誰だ…

  • 549湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 13:35:13

     玄関に到着すると、すでに父役が立っていた。
     父役は、環奈が駆けつけると、彼女をちらりと見て言った。

     「環、今日そなたがお世話するのは、タコノヤマさまのご親戚だ」

     その一言を聞いた瞬間、環奈の脳裏に昨日の悪夢のような記憶が蘇る。
     触手の不気味な蠢き、肌にまとわりついた粘液の感触……

     体中がうずくような気持ち悪さが押し寄せ、環奈は無意識に身をすくませた。
     しかし、視線を上げると、父役の眼差しが環奈を見下ろしている。

     「わ……わかりました……」

     環奈はなんとか声を絞り出し、うなずいた。

  • 550湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 13:37:14

     その直後——

     ズル……ズルルル……

     触手が地面を這う、湿った音が玄関の外から聞こえてくる。

     環奈はゴクリと唾を飲み込み、心の中で、しっかりしなきゃ——と自分に言い聞かせた。

     やがて、客が暖簾をくぐって現れる。
     ——それは、確かにタコノヤマさまに似た姿だったが、その体躯は環奈が想像していたよりもずっと小さかった。

     大きさは、大人の男性ほど。
     触手も、昨日のような太い怪物じみたものではなく、環奈の腕ぐらいの太さしかない。
     しかし、体表はタコノヤマさまよりも黒ずんだ紫色をしており、どこか不快感を覚える姿だった。

     環奈はそんな客を見つめながら、心の中で安堵と不快感が入り混じった思いを抱いた。

     「(昨日よりは、マシかな……?)」

  • 551湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 13:38:45

     「よくお越しくださいました!」

     父役と兄役が揃って客に深々と頭を下げ、礼を述べる。

     「環!お代を頂戴して、お連れいたせ!」

     父役がきっぱりとした声で環奈を呼び、次の指示を出す。

     「ハイ!」

     環奈はすぐさま返事をし、客が差し出した触手に目をやった。
     吸盤に吸い付いている小判を、慎重に引き剝がす。

     「それでは、ご案内します……!」

     環奈は少し強がった声でそう告げ、客を先導して歩き始める。

     後ろからは、ズル……ズルル……と、触手が床を這う音がついてくる。
     振り返ることなく進む環奈の背中には、汗がじっとりと滲んでいた。

     ——また、長い一日が始まろうとしている。

  • 552二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 13:50:40

    このレスは削除されています

  • 553湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 13:51:12

    (大湯に移動です。 >>554 から >>556 でダイス)

  • 554二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 13:55:26

    ひとまず何をすればいいか聞いてみた環奈に触手で服を捲ったりして脱いでほしいとアピールする変態神

  • 555二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 13:57:39

    移動中もやたら身体を舐めるようなヌルッとした視線を感じたり触手で尻などを撫でられて不快感でゾワゾワする環奈

  • 556二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:02:04

    ずっと下半身に舐め回すような視線を感じ思わず内股になりながらも客前だから必死に恥じらいと不快感を隠す環奈
    そんな環奈の反応に興奮を隠せずヌルヌルが出まくるスケベタコ神

  • 557湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:12:49

    1. >>554

    2. >>555

    3. >>556

    dice1d3=1 (1)


    (紳士どもめ……)

  • 558二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:16:36

    初手から腹掛け一丁姿を催促するスケベ神の鑑

  • 559二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:25:56

    タコはスケベ
    ちい覚えた

  • 560湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:27:39

     ——カポーン……

     蛸神は、大湯の巨大な風呂釜に浮かびながら、優雅なひと時を過ごしていた。
     環奈は少し離れた場所から、相手の様子を観察している。

     「(……こんなのでも神様で、お客さんだし……ちゃんとお世話しないとね)」

     環奈は小さく息を吸うと、おずおずと尋ねた。

     「あ、あのっ……何か……ご希望ありますか?」

     すると蛸神は、ゆっくりと振り返る。

     「グキュゥゥ……」

     ゆらゆらと湯の中で触手を泳がせ、縁に掴まると——

     にゅぅぅ~……

     触手の一本を環奈に伸ばしてきた。

     「ッ——!?」

  • 561湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:27:50

     急激に伸びてきた触手に、環奈は思わず後ずさる。
     しかし、触手は環奈を追いかけてさらに伸びると、お腹のあたりを水干越しにつんつんと突いてきた。

     「(なに……?何なの……?)」

     環奈は困惑に眉をひそめながら、相手の意図を探ろうとする。

     やがて蛸神の触手が水干をギュッ……と掴み——

     「……えっ?」

     バッ!!と、上へ捲り上げた。

     「ッ~~~~!!だっ……!ダメです!!」

     環奈は慌てて両手を水干にあてがい、抵抗した。

     しかし、蛸神の力は強い。
     触手によって持ち上げられる水干の下から、紺色の腹掛けが覗く。

  • 562湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:28:35

    (さあどんどん行きましょう >>563 から >>565 )

  • 563二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:32:51

    抵抗し続けようとした環奈だったがアンの言葉を思い出し羞恥で顔を茹だらせながらも覚悟を決め水干、そして袴も脱いだ

  • 564二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:36:17

    水干に気を取られて下に伸びる触手に気づかないまま袴を降ろされ下半身丸出しになった環奈
    尚今日も汚れる仕事だったのでまたパンツを穿いてなかった

  • 565二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 14:39:08

    背後から袴の中にいつの間にか入ってた触手がチュルンと環奈の股を擦り上げながら持ち上げてお湯に入れる
    それに昨日みたいな情けない反応をしてしまう環奈

  • 566湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:40:08

    1. >>563

    2. >>564

    3. >>565

    dice1d3=3 (3)

  • 567湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:54:49

     「んんん……!くぅぅ……!!」

     環奈はムキになって水干をぎゅっと掴み、しゃがみ込もうとした。
     しかし、目の前の触手1本に気を取られ、その隙に、背後から別の触手が忍び寄っていたことに気づけなかった。
     それは、静かに床を這って、環奈の股の下に潜り込むと——

     ——ニュルンッ!!

     一気に、環奈を持ち上げた。

     「あぁっっ——!?」
     
     袴越しの股間に伝わる、気持ち悪さとも、気持ちよさともつかない感覚。
     環奈は昨日のように、情けなさすぎる悲鳴を上げてしまった。
     無意識のうちに内股になって、股間に走る違和感を消そうと体をよじる。

     その間に、触手は環奈を馬乗りにさせたまま、そ~っ……と本体へ近づけていく、

     「あっ……!?」

     環奈はハッとして、自分の状況を自覚した。

     「おっ……降ろして……!」

     咄嗟に声を上げた環奈だったが、その時にはすでに、彼女の身体は湯舟へと降ろされていた。

     ざぶぅん……

  • 568湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 14:58:17

    (こういうパートは皆さんの想像力にお任せしたいので、ダイスを振りまくります。

    >>569 から >>571)

  • 569二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:02:09

    びしょ濡れになって縁に上がる環奈を見てイタズラ成功みたいな無邪気な笑い方?をするタコノヤマ親戚神
    服はいつの間にか水中で脱がされて腹掛けと濡れ透け女児パンツのみになっていた

  • 570二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:07:16

    流石にムッと来て泳ぎながら文句を言おうとしたが湯の中で袴を抜き取られた感覚に一気に顔が羞恥に染まる(またパンツを脱いでいた)
    そしてそのまま縁に座らされて満足そうな顔で下半身丸出しの環奈を顔見するタコノヤマ親戚

  • 571二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:10:30

    びしょ濡れになりながら至近距離でやけに環奈が脱ぐのを熱望してるみたいな目線にアンの言葉もあり色々自分で自分に言い訳しながら覚悟を決めて脱ぎだす環奈

  • 572湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:11:53

    1. >>569

    2. >>570

    3. >>571

    dice1d3=1 (1)


    (もうアンの掘り下げとか、アシナシのこととか、皆さんどうでもよくなってそう(偏見))

  • 573二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:18:02

    >>572

    今はお仕事パートだから…(環奈ちゃんとタコ神の絡みが思いのほか濃かったからつい)

  • 574湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:23:13

     熱い薬湯に、肩まで沈められる。環奈は思わず目を閉じ、深く息をついた。

     「(気持ちいい……)」

     ——けれど、自分はお客の世話をしなくちゃいけない。
     そう思い出してすぐに気を取り直すと、自分を支えていた触手をグッと蹴り上げ、湯の中をスゥーッ……と泳ぎ、風呂釜の縁に掴まった。
     そして、蛸神に向き直る。

     「……もう……ご用件は何なんですか?」

     環奈が口を尖らせながら尋ねると、蛸神は小さな目でじっと環奈を見つめてから、にやぁっ……と、笑みを浮かべる。
     なにか悪戯が成功した時のような目——
     環奈はその目に、背筋がゾワッ……と震える感覚を覚えた。
     
     「(……なに?)」

     すると、蛸神が触手の一本を水面から持ち上げ、環奈に見せつけるように、ゆらゆらと揺らす。
     その先端には——明らかに見覚えのある、ピンク色の布が引っ掛かっていた。

  • 575湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:23:39

     「え——」

     それは、環奈の水干。それに、袴。
     環奈は呆然となりながら、恐る恐る視線を下に向ける。

     そして——自分の状況を理解した。

     さっき、一瞬目を閉じてしまった隙に、袴と水干を脱がされていた。
     その結果——今の環奈は腹掛けにパンツだけの、あられもない姿となっている。
     それらも湯に濡れ、透けて、肌に張り付いていた。

     「ッ……!!……いやあああっ!!」
     
     環奈は顔を真っ赤にし、腕で胸元と股間を隠しながら叫んだ。

  • 576湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:24:27

    dice1d2=2 (2)

    1. >>571

    2. 安価&ダイス

  • 577湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:24:59

    ( >>578 から >>560 )

  • 578二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:26:18

    周囲に助けを求める(助けてくれるかはまあ、うん)

  • 579二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:27:20
  • 580二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:27:50

    何事かと周囲に人が集まる

  • 581湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:30:43

    1. >>578

    2. >>571

    3. >>580

    dice1d3=3 (3)

  • 582二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:36:20

    また晒し者状態になっとる

  • 583二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 15:49:52

    今こんなことになってんの!?

  • 584湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:51:39

     だが——それが却って逆効果だった。

     環奈の悲鳴が吹き抜けの空間に響き渡り、他の客や従業員の耳を打った。

     「なっ……何事だ!?」

     「大湯の方からだぞ!」

     「……うわっ!あれ見ろよ!」

     カエル男たちが口々に言う。
     その声に反応して、他の客も次々と回廊から身を乗り出して、大湯を覗き込んだ。

     環奈は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤に染めていた。

     「ひぃぃ……!見ないでぇぇ!!」

     また悲鳴を上げた環奈だったが、その声も客や従業員の視線を集めるばかりで、ますます恥ずかしさは加速する。
     その場にいる者たちは、みな環奈の姿に釘付けになり、眼球が熱くなるほど見つめていた。

  • 585湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 15:53:04

    dice1d3=1 (1)


    1. 満足したので湯から上がる蛸神

    2. アンかリンが助け舟を出す

    3. 安価&ダイス

  • 586二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 16:00:00

    うーんこれでも満足させ方がわかりやすくてしっかり駄賃も前払いしてる分良客の部類なんだよな…

  • 587湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 16:32:30

     蛸神は、環奈の窮地を存分に愉しんだ後、満足げに触手を大きく広げた。
     その動きに合わせて水面が大きく波打ち、環奈は思わず風呂釜の縁にしがみつく。

     「グォォォォ……」

     深い唸り声とともに、巨大な体が湯から持ち上がっていく。
     すると、水干と袴を持った触手が、そっと環奈に差し出された。

     「あっ……」

     環奈は手を伸ばそうとしたが——
     その瞬間、触手がスッと引っ込み、服はポーンと放り投げられた。

     「えっ!?」

     服は環奈の手の届かないところに落ちていく。
     蛸神は、クックッと笑うような音を立てながら、ゆっくりと風呂釜から這い出ていった。
     その姿は、どこか愉快そうだった。

  • 588二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 16:36:27

    最後にイジワル!

  • 589湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 16:37:39

    (その夜 >>590 から >>592 でダイス)

  • 590二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 16:53:05

    泣きながら眠りにつく

    丁寧な描写で大変美味でした。ご馳走様です。またお願いします

  • 591二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:01:51

    励ましの宴会が行われる
    環奈ちゃんは少しだけ元気を取り戻す

  • 592二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:05:10

    >>591

    の後に2回も関わったからかタコノヤマさまに関する淫らな夢を見てしまう

  • 593二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:05:27

    辛くてすぐに布団に入る

  • 594湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 17:14:06

    1. >>590

    2. >>591

    3. >>592

    4. >>593

    dice1d4=1 (1)

  • 595湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 18:47:06

     夜、大部屋では、湯女たちがひしめき合って寝息を立てている。
     部屋は静寂に包まれていた。

     布団の中で体を丸めた環奈は、ひとり眠れず、ひっそりと息をつく。

     「(……どうしてこんなことに)」

     寝返りも打たず、環奈は頭の中でぐるぐると思考を巡らせていた。

     自分は何もしていないのに、2柱の蛸神たちにあんな姿を見せつけられた。
     そのショックは大きく、環奈の心はズタボロだった。

     「(……情けない)」

     羞恥で頭がおかしくなりそうだった。

     環奈は両手で白い石を握りしめる。
     アンから貰ったこの石は、もう冷え切っていた。まるで今の自分の心境を映し出す鏡のように。

     「……もう嫌だ……」

     枕に頬を擦りつけながら、環奈は誰に言うわけでもなく小さく呟く。
     そして、一人静かに涙を流した。

  • 596湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 18:54:03

     風呂場での惨めな出来事が頭から離れず、環奈はひっそりと泣き続ける。

     「(……どうして私ばっかり)」

     学校にも、家にも、居場所がなかった。挙句、この世界にも。
     ——なぜ、こんな仕打ちを受けなくてはいけないのか。

     悔しさが込み上げる。情けなさもある。でも、何よりも憤りを感じた。

     「(……どうして)」

     異形の神たちに物のように扱われて、それに対抗する手段も持たない——
     その現実に、このまま一人で耐え続けなければならないと思うと、心が重くなった。

  • 597二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:03:30

    逆境続きの環奈ちゃんお労しや…

  • 598湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 19:09:27

     日が昇り始める前の、未だ暗闇が残る時間帯。環奈は目を覚ました。
     リンを含む他の湯女たちは、まだ夢の中にいるようだ。

     「(……朝か)」

     環奈の意識が徐々に浮上してくる。
     モヤモヤした気持ちはまだ残っているものの、一度泣いたことで、少しは心が落ち着いていた。

     環奈は布団をそっと抜け出すと、枕元に畳んでいた水干と袴を手に取る。
     もうすっかり見慣れたピンクの衣服に身を包むと、手櫛で髪を整えて、二つのおさげを結んだ。

     環奈はそっと障子を開けると、音を立てずに部屋の外へと出る。
     そして、廊下を静かに歩き始めた。

  • 599湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 19:14:50

    (傷心の環奈が向かう先 >>600 から >>602 でダイス)

  • 600二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:17:44

    花畑

  • 601二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:20:01

    湯屋正面口の橋

  • 602二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:22:50

    原っぱのあった海

  • 603湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 19:42:11

    1. >>600

    2. >>601

    3. >>602

    dice1d3=3 (3)

  • 604二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 19:51:54

    郷愁に駆られたか…

  • 605湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:09:31

     ボイラー室の潜り戸の前で、環奈は立ち止まった。

     「(……釜爺、まだ寝てるよね)」

     小さく息を呑み、ゆっくりと戸を開ける。

     釜爺は番台の上で、いびきをかいている。
     目当てのランドセルと靴は、その隣に置かれていた。

     環奈が手を伸ばし、それらを抱きかかえた時——

     サワサワサワ……

     ススワタリたちが次々と穴から現れ、上がり框の下に集まってきた。
     彼らは何かを訴えるように、キィキィと鳴いている。

     環奈は、彼らの姿を見つめた。
     ——けれど、すぐに目を伏せた。

     足元の黒い生き物に後ろ髪を引かれるような気持ちを振り払うように、環奈はボイラー室を後にする。

     もう、ここにはいたくない。
     ここから、出ていってやる。

  • 606湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:10:34

     最初は怖くて仕方なかった外の階段を、環奈は迷うことなく登っていく。

     落ちそうになったトラウマがあるはずの橋も、一度も振り返ることなく歩いていく。

     走るほどの勢いで、町の大通りを抜け、商店街を突っ切る。

     ——元の世界に居場所がないことなんて、分かってる。
     でも、少なくとも、ここよりはマシだ。

     自分を舐めるような嫌らしい目も、あんな悔しい思いをすることも、もうたくさんだ。

     環奈は、草原へと走った。

  • 607湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:11:17

     けれど、そこに広がっていたのは——果てしない水面だった。

     「え……?」

     環奈は思わず足を止める。
     呆然と石段の上に立ち尽くした。

     ——帰れない。

     その現実が、環奈の心をじわじわと締めつけた。

  • 608湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:15:34

    (湯婆婆にバレる前に戻ろうね。 dice1d3=1 (1) )


    1.振り返るとアンがいる

    2.銭婆の御札を握りしめて念じる

    3.安価&ダイス

  • 609二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:18:28

    アンちゃんがんばえー

  • 610二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:42:41

    よく考えたら初手銭婆のとこ行ったから知らないままだったんか環奈ちゃん

  • 611湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:42:59

     「逃げることはできないわ」

     静かな声が、環奈の背後から響いた。
     環奈はハッとして振り返る。

     ——アンが、そこに立っていた。

     「湯婆婆さまに知られる前に戻りましょう」

     アンの口調は穏やかで、かつ諭すようだった。

     「手遅れになる前に。湯婆婆さまは、あなたをきっとひどい目に遭わせるに違いないわ」

     環奈の胸に、ギュッとした痛みが走る。

     「……もう、ひどい目になんて遭ってるってば!」

     環奈は、思わず叫んでいた。

     「バケモノたちに物みたいに扱われて!あんな恥ずかしい思いまでさせられて!あんなとこで働き続けるなんて、正気じゃないよ!」

     声が震えているのが、自分でもわかった。

     アンは、しばらく何も言わずにいた。
     ただ、じっと環奈の言葉を噛み締めるように、黙っていた。

     やがて、ゆっくりと口を開く。

  • 612湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 20:43:25

    (アン「( >>613 から >>615 でダイス)」)

  • 613二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:45:01

    そうだね…でも、逃げたら好転するきっかけも取りこぼしちゃうよ

  • 614二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:49:41

    昨日はごめん…けど今から君を必ず守るから

  • 615二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:54:00

    環奈…起きた出来事や縁には意味がある、それだけは忘れないで
    どんなに辛い事にも怖い事にも、必ず何か好機に繋がるきっかけがあるから目を凝らしてよく見て

  • 616二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 20:56:59

    1. >>613

    2. >>614

    3. >>615

    dice1d3=1 (1)

  • 617二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 21:11:33

    優しいけどちゃんと厳しい事も言うアンちゃん

  • 618湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 21:44:07

     「そうね……でもね、環奈」

     彼女の声は穏やかで、けれど確かな重みを持っていた。

     「逃げてしまっては、好転するきっかけも永遠に取りこぼしてしまうわ」

     環奈は言葉を失った。

     「……きっかけ?」

     呆然と呟くと、アンは小さく頷いた。

     「ええ。それにこのまま逃げても、あなたが感じた悔しさや惨めさは、何も変わらないわ」

     環奈の胸が、ズキッと痛む。

     しかし、アンの声には、非難や咎めるような響きはなかった。ただ、環奈に確かめるような、そんな声音だった。

     「でも、逃げずにもう少し踏みとどまれば——きっと、何かを変えられる。何かを掴めるはずよ」

     アンの瞳は、どこか寂しげに輝いていた。

  • 619湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 21:44:25

     環奈は唇を噛む。

     本当にそう?

