- 1二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:22:05
- 2二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:24:54
短いあと3倍の量を頼む
- 3二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:46:24
私の手元の、彩色豊かな化粧箱にひっそりと入れられたバレエシューズは、他でもなく彼女に与えようと、私が貧しい目を精一杯開眼させて、見繕って来た代物であった。
値はまるで、問題でなかった、当然と云うか、彼女は両の手差し出して、お断り入れてきた。そこを多少、頑固になって、彼女ほどのプリンセパウなんだら勿体無い訳等無かろう、好いから貰ってやっておくれ、君が為でなかったならね、こんなのは生れてきた意味も、まるで与えて貰えないんだから、情けかけると思って、なんて云い乍ずい、と突き出すと、漸く幾分、照れくさそうな顔して足を通してくれた次第である。
「似合ってるじゃない、好い、好い。折角なんだから、見てみたいね。」
「じゃあ、ほんの、ほんのちょいとだけですよ。」
とん、とん、と床に自分の影落とすように快く拍付けて、ひらひらと云おうか、つらつらと云おうか、花びらの落ちるところから、悲愴をそっくり取っ払ったような、素晴らしいと感じるほかに、妥当な文言が、まるで見当たらない、私の頭の中に、新聞の広告欄も埋められないほどの言葉しかなかったのかしら、と錯覚さえしてしまう、うつくしさに湛えられていて、ふとこれまで感じたことのない、心の疼きに苛まれてきた。それは私の、今の歓びをさえ、そっくり否定して塗り尽くすような、黒い心地悪さであった。幾台もの照明点灯の、厭になるような眩い光を一身に受けて、西欧の旋律を背にして舞台を翔ぶ白鳥の、その姿を望むのが、私以外に何人も、其れこそ数千の瞳と化して、射るように眺められるのが、何とも云えぬ恐怖になっていた。
ついに私は、白鳥の舞う一つの風景を、永遠のうちに閉じ込めてしまうつもりで、化粧箱を、バレエシューズを一思いのうちに、叩き壊した。
- 4二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 00:55:07
ほうほう.....素晴らしい
- 5二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:04:29
本当に書くやつがあるか
- 6二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:13:51
さては大正末期か昭和初期文学好きだな?
- 7二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:16:59
- 8二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:24:10
調べてみると割と発音はそれに近くてなお好き
- 9125/01/24(金) 01:34:44
ただの太宰愛読者だよ…
- 10二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 01:57:34
そもそも>>1の題材の時点でその手の時代っぽいし…
- 11二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 02:02:29
太宰好きか…なるほど確かに
なんとなく、本当になんとなくだけど梶井基次郎の檸檬っぽさも感じた(見当違いならスマソ……) - 12二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 02:15:42
あの時代特有の読点の多さすき
- 13二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 10:51:43
深夜にすげぇのいたな
- 14二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 10:55:39
- 15二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 10:58:02
太宰か…てっきりバレエ繋がりで鴎外かと思ったがもっと堅い文章だったな
- 16二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 11:10:05
出たわねまにまん野生の太宰読者
- 17二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 13:00:17
言い得て妙で草
- 18二次元好きの匿名さん25/01/24(金) 17:47:50
鴎外のエミュはあまりにも難しすぎる