     この世界に迷い込んでから、苦しいことばかりだった。恥ずかしくて、情けなくて、悔しくて。

     それでも——

     ふと、銭婆とリンが言ってくれた言葉を思い出す。

     「あんたは決して一人じゃない」

     「あんだけ身体張ってやり遂げたの、素直にすげえと思うぜ」

  • 620湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 21:46:07

    (環奈「……( >>621 から >>623 でダイス)」)

  • 621二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 21:48:13

    そう…だね、そうだ。
    怖い思いも恥ずかしい思いもいっぱいしたけど、励ましてくれたり支えてくれる誰かがいたんだ私

  • 622二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 21:51:31

    ありがとうアン、弱気になって皆の優しさを台無しにするとこだった

  • 623二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 21:54:09

    アンはッ…アンは、私がどんなに恥ずかしい事になっても情けない姿を晒しても、それでも、友達でいてくれる?

  • 624湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 21:55:12

    1. >>621

    2. >>622

    3. >>623

    dice1d3=1 (1)

  • 625二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 22:07:18

    よしよし

  • 626湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 22:11:41

     環奈は、ふっと肩の力を抜き、俯いていた顔を少しだけ上げた。

     「そう…だね……うん、そうだ」

     自分に言い聞かせるように、小さな声で呟く。

     「怖い思いも、恥ずかしい思いも、いっぱいしたけど……」

     環奈はアンの瞳を見つめながら続けた。

     「励ましてくれたり、支えてくれる誰かが……私にはいたんだよね。銭婆さんも、リンも、それに、アン、あなたも。」

     その瞳には、かすかに光が宿り始めていた。

     「……ありがとう、アン。みんなの優しさを台無しにするとこだった」

     アンは、優しく微笑んで、そっと環奈の手を取り、しっかりと包み込む。

     「さあ、戻りましょう。湯婆婆さまに知られる前に」

     環奈は小さく頷いた。
     そして、二人は石段を踏みしめ、青空のもと駆け出した。

  • 627湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 22:13:02

     ——だが、その背後で。

     ぬるぅ……ずるるる……

     水面から、黒い泥が浮き上がった。
     ドロドロ、ベトベトとした身体が粘りつき、ゆっくりと隆起する。
     黒い塊の中で、赤い二つの目がぽっかりと開いた。

     「ウ゛ゥゥ……」

     不気味な声を上げながら、『アシナシ』が静かに水面を顔を出し、その目を光らせる。
     環奈とアンが手を繋ぎ駆けていく背中を、その目はじっと見つめていた。

  • 628湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 22:27:50

    (今日は早いですがここまでにします。)

  • 629湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/26(日) 22:42:16

    (そろそろアシナシを本格的に絡ませますか。

    アシナシ、湯婆婆になりすますために >>630 から >>632 )

  • 630二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:01:17

    使用人の1人に成り済まして入る

  • 631二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:45:13

    カエル男の1人になりすましそこからどんどん格上になりすまして近づいていく

  • 632二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 23:48:24

    神様の誰かになりすまし客として侵入

  • 633湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 06:17:08

    1. >>630

    2. >>631

    3. >>632

    dice1d3=3 (3)

  • 634湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 06:21:44

    (なりすます客のタイプ dice1d3=3 (3) )


    1. 名のある、金遣いのいい神

    2. オクサレさまみたいなキワモノ

    3. 安価&ダイス

  • 635湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 06:22:13

    ( >>636 から >>638 でダイス)

  • 636二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:04:03

    素性を探られにくいオクサレさまみたいなキワモノ

  • 637二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:05:43

    湯婆婆が気に入りそうな金払いの良い神様

  • 638二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:07:15

    直近で目立ってたお陰で怪しまれにくそうなスケベ神様

  • 639湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 07:08:17

    1. >>636

    2. >>637

    3. >>638

    dice1d3=1 (1)

  • 640湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 07:16:11

    (キワモノ客ってどんなの? dice1d2=2 (2) )


    1. クサレ神

    2. 安価 >>641 から >>643

  • 641二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:20:23

    オクサレ様のような悪臭の凄いタイプ

  • 642二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:26:45

    ナメクジやイモムシみたいな生理的嫌悪を催すデザインの神様

  • 643二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:34:25

    タコノヤマさまみたいなクトゥルフ的デザインの神

  • 644湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 07:35:44

    1. >>641

    2. >>642

    3. >>643

    dice1d3=3 (3)

  • 645湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 11:55:54

     日が沈み、湯屋の夜が再び始まった。
     湯屋の巨大な建物が、眩い光を放って、夜空にそびえている。

     環奈は、玄関口で立ち尽くしていた。
 兄役の命令でここに立たされ、大湯の客を待つようにと言い渡されたのだ。

     ——ずる……ずるる……

     ふと、遠くから地を這うような音が聞こえた。
     環奈が目を凝らすと、大きな影がゆっくりと近づいてくる。

     やがて姿を現したのは、思った通り、異形の蛸神だった。
 その身体は丸みを帯び、ぬらぬらと黒く光っている。
     ゆっくりと、地面を撫でるように蠢く、大量の触手。
     そして、赤い瞳がじっとこちらを見据えていた。その瞳に照らされるたび、環奈は寒気を感じる。

  • 646湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 11:56:44

     「(また……こんな神様……)」

     環奈の体が小さく震える。

     昨日、一昨日の記憶が蘇る。触手のブヨブヨした感触、粘液が肌にまとわりつく気持ち悪さ——
     服をすべて引き剥がされ、無力感を抱いたあの感覚——
     忘れたいはずのそれが、環奈の全身を駆け巡った。

     「……っ」

    
 環奈は、自分の両手をぎゅっと握りしめた。
     けれど、アンの言葉が頭をよぎる。

    
 「逃げずにもう少し踏みとどまれば——きっと、何かを変えられる。何かを掴めるはずよ」

     その言葉を心の中で繰り返し、環奈は深く息を吸い込んだ。
     そして、胸の奥にある嫌悪感を飲み込むようにして、そっと前に一歩踏み出す。

  • 647湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 11:57:04

     「いらっしゃいませ。お待ちしてました」

     声が震えないように意識しながら、環奈は客の目の前で頭を下げた。
     そして、湯代を受け取るために、小さな手のひらを神の眼前に差し出す。
     触手の一本が、ぬぅぅ……と伸びてきて、その上に、ちゃりん、と銭を落とした。

     「どうぞ。ご案内します」

     環奈は湯屋の奥へと進みだす。
     その足取りは決して軽やかではなかったが、一歩一歩、確実に踏みしめていた。

  • 648湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 11:59:10

     大浴場を囲む回廊では、湯婆婆がツカツカと歩いていた。
    
 後ろからは、父役が機嫌を伺うように間合いを保ちながらついてきている。

     「お客の入りはどうだい?」

    
 湯婆婆がちらりと後ろを振り返ると、父役はすぐさま腰を深く折り、答えた。

    
 「はい、湯婆婆さま。今夜も順調に……特に大湯には、新しいお客様がいらっしゃっております」

     「ふん……」

    
 湯婆婆は手すりに手をかけ、回廊から大浴場を見下ろした。

  • 649湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 11:59:46

     そこには、先ほどの触手の神を一生懸命に洗っている環奈の姿があった。
     一心不乱に触手を拭いているが、その動きにはぎこちなさが残っている。
     時折、身体についた粘液を拭う姿も見える。

     「……あのお客、見ない顔だねぇ?」

    
 湯婆婆が片眉を吊り上げながら言うと、父役が慌てて答えた。

    
 「タコノヤマさまのご紹介でいらっしゃった、と伺っております」

     湯婆婆は目を細めた。

    
 「タコノヤマさまのねぇ……」

  • 650湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 12:01:36

    (湯婆婆「 dice1d3=2 (2) 」)


    1.おかしいねぇ、海の神らしいものを感じないんだが。

    2.丁重におもてなししな!

    3.安価&ダイス

  • 651湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 12:38:55

     その頃、兄役は番台の前に立ち、番台蛙から薬湯の消費について報告を受けていた。
     そのとき、廊下の奥から、急ぎ足でこちらに向かってくる音が聞こえた。

     「兄役さん!」

     環奈の声が響く。

     兄役が顔を上げると、そこにはお湯と粘液で濡れたままの環奈が立っていた。

     「いかがした、環?」

     兄役は落ち着いた声で尋ねる。

     環奈は少し息を整えながら答える。

     「お客さんが、『ご飯も食べて帰りたい』って言ってるみたいなんですけど……」

     兄役は帳簿を閉じると、すぐに答えた。

     「おお、それならお断りする道理がなかろう。今、大湯女を集めてお座敷の支度をさせるから、もうしばらくお相手をしておれ。」

     環奈は小さく頷くと、再び大湯へと駆け戻っていった。

  • 652湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 12:39:27

     ほどなくして、蛸神は湯屋の奥の個室へ案内された。

     豪華なお膳が次々と運ばれ、ナメクジ女たちがその場を取り囲むように控えている。
     さらに、白拍子のような姿の湯女たちが入ってきて、美しい舞を披露し始めた。

     蛸神はそのすべてを無言で見つめている。
     だが、その赤い瞳の奥にかすかな満足感が浮かんでいるのが、誰の目にも明らかだった。

     宴が続く中、蛸神は触手の一本をすっと持ち上げると、隅に控えていた父役を招いた。

     「ヴゥゥ〜……」

     低く唸るような声が響く。
     父役はその声の意図を察し、少し眉を上げた。

     「はて……湯屋の主にお会いになりたいと?」

     蛸神は何も言わず、大きな頭を下に揺らす。
     父役は軽く頭を下げ、静かな声で答えた。

     「少々お待ちください」

     そして、すぐさま部屋を後にした。

  • 653湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 12:39:57

    (湯婆婆は dice1d2=2 (2) )


    1.会う

    2.会わない

  • 654湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 12:40:50

    (理由 >>655 から >>657 )

  • 655二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 13:00:35

    環奈に洗われてる時の姿を見てスケベなはずの海の神様なのに環奈に何もイタズラしたり興奮する様子すら無かったのに気づいた

  • 656二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 13:05:53

    坊が何やら警戒している様子だったので念の為

  • 657二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 13:16:18

    何故かカオナシの一件を思い出して慎重になっていた

  • 658湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 13:19:00

    1. >>655

    2. >>656

    3. >>657

    dice1d3=3 (3)

  • 659湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 13:48:54

     湯婆婆の私室では、赤々と暖炉の火が燃え、周りの豪華な調度品がゆらゆらと影を落としていた。
     重厚な椅子に腰かけた湯婆婆が、前方で平伏する父役を見下ろしている。

     「そのお客には会わないよ」

     湯婆婆は低く唸るような声で言った。

     「金を搾れるだけ搾って、さっさと帰ってもらいな」

     父役は顔を上げ、困惑の表情を浮かべた。
     ギロリとした目が父役を射抜く。

     「聞こえなかったかい!?さっさと行きな!」

     父役は身を縮めるようにして「は、はい!」と返事をし、慌てて部屋を後にした。
     その後ろ姿を冷ややかな目で見送ると、湯婆婆はため息をつき、視線を落とした。

  • 660湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 13:50:05

     すると、そばで控えていたアンが、静かに声をかけた。

     「いかがなさいましたか……?ご主人様が、お客様のご要望をお断りになるなんて……珍しいことです」

     湯婆婆は、しばらく黙っていたが、やがて重々しく口を開いた。

     「……お前を拾う前のことさ。カオナシという、ろくでなしのバケモノが、客のふりをして湯屋に入り込んだことがあったんだよ」

     アンは湯婆婆の言葉をじっと聞いている。

     「それでこっちは、大損しちまったのさ。なぜか、そいつのことを思い出しちまってね」

     湯婆婆は椅子にもたれかかり、苛立ちを抑えるように指をこめかみに当てた。

     アンは少し考えるように目を伏せたが、何も言わずに、湯婆婆の言葉を受け入れるように小さく頷いた。

  • 661湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 13:50:27

     蛸神の個室では、父役が頭を畳に押しつけながら、申し訳なさそうに告げる。

     「……湯婆婆さまは、どうしてもお会いすることが叶いません……。代わりに、湯屋でできる限りのおもてなしを——」

     父役が言葉を続ける前に、蛸神の触手がゆっくりと持ち上がった。
     蛸神は何も言わない。ただ、その赤い瞳がじっと父役を見据える。

     しばらくの沈黙の後、蛸神の巨体が静かに動き始めた。触手を引きずりながら、座敷から立ち去る気配を見せる。
     父役は、恐る恐る蛸神に尋ねた。

     「あのぅ……どちらへ……?」

     その言葉に、蛸神は触手を一度だけ横に振った。
     それは、「ついてこなくてよい」と言わんばかりの仕草だった。

     父役が返事をする間もなく、蛸神はズルズルと触手を這わせながら廊下に出た。

  • 662湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 13:50:58

    (当てが外れたアシナシ。次の一手は。

    >>663 から >>665 でダイス)

  • 663二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 14:37:49

    湯婆婆すら気づけない、気にも留めないサイズの蟲になって隙間から侵入を試みる

  • 664二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 14:41:21

    湯婆婆に面通り出来る役職の人に成り変わる

  • 665二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 15:11:27

    あえてタコのままもてなしを受けつつ従業員達の癖や仕草、言動に行動パターンを観察、学習し成り代わりの精度を上げる

  • 666湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 15:19:05

    1. >>663

    2. >>664

    3. >>665

    dice1d3=1 (1)

  • 667湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 15:55:32

     蛸神は廊下を這って進むと、奥に設けられたエレベーターの前で立ち止まった。

     赤い扉が、ゆっくりと開く。
     蛸神は無言のまま中に滑り込むと、触手の一本を持ち上げ、隅にあるレバーに伸ばした。
     それをガコンと引き下ろすと、エレベーターはスムーズに上階へと動き出した。

  • 668湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 15:56:10

     蛸神が降り立ったのは、湯婆婆の部屋に続く、薄暗い広間だった。
     その奥には、豪華かつ威圧的な扉がそびえている。
     蛸神……いや、『アシナシ』は、その扉をじっと見据えた。

     ——どろぉ……

     アシナシの身体が溶けるように崩れ始めた。
     大蛸の姿が崩壊し、黒い泥へと変わる。

     べちゃっ……ねちゃ……

     粘つく泥は絨毯の上に広がり、その表面が波打ちながら少しずつ縮んでいく。

     やがて、泥の塊はみるみる小さくなり、細い一本の、黒いミミズのような形へと変わった。

     ミミズと化したアシナシは、周囲を警戒するように体をくねらせ、扉の方へ進む。
     そして、絨毯と扉の間に隙間を見つけると、その体を滑り込ませた。

     ——ニュルリ……

     かすかな音を立てて、ミミズは扉の内側へと消えていった。 

  • 669湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 15:57:06

    dice1d3=2 (2)


    1. そのまま気づかれずに湯婆婆の背後へ

    2. 途中の通路でアンに発見される

    3. 安価&ダイス

  • 670湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 16:21:33

     金箔の台座に載せられた巨大な焼き物が、列柱のように並ぶ薄暗い通路。
     床には、複雑な模様が織り込まれた絨毯が敷かれている。

     その絨毯の上で、アンは掃除をしていた。
     小さな掃除道具を手に持ち、膝をついて静かに絨毯を拭いている。

     ふと、アンの視界の端に、何か小さなものが動くのが見えた。

     台座のそばを這って進む黒いミミズ。
     アンは道具をそっと置き、気づかれないように静かに近づいていく。

     ミミズは、アンが近づいている気配を察したのか、急にぴたりと動きを止めた。

     アンは、その小さな存在をじっと見つめた。

  • 671湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 16:21:57

     「……湯婆婆さまに見つかったら、この子は……」

     小さな声で呟きながら、アンは眉をひそめる。
     湯婆婆がこのミミズを見つけたら、すぐに容赦なく潰してしまうだろう。
     湯婆婆の性格をよく知るアンには、その未来が容易に想像できた。

     「逃がしてあげた方がいいわね」

     アンはそっと手を伸ばした。指先でミミズを優しくつまみ上げると、それは一瞬だけ体をこわばらせた。
     アンはその小さな生き物を、反対側の手のひらに載せると、包み込むように両手でそっと覆い、立ち上がった。

     「どこへ逃がせばいいかしら……」

     アンは周囲を見回しながら、ふと頭の中に、湯屋の対岸の花畑を思い浮かべた。

     「……あそこがいいわ」

     アンはそう呟くと、小さく微笑んだ。

  • 672湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 16:22:50

    アシナシミミズ、 dice1d2=2 (2)


    1. その場で泥の姿に戻って、邪魔者のアンを飲み込んでしまう

    2. 安価&ダイス

  • 673湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 16:23:11

    >>674 から >>676

  • 674二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 16:40:58

    コッチの方が湯婆婆の部屋に入りやすいと思い、運ばれてる最中にアンの仕草や癖、外見の細かい特徴等を観察し学習した

  • 675二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 16:49:55

    一度されるがままになってアンが帰る際目を離した瞬間に影の中に入り込む

  • 676二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 16:55:59
  • 677湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 16:59:21

    1. >>674

    2. >>675

    3. >>676

    dice1d3=2 (2)

  • 678湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 17:20:55

     湯屋の正面では、次々と訪れる神々が橋を渡り、建物の中へ吸い込まれていく。
     その喧騒を背に、アンは対岸に向かって歩いていた。
     目指す先は、竹の柵で囲まれた花畑——湯屋の外れにひっそりと存在する、静かな場所。

     花畑の手前で、提灯を片手に客を迎え入れていた、二人のカエル男に出くわした。
     カエル男たちは、橋を渡ってくるアンに気づくと、驚いたように声をかける。

     「アン様?こんなところで、いかがなさいました?」

     アンは足を止めることなく、彼らを一瞥して淡々と答える。

     「大したことではないわ。続けなさい」

     その冷静な口調に、カエル男たちは黙って頭を下げ、再び湯屋に向かう客を迎え始めた。

  • 679湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 17:21:32

     竹の柵の門を開けると、アンは中へと入っていった。
     そこは、湯屋の賑やかな雰囲気とは対照的な静けさに包まれている。

     少し奥へ進むと、アジサイの茂みが見えた。その根元に、アンはそっと膝をつき、手の中に隠していたミミズをゆっくりと放した。

     黒い小さな体が地面に触れると、ミミズは身をよじって、アンの白い手を離れていく。

     「これでいいわね」

     アンは、小さく満足そうに呟きながら立ち上がった。
     胸元で手を軽く払うと、踵を返して、湯屋の方へ戻ろうと歩き出す。
     湯屋から漏れる明かりが、少女の背後に影を落としていた。

  • 680湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 17:22:28

     ——しかし、その瞬間。

     地面に映るその影に、ミミズ——アシナシが、素早く飛び込んだ。

     ——じゅるんっ!!

     「ッ——!!」

     アンは強烈な悪寒に襲われ、思わず身を震わせた。首筋に走る冷たい感覚が、足を止めさせる。

     「何……!?」

     振り返り、足元や周囲を見回すアン。しかし、そこには異常なものは何一つ見当たらない。

     アンは眉をひそめたが、それ以上深く考えることはせず、再び湯屋の方へ歩き出した。

     自らの影の中に、アシナシを忍ばせたまま——

  • 681湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 17:22:54

    (次の展開 >>682 から >>684 でダイス)

  • 682二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 17:29:53

    一方その頃蛸神がいつの間にかいなくなっている事に疑念を抱く父役

  • 683二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 17:35:14

    汚れきった水干等を洗ってる途中で蛸神様がいなくなったと騒ぎになってるのを耳にする環奈

  • 684二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 17:48:42

    札を通して現れた銭婆が警告に来た

  • 685湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 17:51:02

    1. >>682

    2. >>683

    3. >>684

    dice1d3=1 (1)

  • 686湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:12:49

     湯屋の終業時間が近づき、館内の喧騒も少しずつ静まり始めていた。
     仕事を終えた環奈は、従業員の宿舎のベランダで夜風に当たっていた。

     隣の部屋からは、湯女たちが花札で遊ぶ声や、夜食をとりながら談笑している声が聞こえてくる。
     ——皆、それぞれに思い思いの時間を過ごしていた。

     突然、通路の曲がり角から、慌てた足音とともに父役が現れる。
     彼の表情は険しく、ただ事ではない様子だった。

     「そなたたち、非常事態だ!」

     「何事です?」

     湯女たちは一斉に振り返る。

  • 687湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:16:05

     父役は、環奈や湯女たちに向かって重々しい声で告げた。

     「オオダコ様のお姿が見えんのだ」

     その場の空気が、一瞬で張り詰める。

     「……お座敷でお食事をとっておられたのだが、突然席を立たれて、それっきり姿が見えぬ」

     父役は、困惑を隠せない様子で、言葉を続ける。

     「環、そなたは知らぬか?」

     急に名前を呼ばれた環奈は、驚いて目を見開いた。

     「わ、私ですか……?いえ、何も……」

     環奈は戸惑いながら、首を横に振る。

     「ならばよい」

     父役はすぐに、厳しい声を張り上げた。

     「みな、手分けして探せ!!」

     その言葉に、湯女たちは不満そうな表情を浮かべながらも、しぶしぶ水干や着物を手に取って着なおし始めた。
     小声で文句を言い合いながらも、湯女たちは次々と支度を整え、通路へ向かっていく。

     環奈も、心配そうな顔で彼女たちの後を追った。

  • 688湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:18:53

    (環奈「私はどこ探そう……」)


    1. ĺş­

    2. 花畑

    3. 厠

    4. 湯婆場の部屋近く

    5. >>689

    dice1d5=3 (3)

  • 689湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:19:16

    (トイレかぁ。まあ、スレ主もそこ探すかもしれませんが。)

  • 690二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 18:20:20

    まあ候補の一つではある
    一人で行くの?

  • 691二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 18:20:49

    プライベートな空間にいるかもってまあ考えるよね

  • 692湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:47:10

     カエル男やナメクジ女たちが湯屋中を手分けして探している中、環奈は一人で廊下を歩いていた。

     プライベートな場所にいるかもしれない——

     そう思い立った環奈は、客用のトイレをひとつひとつ調べていた。

     扉を開けるたび、芳香剤の匂いと花瓶に生けられた花の香りが混ざり合って、鼻をくすぐる。
     どのトイレも清潔に保たれていて、床や壁がピカピカに磨き上げられている。

     閉まっている個室を見つけると、環奈はそっと手を扉に当てて、小声で呼びかけた。

     「オオダコさま……?いらっしゃいますか……?」

     そのたびに、扉の向こうから、低い唸り声が返ってくる。

     「ン゛ン〜……」

     環奈は、ビクッと体を震わせ、慌てて頭を下げた。

     「あ、すみません!お邪魔しました!」

     顔を赤くしながら後ずさりし、次の個室へと移動する。

  • 693湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:47:53

     いくつ目かのトイレを調べていたときだった。

     環奈はふと、トイレの配置に違和感を覚えた。
     個室の向かい側に設置されている、大きな器具。普段自分が使う女子トイレでは、見かけない形状のものが並んでいる。

     「(……これ、もしかして……)」

     環奈は冷静に考え、そして気づいてしまった。
     ここは男子トイレなのだ、と。

     「(ってことは……私……今……)」

     想像するだけで、環奈の顔は真っ赤になった。

     「……考えないでおこう!」

     必死に頭を振り、恥ずかしい考えを追い払おうとしながら、環奈は次のトイレへ向かう。

  • 694湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:48:30

     次のトイレに入ったとき、そこには、福々しく肥え太った大根のような神様が立っていた。
     環奈は驚きながらも、深々と頭を下げる。

     「……!!し、失礼します……!!」

     そして、早足でトイレの空間に入っていった。

     「ウ〜〜……」

     神様は低い唸り声を発しながら、環奈を見下ろしている。

     それは『おしら様』と呼ばれる神だった。
     おしら様は特に何も言わず、ただじっと環奈を見つめている。

  • 695湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:49:57

    dice1d3=1 (1)


    1.おしら様が……

    2.一方、湯婆婆の部屋に戻ったアンは……

    3.安価&ダイス

  • 696湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 18:50:37

    >>696 から >>698


    (なーんか嫌な予感がしますが……←)

  • 697二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 19:04:58

    驚いてとてつもない大きな声を上げる

  • 698二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 19:05:44

    個室に環奈を連れ込む

  • 699湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 19:20:15

    (安価ミスしていたので、もうひとつ >>700 )

  • 700二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 19:22:43

    環奈が隣にいるのも憚らず、褌めくってジョボボボボ

  • 701湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 19:24:01

    1. >>697

    2. >>698

    3. >>700

    dice1d3=2 (2)

  • 702湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 19:24:29

    (あっ……あかん)

  • 703二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 19:39:50

    ほら、ほかの男が来たからかばったんだよ……たぶん……

  • 704湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 19:54:33

     環奈は、おしら様のじっとりとした視線を背中に感じながら、静かに頭を下げた。

     このトイレにも、蛸神さまはいない。
     そう判断した環奈は、急いでその場を離れようとした。
     ——しかし、その瞬間。

     ガシッ……!

     「えっ……?」

     背後から、太くて短いおしら様の腕が伸びてきた。

     ぐいっ——!

     「ひゃあっ!?」

     肩を掴まれた環奈は、体を引き戻され、思わず軽い悲鳴を上げた。
     振り向く暇もなく、ずるずると個室の中へ引き込まれる。

     「ちょっ、ちょっと待っ——!」

     ——バタン!

     環奈の声がかき消されるように、扉が勢いよく閉められた。

  • 705湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 19:55:01

     環奈は、おしら様の身体に押し付けられる形で立たされ、目を見開いたまま固まっていた。

     おしら様のずっしりとした手が、環奈の肩に回されている。

     「(な……なんなの……!?)」

     環奈の頭の中が混乱する。
     声を出そうとしても、喉が震えるだけで言葉にならない。

     おしら様の表情は、相変わらず読めなかった。
     環奈をじっと見下ろしながら、唸り声ひとつ発しない。

     「……あの……」

     ようやく、絞り出すように声を発した環奈だったが、それ以上の言葉は出てこなかった。

  • 706湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:21:24

    (おしら様は何をしてくる? >>707 から >>709 でダイス)

  • 707二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 20:25:53

    そのまま動かない
    十秒ぐらい後にトイレに他の神様が来た

  • 708二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 20:26:22

    他の客が来たからかばっただけだった

  • 709二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 20:27:55

    指でシっと合図したすぐ後に宴会後なのかガヤガヤと他の神様達が入ってくる

  • 710湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:32:11

    1. >>707

    2. >>708

    3. >>709

    dice1d3=2 (2)


    (よかった……ナニも起こらなさそうで)

  • 711湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:49:38

     そのとき——

     「……ッ!」

     のっしのっしと、重い足音がトイレの中に響いてきた。誰かがこちらに向かってくる気配に、環奈の背筋が凍りつく。

     おしら様は環奈をじっと見つめたまま、短い指を口元に当てて、「シーッ……」と静かに音を立てた。

     環奈は息を飲む。その仕草は、まるで何かから彼女を庇うような意図を感じさせた。

  • 712湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:50:18

     外からは、ゆっくりとした足取りが近づく音が聞こえる。
     その足音は、個室の近くで一度止まった。
     環奈は思わず眉をひそめる。

     環奈には知る由もないが、それは性を司る神——好色な気質を持つ神だった。
     その神が環奈を見つければ、何をされるかわからない。

     肩に置かれたおしら様の手に、ぐっと力が込められる。
     環奈は戸惑うが、不思議と悪意のようなものは感じられなかった。
     むしろ、おしら様の表情から伝わってくるのは、静かな配慮のようだった。

     「(……もしかして、守ってくれてる……?)」

     環奈がそのことに気づいたとき、水の流れる音が響いた。
     神が用を済ませたようだった。そして、足音が再びのっしのっしと遠ざかっていく。

  • 713湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:50:48

     おしら様は、そっと個室の扉を押し開けた。
     そして、外の様子を伺うように辺りを見回すと、ようやく環奈を解放した。

     環奈は大きく息を吐いた。肩の力が抜けて、全身の緊張が解ける。

     「あ……ありがとうございました……」

     環奈は、おしら様に向かって深々と頭を下げた。
     おしら様は、無言のまま目を細める。その表情は、どこか満足げにも見えた。

     環奈は体勢を整え、個室を出ていこうとしたが、ふと思い出して振り返った。

     「あ、あの……!」

     声を震わせながらも、勇気を出して続ける。

     「黒いタコの神様を見かけたら、父役のところに連れて行ってください!」

     おしら様は、じっと環奈を見つめた後、無言で片手をひらひらと振った。それは「わかった」とでも言うような動きだった。

     環奈は再び頭を下げると、トイレを後にした。

  • 714湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:51:22

    dice1d2=2 (2)


    1. アンと湯婆婆のターン

    2. 安価&ダイス

  • 715湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 20:58:22

    >>716 から >>718 でダイスです

  • 716二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:03:12

    もう蛸神は帰ってしまったのかと思い始める父役たち

  • 717二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:14:40

    環奈が蛸神をみつける

  • 718二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:19:47

    父役にトイレから出るところを見られて驚かれる

  • 719二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:19:51

    このレスは削除されています

  • 720二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:20:29

    このレスは削除されています

  • 721湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:21:38

    (すみません、ダイスの目は >>719 です。)

  • 722湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:22:15
  • 723湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:41:57

     どのトイレにも蛸神の姿はなかった。環奈は一つ一つ確認し終え、小さくため息をついた。

     「(……別の場所、探さなきゃ)」

     そう思いながら廊下を歩いていた、そのとき——

     スゥーッ……

     背後から、何かが滑るように飛んでくる気配を感じた。

     「……?」

     環奈が足を止め、振り向こうとした瞬間、聞き覚えのある声が耳に届いた。

     「環奈」

     ——銭婆の声だった。

     環奈は驚いて振り向く。そこには、銭婆の姿があった。

     ただ、その姿はどこか不自然だった。
     銭婆の体は透けていて、足元を見ると、小さな紙の人形が床に横たわっている。

     「……銭婆……?」

     環奈は呆然と呟きながら、アンの言葉を思い出した。

     「銭婆さんは、人形や御札を介して、それらがある場所に分身のような形で現れることができるそうよ。」

     目の前の光景が、その言葉と結びつく。

  • 724湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:43:17

     銭婆は環奈を見つめ、優しく微笑んだ。

     「元気そうだね」

     その言葉に、環奈の胸の奥が大きく揺れた。

     「銭婆……!」

     声を上げると同時に、いろいろな感情が一気にこみ上げてくる。

     再会できた嬉しさ、ようやく会えた安堵感。
     けれど、それと同時に「もっと早く来てほしかった」という寂しさや不満も混じり合っていた。

     言葉がなかなか次に続かない。

     銭婆は、そんな環奈の様子を静かに見守っていたが、やがて口を開いた。

     「……あんたの気持ちはよくわかってるよ」

     その穏やかな声に、環奈はじっと耳を傾けた。

     「大変な目に遭っているんだろうね。それでもよく頑張っていると思うよ」

     銭婆の瞳には、環奈への慈しみが浮かんでいた。

     「助けてあげたいけど、私にはどうすることもできないんだ。それが、この世界の決まりだからね」

     環奈は何も言えなかった。ただ黙って銭婆の言葉を受け止めていた。

     銭婆は優しい目で環奈を見つめ、続けて話し始めた。

  • 725湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:44:18

    (銭婆「( dice1d2=1 (1) )」)


    1. 環奈、よくないことが起こりつつあるよ(アシナシのこと)

    2. 安価&ダイス

  • 726二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:47:07

    あれ?見られらの父役じゃね?

  • 727湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 21:59:22

     しかし、その目にはどこか深い憂いが宿っている。

     「環奈、よくお聞き」

     銭婆の声が静かに響く。

     「ここで、よくないことが起きようとしているよ」

     「えっ……?」

     環奈は一瞬何を言われたのかわからず、銭婆の顔を見つめ返した。

     「よくないこと……?」

     銭婆はゆっくりと頷く。

     「そう。それも、放っておいたら、あんたの元いた世界にまで累が及ぶことだよ」

     その言葉に、環奈の体がこわばる。

     「……元いた世界に?」

  • 728湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:01:04

     銭婆の目は細まり、さらに深刻な響きを帯びた声で続けた。

     「そうなったら、あんたのお父さんやお母さんも、ただではすまないかもしれないんだ」

     銭婆の言葉が、環奈の胸に重くのしかかる。
     環奈は顔を伏せた。何か冷たいものが背筋を這う。

     「(お父さんやお母さんが……?)」

     正直なところ、環奈には両親や学校に、そこまで思い入れはなかった。
     そもそも、家や学校で居場所を失い、孤独を抱えた末に、この不思議な世界に迷い込んだのだから。
     それゆえ、「累が及ぶ」と言われても、すぐには実感が湧かない部分もあった。

     だが、それでも——
     銭婆の言葉は、環奈の心の奥底に、強い不安を呼び起こしていた。

  • 729湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:02:02

    (すみません。安価を一つおまけで入れてしまいました……

    次の展開 >>730 から >>732 )

  • 730二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:05:00

    おしら様のにおいが体中に沁みついてしまったためお風呂にちょっとだけ入る

  • 731二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:06:35

    引き続き神様を探し回る

  • 732二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:07:29

    湯婆婆のとこに戻ったアンの影から奇襲するアシナシ

  • 733湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:08:22

    1. >>730

    2. >>731

    3. >>732

    dice1d3=3 (3)

  • 734湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:27:27

     同じ頃、湯婆婆の部屋では、アンが戻ってきたところだった。

     デスクに座る湯婆婆は、アンの姿を見るなり、険しい目を向けた。

     「ずいぶん掃除に時間がかかったじゃないか」

     嫌味たっぷりの口調に、アンは内心で動揺しながらも、平静を装って頭を下げた。

     「申し訳ございません、ご主人様。少々手間取ってしまいまして」

     湯婆婆は不機嫌そうに鼻を鳴らすが、それ以上深く追及はしなかった。
     アンは、ミミズを逃がしに行ったことが悟られなかったことに安堵した。

     しかし——

     花畑から湯屋に戻ったときから、どうも体調が優れない。

     身体の内側に何か異物が入り込み、それがじわじわと蝕んでいるような感覚があった。
     頭がぼんやりとして、手足には力が入らない。

     「(どうして……?)」

     アンは自分の異変に気づきながらも、それを表に出さないよう努めていた。
     しかし、部屋の中を歩くたびに足元がふらつき、ついには——

     バタッ……!

     絨毯の上に崩れ落ちてしまった。

  • 735湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:30:19

     「オイ、オイ、オイ!」

     頭たちが、跳ねたり転がったりしながら、アンの周りに集まってきた。
     丸い頭を傾けながら、心配そうにアンを覗き込むようにしている。

     「何やってるんだい!気分でも悪いのかい?」

     苛立った声で湯婆婆がデスクから立ち上がった。
     アンは返事をしようとしたが、口がうまく動かず、ただ息を切らすばかりだった。

     そのとき——

     ズズズ……

     暖炉の火でできていたアンの影が、不自然に揺れ始めた。

  • 736湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:30:29

     「……?」

     湯婆婆が眉をひそめる中、影から黒い泥がじわじわと滲み出てくる。

     「オイ、オイ、オイ!」

     頭たちは驚いて逃げ出した。

     じゅる……ズズズッ……

     泥は粘着質な音を立てながら床へ広がり、少しずつ体積を増していく。

     「こ……これは……!」

     湯婆婆が声を上げる。
     アンは床に倒れたまま、その光景を信じられないような目で見つめていた。

     「(な……何なの……!?コレ……!)」

     混乱するアンの目の前で、黒い泥はさらに隆起を続け、不気味に蠢いていた——

  • 737湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:35:18

     消灯時間が近づく湯屋では、蛸神を探していた従業員たちが広間に集まり、報告をしていた。

     「どこにもいませんねぇ……」

     「外にも出てないみたいですよ」

     どの報告も芳しくなく、父役は深いため息をついた。

     「やれやれ、困った……湯婆婆さまはなんとおっしゃるか……」

     リンや一部の従業員たちは「どうでもいい」とでも言いたげな顔をしている。
     だが、環奈は落ち着かずに、そわそわしていた。

     「(あのお客さん、大丈夫なのかな……)」

     自分が湯場で世話したお客ということもあり、環奈は他の従業員以上に心配していた。

  • 738湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:35:50

    (安価&ダイスです。 >>739 から >>741 )

  • 739二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:40:18

    どこに行ったんだろうと心配しながら個室を開けると蛸神に室内に取り込まれる

  • 740二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:40:23

    ある従業員が蛸神が出ていくのを見たと報告し解散する
    正体はアシナシの切り離した影のようなもの

  • 741二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:44:19

    独りになったところを誘拐され屋外に
    何かを手渡すと帰っていく

  • 742湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:45:31

    1. >>739

    2. >>740

    3. >>741

    dice1d3=3 (3)

  • 743湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 22:45:59

    >>741

    (すみません。誰が誰に、などありますか?)

  • 744二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:48:07

    すみません
    蛸神が環奈ちゃん(環)を誘拐…ですね

  • 745湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:09:05

     やがて、
     父役は重い声で言った。

     「もう遅い。今夜は切り上げるとしよう。皆、部屋に戻れ」

     従業員たちは安堵の表情を浮かべ、ゾロゾロと広間を後にした。

     「ったく、とんだ骨折り損だったぜ」

     リンは肩をすくめ、環奈を振り返る。

     「行くぞ、環」

     環奈はリンに続きながらも、まだ心がざわついていた。

     「(本当にどこ行ったんだろう……)」

  • 746湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:11:29

     夜が更け、宿舎は静寂に包まれていた。
     環奈はふと目を覚ます。暗闇の中、みんなの寝息が微かに響いている。

     「(せっかくだし……トイレ、行っとこうかな)」

     環奈は布団をそっと抜け出し、音を立てないように歩きながら、宿舎のトイレへ向かった。

     用を足した後、洗面台で手を洗い、ため息をつく。
     自分の部屋へ戻ろうとしたそのときだった。

     ——にゅるるっ……!

     「……ッ!?」

     背後から何かが絡みつく感触に、環奈の全身が凍りついた。
     それは、自分の腕ほどの太さがあり、ブヨブヨとして柔らかいものだった。
     糸を引く粘液が肌にまとわりつき、嫌悪感が全身を駆け抜ける。

     「や、やめ——」

     声を上げようとした瞬間、口の中に触手の先端が突っ込まれた。
     息苦しさと恐怖で、目を見開いた環奈は必死に首を動かし、後ろを振り返る。

     そこにいたのは——蛸神だった。

  • 747湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:12:13

     「(な、なんで……!?)」

     混乱する中、蛸神の触手はさらに増え、次々と環奈に絡みついてくる。

     ——じゅるぅ……ぬちゅぅ……

     脚も胴も腕も——どんどん締め付けられ、ついには隙間なく巻き付かれた。
     視界が触手で覆われ、真っ暗になっていく。

     「(く、苦しい……!!)」

     環奈の体は触手に包まれたまま力を失い、そのまま意識が闇へ沈んでいった。

  • 748湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:12:53

     ——環奈が目を覚ましたとき、まだ夜だった。

     辺りを見回すと、そこは宿舎ではなく、花畑だった。
     月明かりに照らされた花々が、静かに揺れている。

     「ここ……花畑……?」

     環奈はぼんやりと呟き、自分の体を確認する。
     触手に絡まれていた感触は消え、全身が自由になっている。

     そして気づいた——自分の手に何かを握らされていることに。
     環奈は、その手をゆっくりと開いた。

  • 749湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:13:33

    (蛸神もといアシナシに何を持たされたか、募集して終わります。

    >>750 から >>752 )

  • 750二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 23:22:45

    虹色に輝く綺麗な真珠

  • 751二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 23:27:59

    自分の体の一部

  • 752二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 23:29:42

    アシナシの身体の一部
    泥の様な黒ずんだなにか

  • 753湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/27(月) 23:32:15

    1. >>750

    2. >>751 >>752

    dice1d2=1 (1)

  • 754二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 09:11:32

    真珠なのはタコだからか?

  • 755二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 10:25:09

    ただのプレゼントかキーアイテムかどっちだ

  • 756湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:02:35

     環奈の手に握らされていたのは、虹色に輝く、美しい真珠だった。
     月明かりを受けて、表面がきらきらと七色の光を放っている。
     その光景に、環奈は息を呑みながら、手の中の珠をじっと見つめた。

     「(これ……オオダコさまが……?)」

     辺りを見回してみたが、蛸神の姿はおろか、気配すらどこにもなかった。

     「(……どういうこと……?)」

     蛸神の意図がまるでわからない。混乱と不安が、胸の中をぐるぐると渦巻いていた。

     そのとき、夜風が吹き抜け、環奈の体を冷やした。上半身に腹掛けひとつの環奈は、ぶるりと震える。

     「(……とにかく、戻ろう)」

     環奈は急いで立ち上がり、竹の柵の門を開けた。
     花畑を後にして橋を渡り、静まり返った宿舎へと戻る。
     布団に潜り込む頃には、疲れからかすぐに眠りに落ちていた。

  • 757湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:02:58

     「環奈ー、起きろー」

     リンの声が耳元で響き、環奈は目を覚ました。
     布団の中で目をこすりながら、昨夜の出来事が急に頭をよぎる。

     「(オオダコさま……あの真珠……)」

     環奈は、自分の手にまだ何かを握っていることに気づいた。
     恐る恐る開いてみると、そこには昨夜の虹色の真珠がそのまま握られていた。

     「(……やっぱり夢じゃなかったんだ)」

     環奈は少し息を整えながら、枕元に置いていた白い石を手に取る。
     アンから渡されたこのお守りと真珠を並べて見つめた後、二つとも大事そうに水干の懐へ仕舞い込んだ。

     リンは呆れたようにため息をつきながら言った。

     「何してんだよ。急ぎな。どうせ今日も蛸神探さなきゃなんねぇんだ」

     環奈は布団から体を起こしながら、環奈は昨夜のことを言うべきか言わないべきか、頭の中でぐるぐると考えた。
     だが、蛸神に絡まれた恐怖がまだ薄れていない自分を思うと、誰かに話さずにはいられないような気もしていた。

     「(リンになら……聞いてもらえるかも)」

     環奈は決心し、口を開きかけた。

  • 758湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:04:24

    (その時 dice1d2=1 (1) )


    1. 湯婆婆から全員に召集が

    2. 安価&ダイス

  • 759湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:05:00

    (この湯婆婆は dice1d2=1 (1) )


    1. アシナシが化けた姿

    2. 本物

  • 760二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 11:05:32

    既にやられとる!?

  • 761湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:47:33

     その瞬間、ドスドスと重い足音が廊下に響き渡り、兄役が部屋に入ってきた。

     「急ぎ広間へ集まれ!」

     兄役の声が部屋中に響き、湯女たちは一斉に振り返る。
     兄役は厳しい表情のまま、言葉を続けた。

     「湯婆婆さまから、大切なお話があるそうだ!」

     リンはうんざりしたように、ため息をつく。

     「ったく、こんな朝っぱらから……。ほら、環奈、早くしろよ」

     環奈も慌てて水干を整えながら、立ち上がる。
     二人が部屋を出ようとすると、リンが首をかしげて小声で呟いた。

     「にしても珍しいよな。湯婆婆がわざわざこんなとこに足運んでくるなんて」

     環奈は、リンの言葉に内心同意しながらも、何か胸騒ぎのようなものを覚えた——

  • 762湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:48:08

     従業員区画の広間には、カエル男とナメクジ女たち全員が集まって、ざわざわと落ち着かない様子を見せていた。

     番台の前には湯婆婆が立っている。

     「静かに!」

     湯婆婆が一喝する。
     その声に、ざわめきはぴたりと止んだ。

     湯婆婆は一呼吸置いて、厳しい目で皆を見回す。
     そして、ゆっくりと、重々しく口を開いた。

  • 763湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:50:01

    (湯婆婆の魔力と立場を使って、現世を不思議の世界の一部にしたいアシナシ。その足がかりとして、 dice1d2=2 (2) )


    1. 油屋2号店を(トンネルの向こうに)設立すると宣言

    2. 安価&ダイス

  • 764湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 11:50:22

    >>765 から >>767

  • 765二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 11:54:37

    事業拡大として油屋2号店を(トンネルの向こうに)設立すると宣言

  • 766二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 12:07:09

    営業拡大の為に向こう側の世界に何時でも行けるようにする

  • 767二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 12:27:01

    現世に支店を作るために自由に行き来する為の出入り口を開設する

  • 768湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 12:31:42

    1.支店設立

    2.現世との行き来自由化

    dice1d2=2 (2)

  • 769湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 12:58:22

     「あたしは、湯屋の事業を広げることにしたよ。人間の世界に支店を作るんだ」

     その言葉に、広間全体がざわついた。

     「普段、あちらの世界にいる神様たちが、気軽にお湯や食事を楽しめるようにするのさ」

     湯婆婆の鋭い目が従業員たちを一人ひとり見渡す。

     「それにあたって、海原電鉄の『楽復時計台駅』で、人間の世界との行き来を自由にできるようにする!」

  • 770湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 12:59:01

     その名前を聞いた瞬間、環奈は首を傾げて、隣のリンをつついた。

     「リン、楽復時計台駅ってどこ……?」

     環奈はヒソヒソと小声で尋ねる。

     リンは面倒くさそうに耳を傾けながら答えた。

     「町外れにある赤い時計台の駅だよ。あんまり人が寄りつかないとこさ」

     その言葉に、環奈は息を呑んだ。

     「(そこ……私が初めてこの世界に来た時、通り抜けた場所だ)」

     環奈の脳裏に、その時の記憶が蘇る。
     あの赤い時計台を抜けた先で出会った、この不思議な世界——

  • 771湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 12:59:36

     湯婆婆は続けた。

     「そういうわけで、今日からしばらく建設予定地の視察に行くから、留守にするよ」

     従業員たちは再びざわついたが、湯婆婆はそれを無視して話を進める。

     「あたしがいない間は、父役に従うんだよ。いいね!」

     いきなり重大な役割を命じられた父役は驚き、目を丸くした。

     「わ、私でございますか……?」

     湯婆婆はギロリと、彼を睨みつけた。

     「文句があるのかい?」

     「いえ……!かしこまりました!」

     父役は慌てて頭を下げ、表情を引き締めた。

  • 772湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 13:00:04

     湯婆婆が話を終え、広間を出て階段を上がっていくと、従業員たちは早速ザワザワと話し始めた。

     「人間の世界に支店だってよ。どんだけ金儲けする気なんだ」

     「湯婆婆さまがいない間、楽ができるかもね」

     そんな中、リンは環奈を肘で軽くつついて小声で話しかけた。

     「なあ、環奈……」

     「なに?リン?」

     環奈が振り返ると、リンは複雑な表情を浮かべて続けた。

     「人間の世界に新しい店を作るってことはさ……お前、あっちに帰れるんじゃねぇの?」

     その言葉に、環奈は答えに詰まった。

     「(帰る……私が、元の世界に……?)」

     環奈の頭には、家の中で無関心そうだった両親や、学校で孤立していた自分の姿が浮かぶ。

     「(でも、ここもそんなに居心地がいいわけじゃない……私は……どうしたいの?)」

     環奈はどう答えればいいのかわからず、ただ黙ってしまった。

  • 773湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 13:00:48

    (湯婆婆が時計台の駅へ出かけていった後 >>774 から >>776 でダイス)

  • 774二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 13:11:20

    その日は皆どことなく浮ついた感じになり環奈も業務に身が入らず就寝時間になりぼんやりしたまま寝入る
    だがそこで以前見たのより遥かに恐ろしい悪夢を見てしまい顔も下半身もびしょ濡れにしながら飛び起きる環奈

  • 775二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 13:13:26

    リンと移動中に何かを訴えるかのように痛いぐらいに発熱するアンから貰った石

  • 776二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 13:17:24

    >>774

    着替えの際にアンから貰った石が発光しながら割れてるのを見て何か異常な事が起きてると気づき着替えなどを後回しにし慌てて銭婆を頼る

  • 777湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 13:19:53

    >>774

    >>775

    >>776

    dice1d3=3 (3)


    (下半身もって……まさか、おしっ(ry

  • 778二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 13:24:48

    アンちゃんの石が…

  • 779二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 13:38:24

    今 石と真珠持ってるんだっけ

  • 780湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 13:45:59

    >>779

    (今持っているアイテムは、石、真珠、御札ですね。)

  • 781二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 14:45:13

    環奈ちゃんまだ10歳だしビビりだから世界地図作っちゃうのも不可抗力よ

  • 782湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 15:12:58

    (悪夢の内容も安価で募集します >>783 から >>785 )

  • 783二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 15:18:08

    自分の世界がここと同じような妖怪たちが闊歩する世界になっていた

  • 784二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 15:21:36

    現世の自分の部屋にいつの間にかいた環奈だったがベッドの下からおぞましい何か(アシナシ)が湧き出て足元から環奈を飲み込んでいき最後に頭から喰われる

  • 785二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 15:22:53

    湯婆婆に魚に変えられて川に捨てられる

  • 786湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 15:24:00

    1. >>783

    2. >>784

    3. >>785

    dice1d3=3 (3)

  • 787二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 15:31:50

    魚か…捕食者(アシナシ)がいる暗示とか?

  • 788湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:01:41

     湯婆婆はその日のうちに、玄関から堂々と出て行った。
     従業員たちは一列に並んでその姿を見送る。

     しかし、その後の湯屋はどこか浮ついた雰囲気に包まれていた。
     湯婆婆が不在という気の緩みから、従業員たちの動きは散漫になり、父役と兄役はそれをまとめるのに大わらわだった。

     環奈も、どうにも集中できなかった。
     雑巾を持つ手は緩みがちで、風呂釜を洗いながらも、気持ちはどこか上の空だった。

     「(……帰れるって言われても、本当に帰りたいのかな……)」

     心の中に答えの出ない問いを抱えたまま、一日がなんとなく終わってしまった。

     宿舎に戻った環奈は、布団に横になりながらぼんやりと目を閉じた。
     そのまま、いつの間にか深い眠りに落ちていた。

  • 789湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:02:06

     気がつくと、環奈は水の中にいた。

     青く澄んだ水が周囲を満たし、光が水面を揺れるように反射している。

     「(……なんで……?水の中なのに……息ができてる?)」

     不思議に思い、辺りを見回したその瞬間、目の前にぬっと巨大な顔が現れた。

     「ッ——!」

     環奈が驚きの声を上げる間もなく、その顔がゆっくりと口を開く。
     ——湯婆婆だった。

     「フン、まだ小さくて食えたもんじゃないね」

     その冷たい言葉に、環奈は息を呑む。
     視線を落とすと、そこにあるのは自分の体——ではなく、細長い小魚の姿だった。

     「えっ……!?これ……私……!?」

     環奈は恐怖と混乱の中で必死に尾を振って水中を動こうとするが、湯婆婆はそれを鼻で笑った。

  • 790湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:02:48

     「今日から人間は、神様方のしもべになったんだよ」

     湯婆婆はにやりと笑いながら続ける。

     「お前の両親もね。生かすも殺すも、この方々の勝手なのさ」

     湯婆婆の背後には、異形の神々がガラス越しに並び、環奈をじっと見つめていた。

     「お前はもう少し大きくなってから、刺身にしてやろう」

     その言葉を聞いた瞬間——環奈の恐怖は頂点に達した。

     「いやっ……!助けて……!」

     声にならない悲鳴を上げる中、湯婆婆は水槽を傾け、環奈の体を川へと流し込んだ。

     冷たい水が勢いよく身体を包み込み、環奈は必死に尾を振るが、流れに逆らうことはできない。

     「いやあああっ!!助けてぇっ!!」

     必死に叫び、もがく環奈の身体は、川の速い流れに乗ってどんどん遠ざかっていった。

  • 791湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:03:06

     「うわああっ!!」

     環奈は飛び起きた。

     目の前に広がるのは、暗闇に包まれた宿舎の部屋だった。
     周囲からは、同室の湯女たちの寝息が微かに聞こえるだけだ。

     「はぁ……!はぁ……!……夢……だったの……?」

     環奈は荒い息を整えながら、額に手をやる。その手に触れたのは冷たい汗だった。
     顔も背中もびしょ濡れで、まるで本当に川に放り込まれたかのようだった。

  • 792湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:07:06

     環奈が飛び起きた音に、隣で寝ていたリンが気づいた。
     目をこすりながら身を起こし、寝ぼけた声で問いかける。

     「おい、環奈……どうしたんだよ?」

     環奈はリンの方を見たが、すぐには答えられなかった。
     夢で感じた恐怖がまだ心に残り、うまく言葉が出てこない。

     「な、なんでもない……。」

     そう言いながら体を動かしたとき、環奈はある異変に気づいた。
     上半身だけでなく、下半身もびっしょりと濡れている。

     「(えっ……!?)」

     最悪の予感が胸をよぎる中、環奈は掛け布団に手を伸ばした。震える手で布団を恐る恐る捲ると——

     「……〜〜〜〜ッ!」

     「……おいおい……マジかよ……」

     リンも隣で布団を覗き込み、目を丸くして絶句する。
     環奈は、リンの反応を見ながら、顔が真っ赤になるのを感じた。

  • 793湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:07:34

     ——翌朝、環奈は洗った布団と袴、パンツをベランダに干し、自分はその場に座り込んで頭を抱えていた。

     宿舎のベランダで、朝の風に揺れる濡れた布団は、まるで昨夜の失態を全員に見せつけているかのように思えた。
     廊下から、大人の湯女たちの声が聞こえてくる。

     「怖い夢見たんだってさ」
     「あらあら、所詮は子どもねぇ」

     彼女たちは布団を指差しながら、口元を隠してクスクスと笑っている。

     「(……死にたい……!)」

     環奈は顔を手で覆い、さらに小さく丸まった。

     そんな中、リンと2人の小湯女がベランダにやってきた。

     「おい、そんなに落ち込むなよ」

     リンが肩を叩きながら、軽い調子で言う。

     「そうそう。怖い夢なんて、誰でも見るもんだって!」

     小湯女の一人が言い、もう一人も続けた。

     「気にしすぎだよ、環!」

     彼女たちは励まそうとしてくれるが、環奈は顔を上げることができなかった。
     恥ずかしさと情けなさが頭を離れない。

  • 794湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:07:51

     すると、別の小湯女が慌てた様子で走ってきた。

     「環……これ、あんたのだよね……?」

     その手には、アンからもらった白い石——環奈のお守りが握られていた。

     「……それ、どうしたの?」

     環奈は顔を上げ、震える手で小湯女から石を受け取った。

     「なんかね、光ってるよ」

     言われて石をじっと見ると、それは——二つに割れていた。
     そして、割れた断面から、白い光が溢れている。

     環奈は唖然として、その石を見つめた。

     「(……どういうこと?)」

  • 795湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:11:01

     環奈は手の中で光る石を見つめるうちに、先日銭婆が語っていた言葉を、直感的に思い出していた。

     「(何かが……何かが起きてる……?)」

     下半身の着替えも後回しにして、環奈は勢いよく立ち上がる。

     「おい!環奈!下!下履けって!」

     リンが後ろから叫んだ。

     環奈は、下着代わりにリンに締めてもらった褌姿のまま、一心不乱に走り出していた。

     途中ですれ違ったカエル男たちの、驚いた目が自分に注がれているのも、今は全く気にならない。
     足音を響かせながら廊下を駆け抜ける。

     目指す先は——ボイラー室だった。

  • 796湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:11:54

     環奈は、潜り戸の前にたどり着くと、戸を勢いよく開け放った。
     まだ寝ていた釜爺が、環奈の騒がしい男に反応して唸り声を上げる。

     環奈は釜爺を気にする暇もなく、番台の隣に置かれている、自分のランドセルに駆け寄った。
     そしてポケットを探ると、銭婆から渡された御札を取り出し、両手で強く握りしめた。

     「銭婆!お願い!来て!」

     ——環奈の叫びに応えるように、御札の文字がふわり、ふわりと宙に浮かび上がり始める。
     文字たちはひとつひとつ光を放ちながら踊り、やがて合わさるようにして小さな銭婆の姿を形作った。

     その姿は徐々に大きくなり、やがて普通の銭婆の大きさになると、すとん……と、床に着地した。

  • 797湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:13:04

     「おはよう、環奈」

     銭婆は穏やかな表情を浮かべて環奈を見た。

     「この間はすまなかったね。最後まで伝えられなくて」

     釜爺は目をこすりながら、身体を起こし、目の前で繰り広げられている不思議な光景に、首を傾げていた。
     ススワタリたちも、巣穴から不安げに様子を伺っている。

     環奈は息を切らしながら必死に訴える。

     「うん、そのことなんだけど!」

     環奈の瞳には、不安と焦りが混ざっていた。

     「何が起きてるのか教えて!昨日、湯婆婆が『人間の世界にもお店を出す』って言って出ていったの!そしたら、今度はアンから貰った石がこんなことに……!」

     環奈は懐から、割れて光を放つ石を取り出し、銭婆に見せた。

  • 798湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:13:34

    (銭婆「( >>799 から >>801 )」

  • 799二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 16:16:30

    これは…あの馬鹿妹、足元掬われちまったようだね

  • 800二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 16:20:17

    単刀直入に言うよ環奈。その石はね、災いから持ち主を遠ざける為のまじないがかかってるんだ
    それが割れたって事は、とんでもない厄災が迫ってるって事だよ

  • 801二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 16:29:37

    なるほど…環奈、心してお聞き。
    恐らく妹は何かに負けて、そして成り変わられたみたいだね。
    そしてそのアンって子も酷い目に遭ってる可能性が高いよ、異常発光してるのはその石に籠められた厄を遠ざけるまじないが常に発動してるからさ。

  • 802湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 16:33:09

    1. >>799

    2. >>800

    3. >>801

    dice1d3=2 (2)

  • 803湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:17:38

     銭婆は、環奈の手にある割れた石をじっと見つめ、険しい顔をした。

     「……単刀直入に言うよ、環奈」

     銭婆の声はいつになく重く、釜爺までもが思わず姿勢を正した。

     「その石はね、災いから持ち主を遠ざけるためのまじないがかかってるんだ」

     「……!!」

     環奈は驚いて、石を握り直した。銭婆はさらに低い声で続ける。

    
 「それが割れたってことは——とんでもない厄災が迫っているってことだよ」

     銭婆の言葉に、環奈も釜爺も息を呑んだ。
     部屋の空気が、ひりつくような緊張感に包まれる。

     環奈は石を握りしめたまま、銭婆を見上げた。

    
 「……私、どうしたらいい?」

     その声には、恐怖と——決意が入り混じっていた。

  • 804湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:20:58

    (銭婆「 dice1d3=1 (1) 」)


    1. まずは、そのアンという子を助けに行きな

    2. 妹の後を追いな

    3. 安価&ダイス

  • 805湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:47:37

     銭婆は静かに環奈を見つめたまま、重い口調で言った。

     「……まずは、あんたにその石をくれた子——アンという子を助けに行ってはどうだい」

     環奈は息を呑み、銭婆の言葉を待つ。

     「その子にも危険が迫ってるようだからね」

     銭婆の分身は言い終えると、ふわりと霞のように消え始めた。

     「……!!銭婆、待って!!」

     環奈は呼び止めようとしたが、その時にはもう、分身は影も形もなくなり、御札はただの紙切れになっていた。

  • 806湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:48:09

     「……アンが……危ない?」

     環奈はその言葉の意味を考えていた。しかし——

     「(……考えるよりも、早く動いた方がいい…….!)」

     環奈は、急いでボイラー室を出ようと立ち上がる。
     そのとき、釜爺が環奈の肩をつついた。

     「ん……?」

     環奈が振り返ると、釜爺はどこからか取り出した、替えの袴を差し出している。

     「……そんな姿じゃ、外を走るのは難儀じゃろう」

     環奈は赤くなりながらも、すぐに受け取り、お礼を言った。

     「ありがとう!」

     釜爺は黙ってうなずきながら、サングラス越しに見守っている。
     素早く袴を身につけた環奈は、潜り戸を通って、ボイラー室を飛び出した。

     「……グッドラック」

     背後で、釜爺が静かに呟く声が聞こえた。

  • 807湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:52:43

     環奈はエレベーターを乗り継ぎ、湯婆婆の部屋がある階へ向かう。

     到着した場所は、薄暗く豪華な空間だった。
     大きな扉が奥にそびえ立っている。その圧倒的な存在感に、環奈は自然と息を呑んだ。

     「(アン……ここにいるはずだけど……)」

     環奈は一瞬だけ躊躇したが、すぐに頭を振り、小さな手でドアノブを掴んだ。
     そして、ダメ元でゆっくりと引いてみる。

  • 808湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 17:53:56

    (扉は dice1d3=1 (1) )


    1.開く

    2.開かない

    3.手をかけた途端、(安価&ダイス)

  • 809二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 17:58:25

    セーフ!

  • 810湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:11:31

    ドアノブは、驚くほどあっさりと下がった。

     「……開くの……?」

     環奈が体重をかけて扉を押すと、それはギィィ……と鈍い音を立てながら、ゆっくりと動く。
     
     全力で押し、中に入り込む環奈。
     目の前には通路が続いていた。
     その奥には、もうひとつ扉が立ちはだかっている。

     「(……行くしかない)」

     環奈は息を整え、ひとつひとつ扉を押し開けていった。
     何重にも設けられた扉は、どれも大きくて重たい。
     薄暗く、圧迫感のある通路を、環奈はゆっくりだが、確実に進んでいく。

     「(アン……待ってて……!)」

     汗ばむ手で次々と扉を開けながら、環奈は心の中でそう呟き続けた。

  • 811湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:12:02

     ようやく、最後の扉を押し開けると、目の前に湯婆婆の部屋が現れた。

     「やっと……!」

     環奈は息を切らしながら部屋へ足を踏み入れる。そのとき——

     「オイ、オイ、オイ!」

     いきなり何かが足元に転がってきた。

     「ひゃっ!」

     環奈は驚いて身を引く。頭たちだ。

     3体はいつもの調子で跳ねながら、声を上げているが、その動きにはどこか切迫感があった。
     環奈に何かを伝えようとしているようだ。

     「……やっぱり、何かあったんだ……!」

  • 812湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:12:39

    (湯婆婆の部屋には >>813 から >>815 でダイス)

  • 813二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 18:18:52

    内装がぐちゃぐちゃになった部屋にいくつもの悍ましい気配を漂わせる黒ずんだ粘膜があちこちに散らばっている

  • 814二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 18:19:21

    何かが這った後の様な痕跡が残されている

  • 815二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 18:22:12

    >>813

    部屋の奥に粘膜に覆われて横たわる裸のアンの姿が

  • 816湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:24:09

    1. >>813

    2. >>814

    3. >>815

    dice1d3=2 (2)

  • 817二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 18:42:21

    怖〜…

  • 818湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:45:24

     環奈の目に飛び込んできたのは、赤い絨毯が一面黒い泥で覆われている光景だった。
     まるで何か大きなものが、這い回った後のようだった。

     「……これ、何……?」

     環奈は眉をひそめながら、慎重に部屋の中へ進む。

     ——ねちょお……

     その足元にも黒い泥がへばりつき、べっとりとした感触が伝わってきた。

     「うっ……」

     環奈は思わず眉をひそめる。

     部屋全体に、異様な雰囲気が漂っている。
     周囲の家具は倒されていたり、位置がずれていたりと荒れていた。

     環奈は息を呑み、部屋を見渡す。

     「……アン……湯婆婆……坊……」

     思わず口にする名前は、この場で姿が見えない人たちばかりだ。

     「どこにいるの……?」

     環奈は不安を抱えながらも、部屋の奥へ向かって歩き出した。

  • 819湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:46:04

    (環奈が見つけたもの dice1d3=1 (1) )


    1. アン

    2. 坊

    3. 安価&ダイス

  • 820湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 18:46:58

    (アンの状態 dice1d3=1 (1) )


    1. >>815

    2. 武器?を手に坊の部屋を守ってる

    3. 安価&ダイス

  • 821湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 19:34:34

     湯婆婆のデスクの後ろへ回り込むと、そこには——
     倒れ込んで動かない、アンの姿があった。

     「アン!!」

     環奈は目を見開き、泥を踏みしめながら駆け寄る。

     アンの全身は黒い泥に覆われ、まるで泥そのものに飲み込まれたかのようだった。
     肌や髪にまとわりついた泥は粘り気を持ち、絨毯にべったりと貼り付いている。

     「アン!起きて!」

     環奈は自分の服が汚れるのも構わず、泥だらけのアンの体を抱き起こした。

     「……生きてる……!」

     耳をすませると、アンの浅い呼吸が微かに聞こえた。
     その事実にほっとしながらも、環奈は急いでアンの体を覆う分厚い泥を手で拭い始めた。

     泥は冷たく、粘りつき、手に吸い付いてくるような感触だった。
     環奈がどんなに拭っても、なかなか落ちない。

  • 822湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 19:34:44

     「……っ!」

     ようやく泥を少し拭き取ったとき、環奈は気づいた。
     アンの服がすべて剝ぎ取られていることに。

     「(何か纏わせた方がいいよね……!)」

     環奈は周囲を見回したが、この部屋に使えそうなものは見当たらない。

     「坊の部屋なら……!」

     環奈はアンをそっと背中に担ぎ上げる。
     そして、隣にある坊の部屋を目指し、片手で扉を開けると、赤いカーテンをくぐった。

  • 823湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 19:35:11

    (坊の反応 >>824 から >>826 でダイス)

  • 824二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 19:35:51

    気絶している

  • 825二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 19:38:53

    坊も裸で横たわっている

  • 826二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 19:46:12

    >>825

    同じ様に泥に塗れている

  • 827湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 19:46:57

    1. >>824

    2, >>825

    3. >>826

    dice1d3=1 (1)

  • 828二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 20:45:07

    襲われた感じ?

  • 829湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:08:54

     坊の部屋に足を踏み入れると、環奈はまたしても息を飲んだ。

     床一面に敷き詰められているクッションが、ヌメヌメとした黒い泥に覆われている。

     「……また、泥……」

     環奈は慎重に足を進めながら、背中のアンを支えた。

     そのとき、部屋の中央にある大きな存在に目が留まる。

     「……坊……!?」

     泥まみれの床の真ん中で、坊がうつ伏せに倒れていた。
     ぐったりとしたその様子に、環奈は言葉を失う。

     「坊!坊!しっかりして!」

     環奈は背中のアンを抱えたまま、坊のもとへ駆け寄った。
     ただでさえ、ふわふわの床で歩きづらいのに、泥のせいで踏むたびにぬるっと足を取られる。
     それでも環奈は、必死にバランスを保ちながら進んだ。

     「くっ……!」

     なんとか坊にたどり着くと、アンをそっと横に下ろし、坊の大きな身体に手を伸ばした。

     「坊!起きてよ!」

     環奈は坊の体を揺さぶった。

  • 830湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:10:54

    (坊は dice1d3=3 (3) )


    1.生きてはいるが目を覚さない

    2.目を覚ました

    3.安価&ダイス

  • 831湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:11:22

    >>832 から >>834


    (坊の行動でなくても大丈夫です)

  • 832二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:15:11

    ふと、背筋に直接氷をぶち込んだような強烈な怖気を感じ振り向いたら泥から這い出る何かがいた

  • 833二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:18:41

    周囲から異臭がする
    なんの臭いかは不明

  • 834二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:20:18

    坊は体を揺さぶっても目を覚さない
    布を持ってアンの元に戻るとアシナシがいた

  • 835湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:21:45

    1. >>832

    2. >>833

    3. >>834

    dice1d3=3 (3)

  • 836湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:38:26

     環奈はふと、泥に覆われたアンの体を見下ろした。

     「(何か纏わせないと……!)」

     環奈は坊のベッドに手をかけ、重く柔らかな掛け布団を引きずり下ろした。

     「これで……!」

     布団を抱え直し、アンに掛けようと振り返ったその瞬間、環奈の全身が凍りついた。

     入り口付近に、それはいた。
     ねっとりとした黒い泥の塊——アシナシが、静かに佇んでいる。

     「ひっ……!」

     思わず声を漏らした環奈。その目は恐怖で見開かれた。

     アシナシは、黒い泥の身体を絶えず流動させながら、環奈をじっと見つめている。
     赤い瞳が泥の中に浮かび上がり、その光が不気味に揺らめいていた。

     「(な、何……これ……?)」

     環奈には、それが何なのか全く分からなかった。
     ただ、その赤い瞳に射抜かれるような威圧感と、泥の塊から漂う異様な存在感だけは、はっきりと感じ取れた。

     ぐちゅっ……ベチョッ……ゴポッ……

     泥の身体は絶え間なく動き続け、粘着質な音を立てている。
     環奈の腰ほどの大きさしかないが、その禍々しい存在感は、部屋全体を圧迫するかのようだった。

  • 837湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:39:33

     環奈は恐怖を感じながらも、アンと坊のことを思い、咄嗟に動いた。

     「(二人を守らなきゃ……!)」

     横たわっているアンに掛け布団をかけ、身体を覆う。
     その後、環奈は二人を庇うようにその前に立ち、泥の塊を睨みつけた。

     手は震えていたが、それでも環奈は一歩も引かなかった。

     「誰か知らないけど……これ以上二人を傷つけないで!」

     アシナシは、環奈をじっと見つめたまま動かない。
     赤い目が光を放ちながら、距離を詰めてくるわけでもなく、ただその場で様子を伺っているようだった。

     泥が流動する不快な音と、環奈の荒い息遣いが、部屋に満ちる。

  • 838湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:40:00

    (次のターン >>839 から >>841 )

  • 839二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:44:20

    環奈を恐怖で屈服させようとアシナシが突如ボコボコと変形し不定形の異形と化す

  • 840二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:47:12

    アシナシが不気味な異音を発したら周囲の泥から無数の手が伸び環奈を引きずり込もうとしてくる

  • 841二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:48:52

    アシナシが突如汚泥で出来た触手のような物を伸ばして環奈の膨らみかけの控えめなおっぱいに絡みつき、乳首を弄りながらもみもみ。

  • 842二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 21:49:12

    足がガクガクと震え袴に染みが出来てる姿を見て大したことはないと判断したアシナシはわざと恐怖を煽るようにジワジワ近づいてくる

  • 843湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 21:49:26

    1. >>839

    2. >>840

    3. >>841

    dice1d3=2 (2)

  • 844湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:08:56

     アシナシの赤い瞳が環奈を見つめる中、その身体が突然不気味な音を立て始めた。

     じゅぶぶっ……!ごぼっ……ガポッ……!

     泥が泡立ち、はじけるような音が響き渡り、まるで体内から何かが湧き出しているようだった。
     その粘着質な音の気持ち悪さに、環奈は思わず背筋を震わせた。

     「(な……!何なの……!?)」

     恐怖が膨れ上がる中、環奈は息を呑みながらその場に踏みとどるった。
     しかし、次の瞬間——

     ずぶぶ……ぬるぅ……

     環奈の周囲に点在する泥溜まりから、黒い泥でできた不気味な手がゆっくりと伸びてきた。

     「……えっ!?」

     環奈は驚いて後ずさる。そのうちの一本が足元から伸び、ぬめる泥の手が環奈の脚に向かって迫る。

     「いやっ!」

     環奈はとっさに跳び退り、その手を避けた。
     しかし、その隙に別の手が伸び、ドロドロの指が彼女の腕をがっしりと掴んだ。

  • 845湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:10:41

     「ひっ……!離して!」

     環奈は振りほどこうと必死にもがいたが、ベトベトとした泥がまとわりつき、腕を逃がすことができない。

     「やめてっ……!」

     さらに別の泥の手が反対の腕を掴む。そして次々と手が伸び、脚、腰、そして胸へと絡みついていった。
     環奈は全力で抵抗したが、黒い泥の手はどんどん増えていき、逃れる隙を与えなかった。

     四肢をすべて掴まれ、環奈は無理やり膝をつかされる形になった。

     「くっ……!」

     粘りつく泥が服や肌にまとわりつき、冷たく湿った感触がじわじわと広がっていく。
     目の前のアシナシは、赤い瞳を光らせたまま、微動だにせず環奈をじっと見つめている。

     圧倒的な不安と恐怖が、環奈を支配していた。

  • 846湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:11:11

    ( >>847 から >>879 でダイス)

  • 847二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:18:45

    目を覚ました坊が割って入ろうとする

  • 848二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:19:55

    アシナシの頭が突如として逆さになり、環奈の眼前に迫り苛烈な恐怖を与え続ける

  • 849二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:21:23

    突然大湯で見た服装と姿になるがその外見は10代半ば程であった

  • 850湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:24:04

    1. >>847

    2. >>848

    3. >>849

    dice1d3=3 (3)

  • 851湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:40:02

     環奈が泥に拘束され、必死にもがいている中、目の前のアシナシが突然蠢き始めた。

     「っ……!?」

     黒い泥の身体がぐにゃぐにゃと波打つように動き、その形が少しずつ変わり始める。
     環奈は泥の冷たさと恐怖に震えながら、アシナシの変化を見つめるしかなかった。

     泥はやがて人型を成し始め、次第に色がついていく。
     肌の色が現れ、スーツの形がくっきりと浮かび上がった。
     薄い緑色のスーツに黒いネクタイ、臙脂色のマフラー。そしてスーツの上には薄い褐色のトレンチコートが重ねられている。
     最後に、短い黒髪と赤い瞳がはっきりと形を成した。

     「……えっ……?」

     環奈は目を見開いた。

     目の前に立つのは10代半ばほどの少女だった。

     「(この人……どこかで……!)」

     環奈の脳裏に、何日か前の記憶が浮かんだ。
     ——大湯の掃除で苦労していた自分に、薬湯の札の使い方を教えてくれたあの少女。

     「あなた……!」

     環奈は泥の拘束も忘れ、思わず声を上げた。
     しかし、アシナシ——いや、少女は黙ったまま環奈をじっと見つめている。

  • 852湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:40:53

    (どんどん行きましょう >>853 から >>855 でダイス)

  • 853二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:53:40

    環に手をかざすと現世とここがひとつになった世界の光景を見せる

  • 854二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:54:01

    少女の頭が不意にゴキン、と逆さになりニヤニヤしながら顔の穴という穴から泥を流しつつ環奈の顔を覗き込んでくる
    逃げ場の無い恐怖に下半身が温かくなる感覚を覚える環奈

  • 855二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 22:55:19

    急に環奈の服を脱がし身体を隅々まで暴くように触りながら裸にするアシナシ

  • 856湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 22:56:12

    1. >>853

    2.>>854

    3. >>855

    dice1d3=3 (3)

  • 857湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:12:29

     アシナシは、突然、ゆっくりと環奈の方へ歩み寄った。
     その視線は、どこか鋭く、けれどどこか熱を孕んでいて、環奈は知らず知らず唾を飲み込んでいた。

     無言のまま、アシナシは環奈の目の前で立ち止まると、ためらうことなく手を伸ばし、環奈の身にまとった水干の前をぐいっ……とはだけさせた。

     「なっ……!!」

     空気が冷たく触れるのを感じた瞬間、環奈の顔は羞恥と混乱で真っ赤に染まる。
     しかし、アシナシは一瞥もくれず、はだけた水干をその場で無造作に投げ捨てた。

     「やめて……!」

     環奈の声は懇願に近いものだったが、アシナシの手は止まらない。
     彼女の腰に手を回し、袴を力任せにずるずると下へと引き下ろす。
     露わになる太ももが震え、羞恥心がますます環奈を追い詰める。

  • 858湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:15:29

     さらに、アシナシは環奈の体を隅々まで探るように、指先で滑らせながら、次は腹掛けの紐へと手をかける。
     軽く結ばれた紐がほどけると、腹掛けもまた取り去られる。
     環奈の小さな、膨らみかけの胸が、灯りの下に晒された。

     「ッ……!!」

     環奈は必死に手で隠そうとしたが、泥の手が両腕をがっしり掴んで離さない。
     アシナシの手が最後の布――褌に到達する。
     布を引き解かれる音が耳に届いた瞬間、環奈は恐怖と羞恥に目を瞑った。

  • 859湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:15:59

    ( >>860 から >>862 でダイス)

  • 860二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 23:41:02

    下半身も同様に隅々まで、一番恥ずかしい部分も触ったあとその身を不気味に変形させ、環奈の姿に変化する

  • 861二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 23:47:55

    何か最後のパーツを確認するかのように、よりじっくりねっとりと下半身を触りながら、環奈の身体にも泥を纏わせるアシナシ
    股間を検められた際に、恐怖に耐えきれず決壊する環奈だったが、その時起きた坊が油断していたアシナシを吹き飛ばす

  • 862二次元好きの匿名さん25/01/28(灍) 23:49:04

    >>861

    の後に

    >>860

  • 863湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:50:27

    1. >>860

    2. >>861

    3. >>862

    dice1d3=2 (2)

  • 864湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:51:58

    (決壊したのは何?)

    1. 涙

    2. おしっこ

    dice1d2=2 (2)

  • 865湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/28(灍) 23:58:28

    (環奈ちゃん、膀胱よわよわ……)

  • 866二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 00:06:35

    坊イケメンや…

  • 867二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 00:19:11

    アシナシこれもしかして環奈ちゃんも成り代わりの対象にしようとしてる?
    裸で泥まみれのアンちゃんもそうだったけど

  • 868湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 00:44:03

     アシナシの目は鋭く、そしてぞっとするほどに執拗だった。
     環奈の裸体を隅から隅まで舐め回すように見つめ、その視線が肌の上を這うたび、まるで触れられているような錯覚に襲われる。

     だが、それだけでは終わらなかった。

     アシナシは、ゆっくりと手を伸ばし、環奈の腰から太もも、そしてもっと下へ――冷たい指をじっくりと這い回す。

     「ひっ……やめ……んんっ……!」

     環奈は思わず声を漏らしてしまう。羞恥と恐怖に声が震えるが、アシナシの手の動きは止まらない。

     そのとき――環奈は何か冷たくて、べっとりした感触が肌に触れていることに気づいた。
     ――視線を下ろすと、アシナシの手のひらから黒い泥がじわじわと滲み出ていたのだ。

     環奈が息を呑む暇もなく、アシナシの両手はその泥を環奈の肌に塗り広げるように動き始める。
     ぬるり、ぬるりと、黒い粘液が彼女の白い肌を覆っていく。まるでペンキを塗りたくられるかのように、環奈の身体は次第に黒く染められていった。

     「や、やめて……お願い、やめて……!」

     環奈は涙を浮かべて震えた。冷たく、べとつく感触が全身を包むたび、心臓が痛いほどに鼓動し、羞恥と恐怖で息も詰まる。
     けれども、アシナシはそんな懇願を意にも介さず、さらに泥を押し込むように手を滑らせる。
     その指先が内腿を這い、さらに股間へ近づくと――

  • 869湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 00:47:18

     「ひっ……うぅ……!」

     環奈は思わず脚をすぼめようとした。しかしその瞬間、股間に熱い感触が広がり始める。
     じわり、と、恥ずかしい液体が漏れ出す、小さな音。

     しょろろっ……

     「っ……!?」

     環奈は絶望に打たれるように目を見開いた。
     気づかれた……
     アシナシの視線が、今度は股間に釘付けになる。
     その目つきはじっくりと観察するようで、環奈は思わず唇を噛んだ。羞恥のあまりに涙が頬を伝う。

     「(ダメッ……ダメダメダメッ……!出ちゃダメェ……!!)」

     心の中で必死に念じる。膀胱を締めつけようと意識を集中させるが、それが裏目に出たのか、むしろ逆効果だった。
     熱く膨れ上がった膀胱は、そんな抵抗をあざ笑うようにさらに圧力をかけ、熱いおしっこを尿道へと容赦なく送り込んでいく。

     「いやっ……いやああっ……!!!」

     環奈の悲痛な叫びが虚しく響いた直後――ついに堰が切れる。

     しょわわぁぁぁっ……!!

     勢いよく迸るおしっこが、床に敷かれたクッションに溢れ出し、そこにどんどん黄色い水たまりを作っていく。
     止まらない――
     環奈の目から、涙がボロボロと溢れる。

     「うっ……ひっく……いや、いやあ……」

  • 870湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 00:48:56

    (紳士の皆様、今夜はここまでです。)

  • 871二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 09:19:30

    結構出たね
    まあそりゃ怖いか

  • 872湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 10:43:43

     アシナシが、環奈の痴態をじっと見つめているその瞬間——

     「ふんっ!!」

     突如、床に倒れていた坊がむくりと身を起こし、太く短い腕を振り上げた。

     「えっ……!?」

     環奈が驚く間もなく、坊の腕がアシナシを力強く張り倒す。

     ズバァンッ!!

     アシナシの体は黒い泥を飛び散らせながら、クッションの床をゴロゴロと転がっていく。

     「ぼ、坊……!」

     環奈は、さらに大粒の涙を溢れさせながら、坊の方を振り返った。

  • 873湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 10:44:11

     坊はどっしりとした身体で立ち上がり、環奈の方を一瞥すると、ちらりと彼女の足元を見た。
     そこには、黄色い水溜りができている。

     「……あっ……!こっ、これは……!」

     環奈は、顔を真っ赤にして慌てて足を寄せ、どうにか隠そうとする。
     しかし、坊は何事もなかったかのように顔を正面に戻し、静かに息を整えた。

     そのとき、先ほど張り倒されたアシナシが、ゆっくりと身を起こし始めた。

     「……!!」
     
     環奈は息を呑み、坊とともに身構えた。
     アシナシの赤い瞳が、再び二人をじっと捉える。

  • 874湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 10:44:49

    ( さあ、どうしましょう。 >>875 から >>877 でダイス)

  • 875二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 10:54:10

    ひとまずこの場を離れる

  • 876二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 11:41:04

    カーテンを下半身に巻いて濡れているのを隠したあと助けを呼ぶため部屋を出る

  • 877二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 11:41:49

    坊が足止めをするためアンを連れて逃げる

  • 878湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 11:59:06

    1. >>875

    2. >>876

    3. >>877

    dice1d3=2 (2)

  • 879湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 12:31:01

     「……うあぁ〜っ!!」

     突然、坊が大きく唸り声を上げた。
     環奈が驚いて振り返ると、坊は山積みにされていた巨大なクッションを掴み、アシナシに向かって次々と投げつけ始めた。

     「……!」

     ドサッ!!バサッ……!

     アシナシは飛んでくるクッションの直撃を受け、周りを囲まれて、動きが鈍くなる。
     その隙に——

     「環奈!逃げるんだぞ!」

     坊の大きな声が響いた。

     環奈はハッとして、倒れたままのアンを振り返る。
     坊もすぐに動き、アンを布団ごと力強く担ぎ上げると、そのままアシナシを横切り、環奈とともに出入り口へと駆け込んだ。

     アシナシは周囲のクッションを必死にどかしている。だが、その動きはまだ鈍い。

  • 880湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 12:31:24

     出入り口のカーテンに差し掛かったとき——坊は立ち止まり、迷うことなくその大きな布を、片手で勢いよく引き剥がした。

     「これ!」

     坊は剥がしたカーテンを、環奈に向かって差し出した。

     「……!ありがとう!」

     環奈は一瞬の躊躇もなく、それを受け取った。
     坊の意図を瞬時に察し、素早く自分の裸体に巻きつける。
     しっかりと結びつけ、再び駆け出した。

     2人は息を切らしながらエレベーターに向かって走る。

     「オイ、オイ、オイ!」

     後ろでは、頭たちが「自分たちも連れていってくれ」と言わんばかりに、後を追ってきていた。

  • 881湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 12:32:41

    dice1d3=2 (2)

    1.エレベーターで階下へ行き、父役を呼ぶ

    2.アシナシが身体を流体化させて追ってくる

    3.安価&ダイス

  • 882湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 13:13:05

     背後で、ぞわりと空気が揺れた。
     環奈が振り返るよりも早く、黒い泥が床を這う音が響き渡る。

     ——じゅるるるるっ!!

     「……っ!」

     アシナシは形を保つのをやめ、身体を滑らかな流体へと変化させていた。
     黒い泥の波が床を疾走する。そのままスルリと壁に移動し、まるで重力に逆らうように、滑るように進んでいく。

     「(そんな……速い……!)」

     環奈が目を見張る間に、アシナシは天井近くまで達し、再び床へと落下した。

     ベチョベチョベチョッ!!

     ——着地したのは、エレベーターの扉の目の前だった。
     環奈たちの行く手を塞ぐように、黒い泥がうねりながら隆起し始める。

     「(まずい……!)」

  • 883湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 13:13:32

     アシナシの体は膨れ上がり、先ほどよりも大きな姿へと変貌していく。
     環奈の身長の倍はあるだろうか。漆黒の泥の塊はゆっくりと形を成し、ねっとりとした身体を流動させながら、こちらを見下ろした。
     赤い瞳が光を帯び、静かに環奈たちを捉える。

     「オイ!オイ!オイ!」

     後ろで、頭たちが口々に鳴きながらアシナシを威嚇する。
     しかし、アシナシは微動だにしない。ただ巨大な身体を揺らしながら、じっと環奈たちの動向を見据えていた。

     環奈は息を詰め、恐怖を必死に抑え込んだ。
     背後では、坊がアンを背負ったまま力強く立っている。
     2人が睨みつけると、アシナシはまるで面白がるように、その赤い瞳を僅かに細めた。

  • 884湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 13:13:54

    ( >>885 から >>887 でダイス)

  • 885二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 13:37:11

    窓から飛び降りる

  • 886二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 13:39:28

    お札発動

  • 887二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 13:41:38

    アンが飛び起き環奈と坊を掴んで窓から外に出る(屋根を伝って逃げようとする)

  • 888湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 14:02:46

    (御札の効果は一度限りなので、申し訳ありませんが886は除外させていただきます。

    窓から逃げるのは確定として、アンは dice1d2=1 (1) )


    1.目覚める

    2.まだ目覚めない

  • 889湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 15:02:16

     「……うう……」

     かすかな声が、環奈の背後から聞こえた。

     「ッ……!?」

     環奈が振り向くと、坊に担がれていたアンがゆっくりと目を開いていた。

     「お、ぼっ……ちゃま……?」

     アンはまだ朦朧としているようだったが、坊の姿を認めると、弱々しくその名を呼んだ。

     「アン!」

     坊がはっきりとした声で返事をする。

     アンはゆっくりと瞬きを繰り返しながら、環奈にも視線を向けた。

     「環奈……これは一体……?」

     環奈は緊張したまま、短く答える。

     「あのドロドロに襲われて、逃げてるところ!でも、道が塞がれて……!」

     アンは完全に体が動かせる状態ではなかったが、それでも状況を冷静に見定めようとしていた。
     唯一の逃げ道であるエレベーターは、不気味に蠢く、黒い泥に塞がれて使えない。
     ここから出るための、もう一つの手段は——

  • 890湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 15:02:30

     やがて、アンは小さく息を整え、環奈と坊の耳元にそっと囁く。

     「湯婆婆さまの部屋の窓から、屋根を伝って逃げましょう……!」

     「……!」

     環奈は驚きつつも、アンの提案に瞬時に納得した。

     「……みんな!戻るよ!」

     環奈が鋭く指示を出すと、坊と頭たちもすぐに動き出す。
     一斉に方向転換し、再び湯婆婆の部屋へ——

  • 891湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 15:04:11

    (アシナシ、 dice1d3=2 (2) )


    1. ブワァッ…!と覆い被さるようにして全員を飲み込む

    2. 油断させるために、あえてゆっくりと追いかける

    3. 安価&ダイス

  • 892二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 16:12:17

    こっわ…

  • 893湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 17:16:29

     環奈たちは息を切らしながら湯婆婆の部屋へ駆け込んだ。
     背後を振り返ると、意外なことにアシナシは追いかけてきていなかった。

     「(どうして……?)」

     環奈は一瞬訝しんだが、それを考えている余裕はなかった。

     アンは坊の背中からゆっくりと降りると、すぐに窓の方へ向かう。

     「こっち……!」

     アンは素早く両窓を開けると、そのまま屋根の上へと身を乗り出した。
     環奈も後に続く。

     外へ出ると、湯屋の上層部に吹き付ける強い風が二人の身体を包み込む。
     環奈の巻いていたカーテンと、アンの纏った布団がはためいた。

     「坊!こっち!」

     環奈は窓の内側に残る坊を振り返った。
     しかし——坊は窓枠の前で止まったまま動かない。

  • 894湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 17:16:50

     「……おぼっちゃま?」

     アンも不安げに呼びかける。

     その瞬間、二人は悟った。
     ——坊の体が大きすぎて、窓枠を通り抜けられないことに。

     「嘘……!どうしよう!?」

     環奈とアンは顔を見合わせ、狼狽した。
     だが、焦る二人をよそに、坊は静かに微笑み、首を振る。

     「坊、いい子でお留守番できるんだぞ」

     環奈とアンの目が見開かれる。

  • 895湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 17:17:12

     「早く逃げなよ」

     坊はまっすぐな瞳で二人を見つめ、優しく言った。

     「坊は大丈夫。あいつが坊に何かしたら、バーバが許さないんだからね」

     「オイ、オイ、オイ」

     頭たちも跳ねながら、坊の周りに集まり、「坊を守る」と言わんばかりに、円を作る。

     環奈とアンは唇を噛みしめ、何か言いたそうにしたが——すぐに奥歯を噛みしめた。

     「……行こう」

     「……ええ」

     二人は坊たちを見つめ、名残惜しそうに屋根を歩き出した。

  • 896湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 17:18:14

    (とりあえず、河の神が帰る時に使った大戸を目指して降りていきます。無事に着けるか、安価&ダイス >>897 から >>899 )

  • 897二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 17:44:26

    足から血が出ているが(裸足のため)なんとか辿り着く

  • 898二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 17:50:59

    半ばで追いつかれる

  • 899二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 17:51:57

    追われたけれどアンが背負ってくれたためなんとか振り切った

  • 900湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 17:53:48

    1. >>897

    2. >>898

    3. >>899

    dice1d3=1 (1)

  • 901湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:13:20
  • 902湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:17:33

    (足を怪我したのは dice1d2=1 (1) )

    1. 環奈

    2. アン

  • 903二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 18:18:27

    小石とかで足切ってそう

  • 904湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:30:51

     環奈とアンは、緑色の屋根瓦の上を慎重に歩いた。

     屋根の上から見下ろすと、息を呑むような高さ。足を滑らせれば、そのまま転落してしまうだろう。

     「……大丈夫、行ける……!」

     環奈は震える息を整えながら、身に巻いていたカーテンをほどき、それを屋根の端にあるシャチホコの装飾に固く結びつけた。

     「環奈……!」

     アンが心配そうに見つめる中、環奈はカーテンを伝って慎重に下へと降り始めた。
     無事に足がつくと、アンもほっとした様子で後に続く。

     冷たい風が肌に吹き付ける。
     布一枚で支えられた二人の体が揺れ、瓦の冷たさが足裏にじんわりと伝わる。

     「ッ……!」

     途中、環奈の足裏に鋭い痛みが走った。

     「環奈!?」

     驚くアンの声に、環奈は自分の足元を見下ろす。
     屋根の端にあった小さな欠けた瓦の破片が、足の裏を傷つけていた。
     血が滲み、瓦の上に赤い染みをつくっている。

     「大丈夫……行こう……!」

     環奈は痛みに顔を歪めながらも、強く唇を噛みしめた。

  • 905湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:32:15

     ようやく二人は、客間のガラス戸の前に辿り着いた。

     「……中に入れないかな?」

     環奈は足を引きずりながらも、戸をじっと見つめる。

     外から中を覗き込み、何とか開けられそうな場所がないかと必死に探した。

     「(お願い……開いてて……!)」

     風が強く吹き抜ける中、二人はわずかな希望を頼りにガラス戸へと手を伸ばした——

  • 906湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:32:37

    ( >>907 から >>909 でダイス)

  • 907二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 18:41:40

    宴会の準備中であり、大勢の従業員が働いていた

  • 908二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 18:44:27

    空いている窓がなかったのでアンがかち割る

  • 909二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 18:52:47

    開かない

  • 910湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:58:24

    1. >>907

    2. >>908

    3. >>909

    dice1d3=1 (1)

  • 911湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 18:59:23

    (環奈ちゃん、巻いてたカーテン屋根降りるときに使っちゃったので、今またすっぽんぽんです←)

  • 912二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 19:08:21

    >>911

    緊急事態とはいえ何度もすっぽんぽんになるのかわいそ…

  • 913二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 19:10:07

    ほ、ほら…アンが気を利かせて一枚貸してくれるとか…

  • 914二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 19:18:52

    スレ主〜今度別枠でそういった内容のやってよ〜描写良かったからさ〜

  • 915湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 19:36:43

     その瞬間——

     ガラッ!

     内側の障子が突然開いた。

     「うわぁっ!?」

     「ひゃあっ!?」

     障子を開けたカエル男が、外に立つ環奈とアンを見て飛び上がるように驚いた。
     環奈も思わず短い悲鳴を上げ、咄嗟に腕で胸元を隠す。

     カエル男はしばらく目を丸くして固まっていたが、すぐに後ろにいたナメクジ女たちが覗き込み、驚きの声を上げた。

     「ええっ!?外にアン様が!?」

     「それに環も!」

    
 「どういうこと!?なんであんたたちがそこに!?」

     客間の中では、カエル男とナメクジ女たちが夜の宴会の準備をしていた。
     ——まさか屋根の外に環奈とアンがいるとは、誰も夢にも思っていなかったが、幸い、いたずらには騒ぎ立てなかった。

  • 916湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 19:37:22

     「とりあえず、早く中に入れな!」

    
 「男はあっちに行って!」

     ナメクジ女たちが即座に指示を出し、カエル男たちは慌てて向こうへ下がる。

     ナメクジ女の一人が環奈の手を引き、慎重に部屋の中へ誘った。

     「環!あんた血が……!」

     ナメクジ女は環奈の足元を見て、息を呑む。

     「だ、大丈夫です……!」

     環奈は慌てて言ったが、ナメクジ女はすぐに顔をしかめる。
     この場において、血は穢れであり、神々にとっての禁忌だった。

     「誰かー!包帯!」
    
 「それから!小湯女の着物も2人分持ってきてー!」

     その場にいたナメクジ女たちは、手早く動き始め、すぐに二人に布団のシーツを被せた。

  • 917湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 19:41:31

    (父役・兄役にアシナシのことを報告しないとだね。 dice1d3=1 (1) )


    1. 二人、すぐに到着

    2. ところが、さらに予想外のことが

    3. 安価&ダイス

  • 918湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 20:37:32

     環奈とアンは、ナメクジ女たちから渡された ピンク色の水干と袴、紺色の前掛け、そして白い褌 を身に着けた。
     ようやくまともな衣服に包まれたことで、環奈は少しだけ安心する。

     そのとき、隣で袴の紐を締めていたアンが、そっと微笑みながら小さな声で言った。

     「環とお揃いね」

     その言葉に、環奈は驚いてアンを見た。
     どこか疲れたような、けれど柔らかい笑顔。
     環奈の胸の中に張り詰めていたものが、少しだけ和らいだ。

  • 919湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 20:37:46

     しかし——その束の間の穏やかな空気を破るように、 重々しい足音が響いてきた。
     ドン、ドン、と力強く廊下を踏み鳴らしながら、 父役と兄役が姿を現す。

     「環!」

     父役の鋭い声が客間に響く。

     「これはなんの真似だ!」

     環奈は息を詰め、咄嗟にどう答えるべきか迷った。

     しかし、その前に——アンがすっと一歩前に出た。

     「環に落ち度はないわ」

     淡々とした口調だったが、その声には一切の迷いがなかった。

     「アン様……!……ははぁ〜っ……」

     父役と兄役は一瞬言葉を失い、そして、すぐに床に平伏した。

  • 920湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 20:38:03

     アンはそんな二人を見下ろしながら、静かに告げる。

     「それよりも、大変よ」

     父役と兄役は驚いたように顔を上げる。

     「この湯屋に妖が入り込んでる。私たち、それに襲われたの」

     「なんですと……!?」

     父役は目を見開く。
     環奈は、アンの言葉に思わず肩を強張らせた。

     アンは険しい表情のまま、続ける。

     「ぐずぐずしてはいられないわ。——おぼっちゃまの御身が危ない」

     「坊さまが……!!」

     父役と兄役は息を呑んだ。

  • 921湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 20:39:01

    dice1d3=1 (1)


    1.父役「……わかりました、では……」

    2.アシナシが部屋に乱入

    3.安価&ダイス

  • 922湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 20:39:46

    (父役の作戦 >>923 から >>925 でダイス)

  • 923二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 20:44:20

    とりあえず男衆全員で叩きにいく

  • 924二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 20:48:31

    客を避難させてから大湯に誘き寄せて熱湯をかける

  • 925二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 20:55:39

    この時代ではこの世界にもオクサレ様と化した河の神から排出されたゴミなどに混じった人間界の(ヤクザなどによる違法な)銃器が回収・修復されて一部使用されている設定にして、男衆達がマカロフやS&W.38口径などを準備して備える。

  • 926二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 20:59:05

    1. >>923

    2. >>924

    3. >>925 (流石にアレなので、普通にホウキ、ブラシ、包丁、農具などにさせていただきます)

    dice1d3=3 (3)

  • 927湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:00:17

    (危なかった……
    925さんにはすみませんが、紅の豚やラピュタじゃないので……w)

  • 928二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 21:01:44

    925です、すみません、悪ノリが過ぎました...

  • 929湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:18:22

     父役はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。

     「……かしこまりました」

     顔を上げると、厳しい口調で続ける。

     「直ちに腕の立つ男たちを集めて、その妖を退治させましょう」

     その言葉に、アンはじっと父役を見つめた。
     数秒の沈黙の後、静かに口を開く。

     「……湯婆婆さまがいらっしゃらない今、それが最善の方法でしょうね。急ぎなさい」

     それは、冷静に判断した上での決断だった。
     父役は即座に動き出した。

  • 930湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:18:46

     環奈は、そんなやり取りを黙って見つめていた。
     アンがふと視線を向け、優しく言う。

     「環、あなたはここにいて。私のことは大丈夫だから」

     「アン……!」

     環奈は何か言いかけたが、アンの瞳に宿る強い意志を感じ、口をつぐんだ。
     アンは静かに、しかし力強く続ける。

     「……坊さまを、なんとしてもお助けしなければ」

     環奈は唇を噛みしめ、ただ小さく頷いた。

  • 931湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:19:25

     すぐに、カエル男たちがそれぞれ武器になりそうなものを手に集まった。
     ホウキやブラシ、農具、包丁——それぞれが手にできる限りの道具を握りしめ、エレベーターの前に集結する。

     父役と兄役も、襷掛けに棒切れを手に持ち、士気を高めるように声を張り上げた。

     「坊さまにもしものことがあっては、我々は二度と今と同じ姿には戻れん!」

     兄役の言葉に、カエル男たちは一斉にごくりと唾を飲み込んだ。
     
     「なんとしても坊さまをお救いするのだ!」

     そこへ、父役がさらに言葉を重ねる。

     「手柄を立てた者には、特別手当を出すぞ!」

     その一言で、カエル男たちの目の色が変わった。

     「やるしかねぇな!」

    
 「手当、手当!」

     彼らは次第に士気を高めていった。

  • 932湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:19:44

     アンも静かに頷き、エレベーターへと歩みを進める。
     兄役、アン、そして数人のカエル男たちが先鋒として乗り込むと、赤い扉が静かに閉まった。

     ゴウン……

     機械が唸りを上げ、エレベーターは上へと向かう。

     エレベーターの扉が開くと、彼らは慎重に廊下へと足を踏み入れた。

     「……静かに」

     アンの小さな声に従い、誰も音を立てないようにしながら通路を進む。

     やがて、湯婆婆の部屋の前に到着した。
     アンは息を整え、そっと扉の陰から中を覗き込む——

  • 933湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:20:51

    (アンが目にしたのは dice1d3=1 (1) )


    1. 部屋の中央に佇むアシナシ

    2. すでにアシナシを撃退した後の坊

    3. 安価&ダイス

  • 934湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:42:42

     室内は薄暗く、どこか湿り気を帯びた空気が漂っている。

     ——そして、部屋の中央にはアシナシが佇んでいた。

     黒い泥の塊が、ネトネトとした不規則な形を保ったまま、静かに存在している。
     その身体はゆっくりと、身体を上から下へ流動させているが、今は何の動きも見せていない。
     ——背を向けているのか、赤い目は見えなかった。

     アンは慎重に扉の陰へと戻る。

     「坊さまは……?」

      兄役が低く囁くと、アンは僅かに首を振った。

     「ここからではわからないわ」

     兄役は眉をひそめる。

     「いかがなさいます……?」

  • 935湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 21:43:33

    (アン「( >>936 から >>938 でダイス)」)

  • 936二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 22:00:37

    一斉にかかれ!

  • 937二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 22:01:16

    環奈はあっちに行ってなさい

  • 938二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 22:03:42

    突撃っ!

  • 939湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:05:34

    (環奈はすでに下にいるので、一斉攻撃一択ですね。)

  • 940湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:15:17

     アンは静かに決断を下した。

     「……下にいる男たちも呼んできなさい。一斉攻撃を仕掛けるわ」

     兄役はピンと背筋を伸ばし、力強く頷く。

     「はいっ……!」

     兄役はすぐに踵を返し、静かに廊下を駆け戻っていった。



     しばらくして、部屋の前には戦意を帯びた男たちが勢揃いした。
     アンは集まった全員を鋭い眼差しで見渡し、冷静な口調で言う。

     「相手は泥の身体……一筋縄ではいかないわ」

     男たちは息を呑み、緊張が走る。

     「とにかく、無理に倒そうとしないで。窓から追い出すことを目的になさい」

     皆が静かに頷くと、アンは続ける。

     「私は、坊さまがご無事かどうか確かめるわ」

     アンがそう締めくくると、男たちは持っているホウキやブラシ、棒切れを握り直した。

  • 941湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:17:47

     そして——

     「今よ!」

     アンの鋭い声が響いた瞬間、全員が一斉に部屋へなだれ込んだ。

     「うおおおおっ!!」

     掛け声とともに、それぞれが手にした武器を振り回し、アシナシに突進していく。

     ホウキが泥の身体を弾き、ブラシが粘つく表面を削り取るように叩く。

     「こいつ……!効いてんのか!?」

     「いいから押し込め!押し込め!」

     アシナシは、突然の襲撃に身を波打たせながら、じりじりと後退していった。

  • 942湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:19:06

    (ダイスの目で勝負です。)


    アシナシ dice1d100=32 (32)

    湯屋勢 dice1d100=53 (53)

  • 943湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:34:47

     アシナシは、環奈とアンが出ていったときに開きっぱなしになっていた窓へと追い詰められた。

     ぐちゅ……ガポッ……

     アシナシの身体が波打ち、粘つく音を立てながら揺れる。
     すると——

     どろぉ……べちゃっ……!

     まるで重力に身を任せるように、アシナシは 流れ落ちるように窓の外へと消えた。

     「行ったか……!?」

     カエル男たちは互いに顔を見合わせ、慎重に窓へと近づいた。
     何人かが窓枠から身を乗り出して、下を覗き込む。

     その視線の先で——アシナシは軒先から滑り落ち、はるか下の海へと身を投げていた。

     ——どぼぼぼぼっ……!!

     黒い泥の塊は、波間に溶け込むように落ちていき——やがて、見えなくなった。

  • 944湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:36:37

     「やった……!」

     「やったぞぉ!!」

     「ざまあみたか、バケモノめ!」

     カエル男たちは歓声を上げ、飛び跳ねて喜んだ。
     彼らの興奮が最高潮に達しようとしたそのとき——

     「こらぁ、静まれ!まだ坊さまのご無事がわかっておらん!」

     父役の怒声が響き、騒ぎがピタッと止まる。

     その直後、アンが、坊の部屋から険しい顔で出てきた。
     眉を寄せ、険しい表情のまま、ゆっくりと周囲を見渡す。

     その空気に、誰もが言葉を失った。
     緊張感が再び張り詰める。

  • 945湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:37:07

    (坊は dice1d2=2 (2) )


    1. 無事

    2. 姿がない

  • 946二次元好きの匿名さん25/01/29(ć°´) 22:50:58

    えっ

  • 947湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:51:58

     「坊さまは……」

     アンの声が、かすかに震えた。
     視線が、ゆっくりと床へと落ちる。

     「お姿が見えません……」

     その一言が、空気を凍らせた。
     誰もが息を呑む。

     坊がいない——その事実が、ただの言葉以上の重みをもって、皆の胸を締めつけた。

     アンの肩が、小さく震える。
     喉がひどく乾いている。
     何か言葉を紡ごうとするが、声にならなかった。

     そんなアンの様子を察し、父役がすぐに口を開いた。

     「ア、アン様!」

     彼の声は、どこか強張っている。

     「とにかく、湯婆婆さまにお伝えして、戻ってきていただきましょう!」

     兄役も慌てて続ける。

     「そ、そうです!湯婆婆さまのお力さえあれば、必ず坊さまを取り戻せますとも!」

     その言葉に、アンは僅かに目を伏せ、やがて静かに頷いた。

  • 948湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 22:53:38

     「なんにせよ、みなご苦労であった!もう持ち場へ戻ってよいぞ!」

     父役が、場に残る緊張を振り払うように声を張る。

     「さあさあ!今夜も仕事があるのだ!」

     兄役も続ける。

     カエル男たちは、不安げな表情を浮かべながらも、次第に動き始める。
     彼らが歩き出した、その傍らで——

     アンの膝が崩れた。

     「アン様!」

     父役が驚き、駆け寄る。
     だが、アンはそれを気に留める余裕すらなかった。

     青ざめた顔。
     視界が滲む。
     どくん、どくん、と心臓が暴れるように脈打つ。
     耳鳴りがする。

     「(おぼっちゃま……)」

     名前を呼ぼうとしても、喉が震えて、声にならなかった。

  • 949湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 23:23:06

     ——環奈は、まだ痛みが残る片足を引きずるように歩きながら、ボイラー室に入った。
     まだ火が入れられていない、冷え切った空気の中、アンが静かにうずくまっている。

     「……やっぱり、ここにいたんだね。」

     環奈はそっと声をかけながら、アンのそばに座り込んだ。

     番台の上から、釜爺がじっと二人を見下ろしている。
     環奈は彼に軽くお辞儀をした。

     釜爺はしばらく黙っていたが、やがて低くつぶやいた。

     「……湯婆婆の息子がおらんようなって、ずっとふさぎ込んどる。わしには手に負えん。」

     その言葉に、環奈はそっとアンを見つめる。
     アンの肩はわずかに震えているように見えた。

     環奈はそっと、アンの手を取った。

     ——冷たい。
     まるで血の気が通っていないように、指先までひどく冷えきっている。

     環奈は、自分の両手で包み込むように、そっと温めた。

  • 950湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 23:23:52

     しばらく沈黙が続いた後——アンがぽつりと、静かに口を開いた。

     「湯婆婆さまがお戻りになったら——」

     その声は、ひどく掠れていた。

     「それがあなたとの、お別れになるかもしれない」

     環奈の瞳が大きく揺れた。

     「えっ……?」

     そばの釜爺も、驚いたように目を細める。

     「……私は、湯婆婆さまと坊さまにお仕えするために、ここに置いてもらっている身。」

     アンの手は、小さく震えていた。

     「それなのに、肝心な時に坊さまをお守りできなかったとなれば……」

     彼女の声が、少しずつ焦りを帯びていく。

     「湯婆婆さまは私をお許しにはならないわ……」

     掠れた声の中に、焦燥と、それ以上に強い、恐怖が滲んでいた。

     「湯婆婆さまは……私を……私を……!」

     不安に駆られるように、アンの手が環奈の袖をぎゅっと掴んだ。
     まるで、壊れそうな自分を、必死に繋ぎ止めようとするように。

  • 951湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/29(ć°´) 23:24:42

    ( dice1d2=2 (2) が口を開いて「( >>952 から >>954 )」)


    1. 環奈

    2. 釜爺

  • 952二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 01:47:24

    心配するな

  • 953二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 02:09:42

    もっと自分を大切にするんだ

  • 954二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 07:41:48

    きっと無事だ

  • 955湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 09:04:30

    1. >>952

    2. >>953

    3. >>954

    dice1d3=3 (3)

  • 956湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 10:37:24

     すると、番台の上から静かな声が響いた。

     「きっと大丈夫だ」

     低く、落ち着いた声音。
     環奈とアンは、はっと顔を上げた。
     釜爺が、長い手を膝の上に組みながら、ゆっくりと続ける。

     「あの子はな、お前さんが思っとるよりずっと強ぇんだ」

     釜爺の言葉に、アンは戸惑ったように瞬きをする。

     「……坊さまが?」

     釜爺は静かに頷いた。

     「昔、千尋と一緒に銭婆のとこまで行ったことがある」

     その言葉に、環奈の目が大きく見開かれる。

     「千尋……」

     環奈は思わず、アンの顔を見る。
     アンも驚いたように、僅かに口を開いたまま釜爺を見上げていた。

  • 957湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 10:37:47

     「それにだ。湯婆婆がお前さんに手を出そうとしても、あの子は黙っちゃいねえ」

     その言葉が、ずしりと重く響いた。
     環奈は、はっと気づく。

     ——そうだ。湯婆婆は 坊にはとても甘い。
     あの時もそうだった。環奈が湯婆婆に詰め寄られたとき、坊が止めてくれた。
     あの湯婆婆が折れたのだ。

     「(坊なら……きっと……)」

     環奈は、そっとアンの手を握り直した。
     そして、真っ直ぐにアンを見つめ、力強く言う。

     「アン、大丈夫」

     アンは小さく息を呑む。

     「私もあなたのこと守るから」
     アンの目が、驚きと安堵の色に揺れる。
     しばらくの沈黙の後、アンは口を開いた。

     「……ありがとう、環奈」

     掠れた声だったが、その言葉には確かな温かみがあった。

  • 958湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 10:39:20

    (次の展開 dice1d4=4 (4) )


    1.その夜の環奈の夢

    2.翌朝、湯婆婆(アシナシ)が戻ってくる

    3.翌朝、湯屋地底の奈落に落とされてた湯婆婆が自力で脱出してくる

    4.安価&ダイス

  • 959湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 10:39:47

    ( >>960 から >>962 )

  • 960二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:42:52

    坊がボロボロの状態で帰ってくる

  • 961二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:43:32

    心配になった銭婆がカオナシ派遣

  • 962二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:44:18

    限界になった環奈が高熱で倒れて意識不明

  • 963湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 10:45:20

    1. >>960

    2. >>961

    3. >>962

    dice1d3=1 (1)

  • 964二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:46:30

    坊帰還!
    だけどボロボロって大丈夫?
    大丈夫じゃなさげ
    どれくらいボロボロなんだ…

  • 965二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:48:20

    この坊もアシナシじゃないだろうな…?

  • 966二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:52:06

    そういえば湯婆婆どうなったん?

  • 967二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:54:01

    わかんない
    なり変わられたのは分かってる(神の視点)

  • 968二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 12:06:07

    このレスは削除されています

  • 969湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 12:06:26

     ——夜が明ける頃、朝霧に包まれた湯屋の町。
     静寂の中、朱塗りの橋の上をヨロヨロと歩く影があった。

     ——それは、坊だった。
      傷だらけの身体。
     ボロボロの腹掛け。
     あちこちから血が滲み、足元にポタポタと赤い滴が落ちる。
     それでも坊は、必死に歩みを進める。

     湯屋の建物が朝霧の向こうに見えた。
     坊はわずかに微笑む。

     「あぁ……」

     安堵の息が、掠れた声となって漏れる。
     そして——

     バタッ……

     力が抜けたように、橋の上に倒れ込んだ。

  • 970湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 12:06:57

     ——環奈が目を覚ますと、 大部屋にはすでに誰もいなかった。

     「(……やばっ、寝坊した……!?)」

     慌てて身を起こし、急いで身支度を整えると、半ば飛び出すように部屋を出た。
     通路を駆け、仕事場へ向かうと——なんだか、いつも以上に騒がしい。

     通路や階段を、従業員たちが勢いよく行き交っていた。
     いつもはどこか気怠そうな彼らの動きが、今朝はやけに慌ただしい。
     環奈が目を丸くしていると——

     「環ー!!」

     環奈が振り向くと、リンが駆け寄ってきた。

     「リン?」

     「今、起こしに行こうと思ったんだ」

     リンは、少し興奮した様子で息を整えながら続ける。

     「坊が生きて戻ってきた!」

     「えっ……!」

     環奈の心臓が跳ねる。
     驚きと安堵が、同時に押し寄せてきた。

  • 971湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 12:07:28

     「……で、みんな何してるの?」

     周囲を見渡しながら尋ねると、リンは肩をすくめた。

     「見舞いだよ。菓子やら飯やら持ってって、気に入られたいんだよ」

     環奈は、一瞬呆れたように眉をひそめた。
     だが、しばらく考えた後、決意したように言った。

     「……私、行ってくる。」

     「あ?お前もそのクチか?」

     リンが少しからかうような目で見る。

     「そうじゃない!」

     環奈は即座に否定し、すぐに駆け出した。

     環奈は、他の従業員たちと違って、純粋に坊が心配だった。
     そしてもう一人——アンのことも。

  • 972二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 12:08:35

    本物の坊っぽい!

  • 973湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 13:14:00

     環奈は、扉の外から湯婆婆の部屋を覗き込んだ。
     そこには、カエル男やナメクジ女たちが、次々と見舞いの料理やお菓子を持ち込んで集まっている。

     「ほら、これ、坊さまに!」

     「精がつく料理だよ!」

     「甘いものもあったほうがいいよねぇ?」

     次々と並べられる山盛りのご馳走。しかし——

     「坊さまは召し上がらないわ……!今は安静にして差し上げないと……!」

     群がる従業員たちの向こうから、 アンの切羽詰まった声が響いた。

     「(……アン……)」

     環奈の胸に、じわりと不安が広がった。
     押し寄せる従業員たちに、必死で応対するアンの姿が、目に浮かぶ。

  • 974湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 13:14:28

     「こらぁ!!勝手なことをするな!!」

     怒声が響き渡り、環奈は びくっと肩をすくめた。
     振り返ると、そこには 父役が険しい表情で立っていた。

     「早く持ち場に戻れ!」

     父役の一喝に、騒がしかった従業員たちは しぶしぶ肩を落とす。

     「ちぇっ、せっかく持ってきたのに……」
    
 「まあ、いいさ。坊さまがお目覚めになったら、また来ればいい」

     そう言いながら、ぞろぞろと部屋を後にしていく。
     環奈は身を小さくして気配を殺し、彼らが完全に去るのを待った。

  • 975湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 13:14:47

     ——静寂が戻る。
     環奈はそっと足を踏み出し、アンのもとへ歩いていった。

     「環奈……」

     アンが、疲れた表情でこちらを振り向いた。
     環奈の視線は、山積みの食べ物へと向かう。

     「皆、坊さまのお見舞いだと言って、こんなにたくさん持ってきたのだけど……」

     アンの声には、困惑と疲労が滲んでいた。
     環奈は眉をひそめながら、そっと尋ねる。

     「坊の様子は?」

     アンは、小さく息をつきながら答えた。

     「あちこちにお怪我をされてる……けど、今はよくお休みになってるわ」

     環奈は、ほっと息をつくと同時に胸が締め付けられる感覚を覚えた。

     「(……坊……本当に、大丈夫なんだよね?)」

  • 976湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 13:15:57

    (次の展開 dice1d3=2 (2) )


    1. しばらくして、湯婆婆(アシナシ)が帰ってくる

    2. 突然、床に穴が空き、湯屋地底に閉じ込められてた湯婆婆(本物)が出てくる

    3. 安価&ダイス

  • 977二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 13:54:40

    本物湯婆婆復活!!!

  • 978二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 14:31:21

    逆によくそこまで追い詰めたな

  • 979湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 14:55:01

     ふと、アンが静かに口を開いた。

     「環奈」

     アンの声は硬かった。環奈は真剣な眼差しを向ける。

     「私、気になっていることがあるの」

     アンは、そっと指先で、湯婆婆のデスクの端をなぞる。

     「あの黒い泥の妖は、私についてきて湯屋に入り込んだの」

     「……!!」

     環奈は 息を呑む。

     「その後、私が最初に襲われたのだけど——意識が途切れる前、あいつは湯婆婆さまと戦ってたわ」

     「……えっ?」

     「でも、湯婆婆さまは今——」

     アンは、一拍置いてから続けた。

     「新しいお店を建てる場所を探しに行かれてるのよね?」

  • 980湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 14:55:12

     環奈はごくりと喉を鳴らす。

     「……そう、聞いてる。」

     「だったら……あの妖を倒してるはずなんだけど……」

     アンは僅かに眉を寄せた。
     環奈は息を詰めたまま、アンを見つめる。

     「どうして、あいつはまだここにいたのかしら?」

  • 981湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 14:55:46

     ゴン……ゴン……!

     突然、暖炉の前の石床から、鈍く重い打撃音 が響いた。

     「……え?」 

     環奈とアンはぎょっとして振り返る。
     ——何かが、下から石床を叩いている。

     バキッ……!

     鋭い音とともに、床にヒビが走った。

     「っ……!!」

     環奈の心臓が跳ねる。
     アンも息を詰めたまま、後ずさる。
     ヒビはみるみるうちに広がっていく。そして——

     ズガァンッ!!!

     石床が突き破られた。

     白い粉塵が舞い上がり、崩れた床の穴の中から、何かが這い出してくる。
     環奈の背筋が凍りついた。

     「(な、何……!?)」

  • 982湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 14:56:16

     暗闇の中から ゆっくりと這い上がる影。
     それは、ボロボロのドレスをまとった人影だった。
     そして——

     「うあ゛ぁぁぁぁ〜っ!!!」

     咆哮とともに、現れたのは——湯婆婆。
     湯屋を留守にしているはずの湯婆婆が、そこにいた。

     だが、いつもの威厳はない。
     髪はほどけ、全身ススと埃で真っ黒。
     いつもの青いドレスはビリビリに破れている。
     ——まるで、何者かに襲われた後のようだった。

  • 983湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 14:56:37

     環奈は息を呑む。

     「(な、なんで……!?湯婆婆が……!?」

     アンも、恐怖に顔を引きつらせる。
     そんな二人の前で、湯婆婆は足を引きずりながら近づいてきた。そして——

     「あンのバケモノはぁ……どこに行ったぁ〜っ!!!」

     恐ろしい怒声が轟く。
     大きく見開かれた血走った目。
     口の端からは、真っ赤な炎が漏れている。
     ——湯婆婆は、怒り狂っていた。

  • 984二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 14:59:13

    めっちゃ怒ってる…
    当然か

  • 985二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:05:46

    まあ、本人この場にいないんですけどね

  • 986湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:25:46

     「んん〜……んぁぁ……」

     掠れた声が、隣の部屋から響いた。
     ——坊の声だ。

     環奈とアンが、はっと息を呑む。
     湯婆婆の怒声で目を覚ましたらしい。

     湯婆婆も、それに反応した。

     「坊!!」

     ガシャァン!!カラーン……!

     湯婆婆は、山積みの料理を蹴散らしながら駆け出す。
     皿が砕け、料理が床に散らばるが、一切気にせず、一直線に坊のもとへ。

  • 987湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:26:02

     ベッドに駆け寄ると——愛息子が包帯に巻かれ、寝かされていた。

     湯婆婆の目が見開かれる。

     「坊〜〜!!」

     湯婆婆は、坊の身体に縋りついた。

     「かわいそうな坊〜!!こんなに怪我して!!」

     その目からは、涙が溢れている。

     「ごめんね、ごめんね!バーバが守ってやれなくて!!」

     しかし、当の坊はまだ完全には覚醒していない。ただ鬱陶しそうに、顔を背けるだけだった。

  • 988湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:26:29

     その様子を、環奈とアンはカーテンの向こうから覗き込む。
     環奈は呆気に取られた。

     あれほど恐ろしい形相で現れた湯婆婆が、 今はただの『母親』になっている。

     だが——アンはすぐに動いた。
     湯婆婆の足元にダッと駆け寄り、額を床につける。

     「申し訳ございません!!」

     アンは、強く、深く、頭を下げた。

  • 989湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:26:45

     「私がついていながら、おぼっちゃまをこのようなことに……!」

     「うるさいっ!!」

     湯婆婆が片手を軽く振るった。次の瞬間——

     ブワァッ!!

     「きゃあっ!!」

     轟音とともに、魔法の衝撃波が炸裂し、アンの身体がクッションの床を転がる。

     「アン!!」

     環奈が叫び、すぐに駆け寄った。抱き起こし、慌てて様子を窺う。

     「大丈夫!?」

     「うん……!」

     アンは、痛みに顔を歪めながら、かすかに頷いた。
     環奈は、湯婆婆をキッと睨む。

  • 990湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:27:01

     湯婆婆は、しばらくおんおんと声を上げて泣いていた。

     だが——次第に息を整え、冷静さを取り戻していく。
     目を拭い、深く息をつき、鋭い目つきでアンと環奈を見下ろすと——

     「父役と兄役を連れてきな……!」

     低く、凄みのある声で命じた。

  • 991湯屋 ◆va2KrOhAnM25/01/30(木) 15:27:44

    (パート1はここまでにします。少し休憩したいので、パート2のスレ立ては24〜48時間後です。ご了承ください。)

  • 992二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 17:08:17

    お疲れ様です

  • 993二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:22:00

    期待してます

オススメ

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